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特許7602358駆動ベルト用の横断セグメントならびに横断セグメントおよびリングスタックを有する無段変速機用の駆動ベルト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】駆動ベルト用の横断セグメントならびに横断セグメントおよびリングスタックを有する無段変速機用の駆動ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 5/16 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
F16G5/16 C
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020204069
(22)【出願日】2020-12-09
(65)【公開番号】P2021092319
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】1043501
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】コルネリス ヨハネス マリア ファン デル メーア
(72)【発明者】
【氏名】マウト フルーナー
(72)【発明者】
【氏名】ロブ ペトルス マリア ヴァン フーク
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-179626(JP,A)
【文献】特表2020-503484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動ベルト(6)用の横断セグメント(10)であって、前記駆動ベルト(6)には、複数の互いに重ねられたバンドから成るリングスタック(9)と、該リングスタック(9)に一列に可動に配置された複数の横断セグメント(10)とが設けられており、該横断セグメント(10)は、前記リングスタック(9)を収容するためのスロット(33)を画定しており、該スロット(33)は、半径方向内方において、前記リングスタック(9)の半径方向内側を支持するために前記横断セグメント(10)のベース部分(13)の支持面(42)によって画定されており、前記横断セグメント(10)は、さらに、前記駆動ベルト(6)に組み込まれたときに前記リングスタック(9)の半径方向外側に配置される部分(15;17)を有し、該部分(15;17)において、突出部(40)が、前記横断セグメント(10)の前面(11)に設けられておりかつ空洞(41)が、前記横断セグメント(10)の、反対側に配置された後面(12)に設けられている、横断セグメント(10)において、前記突出部(40)は、前記前面(11)において、前記後面(12)における前記空洞(41)の位置に対して半径方向内側に位置決めされており、その際、前記突出部(40)の半径方向内側は前記空洞(41)の半径方向内側に対して半径方向内側に配置されていることを特徴とする、横断セグメント(10)。
【請求項2】
前記横断セグメント(10)の前記突出部(40)および前記空洞(41)には主に円筒形の形状が設けられており、前記突出部(40)の外径は前記空洞(41)の内径より小さく、前記突出部(40)の中心線(CA40)は前記空洞(41)の中心線(CA41)の半径方向内側に配置されており、その際、両中心線の間の半径方向の相互距離は、前記突出部(40)と前記空洞(41)との直径差の半分より大きいことを特徴とする、請求項1記載の横断セグメント(10)。
【請求項3】
半径方向の前記距離は、0.035mm~0.100mmの範囲の値を有することを特徴とする、請求項2記載の横断セグメント(10)。
【請求項4】
前記横断セグメント(10)には、半径方向に凸状に湾曲させられておりかつ前記横断セグメント(10)の幅に沿って半径方向に対して垂直に延びる、前記横断セグメント(10)の前記前面(11)の領域の形態の傾斜エッジ(18)が設けられていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の横断セグメント(10)。
【請求項5】
