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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/08 20060101AFI20241211BHJP
   F25D 25/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
F25D17/08 308
F25D25/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020203281
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090778
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147304
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 知哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148493
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】端山 雅文
(72)【発明者】
【氏名】川浪 徹
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-185404(JP,A)
【文献】特開2014-115038(JP,A)
【文献】特開平10-300311(JP,A)
【文献】特開平09-113124(JP,A)
【文献】特開2001-272152(JP,A)
【文献】特開2005-172303(JP,A)
【文献】特開平07-286770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 17/08
F25D 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口、及び前記第1開口よりも前方に形成された第2開口を有し、収容空間を形成する収容室と、
前記第2開口を介して前記収容空間に進入し、前記第1開口を介して、前記収容空間から排出される気流を生成するファンと、を備え、
前記収容室は、上面が開口した矩形箱状に形成されており、前記収容空間内に引き出し可能に設けられるケースを含み、
前記ケースが前記収容空間内に収容された状態で、前記ケースの前記開口が前記収容室の上板部によって塞がれて前記収容空間を閉鎖空間とするとともに、前記ケースの前板部と前記上板部との間に前記第2開口が形成され、
前記第1開口は、前記収容室の一部である背板部における上部および前記ケースの後板部の上方に形成されている、
冷蔵庫。
【請求項2】
前記第1開口は、前記第2開口と前後方向に対向する位置から左右方向にずれた位置に形成されている、
請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記第2開口を開閉するシャッター部を更に備える、
請求項1または2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記第2開口の周囲には、前記シャッター部の開閉位置の目盛が設けられている、
請求項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記第1開口を介して前記収容空間から排出された気流が流れるダクトを更に備え、
前記ダクトは、上昇部と下降部とを含むトラップ部を有し、
前記上昇部は、前記第1開口から上方に向かって延びており
前記下降部は、前記上昇部よりも気流の下流側に形成され、下方に向かって延びている
請求項1~4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記収容室である第1収容室の外側に形成され、第3開口を有する第2収容室と、
前記収容空間に位置する第1吸湿部、及び前記第3開口を塞ぐ第2吸湿部を含む感湿部材と、を更に備え、
前記ファンによって生成される気流の一部は、前記第1開口及び前記第2開口を通過する第1分岐気流と、前記感湿部材及び前記第3開口を通過する第2分岐気流と、に分岐され、
前記感湿部材は、湿度が高いほど通気性が低い
