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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】外壁再塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 3/00 20060101AFI20241211BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241211BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20241211BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B05D3/00 Z
B05D7/00 L
B05D7/00 N
E04F13/02 K
E04F13/08 Y
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020205474
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022092647
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 勇人
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-048935(JP,A)
【文献】特開昭58-195660(JP,A)
【文献】特開平07-119273(JP,A)
【文献】特表2016-537526(JP,A)
【文献】特開2006-283446(JP,A)
【文献】特開2011-136288(JP,A)
【文献】特開平11-131743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
E04F 13/00-13/30
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁材どうしの合わせ目となる目地部に沿って補強材が取付けられ、前記外壁材および前記補強材の上に既存の塗膜が形成されてなる外壁を再塗装する外壁再塗装方法であって、
前記目地部から既存の前記補強材を剥がし、
既存の前記補強材を剥がした前記目地部に新規の補強材を取付け、
新規の前記補強材を取付けた部分に、前記外壁材の変位や変形に追従して弾性変形する柔軟性を備えた軟質塗膜、前記外壁材の変位や変形に耐える硬質塗膜のうちの既存の前記塗膜と同じ種類の調整用塗膜を形成することを特徴とする外壁再塗装方法。
【請求項2】
請求項1に記載の外壁再塗装方法であって、
既存の前記塗膜と前記調整用塗膜との上に、新規の塗膜を形成することを特徴とする外壁再塗装方法。
【請求項3】
請求項2に記載の外壁再塗装方法であって、
新規の前記塗膜は、前記硬質塗膜であることを特徴とする外壁再塗装方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の外壁再塗装方法が施された外壁構造であって、
外壁材どうしの合わせ目となる目地部に沿って新規の補強材が取付けられ、
前記外壁材の前記目地部以外の部分に既存の塗膜が残存され、
新規の前記補強材を取付けた部分に、前記外壁材の変位や変形に追従して弾性変形する柔軟性を備えた軟質塗膜、前記外壁材の変位や変形に耐える硬質塗膜のうちの既存の前記塗膜と同じ種類の調整用塗膜が形成されていることを特徴とする外壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外壁再塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建物では、新築時に外壁の表面を塗装することが行われている。そして、新築から年月が経過して建物が劣化したときに、建物の劣化の状況に応じて外壁に再塗装などのリフォームが行われる。
【0003】
このような、建物の外壁に対する再塗装は、既存の塗膜の上にそのまま重ねて行うのが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-204981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1の場合、既存の塗膜の上に重ねて再塗装を行うようにしていたが、既存の塗膜の状態が悪いと、そのまま上から重ねて再塗装してもうまく仕上がらないおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、上記した問題点の改善に寄与することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して、本発明は、
