(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】空中像形成装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/56 20200101AFI20241211BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20241211BHJP
H04N 13/302 20180101ALI20241211BHJP
G02B 5/08 20060101ALN20241211BHJP
【FI】
G02B30/56
G02B5/00 B
H04N13/302
G02B5/08 A
(21)【出願番号】P 2020139811
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-07-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、個人型研究(さきがけ)、研究領域「社会と調和した情報基盤技術の構築」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504133110
【氏名又は名称】国立大学法人電気通信大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】小泉 直也
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-060752(JP,A)
【文献】特開2017-156469(JP,A)
【文献】特開2012-014194(JP,A)
【文献】特開2019-040096(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043673(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0049640(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00-30/60
G02B 5/00-5/136
H04N 13/00-13/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦な基準面
に直交する一方向において前記基準面から離れて配置され
て前記基準面と前記一方向に対して傾斜した表示面を有し、前記表示面から前記基準面に向けて第1光を出射する表示部と、
前記
一方向において前記表示面よりも前記基準面に近く配置され、少なくとも一部が前記表示面から出射される第1光の照射領域内に配置され、前記基準面に対して
0°よりも大きく45°以下の第1の角度をなして傾斜し、入射する前記第1光を前記
一方向において前記基準面から離れる側に、且つ、前記基準面に平行な方向において前記表示部とは反対側に、前記表示部から遠ざかるにしたがって前記基準面から前記遠ざかるように反射させる第1反射面を有する反射部と、
前記
一方向において前記基準面から前記表示部に近づくように立てられ、前記第1反射面で反射された前記第1光の照射領域内に配置されている第1入射面を有し、前記第1入射面に対して第2の角度以下の入射角で入射する前記第1光を第2光として進行方向の前方に向けて出射し、前記第1入射面に対して前記第2の角度よりも大きい入射角で入射する前記第1光を遮蔽する第1選択部と、
前記
一方向において前記基準面から前記表示部に近づくように立てられ、前記第1選択部から出射される前記第2光の照射領域内で前記第1選択部に隣り合って配置されている第2入射面を有し、前記第2入射面に対して所定の入射方向から入射する前記第2光を第3光として出射し、前記第2入射面に対して所定の入射方向とは異なる入射方向から入射する前記第2光を遮蔽する第2選択部と、
を備える、
空中像形成装置。
【請求項2】
前記第1選択部は、
前記一方向に沿って立てられ、複数の反射材を有し、
前記複数の反射材は、前記
一方向で互いに間隔をあけて配置され、
前記反射材は、前記基準面に平行な方向に延び、
前記間隔と前記反射材の前記基準面に平行な方向での長さとの比率は前記第1の角度によって決められている、
請求項
1に記載の空中像形成装置。
【請求項3】
前記第2選択部は、
前記一方向に沿って立てられ、前記
一方向で互いに間隔をあけて配置された複数の遮光材を有し、
前記複数の遮光材は前記入射方向と平行に配置されている、
請求項
2に記載の空中像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バーチャルリアリティをはじめとする様々なアプリケーションで、空中像が活用されている。空中像は、光源から出射された光を光学素子等によって反射・屈折させ、空間の任意の位置に結像させた実像である。空中像を表示する位置にはスクリーンやディスプレイが配置されておらず、空中像を見る観察者は不思議な感覚を得る。
【0003】
例えば、非特許文献1には、テーブルの上面の反射を用いてテーブル上に空中像を表示する直立空中像ディスプレイが開示されている。非特許文献1に記載されている直立空中像ディスプレイでは、直立する空中像を結像させるためのハーフミラーがテーブルの上面に沿って配置される。非特許文献1に記載されている直立空中像ディスプレイは、既存の様々なテーブルに容易に設置可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】山本紘暉,梶田創,小泉直也,苗村健,EnchanTable:テーブル面の反射を用いた直立空中像ディスプレイ,日本バーチャルリアリティ学会論文誌,Vol.21,No.3,pp.401-410,2016.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1に記載されている直立空中像ディスプレイでは、空中像を表示するディスプレイがテーブルの上面より下側に配置されている。そのため、非特許文献1に記載されている直立空中像ディスプレイを用いて既存の床に直立する空中像を形成しようとすると、床を掘り下げる等して床下にディスプレイを配置しなければならず、実現が難しい。このように床に直立する空中像を形成する形態は一例であるが、従来の空中像形成装置では設置場所の自由度が低いという問題があった。また、観察者側が空中像の元画像を直接見ずに、空中像のみが視認される空中像形成装置が望まれていた。
【0006】
上述のように空中像のみが視認される空中像形成装置は、種々検討されている。空中像形成装置を設置する空間の状況は照明の設置場所や設置数、性能等によって様々であり、比較的明るい空間内や白を基調とした室内等でも良好に視認される明るい空中像の形成が望まれていた。
【0007】
