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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】地下構造物用蓋の蝶番構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 29/14 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
E02D29/14 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021019189
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022122102
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000125842
【氏名又は名称】虹技株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】井上 直治
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-126454(JP,U)
【文献】実開平01-057142(JP,U)
【文献】特開2002-004317(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00985770(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受枠と、該受枠に形成され上下方向に開口した開口部を開閉可能な蓋本体と、前記開口部に対して前記蓋本体を開閉可能に支持する蝶番部材とを備え、
該蝶番部材は、前記蓋本体で前記開口部を閉じた全閉状態と、前記蓋本体を前記全閉状態から前記蝶番部材を介して上方に回動することで前記開口部を全開にした全開状態とに切替え可能とされた地下構造物用蓋の蝶番構造であって、
前記受枠は、前記蓋本体を取付ける蓋取付部と、該蓋取付部の周囲に配置されて前記蝶番部材を取付ける蝶番取付部と、前記蝶番部材を上下方向に案内可能な案内壁とを備え、
前記蝶番部材の上端部側は、前記蝶番取付部の上側において、略水平な支軸部材を介して前記蓋本体の設置部に揺動可能に枢支される頭部と、該頭部から垂下されて、前記蝶番取付部に形成された首孔を上下方向に貫通する首部と、を備え、
前記蝶番部材の下端部側には、前記蝶番取付部の下側において、前記蓋本体の全閉状態および全開状態に渡って、前記蝶番取付部の下方側の収納スペースに収まるように、前記上端部側の前記首部に対して水平方向に折曲された延設部が延長され、
前記蝶番取付部は、前記蓋本体の全開状態のときに、前記延設部の上動を制限可能な制限部材を備えたことを特徴とする地下構造物用蓋の蝶番構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物用蓋の蝶番構造に関し、例えば、高速道路や一般道に用いられるグレーチング蓋において、受枠に対して蓋本体を開閉するための蝶番構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、この種の地下構造物用蓋の蝶番構造が記載されている。この蝶番構造は、特許文献1の図3に示すように、蓋本体と、蓋本体により開口部が開閉可能に閉止される受枠と、蓋本体と受枠とを連結する蝶番具とからなる。
【0003】
蝶番構造は、蝶番具として、第1蝶番部材と第2蝶番部材とから形成されている。第1蝶番部材には、第2蝶番部材とのスライド用長孔をその側面に開口するとともに、受枠内周に形成した凹状の受座に枢支させる第1ヒンジ部をその端部に形成し、第2蝶番部材には、第1蝶番部材の側面に開口させたスライド用長孔と摺動可能に係合する摺動係合部をその一端に形成するとともに、他端には蓋本体の裏面周縁に形成した支持部に枢支される第2ヒンジ部を形成し、支持部は閉蓋状態でその横幅が第2ヒンジ部の直径よりわずかに大きな内径としている。
【0004】
要するに、特許文献1の蝶番構造では、蝶番具は、スライド用長孔および第1ヒンジ部を備えた第1蝶番部材と、スライド用長孔に摺動可能に係合する摺動係合部を備えるとともに、蓋本体に第2ヒンジ部を介して枢支される第2蝶番部材とを備え、受枠内周の受座に枢支させて、蓋本体を、受枠の開口部に開閉可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2649314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の蝶番構造では、例えば、蓋本体を開く際に、蝶番具においては、閉蓋状態から第1蝶番部材のスライド用長孔に、第2蝶番部材の摺動係合部を摺動させつつ蓋本体を開き、蓋本体を持上げる際には、摺動係合部をさらにスライド用長孔の端部に摺動させて開蓋状態とするという操作を行わなければならない。このため、蓋本体の操作がしにくい(特許文献1の図10図13参照)。
