(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】埋設部材
(51)【国際特許分類】
E01F 9/681 20160101AFI20241211BHJP
【FI】
E01F9/681
(21)【出願番号】P 2021111096
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅範
(72)【発明者】
【氏名】西村 光司
(72)【発明者】
【氏名】千国 洋道
(72)【発明者】
【氏名】出雲 真仁
(72)【発明者】
【氏名】畔津 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】高室 和俊
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-088916(JP,A)
【文献】実開昭60-076145(JP,U)
【文献】実開昭59-043542(JP,U)
【文献】特開2014-185434(JP,A)
【文献】特開2015-218528(JP,A)
【文献】特開2015-206169(JP,A)
【文献】実公昭48-011458(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/681
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に形成された埋設穴内に配置され、該埋設穴内に充填された後に固化する充填材によって前記埋設穴内に固定される埋設部材であって、
前記埋設部材は本体部を備え、該本体部は
、雌ねじ部が形成された締結部
と、該本体部の外周部分に筒状に設けられた外壁部と、前記締結部と前記外壁部とを複数箇所で接続する複数の内壁部とから一体的に形成され、
前記本体部には
、前記締結部と前記外壁部と前記内壁部とで囲まれて前記雌ねじ部の軸に沿う方向に貫通する穴状の充填部が形成さ
れ、該充填部の内部に前記充填材が充填されるように設けられていることを特徴とする埋設部材。
【請求項2】
前記充填部は、前記締結部の軸に対して垂直な方向における断面形状において、下端の開口部が上方よりも大きく形成されていることを特徴とする請求項1に記載の埋設部材。
【請求項3】
前記充填部は、その内側面において傾斜面状又は段状の楔部を備えており、該楔部に接する前記充填材が前記楔部に対して設置面側に配置されるように設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の埋設部材。
【請求項4】
前記本体部と別体に形成された筒状部材を備え、該筒状部材は前記本体部の少なくとも上部を囲う筒部と、該筒部と本体部とを接続する接続部とを備え、
前記筒部の内側面と前記本体部の外側面との間に前記充填材が充填されるように設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の埋設部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば道路の路面へ付帯設備を設置させる等の用途のために設置面へ埋設固定する埋設部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モルタルやコンクリートなど流動状態時に充填した後に固化する充填材によって埋設孔内に固定するアンカーナット等の埋設部材は従来より用いられており、これに関する種々の発明が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、アンカーボルトの雄ねじ部を螺結可能な雌ねじ部を備えたアンカーナットであって、該アンカーナットを構成する本体部は、上方に開口部を有し、下方が底壁部に塞がれた有底筒形状に形成され、前記雌ねじ部が前記開口部から前記底壁部に向かうように設けられ、前記本体部の外周側面には内側方向へ窪む第一の凹部と第二の凹部が形成され、前記第一の凹部とその下方に形成された前記第二の凹部との間には周方向に向かう溝部が形成されるとともに、該溝部と前記第二の凹部とが前記底壁部の上面より下方に設けられていることを特徴とするアンカーナットに関する発明が本出願人によって提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるアンカーナットは、埋設穴に挿入し充填材を充填固化させて設置させたときに、本体部の外周側面に設けた第一の凹部と第二の凹部に前記充填材が入り込むことで、本体部をより強固に固定させるように設けられている。