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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】クッション
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/00 20060101AFI20241211BHJP
   A47C 27/08 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A47C27/00 M
A47C27/08 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021012839
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116591
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 鍾貴
(72)【発明者】
【氏名】岸田 貴斗
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0167572(US,A1)
【文献】中国実用新案第210643349(CN,U)
【文献】中国実用新案第210792904(CN,U)
【文献】登録実用新案第3091741(JP,U)
【文献】特開平06-199164(JP,A)
【文献】実公昭51-042577(JP,Y2)
【文献】登録実用新案第3154189(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/00-31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面部及び背もたれ部を有するクッションであって、
流体を入れることにより膨張可能な複数の袋体を具備し、
前記袋体の膨張状態では、前記座面部と前記背もたれ部との境界部において折れ曲がった形状になり、
前記複数の袋体は、前記境界部の左右両端部に位置する一対の第一袋体を備え、
前記第一袋体は、前記座面部側の縁と前記背もたれ部側の縁とを有し、
前記座面部側の縁と前記背もたれ部側の縁とは、前記境界部の左右方向両端側から中央側に向かって接近する方向に延びているクッション。
【請求項2】
表面部材と裏面部材とを備え、
前記表面部材の弾性力は、前記裏面部材の弾性力よりも大きい請求項に記載のクッション。
【請求項3】
前記袋体の膨張状態では、前記背もたれ部の左右方向における端側は、前側に立つ請求項1または請求項2に記載のクッション。
【請求項4】
前記袋体の膨張状態では、前記座面部の左右方向における端側は、上側に立つ請求項1から請求項のいずれか一項に記載のクッション。
【請求項5】
前記複数の袋体は、前記座面部に設けられた第二袋体及び第三袋体を備え、
前記第二袋体は、前記座面部の後縁部に位置し、
前記第三袋体は、前記第二袋体よりも前側に位置し、
前記袋体の膨張状態では、前記第二袋体の上側への膨らみ寸法は、前記第三袋体の上側への膨らみ寸法よりも大きい請求項1から請求項のいずれか一項に記載のクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、座面部及び背もたれ部を有するクッションが知られている。例えば下記特許文献1に記載されたクッションは、椅子またはソファに載置して使用される。このクッションの座面部及び背もたれ部は、クッション材が充填された複数のクッション部を備えている。クッション部は、布によって一体に保持されている。クッションを使わない場合には、丸めてコンパクトにできる。クッションは、椅子等の形状に沿った状態に保持するべく、前部垂れ下がり部及び後部垂れ下がり部を備えている。前部垂れ下がり部は、椅子等の座面の前側に垂れ下がって、座面部を座面に沿った状態に保持する。後部垂れ下がり部は、椅子等の背もたれの後側に垂れ下がって、背もたれ部を背もたれの前面に沿った状態に保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3194682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構成のクッションを椅子等にセットする際には、前部垂れ下がり部を椅子等の座面の前側に垂下させ、座面部を椅子等の座面に載置し、背もたれ部を椅子等の背もたれの前面に沿わせ、後部垂れ下がり部を背もたれの後側に垂下させる、という手順を要する。