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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】花弁の生産方法及び開花促進剤
(51)【国際特許分類】
   A01G 22/60 20180101AFI20241211BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20241211BHJP
   A01K 63/04 20060101ALI20241211BHJP
   A01K 61/10 20170101ALI20241211BHJP
【FI】
A01G22/60
A01G31/00 601A
A01K63/04 F
A01K61/10
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2024020530
(22)【出願日】2024-02-14
【審査請求日】2024-03-25
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519309681
【氏名又は名称】株式会社プラントフォーム
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】榎 康明
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-042540(JP,A)
【文献】特開2022-112368(JP,A)
【文献】特許第7369412(JP,B1)
【文献】特開2014-042492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 22/60
A01G 31/00
A01K 63/04
A01K 61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キク科若しくはスミレ科の花弁の生産方法であって、淡水魚を、下記環境で養殖する養殖部における養殖水を、前記養殖水中のアンモニアを硝酸塩へ硝化する硝化菌及び前記養殖水中の糞便や残餌などの固形廃棄物を分解する従属栄養細菌から成る微生物が定着した体積が養殖水容量の0.1~5%であるろ過材を通過させて処理した処理水によりキク科若しくはスミレ科の花を栽培することで当該花の花弁を生産することを特徴とする花弁の生産方法。

養殖水量に対する魚体重の割合で算出する飼育密度を0.1~3.0%とした環境。
【請求項2】
請求項1記載の花弁の生産方法であって、前記花は食用花であることを特徴とする花弁の生産方法。
【請求項3】
請求項1記載の花弁の生産方法であって、前記花は食用のマリーゴールド若しくは食用のビオラであることを特徴とする花弁の生産方法。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の花弁の生産方法において、前記淡水魚はチョウザメであり、1日あたりの給餌量は総魚体重の0.1~6.0%であることを特徴とする花弁の生産方法。
【請求項5】
請求項1~3いずれか1項に記載の花弁の生産方法において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする花弁の生産方法。
【請求項6】
請求項4記載の花弁の生産方法において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする花弁の生産方法。
【請求項7】
キク科若しくはスミレ科の花弁の生産方法であって、淡水魚を、下記環境で養殖する養殖部における養殖水を、前記養殖水中のアンモニアを硝酸塩へ硝化する硝化菌及び前記養殖水中の糞便や残餌などの固形廃棄物を分解する従属栄養細菌が定着した体積が養殖水容量の0.1~5%であるろ過材を通過させて処理した処理水によりキク科若しくはスミレ科の花の開花を促進させて栽培し、当該花の花弁を生産することを特徴とする花弁の生産方法。

養殖水量に対する魚体重の割合で算出する飼育密度を0.1~3.0%とした環境。
【請求項8】
請求項7記載の花弁の生産方法であって、前記花は食用花であることを特徴とする花弁の生産方法。
【請求項9】
請求項7記載の花弁の生産方法であって、前記花は食用のマリーゴールド若しくは食用のビオラであることを特徴とする花弁の生産方法。
【請求項10】
請求項7~9いずれか1項に記載の花弁の生産方法において、前記淡水魚はチョウザメであり、1日あたりの給餌量は総魚体重の0.1~6.0%であることを特徴とする花弁の生産方法。
【請求項11】
請求項7~9いずれか1項に記載の花弁の生産方法において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする花弁の生産方法。
【請求項12】
