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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】吸排気システム
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/16 20060101AFI20241211BHJP
   F02B 37/12 20060101ALI20241211BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20241211BHJP
   F02B 37/04 20060101ALI20241211BHJP
   F02B 39/10 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
F02B37/16 B
F02B37/12 302B
F02B37/00 301G
F02B37/04 C
F02B39/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021047462
(22)【出願日】2021-03-22
(65)【公開番号】P2022146478
(43)【公開日】2022-10-05
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 悠馬
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-014936(JP,A)
【文献】特開2018-204487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0030934(US,A1)
【文献】特開2016-153628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/16
F02B 37/12
F02B 37/00
F02B 37/04
F02B 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと接続される吸気流路に設けられるコンプレッサ、および、前記エンジンと接続される排気流路に設けられるタービンを有する過給機と、
前記吸気流路のうち前記コンプレッサより下流側に設けられる電動コンプレッサと、
前記吸気流路のうち前記電動コンプレッサより上流側と前記電動コンプレッサより下流側とを接続する吸気バイパス路と、
前記吸気バイパス路を吸気が流通可能な状態と、前記吸気バイパス路における前記吸気の流通が遮断された状態とを切り替える流路制御バルブと、
前記吸気流路のうち前記コンプレッサより下流側かつ前記電動コンプレッサより上流側、または、前記吸気バイパス路のうち前記流路制御バルブより上流側に接続され、排気口と連通する排出バイパス路と、
前記排出バイパス路に設けられる流量調整バルブと、
を備える、
吸排気システム。
【請求項2】
前記電動コンプレッサ、前記流路制御バルブおよび前記流量調整バルブを制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記吸気バイパス路における前記吸気の流通が遮断された状態となるように前記流路制御バルブを制御した状態で、前記電動コンプレッサを作動させ、
前記電動コンプレッサの作動中に、前記電動コンプレッサへ流入する前記吸気の流量に基づいて、前記流量調整バルブの開度を制御する、
請求項1に記載の吸排気システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記電動コンプレッサの作動中に、前記電動コンプレッサへ流入する前記吸気の流量が基準流量以下に維持されるように、前記流量調整バルブの開度を制御する、
請求項2に記載の吸排気システム。
【請求項4】
前記電動コンプレッサの作動中に、前記コンプレッサから吐出される前記吸気の圧力が、前記電動コンプレッサから吐出される前記吸気の圧力を超えた場合に、前記制御装置は、前記電動コンプレッサを停止させ、前記吸気バイパス路を前記吸気が流通可能な状態となるように前記流路制御バルブを制御する、
請求項2または3に記載の吸排気システム。
【請求項5】
前記排出バイパス路の下流側の端部は、前記排気流路に設けられる排気口と連通し、
前記制御装置は、前記排気流路の前記排気口から排出される窒素酸化物の濃度に基づいて、前記流量調整バルブの開度を制御する、
