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特許7602448媒体切断方法および媒体切断装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】媒体切断方法および媒体切断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/02 20060101AFI20241211BHJP
   B26D 3/10 20060101ALI20241211BHJP
   B26D 1/04 20060101ALI20241211BHJP
   B41J 11/66 20060101ALI20241211BHJP
   B65H 35/06 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B26D3/02
B26D3/10 L
B26D1/04 Z
B41J11/66
B65H35/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021188008
(22)【出願日】2021-11-18
(65)【公開番号】P2023074854
(43)【公開日】2023-05-30
【審査請求日】2024-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】川井 智也
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-350061(JP,A)
【文献】特開2012-006668(JP,A)
【文献】特開平03-288633(JP,A)
【文献】特開昭48-011690(JP,A)
【文献】特開2006-103102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/02
B26D 3/10
B26D 1/04
B41J 11/66
B65H 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の媒体を切断するためのカッター刃を有するカッターユニットと、前記媒体の長手方向と前記媒体の厚さ方向とに直交する前記媒体の幅方向および前記媒体の長手方向に前記媒体に対して前記カッターユニットを相対的に移動させる移動機構とを備える媒体切断装置において前記媒体を切断するための媒体切断方法であって、
前記媒体を貫通するように前記カッター刃を前記媒体に突き刺す第1突刺し工程と、
前記第1突刺し工程で前記カッター刃を突き刺した箇所である第1突刺し箇所を起点にして前記媒体に対して前記カッター刃を前記媒体の長手方向および前記媒体の幅方向に相対的に移動させて前記媒体の幅方向に対して傾斜した方向で前記媒体を切る第1カット工程と
前記媒体に対して前記カッター刃を前記媒体の幅方向に相対的に移動させて前記媒体の幅方向の全域で前記媒体を切る第2カット工程とを備え
前記移動機構は、前記媒体の長手方向に前記媒体を搬送する媒体搬送機構と、前記媒体の幅方向に前記カッターユニットを移動させるカッターユニット駆動機構とを備え、
前記媒体の搬送方向の上流側を搬送方向上流側とし、前記媒体の搬送方向の下流側を搬送方向下流側とし、前記媒体の幅方向の一方側を第1方向側とし、前記媒体の幅方向の他方側を第2方向側とし、前記第2カット工程での前記媒体のカット位置よりも前記搬送方向上流側に配置される前記媒体を上流側媒体とし、前記第2カット工程が終わった後の前記上流側媒体の前記搬送方向下流側の端面を第1端面とすると、
前記第1突刺し工程では、前記上流側媒体に前記カッター刃を突き刺し、
前記第1カット工程では、前記第1突刺し箇所から前記第1端面まで前記上流側媒体を切ることを特徴とする媒体切断方法。
【請求項2】
前記上流側媒体を貫通するように前記カッター刃を前記上流側媒体に突き刺す第2突刺し工程と、
前記第2突刺し工程で前記カッター刃を突き刺した箇所である第2突刺し箇所を起点にして前記上流側媒体に対して前記カッター刃を前記媒体の長手方向および前記媒体の幅方向に相対的に移動させて前記媒体の幅方向に対して傾斜した方向で前記上流側媒体を切る第3カット工程とを備え、
前記媒体切断装置は、前記媒体の前記搬送方向下流側の端部が固定される巻き取り用の紙管を回転させて前記紙管に前記媒体を巻き取る媒体巻取機構を備え、
前記第1突刺し工程では、前記上流側媒体の前記第1方向側の端部に前記カッター刃を突き刺し、
前記第1カット工程では、前記第1突刺し箇所から前記第1端面まで前記搬送方向下流側かつ前記第2方向側に前記上流側媒体に対して前記カッター刃を相対移動させ、
前記第2突刺し工程では、前記上流側媒体の前記第2方向側の端部に前記カッター刃を突き刺し、
前記第3カット工程では、前記第2突刺し箇所から前記第1端面まで前記搬送方向下流側かつ前記第1方向側に前記上流側媒体に対して前記カッター刃を相対移動させることを特徴とする請求項記載の媒体切断方法。
【請求項3】
前記第1突刺し工程の後であって前記第1カット工程の前に、前記第1突刺し箇所を起点にして前記上流側媒体に対して前記カッター刃を前記第1方向側に移動させて前記第1突刺し箇所から前記上流側媒体の前記第1方向側の端面まで前記媒体の幅方向で前記上流側媒体を切る第4カット工程と、
前記第2突刺し工程の後であって前記第3カット工程の前に、前記第2突刺し箇所を起点にして前記上流側媒体に対して前記カッター刃を前記第2方向側に移動させて前記第2突刺し箇所から前記上流側媒体の前記第2方向側の端面まで前記媒体の幅方向で前記上流側媒体を切る第5カット工程とを備えることを特徴とする請求項記載の媒体切断方法。
【請求項4】
前記カッターユニットは、前記カッター刃が固定されるカッターホルダと、前記カッターホルダを回動可能に保持するユニットフレームとを備え、
前記カッターホルダは、前記媒体の厚さ方向を回動の軸方向として前記ユニットフレームに対して回動可能となっており、
前記第1カット工程および前記第3カット工程では、前記カッター刃は、前記ユニットフレームに対して回動が可能な状態となっており、
前記第1カット工程での、前記媒体の幅方向に対する前記上流側媒体のカット角度、および、前記第3カット工程での、前記媒体の幅方向に対する前記上流側媒体のカット角度は、前記媒体の幅にかかわらず一定になっていることを特徴とする請求項または記載の媒体切断方法。
【請求項5】
前記第2カット工程は、前記媒体を貫通するように前記カッター刃を前記媒体に突き刺す第3突刺し工程と、前記第3突刺し工程で前記カッター刃を突き刺した箇所である第3突刺し箇所を起点にして前記媒体の前記第1方向側の端面まで前記媒体に対して前記カッター刃を前記第1方向側に移動させて前記媒体の幅方向で前記媒体を切る第6カット工程と、前記第3突刺し箇所を起点にして前記媒体の前記第2方向側の端面まで前記媒体に対して前記カッター刃を前記第2方向側に移動させて前記媒体の幅方向で前記媒体を切る第7カット工程とを備えることを特徴とする請求項からのいずれかに記載の媒体切断方法。
【請求項6】
長尺の媒体を切断するためのカッター刃を有するカッターユニットと、前記媒体の長手方向と前記媒体の厚さ方向とに直交する前記媒体の幅方向および前記媒体の長手方向に前記媒体に対して前記カッターユニットを相対的に移動させる移動機構とを備え、前記移動機構は、前記媒体の長手方向に前記媒体を搬送する媒体搬送機構と、前記媒体の幅方向に前記カッターユニットを移動させるカッターユニット駆動機構とを備える媒体切断装置の制御方法であって、
前記媒体の搬送方向の上流側を搬送方向上流側とし、前記媒体の搬送方向の下流側を搬送方向下流側とし、前記媒体の幅方向の一方側を第1方向側とし、前記媒体の幅方向の他方側を第2方向側とすると、
前記媒体を貫通するように前記媒体の前記第1方向側の端部に前記カッター刃を突き刺す第1突刺しステップと、
前記第1突刺しステップで前記カッター刃を突き刺した箇所である第1突刺し箇所を起点にして前記媒体に対して前記カッター刃を前記搬送方向下流側かつ前記第2方向側に相対的に移動させて前記第1突刺し箇所から前記媒体の前記搬送方向下流側の端面である第1端面まで前記媒体の幅方向に対して傾斜した方向で前記媒体を切る第1カットステップと、
前記媒体を貫通するように前記媒体の前記第2方向側の端部に前記カッター刃を突き刺す第2突刺しステップと、
前記第2突刺しステップで前記カッター刃を突き刺した箇所である第2突刺し箇所を起点にして前記媒体に対して前記カッター刃を前記搬送方向下流側かつ前記第1方向側に相対的に移動させて前記第2突刺し箇所から前記第1端面まで前記媒体の幅方向に対して傾斜した方向で前記媒体を切る第3カットステップと、
前記第1突刺し箇所を起点にして前記媒体に対して前記カッター刃を前記第1方向側に移動させて前記第1突刺し箇所から前記媒体の前記第1方向側の端面まで前記媒体の幅方向で前記媒体を切る第4カットステップと、
