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  • 特許-飲料水処理材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】飲料水処理材
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/68 20230101AFI20241211BHJP
   A23K 20/20 20160101ALI20241211BHJP
【FI】
C02F1/68 520B
A23K20/20
C02F1/68 510B
C02F1/68 530B
C02F1/68 520K
C02F1/68 520L
C02F1/68 520N
C02F1/68 520P
C02F1/68 540C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021007981
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112238
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】594033846
【氏名又は名称】株式会社マルカン
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100174827
【弁理士】
【氏名又は名称】治下 正志
(72)【発明者】
【氏名】松本 幸彦
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162182(JP,A)
【文献】国際公開第2011/158832(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3200546(JP,U)
【文献】特開2017-047342(JP,A)
【文献】特開2017-148018(JP,A)
【文献】特開2012-206105(JP,A)
【文献】特開2017-029046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/66- 1/68
C02F 1/42
C02F 1/28
A23K 10/00-40/35
A23K 50/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料水を処理する飲料水処理材であって、
金属マグネシウム及びシリカを含む多孔体とイオン交換樹脂とを備え
前記イオン交換樹脂の、前記シリカに対する質量比は、12~30倍であり、
前記多孔体と前記イオン交換樹脂とが混合されていることを特徴とする飲料水処理材。
【請求項2】
前記イオン交換樹脂の、前記多孔体に対する質量比は、8~20倍である請求項1に記載の飲料水処理材。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂の、前記金属マグネシウムに対する質量比は、32~80倍である請求項1又は請求項2に記載の飲料水処理材。
【請求項4】
前記イオン交換樹脂は、強酸性陽イオン交換樹脂である請求項1~のいずれか1項に記載の飲料水処理材。
【請求項5】
前記飲料水は、愛玩動物用飲料水である請求項1~のいずれか1項に記載の飲料水処理材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料水処理材、及び飲料水処理用フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
動物は、人に限らず、ペット(愛玩動物)等であっても、水分補給が必要である。この水分補給は、食事による水分補給だけではなく、水を直接摂取する飲水等でも行われる。この飲料水が、健康にも影響を与えうると考えられており、健康に良い飲料水が求められている。そして、水素を溶解させた水、いわゆる水素水が、健康に良い作用を奏するとして、人の飲料水として注目されている。
【0003】
水素水を製造する方法としては、例えば、水にマグネシウムを接触させて水素を発生させる方法等が挙げられる。この方法としては、例えば、特許文献1に記載の還元水生成剤を用いる方法等が挙げられる。特許文献1には、水に微溶解性である化学物質粉体と金属マグネシウム粉とが混合され、所要大きさに成形され、焼成されて、金属マグネシウム粉が前記化学物質粉体の焼成体中に分散して混入している還元水生成剤が記載されています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-255360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、前記還元水生成剤を処理水中に適宜投入することにより、長時間に亘り水素を発生させることができる旨が開示されている。
【0006】
