(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ドラムのベルト取付構造
(51)【国際特許分類】
B66D 1/30 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
B66D1/30 B
(21)【出願番号】P 2024069251
(22)【出願日】2024-04-22
【審査請求日】2024-04-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591206500
【氏名又は名称】株式会社 ダイサン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小瀧 大蔵
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184538(JP,A)
【文献】特開平09-206422(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の巻胴部と、
端部を折り返して形成した折り返し部を有するベルトと、
前記巻胴部の外周面に前記折り返し部を固定する固定具と、
前記巻胴部の外周面の一部に
径方向外側に突出して形成され、
前記折り返し部が固定されたベルトが巻掛けられる突出部と
、
を備える、ドラムのベルト取付構造。
【請求項2】
前記巻胴部の前記外周面上に部分的に形成され、隣接する湾曲した部分との間に角部を形成する平面部を備える、
請求項1に記載のドラムのベルト取付構造。
【請求項3】
前記固定具が、前記平面部に設けられた雌ネジ部に螺合する有頭の雄ネジである、
請求項2に記載のドラムのベルト取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムのベルト取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウインチ装置等の一部を構成する装置として、ベルトを巻き取るドラムが知られている。特許文献1に開示されたベルト巻取装置では、ドラムの円筒状の胴部(巻胴部)の外周面上に、ベルトの折り返された一端が重ね合わせられる。ベルトの折り返し部の上には、巻胴部の外周面に沿って湾曲した板状部材が押え金具として重ねられる。そして、押え金具と折り返し部とを貫通するネジによって、ベルトが巻胴部に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の場合、ベルトを巻胴部に取り付けるために、押え金具としての板状部材が必要になる。このため、ベルトをドラムに取付ける構造が複雑になるという問題がある。
【0005】
本発明は、簡易な構造によりベルトとドラムとの一体性を確実にできるドラムのベルト取付構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のドラムのベルト取付構造は、円筒状の巻胴部と、巻胴部の外周面の一部に形成され、径方向外側に突出する突出部と、一端に端部を折り返して重層構造にした折り返し部を有するベルトと、折り返し部を貫通し、折り返し部を巻胴部の外周面上に固定する固定具と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡易な構造によりベルトとドラムとの一体性を確実にできるドラムのベルト取付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るドラムのベルト取付構造を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本開示の実施形態を説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。本開示において図面を参照して実施形態を説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0010】
以下の図面の記載において、同様の部分には、同様の符号が付されている。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各装置と各部材の厚さ、幅、奥行の比率は、現実のものとは異なる。したがって、具体的な厚さと平面寸法は以下の説明を参酌して判定すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係と比率とが実際と異なる部分が含まれている。また、明細書中に特段の断りが無い限り、本開示の各構成要素の個数は、1つに限定されず、複数存在してもよい。
【0011】
<ドラムのベルト取付構造の構成>
図1に示すように、本実施形態に係るドラムのベルト取付構造10は、ドラム12と、ベルト20と、固定具としてのビス30と、を含む構成とされている。また、ドラム12は、巻胴部14と、突出部14Bと、を備える。なお、ドラム12は、例えば樹脂製であるが、金属等の他の素材が用いられてもよい。
【0012】
(巻胴部)
