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特許7602437表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20241211BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G02F1/1339 505
C09K3/10 B
C09K3/10 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021112291
(22)【出願日】2021-07-06
(62)【分割の表示】P 2020540841の分割
【原出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2021177246
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2019123019
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019126948
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】柴田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梁 信烈
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-034844(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181840(WO,A1)
【文献】特開2000-066220(JP,A)
【文献】特開2002-069160(JP,A)
【文献】特開2009-134293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
C09K 3/10-3/12
C08G 59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有し、
前記硬化性樹脂は、ラクトンの開環構造を有する化合物を含み、
前記硬化性樹脂100重量部中における前記ラクトンの開環構造を有する化合物の含有量が5重量部以上30重量部以下であり、
硬化物のOwens-Wendt法による表面自由エネルギーの式における極性成分項が6.0以下であり、
硬化物の121℃における貯蔵弾性率が50MPa以上である
ことを特徴とする表示素子用シール剤。
【請求項2】
前記硬化性樹脂は、エポキシ基を有する化合物を含み、
前記硬化性樹脂100重量部中における前記エポキシ基を有する化合物の含有量が10重量部以上60重量部以下である請求項1記載の表示素子用シール剤。
【請求項3】
硬化物を、121℃、100%RH、2atmの環境下に24時間曝す高温高湿試験を行った後の吸水率が4.0重量%以下である請求項1又は2記載の表示素子用シール剤。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料。
【請求項5】
請求項1、2若しくは3記載の表示素子用シール剤の硬化物、又は、請求項記載の上下導通材料の硬化物を有する表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温高湿環境下における信頼性に優れる表示素子を得ることができる表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を有する表示素子として、液晶表示素子や有機EL表示素子等が広く利用されている。これらの表示素子では、通常、硬化性樹脂組成物を用いてなるシール剤によって液晶や発光層等の封止が行われている。
例えば、液晶表示素子として、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような、光熱併用硬化型のシール剤を用いた液晶表示素子が開示されている。
【0003】
また、表示素子には高温高湿環境下での駆動等における高度な信頼性として、121℃、100%RH、2atmの条件におけるプレッシャークッカー試験(PCT)に対応した性能も要求されている。高度な信頼性を有する表示素子を得るためには、シール剤を耐湿熱性に優れるものとする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-133794号公報
【文献】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高温高湿環境下における信頼性に優れる表示素子を得ることができる表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、硬化性樹脂と重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有し、硬化物のOwens-Wendt法による表面自由エネルギーの式における極性成分項が6.0以下であり、硬化物の121℃における貯蔵弾性率が50MPa以上である表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0007】
本発明者は、PCT(121℃、100%RH、2atm)環境下で駆動した際に表示不良を発生した表示素子について確認したところ、表示素子に気泡の侵入があったことを確認した。そこで本発明者は、表示素子用シール剤の硬化物のOwens-Wendt法による表面自由エネルギーの式における極性成分項が特定値以下となるようにし、かつ、該硬化物の121℃における貯蔵弾性率を特定値以上となるようにすることを検討した。その結果、気泡の侵入を抑制することができ、高温高湿環境下における信頼性に優れる表示素子を得ることができる表示素子用シール剤を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の表示素子用シール剤における、高温高湿環境下における信頼性に優れる表示素子を得ることができるという効果は、本発明の表示素子用シール剤を液晶表示素子用シール剤として用いる場合に特に顕著に発揮される。
【0008】
本発明の表示素子用シール剤は、硬化物のOwens-Wendt法による表面自由エネルギーの式における極性成分項(以下、単に「極性成分項」ともいう)が6.0以下である。上記極性成分項が6.0以下であり、かつ、硬化物の121℃における貯蔵弾性率が50MPa以上であることにより、本発明の表示素子用シール剤は、高温高湿環境下における気泡の侵入を抑制する効果に優れるものとなる。上記極性成分項の好ましい上限は5.7、より好ましい上限は5.3である。
また、上記極性成分項の好ましい下限は特にないが、実質的な下限は4.5である。
上記極性成分項は、具体的には、25℃において、接触角計を用いて硬化物の水及びヨウ化メチレンに対する接触角(滴下量3μL、滴下30秒後)をそれぞれ測定し、下記式により算出することができる。
γs=γsd+γsp
72.8(1+cosθH)=2(21.8γsd)1/2+2(51.0γsp)1/2
50.8(1+cosθI)=2(48.5γsd)1/2+2(2.3γsp)1/2
γs:表面自由エネルギー
γsd:表面自由エネルギーの分散成分項
γsp:表面自由エネルギーの極性成分項
θH:水に対する接触角
θI:ヨウ化メチレンに対する接触角
なお、上記極性成分項を測定する硬化物としては、以下のものが用いられる。即ち、シール剤を2枚の無アルカリガラスのうちの一方に塗布し、塗布したシール剤の上から他方の無アルカリガラスを重ね、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、一方の無アルカリガラスを剥離し、120℃で1時間加熱してシール剤を熱硬化させたものが用いられる。上記無アルカリガラスとしては、OA-10G(日本電気硝子社製、厚さ0.7mm、表面粗さ0.2nmRa)が用いられる。
