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特許7602378ハウジング管の製造方法およびハウジング管
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】ハウジング管の製造方法およびハウジング管
(51)【国際特許分類】
   B22D 13/02 20060101AFI20241211BHJP
   F16L 58/08 20060101ALI20241211BHJP
   F16L 21/06 20060101ALN20241211BHJP
【FI】
B22D13/02 501Z
F16L58/08
F16L21/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021000339
(22)【出願日】2021-01-05
(65)【公開番号】P2022105795
(43)【公開日】2022-07-15
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【弁理士】
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】明渡 健吾
(72)【発明者】
【氏名】冨田 直岐
(72)【発明者】
【氏名】柳谷 仁志
(72)【発明者】
【氏名】太田 慧
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-152991(JP,A)
【文献】特開2018-179054(JP,A)
【文献】特開2003-254478(JP,A)
【文献】特開平11-230483(JP,A)
【文献】特開2005-248971(JP,A)
【文献】ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗装(抜粋) Z 2010,日本ダクタイル鉄管協会規格 JDPA,日本,日本ダクタイル鉄管協会,2010年,578-584,https://www.jdpa.gr.jp/download/binran/310_JDPA_Z2010.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 13/00 - 13/12
F16L 58/08
F16L 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全長に亘って同一径の直管部(2)の両端部外周面にそれぞれ突条(3)を有し、その各端部をハウジング継手(30)によって前記突条(3)を介して他の管と接続するハウジング管の製造方法において、
前記直管部(2)を遠心鋳造によって成形した後に焼鈍する直管部製造工程と、
焼鈍によって前記直管部(2)の管外面に形成されたスケールを除去するスケール除去工程と、
スケールを除去した前記直管部(2)の管外面に亜鉛系の溶射処理を施して溶射皮膜(4)を形成する溶射工程と、
前記溶射皮膜(4)を形成した前記直管部(2)の端部を切断して、その端部に前記直管部(2)の周方向に延びる前記突条(3)を形成する加工工程と、
前記突条(3)を形成した前記直管部(2)の管外面に防錆塗装膜(5)を形成して、前記溶射皮膜(4)の表面の空隙部に前記防錆塗装膜(5)を浸透させて防錆塗装を施す防錆塗装工程と、
を有することを特徴とするハウジング管の製造方法。
【請求項2】
前記加工工程が、前記直管部(2)の一端側端面(2a’’)から採寸して他端側端部(2b)を切断する素工程、その切断した他端側端面(2b’)を基準にして前記他端側端部(2b)の外周に他方の突条(3)を形成する素工程、前記他端側端面(2b’)から採寸して一端側端部(2a)を切断する素工程、および、その切断した一端側端面(2a’)を基準にして前記一端側端部(2a)に一方の突条(3)を形成する素工程、の各素工程を有する請求項1に記載のハウジング管の製造方法。
【請求項3】
前記防錆塗装を施した前記直管部(2)の管内面にモルタルライニングまたは粉体塗装を施す内面防食工程と、前記直管部(2)の管外面に合成樹脂塗装を施す外面塗装工程が順次行われる請求項1に記載のハウジング管の製造方法。
【請求項4】
全長に亘って同一径の直管部(2)の両端部外周面にそれぞれ突条(3)を有し、その各端部をハウジング継手(30)によって前記突条(3)を介して他の管と接続する鋳物製のハウジング管において、
