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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】電子部品取り付け用治具
(51)【国際特許分類】
   C04B 38/00 20060101AFI20241211BHJP
   C04B 35/569 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
C04B35/569
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020188589
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077666
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】山内 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 敏樹
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-174576(JP,A)
【文献】特開平06-045209(JP,A)
【文献】特開昭63-002868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00
C04B 35/569
F27D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を搭載し加熱するための電子部品取り付け用治具であって、
前記電子部品取り付け用治具は、SiCの焼結体からなる骨材部と外表面につながる空洞部とから構成され、表面に電子部品搭載面を有し、
前記骨材部は、気孔率が35~65%の多孔体であり、
前記電子部品取り付け用治具は、開口が設けられた上側部材と下側部材とから構成され、
前記下側部材の上面から構成される前記電子部品搭載面が研磨されていることを特徴とする電子部品取り付け用治具。
【請求項2】
前記骨材部がハニカム形状である請求項に記載の電子部品取り付け用治具。
【請求項3】
前記電子部品搭載面は、前記ハニカム形状の押出方向と交わる請求項に記載の電子部品取り付け用治具。
【請求項4】
前記電子部品取り付け用治具に占める前記骨材部の体積比は、25~50%である請求項1~のいずれか1項に記載の電子部品取り付け用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品取り付け用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の電動化や、様々なモーターの周波数制御が進み、IGBT、GTO、FETなどのパワーデバイスが広く使用されるようになっている。
近年、注目されているパワーデバイスにSiCがある。SiCは従来のSiと比べ、絶縁破壊強度が高い、バンドギャップが大きいなどの理由から高耐圧、低抵抗、低損失の性能が得られ、広く使用され始めている。
また、最高使用温度については、従来のデバイスであるSiの150℃と比べ、SiCは300~400℃と非常に高いうえに、デバイス自体の熱伝導も大きいことから熱的にも有利なデバイスである。
【0003】
このようなデバイスはそれ自体単独で使用できず、リードフレームなどと電気的に接合した上で、ガラスや、金属ケース、セラミックパッケージに封入することで利用可能となる。
特許文献1には、このようなデバイスを製造する上で浸炭現象の発生を防止する黒鉛製治具として「X線光電子分光法(ESCA)における炭素黒鉛基材表面のO1Sバンドの面積強度とC1Sバンドの面積強度の強度比O1S/C1Sの値が0.10以上である炭素黒鉛製治具であって、炭素黒鉛基材中に含まれる不純物の含有量が800ppm以下で、かつFe、Co、Niの各元素の含有量が60ppm以下であることを特徴とする炭素黒鉛製治具。」が記載されている。このような黒鉛製治具は、加工しやすく、デバイスと反応しにくい、耐熱性があることから広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-319929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記に記載された発明では、治具の素材が黒鉛からなるので、不活性雰囲気で使用する必要があり、また不活性雰囲気で使用したとしても、わずかな酸素や、吸着した水分が原因となって少しずつ酸化し、黒鉛のパーティクルを発生させたり、消耗が生じたりする。
【0006】
