(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】半切罫線入り片面段ボール
(51)【国際特許分類】
B65D 65/12 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
B65D65/12
(21)【出願番号】P 2021098661
(22)【出願日】2021-06-14
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117400
【氏名又は名称】北川 政徳
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【氏名又は名称】地代 信幸
(74)【代理人】
【識別番号】100166796
【氏名又は名称】岡本 雅至
(72)【発明者】
【氏名】梶塚 孝士
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 慶一
(72)【発明者】
【氏名】野崎 健吾
(72)【発明者】
【氏名】森 拓也
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-120462(JP,U)
【文献】実開昭63-062362(JP,U)
【文献】特公昭49-032998(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0247382(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/12-65/40
B65D 81/02-81/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波状の段をなす中芯(1)の片面にライナー(2)が貼着された
Eフルートの片面段ボールにおいて、前記中芯(1)には、段目方向に直交する方向に延びるように、波状の段を厚さ方向に押し潰した罫線(3)と、前記ライナー(2)には達しない深さまで切り込んだ半切(4)とが平行に入れられていることを特徴とする片面段ボール(C
1)。
【請求項2】
前記中芯(1)の段は、段頂(1a)の一側の傾斜が緩く、他側の傾斜が急になる段流れ状態になっていることを特徴とする請求項1に記載の片面段ボール(C
1)。
【請求項3】
前記半切(4)は、前記段の高さの半分以上切り込まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の片面段ボール(C
1)。
【請求項4】
前記罫線(3)と前記半切(4)の間隔又は前記罫線(3)同士若しくは前記半切(4)同士の間隔は、3mm以上15mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の片面段ボール(C
1)。
【請求項5】
前記罫線(3)と前記半切(4)とは、前記中芯(1)の全面にわたって同じ順序で配列されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の片面段ボール(C
1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主に物品の包装材として使用される片面段ボールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットを利用した通信販売が広く普及しており、その商品の発送に際しては、商品をプラスチックフィルム製の気泡緩衝材で包んで段ボール箱に収納したり、商品を段ボールの台紙と共にプラスチックフィルムで包んで段ボール箱に収納する包装形態が採用されることが多い。
【0003】
このような包装形態で使用されるプラスチックシートは、不正に投棄されると環境に悪影響を与えるため、プラスチックを使用しない紙製包装への代替が試みられている。
【0004】
例えば、紙製のシートのみで物品を緩衝保持する包装形態とするため、下記特許文献1に記載されたような緩衝材を使用することが考えられる。この緩衝材は、
図6に示すように、波状の段をなす中芯51の片面にライナー52が貼着された片面段ボールC
2から成り、中芯51の段目方向に対して互いに逆方向に45°の角度で斜行するように、段を厚さ方向に押し潰した罫線53が入れられたものである。
【0005】
この緩衝材によると、物品の包装に際し、片面段ボールC2の段目方向に直交する方向が周方向となるように、円筒状に丸めて物品を包囲できるだけでなく、互いに逆方向に斜行した罫線53に沿って折り曲げることにより、亀甲状の多面体の外見を呈した状態で、罫線53に囲まれた部分の内面が物品の表面に接するようにして、花瓶のような異形物品を包み込むことができる。
【0006】
また、下記特許文献2には、
図7に示すように、外袋60とその内部に装着される緩衝材61とから成り、緩衝材61は、横向きに延びる切目線62を千鳥状に入れて下端で二つ折りにしたものとされ、外袋60の対向する内面間に緩衝材61を懸架した紙シート製の包装袋が記載されている。この包装袋の緩衝材61の内側に物品を収納すると、緩衝材61が下方へ伸びて立体状の緩衝セルが出現し、物品が衝撃から保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008―036996号公報
【文献】特開2017―193376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、
図6に示すような片面段ボールC
2の緩衝材では、物品を包み込んだとき、多面体の稜線となる罫線53の近傍部分が物品から相当離れてしまうので、物品形状への追従性が低いという問題がある。
【0009】
また、
図7に示すような紙シート製の緩衝材61では、緩衝セルを形成するように伸びた使用状態において、波状の段をなす中芯とこれに貼着されたライナーとが稠密な中空構造を形成する段ボールに比較して、十分な緩衝性が得られないという問題がある。
【0010】
そこで、この発明は、物品形状への追従性と緩衝性に優れた片面段ボールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、この発明は、波状の段をなす中芯の片面にライナーが貼着されたEフルートの片面段ボールにおいて、前記中芯には、段目方向に直交する方向に延びるように、波状の段を厚さ方向に押し潰した罫線と、前記ライナーには達しない深さまで切り込んだ半切とが平行に入れられているものを提供することとしたのである。