前記第2突刺し箇所を起点にして前記媒体に対して前記カッター刃を前記第2方向側に移動させて前記第2突刺し箇所から前記媒体の前記第2方向側の端面まで前記媒体の幅方向で前記媒体を切る第5カットステップとを備えることを特徴とする媒体切断装置の制御方法。
【請求項7】
前記第4カットステップは、前記第1カットステップの前に実行され、
前記第5カットステップは、前記第3カットステップの前に実行されることを特徴とする請求項記載の媒体切断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の媒体を切断するための媒体切断装置において媒体を切断するための媒体切断方法に関する。また、本発明は、長尺の媒体を切断するための媒体切断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺のシート状の媒体(連続媒体)に印刷を行う印刷装置が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の印刷装置は、インクジェット方式で媒体に印刷を行う印刷部と、媒体を搬送する媒体搬送部と、媒体を切断するためのカッター部とを備えている。媒体搬送部は、駆動ローラとピンチローラとからなる搬送ローラ対を備えている。カッター部は、媒体を切断するカッター刃と、媒体の幅方向に沿ってカッター刃を移動させるキャッリッジとを備えている。カッター刃は、キャリッジに回動可能に保持されている。カッター刃は、媒体の厚さ方向を回動の軸方向としてキャリッジに対して回動自在になっており、上下方向を回動の軸方向としてキャリッジに対して回動自在になっている。
【0003】
特許文献1に記載の印刷装置では、媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を切断する第1モードでの媒体の切断と、媒体の幅方向で媒体を切断する第2モードでの媒体の切断が可能になっている。この印刷装置では、媒体の印刷処理が終了すると、媒体は、第2モードで切断される。また、この印刷装置では、媒体の印刷処理を行うときに、受信した印刷ジョブで使用される媒体と、印刷装置にセットされている媒体の種類とが異なっていて、印刷装置にセットされる媒体を交換する必要がある場合、印刷装置にセットされている媒体は、第1モードでの切断が行われた後に印刷装置から取り外される。
【0004】
すなわち、特許文献1に記載の印刷装置では、印刷装置から一旦取り外されて、その後、印刷装置に再びセットされる媒体の一端は、媒体の幅方向に対して傾斜している。そのため、この印刷装置では、印刷装置に媒体をセットする際に、媒体の一端部を搬送ローラ対の間に容易に通すことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-83251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の印刷装置では、媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を切断する第1モードで媒体を切るときに、媒体の幅方向の端面から媒体を切り始めている。この場合、媒体の種類によっては、カッター刃が媒体の端面で滑ったり、媒体の端面を押してしまったりして、カッター刃が媒体の中に入っていかず、媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を適切に切ることができないおそれがあることが本願発明者の検討によって明らかになった。
【0007】
そこで、本発明の課題は、長尺の媒体を切断するための媒体切断装置において、媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を適切に切ることが可能となる媒体切断方法を提供することにある。また、本発明の課題は、長尺の媒体を切断するための媒体切断装置において、媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を適切に切ることが可能となる媒体切断装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の媒体切断方法は、長尺の媒体を切断するためのカッター刃を有するカッターユニットと、媒体の長手方向と媒体の厚さ方向とに直交する媒体の幅方向および媒体の長手方向に媒体に対してカッターユニットを相対的に移動させる移動機構とを備える媒体切断装置において媒体を切断するための媒体切断方法であって、媒体を貫通するようにカッター刃を媒体に突き刺す第1突刺し工程と、第1突刺し工程でカッター刃を突き刺した箇所である第1突刺し箇所を起点にして媒体に対してカッター刃を媒体の長手方向および媒体の幅方向に相対的に移動させて媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を切る第1カット工程と、媒体に対してカッター刃を媒体の幅方向に相対的に移動させて媒体の幅方向の全域で媒体を切る第2カット工程とを備え、移動機構は、媒体の長手方向に媒体を搬送する媒体搬送機構と、媒体の幅方向にカッターユニットを移動させるカッターユニット駆動機構とを備え、媒体の搬送方向の上流側を搬送方向上流側とし、媒体の搬送方向の下流側を搬送方向下流側とし、媒体の幅方向の一方側を第1方向側とし、媒体の幅方向の他方側を第2方向側とし、第2カット工程での媒体のカット位置よりも搬送方向上流側に配置される媒体を上流側媒体とし、第2カット工程が終わった後の上流側媒体の搬送方向下流側の端面を第1端面とすると、第1突刺し工程では、上流側媒体にカッター刃を突き刺し、第1カット工程では、第1突刺し箇所から第1端面まで上流側媒体を切ることを特徴とする。
【0009】
本発明の媒体切断方法では、第1突刺し工程において、媒体を貫通するようにカッター刃を媒体に突き刺した後、第1カット工程において、カッター刃を突き刺した箇所である第1突刺し箇所を起点にして媒体に対してカッター刃を媒体の長手方向および媒体の幅方向に相対的に移動させて媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を切っている。そのため、本発明では、媒体を貫通しているカッター刃を用いて、媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を切り始めることが可能になる。したがって、本発明では、媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を適切に切ることが可能になる。
【0010】
また、本発明では、媒体切断方法は、媒体に対してカッター刃を媒体の幅方向に相対的に移動させて媒体の幅方向の全域で媒体を切る第2カット工程を備え、移動機構は、媒体の長手方向に媒体を搬送する媒体搬送機構と、媒体の幅方向にカッターユニットを移動させるカッターユニット駆動機構とを備え、媒体の搬送方向の上流側を搬送方向上流側とし、媒体の搬送方向の下流側を搬送方向下流側とし、媒体の幅方向の一方側を第1方向側とし、媒体の幅方向の他方側を第2方向側とし、第2カット工程での媒体のカット位置よりも搬送方向上流側に配置される媒体を上流側媒体とし、第2カット工程が終わった後の上流側媒体の搬送方向下流側の端面を第1端面とすると、第1突刺し工程では、上流側媒体にカッター刃を突き刺し、第1カット工程では、第1突刺し箇所から第1端面まで上流側媒体を切っている
【0011】
すなわち、第1カット工程では、媒体の搬送方向の上流側である搬送方向上流側に上流側媒体を搬送しながら、上流側媒体の搬送方向下流側の端面である第1端面まで上流側媒体を切るため、上流側媒体を切る際の上流側媒体でのしわの発生を抑制することが可能になる。したがって、媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体をより適切に切ることが可能になる。
【0012】
本発明において、たとえば、媒体切断方法は、上流側媒体を貫通するようにカッター刃を上流側媒体に突き刺す第2突刺し工程と、第2突刺し工程でカッター刃を突き刺した箇所である第2突刺し箇所を起点にして上流側媒体に対してカッター刃を媒体の長手方向および媒体の幅方向に相対的に移動させて媒体の幅方向に対して傾斜した方向で上流側媒体を切る第3カット工程とを備え、媒体切断装置は、媒体の搬送方向下流側の端部が固定される巻き取り用の紙管を回転させて紙管に媒体を巻き取る媒体巻取機構を備え、第1突刺し工程では、上流側媒体の第1方向側の端部にカッター刃を突き刺し、第1カット工程では、第1突刺し箇所から第1端面まで搬送方向下流側かつ第2方向側に上流側媒体に対してカッター刃を相対移動させ、第2突刺し工程では、上流側媒体の第2方向側の端部にカッター刃を突き刺し、第3カット工程では、第2突刺し箇所から第1端面まで搬送方向下流側かつ第1方向側に上流側媒体に対してカッター刃を相対移動させる。この場合には、上流側媒体の搬送方向下流側端の、媒体の幅方向の両側部分が媒体の幅方向に対して傾斜しているため、上流側媒体の搬送方向下流側の端部を紙管に固定して紙管による上流側媒体の巻取りを開始するときに、紙管によって媒体を巻き取りやすくなる。