【0007】
そこで本発明は、蓋本体の開閉操作が容易な地下構造物用蓋の蝶番構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、受枠と、該受枠に形成され上下方向に開口した開口部を開閉可能な蓋本体と、前記開口部に対して前記蓋本体を開閉可能に支持する蝶番部材とを備え、該蝶番部材は、前記蓋本体で前記開口部を閉じた全閉状態と、前記蓋本体を前記全閉状態から前記蝶番部材を介して上方に回動することで前記開口部を全開にした全開状態とに切替え可能とされた地下構造物用蓋の蝶番構造であって、前記受枠は、前記蓋本体を取付ける蓋取付部と、該蓋取付部の周囲に配置されて前記蝶番部材を取付ける蝶番取付部と、前記蝶番部材を上下方向に案内可能な案内壁とを備え、前記蝶番部材の上端部側は、前記蝶番取付部の上側において、略水平な支軸部材を介して前記蓋本体の設置部に揺動可能に枢支され、前記蝶番部材の下端部側には、前記蝶番取付部の下側において、前記蓋本体の全閉状態および全開状態に渡って、前記蝶番取付部の下方側の収納スペースに収まるように、前記上端部側に対して折曲された延設部が延長され、前記蝶番取付部は、前記蓋本体の全開状態のときに、前記延設部の上動を制限可能な制限部材を備えたことを特徴とする地下構造物用蓋の蝶番構造。
【0009】
上記構成の地下構造物用蓋の蝶番構造において、受枠に、蝶番部材を上下方向に案内可能な案内壁を備え、蝶番部材の上端部側は、支軸部材を介して蓋本体の設置部に支持され、蝶番部材の下端部側には、蓋本体の全閉状態および全開状態に渡って、蝶番取付部の下方側の収納スペースに収まるように、上端部側に対して受枠の内方に折曲された延設部が延長される。このため、蓋本体を全閉状態および全開状態に渡って操作するために支軸部材は上下方向に沿って動き、蓋本体は支軸部材を中心に回動するため、蓋体本体の開閉が容易である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の地下構造物用蓋の蝶番構造によれば、蓋本体を、蝶番部材を介して受枠の上下方向に回動して、全閉状態および全開状態に渡って操作するので、蓋本体の開閉操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態を表す溝蓋の平面図である。
図2】同溝蓋の幅方向の断面図であり、図1におけるZ1―Z1断面矢視図である。
図3】同溝蓋の長手方向の断面図であり、図1におけるZ2―Z2断面矢視図である。
図4】同溝蓋の凸部の断面図であり、Z3―Z3断面矢視図である。
図5】同蝶番部材の単体図を表し、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)はストッパ側からの側面図である。
図6】同溝蓋の凹部を表した断面図であり、Z4―Z4断面矢視図である。
図7】同蓋本体の全閉状態の一部破断正面図である。
図8】同蓋本体の途中状態の一部破断正面図である。
図9】同蓋本体の途中状態の一部破断正面図である。
図10】同蓋本体の全開状態の一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を示す地下構造物用蓋の蝶番構造を図1ないし図10を参照して説明する。本実施形態の蝶番構造は、図1に示すように、例えば高速道路に敷設された溝蓋1における蝶番構造である。
【0013】
初めに、溝蓋1の概略構成を説明する。図1ないし図3に示すように、溝蓋1は、側溝1Aの上側に配置されるものであり、路面Rに埋め込まれる平面視矩形状の受枠3と、受枠3に形成された開口部4を開閉可能な平面視矩形状の蓋本体5と、開口部4に対して蓋本体5を開閉可能に支持する、複数個の蝶番部材6とを備える。
【0014】
まず、受枠3の構成を説明する。受枠3は、本実施形態では、幅方向Bと長手方向Lとの長さが異なる平面視矩形状に形成されている。また、受枠3には、中心に、平面視矩形の開口となる開口部4(開口空間)が形成されている。
【0015】
