(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】自転車用ヘルメット
(51)【国際特許分類】
A42B 3/12 20060101AFI20241211BHJP
A42C 5/04 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A42B3/12
A42C5/04 C
(21)【出願番号】P 2024029713
(22)【出願日】2024-02-29
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149930
【氏名又は名称】株式会社谷沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】崔 成根
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 雄介
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-059406(JP,A)
【文献】特開平05-321011(JP,A)
【文献】実開昭55-087328(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2023/0371640(US,A1)
【文献】米国特許第05745923(US,A)
【文献】中国実用新案第206251992(CN,U)
【文献】米国特許第05088130(US,A)
【文献】米国特許第07739783(US,B1)
【文献】特表2015-515555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B 3/00-3/32
A42C 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面を覆う殻層と、前記殻層よりも厚手に形成されて前記殻層の内側で人頭に接する内部層とを備え、前記内部層及び前記殻層を厚み方向に貫通する複数の貫通孔が形成された自転車用ヘルメットにおいて、
前記内部層には、フレーム部材が埋設されており、
前記内部層に形成されて、前記内部層を前方から後方に貫通する通気トンネルと、
前記通気トンネルの一部に連通して前記内部層の人頭に対向する内面側で開口する連通孔と
を備えることを特徴とする自転車用ヘルメット。
【請求項2】
請求項1記載の自転車用ヘルメットにおいて、
前記フレーム部材は、人頭の周囲を包囲する形状の第1フレーム部と、前記第1フレーム部からアーチ状に立ち上がる形状であって両端が夫々第1フレーム部の互いに対向する位置で連結された第2フレーム部と、前後方向に延びて前端が前記第1フレーム部に連結され後端が前記第2フレーム部に連結された第3フレーム部とを備えることを特徴とする自転車用ヘルメット。
【請求項3】
請求項
2記載の自転車用ヘルメットにおいて、
前記第1フレーム部、第2フレーム部、及び第3フレーム部の夫々の所定位置に、突起状のブロック体を設けたことを特徴とする自転車用ヘルメット。
【請求項4】
請求項1記載の自転車用ヘルメットにおいて、
前記貫通孔は、前後方向に延びるスリット状に形成されており、
前記フレーム部材と別体の他のフレーム部材を備え、
前記他のフレーム部材は、前記貫通孔を横切って左右方向にアーチ状に延びる形状に形成されていることを特徴とする自転車用ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ロードバイクやマウンテンバイク等のスポーツ走行時に限らず、通勤や通学といった通常の走行時においても自転車用ヘルメットを着用して安全対策の強化が一般的となっている。
【0003】
従来、この種の自転車用ヘルメットは、比較的硬質の殻層と、殻層の内側で人頭を覆って衝撃を吸収する内部層とを備えている。そして、この種の自転車用ヘルメットにおいては、人頭に対する高い保護性能を有するだけでなく、人頭を冷却する機能を備えているものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の自転車用ヘルメットにおいては、人頭を冷却する機能を得るために、殻層及び内部層を厚み方向に貫通する複数の貫通孔を設けている。これにより、人頭と帽体との間での熱気を含んだ空気が抜けやすく、通気による快適性が得られるようになっている。
【0006】
しかし、複数の貫通孔は、殻層及び内部層の強度を低下させる不都合がある。殻層及び内部層の強度低下を防止するためには、貫通孔の数や大きさを小さくする等が考えられるが、そうすると通気性が悪化してしまい、人頭に対する十分な冷却効果を得ることができない。このように、従来の自転車用ヘルメットの構造では、十分な通気性を得ることと、高い保護性能を得ることとを両立させることが困難であった。
【0007】
上記の点に鑑み、本発明は、強度低下を防止して通気性を向上させ、高い通気性と高い保護性能とを両立させることができる自転車用ヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、外表面を覆う殻層と、前記殻層よりも厚手に形成されて前記殻層の内側で人頭に接する内部層とを備え、前記内部層及び前記殻層を厚み方向に貫通する複数の貫通孔が形成された自転車用ヘルメットにおいて、
