(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】車両盗難止装置
(51)【国際特許分類】
B60R 25/01 20130101AFI20241211BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B60R25/01
E04H6/42 A
(21)【出願番号】P 2024128154
(22)【出願日】2024-08-02
【審査請求日】2024-08-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522191990
【氏名又は名称】有限会社八瀬園
(74)【代理人】
【識別番号】100198498
【氏名又は名称】高橋 靖
(72)【発明者】
【氏名】瀬端 好宏
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-118057(JP,U)
【文献】実開昭56-166957(JP,U)
【文献】特開2004-306927(JP,A)
【文献】中国実用新案第219989182(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輌前方又は後方からタイヤとタイヤ接地面との間に配置される第1のブロックと、
車輌後方又は前方からタイヤとタイヤ接地面との間に配置される第2のブロックと、
タイヤを挟んだ状態で前記第1のブロックと前記第2のブロックを互いに固定する連結手段とを具え、
前記第1のブロックの台座には、該台座に対して回転自在で軸がタイヤの回転軸と平行のローラを有する第1のローラ部が設けられ、
前記第2のブロックの台座には、該台座に対して回転自在で軸がタイヤの回転軸と平行のローラを有する第2のローラ部が設けられ
、
前記第1のローラ部及び前記第2のローラ部は、タイヤを空転させる空転用ローラと、前記空転用ローラの上方でタイヤのトレッド面に当接可能に配置されてタイヤを空転させる空転用補助ローラとを具え、
前記空転用補助ローラの軸は、台座部に細長に形成された軸受孔にスライド可能に支持され、
前記連結手段には、前記第1のブロックの前記空転用補助ローラの軸と前記第2のローラの前記空転用補助ローラの軸の距離を変更可能なローラ間隔調整部が設けられていることを特徴とする車輌盗難防止装置。
【請求項2】
車輌前方又は後方からタイヤとタイヤ接地面との間に配置される第1のブロックと、
車輌後方又は前方からタイヤとタイヤ接地面との間に配置される第2のブロックと、
タイヤの頂部のトレッド面に配置される第3のブロックと、
タイヤの接地面側で前記第1のブロックと前記第2のブロックを互いに連結して固定する第1の連結手段と、
タイヤの頂部側で前記第3のブロックを介して前記第1のブロックと前記第2のブロックを連結する第2の連結手段とを具え、
前記第1のブロックの台座には、該台座に対して回転自在で、軸がタイヤの回転軸と平行のローラを有する第1のローラ部が設けられ、
前記第2のブロックの台座には、該台座に対して回転自在で、軸がタイヤの回転軸と平行のローラを有する第2のローラ部が設けられ、
前記第3のブロックの台座には、該台座に対して回転自在で、軸がタイヤの回転軸と平行のローラを有する第3のローラ部が設けられていることを特徴とする車輌盗難防止装置。
【請求項3】
前記第1のローラ部及び前記第2のローラ部には、それぞれ2つのローラが設けられ、
前記第1のブロックの台座部及び前記第2のブロックの台座部は、タイヤが該台座部に乗り上げた際に、前記2つのローラによってトレッド面とタイヤ接地面との間に所定の隙間が生ずるように該2つのローラが取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の車輌盗難防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両盗難防止装置に関し、特に車輌の発進動作を機械的に阻止することで盗難を防止する車両盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両の電子制御装置により車両の発進動作を禁止する盗難防止装置(例えば、車両のスマートキーを用いたIDコード認証等でスマートキーを持たない者による操作を禁止する装置)や、車輌のハンドルの回転を機械的に禁止する車輌盗難防止装置、更には車輌のタイヤの回転を機械的に禁止する盗難防止装置が一般に知られている。
このうちタイヤの回転を機械的に禁止する盗難防止装置は構造が単純で、しかも装着されていることが車両の外側から確認できるため盗難を抑制する効果も期待でき、上記した電子制御装置による盗難防止と併用される。