図2に示すように、本実施形態に係るドラム12の巻胴部14は、円筒状であり、外周面OSと内周面ISに挟まれた部分である巻胴部14Xと、内周面ISの内側の空所であるシャフト挿通孔14Aと、を有している。巻胴部14は、ドラム12の本体である。巻胴部14のシャフト挿通孔14Aには、ドラム12に回転力を伝えるシャフト40が差し込まれ、キー42を介して巻胴部14の巻胴部14Xとシャフト40とが相互に固定される。本実施形態のシャフト40は円柱状であるが、本開示のシャフトは、これに限定されず、例えば円筒状のように他の形状であってもよい。
【0013】
図2に示すように、本実施形態に係る巻胴部14の巻胴部14Xには、内周面IS側から径方向に一定の深さを有し、また、一定の開口寸法(巻胴部14Xの長さ方向に沿った方向を長さとし、長さに垂直な方向を幅とする寸法)を有するキー溝14A1が巻胴部14Xの全長に亘って形成される。本発明では、用途に応じてシャフトから巻胴部への回転力伝達が安全かつ十分に行われる限り、キー溝の深さ及び開口寸法は任意とし、また、キー溝は必須ではない。本実施形態に係るキー溝14A1には、キー42が嵌合されると共に、シャフト40側に設けられているシャフト側キー溝40Aにも同時に嵌合され、シャフト40と巻胴部14との両方にキー42が嵌合した状態で配置される。
【0014】
(突出部)
突出部14Bは、巻胴部14の外周面上に部分的に形成される。
図2に示すように、突出部14Bは、径方向外側(
図2中の下側)に突出し、他の部分より高くなっている。突出部14Bがベルト20に食い込むことによって、ベルト20を巻胴部14から引き離そうとする牽引力の反力に抗して、ベルト20を巻胴部14に引き止めようとする方向に作用する抗力が増加し、巻胴部14によるベルト20に対する係止効果が高まる。また、
図2に示すように、突出部14Bは、キー溝14A1に対向する位置に設けることにより、キー溝14A1の形成によって薄くなった巻胴部14の胴部の肉厚を補い、補強する効果もある。なお、本発明では、用途に応じて適切なベルト係止力が得られる限り、突出部の個数は、これに限らず、1個以上任意とし、また、突出部を設ける位置も、キー溝に対向する位置に限らず、任意とする。
【0015】
(平面部)
本実施形態に係る巻胴部14の巻胴部14Xは、平面部14Cを備える。本発明では、平面部は、必須ではない。平面部14Cは、巻胴部14の外周面OS上に部分的に形成される。平面部14Cは、隣接する湾曲部14Dとの境界線に沿って角部14Eを形成する。
図2に示すように、本実施形態に係る巻胴部14は、突出部14B及び平面部14Cが形成されることによって、断面視で略楕円形状を呈する。平面部14Cが形成する角部14Eがベルト20に食い込むことによって、ベルト20を巻胴部14から引き離そうとする牽引力の反力に抗して、ベルト20を巻胴部14に引き止めようとする方向に作用する抗力が増加し、巻胴部14によるベルト20に対する係止効果が更に高まる。巻胴部14の平面部14Cには、内周に雌ネジが切られたビス孔14Fが雌ネジ部として設けられる。なお、本発明では、このビス孔の個数は、このビス孔を用いて固定されるベルトの所要の引張強度に応じて、1個以上任意である。
【0016】
(フランジ部)
図1に示すように、本実施形態に係るドラム12は、第一フランジ部18Aと、第二フランジ部18Bと、を備える。本発明では、第一フランジ部と第二フランジ部とは必須ではない。
【0017】
第一フランジ部18A及び第二フランジ部18Bは、円盤状である。第一フランジ部18A及び第二フランジ部18Bのそれぞれの円盤の中央には、巻胴部14のシャフト挿通孔14Aと同心、かつ、同径の貫通孔が形成される。第一フランジ部18A及び第二フランジ部18Bのそれぞれの貫通孔の図中における符号の付記は省略する。
【0018】
本実施形態では、第一フランジ部18Aは、巻胴部14の軸方向の一端側に一体化され、固定された状態で設けられる。一方、本実施形態の第二フランジ部18Bは、ベルト20を幅方向に挟むことができる間隔を第一フランジ部18Aとの間に空けた状態で、巻胴部14の軸方向の他端側に巻胴部14に対して着脱自在に設けられる。
【0019】
(ベルト)
ベルト20は、帯状部材である。ベルト20は、例えば樹脂製の糸が撚り合わせ及び/又は編み込まれることによって作製されている。本発明では、ベルトの素材は、所要の引張強度を有する限り、これに限らず、例えば、植物性繊維に金属細線を編み込んで作製されだものでもよい。ベルト20を用いるドラム12の用途は、牽引用、搬送用等、任意であるので、ベルト20の引張強度は、それぞれの用途に応じて定める、設計選択肢である。ベルト20は、一端に端部を折り返して重層構造にした折り返し部22を有する。ベルト20の用途が例えば牽引用である場合、ベルト20の他端側には、牽引対象物に係合するフック等が取り付けられてもよい。
【0020】
本実施形態の折り返し部22は、ベルト20の一端を一回折り返すことによって形成される二重部分である。本発明の折り返し部の重ね合わせの層数は、用途に応じた引張強度を有する限り、二重に限定されず、三重、四重等、適宜変更できる。折り返し部22は、巻胴部14の平面部14Cの表面に接合される。巻胴部14の平面部14Cに設けられたビス孔14Fに対向するベルト20の折り返し部22の位置には、ビス孔22Aが設けられる。折り返し部22のビス孔22Aは、例えば、熱した金属棒をベルト20に押し当てることでベルト20の素材を部分的に溶融することによって形成できる。
【0021】
