(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】車両施設の開閉扉装置
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20241211BHJP
E06B 7/28 20060101ALI20241211BHJP
E04H 6/42 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
E05D15/06 124A
E06B7/28 K
E04H6/42 Z
(21)【出願番号】P 2021026284
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 博之
(72)【発明者】
【氏名】曽我 隆之
(72)【発明者】
【氏名】金指 健一
(72)【発明者】
【氏名】梶原 雄大
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-119726(JP,A)
【文献】特開2005-299077(JP,A)
【文献】実開平05-034280(JP,U)
【文献】実開平03-089875(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0242365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 13/00
E05D 15/00-15/58
E06B 7/28
E04H 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に開閉移動する横開き方式の開閉扉を備えた車両施設の開閉扉装置であって、
前記車両施設の床面に前記開閉扉の開閉方向に沿って形成された凹部と、該凹部の底部に配置され前記開閉扉を案内する凸部と、を備えたガイドレールを含み、
前記凹部は、上部の横幅が底部の横幅よりも広く形成された形状を備
え、前記底部と前記上部との間に前記開閉方向に沿って形成された集塵溝を備える、
ことを特徴とする車両施設の開閉扉装置。
【請求項2】
前記凹部は、
前記集塵溝と前記上部との間に形成された傾斜面を備える、請求項1に記載の車両施設の開閉扉装置。
【請求項3】
前記車両施設は、異なる軸線上を移動可能に構成された複数の開閉扉を備え、前記凸部は、前記複数の開閉扉の軸線に沿って配置され、前記凹部は、複数の前記凸部の間に前記開閉方向に沿って形成された集塵溝を備える、請求項1に記載の車両施設の開閉扉装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記床面に埋設されるベースプレートにより構成される、請求項1に記載の車両施設の開閉扉装置。
【請求項5】
前記開閉扉は前記凸部に案内されるガイドシューを備え、該ガイドシューは先端に向かって横幅が狭くなるように形成された除塵部を備える、請求項1に記載の車両施設の開閉扉装置。
【請求項6】
前記除塵部は、前記ガイドシューに形成された加工面又は前記ガイドシューに配置されたガイドブロック若しくはガイドプレートにより構成されている、請求項5に記載の車両施設の開閉扉装置。
【請求項7】
前記凸部は、前記床面と略同一の高さとなるように形成されている、請求項1に記載の車両施設の開閉扉装置。
【請求項8】
前記車両施設は、機械式駐車装置である、請求項1に記載の車両施設の開閉扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両施設の開閉扉装置に関し、特に、左右方向に開閉移動する横開き方式の開閉扉を備えた車両施設の開閉扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、立体空間を効率的に利用する大規模な機械式駐車装置として、水平循環方式、エレベータ方式、垂直循環方式等、種々の駐車装置が既に開発されている。これらの機械式駐車装置は、一般に、車両を入庫又は出庫させる乗降領域と、該乗降領域の出入口に配置された開閉扉と、を備えている。かかる開閉扉は、上下方向に開閉する上開き方式と左右方向に開閉する横開き方式とに大別される。
【0003】
