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特許7602275不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法
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  • 特許-不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法 図1A
  • 特許-不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法 図1B
  • 特許-不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法 図2A
  • 特許-不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法 図2B
  • 特許-不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法 図3A
  • 特許-不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法 図3B
  • 特許-不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法 図4
  • 特許-不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法 図5
  • 特許-不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法 図6
  • 特許-不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】不純な塩化リチウム溶液から出発して炭酸リチウムを精製するためのプロセス及び方法
(51)【国際特許分類】
   C01D 15/08 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
C01D15/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022535436
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 CA2020000134
(87)【国際公開番号】W WO2021113948
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】62/946,767
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/115,140
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502087932
【氏名又は名称】ザ ユニヴァーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘイン,ジェーソン,エリス
(72)【発明者】
【氏名】ケンポール,ヨハネス,ピエール
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-092004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加工ブラインからリチウムを精製する方法であって、
温度Tに保持され、未加工ブライン(1)中のすべての炭酸塩形成固体を沈殿させて沈殿混合物と結晶を含まない上清とを形成するのに十分な炭酸塩源を含むフィーダタンク(4)に前記未加工ブライン(1)を投入することと、
前記結晶を含まない上清を前記フィーダタンク(4)から温度Tに保持された第1の結晶化反応器(14)にポンプ輸送して、前記結晶を含まない上清から炭酸リチウム塩を結晶化させることと、
を含み、
前記温度T が-10℃~40℃であり、前記温度T が40℃~100℃であり、前記温度Tが前記温度Tよりも低く、且つ、前記温度T 及び前記温度T の間に少なくとも1℃の温度差が存在し、
前記第1の結晶化反応器(14)の溶液相中の炭酸リチウムの定常状態濃度を維持するように、前記フィーダタンク(4)から前記第1の結晶化反応器(14)への前記結晶を含まない上清の流量を制御することをさらに含む、
方法。
【請求項2】
前記第1の結晶化反応器(14)内の溶液相を前記フィーダタンク(4)にポンプで戻すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の結晶化反応器(14)に高純度炭酸リチウム結晶種を播種する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の結晶化反応器(14)内の溶液相を温度Tに保持された第2の結晶化反応器(24)にポンプ輸送することをさらに含み、
前記温度Tが前記温度Tよりも高い、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭酸塩源が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム又は二酸化炭素である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の結晶化反応器(14)内の溶液相を温度Tに保持された第2の結晶化反応器(24)内にポンプ輸送することであって、前記温度Tが前記温度Tよりも高いことと、
第「n」結晶化反応器から第「n+1」結晶化反応器に溶液相をポンプ輸送する方法を継続することであって、前記「n+1」結晶化反応器が前記「n」結晶化反応器の温度よりも高い温度に保持され、式中、「n」が2以上の整数であることと、
をさらに含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記流量が、前記溶液相中の溶解された炭酸リチウムの定常状態濃度を維持するのに十分であり、その結果、結晶化の全体的な質量流量が使用される最大流量よりも速い、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記流量が、1時間当たり50~250gのLiCOを達成するために溶液の添加速度に適応するように調整される、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本非仮出願は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる、2019年12月11日に出願された米国仮出願第62/946,767号に対する米国特許法第119条(e)の下での利益を主張する。
【0002】
1.技術分野
本発明は、一般に、未加工ブラインから高純度炭酸リチウムを精製する方法に関する。より詳細には、本発明は、炭酸リチウムの中間体を利用して、不純な塩化リチウムブラインから高純度炭酸リチウムを精製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.背景技術の記載
世界のリチウム採掘産業は、リチウムイオン電池製造においてカソード及び電解質を製造するために使用される電池グレードの炭酸リチウム原料の急速に増加する需要に追いつこうと苦労している。この需要は、自動車の排気を低減するためにバッテリ自動車、電気自動車、及びハイブリッド電気自動車が急激に採用されていること、並びに、太陽光、風力及び潮力などの再生可能発電システムに関する電力供給と電力需要とのバランスをとるために大型リチウムイオン蓄電池が採用されていることによって引き起こされている。
【0004】
