(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
E02D 3/026 20060101AFI20241211BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
E02D3/026
G01C15/00 102C
G01C15/00 104D
(21)【出願番号】P 2021040052
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2020079017
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(73)【特許権者】
【識別番号】500489037
【氏名又は名称】ライカジオシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】田邉 康太
(72)【発明者】
【氏名】大村 啓介
(72)【発明者】
【氏名】千葉 俊二
(72)【発明者】
【氏名】竹添 明生
(72)【発明者】
【氏名】浮田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】志村 篤史
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108427343(CN,A)
【文献】中国実用新案第207109515(CN,U)
【文献】特開2002-004261(JP,A)
【文献】特開2017-003448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/026
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラ部を少なくとも1つ以上備える転圧重機によって転圧される盛土層を複数積層してなる盛土を施工する際に、前記複数の盛土層の各々における転圧後の層厚である転圧後層厚を管理するための管理システムであって、
前記ローラ部に少なくとも1つ以上設けられた位置検出手段であって、前記複数の盛土層の各々の転圧時における前記ローラ部の3次元座標位置を検出する位置検出手段と、
前記ローラ部に設けられた傾斜角検出手段であって、前記複数の盛土層の各々の転圧時における前記ローラ部の傾斜角を検出する傾斜角検出手段と、
前記位置検出手段の検出結果と、前記傾斜角検出手段の検出結果とに基づいて、前記複数の盛土層の各々における各転圧地点の前記転圧後層厚を特定する層厚特定手段と、
前記層厚特定手段にて特定された前記転圧後層厚に基づいて、当該転圧後層厚に対応する前記盛土層の次に積層される前記盛土層の撒出厚を特定する撒出厚特定手段と、
を備える管理システム。
【請求項2】
前記ローラ部において相互に異なる位置に設けられた一対の前記位置検出手段を備え、
前記傾斜角検出手段は、前記転圧重機の進行方向に沿った第1軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第1傾斜角を検出し、
前記層厚特定手段は、
前記一対の位置検出手段の検出結果に基づいて、鉛直方向に沿った第2軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第2傾斜角と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第3傾斜角とを算出し、
前記一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、前記傾斜角検出手段にて検出された前記第1傾斜角と、前記算出した前記第2傾斜角及び前記第3傾斜角とに基づいて、前記各転圧地点の転圧後層厚を特定する、
請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記一対の位置検出手段を、前記ローラ部の回転軸の軸方向に略沿って相互に間隔を隔てて並設した、
請求項2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記位置検出手段及び前記傾斜角検出手段の一部を、GNSSアンテナで構成した、
請求項2又は3に記載の管理システム。
【請求項5】
前記ローラ部において相互に異なる位置に設けられた一対の前記位置検出手段を備え、
前記傾斜角検出手段は、前記転圧重機の進行方向に沿った第1軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第1傾斜角と、鉛直方向に沿った第2軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第2傾斜角と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第3傾斜角とを検出し、
前記層厚特定手段は、前記一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、前記傾斜角検出手段にて検出された前記第1傾斜角、前記第2傾斜角、及び前記第3傾斜角とに基づいて、前記各転圧地点の転圧後層厚を特定する、
請求項1に記載の管理システム。
【請求項6】
前記ローラ部において相互に異なる位置に設けられた一対の前記位置検出手段を備え、
前記傾斜角検出手段は、鉛直方向に沿った第1軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第1傾斜角と、前記転圧重機の進行方向に沿った第2軸及び前記第1軸に直交する第3軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第2傾斜角とを検出し、
前記層厚特定手段は、
前記一対の位置検出手段の検出結果に基づいて、平面方向における前記一対の位置検出手段の相対的な傾斜角である第3傾斜角を算出し、
前記一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、前記傾斜角検出手段にて検出された前記第1傾斜角及び前記第2傾斜角と、前記算出された前記第3傾斜角とに基づいて、複数の前記各転圧地点の転圧後層厚を特定する、
請求項1に記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、盛土の施工を管理する技術の一つとして、転圧ローラ車の転圧時の位置や姿勢を監視しながら、盛土における各転圧域の転圧回数を記録することで、各転圧域の締固め管理を行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においては、上述したように、各転圧域の転圧回数を記録するものに過ぎないので、例えば、転圧域に撒き出される土の量が設計量と異なる場合に、当該転圧域の転圧回数を正確に管理しても当該転圧域における転圧後の層厚を正確に管理することが難しいことから、盛土の施工性の観点からは改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、盛土の施工性を高めることを可能にする、管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の管理システムは、ローラ部を少なくとも1つ以上備える転圧重機によって転圧される盛土層を複数積層してなる盛土を施工する際に、前記複数の盛土層の各々における転圧後の層厚である転圧後層厚を管理するための管理システムであって、前記ローラ部に少なくとも1つ以上設けられた位置検出手段であって、前記複数の盛土層の各々の転圧時における前記ローラ部の3次元座標位置を検出する位置検出手段と、前記ローラ部に設けられた傾斜角検出手段であって、前記複数の盛土層の各々の転圧時における前記ローラ部の傾斜角を検出する傾斜角検出手段と、前記位置検出手段の検出結果と、前記傾斜角検出手段の検出結果とに基づいて、前記複数の盛土層の各々における各転圧地点の前記転圧後層厚を特定する層厚特定手段と、前記層厚特定手段にて特定された前記転圧後層厚に基づいて、当該転圧後層厚に対応する前記盛土層の次に積層される前記盛土層の撒出厚を特定する撒出厚特定手段と、を備える。
【0007】
請求項2に記載の管理システムは、請求項1に記載の管理システムにおいて、前記ローラ部において相互に異なる位置に設けられた一対の前記位置検出手段を備え、前記傾斜角検出手段は、前記転圧重機の進行方向に沿った第1軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第1傾斜角を検出し、前記層厚特定手段は、前記一対の位置検出手段の検出結果に基づいて、鉛直方向に沿った第2軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第2傾斜角と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第3傾斜角とを算出し、前記一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、前記傾斜角検出手段にて検出された前記第1傾斜角と、前記算出した前記第2傾斜角及び前記第3傾斜角とに基づいて、前記各転圧地点の転圧後層厚を特定する。
【0008】
請求項3に記載の管理システムは、請求項2に記載の管理システムにおいて、前記一対の位置検出手段を、前記ローラ部の回転軸の軸方向に略沿って相互に間隔を隔てて並設した。
【0009】
請求項4に記載の管理システムは、請求項2又は3に記載の管理システムにおいて、前記位置検出手段及び前記傾斜角検出手段の一部を、GNSSアンテナで構成した。
【0010】
請求項5に記載の管理システムは、請求項1に記載の管理システムにおいて、前記ローラ部において相互に異なる位置に設けられた一対の前記位置検出手段を備え、前記傾斜角検出手段は、前記転圧重機の進行方向に沿った第1軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第1傾斜角と、鉛直方向に沿った第2軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第2傾斜角と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第3傾斜角とを検出し、前記層厚特定手段は、前記一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、前記傾斜角検出手段にて検出された前記第1傾斜角、前記第2傾斜角、及び前記第3傾斜角とに基づいて、前記各転圧地点の転圧後層厚を特定する。
【0011】