【0012】
また、前記中芯の段は、段頂の一側の傾斜が緩く、他側の傾斜が急になる段流れ状態になっているものとしたのである。
【0013】
また、前記半切は、前記段の高さの半分以上切り込まれているものとしたのである。
【0014】
また、前記罫線と前記半切の間隔又は前記罫線同士若しくは前記半切同士の間隔は、3mm以上15mm以下であるものとしたのである。
【0015】
さらに、前記罫線と前記半切とは、前記中芯の全面にわたって同じ順序で配列されているものとしたのである。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る片面段ボールは、中芯の段目方向に直交する方向が周方向となるように丸められる片面段ボールの性質に加えて、折曲抵抗が弱められた罫線と半切に沿って容易に折れ曲がるので、物品を包装する際、物品の表面からあまり離れないように複数方向へ柔軟に折れ曲がり、物品形状への高い追従性が得られる。
【0017】
また、中芯の段が半切で切り込まれて、衝撃作用時に段が潰れやすくなっているので、優れた緩衝性が得られ、中芯の段を段流れ状態にすると、緩衝性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の実施形態に係る片面段ボールを示す斜視図
【
図2】同上の(a)罫線を示す部分斜視図、(b)半切を示す部分斜視図、(c)段流れを示す部分側面図
【
図3】同上の緩衝材による(a)物品包装状態を示す斜視図、(b)(a)のA-A断面図
【
図5】同上の片面段ボールの(a)基本パターン、(b)弱め線の間隔が広いパターン、(c)半切の本数の比率が多いパターン、(d)罫線の比率が多いパターンをそれぞれ示す図
【
図6】特許文献1に記載の片面段ボールの緩衝材を示す(a)平面図、(b)段目方向に直交する方向の部分断面図
【
図7】特許文献2に記載の緩衝材を備えた包装袋を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1に示すように、片面段ボールC
1は、波状の段をなす中芯1の片面にライナー2が貼着されたものであり、この片面段ボールC
1の中芯1には、段頂が延びる方向である段目方向に対して直交する方向に延びるように、それぞれ多数本の罫線3と半切4とが弱め線として平行に入れられている。
【0021】
図2(a)に示すように、罫線3は、中芯1の段を厚さ方向に押し潰したものであり、
図2(b)に示すように、半切4は、中芯1の段をライナー2には達しない深さまで切り込んだものである。また、
図2(c)に示すように、中芯1の段は、段頂1aの一側の傾斜が緩く、他側の傾斜が急になる段流れ状態になっている。
【0022】
上記のような片面段ボールC
1から成る包装材により、例えば、
図3に示すように、通信販売の商品である本のような形状の物品Gを発送用に包装する際には、2枚の緩衝材の片面段ボールC
1を中芯1が内側となるように対向させて、中芯1の間に物品Gを挟んだ状態で、片面段ボールC
1の周縁に臨む部分を接着又は圧着し、ライナー2が伝票等を貼り付ける外面となった封筒状の形態とする。
【0023】
この片面段ボールC1から成る包装材は、中芯1の段目方向に直交する方向が周方向となるように丸められる片面段ボールC1の性質に加えて、折曲抵抗が弱められた罫線3と半切4に沿って容易に折れ曲がるので、物品Gを包装する際、物品Gの表面からあまり離れないように複数方向へ柔軟に折れ曲がり、物品形状への高い追従性が得られる。
【0024】
また、中芯1の段が半切4で切り込まれ、段流れ状態になっているので、衝撃作用時に中芯1の段が潰れやすくなり、優れた緩衝性が得られ、包装した物品Gの輸送時における破損を防止することができる。
【0025】
上記のような片面段ボールC
1の緩衝性を、
図4に示すような衝撃試験機(テスター産業株式会社製)を使用して計測したところ、表1に示すような結果を得た。
【0026】
この衝撃試験機は、片面段ボールC1の試験片を載せる基台21から支柱22及びガイド棒23が立ち上がり、衝撃センサを有する重錘部24及び円盤状の衝撃部25をガイド棒23に沿って落下させ、片面段ボールC1の試験片の上面に衝撃部25を衝突させて、G値を計測するものである。
【0027】
試験条件は、静的応力が0.0052kg/cm2、落下高さが60mmとし、片面段ボールC1の試験片は、EF(坪量:ライナー120g/m2、中芯115g/m2)、BF(坪量:ライナー120g/m2、中芯115g/m2)、AF(坪量:ライナー210g/m2、中芯120g/m2)とする。
【0028】
【0029】
この試験結果によると、罫線3と半切4を入れることにより、段(「F」と標記されるフルート)に係わらず緩衝性が向上するので、片面段ボールC1は、段が細かく薄いものから順に、EF/ΔF/BF/CF/AFとする。ここで、権利対象は、最も薄いEFのみとし、他のものは参考例とする。なお、ΔFは、30cm当たりの段山数が60±2で厚さが約2mmのもの(レンゴー株式会社製)である。
【0030】
また、半切4の切込の深さは、材料となる片面段ボールの性状や包装する物品の形状に応じて、中芯1の段の高さの半分から全部とする。
【0031】
また、段流れは、無くてもよいが、有る方が好ましい。
【0032】
そして、罫線3と半切4との間隔は、広げ過ぎると緩衝性が低下するので、3mm以上15mm以下とする(
図5(a)、(b)参照)。罫線3同士若しくは半切4同士の間隔についても、同様である。
【0033】
また、罫線3と半切4の本数の比率は、30:1~1:3とし、罫線3と半切4とが全面にわたって同じ順序で配列されているものとする(
図5(a)~(d)参照)。
【0034】
ところで、上記のような片面段ボールC
1は、
図3に示すような外装用の包装材として使用できるほか、物品を包み込んだ状態で外箱に内挿される緩衝材としても使用できることから、プラスチックフィルム製の気泡緩衝材等に替わるものとして、環境に配慮した広範な用途が期待できるものとなる。さらに、包装材としての用途以外にも、柔軟な成形性を生かしたディスプレイの材料等として使用することもできる。
【符号の説明】
【0035】
C1 片面段ボール
1 中芯
1a 段頂
2 ライナー
3 罫線
4 半切
G 物品