前記横断セグメント(10)の前記支持面(42)と前記後面(12)との間の角度は、90度より小さいことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の横断セグメント(10)。
【請求項6】
駆動ベルト(6)であって、複数の互いに重ねられたバンドから成るリングスタック(9)と、該リングスタック(9)に横断セグメント(10)の列で可動に配置された請求項1から5までのいずれか1項記載の横断セグメント(10)とが設けられており、前記横断セグメント(10)の突出部(40)が、前記横断セグメント(10)の前記列におけるそれぞれの隣接する横断セグメント(10)の空洞(41)に配置されている、駆動ベルト(6)において、少なくとも該駆動ベルト(6)の直線セクションにおいて、前記横断セグメント(10)は前記リングスタック(9)に対して後方へ傾斜させられ、前記横断セグメント(10)の後面(12)と前記リングスタック(9)との間の角度(β)が90度未満であることを特徴とする、駆動ベルト(6)。
【請求項7】
前記横断セグメント(10)の支持面(42)と前記後面(12)との間の角度が、90度から、前記横断セグメントが前記リングスタック(9)に対して後方へ傾斜させられた前記角度(β)を引いた角度であることを特徴とする、請求項6記載の駆動ベルト(6)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのプーリおよび駆動ベルトを備えた無段変速機用の駆動ベルトの一部を構成するための横断セグメントに関する。このような駆動ベルトは、国際公開第2015/063132号より公知であり、互いに重ねられた複数の連続的な金属バンド、すなわち、それぞれ平坦でかつ薄いリングのスタックに取り付けられた、一列の金属横断セグメントを有する。横断セグメントは、横断セグメントがリングスタックの周囲に沿って移動することを許容しながら、リングスタックを収容しかつリングスタックのそれぞれの周囲セクションを閉じ込めるための、スロットを画定している。この特定のタイプの駆動ベルトは、プッシュタイプ駆動ベルトまたはプッシュベルトも呼ばれる。
【0002】
以下の説明では、軸方向、半径方向および周方向は、駆動ベルトが変速機の外側に円形の状態で配置されたときの駆動ベルトに関して規定される。さらに、横断セグメントの厚さ寸法は駆動ベルトの周方向で規定され、横断セグメントの高さ寸法は前記半径方向で規定され、横断セグメントの幅寸法は前記軸方向で規定される。
【0003】
公知の各横断セグメントは、ベース部分、中間部分および上側部分を有する。横断セグメントの中間部分は半径方向に延びており、横断セグメントの前記ベース部分と前記上側部分とを接続している。ベース部分と上側部分との間において、横断セグメントの中間部分のそれぞれの側には、駆動ベルトのそれぞれのリングスタックを収容するためのそれぞれのスロットが画定されている。各スロットにおいて、スロットの半径方向外側に面した底面は、半径方向外側方向においてリングスタックと接触しかつリングスタックを支持する。横断セグメントのベース部分に関連したスロットのこれらの底面は、以下では支持面と呼ばれる。
【0004】
駆動ベルトの横断セグメントの列において、横断セグメントの(ベルト回転方向に面した)本体前面の少なくとも一部は、前記列においてそれぞれ先行する横断セグメントの(ベルト回転方向に関して後方に面した)本体後面の少なくとも一部に当接する一方、横断セグメントの本体後面の少なくとも一部は、それぞれ後続する横断セグメントの本体前面の少なくとも一部に当接する。横断セグメントの本体前面および本体後面のうちの少なくとも一方、例えば、本体前面は、軸方向に延びた、凸状に湾曲した表面部分を有する。この湾曲した表面部分は、本体前面を、互いに所定の角度で向けられた半径方向外側表面部分と半径方向内側表面部分とに分割している。駆動ベルトにおける当接する横断セグメントは互いに対して傾斜することができる一方、このような湾曲した表面部分において互いに接触したままであり、この湾曲した表面部分は、以下では傾斜エッジと呼ばれるが、当該技術分野ではロッキングエッジとも呼ばれる。傾斜エッジが設けられていることにより、駆動ベルトの横断セグメントの列は、トランスミッションプーリによって強制されるリングスタックの局所的湾曲に追従することができる。
