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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】砕石整理器具
(51)【国際特許分類】
   E01B 27/14 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
E01B27/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023189629
(22)【出願日】2023-11-06
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591153145
【氏名又は名称】ユニオン建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391054475
【氏名又は名称】鉄友工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】下 喜巳男
(72)【発明者】
【氏名】望月 俊孝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 周三
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】坂田 佑介
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-004909(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116590968(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01B 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の出力軸を回転させる駆動手段と、
前記出力軸の回転力が伝達されることで回転する、中心軸に沿って延びる回転軸と、
前記回転軸の回転に伴って回転可能な爪と
前記駆動手段を収納し前記回転軸を回転可能に保持するギアボックスと、
前記ギアボックスに連結される把持部と、を備え、
前記爪が金属製かつ弾性を有し、
前記爪が複数設けられており、前記複数の爪は、前記回転軸の長さ方向に等しい位置において前記回転軸の回りに点対称に配置されて爪ユニットを形成するとともに前記回転軸の長さ方向に沿って前記爪ユニットが複数配置されており、
前記複数の爪は、前記回転軸に着脱可能に設けられるとともに前記回転軸と共に回転するブラケットに形成された溝に沿って着脱可能に設置され、前記回転軸の長さ方向に前記ブラケットに隣接するブラケット蓋と前記ブラケットとにより前記回転軸の長さ方向に挟持されていることを特徴とする砕石整理器具。
【請求項2】
前記複数の爪のそれぞれは、前記回転軸に対して略直交する基部の両端部から前記回転軸の径方向に延びる基端延部と、前記基端延部の前記径方向の外側の端部から前記回転軸の回転方向とは逆方向に前記基端延部と90°以下の角度をなして延びる中間延部と、前記中間延部の前記径方向の外側の端部から前記回転軸の回転方向に前記回転軸の前記径方向の外側に前記中間延部と90°から180°の範囲の角度をなすように延びる先端部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載に砕石整理器具。
【請求項3】
前記ブラケットに形成された前記溝と、前記溝に設置される前記複数の爪のそれぞれの前記基部と前記基端延部との間には、前記基部と前記基端延部が、前記基部と前記基端延部のそれぞれの長さ方向に垂直な方向に移動可能な隙間が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の砕石整理器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砕石整理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道のレール下には砕石が敷き詰められて道床を形成している。砕石の経年劣化に対応するため砕石の交換を行う場合や、枕木を交換する場合に、既存の砕石の取出し作業や、新たな砕石の敷き詰め作業が発生する。
【0003】
従来の砕石の取出しや敷き詰め作業においては、特許文献1から特許文献3に記載されるような、レール上に載せて使用する大型の装置を用いている。
【0004】
従来の大型の装置を用いる場合、大型の装置の搬入と搬出に多大な労力を払う必要がある。そのため、新たなレールを長距離に亘って敷くような大規模な工事に伴って新たな砕石を敷くような工事では有効かもしれないが、小規模の工事の実施には不向きである。