また、上記接触角計としては、例えば、全自動接触角計DMo-701(協和界面科学社製)等が挙げられる。
【0009】
本発明の表示素子用シール剤を用いることで気泡の侵入を抑制することができる理由としては、以下のことが考えられる。
即ち、後述する硬化物の121℃における貯蔵弾性率が50MPa以上であることに加えて、上記極性成分項が6.0以下であることから、該硬化物自体が耐湿性に優れるだけでなく、配向膜等との親和性が高くなって界面密着性が良好となり、その結果、気泡の原因となる水分の浸入が抑制されているものと推測される。
【0010】
本発明の表示素子用シール剤は、硬化物の121℃における貯蔵弾性率の下限が50MPaである。上記硬化物の121℃における貯蔵弾性率が50MPa以上であり、かつ、上記極性成分項が6.0以下であることにより、本発明の表示素子用シール剤は、高温高湿環境下における気泡の侵入を抑制する効果に優れるものとなる。上記硬化物の121℃における貯蔵弾性率の好ましい下限は60MPa、より好ましい下限は80MPaである。
なお、貯蔵弾性率を測定する硬化物としては、シール剤に100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、120℃で1時間加熱して硬化させたものが用いられる。
また、上記貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて、試験片幅5mm、厚み0.35mm、掴み幅25mm、昇温速度10℃/分、周波数5Hzの条件で測定することができる。
上記動的粘弾性測定装置としては、例えば、DVA-200(IT計測制御社製)等が挙げられる。
【0011】
本発明の表示素子用シール剤において、上記極性成分項及び上記硬化物の121℃における貯蔵弾性率をそれぞれ上述した範囲とする方法としては、表示素子用シール剤に含まれる各構成成分の種類及びその含有割合を調整する方法が好適である。
【0012】
本発明の表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、エポキシ基を有する化合物を含むことが好ましい。
上記エポキシ基を有する化合物を含むことにより、得られる表示素子用シール剤が高温高湿環境下における気泡の侵入を抑制する効果により優れるものとなる。
【0013】
上記エポキシ基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、スルフィド型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、アルキルポリオール型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0014】
上記ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱ケミカル社製)、EPICLON EXA-850CRP(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱ケミカル社製)、EPICLON EXA-830CRP(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、RE-810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EX-201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX-4000H(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-50TE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-80DE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP4032、EPICLON EXA-4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-670-EXP-S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、NC-3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ESN-165S(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱ケミカル社製)、EPICLON 430(DIC社製)、TETRAD-X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ZX-1542(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、EPICLON 726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX-611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YR-450、YR-207(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX-147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ基を有する化合物のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC-1312、YSLV-80XY、YSLV-90CR(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱ケミカル社製)、EXA-7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0015】
上記エポキシ基を有する化合物としては、部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物も好適に用いられる。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物とは、2つ以上のエポキシ基を有する化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味する。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0016】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、UVACURE1561、KRM8287(いずれもダイセル・オルネクス社製)、MEM-5000H(ネオケミカル社製)等が挙げられる。
【0017】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記エポキシ基を有する化合物の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は60重量部である。上記エポキシ基を有する化合物の含有量が10重量部以上であることにより、得られる表示素子用シール剤が高温高湿環境下における気泡の侵入を抑制する効果により優れるものとなる。上記エポキシ基を有する化合物の含有量が60重量部以下であることにより、得られる表示素子用シール剤を液晶表示素子用シール剤として用いる場合に低液晶汚染性に優れるものとなる。上記エポキシ基を有する化合物の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0018】
上記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル化合物を含有することが好ましい。