【0013】
本発明において、媒体切断方法は、たとえば、第1突刺し工程の後であって第1カット工程の前に、第1突刺し箇所を起点にして上流側媒体に対してカッター刃を第1方向側に移動させて第1突刺し箇所から上流側媒体の第1方向側の端面まで媒体の幅方向で上流側媒体を切る第4カット工程と、第2突刺し工程の後であって第3カット工程の前に、第2突刺し箇所を起点にして上流側媒体に対してカッター刃を第2方向側に移動させて第2突刺し箇所から上流側媒体の第2方向側の端面まで媒体の幅方向で上流側媒体を切る第5カット工程とを備えている。
【0014】
本発明において、カッターユニットは、カッター刃が固定されるカッターホルダと、カッターホルダを回動可能に保持するユニットフレームとを備え、カッターホルダは、媒体の厚さ方向を回動の軸方向としてユニットフレームに対して回動可能となっており、第1カット工程および第3カット工程では、カッター刃は、ユニットフレームに対して回動が可能な状態となっており、第1カット工程での、媒体の幅方向に対する上流側媒体のカット角度、および、第3カット工程での、媒体の幅方向に対する上流側媒体のカット角度は、媒体の幅にかかわらず一定になっていることが好ましい。
【0015】
このように構成すると、媒体の幅にかかわらず、第1カット工程および第3カット工程において、ユニットフレームに対するカッターホルダの回動角度を一定にすることが可能になる。したがって、第1カット工程および第3カット工程において、ユニットフレームに対してカッターホルダが過剰に回動するのを防止することが可能になり、その結果、カッター刃の損傷を防止することが可能になる。
【0016】
本発明において、第2カット工程は、媒体を貫通するようにカッター刃を媒体に突き刺す第3突刺し工程と、第3突刺し工程でカッター刃を突き刺した箇所である第3突刺し箇所を起点にして媒体の第1方向側の端面まで媒体に対してカッター刃を第1方向側に移動させて媒体の幅方向で媒体を切る第6カット工程と、第3突刺し箇所を起点にして媒体の第2方向側の端面まで媒体に対してカッター刃を第2方向側に移動させて媒体の幅方向で媒体を切る第7カット工程とを備えることが好ましい。このように構成すると、第6カット工程および第7カット工程において、媒体を貫通しているカッター刃を用いて、媒体の幅方向で媒体を切り始めることが可能になる。したがって、媒体の幅方向で媒体を適切に切ることが可能になる。
【0017】
また、上記の課題を解決するため、本発明の媒体切断装置の制御方法は、長尺の媒体を切断するためのカッター刃を有するカッターユニットと、媒体の長手方向と媒体の厚さ方向とに直交する媒体の幅方向および媒体の長手方向に媒体に対してカッターユニットを相対的に移動させる移動機構とを備え、移動機構は、媒体の長手方向に媒体を搬送する媒体搬送機構と、媒体の幅方向にカッターユニットを移動させるカッターユニット駆動機構とを備える媒体切断装置の制御方法であって、媒体の搬送方向の上流側を搬送方向上流側とし、媒体の搬送方向の下流側を搬送方向下流側とし、媒体の幅方向の一方側を第1方向側とし、媒体の幅方向の他方側を第2方向側とすると、媒体を貫通するように媒体の第1方向側の端部にカッター刃を突き刺す第1突刺しステップと、第1突刺しステップでカッター刃を突き刺した箇所である第1突刺し箇所を起点にして媒体に対してカッター刃を搬送方向下流側かつ第2方向側に相対的に移動させて第1突刺し箇所から媒体の搬送方向下流側の端面である第1端面まで媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を切る第1カットステップと、媒体を貫通するように媒体の第2方向側の端部にカッター刃を突き刺す第2突刺しステップと、第2突刺しステップでカッター刃を突き刺した箇所である第2突刺し箇所を起点にして媒体に対してカッター刃を搬送方向下流側かつ第1方向側に相対的に移動させて第2突刺し箇所から第1端面まで媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を切る第3カットステップと、第1突刺し箇所を起点にして媒体に対してカッター刃を第1方向側に移動させて第1突刺し箇所から媒体の第1方向側の端面まで媒体の幅方向で媒体を切る第4カットステップと、第2突刺し箇所を起点にして媒体に対してカッター刃を第2方向側に移動させて第2突刺し箇所から媒体の第2方向側の端面まで媒体の幅方向で媒体を切る第5カットステップとを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の媒体切断装置の制御方法では、第1突刺しステップにおいて、媒体を貫通するようにカッター刃を媒体に突き刺した後、第1カットステップにおいて、カッター刃を突き刺した箇所である第1突刺し箇所を起点にして媒体に対してカッター刃を搬送方向下流側かつ第2方向側に相対的に移動させて媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を切っている。また、本発明では、第2突刺しステップにおいて、媒体を貫通するようにカッター刃を媒体に突き刺した後、第2カットステップにおいて、カッター刃を突き刺した箇所である第2突刺し箇所を起点にして媒体に対してカッター刃を搬送方向下流側かつ第1方向側に相対的に移動させて媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を切っている。そのため、本発明では、媒体を貫通しているカッター刃を用いて、媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を切り始めることが可能になる。したがって、本発明では、媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を適切に切ることが可能になる。
【0019】
本発明において、たとえば、第4カットステップは、第1カットステップの前に実行され、第5カットステップは、第3カットステップの前に実行される。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の媒体切断方法および媒体切断装置の制御方法では、長尺の媒体を切断するための媒体切断装置において、媒体の幅方向に対して傾斜した方向で媒体を適切に切ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態にかかる媒体切断装置の構成を説明するための側面図である。
図2図1に示す媒体切断装置の構成を説明するためのブロック図である。
図3図1に示す紙管への媒体の固定方法を説明するための図である。
図4図1に示すカッターユニットの斜視図である。
図5図1に示すカッターユニットが有するカッター刃の先端部の側面図である。
図6図4に示すカッターユニットの構成を説明するための側面図である。
図7図4に示すカッターユニットの構成を説明するための平面図である。
図8図1に示す媒体切断装置での媒体の切断手順を説明するための工程図である。
図9図1に示す媒体切断装置での媒体の切断方法を説明するための図である。
図10図1に示す媒体切断装置での媒体の切断方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0023】
(印刷装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる印刷装置1の構成を説明するための側面図である。図2は、図1に示す印刷装置1の構成を説明するためのブロック図である。図3は、図1に示す紙管26への媒体2の固定方法を説明するための図である。
【0024】
本形態の印刷装置1は、長尺の媒体2に印刷を行うための業務用のインクジェットプリンタである。媒体2は、軟質のポリ塩化ビニールまたはターポリンで形成されている。また、印刷装置1は、媒体2を切断して媒体2の長手方向で媒体2を分離するための切断機能を備えている。印刷装置1は、切断前の媒体2にインクジェット方式で印刷を行う印刷機構3と、印刷機構3を下側から支持する支持体4とを備えている。印刷機構3は、媒体2にインクを吐出するインクジェットヘッド6(以下、「ヘッド6」とする。)と、ヘッド6が搭載されるキャリッジ7とを備えている。本形態の印刷装置1は、長尺の媒体2を切断するための媒体切断装置である。また、本形態の印刷機構3は、切断前の媒体2に所定の加工を行うための加工機構である。
【0025】
また、印刷装置1は、媒体2を切断するためのカッター刃8(図5等参照)を有するカッターユニット9と、媒体2の長手方向に媒体2を搬送する媒体搬送機構10と、媒体2の長手方向と媒体2の厚さ方向とに直交する媒体2の幅方向(主走査方向、図1等のY方向)にキャリッジ7を移動させるキャリッジ駆動機構11と、印刷機構3に向かって印刷前の媒体2を送り出す媒体繰出機構12と、印刷後の媒体2を巻き取る媒体巻取機構13とを備えている。また、印刷装置1は、印刷装置1を制御する制御部14を備えている。