前記直管部(2)の管外面に、その表面から順に亜鉛系の溶射皮膜(4)と、防錆塗装膜(5)が形成されており、前記溶射皮膜(4)の表面の空隙部に前記防錆塗装膜(5)が浸透しており、前記直管部(2)の管内面に、モルタルライニングまたは粉体塗装からなる内面防食層(7)が形成されていることを特徴とするハウジング管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハウジング継手によって接続するハウジング管の製造方法およびハウジング管に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図5に示すように、自動車専用道路のトンネルT内には、そのトンネルT内における火災に備えて消火設備が設置されている。この消火設備は、トンネルの長さ方向に所定間隔で設置された消火栓装置Aと、この消火栓装置Aに送水するための送水配管Pによって構成される。送水配管Pは、ハウジング管1’をハウジング継手30によって連結することによって構成される。送水配管Pの消火栓装置Aに対応する位置にはT字状分岐管Bが接続されており、このT字状分岐管を通って消火栓装置Aに水が供給される。トンネルT内で火災が生じた際には、火災現場近傍の消火栓装置Aから散水して初期消火を行うことができる。
【0003】
この送水配管Pは、図6に示すように、トンネルTの内壁の高所に設けられることがある。この内壁の頂部はアーチ状となっていることが多く、管材を吊り上げるクレーンのビームFがアーチ状の頂部に干渉するおそれがあり、配管位置(支え突出梁H)に管材を直接吊り下ろすことが困難である。このため、配管位置に対応して仮設の支え梁Gを設置し、この支え梁Gに管材を一旦吊り下ろしてから管材の転動等による横持ちを行って所定の配管位置に移動させる必要がある。この場合、管接続時に管の軸方向への移動が必要な挿し込み式の継手構造は採用し難く、例えば下記特許文献1に示す、管接続時に軸方向への移動が最小限となるハウジング継手によって接続されるハウジング管を採用することが多い。
【0004】
ハウジング管1’は、遠心鋳造法によって鋳造された鋳造管を用いることができる。この遠心鋳造法に用いる遠心鋳造機として図7に示すものがある。この遠心鋳造機は、鋳型としての円筒形モールド20をローラ21により回転させるとともに、取鍋22、23を介して鋳込用トラフ24に溶湯mを送り込み、この鋳込用トラフ24を介して軸周りに回転しながら軸方向に前後する円筒形モールド20内に溶湯mを鋳込む。そして、円筒形モールド20の回転に伴う遠心力により、溶湯mを円筒形モールド20の内面に均一に分布させることで、均一な管厚の鋳造管25を鋳造することができる。
【0005】
この遠心鋳造法で鋳造される鋳造管25は、本図に示すように、一端に膨出部が形成された受口25a、他端にその受口25aに挿入接続される挿し口25bが形成されているものが多い。受口25aの膨出部は、円筒形モールド20内に中子26を装填することによって形成される。また、円筒形モールド20の両端部には、この両端部からの溶湯mの漏れを防止するためのモールドバンド27、28が設けられている。鋳造管25の脱型は、受口25a側のモールドバンド28を取り除き、中子26が付いた状態で受口25aの内面に引き出し具の爪を引っ掛けて円筒形モールド20内から引き抜いて行っている。
【0006】
ハウジング管1’は、例えば図8に示す工程によって製造することができる。この工程について概略を説明すると、まず、図7に示す遠心鋳造機等を用いて管を鋳造(ステップS20)した上で、焼鈍(ステップS21)を行う。この管は、図7で示したように、一端に受口25a、他端にその受口25aに挿入される挿し口25bを有する形状とされる。
【0007】
この焼鈍に続いて、スケール除去(ステップS22)、管切断(ステップS23)、両端突条の溶接・加工(ステップS24)、および、水圧試験(ステップS25)の各工程(フロー1)が行われる。スケール除去工程は、焼鈍によって形成された表面の酸化スケールを除去する工程である。管切断工程は、鋳造管の端部を切断して所定の管長に切り揃える工程である。両端突条の溶接・加工工程は、管の端部に周溝を形成してリング部材を嵌め込んで、または、周溝を形成することなくリング部材を直接嵌め込んで溶接することによって、あるいは、鋳造によって管の端部に形成された、外周面が径方向に膨らんだ膨出部を研削することによって、管の端部に突条を形成する工程である。水圧試験工程は、管の両端を塞いだ上でその内部に水圧を作用させて検査する工程である。
【0008】
フロー1の一連の工程に続いて、内面防食(ステップS26)の工程(フロー2)が行われる。内面防食工程は、管内面にモルタルライニングや粉体塗装を行う工程である。
【0009】
フロー2の工程に続いて、赤錆除去(ステップS27)の工程(フロー3)が行われる。赤錆除去工程は、水圧試験を経たこと等によって管外面に形成された赤錆をブラスト処理によって除去する工程である。
【0010】
