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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20241211BHJP
   G01N 24/00 20060101ALI20241211BHJP
   G01R 33/36 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A61B5/055 355
A61B5/055 351
G01N24/00 580A
G01R33/36
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021083898
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177552
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨羽 貞範
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/198396(WO,A1)
【文献】特開2019-076441(JP,A)
【文献】特開2020-000485(JP,A)
【文献】特開2009-006132(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0043029(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0234706(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/00
G01R 33/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場強度が空間的に変化する静磁場を発生させる静磁場磁石と、
少なくとも前記静磁場の分布に応じて調整された複数の周波数それぞれに個別に調整されており、前記磁場強度が空間的に変化する静磁場内に置かれた被検体に高周波パルスを送信する複数の送信コイルと、
前記高周波パルスの影響によって前記被検体から発生する核磁気共鳴信号を受信する受信コイルと、
前記複数の周波数それぞれで前記高周波パルスを送信するように前記複数の送信コイルそれぞれを制御し、前記複数の周波数それぞれで前記核磁気共鳴信号を受信するように前記受信コイルを制御する制御部と
を備える、磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記高周波パルスを送信する際の周波数を基準として、前記核磁気共鳴信号を受信する際の周波数を切り替えるように前記受信コイルを制御する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記制御部は、撮像スライスの位置を基準として、前記核磁気共鳴信号を受信する際の周波数を切り替えるように前記受信コイルを制御する、
請求項1又は2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の周波数それぞれで順次前記高周波パルスを送信し、前記複数の周波数それぞれで順次前記核磁気共鳴信号を受信するように前記受信コイルを制御する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記複数の周波数を含む帯域で前記高周波パルスを送信するように前記複数の送信コイルを制御し、前記複数の周波数それぞれで同時に前記核磁気共鳴信号を受信するように前記受信コイルを制御する、
請求項1~3のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
異なる周波数に調整された複数の受信コイルを備え、
前記複数の受信コイルそれぞれの周波数は、各受信コイルの位置における静磁場の磁場強度に対応する共鳴周波数に調整されており、
前記制御部は、前記複数の受信コイルを用いて、パラレルイメージングを実行する、
請求項5に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記複数の周波数それぞれに個別に調整された複数の受信コイルを備え、
前記制御部は、前記複数の周波数それぞれで前記核磁気共鳴信号を受信するように前記複数の受信コイルそれぞれを制御する、
請求項1~4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記複数の周波数に調整可能に構成された受信コイルを備え、
前記制御部は、前記複数の周波数それぞれで前記核磁気共鳴信号を受信するように前記受信コイルの周波数を切り替える、
請求項1~4のいずれか一つに記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
記核磁気共鳴信号を受信する複数の受信コイルを含み、
前記制御部は、前記複数の送信コイルのうちの一つの送信コイルが前記高周波パルスを送信する際には、他の送信コイルがデカップル状態となるように制御する、
請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記複数の受信コイルが前記核磁気共鳴信号を受信する際には、各受信コイルが同時に受信可能な状態となるように制御する、
請求項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
静磁場磁石、磁場強度が空間的に変化する静磁場を発生させ、
複数の送信コイルが、少なくとも前記静磁場の分布に応じて調整された複数の周波数それぞれに個別に調整されており、前記磁場強度が空間的に変化する静磁場内に置かれた被検体に高周波パルスを送信し
受信コイルが、前記高周波パルスの影響によって前記被検体から発生する核磁気共鳴信号を受信し、
制御部が、前記複数の周波数それぞれで前記高周波パルスを送信するように前記複数の送信コイルそれぞれを制御し、前記複数の周波数それぞれで前記核磁気共鳴信号を受信するように前記受信コイルを制御する
ことを含む、磁気共鳴イメージング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置は、静磁場内に置かれた被検体に高周波(Radio Frequency:RF)パルスを送信し、当該RFパルスの影響によって被検体から発生する核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance:NMR)信号を受信して画像を生成する。当該MRI装置は、RFパルスの送信及びNMR信号の受信を行うために、所定の共鳴周波数に調整されたRFコイルを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-354589号公報
【文献】特表2017-533811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、静磁場の磁場強度が空間的に変化する場合に、RFコイルの感度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るMRI装置は、静磁場磁石と、RFコイルと、制御部とを備える。静磁場磁石は、磁場強度が空間的に変化する静磁場を発生させる。RFコイルは、前記磁場強度が空間的に変化する静磁場内に置かれた被検体にRFパルスを送信し、当該RFパルスの影響によって前記被検体から発生するNMR信号を受信する。制御部は、少なくとも前記静磁場の分布に応じて調整された複数の周波数それぞれで前記NMR信号を受信するように前記RFコイルを制御する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る静磁場磁石によって発生する静磁場を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に関連するRFコイルの感度低下を説明するための図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るMRI装置が備えるRFコイルの一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るMRI装置が備えるRFコイルの一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るMRI装置が備えるRFコイルの一例を示す図である。
図7図7は、第1の実施形態に係るMRI装置が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
図8図8は、第1の実施形態に係る撮像制御機能によって行われる撮像の一例を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態に係るMRI装置が備えるRFコイルの一例を示す図である。
図10図10は、第2の実施形態に係るMRI装置が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
図11図11は、第3の実施形態に係るMRI装置が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
