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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20241211BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20241211BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01L29/78 301W
H01L29/78 301D
H01L29/06 301F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021094457
(22)【出願日】2021-06-04
(65)【公開番号】P2022186304
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小清水 亮
(72)【発明者】
【氏名】中柴 康隆
【審査官】石川 雄太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0005858(US,A1)
【文献】特開2001-007327(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0240669(US,A1)
【文献】特開2001-044431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/06
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の第1領域上に形成された第1絶縁膜と、
前記半導体基板の第2領域上に形成された第2絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に形成されたゲート電極と、
前記第2絶縁膜上に形成されたフィールドプレート部と、
前記半導体基板に形成された第1導電型のソース領域と、
前記半導体基板に形成された前記第1導電型のドレイン領域と、
を備える、半導体装置であって、
前記フィールドプレート部は、
前記第1導電型とは異なる第2導電型の第1半導体領域と、
前記第1導電型の第2半導体領域と、
を有し、
前記第1半導体領域は、
第1高濃度半導体領域と、
前記第1高濃度半導体領域よりも不純物濃度の低い第1低濃度半導体領域と、
を含み、
平面視において、前記第1低濃度半導体領域は、前記第1高濃度半導体領域と前記第2半導体領域との間に挟まれるように配置され、
前記第1高濃度半導体領域は、前記ソース領域と電気的に接続され、
前記第2半導体領域は、前記ドレイン領域と電気的に接続され
前記第1低濃度半導体領域は、前記第2絶縁膜と接触している一方、
前記第1高濃度半導体領域の底部と前記第2絶縁膜との間には、前記第1低濃度半導体領域の一部分が介在する、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記フィールドプレート部は、前記第1半導体領域と前記第2半導体領域とによって形成されたpn接合を有する、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記ゲート電極は、前記第1導電型の半導体膜から構成され、
前記フィールドプレート部の不純物濃度は、前記ゲート電極の不純物濃度よりも低い、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2絶縁膜の膜厚は、前記第1絶縁膜の膜厚よりも厚い、半導体装置。
【請求項5】
請求項に記載の半導体装置において、
前記第2絶縁膜の膜厚は、前記第1絶縁膜の膜厚の2倍である、半導体装置。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第2絶縁膜の膜厚は、前記第1絶縁膜の膜厚と等しい、半導体装置。
【請求項7】
請求項に記載の半導体装置において、
前記半導体装置は、
前記第1高濃度半導体領域と電気的に接続された第1プラグと、
前記第2半導体領域と電気的に接続された第2プラグと、
前記第1プラグと電気的に接続された第1配線と、
前記第2プラグと電気的に接続された第2配線と、
を有し、
平面視において、前記第1配線は、前記第1プラグから前記第2配線側にはみ出た第1はみ出し部位を含み、
平面視において、前記第2配線は、前記第2プラグから前記第1配線側にはみ出た第2はみ出し部位を含む、半導体装置。
【請求項8】
請求項に記載の半導体装置において、
前記第1はみ出し部位の第1幅は、0.4μm以上1.0μm以下であり、
前記第2はみ出し部位の第2幅も、0.4μm以上1.0μm以下である、半導体装置。
【請求項9】
請求項に記載の半導体装置において、
前記第2半導体領域は、前記第2絶縁膜と接触している、半導体装置。
【請求項10】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記フィールドプレート部は、アモルファス半導体膜から構成されている、半導体装置。
【請求項11】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記フィールドプレート部は、単結晶半導体膜から構成されている、半導体装置。
【請求項12】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記ソース領域に第1電位が供給され、かつ、前記ドレイン領域に前記第1電位よりも高い第2電位が供給される場合、前記フィールドプレート部は、空乏化する領域を含む、半導体装置。
【請求項13】
請求項に記載に半導体装置において、
前記ソース領域に第1電位が供給され、かつ、前記ドレイン領域に前記第1電位よりも高い第2電位が供給される場合、前記第1低濃度半導体領域は、空乏化する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、横方向拡散MOSFET(LDMOSFET:Lateral Defused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を含む半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、LDMOSFETの高性能化に関する研究が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】著者:三好智之,東北大学研究論文「高耐圧集積回路向け横型拡散MOSFETの高性能化に関する研究」,東北大学機関リポジトリ,学位授与番号「11301甲第16629号」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LDMOSFETにおいては、高耐圧化とオン抵抗低減とが互いにトレードオフの関係にある。