フロー3の工程に続いて、外面塗装(ステップS28)の工程(フロー4)が行われる。外面塗装工程は、赤錆が除去された管表面に、防錆塗料としての亜鉛系塗料からなるジンクリッチプライマ等のプライマを塗装するとともに、さらにプライマの上に、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂等の合成樹脂の層(例えば4層)を形成する工程である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2018-179054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図8に示す工程においては、赤錆除去工程に先立って管の両端にキャップを嵌めて、赤錆除去工程で使用するブラスト粒子から管の端部に形成された突条を保護するとともに、このブラスト粒子が管内に侵入するのを防止している。しかしながら、突条を保護する作業は煩雑であって作業時間を要し、しかも、ブラスト粒子が管内に侵入するのをキャップで完全に防ぐことは難しい。このため、作業時間の増大によるコスト高を招くとともに、内面の防食層が荒れる問題(ブラスト粒子衝突による塗膜破壊など)が生じ得る。
【0013】
そこで、この発明は、内外面品質が良好なハウジング管を簡便に提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するため、この発明においては、
全長に亘って同一径の直管部の両端部外周面にそれぞれ突条を有し、その各端部をハウジング継手によって前記突条を介して他の管と接続するハウジング管の製造方法において、
前記直管部を遠心鋳造によって成形した後に焼鈍する直管部製造工程と、
焼鈍によって前記直管部の管外面に形成されたスケールを除去するスケール除去工程と、
スケールを除去した前記直管部の管外面に亜鉛系の溶射処理を施して溶射皮膜を形成する溶射工程と、
前記溶射皮膜を形成した前記直管部の端部を切断して、その端部に前記直管部の周方向に延びる前記突条を形成する加工工程と、
を有することを特徴とするハウジング管の製造方法を構成した。
【0015】
このように、スケール除去工程の直後に溶射工程を行って溶射皮膜を形成しておくと、その後工程で管の表面に錆が生じにくいため、従来のようにブラスト処理による赤錆除去を行う必要がない。また、ブラスト処理に先立って管の両端に管内面を保護するためのキャップを嵌める必要もない。このため、内外面品質が良好なハウジング管を簡便に製造することができる。
【0016】
前記構成においては、
前記加工工程が、前記直管部の一端側端面から採寸して他端側端部を切断する素工程、その切断した他端側端面を基準にして前記他端側端部の外周に他方の突条を形成する素工程、前記他端側端面から採寸して一端側端部を切断する素工程、および、その切断した一端側端面を基準にして前記一端側端部に一方の突条を形成する素工程、の各素工程を有する構成とすることができる。
【0017】
この加工工程によると、ハウジング管同士を接続するための突条を一連の作業の中でスムーズに製造することができる。
【0018】
前記各構成においては、
前記突条を形成した前記直管部の管外面に防錆塗装を施す防錆塗装工程をさらに有するのが好ましい。
【0019】
このように、溶射皮膜の上にさらに防錆塗装を施すことにより、溶射皮膜の空隙部に塗膜が浸透することで、管外面の防錆性をさらに向上することができる。
【0020】
前記防錆塗装工程を有する構成においては、
前記防錆塗装を施した前記直管部の管内面にモルタルライニングまたは粉体塗装を施す内面防食工程と、前記直管部の管外面に合成樹脂塗装を施す外面塗装工程が順次行われるのが好ましい。
【0021】
このように、内面防食を施すことにより管の通水特性を向上することができ、外面塗装を施すことにより防錆持続性を高めるとともに管の外観を向上することができる。
【0022】
また、この発明においては、
全長に亘って同一径の直管部の両端部外周面にそれぞれ突条を有し、その各端部をハウジング継手によって前記突条を介して他の管と接続する鋳物製のハウジング管において、
前記直管部の管外面に、その表面から順に亜鉛系の溶射皮膜と、防錆塗装膜が形成されており、前記直管部の管内面に、モルタルライニングまたは粉体塗装からなる内面防食層が形成されていることを特徴とするハウジング管を構成した。
【0023】
このハウジング管は、既述の通り、管外面に形成された溶射皮膜および防錆塗装膜によって高い防錆性が発揮されるとともに、管内面のモルタルライニングまたは粉体塗装によって高い防食性と通水特性が確保される。
【発明の効果】
【0024】
この発明では、管外面に溶射皮膜を形成したことにより、内外面品質が良好なハウジング管を簡便に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】この発明に係るハウジング管の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の要部断面図、(c)は(b)の他例1、(d)は(b)の他例2
図2図1に示すハウジング管の製造工程を示す図
図3】加工工程の素工程を示す断面図であって、(a)は円筒形モールドから鋳造管を脱型した状態、(b)は他端側に突条が形成された状態、(c)はさらに一端側に突条が形成された状態