図2に示すように、受枠3において、幅方向Bの両側に、幅横壁7と幅縦壁8とを備える。幅横壁7は、溝蓋1の使用状態において、路面Rに埋設されており、路面Rの自重を受ける水平方向の部材である。幅横壁7における長手方向Lには複数の固定壁7aが上下方向に形成される。固定壁7aには、アンカー9(図1図7ないし図10参照)が貫通されて、アンカー9が側溝1Aの上面に固定される。このように、受枠3は、側溝1Aの上面に固定されている。
【0016】
幅縦壁8は、幅横壁7の幅方向Bの端部から立上げられるよう構成されている。幅縦壁8の上端面8aは、路面Rから露出しており、背面(幅方向Bの外側)から路面Rを支持する部材である。
【0017】
また、幅縦壁8の内方途中位置、すなわち、幅縦壁8の上端面8aから下方位置に、幅方向蓋掛かり10が内方に向けて突出するように形成されている。この、幅方向蓋掛かり10は、蓋本体5の沈み込みを防止する部材である。
【0018】
図3に示すように、受枠3は、長手方向Lの両側に、長手横壁11と長手縦壁12とを備える。長手横壁11は、長手方向Lの内側に延長された水平方向の部材である。長手縦壁12は、長手横壁11の長手方向Lの外側の端部から立上げられ、長手縦壁12の上端面12aは、路面Rから露出しており、背面(長手方向Lの外側)から路面Rを支持する部材である。また、幅縦壁8の上端面8aと、長手縦壁12の上端面12aとは、同一位置(高さ)とされて、互いに略水平とされる。
【0019】
長手縦壁12の内方途中位置、すなわち、長手縦壁12の上端面12aから下方位置に、長手方向蓋掛かり13が内方に向けて突出するように形成されている。この、長手方向蓋掛かり13は、蓋本体5の沈み込みを防止する部材である。
【0020】
幅縦壁8および長手縦壁12は、一体的に形成されている。また、幅方向蓋掛かり10と長手方向蓋掛かり13とは、一体的に形成され、双方の蓋掛かりは、上端面が略水平方向であり、共に同高さに配置されて、蓋本体5を水平位置で保持する機能を有する。すなわち、受枠3の内面にはテーパー面が形成されることで、蓋本体5を取付ける(支持する)蓋取付部14が構成される。
【0021】
受枠3は、蝶番部材6を取付けるための、蝶番取付部15を備える。蝶番取付部15は、蝶番部材6の下端部側を取付けるために、蓋本体5の幅方向Bの一方側で、長手方向Lの両端に、それぞれ配置されている。各蝶番取付部15は、それぞれ同一の構成であるので、一方の構成を説明して、他方の蝶番取付部15の構成を代用する。しかしながら、蝶番取付部15の構成を説明する前に、蝶番部材6の構成を説明することが適当であるため、蝶番部材6の構成を説明する。
【0022】
蝶番部材6は、本実施形態では、幅方向Bの一側で、長手方向Lの二箇所に設けられて、それぞれ同一の構成であるので、一つの蝶番部材6の構成につき、他方の蝶番部材6の構成を代用する。
【0023】
図5に示すように、蝶番部材6は、上端部側6Aと下端部側6Bとを一体に備え、蓋本体5の装着状態(図6参照)において、図5(a)に示すように、幅方向Bからの側面視が略L字型に形成されている。また、蝶番部材6は、長手方向Lに所定の長さを有している。
【0024】
具体的に、蝶番部材6の上端部側6Aは、幅方向Bに長い頭部16と、頭部16において幅方向Bの中央部から下方に向けて延長される首部17とを備えている。頭部16は側面視において、略四角形に形成されている。また、四つの角は、円弧状に形成されている。
【0025】
頭部16は、幅方向Bの中央部であり、上下方向途中に軸孔16aを備えている。この軸孔16aに、長手方向Lの両側に突出する略水平な支軸部材18が貫通可能である。この支軸部材18は、頭部16とは別体形成であり、頭部16に着脱自在とされている。なお、支軸部材18は、円筒形状に形成されている。頭部16の上端面の幅方向Bの一端は傾斜面16bとされ、他端は水平面16cとされる。この傾斜面16bは、幅方向Bの一端部側に向けて、下向きに傾斜している。
【0026】
首部17は、頭部16よりも幅方向Bの寸法が短く設定され、頭部16の幅方向Bの中心から、90°で垂下されている。また、首部17の幅方向Bの中心と、支軸部材18の中心とは、上下方向で一致している。
【0027】
蝶番部材6の下端部側6Bには、延設部19が設けられている。延設部19は、首部17の下端から幅方向Bの他方側(内方)に延び、その先端は、頭部16の内方端部を超えて延長されている。延設部19は、首部17の下端から90°の角度で折曲して形成されている。
【0028】