請求項1~5のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜室に出し入れ可能な野菜ケースを備える冷蔵庫が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の冷蔵庫では、野菜ケースの上部に蓋体を被装し密閉することにより、同野菜ケース内に収容した野菜類の水分が蒸発することを防止して、この野菜類の保存に適した湿度を保っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-75346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の冷蔵庫では、野菜ケースに収納された野菜から発生した水分によって、野菜ケース内の空間(収容空間)の湿度が高くなり、野菜ケース(収容室)に結露が発生するおそれがあった。
【0006】
本開示の主な目的は、収容室の結露の発生を抑制することができる冷蔵庫を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る冷蔵庫は、第1開口、及び前記第1開口よりも前方に形成された第2開口を有し、収容空間を形成する収容室と、前記第2開口を介して前記収容空間に進入し、前記第1開口を介して、前記収容空間から排出される気流を生成するファンとを備えている。また、前記第1開口は、前記収容室の背板部における上部に形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る冷蔵庫の正面図である。
図2図2は、同上の冷蔵庫における扉を取り外した状態の正面図である。
図3図3は、同上の冷蔵庫におけるダクト及びファンの構成を示す正面図である。
図4図4は、同上の冷蔵庫におけるケースが引き出された状態の正面図である。
図5図5は、気流を説明するための冷蔵庫の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0010】
(実施形態)
本実施形態の冷蔵庫1について、以下に図1図4を参照して説明する。
【0011】
冷蔵庫1は、一面が開口した矩形箱状の筐体10と、筐体10の開口を開閉する扉11及び扉12と、を備えている。以下の説明では、筐体10の長手方向を上下方向(第3方向)、筐体10の短手方向を左右方向(第2方向)、上下方向及び左右方向に直交する方向を前後方向(第1方向)とする(図1図5参照)。本実施形態では、筐体10の前面が開口しており、この開口を開閉するように扉11,扉12が設けられている。ただし、これらの方向は、説明のために便宜上規定した方向であって、使用時の方向を限定する趣旨ではない。
【0012】
筐体10は、断熱壁によって構成され、前面が開口した矩形箱状に形成されている。筐体10には、筐体10の内部空間を上下方向に分割する底板部13が設けられている。底板部13により、筐体10の内部空間は、上側の冷蔵収容空間14と、下側の冷凍収容空間15に分割されている。
【0013】
冷蔵収容空間14は、筐体10内における底板部13よりも上方の空間であり、温度が例えば4℃程度に保たれる。扉11は、ヒンジにより筐体10に連結されており、冷蔵収容空間14を開閉するように構成されている。
【0014】
また、図2に示すように、冷蔵収容空間14には、底板部13と上下方向に対向するように上板部16が設けられている。上板部16は、上面に食品などの収容物を配置できる棚板である。上板部16と底板部13との間には、野菜収容空間2(収容空間)が形成されている。野菜収容空間2には、引出し型のケース3が設けられており、ケース3内に野菜等の収容物を収容することができる。ケース3は、上面が開口した矩形箱状に形成されており、前板部30と、後板部31と、一対の側板部32と、底部33と、を有する(図5参照)。ケース3を野菜収容空間2から引き出すことにより、ケース3の開口を介して野菜などの収容物を出し入れすることができる。また、ケース3が野菜収容空間2に入れられることにより、ケース3の開口が上板部16によって塞がれ、野菜収容空間2を閉鎖空間とすることができる。野菜収容空間2は、閉鎖されることによって、冷蔵収容空間14における野菜収容空間2以外の空間に比べて、湿度を高く保つことができる。これにより、野菜などの乾燥を抑制することができる。なお、野菜収容空間2の詳細な構成については後述する。