本発明では、上記課題を鑑み、酸化に強く、耐熱性があり、加工性の良い電子部品取り付け用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の電子部品取り付け用治具は、電子部品を搭載し加熱するための電子部品取り付け用治具であって、
上記電子部品取り付け用治具は、SiCからなる骨材部と空洞部とから構成され、表面に電子部品搭載面を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の電子部品取り付け用治具によれば、治具自体がSiCからなるので、耐熱性も高く、耐酸化性を有している。また、無垢のSiCでなく、空洞部と骨材部とからなるので、所定の形状を得るためには骨材部のみを加工すればよいので加工性もよく、電子部品取り付け用治具として好適に利用することができる。
【0009】
本発明の電子部品取り付け用治具において、上記骨材部は、多孔体であることが好ましい。
骨材部が多孔体であると、加工する際にチッピングが起こりにくく、高い寸法精度の電子部品取り付け用治具を得ることができる。
【0010】
本発明の電子部品取り付け用治具において、上記骨材部は、気孔率が35~65%であることが好ましい。
骨材部の気孔率が35%以上であると容易に加工することができる。また骨材部の気孔率が65%以下であると全体の形状を保持するための十分な強度を得ることができる。
【0011】
本発明の電子部品取り付け用治具において、上記空洞部は、外表面につながっていることが好ましい。
空洞部が外表面につながっていることで、電子部品とSiCとの反応で発生したガスや、フラックス、ロウ材蒸気などが、電子部品取り付け用治具と電子部品との隙間に滞留せず、速やかに外部に拡散される。
【0012】
本発明の電子部品取り付け用治具においては、上記骨材部がハニカム形状であることが好ましい。
骨材部がハニカム形状であることにより、強度が高く、ガスの通過抵抗が少ないので発生ガスの排出を速やかに行うことができる。
【0013】
本発明の電子部品取り付け用治具において、上記電子部品搭載面は、上記ハニカム形状の押出方向と交わることが好ましい。
電子部品搭載面がハニカム形状の押出方向と交わることにより、電子部品搭載面と、雰囲気とのパスを空洞部が形成することができる。
【0014】
本発明の電子部品取り付け用治具において、上記電子部品取り付け用治具に占める上記骨材部の体積比は、25~50%であることが好ましい。
上記電子部品取り付け用治具に占める骨材部の体積比が50%以下であると容易に加工することができる。また骨材部の体積比が25%以上であると電子部品取り付け用治具全体の形状を保持するための十分な強度を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子部品取り付け用治具によれば、治具自体がSiCからなるので、耐熱性も高く、耐酸化性を有している。また、無垢のSiCでなく、空洞部と骨材部とからなるので、所定の形状を得るためには骨材部のみを加工すればよいので加工性もよく、電子部品取り付け用治具として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1Aは、本発明の電子部品取り付け用治具の一例を模式的に示す斜視図であり、図1Bは、図1AのA-A線断面図である。
図2図2は、電子部品取り付け用治具を使用して、電子部品をセラミック基板に取り付ける電子部品取り付け工程を行う様子を模式的に示す斜視図である。
図3図3A図3B図3C図3D図3E及び図3Fは、本発明の第1実施形態に係る電子部品取り付け用治具を用いた電子部品モジュールの製造工程の一例を模式的に示す断面図である。
図4図4A及び図4Bは、図1に示す電子部品取り付け用治具の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
図5図5A及び図5Bは、本発明の電子部品取り付け用治具の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の電子部品取り付け用治具は、電子部品を搭載し加熱するための電子部品取り付け用治具であって、上記電子部品取り付け用治具は、SiCからなる骨材部と空洞部とから構成され、表面に電子部品搭載面を有することを特徴とする。
【0018】
SiCは耐熱性、耐酸化性が高く、金属や半導体材料との反応性が低く素材自体は電子部品取り付け用治具に適している。一方、SiC自体は硬い素材であり、治具として使用するには加工が極めて困難な材料である。本発明では、無垢材でなく骨材部と空洞部とからなり、骨材部がSiCであることにより、容易に所定の加工をすることができ、電子部品取り付け用治具として好適に利用できる。
【0019】
