(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ガラスセラミック構成部材およびガラスセラミック構成部材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C03B 23/023 20060101AFI20241211BHJP
C03B 32/02 20060101ALI20241211BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20241211BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C03B23/023
C03B32/02
H05B6/12 305
F24C15/10 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020170007
(22)【出願日】2020-10-07
【審査請求日】2023-09-19
(31)【優先権主張番号】10 2019 126 928.8
(32)【優先日】2019-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ミュールケ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルガ ゲッツ
(72)【発明者】
【氏名】マルクス フォルマー
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヴェルフィンガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ザドウスキー
(72)【発明者】
【氏名】ゲオアク ハーゼルホアスト
【審査官】三村 潤一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/154922(WO,A1)
【文献】特表2012-520225(JP,A)
【文献】特開2014-141356(JP,A)
【文献】特開2016-037425(JP,A)
【文献】特開2002-104835(JP,A)
【文献】特開2017-024935(JP,A)
【文献】特開平05-116973(JP,A)
【文献】特表2015-501274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/023 - 23/037
C03B 32/02
H05B 6/12
F24C 15/10
C03C 10/00 - 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミック構成部材(30)であって、前記ガラスセラミック構成部材(30)は、2つの面状の脚部(31,32)を構成部材高さ(h1)の方向に延在する曲げ区間(35)に沿って互いに角度を成すように結合する曲げ部を備えており、
前記曲げ部は、構成部材外側(34)の領域に凸状の曲げ領域(36)を有しており、前記凸状の曲げ領域(36)は、外曲げ半径(Ra)を有しており、
前記曲げ区間(35)は、その両方の長辺端部領域(E1,E2)に隆起部(38)を有している、ガラスセラミック構成部材(30)において、
前記凸状の曲げ領域(36)の半径方向に見た、前記長辺端部領域(E1,E2)における前記隆起部(38)の最大延在長さは、それぞれ対応して配置された前記長辺端部(E1,E2)から15mmの間隔をあけた前記外曲げ半径(Ra)の頂点に対して0mmよりも大きくかつ0.7mmよりも小さくなっていることを特徴とする、
ガラスセラミック構成部材(30)。
【請求項2】
前記凸状の曲げ領域(36)の半径方向に見た、前記長辺端部領域(E1,E2)における前記隆起部(38)の最大延在長さは、それぞれ対応して配置された前記長辺端部(E1,E2)から15mmの間隔をあけた前記外曲げ半径(Ra)の頂点に対して0.5mmよりも小さくなっていることを特徴とする、
請求項1記載のガラスセラミック構成部材。
【請求項3】
前記外曲げ半径(Ra)は、前記構成部材高さ(h1)の中間においてxmmから15mm未満の範囲内にあり、前記xは、2つの前記脚部のうちの一方の領域における、前記ガラスセラミック構成部材の厚さの寸法に相当する、
請求項1または2記載のガラスセラミック構成部材。
【請求項4】
前記脚部(31,32)は、それぞれが所定の脚部高さ(h2,h3)を有しており、これらの脚部高さ(h2,h3)は、それぞれ、前記曲げ区間(35)に沿ってかつ前記外曲げ半径(Ra)の頂点線に沿って延在する前記構成部材高さ(h1)に対して平行にかつ前記構成部材高さ(h1)に対して垂直に測定して側方に30mmの距離で延在しており、
第1の前記脚部(31)の前記脚部高さ(h2)-前記構成部材高さ(h1)の差および/または第2の前記脚部(32)の脚部高さ(h3)-前記構成部材高さ(h1)の差は、0以上でありかつ0.8mm未満、好適には0.6mm未満、特に好適には0.5mm未満である、
請求項1から3までのいずれか1項記載のガラスセラミック構成部材。
【請求項5】
2つの前記脚部のうちの少なくとも一方の領域における前記ガラスセラミック構成部材の厚さは、2.7mmから6.3mmの範囲内にあり、好適には3.7mmから5.3mmの範囲内にある、
請求項1から4までのいずれか1項記載のガラスセラミック構成部材。
【請求項6】
前記凸状の曲げ領域の直線的に延在する部分(36.1)は、前記構成部材高さ(h1)の方向にかつ前記構成部材高さ(h1)の中間において前記外曲げ半径(Ra)の頂点を通って延在しており、前記直線的に延在する部分(36.1)は、2つの前記長辺端部領域(E1,E2)においてそれぞれ、前記隆起部(38)の上昇する傾斜路部分(38.1)に移行しており、前記傾斜路部分(38.1)には、凸状に湾曲された、特に部分的に筒状の面取り部(38.2)が続いており、前記面取り部(38.2)は、前記隆起部(38)を半径方向外側において画定している、
請求項1から5までのいずれか1項記載のガラスセラミック構成部材。
【請求項7】
前記面取り部(38.2)により形成される、凸状に湾曲された、特に部分的に筒状の面は、前記構成部材高さ(h1)の方向において0.1mmから4mmの範囲内の延在長さを有しており、かつ/または、前記構成部材高さ(h1)に対して横方向における、前記凸状に湾曲された、特に部分的に筒状の面の円弧状の延在長さは、1mmから15mmの範囲内である、
請求項6記載のガラスセラミック構成部材。
【請求項8】
前記面取り部(38.2)により形成された面は、前記直線的に延在する部分(36.1)に対して±10°の差を備えて平行に延在している、
請求項6または7記載のガラスセラミック構成部材。
【請求項9】