例えば、LDMOSFETの高耐圧化を図るためには、ドリフト層の不純物濃度を低くする必要がある。ところが、ドリフト層の不純物濃度を低くすると、オン抵抗が増加する。逆に、オン抵抗を低減するために、ドリフト層の不純物濃度を高くすると、ソース領域とドレイン領域との間において空乏層が延びにくくなる。この結果、ソース領域近傍のドリフト層において、等電位線の間隔が狭くなって電界強度が増加してしまい、LDMOSFETの耐圧が低下する。したがって、互いにトレードオフの関係にある高耐圧化とオン抵抗低減を両立させるための工夫が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施の形態における半導体装置には、第1導電型とは異なる第2導電型の第1半導体領域と、第1導電型の第2半導体領域とを有するフィールドプレート部が設けられている。そして、第1半導体領域は、ソース領域と電気的に接続されている一方、第2半導体領域は、ドレイン領域と電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0006】
一実施の形態によれば、半導体装置の性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態における半導体装置のデバイス構造を説明する断面図である。
図2】半導体装置の平面レイアウト構成を模式的に示す図である。
図3】耐圧と規格化オン抵抗との関係を示す両対数グラフである。
図4】実施の形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図5図4に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図6図5に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図7図6に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図8図7に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図9】実施の形態における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図10図9に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図11図10に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図12図11に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図13図12に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図14図13に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図15図14に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図16図15に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図17図16に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図18図17に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図19図18に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
図20】耐圧向上に対する工夫を施したLDMOSFETの構造部位を模式的に示す図であり、具体的には、フィールドプレート部において、耐圧向上のための工夫を施した構造部位を示す模式図である。
図21】(a)は、第1工夫点を採用しない構成において等電位線分布が密となることを説明する模式図であり、(b)は、第1工夫点を採用する構成によって等電位線分布が密となりにくくなることを説明する模式図である。
図22】(a)は、第2工夫点を採用しない構成において等電位線分布が密となることを説明する模式図であり、(b)は、第2工夫点を採用する構成によって等電位線分布が密となりにくくなることを説明する模式図である。
図23】絶縁膜の膜厚とLDMOSFETの耐圧)との関係を示すグラフである。
図24】絶縁膜における等電位線分布を模式的に示す図である。
図25】絶縁膜が薄い場合の等電位線分布を模式的に示す図である。
図26】絶縁膜が厚い場合の等電位線分布を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0009】
<関連技術の説明>
本明細書でいう関連技術とは、公知技術ではないが、本発明者が見出した課題を有する技術であって、本願発明の前提となる技術である。
【0010】
例えば、LDMOSFETのデバイス構造として、ソース領域とドレイン領域との間の耐圧を確保するために、ソース領域とドレイン領域との間にドレイン領域よりも低濃度のドリフト層を設ける技術がある。そして、このデバイス構造を前提として、ドリフト層の表面に厚い(200nm程度)のLOCOS構造を設けることによって耐圧を確保する技術がある。本明細書では、この技術を第1関連技術と呼ぶことにする。また、ドリフト層に溝を設けて、この溝に絶縁膜を埋め込んだSTI構造によって耐圧を確保する技術がある。本明細書では、この技術を第2関連技術と呼ぶことにする。このような第1関連技術および第2関連技術の根底にある思想は、LOCOS構造やSTI構造を構成する絶縁膜で電界を緩和させて耐圧の向上を図るという思想であり、この思想を実現するためには、LOCOS構造やSTI構造を構成する絶縁膜の膜厚を厚くする必要がある。したがって、第1関連技術および第2関連技術では、LDMOSFETの製造コストが上昇する。
【0011】
ただし、それよりも重要な点は、ドリフト層にLOCOS構造やSTI構造を設けることによって耐圧の向上を図る思想は、互いにトレードオフの関係にある耐圧向上とオン抵抗低減とをバランス良く両立するためには不充分であるということである。すなわち、本発明者は、LDMOSFETの性能向上を図るためには、上述した第1関連技術や第2関連技術の根底にある思想から脱却しなければならないことを新規な知見として獲得している。このように、互いにトレードオフの関係にある耐圧向上とオン抵抗低減とをバランス良く両立するためには、第1関連技術や第2関連技術に根底にある思想とはまったく異なる斬新な思想が必要とされている。そこで、本発明者は、鋭意検討した結果、斬新な基本思想によって、互いにトレードオフの関係にある耐圧向上とオン抵抗低減とをバランス良く両立できることを見出したので、この点について説明する。