請求項2~4のいずれか一項に記載の吸排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの吸排気システムとして、コンプレッサおよびタービンを有する過給機に加えて、電動コンプレッサを備えるものがある(例えば、特許文献1を参照)。電動コンプレッサは、吸気流路のうちコンプレッサより下流側に設けられる。例えば、このような吸排気システムを備える車両では、電動コンプレッサを利用することによって、発進時等において、過給圧(つまり、エンジンに吸入される吸気の圧力)を迅速に上昇させることができるので、トルクの応答性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6222175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動コンプレッサを備える吸排気システムにおいて、電動コンプレッサの作動中に、過給機のコンプレッサから吐出される吸気の圧力、および、電動コンプレッサへ流入する吸気の流量が徐々に上昇する。ここで、過給機のコンプレッサから吐出される吸気の圧力が、電動コンプレッサから吐出される吸気の圧力に到達する前に、電動コンプレッサへ流入する吸気の流量が許容値(つまり、許容範囲の上限値)を超え、電動コンプレッサが停止する場合が想定される。この場合、過給圧が急に大きく変化することによって、エンジンのトルクが急に大きく変化し、ショックが生じるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、エンジンのショックを低減することが可能な吸排気システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施の形態に係る吸排気システムは、エンジンと接続される吸気流路に設けられるコンプレッサ、および、エンジンと接続される排気流路に設けられるタービンを有する過給機と、吸気流路のうちコンプレッサより下流側に設けられる電動コンプレッサと、吸気流路のうち電動コンプレッサより上流側と電動コンプレッサより下流側とを接続する吸気バイパス路と、吸気バイパス路を吸気が流通可能な状態と、吸気バイパス路における吸気の流通が遮断された状態とを切り替える流路制御バルブと、吸気流路のうちコンプレッサより下流側かつ電動コンプレッサより上流側、または、吸気バイパス路のうち流路制御バルブより上流側に接続され、排気口と連通する排出バイパス路と、排出バイパス路に設けられる流量調整バルブと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジンのショックを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る吸排気システムの概略構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る制御装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る吸排気システムにおいて吸気が吸気バイパス路を流通する状態を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る吸排気システムにおいて吸気が電動コンプレッサを流通する状態を示す図である。
図6】本発明の実施形態における各種状態量の推移の一例を示す図である。
図7】変形例に係る吸排気システムの概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
<吸排気システムの構成>
図1および図2を参照して、本発明の実施形態に係る吸排気システム1の構成について説明する。
【0011】
図1は、吸排気システム1の概略構成を示す模式図である。吸排気システム1は、車両100に搭載される。図1に示されるように、吸排気システム1は、エンジン11と、吸気流路12と、排気流路13と、排出バイパス路14と、過給機15と、電動コンプレッサ16と、制御装置17とを備える。過給機15は、コンプレッサ15aおよびタービン15bを有する。コンプレッサ15aおよびタービン15bは、シャフトを介して連結されており、一体的に回転する。
【0012】
エンジン11は、例えば、火花点火式の内燃機関(つまり、ガソリンエンジン)である。エンジン11は、複数の気筒を有する。各気筒の内部には、ピストンが摺動可能に設けられており、ピストンによって燃焼室が画成されている。各気筒には、燃焼室に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁が設けられている。燃焼室には、空気および燃料を含む混合気が形成され、燃焼室に向けて設けられている点火プラグの点火によって、当該混合気が燃焼する。それにより、ピストンが直線往復運動を行い、各気筒のピストンと接続されているクランクシャフトへ動力が伝達される。
【0013】
エンジン11の各燃焼室は、吸気ポートを介して吸気流路12と連通しており、排気ポートを介して排気流路13と連通している。各気筒には、吸気ポートを開閉可能な吸気バルブと、排気ポートを開閉可能な排気バルブが設けられている。吸気バルブおよび排気バルブが駆動されることにより、燃焼室への空気(つまり、吸気)の供給、および、燃焼室からの排気の排出が行われる。
