(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20241211BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653C
H01L29/78 652T
H01L29/78 652N
(21)【出願番号】P 2021118602
(22)【出願日】2021-07-19
【審査請求日】2023-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2020155203
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】田中 明広
(72)【発明者】
【氏名】税所 哲弘
(72)【発明者】
【氏名】生野 徹
(72)【発明者】
【氏名】大西 孝治
【審査官】恩田 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-003656(JP,A)
【文献】特開2019-192678(JP,A)
【文献】特開2019-169595(JP,A)
【文献】特許第6604585(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
終端と、第1領域と、前記第1領域と前記終端との間に位置する第2領域とを有する半導体部であって、第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層上に設けられた第1導電型の第3半導体層と、前記第2半導体層上に設けられ、前記第2半導体層よりも第2導電型不純物濃度が高い第2導電型の第4半導体層とを有し、前記第2領域における前記第3半導体層の面積に対する前記第4半導体層の面積の比率は、前記第1領域における前記第3半導体層の面積に対する前記第4半導体層の面積の比率よりも大きい、半導体部と、
前記半導体部内に設けられ、前記第2半導体層に対向する側面を有するゲート電極と、
前記ゲート電極の前記側面と、前記半導体部との間に設けられた絶縁膜と、
前記半導体部上に設けられ、前記第3半導体層および前記第4半導体層に接する上部電極と、
を備え
、
前記第4半導体層は、前記第1領域に配置された第1部分と、前記第2領域に配置された第2部分と、前記第2領域に配置され、前記第1部分と前記第2部分とをつなぐ第3部分とを有し、
前記第2部分の幅および前記第3部分の幅は、前記第1部分の幅よりも大きく、
複数の前記ゲート電極と複数の前記第3部分が、前記ゲート電極が延びる第1方向に交差する第2方向に交互に並び、
複数の前記第3部分が前記ゲート電極を介して前記第2方向に並ぶ領域の前記第2方向の長さは、前記半導体部のコーナー部に近い領域ほど長い半導体装置。
【請求項2】
前記第1領域は、前記第2領域よりも広い請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項3】
共通電極と、第1ゲートパッドと、第2ゲートパッドとをさらに備え、
前記上部電極は、互いに分離して前記半導体部上に配置された第1ソース電極と第2ソース電極とを有し、
前記第1ゲートパッドは、前記第1ソース電極が配置された第1トランジスタ領域の前記ゲート電極と接続され、
前記第2ゲートパッドは、前記第2ソース電極が配置された第2トランジスタ領域の前記ゲート電極と接続され、
前記共通電極は、前記第1トランジスタ領域と前記第2トランジスタ領域の両方に共通に前記半導体部の下面に設けられている請求項1
または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1領域における前記第3半導体層の面積と前記第4半導体層の面積との比率は、5:1であり、
前記第2領域における前記第3半導体層の面積と前記第4半導体層の面積との比率は、2.5:1である請求項
1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレンチゲートによりオンオフ動作を制御する縦型構造の半導体装置において、ターンオフ時の寄生トランジスタの動作により、特に装置終端(コーナー部を含む)に近い領域に電流が集中しやすく破壊耐量が低くなりやすい問題がある。トランジスタのベース層と同極性の高濃度のコンタクト層を設けてキャリア排出抵抗を低減させる層を設ける(以降、キャリア抜き(層)と定義する)ことで寄生トランジスタの動作抑制を行うことは有効な抑制手段の一つである。