(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】皮膚化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/04 20060101AFI20241211BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20241211BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241211BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A61K8/04
A61K8/73
A61Q19/00
A61K8/25
(21)【出願番号】P 2020155091
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住田 泰輝
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-004236(JP,A)
【文献】特表2001-524123(JP,A)
【文献】特開2004-107306(JP,A)
【文献】特開2014-181224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロゲル粒子を含有する皮膚化粧料であって、前記ハイドロゲル粒子が、次の成分(a)~(c):
(a)ヒアルロン酸又はその塩、
(b)寒天、
(c)水
を含有し、ハイドロゲル粒子中に
、成分(a)
を0.05~0.8質量%
、成分(b)を1~6質量%、それぞれ含有する皮膚化粧料。
【請求項2】
ハイドロゲル粒子の平均粒径が、0.08~4mmである請求項1記載の皮膚化粧料。
【請求項3】
ハイドロゲル粒子の軟化点が30℃以上である請求項1又は2記載の皮膚化粧料。
【請求項4】
成分(b)に対する成分(a)の質量割合〔(a)/(b)〕が、
0.008~
0.7である請求項1~3のいずれか1項記載の皮膚化粧料。
【請求項5】
皮膚化粧料中のハイドロゲル粒子の含有量が、1~20質量%である請求項1~4のいずれか1項記載の皮膚化粧料。
【請求項6】
前記ハイドロゲル粒子が、さらに(d)シリカを含有するものであり、ハイドロゲル粒子中に、成分(c)を70~98質量%、成分(d)を0.1~2質量%、それぞれ含有する請求項1~5のいずれか1項記載の皮膚化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
寒天は、含水機能や、使用性等に特異な性質を有することなどから、化粧料の配合成分として用いられている。そして、従来、寒天ゲル粒子を分散した化粧料が検討されている。
例えば、特許文献1には、粉体を含有する寒天ゲル粒子を水性媒体に分散した化粧料が、寒天ゲル粒子が容易に崩壊し、肌上で均一に伸び広がり、肌なじみに優れることが記載されている。
また、特許文献2には、無機粉体と寒天を含有する寒天ゲル粒子を、水中油型乳化組成物に分散した化粧料が、塗布する際に、寒天ゲル粒子が崩壊することなく一定の力でスムーズに塗布することができ、塗布後の肌のハリ感に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-181224号公報
【文献】特開2014-210770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の化粧料は、寒天ゲル粒子を分散した状態で、高温においても安定に保存することは困難であった。また、寒天ゲル粒子を適切な硬さ、すなわち、化粧料中では粒子が安定に保たれ、肌に塗布したときに潰れやすくする点においては、十分満足できるものではなかった。さらに、塗布後には、肌なじみや、肌への密着感が十分ではなく、肌の滑沢感(すべり)も得られなかった。
【0005】
本発明は、ハイドロゲル粒子を含有する化粧料において、高温安定性に優れ、塗布時にハイドロゲル粒子が潰れやすく、塗布後に肌への密着感や、滑沢感が良好な皮膚化粧料に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定量のヒアルロン酸又はその塩と、寒天を含有するハイドロゲル粒子を用いれば、高温安定性に優れ、塗布時にハイドロゲル粒子が潰れやすく、塗布後に肌への密着感や、滑沢感が良好な皮膚化粧料が得られることを見出した。
【0007】
本発明は、ハイドロゲル粒子を含有する皮膚化粧料であって、前記ハイドロゲル粒子が、次の成分(a)~(c):
(a)ヒアルロン酸又はその塩、
(b)寒天、
(c)水