図1Aは、本発明の電子部品取り付け用治具の一例を模式的に示す斜視図であり、図1Bは、図1AのA-A線断面図である。
図1Aには、本発明の第1実施形態に係る電子部品取り付け用治具1が記載されている。
電子部品取り付け用治具1の上面11には、電子部品を搭載するための凹部12が6箇所に設けられている。
電子部品取り付け用治具1は、骨材部20と空洞部30からなり、骨材部20の材料はSiCである。
【0020】
骨材部20はハニカム形状であり、骨材部20を構成するSiCセラミックの壁部21の間に、電子部品取り付け用治具1の厚さ方向(図1A及び図1Bの矢印Tの向き)に空洞部30が伸びている。
空洞部30の伸びる方向は、ハニカム形状を得る際にハニカム形状が押出成形により成形される押出方向となっている。
骨材部がハニカム形状であることにより、強度が高く、ガスの通過抵抗が少ないので発生ガスの排出を速やかに行うことができる。
また、空洞部30は電子部品取り付け用治具1の外表面につながっていることが好ましい。
空洞部が外表面につながっていることで、電子部品とSiCとの反応で発生したガスや、フラックス、ロウ材蒸気などが、電子部品取り付け用治具と電子部品との隙間に滞留せず、速やかに外部に拡散される。さらに、空洞部30は、貫通孔であることが好ましい。空洞部が貫通孔であることによって、電子部品とSiCとの反応で発生したガスや、フラックス、ロウ材蒸気などをより速やかに外部に拡散させることができる。
【0021】
電子部品取り付け用治具1の上面11が電子部品搭載面である。電子部品搭載面は上記押出方向と直交するように材料取りされている。
電子部品搭載面がハニカム形状の押出方向と直交していると、空洞部により、電子部品搭載面と雰囲気とのパスが形成される。
骨材部20は多孔体であることが好ましい。骨材部が多孔体である場合、骨材部には骨材部を通して気体が連通する開気孔を有している。
骨材部が多孔体であると、加工する際にチッピングが起こりにくく、高い寸法精度の電子部品取り付け用治具を得ることができる。
【0022】
骨材部20が多孔体である場合、骨材部の気孔率は35~65%であることが好ましい。骨材部の気孔率が35%以上であると容易に加工することができる。また骨材部の気孔率が65%以下であると全体の形状を保持するための十分な強度を得ることができる。
なお、骨材部が多孔体である場合、気孔率は、水銀圧入法で行うことができる。気孔率の測定は、孔容積及び細孔径分布を、水銀圧入式ポロシメトリを利用して測定することができる。測定は、水銀の表面張力及び接触角を、それぞれ485mN/m及び130°に設定し、水銀の圧入圧力は大気圧~200MPaまでの範囲で測定する。
【0023】
電子部品搭載面に設けられている凹部12の深さは、搭載する電子部品の厚さに合わせて調整され、電子部品を搭載したときに複数の電子部品の上面が同一面に並ぶようになっている。
【0024】
電子部品取り付け用治具に示す骨材部の体積比は25~50%であることが好ましい。
上記電子部品取り付け用治具に占める骨材部の体積比が50%以下であると容易に加工することができる。また骨材部の体積比が25%以上であると電子部品取り付け用治具全体の形状を保持するための十分な強度を得ることができる。
骨材部の体積比を求める際には、骨材部が多孔体である場合は、多孔体中の気孔を含む体積を骨材部の体積とする。骨材部と空洞部の合計の体積(すなわち電子部品取り付け用治具の全体の体積)に示す骨材部の体積を百分率で示したものが骨材部の体積比である。
なお、骨材部の体積比は、全体の体積比を反映する断面における面積比から求めることができる。骨材部がハニカム形状の場合には、押出方向と交わる面が該当し、骨材部の体積と空洞部の体積の比が、骨材部の断面積と空洞部の断面積の比と等しくなる。フォームの場合には、表面以外のどの断面において面積比を求めてもよい。
【0025】
図2は、電子部品取り付け用治具を使用して、電子部品をセラミック基板に取り付ける電子部品取り付け工程を行う様子を模式的に示す斜視図である。
電子部品取り付け用治具1の凹部12に電子部品40を搭載し、電子部品40の上にロウ材50を付与して、ロウ材50にセラミック基板60を重ねる。
電子部品取り付け用治具1上に、電子部品40、ロウ材50、セラミック基板60が重ねて配置されたまま加熱オーブンに入れられ、ロウ材50が溶けるまで加熱される。ロウ材50が溶けることによって、セラミック基板60と電子部品40が接着される。
図2では、セラミック基板60に6個の電子部品40が搭載された電子部品搭載基板が得られる。セラミック基板60には、適宜配線パターンが備えられ、配線パターンを経由して電流、信号が外部から電子部品に供給されるようになっている。
電子部品としては特に限定されないが、IGBT素子等を使用することができる。
【0026】
