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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20241211BHJP
   H01G 4/38 20060101ALI20241211BHJP
   H01G 4/33 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01G4/30 541
H01G4/38 A
H01G4/33 102
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021029019
(22)【出願日】2021-02-25
(65)【公開番号】P2022130066
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】津吉 淳弘
(72)【発明者】
【氏名】大塚 隆史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健一
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-191266(JP,A)
【文献】特開2010-278346(JP,A)
【文献】特開2008-034626(JP,A)
【文献】特開2019-083316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01G 4/38
H01G 4/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に積層された複数の導体層を備える電子部品であって、
前記複数の導体層のうち積層方向に隣接する2つの導体層及びこれらの間に位置する第1の誘電体膜によって形成される第1のキャパシタと、
前記複数の導体層のうち積層方向に隣接する2つの導体層及びこれらの間に位置する前記第1の誘電体膜と第2の誘電体膜の積層膜によって形成される第2のキャパシタと、を有することを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記第1及び第2のキャパシタは、いずれも前記複数の導体層のうち第1の導体層を下部電極とし、いずれも前記複数の導体層のうち第2の導体層を上部電極とすることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
記第1のキャパシタを構成する前記上部電極の厚みは、前記第2のキャパシタを構成する前記上部電極の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
第1、第2、及び第3の端子電極をさらに備え、
記複数の導体層は、第1のインダクタパターンを含み、
前記第1のキャパシタは、前記第1のインダクタパターンを介して前記第1の端子電極と前記第2の端子電極の間に接続され、
前記第2のキャパシタは、前記第1のインダクタパターンを介することなく前記第1の端子電極と前記第3の端子電極の間に接続されることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記複数の導体層は、第2のインダクタパターンをさらに含み、
前記第2のインダクタパターンと前記第1のキャパシタは、並列に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記複数の導体層は、インダクタパターンを含み、
前記インダクタパターンと前記第1のキャパシタは、並列に接続されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
基板上に第1及び第2の領域を有する第1の導体層を形成する工程と、
前記第1の導体層の前記第1及び第2の領域を第1の誘電体膜で覆う工程と、
前記第1の誘電体膜を介して、前記第1の導体層の前記第1の領域上に第2の導体層を形成することにより第1のキャパシタを形成する工程と、
前記第1の導体層の前記第2の領域上に形成された前記第1の誘電体膜を第2の誘電体膜で覆う工程と、
前記第1及び第2の誘電体膜を介して、前記第1の導体層の前記第2の領域上に第3の導体層を形成することにより第2のキャパシタを形成する工程と、を備えることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項8】
基板上に第1及び第2の領域を有する第1の導体層を形成する工程と、
前記第1の導体層の前記第1及び第2の領域を第1の誘電体膜で覆う工程と、
前記第1の誘電体膜を介して、前記第1の導体層の前記第1の領域上に第2の導体層を形成する工程と、
前記第1の導体層の前記第2の領域上に形成された前記第1の誘電体膜を除去した後、前記第1の導体層の前記第2の領域を第2の誘電体膜で覆う工程と、