請求項6に記載の管理システムは、請求項1に記載の管理システムにおいて、前記ローラ部において相互に異なる位置に設けられた一対の前記位置検出手段を備え、前記傾斜角検出手段は、鉛直方向に沿った第1軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第1傾斜角と、前記転圧重機の進行方向に沿った第2軸及び前記第1軸に直交する第3軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第2傾斜角とを検出し、前記層厚特定手段は、前記一対の位置検出手段の検出結果に基づいて、平面方向における前記一対の位置検出手段の相対的な傾斜角である第3傾斜角を算出し、前記一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、前記傾斜角検出手段にて検出された前記第1傾斜角及び前記第2傾斜角と、前記算出された前記第3傾斜角とに基づいて、複数の前記各転圧地点の転圧後層厚を特定する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の管理システムによれば、ローラ部に少なくとも1つ以上設けられた位置検出手段であって、複数の盛土層の各々の転圧時におけるローラ部の3次元座標位置を検出する位置検出手段と、ローラ部に設けられた傾斜角検出手段であって、複数の盛土層の各々の転圧時におけるローラ部の傾斜角を検出する傾斜角検出手段と、一対の位置検出手段の検出結果と、傾斜角検出手段の検出結果とに基づいて、複数の盛土層の各々における各転圧地点の転圧後層厚を特定する層厚特定手段と、を備えるので、複数の盛土層の各々における各転圧地点の転圧後層厚を特定できる。よって、従来技術(各盛土層の転圧回数を管理する技術)に比べて、各盛土層の転圧後層厚を正確に管理でき、盛土の施工性を高めることが可能となる。
また、層厚特定手段にて特定された転圧後層厚に基づいて、当該転圧後層厚に対応する盛土層の次に積層される盛土層の撒出厚を特定する撒出厚特定手段を備えるので、転圧後層厚に対応する盛土層の次に積層される盛土層の撒出厚を正確に特定でき、盛土の施工性を一層高めることが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の管理システムによれば、層厚特定手段が、一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果に基づいて、鉛直方向に沿った第2軸に対するローラ部の傾斜角である第2傾斜角と、第1軸及び第2軸に直交する第3軸に対するローラ部の傾斜角である第3傾斜角とを算出し、一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、傾斜角検出手段にて検出された第1傾斜角と、算出した第2傾斜角及び第3傾斜角とに基づいて、各転圧地点の転圧後層厚を特定するので、第1傾斜角のみを検出する傾斜角検出手段を備えるだけでよいことから、傾斜角検出手段の設置コストを低減できる。
【0015】
請求項3に記載の管理システムによれば、一対の位置検出手段を、ローラ部の回転軸の軸方向に略沿って相互に間隔を隔てて並設したので、少なくとも第3傾斜角の検出精度を高めることができ、各盛土層の転圧後層厚を正確に特定することが可能となる。
【0016】
請求項4に記載の管理システムによれば、位置検出手段及び傾斜角検出手段の一部を、GNSSアンテナで構成したので、傾斜計を用いることなく位置検出手段及び傾斜角検出手段の一部を構成でき、管理システムの製造コストを抑制することが可能となる。
【0017】
請求項5に記載の管理システムによれば、層厚特定手段が、一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、傾斜角検出手段にて検出された第1傾斜角、第2傾斜角、及び第3傾斜角とに基づいて、各転圧地点の転圧後層厚を特定するので、第1傾斜角、第2傾斜角、及び第3傾斜角の検出精度を高めることができ、各盛土層の転圧後層厚を正確に特定できる。
【0018】
請求項6に記載の管理システムによれば、層厚特定手段が、一対の位置検出手段の検出結果に基づいて、平面方向における一対の位置検出手段の相対的な傾斜角である第3傾斜角を算出し、一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、傾斜角検出手段にて検出された第1傾斜角及び第2傾斜角と、算出された第3傾斜角とに基づいて、複数の各転圧地点の転圧後層厚を特定するので、第1傾斜角及び第2傾斜角を算出する必要がないことから、管理処理の簡易化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る転圧重機及び管理システムを概念的に示す図である。
【
図2】管理システムの電気的構成を示したブロック図である。
【
図3】第1傾斜角テーブルの構成例を示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る管理処理のフローチャートである。
【
図5】転圧重機の姿勢状態を示す図であり、(a)は正常な状態を示す図、(b)は第1傾斜角だけ傾斜した状態を示す図である。
【
図6】転圧重機の姿勢状態を示す図であり、(a)は正常な状態を示す図、(b)は第2傾斜角だけ傾斜した状態を示す図である。
【
図7】転圧重機の姿勢状態を示す図であり、(a)は正常な状態を示す図、(b)は第3傾斜角だけ傾斜した状態を示す図である。
【
図8】施工面データ及び転圧後層厚を示す情報を示す図である。
【
図9】施工面データ及び転圧回数情報を示す図である。
【
図10】管理システムの電気的構成を示したブロック図である。
【
図11】実施の形態2に係る管理処理のフローチャートである。
【
図12】実施の形態3に係る管理処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る管理システムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0022】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、ローラ部を少なくとも1つ以上備える転圧重機によって転圧される盛土層を複数積層してなる盛土を施工する際に、複数の盛土層の各々における転圧後の層厚である転圧後層厚を管理するための管理システムに関する。
【0023】
ここで、「転圧重機」とは、構造物(例えば、土木構造物、建築構造物)が施工される施工現場の地盤の土(実施の形態では、当該地盤上に撒き出された土)に対して圧力を加えることにより、当該土を締め固める(すなわち、転圧する)ための重機であり、例えば、振動系の転圧重機(一例として、振動ローラ式の転圧重機等)、非振動系の転圧重機(一例として、タイヤローラ式の転圧重機、ロードローラ式の転圧重機等)を含む概念であるが、実施の形態では、非振動系の転圧重機として説明する。また、「盛土」とは、上記地盤上に土を盛ることを意味する。また、「転圧後層厚を管理する」とは、例えば、転圧後層厚が設計上許容される厚さであるか否かを確認すること等が該当する。
【0024】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0025】
〔実施の形態1〕
まず、実施の形態1に係る管理システムについて説明する。この実施の形態1は、後述する位置検出手段及び傾斜角検出手段の一部を、GNSSアンテナで構成した形態である。
【0026】
(構成)
最初に、実施の形態1に係る管理システム50の構成と、管理システム50が適用される転圧重機1とについて説明する。
【0027】
(構成-転圧重機)
まず、転圧重機1の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1に係る転圧重機1及び管理システム50を概念的に示す図である。以下の説明では、
図1のX方向を転圧重機1の左右方向又は幅方向(-X方向を転圧重機1の左方向、+X方向を転圧重機1の右方向)、
図1のY方向を転圧重機1の前後方向又は進行方向(+Y方向を転圧重機1の前方向、-Y方向を転圧重機1の後方向)、
図1のZ方向を転圧重機1の上下方向又は高さ方向(+Z方向を転圧重機1の上方向、-Z方向を転圧重機1の下方向)と称する。
【0028】
転圧重機1は、施工現場の地盤G上にある盛土Fを転圧するための重機である。この転圧重機1は、例えば公知の転圧重機(一例として、非振動系の転圧重機)を用いて構成されており、
図1に示すように、地盤G上又は盛土層FL上に設けられ、本体部10及びローラ部20を備えている。
【0029】
また、この転圧重機1による転圧方法については任意であるが、実施の形態1では、複数の盛土層FLの各々における各転圧地点が複数回転圧されるように、転圧重機1を複数回往復走行させることにより、転圧する。ただし、これに限らず、例えば、所望の転圧が可能であるのであれば、転圧重機1を1回のみ走行させることにより、転圧してもよい。
【0030】
(構成-転圧重機-本体部)
本体部10は、転圧重機1の基本構造体である。この本体部10は、
図1に示すように、作業者が転圧重機1を操縦するための操縦部11と、操縦部11よりも後方に設けられた走行部12であって、一対のタイヤ12a及びモータ(図示省略)を用いて転圧重機1を走行させるための走行部12と、操縦部11及び走行部12を支持する支持部13とを備えている。
【0031】
(構成-転圧重機-ローラ部)
ローラ部20は、上記盛土Fを転圧するための転圧手段であり、
図1に示すように、ローラ部本体21及び連結部22を備えている。
【0032】
(構成-転圧重機-ローラ部-ローラ部本体)
ローラ部本体21は、ローラ部20の基本構造体である。このローラ部本体21は、例えば鋼製の中空状体(具体的には、長尺な中空円柱状体)で形成されており、
図1に示すように、操縦部11よりも前方において、当該ローラ部本体21の回転軸の軸方向が左右方向に略沿うように1つだけ設けられている。
【0033】
(構成-転圧重機-ローラ部-連結部)
連結部22は、ローラ部本体21と支持部13とを連結するための連結手段である。この連結部22は、例えば鋼製の矩形環状体で構成され、
図1に示すように、操縦部11よりも前方において、ローラ部20の四周を覆うように設けられている。なお、以下では、必要に応じて、連結部22を構成するフレーム部23のうち、左側に位置するフレーム部23aを「左側フレーム部23a」と称し、右側に位置するフレーム部23bを「右側フレーム部23b」と称し、前側に位置するフレーム部23cを「前側フレーム部23c」と称し、後側に位置するフレーム部23dを「後側フレーム部23d」と称する。
【0034】
また、連結部22によるローラ部本体21と支持部13との連結方法については任意であるが、実施の形態1では、