【0005】
そこで、既存路線の砕石の入替作業のみならず、新たなレールを敷く工事に伴って新たな砕石を敷くような工事であっても、工事が必要な箇所において、少人数で柔軟に実施することのできる、比較的小規模の砕石の取出し作業や敷き詰め作業の実施が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-7865号公報
【文献】特開2020-148052号公報
【文献】特開2019-35300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景の下になされ、少人数で柔軟に実施することのできる、小規模の砕石の取出し作業や敷き詰め作業での使用に適した砕石整理器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の第1の態様は、回転軸の回転に伴って回転可能な爪と、前記回転軸を回転させる駆動手段と、前記駆動手段を収納し前記回転軸を回転可能に保持するギアボックスと、前記ギアボックスに連結される把持部と、を備え、前記爪が金属製かつ弾性を有することを特徴とする砕石整理器具である。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、爪が金属製かつ弾性を有することから、爪が砕石に当接した際に、砕石の移動に最適な外力を爪から砕石に加えることができるとともに、爪が回転しているため、砕石の移動に最適な外力を連続的に砕石に加えることができる。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記爪が複数設けられており、前記複数の爪は、前記回転軸の長さ方向に等しい位置において前記回転軸の回りに点対称に配置されて爪ユニットを形成するとともに前記回転軸の長さ方向に沿って前記爪ユニットが複数配置されていることを特徴とする砕石整理器具である。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、爪が砕石に当接する機会を増やすことができ、砕石を回転軸の長さ方向に亘る広い範囲で移動させることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記複数の爪は、前記回転軸に着脱可能に設けられるとともに前記回転軸と共に回転するブラケットに形成された溝に沿って着脱可能に設置され、前記回転軸の長さ方向に前記ブラケットに隣接するブラケット蓋と前記ブラケットとにより前記回転軸の長さ方向に挟持されていることを特徴とする砕石整理器具である。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、ブラケットと爪とブラケット蓋のそれぞれが回転軸に対して着脱可能に設けられているため、破損したブラケットや爪を容易に交換することができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記複数の爪のそれぞれは、前記回転軸に対して略直交する基部の両端部から前記回転軸の径方向に延びる基端延部と、前記基端延部の前記径方向の外側の端部から前記回転軸の回転方向とは逆方向に前記基端延部と90°以下の角度をなして延びる中間延部と、前記中間延部の前記径方向の外側の端部から前記回転軸の回転方向に前記回転軸の前記径方向の外側に前記中間延部と90°から180°の範囲の角度をなすように延びる先端部と、を備えることを特徴とする砕石整理器具である。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、前記爪の先端部が、砕石を下方から救い上げるように、或いは砕石の上部を撫でるように砕石に当接する。このような方向から先端部が砕石に当接することにより、砕石の移動に適した外力を砕石に加えることができる。
【0016】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記ブラケットに形成された溝と、前記溝に設置される前記爪の前記基部と前記基端延部との間には、前記基部と前記基端延部が、前記基部と前記基端延部のそれぞれの長さ方向に垂直な方向に移動可能な隙間が設けられていることを特徴とする砕石整理器具である。
【0017】
本発明の第5の態様によれば、爪の弾性による変形に加え、溝と爪の間にある隙間の分だけ爪が移動することによる変形により、砕石の移動に適した外力を砕石に加えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少人数で柔軟に実施することのできる、小規模の砕石の取出し作業や敷き詰め作業での使用に適した砕石整理器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係わる第1実施形態の砕石整理器具の概略斜視図である。