前記第2の誘電体膜を介して、前記第1の導体層の前記第2の領域上に第2の導体層を形成する工程と、を備えることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項9】
基板上に第1及び第2の領域を有する第1の導体層を形成する工程と、
前記第1の導体層の前記第1及び第2の領域を第1の誘電体膜で覆う工程と、
前記第1の導体層の前記第2の領域上に形成された前記第1の誘電体膜の厚みを選択的に減少させる工程と、
前記第1の誘電体膜を介して、前記第1の導体層の前記第1及び第2の領域上に第2の導体層を形成する工程と、を備えることを特徴とする電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品及びその製造方法に関し、特に、複数のキャパシタが内蔵された電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタが内蔵されたチップ型の電子部品としては、特許文献1に記載された電子部品が知られている。特許文献1に記載された電子部品は、2層の導体層を用いてキャパシタとインダクタの直列回路を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-34626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一つの電子部品内に複数のキャパシタを内蔵する場合、各キャパシタに要求される耐圧が異なるケースが考えられる。
【0005】
したがって、本発明は、耐圧の異なる複数のキャパシタが内蔵された電子部品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電子部品は、基板上に積層された複数の導体層を備える電子部品であって、複数の導体層のうち積層方向に隣接する2つの導体層及びこれらの間に位置する誘電体膜によって形成される第1のキャパシタと、複数の導体層のうち積層方向に隣接する2つの導体層及びこれらの間に位置する誘電体膜によって形成される第2のキャパシタとを有し、第1のキャパシタを構成する誘電体膜と、第2のキャパシタを構成する誘電体膜の厚みが互いに異なることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、第1のキャパシタを構成する誘電体膜と第2のキャパシタを構成する誘電体膜の厚みが互いに異なっていることから、互いに異なる耐圧を得ることが可能となる。
【0008】
本発明において、第1及び第2のキャパシタは、いずれも複数の導体層のうち第1の導体層を下部電極とし、いずれも複数の導体層のうち第2の導体層を上部電極とするものであっても構わない。これによれば、導体層の積層数を増やすことなく、互いに異なる耐圧を有する複数のキャパシタを形成することが可能となる。この場合、第1のキャパシタを構成する誘電体膜の厚みは第2のキャパシタを構成する誘電体膜の厚みよりも薄く、第1のキャパシタを構成する上部電極の厚みは第2のキャパシタを構成する上部電極の厚みよりも厚くても構わない。これによれば、誘電体膜の厚みの違いに起因する段差を低減することが可能となる。
【0009】
本発明において、第1のキャパシタを構成する誘電体膜は第1の誘電体膜からなり、第2のキャパシタを構成する誘電体膜は第1の誘電体膜とは異なる第2の誘電体膜からなるものであっても構わない。これによれば、第1及び第2の誘電体膜の膜厚や材料をそれぞれ任意に選択することが可能となる。或いは、第1のキャパシタを構成する誘電体膜は第1の誘電体膜からなり、第2のキャパシタを構成する誘電体膜は、第1の誘電体膜と第2の誘電体膜の積層膜からなるものであっても構わない。これによれば、第2のキャパシタを構成する誘電体膜の膜厚を第1のキャパシタを構成する誘電体膜よりも容易に厚くすることが可能となる。
【0010】
本発明による電子部品は、複数の端子電極をさらに備え、第1のキャパシタを構成する誘電体膜の厚みは第2のキャパシタを構成する誘電体膜の厚みよりも薄く、複数の導体層はインダクタパターンを含み、第1のキャパシタはインダクタパターンを介して複数の端子電極のいずれか2つの間に接続され、第2のキャパシタはインダクタパターンを介することなく複数の端子電極のいずれか2つの間に接続されるものであっても構わない。これによれば、高電圧が印加され得る第2のキャパシタの耐圧を高めることが可能となる。
【0011】
本発明の一側面による電子部品の製造方法は、基板上に第1及び第2の領域を有する第1の導体層を形成する工程と、第1の導体層の第1及び第2の領域を第1の誘電体膜で覆う工程と、第1の誘電体膜を介して第1の導体層の第1の領域上に第2の導体層を形成する工程と、第1の導体層の第2の領域上に形成された第1の誘電体膜を第2の誘電体膜で覆う工程と、第1及び第2の誘電体膜を介して、第1の導体層の第2の領域上に第3の導体層を形成する工程とを備えることを特徴とする。本発明によれば、誘電体膜の厚みが異なる2つのキャパシタを容易に作製することが可能となる。
