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  • 特許-光音響診断装置および方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】光音響診断装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/13 20060101AFI20241211BHJP
   A61B 5/145 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A61B8/13
A61B5/145
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023551639
(86)(22)【出願日】2021-11-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 KR2021015931
(87)【国際公開番号】W WO2022098128
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0147505
(32)【優先日】2020-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523169888
【氏名又は名称】エイチエムイー・スクエア・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユンホ・カン
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-041824(JP,A)
【文献】特開2015-116254(JP,A)
【文献】特開2013-074995(JP,A)
【文献】特表2016-503312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0160908(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/06-5/22、8/00-8/15
G01N29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に光を照射して音響を放射させる光源と、
前記音響によって形態が変化するメンブレンが備えられた複数の受音部と、
前記メンブレンの形態変化を測定する測定部とを含み、
前記複数の受音部の前記メンブレンは、互いに異なる大きさを有するものである、光音響診断装置。
【請求項2】
前記受音部の各共振周波数は、血糖の光音響ピークにマッチングされるものである、請求項1に記載の光音響診断装置。
【請求項3】
光音響診断装置を用いて血糖を測定する光音響分析方法において、
光源を用いて被検体に光を照射する光照射ステップと、
メンブレンが備えられた複数の受音部によって前記被検体から放射された音響を受音する受音ステップと、
前記メンブレンの形態変化を測定する測定ステップと、
前記メンブレンの形態変化を分析して、血液中に含まれた血糖の存在および量を分析する血糖分析ステップとを含み、
前記複数の受音部の前記メンブレンは、互いに異なる大きさを有するものである、光音響分析方法。
【請求項4】
前記受音部のメンブレンの大きさを調整して、前記受音部の各共振周波数を血糖の光音響ピークにマッチングさせるステップをさらに含む、請求項3に記載の光音響分析方法。
【請求項5】
請求項3および4のいずれか1項に記載の方法を実現するためのプログラムが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波によるメンブレンの形態変化を測定して血液中の血糖を測定する光音響診断装置および方法に関し、さらに詳しくは、メンブレンの大きさを調整して、診断装置の周波数応答を調整する光音響診断装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光音響診断技術は、光音響効果を利用して非侵襲的に生体組織を形成化する技術である。光音響診断のために、レーザの短い電磁パルスが生体組織に入射すれば、エネルギーの一部分が組織によって吸収された後、熱に変換されて瞬間的な熱弾性膨張を起こす。その結果、広い帯域の周波数を有する超音波が放出され、これを様々な方向から超音波用トランスデューサで検出してイメージに変換させることができる。
【0003】
光音響診断技術は、電磁波を超音波に変換させて検出するため、光学的イメージングと超音波イメージングの特性を混合できるというメリットを有する。純粋な光学的イメージング手法のコントラスト(contrast)は、超音波イメージングに比べて非常に高いが、軟部組織(soft tissue)の高い光散乱のため、生体表面から特定の深さまでのみ映像化できるというデメリットがある。これに対し、超音波イメージングは、胎児検査に活用されるだけ高い空間分解能(spatial resolution)を有している。光音響イメージングは、光学的イメージングのデメリットである低い映像化深さを光音響効果による超音波変換により克服して、高い光学的コントラストと高い空間分解能を同時に実現することができる。
【0004】
光音響診断技術を実現する装置は、大きく、レーザを照射する光学部と、超音波を測定するトランスデューサとで構成される。超音波を測定するトランスデューサは、ピエゾ(piezo)方式と、メムス(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)方式とがある。ピエゾ方式は、超音波による圧力によって圧電物質内に電位が形成され、電位差である電圧を測定して超音波を測定し、メムス方式は、超音波による圧力によってメンブレン膜の形態が変化し、形態変化による静電容量の変化を測定して超音波を測定する。
【0005】
上述したトランスデューサは、光学部と別のモジュールで構成されるため、上述したトランスデューサを有する光音響診断装置は、その大きさを低減しにくく、使用の便宜性が低下する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した問題点を解決するために、本発明は、メンブレンの大きさ調整によりトランスデューサの共振周波数を調整して、血糖光音響ピーク(peak)にマッチングさせる光音響診断装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例として、光音響診断装置が提供される。