【0014】
吸気流路12は、エンジン11と接続され、エンジン11の燃焼室に供給される空気(つまり、吸気)が流通する流路である。吸気流路12の上流側の端部には、車両100の外部から外気が取り込まれる吸気口12aが設けられている。吸気流路12のうち吸気口12aより下流側には、エアフィルタ21が設けられている。エアフィルタ21は、吸気流路12を流通する空気に含まれる異物を除去する。吸気流路12のうちエアフィルタ21より下流側には、過給機15のコンプレッサ15aが設けられている。コンプレッサ15aは、空気を圧縮して、下流側に吐出する。吸気流路12のうちコンプレッサ15aより下流側には、電動コンプレッサ16が設けられている。電動コンプレッサ16は、電力によって駆動され、空気を圧縮して、下流側に吐出する。
【0015】
吸気流路12のうち電動コンプレッサ16より上流側と電動コンプレッサ16より下流側とは、吸気バイパス路12bによって接続されている。つまり、吸気流路12は、電動コンプレッサ16より上流側において、吸気バイパス路12bと、電動コンプレッサ16に向かう流路とに分岐している。吸気流路12における吸気バイパス路12bと電動コンプレッサ16に向かう流路との分岐部には、切替バルブ22が設けられる。切替バルブ22は、上流側から送られてくる吸気の供給先(つまり、下流側の行き先)を切り替える。
【0016】
切替バルブ22は、吸気の供給先を、吸気バイパス路12bと電動コンプレッサ16との間で切り替える。吸気の供給先が吸気バイパス路12bとなる状態では、過給機15のコンプレッサ15aから吐出された吸気は、電動コンプレッサ16を流通せずに、吸気バイパス路12bを流通する。つまり、吸気バイパス路12bを吸気が流通可能な状態となる。一方、吸気の供給先が電動コンプレッサ16となる状態では、過給機15のコンプレッサ15aから吐出された吸気は、吸気バイパス路12bを流通せず、電動コンプレッサ16を流通する。つまり、吸気バイパス路12bにおける吸気の流通が遮断された状態となる。
【0017】
このように、切替バルブ22は、本発明に係る流路制御バルブ(つまり、吸気バイパス路12bを吸気が流通可能な状態と、吸気バイパス路12bにおける吸気の流通が遮断された状態とを切り替えるバルブ)の一例に相当する。ただし、後述するように、本発明に係る流路制御バルブは、切替バルブ22に限定されない。
【0018】
吸気流路12のうち電動コンプレッサ16より下流側には、インタークーラー23が設けられている。インタークーラー23の内部を流通する吸気は、インタークーラー23の外部の空気と熱交換することによって、冷却される。吸気流路12のうちインタークーラー23より下流側には、図示しないインテークマニホールドが設けられる。インテークマニホールドは、エンジン11の各気筒に向けて分岐し、各気筒の吸気ポートと接続される。
【0019】
吸気流路12では、白抜き矢印によって示されるように、吸気口12aから外気(つまり、吸気)が取り込まれる。取り込まれた吸気は、エアフィルタ21を通過した後、過給機15のコンプレッサ15aを通過する。その後、吸気は、電動コンプレッサ16または吸気バイパス路12bを通過した後、インタークーラー23を通過してエンジン11に送られる。吸気が電動コンプレッサ16を通過するか、吸気バイパス路12bを通過するかが、切替バルブ22によって切り替えられる。
【0020】
吸気流路12には、流量センサ24、第1圧力センサ25および第2圧力センサ26が設けられる。流量センサ24は、コンプレッサ15aから吐出される吸気の流量を検出する。流量センサ24は、例えば、吸気流路12のうちコンプレッサ15aより下流側かつ切替バルブ22より上流側に設置される。第1圧力センサ25は、コンプレッサ15aから吐出される吸気の圧力を検出する。第1圧力センサ25は、例えば、吸気流路12のうちコンプレッサ15aより下流側かつ切替バルブ22より上流側に設置される。第2圧力センサ26は、電動コンプレッサ16から吐出される吸気の圧力を検出する。第2圧力センサ26は、例えば、吸気流路12のうち電動コンプレッサ16より下流側かつインタークーラー23より上流側に設置される。
【0021】