本発明は、設置場所の自由度が高く、観察者側から表示部の表示内容が直接視認されずに明るい空中像を形成可能な空中像形成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空中像形成装置は、平坦な基準面に直交する一方向において前記基準面から離れて配置されて前記基準面と前記一方向に対して傾斜した表示面を有し、前記表示面から前記基準面に向けて第1光を出射する表示部と、前記一方向において前記表示面よりも前記基準面に近く配置され、少なくとも一部が前記表示面から出射される第1光の照射領域内に配置され、前記基準面に対して0°よりも大きく45°以下の第1の角度をなして傾斜し、入射する前記第1光を前記一方向において前記基準面から離れる側に、且つ、前記基準面に平行な方向において前記表示部とは反対側に、前記表示部から遠ざかるにしたがって前記基準面から前記遠ざかるように反射させる第1反射面を有する反射部と、前記一方向において前記基準面から前記表示部に近づくように立てられ、前記第1反射面で反射された前記第1光の照射領域内に配置されている第1入射面を有し、前記第1入射面に対して第2の角度以下の入射角で入射する前記第1光を第2光として進行方向の前方に向けて出射し、前記第1入射面に対して前記第2の角度よりも大きい入射角で入射する前記第1光を遮蔽する第1選択部と、前記一方向において前記基準面から前記表示部に近づくように立てられ、前記第1選択部から出射される前記第2光の照射領域内で前記第1選択部に隣り合って配置され、第2入射面を有し、前記第2入射面に対して所定の入射方向から入射する前記第2光を第3光として出射し、前記第2入射面に対して所定の入射方向とは異なる入射方向から入射する前記第2光を遮蔽する第2選択部と、を備える。
【0009】
本発明に係る空中像形成装置では、第1の角度は0°よりも大きく、45°以下であってもよい。
【0010】
本発明の空中像形成装置では、前記第1選択部は、前記一方向に沿って立てられ、複数の反射材を有し、前記複数の反射材は、前記一方向で互いに間隔をあけて配置され、前記反射材は、前記基準面に平行な方向に延び、前記間隔と前記反射材の前記基準面に平行な方向での長さとの比率は前記第1の角度によって決められてもよい。
【0011】
本発明の空中像形成装置では、前記第2選択部は、前記一方向に沿って立てられ、前記一方向で互いに間隔をあけて配置された複数の遮光材を有し、前記複数の遮光材は前記入射方向と平行に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、設置場所の自由度が高く、観察者側から表示部の表示内容が直接視認されずに明るい空中像を形成可能な空中像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る一実施形態の空中像形成装置の側面図である。
【
図2】
図1に示す空中像形成装置の第1選択部及び第2選択部の拡大側面図である。
【
図3】
図1に示す空中像形成装置の各構成における偏光方向及び像の向きを示す模式図である。
【
図4】
図1に示す空中像形成装置の各構成の配置条件を説明するための側面図である。
【
図5】
図1に示す空中像形成装置の各構成の配置条件を説明するための側面図である。
【
図6】
図1に示す空中像形成装置の各構成の配置条件を説明するための側面図である。
【
図7】
図1に示す空中像形成装置の各構成の配置条件を説明するための側面図である。
【
図8】
図1に示す空中像形成装置の各構成の配置条件を説明するための側面図である。
【
図9】
図1に示す空中像形成装置の各構成の配置条件を説明するための側面図である。
【
図10】
図1に示す空中像形成装置の各構成の配置条件を説明するための側面図である。
【
図11】
図1に示す空中像形成装置の各構成の配置条件を説明するための側面図である。
【
図12】
図1に示す空中像形成装置の各構成の配置条件を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る空中像形成装置の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1に示すように、本発明に係る一実施形態の空中像形成装置111は、少なくとも表示部120、反射部150、第1選択部140、第2選択部160を備える。空中像形成装置111は、例えば平坦な床面(基準面)101の上方に設けられている。以下では、床面101に直交し、床面101から上方へ離れる方向をz方向
(一方向)とする。
【0016】
表示部120は、空中像190の元画像を表示し、第1光L1を出射する表示面122を有する。以下では、z方向に直交し、且つ床面101に沿って表示部120から空中像190及び観察者に近づく方向をy方向とする。z方向及びy方向に直交する一方向をx方向とする。x、y、zの各方向の前方は、各方向の奥側を意味する。x、y、zの各方向の後方は、各方向の手前側を意味する。表示面122は、床面101よりもz方向の前方に配置され、例えばy方向の前方に進むにしたがってz方向の前方に移動するように配置され、x方向に沿って見ると床面101に対して傾斜している。表示部120は、例えば液晶ディスプレイで構成されている。
【0017】
反射部150は、床面101に対して所定の角度+θ1をなす第1反射面152を有する。以下では、y方向の前側から後側に向かって見たときに床面101及び床面101と平行な面に対してz方向の前方から交差する面又は光の進路がなす角度を正で表し、z方向の後方から交差する面又は光の進路がなす角度を負で表す。角度+θ1は、表示部120の表示面122から出射される第1光L1が入射し得る状態で第1反射面152が配置されたときに、床面101と第1反射面152とがなす角度である。角度+θ1は、反射部150に対する表示部120の相対位置、及び表示面122から出射する第1光L1の進行方向及び拡散角度等によって決まる。
【0018】
第1反射面152は、床面101よりもz方向の前方且つ表示面122よりもz方向の後方に配置されている。第1反射面152は、例えばy方向の前方に進むにしたがってz方向の後方に移動するように配置され、x方向に沿って見ると床面101に対して傾斜している。第1反射面152は、表示面122から出射される第1光L1をy方向の前方に向けて反射する。本明細書では、特筆しない限り、反射とは正反射あるいは鏡面反射を意味する。表示面122のy方向の前端及び後端は、第1反射面152のy方向の前端及び後端の間の領域内に位置している。
【0019】
反射部150は、例えばガラス基板上にアルミニウムがコーティングされたアルミニウム平面鏡で構成されている。その場合、第1反射面152は、ガラス基板の表面のうちアルミニウムがコーティングされている面に設けられ、アルミニウム層で構成されている。板状に形成されている反射部150は、第1反射面152が床面101に対して角度+θ1をなすように、不図示の支持部材によって支持されている。