外壁材どうしの合わせ目となる目地部に沿って補強材が取付けられ、前記外壁材および前記補強材の上に既存の塗膜が形成されてなる外壁を再塗装する外壁再塗装方法であって、
前記目地部から既存の前記補強材を剥がし、
既存の前記補強材を剥がした前記目地部に新規の補強材を取付け、
新規の前記補強材を取付けた部分に、前記外壁材の変位や変形に追従して弾性変形する柔軟性を備えた軟質塗膜、前記外壁材の変位や変形に耐える硬質塗膜のうちの既存の前記塗膜と同じ種類の調整用塗膜を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記構成によって、外壁の既存の塗膜を再塗装によって良好な状態に修復することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施の形態にかかる外壁再塗装方法を行う建物の全体側面図である。
図2】既存の塗膜が形成された外壁の横断面図である。
図3】本実施の形態にかかる外壁再塗装方法を行った外壁構造を示す横断面図である。
図4】既存補強材除去工程を示す外壁の平面図である。
図5図4に続く既存補強材除去工程を示す外壁の斜視図である。
図6】新規補強材貼着工程を示す外壁の図である。このうち、(a)は外壁の斜視図、(b)は外壁の横断面図である。
図7図6に続く新規補強材貼着工程を示す外壁の図である。このうち、(a)は外壁の斜視図、(b)は外壁の横断面図である。
図8】建物の劣化の原因を説明するための建物の斜視図である。
図9】外壁材の繰返しの変形復帰の状態を示す建物の側面図である。このうち、(a)は変形前の状態または復帰状態、(b)は変形状態である。
図10】外壁の目地部に発生した亀裂部を示す建物の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
図1図10は、この実施の形態を説明するためのものである。
【実施例1】
【0011】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0012】
例えば、図1に示すような住宅などの建物1に対し、新築時に、図2の断面図に示すように、建物1の外壁2の表面を塗装する。
【0013】
そして、新築から年月が経過して建物1が劣化したときに、建物1の劣化の状況に応じて外壁2に再塗装などのリフォームを行う。
【0014】
ここで、建物1は、戸建住宅や集合住宅など何でも良い。建物1は、木造やコンクリート造りや鉄骨造りなど、どのような構造のものであっても良いが、ユニット建物とするのが好ましい。ユニット建物は、予め工場で製造された建物ユニット4を建築現場へ搬送して、建築現場で組立てることにより、短期間のうちに構築できるようにした建物1である。この実施例では、建物1は、下階の建物ユニット4の上に上階の建物ユニット4を積み重ねた二階建てとなっている。なお、建物1は、平屋建てとしても良いし、三階以上の多階建てとしても良い。
【0015】
新築時は、建物1を建築した時点である。
【0016】
外壁2は、建物1の屋外側に位置して、屋外側に向いた建物1の側面(外周面)である。外壁2は、表面を塗装することによって、外観意匠が整えられると共に、塗装によって紫外線や風雨から保護される。
【0017】
建物1の劣化は、例えば、紫外線による塗装(既存の塗膜6)の劣化、地震や強風に伴う横方向の外力(横力7)による建物1の繰返しの変形や復帰を原因とする塗装(既存の塗膜6)のヒビ割れ(亀裂部8)などのことである。
【0018】
再塗装は、既存の塗膜6が形成されている建物1の外壁2に対し、年月が経過したときに、新たな塗装を部分的または全体的に施して、外壁2を補修することである。なお、再塗装は、建物1が劣化したときや、建物1の保守計画に基づいたスケジュールに従って行うことができる。
【0019】
上記のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えることができる。
【0020】
(1)この実施例の外壁再塗装方法は、
図2のように外壁材11どうしの合わせ目となる目地部12に沿って補強材13が取付けられ、外壁材11および補強材13の上に既存の塗膜6が形成されてなる外壁2を、例えば、図3に示すように再塗装するものである(なお、図2図3とは、上下関係が逆になっている)。
この際、この実施例の外壁再塗装方法では、少なくとも、
図4図5に示すように、目地部12から既存の補強材13を除去する工程(既存補強材除去工程)と、