「電池グレード」炭酸リチウムは一般的な用語であるが、典型的には99.5%を超える炭酸リチウムの純度を示すために使用される。リチウムは、その特性により、すべての元素の中で最も魅力的な電池材料の1つになっている。世界中で、充電式リチウムイオンバッテリは、ほとんどの携帯電話やラップトップコンピュータ、及びほとんどの丈夫な電動工具に電力を供給しており、自動車メーカは、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、及びプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)用のリチウムイオンバッテリについての改良を採用し展開している。充電式リチウムイオンバッテリは、電力系統の蓄電用途にも使用されている。
【0005】
リチウムは広く存在している元素であるが、世界のリチウム化学物質供給の大部分は、2つの主な地域、すなわち、チリ及びアルゼンチンのリチウムが豊富な大陸のブライン埋蔵物、及び西オーストラリアの硬岩スポジュメン(リシア輝石)ペグマタイト埋蔵物に由来する。最も典型的には、ブライン埋蔵物は国内で処理されて炭酸リチウム化学製品を生産するが、硬岩スポジュメン埋蔵物は国内で採掘され濃縮され、次いでその濃縮物が中国に出荷され、そこでさらに処理されて水酸化リチウム一水和物に変換される。
【0006】
より具体的には、チリ及びアルゼンチンにおけるブライン埋蔵物に関しては、一般に、それらは地上に汲み上げられ、12~24ヶ月の期間にわたって一連の蒸発池を通って循環される。これらの池では、3つの主要なプロセス、すなわち、大気への水の蒸発とその後の濃縮、飽和限界に達したときの様々な塩種の析出、及び、試薬が池に加えられたときの様々な塩種の強制析出、が起こる。典型的には、得られた塩化リチウムが豊富な溶液は、次いで、様々な工業プロセスによってさらに精製され、次いで、最終炭酸リチウム製品に変換される。炭酸リチウムを生成するために一般的に使用される古典的なプロセスは、制御が困難である可能性があり、「工業グレード」と呼ばれる比較的不純な形態の炭酸リチウムを頻繁に生成する。この工業グレードの炭酸リチウムは、リチウムのいくつかの工業用途に適しているが、典型的には、現代のリチウムイオンバッテリでの使用には適していない。
【0007】
一般に業界内では、工業グレードの炭酸リチウムは、CO又は重炭酸化プロセスを使用してアップグレードされ、これは、追加の技術上及び操作上の複雑さ、並びに追加の運用コストをもたらす結果となる。業界標準のバッチ結晶化プロセスを使用して炭酸リチウムを製造するすべての段階において、(他の塩を含めることなく)純粋な炭酸リチウム結晶を形成することは困難である。
【0008】
リチウム富化されたブライン又は溶液の製造のためのブラインの従来の処理は、妨害イオンの大部分を除去することを可能にするが、電池グレードの炭酸リチウムを製造するために、未加工の固体単離リチウム塩から妨害イオンを簡単に除去することが依然として必要とされている。現在のプロセスは、未加工の(工業グレードの)炭酸リチウムを現代の電池用途に十分な純度のレベルまで処理するのに必要なエネルギー、時間、及び材料の点で非効率性に悩まされている。
【0009】
ブラインから許容できる品質の炭酸リチウムを製造するには、溶液中のリチウムに付随する特定のカチオン及びアニオンを除去し、次いでリチウムを濃縮して抽出する技術を採用する必要がある。
【0010】
実証されてはいないが、0.07重量%以上のMgを含有する塩化リチウム結晶は、リチウム金属の製造及びその後のリチウム有機金属化合物の製造での用途に使用するにはマグネシウムが高すぎる可能性があることが認められている。したがって、この業界では、重合反応における有機リチウム触媒のマグネシウムが低いことが求められている。リチウム金属を製造する際に、マグネシウムの含有量が高い塩化リチウムも、リチウム電解セルの動作に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
同様に、リチウム金属を製造する際に、塩化リチウム結晶中のナトリウム不純物は、金属に直接現れる。したがって、低ナトリウムリチウム塩が望ましい。0.6重量%を超える塩化リチウム結晶中のナトリウムは、1重量%以上のナトリウムを含有する金属を生成する。リチウム金属における約1重量%又はそれを超えるナトリウム濃度は、リチウム金属を空気の本来の成分に対してより反応性にし、その金属の取り扱いをより困難にし、より危険にする。表1は、種々のリチウム源におけるナトリウム限界及び許容値に関するデータを示す。
【0012】
【0013】
商業規模で低炭酸リチウム及び塩化リチウムを生成するために使用される商業的方法には、スポジュメン含有鉱石及び天然ブラインなどの鉱物埋蔵物からのリチウム化合物の抽出が含まれる。多くのプロセスについて説明がなされており、これらの供給源から炭酸リチウムを生成するためにいくつかが商業化されている。
【0014】
そのような商業的方法の1つは、リチウム含有鉱石又はブラインからリチウムを抽出して、例えば、米国特許第2,516,109号に記載されているような純粋な硫酸リチウム溶液、又は、例えば、米国特許第5,219,550号に記載されているような塩化リチウム溶液を作製することを含む。これらの溶液を精製した後、炭酸ナトリウムを固体又は溶液のいずれかの形で添加して、炭酸リチウム結晶を析出させる。続いて、炭酸リチウムを使用済み液体(母液)から濾過し、炭酸リチウムを洗浄し、乾燥させ、サイズ変更して包装する。
【0015】
炭酸リチウムは、塩化リチウム、水酸化リチウム一水和物、臭化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、ニオブ酸リチウム、種々のリチウム含有正極材料、電解質塩などの他のリチウム化合物を生成するための供給材料として使用されることが多い。炭酸リチウム自体は、電池効率を改善するためにアルミニウムの電解生成における添加剤として、また、ガラス、エナメル及びセラミックの製造におけるリチウム酸化物の供給源として使用される。高純度炭酸リチウムは、医療及び現代の電池用途に使用されている。
【0016】
例えば、化学グレードの塩化リチウムを生成するために現在使用されている商業的手順は、炭酸リチウム又は水酸化リチウム一水和物などのリチウム塩基を濃塩酸と反応させて純粋な塩化リチウムブラインを生成することである。得られた塩化リチウムブラインを真空晶析装置で101℃以上で蒸発させて、無水塩化リチウム結晶生成物を生成する。この手順は、化学グレードの塩化リチウムのほとんどの商業的仕様を満たすが、低ナトリウムグレードの塩化リチウムのほとんどの商業的仕様を満たさない生成物をもたらす。
【0017】
化学グレードの塩化リチウムは、空気乾燥用途、フラックス、混合イオン交換ゼオライトの製造における中間体、及び化学グレードのリチウム金属を生成するための電解セルへの供給物として適している。
【0018】
化学グレードのリチウム金属は、とりわけ、リチウム有機金属化合物を生成するために使用される。これらの化合物は、重合及び製薬産業において触媒として使用される。
【0019】
化学グレードの無水塩化リチウムは、1%未満のナトリウムを含有する金属を生成するために、0.16%未満のナトリウムを含有すべきである。金属中のナトリウム含有量及びそれに関連するコストを最小限に抑えることが重要であることが、塩化リチウムと、それに続くリチウム金属を生成するための原料として水酸化リチウム一水和物又は炭酸リチウムを使用する主な理由である。このことを考慮して、低ナトリウムの塩化リチウムは、典型的には0.0008重量%未満のナトリウムを含有し、電池用途及び合金の生成に適した低ナトリウムのリチウム金属を製造するために商業的に生成される。
【0020】
商業的には、低ナトリウムの塩化リチウムは、化学グレードの炭酸リチウムから間接的に生成される。炭酸リチウムは消石灰との反応によって水酸化リチウム一水和物に変換される。得られたスラリーは、沈降炭酸カルシウム及び2~4重量%水酸化リチウム溶液を含み、これらは濾過によって分離される。
【0021】
水酸化リチウム溶液は、真空蒸発晶析装置内で濃縮され、水酸化リチウム一水和物が結晶化され、母液溶液中に可溶性ナトリウムが残る。