図12図12は、第4の実施形態に係るMRI装置が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
図13図13は、第5の実施形態に係るMRI装置が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
図14図14は、第6の実施形態に係るMRI装置が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
図15図15は、第7の実施形態に係るMRI装置が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
図16図16は、第8の実施形態に係るMRI装置が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
図17図17は、第9の実施形態に係るMRI装置が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本願に係るMRI装置及び方法の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るMRI装置の構成例を示す図である。
【0009】
例えば、図1に示すように、MRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、全身用RFコイル4、局所用RFコイル5、送信回路6、受信回路7、RFシールド8、架台9、寝台10、入力インタフェース11、ディスプレイ12、記憶回路13、及び処理回路14~17を備える。
【0010】
静磁場磁石1は、被検体Sが配置される撮像空間に静磁場を発生させる。具体的には、静磁場磁石1は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、その内周側に形成された撮像空間に静磁場を発生させる。例えば、静磁場磁石1は、超伝導磁石や永久磁石等である。ここでいう超伝導磁石は、例えば、液体ヘリウム等の冷却剤が充填された容器と、当該容器に浸漬された超伝導コイルとから構成される。
【0011】
傾斜磁場コイル2は、静磁場磁石1の内側に配置されており、被検体Sが配置される撮像空間に傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場コイル2は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸それぞれに対応するXコイル、Yコイル及びZコイルを有している。Xコイル、Yコイル及びZコイルは、傾斜磁場電源3から供給される電流に基づいて、各軸方向に沿って線形に変化する傾斜磁場を撮像空間に発生させる。ここで、Z軸は、静磁場磁石1によって発生する静磁場の磁束に沿うように設定される。また、X軸は、Z軸に直交する水平方向に沿うように設定され、Y軸は、Z軸に直交する鉛直方向に沿うように設定される。ここで、X軸、Y軸及びZ軸は、MRI装置100に固有の装置座標系を構成する。
【0012】
傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2に電流を供給することで、撮像空間に傾斜磁場を発生させる。具体的には、傾斜磁場電源3は、傾斜磁場コイル2のXコイル、Yコイル及びZコイルに個別に電流を供給することで、互いに直交するリードアウト方向、位相エンコード方向及びスライス方向それぞれに沿って線形に変化する傾斜磁場を撮像空間に発生させる。ここで、リードアウト方向に沿った軸、位相エンコード方向に沿った軸、及びスライス方向に沿った軸は、撮像の対象となるスライス領域又はボリューム領域を規定するための論理座標系を構成する。
【0013】
具体的には、リードアウト方向、位相エンコード方向及びスライス方向それぞれに沿った傾斜磁場は、静磁場磁石1によって発生する静磁場に重畳されることで、被検体Sから発生するNMR信号に空間的な位置情報を付与する。具体的には、リードアウト方向の傾斜磁場は、リードアウト方向の位置に応じてNMR信号の周波数を変化させることで、リードアウト方向の位置情報をNMR信号に付与する。また、位相エンコード方向の傾斜磁場は、位相エンコード方向の位置に応じてNMR信号の位相を変化させることで、位相エンコード方向の位置情報をNMR信号に付与する。また、スライス方向の傾斜磁場は、スライス方向の位置情報をNMR信号に付与する。例えば、スライス方向の傾斜磁場は、撮像領域がスライス領域の場合(2D撮像)は、スライス領域の方向、厚さ及び枚数を決めるために用いられ、撮像領域がボリューム領域の場合(3D撮像)は、スライス方向の位置に応じてNMR信号の位相を変化させるために用いられる。
【0014】
全身用RFコイル4は、傾斜磁場コイル2の内周側に配置されており、撮像空間に配置された被検体SにRFパルスを送信し、当該RFパルスの影響によって被検体Sから発生するNMR信号を受信する。具体的には、全身用RFコイル4は、中空の略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、送信回路6から供給されるRFパルスに基づいて、その内周側に位置する撮像空間に配置された被検体SにRF磁場を印加する。そして、全身用RFコイル4は、RF磁場の影響によって被検体Sから発生するNMR信号を受信し、受信したNMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、全身用RFコイル4は、バードケージ型コイルや、TEM(Transverse Electromagnetic)コイルである。なお、全身用RFコイル4は、必ずしも送信機能及び受信機能の両方を有していなくてもよく、送信機能のみを有していてもよい。
【0015】
局所用RFコイル5は、撮像時に被検体Sの近傍に配置され、撮像空間に配置された被検体SにRFパルスを送信し、当該RFパルスの影響によって被検体Sから発生するNMR信号を受信する。具体的には、局所用RFコイル5は、被検体Sの部位ごとに用意されており、被検体Sの撮像が行われる際に撮像対象の部位の近傍に配置され、送信回路6から供給されるRFパルスに基づいて、被検体SにRF磁場を印加する。そして、局所用RFコイル5は、RF磁場の影響によって被検体Sから発生するNMR信号を受信し、受信したNMR信号を受信回路7へ出力する。例えば、局所用RFコイル5は、サーフェスコイルや、複数のサーフェスコイルをコイルエレメントとして組み合わせて構成されたフェーズドアレイコイルである。なお、局所用RFコイル5は、必ずしも送信機能及び受信機能の両方を有していなくてもよく、受信機能のみを有していてもよい。
【0016】
送信回路6は、静磁場内に置かれた対象原子核に固有の共鳴周波数(ラーモア周波数)に対応するRFパルスを全身用RFコイル4又は局所用RFコイル5に出力する。
【0017】
受信回路7は、全身用RFコイル4又は局所用RFコイル5から出力されるNMR信号に基づいてNMRデータを生成し、生成したNMRデータを処理回路15に出力する。
【0018】
RFシールド8は、傾斜磁場コイル2と全身用RFコイル4との間に配置されており、全身用RFコイル4によって発生するRF磁場から傾斜磁場コイル2を遮蔽する。具体的には、RFシールド8は、中空の略円筒状(円筒の中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成されており、傾斜磁場コイル2の内周側の空間に、全身用RFコイル4の外周面を覆うように配置されている。
【0019】
架台9は、略円筒状(中心軸に直交する断面の形状が楕円状となるものを含む)に形成された中空のボア9aを有し、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、全身用RFコイル4、及びRFシールド8を収容している。具体的には、架台9は、ボア9aの外周側に全身用RFコイル4を配置し、全身用RFコイル4の外周側にRFシールド8を配置し、RFシールド8の外周側に傾斜磁場コイル2を配置し、傾斜磁場コイル2の外周側に静磁場磁石1を配置した状態で、それぞれを収容している。ここで、架台9が有するボア9a内の空間が、撮像時に被検体Sが配置される撮像空間となる。
【0020】
寝台10は、被検体Sが載置される天板10aを備え、被検体Sの撮像が行われる際に、被検体Sが載置された天板10aを撮像空間に移動する。例えば、寝台10は、天板10aの長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置されている。
【0021】
入力インタフェース11は、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース11は、処理回路17に接続されており、操作者から受け取った入力操作を電気信号へ変換して処理回路17に出力する。例えば、入力インタフェース11は、撮像条件や関心領域(Region Of Interest:ROI)の設定等を行うためのトラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース11は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース11の例に含まれる。