図2】本発明に係わる第1実施形態の砕石整理器具の正面断面図である。
図3】本発明に係わる第1実施形態の砕石整理器具の要部拡大図である。
図4】本発明に係わる第1実施形態の砕石整理器具の要部断面図である。
図5】本発明に係わる第1実施形態の砕石整理器具の爪ユニットの正面図である。
図6】本発明に係わる第1実施形態の砕石整理器具のブラケットの正面図である。
図7】本発明に係わる第1実施形態の砕石整理器具のブラケットの断面図である。
図8】本発明に係わる第1実施形態の砕石整理器具の爪の正面図である。
図9】本発明に係わる第2実施形態の砕石整理器具の正面断面図である。
図10】本発明に係わる第2実施形態の砕石整理器具の要部拡大図である。
図11】本発明に係わる第2実施形態の砕石整理器具の爪ユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る砕石整理器具Eを、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1から図7に示すように、砕石整理器具Eは、回転軸7の回転に伴って回転可能な爪2と、回転軸7を回転させる駆動手段Mと、駆動手段Mを収納し回転軸7を回転可能に保持するギアボックスGと、ギアボックスGに連結される把持部1と、を備える。
【0022】
砕石整理器具Eは、不図示の作業者が把持部1を把持し、砕石に対して回転している爪2を当接させることで砕石を移動させる装置である。図1において、爪2は、図1に示す矢印に沿って反時計回りに回転する。図5においては、爪2は時計回りに回転する。図1に示す砕石整理器具Eを砕石に当接させることで、反時計回りに回転する爪2により、砕石を図1に示す把持部1の下方に向かって連続的に移動させることができる。結果として、敷き詰められた砕石を掘削することができる。このような作業は、例えば枕木間の砕石を掻き出す際に適用される。
【0023】
把持部1は作業者が把持できる形状であれば良い。図1には把持部1が円筒状の場合を示すが、把持部1は円筒状に限られず、多角形状筒状であっても、楕円筒状であっても良い。
【0024】
把持部1は、ギアボックスGに連結される。連結方法は時に限定されないが、例えば不図示のボルトナットで締結する。
【0025】
ギアボックスGには、駆動手段Mと、回転軸7とが収容されている。図2に示す駆動手段Mは、図4に示す回転軸7を、中心軸Oを回転中心として回転させるモータである。ここで、駆動手段Mは、必ずしもモータである必要は無く、エンジンであっても良い。駆動手段Mがモータである場合のバッテリーと、駆動手段Mがエンジンである場合の燃料タンクは図示を省略するが、把持部1に設けられても良いし、砕石整理器具Eの外部に設けられて不図示の電源コードや燃料パイプを介して砕石整理器具Eのモータ或いはエンジンに接続されても良い。また、駆動手段Mの回転数を調節可能としても良い。
【0026】
回転軸7は、駆動手段Mにより、その中心軸Oを回転中心として回転させられる円柱状の部材である。回転軸7はギアボックスG内に設けられ、ボールベアリング等の公知の軸受部材によってギアボックスG内に回転可能に収容されている。また、回転軸7の外周面には後述のキー溝に嵌まるキーが設けられている。また、回転軸7の両端部は後述のように円筒状に形成されており、この円筒状の回転軸7の内周面にはネジ溝が形成されており、このネジ溝には後述の締結手段8が螺合可能である。
回転軸7の長さ方向の略中央部には、回転軸7に固定されたウォームホイールWWが設けられている。一方、駆動手段Mから出力される回転力は、駆動手段Mの出力軸と共に回転するウォームWを回転させる。さらに、図2に示すように、ウォームWとウォームホイールWWが噛み合っているため、ウォームWが回転するとウォームホイールWWが回転し、ウォームホイールWWの回転に伴い回転軸7が回転する。
図1図2に示すように、ギアボックスGには、ウォームホイールWWを収納する膨出部5と駆動手段Mが設けられる収納部6とが設けられている。
なお、回転軸7は円柱状の一部が四角柱となっていても良い。例えば、回転軸7と、後述のブラケット4、4’とブラケット蓋3a、3bとの相対的な周方向位置の移動を抑制するために、回転軸7にブラケット4、4’とブラケット蓋3a、3bを装着した状態で、ブラケット4、4’とブラケット蓋3a、3bが存在する回転軸7の長さ方向の部分(回転軸7の両端側)が四角柱に形成されていても良い。この場合、キー溝を設けなくとも、回転軸7と、ブラケット4、4’とブラケット蓋3a、3bとの相対的な周方向位置の移動を抑制することができる。