本願発明は、これとは異なる構成によってより強固に埋設固定できる埋設部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る埋設部材は、設置面に形成された埋設穴内に配置され、該埋設穴内に充填された後に固化する充填材によって前記埋設穴内に固定される埋設部材であって、前記埋設部材は本体部を備え、該本体部は、雌ねじ部が形成された締結部と、該本体部の外周部分に筒状に設けられた外壁部と、前記締結部と前記外壁部とを複数箇所で接続する複数の内壁部とから一体的に形成され、前記本体部には、前記締結部と前記外壁部と前記内壁部とで囲まれて前記雌ねじ部の軸に沿う方向に貫通する穴状の充填部が形成され、該充填部の内部に前記充填材が充填されるように設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
本願発明に係る埋設部材によれば、雌ねじ部を形成した締結部を有する本体部を備えるので、埋設孔内に固定した本体部の前記締結部へ雄ねじ部材を螺結させて、設置面へ物品を設置させることができる。
【0008】
また、前記本体部を貫通する穴状の充填部を前記雌ねじ部の軸に沿う方向に形成して、この充填部の内部に埋設穴へ充填する充填材が充填されるように設けるので、充填部の内側に充填された充填材と本体部の外側に充填された充填材とが本体部の下方で接続して、本体部を埋設穴内に強固に固定できる。
【0009】
また、前記締結部の軸に対して垂直な方向における前記充填部の断面形状において、下端の開口部を上方よりも大きく形成すれば、前記開口部において接続する充填部の内側に充填された充填材と本体部の外側に充填された充填材との接続部分の断面積がより大きく設けられることから、充填材の破断が生じにくくなされ本体部をより強固に固定できるので、好ましい。
【0010】
また、前記充填部の内側面に傾斜面状又は段状の楔部を設け、この楔部に接する前記充填材が楔部に対して設置面側に配置されるように設ければ、充填部内の充填材と楔部とが係合状態となされて、本体部が充填材により強固に固定されるので、好ましい。
【0011】
また、前記本体部と別体に形成した筒状部材を設け、この筒状部材に前記本体部の少なくとも上部を囲う筒部と、この筒部と本体部とを接続する接続部とを備えさせて、前記筒部の内側面と前記本体部の外側面との間に前記充填材が充填されるように設ければ、締結部を介して本体部に外力が伝わり埋設穴内の充填材が破損したときに、この破損が前記筒部に阻まれてその外側へ至りにくくなされ、埋設穴の外側に生じる破損を抑制できるので、好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本願発明に係る埋設部材によれば、本体部に設けた充填部の内側に充填された充填材と本体部の外側に充填された充填材とが本体部の下方で接続するので、本体部を埋設穴内に強固に固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る埋設部材の本体部の実施の一形態を示す斜視図である。
【
図7】
図1の本体部を埋設固定した状態を示す縦断面図である。
【
図8】本発明に係る埋設部材の筒状部材の実施の一形態を示す斜視図である。
【
図14】
図1の本体部へ
図8の筒状部材を取り付けた状態を示す縦断面図である。
【
図15】
図14の埋設部材を埋設固定した状態を示す縦断面図である。
【
図16】
図15の埋設部材を利用して設置物を設置させた状態を示す図である。
【
図18】
図17の埋設部材が設置面から引き抜かれた状況を示す図である。
【
図19】
図17の埋設部材が外力を受けた後の状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
【0015】
図1は本発明に係る埋設部材1の本体部2の実施の一形態を示す図であり、