【0020】
第1選択部140は、y方向(第1光の進行方向)において、第1反射部150よりも前方に設けられている。第1選択部140は、床面101に対して所定の角度範囲(第1の角度の範囲、以下の記載では、角度範囲±θR2と記載する場合がある)内で入射する第1光L1を第2光L2としてy方向の前方に向けて出射する。第1選択部140に角度範囲±θR2内で入射する第1光L1には、反射部150の第1反射面152で反射された第1光1-1と、第1反射面152に照射されずに表示部120から直接届く第1光1-2が含まれる。図面では、角度範囲±θR2内の角度を前述の定義に基づいて、+θ2、-θ2と記載する場合がある。
【0021】
角度+θ1は、第1反射面152が第1光L1を受光し且つ第1光L1-1を第1選択部140に角度範囲±θR2で入射させることが可能であるように、適宜設定されている。角度+θ1は、0°以上90°未満の任意の角度であるが、表示部120と反射部150との相対位置の決めやすさの観点から、0°よりも大きく、45°以下であることが好ましい。角度+θ1が0°よりも大きいことによって、y方向において表示面122を第1反射面152の後端よりも前方に配置できるため、空中像形成装置111の省スペース化を図ることができる。
【0022】
第1選択部140は、床面101に対して角度範囲±θR2外で入射する第1光L1及び外光を遮蔽する。第1選択部140は、入射角度によって第1光L1の少なくとも一部のみを選択的にy方向の前方に出射させる。
【0023】
第1選択部140は、例えばz方向に互いに間隔Z1をあけて配置された複数の反射板(反射材)142を備える。反射板142は、床面101と略平行に配置され、床面101と略平行な方向(
図1、2ではy方向)に延びている。反射板142のz方向の前方の表面は、第2反射面143-1を構成する。反射板142のz方向の後方の表面は、第2反射面143-2を構成する。複数の反射板142のy方向の後端を連結する面は、第1選択部140の入射面144を構成する。複数の反射板142のy方向の前端を連結する面は、第1選択部140の出射面145を構成する。第1選択部140は、例えば反射板142としてマイクロミラー(反射材)を有するマイクロミラーアレイプレート(micro-mirror array plate:MMAP)で構成されている。
【0024】
反射板142のy方向での長さ(大きさ)をZ2とすると、間隔Z1と長さZ2との比率は、後述するように角度範囲±θR2によって求められる。間隔Z1と長さZ2との比率は、反射板142に対して角度範囲±θR2内で入射する光L1-1、L1-2をy方向の前方へ反射させるように適宜決められている。
【0025】
第2選択部160は、y方向において、第1選択部140よりも前方に設けられ、第1選択部140と隣り合っている。第2選択部160は、第1選択部140の第2反射面143-2、143-1で反射された第2光L2-1、L2-2のうち、z方向の後側から前側に向かって斜め方向(所定の入射方向)から入射する第2光L2-1を第3光L3としてy方向の前方に出射する。第2光2-1は、y方向に進むに従ってz方向の前方に移動する進路を有し、第1光のうち第1光1-1に起因する。第2選択部160は、第3光L3を床面101に対して所定の角度θ3で出射し、y方向の前方で結像させる。y方向の前方で結像した第3光L3によって、空中像190が形成される。
【0026】
第2選択部160は、例えばz方向に間隔Z3をあけて配置された複数の遮光板(遮光材)162を有する。複数の遮光板162は、互いに略平行に配置されている。遮光板162は、床面101に対して角度+θ3をなし、y方向の前方に進むにしたがってz方向の後方に移動するように傾斜している。遮光板162のz方向の前方の表面は、遮光面163-1を構成する。遮光板162のz方向の後方の表面は、遮光面163-2を構成する。複数の遮光板162のy方向の後端を連結する面は、第2選択部160の入射面164を構成する。複数の遮光板162のy方向の前端を連結する面は、第2選択部160の出射面165を構成する。
【0027】
第2選択部160は、間隔Z3及び角度+θ3に基づく正の角度範囲(第2の角度の範囲、以下の記載では、角度範囲+θR3と記載する場合がある)内で入射する第2光L2を第3光L3としてy方向の前方に向けて出射する。角度範囲+θR3は、第2光L2-1の少なくとも一部が第3光L3として出射されるように、適宜設定されている。第2選択部160は、例えば遮光板162として黒色シリコーンゴム部材を有するルーバーフィルム(louver film:LF)で構成されている。迷光が発生するのを抑える観点から、第2選択部160には上述のように構成されたLFが用いられることが好ましい。黒色シリコーンゴム部材は、遮光板162の少なくともz方向の後側の表面に設けられ、遮光板162の両面に設けられていることが好ましい。
【0028】
y方向で第2選択部160よりも前方の床面101は、第3光L3を反射する。ここで、第3光L3を反射するとは、第3光を略100%の反射率で反射することに限定されず、観察者が視認可能な空中像190を形成可能な程度に第3光L3の少なくとも一部を反射することを意味する。y方向で少なくとも第2選択部160よりも前方の床面101は、例えば大理石の床面や光沢が出るようにコーティングされた床面で構成されている。
【0029】
上述の各構成を備える空中像形成装置111では、表示部120の表示面122から第1光L1が出射されると、第1光L1の少なくとも一部が反射部150の第1反射面152で反射される。第1反射面152で反射される第1光L1は、表示部120の虚像180から出射される光L4としてふるまう。虚像180は、表示面122で表示される画像を第1反射面152を中心としてz方向及びx方向で反転させた位置に形成される。
【0030】
図1及び
図2に示すように、第1選択部140の入射面144には、光L4を含む第1光L1-1と第1光L1-2との両方が入射し得る。但し、第1光L1-1、L1-2のうち、入射面144に対して略90°をなして入射する第1光L1-3や入射面144に対して略水平に入射する第1光L1-4は、入射面144よりもy方向の前方に進行し難い。例えば、第1光L1-3、L1-4は、第2反射面143-1、143-2のy方向の後端部によって広く拡散され、入射面144よりもy方向の前方に殆ど進行しない。空中像190の形成に寄与しない外光のうち、床面101に対して角度範囲±θR2外の角度で入射面144に入射する光は、第1選択部140によって、入射面144で略遮蔽される。
【0031】