【0015】
野菜収容空間2に収容される収容物は、野菜に限らず、例えば果物などの青果物であってもよいし、加工食品であってもよいし、調味料等であってもよいし、食品以外であってもよい。また、冷蔵収容空間14には、上板部16以外にも、複数の棚板が設けられており、野菜収容空間2の上方の空間が複数の棚板によって仕切られている。
【0016】
冷凍収容空間15は、筐体10内における底板部13よりも下方の空間であり、温度が例えば-18℃程度に保たれる。扉12は、ヒンジにより筐体10に連結されており、冷凍収容空間15を開閉するように構成されている。
【0017】
また、冷蔵庫1は、冷蔵収容空間14及び冷凍収容空間15内の空気を冷やす冷却機構を備えている。冷却機構は、冷媒を気化した際の気化熱を利用して、冷蔵収容空間14及び冷凍収容空間15内の空気を冷やすように構成されている。冷却機構は、圧縮機(コンプレッサ)、エバポレータ(蒸発器)などを備えている。
【0018】
圧縮機は、筐体10の断熱壁の外側に配置されている。具体的に、圧縮機は、筐体10の後端、かつ下端に形成された凹部に配置されている。圧縮機は、冷媒を圧縮することにより、冷媒を高温かつ高圧の気体にする。圧縮機から出力された冷媒は、凝縮器(コンデンサー)、及び毛細管(キャピラリーチューブ)を介してエバポレータに送られる。凝縮器は、圧縮機から送られてきた高温かつ高圧の気化冷媒を放熱することにより、常温かつ高圧の液体冷媒にする。毛細管は、冷媒が気化しやすいように液体冷媒の流量を制限する。
【0019】
エバポレータは、毛細管から送られてきた液体冷媒を膨張させて気化する。液体冷媒が気化する際の気化熱により、エバポレータの周囲の空気が冷やされる。エバポレータで気化された冷媒は、圧縮機に送られ、圧縮機により再び圧縮される。エバポレータは、例えば冷凍収容空間15の後方に配置されている。
【0020】
また、図3に示すように、冷蔵庫1は、エバポレータによって冷却された空気を冷蔵収容空間14に循環させるためのダクト4、及びファン5を備えている。
【0021】
筐体10の内部空間は、背面部が二重構造となっており、冷蔵収容空間14に面する背板部6の後方にダクト4が設けられている。ダクト4は、冷蔵収容空間14に冷気を循環させる流路を形成しており、送りダクト41と、戻りダクト42と、を有する。
【0022】
送りダクト41は、エバポレータが配置された空間と冷蔵収容空間14とを繋ぐように構成されている。送りダクト41は、エバポレータによって冷却された空気を冷蔵収容空間14に送る流路を形成している。送りダクト41は、背板部6の後方において、左右方向の略中央部を上下方向に沿って延びるように形成されており、冷蔵収容空間14に連続する複数の吹出口43を有している。複数の吹出口43は、背板部6における上端近傍に設けられている。なお、送りダクト41は、図3等に示した複数の吹出口43以外の吹出口を更に有していてもよい。
【0023】
戻りダクト42は、エバポレータが配置された空間と冷蔵収容空間14とを繋ぐように構成されている。戻りダクト42は、冷蔵収容空間14を通過した空気をエバポレータが配置された空間に戻す流路を形成している。戻りダクト42は、背板部6の後方において、左端部を上下方向に沿って延びるように形成された本体部44と、正面視において逆U字状に形成されたトラップ部45と、を有している。トラップ部45は、上昇部46と下降部47と接続部48とを有している。上昇部46は、気流が上方に向かって流れる流路を形成している。下降部47は、上昇部46よりも下流側に形成されており、気流が下方に向かって流れる流路を形成している。下降部47の一端は、本体部44に繋がっている。接続部48は、上昇部46と下降部47とを繋ぐように形成されている。
【0024】
上昇部46の一端には、冷蔵収容空間14に連続する第1戻り口461(第1開口)が形成されている。第1戻り口461は、背板部6における上板部16よりも下方に形成されている。つまり、第1戻り口461は、野菜収容空間2を形成する野菜収容室21(第1収容室)に形成されている。
【0025】
戻りダクト42には、冷蔵収容空間14に連続する第2戻り口421(第3開口)が形成されている。第2戻り口421は、背板部6における上板部16よりも上方に形成されている。つまり、第2戻り口421は、野菜収容室21の外側(上側)に形成された冷蔵収容室101(第2収容室)に形成されている。