前記内部層には、フレーム部材が埋設されており、
前記内部層に形成されて、前記内部層を前方から後方に貫通する通気トンネルと、
前記通気トンネルの一部に連通して前記内部層の人頭に対向する内面側で開口する連通孔と
を備えることを特徴とする。
本発明によれば、通気トンネルによって内部層の内部の空気流を確保することができるだけでなく、連通孔により通気トンネルを流動する空気の一部を人頭と内部層との間に供給することができるので、人頭に対する冷却効果を向上させることができる。
【0009】
本発明において、前記フレーム部材は、人頭の周囲を包囲する形状の第1フレーム部と、前記第1フレーム部からアーチ状に立ち上がる形状であって両端が夫々第1フレーム部の互いに対向する位置で連結された第2フレーム部と、前後方向に延びて前端が前記第1フレーム部に連結され後端が前記第2フレーム部に連結された第3フレーム部とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、内部層にフレーム部材が埋設されているので、自転車用ヘルメットの強度を向上させることができる。従って、強度低下を防止して複数の貫通孔を設けることができ、十分な通気性と高い保護性能とを両立させた自転車用ヘルメットを提供することができる。
【0010】
本発明において、前記第1フレーム部、第2フレーム部、及び第3フレーム部の夫々の所定位置に、突起状のブロック体を設けたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、各フレーム部の所定位置にブロック体を設けたので、内部層の内部におけるフレーム部材の不用意な移動が防止でき、内部層とフレーム部材とを一体的に構成することができる。
【0014】
また、本発明において、前記貫通孔は、前後方向に延びるスリット状に形成されており、前記フレーム部材と別体の他のフレーム部材を備え、前記他のフレーム部材は、前記貫通孔を横切って左右方向にアーチ状に延びる形状に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、他のフレーム部材を設けることで、左右方向の各貫通孔の伊神を防止することができ、内部層の強度を飛躍的に向上させることことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の自転車用ヘルメットの外観を示す斜視図。
【
図4】自転車用ヘルメットの一部を破断してフレーム部材を示す説明的斜視図。
【
図5】フレーム部材の変形例の1つを示す説明的斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の自転車用ヘルメット1は、外表面を覆う殻層2を備えている。殻層2の内側には、
図2及び
図3に示すように、内部層3が設けられている。
【0018】
殻層2は、比較的薄手の硬質の合成樹脂(例えばABS樹脂等)によって形成されている。内部層3は、衝撃吸収性を有する軽量の合成樹脂(例えば発砲スチロール等)で、殻層2よりも厚手に形成されている。
【0019】
図1及び
図2に示すように、自転車用ヘルメット1には、殻層2と内部層とを厚み方向に貫通する複数の貫通孔4が形成されている。夫々の貫通孔4は前方から後方に向かって延設されている。
【0020】
貫通孔4が形成されていることにより、通気性が確保されるので、自転車用ヘルメット1の着用状態での蒸れを軽減することができ、特に、自転車の走行時に生じる気流により高い冷却効果を得ることができる。しかも、貫通孔4により自転車用ヘルメット1を軽量化される。
【0021】
また、
図1及び
図3に示すように、内部層3には、その前方から後方に貫通する通気トンネル5が形成されている。通気トンネル5は、自転車の走行時に前方から後方へ気流が通過しようになっている。これにより、走行時における空気抵抗を軽減することができる。
【0022】
通気トンネル5の一部(頭頂部)の内面側には、人頭に対向して開口する連通孔6が形成されている。更に、
図2に示すように、連通孔6の開口部に連続する溝状の通気案内路7が、内部層3の内面側(人頭側)に形成されている。
【0023】
連通孔6を設けたことにより、通気トンネル5を通過する気流により人頭と内部層3との間における気流の発生を促すことができる。しかも、通気案内路7が形成されていることにより、通気トンネル5と連通孔6とで空気の流動方向が屈曲していても、通気案内路7による気流の案内により人頭と内部層3との間における通気性を飛躍的に向上させることができる。更に、通気トンネル5、連通孔6、及び通気案内路7が設けることにより、貫通孔4のみ設けた場合に比べ、自転車用ヘルメット1が飛躍的に軽量化される。
【0024】
ところで、貫通孔4、通気トンネル5、連通孔6、及び通気案内路7を設けることで、自転車用ヘルメット1の通気性を向上させ、軽量化を図ることができるが、その反面、自転車用ヘルメット1の強度が低下するおそれがある。