第1光L1-1の床面101及び反射板142に対する入射角度のうち最も浅い角度を-θ2Sとし、最も深い角度を-θ2Dとする。間隔Z1と長さZ2との比率(Z1/Z2)は、|-θ2S|≦tan(Z1/Z2)≦|-θ2D|を満たし、角度範囲-θ2S~-θ2Dの少なくとも一部の第1光L1-1が第2光L2-1としてy方向の前方に出射されるように設定されている。比率(Z1/Z2)は、角度範囲-θ2S~-θ2Dの大部分の第1光L1-1が第2光L2-1としてy方向の前方に出射されるように設定されていることが好ましい。
【0032】
第1光L1-1、L1-2は、第2反射面143-2、143-1で反射され、第2光L2-1、L2-2としてy方向の前方に進行する。第2光L2-1、L2-2は、床面101に対して角度+θ2、-θ2をなす方向に沿って進行し、第1選択部140の出射面145から出射すると共に入射面164から第2選択部160に入射する。
【0033】
第2選択部160の入射面164に対してy方向の後方から見てz方向の後方から角度範囲+θR3内で入射する第2光L2-1は、y方向の前方に進むに従ってz方向の後方に移動し、床面101に近づく。第2光L2-1は、z方向で隣り合う2枚の遮光板162の間の空間166を進行する。角度範囲+θR3のうち床面101に対して最も浅い角度は、角度+θ3S=+θ3で表される。遮光板162のy方向での長さ(大きさ)をZ4とすると、角度範囲+θR3のうち床面101に対して最も深い角度は、角度+θ3D=+tan{(Z3+Z4×tan(+θ3))/Z4}で表される。入射面164に対してy方向の後方から見てz方向の後方から角度範囲+θR3外で入射する第2光L2-1については、遮光面163-1、163-2の何れかに照射され、拡散又は吸光され、出射面165から殆ど出射されない。入射面164に対してy方向の後方から見てz方向の前方から入射する第2光2-2は、遮光面163-1、163-2の何れかに照射され、拡散又は吸光され、出射面165から殆ど出射されない。
【0034】
上述のように、第1選択部140と第2選択部160との組み合わせによって、第1光L1-2及び第1光L1-2に起因する光、空中像190の形成に寄与しない外光は、第3光L3として出射面165よりもy方向の前方へ進行せずに、出射面165よりもy方向の後方で遮蔽される。間隔Z4及び角度+θ3は、角度範囲+θR3に角度範囲|±θR2|が含まれるように、角度+θ1、間隔Z1、Z2との上述の相対関係に基づいて設定されている。
【0035】
以上説明した空中像形成装置111は、表示部は120と、反射部150と、第1選択部140と、第2選択部160と、を備える。表示部は120、表示面122を有し、表示面122から第1光L1を出射する。反射部150は、第1反射面152を有する。第1反射面152は、床面101に対して角度θ2-1をなす第1光L1をy方向の前方に向けて反射させる。第1選択部140は、床面101に対して角度範囲±θR2内で入射する第1光L1-1の少なくとも一部を第2光L2-1としてy方向の前方に向けて出射する。一方、第1選択部140は、床面101に対して角度範囲±θR2外で入射する第1光L-1、L1-2を遮蔽する。角度範囲+θR2は、角度+θ1に基づき、角度|-θ2S|から角度|-θ2D|までの範囲内で設定されている。第2選択部160は、第1選択部140よりもy方向の前方に設けられ、y方向で第1選択部140と隣り合っている。第2選択部160は、第1選択部140から出射され且つ床面101に対して正の角度範囲+θR3内の角度をなす入射方向(所定の入射方向)から入射する第2光L2-1を第3光としてy方向の前方に出射する。第2選択部160は、第1選択部140から出射され且つ床面101に対して正の角度範囲+θR3外の角度をなす入射方向(所定の入射方向とは異なる入射方向)から入射する第2光L2-1を遮蔽する。表示部120と、反射部150と、第1選択部140と、第2選択部160とは、床面101よりもz方向の前方に配置されている。
【0036】
空中像形成装置111では、例えばy方向で第1選択部140と第2選択部160との間に偏光板等を配置する必要なく、反射部150よりもy方向の前方に偏光部材を配置しなくてもよい。空中像形成装置111によれば、第1光L1-1、L1-2及びこれらの第1光以外の外光等から第1選択部140による入射角度のフィルタリング及び第2選択部160による入射方向のフィルタリングによって第1光L1-1のみを第2選択部160よりもy方向の前方に出射させ、空中像190を形成する。したがって、空中像形成装置111によれば、空中像190の形成に寄与する第1光L1-1の減衰を抑えて空中像190を形成し、表示部120の表示面122から出射されて反射部150の第1反射面152で反射しない直接光である第1光L1-2を遮蔽できる。このことによって、空中像形成装置111によれば、観察者側から表示部120の表示内容が観察者に直接視認されず、明るい空中像190を形成できる。
【0037】
空中像形成装置111では、表示部120、反射部150、第1選択部140及び第2選択部160が床面101に対してz方向の前方(基準面に対して同じ側)に設けられている。このことによって、例えば、空中像形成装置111を筐体内に配置する等、可搬容易な形で容易に形成できる。例えば、光沢を有する大理石等で形成された床面101を反射面として空中像形成装置111を床面101に置くだけで空中像190を表示できる。床面101が光沢を有する大理石等で形成されていなくても、第2選択部160よりもy方向の前方の床面101が第3光L3を反射可能であることによって、空中像190を簡易に表示できる。このことによって、空中像形成装置111によれば、設置場所の自由度を高めることができる。
【0038】
空中像形成装置111では、角度+θ1は0°よりも大きく、45°以下である。このことによって、空中像形成装置111によれば、表示部120を反射部150よりもy方向の前方に配置し易く、全体の省スペース化を図ることができる。
【0039】
空中像形成装置111では、第1選択部140は、反射部150よりもy方向の前方に配置され、複数の反射板142を有する。複数の反射板142は、y方向で互いに間隔Z2をあけて配置されている。各々の反射板142は、y方向に延びている。反射板142同士のz方向の間隔Z1と反射板142のy方向の長さZ2との比率は、角度範囲±θR2によって決められている。間隔Z1と長さZ2との比率は、第1選択部140の入射面144に向けて床面101に対する角度-θ2S~-θ2Dで入射する第1光L1-1をy方向の前方へ出射するように、適宜設定されている。空中像形成装置111によれば、角度+θ1及び角度範囲±θR2に応じて、間隔Z1と長さZ2との比率を求め、第1選択部140に入射する光から床面101に対して角度範囲±θR2をなす第1光L1-1、L1-2を選択し、y方向の前方に出射させることができる。