前記脚部(31,32)は、それぞれが所定の脚部高さ(h2,h3)を有しており、これらの脚部高さ(h2,h3)は、それぞれ、前記曲げ区間(35)に沿ってかつ前記外曲げ半径(Ra)の頂点線に沿って延在する前記構成部材高さ(h1)に対して平行にかつ前記構成部材高さ(h1)に対して垂直に測定して、前記頂点線に対し側方に30mmの距離で延在しており、前記脚部高さ(h2,h3)は、150mmから1500mmの範囲内、好適には200mmから1000mmの範囲内または特に好適には225mmから850mmの範囲内で選択されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載のガラスセラミック構成部材。
【請求項10】
前記頂点線に対して垂直に延在する、前記脚部(31,32)の最大脚部長さは、200mmから1000mmの範囲内で選択されており、第1の脚部(31)の脚部長さは、第2の脚部(32)の脚部長さに、5%の差を備えて相応している、
または、
前記頂点線に対して垂直に延在する、前記第1の脚部(31)の最大脚部長さは、前記頂点線に対して垂直に延在する、前記第2の脚部(32)の最大脚部長さとは異なっており、長い方の前記脚部(31または32)の最大脚部長さは、200mmから1500mmの範囲内、好適には250mmから1000mmの範囲内、特に好適には300mmから800mmの範囲内で選択されており、短い方の前記脚部(31または32)の最大脚部長さは、100mmから1000mmの範囲内、好適には150mmから800mmの範囲内、特に好適には200mmから600mmの範囲内で選択されている、
請求項4または9記載のガラスセラミック構成部材。
【請求項11】
ガラスセラミック構成部材(30)を製造する方法であって、
グリーンガラス状態にあるガラス板(50)を、前記ガラス板(50)の一方の縁部(53)から反対側の縁部(54)まで、
ラインガスバーナを有する加熱装置(70)により、前記ガラス板(50)を変形するために温度レベルが十分な加熱ゾーン(57)が生じるまで加熱し、
次いで、前記ガラス板(50)が変形のために十分な温度レベルに達すると、前記ラインガスバーナが止められてから、前記加熱ゾーン(57)が、塑性変形が依然として可能な温度レベルまで冷却され、
次いで変形工具(80)の作用下で前記ガラス板(50)を
塑性変形させ、これにより前記加熱ゾーン(57)に1軸式に曲げられた湾曲部を生じさせ、これにより、両側に2つの面状のガラス脚部(51,52)が続く曲げ区間(35)を備えた曲げ部を形成し、
前記曲げ区間(35)は、構成部材外側(34)の領域に凸状の曲げ領域(36)を形成し、
前記凸状の曲げ領域(36)は、その互いに反対の側の前記縁部(53,54)の領域における両方の長辺端部領域(E1,E2)に、前記凸状の曲げ領域(36)のその他の領域に比べて半径方向外側に突出している隆起部(38)を有しており、
次いで変形された前記ガラス板(50)を、前記加熱ゾーン(57)における塑性変形が最早不可能な温度レベルに達するまで冷却し、
次いで変形された前記ガラス板(50)を、セラミック化型(60)に入れてセラミック化する、方法において、
セラミック化後に前記ガラスセラミック構成部材(30)を形成し、前記凸状の曲げ領域(36)の半径方向に見た、前記長辺端部領域(E1,E2)における前記隆起部(38)の最大延在長さは、それぞれ対応して配置された前記長辺端部(E1,E2)から15mmの間隔をあけた外曲げ半径(Ra)の頂点に対して0mmよりも大きくかつ0.7mmよりも小さくなっているようにすることを特徴とする、
方法。
【請求項12】
ガラスセラミック構成部材(30)を製造する方法であって、
グリーンガラス状態にあるガラス板(50)を、前記ガラス板(50)の一方の縁部(53)から反対側の縁部(54)まで、加熱装置(70)により、前記ガラス板(50)を変形するために温度レベルが十分な加熱ゾーン(57)が生じるまで加熱し、
次いで変形工具(80)の作用下で前記ガラス板(50)を変形させ、これにより前記加熱ゾーン(57)に1軸式に曲げられた湾曲部を生じさせ、これにより、両側に2つの面状のガラス脚部(51,52)が続く曲げ区間(35)を備えた曲げ部を形成し、
前記曲げ区間(35)は、構成部材外側(34)の領域に凸状の曲げ領域(36)を形成し、
前記凸状の曲げ領域(36)は、その互いに反対の側の前記縁部(53,54)の領域における両方の長辺端部領域(E1,E2)に、前記凸状の曲げ領域(36)のその他の領域に比べて半径方向外側に突出している隆起部(38)を有しており、
次いで変形された前記ガラス板(50)を、前記加熱ゾーン(57)における塑性変形が最早不可能な温度レベルに達するまで冷却し、
次いで変形された前記ガラス板(50)を、セラミック化型(60)に入れてセラミック化する、方法において、
セラミック化後に前記ガラスセラミック構成部材(30)を形成し、前記凸状の曲げ領域(36)の半径方向に見た、前記長辺端部領域(E1,E2)における前記隆起部(38)の最大延在長さは、それぞれ対応して配置された前記長辺端部(E1,E2)から15mmの間隔をあけた外曲げ半径(Ra)の頂点に対して0mmよりも大きくかつ0.7mmよりも小さくなっているようにし、
前記ガラス板(50)の互いに反対の側に位置する前記縁部(53,54)に対応して配置された、前記加熱ゾーン(57)の前記端部領域(E1,E1)は、前記加熱ゾーン(57)のその他の領域よりも強力に冷却されるかまたは前記端部領域(E1,E1)だけが専ら冷却されることを特徴とする、
方法。
【請求項13】
前記ガラス脚部(51,52)は、その脚部外面でもって前記セラミック化型(60)の支持体(61)の支持体面(61.2)に支持されており、
変形された前記ガラス板(50)は、その前記隆起部(38)でもって、前記セラミック化型(60)の前記支持体面(61.2)間の領域内の凹部(64)の上に、変形された前記ガラス板(50)の重力の作用下で立っており、次いで、変形された前記ガラス板(50)は、前記セラミック化型(60)と共にセラミック化炉内に入れられ、変形された前記ガラス板(50)は、前記セラミック化炉内でガラスセラミック構成部材(30)にセラミック化される、
請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
前記セラミック化型(60)の前記凹部(64)は、部分的に筒状の部分を有しており、前記部分的に筒状の部分の長手方向延在部は、変形された前記ガラス板(50)の1軸式の前記湾曲部の軸線方向に延在しており、
前記部分的に筒状の部分の半径は、-1mmから+1mmの差でもって、前記曲げ区間の平均半径に対応する、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記加熱装置(70)により前記加熱ゾーンにエネルギが場所を分散されて入力され、より低いエネルギが入力された領域と、これに比べてより高いエネルギが入力された別の領域と、が形成される、
