(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】核酸分子及び非ウイルス遺伝子治療のためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/85 20060101AFI20241211BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241211BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241211BHJP
C12N 15/16 20060101ALI20241211BHJP
C12N 15/19 20060101ALI20241211BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241211BHJP
C12N 15/866 20060101ALI20241211BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20241211BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20241211BHJP
C07K 14/475 20060101ALI20241211BHJP
C07K 14/52 20060101ALI20241211BHJP
C07K 14/575 20060101ALI20241211BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20241211BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241211BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241211BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241211BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241211BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241211BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241211BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241211BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241211BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241211BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20241211BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241211BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241211BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241211BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20241211BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20241211BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241211BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20241211BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20241211BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20241211BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20241211BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241211BHJP
A61K 38/37 20060101ALN20241211BHJP
A61K 38/36 20060101ALN20241211BHJP
A61K 38/22 20060101ALN20241211BHJP
A61K 38/19 20060101ALN20241211BHJP
A61K 38/18 20060101ALN20241211BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20241211BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/13
C12N15/16
C12N15/19
C12N15/63 Z
C12N15/866 Z
C12N15/88 Z
C12N15/113 Z
C07K14/475
C07K14/52
C07K14/575
C07K16/00
C07K16/46
C07K19/00
C12P21/02 C
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P43/00 111
A61P7/04
A61K35/76
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K31/7105
A61K31/713
A61K47/44
A61K9/127
A61K9/51
A61K47/46
A61K47/24
A61P1/16
A61K38/37
A61K38/36
A61K38/22
A61K38/19
A61K38/18
A61K39/395 D
A61K39/395 N
(21)【出願番号】P 2021506753
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 US2019045957
(87)【国際公開番号】W WO2020033863
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512147244
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ドレイガー
(72)【発明者】
【氏名】ジァイン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】トンヤオ・リウ
(72)【発明者】
【氏名】スザンナ・パタロヨ-ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ティ・ピーターズ
(72)【発明者】
【氏名】アレクシー・セレジン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ザカス
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-509141(JP,A)
【文献】国際公開第2008/016391(WO,A1)
【文献】特表2008-510489(JP,A)
【文献】特表2008-513020(JP,A)
【文献】特開2011-067212(JP,A)
【文献】特表2014-511690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0130245(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/
A61K
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITR
を含む核酸分子であって、
該第一のITRは、配列番号180に示されるヌクレオチド配列からなり、及び該第二のITRは、配列番号181に示されるヌクレオチド配列からなる;又は該第一のITRは、配列番号183に示されるヌクレオチド配列からなり、及び該第二のITRは、配列番号184に示されるヌクレオチド配列からなる、上記核酸分子。
【請求項2】
遺伝子カセットはプロモーターをさらに含み、
該プロモーターは、該異種ポリヌクレオチド配列に対して5'側に位置する;
該プロモーターは、組織特異的プロモーターである;
該プロモーターは、筋肉、中枢神経系(CNS)、眼球、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、肺、皮膚、膀胱、尿路、もしくは任意のその組合せから選択される臓器における該異種ポリヌクレオチド配列の発現を推進する;
該プロモーターは、肝細胞、内皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、類洞細胞、求心性神経、遠心性神経、介在ニューロン、グリア細胞、星状膠細胞、乏突起膠細胞、小膠細胞、上衣細胞、肺上皮細胞、シュワン細胞、サテライト細胞、光受容細胞、網膜神経節細胞、もしくは任意のその組合せにおける該異種ポリヌクレオチド配列の発現を推進する;並びに/又は、
該プロモーターは、マウスサイレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ-1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミンミニマルプロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1-アンチトリプシン(AAT)、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)、デスミン(DES)、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCK、tMCK、及びホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターからなる群より選択される、請求項1に記載の
核酸分子。
【請求項3】
該異種ポリヌクレオチド配列は、イントロン配列をさらに含む、請求項1に記載の
核酸分子。
【請求項4】
該イントロン配列は、該異種ポリヌクレオチド配列に対して5'側に位置する;
該イントロン配列は、該プロモーターに対して3'側に位置する;
及び/もしくは、
該イントロン配列は、合成イントロン配列を含む
;
該異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、そのフラグメント、もしくは任意のその組合せをコードする、
請求項
3に記載の
核酸分子。
【請求項5】