【0040】
空中像形成装置111では、第2選択部160は、反射部150よりもy方向の前方に配置され、y方向で第1選択部と隣り合う。第2選択部160は、複数の遮光板162を有する。複数の遮光板162は、y方向で互いに間隔Z3をあけて配置されている。各々の遮光板162は、床面101に対してy方向の前方に進むに従ってz方向の後方に移動する方向(所定の入射方向)に傾斜して配置されている。空中像形成装置111によれば、床面101に対して第1光1-1に起因する第2光2-1の第2選択部への入射方向と同じ方向に傾斜する複数の遮光板162によって第2光L2-1を選択し、y方向の前方に出射させることができる。
【0041】
(表示部、反射部、第1選択部、第2選択部の配置の条件)
以下、本発明に係る上述の実施形態の空中像形成装置111の構成に基づき、表示部120、反射部150、第1選択部140、第2選択部160の配置の好適な条件、変形例等について説明する。以下の説明において、空中像形成装置111と共通の構成要素には、空中像形成装置111と同一の符号を付し、その詳しい説明を省略する。
【0042】
上述の空中像形成装置111では、第2選択部160は、第1選択部140よりもy方向の先方に配置されているが、例えば第1選択部140よりもy方向の後方に配置されてもよい。そのような配置の場合、第2選択部160は、床面101に対する角度-θ2S~-θ2Dで入射する第1光L1-1の少なくとも一部を入射させ、空間166を通過させ、y方向の前方に出射するように構成される。第2選択部160が例えばz方向に間隔Z3をあけて配置された複数の遮光板162を有する場合には、遮光板162は、床面101に対して角度+θ3をなし、y方向の前方に進むにしたがってz方向の前方に移動するように傾斜している。第1光1-2は、遮光板162の遮光面163-1によって遮蔽される。
【0043】
上述のように第2選択部160が第1選択部140よりもy方向の後方に配置されている場合は、第1選択部140は、第2選択部160から出射された光L1-1を入射させ、反射することによって床面101及び反射板142に対する傾斜方向を反転させ、y方向の前方及び床面101に対して出射する。
【0044】
以下の説明では、特筆しない限り、x方向から見たときの角度及び相対位置を意味する。
図3に示すように、反射部150の第1反射面152のy方向の後端をQ1とし、後端Q1を通って床面101に直交する仮想線をV1とする。床面101に対する表示部120の表示面122に表示される画像170の傾きa122は、tan(θ´)で表される。仮想線V1に対する第1反射面152の傾きc152は、tan(θ)で表される。
【0045】
画像170の長さ(即ち、大きさ)をDとする。第1反射面152のy方向の前端をQ2とすると、前端Q2は、床面101に接している。第1選択部140のz方向の後端を原点ORとしてx方向、y方向、z方向をそれぞれx軸、y軸、z軸に当てはめると、空中像190のz方向の前端P0の座標は(yP0,zP0)と表され、空中像190のz方向の後端P1の座標は(yP1,zP1)と表される。表示面122から出射されて第1選択部140に入射する第1光L1-2が仮に遮蔽されずに第1選択部140よりもy方向の前方に出射されて結像すると、空中像195が直接形成される。空中像195のz方向の前端P2の座標は(yP2,zP2)と表され、空中像195のz方向の後端P3の座標は(yP3,zP3)と表される。虚像180のz方向の前端P5の座標は(yP5,zP5)と表され、虚像180のz方向の後端P4の座標は(yP4,zP4)と表される。虚像180の前端P5は、床面101に接している。画像170のz方向の前端P7の座標は(yP7,zP7)と表され、画像170のz方向の後端P6の座標は(yP6,zP6)と表される。画像170の床面101に対する虚像185のz方向の前端P8の座標は(yP8,zP8)と表され、虚像185のz方向の後端P9の座標は(yP9,zP9)と表される。
【0046】
ここで、空中像190を結像する第3線L3の床面101に対する最大反射角度をφMAX、最小反射角度をφMINとする。第2選択部160(不図示)は、前述の変形例で説明したように第1選択部140よりもy方向の後方に配置し、遮光板162の床面101に対する角度をφLとする。第2選択部160によってy方向で遮蔽すべき第1光L1-2の最大入射角度をφVCFとする。なお、各々の角度は絶対値で表されているとみなされ、符号については適宜判断されてよい。第1選択部140を構成するMMAPのz方向の後端の座標値をRMINとし、MMAPのz方向の前端の座標値をRMAXとする。
【0047】
zP7<xP7×tan(θMAX)である場合は、空中像195が第1選択部140で遮蔽される。遮蔽すべき第1光L1-2の入射角度φVCFは、角度φL及び第1選択部140の最大反射角度φMAX及び最小反射角度φMINを用いて、φMIN-φL≦φVCF≦90deg.-φLと表される。このとき、最大反射角度φMAXは、(空中像195の前端P2)→(原点OR)→(MMAPのz方向の後端)を矢印の順に接続する線で形成される狭角である。第2選択部160としてのLFの必要な長さLL、即ちz方向の大きさは、原点ORと点P2とを結ぶ直線P20で表される。
【0048】
zP7<(xP7/tan(θMAX))である場合は、空中像195は結像しない。第2選択部160を構成するLFのz方向の前端の座標値をLとし、(φMIN-φL)で表される狭角をφLLyすると、第1光L1-2の入射角度は、90deg.-φLLy<φVCF<(90deg.-φL)である。画像170の後端P6と前端P7とを結ぶ直線とz軸との交点をLMAXとすると、LFの必要な長さは、原点ORと交点LMAXとを結ぶ直線で表される。
【0049】
RMIN>zP7である場合は、MMAPの範囲をMMAPのz方向の前方に限定することによって、空中像195の形成を防止できる。一方、RMIN<zP7である場合は、表示部120から出射された第1光L1-2が空中像195を形成する。第1光L1-1による空中像195の形成を防止するためには、最大反射角度φMAXから、点P7と原点ORとを結ぶ直線及び点P7を通ってz軸と垂直に交わる線で形成される狭角φLLz以上で、第1選択部140の入射面144に対して垂直に交わる角度(φLLz+90deg.-φMAX)までの第1光L1-2を遮蔽することが好ましい。
【0050】
第1反射面152の後端Q1の座標を(yQ1,zQ1)とすると、画像170に沿う直線S1に関して、zQ1=ayQ1+bが成り立つ。第1反射面152に沿う直線S2に関して、zQ1=-cyQ1+dが成り立つ。a,b,c,dは、それぞれ所定の係数である。前述の2つの式から、第1反射面152の後端Q1の座標は、((d-b)/(a+c),(ad+bc)/(a+c))である。