【0026】
以下の説明では、媒体2の幅方向(図1等のY方向)を「左右方向」とし、上下方向(図1等のZ方向)と左右方向とに直交する方向(図1等のX方向)を「前後方向」とする。また、左右方向の一方側である図3等のY1方向側を「左」側とし、その反対側である図3等のY2方向側を「右」側とし、前後方向の一方側である図1等のX1方向側を「前」側とし、その反対側である図1等のX2方向側を「後ろ」側とする。また、以下の説明では、媒体搬送機構10による媒体2の搬送方向を「媒体搬送方向」とする。また、媒体搬送方向の上流側を「搬送方向上流側」とし、媒体搬送方向の下流側を「搬送方向下流側」とする。本形態の左側(Y1方向側)は、媒体2の幅方向の一方側である第1方向側となっており、右側(Y2方向側)は、媒体2の幅方向の他方側である第2方向側となっている。
【0027】
キャリッジ7は、左右方向への移動が可能となるように支持フレーム17に支持されている。キャリッジ7の下側には、プラテン18が配置されている。ヘッド6は、下側に向かってインクを吐出する。キャリッジ駆動機構11は、たとえば、キャリッジ7に一部分が固定されるベルトと、ベルトが掛け渡されるプーリと、プーリを回転させるためのモータとを備えている。プラテン18には、印刷時の媒体2が載置される。プラテン18に載置される媒体2の厚さ方向は、上下方向と一致している。本形態では、印刷前の媒体2は、後ろ側からプラテン18の上面に搬送され、印刷後の媒体2は、プラテン18の上面から前側に搬送される。
【0028】
媒体搬送機構10は、搬送ローラ19と、搬送ローラ19に対向配置されるとともに搬送ローラ19に向かって付勢されるパッドローラ20とを備えている。搬送ローラ19およびパッドローラ20は、プラテン18よりも搬送方向上流側に配置されている。また、搬送ローラ19およびパッドローラ20は、ヘッド6およびカッター刃8よりも搬送方向上流側に配置されている。搬送ローラ19は、搬送ローラ19を回転させる駆動機構に連結されている。駆動機構は、駆動源としてのモータを備えている。媒体2は、搬送ローラ19とパッドローラ20との間に挟まれた状態で搬送される。
【0029】
カッターユニット9は、キャリッジ7に搭載されており、プラテン18に載置される媒体2の上側に配置されている。カッターユニット9は、たとえば、キャリッジ7の右端部または左端部に搭載されている。カッターユニット9は、キャリッジ7と一緒に左右方向に移動する。本形態のキャリッジ駆動機構11は、媒体2の幅方向である左右方向にカッターユニット9を移動させるカッターユニット駆動機構であり、本形態では、カッターユニット駆動機構がキャリッジ7を媒体2の幅方向に移動させる。また、本形態では、媒体搬送機構10とキャリッジ駆動機構11とによって、媒体2の長手方向および媒体2の幅方向に媒体2に対してカッターユニット9を相対的に移動させる移動機構21が構成されている。カッターユニット9の具体的な構成については後述する。
【0030】
媒体繰出機構12は、印刷機構3の下側に配置されている。媒体繰出機構12は、繰出ロール23を回転可能に保持している。繰出ロール23は、繰出ロール23の中心を構成する円筒状の紙管24と、紙管24にロール状に巻回された印刷前の媒体2とから構成されている。紙管24には、媒体2の端部が固定されている。具体的には、紙管24には、媒体2の搬送方向上流側の端部が固定されている。媒体繰出機構12は、紙管24の内周側に挿通される回転軸を備えている。
【0031】
媒体巻取機構13は、印刷機構3の下側に配置されている。媒体巻取機構13は、巻取ロール25を回転可能に保持している。巻取ロール25は、巻取ロール25の中心を構成する円筒状の紙管26と、紙管26にロール状に巻回された印刷後の媒体2とから構成されている。紙管26の外径は、3インチまたは2インチとなっている。紙管26には、媒体2の端部が固定されている。具体的には、紙管26には、媒体2の搬送方向下流側の端部が固定されている。また、紙管26には、媒体2の搬送方向下流側の端部が、たとえば、テープ27によって固定されている。
【0032】
媒体巻取機構13は、紙管26の内周側に挿通される回転軸と、回転軸を回転させる駆動機構とを備えている。また、媒体巻取機構13は、巻取ロール25に巻き取られる媒体2の張力が所定の張力を超えないように巻取ロール25を空転させるためのトルクリミッタを備えている。媒体巻取機構13は、媒体2の端部が固定される巻き取り用の紙管26を回転させて紙管26に媒体2を巻き取る。
【0033】
制御部14には、媒体搬送機構10が電気的に接続されている。具体的には、制御部14には、媒体搬送機構10の一部を構成するモータ等が電気的に接続されている。また、制御部14には、キャリッジ駆動機構11が電気的に接続されている。具体的には、制御部14には、キャリッジ駆動機構11の一部を構成するモータ等が電気的に接続されている。また、制御部14には、カッターユニット9の一部を構成する後述の昇降機構33と切替機構34とが電気的に接続されている。具体的には、制御部14には、昇降機構33の一部を構成する後述のソレノイド37と切替機構34の一部を構成する後述のソレノイド43とが電気的に接続されている。
【0034】
(カッターユニットの構成)
図4は、図1に示すカッターユニット9の斜視図である。図5は、図1に示すカッターユニット9が有するカッター刃8の先端部の側面図である。図6は、図4に示すカッターユニット9の構成を説明するための側面図である。図7は、図4に示すカッターユニット9の構成を説明するための平面図である。
【0035】
カッターユニット9は、カッター刃8が固定されるカッターホルダ31と、カッターホルダ31を回動可能に保持するユニットフレーム32とを備えている。カッター刃8は、プラテン18に載置される媒体2を切断する。カッターホルダ31は、プラテン18に載置される媒体2の厚さ方向を回動の軸方向としてユニットフレーム32に対して回動可能となっている。すなわち、カッターホルダ31は、カッター刃8によって切断される媒体2の厚さ方向を回動の軸方向としてユニットフレーム32に対して回動可能となっている。具体的には、カッターホルダ31は、上下方向を回動の軸方向としてユニットフレーム32に対して回動可能となっている。なお、図4では、カッター刃8の図示を省略している。
【0036】
また、ユニットフレーム32は、カッターホルダ31を昇降可能に保持しており、カッターホルダ31は、ユニットフレーム32に対して昇降可能となっている。カッターユニット9は、ユニットフレーム32に対してカッターホルダ31を昇降させる昇降機構33を備えている。また、カッターユニット9は、ユニットフレーム32に対するカッターホルダ31の回動が規制される回動規制状態と、ユニットフレーム32に対するカッターホルダ31の回動が可能となる回動可能状態とにカッターホルダ31の状態を切り替える切替機構34を備えている。
【0037】
カッター刃8は、刃先が尖っている両刃型のカッター刃である(図5参照)。カッターホルダ31は、ユニットフレーム32の前端部に、昇降可能かつ回動可能に取り付けられている。カッター刃8は、カッターホルダ31の前下端部に固定されている。カッターホルダ31が回動規制状態になっているときには、カッター刃8の厚さ方向は、前後方向と一致し、カッター刃8の幅方向は、左右方向と一致している。なお、カッター刃8は、片刃型のカッター刃であっても良い。
【0038】
ユニットフレーム32は、キャリッジ7に固定されている。ユニットフレーム32には、カッターホルダ31を上下方向に案内するためのガイド軸35が固定されている。ガイド軸35は、ガイド軸35の軸方向と上下方向とが一致するように配置されている。カッターホルダ31には、ガイド軸35が挿通されるガイド穴が形成されており、このガイド穴は、上下方向でカッターホルダ31を貫通している。ガイド軸35は、上下方向を回動の軸方向としてユニットフレーム32に対して回動するカッターホルダ31の回動中心になっている。
【0039】
昇降機構33は、ユニットフレーム32に回動可能に保持されるレバー部材36と、ユニットフレーム32に対してレバー部材36を回動させるためのソレノイド37と、ユニットフレーム32に対してカッターホルダ31を上側に向かって付勢する圧縮コイルバネ38とを備えている。レバー部材36は、左右方向を回動の軸方向としてユニットフレーム32に対して回動可能となっている。ユニットフレーム32には、レバー部材36の後端部が回動可能に保持されている。レバー部材36の前端部は、カッターホルダ31に係合している。カッターホルダ31には、レバー部材36の前端部が挿入されて係合する係合凹部31aが形成されている。
【0040】
