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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】蓄熱装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20241211BHJP
   F28F 23/02 20060101ALI20241211BHJP
   F28F 27/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
F28D20/02 Z
F28F23/02 Z
F28F27/00 511Z
F28D20/02 E
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020201338
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022089092
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】仲村 達也
(72)【発明者】
【氏名】椎 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅野 恒
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 隆一
(72)【発明者】
【氏名】濱本 浩
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋一
(72)【発明者】
【氏名】山口 博志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敬
(72)【発明者】
【氏名】新谷 嘉宏
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05662161(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0276121(US,A1)
【文献】特開2000-063813(JP,A)
【文献】特開平02-052951(JP,A)
【文献】特開昭59-069693(JP,A)
【文献】特開平10-288359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0227160(US,A1)
【文献】特開2018-105616(JP,A)
【文献】特開2009-236433(JP,A)
【文献】特開2010-175048(JP,A)
【文献】特開平11-152465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
F28F 23/02
F28F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一空間と、前記第一空間から離れている第二空間と、前記第一空間と前記第二空間との間に形成された第三空間とを含む内部空間を有し、前記第一空間、前記第三空間、及び前記第二空間が基準平面に沿って配置されているシェルと、
前記第三空間に収容された潜熱蓄熱材と、
前記第三空間に接する外面を有し、前記第一空間と前記第二空間とを連通させている複数の伝熱管と、
前記第一空間から前記第二空間へ前記複数の前記伝熱管の内部を通過する熱媒体からの放熱によって前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第三空間の底部の中央部における前記潜熱蓄熱材の融解を補助する融解補助機構と、を備え、
前記潜熱蓄熱材は、前記複数の前記伝熱管を交差して前記底部から重力方向と反対方向に対流できるように前記第三空間に収容されている、
蓄熱装置。
【請求項2】
前記融解補助機構は、前記第三空間の下方で前記基準平面に平行な方向において前記中央部に重なっている断熱材を含む、請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項3】
前記断熱材は、空気層又は真空層を有する、請求項2に記載の蓄熱装置。
【請求項4】
前記融解補助機構は、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記底部を加熱する、請求項1に記載の蓄熱装置。
【請求項5】
前記融解補助機構は、前記底部の下方に形成され、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに熱媒体を通過させて前記底部を加熱する流路を含む、請求項4に記載の蓄熱装置。
【請求項6】
前記融解補助機構は、前記第三空間に対して前記中央部を選択的に加熱するヒーターを含む、請求項4に記載の蓄熱装置。
【請求項7】
前記融解補助機構は、前記第一空間における前記熱媒体の温度が前記潜熱蓄熱材の融解温度より高いときに前記ヒーターを発熱させる、請求項6に記載の蓄熱装置。
【請求項8】
前記融解補助機構は、前記中央部における前記潜熱蓄熱材の温度が所定温度以上であるときに前記ヒーターの発熱を停止させる、請求項6又は7に記載の蓄熱装置。
【請求項9】
前記融解補助機構は、前記ヒーターに電力を供給するバッテリーの充電状態が所定のレベル以上であるときに前記ヒーターを発熱させる、請求項6から8のいずれか1項に記載の蓄熱装置。
【請求項10】
前記複数の前記伝熱管は、前記シェルの内部において最も下側に位置する最下伝熱管を有し、
前記融解補助機構は、前記最下伝熱管に前記最下伝熱管の下方で向かい合う前記シェルの内面の第一部位を含み、
前記最下伝熱管と前記第一部位との間の距離は、前記最下伝熱管以外の前記伝熱管と前記シェルの前記内面との間の距離よりも小さい、
請求項1から9のいずれか1項に記載の蓄熱装置。
【請求項11】
前記第一部位は、前記中央部に向かって突出している突出部を有する、請求項10に記載の蓄熱装置。
【請求項12】
前記融解補助機構は、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記複数の前記伝熱管からの放熱量を調整して前記中央部における前記潜熱蓄熱材の融解を補助する、請求項1から11のいずれか1項に記載の蓄熱装置。
【請求項13】
前記複数の前記伝熱管は、前記複数の前記伝熱管において前記第三空間の前記底部の近くに配置された第一伝熱管と、前記第一伝熱管の上方に配置された第二伝熱管とを有し、
前記融解補助機構は、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第一伝熱管からの放熱量を前記第二伝熱管からの放熱量よりも高くする、
請求項12に記載の蓄熱装置。
【請求項14】
前記融解補助機構は、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第一伝熱管における前記熱媒体の流量を前記第二伝熱管における前記熱媒体の流量よりも大きくする、請求項13に記載の蓄熱装置。
【請求項15】
前記融解補助機構は、前記第一空間に前記熱媒体を導く流入口及び前記第二空間から前記シェルの外部へ前記熱媒体を導く流出口の少なくとも1つを含み、
前記流入口及び前記流出口の少なくとも1つは、前記基準平面に垂直な方向における前記第三空間の中心よりも下方に配置されている、
請求項13又は14に記載の蓄熱装置。
【請求項16】
前記複数の前記伝熱管は、第一伝熱管群及び前記第一伝熱管群の上方に配置された第二伝熱管群を有し、
前記融解補助機構は、前記第一伝熱管群における前記熱媒体の流量を、前記第二伝熱管群における前記熱媒体の流量よりも大きくする、請求項12に記載の蓄熱装置。
【請求項17】
前記複数の前記伝熱管は、前記第三空間の前記底部の近くに配置された第一伝熱管を有し、
前記融解補助機構は、前記第一伝熱管の長手方向において前記底部のうち前記中央部に選択的に重なっており、前記第一伝熱管の外面から前記中央部に接している前記シェルの前記内面に向かって突出している伝熱面を含む、
請求項1から11のいずれか1項に記載の蓄熱装置。
【請求項18】
第一空間と、前記第一空間から離れている第二空間と、前記第一空間と前記第二空間との間に形成された第三空間とを含む内部空間を有し、前記第一空間、前記第三空間、及び前記第二空間が基準平面に沿って配置されているシェルと、
前記第三空間に収容された潜熱蓄熱材と、