【0022】
ディスプレイ12は、各種情報を表示する。具体的には、ディスプレイ12は、処理回路17に接続されており、処理回路17から送られる各種情報のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ12は、液晶モニタやCRTモニタ、タッチパネル等によって実現される。
【0023】
記憶回路13は、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路13は、処理回路14~17に接続されており、各処理回路によって入出力される各種データを記憶する。例えば、記憶回路13は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子やハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0024】
処理回路14は、寝台制御機能14aを有する。寝台制御機能14aは、制御用の電気信号を寝台10へ出力することで、寝台10の動作を制御する。例えば、寝台制御機能14aは、入力インタフェース11を介して、天板10aを長手方向、上下方向又は左右方向へ移動させる指示を操作者から受け付け、受け付けた指示に従って天板10aを移動するように、寝台10が有する天板10aの移動機構を動作させる。
【0025】
処理回路15は、収集機能15aを有する。収集機能15aは、各種のパルスシーケンスを実行することで、k空間データを収集する。具体的には、収集機能15aは、処理回路17から出力されるシーケンス実行データに従って傾斜磁場電源3、送信回路6及び受信回路7を駆動することで、各種のパルスシーケンスを実行する。ここで、シーケンス実行データは、パルスシーケンスを表すデータであり、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に電流を供給するタイミング及び供給する電流の強さ、送信回路6が全身用RFコイル4にRFパルスを供給するタイミング及び供給するRFパルスの強さ、受信回路7がNMR信号をサンプリングするタイミング等を規定した情報である。そして、収集機能15aは、パルスシーケンスを実行した結果として受信回路7から出力されるNMRデータを受信し、記憶回路13に記憶させる。このとき、記憶回路13に記憶されるNMRデータは、前述した各傾斜磁場によってリードアウト方向、位相エンコード方向及びスライス方向の各方向に沿った位置情報が付与されることで、2次元又は3次元のk空間を表すk空間データとして記憶される。
【0026】
処理回路16は、生成機能16aを有する。生成機能16aは、処理回路15によって収集されたk空間データから画像を生成する。具体的には、生成機能16aは、処理回路15によって収集されたk空間データを記憶回路13から読み出し、読み出したk空間データにフーリエ変換等の再構成処理を施すことで、2次元又は3次元の画像を生成する。そして、生成機能16aは、生成した画像を記憶回路13に記憶させる。
【0027】
処理回路17は、撮像制御機能17aを有する。撮像制御機能17aは、MRI装置100が有する各構成要素を制御することで、各種の撮像を行う。具体的には、撮像制御機能17aは、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)をディスプレイ12に表示し、入力インタフェース11を介して受け付けられた入力操作に応じて、MRI装置100が有する各構成要素を制御する。例えば、撮像制御機能17aは、操作者によって入力された撮像条件に基づいてシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データを処理回路15に出力することで、k空間データを収集させる。また、例えば、撮像制御機能17aは、処理回路16を制御することで、処理回路15によって収集されたk空間データから画像を再構成させる。また、例えば、撮像制御機能17aは、操作者からの要求に応じて、記憶回路13から画像を読み出し、読み出した画像をディスプレイ12に表示させる。
【0028】
ここで、上述した処理回路14~17は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、各処理回路が有する処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路13に記憶される。そして、各処理回路は、記憶回路13から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する処理機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各処理回路は、図1の各処理回路内に示された各機能を有することとなる。
【0029】
なお、ここでは、単一のプロセッサによって各処理回路が実現されるものとして説明するが、実施形態はこれに限られず、複数の独立したプロセッサを組み合わせて各処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することによって各処理機能を実現するものとしてもよい。また、各処理回路が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、図1に示す例では、単一の記憶回路13が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0030】
以上、本実施形態に係るMRI装置100の構成例について説明した。このような構成のもと、本実施形態では、静磁場磁石1が、撮像空間となるボア9a内の少なくとも一部の領域で、磁場強度が空間的に変化する静磁場を発生させる。
【0031】
図2は、第1の実施形態に係る静磁場磁石1によって発生する静磁場を示す図である。
【0032】
例えば、図2に示すように、円筒状に形成された静磁場磁石1によって発生する静磁場は、ボア9a内の中央付近の領域RC(以下、均一領域)では磁場強度が均一になるが、その周囲の領域RPでは均一にならず、磁場強度が空間的に変化する。
【0033】
これに対し、一般的に、NMR信号を受信するRFコイルは、静磁場の磁場強度が均一であることを前提としており、均一領域における磁場強度に対応する特定の共鳴周波数に調整されている。そのため、静磁場の磁場強度が空間的に変化する領域では、RFコイルの感度が低下することがあり得る。
【0034】
図3は、第1の実施形態に関連するRFコイルの感度低下を説明するための図である。
【0035】
ここで、図3は、静磁場の磁場強度が空間的に変化する領域を概念的に示しており、静磁場の分布を網掛けの模様で示し、網掛けの模様が濃いほど、静磁場の磁場強度が強いことを示している。
【0036】
例えば、図3に示すように、静磁場の分布が拡がるにつれて磁場強度が低下する場合、それに伴い、共鳴周波数も低下する。
【0037】
これに対し、一般的に、RFコイル20は、図3に示す曲線SDのように、特定の共鳴周波数で感度が最大となり、共鳴周波数から離れるにつれて感度が低下する感度分布を有しており、共鳴周波数を中心とした一定の大きさの帯域Δfの信号を受信するように調整されている。そのため、図3に示すように、RFコイル20がNMR信号を受信できる領域Rは共鳴周波数が帯域Δfに入る範囲に限られることになり、共鳴周波数が帯域Δfから外れるような位置ではRFコイル20の感度が低下することになる。
【0038】
このようなことから、本実施形態に係るMRI装置100は、静磁場の磁場強度が空間的に変化する場合に、RFコイルの感度を向上させることができるように構成されている。
【0039】
具体的には、MRI装置100は、静磁場磁石1によって発生した磁場強度が空間的に変化する静磁場内に置かれた被検体にRFパルスを送信し、当該RFパルスの影響によって被検体から発生するNMR信号を受信するRFコイルを備える。ここで、RFコイルは、全身用RFコイル4であってもよいし、局所用RFコイル5であってもよい。または、RFコイルは、全身用RFコイル4の送信機能と局所用RFコイル5の受信機能との組み合わせであってもよい。
【0040】
そして、処理回路17の撮像制御機能17aが、静磁場磁石1によって発生した静磁場の分布に応じて調整された複数の周波数それぞれでNMR信号を受信するようにRFコイルを制御する。ここで、撮像制御機能17aは、制御部の一例である。
【0041】
本実施形態では、MRI装置100は、複数の周波数それぞれに個別に調整された複数のRFコイルを備える。そして、撮像制御機能17aは、複数の周波数それぞれでNMR信号を受信するように複数のRFコイルそれぞれを制御する。
【0042】
図4~6は、第1の実施形態に係るMRI装置100が備えるRFコイルの一例を示す図である。
【0043】
ここで、図4~6は、図3と同様に、静磁場の分布が拡がるにつれて磁場強度が低下する場合の例を示している。
【0044】
例えば、図4に示すように、MRI装置100は、周波数Aに調整された第1のRFコイル120aと、周波数Bに調整された第2のRFコイル120bとを備える。ここで、第1のRFコイル120aの周波数Aは、静磁場が分布する範囲に含まれる第1の領域Raにおける静磁場の磁場強度に対応する共鳴周波数に調整されている。一方、第2のRFコイル120bの周波数Bは、第1の領域Raより静磁場の磁場強度が低い範囲に含まれる第2の領域Rbにおける静磁場の磁場強度に対応する共鳴周波数に調整されている。