ソレノイド37は、ソレノイド37のプランジャ37aが上側に突出するようにユニットフレーム32に固定されている。プランジャ37aの上端部には、前後方向におけるレバー部材36の中間部分に係合する係合ピン39が固定されている。圧縮コイルバネ38には、ガイド軸35が挿通されている。圧縮コイルバネ38の上端は、カッターホルダ31に接触し、圧縮コイルバネ38の下端は、ユニットフレーム32に接触している。
【0041】
ソレノイド37が非通電状態であるときには、カッターホルダ31は、圧縮コイルバネ38の付勢力によって上昇している。圧縮コイルバネ38の付勢力によってカッターホルダ31が上昇しているときには、カッター刃8の下端は、プラテン18に載置される媒体2に接触しない位置まで上昇している。ソレノイド37が通電状態になると、プランジャ37aが下降して、レバー部材36の前端が下降する方向にレバー部材36が回動し、カッターホルダ31が下降する。カッターホルダ31が下降すると、カッター刃8による媒体2のカットが可能になる。すなわち、カッター刃8で媒体2を切るときには、ソレノイド37が通電状態になる。
【0042】
切替機構34は、上下方向を回動の軸方向とするカッターホルダ31の回動を規制するための規制部材42を備えている。規制部材42は、前後方向への移動が可能となるようにユニットフレーム32に保持されている。規制部材42は、カッターホルダ31の上端部の後ろ側に配置されている。規制部材42の前側に配置されるカッターホルダ31の上端部の後面は、平面となっている。規制部材42の前端面は、左右方向から見たときの形状が半円弧状となる曲面となっている。
【0043】
また、切替機構34は、規制部材42がカッターホルダ31に近づく規制位置42A(図6(A)参照)と規制部材42がカッターホルダ31から遠ざかる規制解除位置42B(図6(B)参照)とに規制部材42を移動させるための駆動源であるソレノイド43を備えている。すなわち、切替機構34は、ユニットフレーム32に対して規制部材42を前後方向に移動させるためのソレノイド43を備えている。さらに、切替機構34は、ユニットフレーム32に対して規制部材42を前側に向かって付勢する引張りコイルバネ44を備えている。
【0044】
ソレノイド43は、ソレノイド43のプランジャ43aが前側に突出するようにユニットフレーム32に固定されている。プランジャ43aの前端部には、規制部材42の後端部に係合する係合ピン45が固定されている。引張りコイルバネ44の前端部は、ユニットフレーム32に取り付けられ、引張りコイルバネ44の後端部は、規制部材42の後端部に取り付けられている。ソレノイド43が非通電状態であるときには、規制部材42は、引張りコイルバネ44の付勢力によって規制位置42Aに配置されている。ソレノイド43が通電状態になると、プランジャ43aが後ろ側に移動するとともに、規制部材42が後ろ側に移動して、規制部材42が規制解除位置42Bに配置される。
【0045】
規制位置42Aに配置されている規制部材42の前端面は、カッターホルダ31の上端部の後面に軽く接触しているか、あるいは、規制位置42Aに配置されている規制部材42の前端面とカッターホルダ31の上端部の後面との間にはわずかな隙間が形成されている。そのため、規制部材42が規制位置42Aに配置されると、カッターホルダ31は、ユニットフレーム32に対するカッターホルダ31の回動が規制される回動規制状態になる。
【0046】
一方、規制解除位置42Bに配置されている規制部材42の前端面とカッターホルダ31の上端部の後面との間には大きな隙間が形成されており、規制部材42が規制解除位置42Bに配置されると、カッターホルダ31は、ユニットフレーム32に対するカッターホルダ31の回動が可能となる回動可能状態になる。カッターホルダ31が回動可能状態になると、図7(B)に示すように、カッターホルダ31の、図7の反時計回りの方向(以下、この方向を「反時計方向」とする。)への回動と、図7(C)に示すように、カッターホルダ31の、図7の時計回りの方向(以下、この方向を「時計方向」とする。)への回動とが可能になる。
【0047】
なお、カッターユニット9は、回動可能状態のカッターホルダ31の回動範囲(回動角度)を規制する回動範囲規制部材を備えている。この回動範囲規制部材は、ユニットフレーム32に固定されている。この回動範囲規制部材は、カッターホルダ31の後面に接触可能となっており、時計方向へのカッターホルダ31の回動範囲と反時計方向へのカッターホルダ31の回動範囲を規制する。この回動範囲規制部材は、たとえば、カッター刃8の厚さ方向が前後方向と一致しているときのカッターホルダ31の、時計方向への最大回動角度および反時計方向への最大回動角度を15°程度に規制する。
【0048】
(媒体切断方法)
図8は、図1に示す印刷装置1での媒体2の切断手順を説明するための工程図である。図9図10は、図1に示す印刷装置1での媒体2の切断方法を説明するための図である。
【0049】
印刷装置1では、ある媒体2への印刷が終了した後、この媒体2と異なる媒体2(具体的には、材質や幅が異なる媒体2)に対して印刷が行われる場合、印刷装置1にセットされる媒体2が交換される。媒体2の交換前には、カッター刃8によって媒体2が切断される。以下、印刷装置1において交換前の媒体2に対して行われる媒体2の切断方法を説明する。
【0050】
なお、媒体2の交換作業では、切断位置よりも搬送方向上流側に配置される印刷前の媒体2を、たとえば、繰出ロール23に巻き取って印刷装置1から取り外し、切断位置よりも搬送方向下流側に配置される印刷後の媒体2を、たとえば、巻取ロール25に巻き取って印刷装置1から取り外す。また、媒体2の交換作業では、その後、繰出ロール23を印刷装置1に取り付ける。また、繰出ロール23から媒体2を引き出して、プラテン18の上側を通過させた後、媒体2の搬送方向下流側の端部を紙管26に固定する。
【0051】
媒体2の切断方法には、媒体2を貫通するようにカッター刃8を媒体2に突き刺す突刺し工程ST1と、突刺し工程ST1でカッター刃8を突き刺した箇所である突刺し箇所SP1(図9(A)参照)を起点にして媒体2に対してカッター刃8を左右方向に相対的に移動させて左右方向で媒体2を切る横カット工程ST2、ST3とが含まれている。
【0052】
また、媒体2の切断方法には、媒体2を貫通するようにカッター刃8を媒体2に突き刺す突刺し工程ST4と、突刺し工程ST4でカッター刃8を突き刺した箇所である突刺し箇所SP2(図9(C)参照)を起点にして媒体2に対してカッター刃8を左右方向に相対的に移動させて左右方向で媒体2を切る横カット工程ST5と、突刺し箇所SP2を起点にして媒体2に対してカッター刃8を媒体2の長手方向および左右方向に相対的に移動させて左右方向に対して傾斜した方向で媒体2を切る斜めカット工程ST6とが含まれている。
【0053】
さらに、媒体2の切断方法には、媒体2を貫通するようにカッター刃8を媒体2に突き刺す突刺し工程ST7と、突刺し工程ST7でカッター刃8を突き刺した箇所である突刺し箇所SP3(図10(B)参照)を起点にして媒体2に対してカッター刃8を左右方向に相対的に移動させて左右方向で媒体2を切る横カット工程ST8と、突刺し箇所SP3を起点にして媒体2に対してカッター刃8を媒体2の長手方向および左右方向に相対的に移動させて左右方向に対して傾斜した方向で媒体2を切る斜めカット工程ST9とが含まれている。
【0054】
突刺し工程ST1、横カット工程ST2、横カット工程ST3、突刺し工程ST4、横カット工程ST5、斜めカット工程ST6、突刺し工程ST7、横カット工程ST8および斜めカット工程ST9は、この順番で行われる。本形態の媒体2の切断工程は、突刺し工程ST1と横カット工程ST2、ST3と突刺し工程ST4と横カット工程ST5と斜めカット工程ST6と突刺し工程ST7と横カット工程ST8と斜めカット工程ST9とによって構成されている。
【0055】
媒体2の、印刷機構3による印刷が行われた部分を印刷部2aとし、媒体2の、媒体搬送方向における印刷部2aの上流側の部分であって印刷機構3による印刷が行われていない部分を非印刷部2bとすると、突刺し工程ST1、横カット工程ST2、ST3、突刺し工程ST4、横カット工程ST5、斜めカット工程ST6、突刺し工程ST7、横カット工程ST8および斜めカット工程ST9は、非印刷部2bに対して行われる。本形態の印刷部2aは、加工部であり、非印刷部2bは、非加工部である。
【0056】
突刺し工程ST1では、左右方向における媒体2の中間位置にカッター刃8を突き刺す(図9(A)参照)。突刺し工程ST1では、カッターホルダ31が上昇している状態のカッターユニット9を所定位置まで移動させた後に、カッターホルダ31を下降させて媒体2にカッター刃8を突き刺す。突刺し工程ST1では、カッターホルダ31は、回動規制状態になっており、カッター刃8は、ユニットフレーム32に対して回動しない。
【0057】