図2は
図1の正面図であり、
図3は
図1の平面図であり、
図4は
図1の底面図であり、
図5は
図3のA-A断面図であり、
図6は
図3のB-B断面図である。
図1~6において、本体部の正面図を示す
図2の図中上下方向を縦方向とし、図中左右方向を横方向として説明を行う。
【0016】
図面において、1は埋設部材であり、2は埋設部材1の本体部である。本体部2は、上面と下面とを略円形に形成し、縦方向上方から下方へ至るほど外周が拡径する略円錐台形状の外形に形成している。本体部2の上面の中央には、ボルト等の雄ねじ部材の雄ねじを締結可能な雌ねじ部22を有する締結部21を形成しており、前記雌ねじ部22はその軸方向を縦方向へ向けて形成している。本体部2は金属の鋳物で形成しており、具体的にはアルミニウムダイキャストで形成している。
【0017】
前記本体部2には、縦方向に貫通する充填部23を形成している。充填部23は、本体部2の上面と下面とにそれぞれ開口部23e、開口部23dを備える貫通穴状に形成しており、前記雌ねじ部22の周りを囲うように周方向へ等間隔に複数配置して設けている。前記本体部2には合計4個の充填部23を形成している。また、各充填部23は、縦方向に対して垂直な断面の形状をそれぞれ略扇面形状に形成しており、隣接する充填部23の間に略平板状の内壁部25が形成されるように設けている。
【0018】
前記各充填部23において径方向外側に配置される内側面23cは、本体部2の外周面に対応する形状に形成している。具体的には、各充填部23の内側面23cを本体部2の外周面より若干内側に位置させて、本体部2の外周部分に略筒状の外壁部26が形成されるように設けている。
【0019】
前記本体部2は、雌ねじ部22を有する前記締結部21と、前記外壁部26とを、前記各内壁部25で接続しているような形状に形成している。
【0020】
前記各充填部23は、
図6に示すように、締結部21に接する内側面23aを縦方向上方から下方へ至るほど本体部2の径方向外側へ向かう傾斜面状にそれぞれ形成している。換言すると、前記締結部21は上方から下方へ至るほど外形が大きくなるように形成している。傾斜面状に形成した各充填部23の前記内側面23aは、後述する楔部として機能する。
【0021】
また、前記各充填部23は、外壁部26側の内側面23cを縦方向上方から下方へ至るほど径方向外側へ向かう傾斜面状に形成しており、前記雌ねじ部22の軸方向に対する内側面23cの傾斜の大きさを前記内側面23aよりも大きくなるように設けている。即ち、前記内側面23aと内側面23cの径方向における間隔は、縦方向上方から下方へ至るほど大きくなり、各充填部23の下側の開口部23dにおいて最大となる。換言すると、前記充填部23は、前記締結部の軸の方向である縦方向に対して垂直な断面形状において、下端の開口部23dを上方よりも大きく形成させており、開口部23dの大きさが最大となるように形成させている。
【0022】
前記各内壁部25は、縦方向上方から下方へ至るほど、その板厚が大きくなるようにそれぞれ形成している。即ち、前記各充填部23は、各内壁部25に接する内側面23bが、縦方向に対して若干傾斜状となるように形成している。この傾斜状に設けた各充填部23の内側面23bは、後述する楔部として機能する。
【0023】
図7は
図1の本体部2を埋設固定した状態を示す縦断面図である。
図7において、本体部2は、設置面Gに穿設した平面視円形の埋設穴H内に配置して、埋設穴H内に充填した後に固化させた充填材Fによって固定している。前記本体部2は、雌ねじ部22の軸線を設置面Gに対して垂直に配置して設置しており、その上面を設置面Gと略面一に配置している。
【0024】
また、前記充填材Fは、その上面が設置面Gと略面一となるように埋設穴H内に充填させており、本体部2の各充填部23内の充填材Fが下端の開口部23dから上端の開口部23eに至るまで充填させている。埋設部材1を固定する充填材Fは、モルタルやセメントや合成樹脂製の接着剤など、流動可能な状態から硬化する種々の材料を選択または組み合わせて利用することができる。
【0025】