【0003】
タイヤの回転を機械的に禁止する盗難防止装置としては、タイヤのホイール穴に鉄棒を挿入して回転を禁止する盗難防止装置(特開2002-173001号公報)や、タイヤが不正に回転された際にタイヤをパンクさせる盗難防止装置(特開2016-88177号公報)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-173001号公報
【文献】特開2016-88177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、タイヤの回転を機械的に禁止する盗難防止装置を用いた場合、電子制御装置による盗難防止を不正に解除した者が、エンジンや駆動モータを作動させて強引に車輌を発進させる虞がある。
機械的にタイヤの回転を禁止する盗難防止装置が装着されたまま車両が不正に発進すると、回転しようとするタイヤやタイヤホイールに破損が生じたり、場合によっては車輌の駆動系に余分な力が加わって異常が生じるなど、仮に盗難を防ぐことができたとしても車両に被害が生じる虞がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、電子制御装置による盗難防止状態が不正に解除されて車輌のエンジンや駆動モータが作動した場合でも、車両の盗難を物理的に阻止することができ、しかもタイヤやホイールの破損が生ずることなく、駆動系の故障をも回避できる車両盗難防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本願の第1の発明に係る車輌盗難防止装置は、車輌前方又は後方からタイヤとタイヤ接地面との間に配置される第1のブロックと、車輌後方又は前方からタイヤとタイヤ接地面との間に配置される第2のブロックと、タイヤを挟んだ状態で前記第1のブロックと前記第2のブロックを互いに固定する連結手段とを具え、前記第1のブロックの台座には、該台座に対して回転自在で軸がタイヤの回転軸と平行のローラを有する第1のローラ部が設けられ、前記第2のブロックの台座には、該台座に対して回転自在で軸がタイヤの回転軸と平行のローラを有する第2のローラ部が設けられ、前記第1のローラ部及び前記第2のローラ部に、タイヤを空転させる空転用ローラと、前記空転用ローラの上方でタイヤのトレッド面に当接可能に配置されてタイヤを空転させる空転用補助ローラとを具え、前記空転用補助ローラの軸が、台座部に細長に形成された軸受孔にスライド可能に支持され、前記連結手段に、前記第1のブロックの前記空転用補助ローラの軸と前記第2のローラの前記空転用補助ローラの軸の距離を変更可能なローラ間隔調整部が設けられている。
【0011】
また、本願の第2の発明に係る車輌盗難防止装置は、車輌前方又は後方からタイヤと路面の接地面との間に配置される第1のブロックと、車輌後方又は前方からタイヤと路面の接地面との間に配置される第2のブロックと、タイヤのトレッド面の頂部に配置される第3のブロックと、タイヤの接地面側で前記第1のブロックと前記第2のブロックを互いに連結して固定する第1の連結手段と、タイヤの頂部側で前記第3のブロックを介して前記第1のブロックと前記第2のブロックを連結する第2の連結手段とを具え、前記第1のブロックの台座に、該台座に対して回転自在で、軸がタイヤの回転軸と平行のローラを有する第1のローラ部を設け、前記第2のブロックの台座に、該台座に対して回転自在で、軸がタイヤの回転軸と平行のローラを有する第2のローラ部を設け、前記第3のブロックの台座に、該台座に対して回転自在で、軸がタイヤの回転軸と平行のローラを有する第3のローラ部を設けたものである。
【0012】
また、本願の第3の発明は、第2の発明に係る車輌盗難防止装置において、前記第1のローラ部及び前記第2のローラ部に、それぞれ2つのローラが設けられ、前記第1のブロックの台座部及び前記第2のブロックの台座部は、タイヤが該台座部に乗り上げた際に、トレッド面が前記2つのローラによってタイヤ接地面から浮くように該2つのローラが取り付けたものである。
【0013】
本願の第1の発明によれば、第1のブロックと第2のブロックを連結する際に、第1のブロックの第2のローラと第2のブロックの第2のローラとの間隔をタイヤの外径に合わせて調整して、第1のローラ部のローラと第2のローラ部のローラがタイヤの前後から該タイヤに当接された状態で第1のブロックと第2のブロックを互いに連結することで、異なる外径のタイヤに装着でき、該タイヤが回転しても、第1のローラと第2のローラの作用によって空転し、タイヤが第1のローラ部及び第2のローラ部の空転用ローラを乗り上がるような発進がなされても第1のローラ部及び第2のローラ部の空転用補助ローラによりタイヤの空転を確実に行うことができる。