【0008】
本発明の一実施例による光音響診断装置は、被検体に光を照射して音響を放射させる光源と、前記音響によって形態が変化するメンブレンが備えられた複数の受音部と、前記メンブレンの形態変化を測定する測定部とを含み、前記複数の受音部の前記メンブレンは、互いに異なる大きさを有することができる。
【0009】
本発明の一実施例による光音響診断装置において、前記受音部の各共振周波数は、血糖の光音響ピークにマッチングされる。
【0010】
本発明の一実施例として、光音響診断方法が提供される。
【0011】
本発明の一実施例による光音響診断方法は、光源を用いて被検体に光を照射する光照射ステップと、メンブレンが備えられた複数の受音部によって前記被検体から放射された音響を受音する受音ステップと、前記メンブレンの形態変化を測定する測定ステップと、前記メンブレンの形態変化を分析して、血液中に含まれた血糖の存在および量を分析する血糖分析ステップとを含むことができる。
【0012】
本発明の一実施例による光音響診断方法は、前記受音部のメンブレンの大きさを調整して、前記受音部の各共振周波数を血糖の光音響ピークにマッチングさせるステップをさらに含むことができる。
【0013】
本発明の一実施例として、前述した方法を実現するためのプログラムが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明による光音響診断装置は、メンブレンの大きさ調整によりトランスデューサの共振周波数を調整することにより、光音響診断装置の周波数応答を改善させることができるという利点を有する。
【0015】
本開示から得られる効果は以上に言及された効果に制限されず、言及していないさらに他の効果は以下の記載から本開示の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例による光音響診断装置の全体構成図である。
図2】本発明の一実施例による光音響診断装置のブロック図である。
図3】本発明による光音響診断装置における受音部の実施例である。
図4】本発明の一実施例による光音響診断装置の受音部の周波数応答を示す。
図5】血糖による光音響信号の一例を示すグラフである。
図6】本発明の一実施例による光音響診断方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施例として、光音響診断装置が提供される。
【0018】
本発明の一実施例による光音響診断装置は、被検体に光を照射して音響を放射させる光源と、前記音響によって形態が変化するメンブレンが備えられた複数の受音部と、前記メンブレンの形態変化を測定する測定部とを含み、前記複数の受音部の前記メンブレンは、互いに異なる大きさを有することができる。
【0019】
本発明の一実施例による光音響診断装置において、前記受音部の各共振周波数は、血糖の光音響ピークにマッチングされる。
【0020】
本発明の一実施例として、光音響診断方法が提供される。
【0021】
本発明の一実施例による光音響診断方法は、光源を用いて被検体に光を照射する光照射ステップと、メンブレンが備えられた複数の受音部によって前記被検体から放射された音響を受音する受音ステップと、前記メンブレンの形態変化を測定する測定ステップと、前記メンブレンの形態変化を分析して、血液中に含まれた血糖の存在および量を分析する血糖分析ステップとを含むことができる。
【0022】
本発明の一実施例による光音響診断方法は、前記受音部のメンブレンの大きさを調整して、前記受音部の各共振周波数を血糖の光音響ピークにマッチングさせるステップをさらに含むことができる。
【0023】
本発明の一実施例として、前述した方法を実現するためのプログラムが記録されたコンピュータ読取可能な記録媒体が提供される。
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定されない。そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、明細書全体にわたって類似の部分については類似の図面符号を付した。
【0025】
本明細書で使われる用語について簡略に説明し、本発明について具体的に説明する。
【0026】
本発明で使われる用語は、本発明における機能を考慮しながらできるだけ現在広く使われる一般的な用語を選択したが、これは当分野に従事する技術者の意図または判例、新たな技術の出現などにより異なる。また、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、当該発明の説明部分において詳しくその意味を記載するであろう。したがって、本発明で使われる用語は、単純な用語の名称ではない、その用語が持つ意味と本発明の全般にわたる内容に基づいて定義されなければならない。
【0027】
明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに包含できることを意味する。また、明細書に記載の「~部」、「モジュール」などの用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアまたはソフトウェアで実現されるか、ハードウェアとソフトウェアとの結合で実現される。また、明細書全体において、ある部分が他の部分に「連結」されているとする時、これは、「直接的に連結」されている場合のみならず、「その中間に他の素子を挟んで」連結されている場合も含む。
【0028】
以下、添付した図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施例による光音響診断装置の全体構成図であり、図2は、本発明の実施例による光音響診断装置のブロック図である。
【0030】
図1および図2を参照すれば、本発明の一実施例による光音響診断装置は、被検体に光を照射して音響を放射させる光源100と、前記音響によって形態が変化するメンブレンが備えられた複数の受音部200と、前記メンブレンの形態変化を測定する測定部300とを含むことができ、前記複数の受音部200の前記メンブレンは、互いに異なる大きさを有することができる。