図1に示すように、後側フレーム部23dと支持部13とを固定具等によって回動可能に接続すると共に、左側フレーム部23a及び右側フレーム部23bの各々とローラ部本体21とを固定具等によって回転可能に接続することにより、連結している。
【0035】
(構成-管理システム)
次に、管理システム50の構成について説明する。
図2は、管理システム50の電気的構成を示したブロック図である。
【0036】
管理システム50は、転圧重機1によって転圧される盛土層FLを複数積層してなる盛土Fを施工する際に、複数の盛土層FLの各々の転圧後層厚を管理するためのシステムであり、
図2に示すように、第1位置検出部61、第2位置検出部62、第1傾斜角検出部71、第2傾斜角検出部72、端末装置80、及び管理装置90を備えている。
【0037】
(構成-管理システム-第1位置検出部、第2位置検出部)
第1位置検出部61及び第2位置検出部62は、複数の盛土層FLの各々の転圧時における転圧重機1のローラ部20の3次元座標位置を検出する一対の位置検出手段である。これら第1位置検出部61及び第2位置検出部62は、
図1に示すように、ローラ部20において相互に異なる位置に設けられており、ローラ部20(具体的には、連結部22)に対して固定具等によって接続されている。
【0038】
また、第1位置検出部61及び第2位置検出部62の設置方法については任意であるが、実施の形態1では、ローラ部20(具体的には、ローラ部本体21)の回転軸の軸方向(
図1では、左右方向)に略沿って相互に間隔を隔てて並設しており、具体的には、
図1に示すように、第1位置検出部61を左側フレーム部23aに設けていると共に、第2位置検出部62を右側フレーム部23bに設けている。このような設置により、少なくとも後述する第3傾斜角θ3の検出精度を高めることができ、各盛土層FLの転圧後層厚を正確に特定することが可能となる。
【0039】
(構成-管理システム-第1傾斜角検出部、第2傾斜角検出部)
第1傾斜角検出部71及び第2傾斜角検出部72は、複数の盛土層FLの各々の転圧時におけるローラ部20の傾斜角を検出するものである。これら第1傾斜角検出部71及び第2傾斜角検出部72は、
図1に示すように、ローラ部20において相互に異なる位置に設けられており、ローラ部20(具体的には、連結部22)に対して固定具等によって接続されている。
【0040】
また、第1傾斜角検出部71及び第2傾斜角検出部72の設置方法については任意であるが、実施の形態1では、第1位置検出部61及び第2位置検出部62の設置方法と略同一に設けており、具体的には、
図1に示すように、第1傾斜角検出部71を左側フレーム部23aに設けていると共に、第2傾斜角検出部72を右側フレーム部23bに設けている。このような設置により、後述する第1傾斜角θ1の検出精度を高めることができ、各盛土層FLの転圧後層厚を正確に特定することが可能となる。
【0041】
また、第1位置検出部61、第2位置検出部62、第1傾斜角検出部71、及び第2傾斜角検出部72の具体的な構成については任意であるが、実施の形態1では、第1位置検出部61及び第1傾斜角検出部71を1つのGNSSアンテナ(具体的には、方位検出機能及び無線通信機能を有するGNSSアンテナ)で構成していると共に、第2位置検出部62及び第2傾斜角検出部72を別の1つのGNSSアンテナで構成している(すなわち、位置検出手段及び後述する傾斜角検出手段の一部をGNSSアンテナで構成している)。これにより、傾斜計を用いることなく第1位置検出部61、第2位置検出部62、第1傾斜角検出部71、及び第2傾斜角検出部72を構成でき、管理システム50の製造コストを抑制することが可能となる。
【0042】
なお、実施の形態1では、2つのGNSSアンテナのうち、第1位置検出部61及び第1傾斜角検出部71を構成するGNSSアンテナを「メインのGNSSアンテナ」として取り扱うものとし、第2位置検出部62及び第2傾斜角検出部72を構成するGNSSアンテナを「サブのGNSSアンテナ」として取り扱うものとするが、これに限らず、例えば、逆に取り扱ってもよい。
【0043】
また、この場合において、第1位置検出部61及び第2位置検出部62の具体的な動作については任意であるが、例えば、所定の時間間隔(一例として、1sec等)に検出結果(具体的には、3次元座標位置)を示す情報を端末装置80に向けて無線でそれぞれ送信する。なお、以下では、必要に応じて、上記検出結果を示す情報のうち、第1位置検出部61から送信される情報を「第1位置検出情報」と称し、第2位置検出部62から送信される情報を「第2位置検出情報」と称する。
【0044】
また、第1傾斜角検出部71及び第2傾斜角検出部72の具体的な動作については任意であるが、例えば、所定の時間間隔(一例として、1sec等)に検出結果(具体的には、方位)を示す情報を端末装置80に向けて無線で送信する。なお、以下では、必要に応じて、上記検出結果を示す情報のうち、第1傾斜角検出部71から送信される情報を「第1傾斜角検出情報」と称し、第2傾斜角検出部72から送信される情報を「第2傾斜角検出情報」と称する。
【0045】
(構成-管理システム-端末装置)
端末装置80は、各種の検出情報(具体的には、第1位置検出情報、第2位置検出情報、第1傾斜角検出情報、第2傾斜角検出情報)を管理装置90に送信すると共に、管理装置90から受信した情報に基づく各種の制御を行う装置であり、
図2に示すように、端末側通信部81、端末側操作部82、端末側出力部83、端末側制御部84、及び端末側記憶部85を備えている。なお、この端末装置80は、例えば、作業者によって所持されている公知の携帯端末(一例として、スマートフォンやタブレット端末)又は据え置き型のパーソナルコンピュータ等によって構成することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0046】
(構成-管理システム-端末装置-端末側通信部)
端末側通信部81は、ネットワーク30を介して第1位置検出部61、第2位置検出部62、第1傾斜角検出部71、第2傾斜角検出部72、及び管理装置90の各々と端末装置80との相互間で通信を行うための端末側通信手段であり、例えば、無線通信網又は有線通信網を用いて通信を行う公知の通信手段を用いて構成されている(なお、後述する管理装置90の管理側通信部91についても同様とする)。
【0047】
(構成-管理システム-端末装置-端末側操作部)
端末側操作部82は、端末装置80に対する操作入力を受け付ける端末側操作手段であり、各種のスイッチやタッチパッド等の公知の操作手段を用いて構成されている。
【0048】
(構成-管理システム-端末装置-端末側出力部)
端末側出力部83は、端末側制御部84の制御に基づいて各種の情報を出力する端末側出力手段であり、例えば公知の表示手段(一例として、ディスプレイ)又は音声出力手段(一例として、スピーカ)を用いて構成されている。
【0049】
(構成-管理システム-端末装置-端末側制御部)
端末側制御部84は、端末装置80を制御する端末側制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである(なお、後述する管理装置90の管理側制御部92についても同様とする)。
【0050】
(構成-管理システム-端末装置-端末側記憶部)
端末側記憶部85は、端末装置80の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する端末側記憶手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、DVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体、又はFlash Rom、USBメモリ、SDカードの如き電気的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる(なお、後述する管理装置90の管理側記憶部93についても同様とする)。
【0051】
(構成-管理システム-管理装置)
管理装置90は、上記盛土Fを施工する際に、複数の盛土層FLの各々の転圧後層厚を管理するための装置であり、
図2に示すように、管理側通信部91、管理側制御部92、及び管理側記憶部93を備えている。なお、この管理装置90は、例えば、ネットワーク30上に設けられた公知のクラウドサーバ等によって構成することができるので、その詳細な説明は省略する。
【0052】
(構成-管理システム-管理装置-管理側通信部)
管理側通信部91は、ネットワーク30を介して端末装置80と管理装置90との相互間で通信を行うための管理側通信手段である。
【0053】
(構成-管理システム-管理装置-管理側制御部)
管理側制御部92は、管理装置90を制御する管理側制御手段であり、
図2に示すように、機能概念的に、傾斜角検出部92a、層厚特定部92b、及び撒出厚特定部92cを備えている。
【0054】
傾斜角検出部92aは、第1傾斜角検出部71の検出結果及び第2傾斜角検出部72の検出結果に基づいて、後述する第1傾斜角θ1を検出するものである。なお、「第1傾斜角検出部71」、「第2傾斜角検出部72」、及び「傾斜角検出部92a」は、特許請求の範囲における「傾斜角検出手段」に対応する。
【0055】
層厚特定部92bは、第1位置検出部61及び第2位置検出部62の検出結果(あるいは、第1位置検出部61又は第2位置検出部62の検出結果のいずれか一方の検出結果)と、傾斜角検出部92aの検出結果とに基づいて、複数の盛土層FLの各々における各転圧地点の転圧後層厚を特定する層厚特定手段である。
【0056】
撒出厚特定部92cは、層厚特定部92bにて特定された転圧後層厚に基づいて、当該転圧後層厚に対応する盛土層FLの次に積層される盛土層FLの撒出厚を特定する撒出厚特定手段である。なお、この管理側制御部92によって実行される処理の詳細については後述する。
【0057】
(構成-管理システム-管理装置-管理側記憶部)
管理側記憶部93は、管理装置90の動作に必要なプログラム及び各種のデータ(例えば、後述する盛土層FLの設計層厚又は設計撒出厚を示す情報等)を記録する管理側記憶手段であり、
図2に示すように、第1傾斜角テーブル93aを備えている。
【0058】
第1傾斜角テーブル93aは、後述する第1傾斜角θ1を示す情報(以下、「第1傾斜角情報」と称する)を格納する第1傾斜角格納手段である。
【0059】
図3は、第1傾斜角テーブル93aの構成例を示す図である。
図3に示すように、第1傾斜角テーブル93aは、項目「第1傾斜角検出情報」、項目「第2傾斜角検出情報」、及び項目「第1傾斜角情報」と、各項目に対応する情報とを、相互に関連付けて格納している。このうち、項目「第1傾斜角検出情報」に対応する情報は、第1傾斜角検出情報であり、例えば、
図3に示す第1傾斜角検出部71にて検出された方位である「真西」等が該当する。また、項目「第2傾斜角検出情報」に対応する情報は、第2傾斜角検出情報であり、例えば、