【0022】
結晶水酸化リチウム一水和物を母液から分離し、乾燥させる。この塩は、通常、0.02~0.04%のナトリウムを含有する。ナトリウムレベルをさらに低下させるためには、水酸化リチウム一水和物を純水に溶解し、再結晶し、続いて純塩酸と反応させて、10ppm未満のナトリウムを含有する濃塩化リチウムブラインを形成しなければならない。次いで、得られた塩化リチウム溶液を蒸発乾固させて、100ppm未満のナトリウムを含有する電池グレードのリチウム金属を生成するのに適した無水塩化リチウムを得る。上記のプロセスは、以下のように説明される7つの主要な処理工程を必要とする:
1)リチウム含有鉱石又は天然ブラインから、6重量%以下のLiを含む低ホウ素水溶液を抽出及び精製する工程
2)マグネシウム及びカルシウムに関するブラインの精製及び濾過する工程
3)NaCOの添加によって精製ブラインから炭酸リチウムを析出させ、次いで、炭酸リチウムを濾過して乾燥させる工程
4)消石灰と炭酸リチウムとを反応させてLiOH溶液を生成し、濾過する工程
5)真空晶析装置でLiOH・HOの結晶化させる工程
6)LiOH・HO結晶の溶解及び溶液からLiOH・HOを再結晶化させる工程、及び、
7)高純度HClを再結晶化したLiOH・HOと反応させて、高純度塩化リチウムブラインを生成し、そこから低ナトリウムの塩化リチウムを結晶化させ、その塩化リチウムを乾燥させる工程。
【0023】
低炭酸リチウムナトリウムは、上記のプロセスの第1の部分を使用して、再結晶化LiOH・HOから調製することができる。次いで、再結晶化LiOH・HOを水と混合し、COと反応させて炭酸リチウムを析出させる。処理工程を以下に記載する:
1)リチウム含有鉱石又は天然ブラインから、6重量%以下のLiを含む低ホウ素水溶液を抽出及び精製する工程
2)マグネシウム及びカルシウムに関するブラインの精製及び濾過する工程
3)NaCOを添加して精製ブラインからLiCOを析出させ、濾過して乾燥させる工程
4)消石灰とLiCOを反応させてLiOH溶液を生成し、濾過する工程
5)真空晶析装置でLiOH・HOを結晶化させる工程
6)LiOH・HOを溶解し、溶液から再結晶化させる工程
7)COガスを再結晶化LiOH・HOを含むスラリーと反応させ、低ナトリウムの高純度炭酸リチウム結晶を結晶化させ、濾過して乾燥させる工程。
【0024】
炭酸リチウムの生成
【0025】
塩化リチウム溶液から炭酸リチウム析出物を生成する一般的な方法は、炭酸ナトリウム(NaCO)又は炭酸ナトリウムのスラリーを反応容器内の塩化リチウム溶液の中に混合し、その混合物を約85~100℃に加熱して、炭酸リチウムをバッチ析出させることによるものである。炭酸リチウムの分離を改善するための、炭酸ナトリウムの添加の一環として、同様の反応からの「ヒール(heel)」又は残留スラリーが含まれる。残留スラリーは、バッチ結晶化を助けるための核生成シードのセットとして作用し、良好な沈降、濾過、及び洗浄特性を有する炭酸リチウム析出物を生成する。塩化リチウム溶液を炭酸ナトリウムと反応させて炭酸リチウム及び溶解した塩化ナトリウム(NaCl)を形成する場合には、炭酸ナトリウムの添加を制御する。言い換えれば、その濃度は、塩化ナトリウムが炭酸リチウムと共沈するのを防ぐためにプロセスがNaClの溶解度の範囲内で実施されるように管理される。
【0026】
炭酸ナトリウムとの反応は、以下の式に従って炭酸リチウムを析出させる:
2LiCl+NaCO=>LiCO+2NaCl
【0027】
このようにしてリチウム塩溶液に炭酸ナトリウム(乾燥)を直接添加すると、非常に純度の低い炭酸リチウムが得られ、この場合、かなりの量の他のイオン、特にナトリウムが存在する。炭酸リチウムのかなりの部分は、高レベルのナトリウムも含有するブラインから回収され、低ナトリウムリチウム塩の製造を困難かつ高コストにする。
【0028】
炭酸リチウムを析出させるために使用される蒸発した濃縮塩化リチウム溶液は、典型的には、溶液中のリチウムイオン濃度が0.6から7.3重量%の範囲であり、溶液中の炭酸ナトリウム濃度が25から56%の範囲であり、後者のより高い範囲は、水和炭酸ナトリウム(NaCO・HO)のスラリーである。
【0029】
反応物を室温から約100℃の範囲の温度で混合し、得られた混合物を加熱する。次いで、形成された炭酸リチウム析出物は、炭酸リチウム析出物の水への溶解度が最も低い温度である100℃付近の温度での遠心分離によって分離される。
【0030】
遠心分離後の生成物溶液は、かなりの量の可溶性LiCOを含有する。大量の塩化ナトリウムの存在は、析出していないLiCOのさらなる回収を困難にし、その後、炭酸リチウム固体を除去した後の残りの溶液を0℃に冷却しても、その析出によっては少量の塩化ナトリウムしか除去されない。
【0031】
母液をブライン工程の初期段階に再循環させることは、母液を廃棄するかリサイクルするかにかかわらず、リチウムの回収効率を改善し、最初の析出で可能な最高の経済的回収を達成するためにしばしば行われる。
【0032】
現時点において、リチウムを含有する天然ブラインから低ナトリウム含有の電池グレードの炭酸リチウムを直接生成するための最も一般的で最も低コストのプロセスは、工業グレードの炭酸リチウムを得るための何らかの前処理を含み、それは化学変換サイクルを介して精製され、それによって炭酸リチウムは二酸化炭素及び水と反応して可溶性重炭酸リチウム溶液を生成する。
【0033】
LiCO+CO+HO=>2LiHCO
【0034】
完全に可溶化された重炭酸リチウムは、不溶性不純物から分離される。次いで、重炭酸リチウムは、pHを調整して加熱すると炭酸リチウムに再変換され、二酸化炭素を放出する。残念ながら、このプロセスは、反応速度が溶存COの圧力及び濃度に比例する気液反応を処理するためのハードウェアを必要とする。すなわち、最も効率的に実行するためには、加圧反応ハードウェアが必要であり、これは、設備及びプロセスの複雑さ、必要なエネルギー、危険性、及び保守コストを大幅に増大させる。
【0035】
不純な炭酸リチウムの(化学的相互変換を伴わない)直接的な再結晶は、精製プロセスの候補を提供する。しかしながら、このプロセスは、2つの主な理由で採用されていない。
【0036】
第1に、炭酸リチウムは、塩化ナトリウム及びほとんどの他の塩とは異なり、溶液温度が上昇するにつれて水への溶解度が低下する非常に低い「逆溶解度」特性を有する。溶液の温度を上昇させると、塩化ナトリウムの共沈及び汚染を最小限に抑えながら、炭酸リチウムの沈殿及び回収が増加する。この特性は選択的溶解性(他の塩がより可溶性である温度領域では最も可溶性が低い)の観点から有益であるが、飽和溶液は、模擬ブライン溶液(20℃)1ml当たり18mgの炭酸リチウムしか含有できない。したがって、材料を処理する(未加工生成物を完全に可溶化する)には、大量の溶媒を必要とする。
【0037】
第2に、工業グレードの炭酸リチウムの再結晶化は、ナトリウム不純物の正味の減少が実現されないため、(高レベルの溶解ナトリウム塩を含む)母液から効果的に達成することができない。この欠点は、非晶質又は結晶性不純物を含有する結晶性凝集物の形成(ナトリウムの捕捉)に起因する。この特定の種類の結晶不純物は、それらが封入体であり、炭酸リチウム結晶マトリックスの内部に閉じ込められているため、洗浄によって効果的に対処することができない。したがって、精製には、未加工炭酸リチウムを母液から分離し、洗浄し、次いで清浄水から再懸濁及び再結晶することが必要である。
【0038】
光学顕微鏡法によって画像化された炭酸リチウム凝集物の例を図1A及び図1Bに示す。凝集物を含まない炭酸リチウムの単結晶の例を図2A及び図2Bに示す。
【発明の概要】
【0039】
上記の理由から、従来の方法の欠点を克服するために、炭酸リチウムの中間体からリチウムを精製する方法を改善する必要が依然としてある。
【0040】
第1の実施形態では、本発明は、未加工ブラインからリチウムを精製する方法であって、
