(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】超臨界流体洗浄システム及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 648G
(21)【出願番号】P 2023555324
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(86)【国際出願番号】 CN2022083624
(87)【国際公開番号】W WO2023142257
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】202210106871.6
(32)【優先日】2022-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】肖 剛
(72)【発明者】
【氏名】劉 亞飛
(72)【発明者】
【氏名】紀 宇軒
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-126974(JP,A)
【文献】特開平11-216437(JP,A)
【文献】特開2011-249454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の少なくとも一部に被洗浄液体が付着した洗浄対象サンプルを収容する洗浄チャンバーと、洗浄に必要な洗浄流体を供給し、前記洗浄流体を圧力が上昇して超臨界圧力よりも高くなるとともに温度が上昇して超臨界温度よりも高くなるように前記洗浄チャンバーに進入させるように駆動し、変動する圧力の作用により前記洗浄対象サンプルを発振洗浄し、かつ、超臨界洗浄流体を、圧力が低下して超臨界圧力以下にならないように前記洗浄チャンバー内から流出させるように駆動する超臨界洗浄流体供給装置とを含
み、
前記超臨界洗浄流体供給装置は、キャビティ、加熱装置及び冷却装置を含み、前記キャビティの出口は前記加熱装置の入口に連通し、前記加熱装置の出口は前記洗浄チャンバーの入口に連通し、前記洗浄チャンバーの出口は前記冷却装置の出口に連通し、前記冷却装置の入口は前記キャビティの入口に連通し、
前記キャビティは洗浄流体を収容するものであり、前記キャビティ内にはピストンが設けられ、前記ピストンの一側は駆動装置に接続され、前記ピストンの前記駆動装置から離れた側と前記キャビティの内壁とに囲まれて前記洗浄流体が占める空間が形成され、前記駆動装置によって前記ピストンを駆動して前記キャビティの内壁に沿って移動させることで前記洗浄流体の圧力を上昇又は低下させ、
前記加熱装置は、前記洗浄流体を加熱して超臨界洗浄流体にするものであり、
前記冷却装置は、前記洗浄チャンバーから流出する前記被洗浄液体を溶解した超臨界洗浄流体を冷却するものである、ことを特徴とする臨界流体洗浄システム。
【請求項2】
洗浄流体と被洗浄液体とを分離する分離器をさらに含み、前記分離器は、第1接続口と、第2接続口と、第3接続口とを含み、前記キャビティには、第1入口と第1出口が設けられ、前記第1入口と前記第1出口は、それぞれ前記キャビティの両端に位置し、前記第1入口は、比較的に前記ピストンから離れて設けられ、前記第1出口は、前記ピストンに比較的に近く、前記第1接続口は第1管路を介して前記第1出口に連通し、前記第2接続口は第2管路を介して前記第1入口に連通し、前記第3接続口は排出口であり、前記第1管路には前記キャビティから前記分離器への流体の一方向流動を制御する第1逆止弁が設けられ、前記第2管路には前記分離器から前記キャビティへの洗浄流体の一方向流動を制御する第2逆止弁が設けられ、前記ピストンが前記第1出口の前記第1入口から離れた側に位置する場合、前記分離器は、前記洗浄流体が占める空間に連通し、前記ピストンが前記第1入口と前記第1出口との間に位置する場合、前記分離器は、前記洗浄流体が占める空間に連通しない、
ことを特徴とする請求項
1に記載の超臨界流体洗浄システム。
【請求項3】