【0026】
なお、戻りダクト42は、第1戻り口461及び第2戻り口421以外の戻り口を更に有していてもよい。
【0027】
ファン5は、送りダクト41内に配置されている。ファン5は、送りダクト41内において上方に向かう気流を発生させるように構成されている。
【0028】
図3では、送りダクト41及び戻りダクト42に流れる気流を、矢印を用いて模式的に記載している。ファン5により、エバポレータによって冷却された空気が送りダクト41を上方に向かって流れ、複数の吹出口43を介して冷蔵収容空間14に吹出される。そして、冷蔵収容空間14に吹出された気流は、冷蔵収容空間14を通過して第1戻り口461又は第2戻り口421を介して戻りダクト42に進入し、エバポレータが配置された空間に還流する。これにより、エバポレータによって冷却された空気が、送りダクト41及び戻りダクト42を介して冷蔵収容空間14を循環する。同様に、エバポレータによって冷却された空気は、冷凍収容空間15も循環する。
【0029】
また、本実施形態の冷蔵庫1では、背板部6は、冷却プレート61を有している。冷却プレート61は、樹脂よりも熱伝導性が良い。本実施形態では、冷却プレート61は、良熱伝導性の金属により形成されている。より具体的には、冷却プレート61は、ステンレスにより形成されている。冷却プレート61は、上下方向を長手方向とする矩形状に形成されており、冷蔵収容空間14に面するように設けられている。また、冷却プレート61は、上端部が吹出口43に隣接するように、下端部が野菜収容空間2にまで跨るように位置している。つまり、冷却プレート61は、吹出口43近傍の冷気を伝熱しやすくなっている。冷却プレート61は、送りダクト41を流れる冷気や吹出口43近傍の冷気によって冷却されるため、冷蔵収容空間14よりも低い温度になりやすい。そのため、例えば扉11が開けられて、温かく湿った空気が冷蔵収容空間14に進入した場合、この空気によって冷却プレート61が結露しやすくなる。冷却プレート61に発生した結露水によって、冷蔵収容空間14を加湿することができ、食料品などの乾燥を抑制することができる。なお、冷却プレート61は、金属のみで形成された構成に限らず、例えば樹脂の表面に金属がコーティングされた構成であってもよい。
【0030】
また、本実施形態の冷蔵庫1は、図4に示すように、感湿部材7を備えている。感湿部材7は、通気性及び吸湿性を有している。感湿部材7は、配置される空間の湿度に応じて、通気性が変化するように構成されており、湿度が高いほど通気性が低くなる性質を有している。本実施形態では、感湿部材7は、シート状の繊維であり、例えば不織布、紙、フェルト、布等である。感湿部材7は、吸湿した水分によって繊維間の隙間が低減することで、通気性が低くなる。
【0031】
感湿部材7は、矩形状に形成されており、冷蔵収容室101と野菜収容室21とに跨るように配置されている。感湿部材7は、第1吸湿部71と第2吸湿部72とを有する。第1吸湿部71は、感湿部材7における野菜収容室21に位置している部分であり、一部が冷却プレート61と接している。第2吸湿部72は、感湿部材7における冷蔵収容室101に位置している部分であり、第2戻り口421を塞いでいる。また、第2吸湿部72の一部は、冷却プレート61と接している。第1吸湿部71と第2吸湿部72とは一体に形成されている。
【0032】
次に、野菜収容空間2の詳細な構成について説明する。
【0033】
野菜収容空間2は、上板部16と底板部13との間の空間であって、野菜収容室21により形成されている。野菜収容室21は、野菜収容空間2を囲む構造体であって、筐体10の側壁103、背板部6、及びケース3それぞれの一部と、上板部16と、底板部13と、を含む。ここでいう側壁103の一部とは、側壁103における上板部16と底板部13との間の部分である。また、背板部6の一部とは、背板部6における上板部16と底板部13との間の部分である。ケース3の一部とは、ケース3における前板部30である。野菜収容室21は、野菜収容空間2を囲むことにより、野菜収容空間2を閉鎖空間としている。ここでいう閉鎖空間とは、完全に密閉された空間ではなく、通気のための開口、部材間の隙間などがある状態を含む。
【0034】