請求項11から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記加熱装置として、レーザ光源、好適にはCO
2レーザ、特に好適には放射線変向用のガルバノスキャナを備えたCO
2レーザが使用される、
請求項15記載の方法。
【請求項17】
加熱過程中に前記ガラス板(50)は、好適にはグリッパ(81)により支持され、前記加熱ゾーン(57)における変形は、加熱中は防がれている、
請求項11から16までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミック構成部材であって、2つの面状の脚部を構成部材高さの方向に延在する曲げ区間に沿って互いに角度を成すように結合する曲げ部を備えており、曲げ部は、構成部材外側の領域に凸状の曲げ領域を有しており、凸状の曲げ領域は、構成部材高さの中間に外曲げ半径を有しており、曲げ区間は、その両方の長辺端部領域に隆起部を有している、ガラスセラミック構成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスセラミックは、予め溶融槽内で溶融され、一般に板状に成形されたガラス、いわゆるグリーンガラスから、温度制御された的確な結晶化、いわゆるセラミック化により製造される、特殊な材料である。ガラスセラミックの特徴的な特性は、温度変化に対する高い耐久性ならびに極僅かな熱膨張である。ガラスセラミックは、例えば加熱板の場合にはクックトップ、オーブンライニング、放射線加熱体用の被覆板、暖房用に用いられるストーブののぞき窓および燃焼ユニットにおけるのぞき窓全般として使用される。
【0003】
暖炉またはストーブ用の曲げられたのぞき窓は、一般にガス運転型の曲げ装置により、約10mmの極小の半径を備えて製造されることが周知である。この場合、セラミック化されていない状態のグリーンガラス板は、本来のセラミック化前の追加プロセスにおいて曲げられる。
【0004】
このような曲げられたガラスセラミックを製造するためには、一般に、所要の外寸を備えたグリーンガラス板が用意される。このグリーンガラス板は、350℃~750℃の温度に予熱され、曲げ装置内の真空台上に位置決めされる。次いで曲げゾーンが、ガス運転型のラインバーナにより、グリーンガラス板が曲げゾーン内での塑性変形を可能にする温度に局所的に加熱される。次いで曲げ過程が行われ、このときグリーンガラス板の自由脚部が所望の角度に曲げられる。次いで曲げ領域は、曲げ領域が凝固し、これにより最早塑性変形は不可能な温度に冷却される。生じた成形体はその後、650℃~750℃の範囲の温度で500秒未満の間、応力除去される。最後に冷却ステップが行われ、曲げられたグリーンガラス体は室温まで冷却される。
【0005】
次いで、曲げられたグリーンガラス板において慣例のセラミック化方法が実施され得る。
【0006】
国際公開第2005042420号から公知の曲げ方法では、振動型のガスラインバーナが、ガラス板をガラスの軟化点まで加熱する。次いで、ガラス板は曲げ縁部に沿って変形され、その後冷却される。
【0007】
独国特許出願公開第102009012018号明細書には、30mm~200mmの範囲の曲げ半径を有し得る、曲げられたガラスセラミック板を製造することができる方法が記載されている。この場合、グリーンガラス板は変形工具内で強制制御されて変形される。この場合、変形過程はセラミック化プロセスに組み込まれるため、製造の時間的な最適化が可能になる。この場合、セラミック化に必要とされる、グリーンガラス状態でのガラス板の加熱が、ガラス板の十分な粘性状態に達してからガラス板を変形するために利用される。
【0008】
独国特許出願公開第102018102932号明細書には、グリーンガラス状態にあるガラス板の変形方法が記載されている。制御された加熱プロセスにより、十分に広幅の帯状の変形領域が加熱される。次いで変形工具を用いて、ガラス板の変形が実施される。この場合は、曲げ部を介して互いに結合された2つの脚部が互いに対向するように曲げられる。この場合、曲げ部は、脚部の間に半径移行部が生じるように形成されている。
【0009】
これら全ての方法によって製造され得る板状のガラス板には、2つの面状の脚部の間に1軸式に曲げられた曲げ部が生じている。このとき2つの面状の脚部の間に形成された曲げ部は、構成部材外側の領域に凸状の曲げ領域を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、改良された外観および構成部材強度という点において優れているガラスセラミック構成部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題は、凸状の曲げ領域の半径方向に見た、曲げ区間の長辺端部領域における隆起部の最大延在長さが、それぞれ対応して配置された長辺端部から15mmの間隔をあけた外曲げ半径の頂点に対して0mmよりも大きくかつ0.7mmよりも小さくなっていることにより解決される。
【0012】
製造プロセス中に隆起部は必然的に生じるものであり、不可避である。これらの隆起部は大抵、「ビード状の隆起部」とも呼ばれる。発明者らは、隆起部の延在長さが半径方向において0.7mm未満、特に好適には0.5mm未満の場合には隆起部がほとんど見えなくなり、これにより視覚的な外観イメージが大幅に改善される、ということを認識した。
【0013】
その上、これらのガラスセラミック構成部材は、フレーム構造体により簡単に組み込むこともできる。それというのもこの場合、高さを減じられた隆起部が組込み状態を損なうことはほとんどないからである。
【0014】
さらなる重要な利点は、周知のガラスセラミック板に比べた、ガラスセラミック構成部材の破壊強さおよび変形性の向上である。ガラスセラミック構成部材の両脚部が互いに対向するように曲げられる曲げ試験において、従来技術から周知の構成部材におけるよりも高い弾性変形度が可能である、ということが判った。このことは、本発明によるガラスセラミック構成部材が高温領域内で、例えばオーブン扉に使用される場合に重要な利点である。この場合、ガラスセラミック構成部材は一般にフレームに組み込まれている。フレームが、オーブン作動中に温度変化に基づき膨張または収縮しても、ガラスセラミック構成部材は、その小さな熱膨張に基づき、前記変形に従う恐れはない。ただし、両脚部をより高い変形度でもって互いに対向するように曲げることができる、ということにより、前記のような温度相互作用は問題なく補償され得る。
【0015】
発明者らの試みは、破壊強さの大幅な向上をもたらした。この場合、従来技術により曲げられかつセラミック化されたガラスセラミック構成部材と、同じ構成部材寸法を有する、本発明によるガラスセラミック構成部材と、が10ピースずつ測定された。両方のケースにおいて、ガラスセラミック構成部材は曲げ角度により囲まれた側の縁部領域(エナメルペイントでもって印刷され、装飾フレームを形成する、周方向に延在する枠状の領域)に装飾を有していた。