前記第三空間に接する外面を有し、前記第一空間と前記第二空間とを連通させている複数の伝熱管と、
前記第一空間から前記第二空間へ前記複数の前記伝熱管の内部を通過する熱媒体からの放熱によって前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第一空間及び前記第二空間から離れている前記第三空間の底部の中央部における前記潜熱蓄熱材の温度を検出する第一温度センサと、を備え、
前記潜熱蓄熱材は、前記複数の前記伝熱管を交差して前記底部から重力方向と反対方向に対流できるように前記第三空間に収容されている、
蓄熱装置。
【請求項19】
前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第三空間において前記潜熱蓄熱材が十分に融解したことを判断する演算回路をさらに備え、
前記演算回路は、前記第一温度センサによって検出された前記潜熱蓄熱材の温度が所定温度以上であるときに、前記潜熱蓄熱材が十分に融解したと判断する、請求項18に記載の蓄熱装置。
【請求項20】
前記熱媒体の温度を検出する第二温度センサと、
前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第三空間において前記潜熱蓄熱材が十分に融解したことを判断する演算回路と、をさらに備え、
前記演算回路は、前記第一温度センサによって検出された前記潜熱蓄熱材の温度が第一の所定温度以上であり、かつ、前記第二温度センサによって検出された前記熱媒体の温度が第二の所定温度以上であるときに、前記潜熱蓄熱材が十分に融解したと判断する、請求項19に記載の蓄熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、潜熱蓄熱材を用いた蓄熱装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、シェルの内部に複数のチューブが多段に水平方向に配置された蓄熱装置が記載されている。シェルの内部には潜熱蓄熱材が収容されている。チューブの内部を熱媒体流体が貫流して、外部からの熱が潜熱蓄熱材に与えられ、又は、潜熱蓄熱材に蓄えられた熱を外部に取り出される。各チューブの外面の上下にはフィンが設けられている。これにより、蓄熱モードにおいて、フィンの両側の潜熱蓄熱材が加熱されて液化し、シェルの内部を垂直方向に貫く液化ゾーンが形成される。
【0004】
特許文献2には、熱を潜熱として蓄熱し、その潜熱を放出する蓄熱器を備えた蓄熱装置が記載されている。蓄熱器の所定の領域には潜熱蓄熱材が収容されている。蓄熱器は、シェルアンドチューブ型熱交換器であってもよい。この蓄熱装置において、潜熱蓄熱材の温度分布が最も低くなる箇所と、潜熱蓄熱材の温度分布が最も高くなる箇所とを組み合わせた位置に潜熱蓄熱材温度センサが設けられてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-52950号公報
【文献】特開2014-136974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、シェルの内部において複数の伝熱管によって連通された互いに離れた空間を有する蓄熱装置において潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させるのに有利な蓄熱装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示における蓄熱装置は、
第一空間と、前記第一空間から離れている第二空間と、前記第一空間と前記第二空間との間に形成された第三空間とを含む内部空間を有し、前記第一空間、前記第三空間、及び前記第二空間が基準平面に沿って配置されているシェルと、
前記第三空間に収容された潜熱蓄熱材と、
前記第三空間に接する外面を有し、前記第一空間と前記第二空間とを連通させている複数の伝熱管と、
前記第一空間から前記第二空間へ前記複数の前記伝熱管の内部を通過する熱媒体からの放熱によって前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第三空間の底部の中央部における前記潜熱蓄熱材の融解を補助する融解補助機構と、を備えた、
蓄熱装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
上記の蓄熱装置は、シェルの内部において複数の伝熱管によって連通された互いに離れた第一空間及び第二空間を有し、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させるのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1の蓄熱装置の断面図である。
図2図2は、参考例に係る蓄熱装置の熱の流れを概念的に示す断面図である。
図3図3は、変形例に係る蓄熱装置の断面図である。
図4図4は、実施の形態2の蓄熱装置の断面図である。
図5図5は、別の変形例に係る蓄熱装置の断面図である。
図6図6は、図5に示す蓄熱装置のヒーターの制御のためのフローチャートである。
図7図7は、実施の形態3の蓄熱装置の断面図である。
図8図8は、さらに別の変形例に係る蓄熱装置の断面図である。
図9図9は、実施の形態4の蓄熱装置の断面図である。
図10図10は、さらに別の変形例に係る蓄熱装置の断面図である。
図11図11は、図10におけるI-I線を切断線とする蓄熱装置の断面図である。
図12図12は、実施の形態5の蓄熱装置の断面図である。
図13図13は、図12に示す伝熱フィンの平面図である。
図14図14は、さらに別の変形例に係る蓄熱装置の断面図である。
図15図15は、さらに別の変形例に係る蓄熱装置の断面図である。
図16図16は、図15におけるVI-VI線を切断線とする蓄熱装置の断面図である。
図17図17は、実施の形態6の蓄熱装置の断面図である。
図18図18は、図17に示す蓄熱装置において潜熱蓄熱材の十分な融解を判断するための処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
シェルの内部に収容された潜熱蓄熱材に潜熱を蓄えるときに、シェルの内部の潜熱蓄熱材が収容された空間に接する外面を有する複数の伝熱管の内部において熱媒体を通過させることによって潜熱蓄熱材を融解させることが考えられる。この場合、複数の伝熱管の内部へ導かれるべき熱媒体を貯留するための空間と、複数の伝熱管を通過した熱媒体を貯留するための空間をシェルの内部に形成することが考えられる。換言すると、蓄熱装置において、シェルの内部に複数の伝熱管によって連通された互いに離れた2つの空間を形成することが考えられる。
【0011】
本発明者らは、このような蓄熱装置において蓄熱装置に潜熱を蓄えるときに、特定の箇所の潜熱蓄熱材が他の箇所の潜熱蓄熱材と比べて融解しにくいことを新たに見出した。そこで、本発明者らは、このような構成を備えた蓄熱装置において潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させるのに有利な技術を開発すべく鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者らは本開示の蓄熱装置を遂に案出した。
【0012】
別の観点から、本発明者らは、上記の知見に基づき、潜熱蓄熱材が十分に融解したことを精度良く判断するために有利な技術を開発すべく鋭意検討を重ねた。その結果、本発明者らは本開示の別の蓄熱装置を案出した。
【0013】
(本開示にかかる一態様の概要)
本開示の第1態様に係る蓄熱装置は、
第一空間と、前記第一空間から離れている第二空間と、前記第一空間と前記第二空間との間に形成された第三空間とを含む内部空間を有し、前記第一空間、前記第三空間、及び前記第二空間が基準平面に沿って配置されているシェルと、
前記第三空間に収容された潜熱蓄熱材と、
前記第三空間に接する外面を有し、前記第一空間と前記第二空間とを連通させている複数の伝熱管と、
前記第一空間から前記第二空間へ前記複数の前記伝熱管の内部を通過する熱媒体からの放熱によって前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第三空間の底部の中央部における前記潜熱蓄熱材の融解を補助する融解補助機構と、を備えている。
【0014】