【0045】
この場合に、第1のRFコイル120aは、第1の領域Raで発生するNMR信号を受信可能な位置に配置され、第2のRFコイル120bは、第2の領域Rbで発生するNMR信号を受信可能な位置に配置される。例えば、図4に示すように、第1のRFコイル120a及び第2のRFコイル120bは、第1のRFコイル120aの検出面が、静磁場の分布が拡がる方向と直交するように配置され、第2のRFコイル120bの検出面が、静磁場の分布が拡がる方向と平行になるように配置される。または、例えば、図5に示すように、第1のRFコイル120a及び第2のRFコイル120bは、互いの検出面が、静磁場の分布が拡がる方向と直交するように積層されて配置されてもよい。
【0046】
そして、撮像制御機能17aは、周波数AでNMR信号を受信するように第1のRFコイル120aを制御し、周波数BでNMR信号を受信するように第2のRFコイル120bを制御する。
【0047】
このような構成によれば、各コイル独立、もしくは電磁気的な結合状態で二つの周波数A及びBに調整された二つのRFコイル120a及び120bを用いることで、例えば、図6に示すように、静磁場の分布が拡がる方向に沿って、二つの領域Ra及びRbからNMR信号を受信できるようになる。これにより、静磁場の分布が拡がる方向に沿ってNMR信号を受信できる範囲を広げることができ、RFコイルの感度を向上させることができる。
【0048】
なお、ここでは、二つのRFコイルを用いて二つの周波数でNMR信号を受信する場合の例を説明したが、RFコイル及び周波数の数は二つに限られず、三つ以上であってもよい。それにより、静磁場の分布が拡がる方向に沿って三つ以上の領域からNMR信号を受信できるようになり、NMR信号を受信できる範囲をさらに広げることができる。
【0049】
例えば、本実施形態では、MRI装置100は、上述したRFコイルとして、RFパルスを送信する複数の送信コイルと、NMR信号を受信する複数の受信コイルとを含む。
【0050】
図7は、第1の実施形態に係るMRI装置100が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
【0051】
例えば、図7に示すように、MRI装置100は、周波数Aに調整された第1の送信コイル121a及び第1の受信コイル122aと、周波数Bに調整された第2の送信コイル121b及び第2の受信コイル122bとを有する。
【0052】
第1の送信コイル121aは、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、周波数AのRF信号を被検体に送信する。第1の受信コイル122aは、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、被検体から発生する周波数AのNMR信号を受信する。第2の送信コイル121bは、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、周波数BのRF信号を被検体に送信する。第2の受信コイル122bは、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、被検体から発生する周波数BのNMR信号を受信する。
【0053】
また、MRI装置100は、パルス発生器161、DAC(Digital to Analog Converter)162、切り替えスイッチ163、シンセサイザ164、第1の変調器165a、第2の変調器165b、第1のRFアンプ166a及び第2のRFアンプ166bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した送信回路6に含まれる。
【0054】
パルス発生器161は、RFパルスの波形を生成する。DAC162は、パルス発生器161によって生成されたRFパルスの波形をアナログ信号からデジタル信号に変換して出力する。切り替えスイッチ163は、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、DAC162から出力されるデジタル信号を第1の変調器165a及び第2の変調器165bのいずれか一方に出力する。シンセサイザ164は、RF信号を発生して出力する。第1の変調器165aは、シンセサイザ164から出力されるRF信号の周波数を周波数Aに変換した後に、当該RF信号を切り替えスイッチ163から出力されるデジタル信号の波形で変調することによって、周波数AのRFパルスを生成する。第2の変調器165bは、シンセサイザ164から出力されるRF信号の周波数を周波数Bに変換した後に、当該RF信号を切り替えスイッチ163から出力されるデジタル信号の波形で変調することによって、周波数BのRFパルスを生成する。第1のRFアンプ166aは、第1の変調器165aによって生成された周波数AのRFパルスを増幅して第1の送信コイル121aに出力する。第2のRFアンプ166bは、第2の変調器165bによって生成された周波数BのRFパルスを増幅して第2の送信コイル121bに出力する。
【0055】
また、MRI装置100は、第1のプリアンプ171a、第2のプリアンプ171b、第1の検波器172a、第2の検波器172b、第1のADC(Analog to Digital Converter)173a及び第2のADC173bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した受信回路7に含まれる。
【0056】
第1のプリアンプ171aは、第1の受信コイル122aによって受信された周波数AのNMR信号を増幅して出力する。第2のプリアンプ171bは、第2の受信コイル122bによって受信された周波数BのNMR信号を増幅して出力する。第1の検波器172aは、シンセサイザ164から出力されるRF信号の周波数を周波数Aに変換した後に、当該RF信号を用いて第1のプリアンプ171aから出力されるNMR信号を検波して第1のADC173aに出力する。第2の検波器172bは、シンセサイザ164から出力されるRF信号の周波数を周波数Bに変換した後に、当該RF信号を用いて第2のプリアンプ171bから出力されるNMR信号を検波して第2のADC173bに出力する。第1のADC173aは、第1の検波器172aから出力されるNMR信号をアナログ信号からデジタル信号に変換することによってNMRデータを生成し、生成したNMRデータを処理回路15に出力する。第2のADC173bは、第2の検波器172bから出力されるNMR信号をアナログ信号からデジタル信号に変換することによってNMRデータを生成し、生成したNMRデータを処理回路15に出力する。
【0057】
そして、撮像制御機能17aは、周波数AでRFパルスを送信するように第1の送信コイル121aを制御し、周波数AでNMR信号を受信するように第1の受信コイル122aを制御する。また、撮像制御機能17aは、周波数BでRFパルスを送信するように第2の送信コイル121bを制御し、周波数BでNMR信号を受信するように第2の受信コイル122bを制御する。
【0058】
このとき、撮像制御機能17aは、第1の送信コイル121a及び第2の送信コイル121bのうちの一方の送信コイルがRFパルスを送信する際には、他方の送信コイルがデカップル状態となるように制御する。また、このとき、撮像制御機能17aは、第1の受信コイル122a及び第2の受信コイル122bがどちらもデカップル状態となるように制御する。
【0059】
また、撮像制御機能17aは、第1の受信コイル122a及び第2の受信コイル122bがNMR信号を受信する際には、各受信コイルが同時に受信可能な状態となるように制御する。また、このとき、撮像制御機能17aは、第1の送信コイル121a及び第2の送信コイル121bがどちらもデカップル状態となるように制御する。
【0060】
例えば、撮像制御機能17aは、各RFコイルに設けられたPINダイオード等の素子を制御することで、所望の周波数で送信又は受信を行うように各RFコイルを制御する。また、例えば、撮像制御機能17aは、各RFコイルに設けられたPINダイオード等の素子を制御して調整済みの周波数を所望の周波数からずらすことで、各RFコイルをデカップル状態となるように制御する。
【0061】
このような構成により、撮像制御機能17aは、複数の周波数それぞれでNMR信号を受信するように複数のRFコイルそれぞれを制御して、各種の撮像を行う。
【0062】
その場合に、撮像制御機能17aは、RFパルスを送信する際の周波数を基準として、NMR信号を受信する際の周波数を切り替えるようにRFコイルを制御する。
【0063】
具体的には、撮像制御機能17aは、撮像スライスの位置を基準として、NMR信号を受信する際の周波数を切り替えるようにRFコイルを制御する。
【0064】
例えば、撮像制御機能17aは、複数の周波数それぞれで順次RFパルスを送信し、複数の周波数それぞれで順次NMR信号を受信するようにRFコイルを制御する。
【0065】
