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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021034324
(22)【出願日】2021-03-04
(65)【公開番号】P2022134863
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 輝男
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴之
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/158567(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子及び第2端子に第1直流電圧が入力される第1ブリッジ回路と、
第1端子及び第2端子に前記第1直流電圧が入力される第2ブリッジ回路と、
1次巻線が前記第1ブリッジ回路の第3端子及び第4端子に電気的に接続された第1トランスと、
1次巻線が前記第2ブリッジ回路の第3端子及び第4端子に電気的に接続され、2次巻線の一端が前記第1トランスの2次巻線の一端に電気的に接続された第2トランスと、
一端が、前記第1トランスの2次巻線の他端に電気的に接続されたコイルと、
第1端子が前記コイルの他端に電気的に接続され、第2端子が前記第2トランスの2次巻線の他端に電気的に接続され、第3端子及び第4端子から第2直流電圧を出力する第3ブリッジ回路と、
前記第2直流電圧が前記第1直流電圧よりも低い場合に、前記第1直流電圧に対する前記第2直流電圧の比の値が1から小さいほど、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の位相差を0度から大きくする制御を行う制御装置と、
を備える、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記比の値に基づいて、前記第1ブリッジ回路と基準位相との間及び前記基準位相と前記第2ブリッジ回路との間の第1位相差を決定し、前記第3ブリッジ回路の位相を前記基準位相に合わせる、
ことを特徴とする、請求項に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記比の値に基づいて、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の第2位相差を決定し、前記第1ブリッジ回路と前記第3ブリッジ回路との間及び前記第3ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の第3位相差を、前記第2位相差の2分の1に決定する、
ことを特徴とする、請求項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、DAB(Dual Active Bridge)方式のDC-DCコンバータが記載されている。DABは、絶縁が可能であり、昇降圧動作、双方向電力変換が容易に可能である。しかし、DABは、入力側と出力側との間の電圧差が大きい場合、回路内に循環する電流が増大する特性がある。この特性は、出力電流の指令値である、入力側と出力側との間の位相差を0度にしても低下しない。そのため、出力側垂下(短絡)等の著しい入出力電圧差が発生する条件では、電流が流れているほぼ全ての素子において、通常動作範囲時以上の電流増大が発生する。これにより、回路のストレスや損失の著しい増大が発生する問題がある。
【0003】
特許文献2には、トランジスタ単位の位相を制御することで上記問題を解決する、スイッチング電源装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5027264号明細書
【文献】特開2018-26961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2記載のスイッチング電源装置では、制御する位相の数がトランジスタの数と同数であるので、制御演算量が多くなる。
【0006】
本発明は、制御演算量を抑制することができる電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の電源装置は、
第1端子及び第2端子に第1直流電圧が入力される第1ブリッジ回路と、
第1端子及び第2端子に前記第1直流電圧が入力される第2ブリッジ回路と、
1次巻線が前記第1ブリッジ回路の第3端子及び第4端子に電気的に接続された第1トランスと、
1次巻線が前記第2ブリッジ回路の第3端子及び第4端子に電気的に接続され、2次巻線の一端が前記第1トランスの2次巻線の一端に電気的に接続された第2トランスと、