また、上述したように、いわゆる水素水が健康に良いとして人が飲用することが検討されているが、ペット(愛玩動物)等の、人以外の動物の飲料水として用いることはあまり注目されてこなかった。
【0007】
水にマグネシウムを接触させて水素を発生させることによって、水素水を製造する方法で得られた水素水は、製造時に水の硬度が高まる傾向がある。すなわち、製造時に水に接触している前記マグネシウムを含む材料(例えば、特許文献1に記載の還元水生成剤等)から、マグネシウム等の硬水成分が水に溶出される。また、前記マグネシウムを含む材料に他の硬水成分(カルシウム等)を含む場合は、マグネシウムだけではなく、これらの他の硬水成分を含めて、硬水成分が水に溶出される。このような硬水成分の水への溶出により、得られた水の硬度が高まる傾向、いわゆる硬水になる傾向がある。
【0008】
一方で、飲料水としては、軟水が好まれる場合がある。また、飲用する水の硬度が高いと、尿路結石等の下部尿路疾患になる可能性が高まり、ペット、特に猫の場合は、その傾向が強いことが知られている。このことから、ペットの場合は、飲料水は軟水であることがより求められる。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされた発明であって、硬度の上昇を抑制しつつ、水素を含む飲料水を得ることができる飲料水処理材及び飲料水処理用フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。
【0011】
本発明の一態様に係る飲料水処理材は、飲料水を処理する飲料水処理材であって、金属マグネシウムを含む多孔体とイオン交換樹脂とを備えることを特徴とする飲料水処理材である。
【0012】
このような構成によれば、硬度の上昇を抑制しつつ、水素を含む飲料水を得ることができる飲料水処理材を提供することができる。
【0013】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0014】
前記飲料水処理材を飲料水に接触させて処理すると、まず、前記多孔体の表面及び表面近傍に存在する金属マグネシウムに前記飲料水が接触して水素を発生させることができると考えられる。
【0015】
また、前記多孔体は、内部に前記飲料水を浸入させることができる。この多孔体内部に浸入した飲料水が、前記多孔体の内部に存在する金属マグネシウムに接触することによっても水素を発生させることができると考えられる。このような多孔体の内部に浸入することによる水素発生の場合は、前記多孔体の表面及び表面近傍に存在する金属マグネシウムに前記飲料水が接触して水素を発生させる場合より遅延して、水素が発生することになると考えられる。
【0016】
さらに、前記多孔体は、前記飲料水に触れることにより、表面から徐々に溶解又は崩壊して、前記多孔体の表面及び表面近傍に金属マグネシウムが露出してくる場合もある。このような場合には、前記多孔体の表面及び表面近傍に露出してきた金属マグネシウムに前記飲料水が接触することによって、水素を発生させることができると考えられる。このような多孔体が徐々に溶解又は崩壊したことによって水素が発生する場合は、前記多孔体の表面及び表面近傍に存在する金属マグネシウムに前記飲料水が接触して水素を発生させる場合より遅延して、水素が発生することになると考えられる。また、前記飲料水処理材を、例えば、後述するような飲料水処理用フィルタに収容して用いる場合は、常時、水流に晒されているので、前記飲料水処理材に振動が加えられる。また、前記飲料水処理材を、例えば、ペットボトルに収容した場合は、ペットボトル内の飲料水を飲む際に、前記飲料水処理材に振動が加えられる。このように前記飲料水処理材に振動が加えられると、前記飲料水処理材に備えられる多孔体内に存在する空気が移動したり、放出されたりする。その際に、前記多孔体内への飲料水の浸透が進む。このような場合も、飲料水が多孔体の内部に浸入することによる水素が発生し、この水素発生は、前記多孔体の表面及び表面近傍に存在する金属マグネシウムに前記飲料水が接触して水素を発生させる場合より遅延することになると考えられる。
【0017】
また、このような多孔体が徐々に溶解又は崩壊する場合であっても、前記多孔体の内部に浸入した飲料水が、前記多孔体の内部に存在する金属マグネシウムにも接触して水素を発生させることができると考えられる。また、前記多孔体が溶解又は崩壊する前であれば、前記多孔体の内部に浸入した飲料水が、前記多孔体の内部に存在する金属マグネシウムに接触できない場合も考えられるが、このような、前記飲料水が触れることによる前記多孔体の溶解又は崩壊は、前記多孔体内部でも起こると考えられる。よって、前記多孔体の内部に存在して、初期には水素発生に利用されていなかった金属マグネシウムに、前記飲料水が触れることによって、水素が発生する場合も考えられる。このような場合は、前記多孔体の表面及び表面近傍に存在する金属マグネシウムに前記飲料水が接触して水素を発生させる場合より遅延して、水素が発生することになると考えられる。さらに、前記多孔体の内部に浸入することによって水素が発生する場合よりも遅延して、水素が発生することになる場合も考えられる。