該異種ポリヌクレオチド配列は、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(BMP)、毛様体神経栄養因子ファミリーメンバー、コロニー刺激因子、上皮増殖因子(EGF)、エフリン、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、ウシ胎児ソマトトロピン(FBS)、GDNFファミリーメンバー、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝癌細胞由来増殖因子(HDGF)、インスリン、インスリン様増殖因子、インターロイキン(IL)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、遊走刺激因子(MSF)、マクロファージ刺激タンパク質、ミオスタチン(GDF-8)、ニューレグリン、ニューロトロフィン、胎盤増殖因子(PGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、レナラーゼ(RNLS)、T細胞増殖因子(TCGF)、トロンボポエチン(TPO)、形質転換増殖因子、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、及び血管内皮増殖因子(VEGF)、並びに任意のその組合せからなる群より選択される、増殖因子をコードする;
該異種ポリヌクレオチド配列は、ホルモンをコードする;
該異種ポリヌクレオチド配列は、サイトカインをコードする;もしくは、
該異種ポリヌクレオチド配列は、抗体もしくはそのフラグメントをコードする;
又は
該異種ポリヌクレオチド配列は、ジストロフィンX連鎖、MTM1(ミオチューブラリン)、チロシン水酸化酵素、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPSI)、IDS(MPSII)、PAH、GAA(酸性アルファグルコシダーゼ)、及び任意のその組合せから選択される遺伝子をコードする、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の
核酸分子。
【請求項6】
該異種ポリヌクレオチド配列は、マイクロRNA(miRNA)をコードする;並びに/又は、
該異種ポリヌクレオチド配列は、コドン最適化されている、
請求項1~
5のいずれか1項に記載の
核酸分子。
【請求項7】
該miRNAは、SOD1、HTT、RHO、及び任意のその組合せから選択される標的遺伝子の発現を下方調節する、請求項
6に記載の
核酸分子。
【請求項8】
該異種ポリヌクレオチド配列は、ヒトにおける発現にコドン最適化されている、請求項
6又は
7に記載の
核酸分子。
【請求項9】
該遺伝子カセットは、転写後調節エレメントをさらに含む、請求項1に記載の
核酸分子。
【請求項10】
該転写後調節エレメントは、該異種ポリヌクレオチド配列の3'側に位置する;及び/もしくは、
該転写後調節エレメントは、変異ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(
WPRE)、マイクロRNA結合部位、DNA核標的化配列、もしくは任意のその組合せを含み、又は、該マイクロRNA結合部位は、miR142-3pに対する結合部位を含む;
該遺伝子カセットは、3'UTRポリ(A)テイル配列をさらに含む;
該遺伝子カセットは、エンハンサー配列をさらに含み、該エンハンサー配列は、該第一のITRと該第二のITRとの間に位置する;
該遺伝子カセットは、一本鎖核酸を含む;並びに/又は、
該遺伝子カセットは、二本鎖核酸を含む、
請求項
9に記載の
核酸分子。
【請求項11】
該3'UTRポリ(A)テイル配列は、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)、及び任意のその組合せからなる群より選択され、又は、該3'UTRポリ(A)テイル配列は、bGHポリ(A)を含む、請求項
10に記載の
核酸分子。
【請求項12】
該
核酸分子は、5'から3'へ:該第一のITR、該遺伝子カセット、及び該第二のITRを含み;該遺伝子カセットは、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、該異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、及び3'UTRポリ(A)テイル配列を含む、請求項1に記載の
核酸分子。
【請求項13】
該遺伝子カセットは、5'から3'へ:組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、該異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、及び3'UTRポリ(A)テイル配列を含む、請求項
12に記載の
核酸分子。
【請求項14】
(a)該組織特異的プロモーター配列は、
TTPプロモーターを含み;
(b)該イントロンは、合成イントロンであり;
(c)該転写後調節エレメントは、WPREを含み;及び
(d)該3'UTRポリ(A)テイル配列は、bGHpAを含む、
請求項
13に記載の
核酸分子。
【請求項15】
該異種ポリヌクレオチド配列は、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第III因子(FIII)、第IV因子(FVI)、第V因子(FV)、第VI因子(FVI)、第VII因子(FVII)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FVIII)、フォン・ビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-2(PAI2)、及び任意のその組合せからなる群より選択される凝固因子をコードする、
請求項1に記載の
核酸分子。
【請求項16】
該凝固因子は、FVIIIである、請求項
15に記載の
核酸分子。
【請求項17】
該
異種ポリヌクレオチド配列は、全長成熟FVIIIを
コードする、請求項
15又は
16に記載の
核酸分子。
【請求項18】
該
全長成熟FVIIIは、配列番号106のアミノ酸配列を含み、該FVIIIは、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、及び部分Bドメインを含むか、もしくはBドメインは含まず、又は、該FVIIIは、配列番号109
のアミノ酸配列を含む、請求項
17に記載の
核酸分子。
【請求項19】
該凝固因子は、異種部分を含み、該異種部分は、アルブミンもしくはそのフラグメント、免疫グロブリンFc領域、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはそのフラグメント、アルブミン結合部分、その誘導体、もしくは任意のその組合せからなる群より選択される;
該FVIIIは、A1ドメイン、A2ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、任意のBドメイン、及び異種部分をさらに含み、該異種部分は、成熟FVIII(配列番号106)に対応するアミノ酸745のすぐ下流側に挿入される;
該FVIIIは、FcRn結合パートナーをさらに含み、該FcRn結合パートナーは、免疫グロブリン定常ドメインのFc領域を含む;
該FVIIIをコードする核酸配列は、コドン最適化されている;並びに/又は、
該FVIIIをコードする核酸配列は、ヒトにおける発現にコドン最適化されている、請求項
15~
18のいずれか1項に記載の
核酸分子。
【請求項20】
該異種部分は、FVIIIのN末端もしくはC末端に連結されるか、もしくはFVIII中の2つのアミノ酸の間に挿入される、請求項
19に記載の
核酸分子。
【請求項21】
該FVIIIをコードする核酸配列は、配列番号107のヌクレオチド配列を含む;もしくは、該FVIIIをコードする核酸配列は、配列番号71のヌクレオチド配列を含む、請求項
19に記載の
核酸分子。
【請求項22】
該
核酸分子は、送達剤とともに製剤化され;
該
核酸分子は、静脈内送達、経皮送達、皮内送達、皮下送達、経肺送達、もしくは経口送達用、又は任意のその組合せのために製剤化される、
請求項1に記載の
核酸分子。
【請求項23】
該送達剤は、脂質ナノ粒子を含む、又は該送達剤は、リポソーム、非脂質ポリマー分子、及びエンドソーム、並びに任意のその組合せからなる群より選択される、請求項
22に記載の
核酸分子。
【請求項24】
該
核酸分子は、静脈内送達用に製剤化される、請求項
22または
23に記載の
核酸分子。
【請求項25】
請求項1に記載の
核酸分子を含む、ベクター。
【請求項26】
請求項1に記載の
核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項27】
請求項1に記載の
核酸分子、及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項28】
請求項
26に記載の宿主細胞、及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項29】
請求項1に記載の
核酸分子、及び該
核酸分子をそれを必要とする対象に投与するための使用説明書を含む、キット。
【請求項30】
請求項1に記載の
核酸分子であって、該
核酸分子は、昆虫細胞において産生される、上記
核酸分子。
【請求項31】
請求項1に記載の
核酸分子を含む、ナノ粒子送達系。
【請求項32】
請求項
26に記載の宿主細胞を適切な条件下で培養すること、及びポリペプチドを回収することを含む、ポリペプチドを製造する方法であって、該ポリペプチドは、凝固活性を有するポリペプチドであり、該方法は、該凝固活性を有するポリペプチドを回収することを含む、上記方法。
【請求項33】
異種ポリヌクレオチド配列を、それを必要とする対象において発現させる方法に使用するための医薬組成物であって、請求項1に記載の
核酸分子を含む、上記医薬組成物。
【請求項34】
凝固因子を、それを必要とする対象において発現させる方法に使用するための医薬組成物であって、請求項
15に記載の
核酸分子を含む、上記医薬組成物。
【請求項35】
それを必要とする対象において疾患又は障害を処置する方法に使用するための医薬組成物であって、請求項1に記載の
核酸分子を含む、上記医薬組成物。
【請求項36】
それを必要とする対象において凝固因子欠乏症を処置する方法に使用するための医薬組成物であって、請求項
15に記載の
核酸分子を含む、上記医薬組成物。
【請求項37】
該
核酸分子は、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、経肺投与、もしくは任意のその組合せで投与される;
該対象に第二の薬剤を投与することをさらに含む;
該対象は哺乳動物である;
該対象はヒトである;
該対象への該
核酸分子の投与は、投与前の対象におけるFVIII活性と比較して増加したFVIII活性を生じ、該FVIII活性は、少なくとも2倍増加する;及び/又は、
該対象は出血障害を有する、
請求項
36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
該
核酸分子は静脈内投与される、請求項
37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
該出血障害は血友病である、請求項
37に記載の医薬組成物。
【請求項40】
該出血障害は血友病Aである、請求項
39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
それを必要とする対象において血友病Aを処置する方法に使用するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、凝固因子をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む