一端が、前記第1トランスの2次巻線の他端に電気的に接続されたコイルと、
第1端子が前記コイルの他端に電気的に接続され、第2端子が前記第2トランスの2次巻線の他端に電気的に接続され、第3端子及び第4端子から第2直流電圧を出力する第3ブリッジ回路と、
前記第1直流電圧及び前記第2直流電圧に基づいて、前記第1トランス及び前記第2トランスの1次側電流及び2次側電流に基づいて、若しくは、前記第1直流電圧、前記第2直流電圧、前記第1トランス及び前記第2トランスの1次側電流及び2次側電流に基づいて、並びに、出力電流指令若しくは出力電力指令に基づいて、前記第1ブリッジ回路、前記第2ブリッジ回路及び前記第3ブリッジ回路の位相を制御する制御装置と、
を備える、
ことを特徴とする。
【0008】
前記電源装置において、
前記制御装置は、
前記第1直流電圧に対する前記第2直流電圧の比の値に基づいて、前記第1ブリッジ回路、前記第2ブリッジ回路及び前記第3ブリッジ回路の位相を制御する、
ことを特徴とする。
【0009】
前記電源装置において、
前記制御装置は、
前記比の値が1から小さいほど、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の位相差を0度から大きくする、
ことを特徴とする。
【0010】
前記電源装置において、
前記制御装置は、
前記比の値に基づいて、前記第1ブリッジ回路と基準位相との間及び前記基準位相と前記第2ブリッジ回路との間の第1位相差を決定し、前記第3ブリッジ回路の位相を前記基準位相に合わせる、
ことを特徴とする。
【0011】
前記電源装置において、
前記制御装置は、
前記比の値に基づいて、前記第1ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の第2位相差を決定し、前記第1ブリッジ回路と前記第3ブリッジ回路との間及び前記第3ブリッジ回路と前記第2ブリッジ回路との間の第3位相差を、前記第2位相差の2分の1に決定する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様の電源装置は、制御演算量を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、比較例の電源装置の構成を示す図である。
図2図2は、実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
図3図3は、実施の形態の基準位相とブリッジ回路との位相差の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態及び比較例の電源装置のシミュレーション波形を示す図である。
図5図5は、実施の形態及び比較例の電源装置のシミュレーション波形を示す図である。
図6図6は、実施の形態の電源装置の正規化したトランス電流を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の電源装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0015】
<実施の形態>
以下、実施の形態について説明するが、実施の形態の理解を容易にするため、先に比較例について説明する。
(比較例)
図1は、比較例の電源装置の構成を示す図である。電源装置101は、DAB(Dual Active Bridge)であり、電源2から出力されコンデンサ3で平滑化後の直流電圧Vinの供給を受けて、直流電圧Voutを負荷4に出力する。
【0016】
電源装置101は、ブリッジ回路11及び13と、トランス21と、コイル22と、コンデンサ23と、制御装置102と、を含む。
【0017】
ブリッジ回路11は、トランジスタTr1からTr4までを含む単相フルブリッジ回路である。
【0018】
なお、本開示では、各トランジスタがMOSFETであることとしたが、これに限定されない。各トランジスタは、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイス、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などでも良い。
【0019】
各トランジスタは、寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。寄生ダイオードは、トランジスタのオフ時の過渡的な逆起電力を逃すためのフリーホイールダイオードとして利用可能である。
【0020】