横カット工程ST2では、突刺し箇所SP1を起点にして媒体2の左端面までカッター刃8を左側に移動させて媒体2を切る(図9(A)参照)。すなわち、横カット工程ST2では、媒体2を停止させた状態でカッターユニット9を左側に移動させて媒体2を切る。横カット工程ST3では、突刺し箇所ST1を起点にして媒体2の右端面までカッター刃8を右側に移動させて媒体2を切る(図9(B)参照)。すなわち、横カット工程ST3では、媒体2を停止させた状態でカッターユニット9を右側に移動させて媒体2を切る。横カット工程ST2、ST3では、カッターホルダ31は、回動規制状態になっており、カッター刃8は、ユニットフレーム32に対して回動しない。
【0058】
本形態の突刺し工程ST1は、第3突刺し工程であり、横カット工程ST2は、第6カット工程であり、横カット工程ST3は、第7カット工程である。また、本形態の突刺し箇所SP1は、第3突刺し箇所である。また、本形態では、突刺し工程ST1と横カット工程ST2、ST3とによって、媒体2に対してカッター刃8を左右方向に相対的に移動させて左右方向の全域で媒体2を切る第2カット工程ST11が構成されている。以下の説明では、第2カット工程ST11での媒体2のカット位置よりも搬送方向上流側に配置される媒体2を上流側媒体2cとする。また、第2カット工程ST11が終わった後の、上流側媒体2cの搬送方向下流側の端面を第1端面2dとする。
【0059】
突刺し工程ST4では、上流側媒体2cを貫通するようにカッター刃8を上流側媒体2cの左端部に突き刺す(図9(C)参照)。突刺し工程ST4では、突刺し工程ST1と同様に、カッターホルダ31が上昇している状態のカッターユニット9を所定位置まで移動させた後に、カッターホルダ31を下降させて上流側媒体2cにカッター刃8を突き刺す。突刺し工程ST4では、カッターホルダ31は、回動規制状態になっており、カッター刃8は、ユニットフレーム32に対して回動しない。
【0060】
横カット工程ST5では、突刺し箇所SP2を起点にしてカッター刃8を左側に移動させて突刺し箇所SP2から上流側媒体2cの左端面まで上流側媒体2cを切る(図9(C)参照)。すなわち、横カット工程ST5では、上流側媒体2cを停止させた状態でカッターユニット9を左側に移動させて上流側媒体2cを切る。横カット工程ST5では、カッターホルダ31は、回動規制状態になっており、カッター刃8は、ユニットフレーム32に対して回動しない。
【0061】
斜めカット工程ST6では、突刺し箇所SP2を起点にして突刺し箇所SP2から第1端面2dまで上流側媒体2cに対してカッター刃8を搬送方向下流側かつ右側に相対的に移動させて、突刺し箇所SP2から第1端面2dまで上流側媒体2cを切る(図10(A)参照)。すなわち、斜めカット工程ST6では、上流側媒体2cを搬送方向上流側に所定の速度で搬送しながらカッターユニット9を右側に所定の速度で移動させて上流側媒体2cを切る。また、斜めカット工程ST6では、突刺し箇所SP2から第1端面2dまで上流側媒体2cを直線的に切る。
【0062】
斜めカット工程ST6が終わると、左右方向に平行な第2端面2eと、左右方向に対して傾斜する(具体的は、右側に向かうにしたがって搬送方向下流側に向かうように傾斜する)第3端面2fとが上流側媒体2cの搬送方向下流側端に形成される。第2端面2eは、上流側媒体2cの左端面と突刺し箇所SP2との間に形成される。第3端面2fは、突刺し箇所SP2と第1端面2dとの間に形成される。第3端面2fの右端は、第1端面2dの左右方向の中心よりも左側に配置されている。
【0063】
斜めカット工程ST6では、カッターホルダ31は、回動可能状態になっており、カッター刃8は、ユニットフレーム32に対して回動可能な状態になっている。斜めカット工程ST6では、カッター刃8は、上流側媒体2cに対するカッター刃8の相対移動方向とカッター刃8の幅方向とが一致するようにユニットフレーム32に対して回動した後、上流側媒体2cに対するカッター刃8の相対移動方向とカッター刃8の幅方向とが一致している状態を維持しながら、上流側媒体2cに対して相対的に移動する。
【0064】
本形態の突刺し工程ST4は、第1突刺し工程であり、斜めカット工程ST6は、第1カット工程である。また、本形態の横カット工程ST5は、第4カット工程であり、第4カット工程である横カット工程ST5は、第1突刺し工程である突刺し工程ST4の後であって、第1カット工程である斜めカット工程ST6の前に行われている。また、本形態の突刺し箇所SP2は、第1突刺し箇所である。
【0065】
突刺し工程ST7では、上流側媒体2cを貫通するようにカッター刃8を上流側媒体2cの右端部に突き刺す(図10(B)参照)。突刺し工程ST7では、突刺し工程ST1と同様に、カッターホルダ31が上昇している状態のカッターユニット9を所定位置まで移動させた後に、カッターホルダ31を下降させて上流側媒体2cにカッター刃8を突き刺す。本形態では、突刺し箇所SP3は、媒体搬送方向において突刺し箇所SP2と同じ位置に形成される。そのため、斜めカット工程ST6の後、突刺し工程ST7の前には、上流側媒体2cは、搬送方向下流側に所定量搬送される。また、本形態では、上流側媒体2cの左端面から突刺し箇所SP2までの距離(左右方向の距離)と、上流側媒体2cの右端面から突刺し箇所SP3までの距離(左右方向の距離)とが等しくなっている。突刺し工程ST7では、カッターホルダ31は、回動規制状態になっており、カッター刃8は、ユニットフレーム32に対して回動しない。
【0066】
横カット工程ST8では、突刺し箇所SP3を起点にしてカッター刃8を右側に移動させて突刺し箇所SP3から上流側媒体2cの右端面まで上流側媒体2cを切る(図10(B)参照)。すなわち、横カット工程ST8では、上流側媒体2cを停止させた状態でカッターユニット9を右側に移動させて上流側媒体2cを切る。横カット工程ST8では、カッターホルダ31は、回動規制状態になっており、カッター刃8は、ユニットフレーム32に対して回動しない。
【0067】
斜めカット工程ST9では、突刺し箇所SP3を起点にして突刺し箇所SP3から第1端面2dまで上流側媒体2cに対してカッター刃8を搬送方向下流側かつ左側に相対的に移動させて、突刺し箇所SP3から第1端面2dまで上流側媒体2cを切る(図10(C)参照)。すなわち、斜めカット工程ST9では、上流側媒体2cを搬送方向上流側に所定の速度で搬送しながらカッターユニット9を左側に所定の速度で移動させて上流側媒体2cを切る。また、斜めカット工程ST9では、突刺し箇所SP3から第1端面2dまで上流側媒体2cを直線的に切る。
【0068】
斜めカット工程ST9が終わると、左右方向に平行な第4端面2gと、左右方向に対して傾斜する(具体的は、左側に向かうにしたがって搬送方向下流側に向かうように傾斜する)第5端面2hとが上流側媒体2cの搬送方向下流側端に形成される。第4端面2gは、上流側媒体2cの右端面と突刺し箇所SP3との間に形成される。第5端面2hは、突刺し箇所SP3と第1端面2dとの間に形成される。第5端面2hの左端は、第1端面2dの左右方向の中心よりも右側に配置されている。そのため、斜めカット工程ST9が終わった後でも、第1端面2dの左右方向の中心部が残っており、斜めカット工程ST9が終わった後の上流側媒体2cの搬送方向下流側の端面は、第1端面2dと第2端面2eと第3端面2fと第4端面2gと第5端面2hとによって構成されている。
【0069】
斜めカット工程ST9では、カッターホルダ31は、回動可能状態になっており、カッター刃8は、ユニットフレーム32に対して回動可能な状態になっている。斜めカット工程ST9では、カッター刃8は、上流側媒体2cに対するカッター刃8の相対移動方向とカッター刃8の幅方向とが一致するようにユニットフレーム32に対して回動した後、上流側媒体2cに対するカッター刃8の相対移動方向とカッター刃8の幅方向とが一致している状態を維持しながら、上流側媒体2cに対して相対的に移動する。
【0070】
本形態の突刺し工程ST7は、第2突刺し工程であり、斜めカット工程ST9は、第3カット工程である。また、本形態の横カット工程ST8は、第5カット工程であり、第5カット工程である横カット工程ST8は、第2突刺し工程である突刺し工程ST7の後であって、第3カット工程である斜めカット工程ST9の前に行われている。また、本形態の突刺し箇所SP3は、第2突刺し箇所である。
【0071】
本形態では、斜めカット工程ST6での左右方向に対する上流側媒体2cのカット角度(すなわち、第3端面2fの左右方向に対する傾斜角度)θ1(図10(A)参照)と、斜めカット工程ST9での左右方向に対する上流側媒体2cのカット角度(すなわち、第5端面2hの左右方向に対する傾斜角度)θ2(図10(C)参照)とが等しくなっている。カット角度θ1、θ2は、7°~13°となっている。より具体的には、カット角度θ1、θ2は、8°~12°となっている。本形態では、カット角度θ1、θ2は、10°となっている。
【0072】