また、円柱状の回転軸7は、両端側が円筒状に形成されていても良い。これは、回転軸7の両端側に、後述の締結部材8(例えば皿ボルト)を締結できるようにするためである。この場合、回転軸7の両端側の円筒状の部分の内周には、締結部材8と螺合可能な雌ネジが形成されていても良い。なお、回転軸7の両端側が四角柱に形成されている場合も、四角柱部分に締結部材8を螺合可能な雌ネジが形成されていても良い。
【0027】
図4に示すように、回転軸7の外周には、円柱状のブラケット4、4’とブラケット蓋3、3a、3bの中心に設けられるとともに回転軸7が挿入可能な孔hに回転軸7が貫通されることで、複数個のブラケット4、4’とブラケット蓋3、3a、3bとが回転軸7の長さ方向に積層されるように設けられている。孔hにはキー溝が設けられているため、回転軸7のキーは、ブラケット4のキー溝に噛み合うことで、回転軸7の回転に伴ってブラケット4を回転させる。なお、円柱状の回転軸7のうち、回転軸7にブラケット4、4’とブラケット蓋3a、3bを装着した状態で、ブラケット4、4’とブラケット蓋3a、3bが存在する回転軸7の長さ方向の部分が四角柱に形成されている場合には、キー溝を設けなくとも良い。
【0028】
ブラケット4の正面図である図6に示すように、ブラケット4の片側の底面A1には、爪2が設置可能な溝gが設けられている。図6の例では、溝gは3個設けられている。溝gは、中心軸Oに対して点対称となるように設けられている。より具体的には、溝gは、中心軸Oに略直交するとともに孔hの直径よりも長い基部g1と、基部g1の両端から中心軸Oの径方向に延びる延部g2、g3とから構成されている。延部g2と延部g3とは互いに略60℃の角度をなすように設けられている。ここで、図7に示すように、中心軸Oに沿う方向にブラケット4を切った断面では、溝gの断面形状は、先端が半円形状であり、開口側が矩形状である。詳細は後述するが、溝gの長さ方向に垂直な溝gの幅(図7における溝gの上下方向の幅)は、溝gに設置される爪2の直径よりも大きい。
【0029】
図1、3、4の例では、中心軸Oに沿って延びる回転軸7において、ギアボックスGを中心として、ギアボックスGの片側(図1における手前側と奥側のそれぞれ)にブラケット4が3個づつ積層されている。より具体的には、ブラケット4が2個とブラケット4’が1個が積層されている。ここで、ブラケット4’はブラケット4の表裏を逆にして設置したブラケット4でありブラケット4’と表記する。図3に示されるように、最もギアボックスGに近いブラケット4’のギアボックスG側と、最もギアボックスGから遠いブラケット4のギアボックスGから遠い側とには、円盤状のブラケット蓋3がブラケット4’及びブラケット4とを被覆するように設けられている。図4に示されるように、ブラケット4’及びブラケット4に設けられている孔hに連通し、最小径が孔hよりも小径であり締結部材8を挿入可能なテーパ穴tがブラケット蓋3に設けられている。最もギアボックスGから遠いブラケット4よりも内側に設けられるブラケット4と、最もギアボックスGから遠いブラケット4との間には、ブラケット蓋3aが設けられている。最もギアボックスGに近いブラケット4’よりも外側に設けられるブラケット4と、最もギアボックスGに近いブラケット4’との間には、ブラケット蓋3bが設けられている。ブラケット蓋3とブラケット蓋3bの回転軸7の長さ方向の長さ(厚み)は略同一であるが、ブラケット蓋3aの回転軸7の長さ方向の長さ(厚み)は、ブラケット蓋3とブラケット蓋3bの回転軸7の長さ方向の長さ(厚み)の略3倍ある。このような構成によれば、回転軸7の長さ方向における爪2の間隔が略同一となる。そのため、爪2から砕石に加わる外力に偏りが生じることがなく、効率良く砕石を移動することができる。ブラケット蓋3とブラケット蓋3bは同一の部材であっても良い。
【0030】
爪2は、ブラケット4及びブラケット4’に設けられた溝gに設置され、爪2が設置されたブラケット4及びブラケット4’を被覆するとともに回転軸7の長さ方向にブラケット4、4’に隣接するブラケット蓋3、3aとブラケット4、4’により挟持されて固定されている。
具体的には、図4に示すように、最もギアボックスGから遠いブラケット4のギアボックスGから遠い側に設けられたブラケット蓋3のテーパ穴tから締結部材8(皿ボルト)を回転軸7の内周に挿入して回転軸7の内周面に形成された雌ネジのネジ溝に螺合させることで、互いに隣り合うブラケット4’及びブラケット4とブラケット蓋3、3a、3bとを回転軸7の長さ方向に締め付け、強固に回転軸7に固定することができる。ここで、ギアボックスGに最も近いブラケット蓋3は、それ以上内側(ギアボックスGに近い側)に移動できないように、当該ブラケット蓋3よりも内側(ギアボックスGに近い側)の回転軸7の径が当該ブラケット蓋3に設けられる孔hの径より大きく形成されている。このように構成されているため、締結部材8を緩めて回転軸7から引き抜くことで、回転軸7からブラケット4’及びブラケット4と爪2とブラケット蓋3、3a、3bを取り出すことができる。このように、爪2と、ブラケット4’及びブラケット4と、ブラケット蓋3、3a、3bとは、回転軸7に着脱可能に設けられている。