【0016】
本願の第2の発明によれば、第1のブロック、第2のブロック及び第3のブロックが連結手段によってタイヤの全周を囲むように盗難防止装置を装着できる。
本願の第3の発明によれば、盗難防止装置が装着されたタイヤが回転し、第1のブロックの台座部又は第2のブロックの台座部に乗り上げると、タイヤは、タイヤ接地面から浮き上がって第1のローラ及び第2のローラによって空転する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る盗難防止装置100を示す斜視図及び正面図である。
【
図2】盗難防止装置100をタイヤ10に装着する方法を示す斜視図及び正面図である。
【
図3】第1のブロック110の台座111へのローラ112の取付方法を示す斜視図及びローラ112の一部を切欠いた正面図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る盗難防止装置200を示す斜視図及び正面図である。
【
図5】盗難防止装置200をタイヤ10に装着する方法を示す斜視図及び正面図である。
【
図6】ローラ間隔調整部370を具えた盗難防止装置300をタイヤ10、20に装着した状態を示す正面図である。
【
図7】盗難防止装置300の第1のブロック310及び第2のブロック320に取り付けられるローラ間隔調整部370を示す説明図である。
【
図8】ローラ間隔調整部370を具えた盗難防止装置300の第1のブロック310を示す斜視図及び第1のブロック310に取り付けられるローラ313の一部を切欠いた正面図である。
【
図9】本発明の第3の実施の形態に係る盗難防止装置400を示す斜視図及び正面図である。
【
図10】盗難防止装置400をタイヤ10に装着する方法を示す斜視図及び正面図である。
【
図11】本発明の第4の実施の形態に係る盗難防止装置500を示す斜視図及び正面図である。
【
図12】盗難防止装置500をタイヤ10に装着する方法を示す斜視図及び正面図である。
【
図13】本発明の第5の実施の形態に係る盗難防止装置600をタイヤ10に装着した状態を示す斜視図及び盗難防止装置600を示す斜視図である。
【
図14】盗難防止装置600をタイヤ10に装着する方法を示す正面図である。
【
図15】盗難防止装置600が取り付けられたタイヤ10が不正に回転したときの盗難防止の効果を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施の形態)
本願の第1の実施の形態に係る盗難防止装置100について、
図1から
図3を用いて説明する。
図1、
図2に示すように、盗難防止装置100は、第1のブロック110と第2のブロック120と、これら第1のブロック110と第2のブロック120をタイヤ10を挟んでタイヤ接地面2側で相互に固定するための連結部(連結手段)140とによって構成されている。
【0019】
このうち第1のブロック110は、車輌1の前方(
図1、
図2中、左側)からタイヤ10のトレッド面10Aとタイヤ接地面2との間に配置されるもので、台座111とローラ(空転用ローラ)112とからなる。
台座111は、
図3(A)に示すように、2つの側壁部111A,111Aと、これら2つの側壁111A,111Aを繋ぐ後壁部111Bによって構成されている。
台座111の側壁111A,111Aには取付孔111c,111cが形成されており、この取付孔111c,111cにローラ112の軸112aが両端で支持されている。
【0020】
ローラ(空転用ローラ)112は、
図3(B)に示すように、円筒形の筒体112dがベアリング112cの働きによって軸112aを中心に回転自在になっている。
軸112aは、盗難防止装置100のタイヤ10への装着時(
図1)にタイヤ10の回転軸10B(
図1(A)の二点鎖線)と平行となるように配置され、ローラ112は、円筒形の筒体112dの外周面がタイヤ10のトレッド面10Aと当接しながら回転する。
【0021】
第2のブロック120は、
図1、
図2に示すように、タイヤ10を挟んで第1のブロック110の反対側(図中、右側)からタイヤ10のトレッド面10Aとタイヤ接地面2との間に配置されるもので、台座121とローラ(空転用ローラ)122とからなる。
ここで第2のブロック120の構造は、前述の第1のブロック110の構造と同じであるため詳細な説明は省略する。
盗難防止装置100では、ローラ112が第1のブロック110の第1のローラ部を構成し、ローラ122が第2のブロック120の第2のローラ部を構成する。
【0022】
盗難防止装置100の連結部140は、
図2に示すように、車輌1の前方(