【0012】
本発明の他の側面による電子部品の製造方法は、基板上に第1及び第2の領域を有する第1の導体層を形成する工程と、第1の導体層の第1及び第2の領域を第1の誘電体膜で覆う工程と、第1の誘電体膜を介して、第1の導体層の第1の領域上に第2の導体層を形成する工程と、第1の導体層の第2の領域上に形成された第1の誘電体膜を除去した後、第1の導体層の第2の領域を第2の誘電体膜で覆う工程と、第2の誘電体膜を介して、第1の導体層の第2の領域上に第2の導体層を形成する工程とを備えることを特徴とする。本発明によれば、誘電体膜の厚み又は材料が異なる2つのキャパシタを容易に作製することが可能となる。
【0013】
本発明のさらに他の側面による電子部品の製造方法は、基板上に第1及び第2の領域を有する第1の導体層を形成する工程と、第1の導体層の第1及び第2の領域を第1の誘電体膜で覆う工程と、第1の導体層の第2の領域上に形成された第1の誘電体膜の厚みを選択的に減少させる工程と、第1の誘電体膜を介して、第1の導体層の第1及び第2の領域上に第2の導体層を形成する工程とを備えることを特徴とする。本発明によれば、誘電体膜の厚みが異なる2つのキャパシタを容易に作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明によれば、耐圧の異なる複数のキャパシタが内蔵された電子部品及びその製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1の実施形態による電子部品1の構造を説明するための略平面図である。
図2図2は、図1のA-A線に沿った略断面図である。
図3図3は、導体層M1,MMのパターン形状を示す略平面図である。
図4図4は、絶縁層11に設けられたビアの位置を示す略平面図である。
図5図5は、導体層M2のパターン形状を示す略平面図である。
図6図6は、電子部品1の等価回路図である。
図7図7は、第1の実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図8図8は、第1の実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図9図9は、第1の実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図10図10は、第1の実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図11図11は、第1の実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図12図12は、第1の実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図13図13は、第1の実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図14図14は、第1の実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図15図15は、第1の実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図16図16は、第2の実施形態による電子部品1aの構造を説明するための略断面図である。
図17図17は、第2の実施形態による電子部品1aの製造方法を説明するための工程図である。
図18図18は、第2の実施形態による電子部品1aの製造方法を説明するための工程図である。
図19図19は、第2の実施形態による電子部品1aの製造方法を説明するための工程図である。
図20図20は、第2の実施形態による電子部品1aの製造方法を説明するための工程図である。
図21図21は、第1の変形例による電子部品1bの構造を説明するための略断面図である。
図22図22は、第2の変形例による電子部品1cの構造を説明するための略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施形態による電子部品1の構造を説明するための略平面図である。また、図2は、図1のA-A線に沿った略断面図である。
【0018】
第1の実施形態による電子部品1はLCフィルタであり、図1及び図2に示すように、基板2と、基板2の主面上に形成された導体層M1,MM,M2及び絶縁層11,12を備えている。導体層M1,MMのパターン形状については図3に示されており、絶縁層11に設けられたビアの位置については図4に示されており、導体層M2のパターン形状については図5に示されている。基板2の材料としては、化学的・熱的に安定で応力発生が少なく、表面の平滑性を保つことができる材料であればよく、特に限定されるものではないが、シリコン単結晶、アルミナ、サファイア、窒化アルミ、MgO単結晶、SrTiO3単結晶、表面酸化シリコン、ガラス、石英、フェライト、有機フィルムなどを用いることができる。基板2の表面は平坦化層3で覆われている。平坦化層3としては、アルミナや酸化シリコンなどを用いることができる。