【0031】
爪2は、図5に示すように、ブラケット4に設けられた溝g、或いはブラケット4’に設けられた溝gに設置されている。なお、図5においては、爪2は、時計回りに回転する。爪2は金属製であり弾性を有する。爪2の部材は、爪2が金属製であり弾性を有する限り特に限定されない。例えば、爪2は、直径約5mmであり断面が略円形状のばね鋼から形成されている。
【0032】
図5図8に示すように、爪2は、中心軸O又は回転軸7に対して略直交する基部2Bの両端部から中心軸O又は回転軸7の径方向に延びる基端延部21と、基端延部21の径方向外側の端部から回転軸7の回転方向とは逆方向に基端延部21と90°以下の角度をなして延びる中間延部22と、中間延部22の径方向外側の端部から中心軸O又は回転軸7の径方向外側に中間延部22と90°から180°の範囲の角度をなすように延びる先端部23と、を備える。中間延部22の長さは例えば約85mmである。
【0033】
爪2の基部2Bが溝gの基部g1に設置され、爪2の基端延部21が溝gの延部g2とg3とに設置される。
【0034】
図5に示すように、3組の爪2がブラケット4の3組の溝gに設けられる。ブラケット4に設けられた3組の爪2を爪ユニットと呼ぶ。即ち、爪ユニットは、図1に示すように、回転軸7の長さ方向に略等しい位置において回転軸7の回りに点対称に配置された複数の爪2により構成されている。
【0035】
図1に示すように、ギアボックスGを中心として、ギアボックスGの片側(図1における手前側と奥側のそれぞれ)に、爪ユニットが回転軸7の長さ方向に3個ずつ設けられている。
【0036】
上記のような構成を有する砕石整理器具Eによれば、締結部材8を緩めて孔hから引き抜くことで、回転軸7からブラケット4’及びブラケット4と爪2とブラケット蓋3、3a、3bを取り外すことができるので、使用に応じて変形または破損した爪2を容易に交換することができる。
また、溝gの幅は、溝gに設置される爪2の直径よりも大きい。そのため、ブラケット4’及びブラケット4に形成された溝gと、溝gに設置される爪2の基部2Bと基端延部21との間には、基部2Bと基端延部21が、基部2Bと基端延部21の長さ方向に垂直な方向に移動可能な隙間が設けられている。より具体的には、溝gの基部g1と、基部g1に設置される爪2の基部2Bとの間には、基部2Bの長さ方向に垂直な方向に基部2Bが移動可能な隙間が設けられている。また、溝gの延部g2とg3と、延部g2とg3とに設置される基端延部21との間には、基端延部21の長さ方向に垂直な方向に基端延部21が移動可能な隙間が設けられている。
【0037】
このような構成によれば、爪2が砕石に当接した際に、爪2の持つ弾性により、爪2が撓ることにより、砕石に対して適度な外力を加えることができる。さらに、爪2と溝gとの間に上記のような隙間が設けられているため、爪2自体の弾性による撓りに加えて、爪2が隙間との間で移動する分だけ、爪2が砕石に当接した際に、砕石に対して爪2が回転する方向とは逆方向に爪2が逃げることができる。より具体的には、爪2が砕石に当接した際に、砕石に対して爪2が回転する方向とは逆方向に、爪2が爪2の基部2Bと基端延部21との境目を中心として爪2の基端延部21が溝gの延部g2或いは延部g3の内周面に当接するまでの範囲で逃げることができる。そのため、砕石に対して更に適度な外力を加えることができる。
砕石は、強い力を加えると砕石同士が強固に固定される性質を有する。即ち、レール上を走行する車両からレールと枕木を介して砕石に重量が印加されると、砕石同士が強固に結びついて枕木を安定的に支持する。そのため、砕石を移動させる際には、強過ぎる力を印加することは砕石同士の強固な結び付きを誘発し不適切であり、強過ぎることの無い適度な外力を加える必要がある。
本実施形態の砕石整理器具Eによれば、砕石に対して適度な外力を加えることができる。そのため、少人数で柔軟に実施することのできる、小規模の砕石の取出し作業や敷き詰め作業での使用に適している。
また、本実施形態の砕石整理器具Eの爪2の形状によれば、爪2の先端部23が、砕石を下方から救い上げるように、或いは砕石の上部を撫でるように砕石に当接する。このような方向から先端部23が砕石に当接することにより、砕石の移動に適した外力を砕石に加えることができる。
【0038】