【0005】
横断セグメントには、さらに、突出部、すなわち本体前面から突出したスタッドと、空洞、すなわち本体後面に凹まされた穴とが設けられている。駆動ベルトの横断セグメントの列において、前記後続の横断セグメントの突出部は前記先行する横断セグメントの空洞に少なくとも部分的に配置され、これにより、駆動ベルトの周方向に対して垂直な平面における、当接する横断セグメントの個々の移動が、防止されるまたは少なくとも空洞の内側のスタッドの遊びに限定される。一般的に、突出部および空洞は、同じ全体形状、例えば、主に、僅かな円錐形状、すなわちテーパを備える円筒形のものである。しかしながら、突出部は空洞に収容されるので、突出部は空洞より幾分小さくサイズ決めされており、これにより、駆動ベルトにおいて、全ての方向において突出部の外周と空洞の内周との間に間隙が存在する。特に、前記主に円筒形の形状の場合、突出部の高さおよび直径は、空洞の深さおよび直径より小さい。
【0006】
空洞内の突出部のこのような間隙に関して、特開2000-179626号公報は、摩耗を抑制するために突出部の上側より突出部の下側においてより小さな間隙を設定することを開示している。特に、前記主に円筒形の形状の場合、このような間隙設定は、突出部を横断セグメントにおいて空洞より幾分低く位置決めすることによって実現され、この場合、突出部の中心線は空洞の中心線の半径方向内側に配置される。
【0007】
完全性のために、国際公開2018/210456号のような、駆動ベルトの現時点で考慮されるタイプの代替的な設計が当該技術分野において公知であることに留意されたい。この代替的な駆動ベルト設計は、各横断セグメントの中央に配置された1つの開口に配置された1つのリングスタックのみを有する。この中央開口は駆動ベルトの半径方向外側に向かって開放しており、したがって、ベース部分と、それぞれベース部分のそれぞれの側から半径方向外方へ伸びた横断セグメントの2つのピラー部分とによって、ベース部分とピラー部分との間に画定されている。このタイプの横断セグメントにも、一般的に、ベース部分において中央に設けられたおよび/または2つの例では、各ピラー部分に1つが設けられた上述の突出部および空洞の対が設けられている。
【0008】
これらの公知の駆動ベルトの作動中、変速機における駆動ベルトの回転方向で見て、相対的に先行する横断セグメントは、後続の横断セグメントに対して回転する。なぜならば、相対的に先行する横断セグメントは、プーリ間に配置された駆動ベルトの直線軌道部分から、プーリにおける駆動ベルトの湾曲軌道部分へ横断するからである。特に、前記湾曲軌道部分において、横断セグメントは、以下のように、湾曲した軌道部分の曲率半径Rrおよび横断セグメントの厚さtによって求められるまたは少なくとも近似することができる傾斜角度αで互いに向けられる:
α[deg]=(180・t)/(π・Rr) (1)
2つの連続する横断セグメントのこのような相対的に回転させられた向きにおいて、2つの連続する横断セグメントは、後続の横断セグメントの傾斜エッジにおいて相互接触したままであることができる。傾斜エッジは、鋭角のエッジではなく凸状の湾曲によって規定されているので、連続する横断セグメントが互いに対して回転したとき、先行する横断セグメントは後続の横断セグメントの傾斜エッジ上で転がるのみならず、このような傾斜エッジ上で半径方向外側へスライドするということを幾何学的に導き出すことができる。理論上このような半径方向のスライドは傾斜エッジの僅かな摩耗および僅かなベルト内部摩擦損失を生じるが、これらの影響は実際には最小限である。
【0009】
しかしながら、本発明によれば、これまでに気づかなかった、このような半径方向スライドの結果として別の効果が生じる。すなわち、本発明の基礎となるものは、このような半径方向スライドが減じられることによって、横断セグメントとプーリとの間の摩擦が驚くべきことに、プーリの回転方向、すなわち接戦方向においても増大するという観察である。この別の効果は、もちろん、変速機がより高いトルクを伝達するまたは駆動ベルトとプーリとの間のより少ない垂直抗力で作動することを許容するという点で極めて好ましい。
【0010】