上述したように、野菜収容室21の一部である背板部6には、第1戻り口461(第1開口)が形成されている。第1戻り口461は、野菜収容室21における背板部6の上部に形成されている。野菜収容室21における背板部6の上部とは、背板部6において野菜収容室21を形成している部分のうち、上下方向の中心よりも上方の部分である。第1戻り口461は、背板部6において野菜収容室21を形成している部分のうち、上端から1/4の領域内に形成されていることが好ましく、1/8の領域内に形成されていることがより好ましい。
【0035】
さらに、第1戻り口461は、背板部6における左右方向の中心からずれた位置に形成されている。本実施形態では、第1戻り口461は、背板部6における左右方向の中心よりも左側にずれた位置に形成されている。
【0036】
また、図2に示すように、野菜収容室21は、野菜収容空間2に気流を流入させる流入口301(第2開口)を更に有している。流入口301は、第1戻り口461よりも前方に形成されている。本実施形態では、流入口301は、ケース3の前板部30に形成されている。流入口301は、前板部30における上部に形成されている。前板部30における上部とは、前板部30の上下方向の中心よりも上方の部分である。流入口301は、前板部30における、上端から1/4の領域内に形成されていることが好ましく、1/8の領域内に形成されていることがより好ましい。
【0037】
さらに、流入口301は、前板部30における左右方向の中心からずれた位置に形成されている。具体的には、流入口301は、前板部30における左右方向の中心よりも右側にずれた位置に形成されている。本実施形態では、前板部30における左右方向の中心と、背板部6における左右方向の中心とが、前後方向に重なるとする。したがって、前板部30に形成された流入口301と、背板部6に形成された第1戻り口461とは、左右方向にずれている(図2参照)。言い換えれば、第1戻り口461は、前板部30における流入口301と前後方向に対向する位置から左右方向にずれた位置に形成されている。
【0038】
また、流入口301は、左右方向を長手方向とする矩形状に形成されている。本実施形態の冷蔵庫1は、流入口301を開閉するシャッター部8を更に備えている。シャッター部8は、可動板81と、つまみ82と、を有している。
【0039】
可動板81は、矩形板状に形成されており、前板部30の後面に配置されている。可動板81は、全閉位置と全開位置との間で左右方向に移動可能に構成されている。全閉位置は、可動板81の可動範囲の右限であって、可動板81が流入口301を全体的に覆う位置である。全開位置は、可動板81の可動範囲の左限であって、可動板81が流入口301を全体的に開放する位置である。
【0040】
つまみ82は、可動板81と機械的に接続されており、前板部30の前方に突出している。ユーザは、つまみ82を摘まんで可動板81を左右方向に移動させることにより、シャッター部8の開閉位置を任意に変更することができる。シャッター部8の開閉位置に応じて、流入口301を介して野菜収容空間2に流入する気流の量が変化する。
【0041】
また、流入口301の周囲には、シャッター部8の開閉位置の目盛9が設けられている。本実施形態では、目盛9は、流入口301の下端に沿って設けられており、つまみ82の位置に対応したシャッター部8の開閉度合いを示している(図2参照)。また、目盛9は、「DRY」、「HUMID」、及び「NOMINAL」という文字表記を含んでいる。「DRY」は、シャッター部8の全開位置に対応する位置に設けられており、野菜収容空間2の湿度が低くなりやすい(乾燥しやすい)状態であることを示す。「HUMID」は、シャッター部8の全閉位置に対応する位置に設けられており、野菜収容空間2の湿度が高くなりやすい(湿潤となりやすい)状態であることを示す。「NOMINAL」は、シャッター部8の全開位置と全閉位置との間の位置に設けられており、標準的な野菜の収容状態において野菜収容空間2が野菜の収容に適した湿度になりやすい状態であることを示す。野菜の収容に適した湿度とは、例えば、野菜収容室21が結露しにくい範囲内でより高い湿度である。
【0042】
次に、冷蔵収容空間14における気流について、図5を参照して説明する。なお、図5は、気流を説明するための冷蔵庫1の概略図であって、開口、ダクト4等の構成が他の図と異なっている。図5では、矢印を用いて、気流を模式的に記載している。
【0043】