さらに、爪2が中間延部22の径方向外側の端部から中心軸O又は回転軸7の径方向外側に中間延部22と90°から180°の範囲の角度(以下、角度Aと呼ぶ)をなすように延びる先端部23と、を備えている。このため、爪2の先端部23が砕石に接触した際に、作用反作用の法則により、爪2の先端部23が砕石に外力Fを加えると同時に、砕石から爪2の先端部23に外力Fが加わる。この際、爪2の中間延部22の径方向外側の端部から中心軸O又は回転軸7の径方向外側に中間延部22と90°から180°の範囲の角度をなすように先端部23が延びているため、砕石から爪2の先端部23に加わる外力Fのうち、中間延部22を、中間延部22と基端延部21との境目を回転中心として回転させる力のモーメントに寄与する分力が、外力Fよりも小さくなる。即ち、先端部23を長辺として中間延部22と直交する辺と中間延部22と並行な辺とを備える不図示の仮想直角三角形において、先端部23の長さに相当する外力Fのうち、当該力のモーメントに寄与する分力が中間延部22と直交する辺の長さに分解されるため、爪2に加わる負荷を削減することができる。角度Aは、上記の通り90°から180°の範囲が好ましく、105°から160°の範囲がより好ましく、120°から135°の範囲がさらに好ましい。
また、基端延部21の径方向外側の端部から回転軸7の回転方向とは逆方向に基端延部21と90°以下の角度(以下、角度Bと呼ぶ)をなして中間延部22が伸びている。そのため、中間延部22を回転させる力のモーメントは、中間延部22の径方向内側の端部と基端延部21の径方向外側の端部とがなす角度を小さくする方向に作用する。爪2の持つ弾性は、中間延部22の回転による変形を適度に受け止め、適度に押し戻すため、結果として砕石の移動に適した外力を砕石に加えることができる。角度Bは、上記の通り90°以下の角度が好ましく、85°より小さい角度がより好ましく、80°より小さい角度がさらに好ましい。
ここで、図5に示されるように、爪2の基部2Bと基端延部21との境目、基端延部21と中間延部22との境目、中間延部22と先端部23との境目には、これらの境目に応力が集中しないようにアールが取られていても良い。
【0039】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係る砕石整理器具E’を、図面を参照しながら説明する。
第1実施形態の砕石整理器具Eと同様の構造には共通の参照番号を付し、その説明を省略し、第1実施形態と異なる点のみを説明する。
【0040】
図9は、本発明の第2実施形態に係る砕石整理器具E’の正面断面図である。第1実施形態の砕石整理器具Eでは、把持部1の長さ方向に略垂直に回転軸7が延びる構造を備えているのに対し、第2実施形態の砕石整理器具E’は、把持部1’が延びる方向と略平行に回転軸9が設けられている点で異なっている。
【0041】
より具体的には、把持部1’の先端側(図9の下方側、つまり爪2に近い側)に駆動手段Mが設けられている。駆動手段Mの先端側(図9の下方側、つまり爪2に近い側)に設けられる傘歯車UG1は把持部1’の長さ方向(中心軸)L1を回転中心として回転する。傘歯車UG1には、把持部の長さ方向L1と略平行の中心軸L2を回転中心として回転するとともにギアボックスG’に収納されるベベルギアBGが噛み合っている。ベベルギアBGは傘歯車UG1とは異なる傘歯車UG2に噛み合っている。傘歯車UG2が爪2を回転させる中心軸L3を回転中心とする回転軸9に連結されている。このような構造により、駆動手段Mの回転力が、回転軸9の回転力として伝達され、爪2を中心軸L3を回転中心として回転させる。
【0042】
図9の例では、回転軸9にブラケット4’及びブラケット4と2個のブラケット蓋3とが設けられ、3個の爪ユニットがこれらの間に挟持されている。挟持方法は、第1実施形態と同様に円筒状の回転軸9の内周面に形成されたネジ溝に、最も把持部1’から遠い側に設けられたブラケット蓋3の外側(図9の下方側、つまり砕石に近い側)から回転軸9の内周面に挿入された締結部材8を螺合することで挟持されている。ここで、図9の例では、最もギアボックスGから近いブラケット4’には、両側の底面Aと底面Bとに溝gが設けられており、自身よりもギアボックスGから遠い側に隣接するブラケット4よりも中心軸Oに沿って長い円筒形状となっている。
また、図9の例では、図11に示すように、基端延部21の径方向外側の端部から回転軸9の回転方向とは逆方向に基端延部21と略90°の角度をなして中間延部22が伸びており、中間延部22の径方向外側の端部から中心軸O又は回転軸9の径方向外側に中間延部22と略90°の角度をなすように先端部23が延びている。
【0043】
また、図9の左側から砕石整理器具E’を見た図10に示すように、中心軸L1に対して、中心軸L2とL3とが交差していても良い。
【0044】