トランジスタTr1のソースは、トランジスタTr2のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr1のドレインは、トランジスタTr3のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr3のソースは、トランジスタTr4のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr2のソースは、トランジスタTr4のソースに電気的に接続されている。
【0021】
トランジスタTr1のドレインとトランジスタTr3のドレインとの接続点が、ブリッジ回路11の一方の入力端子11aである。トランジスタTr2のソースとトランジスタTr4のソースとの接続点が、ブリッジ回路11の他方の入力端子11bである。
【0022】
トランジスタTr1のソースとトランジスタTr2のドレインとの接続点が、ブリッジ回路11の一方の出力端子11cである。トランジスタTr3のソースとトランジスタTr4のドレインとの接続点が、ブリッジ回路11の他方の出力端子11dである。
【0023】
入力端子11aは、コンデンサ3の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。入力端子11bは、コンデンサ3の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0024】
入力端子11aと入力端子11bとの間には、直流電圧Vinが入力される。
【0025】
トランス21は、1次巻線21aと、2次巻線21bと、コア21cと、を含む。1次巻線21a及び2次巻線21bは、コア21cに巻回されている。
【0026】
1次巻線21aと2次巻線21bとの巻数比は、1:1が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0027】
1次巻線21aの一端は、出力端子11cに電気的に接続されている。1次巻線21aの他端は、出力端子11dに電気的に接続されている。
【0028】
ブリッジ回路11は、直流電圧Vin、又は、直流電圧-Vinを、出力端子11cと出力端子11dとの間に出力する。
【0029】
例えば、ブリッジ回路11は、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオン状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr3がオフ状態に制御されている場合、直流電圧Vinを、出力端子11cと出力端子11dとの間に出力する。
【0030】
また例えば、ブリッジ回路11は、トランジスタTr1及びトランジスタTr4がオフ状態、且つ、トランジスタTr2及びトランジスタTr3がオン状態に制御されている場合、直流電圧-Vinを、出力端子11cと出力端子11dとの間に出力する。
【0031】
コイル22の一端は、2次巻線21bの一端に電気的に接続されている。
【0032】
ブリッジ回路13は、トランジスタTr5からTr8までを含む単相フルブリッジ回路である。
【0033】
トランジスタTr5のソースは、トランジスタTr6のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr5のドレインは、トランジスタTr7のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr7のソースは、トランジスタTr8のドレインに電気的に接続されている。トランジスタTr6のソースは、トランジスタTr8のソースに電気的に接続されている。
【0034】
トランジスタTr5のソースとトランジスタTr6のドレインとの接続点が、ブリッジ回路13の一方の入力端子13aである。トランジスタTr7のソースとトランジスタTr8のドレインとの接続点が、ブリッジ回路13の他方の入力端子13bである。
【0035】
トランジスタTr5のドレインとトランジスタTr7のドレインとの接続点が、ブリッジ回路13の一方の出力端子13cである。トランジスタTr6のソースとトランジスタTr8のソースとの接続点が、ブリッジ回路13の他方の出力端子13dである。
【0036】
入力端子13aは、コイル22の他端に電気的に接続されている。入力端子13bは、2次巻線21bの他端に電気的に接続されている。
【0037】
出力端子13cは、コンデンサ23の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。出力端子13dは、コンデンサ23の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0038】
コンデンサ23の電圧が、直流電圧Voutである。コンデンサ23の一端(高電位側端)は、負荷4の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。コンデンサ23の他端(低電位側端)は、負荷4の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0039】