図6図7に示すように、既存の補強材13を除去した目地部12に新規の補強材14を取付ける工程(新規補強材貼着工程)と、
新規の補強材14を取付けた部分に既存の塗膜6と同じ種類の調整用塗膜15(図3)を形成する工程(調整用塗膜形成工程)とを行うようにする。
【0021】
ここで、外壁材11は、建物1の外壁2の下地となる建築資材である。外壁材11は、規格の大きさを有する板材が用いられており、規格寸法のままの状態、または、建物1に応じた所要の大きさや形状に切断したり、窓などの開口部のための穴あけなどの適宜の加工を行ったりした状態で、建物1に設置される。規格寸法のままの外壁材11は、長手方向を上下に向けた状態で縦向きに設置される。外壁材11は、建物1に対して、耐力壁となるように設置するのが好ましい。
【0022】
目地部12は、隣接する外壁材11どうしの側縁部間に形成される線状の合わせ目(合わせ線)であり、上下方向16に延びる。目地部12は、隣接する外壁材11どうしを直接突き合わせた状態で建物1に設置しても良いし、間にガスケットを介在させた状態で建物1に設置しても良い。
【0023】
そして、目地部12の位置は、既存の塗膜6に、図1に示すようなヒビ割れ(亀裂部8)が発生し易い場所となる。
【0024】
このような既存の塗膜6のヒビ割れは、例えば、図8に示すような、建物1に作用される横力7(地震や強風などに伴う横方向の外力)によって発生する。
【0025】
即ち、図9(a)(b)に示すように、上記した横力7により、建物1の外壁2を構成する耐力壁(横力7と平行な面を有する外壁材11)が横に変位や変形を起こして、隣接する耐力壁どうしが目地部12に沿って僅かにズレたり戻ったりする(ズレ17)。この小さなズレ17の動きが長期間に亘って繰返し行われた結果、目地部12に取付けた既存の補強材13などが耐えられなくなることで、図10に示すように、目地部12の位置の既存の塗膜6に、目地部12に沿ってほぼ上下方向16に延びる亀裂部8が発生される。
【0026】
既存の補強材13は、建物1の新築時に外壁2の目地部12に取付けられた補強用の建築資材であり(既存補強材または当初補強材)、隣接する外壁材11どうしの側面間を繋いで目地部12を補強する。既存の補強材13は、帯状またはテープ状とされて、外壁材11の目地部12に沿って、目地部12の上下方向16の全域に貼付けられる。既存の補強材13には、例えば、寒冷紗を基材とするものなどが使われていた。
【0027】
既存の塗膜6は、建物1の新築時に外壁2や既存の補強材13の表面に塗布形成された塗料の膜である(既存塗膜または当初塗膜)。既存の塗膜6は、外壁2の表面にほぼ均一な状態に形成される。既存の塗膜6は、どのようなものであっても良い。
【0028】
新規の補強材14は、既存の補強材13の代わりに、既存の補強材13を除去した後の外壁材11の目地部12に取付けられて目地部12に対する保護機能を回復させる補強用および機能回復用の建築資材である(新規補強材または更新用補強材)。新規の補強材14は、既存の補強材13と同じ幅や厚みを有する帯状またはテープ状のものを使用するのが好ましい。新規の補強材14は、外壁材11の目地部12に沿って、目地部12の上下方向16の全域に貼付けられる。新規の補強材14は、既存の補強材13と同じかそれよりも高性能のものを使用するのが好ましい。新規の補強材14には、外壁材11の変位や寸法変化などの変形に追従して応力を逃がし、更に、紫外線や熱に対する耐久性を高めた弾性目地テープを使うことができる。弾性目地テープは近年開発された新素材である。
【0029】
なお、新規の補強材14への貼替えは、実際に亀裂部8が発生した位置の既存の補強材13のみとしても良いし、実際に亀裂部8が発生した位置および今後亀裂部8の発生が予測される位置の既存の補強材13としても良いし、全ての既存の補強材13としても良い。
【0030】
新規の補強材14には、例えば、図6図7に示すように、幅方向の中心の位置に、新規の補強材14の長手方向に沿って延びる目印が、連続してまたは不連続に入っているものを使うのが好ましい。目印は、分かり易いように着色されたライン、例えば、赤いライン14aなどとすることができる。この赤いライン14aによって、新規の補強材14を目地部12に対して幅方向に位置ズレすることなく上下方向16に沿って正確に正しい位置に貼ることができる。新規の補強材14は、両面テープ状とされて、裏面に離型フィルム14bが取付けられても良い。
【0031】
調整用塗膜15は、外壁2の部分的な再塗装のために用いられる塗料であり、既存の塗膜6と同じ種類のものを使用する。既存の塗膜6の種類は、新築時のデータを使って特定することができる。既存の塗膜6と同じ種類の調整用塗膜15が入手できない場合には、同等の代替品を使用する。調整用塗膜15は、残存する既存の塗膜6と同化するように、既存の塗膜6と段差のない面一な状態に形成する。なお、調整用塗膜15の色は、既存の塗膜6の現在の色と同じ色に調整するのが好ましい。