【0019】
導体層M1は最下層に位置する導体層であり、図3に示すように、導体パターン21~26を含んでいる。このうち、導体パターン21~24は端子電極パターンであり、ループ状の導体パターン25はインダクタパターン兼キャパシタの下部電極であり、導体パターン26はキャパシタの下部電極である。導体パターン25の一端は導体パターン21に接続されている。また、導体パターン26は、導体パターン23,24に接続されている。これら導体パターン21~26は、いずれも平坦化層3と接する薄いシード層Sと、シード層S上に設けられ、シード層Sよりも膜厚の大きい銅(Cu)などからなるメッキ層Pによって構成されている。他の導体層MM,M2に位置する導体パターンについても同様であり、シード層Sとメッキ層Pの積層体によって構成されている。但し、下層に位置する一部の導体層、例えば、導体層M1や導体層MMについては、スパッタリング法等により形成した単層膜であっても構わない。
【0020】
導体パターン21~26のうち、キャパシタの下部電極を構成する導体パターン25については、その上面が第1の誘電体膜(容量絶縁膜)4で覆われ、キャパシタの下部電極を構成する導体パターン26及び第1の誘電体膜4の一部については、その上面が第2の誘電体膜(容量絶縁膜)5で覆われている。第1及び第2の誘電体膜4,5は、窒化シリコンなどの無機絶縁材料からなり、互いに同じ材料からなるものであっても構わないし、互いに異なる材料からなるものであっても構わない。また、膜厚についても、互いに同じであっても構わないし、互いに異なっていても構わない。一例として、第1の実施形態では、第1及び第2の誘電体膜4,5がいずれも窒化シリコンからなり、第1の誘電体膜4の方が第2の誘電体膜5よりも膜厚が薄い。
【0021】
導体パターン25は、第1の領域25Aと第2の領域25Bを有している。このうち、第1の領域25Aの上面には、第1の誘電体膜4を介して導体パターン31が形成されている。また、第2の領域25Bの上面には、第1の誘電体膜4と第2の誘電体膜5の積層膜を介して導体パターン33が形成されている。さらに、導体パターン26の上面には、第2の誘電体膜5を介して導体パターン32が形成されている。導体パターン31~33は、導体層M1と導体層M2の間に位置する導体層MMに属し、キャパシタの上部電極を構成する。これにより、導体パターン25の第1の領域25Aを下部電極とし、導体パターン31を上部電極とする第1のキャパシタと、導体パターン26を下部電極とし、導体パターン32を上部電極とする第2のキャパシタと、導体パターン25の第2の領域25Bを下部電極とし、導体パターン33を上部電極とする第3のキャパシタが形成される。導体層MMの厚さは導体層M1,M2よりも薄く、これにより導体層MMのパターン精度が高められている。導体層M1及び導体層MMは、ポリイミドなどの樹脂材料からなる絶縁層11で覆われる。
【0022】
図4に示すように、絶縁層11には導体層M1,MMを露出させるビア41~48が設けられている。このうち、ビア41~44はそれぞれ導体パターン21~24を露出させる位置に設けられ、ビア45は導体パターン25の端部を露出させる位置に設けられ、ビア46~48はそれぞれ導体パターン31~33を露出させる位置に設けられる。
【0023】
導体層M2は、絶縁層11の表面に設けられた2層目の導体層であり、図5に示すように、導体パターン51~59を含んでいる。このうち、導体パターン51~54は端子電極パターンであり、ループ状の導体パターン55はインダクタパターンであり、導体パターン57,59は上部電極の引き出しパターンであり、ミアンダ状の導体パターン58はインダクタパターンである。導体パターン51~54は、ビア41~44を介してそれぞれ導体パターン21~24に接続される。導体パターン55の一端は、ビア45を介して導体パターン25の他端に接続され、導体パターン55の他端は、導体パターン57に接続されるとともに、ビア46,48を介してそれぞれ導体パターン31,33に接続される。導体パターン57は、ビア47を介して導体パターン32に接続される。
【0024】
図6は、第1の実施形態による電子部品1の等価回路図である。
【0025】
図6に示すように、第1の実施形態による電子部品1は、端子電極E1と内部ノードNの間にキャパシタC1とインダクタL1が並列に接続され、端子電極E2と内部ノードNの間にインダクタL2が接続され、端子電極E3,E4と内部ノードNの間にキャパシタC2が接続され、端子電極E1と端子電極E2の間にキャパシタC3が接続された回路構成を有する。端子電極E1は導体パターン21,51に対応し、端子電極E2は導体パターン22,52に対応し、端子電極E3は導体パターン23,53に対応し、端子電極E4は導体パターン24,54に対応する。また、内部ノードNは導体パターン57に対応する。キャパシタC1は、導体パターン25の第1の領域25Aを下部電極とし、導体パターン31を上部電極とする。キャパシタC2は、導体パターン26を下部電極とし、導体パターン32を上部電極とする。キャパシタC3は、導体パターン25の第2の領域25Bを下部電極とし、導体パターン33を上部電極とする。インダクタL1は導体パターン25,55によって構成され、インダクタL2は導体パターン58によって構成される。