図2中、左側)に配置された第1のブロック110とタイヤ接地面2を挟んで反対側(後方)に配置された第2のブロック120を互いに連結して固定するもので、一対のレバー141,141と、第2のブロック120の側壁に設けられた閂鎹部142,142(一方のみ図示)と、錠前143とによって構成されている。
【0023】
このうち一対のレバー141,141は、一端141A,141Aが第1のブロック110側の側壁111A,111Aに固定され、他端141B,141Bは、第2のブロック120の閂鎹部142,142に挿入可能となるように宙に浮いている。
また、レバー141,141の他端141B,141Bには、それぞれロック孔141c,141cが設けられている。
【0024】
第1のブロック110と第2のブロック120とをタイヤ10を挟んで連結する際には、第1のブロック110側で固定されたレバー141,141のロック孔141c,141cが突出するまで他端141B,141Bが閂鎹部142,142に挿入される。
このとき突出したロック孔141c,141cには、錠前143のアーム143aが貫通されて錠前143により施錠され、第1のブロック110と第2のブロック120が連結される。
【0025】
盗難防止装置100をタイヤ10に装着した状態(
図1)でタイヤ10が不正に回転されると、タイヤ10はトレッド面10Aが第1のブロック110のローラ112の外周面と第2のブロック120のローラ122の外周面に当接し、これらローラ112、ローラ122の働きによって空転する。
従って、盗難防止装置100を装着した状態では、タイヤ10が回転しても車輌1は発進しない。
また盗難防止装置100が装着されていれば不正にタイヤ10が回転しても、タイヤ10は空転するだけであるからタイヤやホイールを損傷することもない。
【0026】
(第2の実施の形態)
次に、本願の第2の実施の形態に係る盗難防止装置200について、
図4から
図8を用いて説明する。
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る盗難防止装置200を示す斜視図(A)及び正面図(B)である。
【0027】
盗難防止装置200は、盗難防止装置100と同様に、第1のブロック210と第2のブロック220と、これら第1のブロック210と第2のブロック220をタイヤ10を挟んでタイヤ接地面2側で相互に固定する連結部(連結手段)240とによって構成されおり、第1のローラ部、第2のローラ部にローラ(空転用補助ローラ)213,223が台座211、221に追加されている点が盗難防止装置100と異なる。なお、ローラ213、223の構造は盗難防止装置100のローラ112(
図3(B))と同一である。また、盗難防止装置200のその他の構造は、盗難防止装置100と同じであるため詳細な説明は省略する。
【0028】
盗難防止装置200では、
図5に示すように、第1のブロック210の台座211を構成する側壁211A,211Aには取付孔211c,211cが形成され、この取付孔211c,221cにローラ(空転用ローラ)212の軸(図示省略)が支持されている。
また、台座211の側壁211A,211Aに形成された取付孔211d,221dにローラ(空転用補助ローラ)213の軸(図示省略)が支持されている。
また、第2のブロック220側の台座221の側壁221A,221Aに形成された取付孔221c,221cにローラ(空転用ローラ)222の軸(図示省略)が支持され、取付孔221d,221dにローラ(空転用補助ローラ)223の軸(図示省略)が支持されている。
なお、盗難防止装置200では、ローラ212,213が第1のブロック210の第1のローラ部を構成し、ローラ222,223が第2のブロック220の第2のローラ部を構成する。
【0029】
盗難防止装置200をタイヤ10に装着する際しては、
図4、
図5に示すように、第1のブロック210が車輌1の前方(図示例では、左側)からトレッド面10Aとタイヤ接地面2との間に配置される。
第2のブロック220は車輌1の後方からトレッド面10Aとタイヤ接地面2との間に配置され、このときレバー241,241の他端241B,241Bが閂鎹部242,242に挿通され、このとき突出したロック孔241c,241cに錠前243のアーム243aが貫通されて施錠が行われる。
【0030】
盗難防止装置200をタイヤ10に装着した状態(
図4)でタイヤ10を不正に回転させると、タイヤ10は、そのトレッド面10Aが第2のブロック220のローラ(空転用ローラ)212、ローラ(空転用補助ローラ)213と、第2のブロック220のローラ(空転用ローラ)222、ローラ(空転用補助ローラ)223の働きによって空転する。
【0031】