を含有し、ハイドロゲル粒子中に成分(a)を、0.01~0.8質量%含有する皮膚化粧料に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の皮膚化粧料は、高温安定性に優れ、塗布時にハイドロゲル粒子が潰れやすく、塗布後に肌への密着感があり、肌に滑沢感が得られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で用いるハイドロゲル粒子は、次の成分(a)~(c)を含有するものである。
(a)ヒアルロン酸又はその塩 0.01~0.8質量%、
(b)寒天、
(c)水
【0010】
成分(a)のうち、ヒアルロン酸塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。成分(a)としては、入手の容易さと汎用性、高温安定性を向上させる観点から、ヒアルロン酸ナトリウムが好ましい。
成分(a)は、保湿効果と高温安定性を向上させる観点から、ハイドロゲル粒子中に0.01~0.8質量%含有され、0.03~0.6質量%が好ましく、0.05~0.3質量%がより好ましい。
【0011】
成分(b)の寒天は、ガラクトースの1,3結合及び1,4結合からなるガラクタンを含むヘミセルロースをいう。かかる寒天としては、特に限定されないが、寒天のゼリー強度(日寒水式法)は、皮膚に適用した場合の使用時の感触を向上させる観点から、147kPa(1500g/cm2)以下であることが好ましく、19.6kPa(200g/cm2)~127kPa(1300g/cm2)であることがより好ましい。ゼリー強度は、寒天の1.5質量%水溶液を調製し、その水溶液を20℃で15時間放置して凝固させたゲルを、縦×横×高さが25mm×25mm×3mmの大きさに切り取り、切り取られたゲルを、日寒水式ゼリー強度測定器(木屋製作所社製)により荷重をかけ、20℃においてゲルが20秒間その荷重に耐えるときの表面積1cm2当たりの最大質量(g)として求めることができる。
成分(b)の寒天としては、例えば、伊那寒天PS-84、Z-10、AX-30、AX-100、AX-200、T-1、S-5、M-7、UP-16、CS-16A、CS-420、CS-670、XY-908(以上、伊那食品工業社製)等の市販品を用いることができる。これらのうち、AX-200、UP-16、CS-16A、XY-908が好ましい。
成分(b)の寒天は、高温安定性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌の密着感、滑沢感を向上させる観点から、ハイドロゲル粒子中に0.5~10質量%含有するのが好ましく、1~8質量%がより好ましく、1.5~7質量%がさらに好ましく、3~6質量%がよりさらに好ましい。
【0012】
本発明において、成分(b)に対する成分(a)の質量割合(a)/(b)は、ハイドロゲル粒子の成型性と高温安定性を向上させる観点から、0.001~1であるのが好ましく、0.003~0.7がより好ましく、0.005~0.4がさらに好ましく、0.007~0.2がよりさらに好ましく、0.008~0.13がことさら好ましく、0.01~0.06が特に好ましい。
【0013】
成分(c)の水は、ハイドロゲル粒子の成型性と高温安定性を向上させ、ハイドロゲル粒子の調製に関するハンドリングをよくする観点から、ハイドロゲル粒子中に70~99質量%含有するのが好ましく、80~98質量%がより好ましく、90~97質量%がさらに好ましい。
【0014】
ハイドロゲル粒子は、さらに、(d)シリカを含有することができ、ハイドロゲル粒子の成型性を向上させ、良好なゲル強度を得ることができ、高温安定性を向上させることができる。
シリカとしては、多孔質シリカが好ましい。多孔質シリカは、中空多孔質シリカを含む。多孔質シリカの市販品としては、サンスフェアシリーズ(AGCエスアイテック社)、ゴッドボールシリーズ(鈴木油脂工業社)等が挙げられる。
シリカの平均粒子径は、0.5~50μmが好ましく、3~30μmがより好ましく、5~30μmがさらに好ましく、10~20μmがよりさらに好ましい。平均粒子径は、シリカの単分散時の平均粒子径であって、静的光散乱法で測定された粒子径の体積平均粒子径である。
シリカは、ハイドロゲル粒子の成型性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌の密着感、滑沢感を向上させる観点から、ハイドロゲル粒子中に0.0001~3質量%含有するのが好ましく、0.001~2質量%がより好ましく、0.01~0.8質量%がさらに好ましく、0.1~0.35質量%がよりさらに好ましい。
【0015】
本発明において、成分(d)に対する成分(a)の質量割合(a)/(d)は、ハイドロゲル粒子の成型性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌の密着感、滑沢感を向上させる観点から、0.01~10であるのが好ましく、0.15~6がより好ましく、0.4~4がさらに好ましい。
【0016】
また、ハイドロゲル粒子は、成分(d)のシリカ以外の粉体、例えば、着色顔料を含有することができる。