したがって、容易にコンパクトにできる一方、椅子等へのセットは容易ではないという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、容易にコンパクトにでき、かつ容易に椅子等にセットできるクッションを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のクッションは、座面部及び背もたれ部を有するクッションであって、流体を入れることにより膨張可能な複数の袋体を具備し、前記袋体の膨張状態では、前記座面部と前記背もたれ部との境界部において折れ曲がった形状になるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、袋体から流体を出すことによって、クッションを容易にコンパクトにできる。袋体に流体を入れることによって、クッションは座面部と背もたれ部との境界部において折れ曲がった形状になる。座面部と背もたれ部との境界部において折れ曲がった形状のクッションは、椅子等に置くだけでセットできる。したがって、容易にコンパクトにでき、かつ容易に椅子等にセットできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例におけるクッションであって、椅子にセットした状態を示す斜視図
図2】扁平状のクッションを示す平面図
図3】座椅子状のクッションを示す平面図
図4】座椅子状のクッションを示す正面図
図5】座椅子状のクッションを示す背面図
図6】座椅子状のクッションを示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の好ましい形態を以下に示す。
【0010】
本発明のクッションにおいて、前記複数の袋体は、前記境界部の左右両端部に位置する一対の第一袋体を備え、前記第一袋体は、前記座面部側の縁と前記背もたれ部側の縁とを有し、前記座面部側の縁と前記背もたれ部側の縁とは、前記境界部の左右方向両端側から中央側に向かって接近する方向に延びているものとしてもよい。このような構成によれば、一対の第一袋体に流体を入れることによって、座面部と背もたれ部とが境界部において自動的に折れ曲がる。したがって、クッションを容易に座椅子状にできる。
【0011】
また、本発明のクッションは、表面部材と裏面部材とを備え、前記表面部材の弾性力は、前記裏面部材の弾性力よりも大きいものとしてもよい。このような構成によれば、袋体に流体を入れることによって、表面部材及び裏面部材は弾性的に伸びる。クッションは、表面部材の弾性力によって、表面部材が内側、裏面部材が外側になるように折れ曲がる。したがって、表面部材を着座者に接する側、裏面部材を着座者に接する側とは反対側に配置しやすくできる。
【0012】
また、本発明のクッションにおいて、前記袋体の膨張状態では、前記背もたれ部の左右方向における端側は、前側に立つものとしてもよい。このような構成によれば、背もたれ部の左右両縁部が着座者の背中を左右両側から支持し得る。したがって、着座者の姿勢を安定させやすくできる。
【0013】
また、本発明のクッションにおいて、前記袋体の膨張状態では、前記座面部の左右方向における端側は、上側に立つものとしてもよい。このような構成によれば、座面部の左右両縁部が着座者の臀部を左右両側から支持し得る。したがって、着座者の姿勢を安定させやすくできる。
【0014】
また、本発明のクッションにおいて、前記複数の袋体は、前記座面部に設けられた第二袋体及び第三袋体を備え、前記第二袋体は、前記座面部の後縁部に位置し、前記第三袋体は、前記第二袋体よりも前側に位置し、前記袋体の膨張状態では、前記第二袋体の上側への膨らみ寸法は、前記第三袋体の上側への膨らみ寸法よりも大きいものとしてもよい。このような構成によれば、座面部の第二袋体が着座者の骨盤を後方下側から支持しやすい。したがって、着座者の骨盤を起立状態に保持しやすくできる。
【0015】
<実施例>
以下、本発明を具体化した一実施例について、図1図6を参照しつつ詳細に説明する。本実施例におけるクッション10は、空気の出し入れによって膨張及び収縮する複数の袋体20を具備している。袋体20に空気を入れることによって、袋体20は膨張状態になる。
【0016】
袋体20に空気を入れた状態のクッション10は、図1に示すように、椅子100にセットして使用する。椅子100は、バスや新幹線等の座席である。椅子100は、座面101、背もたれ102、及び左右の肘掛け103を有する。なお、図1には、クッション10の形状を見やすくするべく、片側の肘掛け103のみを示す。
【0017】