核酸分子を含み、
該第一のITRは、配列番号180に示されるヌクレオチド配列からなり、及び該第二のITRは、配列番号181に示されるヌクレオチド配列からなる;又は該第一のITRは、配列番号183に示されるヌクレオチド配列からなり、及び該第二のITRは、配列番号184に示されるヌクレオチド配列からなる、上記医薬組成物。
【請求項42】
それを必要とする対象において肝臓の代謝障害を処置する方法に使用するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、該対象において欠乏している肝臓関連代謝酵素をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む
核酸分子を含み
、該第一のITRは、配列番号180に示されるヌクレオチド配列からなり、及び該第二のITRは、配列番号181に示されるヌクレオチド配列からなる;又は該第一のITRは、配列番号183に示されるヌク
レオチド配列からなり、及び該第二のITRは、配列番号184に示されるヌクレオチド配列からなる、上記医薬組成物。
【請求項43】
該遺伝子カセットは一本鎖核酸を含む;
該遺伝子カセットは二本鎖核酸を含む;
該肝臓の代謝障害は、フェニルケトン尿症(PKU)、尿素サイクル異常症、リソソーム蓄積症、及び糖原病からなる群より選択される;
該
核酸分子は、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、経肺投与、もしくは任意のその組合せで投与される;
第二の薬剤を該対象に投与することをさらに含む;
該対象は哺乳動物である;並びに/又は、
該対象はヒトである、
請求項
42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
該肝臓の代謝障害は、フェニルケトン尿症(PKU)である、請求項
43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
該
核酸分子は静脈内投与される、請求項
43又は
44に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国仮特許出願第62/716,826号(2018年8月9日出願)に対して優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に加入される。
【0002】
電子的に提出された配列表の参照
ASCIIテキストファイルで電子的に提出された配列表(名称: SA9-465PC_SL_ST25.txt;サイズ:460,648バイト;及び作成日:2019年8月8日)の内容は、その全体として参照により本明細書に加入される。
【背景技術】
【0003】
開示の背景
遺伝子治療は、様々な疾患を処置する持続的な手段の可能性を提供する。過去において、多くの遺伝子治療処置は、典型的にはウイルスの使用に頼ってきた。この目的のために選択され得る多くのウイルス性薬剤があり、それぞれ程度の差はあるが遺伝子治療に適した個別の特性を有する。非特許文献1。しかし、それらの免疫原性プロフィール又はそれらの癌を引き起こす傾向を含むいくつかのウイルスベクターの望ましくない特性は、臨床上の安全性の懸念を生じ、そして最近まで、それらの臨床上の使用は特定の適用、例えばワクチン及び腫瘍溶解ストラテジーに限られてきた。非特許文献2。
【0004】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、最も広く研究されている遺伝子治療ベクターのうちの1つである。AAVは、およそ4.8キロベース(kb)の小さな一本鎖DNAゲノムを取り囲んで保護するタンパク質シェルである。非特許文献3。AAVはパルボウイルスファミリーに属し、そして複製するために他のウイルス、主にアデノウイルスとの同時感染に依存している。同上。その一本鎖ゲノムは3つの遺伝子を含有する、Rep(複製)、Cap(カプシド)、及びaap(会合)。同上。これらのコード配列は、ゲノム複製及びパッケージングに必要な末端逆位配列(ITR)に隣接している。同上。2つのシス作用性AAV ITRは、およそ145ヌクレオチド長であり、DNA複製の開始の間プライマーとして機能するT字形ヘアピン構造へと折りたたむことができる回分構造配列で中断されている。
【0005】
しかし、従来のAAVの遺伝子送達ベクターとしての使用は特定の欠点を有する。主な欠点のうちの1つは、異種DNA約4.5kbというAAVの限られたウイルスパッケージング能力に付随するものである。(非特許文献4)。さらに、AAVベクターの投与はヒトにおいて免疫応答を誘発し得る。AAVはいくつかの他のウイルス(すなわち、アデノウイルス)より低い免疫原性であることが示されてきたが、カプシドタンパク質は、ヒト免疫系の様々な構成要素を惹起し得る。Nasoら、2017年を参照のこと。AAVはヒト集団において一般的なウイルスであり、そして大部分の人々はAAVに曝露されたことがあり、したがって大部分の人々は、彼らが以前に曝露したことがある特定のバリアントに対してすでに免疫応答を発生したことがある。既存の適応応答は、中和抗体(NAb)及びT細胞を含み得、これらはAAVのその後の再感染の臨床有効性及び/又は形質導入された細胞の除去を減少させ得、このことは、AVVベースの遺伝子治療処置に対して既存の抗AAV免疫を有する患者を不適格にし得る。さらに、AAV ITRのT字形ヘアピンループが、AAV ITRのT字形ヘアピン構造に結合する宿主細胞タンパク質/タンパク質複合体による阻害を受けやすいということが証拠により示唆される。例えば、非特許文献5。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Zhou et al.、Adv Drug Deliv Rev.106(Pt A):3-26、2016
【文献】Cotter et al.、Front Biosci. 10:1098-105 (2005)
【文献】Naso et al.、BioDrugs、31(4): 317-334、2017
【文献】Dong et al.、Hum Gene Ther. 7(17): 2101-12、1996
【文献】Zhou et al.、Scientific Reports 7:5432 (2017年7月14日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、既存のAAVベクター技術の意図しない結果及び制限のうちのいくつかを回避しながら、インビトロ及びインビボの状況で、標的配列、例えば治療用タンパク質及び/又はmiRNAを効率的かつ持続的に発現させるという必要性が当該分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の要旨
特定の態様において、異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子が提供され、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187もしくは188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【0009】
特定の例となる実施形態において、第一のITRは配列番号180に示されるヌクレオチド配列を含み、そして第二のITRは配列番号181に示されるヌクレオチド配列を含む。特定の例となる実施形態において、第一のITRは配列番号183に示されるヌクレオチド配列を含み、そして第二のITRは配列番号184に示されるヌクレオチド配列を含む。特定の例となる実施形態において、第一のITRは配列番号185に示されるヌクレオチド配列を含み、そして第二のITRは配列番号186に示されるヌクレオチド配列を含む。特定の例となる実施形態において、第一のITRは配列番号187に示されるヌクレオチド配列を含み、そして第二のITRは配列番号188に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0010】
特定の例となる実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187又は188に示されるヌクレオチド配列からなる。特定の例となる実施形態において、第一のITR及び第二のITRは互いの逆相補鎖である。
【0011】
特定の例となる実施形態において、核酸分子はプロモーターをさらに含む。特定の例となる実施形態において、プロモーターは組織特異的プロモーターである。特定の例となる実施形態において、プロモーターは、筋肉、中枢神経系(CNS)、眼球、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、肺、皮膚、膀胱、尿路、又は任意のその組合せから選択される臓器における異種ポリヌクレオチド配列の発現を推進する。特定の例となる実施形態において、プロモーターは、肝細胞、内皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、類洞細胞、求心性神経、遠心性神経、介在ニューロン、グリア細胞、星状膠細胞、乏突起膠細胞、小膠細胞、上衣細胞、肺上皮細胞、シュワン細胞、サテライト細胞、光受容細胞、網膜神経節細胞、又は任意のその組合せにおける異種ポリヌクレオチド配列の発現を推進する。特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列の5’側に位置する。特定の例となる実施形態において、プロモーターは、マウスサイレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ-1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミンミニマルプロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1-アンチトリプシン(AAT)、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)、デスミン(DES)、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCK、tMCK、及びホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターからなる群より選択される。
【0012】
特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列はイントロン配列をさらに含む。特定の例となる実施形態において、イントロン配列は異種ポリヌクレオチド配列に対して5’側に位置する。特定の例となる実施形態において、イントロン配列はプロモーターに対して3’側に位置する。特定の例となる実施形態において、イントロン配列は合成イントロン配列を含む。特定の例となる実施形態において、イントロン配列は配列番号115又は192を含む。
【0013】