図4】ハウジング管の継手部を示し、(a)は管軸に垂直な面で切断した断面図、(b)は(a)中のb-b線に沿う断面図
図5】トンネル内の消火配管の概略図
図6】消火配管の施工説明図
図7】遠心鋳造機の概略説明図
図8】従来技術に係るハウジング管の製造工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明に係るハウジング管1を図面に基づいて説明する。このハウジング管1は、図1(a)に示すように、全長に亘って同一径の直管部2と、直管部2の両端部外周面にそれぞれ形成された突条3と、を有し、その各端部をハウジング継手30(図4(a)(b)参照)によって突条3を介して他の管と接続する鋳物製のハウジング管1であって、直管部2の管外面に、その表面から順に溶射皮膜4、防錆塗装膜5、および、外面塗装膜6が形成されており、直管部2の管内面に、内面防食層7が形成されている。
【0027】
なお、このハウジング管1の有効長は、その適用場所や用途に応じて適宜選択することができ、例えば、有効長5.2m(呼び径150~250)、有効長6.0m(呼び径300、350)等とすることができる。
【0028】
直管部2は、遠心鋳造法によって鋳造された、一端に受口8a、他端にその受口8aに挿入される挿し口8bを有する鋳造管8(図3(a)参照)の両端を切断した同一径の部分である。この直管部2の両端部には、図1(b)に示すように周溝9が形成されており、この周溝9に、周方向の一部に切り欠きが形成された切り欠きリングが嵌め込まれる。この切り欠きリングが、その軸方向の両側から溶接10によって固定されることで突条3が形成される。
【0029】
突条3の形態は上記に限定されず、例えば、図1(c)に示すように、直管部2の端部に周溝を形成することなくリングを直接嵌め込んで、その軸方向の両側から溶接10によって固定したり、図1(d)に示すように、鋳造の段階で予め突出部11を作り込んでおき、この突出部11を研削したりすることによって突条3を形成することもできる。
【0030】
溶射皮膜4は、直管部2の管外面に直接形成された亜鉛系の皮膜である。ここでいう「亜鉛系」として、亜鉛の他に、亜鉛を含む種々の合金(例えば、亜鉛-アルミニウム合金)を採用することができる。皮膜の厚さは、溶射金属の種類やハウジング管の使用環境等に対応して適宜決めることができるが、耐食性が付与される最小膜厚として、例えば20~250μmを参考とすることができる。
【0031】
防錆塗装膜5は、アクリル系の樹脂による塗装膜(プライマ処理)である。この防錆塗装膜5を形成することにより、亜鉛系の溶射皮膜4の表面の空隙部に塗膜が浸透し、この溶射皮膜4による防錆性を一層高めることができる。この樹脂材として、アクリル系以外のものを採用できる可能性もある。
【0032】
外面塗装膜6は、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂等の合成樹脂からなる塗装皮膜である。図1(b)~(d)においては、この外面塗装膜6は単層の塗膜として描かれているが、実際には、3~4層程度の多層の塗膜によって構成されている。この層数は、使用する樹脂の種類やハウジング管1の用途等によって適宜変更される。
【0033】
モルタルライニングまたは粉体塗装からなる内面防食層7は、管内面に所定厚さをもって形成されている。この内面防食層7を形成することによって管内面が平滑となり、高い通水特性を確保することができる。
【0034】
図1に示すハウジング管の製造工程を図2に示す。まず、図7に示す遠心鋳造機等を用いて管を鋳造(ステップS1)した上で焼鈍(ステップS2)する、直管部製造工程が行われる。この管は、図3(a)に示すように、一端に受口8a、他端にその受口8aに挿入される挿し口8bを有する鋳造管8である。
【0035】
直管部製造工程で行われる焼鈍に続いて、スケール除去(ステップS3)、溶射(ステップS4)、管切断(ステップS5)、両端突条の溶接・加工(ステップS6)、水圧試験(ステップS7)、および、外面の防錆塗装(ステップS8)の各工程(フロー1)が行われる。
【0036】
スケール除去工程は、焼鈍によって形成された管外面の酸化スケールを除去する工程である。このスケール除去工程には、例えば、高速の硬質粒子を管外面に吹き付けるブラスト法が採用される。
【0037】
溶射工程は、スケール除去工程によってスケールを除去した直管部2の管外面に、亜鉛系の溶射処理を施して溶射皮膜4を形成する工程である。既述の通り、ここでいう「亜鉛系」として、亜鉛の他に、亜鉛を含む種々の合金(例えば、亜鉛-アルミニウム合金)を採用することができる。皮膜の厚さは、ハウジング管1の使用環境等に対応して適宜決めることができるが、耐食性が付与される最小膜厚として、例えば20~250μmとすることができる。
【0038】