しかし、キャリア抜き領域の比率を高くし過ぎるとオン抵抗の増大を引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、寄生トランジスタの動作を抑制しつつオン抵抗の増大を抑えることができる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体装置は、終端と、第1領域と、前記第1領域と前記終端との間に位置する第2領域とを有する半導体部であって、第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられた第2導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層上に設けられた第1導電型の第3半導体層と、前記第2半導体層上に設けられ、前記第2半導体層よりも第2導電型不純物濃度が高い第2導電型の第4半導体層とを有する半導体部と、前記半導体部内に設けられ、前記第2半導体層に対向する側面を有するゲート電極と、前記ゲート電極の前記側面と、前記半導体部との間に設けられた絶縁膜と、前記半導体部上に設けられ、前記第3半導体層および前記第4半導体層に接する上部電極と、を備える。前記第2領域における前記第3半導体層の面積に対する前記第4半導体層の面積の比率は、前記第1領域における前記第3半導体層の面積に対する前記第4半導体層の面積の比率よりも大きい。前記第4半導体層は、前記第1領域に配置された第1部分と、前記第2領域に配置された第2部分と、前記第2領域に配置され、前記第1部分と前記第2部分とをつなぐ第3部分とを有する。前記第2部分の幅および前記第3部分の幅は、前記第1部分の幅よりも大きい。複数の前記ゲート電極と複数の前記第3部分が、前記ゲート電極が延びる第1方向に交差する第2方向に交互に並ぶ。複数の前記第3部分が前記ゲート電極を介して前記第2方向に並ぶ領域の前記第2方向の長さは、前記半導体部のコーナー部に近い領域ほど長い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の半導体装置の一つの構成例を示した模式平面図である。
【
図2】実施形態の半導体装置の模式断面斜視図である。
【
図3】実施形態の半導体装置の一つの構成例を示した模式平面図である。
【
図4】実施形態の半導体装置のコーナー部の近傍における一つの構成例を示した模式平面図である。
【
図5】実施形態の半導体装置のコーナー部の近傍における一つの構成例を示した模式平面図である。
【
図6】配線基板上に実装された実施形態の半導体装置の模式断面図である。
【
図7】半導体装置のオン抵抗及び二次降伏耐量の測定結果を示すグラフである。
【
図8】実施形態の半導体装置における第1領域及び第2領域の配置例を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0008】
図1は、半導体装置1の一つの構成例を示した模式平面図である。
図2は、半導体装置1の模式断面斜視図である。
【0009】
半導体装置1は、半導体部10と、半導体部10の上面に設けられた上部電極62と、半導体部10の下面に設けられた共通電極(または下部電極)61とを有する。
【0010】
半導体部10の上面または下面に平行な面内において互いに直交する2方向をX方向およびY方向とする。それらX方向およびY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0011】
半導体装置1は、半導体部10における上部電極62と共通電極61とを結ぶ縦方向(Z方向)に電流が流れる縦型半導体装置である。また、半導体装置1は、電流のオンオフ動作を制御するためのトレンチゲート構造のゲート電極20を有する。
【0012】
半導体装置1は、共通電極61を共有する第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2を有する。第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2は、X方向において隣接している。第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2は、同じ構造を有し、例えばMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)である。
図2に示す構成は、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2に共通の構成である。
【0013】
図1に示すように、半導体部10は、終端100と、第1領域101と、第1領域101と終端100との間に位置する第2領域102とを有する。終端100は、半導体部10の最外周側面およびコーナー部を含む。第1領域101と第2領域102との境界を模式的に2点鎖線で表す。第2領域102は、終端100に沿うように形成されている。また、第2領域102は、第1トランジスタQ1が形成された第1トランジスタ領域と、第2トランジスタQ2が形成された第2トランジスタ領域との間にも配置されている。1つの半導体装置1において、第1領域101は第2領域102よりも広い。
【0014】
半導体部10の材料は例えばシリコンである。または、半導体部10の材料は、例えば、炭化シリコン、窒化ガリウムなどであってもよい。