前記キャビティと前記加熱装置との間に設置される第3逆止弁と、前記加熱装置と前記洗浄チャンバーとの間に設置される第4逆止弁と、前記冷却装置と前記キャビティとの間に設置される第5逆止弁とをさらに含む、
ことを特徴とする請求項
2に記載の超臨界流体洗浄システム。
【請求項4】
洗浄流体補充管路をさらに含み、前記洗浄流体補充管路の出口は、前記キャビティの出口と前記加熱装置の入口との間の管路に連通し、前記洗浄流体補充管路には開閉弁がさらに設けられる、
ことを特徴とする請求項
1に記載の超臨界流体洗浄システム。
【請求項5】
前記駆動装置は電気駆動ロッドであるか、或いはリンクを介して前記ピストンに駆動連結されたスターリングサイクルシステムにおけるフライホイールである、
ことを特徴とする請求項
1~
4のいずれか一項に記載の超臨界流体洗浄システム。
【請求項6】
前記超臨界洗浄流体供給装置は1つ又は複数である、
ことを特徴とする請求項
1~
4のいずれか一項に記載の超臨界流体洗浄システム。
【請求項7】
前記洗浄流体は二酸化炭素であり、前記洗浄対象サンプルはウェーハである、
ことを特徴とする請求項1に記載の超臨界流体洗浄システム。
【請求項8】
前記洗浄流体を圧力が上昇して超臨界圧力よりも高くなるように流出させて前記洗浄チャンバーに進入させるように駆動する加圧ステップと、
加圧された前記洗浄流体を加熱して超臨界洗浄流体にし、変動する圧力で超臨界洗浄流体が洗浄チャンバーに入る加熱ステップと、
変動する圧力の作用で前記超臨界洗浄流体が前記洗浄対象サンプルを発振洗浄する洗浄ステップと、
前記被洗浄液体を溶解した超臨界洗浄流体を、圧力が低下してその超臨界圧力以下にならないように前記洗浄チャンバー内から流出させるように駆動する減圧ステップと、
被洗浄液体を溶解した超臨界洗浄流体を冷却して、被洗浄液体と洗浄流体とを得る冷却ステップとを含む、
ことを特徴とする請求項1~
7のいずれか一項に記載の超臨界流体洗浄システムの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置の技術分野に関し、具体的には、超臨界流体洗浄システム及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハは、半導体産業において最も重要な材料であり、その表面清浄度に対する要求がかなり厳しい。半導体ウェーハの洗浄プロセスにおいて、ウェーハ表面の乾燥処理は不可欠な一環である。ウェーハの洗浄プロセスが完了したとしても、ウェーハの表面に少量の液体(通常は水)が残留するため、乾燥によりウェーハ表面の液体を徹底的に除去することで、ウェーハ表面の再汚染や「ウォーターマーク」などの欠陥の発生のせいでウェーハの性能に影響を及ぼしその歩留まりを低下させることが防止される。
【0003】
現在、ウェーハ表面の乾燥技術が多く開発されており、主に遠心脱水乾燥技術、マランゴニ乾燥技術及びイソプロピルアルコール(Isopropyl alcohol、IPA)による乾燥技術などがある。バッチ洗浄のウェーハには主にIPA乾燥法が採用され、IPA乾燥法では、ウェーハを乾燥する前に、IPA液体に浸漬する必要があり、相互溶解性により、ウェーハ表面の水はIPAに溶解し、液体のIPAになる。IPAは、重力、表面張力、揮発などの多重作用によってウェーハ表面から離れ、ウェーハ表面の乾燥を実現する。
【0004】
ウェーハ洗浄の分野において、半導体プロセスノードのさらなる縮減及びパターンのアスペクト比がますます大きくなるにつれて、IPAがウェーハ表面から離れる過程において、その表面張力の作用により、ウェーハのパターン構造が破壊され、さらに構造にスティッキング、陥没などが発生し、ウェーハ製品が失効してしまう。
【0005】
従来のウェーハ表面の残留IPAの対処方法では、表面張力がほぼゼロである超臨界二酸化炭素流体を用いてウェーハ表面のIPAを徐々に溶解させ、最終的にウェーハ表面のIPAを全て超臨界二酸化炭素流体に置換し、最後に降温、減圧によりウェーハ表面の超臨界二酸化炭素流体を蒸発させてウエハ表面から離脱させる。しかし、この方法は、超臨界二酸化炭素におけるIPAの溶解レートに制限され、短時間で大量のウェーハをまとめて乾燥処理することができず、乾燥効率が悪い。