請求項10記載の花弁の生産方法において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする花弁の生産方法。
【請求項13】
キク科若しくはスミレ科の花弁の開花促進剤であって、淡水魚を、下記環境で養殖する養殖部における養殖水を、前記養殖水中のアンモニアを硝酸塩へ硝化する硝化菌及び前記養殖水中の糞便や残餌などの固形廃棄物を分解する従属栄養細菌が定着した体積が養殖水容量の0.1~5%であるろ過材を通過させて処理した処理水で構成されていることを特徴とする開花促進剤。

養殖水量に対する魚体重の割合で算出される飼育密度は0.1~3.0%の環境。
【請求項14】
請求項13記載の開花促進剤であって、前記花は食用花であることを特徴とする開花促進剤。
【請求項15】
請求項13記載の開花促進剤であって、前記花は食用のマリーゴールド若しくは食用のビオラであることを特徴とする開花促進剤。
【請求項16】
請求項13~15いずれか1項に記載の開花促進剤において、前記淡水魚はチョウザメであり、1日あたりの給餌量は総魚体重の0.1~6.0%であることを特徴とする開花促進剤。
【請求項17】
請求項13~15いずれか1項に記載の開花促進剤において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする開花促進剤。
【請求項18】
請求項16記載の開花促進剤において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする開花促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花弁の生産方法及び開花促進剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の花の栽培には化学肥料が用いられており、化学肥料の取り扱い企業によって、花の栽培用の処方が公開されている。しかし、化学肥料を使用した栽培では草勢を上手く制御できず、草丈や葉ばかりが成長し、効果的に花を成長させることが難しいという課題があった。また、化学肥料は化石燃料や鉱物資源に依存しており、持続可能な代替肥料への切り替えが求められているほか、輸入原料に依存しているため、調達の不安定さも課題となっていた。
【0003】
そこで、花の開花に関し、例えば、2-アミノイソ酪酸(その塩を含む)、ビタミンB類、糖類、植物生理活性剤、防菌・抗菌剤および防藻剤を含有した植物鮮度保持機能付き開花促進剤が知られているが(特許文献1)、この特許文献1は観賞用の切り花を対象とした植物鮮度保持機能付き開花促進剤であって、栽培用の肥料・活力剤として使用することは想定されていない。また、化学成分で構成されていることから、化学肥料としての課題を残している。
【0004】
化学肥料に代わる花用の代替肥料として、糞尿と植物質原料を混合し、発酵させることで得られる有機肥料が提案されているが(特許文献2)、添加する副原料が非常に多く、かつ発酵に2か月程度の期間を要するため、手間と時間の面に課題があった。
【0005】
近年、フォトジェニックな食品の需要等からエディブルフラワー(食用花)の市場が拡大しており、世界のエディブルフラワーの市場規模は2022年~2026年の間に1億772万米ドルの増加が見込まれ、予測期間中に5.75%の年平均成長率で成長すると予測されている(非特許文献1)。そのため、花を効果的に栽培することが可能な肥料の開発が求められており、特に、食用花としての需要も考慮すると、花を効果的に生育させるだけではなく、オーガニック栽培が可能で栄養価も高いことが望ましいが、これまでこれら要件をすべて満たす肥料は存在していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-239506号公報
【文献】特開2010-208893号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】「世界のパッケージ入りエディブルフラワー(食用花)市場2022年~2026年」、[online]、グローバルインデックス株式会社ホームページ、「2023年12月27検索」、インターネット<https://www.dreamnews.jp/press/0000265556/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述した現状に鑑みてなされたものであり、従来に無い非常に画期的な花弁の生産方法及び開花促進剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
キク科若しくはスミレ科の花弁の生産方法であって、淡水魚Fを、下記環境で養殖する養殖部1における養殖水Wを、前記養殖水W中のアンモニアを硝酸塩へ硝化する硝化菌及び前記養殖水W中の糞便や残餌などの固形廃棄物を分解する従属栄養細菌から成る微生物が定着した体積が養殖水容量の0.1~5%であるろ過材を通過させて処理した処理水W1によりキク科若しくはスミレ科の花を栽培することで当該花の花弁を生産することを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。