着色顔料としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、更にカーボンブラック等の無機顔料;赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、黄色4号、黄色5号、黄色401号、青色1号、青色404号等の合成有機顔料;β-カロチン、カラメル、パプリカ色素等の天然有機色素等が挙げられ、これらの着色顔料の複合体、これらの着色顔料とパール顔料とを組み合わせた複合顔料などが挙げられる。
着色顔料としては、皮膚化粧料にハイドロゲル粒子を含有させ、容器に充填した際の外観をきれいに見せる観点から、金属酸化物が好ましく、酸化チタン、酸化亜鉛、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがより好ましく、酸化チタン、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがさらに好ましい。
【0017】
また、成分(d)のシリカ、着色顔料以外の粉体を含有することもでき、例えば、無機粉体としては、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、雲母、合成雲母、セリサイト、タルク、カオリン、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、雲母チタン、窒化硼素等が挙げられる。
また、有機粉体としては、オキシ塩化ビスマス、有機顔料被覆雲母チタン、ナイロンパウダー、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル-メタクリル酸共重合体パウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、オルガノポリシロキサンエラストマーパウダー、ポリメチルシルセスキオキサンパウダー、ポリウレタンパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース、N-アシルリジン等が挙げられる。
さらに、複合粉体としては、硫酸バリウム被覆雲母チタン等が挙げられる。
成分(d)のシリカ、着色顔料以外の粉体としては、皮膚化粧料にハイドロゲル粒子を含有させ、容器に充填した際の外観をきれいに見せる観点から、雲母、合成雲母、雲母チタンから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのが好ましく、雲母、合成雲母から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがより好ましい。
【0018】
ハイドロゲル粒子は、さらに、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、界面活性剤、多価アルコール、油剤、成分(a)以外のポリマー等を含有することができる。
【0019】
ハイドロゲル粒子は、例えば、寒天及びヒアルロン酸又はその塩を精製水中に添加後、混合撹拌し、95℃以上にて加温溶解させ、さらに必要に応じて、シリカ、着色顔料などを添加して混合撹拌を行い、必要に応じてメッシュを通し、その後さらに20℃以下にて冷却循環させた油液中に一定流量で滴下させ、製造することができる。
【0020】
このようにして得られるハイドロゲル粒子は、皮膚化粧料に含有させ、容器に充填した際の外観をきれいに見せ、吐出する際の出しやすさ、塗布時の潰れやすさ、塗布後の肌の密着感、滑沢感を向上させる観点から、粒径0.08~4mmであるのが好ましく、0.2~2.5mmがより好ましく、0.5~2mmがさらに好ましい。
ここで、粒径は、ノギスにより測定される。
【0021】
また、ハイドロゲル粒子は、高温保存安定性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌への密着感、滑沢感を向上させ観点から、軟化点が30℃以上であるのが好ましく、35℃以上がより好ましく、38℃以上であるのがさらに好ましく、48℃以上がよりさらに好ましく、58℃以上がことさら好ましい。また、68℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましく、63℃以下がさらに好ましい。
【0022】
ここで、軟化点は、次のようにして求める。
まず、ハイドロゲル粒子を含む以下の組成の軟化点確認用水溶液50gを調製し、バイアル瓶(無色透明ガラス製)に充填し、各温度の恒温槽に1か月保管する。その後、各温度を維持したまま攪拌棒をバイアル瓶に入れ、円を描くように1秒間に1回の速さで5分間攪拌し、ハイドロゲル粒子の形状が球状に保たれている、又は保てないことを目視で確認することにより求める。例えば、ある温度(A℃)で、ハイドロゲル粒子の形状が球状に保たれていて、それを超える温度では形状が保たれていない場合、その温度(A℃)を軟化点とする。