従って、盗難防止装置200の装着時には、タイヤ10を不正に回転させても車輌1を発進させることができない。また、タイヤ10はローラ212,213、ローラ222、223により空転するため、タイヤやホイールを損傷することもない。
【0032】
図6、
図7、
図8は、盗難防止装置300の連結部(連結手段)340にローラ間隔調整部370を設けた第2の実施の形態の変形例を示す図である。
盗難防止装置300は、ローラ間隔調整部370により第1のブロック310側のローラ(空転用補助ローラ)313と第2のブロック320側の空転用補助ローラ323との間隔をタイヤの外径に応じて調整可能にしたものである。
ここで
図6(A)は盗難防止装置300を小径のタイヤ10に装着した例、
図6(B)は大形のタイヤ20に装着した例をそれぞれ示す。
以下、第1のブロック310と第2のブロック320を連結する一対のレバー341,341のうち一方のみを図示して説明する。
【0033】
盗難防止装置300に備えられたローラ間隔調整部370は、
図7(A)(B)に示すように連結部340のレバー341に設けられた細長孔341e、雄ネジ部341f、調整環345、調整ネジ346とによって構成されている。
なお、調整環345の長さは、盗難防止装置300が装着されるタイヤの外径に応じて決定される。この調整環345(
図6の345A,345B)をタイヤの外径に合わせて選択することで盗難防止装置300を異なる外径のタイヤ(10,20)に装着することができる。
【0034】
また、ローラ間隔調整部370が取り付けられる第1のブロック310は、
図7(C)に示すように、台座311の側壁311Aに設けられた軸受孔311dが車輌1の前方(図中、左側)から後方にかけて斜め上向きの細長に形成されている。また、第2のブロック320では台座321の側壁321A(一方のみ図示)に設けられた軸受孔321dが車輌1の後方から前方にかけて斜め上向きの細長に形成されている。
【0035】
ローラ間隔が調整される第1のブロック310のローラ(空転用補助ローラ)313は、
図8に示すように、軸313aの両端が軸受孔311d,311dに挿入される。このとき軸313a,323aの端部に設けられた凸部313c,313cは第1のブロック310の側壁311A,311Aから突出する。
【0036】
突出した凸部313cは、
図7(A)で示したレバー341の軸受孔341d,341dに嵌め込まれる。
ここで第2のブロック320のローラ(空転用補助ローラ)323は、
図7(A)に示すローラ313と同一構造であるため詳細な説明は省略する。
【0037】
このように第1のブロック310の軸受孔311d、第2のブロック320の軸受孔321dが共に細長に形成されているので、第1のブロック310のローラ(空転用補助ローラ)313、第2のブロック320のローラ(空転用補助ローラ)323は、車輌1の前後方向に移動可能となる(
図7(C)中、斜め上向きの軸受孔311d,321dに沿って移動)。
【0038】
ローラの間隔を調整するに当たって、レバー341の他端341B側から調整環345を雄ネジ部341fが突出するまで嵌め込み、突出した雄ネジ部341fに調整ネジ346の雌ネジ346dが螺合される。
よって、調整ネジ346を回転すれば、調整環345は第1のブロック310側に押しつけられ、第1のブロック310側のローラ313と第2のブロック320側のローラ323との間隔が変化する。
【0039】
盗難防止装置300をタイヤ10に装着し(第1のブロック310の空転用ローラ313と第2のブロック320の空転用ローラ323で挟み込んで密着させた状態)、調整ネジ346を徐々に回転させることで、第1のブロック310の空転用補助ローラ313と第2のブロック320の空転用補助ローラ323は、タイヤ10を挟むように引きつけられてタイヤ10のトレッド面10Aに押し当てられる。
【0040】
ローラ間隔調整部370を有する盗難防止装置300は、タイヤ10のサイズに拘わらずローラ312,322、ローラ313,323をトレッド面10Aに当接させるので、装着時に不正にタイヤ10が回転しても空転し、車両の盗難を防止することができる。
【0041】
(第3の実施の形態)
本願の第3の実施の形態に係る盗難防止装置400について、
図9、
図10を用いて説明する。
盗難防止装置400では、第1のブロック410の台座411に、ローラ(空転用ローラ)412、ローラ(空転用補助ローラ)413、更に、ローラ(乗上防止用ローラ)414が設けられている。
また、第2のブロック420の台座421には、ローラ(空転用ローラ)422、ローラ(空転用補助ローラ)423に加え、更に、ローラ(乗上防止用ローラ)424が設けられている。