制御装置102は、ブリッジ回路11及び13を制御する。例えば、制御装置102は、トランジスタTr1からTr8までのスイッチング周波数を同一、且つ、デューティ比を0.5に制御することが例示される。また、DABでは、入力側と出力側との間の位相差が出力電流の指令値である。従って、制御装置102は、ブリッジ回路11とブリッジ回路13との間の位相差φ101を制御することにより、出力電流(電力)を制御する。
【0040】
(実施の形態)
実施の形態の電源装置の構成要素のうち、比較例と同一の構成要素については、同一の参照符号を付して、説明を省略する。
【0041】
図2は、実施の形態の電源装置の構成を示す図である。電源装置1は、電源2から出力されコンデンサ3で平滑化後の直流電圧Vinの供給を受けて、直流電圧Voutを負荷4へ出力する。
【0042】
電源装置1は、電源装置101(図1参照)と比較して、トランス21に代えて、トランス21-1及び21-2を含む。また、電源装置1は、電源装置101と比較して、ブリッジ回路12を更に含む。また、電源装置1は、電源装置101と比較して、制御装置102に代えて、制御装置31を含む。また、電源装置1は、電源装置101と比較して、電圧センサ24及び25を更に含む。
【0043】
ブリッジ回路11が、本開示の「第1ブリッジ回路」の一例に相当する。ブリッジ回路12が、本開示の「第2ブリッジ回路」の一例に相当する。ブリッジ回路13が、本開示の「第3ブリッジ回路」の一例に相当する。
【0044】
トランス21-1が、本開示の「第1トランス」の一例に相当する。トランス21-2が、本開示の「第2トランス」の一例に相当する。
【0045】
トランス21-1は、1次巻線21-1aと、2次巻線21-1bと、コア21-1cと、を含む。1次巻線21-1a、及び、2次巻線21-1bは、コア21-1cに巻回されている。
【0046】
1次巻線21-1aと、2次巻線21-1bと、の巻数比は、2:1が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0047】
1次巻線21-1aの一端は、ブリッジ回路11の一方の出力端子11cに電気的に接続されている。1次巻線21-1aの他端は、ブリッジ回路11の他方の出力端子11dに電気的に接続されている。
【0048】
ブリッジ回路12の回路構成は、ブリッジ回路11と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
ブリッジ回路12の一方の入力端子12aは、コンデンサ3の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。ブリッジ回路12の他方の入力端子12bは、コンデンサ3の他端(低電位側端)に電気的に接続されている。
【0050】
つまり、ブリッジ回路11とブリッジ回路12とは、入力側が並列接続されている。
【0051】
トランス21-2は、1次巻線21-2aと、2次巻線21-2bと、コア21-2cと、を含む。1次巻線21-2a、及び、2次巻線21-2bは、コア21-2cに巻回されている。
【0052】
1次巻線21-2aと、2次巻線21-2bと、の巻数比は、2:1が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0053】
1次巻線21-2aの一端は、ブリッジ回路12の一方の出力端子12cに電気的に接続されている。1次巻線21-2aの他端は、ブリッジ回路12の他方の出力端子12dに電気的に接続されている。
【0054】
コイル22の一端は、2次巻線21-1bの一端に電気的に接続されている。2次巻線21-1bの他端は、2次巻線21-2bの一端に電気的に接続されている。
【0055】
つまり、2次巻線21-1bと2次巻線21-2bとは、直列接続されている。
【0056】
2次巻線21-2bの他端は、ブリッジ回路13の他方の入力端子13bに電気的に接続されている。
【0057】
電圧センサ24は、電源装置1の入力電圧、即ち直流電圧Vinを検出して制御装置31に出力する。
【0058】
電圧センサ25は、電源装置1の出力電圧、即ち直流電圧Voutを検出して制御装置31に出力する。
【0059】
制御装置31は、第1スイッチング制御部31aと、第2スイッチング制御部31bと、第3スイッチング制御部31cと、位相制御部31dと、を含む。
【0060】
例えば、第1スイッチング制御部31a、第2スイッチング制御部31b及び第3スイッチング制御部31cは、ブリッジ回路11、12及び13内のトランジスタのスイッチング周波数を同一、且つ、デューティ比を0.5に制御することが例示される。