本発明によれば、横断セグメントの前記半径方向スライドを減じるための好ましい方法は、突出部の半径方向内側、すなわち下側が空洞の半径方向内側の半径方向内側、すなわち下側に配置される程度に突出部を横断セグメントにおいてより低く位置決めすることによって、横断セグメントを、駆動ベルトの直線軌道部分において、駆動ベルトのリングスタックに対して後方へ傾斜した位置に互いに配置することである。この手段によって、プーリの間の直線において移動するときでさえも、横断セグメントは、(より高いところに位置する)空洞内への突出部の強制された挿入により、駆動ベルトにおける横断セグメントの列において後方へ傾斜させられる。したがって、横断セグメントはこのような後方へ傾斜した向きにおいてプーリに進入し、これにより、横断セグメントの前記半径方向スライドが好ましくは減じられるかつ/または接戦方向におけるプーリとの横断セグメントの摩擦が好ましくは増大される。
【0011】
横断セグメントの前記後方傾斜の別の効果は、変速機における駆動ベルトの作動によって、特に横断セグメントが次々にプーリと接触することによって生じる騒音が、好ましくは(最大マイナス10dBだけ)減じられるということである。本発明のこの予想しなかった、しかし非常に有利な副次的効果は、プーリに進入するときにリングスタックに対してほぼ垂直、すなわちプーリに対して半径方向に向けられた横断セグメントと比較して、後方へ傾斜させられた横断セグメントはより漸進的にプーリに進入し、これにより、横断セグメントとプーリとの初期接触がより瞬間的であるという状況に起因することができる。
【0012】
特に突出部および空洞の前記主に円筒形の形状の場合、本発明によれば、突出部の中心線は、突出部と空洞との間の半径方向間隙より大きい量CLOだけ空洞の中心線の半径方向内側に配置されている。この半径方向間隙は、空洞の直径(内径)Dhと、突出部の直径(外径)Dpとの差の半分によって近似することができ、これにより、所要の中心線オフセット量CLOは以下のように規定される:
CLO≧0.5・(Dh-Dp) (2)
空洞および突出部は一般的に最小限テーパされている、すなわち僅かに円錐形であるので、空洞の直径Dhおよび突出部の直径Dpは、横断セグメントの本体後面および本体前面それぞれに対して垂直な等しい距離において比較されることに留意されたい。
【0013】
式(2)による中心線オフセット量CLOによって、横断セグメントは、プーリにおける湾曲軌道部分に進入するとき、以下のように求められるまたは少なくとも近似することができる傾斜角度βで半径方向に対して後方へ傾斜させられる:
β=arctan((CLO-0.5・(Dh-Dp))/t) (3)
本発明の好ましい実施形態において、上方限界および下方限界は、以下のようにこのような傾斜角度βのために規定される:
(180・t)/(π・Rmax)≦β[deg]≦(180・t)/(π・Rmin) (4)
ここで、Rminは、変速機において生じる駆動ベルトの湾曲軌道部分の最小半径を表し、Rmaxは、その最大半径を表す。
【0014】
しかしながら、より好ましくは、傾斜角度βは、式(4)によって規定される上方限界の半分以下である。結局、前記上方限界と下方限界との間の半分の傾斜角度は既に、前記半径方向スライドの平均値を最小限に減じる。さらにより好ましくは、横断セグメントを後方へ傾斜させるために突出部に作用する力などの、本発明の望ましくない副作用を最小限に減じるために、傾斜角度βは、式(4)によって規定される下方限界と等しく設定される。
【0015】
例えば、77mmのRr_max値と、1.5mmのt値とを有する典型的な駆動ベルトの場合、本発明は、傾斜角度βが好ましくは1度の値を有することを規定する。突出部と空洞との間の典型的な0.025mmの半径方向間隙との組み合わせにおいて、式(3)は、0.050mmの中心線オフセット量CLOを規定する。この点において、中心線オフセット量CLOに対する実際に適用可能な値は、0.035mm~0.100mmの範囲にある。
【0016】
ここで上述の発明および発明の基礎となる技術的作動原理を図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】2つのプーリ上を走行する駆動ベルトを備える無段変速機の概略的な斜視図である。