【0015】
以下の説明では第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。
【0016】
図2に示すように、半導体部10は、n型のドレイン層(または半導体基板)11と、ドレイン層11上に設けられたn型のドリフト層(第1半導体層)12と、ドリフト層12上に設けられたp型のベース層(第2半導体層)13と、ベース層13上に設けられたn型のソース層(第3半導体層)14と、ベース層13上に設けられたp型のキャリア抜き層(第4半導体層)15とを有する。
【0017】
ドリフト層12のn型不純物濃度は、ドレイン層11のn型不純物濃度およびソース層14のn型不純物濃度よりも低い。キャリア抜き層15のp型不純物濃度は、ベース層13のp型不純物濃度よりも高い。
【0018】
半導体部10内に、複数のゲート電極20が設けられている。ゲート電極20は、半導体部10内をX方向に延びている。ゲート電極20と半導体部10との間に絶縁膜31が設けられている。ゲート電極20の側面とベース層13との間に絶縁膜31が設けられている。ゲート電極20の側面は、絶縁膜31を介してベース層13に対向している。
【0019】
半導体部10は、ゲート電極20によってY方向に分断され、X方向に延びるメサ部70を有する。そのメサ部70にベース層13、ソース層14、およびキャリア抜き層15が設けられている。言い換えると、ベース層13、ソース層14、およびキャリア抜き層15は、Y方向において隣接するゲート電極20間に設けられている。ソース層14とキャリア抜き層15は、X方向に沿って交互に配置されている。
【0020】
半導体部10の上面に上部電極(ソース電極)62が設けられている。上部電極62は、ソース層14およびキャリア抜き層15に接している。上部電極62とゲート電極20との間に絶縁膜32が設けられている。半導体部10の下面に共通電極(ドレイン電極)61が設けられている。
【0021】
上部電極62は、半導体部10上で2つに分離している。
図1において破線で表すように、第1トランジスタQ1が形成された第1トランジスタ領域に第1ソース電極62aが形成され、第2トランジスタQ2が形成された第2トランジスタ領域に第2ソース電極62bが形成されている。
【0022】
第1ソース電極62a上に例えば2つの第1ソースパッドS1が配置されている。第1ソースパッドS1は、第1ソース電極62aと電気的に接続されている。第2ソース電極62b上に例えば2つの第2ソースパッドS2が配置されている。第2ソースパッドS2は、第2ソース電極62bと電気的に接続されている。
【0023】
共通電極61は、1つの半導体装置1内で分離されず、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2に共通に設けられている。
【0024】
第1トランジスタ領域の半導体部10上に、例えば1つの第1ゲートパッドG1が配置されている。第2トランジスタ領域の半導体部10上に、例えば1つの第2ゲートパッドG2が配置されている。
【0025】
図3は、半導体装置1における、ゲート電極20、ゲート配線21a、21b、ゲートパッドG1、G2、ソース層14、およびキャリア抜き層15の配置関係を示す模式平面図である。
【0026】
第1トランジスタQ1の複数のゲート電極20はX方向に延びている。第1トランジスタQ1の複数のゲート電極20は、それらゲート電極20が配置された領域を囲むように形成された第1ゲート配線21aと電気的に接続されている。第1ゲート配線21aは第1ゲートパッドG1と電気的に接続されている。第1ゲート配線21aは、終端100側の第2領域102に配置されている。
【0027】
第2トランジスタQ2の複数のゲート電極20はX方向に延びている。第2トランジスタQ2の複数のゲート電極20は、それらゲート電極20が配置された領域を囲むように形成された第2ゲート配線21bと電気的に接続されている。第2ゲート配線21bは第2ゲートパッドG2と電気的に接続されている。第2ゲート配線21bは、終端100側の第2領域102に配置されている。
【0028】
ゲート電極20にしきい値電圧以上の電圧を印加すると、ベース層13におけるゲート電極20に対向する領域にチャネルが形成される。第1トランジスタQ1のゲート電極20と、第2トランジスタQ2のゲート電極20とは、互いに電気的に独立して制御可能である。
【0029】
図6は、半導体装置1が配線基板200上に実装された状態の模式断面図である。
【0030】
半導体装置1は、共通電極61を上に向けた状態で、配線基板200上に実装される。半導体装置1の第1ソースパッドS1、第2ソースパッドS2、第1ゲートパッドG1、および第2ゲートパッドG2が、接合部材(例えば、はんだ)90を介して、配線基板200の導体部201に接合される。
【0031】