ファン5によって送りダクト41を上昇するように生成された気流は、吹出口43を介して冷蔵収容空間14に吹出される。冷蔵収容空間14に吹出された気流の一部は、第1分岐気流51と、第2分岐気流52とに分岐される。第1分岐気流51は、流入口301を介して野菜収容空間2に進入し、第1戻り口461を介して野菜収容空間2から排出される気流である。第2分岐気流52は、感湿部材7及び第2戻り口421を介して冷蔵収容室101から排出される気流である。
【0044】
具体的には、シャッター部8が流入口301を開いている場合、第1分岐気流51は、ケース3の前板部30に形成された流入口301を介して野菜収容室21に進入し、背板部6に形成された第1戻り口461を介して野菜収容室21から排出される。つまり、第1分岐気流51は、野菜収容空間2を前後方向に通過するように流れる。
【0045】
ここで、野菜収容室21に野菜などの青果物を収容している場合、青果物から放出される水分によって野菜収容空間2の湿度が過剰に高くなるおそれがある。空気は、湿度が高いほど軽くなる性質を有している。これは、水分子の質量が、空気中の他の分子(窒素分子、酸素分子など)の質量よりも軽く、湿度が高くなるほど空気中の水分子の割合が増えるためである。したがって、野菜収容空間2において、上層空間の湿度は、下層空間の湿度よりも高くなる。
【0046】
本実施形態では、野菜収容室21における上部の領域に、流入口301及び第1戻り口461が形成されている。したがって、第1分岐気流51は、野菜収容空間2における上層を流れる。これにより、第1分岐気流51によって、野菜収容空間2における湿度が比較的高い空気が、第1戻り口461を介して排出されることとなる。そのため、野菜収容空間2の湿度が過剰に高くなることが抑制され、野菜収容室21に結露が発生することが抑制される。また、流入口301から流入する空気は比較的乾燥しており、第1分岐気流51が上板部16に沿って流れるため、上板部16に結露が発生することをより抑制することができる。
【0047】
また、流入口301と第1戻り口461とは、左右方向の位置が互いにずれている。したがって、流入口301と第1戻り口461との左右方向の位置が一致している場合に比べて、流入口301と第1戻り口461との間の距離が長くなる。つまり、第1分岐気流51が野菜収容空間2を通過する経路が長くなる。本実施形態では、野菜収容室21の左右方向の中心に対して、流入口301が右側に形成され、第1戻り口461が左側に形成されている(図2参照)。したがって、第1分岐気流51が野菜収容空間2を対角線上に流れることとなる。これにより、野菜収容空間2における湿度が高い空気を効率よく排出することができ、結露の発生をより抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態の冷蔵庫1は、流入口301を開閉するシャッター部8を備えており、シャッター部8の開閉位置を調整することにより、流入口301を介して野菜収容空間2に流入する第1分岐気流51の空気量を調整することができる。流入口301の開口面積を増大させるほど、第1分岐気流51の空気量が増加するので、野菜収容空間2の湿度が低減しやすくなる。また、流入口301の開口面積を低減させるほど、第1分岐気流51の空気量が低減するので、野菜収容空間2の湿度が低減しにくくなる。また、シャッター部8を全閉位置とすることで、流入口301を介して野菜収容空間2に流入する空気の量を略ゼロとすることができる。このように、シャッター部8の開閉位置を調整することで、ユーザが野菜収容空間2の湿度を調整することができる。
【0049】
また、本実施形態では、シャッター部8の開閉度合いを示す目盛9が設けられている。したがって、ユーザは、シャッター部8の開閉度合いを把握しやすくなるので、野菜収容空間2の湿度の調整をしやすくなる。さらに、目盛9は、「DRY」、及び「HUMID」という文字表記を含んでいる。これにより、ユーザが、シャッター部8をどのように移動させれば、湿度が増減するかを視覚的に認識することができるので、利便性が向上する。また、目盛9は、「NOMINAL」という文字表記を含んでいる。これにより、ユーザは、「NOMINAL」の位置を基準にして、シャッター部8の開閉位置を調整することで、野菜収容空間2の湿度の調整が容易となる。
【0050】