【0032】
調整用塗膜15は、既存の塗膜6に外壁模様がある場合には、既存の塗膜6と同じ外壁模様に仕上げる。外壁模様は、立体的な凹凸形状を伴うものであり、例えば、スタッコ仕上げによるスタッコ状模様や、砂壁状模様や、波状模様や、ゆず肌状模様や、コテ跡による各種の左官模様など様々なものが存在している。これら外壁模様を、手間をかけて調整用塗膜15に設けることにより、調整用塗膜15は、既存の塗膜6の外壁模様に合った外壁模様合わせ塗装などとなる。
【0033】
そして、上記した既存補強材除去工程は、以下のようにして行う。
【0034】
まず、亀裂部8が生じた目地部12の既存の塗膜6に、図4に示すように、カッターナイフなどの切断工具18を用いて切込線19を入れる。切込線19は、外壁2と垂直な向きに形成しても良いが、斜め内向き(図2)となるような角度を付けて形成するのが好ましい。
【0035】
斜め内向きとは、上下方向16の同一位置において、外壁2と垂直な向きを基準として、外壁2の幅方向(水平方向)に対し、切込線19の屋内側が目地部12の近くに位置し、切込線19の屋外側が目地部12から遠くに位置するように傾斜した形状のことである。このように切込線19を斜め内向きに形成することで、既存の塗膜6の切込線19によって切断された端縁が先細り状に徐変した形状になるため、既存の塗膜6に対する調整用塗膜15のなじみを良くすることができる。
【0036】
切込線19は、目地部12に貼付けられた既存の補強材13の両側部または両側部の僅かに外側となる位置に、既存の補強材13の幅とほぼ同じか既存の補強材13の幅よりも若干広い幅となるように、既存の補強材13にほぼ沿って上下方向16に二本形成する。
【0037】
なお、切込線19は、亀裂部8の周辺に対して部分的に形成するのではなく、亀裂部8が発生した目地部12に沿った、外壁材11の目地部12の上下方向16の全域に亘って形成するのが好ましい。
【0038】
次に、図5に示すように、切込線19に沿って、既存の補強材13と切込線19の内側の既存の塗膜6とを同時に外壁2から引き剥がす。外壁2における、少なくとも亀裂部8が生じている目地部12の部分については、既存の補強材13は、残さずに上下方向16の全てを剥がすようにする。
【0039】
更に、亀裂部8が発生した位置の既存の補強材13に限らず、今後亀裂部8の発生が予測される位置の既存の補強材13や、全ての既存の補強材13についても、上記と同様にして既存の補強材13を剥がすようにしても良い。
【0040】
これらによって、外壁材11の側縁部における、既存の補強材13を剥がした目地部12の周辺部分が、目地部12の上下方向16の全域に亘って外部に露出される。そして、上記目地部12の周辺部分が、外壁材11のみの状態にリセットされる。
【0041】
そして、好ましくは、既存の補強材13を除去した外壁材11の目地部12の周辺部分に対し、以下のような下地処理を行う(下地処理工程)。
【0042】
まず、既存の補強材13の除去によって露出した外壁材11の表面に付着している塵埃,油分,汚れなどをきれいに除去する。
【0043】
そして、外壁材11が浮いている場合には、その部分に細かいピッチで釘を増し打ちして浮きを補修し、外壁材11どうしの突き合わせ部分および釘頭部に紫外線劣化防止剤を塗る。この際の注意事項として、釘にステンレス釘を使用する場合は、釘の頭部に対する紫外線劣化防止剤の塗布処理は不要とする。
【0044】
また、外壁材11どうしの突き合わせ部分の間に、例えば、2mm以上の隙間が存在している場合には、例えば、丸棒状の高発泡ポリエチレン充填材などの充填材を隙間に挿入して、隙間を埋めるようにする。
【0045】
更に、外壁材11の表面に、下塗りとして指定塗料をウーローラーなどの塗装治具で均一に塗布し、十分に乾燥させるようにしても良い。
【0046】
上記した新規補強材貼着工程は、以下のようにして行う。
【0047】
図6に示すように、新規の補強材14の離型フィルム14bのない側の面を、赤いライン14aが目地部12の中心と合うようにしつつ、外壁材11の目地部12の全域に沿って上下方向16に貼付ける。この際、新規の補強材14を、ウエスなどの柔らかい布を介して外壁材11の表面に強く押し付けることにより、外壁材11の表面に十分に圧着させた後、図7に示すように、新規の補強材14から離型フィルム14bを剥がす。
【0048】