排気流路13は、エンジン11と接続され、エンジン11の燃焼室から排出される排気が流通する流路である。排気流路13の下流側の端部には、車両100の外部へ排気が排出される排気口13aが設けられている。排気流路13には、図示しないエキゾーストマニホールドが設けられる。エキゾーストマニホールドは、エンジン11の各気筒に向けて分岐し、各気筒の排気ポートと接続される。排気流路13におけるエキゾーストマニホールドより下流側には、過給機15のタービン15bが設けられる。タービン15bは、流体の運動エネルギを回転エネルギに変換する。タービン15bを流通する排気によってタービン15bが回されると、シャフトを介してコンプレッサ15aに回転動力が伝達され、コンプレッサ15aが回転する。排気流路13におけるタービン15bより下流側には、触媒31が設けられる。触媒31は、排気中の有害成分を無害な成分に浄化する。触媒31は、例えば、三元触媒等を含む。
【0022】
排気流路13では、エンジン11から排出された排気は、過給機15のタービン15bを通過した後、触媒31を通過して、白抜き矢印によって示されるように、排気口13aから排出される。
【0023】
排出バイパス路14は、吸気流路12のうちコンプレッサ15aより下流側かつ電動コンプレッサ16より上流側に接続され、排気流路13の排気口13aと連通する。図1の例では、排出バイパス路14の上流側の端部は、吸気流路12のうちコンプレッサ15aより下流側かつ切替バルブ22より上流側に接続される。排出バイパス路14の下流側の端部は、排気流路13のうち、触媒31より下流側に接続される。つまり、排出バイパス路14は、電動コンプレッサ16およびエンジン11を迂回して、吸気流路12と排気流路13を接続する。ただし、後述するように、排出バイパス路14の上流側の端部の接続位置、および、排出バイパス路14の下流側の端部の接続位置は、図1の例に限定されない。
【0024】
排出バイパス路14には、流量調整バルブ41が設けられる。流量調整バルブ41は、吸気流路12から排出バイパス路14に流入する吸気の流量を調整する。吸気流路12から排出バイパス路14に流入する吸気の流量は、流量調整バルブ41の開度に応じて変化する。吸気流路12から排出バイパス路14に流入する吸気の流量が調整されることによって、吸気流路12のうち排出バイパス路14との接続部よりも下流側に流れる吸気の流量が調整される。
【0025】
車両100には、アクセル開度センサ51が設けられる。アクセル開度センサ51は、ドライバによるアクセル操作の操作量に相当するアクセル開度を検出する。
【0026】
制御装置17は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、および、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等を含む。
【0027】
制御装置17は、車両100に搭載される各装置(例えば、電動コンプレッサ16、切替バルブ22、流量センサ24、第1圧力センサ25、第2圧力センサ26、流量調整バルブ41およびアクセル開度センサ51等)と通信を行う。制御装置17と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
【0028】
図2は、制御装置17の機能構成の一例を示すブロック図である。例えば、図2に示されるように、制御装置17は、取得部17aと、制御部17bとを有する。
【0029】
取得部17aは、制御部17bが行う処理において用いられる各種情報を取得し、制御部17bへ出力する。例えば取得部17aは、流量センサ24、第1圧力センサ25、第2圧力センサ26およびアクセル開度センサ51から情報を取得する。
【0030】
制御部17bは、吸排気システム1内の各装置の動作を制御する。例えば、制御部17bは、電動コンプレッサ制御部17b1と、切替バルブ制御部17b2と、流量調整バルブ17b3とを含む。
【0031】
電動コンプレッサ制御部17b1は、電動コンプレッサ16を制御する。具体的には、電動コンプレッサ制御部17b1は、電動コンプレッサ16への電力供給を制御することによって、電動コンプレッサ16を作動または停止させる。また、電動コンプレッサ制御部17b1は、電動コンプレッサ16に供給される電流を制御することによって、電動コンプレッサ16の回転数を制御する。
【0032】
切替バルブ制御部17b2は、切替バルブ22を制御する。具体的には、切替バルブ制御部17b2は、切替バルブ22を駆動させることによって、吸気流路12における吸気の経路である吸気経路を切り替える。つまり、切替バルブ制御部17b2は、吸気が吸気バイパス路12bを流通可能な状態と、吸気が電動コンプレッサ16を流通可能な状態とを切り替える。
【0033】
流量調整バルブ17b3は、流量調整バルブ41を制御する。具体的には、流量調整バルブ17b3は、流量調整バルブ41の開度を制御することによって、吸気流路12から排出バイパス路14に流入する吸気の流量を制御する。それにより、吸気流路12のうち排出バイパス路14との接続部よりも下流側に流れる吸気の流量が制御される。
【0034】