【0026】
このように、第1の実施形態による電子部品1は、同一チップ内に3つのキャパシタC1~C3が内蔵されている。ここで、キャパシタC1は第1の誘電体膜4を容量絶縁膜とするものであり、キャパシタC2は第2の誘電体膜5を容量絶縁膜とするものであり、キャパシタC3は第1の誘電体膜4と第2の誘電体膜5の積層膜を容量絶縁膜とするものである。そして、第1の実施形態においては、第1の誘電体膜4の方が第2の誘電体膜5よりも膜厚が薄いことから、単位面積当たりのキャパシタンスは、キャパシタC1が最も大きく、キャパシタC3が最も小さくなる一方、絶縁耐圧については、キャパシタC3が最も高く、キャパシタC1が最も低くなる。
【0027】
ここで、キャパシタC1の容量絶縁膜を最も薄く設計しているのは、キャパシタC1に求められるキャパシタンスが大きいことに加え、キャパシタC1は2つの端子電極間に直接接続されず、インダクタ又は別のキャパシタを介して2つの端子電極間に接続されることから、印加される電圧が比較的抑えられるからである。これに対し、キャパシタC3は、インダクタ又は別のキャパシタを介することなく、端子電極E1と端子電極E3の間に直接接続されることから、外部から比較的高い電圧が印加され得る。このため、キャパシタC3にはより高い耐圧が必要とされ、これを実現するためにキャパシタC3の容量絶縁膜を最も厚く設計している。また、キャパシタC2については、キャパシタC1と同様、2つの端子電極間に直接接続されることなく、インダクタ又は別のキャパシタを介して2つの端子電極間に接続されているが、キャパシタC1よりも必要なキャパシタンスが小さいため、より厚い第2の誘電体膜5を用いることによって、耐圧を向上させている。
【0028】
このように、第1の実施形態においては、必要なキャパシタンスや耐圧に応じてキャパシタC1~C3の容量絶縁膜の膜厚を個別に設定していることから、電気特性と耐圧を両立させることが可能となる。
【0029】
次に、第1の実施形態による電子部品1の製造方法について説明する。
【0030】
図7図15は、第1の実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。電子部品1の製造プロセスにおいては、集合基板を用いて複数の電子部品1が多数個取りされるが、図7図15に示す製造プロセスは1個の電子部品1に着目している。
【0031】
まず、図7に示すように、基板(この時点では集合基板)2上にスパッタリング法などを用いて平坦化層3を形成し、その表面を研削或いはCMPなどの鏡面化処理を行なって平滑化する。その後、平坦化層3の表面にスパッタリング法などを用いてシード層Sを形成する。次に、シード層S上に図示しないレジスト層をスピンコートした後、導体層M1を形成すべき領域のシード層Sが露出するよう、レジスト層をパターニングする。この状態で、シード層Sを給電体とする電解メッキを行うことにより、シード層S上にメッキ層Pを形成する。シード層Sとメッキ層Pの積層体は、導体層M1を構成する。図7に示す断面においては、導体層M1に導体パターン25,26が含まれている。その後、レジスト層を除去し、表面に露出するシード層Sを除去すれば、導体層M1が完成する。シード層Sの除去は、エッチング又はイオンミリングによって行うことができる。
【0032】
次に、図8に示すように、導体層M1の上面及び側面を含む全面に第1の誘電体膜4を成膜する。第1の誘電体膜4としては、例えば、窒化シリコン(SiNx)や酸化シリコン(SiOx)などの常誘電体材料の他、公知の強誘電体材料などを利用することができる。第1の誘電体膜4の成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマCVD法、MOCVD法、ゾルゲル法、電子ビーム蒸着法などを用いることができる。次に、図9に示すように、第1の誘電体膜4をパターニングすることによって、導体パターン26を露出させる。
【0033】
次に、図10に示すように、導体層M1の形成方法と同様の方法を用いることによって、導体パターン25の第1の領域25Aの上面に第1の誘電体膜4を介して導体パターン31を形成する。導体パターン31も、シード層Sとメッキ層Pの積層体からなる。このとき、導体パターン25の第2の領域25Bを覆う第1の誘電体膜4は、露出したままの状態とする。これにより、導体パターン25の第1の領域25Aを下部電極とし、導体パターン31を上部電極とする第1のキャパシタC1が形成される。
【0034】