図3に示す第2傾斜角検出部72にて検出された方位である「真東」等が該当する。また、項目「第1傾斜角情報」に対応する情報は、第1傾斜角情報であり、例えば、
図3に示す後述する第1傾斜角θ1の角度である「90°」等が該当する。
【0060】
このような管理システム50により、複数の盛土層FLの各々における各転圧地点の転圧後層厚を特定できる。よって、従来技術(各盛土層FLの転圧回数を管理する技術)に比べて、各盛土層FLの転圧後層厚を正確に管理でき、盛土Fの施工性を高めることが可能となる。特に、第1傾斜角θ1のみを検出する傾斜角検出手段(第1傾斜角検出部71、第2傾斜角検出部72、及び傾斜角検出部92a)を備えるだけでよいことから、傾斜角検出手段の設置コストを低減できる。
【0061】
(管理処理)
次に、上述したように構成された管理システム50における管理装置90の管理側制御部92によって実行される管理処理について説明する。
【0062】
図4は、実施の形態1に係る管理処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。
図5は、転圧重機1の姿勢状態を示す図であり、(a)は正常な状態を示す図、(b)は後述の第1傾斜角θ1だけ傾斜した状態を示す図である。
図6は、転圧重機1の姿勢状態を示す図であり、(a)は正常な状態を示す図、(b)は後述の第2傾斜角θ2だけ傾斜した状態を示す図である。
図7は、転圧重機1の姿勢状態を示す図であり、(a)は正常な状態を示す図、(b)は後述の第3傾斜角θ3だけ傾斜した状態を示す図である。
【0063】
管理処理は、上記盛土Fを施工する際に、複数の盛土層FLの各々の転圧後層厚を管理する処理である。また、この管理処理を実行するタイミングは任意であるが、実施の形態1においては、管理システム50に電源が投入された後に起動される。
【0064】
管理処理が起動されると、
図4に示すように、SA1において管理側制御部92は、各種の検出情報(具体的には、第1位置検出情報、第2位置検出情報、第1傾斜角検出情報、第2傾斜角検出情報)を取得する。
【0065】
この各種の検出情報の取得方法については任意であるが、実施の形態1では、以下の通りに取得する。すなわち、まず、端末装置80が、複数の盛土層FLのうち転圧の対象となる盛土層(以下、「対象盛土層」と称する)の転圧を開始してから終了するまでの間において、第1位置検出部61、第2位置検出部62、第1傾斜角検出部71、及び第2傾斜角検出部72から各種の検出情報を受信した後に、当該各種の検出情報と、受信日時を示す受信日時情報と、対象盛土層を位置に識別する盛土層FL識別情報と、対象盛土層を転圧した回数を示す転圧回数情報等とを相互に関連付けて構成された情報(以下、「検出ログ情報」と称する)をクラウドにアップロードする。その後、管理側制御部92が、所定のタイミング(例えば、上記アップロードしてから所定時間経過後のタイミング、又は定期的なタイミング等)で、検出ログ情報をクラウドから自動的にダウンロードすることにより、取得する。ただし、これに限らず、例えば、管理装置90と端末装置80とがネットワーク30を介して直接通信できる場合には、管理側制御部92が端末装置80から送信された検出ログ情報を直接受信することにより、取得してもよい。
【0066】
SA2において傾斜角検出部92aは、SA1にて取得した検出ログ情報に含まれる第1傾斜角検出情報及び第2傾斜角検出情報に基づいて、対象盛土層における各転圧地点の第1傾斜角θ1をそれぞれ検出する。ここで、「第1傾斜角θ1」とは、
図5に示すように、転圧重機1の進行方向(
図5では、前後方向)に沿った軸A1(以下、「第1軸A1」に対する転圧重機1のローラ部20の傾斜角を意味する。
【0067】
また、この第1傾斜角θ1を検出する理由については、
図5に示すように、作業者が転圧重機1を正常に操作している場合のローラ部20の中心位置(
図5(a)参照)と、作業者が転圧重機1を正常に操作していない場合のローラ部20の中心位置(
図5(b)参照)とに誤差が生じるため、この誤差を考慮して転圧後層厚を特定することにより、転圧後層厚の精度を高めるためである。
【0068】
また、この第1傾斜角θ1の検出方法については任意であるが、実施の形態1では、第1傾斜角テーブル93aに含まれる第1傾斜角情報の中からSA1にて取得した第1傾斜角検出情報及び第2傾斜角検出情報に対応する第1傾斜角情報を抽出し、当該抽出した第1傾斜角情報の角度を検出すべき第1傾斜角θ1として特定することにより、検出する。
【0069】
図4に戻り、SA3において層厚特定部92bは、SA1にて取得した第1位置検出情報及び第2位置検出情報に基づいて、対象盛土層における各転圧地点の第2傾斜角θ2及び第3検出角θ3をそれぞれ算出する。ここで、「第2傾斜角θ2」とは、
図6に示すように、鉛直方向に沿った軸A2(以下、「第2軸A2」と称する)に対するローラ部20の傾斜角を意味する。また、「第3傾斜角θ3」とは、
図7に示すように、第1軸A1及び第2軸A2に直交する図示しない軸(以下、「第3軸」と称する)に対するローラ部20の傾斜角を意味する。
【0070】
また、この第2傾斜角θ2を検出する理由については、
図6に示すように、転圧重機1の走行中においてローラ部20の回転軸の軸方向が左右方向に沿っている場合のローラ部20の中心位置(
図6(a)参照)と、転圧重機1の走行中においてローラ部20の回転軸の軸方向が左右方向に沿っていない場合のローラ部20の中心位置(
図6(b)参照)とに誤差が生じるため、この誤差を考慮して転圧後層厚を特定することにより、転圧後層厚の精度を高めるためである。
【0071】
また、この第3傾斜角θ3を検出する理由については、
図7に示すように、転圧重機1が平坦面を走行している場合のローラ部20の中心位置(
図7(a)参照)と、転圧重機1が傾斜面を走行している場合のローラ部20の中心位置(
図7(b)参照)とに誤差が生じるため、この誤差を考慮して転圧後層厚を特定することにより、転圧後層厚の精度を高めるためである。
【0072】
また、この第2傾斜角θ2の算出方法については任意であるが、実施の形態1では、下記式(1)を用いて算出する。
θ2=z21-z22・・・式(1)
(ここで、θ2:第2傾斜角、
z21:第1位置検出情報のZ方向の座標位置
z22:第2位置検出情報のZ方向の座標位置)
【0073】
また、この第3傾斜角θ3の算出方法については任意であるが、実施の形態1では、下記式(2)、下記式(3)を用いて算出する。
【数1】
(ここで、θ3:第3傾斜角、
h31:今回の転圧地点における第1位置検出情報のZ方向の座標位置、
h32:前回の転圧地点(今回の転圧地点よりも手前の転圧地点)における第1位置検出情報のZ方向の座標位置、
D:今回の転圧地点から前回の転圧地点までの平面移動距離
x31:今回の転圧地点における第1位置検出情報のX方向の座標位置、
x32:前回の転圧地点における第1位置検出情報のX方向の座標位置、
y31:今回の転圧地点における第1位置検出情報のY方向の座標位置、
y32:前回の転圧地点における第1位置検出情報のY方向の座標位置)
【0074】
図4に戻り、SA4において層厚特定部92bは、SA1にて取得した検出ログ情報に含まれる第1位置検出情報及び第2位置検出情報(あるいは、第1位置検出情報又は第2位置検出情報のいずれか一方)と、SA2にて検出された第1傾斜角θ1と、SA3にて算出した第2傾斜角θ2及び第3傾斜角θ3とに基づいて、対象盛土層における各転圧地点の転圧後層厚をそれぞれ特定する。
【0075】
この転圧後層厚の特定方法については任意であるが、実施の形態1では、下記式(4)から下記式(11)を用いて特定する。
P=(Px、Py、Pz)・・・式(4)
Px=x1-(-cos(θ2)×sin(θ1)+sin(θ2)×sin(θ3)×cos(θ1))×dC-(cos(θ3)×cos(θ1))×dB-(-cos(θ2)×sin(θ3)×cos(θ1)-sin(θ2)×sin(θ1))×dH・・・式(5)
dy=y1-(cos(θ2)×cos(θ1)+sin(θ2)×sin(θ3)×sin(θ1))×dC-(cos(θ3)×sin(θ1))×dB-(-cos(θ2)×sin(θ3)×sin(θ1)+sin(θ2)×cos(θ1))×dH・・・式(6)
dz=z1-dH×cos(θ3)×cos(θ2)-dB×sin(θ3)+dC×sin(θ2)×cos(θ3)・・・式(7)
dB=0.0・・・式(8)
dC=W/2・・・式(9)
dH=H1/H2・・・式(10)
Tt=Pz-Pz’・・・式(11)
(ここで、P:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の中心点の3次元座標位置、
Px:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の中心点のX方向の座標位置、
Py:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の中心点のY方向の座標位置、
Pz:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の中心点のZ方向の座標位置、
x1:今回の転圧地点における第1位置検出情報のX方向の座標位置、
y1:今回の転圧地点における第1位置検出情報のY方向の座標位置、
z1:今回の転圧地点における第1位置検出情報のZ方向の座標位置、
θ1:第1傾斜角、
θ2:第2傾斜角、
θ3:第3傾斜角、
dB:第1位置検出部61の前後方向のオフセット量、
dC:第1位置検出部61の左右方向のオフセット量、
dH:第1位置検出部61の上下方向のオフセット量、
W:ローラ部20の幅、
H1:第1位置検出部61の高さ、
H2:ローラ部20の中心点の高さ、
Tt:対象盛土層の転圧後層厚、
Pz’:対象盛土層の直前に転圧された盛土層FLの転圧時におけるローラ部20の中心点のZ方向の座標位置(なお、上記ローラ部20の中心点のX方向及びY方向の座標位置は、対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の中心点のX方向及びY方向の座標位置と略合致するものとする。また、対象盛土層が第1盛土層FLである場合には、Pz’は、地盤G上の転圧地点におけるZ方向の座標位置とする。)
【0076】
このようなSA1からSA4の処理により、対象盛土層における各転圧地点の転圧後層厚を特定でき、対象盛土層の転圧後層厚を正確に管理でき、盛土Fの施工性を高めることが可能となる。
【0077】
ただし、これに限らず、例えば、x1は、今回の転圧地点における第1位置検出情報のX方向の座標位置と今回の転圧地点における第2位置検出情報のX方向の座標位置との平均値が用いられてもよい(なお、y1、z1、dB、dC、dHについても略同様とする)。