融解補助機構が存在しない場合、第一空間から第二空間へ複数の伝熱管の内部を通過する熱媒体からの放熱によって潜熱蓄熱材を融解させるときに第三空間の底部の中央部における潜熱蓄熱材が第三空間の他の箇所に比べて融解しにくい。なぜなら、熱媒体の有する熱は、潜熱蓄熱材における対流伝熱及びシェルの内面における熱伝導により潜熱蓄熱材に伝わりやすく、第三空間の底部の中央部にはこの熱が伝わりにくいからである。第1態様によれば、融解補助機構によって、第三空間の底部の中央部における潜熱蓄熱材の融解が補助されるので、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0015】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様に係る蓄熱装置では、前記融解補助機構は、前記第三空間の下方で前記基準平面に平行な方向において前記中央部に重なっている断熱材を含んでいてもよい。第2態様によれば、断熱材の働きにより、潜熱蓄熱材を融解させるときに、第三空間の底部の中央部における潜熱蓄熱材から蓄熱装置の外部への放熱が抑制され、その中央部において潜熱蓄熱材の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0016】
本開示の第3態様において、例えば、第2態様に係る蓄熱装置では、前記断熱材は、空気層又は真空層を有していてもよい。第3態様によれば、断熱材が高い断熱性能を有し、潜熱蓄熱材を融解させるときに第三空間の底部の中央部において潜熱蓄熱材の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0017】
本開示の第4態様において、例えば、第1態様に係る蓄熱装置では、前記融解補助機構は、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記底部を加熱してもよい。第4態様によれば、潜熱蓄熱材を融解させるときに第三空間の底部の中央部において潜熱蓄熱材が加熱され、その中央部における潜熱蓄熱材の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0018】
本開示の第5態様において、例えば、第4態様に係る蓄熱装置では、前記融解補助機構は、前記底部の下方に形成され、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに熱媒体を通過させて前記底部を加熱する流路を含んでいてもよい。第5態様によれば、潜熱蓄熱材を融解させるときに第三空間の底部の中央部の潜熱蓄熱材が流路における熱媒体の流れによって加熱され、その中央部における潜熱蓄熱材の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0019】
本開示の第6態様において、例えば、第4態様に係る蓄熱装置では、前記融解補助機構は、前記第三空間に対して前記中央部を選択的に加熱するヒーターを含んでいてもよい。第6態様によれば、潜熱蓄熱材を融解させるときに第三空間の底部の中央部の潜熱蓄熱材がヒーターによって選択的に加熱され、その中央部における潜熱蓄熱材の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0020】
本開示の第7態様において、例えば、第6態様に係る蓄熱装置では、前記融解補助機構は、前記第一空間における前記熱媒体の温度が前記潜熱蓄熱材の融解温度より高いときに前記ヒーターを発熱させてもよい。第7態様によれば、第一空間から第二空間へ複数の伝熱管の内部を通過する熱媒体からの放熱によって潜熱蓄熱材を融解させるときにヒーターが発熱して、第三空間の底部の中央部の潜熱蓄熱材が加熱される。これにより、その中央部における潜熱蓄熱材の融解が補助され、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。このように、潜熱蓄熱材の融解が必要なときにヒーターが発熱するので、ヒーターの発熱に伴うエネルギー消費量を少なくできる。
【0021】
本開示の第8態様において、例えば、第6態様又は第7態様に係る蓄熱装置では、前記融解補助機構は、前記中央部における前記潜熱蓄熱材の温度が所定温度以上であるときに前記ヒーターの発熱を停止させてもよい。第8態様によれば、例えば、第三空間の底部の中央部の潜熱蓄熱材が融解温度に近づいたことに対応してヒーターの発熱が停止する。このため、潜熱蓄熱材の融解が必要なときにヒーターの発熱に伴うエネルギー消費量を低くできる。
【0022】
本開示の第9態様において、例えば、第6態様から第8態様のいずれか1つの態様に係る蓄熱装置では、前記融解補助機構は、前記ヒーターに電力を供給するバッテリーの充電状態が所定のレベル以上であるときに前記ヒーターを発熱させてもよい。第9態様によれば、バッテリーの充電状態に合わせてヒーターの発熱を調節できる。
【0023】
本開示の第10態様において、例えば、第1態様から第9態様のいずれか1つの態様に係る蓄熱装置では、前記複数の前記伝熱管は、前記シェルの内部において最も下側に位置する最下伝熱管を有していてもよい。加えて、前記融解補助機構は、前記最下伝熱管に前記最下伝熱管の下方で向かい合う前記シェルの内面の第一部位を含んでいてもよい。さらに、前記最下伝熱管と前記第一部位との間の距離は、前記最下伝熱管以外の前記伝熱管と前記シェルの前記内面との間の距離よりも小さくてもよい。第10態様によれば、最下伝熱管と第一部位との間の距離が小さいので、第三空間の底部の中央部における潜熱蓄熱材の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0024】
本開示の第11態様において、例えば、第10態様に係る蓄熱装置では、前記第一部位は、前記中央部に向かって突出している突出部を有していてもよい。第11態様によれば、突出部によって最下伝熱管と第一部位との間の距離を小さくできる。
【0025】
本開示の第12態様において、例えば、第1態様から第11態様のいずれか1つの態様に係る蓄熱装置では、前記融解補助機構は、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記複数の前記伝熱管からの放熱量を調整して前記中央部における前記潜熱蓄熱材の融解を補助してもよい。第12態様によれば、複数の伝熱管からの放熱量の調整により、中央部における潜熱蓄熱材の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0026】
本開示の第13態様において、例えば、第12態様に係る蓄熱装置では、前記複数の前記伝熱管は、前記複数の前記伝熱管において前記第三空間の前記底部の近くに配置された第一伝熱管と、前記第一伝熱管の上方に配置された第二伝熱管とを有してもよい。加えて、前記融解補助機構は、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第一伝熱管からの放熱量を前記第二伝熱管からの放熱量よりも高くしてもよい。第13態様によれば、第一伝熱管からの放熱量が第二伝熱管からの放熱量よりも高いので、第三空間の底部の中央部における潜熱蓄熱材の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0027】
本開示の第14態様において、例えば、第13態様に係る蓄熱装置では、前記融解補助機構は、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第一伝熱管における前記熱媒体の流量を前記第二伝熱管における前記熱媒体の流量よりも大きくしてもよい。第14態様によれば、第一伝熱管における熱媒体の流量が第二伝熱管における熱媒体の流量よりも大きくなり、第三空間の底部の中央部における潜熱蓄熱材の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0028】
本開示の第15態様において、例えば、第13態様又は第14態様に係る蓄熱装置では、前記融解補助機構は、前記第一空間に前記熱媒体を導く流入口及び前記第二空間から前記シェルの外部へ前記熱媒体を導く流出口の少なくとも1つを含んでいてもよい。加えて、前記流入口及び前記流出口の少なくとも1つは、前記基準平面に垂直な方向における前記第三空間の中心よりも下方に配置されていてもよい。第15態様によれば、比較的簡素な構成により、第一伝熱管からの放熱量を第二伝熱管からの放熱量よりも高く調節しやすい。
【0029】