また、カット角度θ1、θ2は、切断される媒体2の幅にかかわらず一定になっている。すなわち、切断される媒体2の幅が変わっても、カット角度θ1、θ2は、10°となっており、切断される媒体2の幅が1600mmであっても、カット角度θ1、θ2は10°であり、切断される媒体2の幅が1000mmであっても、カット角度θ1、θ2は10°である。また、上述のように、突刺し箇所SP2と突刺し箇所SP3とが媒体搬送方向において同じ位置に形成され、かつ、上流側媒体2cの左端面から突刺し箇所SP2までの距離と、上流側媒体2cの右端面から突刺し箇所SP3までの距離とが等しくなっているため、第3端面2fと第5端面2hとは左右対称に配置されている。
【0073】
なお、媒体2の交換前に行われる媒体2の切断後の、上流側媒体2cの搬送方向下流側の端面が、第1端面2dと第2端面2eと第3端面2fと第4端面2gと第5端面2hとによって構成されているため、印刷装置1から一旦取り外されて、その後、印刷装置1に再び取り付けられる印刷前の媒体2の搬送方向下流側の端面も、第1端面2dと第2端面2eと第3端面2fと第4端面2gと第5端面2hとによって構成されている。したがって、媒体2の交換作業において、紙管26に固定される媒体2の搬送方向下流側の端面は、第1端面2dと第2端面2eと第3端面2fと第4端面2gと第5端面2hとによって構成されている(図3参照)。紙管26には、第1端面2dが形成される媒体2の左右方向の中心部分が固定される。
【0074】
ただし、新品の媒体2が印刷装置1に取り付けられる場合には、紙管26に固定される媒体2の搬送方向下流側の端面は、左右方向に平行になっている。この場合には、媒体2の搬送方向下流側の端部を紙管26に固定する前に、突刺し工程ST4、横カット工程ST5、斜めカット工程ST6、突刺し工程ST7、横カット工程ST8および斜めカット工程ST9を行う。
【0075】
突刺し工程ST1、横カット工程ST2、ST3、突刺し工程ST4、横カット工程ST5、斜めカット工程ST6、突刺し工程ST7、横カット工程ST8および斜めカット工程ST9は、自動で連続的に行われる。すなわち、印刷装置1では、制御部14に、突刺し工程ST1、横カット工程ST2、ST3、突刺し工程ST4、横カット工程ST5、斜めカット工程ST6、突刺し工程ST7、横カット工程ST8および斜めカット工程ST9を連続的に実行するための制御プログラムが記憶されており、この制御プログラムに基づいて、制御部14がこれらの工程を連続的に実行する。たとえば、媒体2の交換が必要になって、印刷装置1のオペレータが所定の操作ボタンを押すと、制御部14は、これらの工程を連続的に実行する。
【0076】
すなわち、オペレータが操作ボタンを押すと、制御部14は、まず、突刺し工程ST1を実行し(突刺しステップS1)、その後、横カット工程ST2を実行し(横カットステップS2)、その後、横カット工程ST3を実行する(横カットステップS3)。その後、制御部14は、突刺し工程ST4を実行し(突刺しステップS4)、その後、横カット工程ST5を実行し(横カットステップS5)、その後、斜めカット工程ST6を実行する(斜めカットステップS6)。また、制御部14は、その後、突刺し工程ST7を実行し(突刺しステップS7)、その後、横カット工程ST8を実行し(横カットステップS8)、その後、斜めカット工程ST9を実行する(斜めカットステップS9)。
【0077】
本形態の突刺しステップS4は、第1突刺しステップであり、斜めカットステップS6は、第1カットステップであり、突刺しステップS7は、第2突刺しステップであり、斜めカットステップS9は、第3カットステップである。また、本形態の横カットステップS5は、第4カットステップであり、第1カットステップである斜めカットステップS6の前に実行されている。また、本形態の横カットステップS8は、第5カットステップであり、第3カットステップである斜めカットステップS9の前に実行されている。
【0078】
また、制御部14は、横カットステップS2、S3、S5、S8において、媒体搬送機構10およびキャリッジ駆動機構11を制御して、媒体2に対してカッターユニット9を左右方向に相対的に移動させて左右方向で媒体2を切る横カットモードによる媒体2のカットを行っている。横カットモードにおいて、制御部14は、切替機構34を制御してカッターホルダ31を回動規制状態にしている。すなわち、切替機構34は、横カットモードにおいて、カッターホルダ31を回動規制状態にしている。
【0079】
また、制御部14は、斜めカットステップS6、S9において、媒体搬送機構10およびキャリッジ駆動機構11を制御して、媒体2に対してカッターユニット9を媒体搬送方向および左右方向に相対的に移動させて左右方向に対して傾斜した方向で媒体2を切る斜めカットモードによる媒体2のカットを行っている。
【0080】
具体的には、制御部14は、斜めカットステップS6において、左右方向における媒体2の中間位置と左右方向における媒体2の一端側(左端側)との間(具体的には、左右方向における第1端面2dの中間位置と突刺し箇所SP2との間)で媒体2を切る斜めカットモードとしての第1斜めカットモードによる媒体2のカットを行い、斜めカットステップS9において、左右方向における媒体2の中間位置と左右方向における媒体2の他端側(右端側)との間(具体的には、左右方向における第1端面2dの中間位置と突刺し箇所SP3との間)で媒体2を切る斜めカットモードとしての第2斜めカットモードによる媒体2のカットを行っている。
【0081】
斜めカットモードにおいて、制御部14は、切替機構34を制御してカッターホルダ31を回動可能状態にしている。すなわち、切替機構34は、斜めカットモードにおいて、カッターホルダ31を回動可能状態にしている。また、制御部14は、制御部14に入力される所定のデータに応じて、第1斜めカットモードおよび第2斜めカットモードにおいて、媒体搬送機構10による媒体2の搬送速度と、キャリッジ駆動機構11によるカッターユニット9の移動速度とを制御して、媒体2を左右方向に対して所望の角度で切っている。制御部14に入力されるデータは、たとえば、第1斜めカットモードおよび第2斜めカットモードにおける媒体2の搬送速度データ、カッターユニット9の移動速度データおよびカット開始時のカッター刃8の位置データ等である。
【0082】
第1斜めカットモードでの、左右方向に対する媒体2のカット角度θ1、および、第2斜めカットモードでの、左右方向に対する媒体2のカット角度θ2は、上述のように、7°~13°となっている。より具体的には、カット角度θ1、θ2は、8°~12°となっており、本形態では、カット角度θ1、θ2は、10°となっている。また、制御部14は、印刷機構3による媒体2の印刷後に、横カットステップS2、S3において、横カットモードによって左右方向の全域に亘って非印刷部2bを切断した後、斜めカットステップS6、S9において、横カットステップS2、S3での切断位置よりも搬送方向上流側に配置される非印刷部2bに対して第1斜めカットモードでの媒体2のカットと第2斜めカットモードでの媒体2のカットとを行っている。
【0083】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、突刺し工程ST4において、上流側媒体2cを貫通するようにカッター刃8を上流側媒体2cに突き刺した後、斜めカット工程ST6において、突刺し箇所SP2を起点にして上流側媒体2cに対してカッター刃8を搬送方向下流側かつ右側に相対的に移動させて左右方向に対して傾斜した方向で上流側媒体2cを切っている。また、本形態では、突刺し工程ST7において、上流側媒体2cを貫通するようにカッター刃8を上流側媒体2cに突き刺した後、斜めカット工程ST9において、突刺し箇所SP3を起点にして上流側媒体2cに対してカッター刃8を搬送方向下流側かつ左側に相対的に移動させて左右方向に対して傾斜した方向で上流側媒体2cを切っている。
【0084】
そのため、本形態では、斜めカット工程ST6、ST9において、上流側媒体2cを貫通しているカッター刃8を用いて、左右方向に対して傾斜した方向で上流側媒体2cを切り始めることが可能になる。したがって、本形態では、左右方向に対して傾斜した方向で上流側媒体2cを適切に切ることが可能になる。
【0085】
本形態では、斜めカット工程ST6、ST9において、上流側媒体2cを搬送方向上流側に搬送しながら、上流側媒体2cの搬送方向下流側の端面である第1端面2dまで上流側媒体2cを切っている。そのため、本形態では、斜めカット工程ST6、ST9において上流側媒体2cを切る際に、上流側媒体2cの、媒体搬送方向における搬送ローラ19およびパッドローラ20とカッター刃8との間の部分にしわが発生するのを抑制することが可能になる。したがって、本形態では、左右方向に対して傾斜した方向で上流側媒体2cをより適切に切ることが可能になる。
【0086】