【0012】
<実施の形態における基本思想>
本実施の形態における基本思想は、例えば、LOCOS構造やSTI構造のように厚い絶縁膜によって電界緩和を図る思想ではなく、ドリフト層の上方に設けられたフィールドプレート部を利用することによって、たとえドリフト層の不純物濃度を多少高くしても、ドリフト層内の等電位線に密となる領域が形成されないようにする思想である。すなわち、本実施の形態における基本思想は、フィールドプレート部に密となる領域がないような均一な等電位線分布を形成することによって、この均一な等電位線分布に滑らかに接続される等電位線分布がドリフト層内に誘発されることを利用する思想である。これにより、基本思想によれば、たとえドリフト層の不純物濃度を多少高くしても、ドリフト層に等電位線が密となる領域が形成されることを抑制できることから、耐圧を確保できる。つまり、本実施の形態における基本思想によれば、互いにトレードオフの関係にある耐圧向上とオン抵抗低減とをバランス良く両立することができる。
【0013】
特に、本実施の形態における基本思想では、フィールドプレート部に幅の広い空乏層を形成するによって、密となる領域がないような均一な等電位線分布をフィールドプレート部の空乏層内に形成し、この均一な等電位分布に滑らかに接続される等電位線分布がドリフト層内に形成された空乏層に誘発されるというメカニズムを利用している。
【0014】
このメカニズムで重要な点は、フィールドプレート部とドリフト層とのチャージバランスである。なぜなら、フィールドプレート部とドリフト層とのチャージバランスを適切に設定することによって、密となる領域がないような均一な等電位線分布をフィールドプレート部の空乏層内に形成し、この均一な等電位分布に滑らかに接続される等電位線分布がドリフト層内に形成された空乏層に誘発されるようにできるからである。
【0015】
したがって、本実施の形態における基本思想は、ドリフト層とドリフト層の上方に設けられたフィールドプレート部とのチャージバランスで電界緩和を図る思想ということができる。すなわち、基本思想は、ドリフト層とフィールドプレート部とのチャージバランスを適切に設定することによって、互いにトレードオフの関係にある耐圧向上とオン抵抗低減とをバランス良く両立するという思想である。以下では、このようなメカニズムに基づく基本思想を具現化した具体的態様について説明する。
【0016】
<LDMOSFETのデバイス構造>
図1は、本実施の形態における半導体装置のデバイス構造を説明する断面図である。
【0017】
図1において、半導体基板1には、素子分離領域10が形成されており、この素子分離領域10で囲まれた活性領域(アクティブ領域)にLDMOSFETが形成されている。LDMOSFETは、半導体基板1に形成されたn型半導体層であるドリフト層11と、このドリフト層11と接するp型半導体領域であるp型ボディ領域12を有している。
【0018】
そして、半導体基板1上には、ゲート絶縁膜13を介して、ゲート電極14が形成されている。また、半導体基板1上には、絶縁膜15を介してフィールドプレート部16が形成されている。このフィールドプレート部16は、半導体領域から構成されており、高濃度p型半導体領域17と、高濃度p型半導体領域17よりも不純物濃度の低い低濃度p型半導体領域18と、高濃度n型半導体領域19から構成されている。そして、低濃度p型半導体領域18は、高濃度p型半導体領域17と高濃度n型半導体領域19との間に挟まれるように配置されている。したがって、フィールドプレート部16は、低濃度p型半導体領域18と高濃度n型半導体領域19との接合面に形成されたpn接合を有していることになる。ここで、ゲート電極14は、例えば、n型半導体膜であるn型ポリシリコン膜から構成されており、フィールドプレート部16の不純物濃度は、ゲート電極14の不純物濃度よりも低くなっている。フィールドプレート部16は、例えば、アモルファスシリコン膜に代表されるアモルファス半導体膜や、単結晶シリコン膜に代表される単結晶半導体膜から構成される。
【0019】
なお、絶縁膜15の膜厚は、ゲート絶縁膜13の膜厚よりも厚い。例えば、絶縁膜15の膜厚は、ゲート絶縁膜13の膜厚の2倍程度である。ただし、絶縁膜15の膜厚は、必ずしもゲート絶縁膜13の膜厚よりも厚い必要はなく、例えば、絶縁膜15の膜厚は、ゲート絶縁膜13の膜厚と等しくてもよい。
【0020】
また、ドリフト層11には、高濃度n型半導体領域からなるドレイン領域20が形成されている。一方、p型ボディ領域12には、高濃度n型半導体領域からなるソース領域21と、高濃度p型半導体領域からなるp型ボディコンタクト領域22が形成されている。
【0021】
このように構成されているLDMOSFETを覆うように層間絶縁膜23が形成されており、この層間絶縁膜23には、層間絶縁膜23を貫通する複数のプラグ24が形成されている。複数のプラグ24には、p型ボディコンタクト領域22と電気的に接続される「プラグ24A」、ソース領域21と電気的に接続される「プラグ24B」、フィールドプレート部16の高濃度p型半導体領域17と電気的に接続される「プラグ24C」、フィールドプレート部16の高濃度n型半導体領域19と電気的に接続される「プラグ24D」およびドレイン領域20と電気的に接続される「プラグ24E」が含まれる。
【0022】
そして、図1に示すように、複数のプラグ24が形成された層間絶縁膜23上には、配線25Aおよび配線25Bが形成されている。配線25Aは、「プラグ24A」、「プラグ24B」および「プラグ24C」と接続されている。一方、配線25Bは、「プラグ24D」および「プラグ24E」と電気的に接続されている。
【0023】
したがって、図1に示すように、フィールドプレート部16の高濃度p型半導体領域17は、ソース領域21およびp型ボディコンタクト領域22と電気的に接続されていることになる。一方、フィールドプレート部16の高濃度n型半導体領域19は、ドレイン領域20と電気的に接続されていることになる。
【0024】
ここで、ソース領域21およびp型ボディコンタクト領域22には、例えば、グランド電位(0V)が印加される。したがって、フィールドプレート部16の高濃度p型半導体領域17および高濃度p型半導体領域17と電気的に接続されている低濃度p型半導体領域18には、「0V」が印加される。これに対し、ドレイン領域20には、例えば、80V以上の正電位が印加される。したがって、フィールドプレート部16の高濃度n型半導体領域19には、「80V以上の正電位」が印加される。
【0025】
このとき、ソース領域21に「0V」(第1電位)が供給され、かつ、ドレイン領域20に「0V」よりも高い正電位(第2電位)が供給される場合、フィールドプレート部16は、空乏化する領域を含む。詳細には、低濃度p型半導体領域18は空乏化する。
【0026】
<LDMOSFETの動作>