本開示の第16態様において、例えば、第12態様に係る蓄熱装置では、前記複数の前記伝熱管は、第一伝熱管群及び前記第一伝熱管群の上方に配置された第二伝熱管群を有していてもよい。加えて、前記融解補助機構は、前記第一伝熱管群における前記熱媒体の流量を、前記第二伝熱管群における前記熱媒体の流量よりも大きくしてもよい。第16態様によれば、第一伝熱管群における熱媒体の流量が第二伝熱管群における熱媒体の流量よりも大きくなり、第三空間の底部の中央部における潜熱蓄熱材の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0030】
本開示の第17態様において、例えば、第1態様から第11態様のいずれか1つの態様に係る蓄熱装置では、前記複数の前記伝熱管は、前記第三空間の前記底部の近くに配置された第一伝熱管を有していてもよい。加えて、前記融解補助機構は、前記第一伝熱管の長手方向において前記底部のうち前記中央部に選択的に重なっており、前記第一伝熱管の外面から前記中央部に接している前記シェルの前記内面に向かって突出している伝熱面を含んでいてもよい。第17態様によれば、伝熱面における伝熱により第三空間の底部の中央部における潜熱蓄熱材が加熱され、その中央部における潜熱蓄熱材の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材を短期間で十分に融解させることができる。
【0031】
本開示の第18態様に係る蓄熱装置は、
第一空間と、前記第一空間から離れている第二空間と、前記第一空間と前記第二空間との間に形成された第三空間とを含む内部空間を有し、前記第一空間、前記第三空間、及び前記第二空間が基準平面に沿って配置されているシェルと、
前記第三空間に収容された潜熱蓄熱材と、
前記第三空間に接する外面を有し、前記第一空間と前記第二空間とを連通させている複数の伝熱管と、
前記第一空間から前記第二空間へ前記複数の前記伝熱管の内部を通過する熱媒体からの放熱によって前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第一空間及び前記第二空間から離れている前記第三空間の底部の中央部における前記潜熱蓄熱材の温度を検出する第一温度センサと、を備えている。
【0032】
上記の通り、第一空間から第二空間へ複数の伝熱管の内部を通過する熱媒体からの放熱によって潜熱蓄熱材を融解させるときに第三空間の底部の中央部における潜熱蓄熱材が第三空間の他の箇所に比べて融解しにくい。第18態様によれば、潜熱蓄熱材が溶解しにくい第三空間の底部の中央部における潜熱蓄熱材の温度を第一温度センサによって検出でき、潜熱蓄熱材が十分に融解したことを精度良く判断できる。
【0033】
本開示の第19態様において、例えば、第18態様に係る蓄熱装置は、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第三空間において前記潜熱蓄熱材が十分に融解したことを判断する演算回路をさらに備えてもよい。加えて、前記演算回路は、前記第一温度センサによって検出された前記潜熱蓄熱材の温度が所定温度以上であるときに、前記潜熱蓄熱材が十分に融解したと判断してもよい。第19態様によれば、第一温度センサの検出結果に基づいて潜熱蓄熱材の十分な融解を判断でき、潜熱蓄熱材が十分に融解したことを精度良く判断できる。
【0034】
本開示の第20態様において、例えば、第19態様に係る蓄熱装置は、前記第二空間における前記熱媒体の温度を検出する第二温度センサと、前記潜熱蓄熱材を融解させるときに、前記第三空間において前記潜熱蓄熱材が十分に融解したことを判断する演算回路と、をさらに備えていてもよい。加えて、前記演算回路は、前記第一温度センサによって検出された前記潜熱蓄熱材の温度が第一の所定温度以上であり、かつ、前記第二温度センサによって検出された前記熱媒体の温度が第二の所定温度以上であるときに、前記潜熱蓄熱材が十分に融解したと判断してもよい。第20態様によれば、第一温度センサ及び第二温度センサの検出結果に基づいて潜熱蓄熱材の十分な融解を判断でき、潜熱蓄熱材が十分に融解したことを精度良く判断できる。
【0035】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。以下の実施の形態は例示に過ぎず、本開示は以下の実施の形態に限定されない。添付の図面において、X軸、Y軸、Z軸は互いに直交しており、XY平面が水平であり、Z軸負方向が重力方向である。
【0036】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の蓄熱装置1aの断面図である。図1に示す通り、蓄熱装置1aは、シェル10と、潜熱蓄熱材20と、複数の伝熱管30と、融解補助機構40とを備えている。シェル10は、第一空間11と、第二空間12と、第三空間13とを含む内部空間を有する。第二空間12は、第一空間11から離れている。第三空間13は、第一空間11と第二空間12との間に形成されている。第一空間11、第三空間13、及び第二空間12は、基準平面に沿って配置されている。基準平面は、例えば、水平であり、XY平面に平行な平面である。潜熱蓄熱材20は、第三空間13に収容されている。複数の伝熱管30は、第三空間13に接する外面31を有する。加えて、複数の伝熱管30は、第一空間11と第二空間12とを連通させている。融解補助機構40は、第一空間11から第二空間12へ複数の伝熱管30の内部を通過する熱媒体からの放熱によって潜熱蓄熱材20を融解させるときに、第三空間13の底部25の中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解を補助する。
【0037】
第三空間13の底部25は、例えば、第三空間13において複数の伝熱管30の最下の伝熱管30より下方の空間を意味する。底部25の中央部25cは、例えば、底部25を伝熱管30の長手方向に4等分したときに伝熱管30の長手方向の両端部に位置する部分以外の部分を意味する。
【0038】
図2は、参考例に係る蓄熱装置3の断面図である。蓄熱装置3は、融解補助機構40を備えていないこと以外は、蓄熱装置1aと同様に構成されている。蓄熱装置1aの構成要素に対応する蓄熱装置3の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0039】
図2において、実線の矢印は、潜熱蓄熱材20を融解させるときの熱媒体の流れを示す。図2において、破線の矢印は、潜熱蓄熱材20を融解させるときの熱の流れを概念的に示す。第一空間11から第二空間12へ複数の伝熱管30の内部を通過する熱媒体からの放熱によって潜熱蓄熱材20を融解させるときに、潜熱蓄熱材20における対流伝熱によりZ軸正方向に熱が伝わる。例えば、第一空間11から第二空間12へ複数の伝熱管30の内部を通過する熱媒体からの放熱によって潜熱蓄熱材20を融解させるときに、第一空間11及び第二空間12のそれぞれには、熱媒体が貯留される。第一空間11及び第二空間12に貯留された熱媒体が有する熱は、シェル10の内面14における熱伝導により水平方向に伝わる。このため、図2に示す通り、中央部25cには、熱媒体が有する熱が伝わりにくい。このため、中央部25cにおいて固相の潜熱蓄熱材20が残存しやすく、潜熱蓄熱材20を短期間で十分に融解させることが難しい。
【0040】
一方、蓄熱装置1aにおいて、潜熱蓄熱材20を融解させるときに、融解補助機構40によって、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解が補助される。このため、潜熱蓄熱材20を短期間で十分に融解させることができる。例えば、潜熱蓄熱材20の全体を短期間で完全に融解させることができる。
【0041】
融解補助機構40は、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解を補助できる限り、特定の機構に限定されない。融解補助機構40は、例えば、その機構が存在しない場合に比べて、同一条件において潜熱蓄熱材20の全体をより短期間で融解させることができる。融解補助機構40は、中央部25cへの熱の移動を促進する機構であってもよく、中央部25cからの放熱を抑制する機構であってもよい。
【0042】