これら第1のブロック410と第2のブロック420は、連結部(連結手段)440によって互いに連結される。
【0042】
この盗難防止装置400では、ローラ412,413,414が第1のブロック410の第1のローラ部を構成し、ローラ422,423,424が第2のブロック420の第2のローラ部を構成している。
なお、盗難防止装置400のその他の基本的な構造は、盗難防止装置200と同じであり、その詳細な説明は省略する。
【0043】
盗難防止装置400の第1のブロック410では、
図10に示すように、台座411の側壁411A,411Aの取付孔411c,411cにローラ(空転用ローラ)412の軸が支持され、取付孔411d,411dにローラ(空転用補助ローラ)413の軸が支持され、取付孔411e,411eにローラ(乗上防止用ローラ)の軸が支持されている。
【0044】
また、第2のブロック420では、台座421の側壁421A,421Aの取付孔421c,421c(一方のみ図示)にローラ(空転用ローラ)422の軸が支持され、取付孔421d,421dにローラ(空転用補助ローラ)423の軸が支持され、取付孔411e,411eにローラ(乗上防止用ローラ)424の軸が支持されている。
【0045】
盗難防止装置400をタイヤ10に装着する際しては、
図9、
図10に示すように、第1のブロック410が車輌1の前方からトレッド面10Aとタイヤ接地面2との間に配置され、次いで、第2のブロック420がタイヤ10の後方からトレッド面10Aとタイヤ接地面2との間に配置される。
このとき一端が第1のブロック410側に固定されたレバー441,441は、他端のロック孔441c,441cが突出するまで第2のブロック420に設けられた閂鎹部442,442に挿通される。
閂鎹部442,442から突出したロック孔441c,441cには錠前443のアーム443aが通されて施錠される。
【0046】
盗難防止装置400をタイヤ10に装着した状態(
図9)でタイヤ10を回転させると、タイヤ10は、そのトレッド面10Aが第1のブロック410側の3つのローラ(空転用ローラ412、空転用補助ローラ413、乗上防止用ローラ414)と、第2のブロック220側の3つのローラ(空転用ローラ422、空転用補助ローラ423、乗上防止用ローラ424)に当接したまま空転する。
従って、盗難防止装置400が装着された状態ではタイヤ10が回転しても空転するため車輌1を発進させることができない。
また、タイヤ10が回転しても、ローラ412,413、414、ローラ422、423、424により空転するため、タイヤやホイールが損傷することもない。
【0047】
(第4の実施の形態)
本願の第4の実施の形態に係る盗難防止装置500について、
図11、
図12を用いて説明する。
この第4の実施の形態に係る盗難防止装置500は、第1のブロック510と第2のブロック520に加え、更に第3のブロック530を具える点が第2の実施の形態の盗難防止装置200と異なる。
【0048】
具体的には、盗難防止装置500では連結部(第1の連結部手段)540を構成する一対のレバー541,541は、その一端541A,541Aが、第1のブロック510の台座511の側壁511A,511Aに回動自在に取り付けられている。
また、第1のブロック510と第3のブロック530は、予めワイヤ(第2の連結手段)550で連結されており、更に、ワイヤ550は、第3のブロック530から第2のブロック520側に延びて端部550Aがコの字型となっている。
【0049】
この盗難防止装置500をタイヤ10に装着するに当たっては、予めワイヤ550で第3のブロック530に連結された第1のブロック510が、車輌1の前方からタイヤ接地面2とトレッド面10Aとの間に配置され、第3のブロック530がタイヤ10の頂部10Cに配置される。
このときレバー541,541は回動され、他端541B,541Bが上方に移動する(
図12(A)(B))。
【0050】
一対のレバー541,541の一端541B,541Bが引き上げられた状態で第2のブロック520がタイヤ10のトレッド面とタイヤ接地面2との間に配置され、その後、一対のレバー541,541は下方に引き下げられる(
図12(B)の矢印)。
このとき一対のレバー541,541の他端541B,541Bに形成された切欠部541c,541cに、ワイヤ550のコの字型の端部550Aが引っ掛けられる。
【0051】
ワイヤ550の端部550Aが引っ掛けられたレバー541,541は、貫通孔541d,541dが第2のブロック520の台座521の貫通孔521d,521dと重ね合う位置まで回動され、その後、貫通孔541d,541d、貫通孔521d,521dに錠前543のアーム543aが通されて施錠される。