【0018】
上記のように、水素が発生する時期が異なることから、水素を長期間にわたって発生させることができ、好適な水素水が得られると考えられる。
【0019】
また、前記飲料水処理材には、イオン交換樹脂も備えられるので、前記多孔体に含まれる金属マグネシウムが飲料水に溶解しても、前記イオン交換樹脂によるイオン交換により、飲料水における硬度の上昇を抑制できると考えられる。また、前記多孔体に、金属マグネシウム以外の、例えば、カルシウム等の硬水成分を含む場合であっても、前記多孔体が飲料水に徐々に溶解又は崩壊しても、前記イオン交換樹脂によるイオン交換により、飲料水における硬度の上昇を抑制できると考えられる。
【0020】
また、前記イオン交換樹脂は、イオン交換による硬度の低下に寄与させると、その硬度低下に作用する能力が徐々に低下されると考えられる。その一方で、金属マグネシウムによる水素発生も、上述したように、長期間にわたって行うことができるものの、前記多孔体の表面及び表面近傍に存在する金属マグネシウムによる水素発生量が多いため、初期の水素発生量が多いと考えられる。そうすると、飲料水の硬度の上昇も、前記多孔体の表面及び表面近傍に存在する金属マグネシウムによって、初期が多いと考えられる。すなわち、飲料水の硬度の上昇も、徐々に抑えられると考えられる。これらのことから、前記イオン交換樹脂の、イオン交換による硬度低下に作用する能力が低下しても、飲料水の硬度の上昇も、徐々に抑えられることから、硬度の上昇を、長期間にわたって抑制することができると考えられる。
【0021】
以上のことから、前記飲料水処理材は、硬度の上昇を抑制しつつ、水素を含む飲料水を得ることができると考えられる。
【0022】
また、前記飲料水処理材において、前記イオン交換樹脂の、前記多孔体に対する質量比は、8~20倍であることが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、硬度の上昇を抑制しつつ、水素をより含む飲料水を得ることができる。
【0024】
また、前記飲料水処理材において、前記イオン交換樹脂の、前記金属マグネシウムに対する質量比は、32~80倍であることが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、硬度の上昇を抑制しつつ、水素をより含む飲料水を得ることができる。
【0026】
また、前記飲料水処理材において、前記多孔体は、シリカを含み、前記イオン交換樹脂の、前記シリカに対する質量比は、12~30倍であることが好ましい。すなわち、前記多孔体にシリカを含む場合、前記イオン交換樹脂の、前記シリカに対する質量比は、12~30倍であることが好ましい。
【0027】
このような構成によれば、硬度の上昇を抑制しつつ、水素をより含む飲料水を得ることができる。
【0028】
また、前記飲料水処理材において、前記イオン交換樹脂は、強酸性陽イオン交換樹脂であることが好ましい。
【0029】
このような構成によれば、硬度の上昇をより抑制することができる。
【0030】
また、前記飲料水処理材において、前記飲料水は、ペット用飲料水であることが好ましい。
【0031】
ペット、特に猫の場合、飲料水が硬水であると、尿路結石等の下部尿路疾患にかかりやすくなるという問題が発生しやすい傾向がある。本態様に係る飲料水処理材で飲料水を処理することによって、硬度の上昇を抑制しつつ、水素をより含む飲料水が得られるので、ペット用飲料水としても好適である。
【0032】
また、前記飲料水処理材において、貯留部に貯留されている飲料水に接するように前記貯留部に設置することが好ましい。
【0033】
このような構成によれば、硬度の上昇を抑制しつつ、水素を含む飲料水を得ることができる。
【0034】
また、本発明の他の一態様に係る飲料水処理用フィルタは、飲料水を貯留する貯留タンクの上方に飲料水摂取部が設けられ、循環ポンプで前記貯留タンクに貯留される飲料水が前記飲料水摂取部に供給され、前記飲料水摂取部に供給された前記飲料水が前記飲料水摂取部から排出され前記貯留タンクに戻る飲料水供給装置における前記貯留タンク内に少なくとも一部が配置され、前記飲料水摂取部から排出された前記飲料水が前記貯留タンクに戻る際に通過する飲料水処理用フィルタであって、前記飲料水処理材を収容していることを特徴とする飲料水処理用フィルタである。
【0035】