【発明の概要】
【0006】
以上の問題に対して、本発明は、加圧又は減圧により洗浄流体の圧力を変えることで、洗浄流体が発振という形で洗浄を行うことが可能となり、加圧過程において超臨界洗浄流体の被洗浄液体に対する溶解レートを向上させ、減圧過程において被洗浄液体を持ち出すことができ、洗浄効率を向上させ、洗浄対象サンプルをまとめて洗浄するのに適する超臨界流体洗浄システム及び洗浄方法を提供する。
【0007】
本発明は、超臨界流体洗浄システムであって、表面の少なくとも一部に被洗浄液体が付着した洗浄対象サンプルを収容する洗浄チャンバーと、洗浄に必要な洗浄流体を供給し、洗浄流体を圧力が上昇して超臨界圧力よりも高くなるとともに温度が上昇して超臨界温度よりも高くなるように洗浄チャンバーに進入させるように駆動し、変動の圧力の作用により洗浄対象サンプルを発振洗浄し、かつ、超臨界洗浄流体を圧力が低下して超臨界圧力以下にならないように洗浄チャンバー内から流出させるように駆動する超臨界洗浄流体供給装置とを含む超臨界流体洗浄システムを提供する。
【0008】
本発明は、洗浄流体の圧力を変えることで、洗浄流体が圧力変動の方式で洗浄対象サンプルを発振洗浄し、加圧過程において超臨界洗浄流体の被洗浄液体に対する溶解レートを向上させ、減圧過程において被洗浄液体を持ち出すことができ、洗浄効率を向上させるとともに大量の洗浄対象サンプルをまとめて洗浄するのに適している。
【0009】
本発明の好ましい技術案では、超臨界洗浄流体供給装置は、キャビティ、加熱装置及び冷却装置を含み、キャビティの出口は加熱装置の入口に連通し、加熱装置の出口は洗浄チャンバーの入口に連通し、洗浄チャンバーの出口は冷却装置の出口に連通し、冷却装置の出口はキャビティの入口に連通し、
キャビティは洗浄流体を収容するものであり、キャビティ内にはピストンが設けられ、ピストンの一側は駆動装置に接続され、ピストンの駆動装置から離れた側とキャビティの内壁とに囲まれて、洗浄流体が占める空間が形成され、駆動装置によってピストンを駆動してキャビティの内壁に沿って移動させることで洗浄流体の圧力を上昇又は低下させ、
加熱装置は、洗浄流体を加熱して超臨界洗浄流体にするものであり、
冷却装置は、洗浄チャンバーから流出する被洗浄液体を溶解した超臨界洗浄流体を冷却するものである。
【0010】
本発明の好ましい技術案において、洗浄流体と被洗浄液体とを分離する分離器をさらに含み、分離器は、第1接続口と、第2接続口と、第3接続口とを含み、キャビティには、第1入口と第1出口が設けられ、第1入口と第1出口は、それぞれキャビティの両端に位置し、第1入口は、比較的にピストンから離れて設けられ、第1出口は、ピストンに比較的に近く、第1接続口は第1管路を介して第1出口に連通し、第2接続口は第2管路を介して第1入口に連通し、第3接続口は排出口であり、第1管路にはキャビティから分離器への流体の一方向流動を制御する第1逆止弁が設けられ、第2管路には分離器からキャビティへの洗浄流体の一方向流動を制御する第2逆止弁が設けられ、ピストンが第1出口の第1入口から離れた側に位置する場合、分離器は、洗浄流体が占める空間に連通し、ピストンが第1入口と第1出口との間に位置する場合、分離器は、洗浄流体が占める空間に連通しない。
【0011】
当該技術案によれば、分離器は、2つの管路によりキャビティに接続されるとともに第1逆止弁、第2逆止弁により流体の流れ方向を制御することで、便利で制御可能な洗浄流体の循環利用を実現し、超臨界流体洗浄システムの構造を簡素化する。また、ピストンの位置を変えることで、分離器と流体が占める空間との連通又は非連通を実現し、構造が簡単で操作も便利になり、システム構成が簡素化される。
【0012】
本発明の好ましい技術案において、キャビティと加熱装置との間に設置される第3逆止弁と、加熱装置と洗浄チャンバーとの間に設置される第4逆止弁と、冷却装置とキャビティとの間に設置される第5逆止弁とをさらに含む。
当該技術案によれば、逆止弁の設置により、液体が回流して洗浄効果に影響するのを防止できる。
【0013】