【0016】
従来技術による構成部材は、150Nの平均破壊荷重を有しており、3.3mmの距離だけ変形させたときに割れた。
【0017】
本発明による構成部材は、185Nの平均破壊荷重を有しており、4.2mmの距離だけ変形させたときに割れた。
【0018】
測定方法は、以下のように展開された。
【0019】
試験したガラスセラミック構成部材の長脚部は、358mmの長さを有していた。ガラスセラミック構成部材の短脚部は、200mmの長さを有していた。曲げ軸線の方向におけるガラスセラミック構成部材の高さは254mmであった。ガラスセラミック構成部材の厚さは4mmであった。外曲げ半径は9.5mmであり、90°の曲げ角度が選択されていた。装飾フレームの幅は2cmであった。
【0020】
測定装置としては、TIRA GmbH社の装置であるTIRAtest28150が使用された。
【0021】
ガラスセラミック構成部材は、長脚部の、曲げ軸線に対して垂直に位置する両側においてクランプにより固定されたため、長脚部は鉛直方向に配置され、短脚部は水平方向において正面に向けられた。
【0022】
短脚部は、曲げ部から5mmの間隔をあけた領域を除いて3つの辺全てが、U字形に組み立てられたアルミニウム成形部材に差し込まれた。U字形に組み立てられたアルミニウム成形部材の上側には、測定装置の力を吸収するために用いられる追加的な成形部材(力伝達用の支柱)が曲げ軸線に対して平行に配置された。
【0023】
力伝達用の追加的な支柱を備えたアルミニウム成形部材のこの構造に基づき、短脚部の縁面全体に力が均一に分散される、ということが保証された。支柱は、長脚部の内面から162.5mmの間隔をあけて、力が短脚部に作用するように配置された。この力作用に基づき、短脚部は下方に向かって曲げられ、このとき曲げ部は上方に向かって曲げられた。ガラスセラミック構成部材が割れた距離および力が記録された。
【0024】
また意外にも、例えばこのようなガラスセラミック構成部材を有するオーブン扉を閉じる際に生じるような衝撃荷重容量も、大幅に改善した。
【0025】
この場合も、発明者らは試験を行い、従来技術および本発明による複数のガラスセラミック構成部材の試料が試験された。従来技術による試料は8.6Jの平均破壊エネルギを有しており、本発明によるガラスセラミック構成部材は15.1Jの平均破壊エネルギを有していた。
【0026】
測定方法は、以下のように展開された。
【0027】
試験されたガラスセラミック構成部材の長脚部は、659mmの長さを有していた。ガラスセラミック構成部材の短脚部は、439mmの長さを有していた。曲げ軸線の方向におけるガラスセラミック構成部材の高さは487mmであった。ガラスセラミック構成部材の厚さは4mmであった。外曲げ半径は9.5mmであり、90°の曲げ角度が選択されていた。装飾フレームの幅は4cmであった。
【0028】
試験される構成部材は、Spartherm社のVaria2Rh型の市販の暖炉の扉に組み込まれた。
【0029】
扉の取っ手には変向ローラを介して、扉が開くと持ち上げられる重りが取り付けられた。扉が大きく開かれる程、重りはより高く持ち上げられた。扉を放すと重りが再び落下し、これにより扉が閉じられた。重りの質量および落下高さから、扉を閉じたエネルギが算出された。
【0030】
扉はまず、重りが10cmの高さに持ち上げられるように開かれた。次いで取っ手が放され、これにより扉が閉じた。引き続き別の試験において扉は段階的に、重りが前のステップにおけるよりも10cmずつ高く持ち上げられるように、その都度より大きく開かれた。このことは、板が割れるまで繰り返された。ガラスセラミック構成部材が割れたステップにおけるエネルギが、破壊エネルギに相当した。
【0031】
2.2kgの重さの重りが用いられた。このことから、重りの落下高さに応じて、約2J~26Jのエネルギが測定範囲として生じた。
【0032】
本発明の枠内で、ガラスセラミック構成部材は2つの面状の脚部の間に単一の曲げ部を形成することができる。しかしまた、ガラスセラミック構成部材は、それぞれ面状の脚部の間に延在する少なくとも2つの曲げ部を有している、ということも考えられ、この場合、好適には全ての曲げ部は、いずれか1つの請求項に相応して形成されている。
【0033】
本発明の1つの好適な態様では、外曲げ半径は、構成部材高さの中間においてxmm~15mm未満の範囲内にあるということが想定されていてよく、この場合、xは両脚部のうちの一方の領域におけるガラスセラミック構成部材の厚さの寸法に相当する。
【0034】
本発明の1つの好適な態様では、脚部はそれぞれが所定の脚部高さを有しており、これらの脚部高さはそれぞれ、曲げ区間に沿ってかつ外曲げ半径の頂点線に沿って延在する構成部材高さに対して平行にかつ構成部材高さに対して垂直に測定して側方に30mmの距離で延在しており、第1の脚部の脚部高さ-構成部材高さの差および/または第2の脚部の脚部高さ-構成部材高さの差は、0以上でありかつ0.8mm未満、好適には0.6mm未満、特に好適には0.5mm未満である、ということが想定されていてよい。
【0035】
このようなガラスセラミック構成部材は、特に寸法が安定しており、オーブン扉において典型的であるような支持体枠に簡単にかつ視覚的に魅力的に組み込むことができる。
【0036】
曲げ部への接続領域における高さの低下は、ほとんど見えない程度に僅かである。これにより、フレーム構造体との協働において、ガラスセラミック構造体の縁部領域に連続したシャドウギャップが形成される構成形式が実現され得、この場合に僅かな高さの低下が直線的なシャドウギャップ外観を損なうことはほとんどない。
【0037】
0.8mm未満の寸法差が選択されていると、特に大きなサイズのオーブン扉が魅力的に形成され得る。0.6mm未満、特に好適には0.5mm未満の寸法差は、要求の多い建築構成に使用され得る。
【0038】
本発明の1つの好適な態様は、凸状の曲げ領域の直線的に延在する部分が、構成部材高さの方向にかつ構成部材高さの中間において外曲げ半径の頂点を通って延在しており、直線的に延在する部分は、2つの長辺端部領域においてそれぞれ、隆起部の上昇する傾斜路部分に移行しており、傾斜路部分には、凸状に湾曲された、特に部分的に筒状の面取り部が続いており、面取り部は、隆起部を半径方向外側において画定しているように構成されている。
【0039】
面取り部により、隆起部の半径方向延在長さを大幅に減少させることができる。さらにこの面取り部は、ビード状の隆起部において典型的であるような、半径方向外側に位置する角張った突起が切断される、という特別な利点を有している。これにより、ガラスセラミック構成部材は、隆起部に作用する機械的な荷重に対して大幅に故障し難くなる。このような荷重は特に、ガラスセラミック構成部材がフレームに正確に適合して組み込まれる場合に想定される。