【0052】
盗難防止装置500では、第1のブロック510と第2のブロック520をタイヤ接地面2側で連結し、かつ、タイヤ10の頂部10C側で第3のブロック530を介してワイヤ550で連結している。
結果、盗難防止装置500は、第1のブロック510、連結部(第1の連結部)540、第2のブロック520、第3のブロック530、ワイヤ(第2の連結部)550でタイヤ10の全周を覆う。
【0053】
盗難防止装置500をタイヤ10の全周に装着した状態(
図11)でタイヤ10を回転させると、第1のブロック510の台座511に設けられたローラ512,513、第2のブロック520の台座521に設けられたローラ522,523、第3のブロック530の台座に設けられたローラ532,533がタイヤ10のトレッド面10Aに当接するのでタイヤ10を回転させても空転する。
従って、盗難防止装置500が装着された状態ではタイヤ10は空転し、車輌1を発進させることができない。
また、強引にタイヤ10を回転させてもローラ512,513、ローラ522,523、ローラ532,533働きによって空転するためタイヤやホイールを損傷することもない。
なお、盗難防止装置500では、ローラ512,513が第1のブロック510の第1のローラ部を構成し、ローラ522,523が第2のブロック520の第2のローラ部を構成し、ローラ532,533が第3のブロック530の第3のローラ部を構成する。
なお、この第4の実施の形態の盗難防止装置500では、第1のブロック510と第2のブロック520を、第3のブロック530を介してワイヤ550で連結する例をあげて説明したが、鋼鉄製の平板等を用いたリンク機構、チェーン等で連結してもよい。
【0054】
(第5の実施の形態)
本願の第5の実施の形態に係る盗難防止装置600について、
図13から
図15を用いて説明する。
この第5の実施の形態に係る盗難防止装置600は、上述の盗難防止装置500と同様に、タイヤ10をタイヤ接地面2側で挟む第1のブロック610と第2のブロック620に加え、タイヤ10の頂部10C側に第3のブロック630を配置するものである。
【0055】
盗難防止装置600では、第1のブロック610と第2のブロック620が一対のレバー641,641からなる連結部(第1の連結手段)640で連結される。
また、第1のブロック610と第3のブロック630は、ワイヤ650,650で連結され、第2のブロック620と第3のブロック630がワイヤ660,660で連結されている(第2の連結手段)。
【0056】
盗難防止装置600は、詳細は後述するように、装着時にタイヤ10が回転し始めたときに、この最初の回転を利用してタイヤ10を第1のブロック610(又は第2のブロック620)に乗り上げるように構成されている。
タイヤ10が第1のブロック610(第2のブロック620)に乗り上がると、タイヤ10が第1のブロック610の台座611側のローラ612,613(又は第2のブロック620の台座621側のローラ622,623)に支えられてタイヤ10は空転する。
【0057】
連結部640のレバー641,641は一端641A,641Aが第1のブロック610に回動自在に取り付けられ、他端641B,641Bに切欠部641c,641cが形成されている(
図14(A))。
この切欠部641c,641cは、第2のブロック620側の突起部625,625に引っ掛けられ、第1のブロック610と第2のブロック620が連結する。
【0058】
第1のブロック610と第3のブロック630を連結するワイヤ650,650は一端が第1のブロック610の突起部615,615に、他端が第3のブロック630の突起部635,635に固定されている。
また、第2のブロック620と第3のブロック630を連結するワイヤ(ワイヤロック)660,660は一端(ワイヤ660Aの一端)が第2のブロック620の突起部626,626に、他端(ワイヤ660Bの一端)が第3のブロック630の突起部636,636に固定され、その中間部(ワイヤ660A、660Bの間)にワイヤー錠(ワイヤヘッド665A,差込部665B)が設けられている。
なお、盗難防止装置600では、ローラ612,613が第1のブロック610の第1のローラ部を構成し、ローラ622,623が第2のブロック620の第2のローラ部を構成し、ローラ632,633が第3のブロック630の第3のローラ部を構成する。
【0059】
このように構成された盗難防止装置600をタイヤ10に装着するに当たっては、
図14(A)に示すように、第3のブロック630が予めワイヤ650で連結されている第1のブロック610を車輌1の前方からトレッド面10Aとタイヤ接地面2との間に配置する。