養殖水量に対する魚体重の割合で算出する飼育密度を0.1~3.0%とした環境。
【0011】
また、請求項1記載の花弁の生産方法であって、前記花は食用花であることを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。
【0012】
また、請求項1記載の花弁の生産方法であって、前記花は食用のマリーゴールド若しくは食用のビオラであることを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。
【0013】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の花弁の生産方法において、前記淡水魚はチョウザメであり、1日あたりの給餌量は総魚体重の0.1~6.0%であることを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。
【0014】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の花弁の生産方法において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。
【0015】
また、請求項4記載の花弁の生産方法において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。
【0016】
また、キク科若しくはスミレ科の花弁の生産方法であって、淡水魚Fを、下記環境で養殖する養殖部1における養殖水Wを、前記養殖水W中のアンモニアを硝酸塩へ硝化する硝化菌及び前記養殖水W中の糞便や残餌などの固形廃棄物を分解する従属栄養細菌が定着した体積が養殖水容量の0.1~5%であるろ過材を通過させて処理した処理水W1によりキク科若しくはスミレ科の花の開花を促進させて栽培し、当該花の花弁を生産することを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。

養殖水量に対する魚体重の割合で算出する飼育密度を0.1~3.0%とした環境。
【0017】
また、請求項7記載の花弁の生産方法であって、前記花は食用花であることを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。
【0018】
また、請求項7記載の花弁の生産方法であって、前記花は食用のマリーゴールド若しくは食用のビオラであることを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。
【0019】
また、請求項7~9いずれか1項に記載の花弁の生産方法において、前記淡水魚はチョウザメであり、1日あたりの給餌量は総魚体重の0.1~6.0%であることを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。
【0020】
また、請求項7~9いずれか1項に記載の花弁の生産方法において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。
【0021】
また、請求項10記載の花弁の生産方法において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする花弁の生産方法に係るものである。
【0022】
また、キク科若しくはスミレ科の花弁の開花促進剤であって、淡水魚Fを、下記環境で養殖する養殖部1における養殖水Wを、前記養殖水W中のアンモニアを硝酸塩へ硝化する硝化菌及び前記養殖水W中の糞便や残餌などの固形廃棄物を分解する従属栄養細菌が定着した体積が養殖水容量の0.1~5%であるろ過材を通過させて処理した処理水W1で構成されていることを特徴とする開花促進剤に係るものである。

養殖水量に対する魚体重の割合で算出される飼育密度は0.1~3.0%の環境。
【0023】
また、請求項13記載の開花促進剤であって、前記花は食用花であることを特徴とする開花促進剤に係るものである。
【0024】
また、請求項13記載の開花促進剤であって、前記花は食用のマリーゴールド若しくは食用のビオラであることを特徴とする開花促進剤に係るものである。
【0025】
また、請求項13~15いずれか1項に記載の開花促進剤において、前記淡水魚はチョウザメであり、1日あたりの給餌量は総魚体重の0.1~6.0%であることを特徴とする開花促進剤に係るものである。
【0026】
また、請求項13~15いずれか1項に記載の開花促進剤において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする開花促進剤に係るものである。
【0027】