続いて、図1を参照しながら、LDMOSFETの動作について説明する。
【0027】
まず、LDMOSFETのオン動作を説明する。図1において、例えば、ソース領域21に「0V」を印加するとともにドレイン領域20に「80V以上の正電位」を印加した状態で、ゲート電極14にしきい値電圧以上のゲート電圧を印加する。これにより、ゲート絶縁膜13を介してゲート電極14の下方に位置するp型ボディ領域12の表面にn型反転層からなるチャネルが形成される。これにより、電子は、ソース領域21→チャネル(n型反転層)→ドリフト層11→ドレイン領域20の経路で流れる。言い換えれば、上述した経路の反対経路で電流が流れる。これにより、LDMOSFETがオンする。
【0028】
次に、LDMOSFETのオフ動作について説明する。図1において、LDMOSFETに電流が流れている状態で、ゲート電極14にしきい値電圧よりも小さなゲート電圧を印加する。この結果、p型ボディ領域12の表面に形成されているチャネル(n型反転層)が消滅する。これにより、ソース領域21からドレイン領域20に電子が流れる経路が遮断される結果、LDMOSFETはオフする。このとき、ソース領域21とp型ボディコンタクト領域22とp型ボディ領域12とが電気的に接続されていることから、p型ボディ領域12にも「0V」が印加されている。一方、ドリフト層11はドレイン領域20と電気的に接続されていることから、ドリフト層11には「80V以上の正電位」が印加される。このことは、p型ボディ領域12とドリフト層11の境界面に形成されているpn接合に逆バイアスが印加されることを意味する。この結果、pn接合面からp型ボディ領域12とドリフト層11の両方に空乏層が延びて、この空乏層によってソース領域21とドレイン領域20との間の耐圧が確保される。
【0029】
ただし、オン抵抗を低減するためにドリフト層11の不純物濃度を高くしていると、空乏層の延びが抑制されて、空乏層内の電界強度が高くなる結果、耐圧を確保することが困難となる。だからといって、ドリフト層11の不純物濃度を低くすると、LDMOSFETをオン動作させた際のオン抵抗の増加が顕在化する。
【0030】
この点に関し、本実施の形態では、互いにトレードオフの関係にある耐圧向上とオン抵抗低減とを高次元で両立するために上述した基本思想を採用している。具体的に、図1に示すように、フィールドプレート部16の高濃度p型半導体領域17は、ソース領域21と電気的に接続されている。一方、フィールドプレート部16の高濃度n型半導体領域19は、ドレイン領域と電気的に接続されている。このことは、フィールドプレート部16において、低濃度p型半導体領域18と高濃度n型半導体領域19との接合面に形成されているpn接合に逆バイアスが印加されることを意味する。この結果、低濃度p型半導体領域18内に幅の広い空乏層が形成される。これにより、上述した基本思想で説明したように、密となる領域がないような均一な等電位線分布をフィールドプレート部の空乏層内に形成することができ、これによって、均一な等電位分布に滑らかに接続される等電位線分布がドリフト層内に形成された空乏層に誘発される。したがって、たとえドリフト層11の不純物濃度を多少高くしても、ドリフト層11に等電位線が密となる領域が形成されることを抑制できることから、耐圧を確保できる。つまり、本実施の形態における基本思想をLDMOSFETのデバイス構造に適用すると、互いにトレードオフの関係にある耐圧向上とオン抵抗低減とをバランス良く両立することができることになる。
【0031】
<平面レイアウト構成>
図2は、半導体装置の平面レイアウト構成を模式的に示す図である。
【0032】
図2のA-A線での断面図が図1に相当する。図2において、図1と同じ符号の構成要素は、図1に示す構成要素に対応する。
【0033】
図2に示すように、平面視において、配線25Aは、「プラグ24C」から配線25B側にはみ出た「第1はみ出し部位」を含む。同様に、平面視において、配線25Bは、「プラグ24D」から配線25A側にはみ出た「第2はみ出し部位」を含む。
【0034】
ここで、図1および図2に示す「第1はみ出し部位」の幅L1は、「0」よりも大きい。これにより、高濃度p型半導体領域17の端部における電界緩和を図ることができる。同様に、図1および図2に示す「第2はみ出し部位」の幅L2も、「0」よりも大きい。これにより、高濃度n型半導体領域19の端部における電界緩和を図ることができる。
【0035】
高濃度p型半導体領域17の端部における電界緩和を図る観点からは、「第1はみ出し部」の幅L1は大きいことが望ましく、高濃度n型半導体領域19の端部における電界緩和を図る観点からは、「第2はみ出し部」の幅L2も大きいことが望ましい。ただし、幅L1および幅L2を大きくしすぎると、配線25Aと配線25Bとの間隔が狭くなる結果、配線25Aと配線25Bの間に形成される等電位線の間隔が狭くなって、半導体装置の耐圧が低下する。このことから、例えば、「第1はみ出し部」の幅L1および「第2はみ出し部」の幅L2は、それぞれ、0.4μm以上1.0μm以下であることが望ましい。
【0036】
<本実施の形態における特徴>
次に、本実施の形態における特徴点について説明する。
【0037】
本実施の形態における特徴点は、例えば、図1において、ソース領域21とドレイン領域20との間に電位差を設けた状態において、ドリフト層11の上方に設けられたフィールドプレート部16に幅の広い空乏層が形成されるようにLDMOSFETを構成する点にある。具体的には、図1に示すように、フィールドプレート部16を高濃度p型半導体領域17と低濃度p型半導体領域18と高濃度n型半導体領域19から構成し、低濃度p型半導体領域18を高濃度p型半導体領域17と高濃度n型半導体領域19で挟む。そして、高濃度p型半導体領域17とソース領域21とを電気的に接続するとともに、高濃度n型半導体領域19とドレイン領域20とを電気的に接続する。これにより、低濃度p型半導体領域18と高濃度n型半導体領域19によって形成されるpn接合に逆バイアスが加わることによって、低濃度p型半導体領域18が空乏化する。
【0038】
これにより、密となる領域がないような均一な等電位線分布をフィールドプレート部16の空乏層内に形成することができる結果、この均一な等電位分布に滑らかに接続される等電位線分布がドリフト層11内に形成された空乏層に誘発される。したがって、たとえドリフト層11の不純物濃度を多少高くしても、ドリフト層11に等電位線が密となる領域が形成されることを抑制できることから、耐圧を確保できる。つまり、本実施の形態における特徴点によれば、互いにトレードオフの関係にある耐圧向上とオン抵抗低減とをバランス良く両立することができる。
【0039】