また、第1戻り口461から排出された第1分岐気流51は、トラップ部45を通過する。つまり、第1戻り口461から排出された第1分岐気流51は、上昇部46で一旦上昇した後、下降部47で下降する。したがって、第1分岐気流51に含まれる湿度が高い空気は、上昇部46と下降部47との間(接続部48)に留まりやすくなる。これにより、野菜収容空間2から湿度が高い空気が排出され過ぎることを抑制され、野菜収容空間2の乾燥を抑制することができる。例えば、シャッター部8による流入口301の閉鎖度合いが大きい場合に、トラップ部45によって野菜収容空間2から湿度が高い空気の流出が抑制されることによって、野菜収容空間2の乾燥を抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態の冷蔵庫1は、感湿部材7を備えている。感湿部材7は、野菜収容室21に位置する第1吸湿部71と、冷蔵収容室101に位置し第2戻り口421を塞ぐ第2吸湿部72と、が一体に形成されている。第1吸湿部71は、野菜収容室21内において冷却プレート61と接触している。冷却プレート61は、野菜収容室21よりも低い温度になりやすい。そのため、野菜収容空間2の湿度が高い場合、冷却プレート61に結露が発生しやすくなる。野菜収容空間2において、冷却プレート61に結露が発生した場合、第1吸湿部71は、結露によって生じた水を吸収する。冷却プレート61の下端部に結露水を受ける樋部を設けて、第1吸湿部71が結露水を効率よく吸収できるようにしてもよい。第1吸湿部71によって吸収された水は、第1吸湿部71と一体に形成されている第2吸湿部72に浸透する。そのため、第2戻り口421を塞いでいる第2吸湿部72の通気性が低減する。これにより、第2戻り口421を介して、冷蔵収容室101から排出される第2分岐気流52の空気量が低減する。吹出口43から冷蔵収容空間14に吹出される気流の空気量が一定であるとした場合、第2分岐気流52の空気量が低減することによって、野菜収容空間2を通過する第1分岐気流51の空気量が相対的に増加する。また、第1吸湿部71及び第2吸湿部72が乾燥している場合、第2吸湿部72の通気性が高まるので、相対的に、第2分岐気流52の空気量が増加し、第1分岐気流51の空気量が低減する。
【0052】
したがって、野菜収容空間2の湿度が高い場合、第1分岐気流51の空気量が増加するので、野菜収容空間2の湿度が低減しやすくなる。一方、野菜収容空間2の湿度が低い場合、第1分岐気流51の空気量が低減するので、野菜収容空間2の湿度が増加しやすくなる。つまり、本実施形態の冷蔵庫1は、感湿部材7を備えることによって、野菜収容空間2の湿度に応じて、野菜収容空間2を通過する第1分岐気流51の空気量が変動するので、野菜収容空間2の湿度をパッシブ制御することができる。
【0053】
(変形例)
以下に、本実施形態の冷蔵庫1の変形例について列挙する。
【0054】
上述した例では、野菜収容室21には1つの第1戻り口461のみが形成されていたが、複数の第1戻り口461が形成されていてもよい。同様に、野菜収容室21には1つの流入口301のみが形成されていたが、複数の流入口301が形成されていてもよい。
【0055】
また、上述した例では、第1戻り口461と流入口301との左右方向の位置がずれていたが、少なくとも一部が左右方向の位置が重なっていてもよい。
【0056】
また、上述した例では、流入口301は、ケース3に形成されていたが、流入口301が形成される構造体はケース3に限らない。流入口301は、第1戻り口461よりも前方であればよく例えば、上板部16に形成されていてもよいし、上板部16の前端から下方に突出した突出部に形成されていてもよい。
【0057】
また、冷蔵庫1において、シャッター部8、目盛9、トラップ部45、及び感湿部材7は、それぞれ必須の構成ではなく、一部が省略されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 冷蔵庫
101 冷蔵収容室(第2収容室)
2 野菜収容空間(収容空間)
21 野菜収容室(収容室,第1収容室)
301 流入口(第2開口)
4 ダクト
45 トラップ部
46 上昇部
461 第1戻り口(第1開口)
47 下降部
421 第2戻り口(第3開口)
5 ファン
51 第1分岐気流
52 第2分岐気流
6 背板部
7 感湿部材
71 第1吸湿部
72 第2吸湿部
8 シャッター部
9 目盛
図1
図2
図3
図4
図5