実施形態の半導体装置1は、例えば充放電回路に組み込まれ、充放電の双方向の電流の導通を制御するスイッチとして使用することができる。第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2はドレイン部(ドレイン層11および共通電極61)を共有し、第1トランジスタQ1の第1ソース電極62aと、第2トランジスタQ2の第2ソース電極62bはそれぞれ電気的に独立した(異なる電位が与えられる)端子に接続される。共通電極61を介して、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2との間を電流が流れる。
【0032】
ゲート電極20へのしきい値電圧以上の電圧の印加を停止するターンオフ時に、
図2に示す寄生トランジスタTrが動作する場合がある。寄生トランジスタTrは、ドリフト層12をコレクタ、ソース層14をエミッタ、ベース層13をベースとするnpn型のトランジスタである。
【0033】
ターンオフ時にドレインソース間の急峻な電圧変化(dv/dt)が発生し、ベース層13とドリフト層12との間の容量を経由して寄生トランジスタTrのベース電流IBが流れ、ベースエミッタ間電位VBEが発生し、寄生トランジスタTrがオンする。寄生トランジスタTrがオンすると、ゲート電極20によって制御されるMOSFETの本来の電流経路とは別の電流経路が形成され、破壊の原因になり得る。
【0034】
ターンオフ時にキャリア抜き層15を通じてベース層13に蓄積する正孔が上部電極(ソース電極)62に抜けにくいと、少ないベース電流IBでも寄生トランジスタTrをオンするのに十分なベースエミッタ間電位VBEが発生してしまう。
【0035】
寄生トランジスタTrをオンさせるベースエミッタ間電位VBEの発生を抑制するために、キャリア抜き層15の面積を増やすことが対策の一つとして挙げられる。しかし、キャリア抜き層15の面積を増やすと、相対的にソース層14の面積が少なくなりオン抵抗が上がってしまうトレードオフの関係がある。
【0036】
半導体部10の中でも、コーナー部も含む終端100に近い領域に大きな電界がかかり、電流が集中しやすく、特に終端100に近い領域で破壊しやすい傾向がある。
【0037】
そこで、本実施形態では、終端100に近い第2領域102におけるソース層14の面積に対するキャリア抜き層15の面積の比率Mを、第2領域102よりも内側の第1領域101におけるソース層14の面積に対するキャリア抜き層15の面積の比率Nよりも大きくしている。第2領域102における単位面積当たりの比率Mは、第1領域101における単位面積当たりの比率Nよりも大きい。
【0038】
例えば、
図3に示すように、キャリア抜き層15は、第1領域101に配置された第1部分51と、第2領域102に配置された第2部分52とを有する。第2部分52は、ゲート配線21a、21bの近傍でゲート配線21a、21bに沿って形成されている。ゲート配線21a、21bは、第2部分52と終端100との間に配置されている。なお、第1部分51は
図3においてY方向に太い実線で示される。すなわち、第1部分51のX方向における幅は太い実線の幅となる。
【0039】
第1領域101において第1部分51は、ゲート電極20によって分断された破線状にY方向に延びている(並んでいる)。第2部分52も、ゲート電極20によって分断された破線状にY方向に延びている(並んでいる)。第2部分52において、Y方向に延びる部分のX方向の幅は、第1部分51のX方向の幅よりも大きい。第2部分52において、ゲート電極20が延びる方向であるX方向に延びる部分は、分断されず連続している。その第2部分52のX方向に連続して延びる部分のY方向の幅は、第1部分51のX方向の幅よりも大きい。
【0040】
第2領域102に配置された第2部分52の幅を、第1領域101に配置された第1部分51の幅よりも大きくすることで、第2領域102におけるベース層13の正孔は、キャリア抜き層15を通じて上部電極62に抜けやすくなる。これにより、ターンオフ時に、終端100に近い領域で起こりやすい寄生トランジスタTrの動作を抑制し、破壊耐量を向上させることができる。第2領域102よりも広く、半導体装置1におけるチャネルが形成される領域の大部分を占める第1領域101に配置された第1部分51の幅は、第2部分52の幅よりも小さくすることで、第1領域101においては相対的にソース層14の単位面積当たりの比率を第2領域102よりも高くして、オン抵抗の上昇を抑えることができる。
【0041】
図4は、半導体部10のコーナー部110の近傍における一つの構成例を示した模式平面図である。
【0042】
キャリア抜き層15は、第1領域101に配置された前述した第1部分51と、第2領域102に配置された前述した第2部分52に加えて、さらに、第2領域102におけるコーナー部110の近くに配置され、第1部分51と第2部分52とをつなぐ第3部分53を有する。複数のゲート電極20と複数の第3部分53が、ゲート電極20が延びるX方向に交差(例えば直交)するY方向に交互に並んでいる。