図1に示す通り、蓄熱装置1aにおいて、融解補助機構40は、例えば、断熱材41を含んでいる。断熱材41は、第三空間13の下方で基準平面に平行な方向において中央部25cに重なっている。断熱材41の働きにより、潜熱蓄熱材20を融解させるときに、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20から蓄熱装置1aの外部への放熱が抑制され、中央部25cにおいて潜熱蓄熱材20の融解が補助される。
【0043】
断熱材41をなす材料は、潜熱蓄熱材20を融解させるときに中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解を補助できる限り、特定の材料に限定されない。断熱材41をなす材料は、樹脂、金属、ガラス、又はセラミックスであってもよい。断熱材41の構成も特定の構成に限定されない。断熱材41の構成は、発泡体であってもよく、繊維集合体であってもよい。断熱材41は、真空断熱材であってもよい。
【0044】
図1に示す通り、断熱材41は、例えば、第三空間13の下方において、第三空間13の全体のうち中央部25cに選択的に重なるように配置されている。
【0045】
伝熱管30の長手方向における断熱材41の中心は、例えば、伝熱管30の長手方向における第三空間13の中心よりも第二空間12の近くに位置している。熱媒体は、第一空間11から第二空間12へ複数の伝熱管30の内部を通過するときに放熱する。このため、第二空間12における熱媒体の温度は、第一空間11における熱媒体の温度よりも低くなりやすい。このため、例えば、蓄熱装置3において、中央部25cのうち第二空間12により近い箇所で固相の潜熱蓄熱材20が残存しやすい。一方、蓄熱装置1aにおいて、断熱材41の中心が第三空間13の中心よりも第二空間12の近くに位置していることにより、潜熱蓄熱材20をより確実に短期間で十分に融解させることができる。
【0046】
図1に示す通り、蓄熱装置1aは、例えば、第一仕切り15a及び第二仕切り15bを備えている。第一仕切り15a及び第二仕切り15bのそれぞれは、例えば、板状の部材である。第一仕切り15aは、シェル10の内部空間を第一空間11と第三空間13とに仕切っている。例えば、第一仕切り15aの周縁部は、第一空間11と第三空間13との間でシェル10の内面14に接合されている。第二仕切り15bは、シェル10の内部空間を第二空間12と第三空間13とに仕切っている。例えば、第二仕切り15bの周縁部は、第二空間12と第三空間13との間でシェル10の内面14に接合されている。第一仕切り15a及び第二仕切り15bのそれぞれは複数の貫通孔を有する。複数の伝熱管30の一端部は、それぞれ、第一仕切り15aの複数の貫通孔に配置された状態で第一仕切り15aと接合されている。複数の伝熱管30の他端部は、それぞれ、第二仕切り15bの複数の貫通孔に配置された状態で第二仕切り15bと接合されている。これにより、複数の伝熱管30が第一空間11と第二空間12とを連通させている。
【0047】
図1に示す通り、蓄熱装置1aは、例えば、流入口17a及び流出口17bを有する。流入口17aは、第一空間11に接している。蓄熱装置1aの外部の熱媒体は、流入口17aを通過して、第一空間11に導かれ、第一空間11に貯留される。第一空間11に貯留された熱媒体は、複数の伝熱管30を通過して第二空間12に導かれ、第二空間12に貯留される。第二空間12に貯留された熱媒体は、流出口17bを通過して蓄熱装置1aの外部に導かれる。
【0048】
蓄熱装置1aの運転は、例えば、蓄熱運転及び放熱運転を含む。蓄熱運転において、潜熱蓄熱材20の融解温度より高い温度を有する熱媒体が流入口17aを通って蓄熱装置1aに供給され、熱媒体によって潜熱蓄熱材20が加熱され、潜熱蓄熱材20が融解して潜熱が蓄えられる。一方、放熱運転において、潜熱蓄熱材20の融解温度より低い温度を有する熱媒体が流入口17aを通って蓄熱装置1aに供給される。潜熱蓄熱材20に蓄えられた潜熱を受け取って熱媒体の温度が上昇する。潜熱蓄熱材20は、例えば、固相に変化する。その後、熱媒体は、例えば、熱需要に応えるために蓄熱装置1aの外部に供給される。
【0049】
潜熱蓄熱材20は、特定の物質に限定されない。潜熱蓄熱材20は、例えば、金属塩又は金属塩の水和物を主成分として含有している。これにより、潜熱蓄熱材20が所望の過冷却安定性を有しやすい。本明細書において「主成分」とは、質量基準で最も多く含まれる成分を意味する。
【0050】
金属塩は、ナトリウム塩であってもよく、リチウム塩であってもよく、カリウム塩であってもよく、カルシウム塩であってもよく、マグネシウム塩であってもよく、バリウム塩であってもよい。金属塩は、鉄の塩であってもよく、アルミニウム塩であってもよい。
【0051】
潜熱蓄熱材20は、酢酸ナトリウムを主成分として含有していてもよい。これにより、潜熱蓄熱材20が所望の過冷却安定性をより確実に有しやすい。
【0052】
潜熱蓄熱材20の主成分は、所定の水和物であってもよい。例えば、上記の金属塩の水和物であってもよい。水和物の例は、硫酸ナトリウム十水和物、硫酸水素ナトリウム一水和物、塩素酸リチウム三水和物、過塩素酸リチウム三水和物、フッ化カリウム二水和物、フッ化カリウム四水和物、塩化カルシウム二水和物、塩化カルシウム四水和物、塩化カルシウム六水和物、硝酸リチウム三水和物、硫酸ナトリウム十水和物、炭酸ナトリウム七水和物、炭酸ナトリウム十水和物、臭化カルシウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム七水和物、リン酸水素二ナトリウム十二水和物、塩化鉄四水和物、塩化鉄六水和物、チオ硫酸ナトリウム五水和物、硫酸マグネシウム七水和物、酢酸リチウム二水和物、水酸化ナトリウム一水和物、水酸化バリウム一水和物、水酸化バリウム八水和物、ピロリン酸ナトリウム十水和物、リン酸三ナトリウム六水和物、リン酸三ナトリウム八水和物、及びリン酸三ナトリウム十二水和物である。
【0053】
潜熱蓄熱材20は、安定剤及び水等の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0054】
蓄熱装置1aで使用される熱媒体は、特定の物質に限定されない。熱媒体は、不凍液等のエンジン冷却水であってもよいし、ロングライフクーラント(LLC)であってもよいし、オートマチックトランスミッションフルード(ATF)であってもよい。
【0055】
図3は、蓄熱装置1aの変形例に係る蓄熱装置1bの断面図である。蓄熱装置1bは、特に説明する部分を除き蓄熱装置1aと同様に構成されている。蓄熱装置1aの構成要素に対応する蓄熱装置1bの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、蓄熱装置1bにも当てはまる。
【0056】
蓄熱装置1bにおいて、断熱材41は、空気層41aを有する。これにより、断熱材41が高い断熱性能を有し、潜熱蓄熱材20を融解させるときに中央部25cにおいて潜熱蓄熱材20の融解が補助される。断熱材41は、空気層41aの代わりに真空層を有していてもよい。
【0057】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2の蓄熱装置1cの断面図である。蓄熱装置1cは、特に説明する部分を除き蓄熱装置1aと同様に構成されている。蓄熱装置1aの構成要素に対応する蓄熱装置1cの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、蓄熱装置1cにも当てはまる。
【0058】
蓄熱装置1cにおいて、融解補助機構40は、潜熱蓄熱材20を融解させるときに、第三空間13の底部25を加熱する。このような構成によれば、潜熱蓄熱材20を融解させるときに中央部25cにおいて潜熱蓄熱材20が加熱され、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材20を短期間で十分に融解させることができる。
【0059】
図4に示す通り、融解補助機構40は、例えば、流路42aを含む。流路42aは、底部25の下方に形成されている。融解補助機構40は、潜熱蓄熱材20を融解させるときに流路42aにおいて熱媒体を通過させて底部25を加熱する。これにより、潜熱蓄熱材20を融解させるときに中央部25cの潜熱蓄熱材20が流路42aにおける熱媒体の流れによって加熱され、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解が補助される。
【0060】