図8は、第1の実施形態に係る撮像制御機能17aによって行われる撮像の一例を示す図である。
【0066】
例えば、図8の(a)に示すように、複数の撮像スライスA~Cを撮像する場合に、静磁場磁石1によって発生した静磁場の磁場強度がスライス方向に沿って変化しているとする。この場合に、撮像制御機能17aは、撮像スライスごとに異なる周波数でRFパルスの送信及びNMRの受信を行うように各送信コイル及び各受信コイルを制御する。
【0067】
例えば、撮像制御機能17aは、図8の(b)に示すように、撮像スライス(slice)ごとに、TR(Repetition Time)の間隔で、順次、各撮像スライスの位置における静磁場の磁場強度に対応する共鳴周波数でRFパルス(90°パルス)を送信するようにRFコイル(送信コイル)を制御する。そして、撮像制御機能17aは、TRごとに位相エンコード方向の傾斜磁場の磁場強度を変えながら、順次、RFパルスと同じ周波数でNMR信号を受信するようにRFコイル(受信コイル)を制御する。
【0068】
このとき、例えば、スライス方向に沿った静磁場の磁場強度の変化が十分な傾斜を有している場合には、スライス方向の傾斜磁場は用いられなくてもよい。または、静磁場の磁場強度の変化の線形性を補正するために、スライス方向の傾斜磁場が補助的に用いられてもよい。この場合、撮像制御機能17aは、静磁場及び傾斜磁場の分布に応じて調整された複数の周波数それぞれで送信及び受信を行うようにRFコイルを制御する。
【0069】
上述したように、第1の実施形態では、静磁場磁石1が、磁場強度が空間的に変化する静磁場を発生させる。また、RFコイルが、静磁場磁石1によって発生した磁場強度が空間的に変化する静磁場内に置かれた被検体にRFパルスを送信し、当該RFパルスの影響によって被検体から発生するNMR信号を受信する。そして、撮像制御機能17aが、少なくとも静磁場の分布に応じて調整された複数の周波数それぞれでNMR信号を受信するようにRFコイルを制御する。
【0070】
具体的には、第1の実施形態では、MRI装置100が、複数の周波数それぞれに個別に調整された複数のRFコイルを備える。そして、撮像制御機能17aは、複数の周波数それぞれでNMR信号を受信するように複数のRFコイルそれぞれを制御する。
【0071】
このような構成によれば、静磁場の磁場強度が空間的に変化する場合に、複数の周波数を用いることによって、NMR信号を受信できる範囲を広げることができ、RFコイルの感度を向上させることができる。
【0072】
以上、第1の実施形態について説明したが、本願に係るMRI装置100の実施形態はこれに限ら得ない。そこで、以下では、本願に係るMRI装置100の他の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとし、第1の実施形態と共通する内容については説明を省略する。
【0073】
(第2の実施形態)
例えば、上述した第1の実施形態では、MRI装置100が、複数の周波数それぞれに個別に調整された複数のRFコイルを備える場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、MRI装置100は、複数の周波数それぞれに調整可能に構成されたRFコイルを備えていてもよい。以下では、このような例を第2の実施形態として説明する。
【0074】
本実施形態では、MRI装置100は、複数の周波数に調整可能に構成されたRFコイルを備える。そして、撮像制御機能17aは、複数の周波数それぞれでNMR信号を受信するように当該RFコイルの周波数を切り替える。
【0075】
例えば、複数の周波数に調整可能に構成されたRFコイルは、二重同調コイル等である。例えば、撮像制御機能17aは、RFコイルに設けられたPINダイオード等の素子を制御してRFコイルに含まれるコイルエレメントのパターンを変化させることで、RFコイルの周波数を切り替える。または、例えば、撮像制御機能17aは、RFコイルに設けられたトリマーコンデンサの容量を変化させて調整済みの周波数をずらすことで、RFコイルの周波数を切り替える。
【0076】
図9は、第2の実施形態に係るMRI装置100が備えるRFコイルの一例を示す図である。
【0077】
なお、図9は、図3と同様に、静磁場の分布が拡がるにつれて磁場強度が低下する場合の例を示している。
【0078】
例えば、図9に示すように、MRI装置100は、二つの周波数A及びBに調整可能に構成されたRFコイル220を備える。そして、撮像制御機能17aは、周波数A及びBそれぞれでNMR信号を受信するようにRFコイル220の周波数を切り替える。
【0079】
ここで、本実施形態でも、周波数Aは、静磁場が分布する範囲に含まれる第1の領域Raにおける静磁場の磁場強度に対応する共鳴周波数に設定されている。また、周波数Bは、第1の領域Raより静磁場の磁場強度が低い範囲に含まれる第2の領域Rbにおける静磁場の磁場強度に対応する共鳴周波数に設定されている。
【0080】
このような構成によれば、二つの周波数A及びBに調整可能なRFコイル220を用いることによって、第1の実施形態と同様に、静磁場の分布が拡がる方向に沿って、二つの領域Ra及びRbからNMR信号を受信できるようになる。これにより、静磁場の分布が拡がる方向に沿ってNMR信号を受信できる範囲を広げることができ、RFコイルの感度を向上させることができる。
【0081】
なお、ここでは、二つの周波数に調整可能なRFコイルを用いて各周波数でNMR信号を受信する場合の例を説明したが、周波数の数は二つに限られず、三つ以上であってもよい。それにより、静磁場の分布が拡がる方向に沿って三つ以上の領域からNMR信号を受信できるようになり、NMR信号を受信できる範囲をさらに広げることができる。
【0082】
例えば、本実施形態では、MRI装置100は、上述したRFコイルとして、複数の周波数に調整可能に構成された一つの送信コイルと、複数の周波数に調整可能に構成された一つの受信コイルとを含む。
【0083】
図10は、第2の実施形態に係るMRI装置100が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
【0084】
例えば、図10に示すように、MRI装置100は、周波数A及びBに調整可能に構成された送信コイル221と、周波数Bに調整された受信コイル222とを有する。
【0085】
送信コイル221は、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、周波数A又はBのRF信号を被検体に送信する。受信コイル222は、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、被検体から発生する周波数A又はBのNMR信号を受信する。
【0086】
また、MRI装置100は、パルス発生器161、DAC162、切り替えスイッチ163、シンセサイザ164、第1の変調器165a、第2の変調器165b、第1のRFアンプ266a及び第2のRFアンプ266bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した送信回路6に含まれる。
【0087】
パルス発生器161、DAC162、切り替えスイッチ163、シンセサイザ164、第1の変調器165a及び第2の変調器165bについては、第1の実施形態と同様である。第1のRFアンプ266aは、第1の変調器165aによって生成された周波数AのRFパルスを増幅して送信コイル221に出力する。第2のRFアンプ266bは、第2の変調器165bによって生成された周波数BのRFパルスを増幅して送信コイル221に出力する。
【0088】
また、MRI装置100は、第1のプリアンプ271a、第2のプリアンプ271b、第1の検波器172a、第2の検波器172b、第1のADC173a及び第2のADC173bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した受信回路7に含まれる。
【0089】
第1のプリアンプ271aは、受信コイル222によって受信された周波数AのNMR信号を増幅して出力する。第2のプリアンプ271bは、受信コイル222によって受信された周波数BのNMR信号を増幅して出力する。第1の検波器172a、第2の検波器172b、第1のADC173a及び第2のADC173bについては、第1の実施形態と同様である。
【0090】
そして、撮像制御機能17aは、周波数AでRFパルスを送信するように送信コイル221を制御し、周波数AでNMR信号を受信するように受信コイル222を制御する。また、撮像制御機能17aは、周波数BでRFパルスを送信するように送信コイル221を制御し、周波数BでNMR信号を受信するように受信コイル222を制御する。
【0091】
このような構成により、撮像制御機能17aは、複数の周波数それぞれでNMR信号を受信するように当該RFコイルの周波数を切り替えて、各種の撮像を行う。
【0092】
その場合に、撮像制御機能17aは、第1の実施形態と同様に、RFパルスを送信する際の周波数を基準として、NMR信号を受信する際の周波数を切り替えるようにRFコイルを制御する。
【0093】
具体的には、撮像制御機能17aは、第1の実施形態と同様に、撮像スライスの位置を基準として、NMR信号を受信する際の周波数を切り替えるようにRFコイルを制御する。