このような構成によれば、硬度の上昇を抑制しつつ、水素を含む飲料水を得ることができる飲料水処理用フィルタを提供することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、硬度の上昇を抑制しつつ、水素を含む飲料水を得ることができる飲料水処理材及び飲料水処理用フィルタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、本発明の実施形態に係る飲料水処理材を備える飲料水供給装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0039】
本発明の一実施形態に係る飲料水処理材は、飲料水を処理する飲料水処理材である。前記飲料水処理材は、飲料水に接触させること、例えば、飲料水に浸漬させること等によって、前記飲料水を処理する。また、前記飲料水処理材は、金属マグネシウムを含む多孔体とイオン交換樹脂とを備える。
【0040】
前記金属マグネシウムは、飲料水と接触することによって、水素を発生する。前記金属マグネシウムは、前記多孔体を構成する成分であって、前記多孔体中に含まれる。前記金属マグネシウムは、前記多孔体中に分散して存在することが好ましい。また、前記多孔体には、金属マグネシウムだけではなく、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、及び炭酸マグネシウム等が含んでいてもよい。金属マグネシウムは、下記式(1)のような、飲料水との反応等によって、水素が発生すると考えられる。
【0041】
Mg+2HO→Mg(OH)+H (1)
前記金属マグネシウムは、例えば、粒子状や粉末状であることが好ましい。前記金属マグネシウムの粒子径は、前記金属マグネシウムが前記多孔体中に分散して存在することができれば、特に限定されない。前記金属マグネシウムの粒子径としては、例えば、体積平均粒子径で、0.5~5μmであることが好ましく、0.8~2μmであることがより好ましい。前記金属マグネシウムが大きすぎると、前記飲料水に接触できる前記金属マグネシウムの面積が相対的に小さくなり、前記金属マグネシウムによる水素発生量が少なくなる傾向がある。また、前記金属マグネシウムが小さくてもよいが、前記金属マグネシウムの粒子径を小さくすることには限界がある。また、前記金属マグネシウムが小さすぎると、前記多孔体から脱落しやすくなる傾向もある。これらのことから、前記金属マグネシウムの粒子径が、上記範囲内であると、前記金属マグネシウムによる水素発生量が好適になり、好適な飲料水処理材が得られる。
【0042】
前記多孔体は、金属マグネシウムを含む多孔体であれば、特に限定されない。前記多孔体としては、具体的に、金属マグネシウムを含む、多孔質な無機質材等が挙げられる。前記多孔質な無機質材としては、シリカを含むセラミック等が挙げられ、シリカからなるセラミックであってもよい。前記多孔体としては、より具体的には、金属マグネシウムとシリカを含む多孔体等が挙げられ、シリカを含むセラミックに、金属マグネシウムを含む多孔体であってもよい。また、前記多孔体における前記金属マグネシウム以外の成分としては、例えば、シリカだけではなく、酸化亜鉛や酸化カルシウム等が挙げられる。また、前記多孔体の他の具体例としては、火山岩を焼成して得られた焼結体等が挙げられる。また、前記無機質材としては、珪藻土、パーライト、ゼオライト、バーミキュライト、焼結した火山灰土、粉砕した麦飯石、粉砕したウラストナイト、及び粉砕したアノーサイト等が挙げられる。前記多孔体としては、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。前記多孔体としては、例えば、水と接触することで水素を発生させることができる金属マグネシウムが内部に分散して存在し、内部に水を浸入させることができる多孔質な材料からなるもの等が挙げられる。また、前記多孔体としては、振動が加えられると、内部に存在する空気が移動したり、放出されたりすることにより、内部への飲料水の浸透が進みやすいい多孔体であることが好ましい。また、前記多孔体としては、水に接触させることによって、表面から徐々に溶解又は崩壊される多孔体であることが好ましい。そうすることによって、前記飲料水処理材を前記飲料水に接触させることによって、前記多孔体に含まれる金属マグネシウムが徐々に露出される。そうすることによって、金属マグネシウムから、長期間にわたって水素が発生されることになると考えられる。
【0043】
前記金属マグネシウムの含有量は、特に限定されず、前記金属マグネシウムに飲料水に接触させることによって、水素を発生させることができる量であることが好ましい。前記金属マグネシウムの含有量としては、例えば、前記多孔体100質量部に対して、20~40質量部であることが好ましく、25~30質量部であることがより好ましい。また、前記多孔体における前記金属マグネシウム以外の成分の含有量は、例えば、前記多孔体100質量部に対して、60~80質量部であることが好ましく、70~75質量部であることがより好ましい。前記金属マグネシウム以外の成分として、シリカを含んでいてもよいが、飲料水の硬度を低くするためには、含まれていないほうが好ましい。