図4に示す通り、流路42aは、第一空間11及び第二空間12に連通している。このような構成によれば、第一空間11に貯留された熱媒体の一部を流路42aに導くことができる。加えて、流路42aを通過した熱媒体を複数の伝熱管30を通過した熱媒体とともに蓄熱装置1cの外部に排出できる。例えば、第一空間11の底部に接するシェル10には、第一空間11と流路42aとを連通させる連通孔42pが形成されている。第二空間12の底部に接するシェル10には、第二空間12と流路42aとを連通させる連通孔42qが形成されている。流路42aには、第一空間11に貯留された熱媒体とは異なる熱媒体が供給されてもよい。
【0061】
図5は、蓄熱装置1cの変形例に係る蓄熱装置1dの断面図である。蓄熱装置1dは、特に説明する部分を除き蓄熱装置1cと同様に構成されている。蓄熱装置1cの構成要素に対応する蓄熱装置1dの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1cに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、蓄熱装置1dにも当てはまる。
【0062】
蓄熱装置1dにおいて、融解補助機構40は、例えば、ヒーター42bを含む。ヒーター42bは、第三空間13に対して中央部25cを選択的に加熱する。このような構成によれば、潜熱蓄熱材20を融解させるときに中央部25cの潜熱蓄熱材20がヒーター42bによって選択的に加熱され、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解が補助される。
【0063】
蓄熱装置1dにおいて、融解補助機構40は、例えば、第一空間11における熱媒体の温度が潜熱蓄熱材20の融解温度より高いときにヒーター42bを発熱させる。この場合、潜熱蓄熱材20を融解させるときにヒーター42bが発熱して、中央部25cの潜熱蓄熱材20が加熱される。これにより、その中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解が補助され、潜熱蓄熱材20の短期間で十分に融解させることができる。このように、潜熱蓄熱材20の融解が必要なときにヒーター42bが発熱するので、ヒーター42bの発熱に伴うエネルギー消費量を少なくできる。
【0064】
図5に示す通り、蓄熱装置1dは、例えば、温度センサ43a及び制御器45を備えている。温度センサ43aは、第一空間11における熱媒体の温度を検出する。制御器45は、ヒーター42bを制御する。制御器45は、例えば、ヒーター42bの制御のためのプログラムが実行可能に格納されたデジタルコンピュータである。
【0065】
蓄熱装置1dにおいて、融解補助機構40は、例えば、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の温度が所定温度以上であるときにヒーター42bの発熱を停止させる。この場合、第三空間13の底部25の中央部25cの潜熱蓄熱材20が融解温度に近づいたことに対応してヒーター42bの発熱が停止する。このため、潜熱蓄熱材20の融解が必要なときにヒーター42bの発熱に伴うエネルギー消費量を低くできる。
【0066】
ヒーター42bは、例えば、抵抗加熱器及び誘導加熱器等の電気加熱器である。ヒーター42bは、例えば、バッテリー47に接続されている。バッテリー47は、ヒーター42bに電力を供給する。融解補助機構40は、バッテリー47の充電状態が所定のレベル以上であるときにヒーター42bを発熱させる。これにより、バッテリー47の充電状態に合わせてヒーターの発熱を調節できる。融解補助機構40は、例えば、バッテリー47のstate of charge(SOC)が90%以上であるときにヒーター42bを発熱させる。なお、ヒーター42bは、バッテリー47以外の電源から電力の供給を受けてもよい。
【0067】
図6は、ヒーター42bの制御の一例を示すフローチャートである。図6に示す一連の処理は、例えば、蓄熱運転のときに実行される。ステップS11において、制御器45は、バッテリー47のSOCを示す情報を取得する、次に、ステップS12に進み、制御器45は、バッテリー47のSOCが所定のレベルP1以上であるか否かを判断する。ステップS12における判断が肯定的である場合、ステップS15に進む。ステップS12における判断が否定的である場合、ステップS13に進み、制御器45は、温度センサ43aによって検出された第一空間11における熱媒体の温度T1を示す情報を取得する。次に、ステップS14に進み、温度T1が潜熱蓄熱材20の融解温度Tmより高いか否かを判断する。ステップS14における判断結果が肯定的である場合、ステップS15に進む。ステップS14における判断結果が否定的である場合、ステップS13に戻る。
【0068】
ステップS15において、制御器45は、ヒーター42bを発熱させる。これにより、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解が補助される。次に、ステップS16に進み、制御器45は、温度センサ43bによって検出された中央部25cにおける潜熱蓄熱材の温度T2を示す情報を取得する。次に、ステップS17に進み、温度T2が所定温度Tf以上であるか否かを判断する。所定温度Tfは、例えば、Tm+α1である。Tmは、潜熱蓄熱材20の融解温度であり、α1は、例えば1℃以上5℃以下である。ステップS17における判断結果が肯定的である場合、潜熱蓄熱材20が十分に融解したと判断され、制御器45は、ステップS18に進んで、ヒーター42bの発熱を停止する。これにより、一連の処理が停止される。一方、ステップS17における判断結果が否定的である場合、ステップS16に戻る。
【0069】
例えば、ヒーター42bがバッテリー47以外の電源から電力の供給を受ける場合、ステップS11及びステップS12は、省略されてもよい。
【0070】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3の蓄熱装置1eの断面図である。蓄熱装置1eは、特に説明する部分を除き蓄熱装置1aと同様に構成されている。蓄熱装置1aの構成要素に対応する蓄熱装置1eの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、蓄熱装置1eにも当てはまる。
【0071】
蓄熱装置1eにおいて、複数の伝熱管30は、最下伝熱管30bを有する。最下伝熱管30bは、シェル10の内部において最も下側に位置する。融解補助機構40は、シェル10の内面14の第一部位14fを含んでいる。第一部位14fは、最下伝熱管30bの下方で最下伝熱管30bと向かい合っている。最下伝熱管30bと第一部位14fとの間の距離は、最下伝熱管30b以外の伝熱管30とシェル10の内面14との間の距離よりも小さい。このような構成によれば、最下伝熱管30bとシェル10の内面14との間の距離が相対的に小さくなるので、第三空間13の底部25の中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材20を短期間で十分に融解させることができる。
【0072】
図7に示す通り、第一部位14fは、例えば、突出部14tを有する。突出部14tは、中央部25cに向かって突出している。突出部14tによって最下伝熱管30bと第一部位14fとの間の距離を小さくでき、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解を補助できる。
【0073】
図8は、蓄熱装置1eの変形例に係る蓄熱装置1fの断面図である。蓄熱装置1fは、特に説明する部分を除き蓄熱装置1eと同様に構成されている。蓄熱装置1eの構成要素に対応する蓄熱装置1fの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1eに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、蓄熱装置1fにも当てはまる。
【0074】
図8に示す通り、蓄熱装置1fによれば、伝熱管30の長手方向における突出部14tの中心は、伝熱管30の長手方向における第三空間13の中心よりも第二空間12の近くに位置している。上記の通り、例えば、蓄熱装置3において、中央部25cのうち第二空間12により近い箇所で固相の潜熱蓄熱材20が残存しやすい。一方、蓄熱装置1fによれば、伝熱管30の長手方向において、突出部14tの中心が第三空間13の中心よりも第二空間12の近くに位置していることにより、潜熱蓄熱材20をより確実に短期間で十分に融解させることができる。