本発明の好ましい技術案において、洗浄流体補充管路をさらに含み、洗浄流体補充管路の出口は、キャビティの出口と加熱装置の入口との間の管路に連通し、洗浄流体補充管路には開閉弁がさらに設けられる。
【0014】
当該技術案によれば、洗浄流体補充管路は、構造が簡単であり、必要に応じて流体供給装置内に流体を補充し、洗浄に必要な分の洗浄流体を満足することができる。
本発明の好ましい技術案において、駆動装置は電気駆動ロッドであるか、或いはリンクを介してピストンに駆動連結されたスターリングサイクルシステムにおけるフライホイールである。
【0015】
当該技術案によれば、電気駆動ロッドを用いてピストンを駆動することでキャビティの体積を変えるため、簡単で操作が容易であり、且つ電気駆動により洗浄システムの作動効率を向上させた。スターリングサイクルシステムにおけるフライホイールを用いてリンクでピストンを駆動することでキャビティの体積を変えるため、特定の外部熱源さえあれば、ピストンをキャビティ内で運動させる動力源を別途に配置しなくて済む。
【0016】
本発明の好ましい技術案において、超臨界洗浄流体供給装置は1つ又は複数である。
【0017】
当該技術案によれば、1つの洗浄チャンバーに超臨界流体供給装置を配置することで、異なる圧力変動範囲での発振洗浄を実現し、異なる超臨界洗浄流体と被洗浄液体に対する洗浄システムの適用性を向上させ、洗浄効率を向上させる。
本発明の好ましい技術案において、超臨界洗浄流体供給装置は、順次に接続してスターリングサイクルを形成する膨張チャンバー、加熱装置、再生器、冷却装置及び圧縮チャンバーを含み、洗浄チャンバーの入口は加熱装置の出口と再生器との間の管路に接続され、洗浄チャンバーの出口は再生器と冷却装置との間の管路に接続される。
【0018】
本発明の好ましい技術案において、洗浄流体は二酸化炭素であり、洗浄対象サンプルはウェーハである。
【0019】
当該技術案によれば、表面張力がほぼゼロである超臨界二酸化炭素を洗浄流体として採用し、圧力変動による発振と結合してウェーハを洗浄することで、従来のウェーハ洗浄に存在するIPAの溶解効率が低下し、ウェーハ構造が損傷しやすいという欠陥を解決することができる。
【0020】
本発明は、超臨界流体洗浄システムの洗浄方法であって、
洗浄流体を圧力が上昇して超臨界圧力よりも高くなるように流出させて洗浄チャンバーに進入させるように駆動する加圧ステップと、
洗浄流体を加熱して超臨界洗浄流体にする加熱ステップと、
超臨界洗浄流体が変動の圧力の作用で洗浄対象サンプルを発振洗浄する洗浄ステップと、
被洗浄液体を溶解した超臨界洗浄流体を圧力が低下してその超臨界圧力以下にならないように洗浄チャンバー内から流出させるように駆動する減圧ステップと、
被洗浄液体を溶解した超臨界洗浄流体を冷却して、被洗浄液体と洗浄流体とを得る冷却ステップとを含む超臨界流体洗浄システムの洗浄方法を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態における超臨界流体洗浄システムの構造概略図である。
【
図2】本発明の第1実施形態における第1種の圧力変化則の模式図である。
【
図3】本発明の第1実施形態における第2種の圧力変化則の模式図である。
【
図4】本発明の第1実施形態における第3種の圧力変化則の模式図である。
【
図5】本発明の第2実施形態における超臨界流体洗浄システムの構造概略図である。
【
図6】本発明の第2実施形態における圧力変化則の一例の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例における技術案を、本発明の実施例における図面に合わせて、明確且つ完全に説明するが、説明される実施例は本発明の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではないことが明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働なしに取得し得る他のすべての実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0023】