【0040】
この場合、本発明の改良では、面取り部により形成される、凸状に湾曲された、特に部分的に筒状の面は、構成部材高さの方向において0.1mm~4mmの範囲内の延在長さを有しておりかつ/または構成部材高さに対して横方向における、この凸状に湾曲された、特に部分的に筒状の面の円弧状の延在長さは、1mm~15mmである、ということが想定されていてもよい。
【0041】
このような面取り部は、オーブン扉のフレーム構造体に正確に適合して組み込まれるガラスセラミック構成部材が使用される場合に、特に有効である、ということが判った。
【0042】
この場合さらに、面取り部により形成された面が、直線状に延在する部分に対して±10°の差を備えて平行に延在していると、フレーム構造体のフレーム部分が、弾性的な中間部材を介して面取り部上に直接に立ち、そこで支持され得る。この場合は周知のガラスセラミック構成部材に比べ、破損し易さが大幅に低下されている。
【0043】
本発明は、ガラスセラミック構成部材を製造する方法であって、グリーンガラス状態にあるガラス板を、ガラス板の一方の縁部から反対側の縁部まで、加熱装置により、ガラス板を変形するために温度レベルが十分な加熱ゾーンが生じるまで加熱し、次いで変形工具の作用下でガラス板を変形させ、これにより加熱ゾーンに1軸式に曲げられた湾曲部を生じさせ、これにより、両側に2つの面状のガラス脚部が続く曲げ区間を備えた曲げ部を形成し、曲げ区間は、構成部材外側の領域に凸状の曲げ領域を形成し、凸状の曲げ領域は、その互いに反対の側の縁部領域における両方の長辺端部領域に、凸状の曲げ領域のその他の領域に比べて半径方向外側に突出している隆起部を有しており、次いで変形されたガラス板を、加熱ゾーンにおける塑性変形が最早不可能な温度レベルに達するまで冷却し、次いで変形されたガラス板を、セラミック化型に入れてセラミック化する方法にも関する。
【0044】
本発明の課題は、改良された外観および構成部材強度という点において優れているガラスセラミック構成部材を製造する方法を提供することにある。
【0045】
この課題は、セラミック化後にガラスセラミック構成部材が形成されており、凸状の曲げ領域の半径方向に見た、長辺端部領域における隆起部の最大延在長さが、それぞれ対応して配置された長辺端部から15mmの間隔をあけた外曲げ半径の頂点に対して0.7mm未満であることにより解決される。
【0046】
本発明によるガラスセラミック構成部材を製造するためには、もしくは本発明による方法に使用するためには、例えば以下の組成を有するLAS型、つまりリチウム-アルミニウム-シリケート型のグリーンガラス板が使用され得る。
【0047】
【0048】
本発明の1つの特に好適な構成態様では、ガラス脚部は、その脚部外面でもってセラミック化型の支持体の支持体面に支持されており、変形されたガラス板はその隆起部でもって、セラミック化型の支持体面間の領域内の凹部の上に、変形されたガラス板の重力の作用下で立っており、次いで変形されたガラス板は、セラミック化型と共にセラミック化炉内に入れられ、変形されたガラス板は、セラミック化炉内でガラスセラミック構成部材にセラミック化される、ということが想定されていてよい。
【0049】
この場合、変形過程中に生じた隆起部を半径方向において凸状の曲げ領域内へ押し戻すために、変形されたガラス板の重力が利用される。
【0050】
ガラス板がセラミック化型と共にセラミック化炉内へ入れられ、次いでセラミック化過程が実施されると、グリーンガラス状態のガラス板が加熱され、これによりガラス材料が軟化する。ガラス板の重力は隆起部にかかっており、隆起部もガラス板と共に軟化する。次いで、生じたペースト状の状態に基づき、隆起部は押し戻される。このことは、セラミック化プロセス中に、板が変形のために十分に低い粘性レベルにあると、結晶形成の直前に生じる。これにより、効率的な方法運用が簡単に可能である。
【0051】
この方法では特に、セラミック化型の凹部が部分的に筒状の部分を有しており、部分的に筒状の部分の長手方向延在部は、変形されたガラス板の1軸式の湾曲部の軸線方向に延在しており、部分的に筒状の部分の半径は、+/-1mmの差でもって、曲げ区間の平均半径に対応する、ということが想定されている場合に、隆起部を効果的に押し戻すことができる、ということが判った。
【0052】
発明者らは、ガラス板の変形過程が既に、最小限の隆起部が生じるように構成されていると、特に有利である、ということを認識した。よって本発明の1つの態様では、グリーンガラス状態にあるガラス板が、ラインガスバーナを有する加熱装置により加熱されて加熱ゾーンが形成され、次いで、ガラス板が変形のために十分な温度レベルに達すると、ラインガスバーナが止められてから、加熱ゾーンが例えば圧縮空気により、塑性変形が依然として可能な温度レベルまで軽く冷却され、次いで変形工具によりガラス板の塑性変形が、1軸式に曲げられた湾曲部が生じるように強制案内されて実施される、ということが想定されている。
【0053】
加熱ゾーンの冷却は、曲げ線と曲げ縁部との間の温度差の均一化を生じさせる。このとき冷却は、引き続く変形が依然として可能な程度にのみ行われてよい。
【0054】
ガス炎(またはCO2レーザ)を用いた加熱により、主として表面が加熱され、熱は、熱伝導に基づき低速で板中心部に運ばれる。つまり、表面の過熱が生じることになる。これにより、表面には曲げに必要であろう温度よりも高い温度が生じるのに対し、(ガラス厚さに関して)板中心部では、まだ曲げ温度に達していない。つまり冷却により、表面と板中心部との間の温度差を均一化すると共に、加熱時に、研削縁部にわたる追加的なエネルギ入力に基づき過熱される曲げ縁部をより強力に冷却し、ここでも曲げ線にわたり温度の均一化を達成することが望ましい。
【0055】
つまりこの方法運用では特に、ラインバーナでは加熱ゾーンの正確に一様な加熱を行うことはできない、という知識が利用されている。特に加熱ゾーンの縁部領域において、ガスバーナの炎はガラス板の縁部領域の周りに当たる。これにより、ここにはその他の板領域におけるよりも多くのエネルギがガラス板内に入力されることになる。その結果、縁部領域の粘性は大幅に低下する。このことは、ビード形成を不都合に助長する。提案した冷却、特に圧縮空気冷却により曲げゾーン内の温度レベルの均一化が行われると、このことは隆起部にポジティブな影響を及ぼし、これにより隆起部は、慣用の曲げ方法におけるよりも小さく、半径方向外側に向かって延在することになる。
【0056】
この場合、特に好適には、ラインガスバーナが止められた後に、ラインガスバーナのバーナノズルが圧縮空気により洗浄され、この圧縮空気が加熱ゾーンを冷却するためにも使用される、ということが想定されていてよい。これにより、装置にかかる手間が小さくなる。それというのも、バーナノズルが冷却用にも使用されるからである。
【0057】