なお、本実施形態に係る制御装置17が有する機能は複数の制御装置に分割されてもよく、複数の機能が1つの制御装置によって実現されてもよい。制御装置17が有する機能が複数の制御装置に分割される場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0035】
上記のように、吸排気システム1では、吸気流路12のうちコンプレッサ15aより下流側に電動コンプレッサ16が設けられる。それにより、車両100の発進時等において、過給圧(つまり、エンジン11に吸入される吸気の圧力)を迅速に上昇させることができるので、トルクの応答性を高めることができる。ここで、本実施形態では、吸気流路12に排出バイパス路14が接続され、排出バイパス路14に流量調整バルブ41が設けられる。それにより、エンジン11のショックを低減することが実現される。
【0036】
<吸排気システムの動作>
続いて、図3図6を参照して、本発明の実施形態に係る吸排気システム1の動作について説明する。
【0037】
図3は、制御装置17が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3に示される制御フローは、吸気が吸気バイパス路12bを流通可能な状態となるように切替バルブ22が制御されている状態で開始され、終了した後に繰り返し開始される。
【0038】
図4は、吸排気システム1において吸気が吸気バイパス路12bを流通する状態を示す図である。図4では、白抜き矢印によって吸気の流れが示されている。吸気が吸気バイパス路12bを流通可能な状態となるように切替バルブ22が制御されている場合、図4に示されるように、コンプレッサ15aから吐出される吸気は、電動コンプレッサ16には送られず、吸気バイパス路12bを通過する。その後、吸気は、インタークーラー23を通過してエンジン11に送られる。この場合、電動コンプレッサ16は停止している。また、流量調整バルブ41は閉弁されており、吸気流路12から排出バイパス路14に吸気が流入しない状態となっている。
【0039】
図3に示される制御フローが開始されると、まず、ステップS101において、制御部17bは、アクセル開度が閾値より大きいか否かを判定する。閾値は、電動コンプレッサ16を利用して過給圧を迅速に上昇させる必要があるか否かを判断し得る値に設定される。
【0040】
アクセル開度が閾値以下であると判定された場合(ステップS101/NO)、制御部17bは、電動コンプレッサ16を利用して過給圧を迅速に上昇させる必要はないと判断し、図3に示される制御フローを終了する。一方、アクセル開度が閾値より大きいと判定された場合(ステップS101/YES)、制御部17bは、電動コンプレッサ16を利用して過給圧を迅速に上昇させる必要があると判断し、ステップS102に進む。
【0041】
ステップS101でYESと判定された場合、ステップS102において、制御部17bは、吸気が電動コンプレッサ16を流通するように(つまり、吸気バイパス路12bにおける吸気の流通が遮断された状態となるように)、切替バルブ22を制御する。次に、ステップS103において、制御部17bは、電動コンプレッサ16を作動させる。
【0042】
図5は、吸排気システム1において吸気が電動コンプレッサ16を流通する状態を示す図である。図5では、図4と同様に、白抜き矢印によって吸気の流れが示されている。吸気が電動コンプレッサ16を流通可能な状態となるように切替バルブ22が制御されている場合、図5に示されるように、コンプレッサ15aから吐出される吸気は、吸気バイパス路12bには送られず、電動コンプレッサ16に送られる。そして、電動コンプレッサ16によって圧縮され、吐出された吸気は、インタークーラー23を通過してエンジン11に送られる。
【0043】
図3中のステップS103の次に、ステップS104において、制御部17bは、電動コンプレッサ16へ流入する吸気の流量(以下、吸気流入量とも呼ぶ)に基づいて、流量調整バルブ41の開度を制御する。吸気流入量としては、例えば、流量センサ24の検出結果が用いられる。
【0044】
ステップS104では、制御部17bは、例えば、吸気流入量が基準流量以下に維持されるように、流量調整バルブ41の開度を制御する。基準流量は、吸気流入量の許容値(つまり、電動コンプレッサ16が正常に作動できるような吸気流入量の許容範囲の上限値)に応じて設定される。基準流量は、例えば、吸気流入量の許容値よりも若干小さい値に設定される。
【0045】
上記のように、電動コンプレッサ16の作動中には、流量調整バルブ41が適宜開弁されることによって、図5中で破線の白抜き矢印により示されるように、吸気流路12から排出バイパス路14に吸気が流入する。制御部17bは、例えば、吸気流入量が基準流量に到達した場合、または、吸気流入量が基準流量を超えた場合、流量調整バルブ41を開弁させる。そして、流量調整バルブ41の開度が制御されることによって、吸気流路12から排出バイパス路14に流入する吸気の流量が調整され、吸気流入量が基準流量以下に維持される。