【0043】
第2部分52のX方向の幅および第3部分53のX方向の幅は、第1部分51のX方向の幅よりも大きい。複数の第3部分53がゲート電極20を介してY方向に並ぶ領域55のY方向の長さは、コーナー部110に近い領域ほど長い。領域55は、X方向においてコーナー部110に近づくほどY方向の長さが段階的に長くなっている。
【0044】
このような構成により、特にコーナー部110に近い領域で起こりやすい寄生トランジスタTrの動作を抑制し、破壊耐量を向上させることができる。
【0045】
また、
図5に示すように、コーナー部110の近くに配置された複数の領域55のY方向の長さは同じにしてもよい。
【0046】
図7は、半導体装置のオン抵抗及び二次降伏耐量の測定結果を示すグラフである。
【0047】
図7のグラフにおいて白丸は、比較例の半導体装置における測定値を示す。ソース層14の面積Nと、キャリア抜き層15の面積Pとの比をN:Pとする。比較例の半導体装置では、第2領域102における比N:Pを、第1領域101における比N:Pと同じにしている。比較例においては、比N:Pが5:1のときの測定値と、比N:Pが4:1のときの測定値と、比N:Pが3:1のときの測定値を測定した。
【0048】
比較例における比N:Pが5:1のときの二次降伏耐量の測定値を基準値(1.00)とし、
図7のグラフの横軸の二次降伏耐量は、基準値に対する比を表す。また、比較例における比N:Pが5:1のときのオン抵抗の測定値を基準値(1.00)とし、
図7のグラフの縦軸のオン抵抗は、基準値に対する比を表す。
【0049】
比較例においては、キャリア抜き層15の面積Pに対するソース層14の面積Nの比の増減にともない、オン抵抗及び二次降伏耐量は、
図7に示す破線に沿うように変化する。すなわち、比較例において、キャリア抜き層15の面積Pに対するソース層14の面積Nの比が低くなれば、二次降伏耐量は高くなるが、オン抵抗も高くなる。比較例において、キャリア抜き層15の面積Pに対するソース層14の面積Nの比が高くなれば、オン抵抗は低くなるが、二次降伏耐量も低くなる。
【0050】
図7のグラフにおいて黒丸は、実施形態の半導体装置におけるオン抵抗及び二次降伏耐量の測定値を示す。この測定値を測定した半導体装置における第1領域101及び第2領域102の配置例を
図8に示す。
【0051】
第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2とがX方向に並んでいる。第1トランジスタQ1をX方向において3つの領域(第1領域101と、終端100側の第2領域102aと、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2との境界側の第2領域102b)に分けた。第2トランジスタQ2もX方向において3つの領域(第1領域101と、終端100側の第2領域102aと、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2との境界側の第2領域102b)に分けた。
【0052】
第1トランジスタQ1及び第2トランジスタQ2のそれぞれにおいて、第2領域102aのX方向の長さa、第2領域102bのX方向の長さb、及び第1領域101のX方向の長さcの比は、1:1:7である。また、第1領域101の面積は、第2領域102aの面積の5.5倍であり、第2領域102bの面積の5.5倍である。
【0053】
この実施形態の半導体装置において、第1領域101における比N:Pは5:1であり、第2領域102a及び第2領域102bにおける比N:Pは2.5:1である。すなわち、実施形態の半導体装置においては、第2領域102におけるソース層14の面積Nに対するキャリア抜き層15の面積Pの比を、第1領域101におけるソース層14の面積Nに対するキャリア抜き層15の面積Pの比よりも大きくしている。
【0054】
図7の結果より、実施形態の半導体装置では、第1領域101と第2領域102で比N:Pを同じにする比較例に比べて、オン抵抗の低減と、二次降伏耐量を高くすることとの両立が可能となる。
【0055】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1…半導体装置、10…半導体部、11…ドレイン層、12…ドリフト層(第1半導体層)、13…ベース層(第2半導体層)、14…ソース層(第3半導体層)、15…キャリア抜き層(第4半導体層)、20…ゲート電極、21…ゲート配線、31…絶縁膜、51…第1部分、52…第2部分、53…第3部分、61…共通電極、62…上部電極、62a…第1ソース電極、62b…第2ソース電極、100…終端、101…第1領域、102…第2領域、110…コーナー部、200…配線基板、Q1…第1トランジスタ、Q2…第2トランジスタ、Tr…寄生トランジスタ