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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】警報装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/02 20060101AFI20241211BHJP
   B66C 15/06 20060101ALI20241211BHJP
   B66C 13/08 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G08B21/02
B66C15/06
B66C13/08 H
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021022373
(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公開番号】P2022124627
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】原澤 悠
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-065993(JP,U)
【文献】特開2013-192045(JP,A)
【文献】特開2015-065540(JP,A)
【文献】特開昭61-253996(JP,A)
【文献】特開2004-064374(JP,A)
【文献】特開2004-147311(JP,A)
【文献】特開2008-236225(JP,A)
【文献】特開2005-294614(JP,A)
【文献】特開2004-112211(JP,A)
【文献】特開2012-197041(JP,A)
【文献】特開平06-056385(JP,A)
【文献】特開昭61-264995(JP,A)
【文献】特表2017-508108(JP,A)
【文献】米国特許第04823908(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-31/00
B66C 15/06
B66C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体、
筐体に取り付けられ、揚重機を用いて前記筐体を吊り下げるための吊環、
前記筐体内に配置され、搬送波として超音波を用い、前記筐体の下方へ音を出力するように構成される少なくとも一つの第1のスピーカ、および
前記筐体内に配置され、20Hz以上20kHz未満の周波数の音を出力するように構成される少なくとも一つの第2のスピーカを備える警報装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つの第2のスピーカの出力は、前記少なくとも一つの第1のスピーカの出力よりも小さい、請求項1に記載の警報装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの第1のスピーカは、複数の第1のスピーカを含む、請求項1に記載の警報装置。
【請求項4】
前記複数の第1のスピーカが搭載される配線基板をさらに含む、請求項3に記載の警報装置。
【請求項5】
前記配線基板は湾曲しており、前記複数の第1のスピーカが搭載される表面の断面が放物線である、請求項4に記載の警報装置。
【請求項6】
前記配線基板は可撓性を有し、前記複数の第1のスピーカが搭載される表面の断面が放物線である状態と直線である状態の間で可逆的に変形するように構成される、請求項4に記載の警報装置。
【請求項7】
前記放物線の焦点が前記表面側に位置する、請求項5または6に記載の警報装置。
【請求項8】
前記放物線の焦点が前記表面に対して反対の表面側に位置する、請求項5または6に記載の警報装置。
【請求項9】
前記放物線の焦点距離は、0.03m以上6m以下である、請求項5または6に記載の警報装置。
【請求項10】
前記配線基板は複数の副基板を含み、
前記複数の副基板には、それぞれ前記複数の第1のスピーカの少なくとも一つが配置され、
前記配線基板は、隣接する前記副基板間の角度が可逆的に変化するように構成される、請求項4に記載の警報装置。
【請求項11】
前記筐体に接続されるジンバルをさらに備え、
前記ジンバルは、互いに直交する二つまたは三つの軸を中心とする回転によって前記筐体の姿勢を安定化するように構成される、請求項1に記載の警報装置。
【請求項12】
前記少なくとも第1のスピーカと前記少なくとも第2のスピーカを制御するための信号を受信する信号受信部を前記筐体内にさらに備える、請求項1に記載の警報装置。