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記(メタ)アクリル化合物は、反応性の観点から1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味する。また、上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」は、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0019】
上記硬化性樹脂は、得られる表示素子用シール剤の硬化物のガラス転移温度を後述する範囲とすることが容易となることから、上記(メタ)アクリル化合物としてメタクリロイル基を有する化合物を含むことが好ましい。
上記硬化性樹脂が上記メタクリロイル基を有する化合物を含む場合、下記式(I)で表されるメタクリル比率が0.3以上であることが好ましい。上記メタクリル比率が0.3以上であることにより、得られる表示素子用シール剤の硬化物のガラス転移温度を後述する範囲とすることがより容易となる。上記メタクリル比率は、0.5以上であることがより好ましく、0.6以上であることが更に好ましい。
メタクリル比率=(W/E)/(W/E+W/E) (I)
式(I)中、Eは、アクリロイル基を有する化合物のアクリロイル基当量(g/mol)であり、Eは、メタクリロイル基を有する化合物のメタクリロイル基当量(g/mol)であり、Wは、アクリロイル基を有する化合物の含有量(重量部)であり、Wは、メタクリロイル基を有する化合物の含有量(重量部)である。
なお、上記「アクリロイル基当量」は、アクリロイル基を有する化合物の重量(g)を該アクリロイル基を有する化合物中に含まれるアクリロイル基のモル数(mol)で除して求められる値である。上記硬化性樹脂が複数の上記アクリロイル基を有する化合物(A1、A2、・・・)を含む場合、上記式(I)中の「W/E」は、各アクリロイル基を有する化合物について、アクリロイル基を有する化合物の含有量をアクリロイル基当量で除して求められた値の合計(WA1/EA1+WA2/EA2+・・・)を意味する。上記硬化性樹脂が上記アクリロイル基を有する化合物を含まない場合は、上記式(I)中の「W/E」を0とする。
また、上記「メタクリロイル基当量」は、メタクリロイル基を有する化合物の重量(g)を該メタクリロイル基を有する化合物中に含まれるメタクリロイル基のモル数(mol)で除して求められる値である。上記硬化性樹脂が複数の上記メタクリロイル基を有する化合物(M1、M2、・・・)を含む場合、上記式(I)中の「W/E」は、各メタクリロイル基を有する化合物について、メタクリロイル基を有する化合物の含有量をメタクリロイル基当量で除して求められた値の合計(WM1/EM1+WM2/EM2+・・・)を意味する。
【0020】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0024】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、スルフィド型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、アルキルポリオール型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0025】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレート、ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレート、ケーエスエム社製のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3708、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYL RDX63182等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EA-1010、EA-1020、EA-5323、EA-5520、EA-CHD、EMA-1020等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシエステルM-600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA等が挙げられる。
上記ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、デナコールアクリレートDA-141、デナコールアクリレートDA-314、デナコールアクリレートDA-911等が挙げられる。
上記ケーエスエム社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、BAEM-100等が挙げられる。
【0026】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多官能イソシアネート化合物に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0027】
上記多官能イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
また、上記多官能イソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰の多官能イソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長された多官能イソシアネート化合物も使用することができる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0029】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記三価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0030】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレート、ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレート、根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260等が挙げられる。
上記根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、アートレジンUN-330、アートレジンSH-500B、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-9000H等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6HA、U-6LPA、U-10H、U-15HA、U-108、U-108A、U-122A、U-122P、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4000、UA-4100、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、AH-600、AI-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T等が挙げられる。
【0031】
上記硬化性樹脂は、柔軟骨格を有する化合物を含むことが好ましく、柔軟骨格を有するエポキシ化合物及び/又は柔軟骨格を有する(メタ)アクリル化合物を含むことがより好ましい。このような柔軟骨格を有する化合物を用いることにより、上記硬化物の121℃における貯蔵弾性率を上述した範囲とすることがより容易となる。