特に、本実施の形態では、図1において、フィールドプレート部16における空乏層の延びる方向と、ドリフト層11における空乏層の延びる方向が逆方向であることか重要である。つまり、フィールドプレート部16では、低濃度p型半導体領域18と高濃度n型半導体領域19の接合面から低濃度p型半導体領域18の内部に向かう方向(図1の左方向)に空乏層が延びる。一方、ドリフト層11では、ドリフト層11とp型ボディ領域12との接合面からドリフト層11の内部に向かう方向(図1の右方向)に空乏層が延びる。これにより、フィールドプレート部16に形成された空乏層内の等電位線と、ドリフト層11に形成された空乏層内の等電位線とが滑らかに接続されやすくなる。すなわち、逆方向に空乏層が延びる構成によって、フィールドプレート部16に形成された空乏層内の均一な等電位線分布によって、等電位線が密となる領域が形成されないように滑らかに接続される等電位線分布がドリフト層11に誘発されやすくなるのである。
【0040】
さらに、フィールドプレート部16に形成される空乏層内の等電位線分布を均一にすることが重要であり、この観点から、フィールドプレート部16は、多結晶シリコン膜に代表される多結晶半導体膜よりも、アモルファスシリコン膜に代表されるアモルファス半導体膜や単結晶シリコン膜に代表される単結晶半導体膜から構成することが望ましい。なぜなら、多結晶半導体膜は、サイズの不均一な粒界が存在することから、均一に空乏化を進行させることが難しく、このことは、空乏層内に均一な等電位線分布を生じさせることが困難になることを意味するからである。
【0041】
続いて、本実施の形態におけるLDMOSFETの優位性を裏付けるシミュレーション結果について説明する。図3は、耐圧(BVDSS)と規格化オン抵抗(相対値)との関係を示す両対数グラフである。図3において、「グラフA」は、第1関連技術を表すグラフであり、「グラフB」は、第2関連技術を表すグラフである。一方、「グラフC」は、本実施の形態を表すグラフである。
【0042】
例えば、LDMOSFETは、電力を制御するトランジスタとして使用される。この場合、ソース領域とドレイン領域との間の耐圧を向上させるとともに、オン抵抗を低くすることも重要である。この点に関し、図3に示すように、第1関連技術や第2関連技術では、80Vを超える耐圧領域において、ソース領域とドレイン領域との間の耐圧とオン抵抗とのトレードオフの関係が80Vよりも小さい低耐圧の傾きとは異なり、耐圧向上とオン抵抗低減との両立を図ることがさらに難しくなることがわかる。
【0043】
これに対し、図3に示すように、本実施の形態では、耐圧を維持しながら、90Vを超える耐圧領域においても、オン抵抗を低減できる顕著な効果が得られることがわかる。具体的に、本実施の形態によれば、90Vの耐圧を得ながら、第2関連技術よりも約20%のオン抵抗を低減する効果が得られる。このように、本実施の形態におけるLDMOSFETによれば、耐圧向上とオン抵抗低減とを高次元で両立することができる点で非常に優れているということができる。
【0044】
続いて、本実施の形態におけるさらなる利点について説明する。
【0045】
例えば、第1関連技術や第2関連技術は、LOCOS構造やSTI構造のようにフィールドプレート部の下方に配置されている絶縁膜で電界緩和させることにより耐圧を向上させる技術であることから、絶縁膜の膜厚を厚くする必要がある。このことは、LDMOSFETを含む半導体装置の製造コストが上昇することを意味する。
【0046】
これに対し、本実施の形態では、フィールドプレート部16の空乏層内に形成される均一な等電位線分布に基づいて、ドリフト層11の空乏層内に形成される等電位線分布に密な領域が形成されないようにする技術的思想である。別の表現をすると、本実施の形態における技術的思想は、フィールドプレート部16とドリフト層11のチャージバランスによって電界緩和を図る思想ということができる。このことから、本実施の形態では、極端に厚い絶縁膜を必要とせず、例えば、ゲート絶縁膜13程度の膜厚の絶縁膜を使用してもよい。このことは、本実施の形態における技術的思想が具現化されたLDMOSFETによれば、製造コストを削減できることを意味する。つまり、本実施の形態によれば、耐圧向上とオン抵抗低減の両立を図ることができるという性能面からの利点だけでなく、製造コストを削減する面からの利点も得られる点で非常に優れているということができる。
【0047】
さらに、本実施の形態では、フィールドプレート部16とドリフト層11のチャージバランスを取って空乏化しやすくしていることから、ドレイン領域20に印加されるドレイン電圧が低くても空乏化を早く生じさせることができる。したがって、ゲート電極14とドレイン領域20との間の帰還容量(Crss)を小さくすることができる。帰還容量が大きくなるほどスイッチング速度が遅くなるとともに、スイッチング損失も大きくなることから、帰還容量を小さくできる本実施の形態におけるLDMOSFETによれば、電力ロスおよび誤ターンオンのリスクを低減できる利点も得られる。
【0048】
<半導体装置の製造方法>
次に、本実施の形態における半導体装置の製造方法について説明する。
【0049】
ここで、上述したように、フィールドプレート部16に形成される空乏層に均一な等電位線分布を生じさせる観点から、フィールドプレート部16は、多結晶半導体膜よりもアモルファス半導体膜や単結晶半導体膜から構成することが望ましい。
【0050】
そこで、「半導体装置の第1製造方法」として、フィールドプレート部16をアモルファスシリコン膜から構成する半導体装置の製造方法を説明する一方、「半導体装置の第2製造方法」として、フィールドプレート部16を単結晶シリコン膜から構成する半導体装置の製造方法を説明することにする。
【0051】
<<半導体装置の第1製造方法>>
まず、図4に示すように、半導体基板1に素子分離領域10を形成した後、例えば、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、半導体基板1の内部にドリフト層11とp型ボディ領域12を形成する。ドリフト層11は、半導体基板1にn型不純物(ドナー)であるリンを導入することにより形成される。一方、p型ボディ領域12は、半導体基板1にp型不純物(アクセプタ)であるボロンを導入することにより形成される。その後、例えば、熱酸化法を使用することにより、半導体基板1の表面の第1領域に酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜13を形成し、半導体基板1の表面の第2領域に酸化シリコン膜からなる絶縁膜15を形成する。この絶縁膜15は、例えば、ゲート絶縁膜13よりも膜厚が厚くなるように形成される。
【0052】
次に、図5に示すように、例えば、CVD法(Chemical Vapor Deposition)を使用することにより、ゲート絶縁膜13上および絶縁膜15上にアモルファスシリコン膜30を形成する。そして、イオン注入法を使用することにより、アモルファスシリコン膜30にp型不純物であるボロンを導入する。
【0053】