【0078】
SA5において撒出厚特定部92cは、SA4にて特定された転圧後層厚に基づいて、当該転圧後層厚に対応する盛土層FLの次に積層される盛土層(以下、「次回盛土層」と称する)における各転圧地点の撒出厚を特定する。なお、例えば、対象盛土層が最上層の盛土層FLである場合には、SA5の処理を省略してもよい。
【0079】
この次回盛土層の撒出厚を特定する方法については任意であるが、実施の形態1では、下記式(12)を用いて特定する。
Tn=(Td-Tt)×α+Tnd・・・式(12)
Tn:次回盛土層の撒出厚
Td:対象盛土層の設計層厚、
Tt:対象盛土層の転圧後層厚、
α:係数
Tnd:次回盛土層の設計撒出厚)
【0080】
このようなSA5の処理により、次回盛土層の撒出厚を正確に特定でき、盛土Fの施工性を一層高めることが可能となる。
【0081】
SA6において管理側制御部92は、公知の画像作成方法を用いて、SA4、SA5にて特定された各種の情報に基づいて、施工面データを作成する。ここで、「施工面データ」とは、実施の形態1では、対象盛土層を転圧した状況を示す画像データ(具体的には、3次元画像データ)を意味する。
【0082】
この施工面データの作成方法については任意であるが、実施の形態1では以下の通りに作成する。すなわち、まず、公知の画像作成ソフトを用いて、仮想空間内において、SA4にて特定された対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の中心点の3次元座標位置のすべてに対応する節点を生成し、当該生成した節点を対応する位置にそれぞれ配置する(すなわち、座標位置の点群化を図る)。この場合には、例えば、SA4にて特定された対象盛土層の転圧後層厚を示す情報、SA5にて特定された次回盛土層の撒出厚を示す情報、又はSA1にて取得した検出ログ情報の少なくともいずれか1つを対応する節点に紐づけてもよい(なお、実施の形態1では、これらの情報のすべてを対応する節点に紐づけるものとする)。そして、仮想空間内において、これら節点を用いてメッシュ(要素)を生成して図示することにより、作成する。
【0083】
これにより、対象盛土層の転圧状況等を視覚的に把握しやすくなるため、当該転圧状況等の確認を行いやすくなる。
【0084】
SA7において管理側制御部92は、処理情報を端末装置80に対して提供する。ここで、「処理情報」とは、管理処理にて特定又は作成等された各種の情報を含む情報であり、実施の形態1では、SA1にて取得した検出ログ情報、SA4にて特定された対象盛土層の転圧後層厚を示す情報、SA5にて特定された次回盛土層の撒出厚を示す情報、及びSA6にて作成した施工面データを含む情報として説明する。ただし、これに限らず、例えば、SA4にて特定された対象盛土層の転圧後層厚を示す情報、及びSA5にて特定された次回盛土層の撒出厚を示す情報のみを含んでもよい。
【0085】
また、この処理情報の提供方法については任意であるが、実施の形態1では、管理側制御部92が処理情報をクラウドにアップロードすることにより、提供する。これにより、上記アップロードしてから所定のタイミングで、端末装置80が処理情報をクラウドからダウンロードすることで取得することが可能となる。ただし、これに限らず、例えば、管理装置90と端末装置80とがネットワーク30を介して直接通信できる場合には、管理側制御部92が処理情報を直接送信することにより、提供してもよい。
【0086】
なお、SA7にて処理情報が提供された後の端末装置80の具体的な処理内容については任意であるが、例えば、端末装置80の端末側制御部84は、SA7にて提供された処理情報を取得した後、端末側出力部83(具体的には、表示手段)の画面上に表示領域(以下、「処理表示領域」と称する)を生成し、当該生成した処理表示領域に当該処理情報に含まれる各種の情報の少なくともいずれか1つを表示させてもよい。
【0087】
図8は、施工面データ及び転圧後層厚を示す情報を示す図である。
図9は、施工面データ及び転圧回数情報を示す図である。特に、施工面データを表示させる場合には、
図8に示すように、施工面データの平面図に対象盛土層の転圧後層厚(
図8では、メッシュを構成する節点に対応する転圧後層厚の平均値)を示す情報(又は次回盛土層の撒出厚を示す情報)を関連付けて表示させてもよい。あるいは、施工面データの平面図に次回盛土層の撒出厚を示す情報を関連付けて表示させてもよい。あるいは、例えば、
図9に示すように、施工面データの平面図に転圧回数情報を関連付けて表示させてもよい。あるいは、施工面データの平面図に、受信日時情報に基づいた第1位置検出情報(又は第2位置検出情報)の履歴を関連付けて表示させてもよい。これにより、作業者に対して処理情報を提示でき、作業者が処理情報の内容を視覚的に確認することが可能となる。
【0088】
SA8において管理側制御部92は、管理処理を終了するタイミング(以下、「終了タイミング」と称する)が到来したか否かを判定する。
【0089】
この終了タイミングが到来したか否かの判定方法については任意であるが、例えば、端末装置80から管理処理を終了する旨を示す終了信号を受信したか否か、又はSA4にて最上層の盛土層FLの転圧後層厚が特定されたか否かに基づいて判定する。ここで、上記終了信号が受信された場合又は上記最上層の盛土層FLの転圧後層厚が特定された場合には終了タイミングが到来したと判定し、上記終了信号が受信されていない場合及び上記最上層の盛土層FLの転圧後層厚が特定されていない場合には終了タイミングが到来していないと判定する。
【0090】
そして、管理側制御部92は、終了タイミングが到来したと判定された場合(SA8、Yes)には管理処理を終了する。一方で、終了タイミングが到来していないと判定された場合(SA8、No)にはSA1に移行し、SA8にて終了タイミングが到来したと判定されるまでSA1からSA8の処理を繰り返し行う。
【0091】
このような管理処理により、SA1からSA8の処理を繰り返すことで、複数の盛土層FLの各々における各転圧地点の転圧後層厚を特定できる。よって、従来技術(各盛土層FLの転圧回数を管理する技術)に比べて、各盛土層FLの転圧後層厚を正確に管理でき、盛土Fの施工性を高めることが可能となる。
【0092】
(実施の形態1の効果)
このように実施の形態1によれば、ローラ部20において相互に異なる位置に設けられた第1位置検出部61及び第2位置検出部62であって、複数の盛土層FLの各々の転圧時におけるローラ部20の3次元座標位置を検出する第1位置検出部61及び第2位置検出部62と、ローラ部20に設けられた傾斜角検出手段であって、複数の盛土層FLの各々の転圧時におけるローラ部20の傾斜角を検出する傾斜角検出手段と、第1位置検出部61及び第2位置検出部62の検出結果(あるいは、第1位置検出部61又は第2位置検出部62の検出結果のいずれか一方の検出結果)と、傾斜角検出手段の検出結果とに基づいて、複数の盛土層FLの各々における各転圧地点の転圧後層厚を特定する層厚特定部92bと、を備えるので、複数の盛土層FLの各々における各転圧地点の転圧後層厚を特定できる。よって、従来技術(各盛土層FLの転圧回数を管理する技術)に比べて、各盛土層FLの転圧後層厚を正確に管理でき、盛土Fの施工性を高めることが可能となる。
【0093】
また、層厚特定部92bが、第1位置検出部61及び第2位置検出部62の検出結果(あるいは、第1位置検出部61又は第2位置検出部62の検出結果のいずれか一方の検出結果)に基づいて、鉛直方向に沿った第2軸A2に対するローラ部20の傾斜角である第2傾斜角θ2と、第1軸A1及び第2軸A2に直交する第3軸に対するローラ部20の傾斜角である第3傾斜角θ3とを算出し、第1位置検出部61及び第2位置検出部62の検出結果と、傾斜角検出手段にて検出された第1傾斜角θ1と、算出した第2傾斜角θ2及び第3傾斜角θ3とに基づいて、各転圧地点の転圧後層厚を特定するので、第1傾斜角θ1のみを検出する傾斜角検出手段を備えるだけでよいことから、傾斜角検出手段の設置コストを低減できる。
【0094】
また、第1位置検出部61及び第2位置検出部62を、ローラ部20の回転軸の軸方向に略沿って相互に間隔を隔てて並設したので、少なくとも第3傾斜角θ3の検出精度を高めることができ、各盛土層FLの転圧後層厚を正確に特定することが可能となる。
【0095】
また、第1位置検出部61(又は第2位置検出部62)及び傾斜角検出手段の一部を、GNSSアンテナで構成したので、傾斜計を用いることなく第1位置検出部61(又は第2位置検出部62)及び傾斜角検出手段の一部を構成でき、管理システム50の製造コストを抑制することが可能となる。
【0096】
また、層厚特定部92bにて特定された転圧後層厚に基づいて、当該転圧後層厚に対応する盛土層FLの次に積層される盛土層FLの撒出厚を特定する撒出厚特定部92cを備えるので、転圧後層厚に対応する盛土層FLの次に積層される盛土層FLの撒出厚を正確に特定でき、盛土Fの施工性を一層高めることが可能となる。
【0097】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2に係る管理システムについて説明する。この実施の形態2は、位置検出手段をGNSSアンテナで構成し、傾斜角検出手段を傾斜計で構成した形態である。ただし、この実施の形態2の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態1の構成と略同一であり、実施の形態1の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態1で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0098】
(構成)
最初に、実施の形態2に係る管理システム100の構成と、管理システム100が適用される転圧重機1とについて説明する。
【0099】
(構成-転圧重機)
まず、転圧重機1の構成について説明する。実施の形態2に係る転圧重機1は、実施の形態1に係る転圧重機1と略同一に構成されている。
【0100】
(構成-管理システム)
次に、管理システム100の構成について説明する。
図10は、管理システム100の電気的構成を示したブロック図である。実施の形態2に係る管理システム100は、
図10に示すように、第1位置検出部61、第2位置検出部62、傾斜角検出部110、端末装置80、及び管理装置90を備えている。
【0101】
(構成-管理システム-第1位置検出部、第2位置検出部)
実施の形態2に係る第1位置検出部61及び第2位置検出部62は、実施の形態1に係る第1位置検出部61及び第2位置検出部62と略同一に構成されている。
【0102】
(構成-管理システム-傾斜角検出部)