特定の例となる実施形態において、遺伝子カセットは転写後調節エレメントをさらに含む。特定の例となる実施形態において、転写後調節エレメントは異種ポリヌクレオチド配列に対して3’側に位置する。特定の例となる実施形態において、転写後調節エレメントは、変異ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、マイクロRNA結合部位、DNA核標的化配列、又は任意のその組合せを含む。特定の例となる実施形態において、マイクロRNA結合部位はmiR142-3pに対する結合部位を含む。
【0014】
特定の例となる実施形態において、遺伝子カセットは3’UTRポリ(A)テイル配列をさらに含む。特定の例となる実施形態において、3’UTRポリ(A)テイル配列は、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)、及び任意のその組合せからなる群より選択される。特定の例となる実施形態において、3’UTRポリ(A)テイル配列はbGHポリ(A)を含む。
【0015】
特定の例となる実施形態において、遺伝子カセットはエンハンサー配列をさらに含む。特定の例となる実施形態において、エンハンサー配列は第一のITRと第二のITRとの間に位置する。
【0016】
特定の例となる実施形態において、核酸分子は、5’から3’へ:第一のITR、遺伝子カセット、及び第二のITRを含み;ここで遺伝子カセットは、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、及び3’UTRポリ(A)テイル配列を含む。特定の例となる実施形態において、遺伝子カセットは、5’から3’へ:組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、及び3’UTRポリ(A)テイル配列を含む。特定の例となる実施形態において、組織特異的プロモーター配列はTTTプロモーターを含み;イントロンは合成イントロンであり;転写後調節エレメントはWPREを含み、そして3’UTRポリ(A)テイル配列はbGHpAを含む。
【0017】
特定の例となる実施形態において、遺伝子カセットは一本鎖核酸を含む。 特定の例となる実施形態において、遺伝子カセットは二本鎖核酸を含む。
【0018】
特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、そのフラグメント、又はそれらの組み合わせを含む。
【0019】
特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列は、アドレノメデュリン(AM)、アンジオポエチン(Ang)、自己分泌型細胞運動刺激因子、骨形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP2、BMP4、BMP5、BMP7)、毛様体神経栄養因子ファミリーメンバー(例えば、毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン-6(IL-6))、コロニー刺激因子(例えば、マクロファージコロニー刺激因子(m-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF))、上皮増殖因子(EGF)、エフリン(例えば、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)(例えば、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23)、ウシ胎児ソマトトロピン(FBS)、GDNFファミリーメンバー(例えば、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、パーセフィン、アルテミン)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝癌細胞由来増殖因子(HDGF)、インスリン、インスリン様増殖因子(例えば、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)又はIGF-2、インターロイキン(IL)(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、遊走刺激因子(MSF)、マクロファージ刺激タンパク質(MSP又は肝細胞増殖因子様タンパク質(HGFLP))、ミオスタチン(GDF-8)、ニューレグリン(例えば、ニューレグリン1(NRG1)、NRG2、NRG3、NRG4)、ニューロトロフィン(例えば、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、NT-4、胎盤増殖因子(PGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、レナラーゼ(RNLS)、T細胞増殖因子(TCGF)、トロンボポエチン(TPO)、形質転換増殖因子(例えば、形質転換増殖因子アルファ(TGF-α)、TGF-β、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)、及び血管内皮増殖因子(VEGF)、並びに任意のその組合せからなる群より選択される増殖因子をコードする。
【0020】
特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列はホルモンをコードする。
【0021】
特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列はサイトカインをコードする。
【0022】
特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列は抗体又はそのフラグメントをコードする。
【0023】
特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列は、X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチューブラリン)、チロシン水酸化酵素、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファグルコシダーゼ)、及び任意のその組合せから選択される遺伝子をコードする。
【0024】
特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列はマイクロRNA(miRNA)をコードする。特定の例となる実施形態において、miRNAはSOD1、HTT、RHO、及び任意のその組合せから選択される標的遺伝子の発現を下方調節する。
【0025】
特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列は、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第III因子(FIII)、第IV因子(FVI)、第V因子(FV)、第VI因子(FVI)、第VII因子(FVII)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FVIII)、フォン・ビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-2(PAI2)、及び任意のその組合せからなる群より選択される凝固因子をコードする。
【0026】
特定の例となる実施形態において、凝固因子はFVIIIである。特定の例となる実施形態において、FVIIIは全長成熟FVIIIである。特定の例となる実施形態において、FVIIIは、配列番号106を有するアミノ酸配列と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0027】
特定の例となる実施形態において、FVIIIは、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、及び部分Bドメインを含むか、又はBドメインは含まない。特定の例となる実施形態において、FVIIIは、配列番号109のアミノ酸配列と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0028】
特定の例となる実施形態において、凝固因子は異種部分を含む。特定の例となる実施形態において、異種部分は、アルブミンもしくはそのフラグメント、免疫グロブリンFc領域、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはそのフラグメント、アルブミン結合部分、その誘導体、又は任意のその組合せからなる群より選択される。特定の例となる実施形態において、異種部分は、FVIIIのN末端もしくはC末端に連結されるか、又はFVIII中の2つのアミノ酸の間に挿入される。特定の例となる実施形態において、異種部分は、表4に列挙される挿入部位から選択される1つ又はそれ以上の挿入部位において2つのアミノ酸の間に挿入される。
【0029】
特定の例となる実施形態において、FVIIIは、A1ドメイン、A2ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、任意のBドメイン、及び異種部分をさらに含み、ここで異種部分は成熟FVIII(配列番号106)に対応するアミノ酸745のすぐ下流側に挿入される。
【0030】
特定の例となる実施形態において、FVIIIはFcRn結合パートナーを更に含む。特定の例となる実施形態において、FcRn結合パートナーは免疫グロブリン定常ドメインのFc領域を含む。
【0031】
特定の例となる実施形態において、FVIIIをコードする核酸配列はコドン最適化されている。特定の例となる実施形態において、FVIIIをコードする核酸配列は、ヒトにおける発現にコドン最適化されている。
【0032】
特定の例となる実施形態において、FVIIIをコードする核酸配列は、配列番号107のヌクレオチド配列と、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0033】
特定の例となる実施形態において、FVIIIをコードする核酸配列は、配列番号71のヌクレオチド配列と、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0034】
特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列はコドン最適化されている。特定の例となる実施形態において、異種ポリヌクレオチド配列はヒトにおける発現にコドン最適化されている。
【0035】
特定の例となる実施形態において、核酸分子は送達剤とともに製剤化される。特定の例となる実施形態において、送達剤は脂質ナノ粒子を含む。特定の例となる実施形態において、送達剤は、リポソーム、非脂質ポリマー分子、及びエンドソーム、並びに任意のその組合せからなる群より選択される。
【0036】
特定の例となる実施形態において、核酸分子は、静脈内送達、経皮送達、皮内送達、皮下送達、経肺送達、もしくは経口送達用、又は任意のその組合せのために製剤化される。特定の例となる実施形態において、核酸分子は静脈内送達用に製剤化される。
【0037】
特定の態様において、本明細書に記載されるような核酸分子を含むベクターが提供される。
【0038】
特定の態様において、本明細書に記載されるような核酸分子を含む宿主細胞が提供される。
【0039】
特定の態様において、本明細書に記載されるような核酸分子又はベクター、及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0040】