延設部19の先端側に、長手方向Lに沿うストッパ20が形成されている。ストッパ20は、後述する蝶番取付部15の水平壁27に対して、下方向から上方に向けて係合する部材である。ストッパ20は、図5(b)に示すように、長手方向Lに沿う略円柱形状の部材であり、図5(c)に示すように、長手方向Lの中心が大面積の円形断面とされ、両側ほど小面積の円形断面とされる。以上、蝶番部材6の構成を説明した。
【0029】
このように、蝶番部材6は、上端部側6Aと下端部側6Bとを備え、支軸部材18に枢支された際に、上端部側6Aと下端部側6Bとでバランス好く配置されて、支軸部材18に対して、上端部側6Aと下端部側6Bのどちらへも傾かないか、もしくは、延設部19側が大重量に形成されている。本実施形態では、延設部19側が大重量に形成されている。
【0030】
受枠3に形成された蝶番取付部15に戻って、前述のように、各蝶番取付部15は、それぞれ同一の構成である。蝶番取付部15は、図6および図7に示すように、幅縦壁8、長手縦壁12の内方に一体的に形成されている。蝶番取付部15は、幅縦壁8、長手縦壁12の内方に一体的に形成される凹部21と、凹部21のさらに内方に形成され、凹部21よりも上方に突出される凸部22とを備える。
【0031】
凹部21は水平方向の上壁23を備えている。上壁23は、幅方向蓋掛かり10より高い位置に配置され、上壁23の上端面23aは平面とされている。また、上壁23には、蝶番部材6の上端部側6A、すなわち首部17を貫通する首孔24が形成されている。首孔24は平面視して矩形に形成され、首部17が首孔24に入ることで、蝶番部材6が上下方向に移動可能である。
凹部21の下方には、首部17を上下方向に案内するための凹部収納スペース25が配置されている。
【0032】
凸部22は、段付壁26と水平壁27と斜壁28とを備える。段付壁26は、凹部21の上壁23の内方端部に対して立上るように形成されている。
前記水平壁27は、段付壁26の上端部からさらに内方へ向かう水平な壁であり、上壁23よりも高い位置に配置されている。
斜壁28は、水平壁27の内方端から下方に向かって受枠3の下端3aまで延長されている。
【0033】
凸部22は、蝶番部材6の下端部側6Bの延設部19を上下方向に案内可能に構成されている。すなわち、凸部22の下方には、延設部19を上下方向に案内するための凸部収納スペース29が配置されている。また、この凸部収納スペース29は、ストッパ20を上下方向に案内可能であり、水平壁27は、ストッパ20の上動により、下方向から上方に向けて係合可能とする部材である。
【0034】
凹部21および凸部22には、幅方向Bの側壁が形成され、一方の側壁は長手縦壁12とされ、他方は、凹部収納スペース25および凸部収納スペース29の側方に対向して長手縦壁12に対向する対向壁30とされている。
【0035】
次に、蓋本体5の構成を説明する。図1に示すように、蓋本体5は、平面視して矩形形状に形成され、前記開口部4に開閉自在に装着される。蓋本体5は、矩形形状の蓋枠31と、蓋枠31に囲繞された蓋板(グレーチング本体)32と、リブ33と、蝶番部材6の頭部16を、支軸部材18を介して支持する設置部34とを備える。
【0036】
蓋枠31を形成する四方の部材31Aは縦方向に延長され、蓋本体5が開口部4を塞いだ状態(全閉状態X)において、蓋取付部14に、上方から当接可能である。また、蓋本体5の蓋上端面5aは、受枠3の上端面8a,12aと略同一平面内に配置されている。蓋板32は四方の部材31Aより薄く形成されており、蓋上端面5aは、蓋板32の上端面でもある。
【0037】
蓋本体5が開口部4を塞いだ状態(全閉状態X)において、蓋板32には、上下方向に貫通する複数の雨受孔5Aが形成されている。この雨受孔5Aを通過した水分(例えば、雨や雪)は、側溝1Aに流れる。また、蓋本体5の裏側には、雨受孔5Aを回避するように、下方に向く前記リブ33が、複数個形成されている。
【0038】
設置部34について説明する。本実施形態の蓋本体5では、蝶番部材6が二箇所あるから、設置部34も二箇所となる。そして、設置部34の構成は同一であるので、一箇所の構成で他方の設置部34の構成を代用する。
【0039】
図6に示すように、設置部34は、支軸部材18を長手方向Lに沿った水平方向で支持する一対の支持片を備えている。支持片は、長手方向Lの外側の外側支持壁35と、外側支持壁35に対して内側に形成された内側支持壁36とを備えている。
【0040】
蓋本体5の全閉状態Xにおいて、外側支持壁35および内側支持壁36は、蓋本体5の蓋上端面5aから下方に延長されおり、外側支持壁35および内側支持壁36の下端面35a,36aは、凹部21の上壁23の上端面23aに沿った平面である。また、図7で示すように、外側支持壁35および内側支持壁36は、幅方向Bにおいて、凸部22および凹部21の長さ(蝶番取付部15)に相当する分だけ延長されている。