以下、各構成部材において、図1のX軸の正方向側を前側、図1のX軸の負方向側を後側、図1のY軸の正方向側を上側、図1のY軸の負方向側を下側、図1のZ軸の正方向側(椅子100にセットされた状態のクッション10に向かって右側)を右側、図1のZ軸の負方向側(椅子100にセットされた状態のクッション10に向かって左側)を左側として説明する。また、着座者の腰部及び臀部に臨む側を表側、その反対側を裏側として説明する。
【0018】
クッション10は、座面部11及び背もたれ部12を有する。クッション10は、袋体20の膨張状態において、座面部11と背もたれ部12との境界部13において折れ曲がった形状になる。以後、座面部11と背もたれ部12とが境界部13において折れ曲がった形状を座椅子状と称する。座椅子とは、座るために使用する道具であり、脚部が無く、座面(臀部をのせる面)と背もたれが基本構成となっているものである。座面部11は、椅子100の座面101に載置される。背もたれ部12は、椅子100の背もたれ102の前側に配置される。椅子100にセットされた状態のクッション10は、左右の肘掛け103の間におさまる。座面部11の前端は、座面101の前端よりも後側に位置する。背もたれ部12は、背もたれ102の下端部に位置する。背もたれ部12の上端部は、肘掛け103と同等の高さに位置する。境界部13は、座面101の後端部に位置する。
【0019】
クッション10は、図示しないカバー部材によって覆われる。カバー部材は、クッション10を収容する袋状をなす。カバー部材は、クッション10に着脱自在である。
【0020】
各袋体20は、後述する表面部材16及び裏面部材17を固着部18によって区画して形成される。各袋体20は、通気口15を有している。膨張状態の袋体20は、クッション性を有する。膨張状態における袋体20の厚さ寸法(表裏方向の寸法)及び硬さは、袋体20の内部圧力を調整することによって調整できる。膨張状態の袋体20は、着座者の腰部及び臀部の適切な位置を支持する。
【0021】
袋体20から空気を出すことによって、袋体20は収縮状態になる。袋体20の収縮状態において、クッション10は、扁平状になる(図2参照)。扁平状のクッション10をクッションシート10Sと称する。クッションシート10Sの厚さ寸法は、後述する表面部材16及び裏面部材17を重ねた厚さ寸法と同等である。クッションシート10Sにおいて、表面部材16及び裏面部材17の全面は、ほぼ接触した状態になる。クッションシート10Sは、容易に変形する。クッションシート10Sは、例えば丸めたり、たたんだりしてコンパクトにできる。
【0022】
座椅子状のクッション10は、座面部11と背もたれ部12との境界部13において折れ曲がっている。座面部11と背もたれ部12の表側の角度は、180度以下(概ね120度~140度)である。座椅子状のクッション10は、着座者の着座によって、人体の曲面に沿うように湾曲した形状になる。
【0023】
クッション10は、表面部材16と裏面部材17とを備えている。表面部材16は、表面(着座者の腰部及び臀部に臨む側の面)の全体を形成する。裏面部材17は、裏面(椅子100に臨む側の面)の全体を形成する。表面部材16は、袋体20の表側の面を形成する。裏面部材17は、袋体20の裏側の面を形成する。空気は、表面部材16と裏面部材17との間に入れられる。裏面部材17は、滑り止めを備えている。
【0024】
表面部材16及び裏面部材17は、いずれも一枚のシート状である。表面部材16と裏面部材17とは、同じ外形状である。裏面部材17の面積と裏面部材17の面積とは等しい。表面部材16と裏面部材17とは、部分的に固着され、一体化している。固着は、溶着により行われる。表面部材16及び裏面部材17は、表面部材16及び裏面部材17を固着した固着部18によって、複数の袋体20に分かれている。
【0025】
表面部材16の弾性力は、裏面部材17の弾性力よりも大きい。表面部材16及び裏面部材17は、例えば布地にエラストマー層を積層して形成される。固着部18では、例えばエラストマー層同士を溶着できる。表面部材16の布地の素材として、例えばポリエステル、ポリウレタン、ナイロンなどを用いることができる。裏面部材17の布地の素材として、例えば、綿などを用いることができる。エラストマー層として、例えば、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)を用いることができる。
【0026】
複数の袋体20は、図1に示すように、第一袋体21、第二袋体22、第三袋体23、第四袋体24、第五袋体25、第六袋体26及び第七袋体27を備えている。第一袋体21は、境界部13に設けられている。第二袋体22、第三袋体23及び第四袋体24は、座面部11に設けられている。第五袋体25、第六袋体26及び第七袋体27は、背もたれ部12に設けられている。袋体20については後ほど詳しく説明する。