このような第2実施形態の砕石整理器具E’によれば、回転する爪2が形成する回転面が水平面(地面)と略平行である。例えば第1実施形態の砕石整理器具Eを用いて枕木間の砕石を掘削してできた砕石の穴に第2実施形態の砕石整理器具E’を挿入し、穴に対して略垂直方向(地面に対して略平行)に砕石をさらに掘削することができる。こうすることで、主に枕木下の砕石を掻き出すことができる。
【0045】
このような第2実施形態の砕石整理器具E’の構成によれば、第1実施形態の砕石整理器具Eと同様の効果を奏する。即ち、爪2が砕石に当接した際に、爪2の持つ弾性により、爪2が撓ることにより、砕石に対して適度な外力を加えることができる。さらに、爪2と溝gとの間に隙間が設けられているため、爪2自体の弾性による撓りに加えて、爪2が隙間との間で移動する。そのため、爪2が砕石に当接した際に、砕石に対して爪2が回転する方向とは逆方向に爪2が逃げることができる。より具体的には、爪2が砕石に当接した際に、砕石に対して爪2が回転する方向とは逆方向に、爪2が爪2の基部2Bと基端延部21との境目を中心として爪2の基端延部21が溝gの延部g2或いは延部g3の内周面に当接するまでの範囲で逃げることができる。そのため、砕石に対して更に適度な外力を加えることができる。
砕石は、強い力を加えると砕石同士が強固に固定される性質を有する。即ち、レール上を走行する車両からレールと枕木を介して砕石に重量が印加されると、砕石同士が強固に結びついて枕木を安定的に支持する。そのため、砕石を移動させる際には、強過ぎる力を印加することは砕石同士の強固な結び付きを誘発し不適切であり、強過ぎることの無い適度な外力を加える必要がある。
本実施形態の砕石整理器具E’によれば、砕石に対して適度な外力を加えることができる。そのため、少人数で柔軟に実施することのできる、小規模の砕石の取出し作業や敷き詰め作業での使用に適している。
また、本実施形態の砕石整理器具E’の爪2の形状によれば、爪2の先端部23が、砕石を下方から救い上げるように、或いは砕石の上部を撫でるように砕石に当接する。このような方向から先端部23が砕石に当接することにより、砕石の移動に適した外力を砕石に加えることができる。
【0046】
以上、図面を参照しながら本発明の第1実施形態と第2実施形態とを説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0047】
例えば、爪2は1個のブラケット4に1個設けられていても良いし、1個のブラケット4に複数の爪2が設けられていても良い。即ち、1個のブラケット4に、爪2が2個設けられても良いし、4個以上設けられていても良い。
爪ユニット或いは爪2を備えるブラケット4は、ギアボックスGを中心として、ギアボックスGの片側(図1における手前側と奥側のそれぞれ)にブラケット4が3個積層されている場合に限定されず、1個のみでも良いし、2個以上の任意の数だけ積層されていても良い。積層されるブラケット4の数に合わせて、回転軸7の長さを延長しても良い。
締結部材8は皿ボルトに限定されず、ブラケット4とブラケット蓋3とを締結可能な公知のボルトであれば良い。
爪2は、直径約6mmの断面が略円形状のばね鋼から形成されているとしたが、これに限定されず、直径約5mmの断面が略円形状のばね鋼から形成されても良い。
図9の例では、最もギアボックスGから近いブラケット4’には、両側の底面Aと底面Bとに溝gが設けられているとしたが、最もギアボックスGから近いブラケットを片側の底面Aのみに溝gを設けたブラケット4としても良い。
ブラケット4の材料は、樹脂であっても例えばアルミのような金属であっても良い。
上記説明では、略直交や約6mm又は約5mm等と表記した記載がある。これは厳密に直交している必要は無く、また、厳密に6mmである必要は無いことを明示するためである。略直交とは、例えば、直角から±2~3°程度までを含み、約6mm、約5mmは、±0.25mm程度までを含んでも良い。また、中間延部22の長さは例えば約85mmであると述べたが、この例に限定されず、適宜設定して良い。
【符号の説明】
【0048】
1 把持部
2 爪
3、3a、3b ブラケット蓋
4、4’ ブラケット
7、9 回転軸
8 締結部材
E、E’砕石整理器具
G ギアボックス
O 中心軸
【要約】
【課題】少人数で柔軟に実施することのできる、小規模の砕石の取出し作業や敷き詰め作業での使用に適した砕石整理器具を提供する。
【解決手段】回転軸の回転に伴って回転可能な爪と、前記回転軸を回転させる駆動手段と、前記駆動手段を収納し前記回転軸を回転可能に保持するギアボックスと、前記ギアボックスに連結される把持部と、を備える砕石整理器具であって、前記爪が金属製かつ弾性を備えることを特徴とする砕石整理器具を提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11