【0041】
外側支持壁35および内側支持壁36の幅方向Bの一方端面35b,36bは、幅縦壁8の内面に沿っている。外側支持壁35と内側支持壁36とは、凹部21の上側に配置されて、しかも蓋本体5の全閉状態Xにおいて、受枠3内に収納されている。また、外側支持壁35および内側支持壁36の板面には、支軸部材18を貫通する貫通孔35c,36cが形成され、設置部34は、外側支持壁35と内側支持壁36との間にあって、蝶番部材6の頭部16が挿入される頭部スペース37を備えている。
【0042】
上記構成を備えた溝蓋1では、上記のように、受枠3の幅横壁7に形成された固定壁7aにアンカー9が貫通され、アンカー9が側溝1Aの上面に固定されて、受枠3は、側溝1Aの上面に固定されている。そして、受枠3を側溝1Aに固定した後、路面Rを施工する。このとき、路面Rは、受枠3の上端面8a,12aと面一となるよう施工する。
【0043】
また、受枠3の開口部4を、蓋本体5で閉塞する際、すなわち、全閉状態Xでは、蓋本体5の設置部34に、蝶番部材6を設置する。この際、設置部34の頭部スペース37には、蝶番部材6を挿通してから、支軸部材18を、外側支持壁35の貫通孔35c、蝶番部材6の頭部16の軸孔16a、内側支持壁36の貫通孔36cに貫通させる。
【0044】
そして、蝶番部材6の延設部19を、凹部21の下側に来るようにし、蝶番部材6の、ストッパ20、延設部19、および首部17を、首孔24に通して(図6参照)、蓋本体5を蓋取付部14で支持する。
【0045】
この状態が、蓋本体5の蓋上端部5aと、幅縦壁8の上端面8a、および長手縦壁12の上端面12aが面一であり、外側支持壁35と内側支持壁36とで構成される設置部34が凹部21の上側に配置され、蝶番取付部15が蝶番部材6の下端部側(延設部19)を取付けた全閉状態Xである。
【0046】
全閉状態Xにおいて、蝶番部材6の頭部16には水平面16cが形成され、この水平面16cが、蓋上端面5aと略一致する。このため、全閉状態Xにおいて、蓋上端面5aと路面Rとを面一として、車両の邪魔にならないように形成されている。換言すると、支軸部材18で支持されている蝶番部材6は、延設部19の重みで傾いた場合でも、傾斜面16bは路面Rから飛び出さないように形成されている。また、頭部16には、幅方向Bの一端部側に向けて、下向きに傾斜した傾斜面16bが形成されているが、図10に示すような、全閉状態Xから全開状態Yに蓋本体5が開く際に、蓋本体5の支障とならないように、傾斜面16bが形成されている。
【0047】
全閉状態Xでは、例えば、雨受孔5Aから雨水やごみ等が側溝1Aに入り込む。そして、溝蓋1を、メンテナンス等をする場合には、蓋本体5を、支軸部材18を中心に回動させて、蓋本体5の蓋上端面5aを上方から当接させた全開状態Yとする。
【0048】
以下、全閉状態Xから全開状態Yとする場合について、図7図10に基づいて説明する。図7は、蓋本体5の全閉状態Xである。また、図10は蓋本体5の全開状態Yである。図7の全閉状態Xから図10の全開状態Yとするには、図8図9に示すように蓋本体5の途中状態P1,P2を経る。
【0049】
図8の途中状態P1では、全閉状態Xから蓋本体5の他方端側を、受枠3から上方へ移動するように外す。このとき、蝶番部材6は、支軸部材18に枢支された際に、上端部側6Aと下端部側6Bとで、延設部19側が大重量に形成されている。また、蝶番部材6(下端部側6B)に形成された延設部19は、支軸部材18の上方への移動に倣って、凸部収納スペース29を上動する。また、蝶番部材6の頭部16は、支軸部材18に枢支されているから、頭部スペース37で回動する。
【0050】
図9の途中状態P2では、蓋本体5が受枠3に対して直交する方向を示している。図8の途中状態P1から、蓋本体5を持上げると、蝶番部材6の首部17は、さらに凹部収納スペース25で上動する。
【0051】
また、蝶番部材6(下端部側6B)に形成された延設部19は、支軸部材18の上方への移動に倣って、凸部収納スペース29をさらに上動する。また、蝶番部材6の頭部16は、支軸部材18に枢支されているから、頭部スペース37で回動する。
【0052】
図10の全開状態Yは、蓋本体5の蓋上端面5aが、路面Rに当接した状態で、この際、蝶番部材6の首部17は、図9の状態から、さらに凹部収納スペース25で上動する。
【0053】