【0027】
クッションシート10Sは、図2に示すように、左右方向の中心を基準に対称である。クッションシート10Sは、背もたれ部12と座面部11とが同一平面上に配置される。後述する第二境界固着部38Bからクッションシート10Sの後端までの長さ寸法は、後述する第二境界固着部38Bからクッションシート10Sの前端までの長さ寸法よりも小さい。
【0028】
クッションシート10Sの外縁30は、湾曲している。クッションシート10Sの外縁30は、後縁32、左右の側縁33及び前縁34を有している。
【0029】
クッションシート10Sの後縁32は、2つの後縁膨らみ部32Aと、1つの後縁窪み部32Bとを有している。後縁窪み部32Bは、後縁膨らみ部32Aの間に位置する。クッションシート10Sの後縁32の左右両端部は中央部よりも後側に張り出している。後縁窪み部32Bを設けることによって、クッションシート10Sの左右両側の部分(後縁膨らみ部32Aが設けられた部分)は、後縁窪み部32Bの前端(最も窪んでいる箇所)を基点に屈曲しやすくなっている。
【0030】
クッションシート10Sの側縁33は、それぞれ3つの側縁膨らみ部33Aと、2つの側縁窪み部33Bとを有している。各側縁窪み部33Bは、それぞれ側縁膨らみ部33Aの間に位置する。側縁窪み部33Bを設けることによって、側縁窪み部33Bの前後の部分(側縁膨らみ部33Aが設けられた部分)は、側縁窪み部33Bを基点に折れ曲がりやすくなっている。3つの側縁膨らみ部33Aのうち前後方向中央部に位置する側縁膨らみ部33Aは、前側及び後側の側縁膨らみ部33Aよりも左右に張り出している。
【0031】
クッションシート10Sの前縁34は、2つの前縁膨らみ部34Aと1つの前縁窪み部34Bとを有している。前縁窪み部34Bは、前縁膨らみ部34Aの間に位置する。クッションシート10Sの前縁34の左右両端部は中央部よりも前側に張り出している。
【0032】
クッションシート10Sの4つの角部31は、円弧状をなしている。クッションシート10Sの前側の角部31の半径は、クッションシート10Sの後側の角部31の半径よりも大きい。
【0033】
固着部18は、外縁固着部35、座面固着部36、背もたれ固着部37及び境界固着部38を有している。外縁固着部35は、クッションシート10Sの外縁30の全周に延びている。
【0034】
座面固着部36は、前後方向に延びている。座面固着部36の前端は外縁固着部35に繋がっている。座面固着部36は、左右方向に複数並べられている。左右に隣り合う座面固着部36の間に、第三袋体23が形成されている。第三袋体23は、前後方向に細長い形状である。第三袋体23は、複数設けられている。複数の第三袋体23は、左右方向に並んでいる。複数の座面固着部36のうち左端及び右端に位置する座面固着部36と外縁固着部35との間に、第四袋体24が形成されている。第四袋体24は、座面部11の左右両端部に設けられている。第四袋体24の左右方向の寸法は、第三袋体23の左右方向の寸法よりも大きい。座面固着部36の延び方向の途中位置には、隣接する第三袋体23同士、もしくは第三袋体23と第四袋体24とを連通する通気口15が形成されている。
【0035】
背もたれ固着部37は、第一背もたれ固着部37Aと第二背もたれ固着部37Bとを有している。第一背もたれ固着部37Aは、前後方向に湾曲して左右方向に延びている。第一背もたれ固着部37Aは、クッションシート10Sを平面視した状態において、後から前に向かって左右方向に広がる形状になっている。第一背もたれ固着部37Aの左右方向の中央部は、後縁窪み部32Bの外縁固着部35に接近している。第一背もたれ固着部37Aの前側に第六袋体26が形成されている。第一背もたれ固着部37Aの後側に第七袋体27が形成されている。第七袋体27は、左右の第五袋体25の間に設けられている。第七袋体27は、前後方向に長いものと、三角形状をなすものとに分かれている。第一背もたれ固着部37Aの後端部には、第六袋体26と第七袋体27とを連通する通気口15が形成されている。
【0036】
第二背もたれ固着部37Bは、前後方向に延びている。第二背もたれ固着部37Bの前端は、第一背もたれ固着部37Aに繋がっている。第二背もたれ固着部37Bは、左右方向に複数並んでいる。複数の第二背もたれ固着部37Bのうち左端及び右端に位置する第二背もたれ固着部37Bと、角部31の外縁固着部35との間に、第五袋体25が形成されている。第五袋体25は、背もたれ部12の左右両端部に設けられている。第二背もたれ固着部37Bには、隣接する第七袋体27同士、及び第七袋体27と第五袋体25とを連通する通気口15が形成されている。
【0037】