【0051】
虚像180の前端P5は、第1反射面152の後端Q1を通ってz軸に平行な仮想線と床面101即ちy軸との交点に位置する。虚像180の前端P5の座標は、((d-b)/(a+c),0)と表される。画像170の後端P6は、直線S2を中心として虚像180の前端P5と対称な位置にある。虚像180の前端P5と画像170の後端P6との中点の座標は、((yP6+yP5)/2,(zP6+zP5)/2)で表される。虚像180の前端P5と画像170の後端P6とを通る直線S3は直線S2に直交する。互いに直交する2つの直線S2、S3の傾きの積は-1であり、次に示す(1)式が成り立つ。
【0052】
【0053】
虚像180の前端P5の座標(yP5,zP5)は、次に示す(2)式のように表される。
【0054】
【0055】
虚像180の後端P4は、前端P5からz軸に沿って負の方向(即ち、z方向の後方)に画像170の長さDだけ移動した位置にある。虚像180の後端P4の座標(yP4,zP4)は、((d-b)/(a+c),-D)と表される。
【0056】
画像170の後端P6は、第1反射面152の後端Q1から直線S1に沿って、第1反射面152の後端Q1と虚像180の前端P5との離間距離分だけz軸に沿って正の方向に移動した位置にある。a=tanθ´とすると、y軸での画像170の後端P6と第1反射面152の後端Q1との離間距離は、zQ1cosθ´と表される。画像170の後端P6の座標(yP6,zP6)は、次に示す(3)式のように表される。
【0057】
【0058】
画像170の前端P7は、画像170の後端P6から直線S1に沿って、画像170の長さDだけz軸に沿って正の方向に移動した位置にある。y軸での画像170の前端P7と後端P6との離間距離は、Dcosθ´と表される。画像170の前端P7の座標(yP7,zP7)は、次に示す(4)式のように表される。
【0059】
【0060】
空中像190の後端P1は、第1選択部140のy方向の中心線即ちz軸を中心として虚像180の前端P5と対称に位置する。yP1=-yP5であり、空中像190の後端P1の座標(yP1,zP1)は、(-(d-b)/(a+c),0)と表される。空中像190の前端P0は、後端P1から画像170の長さDだけz軸に沿って正の方向に移動した位置にある。空中像190の前端P0の座標(yP0,zP0)は、(-(d-b)/(a+c),D)と表される。
【0061】
空中像195の前端P2は、z軸を中心として画像170の前端P7と対称に位置する。yP2=-yP7であり、zP2=zP7である。空中像195の前端P2の座標(yP2,zP2)は、次に示す(5)式のように表される。
【0062】
【0063】
空中像195の後端P3は、z軸を中心として画像170の後端P6と対称に位置する。yP3=-yP6であり、zP3=zP6である。空中像195の後端P3の座標は(yP3,zP3)は、次に示す(6)式のように表される。
【0064】
【0065】
第1反射面152の前端Q2は、直線S2とz=0即ちy軸との交点である。0=-cyQ2+dであるから、第1反射面152の前端Q2の座標(yQ2,zQ2)は、(d/c,0)と表される。
【0066】
虚像185の前端P8は、y軸を中心として画像170の後端P6と対称に位置する。yP8=yP6であり、zP8=-zP6である。虚像185の前端P8の座標(yP8,zP8)は、次に示す(7)式のように表される。
【0067】
【0068】
次に、上述の各点、位置を移動させて表示部120、反射部150、第1選択部140、第2選択部160の相対配置を調整する際の条件等について説明する。先ず、第1反射面152の後端Q1を移動させる場合、虚像180及び表示面122の画像170の位置は一意に定まり、係数a、b、c、dが変化する。このとき、係数c、d及び角度θについて、以下の(8)式のように表される。
【0069】
【0070】
第1反射面152の前端Q2をy軸に沿って移動させる場合も、虚像180及び画像170の位置は一意に定まり、係数a、b、c、dが変化する。このとき、係数c、d及び角度θについて、上述の(8)式が成り立つ。傾き-tan(2θ)を有する直線は、直線S1に直交する。係数a、bについて、以下の(9)のように表される。
【0071】
【0072】
虚像180の前端P5をy軸に沿って移動させたい場合は、第1反射面152及び画像170の位置は一意に定まらず、第1反射面152及び画像170の何れか一方を固定し、他方の位置を検討できる。第1反射面152の位置を固定し、虚像180の前端P5をy軸に沿って移動させると、画像170の位置は一意に定まる。このとき、係数a、b、c、dのうち、係数bが変化し、b=zQ1-ayQ1=-cyP5+d-ayP5と表される。
【0073】
画像170の位置を固定し、虚像180の前端P5をy軸に沿って移動させると、第1反射面152の位置は一意に定まり、係数a、b、c、dが変化する。前述のように直線S3は直線S2に直交するため、次に示す(10)式が成り立つ。また、直線S2は、虚像180の前端P5と画像170の後端P6との中点を通るため、係数は、次に示す(11)式のように表される。
【0074】
【0075】
【0076】
係数aについては、前述の(9)式と同様に表される。また、直線S1は、画像170の後端P6を通り、係数bは、次に示す(12)式のように表される。
【0077】
【0078】
画像170の位置を移動させる場合、第1反射面152及び虚像180の位置は一意に定まり、係数a、b、c、dが変化する。係数a、b、c及び角度θ´については、次に示す(13)式のように表される。
【0079】
【0080】
画像170の後端P6の座標値yP6,zP6を用いて虚像180の前端P5の座標(yP5,zP5)を表すと、次に示す(14)式が成り立つ。
【0081】
【0082】
座標値yP5は常に0であるため、係数d及び画像170の長さDは、次に示す(15)式のように表される。
【0083】
【0084】
虚像180の後端P4をz軸と平行に移動させる場合、画像170の長さDが変化し、D=zP4である。
【0085】
次に、空中像形成装置111の視野範囲について検討する。
図4に示すように、第1選択部140は、z軸に沿ってy軸に直立している。第1選択部140によってy方向の前方へ出射されて結像する光線(即ち、第1光L1-1、第2光L2-1及び第3光L3)のz軸を基準とする第1選択部140への入射角度φの範囲を、φ
MIN<φ<φ
MAXとする。光線LR11は、虚像180の後端P4から床面101即ちy軸に対して第1選択部140に最も大きい入射角度φ