【請求項13】
前記変形を制御するスイッチをさらに備える、請求項6に記載の警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、揚重機で吊り上げられる吊荷に直接または間接的に取り付けられ、警告音を出力する警報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場などでは、資材を運搬する際、クレーンなどの揚重機が用いられることがある。この時、吊り上げられた資材(吊荷)の下や資材の運搬方向に人が立ち入ることを防ぐため、玉掛警報器と呼ばれる警報装置が用いられる。警報装置から警告音を出力することで、作業員や通行人に対して資材が吊り上げられていることを周知させ、資材落下の危険性に対して適切な行動を促すことができる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開第2018-80030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、揚重機による資材運搬の際に警告音を発するための、新規な構造を有する警報装置を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、周辺環境に騒音をもたらさず、必要な範囲に選択的に警告音を出力ことができる警報装置を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは警報装置である。この警報装置は、筐体、少なくとも一つの第1のスピーカ、および少なくとも一つの第2のスピーカを備える。少なくとも一つの第1のスピーカは、筐体内に配置され、搬送波として超音波を用い、前記筐体の下方へ音を出力するように構成される。少なくとも一つの第2のスピーカは、筐体内に配置され、20Hz以上20kHz未満の周波数の音を出力するように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る実施形態により、揚重機による資材運搬の際に警告音を出力する範囲を選択的に設定することができ、資材運搬における安全性が確保されるとともに周辺環境に配慮した資材運搬作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態の一つである警報装置を用いた資材運搬の概念図。
図2】本発明の実施形態の一つである警報装置の模式的斜視図とブロック図。
図3】本発明の実施形態の一つである警報装置の模式的側面図と上面図。
図4】本発明の実施形態の一つである警報装置の一部の模式的底面図と端面図。
図5】本発明の実施形態の一つである警報装置の一部の模式的斜視図と側面図。
図6】本発明の実施形態の一つである警報装置の特性を示す模式図。
図7】本発明の実施形態の一つである警報装置の一部の模式的側面図。
図8】本発明の実施形態の一つである警報装置の一部の模式的底面図と側面図。
図9】本発明の実施形態の一つである警報装置の模式的斜視図と上面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0009】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。同一または類似の構造を有する複数の要素をそれぞれ区別して表記する際には、符号の後にハイフンと自然数を付す。同一または類似の構造を有する複数の要素を纏めて表記する際には、符号のみを用いる。
【0010】
1.全体構成
図1に、本発明の実施形態の一つに係る警報装置100を用いて資材を運搬する態様を模式的に示す。資材12は工事現場や建築現場などで用いられる様々な材料、工具、治具などであり、その大きさや重さ、用途、種類に限定はない。揚重機は、そのブーム10の先端からワイヤーロープ14で吊り下げられたフック16を有しており、資材12は玉掛ロープ18によってフック16に取り付けられる。警報装置100は、資材12に直接取り付けられてもよく、あるいは玉掛ロープ18若しくは介錯ロープ22を介して間接的に取り付けられてもよい。あるいは、資材12、玉掛ロープ18または介錯ロープ22に取り付けられる中継ロープ20を介して資材12に間接的に取り付けられてもい。後述するように、警報装置100には特性の異なる少なくとも二種類のスピーカが内蔵されており、これらのスピーカから音(警告音)が出力される。これにより、資材運搬が行われていることを周知することができ、資材落下の危険性に対して適切な行動を促すことができる
【0011】