境界固着部38は、第一境界固着部38Aと第二境界固着部38Bとを有している。第一境界固着部38Aは、境界部13の左右両端部に前後一対ずつ設けられている。第一境界固着部38Aは、側縁窪み部33Bの外縁固着部35に繋がっている。前後一対の第一境界固着部38Aの内側に第一袋体21が形成される。前側の第一境界固着部38Aは、第一袋体21の座面部11側の縁40を構成する。後側の第一境界固着部38Aは、第一袋体21の背もたれ部12側の縁41を構成する。
【0038】
第一袋体21は、三角形状をなしている。第一袋体21は、第四袋体24と第五袋体25との間に配置されている。座面部11側の縁40と背もたれ部12側の縁41とは、境界部13の左右方向両端側から中央側に向かって接近する方向に延びている。座面部11側の縁40の先端と背もたれ部12側の縁41の先端との間には、通気口15が形成されている。
【0039】
第二境界固着部38Bは、左右方向に直線状に延びている。第二境界固着部38Bの左右両端の前後方向の位置は、前後一対の第一境界固着部38Aの間に配される。第二境界固着部38Bと、座面固着部36の後端との間に第二袋体22が形成されている。第二袋体22は、座面部11の後縁部の左右方向中央部に設けられている。第二袋体22は、左右方向に長く延びている。第二袋体22の左右の長さ寸法は、第二袋体22の前後方向の長さ寸法よりも大きい。第二袋体22の左右方向中央部の前後方向寸法は、第二袋体22の左右方向両端部の前後方向寸法よりも大きい。
【0040】
第二境界固着部38Bと第一背もたれ固着部37Aとの間には、第六袋体26が形成されている。第六袋体26は、背もたれ部12の左右方向中央部に設けられている。第六袋体26は、三角形状をなしている。
【0041】
クッション10は、ポンプ42及び栓43を備えている。ポンプ42及び栓43は、袋体20に設けられている。ポンプ42は、左側の第一袋体21に設けられている。栓43は、右側の第一袋体21に設けられている。ポンプ42及び栓43は、表面部材16に固定されている。ポンプ42は、押し操作によって、袋体20に気体を送り込む。ポンプ42が設けられていない袋体20は、通気口15を介してポンプ42と連通している。一つのポンプ42によって、すべての袋体20に空気が送られる。栓43は、袋体20から空気が抜けないように、空気抜き孔を閉じる。栓43を開くことによって、袋体20から空気を抜くことができる。
【0042】
次に、袋体20に空気をいれて座椅子状になったクッション10の形状について説明する。図1に示すように、背もたれ部12の左右方向における端側は、前側に立っている。第五袋体25は、第七袋体27よりも大きく膨張している。第五袋体25の表面は、第七袋体27の表面よりも前方に位置している。左側の第五袋体25左端は、右端よりも前側に位置している。右側の第五袋体25の右端は、左端よりも前側に位置している。第五袋体25の表面は、斜め内側(左右方向の中央側)前方を向いている。第六袋体26の表面は、第七袋体27の表面よりも前方に位置している。第一袋体21は、上側に立ち上がっている。第一袋体21の表面は、左右方向の内側を向いている。第二袋体22の上側への膨らみ寸法は、第三袋体23の上側への膨らみ寸法よりも大きい。
【0043】
次に、座椅子状のクッション10を平面視した形状について説明する。図3に示すように、クッション10の左右方向の寸法は、後側から前側に向かって小さい。クッション10の左右方向の寸法は、クッションシート10Sの左右方向の寸法よりも小さい。クッション10の外縁30は、複数個所に折り目のついたひだ状になっている。
【0044】
次に、座椅子状のクッション10を正面視した形状について説明する。図4に示すように、クッション10の上下方向の寸法は、クッション10の左右方向の寸法よりも小さい。クッション10の左右方向の寸法は、上側から下側に向かって増している。背もたれ部12、左右の第一袋体21及び左右の第四袋体24は、座面部11の中央領域に対して上側に立ち上がっている。背もたれ部12、左右の第一袋体21及び左右の第四袋体24は、座面部11の中央領域を囲う壁状をなしている。クッション10の後側の角部31は、左右の第一袋体21よりも上側に突出している。後側の角部31から後縁窪み部32Bに向かって高さ寸法が次第に小さくなっている。
【0045】
座面部11の左右方向における両端部は、上側に立っている。第四袋体24は、第三袋体23に対して上側に立っている。第四袋体24と第三袋体23とは、座面固着部36を境に折れ曲がっている。第四袋体24の表面は、斜め内側(左右方向の中央側)を向いている。座面部11の前縁34は、左右方向の中央部が端側よりも上方に位置するように弓状に湾曲している。