また、請求項16記載の開花促進剤において、前記硝化菌は、アンモニアを亜硝酸塩に酸化するNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属などのアンモニア酸化古細菌、亜硝酸塩を硝酸塩に酸化するNitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属の亜硝酸酸化細菌であり、前記従属栄養細菌は、Pseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属などの従属栄養細菌であることを特徴とする開花促進剤に係るものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明は上述のように構成したから、花を良好に栽培できるなど、従来に無い非常に画期的な花弁の生産方法及び開花促進剤となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施例1に係る処理水W1(栽培養液A1)の製造装置を示す概略図である。
図2】実施例1に係る処理水W1(栽培養液A1)と比較栽培養液B1の成分を示す表である。
図3】実施例1に係る処理水W1(栽培養液A1)と比較栽培養液B1の比較試験の結果を示すグラフである。
図4】実施例1に係る処理水W1(栽培養液A1)と比較栽培養液B1の比較試験の結果を示す表である。
図5】実施例1に係る処理水W1(栽培養液A1)と比較栽培養液B1の比較試験の結果を示す写真である。
図6】実施例1に係る処理水W1(栽培養液A1)と比較栽培養液B1の比較試験の結果を示すグラフである。
図7】養殖部1におけるアンモニア,亜硝酸塩及び硝酸塩の濃度変化を示すグラフである。
図8】実施例2に係る処理水W1(栽培養液A2)の製造装置を示す概略図である。
図9】実施例2に係る処理水W1(栽培養液A2)と比較栽培養液B2の成分を比較した表である。
図10】実施例2に係る処理水W1(栽培養液A2)と比較栽培養液B2の比較試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0031】
例えば、水生生物Fを養殖する養殖部1における養殖水Wを微生物で処理した処理水W1(栽培養液)により花を栽培すると、既存の化学肥料を用いた栽培に比し、良好な栽培、具体的には開花数,花弁(花びら)の大きさ,花(花弁が開いた状態のもの)とつぼみの総重量,保持期間及びアスコルビン酸含量(食用花の場合)のいずれにおいても、比較試験として行った既存の化学肥料を用いて栽培した場合に比して数値が向上し、極めて有用である。
【0032】
また、本発明で用いる処理水W1は、水生生物(チョウザメF)の養殖水由来のもの(有機肥料)であって化学的に合成された成分を利用してない(オーガニック需要に応えるもの)であり、また、花(花弁が開いた状態のもの)の収量の向上,収穫時の作業性の向上,花(花弁が開いた状態のもの)の開花期間の延長及び花(花弁が開いた状態のもの)の栄養価の向上を実現するなど、有機液体肥料及び活力剤として極めて商品価値が高い。
【実施例
【0033】
<実施例1>
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0034】
本実施例は、花の栽培方法、具体的には、商品価値の高いエディブルフラワー(キク科の花、例えば食用のマリーゴールド,スミレ科の花、例えば食用のビオラ)の栽培方法であって、水生生物Fを養殖する養殖部1における養殖水Wを微生物で処理した処理水W1(栽培養液/有機液体肥料・活力剤)によりエディブルフラワー(食用花)を栽培する。
【0035】
尚、花としては食用花に限らず、後述する試験の結果から、花弁(花びら)を備える植物であれば広く適用できる。
【0036】
この本実施例に係る処理水W1(栽培養液)は、空調設備を備えて室温を適宜調整可能な建物内に設けられる水生生物養殖装置で製造される。
【0037】
この水生生物養殖装置は、水生生物Fを養殖する養殖部1と、この養殖部1の養殖水Wを循環する養殖水循環部3と、この養殖水循環部3に設けられ養殖部1の養殖水Wを微生物で処理する微生物処理部2とを有している。
【0038】
養殖部1は、図1に図示したように魚介類などの水生生物Fを養殖するための所定容量を有する水槽である。
【0039】
具体的には、本実施例では、水生生物Fとしての食用のチョウザメFを飼育するに適した水槽で養殖部1を構成しており、この養殖部1で食用のチョウザメFを飼育することで養殖水Wが作出される。
【0040】
養殖部1で作出される養殖水Wとは、水生生物Fの糞,尿及び食べ残し餌などの不純物を含む水である。
【0041】
水生生物Fとしては、商品価値の高いチョウザメFを採用している。チョウザメFとしては、コチョウザメ、オオチョウザメ、ベステルチョウザメ、シベリアチョウザメ、シップチョウザメ、アムールチョウザメ、ホシチョウザメ、ダウリアチョウザメなど、いずれでも良い。