傾斜角検出部110は、複数の盛土層FLの各々の転圧時におけるローラ部20の傾斜角を検出するものであり、ローラ部20の連結部22に設けられており、連結部22に対して固定具等によって接続されている。
【0103】
また、第1位置検出部61、第2位置検出部62、及び傾斜角検出部110の具体的な構成については任意であるが、実施の形態2では、第1位置検出部61を1つのGNSSアンテナ(具体的には、無線通信機能を有するGNSSアンテナ)で構成し、且つ第2位置検出部62を別の1つのGNSSアンテナで構成していると共に、傾斜角検出部110を傾斜計(具体的には、第1傾斜角θ1、第2傾斜角θ2、及び第3傾斜角θ3を計測可能な3軸傾斜計)で構成している。これにより、第1傾斜角θ1、第2傾斜角θ2、及び第3傾斜角θ3の検出精度を高めることができ、各盛土層FLの転圧後層厚を正確に特定できる。
【0104】
この場合において、傾斜角検出部110の具体的な動作については任意であるが、例えば、所定の時間間隔(一例として、1sec等)に検出結果(具体的には、第1傾斜角θ1、第2傾斜角θ2、及び第3傾斜角θ3)を示す情報を端末装置80に向けて無線又は有線で送信する。なお、以下では、必要に応じて、上記検出結果を示す情報のうち、傾斜角検出部110にて検出された第1傾斜角θ1を示す情報を「第1傾斜角検出情報」と称し、傾斜角検出部110にて検出された第2傾斜角θ2を示す情報を「第2傾斜角検出情報」と称し、傾斜角検出部110にて検出された第3傾斜角θ3を示す情報を「第3傾斜角検出情報」と称する。
【0105】
(構成-管理システム-端末装置)
実施の形態2に係る端末装置80は、実施の形態1に係る端末装置80と略同一に構成されている。
【0106】
(構成-管理システム-管理装置)
実施の形態2に係る管理装置90は、
図10に示すように、実施の形態1に係る管理装置90とほぼ同一に構成されているものの、管理側制御部92の傾斜角検出部92a及び管理側記憶部93の第1傾斜角テーブル93aを省略して構成されている。
【0107】
(管理処理)
次に、上述したように構成された管理システム100における管理装置90の管理側制御部92によって実行される管理処理について説明する。
図11は、実施の形態2に係る管理処理のフローチャートである。
【0108】
実施の形態2に係る管理処理については、
図11のSB3からSB6は、
図4のSA5からSA8とそれぞれ同様であるので、説明を省略する。
【0109】
管理処理が起動されると、
図11に示すように、SB1において管理側制御部92は、各種の検出情報(具体的には、第1位置検出情報、第2位置検出情報、第1傾斜角検出情報、第2傾斜角検出情報、第3傾斜角検出情報)を取得する。
【0110】
この各種の検出情報の取得方法については任意であるが、実施の形態2では、実施の形態1のSA1の処理と略同様に、端末装置80が各種の検出情報等を含む検出ログ情報をクラウドにアップロードした後に、管理側制御部92が、所定のタイミングで、検出ログ情報をクラウドから自動的にダウンロードすることにより、取得する。
【0111】
SB2において層厚特定部92bは、SB1にて取得した検出ログ情報に含まれる第1位置検出情報、第2位置検出情報、第1傾斜角検出情報、第2傾斜角検出情報、及び第3傾斜角検出情報に基づいて(あるいは、第1位置検出情報又は第2位置検出情報のいずれか一方と、第1傾斜角検出情報、第2傾斜角検出情報、及び第3傾斜角検出情報とに基づいて)、対象盛土層における各転圧地点の転圧後層厚をそれぞれ特定する。
【0112】
この転圧後層厚の特定方法については任意であるが、実施の形態2では、実施の形態1のSA4の処理と略同様に、上記式(4)から上記式(11)を用いて特定する。
【0113】
このような管理処理により、実施の形態1に係る管理処理と同様に、複数の盛土層FLの各々における各転圧地点の転圧後層厚を特定できる。また、第1傾斜角検出情報、第2傾斜角検出情報、及び第3傾斜角検出情報を取得できるので、管理装置90において第1傾斜角θ1、第2傾斜角θ2、及び第3傾斜角θ3を算出する必要がないことから、管理処理の簡易化を図ることができる。
【0114】
(実施の形態2の効果)
このように実施の形態2によれば、層厚特定部92bが、第1位置検出部61及び第2位置検出部62の検出結果(あるいは、第1位置検出部61又は第2位置検出部62の検出結果のいずれか一方の検出結果)と、傾斜角検出部110にて検出された第1傾斜角θ1、第2傾斜角θ2、及び第3傾斜角θ3とに基づいて、各転圧地点の転圧後層厚を特定するので、第1傾斜角θ1、第2傾斜角θ2、及び第3傾斜角θ3の検出精度を高めることができ、各盛土層FLの転圧後層厚を正確に特定できる。
【0115】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3に係る管理システムについて説明する。この実施の形態3は、傾斜角検出手段が後述する第1傾斜角及び後述する第2傾斜角を検出し、層厚特定部が一対の位置検出手段の検出結果に基づいて後述する第3傾斜角を算出する形態である。ただし、この実施の形態3の構成は、特記する場合を除いて、実施の形態2の構成と略同一であり、実施の形態2の構成と略同一の構成についてはこの実施の形態2で用いたものと同一の符号及び/又は名称を必要に応じて付して、その説明を省略する。
【0116】
(構成)
最初に、実施の形態3に係る管理システム100の構成と、管理システム100が適用される転圧重機1とについて説明する。
【0117】
(構成-転圧重機)
まず、転圧重機1の構成について説明する。実施の形態3に係る転圧重機1は、実施の形態2に係る転圧重機1と略同一に構成されている。
【0118】
(構成-管理システム)
次に、管理システム100の構成について説明する。
実施の形態3に係る管理システム100は、実施の形態2に係る管理システム100と略同一に構成されている。ただし、傾斜角検出部110の構成の詳細については、下記に示す工夫が施されている。
【0119】
(構成-管理システム-傾斜角検出部)
傾斜角検出部110は、複数の盛土層FLの各々の転圧時におけるローラ部20の傾斜角を検出するものであり、ローラ部20の連結部22に設けられており、連結部22に対して固定具等によって接続されている。
【0120】
また、第1位置検出部61、第2位置検出部62、及び傾斜角検出部110の具体的な構成については任意であるが、実施の形態3では、第1位置検出部61を1つのGNSSアンテナ(具体的には、無線通信機能を有するGNSSアンテナ)で構成し、且つ第2位置検出部62を別の1つのGNSSアンテナで構成していると共に、傾斜角検出部110を傾斜計(具体的には、第1傾斜角θ1及び第2傾斜角θ2を計測可能な2軸傾斜計)で構成している。
【0121】
また、傾斜角検出部110の具体的な動作については任意であるが、例えば、所定の時間間隔(一例として、1sec等)に検出結果(具体的には、第1傾斜角θ1及び第2傾斜角θ2)を示す情報を端末装置80に向けて無線又は有線で送信する。なお、以下では、必要に応じて、上記検出結果を示す情報のうち、傾斜角検出部110にて検出された第1傾斜角θ1を示す情報を「第1傾斜角検出情報」と称し、傾斜角検出部110にて検出された第2傾斜角θ2を示す情報を「第2傾斜角検出情報」と称する。
【0122】
ここで、「第1傾斜角θ1」とは、鉛直方向に沿った軸(以下、「第1軸」と称する)に対するローラ部の傾斜角を意味し、具体的には、実施の形態2に係る第2傾斜角θ2に対応する傾斜角(
図6(b)参照)が該当する。また、「第2傾斜角θ2」とは、転圧重機の進行方向に沿った軸(以下、「第2軸」と称する)及び第1軸に直交する軸(以下、「第3軸」と称する)に対するローラ部の傾斜角を意味し、具体的には、実施の形態2に係る第3傾斜角θ3に対応する傾斜角(
図7(b)参照)が該当する。
【0123】
(管理処理)
次に、上述したように構成された管理システム100における管理装置90の管理側制御部92によって実行される管理処理について説明する。
図12は、実施の形態3に係る管理処理のフローチャートである。
【0124】
実施の形態3に係る管理処理については、
図12のSC5からSC7は、
図11のSB4からSB6とそれぞれ同様であるので、説明を省略する。
【0125】
管理処理が起動されると、
図12に示すように、SC1において管理側制御部92は、各種の検出情報(具体的には、第1位置検出情報、第2位置検出情報、第1傾斜角検出情報、及び第2傾斜角検出情報)を取得する。
【0126】
この各種の検出情報の取得方法については任意であるが、実施の形態3では、実施の形態2のSB1の処理と略同様に、端末装置80が各種の検出情報等を含む検出ログ情報をクラウドにアップロードした後に、管理側制御部92が、所定のタイミングで、検出ログ情報をクラウドから自動的にダウンロードすることにより、取得する。
【0127】
SC2において層厚特定部92bは、SC1にて取得した第1位置検出情報及び第2位置検出情報に基づいて、対象盛土層における各転圧地点の第3傾斜角θ3を算出する。
【0128】
ここで、「第3傾斜角θ3」とは、平面方向における第1位置検出部61及び第2位置検出部62の相対的な傾斜角を意味する。
【0129】
また、この第3傾斜角θ3の算出方法については任意であるが、実施の形態3では、下記式(13)を用いて算出する。
θ3=|tan-1((y31-y32)/(x31-x32)|・・・式(13)
(ここで、θ3:第3傾斜角、
x31:今回の転圧地点における第1位置検出情報のX方向の座標位置、
x32:今回の転圧地点における第2位置検出情報のX方向の座標位置、
y31:今回の転圧地点における第1位置検出情報のY方向の座標位置、
y32:今回の転圧地点における第2位置検出情報のY方向の座標位置)
【0130】
SC3において層厚特定部92bは、SC1にて取得した検出ログ情報に含まれる第1位置検出情報及び第2位置検出情報(あるいは、第1位置検出情報又は第2位置検出情報のいずれか一方)と、当該検出ログ情報に含まれる第1傾斜角検出情報及び第2傾斜角検出情報と、SC2にて算出した第3傾斜角θ3とに基づいて、対象盛土層における複数の各転圧地点の転圧後層厚を特定する。
【0131】
この転圧後層厚の特定方法については任意であるが、実施の形態3では、下記式(13)から下記式(15)を用いて特定する。
【数2】
【数3】
【数4】
Ttl=Zl-Zl’・・・式(16)
Ttr=Zr-Zr’・・・式(17)
Ttc=Zc-Zc’・・・式(18)
(ここで、Xl:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の左端側接地点のX方向の座標位置、
Yl:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の左端側接地点のY方向の座標位置、