【0046】
次に、座椅子状のクッション10を背面視した形状について説明する。図5に示すように、左右の第一袋体21の裏面は、下側から上側に向かって左右方向外側に傾斜している。第二袋体22の下面は概ね水平に延びている。
【0047】
次に、座椅子状のクッション10を側面視した形状について説明する。図6に示すように、クッション10の側縁33は、前側の角部31から後側の角部31に向かって上っている。後側の角部31は、最も高い位置に配置されている。クッション10の裏面は、境界部13において折れ曲がっている。背もたれ部12の裏面は、後側に向かって上側に傾斜している。背もたれ部12の裏面と座面部11の裏面とは、180度よりも小さい角度(概ね120度~140度)をなしている。第六袋体26の裏面は、第五袋体25の裏面よりも裏側に突出している。
【0048】
次に、クッション10の使用例を説明する。最初に、袋体20を膨らませる。ポンプ42を押して袋体20に空気を入れる。ポンプ42を一押しするごとに、袋体20に空気が入れられる。袋体20が膨張するにつれて、第一袋体21、第五袋体25及び第四袋体24は、左右方向の中央側を向くように立ち上がる。第七袋体27及び第五袋体25は、第一背もたれ固着部37Aを基点に前方および左右方向の中央側に屈曲する。後縁窪み部32Bがあることによって、背もたれ部12の左右両側は前側に曲がりやすくなっている。第五袋体25及び第四袋体24は、第一境界固着部38Aを基点に互いに接近する方向に変位する。側縁窪み部33Bがあることによって、背もたれ部12及び座面部11は、折れ曲がりやすくなっている。背もたれ部12及び座面部11は、境界部13において折れ曲がる。こうして、クッション10は自然に屈曲し、座椅子状になる。このとき、表面部材16は内側に、裏面部材17は外側になる。袋体20内の空気の量を調整し、袋体20の硬さを調整する。硬さが足りない場合は、ポンプ42を押して袋体20に空気を送り込む。袋体20が硬すぎる場合は、栓43をあけて袋体20から空気を抜く。
【0049】
次に、座椅子状のクッション10を、椅子100にセットする。クッション10の椅子100へのセットは、クッション10を座面101に載置するだけで完了する。クッション10は適切な姿勢で椅子100に保持される。
【0050】
次に、着座者は、クッション10に着座する。第二袋体22は、着座者の仙骨の下側部分を下方から支持し得る。これによって、着座者の骨盤は起立状態に保持される。左右の第五袋体25は、着座者の腰部の左右両側を後方から支持し得る。第一背もたれ固着部37Aによって、背もたれ部12における左右方向の急激な空気の移動が抑えられているから、着座者の腰部は安定して支持される。また、背もたれ部12は、第一背もたれ固着部37Aによって屈曲しやすい箇所が定まっているから、椅子の表面形状の違いや、椅子に設置する際のクッション10のずれ等による使用感の違いを無くすことができる。左右の第四袋体24は、着座者の臀部の左右両側を下方から支持し得る。これによって、着座者の腰部及び臀部は正しい姿勢に保持される。第三袋体23は、着座者の脚の延び方向に沿っている。また、第三袋体23は、複数設けられている。これによって、体圧(座面部11から臀部及び大腿部に伝わる圧力)は分散するから、着座者の座り心地を良くできる。
【0051】
クッション10の使用を終了するときには、栓43を開いて袋体20から空気を抜く。これによって、袋体20を容易に潰すことができる。袋体20を潰すことによって、クッション10はシート状になる。クッションシート10Sは、容易に折りたたんだり巻いたりしてコンパクトにできる。コンパクトにまとめたクッションシート10Sは、容易に持ち運んだり収納したりできる。
【0052】
次に、上記のように構成された実施例の作用および効果について説明する。本実施例のクッション10は、座面部11及び背もたれ部12を有する。クッション10は、空気を入れることにより膨張可能な複数の袋体20を具備する。クッション10は、袋体20の膨張状態では、座面部11と背もたれ部12との境界部13において折れ曲がった形状になる。
【0053】
この構成によれば、袋体20から空気を出すことによって、クッション10を容易にコンパクトにできる。袋体20に流体を入れることによって、クッション10は座椅子状になる。座椅子状になったクッション10は、椅子100等に載せるだけでセットできる。したがって、クッション10は、容易にコンパクトにでき、かつ容易に椅子100等にセットできる。
【0054】