【0032】
上記柔軟骨格は、ラクトンの開環構造、アルキレンオキサイド構造、及び、ゴム構造からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、ラクトンの開環構造がより好ましい。
なお、本明細書において上記「ゴム構造」は、生ゴムに硫黄を加えることで形成される加硫ゴム構造、付加重合により分子主鎖内に形成された二重結合による合成ゴム構造、過酸化物を用いてポリメチルシロキサンを架橋させること等により形成されるシリコーンゴム構造等、ゴム弾性を発揮する構造を意味する。
【0033】
上記ラクトンとしては、例えば、γ-ウンデカラクトン、ε-カプロラクトン、γ-デカラクトン、σ-ドデカラクトン、γ-ノナラクトン、γ-ノナノラクトン、γ-バレロラクトン、σ-バレロラクトン、β-ブチロラクトン、γ-ブチロラクトン、β-プロピオラクトン、σ-ヘキサノラクトン、7-ブチル-2-オキセパノン等が挙げられる。なかでも、開環したときに主骨格の直鎖部分の炭素数が5~7となるものが好ましい。
【0034】
上記アルキレンオキサイド構造としては、例えば、エチレンオキサイド構造、プロピレンオキサイド構造、ブチレンオキサイド構造等が挙げられる。
【0035】
上記ゴム構造は、主鎖に不飽和結合を有する構造、又は、主鎖にポリシロキサン骨格を有する構造であることが好ましい。
上記主鎖に不飽和結合を有する構造としては、例えば、主鎖に共役ジエンの重合による骨格を有する構造等が挙げられる。
上記共役ジエンの重合による骨格としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン骨格、ポリブタジエン骨格、ポリイソプレン骨格、スチレン-ブタジエン骨格、ポリイソブチレン骨格、ポリクロロプレン骨格等が挙げられる。
【0036】
上記硬化性樹脂100重量部中における上記柔軟骨格を有する化合物の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は30重量部である。上記柔軟骨格を有する化合物の含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用シール剤の硬化物の121℃における貯蔵弾性率を上述した範囲とすることがより容易となる。上記柔軟骨格を有する化合物の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は20重量部である。
【0037】
本発明の表示素子用シール剤は、重合開始剤及び/又は熱硬化剤を含有する。
上記重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0038】
上記ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0039】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
上記光ラジカル重合開始剤としては、具体的には例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-((4-メチルフェニル)メチル)-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-(フェニルチオ)フェニル)-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等が挙げられる。
【0040】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等で構成されるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物で構成される高分子アゾ開始剤が好ましい。
なお、本明細書において高分子アゾ化合物とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイルオキシ基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0041】
上記高分子アゾ化合物の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、硬化性樹脂へ容易に混合することができ、得られる表示素子用シール剤を液晶表示素子に用いる場合には液晶への悪影響を防止することができる。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0042】
上記高分子アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記高分子アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記高分子アゾ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ化合物として市販されているものとしては、例えば、V-65、V-501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0043】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0044】
上記カチオン重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤を好適に用いることができる。上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生タイプのものであってもよいし、非イオン性光酸発生タイプであってもよい。
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類、鉄-アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール-アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等が挙げられる。
【0045】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-170(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
【0046】
上記重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0047】
上記重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が30重量部である。上記重合開始剤の含有量が0.1重量部以上であることにより、得られる表示素子用シール剤が硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量が30重量部以下であることにより、得られる表示素子用シール剤が保存安定性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は1重量部、より好ましい上限は10重量部であり、更に好ましい上限は5重量部である。
【0048】
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、固形の有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
上記熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0049】
上記固形の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、1,3-ビス(ヒドラジノカルボエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の有機酸ヒドラジド、日本ファインケム社製の有機酸ヒドラジド、味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