続いて、図6に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、半導体基板1の第1領域に形成されているアモルファスシリコン膜30にn型不純物であるリンを導入する。このとき、アモルファスシリコン膜30のうち、n型不純物であるリンを導入した領域においては、アモルファスシリコン膜30をポリシリコン化してもよい。このようにして、第1領域に形成されているアモルファスシリコン膜30は、n型アモルファスシリコン膜またはn型ポリシリコン膜となる一方、第2領域に形成されているアモルファスシリコン膜30は、p型アモルファスシリコン膜となる。
【0054】
そして、図7に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、アモルファスシリコン膜30をパターニングする。これにより、ゲート絶縁膜13上にゲート電極14を形成することができるとともに、絶縁膜15上にフィールドプレート部16を形成することができる。この段階において、フィールドプレート部16は、低濃度p型半導体領域18から構成されている。
【0055】
次に、図8に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、フィールドプレート部16に高濃度p型半導体領域17と高濃度n型半導体領域19を形成する。高濃度p型半導体領域17は、フィールドプレート部16にp型不純物であるボロンを導入することにより形成することができる。一方、高濃度n型半導体領域19は、フィールドプレート部16にn型不純物であるリンを導入することにより形成することができる。この結果、フィールドプレート部16は、高濃度p型半導体領域17と低濃度p型半導体領域18と高濃度n型半導体領域19から構成されることになる。
【0056】
その後、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、ドリフト層11にドレイン領域20を形成するとともに、p型ボディ領域12にソース領域21およびp型ボディコンタクト領域22を形成する。ドレイン領域20およびソース領域21は、n型不純物であるリンを導入することにより形成できる。一方、p型ボディコンタクト領域22は、p型不純物であるボロンを導入することにより形成できる。
【0057】
このようにして、LDMOSFETを形成した後、配線工程を実施する。具体的には、図1に示すように、LDMOSFETを覆うように層間絶縁膜23を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜23に複数のコンタクトホールを形成した後、複数のコンタクトホールのそれぞれに導体膜を埋め込むことにより複数のプラグ24を形成する。続いて、複数のプラグ24を形成した層間絶縁膜23上に配線25Aおよび配線25Bを形成する。
【0058】
ここで、図1に示すように、プラグ24A~プラグ24Cおよび配線25Aによって、フィールドプレート部16の高濃度p型半導体領域17は、ソース領域21およびp型ボディコンタクト領域22と電気的に接続される。一方、プラグ24D~プラグ24Eおよび配線25Bによって、フィールドプレート部16の高濃度n型半導体領域19は、ドレイン領域20と電気的に接続される。以上のようにして、本実施の形態におけるフィールドプレート構造を有するLDMOSFETを製造することができる。
【0059】
<<半導体装置の第2製造方法>>
まず、図9に示すように、支持基板40と支持基板40上に形成された絶縁膜15と絶縁膜15上に形成された単結晶シリコン層50とを有するSOI基板1Aを用意する。
【0060】
次に、図10に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、SOI基板1Aに素子分離溝60を形成する。
【0061】
そして、図11に示すように、素子分離溝60に絶縁膜を埋め込むことにより、SOI基板1Aに素子分離領域10を形成する。
【0062】
続いて、図12に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、SOI基板1Aの内部にドリフト層11とp型ボディ領域12を形成する。ドリフト層11は、SOI基板1Aにn型不純物(ドナー)であるリンを導入することにより形成される。一方、p型ボディ領域12は、SOI基板1Aにp型不純物(アクセプタ)であるボロンを導入することにより形成される。
【0063】
その後、図13に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、単結晶シリコン層50にp型不純物であるボロンを導入する。
【0064】
次に、図14に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、素子分離領域10の表面をリセスする。その後、図15に示すように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、単結晶シリコン層50をパターニングする。これにより、絶縁膜15上にフィールドプレート部16を形成することができる。この段階において、フィールドプレート部16は、低濃度p型半導体領域18から構成されている。
【0065】
続いて、例えば、エッチバック技術を使用することにより、図16に示すように、フィールドプレート部16から露出する絶縁膜15を除去する。そして、図17に示すように、例えば、熱酸化法を使用して、絶縁膜15を除去した領域にゲート絶縁膜13を形成する。さらに、例えば、CVD法を使用することにより、SOI基板1Aを覆うように、ポリシリコン膜を形成し、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、ポリシリコン膜をパターニングする。これにより、ゲート絶縁膜13上にゲート電極14を形成することができる。
【0066】
次に、図18に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、フィールドプレート部16に高濃度p型半導体領域17と高濃度n型半導体領域19を形成する。高濃度p型半導体領域17は、フィールドプレート部16にp型不純物であるボロンを導入することにより形成することができる。一方、高濃度n型半導体領域19は、フィールドプレート部16にn型不純物であるリンを導入することにより形成することができる。この結果、フィールドプレート部16は、高濃度p型半導体領域17と低濃度p型半導体領域18と高濃度n型半導体領域19から構成されることになる。
【0067】
その後、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、ドリフト層11にドレイン領域20を形成するとともに、p型ボディ領域12にソース領域21およびp型ボディコンタクト領域22を形成する。ドレイン領域20およびソース領域21は、n型不純物であるリンを導入することにより形成できる。一方、p型ボディコンタクト領域22は、p型不純物であるボロンを導入することにより形成できる。