図2】周方向に向けられた公知の駆動ベルトの概略的な断面図である。
図3】公知の駆動ベルトの横断セグメントの概略的な幅方向に向けられた図である。
図4】本発明に従って設計されかつ図5および図6に示された新規の横断セグメントを有する駆動ベルトの直線軌道部分の概略図である。
図5】駆動ベルトの周方向に向けられた駆動ベルトの概略的な断面図における、本発明による新規の横断セグメントの正面図である。
図6図5に示された新規の横断セグメントの詳細の拡大図である。
図7】本発明の基礎となる作動原理を概略的に示す図である。
図8】本発明によってもたらされる有利な技術的効果と公知技術との対比を示すグラフである。
図9図5のものに代わる、駆動ベルトの基本設計において実施された時の本発明を示す図である。
【0018】
特に、これらの図面は概略的であり、特に縮尺どおりに描かれていないことに留意されたい。
【0019】
図1は、自動車の原動機と駆動輪との間で自動車において利用するなどのための、無段変速機を概略的に示している。無段変速機は、概して、参照符号1によって示されている。無段変速機1は、2つのプーリ2,3と、プーリ2,3の周囲に閉ループで設けられた駆動ベルト6とを有する。各プーリ2,3には、プーリ軸4と、2つのプーリシーブ7,8とが設けられており、そのうち第1のプーリシーブ7はそれぞれのプーリ2,3のプーリ軸4に固定されており、そのうち第2のプーリシーブ8は、このようなプーリ軸4に対して軸方向に移動可能であるのに対して、回転方向ではプーリ軸4に固定されている。変速機1の作動中、駆動ベルト6は、各プーリ2,3において、各プーリ2,3のそれぞれのプーリシーブ7,8によってかつそれぞれのプーリシーブ7,8の間に走行半径Rrで締め付けられ、この走行半径Rrは、プーリ2,3のプーリシーブ7,8を互いに向かってもしくは互いから離れるように移動させることによって変速機の速度比を変化させるために変化させることができる。
【0020】
駆動ベルト6は、以下ではリングスタック9と呼ばれる、互いに半径方向に積み重ねられた連続的なバンドまたはリングの2つのセットを有する。駆動ベルト6の横断セグメント10はリングスタック9上に配置されており、リングスタック9の全周に沿ってほぼ隣接した列を形成している。単純にするために、これらの横断セグメント10のうちの幾つかのみが図1に示されている。
【0021】
横断セグメント10は、少なくともリングスタック9の周囲に沿って、リングスタック9に対して可動に設けられている。その結果、摩擦によってかつ横断セグメント10が互いに対して押し付け合いかつプーリ2,3の回転方向でリングスタック9の周囲に沿って互いに前方へ押すことによって、変速機プーリ2,3の間でトルクを伝達することができる。駆動ベルト6の横断セグメント10およびリングスタック9(のリング)は、一般的に、鋼から形成されている。この特定のタイプの変速機1およびその作動原理はそれ自体周知である。
【0022】
図2には、駆動ベルト6の典型的な実施形態が、駆動ベルト6の長さまたは周方向Cに向けられた、すなわち駆動ベルト6の幅または軸方向Aおよび高さまたは半径方向Rに対して垂直に向けられた断面図で示されている。図3において、図2の横断セグメント10のみが、軸方向Aにおける側面図で示されている。
【0023】
図2では、リングスタック9が断面図で示されており、駆動ベルト6の1つの横断セグメント10が正面図で示されている。リングスタック9は、この場合、それぞれ5つの個々の平坦で、薄く、柔軟な無端リング5から成り、これらの無端リング5は、それぞれのリングスタック9を形成するために、半径方向Rにおいて互いに同心状に積み重ねられている。しかしながら、実際には、これらのリングスタック9はしばしば6つ以上の無端リング5、例えば、9または12または場合によってはさらに多くの無端リングを含む。
【0024】
図2および図3において、横断セグメント10は、半径方向Rにおいて順に、主に台形のベース部分13と、比較的狭い中間部分14と、主に三角形の上側部分15とを有するように示されている。中間部分14のそれぞれの側において、ベース部分13と上側部分15との間にスロット33が画定されており、これらのスロット33にリングスタック9が収容されている。各スロット33において、ベース部分13の半径方向外側に面した支持面42は、作動中、それぞれのリングスタック9の半径方向内側と接触する。