MAXで入射した後に、第1選択部140及び床面101で反射される。光線LR12は、虚像180の後端P4から床面101に対して第1選択部140に最も小さい入射角度φ
MINで入射した後に、第1選択部140及び床面101で反射される。光線LR13は、虚像180の前端P5から床面101に対して第1選択部140に最も大きい入射角度φ
MAXで入射した後に、第1選択部140及び床面101で反射される。光線LR14は、虚像180の前端P5から床面101に対して第1選択部140に最も小さいφ
MIN入射角度で入射した後に、第1選択部140及び床面101で反射される。
【0086】
空中像190の前端P0の見える範囲は、yP1<yの光線LR11、LR12で囲まれた範囲である。空中像190の後端P1の見える範囲は、yP1<yの光線LR13、LR14で囲まれた範囲である。したがって、空中像190が見えるのは、前述の2つの範囲を満たし、互いに重なる範囲であり、光線LR12、LR13及び光線LR12、LR13の交点Q3によって囲まれた範囲である。空中像190の前端P0と交点Q3(yQ3,zQ3)とを通る光線LR12は、z=arctan(φMAX)y+const.と表される。前述の傾きを表す式に空中像190の前端P0の座標(yP0,zP0)を代入して定数const.を書き直すと、z=arctan(φMAX)y+zP0-(yP0)arctan(φMAX)と表される。同様に、空中像190の後端P1と交点Q3とを通る光線LR13の傾きは、z=arctan(φMIN)y+zP0-(yP0)arctan(φMIN)と表される。光線LR12、LR13が交点Q3で交わることをふまえると、次に示す(16)式が成立する。
【0087】
【0088】
ここで、第1選択部140のz方向の前端のz座標値をMH、第1選択部140のz方向の後端のz座標値をMLと仮定する。虚像180の後端P4と第1選択部140の前端(0,MH)とを通って第1選択部140及び床面101で反射される光線をLR15とする。虚像180の後端P4と第1選択部140の後端(0,ML)とを通って第1選択部140及び床面101で反射される光線をLR16とする。虚像180の前端P5と第1選択部140の前端(0,MH)とを通って第1選択部140及び床面101で反射される光線をLR17とする。虚像180の前端P5と第1選択部140の後端(0,ML)とを通って第1選択部140及び床面101で反射される光線をLR18とする。z座標値MH、MLを仮定した場合、空中像190の前端P0の見える範囲は、yP1<yの光線LR15、LR16で囲まれた範囲である。空中像190の後端P1の見える範囲は、yP1<yの光線LR17、LR18で囲まれた範囲である。したがって、空中像190が見えるのは、前述の2つの範囲を満たし、互いに重なる範囲であり、光線LR16、LR17及び光線LR16、LR17の交点Q4(yQ4,zQ4)によって囲まれた範囲である。空中像190の前端P0と交点Q4とを通る光線LR16は、z=((ML-zP4)/yP4)y+const.と表される。前述の傾きを表す式に空中像190の前端P0の座標(yP0,zP0)を代入して定数const.を書き直すと、次に示す(17)式が成立する。
【0089】
【0090】
虚像180の後端P4のy座標値は、原点ORに対して空中像190の前端P0のy座標値と対称であるため、yP0=-yP4である。ゆえに、次に示す(18)式が成立する。
【0091】
【0092】
空中像190の後端P1と交点Q4とを通る光線LR17の傾きは(ML-zP5)/yP5であり、光線LR17は、z=((ML-zP5)/yP5)y+const.と表される。前述の傾きを表す式に空中像190の前端P0の座標(yP0,zP0)を代入して定数const.を書き直すと、次に示す(19)式が成立する。
【0093】
【0094】
虚像180の後端P4のy座標値は、原点ORに対して空中像190の前端P0のy座標値と対称であるため、yP0=-yP5である。ゆえに、次に示す(20)式が成立する。
【0095】
【0096】
ここで、光線LR11とz軸との交点のz座標値をRHとする。光線LR12とz軸との交点のz座標値をRMINとする。光線LR13とz軸との交点のz座標値をRMAXとする。光線LR14とz軸との交点のz座標値をRLとする。MH<RLであると、虚像180の前端P5から出射する光線LR13、LR14、LR17、LR18を第1選択部140で再帰透過させることができないため、MH>RLが成立する必要がある。同様に、ML>RHであると、虚像180の前端P4から出射する光線LR11、LR12、LR15、LR16を第1選択部140で再帰透過させることができないため、ML<RHが成立する必要がある。したがって、ML<RL<MHであり、ML<RH≦MHである。
【0097】
第1選択部140が有効に作用するために必要な大きさは、視野範囲をふまえ、以下のように場合分けされる。
[1]ML<RMINである場合
・光線LR12に、虚像180の後端P4から第1選択部140に最も大きい入射角度で入射する条件で、
z=arctan(φMIN)y+zP0-(yP0)arctan(φMIN)、
を用いる。
・光線LR14に、虚像180の前端P5から第1選択部140に最も大きい入射角度で入射する光線に関する式を用いる。
[2]RMIN≦ML<RLである場合
・光線LR12に、虚像180の後端P4から第1選択部140に最も大きい入射角度で入射する条件で前述の(20)式を用いる。
・光線LR14に、虚像180の前端P5から第1選択部140に最も大きい入射角度で入射する光線に関する式を用いる。
[3]RL≦ML<RHである場合
・光線LR12に、虚像180の後端P4から第1選択部140にz座標値RLで入射する条件で前述の(20)式を用いる。
・光線LR14に、虚像180の前端P5から第1選択部140にz座標値RLで入射する光線に関する式を用いる。
[4]RMAX<MHである場合
・光線LR11に、虚像180の後端P4から第1選択部140に最も小さい入射角度で入射する光線に関する式を用いる。
・光線LR13に、虚像180の前端P5から第1選択部140に最も小さい入射角度で入射する条件で
z=arctan(φMAX)y+zP0-(yP0)arctan(φMAX)、
を用いる。
[5]RH<MH≦RMAXである場合
・光線LR11に、虚像180の後端P4から第1選択部140に最も小さい入射角度で入射する光線に関する式を用いる。
・光線LR13に、虚像180の前端P5から第1選択部140にz座標値RHで入射する条件で前述の(18)式を用いる。
[6]RL<MH≦RHである場合
・光線LR11に、虚像180の後端P4から第1選択部140にz座標値RHで入射する光線に関する式を用いる。