図2(A)に警報装置100の外観を模式的に示す。警報装置100は筐体110を備え、筐体110内に後述する種々の構成要素が内蔵される。筐体110は金属またはプラスチックを含み、その形状に制約はない。例えば図2(A)に示すように、筐体110はほぼ円柱形状でもよく、あるいは楕円柱、多角柱、立方体、直方体の形状でもよい。図示しないが、筐体110の底面は、金属またはプラスチックの底蓋で密閉されていてもよく、あるいはメッシュ状の底蓋が設けられていてもよい。筐体110の上部には、警報装置100を吊り下げるための吊環112を設けることができ、吊環112を用いることで、任意の対象物(例えば資材12、玉掛ロープ18、中継ロープ20、介錯ロープ22など)に警報装置100を取り付けることができる。任意の構成として、警報装置100はさらに、筐体110を収容し、持ち手を有する可撓性の収納袋114を含んでもよい。収納袋114に警報装置100を収容した状態で資材12、玉掛ロープ18、中継ロープ20、または介錯ロープ22に吊環112と持ち手を通すことにより、これらのロープが吊環112から外れても警報装置100の落下を防止することができる。
【0012】
図2(B)に警報装置100のブロック図の一例を示す。警報装置100は、警報装置100全体を制御するための制御部120を有し、制御部120はバッテリー122に接続されて電力の供給を受ける。警報装置100はさらに、少なくとも一つの第1のスピーカ130、少なくとも一つの第2のスピーカ150を含む。少なくとも一つの第1のスピーカ130と少なくとも一つの第2のスピーカ150は、それぞれ複数の第1のスピーカ130と第2のスピーカ150を含んでもよい。任意の構成として、警報装置100は変形機構140や信号受信部160などをさらに有してもよい。
【0013】
制御部120は、例えばマイクロコンピュータで構成することができ、マイクロコンピュータは、中央演算ユニット(CPU)、リードオンリメモリ(ROM)やランダムアクセスメモリ(RAM)などによって構成されるメモリ部、および周辺回路などによって構成される。制御部120は、第1のスピーカ130、第2のスピーカ150、変形機構140、信号受信部160などを制御するよう、プログラミングされる。
【0014】
バッテリー122は警報装置100を動作させるための電力を供給する構成要素であり、乾電池に例示される一次電池でもよく、あるいはリチウムイオン電池などの可逆的充放電が可能な二次電池でもよい。バッテリー122は筐体110内に設けられるバッテリーボックス116内に着脱可能なように収容してもよい(図3(A)参照)。
【0015】
2.第1のスピーカ
警報装置100の側面図を図3(A)に、上面図を図3(B)と図3(C)に模式的に示す。説明のため、図3(A)では筐体110の一部が、図3(C)では筐体110の上面が省略されている。図3(A)と図3(C)に示すように、第1のスピーカ130と第2のスピーカ150は筐体110内に収容される。第1のスピーカ130と第2のスピーカ150は、筐体110内に設けられる支柱118に取り付けられていてもよく、あるいは筐体110の内壁や底面などに直接または間接的に取り付けられていてもよい。第1のスピーカ130と第2のスピーカ150の上下関係に制約はなく、図3(A)と図3(C)に示すように、第2のスピーカ150が第1のスピーカ130よりも上(吊環112が設けられる側)に位置してもよく、逆に第1のスピーカ130が第2のスピーカ150よりも上に配置されていてもよい。後述するように、第1のスピーカ130は下方向に警告音を出力するため、第2のスピーカ150を第1のスピーカ130よりも上に配置することが好ましい。
【0016】
第1のスピーカ130は、超音波、すなわち、20kHzまたはそれ以上の周波数の音波を搬送波とした振幅変調信号で駆動されるスピーカである。このため、指向性が高く、目的とする場所に選択的に音を伝達することができる。第1のスピーカ130は、警報装置100の下方向(吊環112に対して反対方向)に警告音を出力するように配置される。したがって、図1に示すように、第1のスピーカ130から出力される警告音を資材12の下方の空間に選択的に伝達することができる。より具体的には、資材12と重なる領域または資材12が落下する虞がある領域に対して選択的に警告音を伝達することができる。同時に、上記領域以外の領域では、警告音が届かない、または警告音がわずかに聞こえる状態とすることができる。換言すると、資材12の運搬に関与しない領域(例えば工事現場の外側など)では、警告音が聞こえない、またはほとんど聞こえない状況を作り出すことができるため、現場周辺に対して警告音に起因する騒音公害を招くことが無い。第1のスピーカ130が出力する警告音は任意に決定すればよい。また、この警告音の音量(すなわち強度)は一定でもよく、可変でもよい。例えば、作業員が確実に警告音を感知することができるよう、強度を70デシベル以上120デシベル以下、または80デシベル以上100デシベル以下、典型的には90デシベルとすればよい。