なお、ハイドロゲル粒子は、保存開始時は、軟化点確認用水溶液中に浮遊している。
【0023】
(軟化点確認用水溶液の組成)
・カルボキシビニルポリマー 0.2質量%、
・水酸化カリウム 0.07質量%、
・フェノキシエタノール 0.3質量%、
・ハイドロゲル粒子 5.0質量%、
・水 残分
【0024】
本発明の皮膚化粧料において、ハイドロゲル粒子の含有量は、化粧料の外観及び容器からの吐出のしやすさ、高温安定性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌の密着感、滑沢感を向上させる観点から、皮膚化粧料中に1~20質量%であるのが好ましく、1.5~15質量%がより好ましく、2~10質量%が更に好ましい。
【0025】
本発明の皮膚化粧料は、ハイドロゲル粒子以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、親水性界面活性剤、水溶性増粘剤、多価アルコール等を含有することができる。
親水性界面活性剤としては、HLB10~18の非イオン界面活性剤が好ましく、HLB11~16がより好ましく、HLB12~15がさらに好ましい。
ここで、HLB(親水性-親油性のバランス〈Hydrophilic-Lipophilic Balance〉)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。また、2種以上の非イオン界面活性剤から構成される場合、混合界面活性剤のHLBは、次のようにして求められる。混合界面活性剤のHLBは、各非イオン界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて相加算平均したものである。
混合HLB=Σ(HLBx×Wx)/ΣWx
HLBxは、非イオン界面活性剤XのHLB値を示す。
Wxは、HLBxの値を有する非イオン界面活性剤Xの質量(g)を示す。
【0026】
かかる非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルカノールエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。これらのうち、高温安定性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌の密着感、滑沢感を向上させる観点から、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテルから選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましく、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含むのがさらに好ましい。
【0027】
親水性界面活性剤は、1種又は2種以上組合わせて用いることができ、含有量は、高温安定性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌の密着感、滑沢感を向上させる観点から、皮膚化粧料中に0.1~3質量%であるのが好ましく、0.2~2質量%がより好ましく、0.3~1質量%がさらに好ましい。
【0028】
水溶性増粘剤としては、例えば、カラギーナン、デキストリン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、カルボキシメチルキチン、キトサン等が挙げられる。これらのうち、高温安定性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌の密着感、滑沢感を向上させ、皮膚化粧料中にハイドロゲル粒子を均一に分散させる観点から、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、カルボキシビニルポリマーから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、カルボキシビニルポリマーを含むのがより好ましい。
【0029】
また、ポリアクリル酸、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、カルボキシビニルポリマーなどの酸型の水溶性増粘剤は、水酸化カリウム等を中和剤として用い、水溶性ないし水分散性の塩として用いるのが好ましい。
【0030】
水溶性増粘剤は、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、高温安定性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌の密着感、滑沢感を向上させ、皮膚化粧料中にハイドロゲル粒子を均一に分散させる観点から、皮膚化粧料中に0.01~1質量%であるのが好ましく、0.05~0.8質量%がより好ましく、0.1~0.5質量%がさらに好ましい。