Zl:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の左端側接地点のZ方向の座標位置、
θ1:第1傾斜角、
θ2:第2傾斜角、
θ3:第3傾斜角、
Xdl:左側のデフォルトベクトルのX方向の座標位置、
Ydl:左側のデフォルトベクトルのY方向の座標位置、
Zdl:左側のデフォルトベクトルのZ方向の座標位置、
Xgnss:今回の転圧地点における第1位置検出情報のX方向の座標位置
Ygnss:今回の転圧地点における第1位置検出情報のY方向の座標位置
Zgnss:今回の転圧地点における第1位置検出情報のZ方向の座標位置
Xr:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の右端側接地点のX方向の座標位置、
Yr:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の右端側接地点のY方向の座標位置、
Zr:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の右端側接地点のZ方向の座標位置、
Xdr:左側のデフォルトベクトルのX方向の座標位置、
Ydr:左側のデフォルトベクトルのY方向の座標位置、
Zdr:左側のデフォルトベクトルのZ方向の座標位置、
Xc:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の中心点のX方向の座標位置、
Yc:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の中心点のY方向の座標位置、
Zc:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の中心点のZ方向の座標位置、
Ttl:対象盛土層におけるローラ部20の左端側接地点に対応する盛土層FLの転圧後層厚、
Zl’:対象盛土層の直前に転圧された盛土層FLの転圧時におけるローラ部20の左端側接地点のZ方向の座標位置
Ttr:対象盛土層におけるローラ部20の右端側接地点に対応する盛土層FLの転圧後層厚、
Zr’:対象盛土層の直前に転圧された盛土層FLの転圧時におけるローラ部20の右端側接地点のZ方向の座標位置
Ttc:対象盛土層におけるローラ部20の中心点に対応する盛土層FLの転圧後層厚、
Zc’:対象盛土層の直前に転圧された盛土層FLの転圧時におけるローラ部20の中心点のZ方向の座標位置
【0132】
ここで、Xdl、Ydl、Zdlの設定方法については任意であるが、例えば、転圧重機1で盛土Fを転圧する前に、公知の測定装置を用いてローラ部20の左端側接地点のX方向、Y方向、Z方向の座標位置を測定し、当該測定した座標位置をXdl、Ydl、Zdlとして設定してもよい。また、Xdr、Ydr、Zdrの設定方法については任意であるが、例えば、転圧重機1で盛土Fを転圧する前に、公知の測定装置を用いてローラ部20の右端側接地点のX方向、Y方向、Z方向の座標位置を測定し、当該測定した座標位置をXdr、Ydr、Zdrとして設定してもよい。
【0133】
このようなSC1からSC3の処理により、対象盛土層における複数の各転圧地点の転圧後層厚(ローラ部20の左端側接地点、右端側接地点、及び中心点の各々に対応する盛土層FLの転圧後層厚)を特定でき、対象盛土層の転圧後層厚を正確に管理でき、盛土Fの施工性を高めることが可能となる。
【0134】
ただし、これに限らず、例えば、Xgnssは、今回の転圧地点における第1位置検出情報のX方向の座標位置と今回の転圧地点における第2位置検出情報のX方向の座標位置との平均値が用いられてもよい(なお、Ygnss、Zgnssについても略同様とする)。
【0135】
SC4において撒出厚特定部92cは、SC3にて特定された転圧後層厚に基づいて、当該転圧後層厚に対応する盛土層FLの次に積層される盛土層(以下、「次回盛土層」と称する)における各転圧地点の撒出厚を特定する。
【0136】
この次回盛土層の撒出厚を特定する方法については任意であるが、実施の形態3では、下記式(19)を用いて特定する。
Tn=(Td-Ttc)×α+Tnd・・・式(19)
Tn:次回盛土層の撒出厚
Td:対象盛土層の設計層厚、
Ttc:対象盛土層におけるローラ部20の中心点に対応する盛土層FLの転圧後層厚、
α:係数
Tnd:次回盛土層の設計撒出厚)
【0137】
ただし、これに限らず、例えば、Ttcに代えて、Ttl(対象盛土層におけるローラ部20の左端側接地点に対応する盛土層FLの転圧後層厚)、又はTtr(対象盛土層におけるローラ部20の右端側接地点に対応する盛土層FLの転圧後層厚)のいずれか一方を用いて特定してもよい。
【0138】
このような管理処理により、実施の形態2に係る管理処理と同様に、複数の盛土層FLの各々における各転圧地点の転圧後層厚を特定できる。また、第1傾斜角検出情報、第2傾斜角検出情報、及び第3傾斜角検出情報を取得できるので、管理装置90において第1傾斜角θ1及び第2傾斜角θ2を算出する必要がないことから、管理処理の簡易化を図ることができる。
【0139】
(実施の形態3の効果)
このように実施の形態3によれば、層厚特定部92bが、第1位置検出部61及び第2位置検出部62の検出結果に基づいて、平面方向における一対の位置検出手段の相対的な傾斜角である第3傾斜角θ3を算出し、第1位置検出部61及び第2位置検出部62の少なくともいずれか一方の検出結果と、傾斜角検出部110にて検出された第1傾斜角θ1及び第2傾斜角θ2と、算出された第3傾斜角θ3とに基づいて、複数の各転圧地点の転圧後層厚を特定するので、第1傾斜角θ1及び第2傾斜角θ2を算出する必要がないことから、管理処理の簡易化を図ることができる。
【0140】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0141】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0142】
(形状、数値、構造、時系列について)
実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0143】
(転圧重機について)
実施の形態1から3では、転圧重機1のローラ部20の設置数が1つであると説明したが、これに限らず、例えば、2つ以上であってもよい。この場合において、実施の形態1では、各ローラ部20に第1位置検出部61、第2位置検出部62、第1傾斜角検出部71、及び第2傾斜角検出部72をそれぞれ設けてもよい。また、実施の形態2では、各ローラ部20に第1位置検出部61、第2位置検出部62、及び傾斜角検出部110をそれぞれ設けてもよい。
【0144】
(管理システムについて)
実施の形態1では、管理システム50が、管理装置90を備えていると説明したが、これに限らない。例えば、端末装置80が管理装置90の機能を有する場合(すなわち、傾斜角検出部92a、層厚特定部92b、撒出厚特定部、及び第1傾斜角テーブル93aを備える場合)には、管理装置90を省略してもよい(なお、実施の形態2、3に係る管理システム100についても略同様とする)。
【0145】
また、実施の形態2では、管理システム50が、第1位置検出部61及び第2位置検出部62を備えていると説明したが、これに限らず、例えば、第1位置検出部61又は第2位置検出部62のいずれか一方を省略してもよい。この場合には、傾斜角検出部110は、第1傾斜角θ1、第2傾斜角θ2、及び第3傾斜角θ3を検出可能な傾斜角検出装置(一例として、公知のジャイロセンサ等)を用いて構成されてもよい。また、管理処理のSB2において、層厚特定部92bは、SB1にて取得した検出ログ情報に含まれる第1位置検出情報又は第2位置検出情報のいずれか一方と、第1傾斜角検出情報、第2傾斜角検出情報、及び第3傾斜角検出情報とに基づいて、対象盛土層における各転圧地点の転圧後層厚をそれぞれ特定してもよい。
【0146】
(位置検出手段について)
実施の形態2では、位置検出手段が、GNSSアンテナであると説明したが、これに限らず、例えば、TSアンテナであってもよい。
【0147】
また、実施の形態1から3では、第1位置検出部61及び第2位置検出部62を、ローラ部20の回転軸の軸方向に略沿って相互に間隔を隔てて並設していると説明したが、これに限らず、例えば、ローラ部20の回転軸の軸方向に略沿わないように相互に間隔を隔てて並設してもよい。
【0148】
(傾斜角検出手段について)
実施の形態1では、第1位置検出部61及び第1傾斜角検出部71を1つのGNSSアンテナで構成していると共に、第2位置検出部62及び第2傾斜角検出部72を別の1つのGNSSアンテナで構成していると説明したが、これに限らない。例えば、第1位置検出部61を1つのGNSSアンテナで構成し、且つ第2位置検出部62を別の1つのGNSSアンテナで構成すると共に、第1傾斜角検出部71、第2傾斜角検出部72、及び傾斜角検出部92aに代えて、1つの傾斜計を傾斜角検出手段として構成してもよい。
【0149】
また、実施の形態2では、傾斜角検出部110が、3軸傾斜計であると説明したが、これに限らない。例えば、3つの1軸傾斜計を備え、これら1軸傾斜計が、第1傾斜角θ1、第2傾斜角θ2、及び第3傾斜角θ3を検出できるように配置されてもよい。
【0150】
(管理装置について)
実施の形態1から3では、管理装置90が、撒出厚特定部92cを備えていると説明したが、これに限らず、例えば、撒出厚特定部92cを省略してもよい。この場合には、管理処理のSA5、SB3を省略してもよい。
【0151】
また、実施の形態1から3では、管理装置90が、クラウドサーバで構成されていると説明したが、これに限らず、例えば、事務所に設けられた公知のサーバ等で構成してもよい。
【0152】
(管理処理について)
実施の形態1では、SA6の処理を行うと説明したが、これに限らず、例えば、SA6の処理を省略してもよい(なお、実施の形態2のSB4の処理、及び実施の形態3のSC5の処理についても同様とする)。
【0153】
また、実施の形態3では、SC3において、式(13)から式(15)を用いて、対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の左端側接地点、右端側接地点、及び中心点の各々の3次元座標位置を算出し、当該算出した3次元座標位置に基づいて、対象盛土層における複数の各転圧地点の転圧後層厚を特定すると説明したが、これに限らない。例えば、ローラ部20の左端側接地点と右端側接地点との間に位置する複数の接地点の転圧後層厚をさらに特定する場合には、式(13)、式(14)、式(20)を用いて、対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の左端側接地点、右端側接地点、及び複数の接地点の各々の3次元座標位置を算出し、当該算出した3次元座標位置に基づいて、これら複数の接地点の転圧後層厚を特定してもよい。