一方で、前記多孔体には、シリカが含まれていることが多く、その場合であっても、シリカの含有量としては、例えば、前記多孔体100質量部に対して、80質量部以下であることが好ましく、75質量部以下であることがより好ましい。また、前記多孔体には、上述したように、シリカが含まれていることが多く、その場合、シリカの含有量としては、例えば、前記多孔体100質量部に対して、55質量部以上であることが多く、65質量部以上であることも多い。前記多孔体としては、より具体的には、前記多孔体100質量部に対して、前記金属マグネシウムが25質量部(25質量%)、前記シリカが70質量部(70質量%)、酸化亜鉛が1質量部(1質量%)、及びこれら以外の成分が4質量部(4質量%)を含む多孔体等が挙げられる。前記金属マグネシウムの含有量が少なすぎると、前記金属マグネシウムによる水素発生量が少なくなる傾向がある。また、前記金属マグネシウムの含有量が多すぎても、前記金属マグネシウムによる水素発生量が必要以上に発生することになる。また、前記金属マグネシウムの含有量が多すぎると、前記金属マグネシウム以外の成分が相対的に少なくなり、前記多孔体の形状を維持しにくくなる傾向もある。これらのことから、前記金属マグネシウム及び前記金属マグネシウム以外の成分の含有量が、それぞれ、上記範囲内であると、前記金属マグネシウムによる水素発生量が好適になり、好適な飲料水処理材が得られる。
【0044】
前記金属マグネシウムを含む多孔体としては、より具体的には、飲料水用の水素発生材として市販されているマグネシウムを含有するセラミックボール(水素発生セラミックボール)等が挙げられる。
【0045】
前記イオン交換樹脂は、飲料水と接触することによって、接触した飲料水の硬度を低下させることができれば、特に限定されない。前記イオン交換樹脂としては、例えば、陽イオン交換樹脂等が挙げられ、この中でも、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。前記イオン交換樹脂の交換容量は、3~10meq/gであることが好ましく、3~6meq/gであることがより好ましい。
【0046】
前記イオン交換樹脂の、前記多孔体に対する質量比は、8~20倍であることが好ましく、8.5~10倍であることがより好ましい。また、前記イオン交換樹脂の、前記金属マグネシウムに対する質量比は、32~80倍であることが好ましく、34~40倍であることがより好ましい。前記イオン交換樹脂の、前記多孔体に含まれるシリカに対する質量比は、12~30倍であることが好ましく、12~15倍であることがより好ましい。前記イオン交換樹脂が少なすぎると、金属マグネシウムを含む多孔体による、飲料水の硬度上昇を充分に抑制できない傾向がある。また、前記イオン交換樹脂が多くてもよいが、多すぎても、飲料水の硬度を低下させるのに不必要な量になってくるおそれがある。また、前記イオン交換樹脂が多すぎると、前記多孔体が相対的に少なくなって、水素発生量が不充分になるおそれもある。これらのことから、前記イオン交換樹脂の量が上記範囲内であると、硬度の上昇を抑制しつつ、水素をより含む飲料水を得ることができる。
【0047】
前記飲料水処理材は、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とを備え、前記飲料水処理材を飲料水に接触させたときに、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とが両方とも前記飲料水に接触するように配置されていれば、特に限定されない。前記飲料水処理材としては、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とが同じ領域に存在してもよいし、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とが離間して存在してもよい。前記多孔体と前記イオン交換樹脂とが同じ領域に存在する場合、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とが混合されていてもよい。
【0048】
以上のことから、前記飲料水処理材は、飲料水に接触させることによって、前記飲料水の硬度上昇を抑制しつつ、前記飲料水に水素を含ませることができると考えられる。よって、前記飲料水処理材は、硬度の上昇を抑制しつつ、水素を含む飲料水を得ることができると考えられる。また、一般的に、水中に含まれるイオンの量が、120mg/L未満であれば、軟水であり、120mg/L以上であれば、硬水である。日本における水道水は、概ね軟水である。この軟水である水道水に前記飲料水処理材を接触させると、軟水を維持しつつ、水素を含ませることができる。
【0049】
前記飲料水処理材の使用量は、所望する水素発生量が確保でき、かつ、硬度を充分に抑制できる量であれば、特に限定されない。前記飲料水処理材の使用量としては、例えば、前記飲料水処理材における前記金属マグネシウムの量が、処理対象である水1Lに対して、1~5gとなる量であることが好ましく、2~4gとなる量であることがより好ましい。