温度Tに保持され、未加工ブライン中のすべての炭酸塩形成固体を沈殿させて沈殿混合物及び結晶を含まない上清を形成するのに十分な炭酸塩源を含むフィーダタンクに未加工ブラインを投入することと、
結晶を含まない上清をフィーダタンクから温度Tに保持された第1の結晶化反応器にポンプ輸送して、結晶を含まない上清から炭酸リチウム塩を結晶化させることと、
を含み、
温度Tが温度Tよりも低く、
結晶化反応器の溶液相中の炭酸リチウムの定常状態濃度を維持するように流量を制御することさらに含む、
方法。
【0041】
本方法はまた、第1の結晶化反応器内の溶液相をフィーダタンクにポンプで戻すことを含んでいてもよい。本方法はまた、第1の結晶化反応器内の溶液相を、温度Tに保持された第2の結晶化反応器内にポンプ輸送することを含んでいてもよく、ここで、温度Tは温度Tよりも高い。同様に、本方法は、第1の結晶化反応器内の溶液相を、温度Tに保持された第2の結晶化反応器内にポンプ輸送することであって、温度Tが温度Tよりも高いことと、第「n」の結晶化反応器から第「n+1」の結晶化反応器に溶液相をポンプ輸送する方法を継続することであって、「n+1」結晶化反応器が「n」結晶化反応器の温度よりも高い温度に保持され、式中、「n」が2以上の整数であることと、を含んでいてもよい。
【0042】
第1の結晶化反応器には、高純度炭酸リチウム結晶種を播種してもよい。炭酸塩源は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、又は二酸化炭素であってもよい。流量は、溶液相中の溶解した炭酸リチウムの定常状態濃度を維持するのに十分であり得、その結果、結晶化の全体の質量流量は、使用される最大流量よりも速い。流量は、プロセスが必要とする場合及びハードウェアが可能とする場合には、1時間当たり50~250gのLiCOを達成するために溶液の添加速度に適応するように調整されてもよい。
【0043】
本発明のさらなる適用範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。ただし、本発明の趣旨及び範囲内の様々な変更及び改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明及び特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、単なる例示として与えられていることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
本発明は、以下に与えられる詳細な説明、及び例示としてのみ与えられ、したがって本発明を限定するものではない添付の図面からより完全に理解されるであろう。図面において、同様の参照番号は、様々な図における同様の特徴を示すために使用される。
【0045】
図1A】光学顕微鏡によって画像化された炭酸リチウム凝集物の例を示す。
図1B】光学顕微鏡によって画像化された炭酸リチウム凝集物の例を示す。
図2A】学顕微鏡によって画像化された凝集物を含まない炭酸リチウムの単結晶の例を示す。
図2B】光学顕微鏡によって画像化された凝集物を含まない炭酸リチウムの単結晶の例を示す。
図3A】LiCOの溶解度の変動を示すグラフである。
図3B】LiCOの溶解度の変動を示すグラフである。
図4】95℃におけるLiCOの溶解度の値を、3つのレベルのNaClの濃度についてのNaCOの濃度の関数として示すグラフである。
図5】本発明のシステムの一例を示す図である。
図6】異なる温度における炭酸リチウムの溶解度スイングを示すグラフである。
図7】ICPOESで分析した場合のフィーダタンク(溶解装置)及び結晶化反応器(晶析装置)の両方からの固相の試料の理論純度を経時的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、選択的結晶化を使用して、99.5%炭酸リチウム(LiCO)を超える、電池グレード又は他の高純度の炭酸リチウムを生成する新しいプロセスである。他の例示的なプロセスは、精製方法として炭酸リチウムの結晶化を使用するが、本発明のプロセスは、複数の溶解塩を含有する不純な地下水ブラインから高純度炭酸リチウムへの著しく単純化された直接的な経路を提供する。
【0047】
本発明は、主要な処理工程の数を減らす統合された新規な方法であって、0.2~10.0重量%のLiに濃縮された天然リチウム含有ブラインから直接、0.01~0.002重量%のナトリウムを有する高純度炭酸リチウムを製造するための方法を提供する。本発明の方法は、以下を回避する:
1)水酸化リチウム一水和物の1回及び2回の再結晶工程
2)炭酸リチウムから重炭酸リチウムになり、炭酸塩の2回の再結晶に戻る。
3)望ましくないカチオン(例えば、Mg及びCa)の初期析出をもたらすための炭酸塩の添加の慎重な滴定(溶解度に基づく選択的析出)
【0048】
(従来のプロセスで使用される)二酸化炭素/重炭酸塩サイクルに頼らないことにより、必要なハードウェアに関して劇的に簡素化され(例えば、化学的相互変換のための加圧された二酸化炭素及び関連する産業インフラが必要ない)、必要な材料(水及び失われる試料)が削減され、処理を完了するためのエネルギー要求が削減される。物理プラントに関して、必要な処理工程の削減、処理フローの簡素化、及び連続的な運転設計は、パイロットプラントの物理的フットプリントを劇的に削減する。このように、本発明は、大幅な運転性及びユーザビリティの進歩を提供し、小規模での運用を考慮すること、及びより少ない資本及びインフラ投資でオンライン化することを可能にする。
【0049】
LiClからのLiCOの実験的析出は、一般に、良好な沈降、濾過、及び洗浄特性を有するLiCOを得ることが困難であることを示している。以下の観察及び結論は、LiCl溶液からのLiCOの析出に関連する。
【0050】
(1)LiCOの溶解度に対するNaClの濃度の影響
溶液中のイオンは、イオンの溶解度及び析出に影響を及ぼす「交差効果」を有する。LiCOの溶解度に対する効果の研究を図3A及び図3Bに示す。95℃では、NaClの濃度が約9%に増加すると、LiCOの溶解度は、純水中の7.5グラム/リットルから約9.3グラム/リットルに増加する。NaClの濃度がさらに増加すると、LiCOの溶解度は減少し、25重量パーセントのNaClでは、LiCOの溶解度は、水への溶解度よりも小さい、わずか約6.5グラム/リットルである。KClは、LiCOの溶解度に対してほぼ同じ程度の同様の効果を有する。
【0051】
(2a)反応物の濃度
LiCOの溶解度に対するNaClの濃度の影響に関する上記のデータを考慮すると、母液中に高いNaClの濃度をもたらす反応物濃度で実施することが望ましい。NaClの最大溶解度を超えることによるNaClの析出は回避されなければならない。LiCl及びNaCOの水溶液で実施する場合、NaClの析出は不可能である。しかしながら、その飽和溶液に固体NaCO・HOのスラリーの形態のNaCOが使用される場合、反応物濃度がNaClの析出をもたらさないことを確実にするように注意しなければならない。このような場合にも、母液中のNaClの溶解度を適度に低下させる過剰なNaCOの影響、及びLiCl溶液中のNaClの存在に対して、しかるべき許容がなされなければならない(下記の2b参照)。
【0052】
(2b)塩化リチウム溶液
天然塩化物ブラインからのリチウムの回収において、天日乾燥によって生成された回収LiCl溶液は、適切な精製を行った後に、通常、中程度の量のNaCl及びKClを含有する。単純な天日乾燥濃縮によって、NaCl及びKClの両方(特にNaCl)がかなり低いレベルに低減され得る。表2は、25℃及び100℃における様々なLiCI含有量の溶液中のNaClの溶解度を示す。
【0053】
【0054】
適切に制御されたプロセス条件下で、上に列挙したLiCl濃度の範囲で良好な物理的特性を有する炭酸リチウム析出物を得ることができる。ただし、回収率は大きく変動し、LiCl濃度が増加するにつれて増加する。より高いLiCl濃度を達成するためには、蒸発池における天日乾燥の増加及び滞留時間の増加が必要である。