特定の態様において、本明細書に記載されるような宿主細胞、及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0041】
特定の態様において、本明細書に記載されるような核酸分子及び該核酸分子をそれを必要とする対象に投与するための指示書を含むキットが提供される。
【0042】
特定の態様において、本明細書に記載されるような核酸分子の製造のためのバキュロウイルス系が提供される。
【0043】
特定の例となる実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子は昆虫細胞において産生される。
【0044】
特定の態様において、本明細書に記載されるような核酸分子を含むナノ粒子送達系が提供される。
【0045】
特定の態様において、本明細書に記載されるような宿主細胞を適切な条件下で培養すること、及びポリペプチドを回収することを含む、ポリペプチドを製造する方法が提供される。
【0046】
特定の態様において、本明細書に記載されるような宿主細胞を適切な条件下で培養すること、及び凝固活性を有するポリペプチドを回収することを含む、凝固活性を有するポリペプチドを製造する方法が提供される。
【0047】
特定の態様において、異種ポリヌクレオチド配列をそれを必要とする対象において発現させる方法が提供され、該方法は本明細書に記載されるような核酸分子、本明細書に記載されるベクター、又は本明細書に記載される医薬組成物を該対象に投与することを含む。
【0048】
特定の態様において、それを必要とする対象において凝固因子を発現させる方法が提供され、該方法は、本明細書に記載されるような核酸分子、本明細書に記載されるベクター、本明細書に記載されるポリペプチド、又は本明細書に記載される医薬組成物を該対象に投与することを含む。
【0049】
特定の態様において、それを必要とする対象において疾患又は障害を処置する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載されるような核酸分子、本明細書に記載されるベクター、又は本明細書に記載される医薬組成物を該対象に投与することを含む。
【0050】
特定の態様において、凝固因子欠乏症を有する対象を処置する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載されるような核酸分子、本明細書に記載されるベクター、本明細書に記載されるポリペプチド、又は本明細書に記載される医薬組成物を該対象に投与することを含む。
【0051】
特定の態様において、それを必要とする対象において凝固因子欠乏症を処置する方法が提供され、該方法は、本明細書に記載されるような核酸分子、本明細書に記載されるベクター、本明細書に記載されるポリペプチド、又は本明細書に記載される医薬組成物を該対象に投与することを含む。
【0052】
特定の例となる実施形態において、核酸分子は、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、経肺投与、又は任意のその組合せで投与される。特定の例となる実施形態において、核酸分子は静脈内投与される。
【0053】
特定の例となる実施形態において、上記方法は第二の薬剤を対象に投与することをさらに含む。
【0054】
特定の例となる実施形態において、対象は哺乳動物である。特定の例となる実施形態において、対象はヒトである。
【0055】
特定の例となる実施形態において、対象への核酸分子の投与は、投与前の対象におけるFVIII活性と比較して増加したFVIII活性を生じ、ここでFVIII活性は、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、又は少なくとも約100倍増加する。
【0056】
特定の例となる実施形態において、対象は出血障害を有する。特定の例となる実施形態において、出血障害は血友病である。特定の例となる実施形態において、出血障害は血友病Aである。
【0057】
特定の態様において、それを必要とする対象において出血障害を処置する方法が提供され、該方法は、凝固因子をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を該対象に投与することを含み、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187もしくは188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はそれらの機能性誘導体を含む。
【0058】
特定の態様において、それを必要とする対象において血友病Aを処置する方法が提供され、該方法は、第VIII因子(FVIII)をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を該対象に投与することを含み、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187もしくは188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【0059】
特定の態様において、それを必要とする対象において肝臓の代謝障害を処置する方法が提供され、該方法は、該対象において欠乏している肝臓関連代謝酵素をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を該対象に投与することを含み、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは非アデノ随伴ウイルス(非AAV)のITRである。
【0060】
特定の例となる実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187もしくは188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【0061】
特定の態様において、それを必要とする対象において肝臓の代謝障害を処置する方法が提供され、該方法は、該対象において欠乏している肝臓関連代謝酵素をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を該対象に投与することを含み、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187もしくは188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【0062】
特定の例となる実施形態において、遺伝子カセットは一本鎖核酸を含む。特定の例となる実施形態において、遺伝子カセットは二本鎖核酸を含む。
【0063】
特定の例となる実施形態において、肝臓の代謝障害は、フェニルケトン尿症(PKU)、尿素サイクル異常症、リソソーム蓄積症、及び糖原病からなる群より選択される。特定の例となる実施形態において、肝臓の代謝障害はフェニルケトン尿症(PKU)である。
【0064】
特定の例となる実施形態において、核酸分子は、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、経肺投与、又は任意のその組合せで投与される。特定の例となる実施形態において、核酸分子は静脈内投与される。
【0065】
特定の例となる実施形態において、上記方法は第二の薬剤を対象に投与することをさらに含む。
【0066】
特定の例となる実施形態において、対象は哺乳動物である。特定の例となる実施形態において、対象はヒトである。
【0067】
特定の態様において、それを必要とする対象においてフェニルケトン尿症(PKU)を処置する方法が提供され、該方法は、フェニルアラニン水酸化酵素をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を該対象に投与することを含み、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187もしくは188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【0068】
特定の例となる実施形態において、遺伝子カセットは一本鎖核酸を含む。特定の例となる実施形態において、遺伝子カセットは二本鎖核酸を含む。
【0069】
特定の例となる実施形態において、核酸分子は送達剤とともに製剤化される。特定の例となる実施形態において、送達剤は脂質ナノ粒子を含む。
【0070】
特定の態様において、複雑な二次構造をとることができる核酸分子を適切なベクターに挿入すること、及び得られたベクターを、SbcCD複合体における破壊を含む細菌宿主株に導入することを含む、核酸分子をクローン化する方法が提供される。
【0071】
特定の例となる実施形態において、SbcCD複合体における破壊は、SbcC遺伝子及び/又はSbcD遺伝子における遺伝子破壊を含む。特定の例となる実施形態において、SbcCD複合体における破壊は、SbcC遺伝子における遺伝子破壊を含む。特定の例となる実施形態において、SbcCD複合体における破壊はSbcD遺伝子における遺伝子破壊を含む。
【0072】
特定の例となる実施形態において、核酸分子は第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含み、ここで第一及び/又は第二のITRは非アデノ随伴ウイルス(非AAV)ITRである。
【0073】
特定の例となる実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187もしくは188と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【0074】
特定の例となる実施形態において、核酸分子は遺伝子カセットをさらに含み、該遺伝子カセットは第一のITRを及び第二のITRに隣接している。
【0075】
特定の例となる実施形態において、遺伝子カセットは異種ポリヌクレオチド配列を含む。
【0076】
特定の例となる実施形態において、適切なベクターは低コピーベクターである。特定の例となる実施形態において、適切なベクターはpBR322である。
【0077】
特定の例となる実施形態において、細菌宿主株は十字型DNA構造を分解することができない。
【0078】
特定の例となる実施形態において、細菌宿主株は、遺伝子型sbcC、recD、mcrA、ΔmcrBCFを含むPMC103である。特定の例となる実施形態において、細菌宿主株は、遺伝子型recBC、recJ、sbcBC、mcrA、ΔmcrBCFを含むPMC107である。特定の例となる実施形態において、細菌宿主株は、遺伝子型recB、recJ、sbcC、mcrA、ΔmcrBCF、umuC、uvrCを含むSUREである。
【0079】
特定の態様において、核酸分子をクローン化する方法が提供され、該方法は、複雑な二次構造をとることができる核酸分子を適切なベクターに挿入すること、及びSbcCD複合体において破壊を含む細菌宿主株に得られたベクターを導入することを含み、ここで核酸分子は第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含み、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187もしくは188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【