【0050】
前記飲料水処理材を飲料水に接触させて処理すると、硬度の上昇を抑制しつつ、水素を含む飲料水を得ることができる。このため、上述したように、飲料水としては、軟水が好まれる場合があるが、そういった場合にも対応できる。また、軟水が好まれる場合としては、ペット用飲料水が挙げられる。このペット用飲料水の対象となるペット(愛玩動物)としては、特に限定されず、例えば、犬、猫、うさぎ、及びフェレット等が挙げられる。また、前記飲料水としては、ペット用飲料水の中でも、猫用飲料水であることが好ましい。すなわち、前記飲料水処理材を接触させて得られた飲料水は、ペット用飲料水として好適であり、猫用飲料水として最適である。猫の場合、飲料水が硬水であると、尿路結石等の下部尿路疾患にかかりやすくなるという問題が発生しやすい傾向がある。前記飲料水処理材によって、水素を含み、硬度の比較的低い飲料水を得ることができるので、得られた飲料水は、ペット用飲料水、特に猫用飲料水として好適である。
【0051】
前記飲料水処理材の製造方法としては、前記飲料水処理材を製造することができれば、特に限定されない。前記飲料水処理材の製造方法としては、例えば、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とを用意し、それらを備える飲料水処理材とする方法等が挙げられる。前記飲料水処理材の製造方法としては、具体的には、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とを混合してもよい。また、前記飲料水処理材の製造方法としては、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とを混合させずに、前記飲料水処理材を飲料水に接触させたときに、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とが両方とも前記飲料水に接触するように、前記飲料水処理材中に配置する方法等が挙げられる。その際、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とが同じ領域に存在するように配置する方法であってもよいし、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とが離間して存在するように配置する方法であってもよい。
【0052】
前記飲料水処理材は、飲料水に接触させて使用することができれば、その使用方法は特に限定されない。
【0053】
前記飲料水処理材の使用方法の一例としては、例えば、貯留部に貯留されている飲料水に接するように前記貯留部に設置する方法等が挙げられる。この方法としては、例えば、ペット用飲料水を貯留する貯留部としての容器、例えば、ボウル等に、水を入れた際、その水が接触する位置に、前記飲料水処理材を設置する方法等が挙げられる。すなわち、前記飲料水処理材は、貯留部に貯留されている飲料水に接するように前記貯留部に設置することが好ましい。このような方法によれば、硬度の上昇を抑制しつつ、水素を含む飲料水を得ることができ、その飲料水をペット等が飲用することができる。
【0054】
前記方法としては、例えば、図1に示すような飲料水供給装置20に備えられる貯留タンク(貯留部)21に、水を入れた際、その水が接触する位置に、前記飲料水処理材10を設置する方法等が挙げられる。すなわち、前記飲料水処理材10は、飲料水供給装置20に備えられる貯留タンク(貯留部)21に水を入れた際、その水が接触する位置に設置することが好ましい。より具体的には、前記飲料水供給装置20に備えられる飲料水処理用フィルタ24としては、前記飲料水処理材10を収容したフィルタ(前記飲料水処理用フィルタ24に収容する濾過材として、前記飲料水処理材10を収容したフィルタ)等が挙げられる。前記飲料水処理用フィルタ24は、例えば、図1に示すように、飲料水26を貯留する貯留タンク21の上方に飲料水摂取部22,23が設けられ、循環ポンプ25で前記貯留タンク21に貯留される飲料水26が前記飲料水摂取部22,23に供給され、前記飲料水摂取部22,23に供給された前記飲料水26が前記飲料水摂取部22,23から排出され前記貯留タンク21に戻る飲料水供給装置20における前記貯留タンク21内に少なくとも一部が配置され、前記飲料水摂取部22,23から排出された前記飲料水26が前記貯留タンク21に戻る際に通過する飲料水処理用フィルタ24等が挙げられる。なお、図1は、本発明の実施形態に係る飲料水処理材10を備える飲料水供給装置20の一例を示す概略断面図である。前記飲料水処理用フィルタ24には、前記飲料水処理材10を収容している。また、前記飲料水処理用フィルタ24には、図1に示すように、前記飲料水処理材10のうち、前記多孔体10aと前記イオン交換樹脂10bとを離間して収容してもよい。また、前記飲料水処理用フィルタ24には、前記多孔体と前記イオン交換樹脂とを混合して収容してもよい。また、前記飲料水処理用フィルタ24には、前記多孔体及び前記イオン交換樹脂のいずれか又は両方に活性炭を混合してもよい。また、前記飲料水処理用フィルタ24には、前記飲料水処理材10を覆うように設けられた不織布11を備えていてもよい。このような飲料水処理用フィルタを用いると、硬度の上昇を抑制しつつ、水素を含む飲料水を得ることができる。