【0094】
例えば、撮像制御機能17aは、第1の実施形態と同様に、複数の周波数それぞれで順次RFパルスを送信し、複数の周波数それぞれで順次NMR信号を受信するようにRFコイルを制御する。
【0095】
上述したように、第2の実施形態では、MRI装置100が、複数の周波数に調整可能に構成されたRFコイルを備え、撮像制御機能17aが、複数の周波数それぞれでNMR信号を受信するように当該RFコイルの周波数を切り替える。
【0096】
このような構成によれば、第1の実施形態と同様に、静磁場の磁場強度が空間的に変化する場合に、複数の周波数を用いることによって、NMR信号を受信できる範囲を広げることができ、RFコイルの感度を向上させることができる。
【0097】
(第3の実施形態)
また、上述した第1の実施形態では、撮像制御機能17aが、複数の周波数それぞれで順次RFパルスを送信し、複数の周波数それぞれで順次NMR信号を受信するようにRFコイルを制御する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、撮像制御機能17aは、複数の周波数を含む広い帯域でRFパルスを送信してもよい。以下では、このような例を第3の実施形態として説明する。
【0098】
本実施形態では、撮像制御機能17aは、複数の周波数を含む帯域でRFパルスを送信し、複数の周波数それぞれで同時にNMR信号を受信するようにRFコイルを制御する。
【0099】
例えば、本実施形態では、MRI装置100は、上述したRFコイルとして、RFパルスを送信する一つの送信コイルと、NMR信号を受信する複数の受信コイルとを含む。
【0100】
図11は、第3の実施形態に係るMRI装置100が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
【0101】
例えば、図11に示すように、MRI装置100は、周波数A及びBを含む帯域に調整された送信コイル321と、周波数Aに調整された第1の受信コイル122aと、周波数Bに調整された第2の受信コイル122bとを有する。
【0102】
送信コイル321は、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、周波数A及びBを含む帯域でRF信号を被検体に送信する。第1の受信コイル122a及び第2の送信コイル121bについては、第1の実施形態と同様である。
【0103】
また、MRI装置100は、パルス発生器161、DAC162、変調器365、RFアンプ366を有する。例えば、これらの機器は、図1に示した送信回路6に含まれる。
【0104】
パルス発生器161、DAC162及びシンセサイザ164については、第1の実施形態と同様である。変調器365は、シンセサイザ164から出力されるRF信号の周波数を周波数Aに変換した後に、当該RF信号をDAC162から出力されるデジタル信号の波形で変調することによって、周波数A及びBを含む帯域のRFパルスを生成する。RFアンプ366は、変調器365aによって生成された周波数A及びBを含む帯域のRFパルスを増幅して送信コイル321に出力する。
【0105】
また、MRI装置100は、第1のプリアンプ171a、第2のプリアンプ171b、第1の検波器172a、第2の検波器172b、第1のADC173a及び第2のADC173bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した受信回路7に含まれる。
【0106】
第1のプリアンプ171a、第2のプリアンプ171b、第1の検波器172a、第2の検波器172b、第1のADC173a及び第2のADC173bについては、第1の実施形態と同様である。
【0107】
そして、撮像制御機能17aは、周波数A及びBを含む帯域でRFパルスを送信するように送信コイル321を制御。また、撮像制御機能17aは、周波数AでNMR信号を受信するように第1の受信コイル122aを制御し、周波数BでNMR信号を受信するように第2の受信コイル122bを制御する。
【0108】
このとき、撮像制御機能17aは、送信コイル321がRFパルスを送信する際には、第1の受信コイル122a及び第2の受信コイル122bがどちらもデカップル状態となるように制御する。
【0109】
また、撮像制御機能17aは、第1の受信コイル122a及び第2の受信コイル122bがNMR信号を受信する際には、各受信コイルが同時に受信可能な状態となるように制御する。また、このとき、撮像制御機能17aは、第1の送信コイル121a及び第2の送信コイル121bがどちらもデカップル状態となるように制御する。
【0110】
このような構成により、撮像制御機能17aは、複数の周波数を含む帯域でRFパルスを送信し、複数の周波数それぞれで同時にNMR信号を受信するようにRFコイルを制御して、各種の撮像を行う。
【0111】
例えば、撮像制御機能17aは、異なる周波数に調整された複数の受信コイルを用いて、パラレルイメージングを実行する。ここで、例えば、複数の受信コイルは、フェーズドアレイコイルに含まれる複数のコイルエレメントである。
【0112】
この場合に、各受信コイルの周波数は、各コイルの位置における静磁場の磁場強度に対応する共鳴周波数に調整されている。そして、撮像制御機能17aは、各受信コイルの周波数を含む帯域でRFパルスを送信するように送信コイルを制御し、複数の周波数それぞれで同時にNMR信号を受信するように複数の受信コイルを制御する。
【0113】
パラレルイメージングでは、複数の受信コイルによって受信されたNMR信号を合成して画像が生成され、当該画像を展開することによって、折り返しが除去された画像が生成される。一般的に、パラレルイメージングを用いた場合のSNR(Signal-to-Noise Ratio)parallelは、以下の式で表される。
【0114】
【数1】
【0115】
ここで、SNRは、パラレルイメージングを用いない場合のSNRであり、gは、gファクターであり、Rは、倍速率である。これらのパラメータのうち、gファクターは、画像の画質に影響する要素であり、各受信コイルの感度分布の独立性が高いほど、値が小さくなり、それに伴って、生成される画像の画質が高くなる。
【0116】
これについて、本実施形態では、複数の周波数それぞれでNMR信号を受信することにより、通常の受信コイルの感度分布に加えて周波数に依存した感度分布が発生するため、各受信コイルの感度分布の独立性がより高くなる。その結果、gファクターの値が小さくなり、パラレルイメージングによって生成される画像の画質を向上させることができる。
【0117】
上述したように、第3の実施形態では、撮像制御機能17aが、複数の周波数を含む帯域でRFパルスを送信し、複数の周波数それぞれで同時にNMR信号を受信するようにRFコイルを制御する。
【0118】
このような構成によれば、第1の実施形態と同様に、静磁場の磁場強度が空間的に変化する場合に、複数の周波数を用いることによって、NMR信号を受信できる範囲を広げることができ、RFコイルの感度を向上させることができる。
【0119】
また、第3の実施形態では、パラレルイメージングによって生成される画像の画質を向上させることができる。
【0120】
(第4の実施形態)
また、上述した第2の実施形態では、複数の変調器及び複数の検波器を用いた場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、図10に示した送受信系の構成において、複数の周波数に切り替え可能な変調器及び検波器を用いることで、変調器及び検波器をそれぞれ共通化してもよい。以下では、このような例を第4の実施形態として説明する。
【0121】
図12は、第4の実施形態に係るMRI装置100が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
【0122】
例えば、図12に示すように、MRI装置100は、周波数A及びBに調整可能に構成された送信コイル221と、周波数Bに調整された受信コイル222とを有する。
【0123】
送信コイル221及び受信コイル222については、第2の実施形態と同様である。
【0124】
また、MRI装置100は、パルス発生器161、DAC162、シンセサイザ164、変調器465、切り替えスイッチ467、第1のRFアンプ266a及び第2のRFアンプ266bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した送信回路6に含まれる。
【0125】
パルス発生器161、DAC162及びシンセサイザ164については、第1の実施形態と同様である。変調器465は、シンセサイザ164から出力されるRF信号の周波数を周波数A及びBそれぞれに変換した後に、当該RF信号をDAC162から出力されるデジタル信号の波形で変調することによって、周波数AのRFパルス及び周波数BのRFパルスを生成する。切り替えスイッチ467は、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、変調器456によって生成された周波数AのRFパルスを第1のRFアンプ266aに出力、又は、変調器456によって生成された周波数BのRFパルスを第2のRFアンプ266bに出力する。第1のRFアンプ266a及び第2のRFアンプ266bについては、第2の実施形態と同様である。