【0055】
(2c)炭酸ナトリウム溶液
濃縮NaCO溶液(26から33重量パーセントのNaCO)でLiCO析出を達成することに加えて、33重量パーセントを超える総NaCO含有量を有するソーダ灰及び水のスラリーを使用することも可能である。このようなスラリーは、飽和炭酸ナトリウム溶液中に水和炭酸ナトリウム(NaCO・HO)固体の混合物を含む。困難なくポンプ輸送することができる、56重量%もの総NaCOを含有するスラリーが首尾よく使用されている。これらのスラリーの使用は、適切な濃度のLiCl溶液と併せて、母液における最も実用的なNaClの濃度の達成を可能にする。結果としてのLiCOの回収率は高い。ただし、スラリーを使用することの1つの欠点は、濾過によってソーダ灰中の特定の不溶性不純物を除去することができないことである。
【0056】
(3)反応物の混合順序
LiCl溶液では、0.5から5%重量のLiを含有する希炭酸リチウム溶液を利用することにより、溶液を冷えた状態(25℃)で冷たい炭酸ナトリウム溶液に添加し、続いて遠心分離前に約95~100℃に加熱すると、良好な沈降及び濾過沈殿を得ることができる。この方法は、LiClが20重量パーセント以下のLiCl溶液を使用した場合にのみ成功した。
【0057】
反応物を混合するための好ましい手順は、塩化リチウム溶液及び炭酸ナトリウム溶液(又はスラリー)を、前の沈殿からの未濾過スラリー(又は母液)の適度なサイズのヒールに同時に添加することである。典型的には、各溶液は、添加の合計時間が約1時間になるように、その体積にほぼ比例する流量で添加される。全体を通して良好な撹拌が維持される。この方法は、優れた物理的特性を有する沈殿物をもたらし、LiClが45重量%程度に濃縮されたLiCl溶液に適用可能である。
【0058】
(4)析出温度
水又は塩化ナトリウム溶液のいずれかにおける炭酸リチウムの溶解度は逆行性(すなわち、温度が上昇すると溶解度が低下する)であり、これは塩の溶解度に対する温度の通常の影響とは反対であることが以前に述べられている。したがって、リチウムの回収率を向上させるためには、高温で遠心分離又は濾過する必要がある。上記の同時方法を使用する場合、反応物は、95℃ではなく、室温又はある中間温度、例えば、50℃で混合してもよい。その後、温度を約95℃まで上げた後に、遠心分離を行って優れた特性を有する沈殿物を得る。この方法は、95℃付近の添加温度を使用することよりも有利である、なぜなら、この方法は、比較的長い添加工程において95℃付近の温度を維持することによって起こる望ましくない蒸発及び熱損失を排除するからである。
【0059】
(5)過剰NaCOの使用
LiClと当量よりも約10%過剰のNaCOを使用し、それによって炭酸イオン濃度の増加により母液中のLiCOの溶解度を低下させることが望ましい。NaCOの濃度の増加に伴うLiCOの溶解度の減少は線形ではない(すなわち、NaCOの増加に伴って減少速度が低下する)。したがって、使用される過剰なNaCOのコストは、その過剰が正当化されることを担保するために、LiCOの回収の増加と釣り合っていなければならない。通常、化学量論量を超える5~10%のNaCOが有利である。
【0060】
図4の3つの曲線は、95℃におけるLiCOの溶解度の実験的に求めた値を、3つのNaCl濃度レベルについてのNaCOの濃度の関数として与える。これらの曲線は、LiCOの溶解度に対するNaCO及びNaClの濃度の両方の影響をグラフで示している。これらの曲線を使用して、反応組成物及び濃度の任意の所与のセットについて母液中のLiCOの予想損失を計算することができる。
【0061】
現在、塩化リチウム富化塩類又は他のリチウム含有液体からリチウムを取り出すための複数の方法が存在する。しかしながら、これらの方法は現在、低濃度のマグネシウム及び炭酸リチウムを含む液体の製造には使用されていない。スポジュメン又はリチウムアルミニウムシリケート鉱石(LiAlSi)を使用して鉱物源から炭酸リチウムを抽出する従来の方法もまた、不十分な純度の材料を生成する。したがって、リチウム含有ブラインから、塩化リチウム又は炭酸リチウムなどのリチウム塩の形態の高純度リチウム金属を生成するのに十分な純度でリチウムを抽出する必要がある。
【0062】
これに関して、本発明の方法の重要な利点は、天然(高ナトリウム塩)ブラインの母液の存在下で炭酸リチウムの結晶成長速度を制御する能力にある。この利点は、溶液温度の関数として結晶成長速度と溶解した炭酸リチウムの濃度との間の関係を理解することによって達成することができる。結晶化プロセスを制御することにより、炭酸リチウム結晶のサイズ、形状及び品質を管理することができ、望ましくない凝集物の形成を防止することができる。
【0063】
本発明の全体的なプロセスの一実施形態は、図5に示す例示的なシステムの概略図を使用して概ね説明することができる。
【0064】
まず、未加工ブライン1を得る。好ましくは、未加工ブライン1は主に塩化リチウムである。未加工塩化物ブライン1の組成は、限定されないが、典型的には、0.1~6重量%のLi、0.1~3重量%のNa、0.001~0.4重量%のK、0.01~2.6重量%のCa、0.01~0.5重量%のMg、0.1~0.22重量%のB、及び0.1~0.3重量%のSiを含有する。未加工塩化物ブライン1の代表的な組成は、1重量%のLi、2.5重量%のNa、0.01重量%のK、0.01重量%のMg、0.01重量%のCa、0.12重量%のB、及び0.26重量%のSiである。
【0065】
未加工ブライン1を、ライン2を介してフィーダタンク4に投入し、十分な炭酸ナトリウムで処理して、すべての炭酸塩形成固体5(Mg、Ca、Li)を沈殿させる。この沈殿混合物は、対応するカチオンのすべての炭酸塩形態を含むので、他のプロセスで形成された工業グレードの炭酸リチウムよりも低グレードである。フィーダタンク4は、混合器6を含む。混合器6は、固体が溶解した状態を保つためにフィーダタンク4の内容物を撹拌し、物質移動を加速する。混合器6は、物理的混合器である必要はなく、混合器6は、単に液体流による撹拌であってもよい。
【0066】
この第1の工程の目的は、LiCO及びCaCO/MgCOなどの両方を未加工固体として追い出すことである。プラント試験では、Ca/Mg(場合によってはホウ素及びSi)のみが最初に析出し、準安定で過飽和のLiCO溶液を与える。放置すると、溶液は最終的にLiCOを析出させるが、それは制御不能である。イオンクロマトグラフィ測定により、投入ブライン中の正確な[Li+]を知ることができる。例えば、LiClとして約3000mgのLi+の供給によって、約16gのLiCO/Lが得られるであろうが、10℃における飽和限界は、わずか約12~14g/Lである。したがって、軟化後、過飽和が生じる。この速度論的に安定な状態は、低温反応器内におけるLiCOの自発的な結晶化を経時的にもたらす。本発明のプロセスは、この準安定状態を使用して、エネルギー消費及びプロセス時間の両方に関して回収をより効率的にすることができる。通常のプロセスでは、単にこのバッチを加熱して強制的に結晶化させるが、既に高い過飽和が、熱変動による制御の欠如と相まって、結晶化プロセスの制御を妨げる。本発明では、過飽和溶液を制御された方法で添加し、十分に混合され播種された結晶化反応器(約70℃)に連続結晶化の原理を適用する。このプロトコルは、安定した再現性のある結晶成長をもたらし、これが維持されて凝集を回避することができ、これにより、処理がより容易なより純粋な材料をもたらす。したがって、本発明の方法は、熱的又は化学的過飽和を使用した過飽和炭酸リチウムのバッチ再結晶を利用する従来のプロトコルを複雑にする、高い過飽和によって悪影響を受けない。バッチ結晶化を使用するこれらの以前のプロセスは、プロセスを制御することができず、機器の故障及び不純な製品につながる。本発明の方法はまた、化学的過飽和を利用して質量スループットを改善することができる。この特徴が、おそらくは化学物質の投入に対する非常に広い許容範囲の理由である。