この際の注意事項としては、新規の補強材14は、十分に圧着させるようにしないと、後々、調整用塗膜15などのフクレの原因になる。新規の補強材14は、必ず離型フィルム14bを剥がすようにする。新規の補強材14の厚みを、調整用塗膜15の膜厚を考慮して、既存の塗膜6と合うように設定しないと、仕上がり外観不良の原因となる。
【0049】
上記した調整用塗膜形成工程は、以下のようにして行う。
【0050】
既存の塗膜6と同じ塗料を、調整用塗膜15として新規の補強材14の上、および、新規の補強材14のテープエッジ(両側縁部)やその周辺の位置に塗布する。
【0051】
調整用塗膜15は、特に新規の補強材14のテープエッジを狙って丁寧に塗り込むことで、新規の補強材14のテープエッジと既存の塗膜6との間に段差がなくなるようにして、調整用塗膜15をなだらかに仕上げる。
【0052】
既存の塗膜6に外壁模様がある場合には、新規の補強材14の上に既存の塗膜6と同じ外壁模様を形成して、調整用塗膜15を既存の外壁模様と合わせる。例えば、既存の塗膜6がスタッコ仕上げになっている場合には、調整用塗膜15の上にもスタッコの玉を吹いて、調整用塗膜15を既存の塗膜6のスタッコ仕上げの模様(スタッコ状模様)と同じにする。既存の塗膜6の外壁模様がその他の場合にも、その外壁模様に合わせるようにする。
【0053】
この際の注意事項として、既存の塗膜6と調整用塗膜15との外壁模様を合わせないと、仕上がり外観不良となる。外壁模様合わせなどについては、既存の塗膜6の仕様や建物1のその他の各仕様書に従って行うようにする。
【0054】
このように、上記した各工程を順番に行うことで、建物1の外壁2は、新築時と同じ塗装状態に修復される。そして、外壁2に施された既存の塗膜6に亀裂部8の箇所が少ない場合には、この部分的な修復によって外壁2の再塗装を終了しても良い。これに対し、外壁2に施された既存の塗膜6に亀裂部8が多く発生している場合や住人の要望がある場合などには、更に、以下のような外壁2の再塗装を行っても良い。
【0055】
(2)図3に示すように、既存の塗膜6と調整用塗膜15との上には、新規の塗膜21を形成しても良い。
【0056】
ここで、新規の塗膜21は、建物1全体を再塗装する場合などに、外壁2の全面に、既存の塗膜6の上から施される塗料の膜である(新規塗膜)。新規の塗膜21は、調整用塗膜15の上にも施される。これにより、新規の塗膜21は上塗塗装となる。
【0057】
新規の塗膜21は、単層塗りとしても良いが、下塗用塗膜22と上塗用塗膜23とを重ねた二層塗りや、下塗用塗膜22と上塗用塗膜23との間に中間塗膜などを加えた三層以上の多層塗りとすることができる。下塗用塗膜22や上塗用塗膜23や中間塗膜には、例えば、ウレタン系やシリコン系の軟質塗料などを用いることができる。軟質塗料は、上記した横力7による外壁材11の変位や変形に追従して弾性変形する柔軟性を備えた塗料である。
【0058】
(3)新規の塗膜21は、硬質塗膜31としても良い。
【0059】
ここで、硬質塗膜31には、例えば、フッ素系の塗料などを用いることができる。多層塗りの場合、硬質塗膜31は、少なくとも上塗用塗膜23に使うことができる。下塗用塗膜22や中間塗膜については、硬質塗膜31としても良いし、軟質塗料による軟質塗膜としても良い。
【0060】
新規の塗膜21に硬質塗膜31を用いた場合であっても、新規の補強材14によって目地部12に対する保護機能を回復していることで、また、例えば、新規の補強材14に、既存の補強材13よりも高性能の弾性目地テープを用いて目地部12に対する保護機能を新築時よりも強化することで、硬質塗膜31は、長期間に亘り外壁材11の上記した変位や変形に耐えることが可能である。
【0061】
(4)そして、上記外壁再塗装方法によって形成された外壁構造は、以下のようなものとなる。
外壁材11どうしの合わせ目となる目地部12に沿って新規の補強材14が取付けられる。
外壁材11の目地部12以外の部分には、既存の塗膜6が残存される。
新規の補強材14を取付けた部分には、既存の塗膜6と同じ種類の調整用塗膜15が形成される。
【0062】
ここで、目地部12は、確実に既存の補強材13を除去して、新規の補強材14に更新することで、目地部12に対する保護機能を回復させておくことが必要となる。既存の補強材13を除去した目地部12の周辺には、上記した下地処理を行うのが、保護機能を回復し、再塗装を良好に行う上で有効である。
【0063】
新規の補強材14は、既存の補強材13が完全に除去された外壁材11の目地部12に沿い、目地部12の上下方向16の全域に亘って貼り付けるようにする。調整用塗膜15は、既存の塗膜6と外壁模様を同じにして同化させることも、既存の塗膜6の影響が出ないようにする上で重要になる。調整用塗膜15の色や、外壁模様などについては、現在の既存の塗膜6に同化するように合わせて調整する。