この場合は特に、圧縮空気は、個々のバーナノズルに形成された炎を消炎するために用いられる、ということが想定されていてもよい。
【0058】
一般に、上述した曲げゾーンの縁部領域における不均一な加熱の作用は、本発明の1つの態様に基づき、ガラス板の互いに反対の側に位置する縁部に対応して配置された、加熱ゾーンの端部領域が、加熱ゾーンのその他の領域よりも強力に冷却されるかまたはこれらの端部領域だけが専ら冷却されるということが想定されていると、これによりポジティブな影響を及ぼされる。
【0059】
本発明の1つの別の態様は、ガラス板の互いに反対の側に位置する縁部の領域に、圧縮空気運転型の冷却装置が設けられており、これらの冷却装置は、ガラス板の縁部に向けられた圧縮空気ノズルを有しており、圧縮空気ノズルを介して圧縮空気が、ラインガスバーナの作動中および/または作動後に縁部に吹き付けられるように構成されていてよい。この配置により、縁部領域に意図的に影響を及ぼすことができる。圧縮空気ノズルが加熱装置の作動中に使用される場合、圧縮空気ノズルは、加熱ゾーンの自由縁部の周りが加熱装置により包囲されるという影響を阻止するかまたは低下させる。これにより、曲げゾーン全体にわたり、より均一な温度レベルが形成されることになる。圧縮空気運転型の圧縮空気ノズルを加熱装置の作動後に使用する場合には、縁部領域の冷却を的確に行うことができる。
【0060】
本発明の1つの別の態様は、加熱装置により加熱ゾーンにエネルギが場所を分散されて入力され、より低いエネルギが入力された領域と、これに比べてより高いエネルギが入力された領域と、が形成されることを特徴としていてよい。このようにして、曲げゾーン全体にわたり可能な限り均一な温度を的確に達成することができる。このためには、好適には加熱装置としてレーザ光源が使用され得る。レーザ光源を用いて、ガラス板内への極めて正確なエネルギ入力を制御することができる。特に好適には、加熱装置として、放射線変向用のガルバノスキャナを備えたCO2レーザが使用されている、ということが想定されている。このような装置により、曲げ線長さおよび曲げ線幅にわたり、エネルギ入力を正確に変化させることができる。
【0061】
曲げ縁部領域におけるガラス板の上面と下面との間の温度差の的確な調整も、ビード形成にポジティブな影響を及ぼす、ということが判った。よって本発明の1つの態様では、加熱装置は、上部加熱部材および下部加熱部材を有しており、上部加熱部材は、ガラス板の上面の領域に配置されておりかつ下部加熱部材は、ガラス板の下面の領域に配置されており、上部加熱部材および下部加熱部材は、ガラス板内へのそれぞれ異なるエネルギ入力を生じさせる、ということが想定されている。
【0062】
本発明の1つの態様において、加熱過程中にガラス板が好適にはグリッパにより支持され、加熱ゾーンにおける変形が最初は防がれており、変形は、加熱過程および任意には引き続く、曲げ線に沿って温度分布を均一化するための冷却過程が終了した後に初めて行われる、ということが想定されている場合もやはり、ビード形成にポジティブな影響が及ぼされる。
【0063】
以下に、本発明を図示の実施例に基づき、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図2】
図1に示した暖炉の扉を前から見たところを示す斜視図である。
【
図3】
図4に示す切断線に沿った断面を示す図である。
【
図4】
図3に示したガラスセラミック構成部材を示す図である。
【
図5】
図3に示したガラスセラミック構成部材を、
図4とは異なる視点で見た図である。
【
図6】装飾コーティングを備えた、曲げられたガラスセラミック構成部材を前から見たところを示す部分斜視図である。
【
図7】曲げられたガラスセラミック構成部材を前から見たところを示す部分斜視図である。
【
図8】セラミック化前のグリーンガラス状態のガラス構成部材を示す部分斜視図である。
【
図9】
図8に示したガラス構成部材から製造されたガラスセラミック構成部材を示す部分斜視図である。
【
図11】内部にガラス構成部材を受容したセラミック化型を示す斜視正面図である。
【
図12】
図11に示したユニットの細部を異なる斜視図で概略的に示す図である。
【
図13】ガラスセラミック構成部材のそれぞれ異なる測定曲線を示す図である。
【
図14】ガラスセラミック構成部材のそれぞれ異なる測定曲線を示す図である。
【
図15】ガラスセラミック構成部材のそれぞれ異なる測定曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1には、典型的には住宅用建物に使用されるような暖炉10が示されている。暖炉10は、組込みニッチ13を備えた本体11を有している。組込みニッチ13には、加熱ユニット20、例えば炉インサートを組み込むことができる。加熱ユニット20は、扉21を有している。この扉は、曲げられたガラスセラミック構成部材30を有している。ガラスセラミック構成部材30は、暖炉10内で燃焼する炎を見ることができるようにする。ガラスセラミック構成部材30は、互いに角度を成して位置する2つの脚部31,32を有している。これら2つの脚部31,32は、曲げ区間35の領域内で曲げ部を介して互いに一体に結合されている。曲げ区間35は、暖炉10の本体縁部12に続いている。
【0066】
図2には、
図1に示した扉21が個別部分図で示されている。この図面において認められるように、ガラスセラミック構成部材30は、90°の角度で相対して配置された2つの脚部31,32を有している。ガラスセラミック構成部材30の2つの対向して位置する水平方向縁部には、それぞれ扉輪郭部材22が取り付けられている。本実施例では、脚端部31.3,32.3の領域内に配置されたガラスセラミック構成部材30の2つの鉛直方向縁部は、扉輪郭部材22により包囲されてはいない。これは、本例の構成の特別な設計によるものである。もちろん、ガラスセラミック構成部材30が扉輪郭部材22により環状に囲まれている扉21が形成されていてもよい。この場合、扉輪郭部材22は一般に、内部にガラスセラミック構成部材30を安定的に取り付けることができる枠を形成している。
【0067】
扉21は、鉛直方向のヒンジ軸線を形成する複数のヒンジ23を有している。ヒンジ23は、扉輪郭部材22に取り付けられている。ヒンジ23により、扉21を加熱ユニット20に結合することができ、これにより扉21は、鉛直方向軸線を中心として
図1に示した閉鎖位置から開放位置へ旋回可能になっている。
【0068】
図3~
図5には、ガラスセラミック構成部材30の構成がより詳細に示されているが、これらの図面はガラスセラミック構成部材30の細部を忠実に反映したものではなく、概略図であると理解されたい。ガラスセラミック構成部材30は、第1の脚部31と、これに対して角度を成して位置する第2の脚部32と、を有している。
【0069】
本発明の枠内で、特に2つの脚部31と32との間に形成される全ての角度は、150°未満、好適には120°未満、特に好適には100°未満であると理解されたい。