【0075】
図8に示す通り、第一仕切り15aは、例えば、最下伝熱管30bの一端部が配置された貫通孔を形成する筒状のカラー15cを有する。最下伝熱管30bの長手方向に沿ったカラー15cの断面は、湾曲しつつ第三空間13から第一空間11に向かって突出している。基準平面に垂直な方向における突出部14tと最下伝熱管30bとの間の距離aは、例えば、a<b1の条件を満たす。b1は、基準平面に垂直な方向におけるカラー15cの最外部から最下伝熱管30bまでの距離である。a<b1の条件が満たされることにより、突出部14tを容易に形成できる。aは、例えば、0.3b1以上である。
【0076】
図8に示す通り、第二仕切り15bは、例えば、最下伝熱管30bの一端部が配置された貫通孔を形成する筒状のカラー15dを有する。最下伝熱管30bの長手方向に沿ったカラー15dの断面は、湾曲しつつ第三空間13から第二空間12に向かって突出している。距離aは、例えば、a<b2の条件を満たす。b2は、基準平面に垂直な方向におけるカラー15dの最外部から最下伝熱管30bまでの距離である。a<b2の条件が満たされることにより、突出部14tを容易に形成できる。aは、例えば、0.3b2以上である。カラー15c及びカラー15dのそれぞれは、例えば、バーリング加工によって形成できる。
【0077】
(実施の形態4)
図9は、実施の形態4の蓄熱装置1gの断面図である。蓄熱装置1gは、特に説明する部分を除き蓄熱装置1aと同様に構成されている。蓄熱装置1aの構成要素に対応する蓄熱装置1gの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、蓄熱装置1gにも当てはまる。
【0078】
蓄熱装置1gにおいて、融解補助機構40は、潜熱蓄熱材20を融解させるときに、複数の伝熱管30からの放熱量を調整して中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解を補助する。
【0079】
蓄熱装置1gは、例えば、複数の伝熱管30は、第一伝熱管30mと、第二伝熱管30nとを有する。第一伝熱管30mは、複数の伝熱管30において第三空間13の底部25の近くに配置されている。第二伝熱管30nは、第一伝熱管30mの上方に配置されている。融解補助機構40は、潜熱蓄熱材20を融解させるときに、第一伝熱管30mからの放熱量を第二伝熱管30nからの放熱量よりも高くする。このような構成によれば、第一伝熱管30mからの放熱量が相対的に高く、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材20を短期間で十分に融解させることができる。本明細書において「放熱量」とは、単位時間に放出される熱量を意味し、ワット(W)の次元を有する。
【0080】
第一伝熱管30mの数は、1であってもよいし、2以上であってもよい。第一伝熱管30mは、例えば、基準平面に垂直な方向における第三空間13の中心よりも下方に配置されている。また、例えば、複数の伝熱管30における最下の伝熱管30が第一伝熱管30mに相当しうる。複数の伝熱管30が複数の第一伝熱管30m又は複数の第二伝熱管30nを有する場合、第一伝熱管30mからの放熱量及び第二伝熱管30nからの放熱量は、各伝熱管30からの放熱量である。
【0081】
蓄熱装置1gにおいて、融解補助機構40は、例えば、潜熱蓄熱材20を融解させるときに、第一伝熱管30mにおける熱媒体の流量を第二伝熱管30nにおける熱媒体の流量よりも大きくする。この場合、第一伝熱管30mにおける熱媒体の流量が相対的に大きいので、第一伝熱管30mからの放熱量が相対的に高くなる。その結果、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解が補助される。本明細書において「流量」は、例えば、単位時間における質量流量を意味し、kg/秒の次元を有する。
【0082】
図9に示す通り、蓄熱装置1gにおいて、融解補助機構40は、例えば、流入口17a及び流出口17bの少なくとも1つを含む。融解補助機構40は、流入口17a及び流出口17bの双方を含んでいてもよい。流入口17a及び流出口17bの少なくとも1つは、基準平面に垂直な方向における第三空間13の中心よりも下方に配置されている。この場合、比較的簡素な構成により、第一伝熱管30mからの放熱量を第二伝熱管30nからの放熱量よりも高く調節しやすい。流入口17a及び流出口17bの双方が基準平面に垂直な方向における第三空間13の中心よりも下方に配置されていてもよい。
【0083】
(実施の形態5)
図10は、実施の形態5の蓄熱装置1hの断面図である。蓄熱装置1hは、特に説明する部分を除き蓄熱装置1aと同様に構成されている。蓄熱装置1aの構成要素に対応する蓄熱装置1hの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、蓄熱装置1hにも当てはまる。
【0084】
蓄熱装置1hにおいて、融解補助機構40は、潜熱蓄熱材20を融解させるときに、複数の伝熱管30からの放熱量を調整して中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解を補助する。
【0085】
蓄熱装置1hにおいて、例えば、複数の伝熱管30は、第一伝熱管群30p及び第二伝熱管群30qを有する。第二伝熱管群30qは、複数の伝熱管30において第一伝熱管群30pの上方に配置されている。融解補助機構40は、第一伝熱管群30pにおける熱媒体の流量を、第二伝熱管群30qにおける熱媒体の流量よりも大きくする。蓄熱装置1hによれば、第一伝熱管群30pにおける熱媒体の流量が相対的に大きくなり、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解が補助される。第一伝熱管群30pにおける熱媒体の流量は、第一伝熱管群30pに属する伝熱管30における熱媒体の流量の合計である。第二伝熱管群30qにおける熱媒体の流量は、第二伝熱管群30qに属する伝熱管30における熱媒体の流量の合計である。
【0086】
図11に示す通り、第一伝熱管群30pに含まれる伝熱管30の数は、例えば、第二伝熱管群30qに含まれる伝熱管30の数より多い。また、第一伝熱管群30pに含まれる伝熱管30同士の距離は、第二伝熱管群30qに含まれる伝熱管30同士の距離より小さい。このような構成によれば、第一伝熱管群30pにおける熱媒体の流量が相対的に大きくなりやすい。第一伝熱管群30pは、例えば、基準平面に垂直な方向における第三空間13の中心よりも下方に配置されており、第二伝熱管群30qは、例えば、基準平面に垂直な方向における第三空間13の中心よりも上方に配置されている。
【0087】
(実施の形態6)
図12は、実施の形態6の蓄熱装置1iの断面図である。蓄熱装置1iは、特に説明する部分を除き蓄熱装置1aと同様に構成されている。蓄熱装置1aの構成要素に対応する蓄熱装置1iの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、蓄熱装置1iにも当てはまる。
【0088】
蓄熱装置1iにおいて、複数の伝熱管30は、第一伝熱管30mを有する。第一伝熱管30mは、第三空間13の底部25の近くに配置されている。図12に示す通り、第一伝熱管30mには、例えば、伝熱フィン35aが取り付けられている。融解補助機構40は、伝熱面35tを含む。伝熱面35tは、例えば、伝熱フィン35aの表面の少なくとも一部である。伝熱面35tは、第一伝熱管30mの長手方向において底部25のうち中央部25cに選択的に重なっている。加えて、伝熱面35tは、第一伝熱管30mの外面から中央部25cに接しているシェル10の内面14に向かって突出している。このような構成によれば、伝熱面35tにおける伝熱により中央部25cにおける潜熱蓄熱材20が加熱され、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の融解が補助される。その結果、潜熱蓄熱材20を短期間で十分に融解させることができる。
【0089】
伝熱面35tは、例えば、伝熱管30の長手方向における第三空間13の中心よりも第二空間12の近くに位置している。
【0090】