【0017】
図3(B)に示すように、第1のスピーカ130の動作は、例えば筐体110の上面または側面に設けられるスイッチ124によって制御してもよい。スイッチ124は、オンとオフの切り替えスイッチでもよく、あるいはオンとオフの切替に加えて警告音の音量を制御する回転式スイッチでもよい。
【0018】
図4(A)に第1のスピーカ130の模式的底面図を、図4(B)に図4(A)の鎖線A-A´に沿った模式的端面図を示す。第1のスピーカ130は、配線基板132上に配置され、配線基板132に設けられる配線(図示しない)を介してバッテリー122から電力の供給を受けるように構成することができる。配線基板は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ノボラック樹脂、ポリイミドなどの高分子材料、あるいはセラミックなどの無機化合物を含む絶縁体であり、その上にバッテリー122からの電力を第1のスピーカ130に供給するための金属配線を備える。複数の第1のスピーカ130を設ける場合には、その配置に制約はなく、例えばマトリクス状に配置してもよく、あるいは第1のスピーカ130の中心が正六角形の頂点に位置する六方細密構造で配置してもよい。
【0019】
任意の構成として、警報装置100は、配線基板132の対向する一対の辺をそれぞれ挟持する一対の支持フレーム134を有してもよい。配線基板132の表面形状が長方形の場合、支持フレーム134は長辺を挟持してもよく、短辺を挟持してもよい。支持フレーム134を用いることで、第1のスピーカ130と配線基板132を筐体110内で安定的に固定することができるとともに、後述するように、配線基板132の形状を制御することができる。
【0020】
例えば湾曲可能な程度の可撓性を有する配線基板132を用い、図5(A)に示すように、湾曲した一対の支持フレーム134で配線基板132の互いに対向する一対の辺を挟持することによって、配線基板132を湾曲させた状態で保持してもよい。これにより、例えば配線基板132の表面の断面形状を放物線にすることができる。配線基板132の湾曲方向に制約はなく、図5(A)や図5(B)に示すように、配線基板132の第1のスピーカ130が設けられる面が凸となるように湾曲してもよく、あるいは図5(C)に示すように、第1のスピーカ130が設けられる面と反対側の面が凸となるように配線基板132を変形してもよい。前者の場合、配線基板132の表面の断面が形成する放物線の焦点は、第1のスピーカ130が設けられる面に対して反対側に位置する。後者の場合には、焦点は第1のスピーカ130が設けられる面側に位置する。
【0021】
配線基板132を変形させることで、第1のスピーカ130の向きが変化するため、その結果、音の出力方向を変化させることができる。例えば図6(A)に示すように、第1のスピーカ130が設けられる配線基板132の面が凸となり、かつその面の断面が放物線となるように配線基板132を変形した場合、第1のスピーカ130に対して反対側の面側に位置する放物線の焦点136を中心として放射状に警告音が出力される(点線矢印参照)。その結果、警告音が伝達される範囲Rが広がる。図6(B)に示すように、第1のスピーカ130が設けられる配線基板132の面と反対の面が凸となり、かつその面の断面が放物線となるように配線基板132を変形した場合も同様である。この場合、警告音は、当該面側に位置する放物線の焦点136に向かってが収束した後(点線矢印参照)、焦点136を中心として放射状に広がる。その結果、警告音が伝達される範囲Rが広がる。警告音を伝達する対象(例えば地面)から警報装置100までの距離にも依存するが、範囲RとRは、配線基板132の形状を制御して焦点距離L、Lを調整することで、任意に調整することができる。焦点距離L、Lは、例えば0.03m以上6m以下となるように設定すればよい。このため、資材12の大きさや吊り上げる高さを考慮して警告音が届く範囲を調整することができる。なお、配線基板132の第1の30が設けられる面が平面の場合には、その焦点距離は無限大であると認識することができる。
【0022】