本体部2は、下方へ至るほど外径が拡径する略円錐台形状に形成することで、充填材Fに埋設させた状態における固定の強度を向上させている。具体的には、外壁部26の外側面を傾斜面状に形成することで、埋設穴H内に充填して前記外側面に接する充填材Fが、前記外側面に対して設置面G側である縦方向上方に配置されて、前記外側面と充填材Fとが係合した状態となされる。このように外壁部26の外側面と充填材Fと係合状態とすることで、本体部2が縦方向上方へ向かう力を受けたときに、前記外壁部26における充填材Fの抵抗が増大し、本体部2の設置面Gからの脱抜が抑制される。
【0026】
本体部2は、各充填部23の締結部21側の内側面23aを縦方向上方から下方へ至るほど本体部2の径方向外側へ向かう傾斜面状にそれぞれ形成することで、充填材Fに埋設させた状態における固定の強度を向上させている。具体的には、前記各内側面23aは、充填部23内に充填材Fを充填させた状態において、各内側面23aに接する充填材Fが内側面23aに対して設置面G側である縦方向上方に配置されて、前記内側面23aと充填材Fとが係合した状態となされるように設けている。このように、各内側面23aを充填材Fと係合する楔部として設けることで、本体部2が縦方向上方へ向かう力を受けたときに、各内側面23aにおける充填材Fの抵抗が増大し、本体部2の設置面Gからの脱抜が抑制される。
【0027】
また、前記内壁部25は縦方向上方から下方へ至るほどその板厚が大きくなるようにそれぞれ形成しており、縦方向に対して若干傾斜状に形成した前記内側面23bは、充填部23内に充填させた充填材Fと係合する楔部として機能する。即ち、充填部23内に充填させて各内側面23bに接する充填材Fは、各内側面23bに対して設置面G側である縦方向上方に配置されるので、本体部2が縦方向上方へ向かう力を受けたときに、各内側面23bにおける充填材Fの抵抗が増大し、本体部2の設置面Gからの脱抜が抑制される。
【0028】
【0029】
図8~12に示す筒状部材5は、略円板形状に設けた接続部54と、その外縁の全周から下方へ延設させて略円筒形状に形成した筒部51とを一体的に形成しており、具体的には、1枚の金属板をプレス加工して前記接続部54と筒部51とを形成している。
【0030】
前記接続部54の中央には、上下方向に貫通する円形の貫通孔55を形成しており、貫通孔55は前記本体部2の雌ねじ部22に締結可能な雄ねじを挿通可能な大きさに形成している。また、前記接続部54には、上下方向に貫通する円形の貫通孔56を複数形成しており、各貫通孔56は前記貫通孔55の周りを囲うように周方向へ等間隔に4個配置している。前記接続部54の外縁近傍には、上下方向に貫通する略扇面形状の貫通孔57を複数形成しており、各貫通孔57を周方向へ等間隔に4個配置している。
【0031】
前記接続部54には、接続部54の他の部位よりも厚みが小さな薄肉状に設けた破断部58を形成しており、前記各貫通孔57の間にそれぞれ1個ずつ合計4個形成している。
図13は
図11の破断部58付近の拡大図である。破断部58は、接続部54に設けた切欠き状の部位であり、前記各貫通孔57の間における接続部54の全幅に亘って上面と下面とがそれぞれ内側へ窪む溝状に形成している。破断部58は、筒部51と接続部54とを一体的に形成するプレス加工の際に形成している。
【0032】
図14は
図1の本体部2へ
図8の筒状部材5を取り付けた状態を示す縦断面図である。筒状部材5は、貫通孔55と雌ねじ部22との位置を一致させると共に、各充填部23の開口部23eの真上に各貫通孔56を配置させ、本体部2の上面へ接続部54の下面を当接させて本体部2へ取り付ける。筒状部材5の筒部51は、本体部2の上部の全周を囲うように配置される。
【0033】
図15は
図14の埋設部材1を埋設固定した状態を示す縦断面図である。
図15に示す埋設部材1の本体部2と筒状部材5は、
図7に示す本体部2と同様に、設置面Gに穿設した平面視円形の埋設穴H内に配置して、埋設穴H内に充填した後に固化させた充填材Fによって固定している。前記本体部2は、雌ねじ部22の軸線を設置面Gに対して垂直に配置して設置しており、前記筒状部材5の上面を設置面Gと略面一に配置している。
【0034】