【0067】
第2に、フィーダタンク4は低温Tに保持される。より低い温度Tは、-10℃~40℃、好ましくは5℃~25℃、より好ましくは10℃~20℃であり得る。この温度において、炭酸リチウムは最も高い溶解度を有する。具体的には、溶解度は、10mg/ml~30mg/ml、より好ましくは15mg/ml~21mg/mlであり得る。フィーダタンク4は、使用済み材料からあらゆる固体材料(おそらくはMgX及びCaX)を排出する廃棄物固体排出ライン8をさらに含む。MgXは、水酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム又は炭酸マグネシウムであり得る。CaXは、水酸化カルシウム、ケイ酸カルシウム、ホウ酸カルシウム又は炭酸カルシウムであり得る。
【0068】
次いで、フィーダタンク4内の結晶を含まない上清が、移送ライン10を介して第1の結晶化反応器14にポンプ輸送される。この結晶を含まない上清は、限定するものではないが、膜又は焼結媒体を使用した濾過、遠心沈降、及び重力沈降などの固体/液体分離のための任意の標準的な手段を含む、パイロットプラントに適した任意の標準的な濾過又は沈降技術を使用して得ることができる。第1の結晶化反応器14は、高温Tに保持される。高温Tは、40℃~100℃、好ましくは55℃~85℃、より好ましくは65℃~75℃であり得る。この温度は、炭酸リチウム塩のより低い溶解度環境をもたらす。具体的には、その溶解度は、2mg/ml~20mg/ml、好ましくは5mg/ml~10mg/mlであり得る。第1の結晶化反応器14は、炭酸リチウムの成長媒体を提供するために、高純度炭酸リチウム結晶種がさらに播種される。この播種には、過飽和溶液を生成するために溶液相を加熱する際のLiCOの自然発生(一次核生成)が含まれ得、あるいは市販の高純度(99.95%超)のLiCOの添加によって播種を達成することができる。この溶解度スイングの一例を、水中の炭酸リチウムの溶解度図である図6に示す。
【0069】
原理上は、2つのタンク間の温度差はわずか1℃であってもよいが、時間及びエネルギー効率の良いプロセスを提供するためには、最小で30℃が最も合理的である。これに関して、TとTとの間のより高い温度差によって、炭酸リチウム塩の結晶化に対してあまり制御できなくなるが、より多くの炭酸リチウム塩が生成される。一方、TとTとの温度差がより小さいと、結晶化がより制御されるが、炭酸リチウム塩はあまり生成されない。それにもかかわらず、特許請求される発明のプロセスは、TとTとの間の任意の温度差で機能し、その結晶化速度は、(i)各タンクへ入る流量及び各タンクから出る流量と、(ii)反応器間の温度差との組み合わせを制御することによって制御される。結晶化速度を制御することにより、本発明は、結晶のサイズ、形態、及び凝集を制御することができる。本発明はまた、必要に応じて結晶化速度を変更することができるように、(i)各タンクへ入る流量及び各タンクから出る流量、並びに(ii)プロセスが起こるときの反応器間の温度差を制御することができるという利点を有する。高純度炭酸リチウム種結晶を含めることは、過飽和度を緩和し、結晶化速度及び単離された結晶形態を制御する手段をさらに提供する。
【0070】
図6について、先に列挙した一般的な手順を用いて試料を処理した。溶解度測定により、物質移動効率を体積当たりで予測することができる。試料を3回の重量分析を用いて測定し、溶液中の炭酸リチウムの総質量を求めた。
【0071】
第1の結晶化反応器14は、反応器を効果的に攪拌及び混合し、反応器全体にわたって均一な濃度分布を維持するために利用される機械的混合器16を含んでもよい。この撹拌により、結晶成長速度を均一にすることができ、精製されたLiCOの集塊及び凝集を防止することができる。
【0072】
本発明のプロセスの一例として、フィーダタンク4を20℃に保持する一方で、第1の結晶化反応器14を90℃に保持してもよい。この70℃の温度差は、2つの環境間を循環するブライン1ml当たり7mgの炭酸リチウムの理論質量スループットを提供する。ブラインがより高い温度Tの第1の結晶化反応器14に入ると、ブラインは新しい温度環境に対して相対的に過飽和になる。この温度差が結晶化を促進し、これにより炭酸リチウムが溶液から追い出され、その結果、溶液から炭酸リチウムが枯渇する。
【0073】
精製された炭酸リチウム15は、第1の結晶化反応器14の底部に集まり、精製された固体炭酸リチウムを回収するために、フィルタ18(例えば、バグフィルタ若しくはフィルタプレス、又は、限定するものではないが、膜若しくは焼結媒体を用いた濾過、遠心沈降及び重力沈降などの固体/液体分離のための任意の標準的な手段を含む、パイロットプラントに適した別の濾過若しくは沈降技術)を通して濾過される。
【0074】
本発明の最も単純なプロセスでは、第1の結晶化反応器14内の結晶を含まない溶液相は、戻りライン21を介してフィーダタンク4内にポンプで戻され、戻される際にインラインで冷却される。したがって、このとき液相は、その冷却された温度に対して不飽和であるため、固相からの炭酸リチウム(不純)は溶解することができ、平衡濃度の溶液相に戻ることができる。不純物(Ca又はMgCOなど)は、フィーダタンク4(より低い温度T)内で最も低い溶解度になるため固相に残り、溶液相をさらに汚染しない。
【0075】
次に、溶液相サイクルのプロセスは、フィーダタンク4(炭酸リチウムが高い溶解度を有する)から第1の結晶化反応器14(炭酸リチウムの溶解度が低い)へと続く。このプロセスは、フィーダタンク4から第1の結晶化反応器14に移動する、炭酸リチウムの正味の物質移動をもたらす。このように、溶液相はコンベヤベルトとして作用する。
【0076】
第1の結晶化反応器14内の炭酸リチウムの純度が不十分である場合、流路内に第2の結晶化反応器24を追加することができる。第1の結晶化反応器14内の炭酸リチウムを含有する結晶を含まない上清は、移送ライン20を介して第2の結晶化反応器24にポンプ輸送される。この実施形態では、3つの温度が使用される。フィーダタンク4の温度Tは最も低い温度であり、第2の結晶化反応器24の温度Tは最も高い温度であり、第1の結晶化反応器14の温度Tは温度TとTの間である。前述のように、T,T及びTの間にわずか1℃の温度差が存在すれば、プロセスは機能するが、妥当な効率での運転を可能にするためには、最低10~20℃の温度差(T-T及びT-T)が好ましい。第2の結晶化反応器は、実質的に、第1の結晶化反応器と同一のハードウェア(濾過、混合器、及び温度制御)を有する第1の結晶化反応器と同じものである。
【0077】
第2の結晶化反応器24は、混合器26を含む。混合器26は、一定の濃度を維持する(すなわち、勾配の形成を防止する)ために、第2の結晶化反応器24の内容物を撹拌する。混合器26は、物理的混合器である必要はなく、混合器26は、単に液体流による撹拌であってもよい。ただし、好ましい実施形態では、混合器26は物理的混合器である。
【0078】
精製された炭酸リチウム25は、第2の結晶化反応器24の底部に集まり、精製された固体炭酸リチウムを回収するために、フィルタ28(例えば、バグフィルタ又はフィルタプレス)を通して濾過される。最終的に単離された炭酸リチウムは、乾燥及び最終包装の前に、濾過段階で清浄水(逆浸透又は蒸留)を使用する洗浄50にさらに供される。
【0079】
第2の結晶化反応器24内の結晶を含まない溶液相は、移送ライン32を介してフィーダタンク4内にポンプで戻され、戻される際にインラインで冷却される。したがって、このとき液相は、その冷却された温度に対して不飽和であるため、固相からの炭酸リチウム(不純)は溶解することができ、平衡濃度の溶液相に戻ることができる。不純物(Ca又はMgCOなど)は、フィーダタンク4(より低い温度T)内で最も低い溶解度になるため固相に残り、溶液相をさらに汚染しない。
【0080】