【0025】
横断セグメント10の本体前面は概して参照符号11によって示されているのに対し、横断セグメント10の本体後面は概して参照符号12によって示されている。駆動ベルト6において、横断セグメント10の本体前面11の少なくとも一部は、それぞれの先行する横断セグメント10の本体後面12の少なくとも一部に当接するのに対し、横断セグメント10の本体後面12の少なくとも一部は、それぞれの後続の横断セグメント10の本体前面11の少なくとも一部に当接する。
【0026】
横断セグメント10は、その接触面37によって、各プーリ2,3のシーブ7,8の間に加えられる締付力を受け取り、1つのこのような接触面37が横断セグメント10の軸方向の各側に設けられている。これらの接触面37は、半径方向外方に向かって互いに広がっており、これにより、接触面37の間に、ベルト角度φと呼ばれる鋭角が規定されており、この鋭角は、プーリ2,3のプーリシーブ7,8の間に規定されたプーリ角度θと厳密に一致する。
【0027】
横断セグメント10には、前面11から突出した突出部40と、後面12に設けられた対応する空洞41とが設けられている。駆動ベルト6において、後続の横断セグメント10の突出部40は先行する横断セグメント10の空洞41に少なくとも部分的に配置され、これにより、駆動ベルト6の周方向Cに対して垂直な平面におけるこれらの連続する横断セグメント10間の相対移動が防止されるまたは少なくとも制限される。添付の図面において、突出部40および空洞41は円筒形に示されているが、異なる形状の突出部40および空洞41も公知である。特に、これらに僅かな円錐形、すなわちテーパを提供することが当該技術分野において慣習である。いずれの場合にも、突出部40の外周と空洞41の内周との間に(すなわち、全ての方向において対称的に)10~30ミクロンの公称間隙が一般的に設けられている。
【0028】
横断セグメント10の前面11において、傾斜エッジ18が画定されている。傾斜エッジ18は、前面11の凸状に湾曲した領域によって表され、この領域は、半径方向Rにおいて前記前面11の2つのセクションを分離しており、これらの2つのセクションは、互いに所定の角度で向けられており、これにより、傾斜エッジ18の下側、すなわち傾斜エッジ18の半径方向内側において横断セグメント10がテーパさせられている。傾斜エッジ18の重要な機能は、連続する横断セグメント10がプーリ2,3において互いに対して僅かに回転させられた、すなわち傾斜位置になったとき、連続する横断セグメント10の間の相互押付接触を提供することである。図2の設計実施形態において、傾斜エッジ18は横断セグメント10のベース部分13に配置されているが、傾斜エッジ18を少なくとも部分的に横断セグメント10の中間部分14に配置することも公知である(図9)。
【0029】
傾斜エッジ18の重要な機能は、横断セグメント10が僅かに回転させられた、すなわちプーリ2,3において互いに対して傾斜した位置にあるとき、駆動ベルト6の列における当接する横断セグメント10の間の相互押付接触を提供することである。特に、連続する横断セグメント10の対の先行する横断セグメント10がプーリ2,3の2つのプーリシーブ7,8の間に進入したとき、先行する横断セグメント10は、まだプーリ2,3に進入していない前記対の後続の横断セグメント10に対して回転させられるが、先行する横断セグメント10の後面12は後続の横断セグメント10の前面11における傾斜エッジ18において接触したままである。後続の横断セグメント10の傾斜エッジ18の曲率半径はゼロではないので、連続する横断セグメント10が互いに対して次第に回転するにつれて、連続する横断セグメント10の間の軸方向に向けられた接触線は半径方向内方へ移動させられる。後続の横断セグメント10の傾斜エッジ18は凸状に湾曲させられておりかつ先行する横断セグメント10の後面12は平坦であるため、このような半径方向内方移動はこれらの横断セグメント10にとって同じではない。したがって、連続する横断セグメント10が半径方向Rにおいて整列したままであるためには、これらの横断セグメント10が互いに対して回転するとき、これらの横断セグメントの間にスライドが生じる。このようなスライド運動は最小限でしかないが、本発明に従って減じられた後、変速機の性能に対する顕著な好ましい効果が観察された(図8参照)。