【0046】
図3中のステップS104の次に、ステップS105において、制御部17bは、コンプレッサ15aから吐出される吸気の圧力(以下、コンプレッサ出口圧とも呼ぶ)が、電動コンプレッサ16から吐出される吸気の圧力(以下、電動コンプレッサ出口圧とも呼ぶ)を超えたか否かを判定する。コンプレッサ出口圧としては、例えば、第1圧力センサ25の検出結果が用いられる。電動コンプレッサ出口圧としては、例えば、第2圧力センサ26の検出結果が用いられる。
【0047】
コンプレッサ出口圧が電動コンプレッサ出口圧を超えていないと判定された場合(ステップS105/NO)、ステップS104に戻る。一方、コンプレッサ出口圧が電動コンプレッサ出口圧を超えたと判定された場合(ステップS105/YES)、ステップS106に進む。
【0048】
ステップS105でYESと判定された場合、ステップS106において、制御部17bは、電動コンプレッサ16を停止させる。次に、ステップS107において、制御部17bは、流量調整バルブ41を閉弁させる。次に、ステップS108において、制御部17bは、吸気が吸気バイパス路12bを流通するように(つまり、吸気バイパス路12bを吸気が流通可能な状態となるように)、切替バルブ22を制御し、図3に示される制御フローは終了する。それにより、吸気流路12における吸気経路が、図5の状態から図4の状態に戻る。
【0049】
図6は、本実施形態における各種状態量の推移の一例を示す図である。図6では、各種状態量として、吸気経路の切替状態、電動コンプレッサ16の作動状態、流量調整バルブ41の開度[%]、吸気流入量[m/s]、過給圧[kPa]、エンジントルク[Nm]、および、車両100の加速度[m/s]の各々の推移が示されている。吸気経路の切替状態が電動コンプレッサ経路である場合は、吸気流路12における吸気経路が図5の状態である場合に相当する。また、吸気経路の切替状態が吸気バイパス路経路である場合は、吸気流路12における吸気経路が図4の状態である場合に相当する。
【0050】
図6に示される例では、時点T1以前において、車両100は停車している。よって、電動コンプレッサ16は停止しており、吸気経路の切替状態が吸気バイパス路経路(つまり、図4の状態)となっている。また、流量調整バルブ41は閉弁している。そして、時点T1において、アクセル操作が行われ、車両100が発進する。ここで、時点T1において、アクセル開度が閾値を超え、吸気が電動コンプレッサ16を流通するように、切替バルブ22が制御される。それにより、吸気経路の切替状態が電動コンプレッサ経路(つまり、図5の状態)に切り替わる。そして、時点T1において、電動コンプレッサ16が作動する。それにより、時点T1以降において、過給圧が上昇し、エンジントルクが上昇する。よって、車両100の加速度も上昇する。
【0051】
電動コンプレッサ16の作動中には、吸気流入量が基準流量以下に維持されるように、流量調整バルブ41の開度が制御される。図6の例では、時点T1以降において、吸気流入量が上昇し、時点T2において、吸気流入量が基準流量に到達する。よって、時点T2において、流量調整バルブ41が開弁され、時点T2以降において、吸気流入量が基準流量以下に維持されるように、流量調整バルブ41の開度が制御される。図6の例では、時点T2以降において、吸気流入量が基準流量に維持されるので、過給圧はほぼ維持され、エンジントルクもほぼ維持される。このように、吸気流入量が基準流量に維持されることにより、過給圧およびエンジントルクをできるだけ高い状態に維持することができる。なお、時点T2以降において、車両100の加速度は低下する。
【0052】
電動コンプレッサ16が作動した時点T1以降においては、電動コンプレッサ16により圧縮され、吐出された吸気がエンジン11に送られる。よって、時点T1以降においては、電動コンプレッサ出口圧が過給圧に相当する。ここで、時点T1以降において、過給機15のタービン15bが排気により回されることによって、過給機15のコンプレッサ15aも回転駆動される。それにより、コンプレッサ出口圧は、徐々に上昇する。そして、時点T2の後の時点T3において、コンプレッサ出口圧が電動コンプレッサ出口圧(つまり、過給圧)を超え、電動コンプレッサ16が停止する。そして、時点T3において、流量調整バルブ41が閉弁し、吸気経路の切替状態が吸気バイパス路経路(つまり、図4の状態)に切り替わる。その後、時点T3以降において、過給機15によって過給圧およびエンジントルクが上昇し、車両100の加速度も再度上昇する。
【0053】