(第1実施形態)
本発明は、1つ又は複数の媒体循環回路を含む超臨界流体洗浄システムを提供する。各媒体循環回路は管路を介して順次接続されたキャビティ1、加熱装置2、洗浄チャンバー3及び冷却装置4を含む。加熱装置2は、洗浄流体を加熱して超臨界洗浄流体にするために用いられる。洗浄チャンバー3内は表面の少なくとも一部に被洗浄液体が付着した洗浄対象サンプル(図示せず)及び超臨界洗浄流体を収容し、変動する圧力の作用で超臨界洗浄流体が洗浄対象サンプルを発振洗浄する。冷却装置4は洗浄チャンバー3から流出する被洗浄液体を溶解した超臨界洗浄流体を冷却するために用いられる。キャビティ1内にはピストン13が設けられ、ピストン13の一側は駆動装置に接続され、ピストン13の駆動装置から離れた側とキャビティ1の内壁とに囲まれて、洗浄流体が占める空間が形成され、洗浄流体の圧力を上昇又は低下させるように、電気駆動ロッド14によってピストン13を駆動してキャビティ1の内壁に沿って移動させることで洗浄流体が占める空間の大きさを変える。
【0024】
本発明は、キャビティ1における洗浄流体が占める空間を変える手段で洗浄流体の圧力を変えることにより、洗浄流体が流れる駆動力を提供するとともに、洗浄流体が圧力変動の方式で洗浄対象サンプルを発振洗浄し、加圧過程において超臨界洗浄流体の被洗浄液体に対する溶解レートを向上させ、減圧過程において被洗浄液体を持ち出すことができ、洗浄効率を向上させるとともに大量の洗浄対象サンプルをまとめて洗浄するのに適している。
【0025】
具体的には、本発明の実施形態において、洗浄流体が媒体循環回路に入る前に、加熱前処理の必要がなく、キャビティ1の前段のシステム構成が簡略化された。また、洗浄流体が媒体循環回路に入る前に加熱を行う形態と比較すれば、加熱装置2をキャビティ1の出口と洗浄チャンバー3の入口との間の管路に設けることで、冷却装置4と協働して、洗浄流体を昇圧、加熱、洗浄、減圧、冷却する循環プロセスを実現して、洗浄対象サンプルの複数回発振洗浄を図ることができる。さらに、自動温度制御装置(図示せず)を備える加熱装置2がキャビティ1の出口の洗浄流体を加熱し、加熱装置2内の洗浄流体の温度を設定温度の近くに制御することで、洗浄チャンバー3内を恒温に保つ。本発明の実施形態において、システムの圧力(システム内の各箇所の圧力は同じである)は洗浄流体の超臨界圧力を下回らず、昇圧、減圧はいずれも超臨界圧力を下回らない前提で行われ、洗浄チャンバー3内の温度も洗浄流体の超臨界温度を下回らないようにしている。洗浄チャンバー3を加熱することにより洗浄チャンバー3内の温度が洗浄流体の超臨界温度を下回らないように維持することができる。洗浄チャンバー3内に圧力センサを設置して洗浄チャンバー3内の圧力を監視することで、制御モジュールは、洗浄チャンバー3内の最低圧力が洗浄流体の超臨界圧力より低くなる場合、補充管路71を介して洗浄流体を補充することでシステム全体の圧力を高めるように配置され得る。
【0026】
本発明の好ましい実施形態において、駆動装置は電気駆動ロッド14、或いはリンクを介してピストン13に接続されるスターリングサイクルシステムにおけるフライホイール(図示せず)である。電気駆動ロッド14によりピストンを駆動してキャビティ1の体積を変化させるのは、簡単で操作が容易であり、且つ電気駆動により洗浄システムの作動効率を向上させた。スターリングサイクルシステムにおけるフライホイールを用いてリンクでピストンを駆動することでキャビティの体積を変えるのは、特定の外部熱源(例えば加熱装置)さえあれば、ピストンをキャビティ1内で運動させる動力源を別途に配置しなくて済む。加熱装置2は電気加熱、太陽熱加熱などの形態であってもよく、本発明は加熱の手段を限定しない。
【0027】
具体的には、
図2に示すように、キャビティ1における洗浄流体が占める空間を変えることにより、キャビティ1における洗浄流体の圧力変動則は、