【0070】
本発明の枠内で、2つの脚部31と32との間に形成される最小角度は、少なくとも45°、好適には少なくとも60°、特に好適には少なくとも80°を有している、ということが想定されていてよい。
【0071】
60°の角度が形成される場合に本発明の枠内で特に考えられる態様では、ガラスセラミック構成部材は、2つの同じ長さの脚部31,32を(5%の差を備えて)有している。この場合、2つの脚部31,32は、等辺三角形の3辺のうちの2辺を形成している。
【0072】
第1の脚部31は、構成部材内側33に面した脚部内面31.1を有している。第1の脚部31は、反対側に脚部外面31.2を有している。同様に第2の脚部32も、脚部内面32.1および脚部外面32.2を有している。2つの脚部内面31.1,32.1の間には、上述した角度が形成されている。2つの脚部31,32は、曲げ区間35を形成する一体成形された曲げ部を介して互いに結合されている。曲げ区間35とは反対の側に、脚部31,32はそれぞれ脚端部31.3,32.3を有している。これらの脚端部31.3,32.3は、ガラスセラミック構成部材30のこの箇所に、自由端部を形成している。
【0073】
曲げ区間35は、構成部材外側34の領域に、凸状の曲げ領域36を形成している。構成部材内側33の領域には、凹状の曲げ領域37が設けられている。凸状の曲げ領域36は外半径Raを形成しており、凹状の曲げ領域37は内半径Riを形成している。
【0074】
ガラスセラミック構成部材30は、好適には少なくとも2.7mmでありかつ最大6.3mmの、特に好適には少なくとも3.7mmでありかつ最大5.3mmの厚さdを有している。
【0075】
図3が、
図4にIII―IIIで示した切断線に沿って見たガラスセラミック構成部材30の側面を示すのに対し、
図4は、
図3に示した図を左側から見たところを示している。
図5は、
図3に示した図を上から見た平面図を示している。
図4および
図5において認められるように、曲げ区間35は、その2つの長辺側の端部領域E1,E2に、隆起部38(
図8参照)を有している。これらの図面においてさらに認められるように、脚部31,32は、脚部高さh2,h3を有している。この場合、脚部高さh2およびh3は、曲げ区間に沿って延在する構成部材高さh1に対して平行な線に沿って測定され、この場合、線h1に対する線h2,h3の間隔a2,a3は30mmである。線h1は、凸状の曲げ領域36の角度を二等分する頂点に沿って測定される構成部材高さを表している。
【0076】
本発明では、h2-h1もしくはh3-h1の差は0.8mm未満、好適には0.6mm未満、特に好適には0.5mm未満である。
【0077】
図6に示すガラスセラミック構成部材30は、実質的に、
図3~
図5に示したガラスセラミック構成部材30の構成形式に基づき形成されている。追加的に、ガラスセラミック構成部材30の縁部領域に、周方向に延在するコーティング40が設けられている。コーティング40は、構成部材内側33に被着されており、ガラスセラミックのセラミック化プロセスの最中に焼成されるセラミック顔料により形成される。この場合、焼成されるセラミック顔料とは、分散媒体としてのガラスと、分散相としての少なくとも1つの顔料と、から成る固形混合物を含むコーティングを意味する。
【0078】
図7に示すガラスセラミック構成部材30の構成は、
図6に示したガラスセラミック構成部材30に相応するものであるが、コーティング40は施されていない。
【0079】
図8には、例えば
図3~
図7に示したガラスセラミック構成部材30が拡大詳細図で示されている。この場合は、曲げ区間35の端部における端部領域E1を拡大して示す。この図面において認められるように、曲げ区間35の端部領域E1,E2には隆起部38が配置されている。この隆起部38は、半径方向において曲げ区間35のその他の領域を越えて突出している。隆起部38は、凸状の曲げ領域36の自由縁部に向かって連続的に上昇する傾斜路部分38.1を有している。
【0080】
図9には、このガラスセラミック構成部材30の別の細部が示されている。この図面において認められるように、隆起部38は、傾斜路部分38.1に続いて部分的に筒状の面取り部38.2を有している。筒状の面取り部38.2は、構成部材高さh1の方向に0.1mm~4mmの範囲内で延在する面を形成している。この面取り部は、構成部材高さh1に対して横方向に1~15mmの範囲内の円弧寸法の、円弧状に延在する面を有している。
【0081】
前記各図に示したガラスセラミック構成部材の製造には、有利な変形方法と有利なセラミック化方法とを組み合わせたものが用いられる。
【0082】
図10に関して、次に、変形方法を以下でより詳細に説明する。本実施例では、グリーンガラス状態にあるガラス板50を、ガラス脚部51でもって平らな支持面90に載置し、例えば真空装置を用いてここに位置固定する。支持面90とは反対の側において、ガラス板50は変形工具80により、第2のガラス脚部52において保持される。この場合、変形工具80は、ガラス板50のそれぞれ反対の側に位置する縁部53,54に係合する2つのグリッパ81を有している。
【0083】
1つまたは複数の加熱装置70により、ガラス板50の一方の縁部53から反対側の縁部54まで延在する帯状部分を、この帯状部分が加熱ゾーン57を形成して軟化するまで加熱することができる。
【0084】
本実施例では、加熱装置70は、ガラス板上面55に作用する上部加熱部材71と、反対側のガラス板下面56に作用する下部加熱部材72と、を有している。このようにして、迅速で効率的な加熱が可能である。この場合はさらに、ガラス板上面55およびガラス板下面56に対して強さの異なるエネルギ入力手段が形成され得るという可能性が生じ、このことは、有利には変形方法に影響を及ぼす。
【0085】
ガラスが十分に軟化した状態になるまでガラス板50が加熱されると、ガラス板50は加熱ゾーン57の領域において曲げられる。このためにはガラス板50がガラス脚部52の領域においてグリッパ81により、支持面90において拘束されたガラス脚部51に向かって移動させられる。このようにして、1回もしくは1軸式に曲げられて曲げ区間35を形成する曲げ部が、加熱ゾーン57に生じることになる。
【0086】
上述した方法により、例えばガラス脚部51,52が90°の角度で相対して位置しており、凸状の曲げ領域36の曲げ半径が9.5mmである曲げ区間35が形成された、厚さ4mmのガラス板を形成することができる。変形速度は5秒に設定した。
【0087】
加熱部材71,72としては、ラインガスバーナが使用され得る。これらのラインガスバーナは、少なくとも10W/cm2の有効面積出力を有している。この場合、有効面積出力は、単位時間当たりに実際にガラス中に蓄積される熱エネルギを表す。好適には、平均有効面積出力は20W/cm2~1000W/cm2の範囲内である。ガスバーナの場合、有効出力はどちらかと言えば、例えばCO2レーザ等のレーザを使用した場合よりも高くなっている。ただし好適には、両方の前記熱源を用いて出力を前記20W/cm2~1000W/cm2の範囲内に設定する。