ところで、本実施形態と異なり、仮に排出バイパス路14および流量調整バルブ41が設けられない場合、各種状態量は、図6中で破線により示されるように推移する。破線により示される例では、電動コンプレッサ16が作動した時点T1以降において、コンプレッサ出口圧が電動コンプレッサ出口圧(つまり、過給圧)に到達するよりも前に、吸気流入量が許容値に達し、電動コンプレッサ16が停止する。それにより、電動コンプレッサ16の停止時に、破線により示されるように、過給圧が急に大きく低下し、エンジントルクも急に大きく低下する。このようにエンジントルクが急に大きく変化することによって、エンジン11のショックが生じる。つまり、車両100に大きな衝撃が生じる。
【0054】
一方、本実施形態では、排出バイパス路14および流量調整バルブ41が設けられるので、吸気流入量を許容値に達しないように調整することができ、電動コンプレッサ16の作動時間を長くすることができる。それにより、コンプレッサ出口圧が電動コンプレッサ出口圧により近づいた後に(図6の例では、コンプレッサ出口圧が電動コンプレッサ出口圧に到達した後に)、電動コンプレッサ16を停止させることができる。ゆえに、電動コンプレッサ16の停止時に、過給圧が急に大きく変化することが抑制され、エンジントルクが急に大きく変化することが抑制される。よって、エンジン11のショックを低減することができる。
【0055】
さらに、破線により示される例では、エンジントルクの低下に伴い、車両100の加速度も大きく低下してしまっていた。一方、本実施形態では、エンジントルクが大きく変化することが抑制されるので、車両100の加速度が大きく低下することが抑制される。ゆえに、車両100の加速性能が向上される。
【0056】
上記では、切替バルブ22が本発明に係る流路制御バルブとして用いられる例を説明した。ただし、本発明に係る流路制御バルブは、切替バルブ22に限定されない。例えば、切替バルブ22に換えて、吸気バイパス路12bを開閉する開閉バルブが用いられてもよい。開閉バルブは、吸気バイパス路12bに設けられる。例えば、開閉バルブは、吸気バイパス路12bの上流側の端部に設けられてもよく、吸気バイパス路12bの下流側の端部に設けられてもよく、吸気バイパス路12bのうち上流側の端部と下流側の端部との間に設けられてもよい。開閉バルブが開弁すると、吸気バイパス路12bを吸気が流通可能な状態となる。開閉バルブが閉弁すると、吸気バイパス路12bにおける吸気の流通が遮断された状態となる。
【0057】
また、上記では、流量調整バルブ41の開度が吸気流入量に基づいて制御される例を説明した。ただし、制御装置17は、吸気流入量以外の他のパラメータに基づいて、流量調整バルブ41の開度を制御してもよい。例えば、制御装置17は、排気流路13の排気口13aから排出される窒素酸化物(つまり、NOx)の濃度に基づいて、流量調整バルブ41の開度を制御してもよい。以下、排出されるNOxの濃度を、NOxの排出濃度とも呼ぶ。
【0058】
制御装置17は、例えば、電動コンプレッサ16が停止しており、吸気流路12における吸気経路が図4の状態である時に、NOxの排出濃度が基準濃度を超える場合、流量調整バルブ41を開弁させてもよい。それにより、排出バイパス路14を介して排気流路13に吸気の一部を送り、NOxの排出濃度を薄めることができる。また、制御装置17は、例えば、NOxの排出濃度が高いほど、流量調整バルブ41の開度を大きくしてもよい。それにより、NOxの排出濃度をより適切に薄めることができる。
【0059】
<吸排気システムの効果>
続いて、本発明の実施形態に係る吸排気システム1の効果について説明する。
【0060】
本実施形態に係る吸排気システム1は、排出バイパス路14と、排出バイパス路14に設けられる流量調整バルブ41とを備える。それにより、吸気流路12から排出バイパス路14に流入する吸気の流量を調整することによって、吸気流入量(つまり、電動コンプレッサ16へ流入する吸気の流量)を調整することができる。ゆえに、電動コンプレッサ16の作動中に、吸気流入量を許容値に達しないように調整することができ、電動コンプレッサ16の作動時間を長くすることができる。よって、コンプレッサ出口圧が電動コンプレッサ出口圧により近づいた後に電動コンプレッサ16を停止させることができる。ゆえに、過給圧が急に大きく変化することが抑制され、エンジントルクが急に大きく変化することが抑制される。よって、エンジン11のショックを低減することができる。
【0061】