図3A図3B図3C図3D図3E及び図3Fは、本発明の第1実施形態に係る電子部品取り付け用治具を用いた電子部品モジュールの製造工程の一例を模式的に示す断面図である。
図3Aは電子部品取り付け工程、図3Bはヒートシンク取付け工程、図3Cはワイヤーボンディング工程、図3Dはバスバー、ピンヘッダ取付け工程、図3Eはパッケージ工程、図3Fは絶縁樹脂充填工程を示す。
【0027】
図2に示す図が図3Aに示す電子部品取り付け工程の図であり、図3Aの上に示す図は図2におけるB-B線断面図であるともいえる。図3Aの下には電子部品40がセラミック基板60に搭載された電子部品搭載基板70を示している。なお、図3Aの上下の図で、電子部品搭載基板70の上下を反転させて示している。
【0028】
図3Bに示すように、セラミック基板60の、電子部品40が搭載された面と反対の面にヒートシンク80を取りつける。
図3Cに示すように、電子部品40の表面にワイヤーボンディングを行い、電子部品40の電極をワイヤー90によって引き出す。
さらに、図3Dに示すように、ワイヤー90をあらかじめセラミック基板60に備えられた配線パターン100と接続し、配線パターン100の所定の位置にバスバー又はピンヘッダ110を取り付ける。このようにして、電子部品40に外部からバスバー又はピンヘッダ110、配線パターン100を経由して電流、信号が供給される。
【0029】
図3Eに示すようにバスバー又はピンヘッダ110が外部に露出するように、樹脂パッケージ120でモールドする。さらに、図3Fに示すように樹脂パッケージ内部に絶縁樹脂130を充填する。
上記工程により、電子部品モジュール140が製造される。
【0030】
図4A及び図4Bは、図1に示す電子部品取り付け用治具の製造方法の一例を模式的に示す工程図である。
図4Aに示すように、上側部品210と下側部品220を準備する。
上側部品210と下側部品220はともにハニカム形状であり、上側部品210には凹部となるための開口215が設けられている。
上側部品は、ダイヤモンドツール、レーザーカット、ウォーターガイドレーザーなどの方法で切り抜かれて開口が設けられる。本発明の電子部品取り付け用治具を構成する材料はSiCでありながら加工性に優れるので、開口を容易に設けることができる。
下側部品の上面は、上側部品と組み合わされた際に電子部品搭載面となる面である。下側部品の上面は、精度の高い電子部品搭載面が得られるよう研磨されていることが好ましい。上側部品と下側部品は、位置決めピンの差し込み、溶融シリコンによる接着などで一体化させることができ、分割して加工することによって、小さな刃物を使うことなく図4Bに示すような電子部品取り付け用治具1を得ることができる。
【0031】
本発明の電子部品取り付け用治具は、上記のような第1実施形態に係る電子部品取り付け用治具に限定されるものではなく、以下のような変形例も含まれる。
図5A及び図5Bは、本発明の電子部品取り付け用治具の変形例を示す模式図である。
図5Aは、フォームの形態である電子部品取り付け用治具の模式図であり、図5Bは、空洞部の片側が封止された形態の電子部品取り付け用治具の模式図である。
【0032】
図5Aに示す電子部品取り付け用治具2は、SiCの前駆体を紙などの有機物からなる容器中で発泡させ、容器とともに焼成することで得られる。
フォームの形態である電子部品取り付け用治具2では、フォームの骨組みを構成する骨材部22が骨材部にあたり、フォームの空洞31が空洞部にあたる。
【0033】
図5Bに示す電子部品取り付け用治具3は、ハニカム形状の空洞部30の片側を封止材32で封止して得ることができる。また、図面には示していないが、同様の形状は型を用いた成形によっても得ることができる。
【0034】
電子部品取り付け用治具2、3のいずれも、空洞部を有しているので容易に加工でき、目的の形状を得ることができる。また、ハニカム形状の空洞部の片側を封止材で封止している電子部品取り付け用治具3では、押出成形や型成形でSiCの原材料に有機物の造孔材を添加して焼結すると多孔体が得られ、加工性に優れた電子部品取り付け用治具を得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1、2、3 電子部品取り付け用治具
11 上面(電子部品搭載面)
12 凹部
20 骨材部
21 壁部
22 骨材部
30 空洞部
31 空洞
32 封止材
40 電子部品
50 ロウ材
60 セラミック基板
70 電子部品搭載基板
80 ヒートシンク
90 ワイヤー
100 配線パターン
110 バスバー又はピンヘッダ
120 樹脂パッケージ
130 絶縁樹脂
140 電子部品モジュール
210 上側部品
215 開口
220 下側部品

図1
図2
図3
図4
図5