そして、蝶番部材6は、蓋本体5の蓋上端面5aが、路面Rに当接した状態では、それ以上は回動することがない。このときも、蝶番部材6の頭部16は、支軸部材18に枢支されているから、頭部スペース37で回動する。また、外側支持壁35と内側支持壁36は、図7の全閉状態Xでは、凹部21の上側に配置されて、受枠3内に収納されているが、蓋本体5の蓋上端面5aが、路面Rに当接した全開状態Yでは、外側支持壁35と内側支持壁36は、受枠3から外れて、露出状態となる。また、延設部19は凸部収納スペース29をさらに上動するものの、ストッパ20が、蝶番取付部15の水平壁27に対して、下方向から上方に向けて係合することで、支軸部材18の枢支による蝶番部材6の回動が停止する。
【0054】
上記のようにして、蓋本体5を全閉状態Xから全開状態Yとして、側溝1Aのメンテナンスを行う。
【0055】
側溝1Aのメンテナンスが終了して、全開状態Yから全閉状態Xに戻す際は、図10の全開状態Yから、図9の途中状態P2、図8の途中状態P1、図7の全閉状態Xとする。このとき、蝶番部材6は側面視が略L字型に形成されており、外側支持壁35と内側支持壁36の一方端面35b,36bは、凹部21の上壁23を逆方向に摺動するから、蝶番部材6は、支軸部材18を介して下方向に動く。
【0056】
このように、全閉状態Xから全開状態Y、全開状態Yから全閉状態Xに、蓋本体5を受枠3に対して回動させる際には、蝶番部材6は、支軸部材18を介して上下方向に動く。このため、蓋本体5は、受枠3に対して回動すれば、蓋本体5の開閉が行えるから、蓋本体5の開閉が容易である。
【0057】
蝶番部材6の下端部側6Bには、蓋本体5の全閉状態Xおよび全開状態Yに渡って、蝶番取付部15の下方側の、凸部収納スペース29に収まるように、上端部側6Aに対して受枠3の内方に折曲された延設部19が延長されている。
また、蝶番部材6の上端部側6A(首部17)を、蓋本体5の全閉状態Xおよび全開状態Yに渡って、収める凹部収納スペース25が形成されている。このため、蝶番部材6の上下方向への移動が容易である。
【0058】
また、仮に、側溝1Aの上端が、受枠3の内部に入っていた場合を考える。しかしながら、全閉状態Xから全開状態Y、全開状態Yから全閉状態Xにおいて、蝶番取付部15には、凹部収納スペース25、凸部収納スペース29を形成しており、蝶番部材6は、受枠3の上下方向内部で収められているから、側溝1Aの上端が、受枠3の内部に入っていても、蝶番部材6は破壊されない。具体的に、例えば、これまでの受枠3の高さが80mmであって60mmに交換するような場合、すなわち、受枠3の高さが低くなっても、蝶番部材6は、受枠3の上下方向内部で収められているから、側溝1A等の上端が、受枠3の内側に入っていても、蝶番部材6は破壊されない。
【0059】
また、本実施形態にかかる溝蓋1(グレーチング蓋)は、上記構成の蝶番部材6を有し、設置部34の頭部スペース37に、蝶番部材6を挿通してから、支軸部材18を、外側支持壁35の貫通孔35c、蝶番部材6の頭部16の軸孔16a、内側支持壁36の貫通孔36cに貫通させて、全閉状態Xとする。また、全閉状態Xから全開状態Yとするには、蓋板(グレーチング本体)32を開けばよく、特別な操作が必要ない。このため、従来に比べて溝蓋1の構成が簡素であり、製造コストも安価である。
【0060】
本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではない。上記実施形態では、蝶番部材6は、延設部19側が大重量に形成されていた。しかしながら、上端部側6Aと下端部側6Bとでバランス好く配置されて、支軸部材18に対して、上端部側6Aと下端部側6Bのどちらへも傾かないように形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…溝蓋、1A…側溝、3…受枠、4…開口部、5…蓋本体、6…蝶番部材、6A…上端部側、6B…下端部側、7…幅横壁、8…幅縦壁、11…長手横壁、12…長手縦壁、14…蓋取付部、15…蝶番取付部、16…頭部、16a…軸孔、16b…傾斜面、17…首部、18…支軸部材、19…延設部、20…ストッパ、21…凹部、22…凸部、23…上壁、23a…上端面、24…首孔、25…凹部収納スペース、26…段付壁、27…水平壁、28…斜壁、29…凸部収納スペース、30…対向壁、31…蓋枠、32…蓋板、34…設置部、35…外側支持壁、35a,36a…下端面、35b,36b…一方端面、35c,36c…貫通孔、36…内側支持壁、37…頭部スペース、B…幅方向、L…長手方向、R…路面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10