【0031】
多価アルコールは、分子内に2個以上の水酸基をもつ化合物である。
2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール等が挙げられる。3価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。4価アルコールとしては、ジグリセリン、エリスリトール等が挙げられる。5価以上の多価アルコールとしては、トリグリセリン等のポリグリセリン;グルコース、マルトース、マルチトース、ショ糖、キシリトール、ソルビトール、マルビトール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンエチルグルコシド、ポリオキシエチレンプロピレングルコシド等の糖類及び糖アルコールが挙げられる。
【0032】
これらのうち、高温安定性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌の密着感、滑沢感を向上させる観点から、2価、3価、4価アルコールから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、2価、3価アルコールから選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましく、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンから選ばれる1種又は2種以上を含むのがさらに好ましく、ジプロピレングリコール、グリセリンから選ばれる1種又は2種を含むのがよりさらに好ましく、ジプロピレングリコールを含むのがことさら好ましい。
多価アルコールは、1種又は2種以上を用いることができ、含有量は、高温安定性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌の密着感、滑沢感を向上させる観点から、皮膚化粧料中に1~15質量%であるのが好ましく、2~12質量%がより好ましく、3~8質量%がさらに好ましい。
【0033】
本発明の皮膚化粧料において、ハイドロゲル粒子以外に含まれる水の含有量は、皮膚化粧料の安定性、さっぱり感を向上させる観点から、全組成中に70~98質量%であるのが好ましく、80~96質量%がより好ましく、85~94質量%が更に好ましい。
【0034】
本発明の皮膚化粧料は、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、油性成分、酸化防止剤、香料、防腐剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、清涼剤等を含有することができる。
【0035】
本発明の皮膚化粧料は、ハイドロゲル粒子を配合し、通常の方法により製造することができる。例えば、精製水をホモミキサーで撹拌しながら、ハイドロゲル粒子以外の成分を添加して、さらにホモミキサーで撹拌し、その後、ハイドロゲル粒子を添加してパドルミキサーでゆっくり攪拌して均一にすることにより、製造することができる。
【0036】
本発明の皮膚化粧料は、種々の用途及び形態、例えば、O/W型乳化化粧料、水性化粧料、ジェル状化粧料、クリーム、乳液、化粧水、美容液、ファンデーションなどとして適用することができる。
本発明の皮膚化粧料は、化粧料中にハイドロゲル粒子が均一に分散した状態のものである。ポンプ容器に充填した場合に、容器から吐出させたときや、あるいは、塗布したときに皮膚上で、ハイドロゲル粒子が潰れ、塗布後の肌での肌なじみや密着感に優れ、滑沢感を得ることができる。
【実施例】
【0037】
実施例1~7及び比較例1~2
表2に示す組成のハイドロゲル粒子を用い、表1に示す組成の皮膚化粧料(美容液)を製造した。得られたハイドロゲル粒子について、粒径、軟化点を評価し、得られた皮膚化粧料について、高温安定性、塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ、塗布後の肌への密着触、塗布後の肌の滑沢感を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0038】
(製法)
(1)ハイドロゲル粒子の製造:
・(a)ヒアルロン酸ナトリウム及び(b)寒天を精製水中に添加し、混合撹拌した。
・その後、95℃に加熱し、撹拌しながら溶解させた後、(d)シリカ及び着色顔料を添加して撹拌を行い、混合液を得た。
・得られた混合液を25℃に冷却後、140mesh篩過した。
・その後、更に篩過した混合液を70℃に加熱し、20℃にて冷却循環させた油液中に一定流量で滴下させ、固化したハイドロゲル粒子を得た。