【0068】
このようにして、LDMOSFETを形成した後、配線工程を実施する。具体的には、図19に示すように、LDMOSFETを覆うように層間絶縁膜23を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜23に複数のコンタクトホールを形成した後、複数のコンタクトホールのそれぞれに導体膜を埋め込むことにより複数のプラグ24を形成する。続いて、複数のプラグ24を形成した層間絶縁膜23上に配線25Aおよび配線25Bを形成する。
【0069】
ここで、図19に示すように、プラグ24A~プラグ24Cおよび配線25Aによって、フィールドプレート部16の高濃度p型半導体領域17は、ソース領域21およびp型ボディコンタクト領域22と電気的に接続される。一方、プラグ24D~プラグ24Eおよび配線25Bによって、フィールドプレート部16の高濃度n型半導体領域19は、ドレイン領域20と電気的に接続される。以上のようにして、本実施の形態におけるフィールドプレート構造を有するLDMOSFETを製造することができる。
【0070】
<耐圧を向上させるためのさらなる工夫>
本発明者は、LDMOSFETのさらなる耐圧向上を図るため、鋭意検討した結果、以下に示すように、等電位線分布に密となる領域が形成されにくくするための複数の工夫点を想到したので、これらの工夫点について説明する。
【0071】
図20は、耐圧向上に対する工夫を施したLDMOSFETの構造部位を模式的に示す図であり、具体的には、フィールドプレート部16において、耐圧向上のための工夫を施した構造部位を示す模式図である。
【0072】
図20において、「丸印A」で囲んだ高濃度p型半導体領域17に関する工夫点が「第1工夫点」であり、「丸印B」で囲んだ高濃度n型半導体領域19に関する工夫点が「第2工夫点」である。さらに、「丸印C」で囲んだ絶縁膜15に関する工夫点が「第3工夫点」である。以下では、上述した3つの工夫点のそれぞれについて説明する。
【0073】
<<第1工夫点>>
図20において、第1工夫点は、フィールドプレート部16の低濃度p型半導体領域18が絶縁膜15と接している一方、高濃度p型半導体領域17の底部と絶縁膜15との間には、低濃度p型半導体領域18の一部が介在する点にある。言い換えれば、第1工夫点は、高濃度p型半導体領域17の厚さは、フィールドプレート部16の厚さよりも小さく、かつ、高濃度p型半導体領域17は絶縁膜15と接していない点にある。
【0074】
これにより、フィールドプレート部16のソース端側(左側)で等電位線分布に密となる領域が形成されにくくなるため、LDMOSFETの耐圧を向上することができる。
【0075】
以下に、この定性的な理由について説明する。
【0076】
図21は、第1工夫点によれば、等電位線分布に密となる領域が形成されにくくなることを説明する図である。特に、図21(a)は、第1工夫点を採用しない構成において等電位線分布が密となることを説明する模式図であり、図21(b)は、第1工夫点を採用する構成によって等電位線分布が密となりにくくなることを説明する模式図である。
【0077】
具体的に、図21(a)では、高濃度p型半導体領域17が絶縁膜15にまで届いている。この場合、高濃度p型半導体領域17の不純物濃度が高く、高濃度p型半導体領域17に等電位線が入り込まないことを考慮すると、太線で示す等電位線分布は密になる。すなわち、図21(a)では、等電位線間隔が狭くなる結果、電界集中が生じて、LDMOSFETの耐圧が低下しやすくなる。
【0078】
これに対し、図21(b)では、、高濃度p型半導体領域17が絶縁膜15にまで届いていない。この場合、高濃度p型半導体領域17の不純物濃度が高く、高濃度p型半導体領域17に等電位線が入り込まないことを考慮すると、太線で示す等電位線分布は、図21(a)に比べて密になりにくくなる。すなわち、図21(b)では、等電位線間隔が広くなる結果、電界集中が抑制されて、LDMOSFETの耐圧を向上できる。
【0079】
このように、図21(a)および図21(b)に示すように、第1工夫点によれば、等電位線分布に密となる領域が形成されにくくなる結果、LDMOSFETの耐圧を向上することができることがわかる。
【0080】
<<第2工夫点>>
図20において、第2工夫点は、フィールドプレート部16の低濃度p型半導体領域18が絶縁膜15と接しているとともに、高濃度n型半導体領域19の底部も絶縁膜15と接している点にある。言い換えれば、第2工夫点は、高濃度n型半導体領域19の厚さは、フィールドプレート部16の厚さと等しく、かつ、高濃度n型半導体領域19は絶縁膜15にまで届いている点にある。
【0081】
これにより、フィールドプレート部16のドレイン端側(右側)で等電位線分布に密となる領域が形成されにくくなるため、LDMOSFETの耐圧を向上することができる。
【0082】
以下に、この定性的な理由について説明する。
【0083】
例えば、上述した第1工夫点によって、ソース端側の等電位線分布に密となる領域が形成されにくくなることを考慮すると、ドレイン端側においても、第1工夫点と同様の構成を採用することによって、フィールドプレート部16のドレイン端側で等電位線分布に密となる領域が形成されにくくなり、LDMOSFETの耐圧を向上することができるのではないかと考えることができる。
【0084】
ところが、フィールドプレート部16のドレイン端側では、高濃度n型半導体領域19の下方に高濃度n型半導体領域から構成されるドレイン領域20が存在することに起因して、第1工夫点ではなく、上述した第2工夫点を採用したほうがフィールドプレート部16のドレイン端側で等電位線分布に密となる領域が形成されにくくなり、LDMOSFETの耐圧を向上することができるのである。
【0085】
以下に、この定性的な理由について説明する。
【0086】
図22は、第2工夫点によれば、等電位線分布に密となる領域が形成されにくくなることを説明する図である。特に、図22(a)は、第2工夫点を採用しない構成において等電位線分布が密となることを説明する模式図であり、図22(b)は、第2工夫点を採用する構成によって等電位線分布が密となりにくくなることを説明する模式図である。
【0087】
具体的に、図22(a)では、高濃度n型半導体領域19が絶縁膜15にまで届いていない。この場合、高濃度n型半導体領域19の不純物濃度およびドレイン領域20の不純物濃度が高く、高濃度n型半導体領域19およびドレイン領域20に等電位線が入り込まないことを考慮すると、等電位線分布は屈曲する。これにより、高濃度n型半導体領域19とドレイン領域20の間に等電位線が入り込んで、等電位線分布に密となる領域が形成される。この結果、電界集中が生じて、LDMOSFETの耐圧が低下しやすくなる。