・光線LR13に、虚像180の前端P5から第1選択部140にz座標値RHで入射する条件で前述の(18)式を用いる。
【0098】
次に、観察者から(即ち、y方向の後方から)空中像190が見える範囲に、別の光線が入射すると、その光線による像が見えてしまう。例えば、
図5に示す配置では、斜線の領域VRが視点200からの空中像190の見える範囲になるが、領域VRには虚像185のz方向の後部が重なっている。そのため、視点200から見る観察者には虚像185が見える。観察者に空中像190のみを視認させるためには、後端P9を含めて領域VRに含まれる虚像185から出射されて第1選択部140を透過する光線を空中像190が形成される位置よりもy方向の後方で遮蔽する必要がある。第1選択部140を構成するMMAP等の間隔Z1、Z2の比率及び不図示の第2選択部160の間隔Z3及び角度±θ3は、前述の光線を遮蔽できるように適宜調整される。
【0099】
第2選択部160を構成するLFを第1選択部140のy方向の後方に配置する場合、第2選択部160の役割は、虚像180からの光線が視点に向かって反射せずに直接届くことを妨げ、空中像195の結像を妨げることである。
図6に示すように、床面101に対するLFの遮光板162の角度θ3(絶対値)は、空中像195の前端P2の座標値に依存する。
図6に示すようにz方向の後端を原点ORに固定してLFをy方向の前方に傾斜させると、空中像190を生成する光線の光量がLFによって減衰するのを抑えることができる。LFを前述のように傾斜させることができる最大傾斜角度Φ
Lは、(空中像195の前端P2)→(原点OR)→座標(0,R
MAX)を矢印の順に接続する線で形成される狭角である。観察者の視点付近(
図6参照)から虚像180を直接視認させないための方法としては、例えばLFに遮光用の蓋等を取り付けて空中像195の前端P2からの光線を視野領域に通さないようにする方法と、LFの遮光板162のy方向の長さZ3を延ばす方法とが挙げられる。
【0100】
図7を参照するとわかるように、第2選択部160が空中像195の形成を妨げるために必要な角度は、虚像185を遮蔽する角度よりも大きい。
図7及び
図8に示すように、第2選択部160(不図示)を破線で示すようにy方向と平行に配置した場合をふまえると、第2選択部160が空中像195の形成を妨げるために必要な遮蔽角度φ
VCFは、最大傾斜角度Φ
Lと第1選択部140を構成するMMAP(不図示)の結像光線範囲φ
MIN2からφ
MAX2を用いて、(φ
MIN2-φ
L)≦φ
VCF≦(90deg.-φ
L)と表される。
【0101】
画像170の前端P7から出射される光線は、第1反射面152の前端Q2で反射した後に第1選択部140に入射する。z軸に近づく方向に傾斜する光線は、画像170の後端P6を出射し、第1選択部140の前端(座標(0,R
MAX))を通る進路をとる。
図9に示すように、第2選択部160のz方向の前端の座標を(0,L
L)とする。LFの(虚像180の後端P4)→座標(0,L
L)→座標(0,L
y)を矢印の順に接続する線で形成される狭角をA
Lすると、遮蔽角度φ
VCFについて、(90deg.-A
L)≦φ
VCF≦(90deg.-φ
L)が成立する。LFに沿うz方向の前方への延長線と画像170の前端P7及び後端P6を結ぶ直線の延長線との交点をX
Cとすると、LFに必要とされるz方向の長さは、原点ORと交点X
Cとを結ぶ直線の長さである。
【0102】
表示部120よりもy方向の前方には、不図示の視界制御フィルム(viewing control film:VCF)が設けられてもよい。
図10及び
図11に示すように、各光線の進路で囲まれる領域220は、画像170の前端P7から出射して原点ORを通り、且つ空中像190を形成し得る光線LR20を示す領域である。
図12に示すように、虚像180のz方向の後端P4と第1反射面152上の互いに離れた2点M1、M2とを結ぶ三角形251・画像170の前端P7と2点M1、M2の各々とを結ぶ三角形252の合同条件、及び互いに平行な直線同士の関係から、z軸に対してφ
MAX2以下の入射角度で入射する光線をy方向の前方に通過させることが好ましい。また、(画像170の後端P6)→(画像170の前端P7)→原点ORを矢印の順に接続する線で形成される狭角よりも大きく、第1選択部140の入射面144等に対して90deg.で交差するまでの光線が遮蔽されることが好ましい。
【0103】
さらに、第1選択部140の後端のz座標値が画像170の前端P7のz座標値と同一にすれば、第1選択部140がz方向において画像170よりも上方に配置され、空中像195の形成を妨げることができる。
図1に示すように第2選択部160がy方向で第1選択部140よりも前方に配置される場合は、LFに求められる条件をMMAPに適用し、空中像形成装置111の配置条件を決めることができる。
【0104】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の態様に限定されない。本発明は、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々変形及び変更可能である。
【0105】
例えば、表示部120は液晶ディスプレイ21に限定されず、表示面122から第1光L1を出射可能な光源や表示部材で構成されてもよい。反射部150は、ミラーに限定されず、第1光L1の少なくとも一部を第1光1-1として反射可能な部材で構成されてもよい。表示部120及び反射部150は、板状に形成されているものに限定されない。表示部120が表示面122を有していれば、表示部120の形状は自由に設定或いは変更可能であり、表示部120は空中像形成装置外の他の装置の一部と一体に形成されてもよい。同様に、反射部150が第1反射面152を有していれば、反射部150の形状は自由に設定或いは変更可能であり、反射部150は空中像形成装置外の他の装置の一部と一体に形成されてもよい。
【0106】
例えば、第1選択部140は、複数の反射板142としてマイクロミラーを有するMMAPに限定されず、床面101即ち基準面に対して角度範囲±θR2内で入射する第1光L1-1の少なくとも一部を第2光L2-1としてy方向の前方に向けて出射可能な再帰透過部材で構成されてもよい。例えば、第1選択部140は、Aerial Imaging Plate(AIP)、2面コーナーリフレクタアレイ(Dihedral Corner Reflector Array:DCRA)、パリティミラーで構成されてもよい。
【符号の説明】
【0107】
101 床面(基準面)
111 空中像形成装置
120 表示部
122 表示面
140 第1選択部
150 反射部
152 第1反射面
160 第2選択部
z 方向(第1光の進行方向)