前記充填材Fは、その上面が設置面Gと略面一となるように埋設穴H内に充填させている。本体部2の各充填部23は、筒状部材5の各貫通孔56を介して埋設穴Hの外側へ通じているので、各充填部23内に空気が溜まりにくく、各貫通孔56の内側まで充填材Fを良好に充填させることができる。また、筒状部材5は、筒部51を充填材Fの内側へ埋設させると共に、接続部54の上面を充填材Fから露出させて、充填材Fに固定している。
【0035】
図16は
図15の埋設部材1を利用して設置物Pを設置させた状態を示す図であり、
図17は
図16の埋設部材1付近を拡大した図である。
図16、17の埋設部材1は、筒状部材5の破断部58を図示できる角度の縦断面として描いている。
【0036】
図16、17に示す設置物Pは、道路上や道路の近傍に設置して用いる所謂標識柱であり、下部の台座部分に下方へ突出する雄ねじBを一体的に形成している。設置物Pは、この雄ねじBを充填材F内に埋設固定した埋設部材1の雌ねじ部22へ螺結させて、設置面Gへ立設させている。尚、
図16、17や、後述する
図18は、設置物Pの台座部分より下方を断面として描いた部分断面図である。
【0037】
図18は
図17の埋設部材1が設置面Gから引き抜かれた状況を示す図である。設置物Pへ外力がかかり、雄ねじBを介して埋設部材1へ設置面Gから引き抜くような強力な力が加えられたとき、
図18に示すように、埋設部材1の本体部2を起点として埋設穴Hに充填された充填材Fが円錐状に割れて脱離する、所謂コーン状破壊と呼ばれる損傷が生じる場合がある。
図18は、埋設固定させた埋設部材1へ引張力がかかり、これを固定していた充填材Fが、本体部2の下端を先端とする円錐状の塊状となって設置面Gから脱離した状態を示している。
【0038】
図18に示すようなコーン状破壊が生じた場合において、充填部23内に充填された充填材Fは、充填部23の下端の開口部23dの位置で破断するように破壊される。前記埋設部材1の各充填部23は、前記締結部の軸に対して垂直な方向の断面形状において、下端の開口部23dの大きさを上方よりも大きく形成させている。より具体的には、各充填部23の前記断面形状の大きさを、開口部23dにおいて最大となるように形成している。各充填部23を上記のように形成することで、開口部23dにおける充填材Fの破断が生じにくくなされ、埋設部材1が設置面Gから脱抜しにくく、より強固に埋設固定できるように設けている。例えば、埋設穴Hの深さが浅く、埋設穴Hの底が本体部2の下面の近傍に位置しているような場合でも、上記のように形成した各充填部23によって本体部2を充填材F内に強固に固定できる。
【0039】
コーン状破壊が生じるとき、脱離する本体部2の周囲の破壊面D1は、設置面Gに対して一定の角度で生じる傾向にある。前記の角度は、設置面Gの構成部材や充填材Fの材質などによって変化するが、一般的なコンクリートでは設置面に対して45度の角度で破壊面D1が生じる。また、コンクリート以外の他の材料においても、例えば柵や支柱などの道路付帯設備の設置に用いるようなアンカーナット等を設置させる設置面Gの構成材料や充填材F等においては、設置面Gに対しておおむね50度以下の角度で破壊面D1が生じる。
【0040】
図18に示すように、本体部2の上部の周囲を囲うように筒部51を配置させた前記埋設部材1が設置面Gから脱抜するとき、前記破壊面D1は本体部2の下端と筒部51の下端とを接続するように形成される。換言すると、
図18に示す埋設部材1は、筒状部材5の筒部51と、本体部2と、両部材の間に充填されていた充填材Fが一塊となって、筒部51の外側の充填材Fから引き抜かれるように脱抜している。
【0041】
このような破壊面D1を生じさせることで、筒部51を備える前記埋設部材1は、設置面Gから脱抜するような強い外力を受けた場合においても、筒部51の外側の充填材Fや埋設穴Hより外側の設置面Gを構成する部材の損傷を抑制することができる。
【0042】
図18に示すような、埋設部材1の設置面Gからの脱抜は、本体部2の下端を起点として生じる破壊面D1が筒部51の下端に接続することで生じる。このため、本体部2の下端の縁から筒部51の下端までを接続する線と設置面Gとのなす角度Anを、コーン状破壊において生じる破壊面と設置面Gとのなす角度よりも小さく設けることで、前記破壊面D1が筒部51へ接続しやすくなされる。前記角度Anをコーン状破壊において生じる破壊面と設置面Gとのなす角度よりも大きく設けた場合、本体部2の下端を起点として生じる破壊面D1が筒部51へ接続せずに筒部51の下端の下方へ形成されて、埋設穴Hに形成される破壊面がより大きなものとなされやすくなる。