図1-1】
図1A~1Bは、一本鎖凝固因子(例えば、FVIII)発現カセットの略図である。非AAV由来の5’ITR(ssDNA構造の末端にヘアピンループを有する)、非AAV由来の3’ITR(ヘアピンループを有する)、プロモーター配列(例えば、TTPp又はCAGp)、及び導入遺伝子配列、例えば、Bドメイン内にXTEN144を挿入されたFVIIIco6XTEN配列の位置が示される。例となる発現カセットはまた、さらなる可能なエレメント、例えば、イントロン配列、WPREmut配列、及びbGHpA配列も示す。
【
図1-2】
図1C~1Fは、
図1A~1Bに示されるカセットのような一本鎖凝固因子発現カセットを製造するために使用されるプラスミドの略図であり、ここでカセットのITRは、AAV2(
図1C)、B19(
図1D)、GPV(
図1E)から誘導されるか、又は野生型B19 ITR配列(
図1F)である。ここで示されるようなssFVIII発現カセットを含むプラスミド構築物を、PvuII(PvuII部位において)(
図1C)又はLguI(LguI部位において)(
図1D~1F)を用いて消化し、ITR及び発現カセットを含む配列を正確に放出させた。二本鎖DNAを95℃で熱変性してssDNAを生じ、次いで4℃でインキュベートしてITR構造形成させた。
【
図2A】
図2Aは、様々なパルボウイルスファミリーメンバー間の関係を説明する系統樹である。B19、AAV-2、及びGPVに四角の枠を付けて示す。
【
図2B】
図2Bは、ヘアピン構造を含む様々なカセットの概要図である。
【
図3A】
図3A及び3Bは、B19、GPV、及びAAV2(
図3A)並びにB19及びGPV(
図3B)のITRのアライメントである。灰色のシェーディングは相同性を示す。
【
図3B】
図3A及び3Bは、B19、GPV、及びAAV2(
図3A)並びにB19及びGPV(
図3B)のITRのアライメントである。灰色のシェーディングは相同性を示す。
【
図4】
図4A~4Cは、Hem Aマウスにおけるハイドロダイナミック注入(HDI)による一本鎖FVIII-AAVネイキッドDNA(ssAAV-FVIII;
図1C)、ssDNA-B19 FVIII(
図1D)、又はssDNA-GPV FVIII(
図1E)投与後のFVIII血漿活性を示す。50μg/マウス(
図4C)、20μg/マウス(
図4A及び4B)、10μg/マウス(
図4A、4B、及び4C)、又は5μg/マウス(
図4A)でのssDNAの単回HDIを用いて処置されたマウスにおけるFVIII活性を、血漿サンプルにおいて24時間、3日、2週、3週、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、及び6か月目に(ヒトにおける正常生理的レベルのパーセンテージとして)測定した。プラスミドDNA 5μg/マウスのHDIを対照として投与した(
図4A、4B、及び4C)。
【
図5】
図5は、等モル量の一本鎖ネイキッドDNA(ssAAV-FVIII、
図1A)、ITR配列を含有する二本鎖AAV-FVIII DNA(dsDNA)、ITRを含まない二本鎖FVIII DNA(dsDNA No ITR)、又はITRも細菌配列も含まない環状二本鎖FVIII DNA(ミニサークル)の単回ハイドロダイナミック注入後の血友病Aマウス血漿におけるFVIII活性を示す。AAV-FVIIIプラスミド(
図2C)のPvuIIを用いた酵素的切断によりdsDNAを生成したが熱変性は行わなかった。dsDNA No ITRを、AAV-FVIIIプラスミド(
図2C)のAflIIを用いた酵素的切断により生成し、続いて精製した。ミニサークルDNAを、dsDNA No ITR DNAのAflII部位のライゲーションにより生成した。マウス血漿を3か月又は4か月にわたって集め、そしてFVIIIを発色活性アッセイにより決定した。
【
図6】
図6は、一本鎖ネイキッドFVIII-DNA(
図1A、
図1D~1F)30μgのハイドロダイナミック注入後の血友病Aマウス血漿におけるFVIII活性を示す。血漿を7週間毎週集め、そしてFVIII活性を発色アッセイにより決定した。35日後に(黒矢印として示される)、FVIII-B19d135及びFVIII-GPVd162 ssDNAを投与されたマウスに、30μgをハイドロダイナミック注入により再投与した。
【
図7-1】
図7Aは、一本鎖マウスフェニルアラニン水酸化酵素(例えば、PAH)発現カセットの略図である。非AAV由来5’ITR(ssDNA構造の末端にヘアピンループを有する)、非AAV由来3’ITR(ヘアピンループを有する)、プロモーター配列(例えば、CAGp)、及び導入遺伝子配列、例えば、3xFLAG_mPAH配列の位置を示す。例となる発現カセットはまた、さらなる可能なエレメント、例えば、WPREmut配列、及びbGHpA配列も示す。
図7B~7Dは、マウスPAH cDNA及び非AAV ITR B19d135又はGPVd162を含有する一本鎖DNAのハイドロダイナミック注入による単回投与の前(0日)及び投与後の、フェニルケトン尿症(PKU)マウスにおけるフェニルアラニン(Phe)の血漿濃度を示す。血漿を、ssDNA投与の3、7、14、28、42、及び56日後に集めた。残留フェニルアラニンレベルを、μg/ml(
図7B~7C)で濃度として又は投与前のパーセントとして示す(
図7D)。水平の線は投与前のベースラインPheレベルを示す。
図7Eは、マウスPAH導入遺伝子及びB19d135又はGPVd165 ITRのいずれかを含有するssDNAを用いて処置したPKUマウスからの肝臓溶解物のウェスタン免疫ブロットを示す。処置後81日めに肝臓を集め、そしてタンパク質溶解物を抽出した。各ウェルは単一の動物を表す。FLAG-タグ化マウスPAHタンパク質を、M2抗FLAG抗体を使用して検出し、そしてGAPDHローディングコントロールを比較のために含めた。
【
図8】
図8A~Bは、FVIII-AAV DNA(
図1A~1C)を被包した脂質ナノ粒子を用いて形質導入した後のHuh7細胞上清におけるFVIII活性レベルを示す。CAGpプロモーター(
図1B)下のプラスミドFVIII-AAVを、3つのアミン対ホスフェート(NP)比で被包し、そしてpicogreenアッセイにより決定した様々な濃度で(
図8A)Huh7細胞に適用した。TTPpプロモーター下のプラスミド、二本鎖線状(ds)、及び一本鎖(ss)AAV-FVIII(
図1A)もまた、2つのNP比で脂質ナノ粒子に被包し、そしてHuh7細胞に形質導入するために様々なDNA濃度で使用した(
図8B)。FVIIIを、ヒトFACT血漿標準と比較して発色活性アッセイにより測定した。
【発明を実施するための形態】
【0081】
開示の詳細な説明
本開示は、第一の末端逆位配列(ITR)、第二のITR、及び例えば、標的配列(本明細書で異種ポリヌクレオチド配列とも呼ばれる)、例えば、治療用タンパク質又はmiRNAをコードする遺伝子カセットを含むプラスミド様核酸分子を記載し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、非アデノ随伴ウイルスのITRである(例えば、第一のITR及び/又は第二のITRは非AAV由来である)。一部の実施形態において、遺伝子カセットは治療用タンパク質をコードし、例えば、標的配列は治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態において、治療用タンパク質は、凝固因子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、そのフラグメント、又はそれらの組み合わせから選択されるタンパク質を含む。一部の実施形態において、遺伝子カセットは、X連鎖ジストロフィン(dystrophin X-linked)、MTM1(ミオチューブラリン)、チロシン水酸化酵素、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA (MPS I)、IDS (MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファグルコシダーゼ)、又は任意のその組合せをコードする。
【0082】
一部の実施形態において、治療用タンパク質は凝固因子を含む。1つのある特定の実施形態において、治療用タンパク質はFVIII又はFIXタンパク質を含む。
【0083】
一部の実施形態において、遺伝子カセットはmiRNAをコードする。ある特定の実施形態において、miRNAは、SOD1、HTT、RHO、又は任意のその組合せから選択される標的遺伝子の発現を下方調節する。
【0084】
ある特定の実施形態において、非AAVは、ウイルスファミリーパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバー及び任意のその組合せからなる群より選択される。本開示はさらに、それを必要とする対象において治療用タンパク質、例えば、凝固因子、例えば、FVIIIを発現させる方法に関し、該方法は、第一の末端逆位配列(ITR)、第二のITR、及び例えば、治療用タンパク質又はmiRNAをコードする遺伝子カセットを含む核酸分子を該対象に投与することを含み、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは非アデノ随伴ウイルス(非AAV)のITRでる。ある特定の実施形態において、本開示は、配列番号113及び120から選択されるヌクレオチド配列に対して配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を記載する。
【0085】
ある特定の実施形態において、本開示は、異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を提供し、ここで第一及び/又は第二のITRはパルボウイルスB19又はガチョウパルボウイルス(GPV)に由来する。
【0086】
本開示の例となる構築物を、添付の図面及び配列表において説明する。明細書及び特許請求の明確な理解を提供するために、以下の定義を以下に示す。
【0087】
I. 定義
用語「a」又は「an」実体は、その実体の1つ又はそれ以上を指すということに留意すべきであり:例えば、「ヌクレオチド配列(a nucleotide sequence)」は、1つ又はそれ以上のヌクレオチド配列を表すと理解される。同様に、「治療用タンパク質(a therapeutic protein)」及び「a miRNA」は、1つ又はそれ以上の治療用タンパク質及び1つ又はそれ以上のmiRNAをそれぞれ表すと理解されるべきである。このように、用語「a」(又は「an」)、「1つ又はそれ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において交換可能に使用され得る。
【0088】
用語「約」は、本明細書において、近似的に、大体、およそ、又はほぼを意味するため使用される。用語「約」が数値範囲に併せて使用される場合、これは、示される数値範囲の上下に境界を拡大することによりその範囲を修飾する。一般に、用語「約」は、10パーセントの分散だけ記述された値を上及び下に、上下に(より高く又はより低く)数値を修飾するために本明細書において使用される。
【0089】
また本明細書において使用される「及び/又は」は、関連付けられた列挙された項目の1つ又はそれ以上のいずれか及びすべての可能な組み合わせ、さらには選択的に解釈される場合(「又は」)は組み合わせがないことも指し、かつこれらを包含する。