【0042】
尚、水生生物Fとしては、チョウザメFに限らず淡水魚であればよく、例えばマス、コイ、ティラピア、ナマズなども適宜採用可能である。更に、海水魚(例えばサバ、ヒラメ、フグ、サケ、甲殻類(エビなど))でも良く、その場合、養殖部1から排出する養殖水Wの塩分を除去して使用する。
【0043】
養殖水循環部3は、図1に図示したように一端部が養殖部1に接続され他端部が微生物処理部2に接続される往路管部3aと、一端部が微生物処理部2に接続され他端部が養殖部1に接続され復路管部3bと、この復路管部3bに設けられる循環用ポンプ3cとを有する構成である。尚、循環用ポンプ3cは後述する実施例2のように往路管部3aに設けても良い。
【0044】
従って、循環用ポンプ3cの作動により、養殖部1の養殖水Wは往路管部3aを介して導出されて微生物処理部2へ搬送導入され、微生物処理部2で処理された処理水W1は復路管部3bを介して導出されて養殖部1へ搬送導入されることになり、養殖水Wは装置内を循環する。尚、図1中の矢印は水流方向を示している。
【0045】
微生物処理部2は、図1に図示したように養殖水循環部3(往路管部3a及び復路管部3b)が通水連結され所定容量を有する処理ケース2a内にろ過材(図示省略)を設けて構成されている。
【0046】
このろ過材は、往路管部3aから処理ケース2a内に導入された養殖水Wに含まれる水生生物F(チョウザメ)の糞,尿及び食べ残し餌などの不純物(有機性廃棄物)のフィルター機能の他、この不純物を分解するなど、肥料成分に変換する微生物、即ち、硝化菌(例えばNitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属等のアンモニア酸化細菌やNitrosopumilus属,Nitrososphaeras属等のアンモニア酸化古細菌、Nitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属等の亜硝酸酸化細菌)及び従属栄養細菌(例えばPseudomonas属,Flavobacterium属,Sphingobacterium属,Arcobacter属など)を定着させるものであり、バイオビーズ、MBBR、DHSなど、微生物の定着性(付着性)が高いものであれば様々な素材や形状の物が利用できる。
【0047】
具体的には、本実施例では、ろ過材としてバイオビーズを採用しており、このろ過材の体積を養殖水容量(水生生物養殖装置内を循環する全ての水の容積)の0.1~10%としている。
【0048】
即ち、チョウザメFの排泄物は、主に窒素系排泄物(アンモニア)であり、アンモニアはチョウザメFにとって有毒なため、このアンモニアを毒性の低い硝酸塩にまで酸化(=硝化)する必要がある。この硝化を担うのがろ過材に定着した硝化菌であるが、水量(チョウザメFの量)に対しろ過材の量が少ないと硝化が間に合わずアンモニアが蓄積してしまい、チョウザメFが斃死してしまう。
【0049】
一方、水量(チョウザメFの量)に対してろ過材の量が多すぎると、(養殖場の)面積の有効利用やコストの面から望ましくないということになる。ろ過材の性能(=硝化菌など有用微生物の定着のしやすさや有機性排泄物を保持しやすいかなど)によって必要量は異なるが、種々試したところ、本実施例で使用しているビーズフィルターであれば、前記養殖水容量の約3%、スポンジろ過材であれば2%が目安となる。
【0050】
従って、養殖水容量に対するろ過材の体積は、チョウザメFの飼育及び商業レベルにおいては0.1~10%が良く、より好ましくは0.5~5.0%が望ましい(0.1%より少ないと、硝化が間に合わず硝酸塩(肥料成分)の生産効率が低下すると共に、アンモニアが蓄積するためチョウザメFの飼育環境維持の点で望ましくなく、10%より多いとろ過設備が過剰となるためコスト面の観点で望ましくない。)。
【0051】
以上の構成から成る本実施例に係る水生生物養殖装置により処理水W1(栽培養液)が生成されるまでの工程について説明する。
【0052】
先ず、ろ過材(バイオビーズ)の体積が養殖水容量の2%(v/v)に設定された微生物処理部2を備えた水生生物養殖装置を設け、微生物の定着を確認後、チョウザメF(コチョウザメ)の単独養殖を開始して栽培養液A1を得た。建物内の室温及び養殖部1の養殖水Wの水温を適宜調整し、チョウザメFの飼育密度は1.44%とし、1日あたりの給餌量(重量)は総魚体重の3%となるように飼育した。尚、飼育密度とは、養殖水量に対する魚体重の割合であり、チョウザメFの飼育密度は0.1%~3.0%の範囲が適正で、給餌量は0.1~6.0%の範囲が適正である。また、コチョウザメを選択した理由は小型で扱いやすく、性成熟が早い(=キャビアが早く採れる)からであって、前述したように肥料生成という意味合いではどのチョウザメでも問題ない。
【0053】
ちなみに、ろ過材に対する微生物の定着とは、アンモニア資材(又は砕いた魚の餌やアミノ酸系資材、少量の魚など)を養殖部1に入れ、アンモニア,亜硝酸塩及び硝酸塩の濃度をモニタリングすることで判断する。