【0061】
位相制御部31dは、直流電圧Vinに対する直流電圧Voutの比の値、及び、出力電流(又は出力電力)指令に基づいて、ブリッジ回路11とブリッジ回路12との間の位相差φ1-2、並びに、ブリッジ回路11及び12とブリッジ回路13との間の位相差φを決定する。第1スイッチング制御部31a及び第2スイッチング制御部31bは、位相差φ1-2に基づいて、ブリッジ回路11及びブリッジ回路12に、スイッチング制御信号を夫々出力する。第3スイッチング制御部31cは、位相差φに基づき、ブリッジ回路13にスイッチング制御信号を出力する。これにより、制御装置31は、出力電流(電力)を制御する。
【0062】
なお、第1、第2及び第3スイッチング制御部31a、31b及び31cは、ブリッジ回路(3個)単位の位相を制御すれば良く、トランジスタ(12個)単位の位相を制御する必要はない。
【0063】
実施の形態では、一例として、位相制御部31dは、基準位相φREFを設定し、基準位相φREFに対する、ブリッジ回路11、12及び13の位相差を決定する。
【0064】
図3は、実施の形態の基準位相とブリッジ回路との位相差の一例を示す図である。
【0065】
点201で示すように、直流電圧Vinと直流電圧Voutとの比が1:1の場合、つまり直流電圧Vinに対する直流電圧Voutの比の値が1の場合は、位相制御部31dは、基準位相φREFとブリッジ回路11及び12との間の位相差を±0度に決定する。つまり、位相制御部31dは、ブリッジ回路11とブリッジ回路12との間の位相差φ1-2を0度に決定する。
【0066】
基準位相φREFとブリッジ回路11及び12との間の位相差が、本開示の「第1位相差」の一例に相当する。
【0067】
なお、実施の形態では、理解の容易のため、基準位相φREFを設定することとしたが、本開示はこれに限定されない。例えば、位相制御部31dは、直流電圧Vinに対する直流電圧Voutの比の値に基づいて、ブリッジ回路11とブリッジ回路12との間の第2位相差を決定しても良い。そして、位相制御部31dは、ブリッジ回路11とブリッジ回路13との間及びブリッジ回路13とブリッジ回路12との間の第3位相差を決定(例えば、第2位相差の2分の1に決定)しても良い。
【0068】
図4は、実施の形態及び比較例の電源装置のシミュレーション波形を示す図である。図4では、電圧の比が1:0.5の場合を示している。また、出力電力は0Wであり、出力指令値である位相差φは0度である。
【0069】
先に説明したように、実施の形態では、直流電圧Vinと直流電圧Voutとの比が1:0.5の場合は、位相差φ1-2は120度である。
【0070】
図4(a)は、実施の形態の2次巻線21-1b及び21-2bのトランス電圧Vt、並びに、比較例の2次巻線21bのトランス電圧Vt101を示す。
【0071】
図4(b)は、実施の形態のコイル22のコイル電圧VL、及び、比較例のコイル22のコイル電圧VL101を示す。
【0072】
図4(c)は、実施の形態の2次巻線21-1b及び21-2bのトランス電流It、並びに、比較例の2次巻線21bのトランス電流It101を示す。
【0073】
図4(d)は、実施の形態の2次側の電流I2、及び、比較例の2次側の電流I2101を示す。
【0074】
図4(a)に示すように、トランス電圧Vtは、ブリッジ回路11が正相且つブリッジ回路12が正相の期間Tでは、プラス電圧となる。また、トランス電圧Vtは、ブリッジ回路11が逆相且つブリッジ回路12が逆相負の期間Tでは、マイナス電圧となる。トランス電圧Vtは、その他の期間では、0Vになる。制御装置31は、位相差φ1-2を制御することで、トランス電圧Vtがプラスの期間T及びマイナスの期間Tの長さを制御できる。つまり、制御装置31は、位相差φ1-2を制御することで、トランス電圧Vtの実効値を制御できる。
【0075】
図4(b)に示すように、コイル電圧VLは、ブリッジ回路13が正相の期間Tでは、トランス電圧Vtがマイナス方向に直流電圧Vout分だけオフセットした電圧である。また、コイル電圧VLは、ブリッジ回路13が逆相の期間Tでは、トランス電圧Vtがプラス方向に直流電圧Vout分だけオフセットした電圧である。制御装置31は、位相差φを制御することで、コイル電圧VLを制御できる。
【0076】
図4(c)に示すように、トランス電流Itは、コイル電圧VLがプラス電圧の期間Tでは、直線的に上昇し、コイル電圧VLがマイナス電圧の期間Tでは、直線的に下降する。
【0077】
図4(d)に示すように、電流I2は、電流I2101と比較して、小さくなる。
【0078】