管切断および両端突条の溶接・加工からなる加工工程は、溶射皮膜4を形成した直管部2の端部を切断して、その端部に直管部2の周方向に延びる突条3を形成する複数の素工程からなる工程である。この加工工程の一例を図3(a)~(c)を用いて説明する。まず、図3(a)に示すように、直管部2の一端側端面(切断前の左端面)2a’’から採寸して他端側端部2bを切断面cに沿って切断する(素工程1)。次に、図3(b)に示すように、その切断した他端側端面(切断後の右端面)2b’を基準として、他端側端部2bの外周に他方の突条3を形成する(素工程2)。さらに、図3(b)に示すように、他端側端面2b’から採寸して一端側端部2aを切断面cに沿って切断する(素工程3)。そして、図3(c)に示すように、その切断した一端側端面2a’を基準にして一端側端部2aに一方の突条3を形成する(素工程4)。この一連の素工程によって、管軸方向の中心線cに対して対称に突条3を形成することができる。
【0039】
水圧試験工程は、管の両端を塞いだ上でその内部に水圧を作用させて検査する工程である。外面の防錆塗装工程は、アクリル系の樹脂による塗装膜(プライマ処理)を形成する工程である。この防錆塗装膜5を形成することにより、亜鉛系の溶射皮膜4の表面の空隙部に塗膜が浸透し、この溶射皮膜4による防錆性を一層高めることができる。この樹脂材として、アクリル系以外のものを採用できる可能性もある。
【0040】
フロー1の一連の工程に続いて、内面防食(ステップS9)の工程(フロー2)が行われる。内面防食工程は、管内面にモルタルライニングや粉体塗装の内面防食層7を形成する工程である。この内面防食を行うことにより、管の内面が平滑となり、高い通水特性を確保することができる。
【0041】
フロー2の工程に続いて、外面塗装(ステップS10)の工程(フロー3)が行われる。外面塗装工程は、防錆塗装膜5が形成された管外面に、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂等の合成樹脂からなる外面塗装膜6を形成する工程である。この外面塗装膜6は単層からなる塗膜であってもよいが、3~4層程度の多層の塗膜とすることが多い。この層数は、使用する樹脂の種類やハウジング管1の用途等によって適宜変更される。
【0042】
このように製造されたハウジング管1は、図4(a)に示すように、ハウジング継手30を用いて連結される。このハウジング継手30は、半割円環状カップリング31と、対の半割円環状カップリング31をその両端で締結するボルト・ナット32と、ゴムリング33と、対の半割円環状カップリング31の対向する端部に設けられるL字状締結金具34と、を有している。
【0043】
この連結に際しては、図4(b)に示すように、まず、連結するハウジング管1の連結部にゴムリング33を設ける。次に、両ハウジング管1の端部に形成された突条3を挟み込むように、かつ、ゴムリング33がハウジング管1の軸心側に押圧されるように、対の半割円環状カップリング31をハウジング管1に宛がう。そして、半割円環状カップリング31に設けられたボルト・ナット32(図4(a)参照)を締結すると、両ハウジング管1が水密に連結される。
【0044】
上記のように、本願発明に係るハウジング管1の製造方法においては、スケール除去工程の直後に溶射工程を行い管外面の耐食性を向上したので、外面塗装の前の赤錆除去工程が不要であるとともに、外面塗装工程におけるプライマ処理が不要となった。また、赤錆除去工程が不要となったことにより、赤錆除去工程に先立って管の端部に保護用のキャップを嵌める作業も不要となり、管の内面が荒れる問題も解消した。これにより、内外面品質が良好なハウジング管1を簡便に製造できるようになった。
【0045】
また、本願発明に係るハウジング管1は、既述の通り鋳物(ダクタイル鋳鉄)である鋳造管8を用いることを特徴としている。このように、鋳物製であるからこそ、遠心鋳造法による定尺管の量産および管内面へのモルタルライニングや粉体塗装を有効に施すことができる。また、突条3を鋳出し形成することもできる。そして、この定尺管を出発材料として用いることにより、所定の寸法のハウジング管を安定的にかつ簡便に製造することができる。
【0046】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味およびすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0047】
1 ハウジング管
2 直管部
2a 一端側端部
2a’ (切断後の)一端側端面
2a’’ (切断前の)一端側端面
2b 他端側端部
2b’ 他端側端面
3 突条
4 溶射皮膜
5 防錆塗装膜
6 外面塗装膜
7 内面防食層
8 鋳造管
8a 受口
8b 挿し口
9 周溝
10 溶接
11 突出部
30 ハウジング継手
31 半割円環状カップリング
32 ボルト・ナット
33 ゴムリング
34 L字状締結金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8