【0064】
これにより、既存の塗膜6は、建物1と同じ年数が経過したものとなって外壁2の表面に残存され、調整用塗膜15と新規の塗膜21とは、リフォーム時に新たに施工されたものとして目地部12周辺の外壁2の表面に新たに形成されて、互いに経年数の異なるもの(既存の塗膜6および調整用塗膜15)が外壁2に同化した状態で混在することになる。
【0065】
そして、上記したように、既存の塗膜6と調整用塗膜15との上には、建物1の劣化の度合いや住人の要望などに応じて、外壁2の全面に新規の塗膜21を形成しても良い。新規の塗膜21は、単層塗りとしても良いが、下塗用塗膜22と上塗用塗膜23とを重ねた二層以上の多層塗りとしても良い。
【0066】
また、新規の塗膜21には、硬質塗膜31を用いても良い。
【0067】
その他については、上記した外壁再塗装方法に記載したのと同様にすることができる。
【0068】
<作用効果>この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0069】
(作用効果 1)この実施例の外壁再塗装方法では、目地部12から既存の補強材13を剥がし、既存の補強材13を剥がした後の目地部12に新規の補強材14を取付け、新規の補強材14を取付けた部分に既存の塗膜6と同じ種類の調整用塗膜15を形成するようにしている。
【0070】
これにより、既存の塗膜6のうち最も劣化し易い目地部12の周辺が、新規の補強材14で補修され、目地部12は新規の補強材14によって当初(新築時)と同様の保護機能が回復される。この際、例えば、既存の補強材13よりも高性能の新規の補強材14を用いるようにすれば、当初以上の保護機能を付与して目地部12を強化することも可能になる。
【0071】
また、目地部12が新規の補強材14と調整用塗膜15とによって補修されることで、外壁2の表面に残存している既存の塗膜6と、目地部12に新たに施された調整用塗膜15との区別がつかないように、外壁2の塗装は、調整用塗膜15と既存の塗膜6とが同化された状態にまで再生される。
【0072】
そして、目地部12から既存の補強材13を除去するのは、かなり手間のかかる作業であるため、これまでは行われていなかった。しかし、既存の補強材13を目地部12から除去することは、既存の補強材13を目地部12に残すことによって再塗装後に生じる悪影響をなくせると共に、目地部12に対する保護機能を、新規の補強材14によって回復したり、新規の補強材14に対する調整用塗膜15の再塗装を良好に行ったりする上で有効である。よって、上記外壁再塗装方法を行うことによって、外壁2は、既存の塗膜6によって被覆された新築時と同等の状態に戻される(修復される)。
【0073】
(作用効果 2)既存の塗膜6と、(新築時と同じ状態に保護機能が回復されて既存の塗膜6と同化された)調整用塗膜15との上に跨るように新規の塗膜21を形成しても良い。これにより、既存の塗膜6や調整用塗膜15を、新規の塗膜21で完全に覆い隠すことができる。そして、外壁2の全面に、既存の塗膜6や調整用塗膜15などの影響が出難い状態で、新規の塗膜21を良好に形成することができる。
【0074】
(作用効果 3)硬質塗膜31は下地の影響を比較的受け易い塗料であるが、既存の塗膜6の影響が出難くなるように調整用塗膜15で補修した外壁2に対し、新規の塗膜21として硬質塗膜31を塗布するようにしても良い。これにより、新規の塗膜21に硬質塗膜31を使っても外壁2の全面に支障なく硬質塗膜31を形成できるようになる。
【0075】
(作用効果 4)この実施例の外壁構造は、上記外壁再塗装方法によって再塗装された外壁2としても良い。この外壁2は、外壁材11どうしの合わせ目となる目地部12に沿って新規の補強材14が取付けられ、外壁材11の目地部12以外の部分に既存の塗膜6が残存され、新規の補強材14を取付けた部分に既存の塗膜6と同じ種類の調整用塗膜15が形成されたものとなる。これにより、目地部12は、新規の補強材14によって保護機能が回復され、目地部12は、調整用塗膜15によって、調整用塗膜15と既存の塗膜6との区別がつかないように同化した状態となるため、上記外壁再塗装方法と同じ作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0076】
1 建物
2 外壁
6 既存の塗膜
11 外壁材
12 目地部
13 既存の補強材
14 新規の補強材
15 調整用塗膜
21 新規の塗膜
31 硬質塗膜
図1
図2
図3
図4
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図9
図10