【0054】
図7に示すように、養殖部1にアンモニア資材を入れた後、最初にアンモニア酸化細菌(例えば、Nitrosomonas属,Nitrosococcus属,Nitrosospira属,Nitrosolobus属,Nitrosovibrio属のいずれか一種若しくは複数種)が定着し始め、アンモニア(図7中のX)を亜硝酸塩(図7中のY)に酸化するが、その後、亜硝酸塩が増えて亜硝酸酸化細菌(例えば、Nitrobacter属,Nitrospira属,Nitrococcus属,Nitrospira属のいずれか一種若しくは複数種)が定着し始め、亜硝酸塩が硝酸塩(図7中のZ)にまで酸化され、硝酸塩濃度が高まっていく。具体的には、硝酸塩濃度が順調に上昇し、アンモニアが1mg/L以下、亜硝酸塩が検出されなくなったら微生物の定着が完了したと判断する。この一連のサイクルが完成する(硝化菌が定着する)まで約1カ月(通常25~40日)程度かかり、一度このサイクルが完成すれば、いつでも栽培養液として取り出すことが可能となる。
【0055】
つまり、硝酸塩濃度が順調に上昇し、アンモニアが1mg/L以下、亜硝酸塩が検出されなくなった段階で、その養殖部1内の水(養殖水W・処理水W1)が栽培養液として使用可能と判断する。硝化菌は増殖が遅いため、硝化菌が定着していれば、その他の有用微生物(アンモニア酸化細菌や亜硝酸酸化細菌など)も定着が完了していると判断できる。
【0056】
尚、ろ過材から直接微生物を採取して、検査装置で定着した微生物を調べることも可能であるが、検査装置が高額なため現場レベルでは行わない。
【0057】
また、この養殖部1内の水(養殖水W・処理水W1)を膜処理等の適宜な方法で濃縮しても良い。
【0058】
上記のように本実施例に係る水生生物養殖装置で生成された処理水W1(栽培養液A1)を用いて、比較栽培養液B1(既存の化学肥料)で栽培した場合の違いを確認する試験1を行った。
【0059】
試験1で使用した栽培養液A1と比較栽培養液B1の主要な成分の組成は図2に示す表の通りであり、栽培養液A1は、比較栽培養液B1と比べて低濃度である(栽培養液A1は比較栽培養液B1に比べ、硝酸塩,リン酸塩,K,Ca,Fe,Mgの溶質量が少ない。)。
【0060】
試験1は、トロ舟(樹脂ケース)に比較栽培養液B1を20L入れた比較栽培区B1’と、トロ舟に栽培養液A1を20L入れた本栽培区A1’を用意し、この各栽培区に食用のマリーゴールドの苗を定植した水耕栽培パネルを浮かべ、同条件において水耕栽培試験を行った。
【0061】
栽植密度は40株/mとし、1試験区6株で実施した。試験期間は7週間とし、開花数(定植4週目より1週間毎に評価)を評価し、更に、定植7週間後に収穫し、地上部新鮮重量、花(花弁が開いた状態のもの)とつぼみの重量、地上部に占める花とつぼみの比率、枯れた花の数、花弁のアスコルビン酸(ビタミンC)含量を評価した。
【0062】
[開花数]
図3は開花数を示し、定植後42日目において、比較栽培区B1’と比べ、本栽培区A1’で開花数が多い傾向(開花促進効果)が認められた(p<0.1:有意水準10%未満)。
【0063】
[植物体重量等]
図4は地上部新鮮重量(植物体の地下部(根部)より上の地上部の重量)及び花(花弁が開いた状態のもの)とつぼみの重量を測定した結果である。
【0064】
地上部新鮮重量は、比較栽培区B1’と比べ、本栽培区A1’において有意に低値を示した。即ち、地上部に占める花(花弁が開いた状態のもの)とつぼみの重量比は、比較栽培区1B’で17.0%であったのに対し、本栽培区1A’では45.9%と有意に高く、本実施例に係る栽培養液A1は、花弁の形成に優れた肥効特性を有していることが明らかとなった。
【0065】
また、比較栽培区1B’では、花(花弁が開いた状態のもの)は、試験期間中に4輪枯れたのに対し、本栽培区1A’では1輪も枯れることがなく、花(花弁が開いた状態のもの)の鮮度保持に優れ、開花期間の延長にも貢献することが示された。
【0066】
[写真]
図5は比較栽培区B1’及び本栽培区A1’を撮影したものであり、見た目においても比較栽培区1B’と比べ、本栽培区1A’は明らかに植物体に占める花(花弁が開いた状態のもの)の割合が大きく、開花に優れた特性を有していることが分かる。また、植物体に占める花の割合が大きいため、余分な枝葉の選定作業が不要となり、花の収穫の作業性も向上する。
【0067】
[アスコルビン酸含量]
図6は比較栽培区B1’及び本栽培区A1’で育成した植物体の花弁に含まるアスコルビン酸の含有量を計測したものであり、比較栽培区1B’と比べ、本栽培区1A’では花弁に含まれるアスコルビン酸(ビタミンC)量が有意に多く含まれており、栄養価にも優れることが示された。
【0068】