複数の袋体20は、境界部13の左右両端部に位置する一対の第一袋体21を備えている。第一袋体21は、座面部11側の縁40と背もたれ部12側の縁41とを有する。座面部11側の縁40と背もたれ部12側の縁41とは、境界部13の左右方向両端側から中央側に向かって接近する方向に延びている。この構成によれば、一対の第一袋体21に空気を入れることによって、座面部11と背もたれ部12とが境界部13において自動的に折れ曲がる。したがって、クッション10を容易に座椅子状にできる。
【0055】
クッション10は、表面部材16と裏面部材17とを備える。表面部材16の弾性力は、裏面部材17の弾性力よりも大きい。この構成によれば、袋体20に空気を入れることによって、表面部材16及び裏面部材17は弾性的に伸びる。クッション10は、表面部材16の弾性力によって、表面部材16が内側、裏面部材17が外側になるように折れ曲がる。したがって、表面部材16を着座者に接する側、裏面部材17を着座者に接する側とは反対側に配置しやすくできる。
【0056】
袋体20の膨張状態では、背もたれ部12の左右方向における端側は、前側に立つ。この構成によれば、背もたれ部12の左右両縁部が着座者の背中を左右両側から支持し得る。したがって、着座者の姿勢を安定させやすくできる。
【0057】
袋体20の膨張状態では、座面部11の左右方向における端側は、上側に立つ。この構成によれば、座面部11の左右両縁部が着座者の臀部を左右両側から支持し得る。したがって、着座者の姿勢を安定させやすくできる。
【0058】
複数の袋体20は、座面部11に設けられた第二袋体22及び第三袋体23を備える。第二袋体22は、座面部11の後縁部に位置する。第三袋体23は、第二袋体22よりも前側に位置する。袋体20の膨張状態では、第二袋体22の上側への膨らみ寸法は、第三袋体23の上側への膨らみ寸法よりも大きい。この構成によれば、座面部11の第二袋体22が着座者の骨盤を後方下側から支持しやすい。したがって、着座者の骨盤を起立状態に保持しやすくできる。
【0059】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、クッション10を椅子100にセットして使用する場合を例示した。これに限らず、クッションは、部屋の床面やソファ等に置いて使用してもよい。
(2)上記実施例の椅子100は、バスや新幹線等の座席である。これに限らず、椅子は、スタジアム等の座席であってもよい。
(3)上記実施例では、袋体20の具体的な構成(大きさ、形状、及び数など)を例示した。これに限らず、袋体の構成は変更できる。
(4)上記実施例においてポンプ42は、第1袋体20に設けられている。これに限らず、ポンプの位置は変更できる。
(5)上記実施例においてポンプ42は、クッション10の表面に設けられている。これに限らず、ポンプは、クッションの裏面に設けてもよい。
(6)上記実施例においてポンプ42は、1つ設けられている。これに限らず、ポンプは、2つ以上設けても良い。
(7)上記実施例において袋体20には、空気が出し入れされる。これに限らず、袋体には、気体、液体、ビーズ等を出し入れしてもよい。
(8)上記実施例において固着は、溶着により行われる。これに限らず、固着は、接着等、他の手段であってもよい。
(9)上記実施例においてポンプ42は、手押しポンプである。これに限らず、ポンプは電動ファンを利用したものでもよいし、栓と一体になっているものでもよい。また、ポンプは、本体部とは別体の空気入れであってもよい。
(10)上記実施例においてクッション10は、表面部材16と裏面部材17とによって表面と裏面とが形成される。これに限らず、クッションは、例えば一枚の生地を折り返して表面と裏面とを形成してもよい。また、クッションは、例えば風船のように継ぎ目のないもの(ブロー成形等によって製造したエアセルのようなもの)によって、表面と裏面とを形成してもよい。この場合、表面と裏面との向かい合う面同士を部分的に固着することによって、複数の袋体を形成してもよい。
(11)上記実施例において各袋体20は、表面部材16及び裏面部材17を固着部18によって区画して形成される。これに限らず、袋体を個別に製造し、それらを連結して一つのクッションにしてもよい。連結方法としては、例えば袋体同士を固着したり、複数の袋体を一括して一枚の生地に固定したりしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10…クッション
11…座面部
12…背もたれ部
13…境界部
16…表面部材
17…裏面部材
20…袋体
21…第一袋体
22…第二袋体
23…第三袋体
40…座面部側の縁
41…背もたれ部側の縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6