例えば、特許文献1には、横開きに開閉移動する機械式駐車装置の扉装置であって、上から吊り上げられ前記機械式駐車装置の内部と外部を遮断する扉と、前記扉に係合する溝を有するガイドレールとから構成され、前記ガイドレールの上面はフロアと同じ高さであり、前記扉は、前記扉の下面に設置され前記溝に係合し前記溝の底より底面が高い突出部と、前記突出部の前記底面に設置され先端が前記溝の前記底に接する掃き具とを備える、ことを特徴とする機械式駐車装置の扉装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1には、掃き具により集塵した小石等の塵の排出方法として、ガイドレールの下方に集塵箱を設置する方法とガイドレールの両端部の溝の深さをテーパ状に浅くする方法とが開示されている。集塵箱を設置する場合には、ガイドレールの下方に集塵箱を設置する空間が必要である、構造が複雑になる、集塵箱に溜まった塵の回収が必要になる等の問題があった。また、両端部をテーパ状にした場合には、ガイドレール内の塵の移動距離が長くなりガイドレールが詰まりやすい、掃き具に巻き込まれた塵は排出することができない等の問題があった。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、簡便な構造でガイドレールに入り込んだ異物を排除することができる、車両施設の開閉扉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、左右方向に開閉移動する横開き方式の開閉扉を備えた車両施設の開閉扉装置であって、前記車両施設の床面に前記開閉扉の開閉方向に沿って形成された凹部と、該凹部の底部に配置され前記開閉扉を案内する凸部と、を備えたガイドレールを含み、前記凹部は、上部の横幅が底部の横幅よりも広く形成された形状を備え、前記底部と前記上部との間に前記開閉方向に沿って形成された集塵溝を備える、ことを特徴とする車両施設の開閉扉装置が提供される。
【0008】
前記凹部は、前記集塵溝と前記上部との間に形成された傾斜面を備えていてもよい。
【0009】
前記車両施設は、異なる軸線上を移動可能に構成された複数の開閉扉を備え、前記凸部は、前記複数の開閉扉の軸線に沿って配置され、前記凹部は、複数の前記凸部の間に前記開閉方向に沿って形成された集塵溝を備えていてもよい。
【0010】
前記凹部は、前記床面に埋設されるベースプレートにより構成されていてもよい。
【0011】
前記開閉扉は前記凸部に案内されるガイドシューを備え、該ガイドシューは先端に向かって横幅が狭くなるように形成された除塵部を備えていてもよい。
【0012】
前記除塵部は、前記ガイドシューに形成された加工面又は前記ガイドシューに配置されたガイドブロック若しくはガイドプレートにより構成されていてもよい。
【0013】
前記凸部は、前記床面と略同一の高さとなるように形成されていてもよい。
【0014】
前記車両施設は、例えば、機械式駐車装置である。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係る車両施設の開閉扉装置によれば、ガイドレールを構成する凹部の上部を底部よりも幅広に形成したことにより、ガイドレールに案内されて開閉移動する開閉扉に接触した小石等の異物を凹部から外部に弾き飛ばすことができ、簡便な構造でガイドレールに入り込んだ異物を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両施設の開閉扉装置の全体を示す正面図であり、(A)は開閉扉の閉状態、(B)は開閉扉の開状態、を示している。
【
図3】
図2におけるA-A線断面図であり、(A)は開閉扉の閉状態、(B)は開閉扉の開状態、を示している。
【
図4】ガイドレールの変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、を示している。
【
図5】ガイドシューの変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について
図1(A)~
図5(C)を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の一実施形態に係る車両施設の開閉扉装置の全体を示す正面図であり、(A)は開閉扉の閉状態、(B)は開閉扉の開状態、を示している。
図2は、
図1に示したガイドレールの平面図である。
図3は、
図2におけるA-A線断面図であり、(A)は開閉扉の閉状態、(B)は開閉扉の開状態、を示している。
【0018】
本発明の一実施形態に係る車両施設の開閉扉装置1は、
図1に示したように、左右方向に開閉移動する横開き方式の開閉扉2と、開閉扉2を左右方向に開閉移動可能に吊り下げる駆動レール3と、開閉扉2を開閉移動させる駆動手段4と、開閉扉2の下部に配置されたガイドレール5と、を備えている。