【0088】
ガラス板50の変形実施後に、ガラス板50はセラミック化される。この場合もやはり、以下で
図11および
図12に関してより詳細に説明する、本発明によるセラミック化方法が用いられる。
【0089】
図11にはセラミック化型60が略示されている。このセラミック化型60は、90°の角度で相対して位置する2つの支持体61,62を有している。セラミック化型60にはさらに、結合部63が組み込まれている。この結合部63は、凹部64を形成している。支持体62は、内側に位置する支持体面61.2,62.2を有している。これらの支持体面61.2,62.2は、好適には凹部64に連続的に移行している。凹部64の半径は、ガラス板50の凸状の曲げ領域36の平均的な曲げ半径に相当する。
【0090】
曲げ過程の最中に、曲げ区間35の長辺の端部E1,E2に既述の突出した隆起部38が生じ、隆起部38は半径方向において、構成部材中間部(1/2*h1)における凸状の曲げ領域36の頂点を越えて突出している。隆起部38の突出は、
図12において明確に認められる。
【0091】
ガラス板50は、ガラス脚部51,52が支持体面61.2,62.2に対して好適には面状に支持されているように、セラミック化型60内に入れられる。さらに、隆起部38は凹部64に立てられる。
図12において認められるように、これにより凸状の曲げ領域36のその他の領域は、セラミック化型60の凹部64の底部の上方に間隔をあけて位置することになる。これにより、ガラス板50はその重力Gでもって実質的に、曲げ区間35の長辺の端部における隆起部38で立つことになる。
【0092】
次いで、セラミック化型60とガラス板50との組合せがセラミック化炉内に入れられる。そこで周知の形式のセラミック化プログラムが実施され、グリーンガラス状態のガラス板50が、ガラスセラミック構成部材30に変化させられる。この過程においてガラス板50は加熱され、ガラス板50が軟化する温度状態にもたらされる。ガラス板50の加熱中に特定の温度レベルからセラミック化が始まる。その際、結晶核において結晶が成長する。結晶核がある程度の大きさを有するまでの短い時間窓内で、ビード状の隆起部38はガラス板50の重力Gの作用に基づき押し戻されてよく、その結果、隆起部の突出が減少することになる。結晶核がある程度の臨界的な大きさに達すると、変形は最早不可能である。本発明による方法の利点は、短い時間窓内で、ガラス板50の重力Gのみに基づき隆起部38の高さの大幅な減少が達成され得る、という点にある。つまりこの場合は、隆起部38の、凹部64に対する接触領域に、上述した筒状の面取り部38.2も形成されることになる。
【0093】
図13~
図15に関して、次に本発明による方法を用いて隆起部38に有利な影響を及ぼす点についてさらに説明する。
【0094】
これらの図面にはそれぞれ、基準輪郭Nが書き込まれている。基準輪郭Nは、構成部材外側34の領域において凸状の曲げ領域36の長手方向延在部の方向、つまり構成部材高さh1の方向に延びる線を表す。この線は、(構成部材高さh1の方向に測定して)各長辺の端部E1,E2から15mmの間隔をあけて、凸状の曲げ領域36の外曲げ半径(Ra)の頂点と交わる。この間隔は、
図15において符号Aで示されている。
【0095】
前記基準輪郭Nには、各図面において2つの曲線が重ねられている。3つの図面全てに書き込まれている曲線2は、フィーラが外曲げ半径Raの頂点線にわたり案内され、このとき端部領域E1,E2を測定することにより形成される測定曲線を表す。これに相応してこの測定プロトコルでは、隆起部38の領域内で内側に向かって測定した外縁部のうち、最後の16mmを測定する。
【0096】
曲線2は、従来技術による標準方法で曲げられ(SG)かつ標準方法で、つまりビード領域の支援無しでセラミック化された(SK)ガラスセラミック構成部材30を表す。
【0097】
この図面が明らかにするように、隆起部38は1mmにわたり、半径方向において基準輪郭Nを越えて延在している。さらに、この隆起部38の傾斜路部分38.1は約7mmの所で始まりかつ比較的急な勾配角度を有している、ということが判る。
【0098】
曲線2には、曲線1が対比させられている。この曲線1は、
図10に関して説明したような変形方法(WG)により形成されたガラスセラミック構成部材30を表す。標準セラミック化方法(SK)が用いられた。この図面が具体的に示すように、曲線2に比べ、0.8mm未満のビード高さが形成され得る。この隆起部38の傾斜路部分38.1の勾配角度は、曲線2の勾配角度よりも大幅になだらかになっている。さらに、傾斜路部分38.1の開始部が移動しており、約9.5mmの所で始まっている。
【0099】
図14には、曲線3が書き込まれている。この曲線3は、
図10に関して説明したような変形方法(WG)により形成されたガラスセラミック構成部材30を表す。さらに、
図11および
図12に関して説明したようなセラミック化方法(WK)が用いられた。
【0100】
この図面では、ビード状の隆起部38の形成に対する、本発明による両方法の有利な効果が明確に認められる。
図14は、ビード状の隆起部38が極僅かにのみ、特に0.5mm未満のみ突出している、ということを明確にしている。さらに、傾斜路部分38.1の勾配は大幅になだらかになっている。傾斜路部分は、約9mmの所で始まっている。
【0101】
図15には、
図13および
図14に示した曲線2が再び書き込まれている。さらに
図15には、ガラスセラミック構成部材30を表す曲線4が書き込まれており、このガラスセラミック構成部材30では従来技術から周知のような標準曲げ方法(SG)が使用された。セラミック化に関しては、
図11および
図12に関して説明したような、本発明によるセラミック化方法(WK)が用いられた。この図面は、本発明によるセラミック化方法のポジティブな効果を具体的に明示している。これに相応して、ビード状の隆起部38の高さは大幅に減少され得る。また、傾斜路部分38.1の勾配も大幅に減少している。傾斜路部分38.1の開始点は、曲線2の場合と比べて移動してはいない。
【0102】
図13~
図15に示した曲線1,3および4の比較からさらに明らかなのは、曲げ方法(WG)とセラミック化方法(WK)とを組み合わせることにより、個別の方法ステップから想定され得たであろう隆起部の高さよりも大幅な減少が達成され得る、という点である。つまり、前記両方の方法ステップを組み合わせることにより、特に有利な相乗効果が生じている。
【0103】
ここで述べておくと、使用した測定方法に基づき、ビード状の隆起部38の面取り部38.2は、曲線3および曲線4では正確には測定不能であった。