【0031】
光源100は、レーザ光を出力することができ、前記レーザ光は、赤外線であってもよい。
【0032】
前記光源100によって出力されたレーザは、被検体に照射されて被検体に含まれた分子を振動させ、分子の振動によって超音波が放射される。
【0033】
光音響診断装置は、複数の受音部200を含むことができ、各受音部200に含まれたメンブレンの大きさを異なるように形成することにより、受音部200それぞれの共振周波数(Resonance Frequency、RF)を多様に設定することができる。
【0034】
すなわち、本発明による光音響診断装置は、複数の互いに異なる大きさを有する受音部200を含むことにより、複数の共振周波数を有することができ、これを用いて血糖による光音響信号を測定することができる。
【0035】
前記測定部300は、静電容量を測定することにより、メンブレンの形態変化を測定することができ、前記受音部200に光源を照射して反射する光を測定および分析することにより、メンブレンの形態変化を測定する光学的な方法を用いることができる。
【0036】
図3は、本発明による光音響診断装置における受音部の実施例である。
【0037】
図3を参照すれば、受音部200は、音を検出するメンブレンと、メンブレンを保護する保護部とをさらに含むことができる。本発明による光音響診断装置において、前記音は、超音波に相当することができる。
【0038】
メンブレンは、印加される音(X)に応じて上下方向(Y)に振動することができる。メンブレンの上下振動幅は、音(X)の強度に応じて異なる。例えば、音(X)の強度が大きいほど、メンブレンは、より大きい幅で上下振動をするはずである。
【0039】
メンブレンは、外部から印加される音(X)の強度を検出する役割を果たすことができ、外部から印加される音(X)に対してできるだけ大きな振幅を有して振動できるように薄いメンブレンで構成される。
【0040】
メンブレンは、MEMS工程で主に使用される単結晶シリコン、多結晶シリコン、シリコン窒化物、シリコン酸化物、アルミニウムおよびその他の金属薄膜材質、炭素または炭素を含む化合物、そして前記素材が積層された形態で構成される。
【0041】
保護部は、メンブレンを外部の衝撃から保護しながらもメンブレンへの音の伝達を妨げない構造を有する素材で形成されることが好ましい。例えば、網構造を有するメッシュ(mesh)素材が使用されてもよい。
【0042】
図4は、本発明の一実施例による光音響診断装置の受音部の周波数応答を示す。
【0043】
図4を参照すれば、1つの受音部200が有する周波数応答を知ることができる。図4にて、横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は振幅(dB)である。共振周波数とは、他の周波数に比べて著しく大きな振幅を有する周波数を意味し、図4にて、Aが共振周波数に相当する。
【0044】
受音部200は、1つのメンブレンを含むことができ、1つのメンブレンは、1つの共振周波数を有する。例えば、光音響診断装置が6つの受音部200を含む場合、6つのメンブレンを含むことができ、6つの共振周波を有するはずである。
【0045】
本発明の一実施例による光音響診断装置は、前記受音部200を6つ備えることができ、前記受音部200の各共振周波数は、血糖の光音響ピークにマッチングされる。
【0046】
図5は、血糖による光音響信号の一例を示すグラフである。
【0047】
図5にて、横軸は周波数(HZ)であり、縦軸は電力スペクトル密度(W/Hz)である。
【0048】
図5を参照すれば、光音響信号は、6つのピークを有することができ、前記ピークが示す周波数とピークの形態は、測定条件に応じて異なる。
【0049】
すなわち、血液にレーザを照射した時、検出される主なピークのうち所望数のピークを選択して受音部の共振周波数をマッチングすることができる。マッチングされた共振周波数で測定されるピークの振幅が大きいほど、血糖の量が多いことが分かる。
【0050】
本発明による光音響診断装置は、複数の受音部200を含み、各受音部200の共振周波数を血糖によるピークが有する周波数にマッチングさせることにより、低い濃度の血糖または皮膚から遠い血管中の血糖による小さな信号でも大きい振幅を示す受音部によって測定可能であり、これにより血液中の血糖の量を精密に測定可能である。
【0051】
図6は、本発明の実施例による光音響診断方法のフローチャートである。
【0052】
図6を参照すれば、本発明の一実施例による光音響診断方法は、光音響診断装置を用いて血糖を測定する光音響診断方法において、光源100を用いて被検体に光を照射する光照射ステップS100と、メンブレンが備えられた複数の受音部200によって前記被検体から放射された音響を受音する受音ステップS200と、前記メンブレンの形態変化を測定する測定ステップS300と、前記測定された形態変化を分析して、血液中に含まれた血糖の存在および量を分析する血糖分析ステップS400とを含むことができる。
【0053】
本発明の一実施例による光音響診断方法は、前記受音部200のメンブレンの大きさを調整して、前記受音部200の各共振周波数を血糖の光音響ピークにマッチングさせるステップS110をさらに含むことができる。
【0054】
本発明の一実施例による方法に関しては、前述した装置に関する内容が適用可能である。したがって、方法に関して前述した装置に関する内容と同一の内容については説明を省略する。
【0055】
上述した本発明の説明は例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で容易に変形可能であることを理解することができる。そのため、以上に述べた実施例はすべての面で例示的であり、限定的ではないことが理解しなければならない。例えば、単一形で説明されている各構成要素は分散して実施されてもよいし、同じく、分散したと説明されている構成要素も結合された形態で実施されてもよい。
【0056】
本発明の範囲は上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
【0057】
100 光源
200 受音部
300 測定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6