【0025】
そこで、本実施形態においては、
図4(及び
図5)に示すように、複数(本実施形態では2つ)のフレーム部材(主フレーム部材8、副フレーム部材9)を設けている。本実施形態における主フレーム部材8、副フレーム部材9は、夫々、本発明におけるフレーム部材、他のフレーム部材に相当する。
【0026】
先ず、主フレーム部材8について説明する。主フレーム部材8は、その全体が内部層3に埋設されており、環状フレーム部10と、横フレーム部11と、縦フレーム部12とを備えている。本実施形態における環状フレーム部10、横フレーム部11、縦フレーム部12は、夫々、本発明における第1フレーム部、第2フレーム部、第3フレーム部に相当する。
【0027】
環状フレーム部10は、人頭の周囲を包囲する形状に形成されており、内部層3の下端部寄りの位置に埋設されている。
【0028】
横フレーム部11は、環状フレーム部10の上方にアーチ状に立ち上がる形状で横方向に延設されている。横フレーム部11の両端は、夫々、環状フレーム部10の互いに対向する位置で連結されている。即ち、横フレーム部11の一端は、環状フレーム部10の左右側の一方に連結されており、横フレーム部11の他端は、環状フレーム部10の左右側の他方に連結されている。
【0029】
縦フレーム部12は、環状フレーム部10の前側と横フレーム部11との間に位置して縦方向(前後方向)に延設されている。即ち、縦フレーム部12は、前端が環状フレーム部10の前側部分に連結され後端が横フレーム部11に連結されている。なお、
図5に示すように、縦フレーム部12は、複数設けてもよく、図示しないが、環状フレーム部10や横フレーム部11も、適宜複数設けてもよい。
【0030】
また、
図4(及び
図5)に示すように、主フレーム部材8には、複数のブロック体13が一体に設けられている。ブロック体13は、環状フレーム部10、横フレーム部11、縦フレーム部12の夫々の所定位置に設けられている。具体的には、環状フレーム部10の後側部、横フレーム部11と縦フレーム部12との連結部分、環状フレーム部10と縦フレーム部12との連結部分が挙げられる。
【0031】
ブロック体13は、軸心を外側に向けた筒状に形成されており、これによって、外部からの衝撃を吸収することができるようになっている。更に、ブロック体13により、主フレーム部材8が内部層3の内部で不用意に移動することが防止できると共に、内部層3の補強状態の低下が防止できる。
【0032】
次に、副フレーム部材9について説明する。副フレーム部材9は、
図4(及び
図5)に示すように、主フレーム部材8と別体で帯状のアーチ形状とされており、
図1及び
図4に示すように、貫通孔4を横切って(縦フレーム部12と交差する方向に)延設されている。
【0033】
副フレーム部材9は、貫通孔4で一部が露出するが、貫通孔4の通気性を阻害することはない。副フレーム部材9は、貫通孔4を横切って設けられていることにより、例えば、貫通孔4が横方向に広がることを防止することができ、内部層3の強度を飛躍的に向上させることができる。
【0034】
また、副フレーム部材9は、通気トンネル5を避けるように屈曲する屈曲回避部14を備えている。副フレーム部材9の屈曲回避部14は、他の部分よりも細長く形成されていて、通気トンネル5で露出しないので、通気トンネル5における空気の流動を全く阻害しない。
【0035】
更に、副フレーム部材9は、その前後方向に突出する複数の突起15を備えており、これによって、内部層3への一体的な埋設状態を確実に維持することができる。
【0036】
本発明におけるフレーム部材や他のフレーム部材は、上記の主フレーム部材8や副フレーム部材9の形状に限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。また、本発明における自転車用ヘルメットの各部の材質(材料)については、本発明の目的に矛盾することのない範囲で適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0037】
1…自転車用ヘルメット、2…殻層、3…内部層、4…貫通孔、5…通気トンネル、6…連通孔、8…主フレーム部材(フレーム部材)、9…副フレーム部材(他のフレーム部材)、10…環状フレーム部(第1フレーム部)、11…横フレーム部(第2フレーム部)、12…縦フレーム部(第3フレーム部)、13…ブロック体。
【要約】
【課題】強度低下を防止して通気性を向上させ、高い通気性と高い保護性能とを両立させることができる自転車用ヘルメットを提供する。
【解決手段】殻層2と内部層3とを備える。内部層3及び殻層2を厚み方向に貫通する複数の貫通孔4を形成する。内部層3に、フレーム部材8を埋設する。フレーム部材8は、人頭の周囲を包囲する形状の第1フレーム部10と、第1フレーム部10からアーチ状に立ち上がる形状であって両端が夫々第1フレーム部10の互いに対向する位置で連結された第2フレーム部11と、前後方向に延びて前端が第1フレーム部10に連結され後端が第2フレーム部11に連結された第3フレーム部12とを備える。
【選択図】
図4