【0030】
本発明によれば、駆動ベルト6の直線セクション、すなわち軌道部分において、横断セグメント10を図4に示したように後方へ傾斜した位置に配置することによって、前記スライド運動を好ましくは減じることができる。このために、突出部40の半径方向内側、すなわち下側が空洞41の半径方向内側より半径方向内側、すなわち下側に配置される程度に、横断セグメント10の突出部40がより下側に、すなわち横断セグメント10の空洞41の半径方向内側に位置決めされており、この新規の横断セグメント設計は図5に示されている。この場合、駆動ベルト6の横断セグメント10の列において横断セグメントが互いに押し付けられながら、それぞれの後続の横断セグメント10の突出部40が、それぞれの先行する横断セグメント10の(より高い位置にある)空洞41内へ強制的に挿入されたとき、これらの横断セグメント10は周方向Cに対して、すなわちリングスタック9に対して後方へ傾斜させられる。
【0031】
さらに、本発明によれば、特に本発明の例示された円筒形の場合、図6に詳細に示したように、突出部40の中心線CA40から空洞41の中心線CA41へ、半径方向内方へのオフセットCLOをこのために適用することができ、このオフセットCLOは、空洞41の直径と突出部40の直径との差の半分の値を超えている、すなわち、それらの間の前記公称間隙を超えている。
【0032】
図7において、横断セグメント10の後方傾斜の効果、すなわち本発明の基礎となる作動原理が図によって示されている。図7の各図A~Fは、それぞれの後続の横断セグメント10aの支持面42を備えるベース部分13の位置における傾斜エッジ18を備える前面11と、それぞれの先行する横断セグメント10bの支持面42を備えるベース部分13の位置における後面12とを示している。図7の上側の列を構成する図A,BおよびCは、従来の横断セグメント10、特に2つの連続する横断セグメント10a,10bの接触を示している。図Aにおいて、連続する横断セグメント10a,10bは、平行な、駆動ベルト6の直線軌道部分における駆動ベルト6の周方向Cに対してほぼ垂直の、垂直配列において互いに整列して示されており、連続する横断セグメント10a,10bは、後続の横断セグメント10aの傾斜エッジ18の上端部における、少なくとも軸方向に向けられた第1の接触線LC1を介して相互接触している。図Bにおいて、連続する横断セグメント10a,10bは、プーリ2,3において駆動ベルト6の湾曲軌道部分において互いに傾斜させられて示されている。この傾斜配置において、連続する横断セグメント10a,10bは、後続の横断セグメント10aの傾斜エッジ18の延在範囲内で、すなわち軸方向に向けられた第1の接触線LC1の半径方向内側で、軸方向に向けられた第2の接触線LC2を介して相互接触している。
【0033】
しかしながら、図7図AおよびBに示された連続する横断セグメント10a,10bの間の傾斜は、後続の横断セグメント10aの(凸状に湾曲した)傾斜エッジ18上での先行する横断セグメント10bの(平坦な)後面12の純粋な転がりではなく、スライド運動によって伴われなければならない。さもないと、すなわち純粋な転がり運動の場合、図Cに示したように、先行する横断セグメント10bの支持面42は、後続の横断セグメント10aの接触線(LC2-10a)よりも、第2の接触線LC2-10bからさらに半径方向へ離れて配置され、これは、プーリ2,3によって許容されず、そのシーブ7,8は、駆動ベルト6のそれぞれの湾曲軌道部分において横断セグメント10の共通の半径方向位置を課す。
【0034】
しかしながら、本発明によれば、連続する横断セグメント10a,10bの間の接触線の半径方向内方移動を均一化することによって前記スライド運動を減じることが可能でありかつ好ましい。図7の下側の列を構成する図D,EおよびFは、この均一化を達成する新規の横断セグメント10を示す。
【0035】