【0090】
「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」及び「ポリヌクレオチド」は交換可能に使用され、そして一本鎖形態、又は二本鎖らせんのいずれかの、リボヌクレオチド(アデノシン、グアノシン、ウリジン又はシチジン;「RNA分子」)又はデオキシリボヌクレオチド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、又はデオキシシチジン;「DNA分子」、そのいずれかのリン酸エステルアナログ、例えばホスホリチオアート及びチオエステルのホスフェートエステルポリマー形態を指す。一本鎖核酸配列は一本鎖DNA(ssDNA)又は一本鎖RNA(ssRNA)を指す。二本鎖DNA-DNA、DNA-RNA及びRNA-RNAらせんが可能である。用語核酸分子、及び特にDNA又はRNA分子は分子の一次構造及び二次構造のみを指し、そしていずれの特定の三次形態にも限定しない。したがって、この用語は、とりわけ、線状又は環状DNA分子(例えば、制限フラグメント)、プラスミド、スーパーコイルDNA及び染色体において見いだされる二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造を考察する際に、配列は本明細書においてDNAの非転写鎖に沿って5’から3’の方向の配列(すなわち、mRNAに対して相同な配列を有する鎖)のみを与える通常の慣例に従って本明細書において記載され得る。「組み換えDNA分子」は、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。DNAとしては、限定されないが、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、及び半合成DNAが挙げられる。本開示の「核酸組成物」は、本明細書に記載される1つ又はそれ以上の核酸を含む。
【0091】
本明細書で使用されるように、「末端逆位配列」(又は「ITR」)は、下流側にその逆相補鎖が続く一組のヌクレオチド(初期配列)、すなわち回分配列を含む、一本鎖核酸配列の5’又は3’末端のいずれかに位置する核酸配列を指す。初期配列と逆相補鎖との間のヌクレオチドの介在配列は、0を含めていずれの長さでもよい。一実施形態において、本開示に有用なITRは、1つ又はそれ以上の「回分配列」を含む。ITRは任意の数の機能を有し得る。一部の実施形態において、本明細書に記載されるITRはヘアピン構造を形成する。一部の実施形態において、ITRはT字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態において、ITRは非T字形ヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態において、ITRは細胞の核において核酸分子の長期存続を増進する。一部の実施形態において、ITRは細胞の核において核酸分子の永続的な存続を増進する(例えば、細胞の寿命全体の間)。一部の実施形態において、ITRは細胞の核における核酸分子の安全性を増進する。一部の実施形態において、ITRは細胞の核における核酸分子の保持を増進する。一部の実施形態において、ITRは細胞の核における核酸分子の持続性を増進する。一部の実施形態において、ITRは細胞の核における核酸分子の分解を阻害するか又は防止する。
【0092】
一実施形態において、初期配列及び/又は逆相補鎖は、約2-600ヌクレオチド、約2~550ヌクレオチド、約2~500ヌクレオチド、約2~450ヌクレオチド、約2~400ヌクレオチド、約2~350ヌクレオチド、約2~300ヌクレオチド、又は約2~250ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、初期配列及び/又は逆相補鎖は、約5~600ヌクレオチド、約10~600ヌクレオチド、約15~600ヌクレオチド、約20~600ヌクレオチド、約25~600ヌクレオチド、約30~600ヌクレオチド、約35~600ヌクレオチド、約40~600ヌクレオチド、約45~600ヌクレオチド、約50~600ヌクレオチド、約60~600ヌクレオチド、約70~600ヌクレオチド、約80~600ヌクレオチド、約90~600ヌクレオチド、約100~600ヌクレオチド、約150~600ヌクレオチド、約200~600ヌクレオチド、約300~600ヌクレオチド、約350~600ヌクレオチド、約400~600ヌクレオチド、約450~600ヌクレオチド、約500~600ヌクレオチド、又は約550~600ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、初期配列及び/又は逆相補鎖は、約5~550ヌクレオチド、約5~500ヌクレオチド、約5~450ヌクレオチド、約5~400ヌクレオチド、約5~350ヌクレオチド、約5~300ヌクレオチド、又は約5~250ヌクレオチドを含む。一部の実施形態において、初期配列及び/又は逆相補鎖は、約10~550ヌクレオチド、約15~500ヌクレオチド、約20~450ヌクレオチド、約25~400ヌクレオチド、約30~350ヌクレオチド、約35~300ヌクレオチド、又は約40~250ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、初期配列及び/又は逆相補鎖は、約225ヌクレオチド、約250ヌクレオチド、約275ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約325ヌクレオチド、約350ヌクレオチド、約375ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約425ヌクレオチド、約450ヌクレオチド、約475ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約525ヌクレオチド、約550ヌクレオチド、約575ヌクレオチド、又は約600ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、初期配列及び/又は逆相補鎖は約400ヌクレオチドを含む。
【0093】
他の実施形態において、初期配列及び/又は逆相補鎖は、約2~200ヌクレオチド、約5~200ヌクレオチド、約10~200ヌクレオチド、約20~200ヌクレオチド、約30~200ヌクレオチド、約40~200ヌクレオチド、約50~200ヌクレオチド、約60~200ヌクレオチド、約70~200ヌクレオチド、約80~200ヌクレオチド、約90~200ヌクレオチド、約100~200ヌクレオチド、約125~200ヌクレオチド、約150~200ヌクレオチド、又は約175~200ヌクレオチドを含む。他の実施形態において、初期配列及び/又は逆相補鎖は、約2~150ヌクレオチド、約5~150ヌクレオチド、約10~150ヌクレオチド、約20~150ヌクレオチド、約30~150ヌクレオチド、約40~150ヌクレオチド、約50~150ヌクレオチド、約75~150ヌクレオチド、約100~150ヌクレオチド、又は約125~150ヌクレオチドを含む。他の実施形態において、初期配列及び/又は逆相補鎖は、約2~100ヌクレオチド、約5~100ヌクレオチド、約10~100ヌクレオチド、約20~100ヌクレオチド、約30~100ヌクレオチド、約40~100ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド、又は約75~100ヌクレオチドを含む。他の実施形態において、初期配列及び/又は逆相補鎖は、約2~50ヌクレオチド、約10~50ヌクレオチド、約20~50ヌクレオチド、約30~50ヌクレオチド、約40~50ヌクレオチド、約3~30ヌクレオチド、約4~20ヌクレオチド、又は約5~10ヌクレオチドを含む。別の実施形態において、初期配列及び/又は逆相補鎖は、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、又は20ヌクレオチドからなる。他の実施形態において、初期配列と逆相補鎖との間の介在ヌクレオチドは、0ヌクレオチド、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、又は20ヌクレオチドである(例えばそれらからなる)。
【0094】
したがって、本明細書で使用されるように、「ITR」は、それ自体で折り返して二本鎖セグメントを形成することができる。例えば、配列GATCXXXXGATCは、折り返して二重らせんを形成する場合、GATCの初期配列及びその相補鎖(3’CTAG5’)を含む。一部の実施形態において、ITRは連続した回分配列(例えば、GATCGATC)を初期配列と逆相補鎖との間に含む。一部の実施形態において、ITRは、介在回分配列(例えば、GATCXXXXGATC)を初期配列と逆相補鎖とを含む。一部の実施形態において、連続した又は中断された回分配列の相補セクションは、互いに相互作用して「ヘアピンループ」構造を形成する。本明細書で使用されるように、「ヘアピンループ」構造は、一本鎖ヌクレオチド分子上の少なくも2つの相補配列が塩基対合して二本鎖セクションを形成する場合に生じる。一部の実施形態において、ITRの一部のみがヘアピンループを形成する。他の実施形態において、ITR全体がヘアピンループを形成する。
【0095】
本開示において、少なくとも1つのITRは非アデノウイルス随伴ウイルス(非AAV)のITRである。ある特定の実施形態において、ITRは、ウイルスファミリーパルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVメンバーのITRである。一部の実施形態において、ITRは、ディペンドウイルス属(Dependovirus)又はエリスロウイルス属(Erythrovirus)の非AAVメンバーのITRである。ある特定の実施形態において、ITRは、ガチョウパルボウイルス(GPV)、ノバリケン(Muscovy duck)パルボウイルス(MDPV)、又はエリスロウイルスパルボウイルスB19(パルボウイルスB19、霊長類エリスロウイルスパルボウイルス1、B19ウイルス、及びエリスロウイルスとしても知られる)のITRである。ある特定の実施形態において、2つのITRのうちの1つのITRはAAVのITRである。他の実施形態において、構築物中の2つのITRのうちの1つは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び任意のその組合せから選択されるAAV血清型のITRである。1つのある特定の実施形態において、ITRはAAV血清型2に由来し、例えば、AAV血清型2のITRである。
【0096】
本開示の特定の態様において、核酸分子は2つのITR、5’ITR及び3’ITRを含み、ここで5’ITRは核酸分子の5’末端に位置し、そして3’ITRは核酸分子の3’末端に位置する。5’ITR及び3’ITRは、同じウイルスに由来しても異なるウイルスに由来してもよい。ある特定の実施形態において、5’ITRはAAV由来であり、そして3’ITRはAAVウイルスに由来しない(例えば、非AAV)。一部の実施形態において、3’ITRはAAV由来であり、そして5’ITRはAAVウイルスに由来しない(例えば、非AAV)。他の実施形態において、5’ITRはAAVウイルスに由来せず(例えば、非AAV)、そして3’ITRは同じか又は異なる非AAVウイルス由来である。