【0019】
開閉扉装置1は、車両(車輪を備えた乗物の全てを含む。)が通過する出入口11に配置される。車両施設は、例えば、機械式駐車装置である。機械式駐車装置には、水平循環方式、エレベータ方式、垂直循環方式等の種々の方式の機械式駐車装置が含まれる。なお、「車両施設」は、機械式駐車装置に限定されるものではなく、車輪を転動させながらガイドレール5上を通過する出入口11を備えた全ての設備を含む趣旨である。
【0020】
開閉扉2は、例えば、開閉時の移動距離が長い一対の高速扉21と、開閉時の移動距離が短い一対の低速扉22と、を備えている。一対の高速扉21は、同一軸線上を移動するように配置されており、開閉扉2の閉状態において、出入口11の中央部を閉鎖するように構成されている。一対の低速扉22は、同一軸線上を移動するように配置されており、開閉扉2の閉状態において、高速扉21に隣接する外側の空間を閉鎖するように構成されている。
【0021】
高速扉21及び低速扉22は、前後に配置された異なる軸線上を移動可能に構成されている。また、高速扉21及び低速扉22は、開閉に要する時間が同じとなるように、連動装置により連結されていてもよい。
【0022】
本実施形態では、開閉扉2が開閉時に左右両方向に移動する両開きの場合について説明しているが、開閉扉2は開閉時に左右一方向に移動する片開きであってもよい。また、本実施形態では、合計四枚の扉によって開閉扉2を構成しているが、開閉扉2を構成する扉の枚数は任意であり、両開きの場合には偶数枚、片開きの場合には奇数枚又は偶数枚によって構成される。
【0023】
駆動手段4は、例えば、駆動モータと、駆動モータの回転運動を直線運動に変換して開閉扉2に伝達する動力伝達手段と、を備えている。動力伝達手段は、ベルト駆動装置であってもよし、チェーン駆動装置であってもよい。また、駆動手段4は、直動アクチュエータ等であってもよい。
【0024】
図1(A)に示したように、開閉扉2の閉状態では、出入口11は高速扉21及び低速扉22により閉鎖されており、駆動手段4が作動すると、高速扉21は扉約二枚分の距離を移動し、低速扉22は扉約一枚分の距離を移動し、
図1(B)に示したように、出入口11が開放される。
【0025】
ガイドレール5は、車両施設の床面12に開閉扉2の開閉方向に沿って形成された凹部51と、凹部51の底部に配置され開閉扉2を案内する凸部52と、を備えている。凹部51は、床面12に埋設されるベースプレート53により形成される。ベースプレート53は、例えば、
図2及び
図3(A)に示したように、開閉扉2の開閉移動方向に細長い溝形状を有している。
【0026】
また、ベースプレート53は、中心部に配置された底部53aと、底部53aの両側に上部が開くように配置された傾斜面53bと、を備えている。かかるベースプレート53により、上部の横幅Wtが底部の横幅Wbよりも広く形成された形状を備えた凹部51が構成される。傾斜面53bは、例えば、30~60°の傾斜角度(底部53aと傾斜面53bとの開度に換言すると120~150°)を有している。
【0027】
ベースプレート53は、ベースプレート53の高さを調節する台座54と、ベースプレート53を床面12の基礎に固定する固定プレート55と、を備えていてもよい。なお、ベースプレート53の高さ調節手段及び固定手段は、図示した構成に限定されるものではない。
【0028】
台座54は、例えば、ベースプレート53の底部53aの長手方向に沿って配置された板部材である。固定プレート55は、例えば、ベースプレート53の長手方向に沿って所定の間隔で配置された板部材である。固定プレート55の両端は、ボルト等の締結具により床面12の基礎に固定される。
【0029】
凸部52は、ベースプレート53の長手方向に沿って底部53aから上方に向かって突出するように形成された部分である。凸部52は、ベースプレート53と別体に形成してもよいし、ベースプレート53と一体に形成してもよい。
【0030】
凸部52は、例えば、
図2に示したように、高速扉21を案内する第一凸部52aと、低速扉22を案内する第二凸部52bと、を備えている。なお、凸部52の配置及び本数は、開閉扉2の構成に応じて設定される。また、凸部52は、床面12と略同一の高さとなるように形成されている。
【0031】
また、
図1(A)及び