【0043】
前記埋設部材1は、前記破壊面D1を筒部51へ接続しやすくするために、本体部2の下端の縁から筒部51の下端までを接続する線と、設置面Gに対して平行に配置されやすい締結部21の雌ねじ部22の軸に対する垂直面とのなす角度Anを0度以上50度以下の大きさに設けるのが好ましく、0度以上45度以下の大きさに設けるのがより好ましい。
図18に示す埋設部材1は、本体部2の下端の縁から筒部51の下端までを接続する線と、雌ねじ部22の軸線に対する垂直面とのなす角度Anの大きさを約40度に形成している。
【0044】
図18に示す前記埋設部材1は、筒部51の外面を凸凹の少ない平滑面に形成している。このように筒部51の外面を平滑に設けることで、この外面に付着する充填材Fが剥がれやすくなされるので、埋設部材1の設置面Gからの脱抜において、
図18に示すように、充填材Fに生じる破壊面D1が筒部51の外面から外側へ拡がりにくくなされる。
【0045】
図19は
図17の埋設部材1が外力を受けた後の状況を示す図である。
図19においては、埋設部材1の雌ねじ部22から雄ねじBを螺脱させて、設置物Pを取り外した状況を図示している。
【0046】
図19は、
図17の設置物Pからの力を受けた埋設部材1が、埋設穴Hから引き抜かれるまでには至らず、充填材F内で僅かに浮き上がるように移動した状況を図示している。具体的には、
図19に示す埋設部材1は、本体部2の図中右側の部分が縦方向上方へ僅かに移動している。このように本体部2が移動したとき、前記埋設部材1は、上方へ移動する本体部2と、充填材F内に埋設させた筒部51との間の引張力によって、筒状部材5の破断部58が破断する場合がある。
図19においては、図中右側に配置された破断部58が破断した状況を図示している。
【0047】
図19に示すように本体部2の移動が僅かであった場合、本体部2を埋設固定している充填材Fの表面にひび割れなどの損傷が生じないことがあり、また損傷が生じた場合でも極小さなひび割れに留まり、目視での確認が難しいことがある。前記埋設部材1は、充填材Fの損傷が確認しにくい状況でも、接続部54に設けた各破断部58の破断の有無を確認することにより、充填材F内における本体部2の移動の有無を確認することができる。このように、本体部2の移動の有無を容易に確認できることで、設置物Pが外力を受けた場合に、埋設部材1の交換の必要性が判断しやすくなされる。
【0048】
尚、本発明に係る埋設部材1は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0049】
例えば、前記埋設部材1は、本体部2の充填部23の内側面23aや内側面23bを、雌ねじ部22の軸方向に対して傾斜する傾斜面状に形成することで、本体部2を充填材F内により強固に固定する楔部として機能するように設けているが、これに限るものではない。
【0050】
例えば、内側面23aや内側面23bを傾斜面状に形成するのではなく、その一部に段状の部位を設け、この段状部位に接する充填材Fを段状部位に対して設置面G側に配置させることで係合状態とし、前記楔部として機能させてもよい。
【0051】
また、前記埋設部材1は、筒状部材5の破断部58を、接続部54を切欠き状に設けて薄肉状に形成しているが、これに限るものではなく、外力が加えられたときに破断部58で破断することができる他の形態に形成してもよい。例えば、隣接する各貫通孔57の間における接続部54を切欠き状に設けて、その幅の大きさを小さく設けた幅狭状に破断部58を形成してもよく、前記接続部54を切欠き状に設けた孔状に破断部58を形成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 埋設部材
2 本体部
21 締結部
22 雌ねじ部
23 充填部
25 内壁部
26 外壁部
5 筒状部材
51 筒部
54 接続部
55 貫通孔
56 貫通孔
57 貫通孔
58 破断部
F 充填材
G 設置面
H 埋設穴