次に、図11に示すように、導体パターン31の上面及び側面を含む全面に第2の誘電体膜5を成膜する。第2の誘電体膜5の材料及び成膜方法としては、第1の誘電体膜4の材料及び成膜方法と同じであっても構わないし、異なっていても構わない。第2の誘電体膜5の膜厚についても、第1の誘電体膜4の膜厚と同じであっても構わないし、異なっていても構わないが、第1の実施形態においては、第2の誘電体膜5の方が第1の誘電体膜4よりも膜厚を大きく設定する。これにより、導体パターン26は第2の誘電体膜5で覆われ、導体パターン25の第2の領域25Bは第1の誘電体膜4と第2の誘電体膜5の積層膜で覆われる。
【0035】
次に、図12に示すように、導体層M1の形成方法と同様の方法を用いることによって、導体パターン26の上面に第2の誘電体膜5を介して導体パターン32を形成するとともに、導体パターン25の第2の領域25Bの上面に第1の誘電体膜4及び第2の誘電体膜5を介して導体パターン33を形成する。導体パターン32,33も、シード層Sとメッキ層Pの積層体からなる。これにより、導体層MMが完成し、導体パターン26を下部電極とし、導体パターン32を上部電極とする第2のキャパシタC2が形成されるとともに、導体パターン25の第2の領域25Bを下部電極とし、導体パターン33を上部電極とする第3のキャパシタC3が形成される。
【0036】
次に、図13に示すように、第2の誘電体膜5をパターニングすることによって、導体パターン31の一部を露出させるビア5aを形成する。次に、図14に示すように、導体層M1,MMを覆う絶縁層11を形成した後、絶縁層11をパターニングすることによって絶縁層11にビア31a~33aを形成する。これにより、ビア31a~33aの底部には、それぞれ導体パターン31~33が露出する。このとき、ビア31a~33aの深さは、ビア31aが最も深く、ビア33aが最も浅くなる。このような差を低減するためには、導体パターン31が最も厚くなり、導体パターン33が最も薄くなるよう、導体層MMを形成すれば良い。
【0037】
次に、図15に示すように、導体層M1の形成方法と同様の方法によって絶縁層11上に導体層M3を形成する。図15に示す断面においては、導体層M2に導体パターン55,57,59が含まれている。導体パターン55はビア31aを介して導体パターン31に接続され、導体パターン57はビア32aを介して導体パターン32に接続され、導体パターン59はビア33aを介して導体パターン33に接続される。その後は、図2に示すように、導体層M2を覆う絶縁層12を形成した後、導体パターン51~54にそれぞれ接続される端子電極E1~E4を形成すれば、第1の実施形態による電子部品1が完成する。
【0038】
以上説明した電子部品1の製造プロセスを用いれば、第1の誘電体膜4を容量絶縁膜とする第1のキャパシタC1と、第2の誘電体膜5を容量絶縁膜とする第2のキャパシタC2と、第1の誘電体膜4と第2の誘電体膜5の積層膜を容量絶縁膜とする第3のキャパシタC3を形成することが可能となる。しかも、キャパシタC1~C3の下部電極はいずれも導体層M1に位置し、キャパシタC1~C3の上部電極はいずれも導体層MMに位置することから、導体層の数を増やすことなく、耐圧の異なる複数のキャパシタを作り分けることが可能となる。
【0039】
図16は、第2の実施形態による電子部品1aの構造を説明するための略断面図である。
【0040】
図16に示すように、第2の実施形態による電子部品1aは、第2の誘電体膜5が省略される代わりに、第1の誘電体膜4の膜厚が平面位置によって異なっている点において、第1の実施形態による電子部品1と相違している。その他の基本的な構成については、第1の実施形態による電子部品1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0041】
第2の実施形態においては、第1の誘電体膜4の一部の膜厚が低減されている。具体的には、領域4aにおいては膜厚が低減されておらず、領域4bにおいては膜厚が1段階低減されており、領域4cにおいて膜厚が2段階低減されている。そして、導体層MMに属する導体パターンのうち、導体パターン31は領域4cと重なる位置に形成され、導体パターン32は領域4bと重なる位置に形成され、導体パターン33は領域4aと重なる位置に形成されている。これにより、第1の実施形態と同様、第1のキャパシタC1において単位面積当たり最も大きなキャパシタンスを得ることができるとともに、第3のキャパシタC3において最も高い絶縁耐圧を得ることが可能となる。
【0042】
次に、第2の実施形態による電子部品1aの製造方法について説明する。
【0043】
図17図20は、第2の実施形態による電子部品1aの製造方法を説明するための工程図である。電子部品1aの製造プロセスにおいては、集合基板を用いて複数の電子部品1aが多数個取りされるが、図17図20に示す製造プロセスは1個の電子部品1aに着目している。
【0044】
まず、図7を用いて説明したように、基板2上に平坦化層3及び導体層M1を形成した後、図17に示すように、導体層M1の上面及び側面を含む全面に第1の誘電体膜4を成膜する。第1の誘電体膜4の厚みは、第1の実施形態における厚みよりも厚く設定する。