上記大塚化学社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記日本ファインケム社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、MDH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH等が挙げられる。
【0050】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量が1重量部以上であることにより、得られる表示素子用シール剤が熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量が50重量部以下であることにより、得られる表示素子用シール剤が塗布性及び保存安定性により優れるものとなる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0051】
本発明の表示素子用シール剤は、粘度調整、応力分散効果による接着性の向上、線膨張率の改善、硬化物の耐湿性の向上等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0052】
上記充填剤としては、無機充填剤や有機充填剤を用いることができる。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
上記有機充填剤としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
【0053】
本発明の表示素子用シール剤100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等の悪化を抑制しつつ、接着性の向上等の効果をより発揮することができる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0054】
本発明の表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0055】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が好適に用いられる。これらのシランカップリング剤は、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、得られる表示素子用シール剤を液晶表示素子に用いる場合には液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができる。
上記シランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0056】
本発明の表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用シール剤が接着性により優れるものとなり、得られる表示素子用シール剤を液晶表示素子に用いる場合には液晶汚染の発生を抑制できるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0057】
本発明の表示素子用シール剤は、上記遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0058】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
上記遮光剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0059】
上記チタンブラックは、波長300nm以上800nm以下の光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370nm以上450nm以下の光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の表示素子用シール剤に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。本発明の表示素子用シール剤に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
【0060】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを含有する本発明の表示素子用シール剤を用いて製造した表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する表示素子を実現することができる。
【0061】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、三菱マテリアル社製のチタンブラック、赤穂化成社製のチタンブラック等が挙げられる。
上記三菱マテリアル社製のチタンブラックとしては、例えば、12S、13M、13M-C、13R-N、14M-C等が挙げられる。
上記赤穂化成社製のチタンブラックとしては、例えば、ティラックD等が挙げられる。
【0062】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0063】
上記遮光剤の一次粒子径は、表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる表示素子用シール剤の描画性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0064】
本発明の表示素子用シール剤100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる表示素子用シール剤の接着性、硬化後の強度、及び、描画性の悪化を抑制しつつ、遮光性を向上させる効果により優れるものとなる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0065】
本発明の表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、反応性希釈剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、その他のカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0066】
本発明の表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0067】
本発明の表示素子用シール剤は、硬化物のガラス転移温度の好ましい下限が125℃である。上記硬化物のガラス転移温度が125℃以上であることにより、得られる表示素子用シール剤が高温高湿環境下における気泡の侵入を抑制する効果により優れるものとなる。上記硬化物のガラス転移温度のより好ましい下限は130℃である。
また、密着性の観点から、上記硬化物のガラス転移温度の好ましい上限は170℃である。
なお、本明細書において上記「ガラス転移温度」は、動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)の極大のうち、ミクロブラウン運動に起因する極大が現れる温度を意味する。上記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置等を用いた従来公知の方法により測定することができる。
また、上記ガラス転移温度を測定する硬化物としては、シール剤に100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、120℃で1時間加熱して硬化させたものが用いられる。