・なお、ハイドロゲル粒子表面に付着した油液は流水にて洗い流した。
【0039】
(2)皮膚化粧料の製造:
精製水を室温下においてホモミキサーで撹拌しながら、ハイドロゲル粒子以外の成分を添加し、更にホモミキサーで撹拌した。その後、ハイドロゲル粒子を投入して、更にパドルミキサーでゆっくり攪拌して均一にすることにより、皮膚化粧料を得た。
【0040】
(評価方法)
(1)ハイドロゲル粒子の粒径:
製造したハイドロゲル粒子から任意の5個選び、ノギスにより粒径を測定し、その平均値を示した。
【0041】
(2)ハイドロゲル粒子の軟化点:
ハイドロゲル粒子を含む以下の組成の軟化点確認用水溶液50gを調製し、バイアル瓶(無色透明ガラス製)に充填し、25℃~75℃の範囲で5℃毎の温度に設定した恒温槽に1か月保管した。その後、温度を維持しながら攪拌棒をバイアル瓶に入れ、円を描くように1秒間に1回の速さで5分間攪拌させ、各保存温度でのハイドロゲル粒子の状態を目視で確認することで、軟化点を判断した。軟化点は、上記の操作を行い、ハイドロゲル粒子の形状が保たれていた温度を示す。例えば、軟化点60℃とは、上記の操作を行い、60℃恒温槽で保管したハイドロゲル粒子は形状が保たれ、65℃恒温槽で保管したハイドロゲル粒子は形状が保てなかったことを示す。
【0042】
(軟化点確認用水溶液の組成)
・カルボキシビニルポリマー 0.2質量%
・水酸化カリウム 0.07質量%
・フェノキシエタノール 0.3質量%
・ハイドロゲル粒子 5.0質量%
・水 残分
(ハイドロゲル粒子は、保存開始時は、軟化点確認用水溶液中に浮遊していた)
【0043】
(3)高温安定性(50℃):
各皮膚化粧料50gをバイアル瓶(無色透明ガラス製)に入れ、50℃で1カ月保存した。
保存後の皮膚化粧料中のハイドロゲル粒子を、目視で観察し、以下の基準で評価した。
なお、保存開始時のハイドロゲル粒子は球状である。
〇:球状の形状が維持できている。
△:やや球状の形状が維持できていない。
×:明らかに球状の形状が維持できていない。
【0044】
(4)塗布時のハイドロゲル粒子の潰れやすさ:
専門評価者10名により、各皮膚化粧料を肌に塗布したとき、ハイドロゲル粒子の潰れやすさを、以下の基準で評価した。結果を10名の平均値で示す。
5:明らかに潰れやすい。
4:潰れやすい。
3:やや潰れやすい。
2:潰れにくい。
1:明らかに潰れない。
【0045】
(5)塗布後の肌への密着感:
専門評価者10名により、各皮膚化粧料を肌に塗布した後、肌への密着感について、以下の基準で評価した。結果を10名の平均値で示す。
なお、肌への密着感とは、肌を指で押して、肌が吸い付くような感じをいう。
5:明らかに密着感がある。
4:密着感がある。
3:やや密着感がある。
2:あまり密着感がない。
1:明らかに密着感がない。
【0046】
(6)塗布後の肌の滑沢感:
専門評価者10名により、各皮膚化粧料を肌に塗布した後、肌の滑沢感について、以下の基準で評価した。結果を10名の平均値で示す。
なお、肌の滑沢感とは、肌を指先で触った際に、きしみ感、もしくはべたつきによる抵抗感を感じることなく、指が滑らかに動くことを示す。
5:明らかに滑沢感がある。
4:滑沢感がある。
3:やや滑沢感がある。
2:あまり滑沢感がない。
1:明らかに滑沢感がない。
【0047】
【0048】
【0049】
処方例1~4
表3~表6に示す組成の皮膚化粧料を製造した。なお、ハイドロゲル粒子はいずれも、実施例1~7と同様にして製造した。
得られた皮膚化粧料はいずれも、高温安定性に優れ、塗布時にハイドロゲル粒子が潰れやすく、塗布後の肌に、肌なじみがよく、密着感に優れ、滑沢感が得られるものである。
【0050】
処方例1(透明ジェル)
Aを室温下においてホモミキサーで均一に分散し、B及びCを投入後、更にホモミキサーで分散する。最後に、Dを投入してパドルミキサーでゆっくり攪拌して均一にすることにより、透明ジェルを製造する。
【0051】
【0052】
処方例2(クリーム)
A及びBを80℃に加温後、BをAに投入してホモミキサーで分散する。更に、C及びEを投入してホモミキサーで分散する。45℃まで冷却し、D及びFを投入してホモミキサーで分散する。最後に、Gを投入してパドルミキサーでゆっくり攪拌して均一にすることにより、クリームを製造する。
【0053】
【0054】
処方例3(乳液)
A及びBを80℃に加温後、BをAに投入してホモミキサーで分散する。更に、C及びEを投入してホモミキサーで分散する。45℃まで冷却し、D及びFを投入してホモミキサーで分散する。最後に、Gを投入してパドルミキサーでゆっくり攪拌して均一にすることにより、乳液を製造する。
【0055】
【0056】
処方例4(美容液)
Aを室温下においてホモミキサーで均一に分散し、B及びCを投入後、更に、ホモミキサーで分散する。最後に、Dを投入してパドルミキサーでゆっくり攪拌して均一にすることにより、美容液を製造する。
【0057】