【0088】
これに対し、図22(b)では、高濃度n型半導体領域19が絶縁膜15にまで届いている。この場合、高濃度n型半導体領域19とドレイン領域20との間に等電位線が入り込まないため、等電位線分布は、図22(a)に比べて密になりにくくなる。すなわち、図22(b)では、高濃度n型半導体領域19とドレイン領域20の間に等電位線が入り込まない結果、等電位線分布に密となる領域が形成されないことから、電界集中が抑制されて、LDMOSFETの耐圧を向上できる。
【0089】
このように、図22(a)および図22(b)に示すように、第2工夫点によれば、等電位線分布に密となる領域が形成されにくくなる結果、LDMOSFETの耐圧を向上することができることがわかる。
【0090】
<<第3工夫点>>
図23は、絶縁膜15の膜厚(TOX)とLDMOSFETの耐圧(BVDSS)との関係を示すグラフである。ゲート絶縁膜13の膜厚は、例えば、25nmであり、この場合、図23に示すように、絶縁膜15の膜厚がゲート絶縁膜よりも厚い50nm程度であると、耐圧を向上する観点から最適であることがわかる。例えば、ゲート絶縁膜13は、チャネル抵抗を低減する観点から薄い方が望ましいことため、ゲート絶縁膜13の膜厚<絶縁膜15の膜厚の関係を満たすことが耐圧向上とオン抵抗低減とを両立するために有利であることがわかる。具体的には、絶縁膜15の膜厚をゲート絶縁膜13の膜厚の2倍程度に設定することが、互いにトレードオフの関係にある耐圧向上とオン抵抗低減とを高次元で両立させるために有用であることがわかる。
【0091】
ここで、図23に示すグラフから、絶縁膜15の膜厚は薄すぎても耐圧が低下する一方、絶縁膜15の膜厚が厚すぎても耐圧が低下する理由について説明する。
【0092】
図24は、絶縁膜15における等電位線分布を模式的に示す図である。図24に示すように、絶縁膜15の内部において、等電位線は、傾斜した直線となる。このことを前提として、図25および図26を使用して、絶縁膜15の膜厚は薄すぎても耐圧が低下する一方、絶縁膜15の膜厚が厚すぎても耐圧が低下する理由を説明する。
【0093】
図25は、絶縁膜15が薄い場合の等電位線分布を模式的に示す図である。図25から定性的に、絶縁膜15の膜厚が薄くなると、等電位線分布がソース側にシフトする結果、ソース側において等電位線が密となって、電界集中が起こりやすくなることがわかる。すなわち、絶縁膜15の膜厚が薄すぎると、ソース側に電界集中が生じやすくなり、この電界集中に起因する耐圧低下が顕在化するのである。
【0094】
これに対し、図26は、絶縁膜15が厚い場合の等電位線分布を模式的に示す図である。図26から定性的に、絶縁膜15の膜厚が厚くなると、等電位線分布がドレイン側にシフトする結果、ドレイン側において等電位線が密となって、電界集中が起こりやすくなることがわかる。すなわち、絶縁膜15の膜厚が厚すぎると、ドレイン側に電界集中が生じやすくなり、この電界集中に起因する耐圧低下が顕在化するのである。
【0095】
以上のことから、絶縁膜15の膜厚が薄すぎても耐圧低下が生じるとともに、絶縁膜15の膜厚が厚すぎても耐圧低下が生じることが理解される。これにより、図23に示すグラフの特性を理解することができる。したがって、絶縁膜15の膜厚は、耐圧を向上させる観点から、薄すぎないとともに厚すぎないことが望ましいことがわかる。上述したように、絶縁膜15の膜厚は、ゲート絶縁膜13の膜厚の2倍程度であることが望ましい。
【0096】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0097】
前記実施の形態は、以下の形態を含む。
【0098】
(付記1)
(a)半導体基板の第1領域に第1絶縁膜を形成する工程、
(b)前記半導体基板の第2領域に第2絶縁膜を形成する工程、
(c)前記第1絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
(d)前記第2絶縁膜上にフィールドプレート部を形成する工程、
(e)前記フィールドプレート部に第2導電型の第1半導体領域を形成する工程、
(f)前記フィールドプレート部に第1導電型の第2半導体領域を形成する工程、
(g)前記半導体基板に前記第1導電型のソース領域を形成する工程、
(h)前記半導体基板に前記第1導電型のドレイン領域を形成する工程、
(i)前記第1半導体領域と前記ソース領域を電気的に接続する工程、
(j)前記第2半導体領域と前記ドレイン領域を電気的に接続する工程、
を備える、半導体装置の製造方法。
【0099】
(付記2)
付記1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記(d)工程は、
(d1)少なくとも前記第2絶縁膜上にアモルファス半導体膜を形成する工程、
(d2)前記アモルファス半導体膜をパターニングする工程、
を有する、半導体装置の製造方法。
【0100】
(付記3)
(a)支持基板と、前記支持基板上に形成された第2絶縁膜と、前記第2絶縁膜上に形成された半導体層と、を有するSOI基板を用意する工程、
(b)前記半導体層を加工して、前記SOI基板の第2領域に形成されている前記第2絶縁膜上に前記フィールドプレート部を形成する工程、
(c)前記SOI基板の第1領域に形成されている前記第2絶縁膜を除去する工程、
(d)前記第1領域に第1絶縁膜を形成する工程、
(e)前記第1絶縁膜上にゲート電極を形成する工程、
(f)前記フィールドプレート部に第2導電型の第1半導体領域を形成する工程、
(g)前記フィールドプレート部に第1導電型の第2半導体領域を形成する工程、
(h)前記SOI基板に前記第1導電型のソース領域を形成する工程、
(i)前記SOI基板に前記第1導電型のドレイン領域を形成する工程、
(j)前記第1半導体領域と前記ソース領域とを電気的に接続する工程、
(k)前記第2半導体領域と前記ドレイン領域とを電気的に接続する工程、
を備える、半導体装置の製造方法。
【0101】
(付記4)
付記3に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体層は、単結晶半導体層である、半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0102】
1 半導体基板
13 ゲート絶縁膜
14 ゲート電極
15 絶縁膜
16 フィールドプレート部
17 高濃度p型半導体領域
18 低濃度p型半導体領域
19 高濃度n型半導体領域
20 ドレイン領域
21 ソース領域
24 プラグ
24A プラグ
24B プラグ
24C プラグ
24D プラグ
24E プラグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26