【0068】
本発明の表示素子用シール剤は、硬化物を、121℃、100%RH、2atmの環境下に24時間曝す高温高湿試験を行った後の吸水率の好ましい上限が4.0重量%である。上記吸水率が4.0重量%以下であることにより、本発明の表示素子用シール剤が高温高湿環境下における気泡の侵入を抑制する効果により優れるものとなる。上記吸水率のより好ましい上限は3.0重量%、更に好ましい上限は2.5重量%である。
また、上記吸水率の好ましい下限は特にないが、実質的な下限は1.0重量%である。
なお、上記「吸水率」は、上記高温高湿試験前の重量をW、高温高湿試験後の重量をWとした場合、下記式により算出される。
吸水率(重量%)=((W-W)/W)×100
また、上記吸水率を測定する硬化物としては、シール剤に100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、120℃で1時間加熱して硬化させたものが用いられる。
【0069】
本発明の表示素子用シール剤に導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0070】
上記導電性微粒子は特に限定されず、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0071】
本発明の表示素子用シール剤の硬化物、又は、本発明の上下導通材料の硬化物を有する表示素子もまた、本発明の1つである。本発明の表示素子としては、液晶表示素子が好適である。
本発明の表示素子用シール剤を用いて液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられ、具体的には例えば、以下の各工程を有する方法等が挙げられる。
まず、ITO薄膜等の電極を有する2枚の透明基板の一方に、本発明の表示素子用シール剤をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により塗布して枠状のシールパターンを形成する工程を行う。次いで、液晶の微小滴をシールパターンの枠内全面に滴下塗布し、真空下で他方の透明基板を重ね合わせる工程を行う。その後、シールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を仮硬化させる工程、及び、仮硬化させたシール剤を加熱して本硬化させる工程を行う方法により、液晶表示素子を得ることができる。
【発明の効果】
【0072】
本発明によれば、高温高湿環境下における信頼性に優れる表示素子を得ることができる表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0074】
(実施例1~7、比較例1~5)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌機を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより表示素子用シール剤を調製した。上記遊星式撹拌機としては、あわとり練太郎(シンキー社製)を用いた。
なお、表1、2中、「NEM-5000H」は、部分メタクリル変性ビスフェノールA型エポキシ化合物を約50重量%、ビスフェノールA型エポキシメタクリレートを約25重量%、ビスフェノールA型エポキシ化合物を約25重量%含有する混合物(エポキシ基を有する化合物の含有割合約75重量%)である。また、表1、2中、「KRM8287」は、部分アクリル変性ビスフェノールE型エポキシ化合物を約50重量%、ビスフェノールE型エポキシアクリレートを約25重量%、ビスフェノールE型エポキシ化合物を約25重量%含有する混合物(エポキシ基を有する化合物の含有割合約75重量%)である。
【0075】
得られた各表示素子用シール剤を、2枚の無アルカリガラスのうちの一方に塗布し、塗布したシール剤の上から別の無アルカリガラスを重ね、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、他方の無アルカリガラスを剥離し、120℃で1時間加熱してシール剤を熱硬化させ、硬化物を得た。無アルカリガラスとしては、OA-10G(日本電気硝子社製、厚さ0.7mm、表面粗さ0.2nmRa)を用いた。得られた硬化物について、25℃において、接触角計を用いて水及びヨウ化メチレンとの接触角(滴下量3μL、滴下30秒後)を測定し、上述した式により極性成分項を算出した。上記接触角計としては、全自動接触角計DMo-701(協和界面科学社製)を用いた。結果を表1、2に示した。
また、得られた各表示素子用シール剤について、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、120℃で1時間加熱することにより硬化物を得た。得られた硬化物について、動的粘弾性測定装置を用いて、試験片幅5mm、厚み0.35mm、掴み幅25mm、昇温速度10℃/分、周波数5Hzの条件で121℃における貯蔵弾性率を測定した。また、損失正接(tanδ)の極大値の温度をガラス転移温度として求めた。上記動的粘弾性測定装置としては、DVA-200(IT計測制御社製)を用いた。結果を表1、2に示した。
更に、得られた各表示素子用シール剤について、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、120℃で1時間加熱することにより硬化物を得た。得られた硬化物について、121℃、100%RH、2atmの環境下に24時間曝す高温高湿試験を行い、上述した式により、吸水率を算出した。結果を表1、2に示した。
【0076】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0077】
(高温高湿環境下における信頼性)
実施例及び比較例で得られた各表示素子用シール剤100重量部にスペーサー粒子1重量部を均一に分散させた。スペーサー粒子としては、ミクロパールSI-H050(積水化学工業社製)を用いた。スペーサー粒子を分散させたシール剤をディスペンス用のシリンジに充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサーにて配向膜及びITO薄膜付きの透明基板上に長方形の枠を描く様に塗布した。シリンジとしてはPSY-10E(武蔵エンジニアリング社製)を用い、ディスペンサーとしてはSHOTMASTER300(武蔵エンジニアリング社製)を用いた。続いて液晶の微小滴をシール剤の枠内全面に滴下塗布し、すぐに別の透明基板を貼り合わせた。液晶としては、JC-5004LA(チッソ社製)を用いた。透明基板を貼り合わせた直後、シール剤部分にメタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線(波長365nm)を30秒照射した後、120℃で1時間加熱することにより、液晶表示素子を得た。実施例及び比較例で得られた各表示素子用シール剤について、それぞれ20個の液晶表示素子を作製した。
得られた液晶表示素子を24時間、PCT条件(121℃、100%RH、2atm)に曝した。PCT条件に曝した後の液晶表示素子について目視観察によって気泡の有無を確認した。
20個全ての液晶表示素子に気泡が確認されなかった場合を「◎」、1個以上3個以下の液晶表示素子に気泡が確認された場合を「○」、4個以上8個以下の液晶表示素子に気泡が確認された場合を「△」、9個以上の液晶表示素子に気泡が確認された場合を「×」として、高温高湿環境下における信頼性を評価した。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、高温高湿環境下における信頼性に優れる表示素子を得ることができる表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び表示素子を提供することができる。