投入選択弁31により、オペレータは、(i)材料を第1の結晶化反応器14及び/又は第2の結晶化反応器24から再循環するか、又は(ii)処理されるべき未使用のブライン1がフィーダタンク4に向けられるかどうかを選択することが可能になる。このように、投入選択弁31によって、プロセスに投入されるより多くのLiを含有する新しい未使用の材料を添加するか、又は残っている不純なLiCOを溶解するために使用済みブラインを添加するかを選択することができる。
【0081】
第2の結晶化反応器24の追加により、フィーダタンク4からの高不純物固体が第1の結晶化反応器14内で溶解し一旦結晶化して、より純粋な固体を作る分別結晶化シーケンスが追加され、これは、第2の結晶化反応器24内で最終的な結晶化事象を伴う連続的な動的流れ(溶解及び堆積)であり、高純度材料を与える。精製された結晶は、次第に(連続運転で)又は段階的に(バッチ運転)、濾過又は他の何らかの固液分離手段によって単離される。これらを反応器から回収し、最終精製生成物として単離する。
【0082】
別の実施形態では、ほぼ全てのブラインの化学的性質に適応するために必要に応じて複数の段階を追加することができ、全体的な設計に対する大きな再設計を必要とせずに、プロセス全体をモジュール式にし、柔軟にし、高度に適応可能にする(この技術で処理することができる様々なブラインの数を劇的に増加させる)。言い換えれば、必要に応じてより多くの結晶化反応器を追加することができる(N+1)。
【0083】
N+1個の結晶化反応器はそれぞれ混合器36を含む。混合器36は、一定の濃度を維持する(すなわち、勾配の形成を防止する)ために、N+1個の結晶化反応器の内容物を撹拌する。混合器36は、物理的混合器である必要はなく、混合器36は、単に液体流による撹拌であってもよい。
【0084】
精製された炭酸リチウム35は、N+1個の結晶化反応器の底部に集まり、精製された固体炭酸リチウムを回収するために、フィルタ38(例えば、バグフィルタ又はフィルタプレス)を通して濾過される。最終的に単離された炭酸リチウムは、乾燥及び最終包装の前に、濾過段階で清浄水(逆浸透又は蒸留)を使用する洗浄50にさらに供される。
【0085】
N+1個の結晶化反応器内の結晶を含まない溶液相は、移送ライン40を介してフィーダタンク4内にポンプで戻され、戻される際にインラインで冷却される。したがって、このとき液相は、その冷却された温度に対して不飽和であるため、固相からの炭酸リチウム(不純)は溶解することができ、平衡濃度の溶液相に戻ることができる。不純物(Ca又はMgCOなど)は、フィーダタンク4(より低い温度T)内で最も低い溶解度になるため固相に残り、溶液相をさらに汚染しない。
【0086】
純粋な結晶性固体の洗浄からの廃棄物流55は、限定するものではないが、溶媒抽出などの従来の手段を使用してLiを回収するために再利用することができる。
【0087】
フィルタ中の結晶生成物の単離に続いて、2つの別個の廃棄物流が生成される。第1の廃棄物流は、高温反応器から排出される上清である。第2の廃棄物流は洗浄液であり、これは濾過ケークを洗浄するために使用される70℃の清浄な逆浸透水又は脱イオン水である。洗浄水は、付着した上清を剥ぎ取り、結晶の外層を溶解する。これらの廃棄物流は非常に純粋であり、唯一の他の成分は[Na+]又は[K+]である。廃棄物流をLi選択性溶媒抽出物に合わせることにより、廃水中のLiを適切に回収することができ、効率が劇的に向上する。次いで、溶媒抽出を再結晶プロセスのための供給原料として使用することができる。
【0088】
洗浄後、単離された炭酸リチウムは、ライン60を介して乾燥機に移送され、次いでライン65を介して乾燥機から取り出される。
【0089】
追加のプロセスとして、不純なLiCO(純度99.5%未満の結晶質材料)をライン19を介して第1の結晶化反応器14に投入することができる。不純な結晶質材料を溶解し、次いで再結晶(再処理)して純粋な結晶質材料15を生成することができる。次に、この純粋な結晶質材料は、濾過又は固体液体分離の他の何らかの手段によって最終精製生成物として単離される。この場合も、ライン19を介して投入されたLiCOの任意の純度に適合させるために、複数の段階を追加することができる。
【0090】
再結晶では、スラリーが生成され(乾燥投入及び清浄水、又は高温晶析装置からの濃厚なスラリー)、コールドタンクに保持される。コールドタンクは、正味の溶解を可能にする。コールドタンクから(濾過されて)得られた上清は、前述のように制御された流量で高温晶析装置に送られる。より低い[Na]を有する清浄な水を使用することができるため、より純粋な生成物を単離することを可能になる。ホットタンクの(フィルタ後の)上清をコールドタンクに戻して、純度の低い結晶を再溶解させる。この再結晶化は、(順次温度を上げる)MSMPRのカスケード段階として、又はバッチ単離、溶媒のパージ、及び乾燥結晶の純水への再投入によって行うことができる。この後者の場合は、溶媒抽出材料が系に再導入される可能性が高い方法である。十分な調整により、試料の連続的な再導入を追加して、プロセス全体を完全に連続的なモードで運転することができる。
【0091】
本発明は、従来のプロセスに勝るいくつかの利点を有する。
【0092】
第1に、必要な作動溶媒が少なくなる。溶液相は、主にフィーダから晶析装置への質量のコンベヤ(輸送手段)として使用されるため、プロセスは、少ない作業体積量のブラインを利用する可能性があり、これにより、回収される質量の潜在的な能力を損なうことなく、処理反応器のサイズ及びプラントに必要な物理的空間を劇的に減少させる。したがって、本発明のプロセスはより柔軟であり、より多様な場所に配置することができる。いくつかの形態のインライン蒸発が戻り回路に追加されると、3つの他の利点が実現され得る。すなわち、(i)原料を未加工ブラインとして添加することができるので、プロセスは完全に連続的になり、(ii)精製固体/廃棄物固体を晶析装置又はフィーダから収集することができ、(iii)使用済みブラインを濃縮してリサイクルすることができ、より低い初期Li投入量からリチウムを最大限回収することを可能にする。したがって、本発明は、バッチプロセスではなく連続プロセスであり得る。
【0093】
第2に、結晶化速度は、反応器間の温度差及びタンクへの出入りの流量によって厳密に制御することができる。他のすべてのプロセスにおいて、炭酸リチウムの結晶化は、所望の塩の回収率を最大化するために、高度の過飽和によって引き起こされる。これは迅速な精製を助けるが、結晶化速度に関してあまり制御できなくなり、凝集体の形成が強いられる。本発明では、全体の過飽和度は比較的低いレベルに維持される、なぜなら、より大きな反応器に計量供給される過濃縮溶液が、保持環境全体に対して比較的小さい割合(体積で1%~25%)を構成するからである。したがって、単位時間当たりに回収される正味質量はより少ないが、結晶制御(サイズ、形態、及び凝集)の度合いは容易に達成される。
【0094】
第3に、本発明のプロセスは適応性が高い。流れを変化させる本発明の能力により、投入された供給原料の化学的性質が突然変わった場合でも、結晶化速度を制御することができる。一実施形態では、この利点は、インライン分析技術を組み込むことによって達成される。別の実施形態では、プロセス結晶化顕微鏡プローブを使用して、流れストリームのサイズ、形状、及び品質(単結晶対凝集体)を連続的にモニタリングすることができる。別の実施形態は、インラインイオンクロマトグラフィシステムを組み込むことができ、カチオン性組成物及び濃度を時間の関数としてモニタリングすることを可能にする。これらのツールは、プラントが最適に機能することが担保されるようにプロセス条件(例えば、流量及び温度)を連続的に適合及び変更することを可能にし、投入ブライン組成の変化又は他の上流の材料変動に応答することができる。
【0095】