【数5】
(ここで、Xi:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20のn分割i番目の接地点のX方向の座標位置、
Yi:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20のn分割i番目の接地点のY方向の座標位置、
Zi:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20のn分割i番目の接地点のZ方向の座標位置、
Xl:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の左端側接地点のX方向の座標位置、
Yl:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の左端側接地点のY方向の座標位置、
Zl:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の左端側接地点のZ方向の座標位置、
Xr:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の右端側接地点のX方向の座標位置、
Yr:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の右端側接地点のY方向の座標位置、
Zr:対象盛土層の転圧時におけるローラ部20の右端側接地点のZ方向の座標位置、
n:ローラ部20の左右座標の分割数、
i:ローラ部20の左右座標をn分割した際にローラ部20の左端側接地点から数えた順序)
【0154】
(付記)
付記1の管理システムは、ローラ部を少なくとも1つ以上備える転圧重機によって転圧される盛土層を複数積層してなる盛土を施工する際に、前記複数の盛土層の各々における転圧後の層厚である転圧後層厚を管理するための管理システムであって、前記ローラ部に少なくとも1つ以上設けられた位置検出手段であって、前記複数の盛土層の各々の転圧時における前記ローラ部の3次元座標位置を検出する位置検出手段と、前記ローラ部に設けられた傾斜角検出手段であって、前記複数の盛土層の各々の転圧時における前記ローラ部の傾斜角を検出する傾斜角検出手段と、前記位置検出手段の検出結果と、前記傾斜角検出手段の検出結果とに基づいて、前記複数の盛土層の各々における各転圧地点の前記転圧後層厚を特定する層厚特定手段と、を備える。
【0155】
付記2の管理システムは、付記1に記載の管理システムにおいて、前記ローラ部において相互に異なる位置に設けられた一対の前記位置検出手段を備え、前記傾斜角検出手段は、前記転圧重機の進行方向に沿った第1軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第1傾斜角を検出し、前記層厚特定手段は、前記一対の位置検出手段の検出結果に基づいて、鉛直方向に沿った第2軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第2傾斜角と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第3傾斜角とを算出し、前記一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、前記傾斜角検出手段にて検出された前記第1傾斜角と、前記算出した前記第2傾斜角及び前記第3傾斜角とに基づいて、前記各転圧地点の転圧後層厚を特定する。
【0156】
付記3の管理システムは、付記2に記載の管理システムにおいて、前記一対の位置検出手段を、前記ローラ部の回転軸の軸方向に略沿って相互に間隔を隔てて並設した。
【0157】
付記4の管理システムは、付記2又は3に記載の管理システムにおいて、前記位置検出手段及び前記傾斜角検出手段の一部を、GNSSアンテナで構成した。
【0158】
付記5の管理システムは、付記1に記載の管理システムにおいて、前記ローラ部において相互に異なる位置に設けられた一対の前記位置検出手段を備え、前記傾斜角検出手段は、前記転圧重機の進行方向に沿った第1軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第1傾斜角と、鉛直方向に沿った第2軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第2傾斜角と、前記第1軸及び前記第2軸に直交する第3軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第3傾斜角とを検出し、前記層厚特定手段は、前記一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、前記傾斜角検出手段にて検出された前記第1傾斜角、前記第2傾斜角、及び前記第3傾斜角とに基づいて、前記各転圧地点の転圧後層厚を特定する。
【0159】
付記6の管理システムは、付記1に記載の管理システムにおいて、前記ローラ部において相互に異なる位置に設けられた一対の前記位置検出手段を備え、前記傾斜角検出手段は、鉛直方向に沿った第1軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第1傾斜角と、前記転圧重機の進行方向に沿った第2軸及び前記第1軸に直交する第3軸に対する前記ローラ部の傾斜角である第2傾斜角とを検出し、前記層厚特定手段は、前記一対の位置検出手段の検出結果に基づいて、平面方向における前記一対の位置検出手段の相対的な傾斜角である第3傾斜角を算出し、前記一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、前記傾斜角検出手段にて検出された前記第1傾斜角及び前記第2傾斜角と、前記算出された前記第3傾斜角とに基づいて、複数の前記各転圧地点の転圧後層厚を特定する。
【0160】
付記7の管理システムは、付記1から6のいずれか一項に記載の管理システムにおいて、前記層厚特定手段にて特定された前記転圧後層厚に基づいて、当該転圧後層厚に対応する前記盛土層の次に積層される前記盛土層の撒出厚を特定する撒出厚特定手段を備える。
【0161】
(付記の効果)
付記1に記載の管理システムによれば、ローラ部に少なくとも1つ以上設けられた位置検出手段であって、複数の盛土層の各々の転圧時におけるローラ部の3次元座標位置を検出する位置検出手段と、ローラ部に設けられた傾斜角検出手段であって、複数の盛土層の各々の転圧時におけるローラ部の傾斜角を検出する傾斜角検出手段と、一対の位置検出手段の検出結果と、傾斜角検出手段の検出結果とに基づいて、複数の盛土層の各々における各転圧地点の転圧後層厚を特定する層厚特定手段と、を備えるので、複数の盛土層の各々における各転圧地点の転圧後層厚を特定できる。よって、従来技術(各盛土層の転圧回数を管理する技術)に比べて、各盛土層の転圧後層厚を正確に管理でき、盛土の施工性を高めることが可能となる。
【0162】
付記2に記載の管理システムによれば、層厚特定手段が、一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果に基づいて、鉛直方向に沿った第2軸に対するローラ部の傾斜角である第2傾斜角と、第1軸及び第2軸に直交する第3軸に対するローラ部の傾斜角である第3傾斜角とを算出し、一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、傾斜角検出手段にて検出された第1傾斜角と、算出した第2傾斜角及び第3傾斜角とに基づいて、各転圧地点の転圧後層厚を特定するので、第1傾斜角のみを検出する傾斜角検出手段を備えるだけでよいことから、傾斜角検出手段の設置コストを低減できる。
【0163】
付記3に記載の管理システムによれば、一対の位置検出手段を、ローラ部の回転軸の軸方向に略沿って相互に間隔を隔てて並設したので、少なくとも第3傾斜角の検出精度を高めることができ、各盛土層の転圧後層厚を正確に特定することが可能となる。
【0164】
付記4に記載の管理システムによれば、位置検出手段及び傾斜角検出手段の一部を、GNSSアンテナで構成したので、傾斜計を用いることなく位置検出手段及び傾斜角検出手段の一部を構成でき、管理システムの製造コストを抑制することが可能となる。
【0165】
付記5に記載の管理システムによれば、層厚特定手段が、一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、傾斜角検出手段にて検出された第1傾斜角、第2傾斜角、及び第3傾斜角とに基づいて、各転圧地点の転圧後層厚を特定するので、第1傾斜角、第2傾斜角、及び第3傾斜角の検出精度を高めることができ、各盛土層の転圧後層厚を正確に特定できる。
【0166】
付記6に記載の管理システムによれば、層厚特定手段が、一対の位置検出手段の検出結果に基づいて、平面方向における一対の位置検出手段の相対的な傾斜角である第3傾斜角を算出し、一対の位置検出手段の少なくともいずれか一方の検出結果と、傾斜角検出手段にて検出された第1傾斜角及び第2傾斜角と、算出された第3傾斜角とに基づいて、複数の各転圧地点の転圧後層厚を特定するので、第1傾斜角及び第2傾斜角を算出する必要がないことから、管理処理の簡易化を図ることができる。
【0167】
付記7に記載の管理システムによれば、層厚特定手段にて特定された転圧後層厚に基づいて、当該転圧後層厚に対応する盛土層の次に積層される盛土層の撒出厚を特定する撒出厚特定手段を備えるので、転圧後層厚に対応する盛土層の次に積層される盛土層の撒出厚を正確に特定でき、盛土の施工性を一層高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0168】
1 転圧重機
10 本体部
11 操縦部
12 走行部
12a タイヤ
13 支持部
20 ローラ部
21 ローラ部本体
22 連結部
23 フレーム部
23a 左側フレーム部
23b 右側フレーム部
23c 前側フレーム部
30 ネットワーク
50 管理システム
61 第1位置検出部
62 第2位置検出部
71 第1傾斜角検出部
72 第2傾斜角検出部
80 端末装置
81 端末側通信部
82 端末側操作部
83 端末側出力部
84 端末側制御部
85 端末側記憶部
90 管理装置
91 管理側通信部
92 管理側制御部
92a 傾斜角検出部
92b 層厚特定部
92c 撒出厚特定部
93 管理側記憶部
93a 第1傾斜角テーブル
100 管理システム
110 傾斜角検出部
A1 第1軸
A2 第2軸
F 盛土
FL 盛土層
G 地盤
θ1 第1傾斜角
θ2 第2傾斜角
θ3 第3傾斜角