以上の試験1により、食用のマリーゴールドの栽培において、チョウザメFを養殖する養殖部1における養殖水Wを微生物で処理した処理水W1による栽培方法が有効であり、また、処理水W1から成る栽培養液がエディブルフラワーの栽培に要求される、開花数,花弁(花びら)の大きさ,花(花弁が開いた状態のもの)とつぼみの総重量,保持期間及びアスコルビン酸含量の点で有効であることが確認された(p<0.05:有意水準5%未満)。
【0069】
よって、本実施例によれば、水生生物Fの種類を問わず、良質の食用花が多量に収穫できる。即ち、食用花は、毒性がなく、低農薬(または無農薬)で栽培されることが望ましく、この点、本実施例によれば、無農薬栽培で行い、かつ化学肥料を使用せず養殖水由来の肥料成分で植物栽培を行うことができる為、安全・安心な食用花を確実に提供できることになる。
【0070】
<実施例2>
本発明の具体的な実施例2について図面に基づいて説明する。
【0071】
本実施例は、前述した実施例1に係る水生生物養殖装置に、養殖水循環部3にろ過装置10及び水耕栽培装置11(野菜Vの水耕栽培装置)を付加し、水耕栽培装置11からの排水を養殖部1に戻すアクアポニックスシステムである。
【0072】
具体的には、図8に図示したように養殖水循環部3の往路管部3a(養殖部1と微生物処理部2との間)にろ過装置10を通水連結して設け、養殖水循環部3の復路管部3b(微生物処理部2と養殖部1との間)に水耕栽培装置11を通水連結して設けている。
【0073】
従って、循環用ポンプ3cの作動により、養殖部1の養殖水Wは往路管部3aを介して導出されて物理ろ過装置10を通過した後に微生物処理部2へ搬送導入され、微生物処理部2で処理された処理水W2は復路管部3bを介して導出されて水耕栽培装置11を通過して後に養殖部1へ搬送導入されることになり、養殖水Wは装置内を循環する。尚、図8中の矢印は水流方向を示している。
【0074】
以上の構成から成る本実施例に係る水生生物養殖装置により処理水W2(栽培養液)が生成されるまでの工程について説明する。
【0075】
先ず、ろ過材(バイオビーズ)の体積が養殖水容量の0.8%(v/v)に設定された微生物処理部2を備えた水生生物養殖装置を設け、微生物の定着を確認後、チョウザメF(コチョウザメ及びベステルチョウザメ)の混合養殖を開始して栽培養液A2を得た。建物内の室温及び養殖部1の養殖水Wの水温を適宜調整し、チョウザメFの飼育密度は1.4%とし、1日あたりの給餌量(重量)は総魚体重の1%となるように飼育した。
【0076】
上記のように本実施例に係る水生生物養殖装置で生成された処理水W1(栽培養液A2)を用いて、比較栽培養液B2(既存の化学肥料)で栽培した場合の違いを確認する試験2を行った。
【0077】
試験2で使用した栽培養液A2と比較栽培養液B2の主要な成分の組成は図9に示す表の通りであり、栽培養液A2は、比較栽培養液B2と比べて低濃度である(栽培養液A1は比較栽培養液B1に比べ、硝酸塩,K,Caの溶質量が少ない。)。
【0078】
試験2は、水耕栽培棚の養液部に比較栽培養液B2を入れた比較栽培区B2’と、養液部に栽培養液A2を入れた本栽培区A2’を用意し、この各栽培区に食用のビオラの苗を定植した水耕栽培パネルを浮かべ、同条件において水耕栽培試験を行った。1試験区20株で実施し、試験期間は7週間とし、開花数を計測した。
【0079】
[開花数]
図10は開花数を示し、定植後35日目以降において、比較栽培区B2’と比べ、本栽培区A2’で開花数が多い傾向(開花促進効果)が認められた。
【0080】
以上の試験2により、食用のビオラの栽培において、チョウザメFを養殖する養殖部1における養殖水Wを微生物で処理した処理水W1による栽培方法が有効であり、また、処理水W2から成る栽培養液がエディブルフラワーの栽培に要求される、開花数の点で有効であることが確認された。
【0081】
以上の実施例1及び2から、以下のことが確認できる。
【0082】
本実施例は、無農薬・無化学肥料で栽培できる強みが食用花との相性が良いことに着目し、食用花として需要の高い前述したマリーゴールドと後述するビオラで栽培試験を行った結果、優れた効果が得られたのであり、また、このキク科のマリーゴールド、スミレ科のビオラというように、科を跨いで同様の優れた効果が認められたため、他の花でも同様の効果が認められると推測できる。
【0083】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0084】
F 水生生物
W 養殖水
W1 処理水
1 養殖部
【要約】
【課題】本発明は、従来に無い非常に画期的な花弁の生産方法及び開花促進剤を提供することを目的とする。
【解決手段】水生生物Fを養殖する養殖部1における養殖水Wを、前記養殖水W中のアンモニアを硝酸塩へ硝化する硝化菌及び前記養殖水W中の糞便や残餌などの固形廃棄物を分解する従属栄養細菌から成る微生物で処理した処理水W1により花を栽培する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10