次にレバー641,641の端部を上方に回動し、この状態で第2のブロック620を車輌1の後方からトレッド面10Aとタイヤ接地面2との間に配置する(
図14(A))。
その後、レバー641,641を下方に回動して切欠部を第2のブロック620の突起部に嵌合させる(
図14(B))。
【0060】
第3のブロック630は、タイヤ10の頂部10Cに配置し、第3のブロック630側に接続されているワイヤ660(660A)を第2のブロック620側に廻し込み、第2のブロック620側に接続されているワイヤ660(660B)を第3のブロック630側に引き上げる。
【0061】
第3のブロック630側のワイヤ660Aの開放端に設けられた差込部665Bを、第2のブロック620側のワイヤ660Bの開放端に設けられたワイヤヘッド665Aに差し込んで施錠する。
これにより第1のブロック610、第2のブロック620、第3のブロック630が、一対のレバー641,641、ワイヤ650,650、ワイヤ660,660によってタイヤ10の全周を囲むように装着される(
図14(C))。
【0062】
タイヤ10に盗難防止装置600を装着した時点ではタイヤ10は接地している(
図15(A)のタイヤ接地面2)。
タイヤ10が接地している状態で、タイヤ10を
図12中で時計回りに回転し始めると、この回転によりタイヤ10が第2のブロック620の台座621に乗り上げる(
図15(B))。
タイヤ10が第2のブロック620に乗り上げると、タイヤ10のトレッド面10Aがローラ622,623に当接して支持され、タイヤ10のトレッド面10Aと地面との間に隙間Δhが生じ、その後タイヤ10は空転する。
【0063】
反対に、タイヤ10が接地している状態で、タイヤ10が
図12中で反時計回りに回転し始めるとタイヤ10は第1のブロック610の台座611に乗り上げ(
図15(C))、タイヤ10のトレッド面10Aと地面との間に隙間Δhが生じ、その後タイヤ10は空転する。
【0064】
従って、盗難防止装置600が装着された状態でタイヤ10を回転させるとタイヤ10が第1のブロック610又は第2のブロック620に乗り上げ、空転するため車輌1を発進させることができない。
その後タイヤ10を回転させても空転し続けるためタイヤやホイールを損傷することもない
【0065】
なお、この第5の実施の形態の盗難防止装置600では、第1のブロック610と第3のブロック630、第2のブロック620と第3のブロック630をそれぞれワイヤで連結する例をあげて説明したが、鉄板、鉄棒を用いたレバー等で連結してもよい。
また、本実施の形態で説明した盗難防止装置では第1のブロックを車輌の前方、第2のブロックを車輌の後方に配置する例をあげて説明したが、第1のブロックを車輌の後方、第2のブロックを車輌の前方に配置してもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1 車輌
2 タイヤ接地面
10 タイヤ
10A トレッド面
100,200,300,400,500,600 盗難防止装置
110、210,310,410,510,610 第1のブロック
111,211,311,411,511,611 台座
112,122,212,222,312,322,412,422,512,522,612,613,622,623 ローラ(空転用ローラ)
120、220,320,420,520,621 第2のブロック
121,221,321,421,521,621 台座
140,240,340,440,540,640 連結部(連結手段、第1の連結手段)
213,223,313,323,413,423,513,523 ローラ(空転用補助ローラ)
370 ローラ間隔調整部
414,424 ローラ(乗上防止用ローラ)
530,630 第3のブロック
550,650,660 ワイヤ(第2の連結手段)
【要約】
【課題】簡単な構成で車両の盗難を防止することができる車両盗難防止器具を提供する。
【解決手段】 盗難防止装置100は、車輌1の前方からタイヤ10とタイヤ接地面2との間に配置される第1のブロック110、車輌後方からタイヤ10とタイヤ接地面2との間に配置される第2のブロック120、タイヤ10を挟んだ状態で第1のブロック110と第2のブロック120を互いに固定する連結部140からなる。第1のブロック110の台座111には回転自在で軸112aがタイヤ10の回転軸10Bと平行のローラ112が設けられ、第2のブロック120の台座121には回転自在で軸122aがタイヤ10の回転軸10Bと平行の第2のローラ122が設けられている。盗難防止装置100の装着時、タイヤ10を不正に回転させるとローラ112,122の働きによってタイヤ10は空転する。
【選択図】
図1