インライン分析技術に関して、他のイオンの濃度は、対象となるLiCOの溶解度に劇的な影響を与える。インライン分析技術は、塩リッチな環境にもかかわらず純粋な材料を単離するように機能する。インライン分析技術(例えば、イオンクロマトグラフィ)を使用して、可変投入ストリームに適合させることができる(例えば、多すぎる又は少なすぎるNaCOを添加すると、溶解度又は結晶化挙動に変動が生じる)。
【0096】
例えば、Blazeツール(Blaze Metrics製のBlaze900)を用いた濁度追跡は、システムをファウリングから防ぎ、結晶化速度を推定することを可能にし、値を使用して流量範囲及び温度をロックする。全体として、濁度追跡は、システムが通常の限界内で動作していること、及び結晶化が期待通りになされていることを確実にするための重要なインラインプロセス測定基準である。Blazeツールは、結晶化(温度及び添加流量)を確実に調整するために、単位時間当たりの結晶の質量の変化を与える、時間に対する濁度の追跡を可能にする。一般に、結晶化が速すぎると、結晶が凝集する。Blazeツールはまた、結晶形状を、単離された純度と相関させるために、結晶がフィルタプレスを通過する際にそれらを視覚化する。Blaze顕微鏡はバックコード長(back code langth)を報告し、それは、結晶化プロセス全体の結晶サイズ及び形状の経時的測定を与える。したがって、(1)Blazeデータに基づいて、温度、流量、又は濾過時間(プラント運転)の変化をトリガし、(2)保持時間を変更し、場合によって結晶画像データに基づいて純度決定を行うことが可能である。
【0097】
別の例として、ブライン組成はイオンクロマトグラフィによってモニタリングすることができる。具体的には、ブラインの濃度及び組成は、いくつかの重要な制御点においてモニタリング及び定量化することができる。例えば、投入物をモニタリングすることにより、投入ブラインを適切に軟化させるのに必要な炭酸ナトリウムの正確な重量を特定し、初期状態を確認することができる。これに関して、炭酸塩が多すぎることはまた、[Na+]が高すぎることを意味し、LiCO生成物の溶解度が上昇する。軟化した濾過上清をモニタリングすることにより、コールドタンクを出るときの[Li+]が得られ、CaCO及び他の微量不純物のみがコールドタンク内で固体として除去されること(すなわち、コールドタンク内でLiCOを失うことなく化学的過飽和が維持されること)を確認する。熱濾過された上清をモニタリングすることにより、結晶化後の[Li+]が得られ、これは、ホットタンクが結晶化を推進するのに十分に高いことを証明している。
【0098】
第4に、NaClの濃度がLiCOの溶解度に及ぼす影響を考慮すると、非常に高い塩濃度を用いて、結晶化プロセスの回収率を高めることができる。回収されるLiCOの最大総質量は、反応器間の2つの異なる温度間の溶解度差によって決まる。95℃における純粋なLiCOでは、溶解度は約10mg/mlである。しかし、NaCl含有量が25重量%超に増加すると、LiCOの溶解度は約6mg/ml未満に低下する。したがって、より多くのLiCOを溶液から追い出して回収収率を高めるために、高濃度のNaClを使用することが有利である。対照的に、従来の結晶化プロセスでは、高いNaClレベルで運転すると、最終LiCOの汚染度が高くなり、純度が低下する。本発明の連続結晶化は、プロセスにおいて高純度のLiCOを依然として達成しながら、この複合溶解度挙動を用いる。
【0099】
これらの利点のために、本発明は、材料を処理するためのエネルギー要求の削減によって製造の最終コストを低減し、さらに処理によって放出される温室効果ガス等価物に関して利点を提供する。
【0100】
実施例
フィーダタンク(溶解装置)及び結晶化反応器(晶析装置)の両方からの固相の試料を単離し、ICPOESによって分析した。結果を図7に示す。溶解装置からの固相試料は、LiCOが抽出されるにつれて純度が徐々に低下し、主にCaCOが残ることが分かった。晶析装置からの試料は高純度のままであった。ICPOESデータの現在の3倍のエラー率は、試料が純度99%超(すなわち、純度99.5%超)であることを裏付けている。
【0101】
本明細書における「垂直」、「水平」などの用語への言及は、基準系を確立するために限定ではなく例として行われている。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明を説明するために様々な他の基準系を使用することができることが理解される。本発明の特徴は、必ずしも図面に縮尺通りに示されていないこともまた理解される。さらに、「から構成される(composed of)」、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語又はそれらの変形が、詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかで使用される限り、そのような用語は、「備える(comprising)」という用語と同様に包括的かつオープンエンドであることを意図している。
【0102】
本明細書における「約(about)」、「おおよそ(approximately)」、及び「実質的に(substantially)」などの近似の文言によって修飾された用語への言及は、明記された厳密な値に限定されるものではない。近似の文言は、値を測定するために使用される機器の精度に対応し得、機器の精度に特に依存しない限り、記載された値の+/-10%を示し得る。
【0103】
別の特徴に「接続された」又は「結合された」特徴は、他の特徴に直接的に接続又は結合されてもよく、あるいは代わりに、1つ以上の介在する特徴が存在していてもよい。介在する特徴が存在しない場合、特徴は、別の特徴に「直接的に接続されて」もよく、又は「直接的に結合されて」もよい。少なくとも1つの介在する特徴が存在する場合、特徴は、別の特徴に「間接的に接続される」又は「間接的に結合される」ことができる。別の特徴に「接する(on)」又は「接触する(contacting)」特徴は、他の特徴に直接的に接するか又は直接的に接触していてもよく、あるいは代わりに、1つ以上の介在する特徴が存在していてもよい。介在する特徴が存在しない場合、特徴は、別の特徴と「直接的に接する」又は「直接的に接触する」ことができる。少なくとも1つの介在する特徴が存在する場合、特徴は別の特徴と「間接的に接する」又は「間接的に接触する」ことができる。
【0104】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。「備える(comprises)」及び/又は「備えている(comprising)」という用語は、本明細書で使用される場合、記載された特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではないことがさらに理解されよう。
【0105】
本発明を様々な実施形態の説明によって例示し、これらの実施形態をかなり詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に減縮すること、又は方法はどうあれ限定することは、本出願人の意図ではない。さらなる利点及び改変は、当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、本発明のより広い態様は、特定の細部、代表的な装置及び方法、並びに図示及び説明された例示的な例に限定されない。当業者が特許請求される発明を製造及び使用することを十分に可能にするために、本出願人は、様々な詳細な実施形態の利点及び欠点の両方に関する情報を提供している。当業者であれば、いくつかの用途において、上で詳述したような特定の実施形態の欠点は、完全に回避することができるか、又は特許請求される本発明によって提供される全体的な利点がそれを上回ることができることを理解するであろう。したがって、本出願人の全体的な発明概念の趣旨又は範囲から逸脱することなく、上記の詳細な教示から逸脱することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7