図2に示すようになる。圧力変動の区間P1-P2は洗浄流体の超臨界圧力以上であるべきである。t1-t2の時間帯において、洗浄流体の占める空間を増加させて減圧を実現し、t2-t3の時間帯において、洗浄流体の占める空間を減少させて昇圧を実現し、昇圧、減圧を経て1サイクルを完了する。昇圧の時間長さと減圧の時間長さは同じであってもよく、異なっていてもよく、実際のニーズに応じて調整される。圧力はP1-P2の間で変動する。
図3に示すように、圧力変動則は、昇圧、減圧に加えて、保圧を含み、即ち、所定圧力まで昇圧したら一定時間の圧力保持を行い、所定圧力まで減圧したら、一定時間の圧力保持を行い、システムは昇圧、保圧、減圧、保圧を経てから1サイクルを完了する。保圧モードでは、ピストン13の位置が不変で、システムの圧力も不変となり、超臨界洗浄流体が被洗浄液体とよりよく相互溶解し、減圧時に、より多くの被洗浄液体を持ち出すことができ、洗浄効率を向上させる。圧力を一定にする目的は、超臨界洗浄流体と被洗浄液体とをより多く相互溶解させることにある。
図4に示すように、圧力変動則は、所定圧力まで昇圧又は減圧したら保圧を行い、システムが昇圧、保圧、減圧を経て1サイクルを完了するというものであってもよい。図示しないが、圧力変動則は昇圧、減圧、保圧を経て1サイクルを完了するというものであってもよい。そのうち、1サイクルにおいての昇圧、減圧の時間上の順序は限定されず、昇圧してから減圧してもよく、減圧してから昇圧してもよいが、当業者によって実際の状況に応じて圧力変動則が調整され、本発明の実施形態に例示された例に限定されない。また、
図2、
図3及び
図4では、昇圧、減圧が直線的に増加、直線的に低減するように示されているが、これに限定されず、圧力変化曲線は、サイン関数やコサイン関数、又は他の態様で変化してもよい。
【0028】
本発明の好ましい実施形態において、超臨界流体洗浄システムは、1つまたは複数の分離器5をさらに含む。分離器5は、キャビティ1に接続され、洗浄チャンバー3から流出する洗浄流体と被洗浄液体とを分離するために用いられる。洗浄流体が占める空間が拡大している場合に、分離器5は洗浄流体が占める空間に連通するが、洗浄流体が占める空間が減縮している場合に、分離器5は洗浄流体が占める空間に連通しない。さらに、洗浄流体が冷却された後にキャビティ1内に戻った状態によって、気液分離器または液液分離器などであってもよく、気液分離器、液液分離器の構造は、従来技術の通常仕組みを参照すればよく、ここでは説明を省略する。分離された洗浄流体は繰り返し使用され、洗浄コストを削減できる。さらに、被洗浄液体が分離された流体はシステムに再び入り循環することで、洗浄流体の清浄度を向上させ、被洗浄液体に汚染された洗浄流体で洗浄対象サンプルを洗浄するのが回避される。本発明の洗浄流体は循環の形で洗浄を行うため、サンプル発振洗浄の連続性及び繰り返し性を実現し、洗浄効率の向上に有利である。
【0029】
具体的には、各分離器5は、第1接続口51と、第2接続口52と、第3接続口53とを含み、キャビティ1には、第1入口12と第1出口11が設けられ、第1入口12と第1出口11は、それぞれキャビティ1の両端に位置し、第1入口12は、比較的にピストン13から離れて設けられ、第1出口11は、ピストン13に比較的に近く、第1接続口51は第1管路を介して第1出口11に連通し、第2接続口52は第2管路を介して第1入口12に連通し、第3接続口53は排出口であり、第1管路にはキャビティ1から分離器5への流体の一方向流動を制御する第1逆止弁61が設けられ、第2管路には分離器5からキャビティ1への洗浄流体の一方向流動を制御する第2逆止弁62が設けられる。ピストン13を第1出口11へ移動させて第1出口11の第1入口から離れた側(図においてはピストン13の左側)に位置させる場合、分離器5は洗浄流体が占める空間に連通する。その際、洗浄流体が占める空間が拡大し、圧力が低下する。ピストン13を第1入口12へ移動させて第1入口12と第1出口11との間に位置させる場合、分離器5は洗浄流体が占める空間に連通しない。本発明の実施形態において、分離器5は、2つの管路を介してキャビティ1に接続され、かつ第1逆止弁61、第2逆止弁62によって流体の一方向流動を制御することで、便利で制御可能な洗浄流体の循環利用を実現し、超臨界流体洗浄システムの構造を簡素化する。