【0126】
また、MRI装置100は、第1のプリアンプ271a、第2のプリアンプ271b、切り替えスイッチ474、検波器472及びADC473を有する。例えば、これらの機器は、図1に示した受信回路7に含まれる。
【0127】
第1のプリアンプ271a及び第2のプリアンプ271bについては、第2の実施形態と同様である。切り替えスイッチ474は、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、第1のプリアンプ271aから出力される周波数AのNMR信号、又は、第2のプリアンプ271bから出力される周波数BのNMR信号を検波器472に出力する。検波器472は、シンセサイザ164から出力されるRF信号の周波数を周波数A及びBそれぞれに変換した後に、当該RF信号を用いて切り替えスイッチ474から出力されるNMR信号を検波して出力する。ADC473は、検波器472から出力されるNMR信号をアナログ信号からデジタル信号に変換することによってNMRデータを生成し、生成したNMRデータを処理回路15に出力する。
【0128】
そして、撮像制御機能17aは、第2の実施形態と同様に、送信コイル221及び受信コイル222を制御する。
【0129】
(第5の実施形態)
また、上述した第1の実施形態では、第2の実施形態と同じく複数の変調器及び複数の検波器を用いた場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、図7に示した送受信系の構成において、第4の実施形態と同様に複数の周波数に切り替え可能な変調器及び検波器を用いることで、変調器及び検波器をそれぞれ共通化してもよい。以下では、このような例を第5の実施形態として説明する。
【0130】
図13は、第5の実施形態に係るMRI装置100が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
【0131】
例えば、図13に示すように、MRI装置100は、周波数Aに調整された第1の送信コイル121a及び第1の受信コイル122aと、周波数Bに調整された第2の送信コイル121b及び第2の受信コイル122bとを有する。
【0132】
第1の送信コイル121a、第1の受信コイル122a、第2の送信コイル121b及び第2の受信コイル122bについては、第1の実施形態と同様である。
【0133】
また、MRI装置100は、パルス発生器161、DAC162、シンセサイザ164、変調器465、切り替えスイッチ467、第1のRFアンプ166a及び第2のRFアンプ166bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した送信回路6に含まれる。
【0134】
パルス発生器161、DAC162、シンセサイザ164、第1のRFアンプ166a及び第2のRFアンプ166bについては、第1の実施形態と同様である。変調器465及び切り替えスイッチ467については、第4の実施形態と同様である。
【0135】
また、MRI装置100は、第1のプリアンプ171a、第2のプリアンプ171b、切り替えスイッチ474、検波器472及びADC473を有する。例えば、これらの機器は、図1に示した受信回路7に含まれる。
【0136】
第1のプリアンプ171a及び第2のプリアンプ171bについては、第1の実施形態と同様である。切り替えスイッチ474、検波器472及びADC473については、第4の実施形態と同様である。
【0137】
そして、撮像制御機能17aは、第1の実施形態と同様に、第1の送信コイル121a、第2の送信コイル121b、第1の受信コイル122a及び第2の受信コイル122bを制御する。
【0138】
(第6の実施形態)
また、上述した第1の実施形態では、複数の送信コイル及び複数の受信コイルを用いた場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、図7に示した送受信系の構成において、複数の送信コイル及び複数の受信コイルに替えて、複数の送受信コイルを用いてもよい。以下では、このような例を第6の実施形態として説明する。
【0139】
図14は、第6の実施形態に係るMRI装置100が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
【0140】
例えば、図14に示すように、MRI装置100は、周波数Aに調整された第1の送受信コイル623aと、周波数Bに調整された第2の送受信コイル623bとを有する。
【0141】
第1の送受信コイル623aは、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、周波数AのRF信号を被検体に送信し、被検体から発生する周波数AのNMR信号を受信する。第2の送受信コイル623bは、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、周波数BのRF信号を被検体に送信し、被検体から発生する周波数BのNMR信号を受信する。
【0142】
また、MRI装置100は、パルス発生器161、DAC162、切り替えスイッチ163、シンセサイザ164、第1の変調器165a、第2の変調器165b、第1のRFアンプ666a及び第2のRFアンプ666bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した送信回路6に含まれる。
【0143】
パルス発生器161、DAC162、切り替えスイッチ163、シンセサイザ164、第1の変調器165a及び第2の変調器165bについては、第1の実施形態と同様である。第1のRFアンプ666aは、第1の変調器165aによって生成された周波数AのRFパルスを増幅して第1の送受信コイル623aに出力する。第2のRFアンプ666bは、第2の変調器165bによって生成された周波数BのRFパルスを増幅して第2の送受信コイル623bに出力する。
【0144】
また、MRI装置100は、第1のプリアンプ671a、第2のプリアンプ671b、第1の検波器172a、第2の検波器172b、第1のADC173a及び第2のADC173bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した受信回路7に含まれる。
【0145】
第1のプリアンプ671aは、第1の送受信コイル623aによって受信された周波数AのNMR信号を増幅して出力する。第2のプリアンプ671bは、第2の送受信コイル623bによって受信された周波数BのNMR信号を増幅して出力する。第1の検波器172a、第2の検波器172b、第1のADC173a及び第2のADC173bについては、第1の実施形態と同様である。
【0146】
そして、撮像制御機能17aは、周波数AでRFパルスを送信するように第1の送受信コイル623aを制御し、周波数AでNMR信号を受信するように第1の送受信コイル623aを制御する。また、撮像制御機能17aは、周波数BでRFパルスを送信するように第2の送受信コイル623bを制御し、周波数BでNMR信号を受信するように第2の送受信コイル623bを制御する。
【0147】
このとき、撮像制御機能17aは、第1の送受信コイル623a及び第2の送受信コイル623bのうちの一方の送受信コイルがRFパルスを送信する際には、他方の送受信コイルがデカップル状態となるように制御する。
【0148】
また、撮像制御機能17aは、第1の送受信コイル623a及び第2の送受信コイル623bがNMR信号を受信する際には、各送受信コイルが同時に受信可能な状態となるように制御する。
【0149】
(第7の実施形態)
また、上述した第6の実施形態では、第1の実施形態と同じく複数の変調器及び複数の検波器を用いた場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、図15に示した送受信系の構成において、第4の実施形態と同様に複数の周波数に切り替え可能な変調器及び検波器を用いることで、変調器及び検波器をそれぞれ共通化してもよい。以下では、このような例を第7の実施形態として説明する。
【0150】
図15は、第7の実施形態に係るMRI装置100が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
【0151】
例えば、図15に示すように、MRI装置100は、周波数Aに調整された第1の送受信コイル623aと、周波数Bに調整された第2の送受信コイル623bとを有する。
【0152】
第1の送受信コイル623a及び第2の送受信コイル623bについては、第6の実施形態と同様である。
【0153】
また、MRI装置100は、パルス発生器161、DAC162、シンセサイザ164、変調器465、切り替えスイッチ467、第1のRFアンプ666a及び第2のRFアンプ666bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した送信回路6に含まれる。
【0154】