支持フレーム134の変形が可逆的に行えるように警報装置100を構成してもよい。支持フレーム134を可逆的に変形させる機構に制約はなく、例えば支持フレーム134に変形機構140を設け、筐体110の上面または側面に設けられるスイッチ126(図3(B)参照)を用いて変形機構140を操作してもよい。変形機構140の構成も任意に決定することができ、例えば図7に示すように、変形機構140は、支持フレーム134と重なる台座142と台座142に組み込まれた複数の支持ピン144を含んでもよい。この場合、支持ピン144は図示しないケーブルやギアなどを介してスイッチ126に接続され、スイッチ126の操作を介して台座142から上下に移動するように構成される。スイッチ126の操作による支持ピン144の移動範囲を設定しておくことで、支持フレーム134を変形することができる。
【0023】
支持フレーム134の変形に追従し、配線基板132が変形する。その結果、配線基板132を表面が平坦な状態(第1のスピーカが搭載される表面の断面が直線の状態)と湾曲した状態との間で可逆的に相互変換させることができる。なお、支持フレーム134の変形は段階的であり、焦点距離LまたはLが非連続的に変化するよう変形機構140を構成してもよく、逆に支持フレーム134の変形が連続的であり、焦点距離LまたはLが連続的に変化するよう変形機構140を構成してもよい。
【0024】
あるいは、図8(A)に示すように、支持フレーム134を設けず、配線基板132を複数のサブユニット(以下、副基板)138で構成してもよい。複数の副基板138は、図8(A)に示すようにストライプ状に配列してもよく、図示しないがマトリクス状に配置してもよい。各副基板138にも一つまたは複数の第1のスピーカ130が設けられる。副基板138は、互いに分離していてもよく、あるいは隣接する副基板138間で相対的に位置または方向が変化するように接続されていてもよい。各副基板138は筐体110内で固定されていてもよく、あるいは全ての副基板138に重なるように変形機構140を設け、変形機構140を利用して可逆的に各副基板138を動かしてもよい。複数の副基板138で配線基板132を構成し、隣接する二つの副基板138の表面の角度θまたは方向(法線の方向)を調整することで、警告音の出力方向を制御することができる。
【0025】
3.第2のスピーカ
第2のスピーカ150は、20Hz以上20kHz未満の周波数を有する音(警告音)を出力するように構成される。このため、第2のスピーカ150からの警告音はほぼ等方的に出力され、例えば資材12を地面よりも高い位置に運搬する場合、運搬先の作業員に警告音を認識させることができる。第2のスピーカ150は、警告音の出力方向が第1のスピーカ130の警告音の出力方向と交差するように配置される。好ましくは、第2のスピーカ150と第1のスピーカ130の警告音の出力方向が直交するよう、第2のスピーカ150が配置される。警報装置100が第2のスピーカ150を複数含む場合には、図3(A)と図3(C)に示すように、出力方向が放射状になるように第2のスピーカ150を配置してもよい。
【0026】
第2のスピーカ150の動作も、例えば筐体110の上面または側面に設けられるスイッチ126によって制御してもよい(図3(B)参照)。スイッチ124も、図3(B)に示すようなオンとオフの切り替えスイッチでもよく、あるいはオンとオフの切替に加えて警告音の音量を制御する回転式スイッチでもよい。第2のスピーカ150が出力する警告音も任意に決定することができ、第1のスピーカ130の警告音と同じでもよく、異なってもよい。
【0027】
第2のスピーカ150から出力される警告音の強度は、一定でもよく、あるいは可変でもよい。この警告音の強度は、警告音が運搬先の作業員によって利用されるよう、その出力を調整してもよい。この場合には、資材12が接近した際に警告音が聞こえる程度の音量で警告音を出力すればよく、第1のスピーカ130から出力される警告音の強度よりも小さくてもよい。例えば第2のスピーカ150の警告音の強度は、50デシベル以上80デシベル以下に設定してもよい。このように警告音の強度を設定することで、第1のスピーカ130から出力される警告音によって資材運搬作業の安全性が向上するだけでなく、周辺環境に対する騒音被害の抑制・防止に寄与することができる。
【0028】
また、上述したように、警報装置100は、資材12に直接または間接的に取り付けられるものの、揚重機に取り付ける必要は無い。このため、警報装置100の取り外しが容易であり、警告音を発するスピーカが搭載された揚重機を必要としない。すなわち、資材12の運搬の際には、揚重機を配置するスペースと資材12の重さだけを考慮して揚重機を選択することができ、揚重機の選択においてスピーカが搭載されているか否かを考慮する必要がない。
【0029】
4.その他の構成
4-1.信号受信部