本形態では、突刺し工程ST1において、媒体2を貫通するようにカッター刃8を媒体2に突き刺した後、横カット工程ST2、ST3において、突刺し箇所SP1を起点にして媒体2に対してカッター刃8を左右方向に移動させて左右方向で媒体2を切っている。そのため、本形態では、横カット工程ST2、ST3において、媒体2を貫通しているカッター刃8を用いて、左右方向で媒体2を切り始めることが可能になる。したがって、本形態では、左右方向で媒体2を適切に切ることが可能になる。
【0087】
本形態では、印刷装置1から一旦取り外されて、その後、印刷装置1に再び取り付けられる媒体2の搬送方向下流側の端面に、右側に向かうにしたがって搬送方向下流側に向かうように傾斜する第3端面2fと、左側に向かうにしたがって搬送方向下流側に向かうように傾斜する第5端面2hとが左右対称に形成されている。そのため、本形態では、印刷装置1に再び取り付けられる媒体2に対する切断を行わなくても、媒体2の交換作業において媒体2の搬送方向下流側の端部が紙管26に固定された後の、紙管26による媒体2の巻取り開始時に、紙管26によって媒体2を巻き取りやすくなる。
【0088】
本形態では、左右方向に対する上流側媒体2cのカット角度θ1、θ2が、切断される媒体2の幅にかかわらず一定になっており、斜めカット工程ST6、ST9において、ユニットフレーム32に対するカッターホルダ31の回動角度が、切断される媒体2の幅にかかわらず一定になっている。そのため、本形態では、斜めカット工程ST6、ST9において、ユニットフレーム32に対してカッターホルダ31が過剰に回動するのを防止することが可能になり、その結果、カッター刃8の損傷を防止することが可能になる。
【0089】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0090】
上述した形態では、カッターホルダ31は、横カット工程ST5、ST8において、回動規制状態になっているが、カッターホルダ31は、横カット工程ST5、ST8において、回動可能状態になっていても良い。また、カッターホルダ31は、横カット工程ST2、ST3、ST5、ST8において、回動可能状態になっていても良い。また、カッターホルダ31は、突刺し工程ST1、ST4、ST7において、回動可能状態になっていても良い。
【0091】
上述した形態において、突刺し工程ST4を行ってから、斜めカット工程ST6を行った後、横カット工程ST5を行っても良い。同様に、上述した形態において、突刺し工程ST7を行ってから、斜めカット工程ST9を行った後、横カット工程ST8を行っても良い。また、上述した形態において、左右方向で媒体2を適切に切ることができるのであれば、突刺し工程ST1を行わなくても良い。この場合には、たとえば、媒体2に対してカッター刃8を媒体2の右端面から左端面まで左右方向に移動させて左右方向の全域で媒体2を切る横カット工程を行う。
【0092】
上述した形態において、横カット工程ST5に代えて、媒体2に対してカッター刃8を媒体2の長手方向および左右方向に相対的に移動させて左右方向に対して傾斜した方向で突刺し箇所SP2から上流側媒体2cの左端面まで上流側媒体2cを切る斜めカット工程を行っても良い。同様に、上述した形態において、横カット工程ST8に代えて、媒体2に対してカッター刃8を媒体2の長手方向および左右方向に相対的に移動させて左右方向に対して傾斜した方向で突刺し箇所SP3から上流側媒体2cの右端面まで上流側媒体2cを切る斜めカット工程を行っても良い。これらの斜めカット工程では、カッターホルダ31は、回動可能状態になっている。
【0093】
上述した形態において、突刺し工程ST4、斜めカット工程ST6、突刺し工程ST7、斜めカット工程ST9および横カット工程ST2、ST3のみをこの順番で行っても良い。この場合には、たとえば、突刺し工程ST4において、媒体2の左右方向の中間位置にカッター刃8を突き刺し、斜めカット工程ST6において、突刺し箇所SP2から媒体2の左端面まで媒体2に対してカッター刃8を搬送方向上流側かつ左側に相対的に移動させて、突刺し箇所SP2から媒体2の左端面まで媒体2を切る。
【0094】
また、突刺し工程ST7において、媒体2の左右方向の中間位置にカッター刃8を突き刺し、斜めカット工程ST9において、突刺し箇所SP3から媒体2の右端面まで媒体2に対してカッター刃8を搬送方向上流側かつ右側に相対的に移動させて、突刺し箇所SP3から媒体2の右端面まで媒体2を切る。横カット工程ST2、ST3では、突刺し箇所SP2または突刺し箇所SP3から、媒体2の左右方向の両端面までカッター刃8を移動させて媒体2を切る。
【0095】
上述した形態において、第3端面2fの右端と第5端面2hの左端とが繋がるように上流側媒体2cがカットされても良い。すなわち、斜めカット工程ST9が終わった後に、第1端面2dが残らないように上流側媒体2cがカットされても良い。また、上述した形態において、カット角度θ1、θ2は、7°未満となっていても良いし、13°を超えていても良い。さらに、上述した形態において、カット角度θ1とカット角度θ2とが異なっていても良い。
【0096】
上述した形態において、突刺し箇所SP2と突刺し箇所SP3とが媒体搬送方向においてずれていても良い。また、上述した形態において、上流側媒体2cの左端面から突刺し箇所SP2までの左右方向の距離と、上流側媒体2cの右端面から突刺し箇所SP3までの左右方向の距離とが異なっていても良い。また、上述した形態において、切断される媒体2の幅に応じて、カット角度θ1、θ2が変わっても良い。たとえば、切断される媒体2の幅にかかわらず、第2端面2e、第4端面2gと第1端面2dとの媒体搬送方向における距離が一定になるように、切断される媒体2の幅に応じて、カット角度θ1、θ2が変わっても良い。
【0097】
上述した形態において、突刺し工程ST1、横カット工程ST2、ST3、突刺し工程ST4、横カット工程ST5、斜めカット工程ST6、突刺し工程ST7、横カット工程ST8および斜めカット工程ST9は自動で連続的に行われなくても良い。たとえば、オペレータが所定の操作ボタンを押すごとに、1個の工程が行われても良い。また、媒体搬送機構10、キャリッジ駆動機構11、昇降機構33および切替機構34等をオペレータが手動で操作しながら、各工程を行っても良い。
【0098】
上述した形態において、カッターユニット9は、キャリッジ7に搭載されていなくても良い。この場合には、カッターユニット9が搭載されるキャリッジと、このキャリッジを左右方向に移動させるカッターユニット駆動機構とが別途設けられている。また、この場合には、カッターユニット9が搭載されるキャリッジを前後方向に移動させる第2カッターユニット駆動機構が設けられていても良い。この場合には、たとえば、カッターユニット駆動機構と第2カッターユニット駆動機構とによって、媒体2の長手方向および媒体2の幅方向に媒体2に対してカッターユニット9を相対的に移動させる移動機構が構成されていても良い。
【0099】
上述した形態において、媒体2は、ポリ塩化ビニール以外の樹脂で形成されていても良いし、紙で形成されていても良い。また、上述した形態において、印刷装置1は、印刷後の媒体2を所定形状に切断して切り離すための媒体切断機構を備えていても良い。この媒体切断機構は、たとえば、上下方向においてプラテン18と媒体巻取機構13との間に配置されている。あるいは、この媒体切断機構は、キャリッジ7に搭載されていても良い。また、上述した形態において、印刷機構3に代えて、切断前の媒体2に所定の加工を行うための加工機構が設けられていても良い。また、上述した形態において、印刷機構3や加工機構が設けられていなくても良い。すなわち、本発明が適用される媒体切断装置は、切断機能のみを備える装置であっても良い。
【符号の説明】
【0100】
1 印刷装置(媒体切断装置)
2 媒体
2c 上流側媒体
2d 第1端面
8 カッター刃
9 カッターユニット
10 媒体搬送機構
11 キャリッジ駆動機構(カッターユニット駆動機構)
13 媒体巻取機構
21 移動機構
26 紙管
31 カッターホルダ
32 ユニットフレーム
SP1 突刺し箇所(第3突刺し箇所)
SP2 突刺し箇所(第1突刺し箇所)
SP3 突刺し箇所(第2突刺し箇所)
ST1 突刺し工程(第3突刺し工程)
ST2 横カット工程(第6カット工程)
ST3 横カット工程(第7カット工程)
ST4 突刺し工程(第1突刺し工程)
ST5 横カット工程(第4カット工程)
ST6 斜めカット工程(第1カット工程)
ST7 突刺し工程(第2突刺し工程)
ST8 横カット工程(第5カット工程)
ST9 斜めカット工程(第3カット工程)
ST11 第2カット工程
Y 媒体の幅方向
Y1 第1方向側
Y2 第2方向側
θ1 カット角度(第1カット工程での上流側媒体のカット角度)
θ2 カット角度(第3カット工程での上流側媒体のカット角度)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10