図3(B)に示したように、開閉扉2(高速扉21及び低速扉22)は、凸部52に案内されるガイドシュー23を備えている。ガイドシュー23は、各扉の底部に所定の間隔で配置された滑動体であり、凸部52を挿入可能な溝23aを備えている。
【0032】
ところで、開閉扉2の近傍には、出入口11を車両が通過したか否かを検知するセンサが配置されていることが多い。凸部52が床面12より高く形成されている場合には、出入口11の通過時に車両が凸部52を乗り越えることにより車両の高さ寸法が変動してしまい、センサの計測精度が安定しないことがある。
【0033】
そこで、本実施形態では、凸部52を床面12と略同じ高さに形成するために、ベースプレート53によって床面12に凹部51を形成している。かかる構成により、センサの計測精度を安定させることができるとともに、車両通過時の衝撃を緩和することができる。また、本実施形態に係る開閉扉装置1は、車椅子、フォークリフト、搬送台車等が通過するセンサが配置されない出入口11にも適用することができる。
【0034】
また、車両によって小石等の異物Xが車両施設内に持ち込まれ、
図3(A)に示したように、ガイドレール5の凹部51に入り込むことがある。このとき、凹部51を形成する側面部が傾斜面53bではなく、垂直面によって構成されている場合には、異物Xがガイドシュー23とガイドレール5との間に噛み込んでしまい、開閉扉2の開閉移動を阻害する要因となる。
【0035】
そこで、
図3(B)に示したように、本実施形態では、凹部51に入り込んだ異物Xをガイドシュー23で弾き飛ばして凹部51から排除することができるように、凹部51の側面部を傾斜面53bによって構成している。
【0036】
ここで、
図4は、ガイドレールの変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、を示している。これらの変形例は、底部53aと傾斜面53bとの間に開閉扉2の開閉方向に沿って集塵溝56を形成したものである。
【0037】
図4(A)に示した第一変形例では、底部53aと傾斜面53bとの間に起伏部53cを形成することにより集塵溝56を形成している。また、
図4(B)に示した第二変形例では、底部53aと傾斜面53bとの間に窪み部53dを形成することにより集塵溝56を形成している。なお、底部53aの中心部に窪み部53eを追加してもよい。
【0038】
このように集塵溝56を形成することにより、ガイドレール5に入り込んだ異物を集塵溝56に集めることができ、開閉扉2の開閉時にガイドシュー23に異物が噛み込む可能性をより低減することができる。
【0039】
ここで、
図5は、ガイドシューの変形例を示す図であり、(A)は第一変形例、(B)は第二変形例、(C)は第三変形例、を示している。これらの変形例は、ガイドシュー23に異物を凹部51の外部に掃き出す除塵部24を形成したものである。なお、各図において、図中の矢印は開閉扉2の移動方向を示している。
【0040】
除塵部24は、先端に向かって横幅が狭くなるように形成された面を有し、異物と衝突した際に、ガイドレール5の外側に向かって異物を弾き飛ばすように構成されている。なお、除塵部24を形成する面は、平面であってもよい、曲面であってもよい。
【0041】
図5(A)に示した第一変形例は、ガイドシュー23に形成された加工面によって除塵部24を形成したものである。また、
図5(B)に示した第二変形例は、ガイドシュー23に配置されたガイドブロック25により除塵部24を形成したものである。また、
図5(C)に示した第三変形例は、ガイドシュー23に配置されたガイドプレート26により除塵部24を形成したものである。
【0042】
このように、除塵部24は、ガイドシュー23と一体に構成されていてもよいし、別体に構成されていてもよい。なお、
図5(A)~
図5(C)では、ガイドシュー23の一方の端部に除塵部24を配置した場合を図示しているが、ガイドシュー23の両方の端部に除塵部24を配置してもよい。
【0043】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 開閉扉装置
2 開閉扉
3 駆動レール
4 駆動手段
5 ガイドレール
11 出入口
12 床面
21 高速扉
22 低速扉
23 ガイドシュー
23a 溝
24 除塵部
25 ガイドブロック
26 ガイドプレート
51 凹部
52 凸部
52a 第一凸部
52b 第二凸部
53 ベースプレート
53a 底部
53b 傾斜面
53c 起伏部
53d,53e 窪み部
54 台座
55 固定プレート
56 集塵溝