図Dにおいて、2つの連続する新規の横断セグメント10a,10bは、それらの間の第1の接触線LC1によって駆動ベルト6の直線軌道部分において互いに平行に整列させられて示されている。公知の駆動ベルト6と対照的に、これらの新規の横断セグメント10a,10bは、傾斜角度βで駆動ベルト6の周方向Cに対して後方へ傾斜させられている。図Eにおいて、これらの新規の横断セグメント10a,10bは、それらの間の第2の接触線LC2によってプーリ2,3における駆動ベルト6の湾曲軌道部分において互いに傾斜させられて示されている。図Fに示したように、これらの新規の横断セグメント10a,10bの支持面42は、前記第2の接触線LC2から対応する半径距離に配置されており、これにより、好ましくは、それらの間にスライド運動は必要ないまたは少なくとも正味のスライド運動は必要ない。特に、新規の横断セグメント10の後方傾斜によって、傾斜エッジ18における第1および第2の接触線LC1,LC2の間の半径方向距離は増大されているのに対し、後面12におけるこのような半径方向距離は減じられている。
【0036】
図7、特に図7図Fにおいても、本発明による横断セグメント10の別の特徴が示されている。すなわち、新規の横断セグメント10の支持面42は、好ましくは、横断セグメント10の後面12に対して90度より小さい角度で向けられている。この形式において、駆動ベルト6の直線軌道部分における横断セグメント10の後方傾斜が少なくとも部分的に補償され、これにより、リングスタック9に対して平行な支持面42の好ましい向きに近づく。好ましくは、これに関連して、支持面42は、90度から前記傾斜角度βを引いた角度で向けられる。
【0037】
図8において、本発明によってもたらされる有利な技術的効果と公知技術との対比が示されている。図8は、駆動ベルト6がプーリ2,3の間でトルクTを伝達することができる効率に反比例するパラメータSが、伝達されるトルクTの大きさに対してプロットされている図である。図8における点線CBは、従来の駆動ベルト6によって得られた測定結果を表し、実線NBは、本発明による新規の駆動ベルト6によって得られた測定結果を表す。図8は、新規の駆動ベルト6が、トルクTと共に増大する効率利益と共に、ほぼ全トルクT範囲にわたってより良い性能を発揮することを視覚化している。さらに、図8において、新規の駆動ベルト6が、従来の駆動ベルト6が伝達することができるよりも僅かに高い最大トルクTを伝達することができることが観察される。
【0038】
本発明は、中間部分14のそれぞれの側に配置された2つのリングスタック9を備える図1図6に示された横断セグメント10の基本設計に限定されない。むしろ、本発明は、少なくとも1つのリングスタック9に個々にかつ可動に取り付けられた横断セグメント10から成るあらゆるタイプの駆動ベルト6に適用可能である。これに関連して、図9は、1つのリングスタック9のみを有する異なるタイプの駆動ベルト6を断面図で示している。この場合、横断セグメント10には、横断セグメント10のベース部分13の軸方向各側から半径方向外方へ延びる横断セグメント10の2つのピラー部分17の間に配置された1つの中央の切欠き16が設けられている。このような各ピラー部分17は、リングスタック9を中央の切欠き16に閉じ込めるために、中央開口5上へ突出したフック部分18を有する。さらに、各ピラー部分17には突出部40および凹部41が設けられており、そのうち突出部40はそれぞれ、本発明に従って突出部40の下側エッジが空洞41の下側エッジより下側に配置されるような程度まで、それぞれのピラー部分17においてより低い位置に配置されている。
【0039】
本開示は、前記説明の全体および添付図面の全ての詳細に加えて、添付の請求項の全ての特徴に関しかつそれらの全ての特徴を含む。請求項における括弧書きの参照符号は、請求項の範囲を限定せず、単にそれぞれの特徴の拘束力のない例として提供されている。請求項に記載の特徴は、場合によっては、任意の製品または任意のプロセスにおいて別々に適用することができるが、任意の製品または任意のプロセスにおいて2つ以上のこのような特徴のあらゆる組み合わせを提供することも可能である。
【0040】
本開示によって表された発明は、本明細書に明確に言及された実施形態および/または実施例に限定されず、当業者が想到する実施形態の補正、改良および実用的適用も包含する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9