【0055】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0056】
前記金属マグネシウムを含む多孔体としては、水素発生セラミックボール(▲し▼博天舜▲過▼▲濾▼器材▲廠▼製のORP還元ボール:Mg(マグネシウム)25質量%、SiO(シリカ)70質量%、ZnO(酸化亜鉛)1質量%、これら以外の成分4質量%)を用いた。また、前記イオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂(成都欧瑞▲凱▼化工有限公司製の水▲軟▼化▲樹▼脂001×7:一般グレード、交換容量4.55mmol/g)を用いた。前記金属マグネシウムを含む多孔体と前記イオン交換樹脂とを、それぞれ表1に示す質量(g)で用いた飲料水処理材を水道水1000Lに接触させた。
【0057】
前記飲料水処理材を接触させた後の水道水(飲料水)を、水硬度チェッカー軟水測定用試薬(株式会社丸山製作所製の「硬度指示薬 25mL 水硬度チェッカー 軟水測定用 試薬」)で評価した。この水硬度チェッカー軟水測定用試薬を滴下すると、硬水であれば、赤色を示し、軟水であれば、紫色、青紫色、及び青色を示す。硬度が下がれば、徐々に青味を増すことから、軟水でも、紫色は硬度が比較的高く、青色は硬度がより低いことを示す。また、表1における試験例1は、前記金属マグネシウムを含む多孔体も、前記イオン交換樹脂も、用いておらず、水道水である。このときには、青色を示すこと、用いた水道水は軟水であることがわかった。この試験結果を下記表1に示す。
【0058】
また、前記飲料水処理材を接触させた後の水道水(飲料水)には、水素が発生した。そして、前記飲料水の水素濃度は、MiZ株式会社製の溶存水素濃度判定試薬を用いて行った。その結果、例えば、前記飲料水処理材を500mLに接触させて、5分後の水素濃度は、試験例2~13の場合、0.045ppmであり、試験例14~22の場合、0.090ppmであった。また、前記飲料水処理材を500mLに接触させて、10分後の水素濃度は、試験例2~13の場合、0.070ppmであり、試験例14~22の場合、0.140ppmであった。この水素濃度は、測定毎に多少変化するが、この結果から、前記飲料水処理材を接触させた後の水道水(飲料水)には、水素が発生したことがわかる。
【0059】
【表1】
【0060】
表1からわかるように、イオン交換樹脂の使用量が増えると、得られた飲料水がより軟水になる傾向がある。このことから、イオン交換樹脂の使用量が多くはない、例えば、試験例3~6及び試験例14は、硬度指示薬で赤色を示していても、イオン交換樹脂を使用していない試験例2よりは、硬度が低下していることがわかる。また、前記イオン交換樹脂の、前記多孔体に対する質量比(イオン交換樹脂/多孔体)は、8~20倍であると(試験例7~13及び試験例15~22)、硬度指示薬で、紫色、青紫色、及び青色を示すことから、硬度が充分に低下し、軟水が得られていることがわかった。このことから、イオン交換樹脂/多孔体は、8~20倍であることが好ましいことがわかった。また、前記イオン交換樹脂の、前記金属マグネシウムに対する質量比(イオン交換樹脂/金属マグネシウム)は、32~80倍であると(試験例7~13及び試験例15~22)、硬度指示薬で、紫色、青紫色、及び青色を示すことから、硬度が充分に低下し、軟水が得られていることがわかった。このことから、イオン交換樹脂/金属マグネシウム32~80倍であることが好ましいことがわかった。また、前記イオン交換樹脂の、前記シリカに対する質量比(イオン交換樹脂/シリカ)は、12~30倍であると(試験例7~13及び試験例15~22)、硬度指示薬で、紫色、青紫色、及び青色を示すことから、硬度が充分に低下し、軟水が得られていることがわかった。このことから、イオン交換樹脂/シリカは、12~30倍であることが好ましいことがわかった。なお、SiO含有量の少ない水素発生セラミックボールを用いたり、上級グレードのイオン交換樹脂を用いると、前記質量比より小さくても、硬度指示薬で示される色が青味を帯びやすくなる、つまり、軟水になりやすい傾向があった。
【符号の説明】
【0061】
10 飲料水処理材
11 不織布
20 飲料水供給装置
21 貯留タンク
22、23 飲料水摂取部
24 飲料水処理用フィルタ
25 循環ポンプ
26 飲料水
図1