(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】金型冷却装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/26 20060101AFI20241211BHJP
B29C 33/04 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B29C45/26
B29C33/04
(21)【出願番号】P 2021094886
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2024-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 高雄
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎平
(72)【発明者】
【氏名】吉川 一央
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-096266(JP,A)
【文献】特表2003-533719(JP,A)
【文献】特開昭61-290014(JP,A)
【文献】特開2019-129605(JP,A)
【文献】特開平11-170257(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0221373(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0029318(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26
B29C 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のキャビティ部を有する金型に熱硬化性樹脂を充填して加熱する樹脂成形装置と共に用いられ、前記金型を冷却する金型冷却装置であって、
金属管が渦巻き状に屈曲されて構成されると共に内部を冷却液が流れる冷却管を備え、
前記冷却管の中心軸方向における一方の表面を前記金型の表面に接触させると共に該冷却管に冷却液を流すことにより前記金型を冷却する、
金型冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の金型冷却装置であって、
弾性体により形成され、前記冷却管を前記中心軸方向における他方の表面側から支持する支持部材を備える、
金型冷却装置。
【請求項3】
請求項2に記載の金型冷却装置であって、
前記弾性体は、ゴムである、
金型冷却装置。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか1項に記載の金型冷却装置であって、
前記金属管は、銅、アルミニウム、銅合金またはアルミニウム合金により形成される、
金型冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、金型冷却装置について開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコイルのコイルエンド部に絶縁被覆を形成するコイル皮膜形成装置において、上面に熱硬化性樹脂が充填される円環状の凹部を有する金型と、金型の下面に配置された渦巻き状のIHコイルと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、金型の凹部に熱硬化性樹脂を充填し、充填した熱硬化性樹脂にコイルエンド部を浸漬し、IHコイルに高周波交流電流を印加して金型を加熱することにより、熱硬化性樹脂を硬化させてコイルエンド部に絶縁皮膜を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱硬化性樹脂を用いた成形を生産ラインで行なう場合、金型を繰り返し使用するために、金型の加熱と冷却を繰り返す必要があり、金型冷却装置として、例えば、銅製のヒートシンクを用いたものを考えることができる。しかしながら、経年使用によりヒートシンクに金型との接触による接触痕(打痕)が生じ、金型とヒートシンクとの合わせ面の密着性が悪くなることで、空気層の介在により冷却効率が低下するおそれがある。また、専用のヒートシンクを用いるため、コスト増を招いてしまう。
【0005】
本開示の金型冷却装置は、金型を効率よく冷却すると共に低コスト化が可能な金型冷却装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の金型冷却装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の金型冷却装置は、
環状のキャビティ部を有する金型に熱硬化性樹脂を充填して加熱する樹脂成形装置と共に用いられ、前記金型を冷却する金型冷却装置であって、
金属管が渦巻き状に屈曲されて構成されると共に渦巻きの中心軸の軸線方向における一方の表面が前記金型の表面に接触するように配置され、内部を流れる冷却液との熱交換により前記金型を冷却する冷却管を備えることを要旨とする。
【0008】
この本開示の金型冷却装置では、金属管が渦巻き状に屈曲されて構成されると共に渦巻きの中心軸の軸線方向における一方の表面が金型の表面に接触するように配置され、内部を流れる冷却液との熱交換により金型を冷却する冷却管を備える。金型冷却装置としてヒートシンクを用いる場合、経年使用により金型とヒートシンクとの接触による接触痕が生じ、金型とヒートシンクとの合わせ面の密着性が悪くなることで、空気層の介在により冷却効率が低下するおそれがある。これに対して、本開示の金型冷却装置では、冷却管の渦巻き形状による弾性作用により金型との密着性を高めることができ、冷却効率を向上させることができる。また、経年使用によっても、冷却管と金型との密着性を維持することができるため、冷却効率の低下を抑制することができる。さらに、冷却管として汎用の金属管を用いることができるため、専用のヒートシンクを用いるものに比して、コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ステータコイルのコイルエンド部に絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程を示す説明図である。
【
図3】絶縁皮膜形成工程に用いられる金型の断面斜視図である。
【
図4】ステータコイルのコイルエンド部を金型に充填した熱硬化性樹脂に浸漬した状態を示す説明図である。
【
図5】金型冷却工程で用いられる金型冷却装置の正面図である。
【
図7】比較例の金型冷却装置を用いた金型の冷却の様子を示す説明図である。
【
図8】本実施形態の金型冷却装置を用いた金型冷却の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、電動機用のステータの概略構成図である。電動機用のステータ10はロータと組み合わされて3相交流発電電動機を構成し、例えば電気自動車やハイブリッド自動車などの走行用の電動機や発電機として用いられる。ステータ10は、