なお、上記で説明した図1の例では、排出バイパス路14の上流側の端部が、吸気流路12のうちコンプレッサ15aより下流側かつ切替バルブ22より上流側に接続されている。ただし、排出バイパス路14の上流側の端部は、吸気流路12のうち切替バルブ22より下流側かつ電動コンプレッサ16より上流側に接続されていてもよい。図7は、変形例に係る吸排気システム1Aの概略構成を示す模式図である。吸排気システム1Aは、車両100Aに搭載される。吸排気システム1Aでは、上述した吸排気システム1と異なり、流路制御バルブとして、切替バルブ22に換えて、吸気バイパス路12bを開閉する開閉バルブ22Aが用いられる。開閉バルブ22Aは、吸気バイパス路12bのうち上流側の端部と下流側の端部との間に設けられる。また、排出バイパス路14Aの上流側の端部は、上述した吸排気システム1と異なり、吸気バイパス路12bのうち開閉バルブ22Aより上流側に接続される。このような吸排気システム1Aにおいても、上述した吸排気システム1と同様の効果が奏される。
【0062】
また、上記で説明した図1の例では、排出バイパス路14の下流側の端部が、排気流路13のうち、触媒31より下流側に接続されている。ただし、排気流路13の排気口13aとは別に、他の排気口(つまり、車両100の外部空間と連通し、気体を排出可能な開口)が存在する場合、排出バイパス路14の下流側の端部は、当該他の排気口と連通してもよい。
【0063】
上記のように、排出バイパス路14の上流側の端部の接続位置、および、排出バイパス路14の下流側の端部の接続位置が図1の例と異なる場合であっても、図1の例と同様の効果が奏される。つまり、排出バイパス路14は、吸気流路12のうちコンプレッサ15aより下流側かつ電動コンプレッサ16より上流側、または、吸気バイパス路12bのうち流路制御バルブより上流側に接続され、排気口と連通していればよい。
【0064】
また、本実施形態に係る吸排気システム1では、制御装置17は、吸気バイパス路12bにおける吸気の流通が遮断された状態となるように流路制御バルブ(例えば、切替バルブ22)を制御した状態で、電動コンプレッサ16を作動させ、電動コンプレッサ16の作動中に、電動コンプレッサ16へ流入する吸気の流量(つまり、吸気流入量)に基づいて、流量調整バルブ41の開度を制御することが好ましい。それにより、電動コンプレッサ16の作動中に、吸気流入量を許容値に達しないように調整することが適切に実現される。ゆえに、電動コンプレッサ16の作動時間を長くすることが適切に実現される。
【0065】
また、本実施形態に係る吸排気システム1では、制御装置17は、電動コンプレッサ16の作動中に、電動コンプレッサ16へ流入する吸気の流量(つまり、吸気流入量)が基準流量以下に維持されるように、流量調整バルブ41の開度を制御することが好ましい。それにより、電動コンプレッサ16の作動中に、吸気流入量を許容値に達しないように調整することがより適切に実現される。ゆえに、電動コンプレッサ16の作動時間を長くすることがより適切に実現される。
【0066】
また、本実施形態に係る吸排気システム1では、電動コンプレッサ16の作動中に、コンプレッサ15aから吐出される吸気の圧力(つまり、コンプレッサ出口圧)が、電動コンプレッサ16から吐出される吸気の圧力(つまり、電動コンプレッサ出口圧)を超えた場合に、制御装置17は、電動コンプレッサ16を停止させ、吸気バイパス路12bを吸気が流通可能な状態となるように流路制御バルブ(例えば、切替バルブ22)を制御することが好ましい。それにより、電動コンプレッサ16の停止時における過給圧の変化を低減することが適切に実現される。ゆえに、電動コンプレッサ16の停止時におけるエンジントルクの変化を低減することが適切に実現される。よって、エンジン11のショックを低減することが適切に実現される。
【0067】
また、本実施形態に係る吸排気システム1では、排出バイパス路14の下流側の端部は、排気流路13に設けられる排気口13aと連通し、制御装置17は、排気流路13の排気口13aから排出される窒素酸化物の濃度(つまり、NOxの排出濃度)に基づいて、流量調整バルブ41の開度を制御することが好ましい。それにより、NOxの排出濃度が過度に高くならないように、NOxの排出濃度を薄めることができる。
【0068】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【0069】
例えば、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 吸排気システム
1A 吸排気システム
11 エンジン
12 吸気流路
12a 吸気口
12b 吸気バイパス路
13 排気流路
13a 排気口
14 排出バイパス路
14A 排出バイパス路
15 過給機
15a コンプレッサ
15b タービン
16 電動コンプレッサ
17 制御装置
21 エアフィルタ
22 切替バルブ(流路制御バルブ)
22A 開閉バルブ(流路制御バルブ)
23 インタークーラー
24 流量センサ
25 第1圧力センサ
26 第2圧力センサ
31 触媒
41 流量調整バルブ
51 アクセル開度センサ
100 車両
100A 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7