また、ピストン13を移動することで、分離器5と洗浄流体が占める空間との連通又は非連通を制御するため、開閉弁が省略され、システムの構造が簡素化され、コストを削減できた。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、2つ又は複数の媒体循環回路は1つの洗浄チャンバー3を共有する。即ち、1つの洗浄チャンバー3に対して2つ又は複数の媒体循環回路が配置可能であり、異なる圧力変動範囲での発振洗浄を実現し、洗浄効率及び洗浄効果を向上させることができる。媒体循環回路は、少なくともキャビティ1、加熱装置2、洗浄チャンバー3、冷却装置4が順次接続して形成される。
図1では、1つの洗浄チャンバー3に対して2つの媒体循環回路が配置され、2つのキャビティ1、2つのピストン13などを含むことを示している。システムが複数の媒体循環回路を含む場合、システムの圧力変化の範囲及びレートは、複数のキャビティ1におけるピストン13の掃気体積、位相差(0-180°)及びピストン13の移動速度によって共同で決定されるものであり、当業者は、実際の状況に応じて掃気体積、位相差、ピストン13の移動速度などのパラメータを調整することができ、本発明の実施形態はこれを限定しない。
本発明の好ましい実施形態において、洗浄流体補充管路71をさらに含み、洗浄流体補充管路71の出口は、キャビティ1の出口と加熱装置2の入口との間の管路に連通し、洗浄流体補充管路71には開閉弁がさらに設けられる。
【0031】
当該技術案によれば、必要に応じてキャビティ1内に洗浄流体を補充し、洗浄に必要な分の洗浄流体を満足することができる。洗浄チャンバー3内に超臨界洗浄流体をそのまま補充する場合と比較すれば、加熱装置2の前に洗浄流体補充管路71を設置することにより、洗浄流体が加熱された後に洗浄チャンバー3に搬入され、洗浄チャンバー3内の超臨界洗浄流体の温度及び圧力が加熱装置出口の超臨界洗浄流体の温度及び圧力に一致するのを保証することができ、また、システム構造の簡素化にも有利である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、キャビティ1と加熱装置2との間に設置される第3逆止弁63と、加熱装置2と洗浄チャンバー3との間に設置される第4逆止弁64と、冷却装置4とキャビティ1との間に設置される第5逆止弁65とをさらに含む。上記の手段により、液体が回流して洗浄効果に影響するのを防止できる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、洗浄流体は二酸化炭素であり、洗浄対象サンプルはウェーハである。本発明の実施形態に係る超臨界流体洗浄システムは、ウェーハの洗浄に適用でき、表面張力がほぼゼロである超臨界二酸化炭素を洗浄流体として採用し、圧力変動による発振と結合してウェーハを洗浄することで、従来のウェーハ洗浄に存在するIPAの溶解効率が低下し、ウェーハ構造が損傷しやすいという欠陥を解決できた。本発明は上記例を例示したが、洗浄流体の種類及び洗浄対象サンプルの種類に対する制限がなく、当業者は実際のニーズに応じて他の洗浄流体や洗浄対象サンプルを選択してもよい。
【0034】
本発明は、超臨界流体洗浄システムの作動方法であって、
洗浄流体を圧力が上昇して超臨界圧力よりも高くなるようにキャビティ1から流出させるように駆動する加圧ステップと、
加圧された洗浄流体を加熱して超臨界洗浄流体にし、変動する圧力で超臨界洗浄流体が洗浄チャンバー3に入る加熱ステップと、
変動する圧力の作用で超臨界洗浄流体が洗浄対象サンプルを発振洗浄する洗浄ステップと、
被洗浄液体を溶解した超臨界洗浄流体を、圧力が低下して超臨界圧力以下にならないように洗浄チャンバー3内から流出させるように駆動する減圧ステップと、
被洗浄液体を溶解した超臨界洗浄流体を冷却して、被洗浄液体と洗浄流体とを得る冷却ステップと、