図1に示すように、ステータコア12と、複数のステータコイル15(U相コイル,V相コイルおよびW相コイル)と、を備える。
【0012】
ステータコア12は、例えばプレス加工により円環状に形成された無方向性電磁鋼板を複数積層して構成され、内周側に複数のスロットが形成されるように周方向に所定の間隔をおいて径方向内側に突出する複数のティースを有する。
【0013】
複数のステータコイル15は、それぞれ、複数のセグメント導体14を電気的に接合することにより形成される。セグメント導体14は、銅等の導電性の高い金属により断面が矩形状に形成されると共にエナメル樹脂等からなる絶縁皮膜が表面に形成された略U字状の導体である。セグメント導体14の端部14eは、他のセグメント導体14の端部14eと接合されるため、絶縁性皮膜が除去されている。全てのセグメント導体14の一方の端部14eをステータコア12の対応するスロットに軸方向における一端側から他端側に向かって挿通させると共に他方の端部14eを当該スロットから周方向に離間した他のスロットに軸方向における一端側から他端側に向かって挿通させ、スロットの軸方向における他端側から外部へ突出したセグメント導体14の端部14eを、対応する他のセグメント導体14の端部14eと溶接して接合することにより、複数のステータコイル15、すなわちU相コイル,V相コイルおよびW相コイルが形成される。
【0014】
ステータコイル15のコイルエンド部15eには、溶接部を絶縁するために絶縁皮膜が形成される。
図2は、生産ラインにおいて、金型20を用いてステータコイルのコイルエンド部に絶縁皮膜を形成する絶縁皮膜形成工程を示す説明図である。金型20は、
図3に示すように、円環状のキャビティ22が上面に形成されている。環状のキャビティ22は、コイルエンド部15eの径に対応した径を有すると共にコイルエンド部15eの突出量に対応した深さを有する。
【0015】
絶縁品膜形成工程では、まず、金型20のキャビティ22に熱硬化性樹脂を充填する樹脂充填工程を行なう(S100)。次に、熱硬化性樹脂に充填したキャビティ22にステータコイル15のコイルエンド部15eを浸漬する(S110)。そして、金型20を加熱し、熱硬化性樹脂を硬化させる加熱工程を行なう(S120)。加熱工程は、金型加熱装置25によりコイル15のコイルエンド部15eを熱硬化性樹脂でモールドする工程である。金型加熱装置25は、
図4に示すように、金型20の下面に配置され、IHコイルを有する。IHコイルは、平面かつ渦巻き状のコイルであり、高周波交流電流が印加されることにより、磁力線(電界)により金型20に渦電流を発生させ、当該金型20をジュール熱によって加熱する。
【0016】
加熱工程によりコイルエンド部15eを熱硬化性樹脂でモールドした後、コイルエンド部15eを金型20から離型し(S130)、当該金型20を金型冷却装置30により冷却する冷却工程を行なう(S140)。冷却工程は、生産ラインにおいて金型20を繰り返し使用する場合に、加熱工程が終了した後、次の樹脂充填工程の前に金型20の温度を熱硬化性樹脂の充填に適した温度に戻すための工程である。
図5は、冷却工程で用いられる金型冷却装置の正面図であり、
図6は、金型と金型冷却装置の断面斜視図である。図示するように、金型冷却装置30は、金型20の下面と接触するように配置される冷却管31と、金型20とは反対側から冷却管31を支持する支持部材32と、を備える。冷却管31は、例えば銅やアルミニウム、銅合金、アルミニウム合金などの柔軟かつ熱伝導性に優れた金属管が用いられ、当該金属管が同一平面上に渦巻き状に屈曲されたものとして構成される。この冷却管31は、渦巻きの中心軸の軸線方向における一方の表面(上面)が金型20の下面に接触するように配置され、当該金型20に接触させた状態で冷却管31の一方の開口端から冷却液(冷却水)が供給されることで、内部を流れる冷却水との熱交換により金型20を冷却する。支持部材32は、例えば耐熱ゴムなどの耐熱性樹脂により形成された平板状の弾性体であり、弾性力によって冷却管31が金型20に押し付けられるように、当該冷却管31をその中心軸の軸線方向における他方の表面(下面)から支持する。
【0017】
図7は、比較例の金型冷却装置を用いた金型の冷却の様子を示す説明図であり、
図8は、本実施形態の金型冷却装置を用いた金型冷却の様子を示す説明図である。比較例の金型冷却装置20Bは、
図7に示すように、内部に冷却水が流れる水路が形成されると共に金型20の下面に倣うように上面(合わせ面)が切削加工された銅製のヒートシンク31Bを備える。比較例の金型冷却装置30Bでは、ヒートシンク31Bの合わせ面を金型20の下面に接触させると共にヒートシンク31Bの水路に冷却水を供給することにより、金型20の熱をヒートシンク31Bに伝熱させて当該金型20を冷却する。ヒートシンク31Bの素材として熱伝導率は高いが柔軟な銅が用いられているため、経年使用によりヒートシンク31Bの合わせ面に金型20との接触痕(打痕)が生じる、金型20が接触痕に乗り上げてヒートシンク31Bとの密着性が悪化するおそれがある。この場合、金型20とヒートシンク31Bとの間に介在する空気層により冷却効率が大幅に低下してしまう。
【0018】
これに対して、本実施形態の金型冷却装置30では、
図8に示すように、冷却管31は、柔軟かつ熱伝導性に優れた金属管が渦巻き状に屈曲されて構成されるものであり、冷却管31の渦巻き形状による弾性作用により、金型20との密着性を高めることができ、冷却効率を向上させることができる。また、経年使用に対しても密着性が維持することができるため、経年使用による冷却効率の低下を抑制することができる。さらに、冷却管31として、銅管やアルミニウム管などの汎用の金属管を用いることができるため、比較例のような専用のヒートシンクを用いるものに比して、コストの低減を図ることができる。
【0019】
さらに、本実施形態の金型冷却装置30では、冷却管31を支持する支持部材32をゴム弾性体によって構成しているため、
図8に示すように、金型30に傾きや多少の凹凸があっても、冷却管31の渦巻き形状による弾性作用と支持部材32の素材による弾性作用とにより、冷却管31を金型20へ適切に密着させることができ、冷却効率を向上させることができる。
【0020】
上述した実施形態では、支持部材30は、ゴム弾性体により構成されるものとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、複数のスプリングにより冷却管31が金型20に押し付けられるように支持してもよい。
【0021】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、金型冷却装置の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 ステータ、12 ステータコア、14 セグメント導体、14e 端部、15 ステータコイル、15e コイルエンド部、20 金型、21 キャビティ、25 金型加熱装置、30 金型冷却装置、31 冷却管、32 支持部材。