任意の構成である信号受信部160(図2(B)参照)は、図示しないアンテナを含み、スマートフォンやタブレットなどの携帯通信端末からの信号を受信できるように構成される。信号には種々の命令、例えば第1のスピーカ130や第2のスピーカ150のオン-オフ操作命令、音量調整命令、変形機構140に対する命令などが含まれる。この命令を信号受信部160が受信すると制御部120に送られ、制御部120はこの命令に従って新たに命令を生成する。生成された命令は第1のスピーカ130や第2のスピーカ150、または変形機構140へ送られ、これによって第1のスピーカ130や第2のスピーカ150、または変形機構140が動作する。このため、信号受信部160を設けることで、警報装置100を遠隔的に操作することが可能となり。例えば資材12が揚重機によって運搬されている状態において、警告音の強度調整や警告音が届く範囲などを調節することができる。
【0030】
4-2.ジンバル
任意の構成として、警報装置100はさらに、筐体110の姿勢を安定化するためのジンバル170を備えてもよい(図9(A)、図9(B))。ジンバル170は筐体110に接続され、ジンバル170を介して筐体110が資材12、玉掛ロープ18、中継ロープ20、または介錯ロープ22などに取り付けられる。ジンバル170の構成に制約はなく、互いに直交する二つの軸、または三つの軸を中心とする回転によって筐体110の姿勢が安定化されるようにジンバル170を構成すればよい。図9(A)に示すジンバル170は三つの軸で姿勢を安定化させる構造を有しており、ホルダ172、ロールシリンダ174、アーム176、ヨーシリンダ178、吊環180などを含む。
【0031】
ホルダ172はジンバル170と筐体110を固定する機能を有し、図示しないベアリングを介し、ピッチ軸Apを中心に回転可能なように筐体110と接続される。換言すると、ホルダ172と筐体110は、ピッチ軸Apを中心に相対的に回転する。
【0032】
ロールシリンダ174は、アーム176とホルダ172を互いに接続する。アーム176は、図示しないベアリングを介し、ロール軸Arを中心に回転可能なようにホルダ172に接続される。換言すると、ホルダ172とロールシリンダ174は、ロール軸Arを中心に相対的に回転する。
【0033】
アーム176はロールシリンダ174とヨーシリンダ178に接続され、これらを互いに固定する。
【0034】
ヨーシリンダ178は、図示しないベアリングを介してヨー軸Ayを中心に相対的に回転可能なように接続される上部178-1と下部178-2を有しており、上部178-1には、資材12、玉掛ロープ18、中継ロープ20、または介錯ロープ22に取り付けるための吊環180が設けられる。ここで、ヨー軸Ay、ロール軸Ar、ピッチ軸Apは互いに直交する。例えばヨー軸Ayは鉛直方向となり、ロール軸Arとピッチ軸Apは水平面と平行であってもよい。
【0035】
上述したジンバル170は互いに直交する三つの軸を中心にホルダ172、ロールシリンダ174、ヨーシリンダ178が回転可能な構成を有しており、ジンバル170を用いて筐体110を保持することで、資材12の運搬時に警報装置100に対して水平方向に加速度が働いても、筐体110自体の姿勢をほぼ一定に維持することができる。その結果、第1のスピーカ130から出力される警告音が伝達される方向をほぼ一定に保つことができるため、資材12の下または資材12が落下する虞のある範囲に対し、常に選択的に第1のスピーカ130からの警告音を伝達することができる。このことは、運搬作業の安全性に寄与するだけでなく、第1のスピーカ130からの警告音による騒音公害を効果的に防止することに寄与する。
【0036】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0037】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0038】
10:ブーム、12:資材、14:ワイヤーロープ、16:フック、18:玉掛ロープ、20:中継ロープ、22:介錯ロープ、100:警報装置、110:筐体、112:吊環、114:収納袋、116:バッテリーボックス、118:支柱、120:制御部、122:バッテリー、124:スイッチ、126:スイッチ、130:第1のスピーカ、132:配線基板、134:支持フレーム、136:焦点、138:副基板、140:変形機構、142:台座、144:支持ピン、150:第2のスピーカ、160:信号受信部、170:ジンバル、172:ホルダ、174:ロールシリンダ、176:アーム、178:ヨーシリンダ、178-1:上部、178-2:下部、180:吊環
図1
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図9