【0045】
次に、図18に示すように、第1の誘電体膜4のうち、導体パターン25の第1の領域25Aを覆う部分、並びに、導体パターン26を覆う部分をエッチングすることにより、膜厚を1段階薄くする。これにより、第1の誘電体膜4は、オリジナルの膜厚を有する領域4aと、膜厚が1段階低減された領域4bに分かれる。導体パターン25の第2の領域25Bは、第1の誘電体膜4の領域4aで覆われている。
【0046】
次に、図19に示すように、第1の誘電体膜4のうち、導体パターン25の第1の領域25Aを覆う部分をさらにエッチングすることにより、膜厚をもう1段階薄くする。これにより、第1の誘電体膜4は、オリジナルの膜厚を有する領域4aと、膜厚が1段階低減された領域4bと、膜厚が2段階低減された領域4cに分かれる。導体パターン26は、第1の誘電体膜4の領域4bで覆われている。
【0047】
次に、図20に示すように、第1の誘電体膜4の表面に導体パターン31~33からなる導体層MMを形成する。導体パターン31は、第1の誘電体膜4の領域4cを介して導体パターン25の第1の領域25Aを覆い、導体パターン32は、第1の誘電体膜4の領域4bを介して導体パターン26を覆い、導体パターン33は、第1の誘電体膜4の領域4aを介して導体パターン25の第2の領域25Bを覆う。これにより、キャパシタC1~C3が完成する。その後は、図14及び図15を用いて説明したプロセスを実行すれば、第2の実施形態による電子部品1aが完成する。
【0048】
以上説明した電子部品1aの製造プロセスを用いれば、複数の誘電体膜を用いることなく、耐圧の異なる複数のキャパシタを作り分けることが可能となる。しかも、誘電体膜4の膜厚をエッチング量によって微調整することが可能である。
【0049】
図21は、第1の変形例による電子部品1bの構造を説明するための略断面図である。
【0050】
図21に示すように、第1の変形例による電子部品1bは、導体パターン61,62を含む導体層M1と、導体パターン71,72を含む導体層MMと、導体パターン81,82を含む導体層M2を有し、導体パターン61と導体パターン71の間に第1の誘電体膜6が設けられ、導体パターン72と導体パターン82の間に第2の誘電体膜7が設けられた構造を有している。これにより、導体パターン61,71及び第1の誘電体膜6によって第1のキャパシタが構成され、導体パターン72,82及び第2の誘電体膜7によって第2のキャパシタが構成される。第1の誘電体膜6と第2の誘電体膜7は、膜厚が互いに異なっている。第1の変形例による電子部品1bが例示するように、第1のキャパシタの上部電極と第2のキャパシタの下部電極は、互いに同じ導体層(MM)に位置していても構わない。
【0051】
図22は、第2の変形例による電子部品1cの構造を説明するための略断面図である。
【0052】
図22に示すように、第2の変形例による電子部品1cは、導体パターン61,62を含む導体層M1と、導体パターン71,72を含む導体層MMと、導体パターン81,82を含む導体層M2と、導体パターン91,92を含む導体層M3とを有し、導体パターン61と導体パターン71の間に第1の誘電体膜6が設けられ、導体パターン82と導体パターン92の間に第2の誘電体膜8が設けられた構造を有している。これにより、導体パターン61,71及び第1の誘電体膜6によって第1のキャパシタが構成され、導体パターン82,92及び第2の誘電体膜8によって第2のキャパシタが構成される。第1の誘電体膜6と第2の誘電体膜8は、膜厚が互いに異なっている。第1の変形例による電子部品1cが例示するように、第1のキャパシタの下部電極及び上部電極と第2のキャパシタの下部電極及び上部電極は、いずれも異なる導体層(M1,MM,M2,M3)に位置していても構わない。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0054】
例えば、第1及び第2の実施形態では、膜厚の異なる3つの誘電体膜を用いてキャパシタC1~C3を構成しているが、膜厚の異なる2つの誘電体膜を用いて2種類のキャパシタを構成しても構わないし、膜厚の異なる4以上の誘電体膜を用いて4種類以上のキャパシタを構成しても構わない。
【符号の説明】
【0055】
1,1a~1c 電子部品
2 基板
3 平坦化層
4,6 第1の誘電体膜
4a~4c 領域
5,7,8 第2の誘電体膜
5a,31a~33a,41~48 ビア
11,12 絶縁層
21~26,31~33,51~55,57~59,61,62,71,72,81,82,91,92 導体パターン
25A 第1の領域
25B 第2の領域
C1~C3 キャパシタ
E1~E4 端子電極
L1,L2 インダクタ
M1,MM,M2,M3 導体層
N 内部ノード
P メッキ層
S シード層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図22