を含む超臨界流体洗浄システムの作動方法を更に提供する。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、下記に示す被洗浄液体と洗浄流体を分離するステップをさらに含む。ピストン13が第1出口の左側に位置するようにピストン13の位置を調節し、さらに洗浄流体が占める空間と分離器5とが連通になり、洗浄チャンバー3における洗浄流体と被洗浄液体は第1出口111を介して分離器5に入り、被洗浄液体は排出口から排出され、洗浄流体は第1入口112を通ってキャビティ1に流入する。
【0036】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は超臨界流体洗浄システムを提供する。第1実施形態との相違点は、第1実施形態において、システム圧力の低下は、キャビティにおける洗浄流体の占める体積の増大と温度の低下との複合作用によるものである。ところが、第2実施形態において、システムの体積は不変であり、主に温度低下によって圧力の低下を実現し、且つ動力源を必要とせず、外部熱源のみで循環洗浄を実現することができる。本発明の第2実施形態における圧力の変化則は
図6に示されるが、第1実施形態における圧力の変化傾向と基本的に同じであるため、ここでは説明を省略する。
【0037】
具体的には、超臨界洗浄流体供給装置は、順次に接続してスターリングサイクルを形成する膨張チャンバー81、加熱装置2、再生器82、冷却装置4及び圧縮チャンバー83を含み、洗浄チャンバー3の入口は加熱装置2の出口と再生器82との間の管路に接続され、洗浄チャンバー3の出口は再生器82と冷却装置4との間の管路に接続される。さらに、洗浄チャンバー3の入口管路には第6逆止弁66が設けられ、洗浄チャンバー3の出口管路には第7逆止弁67が設けられ、第6逆止弁66は加熱装置2から洗浄チャンバー3への洗浄流体の一方向流動を制御し、第7逆止弁67は洗浄チャンバー3から冷却装置4への洗浄流体の一方向流動を制御する。
【0038】
本発明の第2実施形態において、分離器5をさらに含む。分離器5の第1接続口、第2接続口は管路を介して冷却装置4と圧縮チャンバー83との間の管路に連通し、被洗浄液体を溶解した洗浄流体が分離器を経ずに圧縮チャンバー83に入るのを防止するように、第1接続口、第2接続口に対応する管路にはそれぞれ第1逆止弁61、第2逆止弁62が設けられる。
【0039】
本発明の好ましい実施形態において、スターリングサイクルシステムの構造は、α型、β型或いはγ型であり、また、単動式でも複動式でもよい。
【0040】
α型スターリングサイクルシステムと洗浄チャンバーとの結合システムを例として説明すると、本発明の第2実施形態に対応する洗浄方法では、スターリングサイクルが定積で昇温する過程において、左、右にあるピストンが同期して左に移動し、低温洗浄流体が再生器82内を通過して加熱昇温され、昇圧されて超臨界洗浄流体となり、一部の超臨界洗浄流体が洗浄チャンバー3内に入る。スターリングサイクルが定積で冷却する過程において、左、右にあるピストンが同期して右に移動し、超臨界洗浄流体が洗浄チャンバー3内から流出して冷却装置4に入り、超臨界洗浄流体の温度が低下し、圧力も低下する。循環過程全体における圧力の変動則が
図6に示される。上記作業中、両ピストンシリンダの体積比、両ピストンの位相差を設計することにより圧力変動の範囲を調整可能である。
【0041】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨及び原則内で行われるあらゆる修正、同等置換及び改良等は、すべて本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0042】
1 キャビティ
11 第1出口
12 第1入口
13 ピストン
14 電気駆動ロッド
2 加熱装置
3 洗浄チャンバー
4 冷却装置
5 分離器
51 第1接続口
52 第2接続口
53 第3接続口
61 第1逆止弁
62 第2逆止弁
63 第3逆止弁
64 第4逆止弁
65 第5逆止弁
66 第6逆止弁
67 第7逆止弁
71 洗浄流体補充管路
81 膨張チャンバー
82 再生器
83 圧縮チャンバー