また、図示を省略するが、本発明では、樹脂製の糸を用いて折り返し部の層間を縫合することによって一部又は全面に縫合部を形成してもよい。縫合部の形成によって折り返し部の層間の密着性が高まり、引張強度が向上する結果、ベルトと巻胴部との一体性を高めることができる。また、層間の縫合に代えて、層間を接着剤等で接着することでも同様の効果が得られる。
【0022】
(固定具)
本実施形態に係る固定具は、有頭の雄ネジとして例えば有頭ネジのビス30である。ビス30は、折り返し部22に設けられたビス孔22Aを貫通し、巻胴部14の平面部14Cに設けられたビス孔14Fに螺合する。ビス30は、その座面に当接する折り返し部22を巻胴部14の平面部14Cに締結して固定する。なお、本発明では、ビスは、所要の締結力を有する限り、これに限らず、任意の形状のビスを用いてよい。また、本発明では、固定具は、ビスに限定されず、用途に応じた固定する力を有する限り、例えば、平面部に基部を埋め込んだスタッドボルト(植込みボルト)とナットの組合せ、接着剤、熔着等の手段を用いて折り返し部と平面部を固定してもよい。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に係る固定具としてのビス30の頭部は、断面視で、上側に突出する弓形である。このため、
図1又は
図2に示されるように、ビス30の頭頂部は、巻胴部14に巻き取られたベルト20に当接して食い込むことになる。このため、ベルト20を巻胴部14から引き離そうとする牽引力の反力に抗して、ベルト20を巻胴部14に引き止めようとする方向に作用する抗力が増加し、巻胴部14によるベルト20に対する係止効果が更に高まる。本発明では、ビスの頭部の形状は、弓形に限定されず、平板状、円錐台形状等、断面形状、平面形状共に任意である。
【0024】
ベルト20の折り返し部22に設けられたビス孔22Aを巻胴部14の平面部14Cに設けられたビス孔14Fに重ねた状態で、ビス30を折り返し部22のビス孔22Aと巻胴部14のビス孔14Fとに差し込み、ネジ部を螺合させて締結することによって、折り返し部22を巻胴部14に固定できる。
【0025】
(作用効果)
本実施形態に係るドラムのベルト取付構造10では、巻胴部14の突出部14Bが、径方向外側(
図2中の下側)に突出し、他の部分より高くなっているので、巻胴部14の外周面OS上に巻き取られるベルト20に突出部14Bが当接して食い込み、結果、ベルト20を引き止める方向の抗力が作用する。このため、ベルト20と巻胴部14との一体性を高めることができる。
【0026】
また、例えば巻胴部14に平面部14Cを設けず、巻胴部14の丸く湾曲した円筒表面部分にベルト20の一端を粘着材で張り付けるような取付方法に比べて、本実施形態では巻胴部14に対するベルト20の係止が巻外れる恐れが少ない。例えば本実施形態のドラムのベルト取付構造10を備えたドラム12が牽引作業で用いられる場合、重量物を牽引する際にベルト20に強い力が働いても、ベルト20が巻胴部14から脱落する恐れが少ない。また、例えば夏期時の高温によって巻胴部14にベルト20を固定する粘着材が溶け、ベルト20が巻胴部14から脱落することもない。
【0027】
また、本実施形態では、巻胴部14の外周面OS上に部分的に形成された平面部14Cが、隣接する湾曲部14Dとの境界線に沿って角部14Eを形成する。角部14Eにベルト20が食い込むので、例えば湾曲した外周面のみを有する巻胴部にベルトが巻き取られる場合に比べて、巻胴部14によるベルト20に対する係止効果が高まる。
【0028】
また、本実施形態では、固定具として有頭ネジであるビス30を使用する。ビス30の頭部は、断面視で、上側に突出する弓形である。このため、
図1又は
図2に示されるように、ビス30の頭頂部は、巻胴部14に巻き取られたベルト20に当接して食い込むことになる。このため、ベルト20を巻胴部14から引き離そうとする牽引力の反力に抗して、ベルト20を巻胴部14に引き止めようとする方向に作用する抗力が増加し、巻胴部14によるベルト20に対する係止効果が更に高まる。
【0029】
<その他の実施形態>
本発明は上記に開示した実施の形態によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになると考えられるべきである。本発明は、上記に記載していない様々な実施の形態等を含むと共に、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0030】
10 ドラムのベルト取付構造
12 ドラム
14 巻胴部
14X 筒部
OS 外周面
IS 内周面
14A シャフト挿通孔
14A1 キー溝
40A シャフト側キー溝
14B 突出部
14C 平面部
14D 湾曲部
14E 角部
14F ビス孔(雌ネジ部)
18A 第一フランジ部
18B 第二フランジ部
20 ベルト
22 折り返し部
22A ビス孔
30 ビス(固定具)
40 シャフト
42 キー
【要約】
【課題】簡易な構造で、ベルトとドラムとの一体性を向上できる。
【解決手段】ドラムのベルト取付構造10は、円筒状の巻胴部14と、巻胴部14の外周面OS上に形成され、径方向外側に突出する突出部14Bと、一端に端部を折り返して重層構造にした折り返し部22を有するベルト20と、折り返し部22を貫通し、折り返し部22を巻胴部14の外周面OS上に固定する固定具(ビス30)と、を備える。
【選択図】
図2