図12に示す通り、例えば、伝熱フィン35aの最下端とシェル10の内面14との間には隙間が形成されている。この場合、伝熱フィン35aによって、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20に熱が効率的に伝わりやすい。
【0091】
図13は、伝熱フィン35aの平面図である。伝熱フィン35aは、例えば、スリット35sを有する。スリット35sに第一伝熱管30mを嵌め込むことによって、第一伝熱管30mに伝熱フィン35aを容易に取り付けることができる。
【0092】
図14及び図15は、それぞれ、蓄熱装置1iの変形例に係る蓄熱装置1j及び1kの断面図である。蓄熱装置1j及び1kは、特に説明する部分を除き蓄熱装置1iと同様に構成されている。蓄熱装置1iの構成要素に対応する蓄熱装置1j及び1kそれぞれの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1iに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、蓄熱装置1j及び1kにも当てはまる。
【0093】
図14に示す通り、蓄熱装置1jにおいて、伝熱フィン35aの最下端は、シェル10の内面14に接触している。このような構成によれば、伝熱面35tの面積が大きくなりやすく、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20に熱が効率的に伝わりやすい。加えて、第一伝熱管30m、伝熱フィン35a、及びシェル10の内面14を移動した熱も中央部25cにおける潜熱蓄熱材20に伝わる。このように、多方向から中央部25cにおける潜熱蓄熱材20を加熱でき、潜熱蓄熱材20を短期間で十分に融解させることができる。
【0094】
図15に示す通り、蓄熱装置1kにおいて、伝熱フィン35aは、第三空間13を仕切るように構成されている。図16は、図15におけるVI-VI線を切断線とする蓄熱装置1kの断面図である。図16に示す通り、伝熱フィン35aは、例えば、複数の第一貫通孔36と、複数の第二貫通孔37とを有する。複数の第一貫通孔36にはそれぞれ複数の伝熱管30が配置されている。このような構成によれば、伝熱フィン35aによって複数の伝熱管30から中央部25cに向かって熱が移動しやすく、中央部25cを効果的に加熱しやすい。その結果、潜熱蓄熱材20を短期間で十分に融解させることができる。
【0095】
伝熱フィン35aによって仕切られた2つの空間は、複数の第二貫通孔37によって連通している。これにより、潜熱蓄熱材20の結晶化の伝播が可能になっている。
【0096】
伝熱フィン35aは、例えば、シェル10の内面14に接触している。伝熱フィン35aはシェル10に接合されていてもよい。このような構成によれば、伝熱フィン35aによってシェル10が補強されるので、シェル10の厚みを小さくしやすい。なお、シェル10の厚みとは、シェル10の外径と内径との差の半値である。
【0097】
(実施の形態7)
図17は、実施の形態7の蓄熱装置1lの断面図である。蓄熱装置1lは、特に説明する部分を除き蓄熱装置1aと同様に構成されている。蓄熱装置1aの構成要素に対応する蓄熱装置1lの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。蓄熱装置1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、蓄熱装置1lにも当てはまる。
【0098】
図17に示す通り、蓄熱装置1lは、第一温度センサ51をさらに備えている。第一温度センサ51は、第一空間11から第二空間12へ複数の伝熱管30の内部を通過する熱媒体からの放熱によって潜熱蓄熱材20を融解させるときに、中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の温度を検出する。蓄熱装置1lによれば、潜熱蓄熱材20が溶解しにくい中央部25cにおける潜熱蓄熱材20の温度を第一温度センサ51によって検出でき、潜熱蓄熱材20が十分に融解したことを精度良く判断できる。
【0099】
第一温度センサ51は、例えば、伝熱管30の長手方向における第三空間13の中心よりも第二空間12の近くに位置している潜熱蓄熱材20の温度を検出する。このような構成によれば、より確実に、潜熱蓄熱材20が十分に融解したことを精度良く判断できる。
【0100】
蓄熱装置1lは、融解補助機構40を備えていてもよいし、融解補助機構40を備えていなくてもよい。
【0101】
図17に示す通り、蓄熱装置1lは、例えば、演算回路60をさらに備えている。演算回路60は、潜熱蓄熱材20を融解させるときに、第三空間13において潜熱蓄熱材20が十分に融解したことを判断する。演算回路60は、第一温度センサ51によって検出された潜熱蓄熱材20の温度が所定温度以上であるときに、潜熱蓄熱材20が十分に融解したと判断する。このように、蓄熱装置1lによれば、第一温度センサ51の検出結果に基づいて潜熱蓄熱材20が十分に融解したことを精度良く判断できる。演算回路60は、第一温度センサ51によって検出された潜熱蓄熱材20の温度が所定温度以上であるときに、潜熱蓄熱材20が完全に融解したと判断してもよい。
【0102】
図18に示す通り、蓄熱装置1lは、例えば、第二温度センサ52をさらに備えている。第二温度センサ52は、熱媒体の温度を検出する。演算回路60は、例えば、温度Tiが第一の所定温度Tx以上であり、かつ、温度Tjが第二の所定温度Ty以上であるときに、潜熱蓄熱材20が十分に融解したと判断する。温度Tiは、第一温度センサ51によって検出された潜熱蓄熱材20の温度であり、温度Tjは、第二温度センサ52によって検出された熱媒体の温度である。例えば、中央部25cの近くに別の熱源が存在すること等の事情があるときに、第一温度センサ51の検出結果のみに基づくと、潜熱蓄熱材20の十分な融解が誤って判断される可能性がある。一方、蓄熱装置1lによれば、第一温度センサ51及び第二温度センサ52の検出結果に基づいて潜熱蓄熱材の十分な融解を判断でき、潜熱蓄熱材が十分に融解したことを精度良く判断できる。なお、第一温度センサ51の検出結果のみに基づいて潜熱蓄熱材20の十分な融解が判断されてもよい。演算回路60は、例えば、温度Tiが第一の所定温度Tx以上であり、かつ、温度Tjが第二の所定温度Ty以上であるときに、潜熱蓄熱材20が完全に融解したと判断してもよい。
【0103】
所定温度Txは、例えばTm+α2である。Tmは、潜熱蓄熱材20の融解温度であり、α2は、例えば1℃以上5℃以下である。所定温度Tyは、例えばTm+βである。βは、例えば1℃以上5℃以下である。
【0104】
第二温度センサ52は、例えば、第二空間12における熱媒体の温度を検出する。これにより、より確実に、潜熱蓄熱材20が十分に融解したことを精度良く判断できる。
【0105】
図18は、蓄熱装置1lにおいて潜熱蓄熱材20の十分な融解を判断するための処理の一例を示すフローチャートである。まず、ステップS21において、演算回路60は、第一温度センサ51の検出温度Tiを示す情報を取得する。次に、ステップS22に進み、演算回路60は、第二温度センサ52の検出温度Tjを示す情報を取得する。次に、ステップS23に進み、演算回路60は、Ti≧TxかつTj≧Tyの条件が成立するか否かを判断する。ステップS23における判断結果が肯定的である場合、演算回路60は、潜熱蓄熱材20が十分に融解したと判断し、ステップS24に進んで、潜熱蓄熱材20の十分な融解を示す信号を外部に出力し、一連の処理が終了する。一方、ステップS24における判断結果が否定的である場合、ステップS21に戻る。これにより、潜熱蓄熱材20の十分な融解を精度良く判断できる。
【符号の説明】
【0106】
1a、1b、1c、1d、1e、1f 蓄熱装置
1g、1h、1i、1j、1k、1l 蓄熱装置
10 シェル
11 第一空間
12 第二空間
13 第三空間
14 内面
14f 第一部位
14t 突出部
17a 流入口
17b 流出口
20 潜熱蓄熱材
25 底部
25c 中央部
30 伝熱管
30b 最下伝熱管
30m 第一伝熱管
30n 第二伝熱管
30p 第一伝熱管群
30q 第二伝熱管群
31 外面
35t 伝熱面
40 融解補助機構
41 断熱材
41a 空気層
42a 流路
42b ヒーター
51 第一温度センサ
52 第二温度センサ
60 演算回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図14
図15
図16
図17
図18