パルス発生器161、DAC162及びシンセサイザ164については、第1の実施形態と同様である。変調器465及び切り替えスイッチ467については、第4の実施形態と同様である。第1のRFアンプ666a及び第2のRFアンプ666bについては、第6の実施形態と同様である。
【0155】
また、MRI装置100は、第1のプリアンプ671a、第2のプリアンプ671b、切り替えスイッチ474、検波器472及びADC473を有する。例えば、これらの機器は、図1に示した受信回路7に含まれる。
【0156】
第1のプリアンプ671a及び第2のプリアンプ671bについては、第6の実施形態と同様である。切り替えスイッチ474、検波器472及びADC473については、第4の実施形態と同様である。
【0157】
そして、撮像制御機能17aは、第6の実施形態と同様に、第1の送受信コイル623a及び第2の送受信コイル623bを制御する。
【0158】
(第8の実施形態)
また、上述した第2の実施形態では、複数の周波数に調整可能に構成された一つの送信コイルと、複数の周波数に調整可能に構成された一つの受信コイルとを用いた場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、図10に示した送受信系の構成において、一つの送信コイル及び一つの受信コイルに替えて、複数の周波数に調整可能に構成された一つの送受信コイルを用いてもよい。以下では、このような例を第8の実施形態として説明する。
【0159】
図16は、第8の実施形態に係るMRI装置100が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
【0160】
例えば、図16に示すように、MRI装置100は、周波数A及びBに調整可能に構成された送受信コイル823を有する。
【0161】
送受信コイル823は、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、周波数A又はBのRF信号を被検体に送信する。また、送受信コイル823は、処理回路17の撮像制御機能17aから処理回路15を介して送信される制御信号に応じて、被検体から発生する周波数A又はBのNMR信号を受信する。
【0162】
また、MRI装置100は、パルス発生器161、DAC162、切り替えスイッチ163、シンセサイザ164、第1の変調器165a、第2の変調器165b、第1のRFアンプ866a及び第2のRFアンプ866bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した送信回路6に含まれる。
【0163】
パルス発生器161、DAC162、切り替えスイッチ163、シンセサイザ164、第1の変調器165a及び第2の変調器165bについては、第1の実施形態と同様である。第1のRFアンプ866aは、第1の変調器165aによって生成された周波数AのRFパルスを増幅して送受信コイル823に出力する。第2のRFアンプ866bは、第2の変調器165bによって生成された周波数BのRFパルスを増幅して送受信コイル823に出力する。
【0164】
また、MRI装置100は、第1のプリアンプ871a、第2のプリアンプ871b、第1の検波器172a、第2の検波器172b、第1のADC173a及び第2のADC173bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した受信回路7に含まれる。
【0165】
第1のプリアンプ871aは、送受信コイル823によって受信された周波数AのNMR信号を増幅して出力する。第2のプリアンプ871bは、送受信コイル823によって受信された周波数BのNMR信号を増幅して出力する。第1の検波器172a、第2の検波器172b、第1のADC173a及び第2のADC173bについては、第1の実施形態と同様である。
【0166】
そして、撮像制御機能17aは、周波数AでRFパルスを送信するように送受信コイル823を制御し、周波数AでNMR信号を受信するように送受信コイル823を制御する。また、撮像制御機能17aは、周波数BでRFパルスを送信するように送受信コイル823を制御し、周波数BでNMR信号を受信するように送受信コイル823を制御する。
【0167】
(第9の実施形態)
また、上述した第8の実施形態では、第1の実施形態と同じく複数の変調器及び複数の検波器を用いた場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、図16に示した送受信系の構成において、第4の実施形態と同様に複数の周波数に切り替え可能な変調器及び検波器を用いることで、変調器及び検波器をそれぞれ共通化してもよい。以下では、このような例を第9の実施形態として説明する。
【0168】
図17は、第9の実施形態に係るMRI装置100が備える送受信系の構成の一例を示す図である。
【0169】
例えば、図17に示すように、MRI装置100は、周波数A及びBに調整可能に構成された送受信コイル823を有する。
【0170】
送受信コイル823については、第8の実施形態と同様である。
【0171】
また、MRI装置100は、パルス発生器161、DAC162、シンセサイザ164、変調器465、切り替えスイッチ467、第1のRFアンプ866a及び第2のRFアンプ866bを有する。例えば、これらの機器は、図1に示した送信回路6に含まれる。
【0172】
パルス発生器161、DAC162及びシンセサイザ164については、第1の実施形態と同様である。変調器465及び切り替えスイッチ467については、第4の実施形態と同様である。第1のRFアンプ866a及び第2のRFアンプ866bについては、第8の実施形態と同様である。
【0173】
また、MRI装置100は、第1のプリアンプ871a、第2のプリアンプ871b、切り替えスイッチ474、検波器472及びADC473を有する。例えば、これらの機器は、図1に示した受信回路7に含まれる。
【0174】
第1のプリアンプ871a及び第2のプリアンプ871bについては、第8の実施形態と同様である。切り替えスイッチ474、検波器472及びADC473については、第4の実施形態と同様である。
【0175】
そして、撮像制御機能17aは、第8の実施形態と同様に、送受信コイル823を制御する。
【0176】
(他の実施形態)
なお、上述した実施形態では、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2及び全身用RFコイル4それぞれが略円筒状に形成された、いわゆるトンネル型の構造を有するMRI装置100について説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本願が開示する技術は、被検体Sが配置される撮像空間を挟んで対向するように一対の静磁場磁石、一対の傾斜磁場コイル及び一対のRFコイルを配置した、いわゆるオープン型の構造を有するMRI装置にも同様に適用することが可能である。すなわち、本願が開示する技術は、被検体が配置される撮像空間内の少なくとも一部の領域で磁場強度が空間的に変化する静磁場を発生させる静磁場磁石を有するMRI装置であれば、各種のMRI装置に適用することが可能である。
【0177】
また、上述した各実施形態では、本明細書における制御部を処理回路17の撮像制御機能17aによって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における制御部は、実施形態で述べた撮像制御機能17aによって実現する他にも、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0178】
また、上記説明では、「プロセッサ」が各処理機能に対応するプログラムを記憶回路から読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限定されない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで、各処理機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該処理機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれるなお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その処理機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を一つのプロセッサへ統合して、その処理機能を実現するようにしてもよい。
【0179】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0180】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、静磁場の磁場強度が空間的に変化する場合に、RFコイルの感度を向上させることができる。
【0181】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0182】
100 MRI装置
1 静磁場磁石
4 全身用RFコイル
5 局所用RFコイル
17 処理回路
17a 撮像制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17