図5は、実施の形態及び比較例の電源装置のシミュレーション波形を示す図である。図5では、電圧の比が1:0の場合を示している。また、出力電力は0Wであり、出力指令値である位相差φは0度である。
【0079】
先に説明したように、実施の形態では、直流電圧Vinと直流電圧Voutとの比が1:0の場合は、位相差φ1-2は180度である。
【0080】
図5(a)は、実施の形態の2次巻線21-1b及び21-2bのトランス電圧Vt、並びに、比較例の2次巻線21bのトランス電圧Vt101を示す。
【0081】
図5(b)は、実施の形態のコイル22のコイル電圧VL、及び、比較例のコイル22のコイル電圧VL101を示す。
【0082】
図5(c)は、実施の形態の2次巻線21-1b及び21-2bのトランス電流It、並びに、比較例の2次巻線21bのトランス電流It101を示す。
【0083】
図5(d)は、実施の形態の2次側の電流I2、及び、比較例の2次側の電流I2101を示す。
【0084】
図5(a)に示すように、トランス電圧Vtは、ブリッジ回路11の位相とブリッジ回路12の位相とが180度ずれているので、全期間に渡って0Vとなる。
【0085】
図5(b)に示すように、コイル電圧VLは、トランス電圧Vtが全期間に渡って0Vであり且つ直流電圧Voutが0Vであるので、全期間に渡って0Vである。
【0086】
図5(c)に示すように、トランス電流Itは、コイル電圧VLが全期間に渡って0Vであるので、全期間に渡って0Aである。
【0087】
図5(d)に示すように、電流I2は、全期間に渡って0Aである。
【0088】
図6は、実施の形態の電源装置の正規化したトランス電流を示す図である。図6では、直流電圧Vinと直流電圧Voutとの比が1:1(比の値が1)から1:0(比の値が0)までの範囲を示している。
【0089】
波形211は、実施の形態の電源装置1の正規化したトランス電流Itを示す。波形212は、比較例の電源装置101の正規化したトランス電流It101を示す。符号221は、直流電圧Vinと直流電圧Voutとの比が1:0.5(比の値が0.5)の場合(図4のシミュレーション波形参照)を示す。符号222は、直流電圧Vinと直流電圧Voutとの比が1:0(比の値が0)の場合(図5のシミュレーション波形参照)を示す。
【0090】
図6に示すように、電源装置1は、トランス電流Itを、電源装置101のトランス電流It101よりも抑制することができる。特に、電源装置1は、直流電圧Vinと直流電圧Voutとの比が1:0、つまり、2次側が垂下(短絡)の場合のトランス電流Itを、電源装置101のトランス電流It101よりも大幅に抑制することができる。
【0091】
また、電源装置1は、ブリッジ回路(3個)単位の位相を制御すれば良い。従って、電源装置1は、特許文献2(トランジスタ単位の位相を制御)と比較して、制御する位相の数を抑制できるので、制御演算量を抑制できる。
【0092】
また、電源装置1の1次側では、2個のブリッジ回路11及び12に1次電流が分流するので、低廉な部品を1次側のブリッジ回路11及び12に使用可能であり、部品コストを抑制できる。
【0093】
なお、実施の形態では、ブリッジ回路11、12及び13が単相フルブリッジ回路としたが、本開示はこれに限定されない。ブリッジ回路11、12及び13は、3相ブリッジ回路であっても良い。
【0094】
また、実施の形態では、制御装置31は、直流電圧Vinに対する直流電圧Voutの比の値に基づいて、ブリッジ回路11、12及び13の位相を制御することとしたが、本開示はこれに限定されない。制御装置31は、トランス21-1及びトランス21-2の1次側電流及び2次側電流に基づいて、ブリッジ回路11、12及び13の位相を制御しても良い。また、制御装置31は、直流電圧Vin、直流電圧Vout、トランス21-1及びトランス21-2の1次側電流及び2次側電流に基づいて、ブリッジ回路11、12及び13の位相を制御しても良い。
【0095】
<付記>
各ブリッジ回路にDCカットコンデンサを設けても良い。例えば、ブリッジ回路11の出力端子11c、11d、ブリッジ回路12の出力端子12c、12d、ブリッジ回路の入力端子13a、13bにDCカットコンデンサを設けても良い。
【0096】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0097】
1、101 電源装置
2 電源
3、23 コンデンサ
4 負荷
11、12、13 ブリッジ回路
21、21-1、21-2 トランス
22 コイル
24、25 電圧センサ
31、102 制御装置
31a 第1スイッチング制御部
31b 第2スイッチング制御部
31c 第3スイッチング制御部
31d 位相制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6