【0097】
本明細書で使用されるように、用語「パルボウイルス」はパルボウイルス科(Parvoviridae)を包含し、これらとしては、限定されないが、自己複製パルボウイルス及びディペンドウイルスが挙げられる。自律パルボウイルスとしては、例えば、ボカウイルス属(Bocavirus)、ディペンドウイルス属(Dependovirus)、エリスロウイルス属(Erythrovirus)、アムドウイルス属(Amdovirus)、パルボウイルス属(Parvovirus)、デンソウイルス属(Densovirus)、イテラウイルス属(Iteravirus)、コントラウイルス属(Contravirus)、アベパルボウイルス属(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス属(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス属(Tetraparvovirus)、アンビデンソウイルス属(Ambidensovirus、ブレビデンソウイルス属(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス属(Hepandensovirus)、及びペンスチルデンソウイルス属(Penstyldensovirus)のメンバーが挙げられる。
【0098】
例となる自律パルボウイルスとしては、限定されないが、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、イヌパルボウイルス、ミンク腸炎ウイルス、ウシパルボウイルス、ニワトリパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ガチョウパルボウイルス、H1パルボウイルス、ノバリケンパルボウイルス、ヘビパルボウイルス、及びB19ウイルスが挙げられる。他の自律パルボウイルスは当業者に公知である。例えば、FIELDS et al. VIROLOGY、volume 2、chapter 69 (4th ed.、Lippincott-Raven Publishers)を参照のこと。
【0099】
本明細書で使用されるように、用語「非AAV」は、パルボウイルス科のアデノ随伴ウイルス(AAV)を除くパルボウイルス科の由来の核酸、タンパク質及びウイルスを包含する。「非AAV」としては、限定されないが、ボカウイルス(Bocavirus)、ディペンドウイルス属(Dependovirus)、エリスロウイルス属(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス属(Parvovirus)、デンソウイルス属(Densovirus)、イテラウイルス属(Iteravirus)、コントラウイルス属(Contravirus)、アベパルボウイルス属(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス属(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス属(Tetraparvovirus)、アンビデンソウイルス属(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス属(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス属(Hepandensovirus)、及びペンスチルデンソウイルス属(Penstyldensovirus)の自己複製性メンバーが挙げられる。
【0100】
本明細書で使用されるように、用語「アデノ随伴ウイルス」(AAV)としては、限定されないが、AAV1型、AAV2型、AAV3型(3A型及び3B型を含む)、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、AAV11型、AAV12型、AAV13型、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、Gaoら(J.Virol.78:6381(2004))及びMorisら(Virol.33:375(2004))により開示されるAAV血清型及び系統群のAAV、並びに現在公知であるか又は後に発見された他のAAVが挙げられる。例えば、FIELDSら VIROLOGY、第2巻、69章(第4編、Lippincott-Raven Publishers)を参照のこと。
【0101】
本明細書で使用されるように、用語「に由来する」は、特定の分子もしくは生物、又は特定の分子もしくは生物からの情報(例えば、アミノ酸又は核酸配列)から単離されたか又はそれらを使用して製造された成分を指す。例えば、第二の核酸配列(例えば、ITR)に由来する核酸配列(例えば、ITR)は、第二の核酸配列のヌクレオチド配列と同一であるか又は実質的に類似したヌクレオチド配列を含み得る。ヌクレオチド又はポリペプチドの場合、由来種は、例えば、天然に存在する変異誘発、人工的に指向された変異誘発又は人工的なランダム変異誘発により得ることができる。ヌクレオチド又はポリペプチドを派生させるために使用される変異誘発は、意図的に指向されても意図的に無作為にされても、又はそれぞれの混合でもよい。最初のものに由来する異なるヌクレオチド又はポリペプチドを作製するためのヌクレオチド又はポリペプチドの変異誘発は、無作為な事象(例えば、ポリメラーゼの非忠実度(infidelity)により引き起こされる)であり得、そして由来ヌクレオチド又はポリペプチドの同定は、例えば本明細書において考察されるような適切なスクリーニング方法により行われ得る。ポリペプチドの変異誘発は、典型的にはそのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの操作を必然的に伴う。一部の実施形態において、第二のヌクレオチド又はアミノ酸配列に由来するヌクレオチド又はアミノ酸配列は、第二のヌクレオチド又はアミノ酸配列と、それぞれ少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有し、ここで第一のヌクレオチド又はアミノ酸配列は、第二のヌクレオチド又はアミノ酸配列の生物学的活性を保持する。他の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(又はそれぞれAAV ITR)と少なくとも90%同一であり、ここで非AAV(又はAAV) ITRは、非AAV ITR(又はそれぞれAAV ITR)の機能的特性を保持する。一部の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)と少なくとも80%同一であり、ここで非AAV(又はAAV) ITRは、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の機能的特性を保持する。一部の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)と少なくとも70%同一であり、ここで非AAV(又はAAV) ITRは、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の機能的特性を保持する。一部の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)と少なくとも60%同一であり、ここで非AAV(又はAAV) ITRは、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の機能的特性を保持する。一部の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)と少なくとも50%同一であり、ここで非AAV(又はAAV) ITRは、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の機能的特性を保持する。
【0102】
ある特定の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、非AAV(又はAAV)のITRのフラグメントを含むか又はそのフラグメントからなる。一部の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、非AAV(又はAAV)のITRのフラグメントを含むか又は該フラグメントからなり、ここで該フラグメントは、少なくとも約5ヌクレオチド、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約55ヌクレオチド、少なくとも約60ヌクレオチド、少なくとも約65ヌクレオチド、少なくとも約70ヌクレオチド、少なくとも約75ヌクレオチド、少なくとも約80ヌクレオチド、少なくとも約85ヌクレオチド、少なくとも約90ヌクレオチド、少なくとも約95ヌクレオチド、少なくとも約100ヌクレオチド、少なくとも約125ヌクレオチド、少なくとも約150ヌクレオチド、少なくとも約175ヌクレオチド、少なくとも約200ヌクレオチド、少なくとも約225ヌクレオチド、少なくとも約250ヌクレオチド、少なくとも約275ヌクレオチド、少なくとも約300ヌクレオチド、少なくとも約325ヌクレオチド、少なくとも約350ヌクレオチド、少なくとも約375ヌクレオチド、少なくとも約400ヌクレオチド、少なくとも約425ヌクレオチド、少なくとも約450ヌクレオチド、少なくとも約475ヌクレオチド、少なくとも約500ヌクレオチド、少なくとも約525ヌクレオチド、少なくとも約550ヌクレオチド、少なくとも約575ヌクレオチド、又は少なくとも約600ヌクレオチドを含み;ここで、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の機能的特性を保持する。ある特定の実施形態において、非AAV(又は AAV)のITRに由来するITRは、非AAV(又はAAV)のITRのフラグメントを含むか又は該フラグメントからなり、ここで該フラグメントは少なくとも約129ヌクレオチドを含み、そしてここで非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の機能的特性を保持する。ある特定の実施形態において、非AAV(又は AAV)のITRに由来するITRは、非AAV(又はAAV)のITRのフラグメントを含むか又は該フラグメントからなり、ここで該フラグメントは少なくとも約102ヌクレオチドを含み、そしてここで非AAV(又は AAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の機能的特性を保持する。
【0103】
一部の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、非AAV(又はAAV)のITRのフラグメントを含むか又は該フラグメントからなり、ここで該フラグメントは、非AAV(又はAAV)のITRの長さの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%を含む。
【0104】
ある特定の実施形態において、第二のヌクレオチド又はアミノ酸配列に由来するヌクレオチド又はアミノ酸配列は、適切に整列された場合、それぞれ第二のヌクレオチド又はアミノ酸配列の相同部分に対して、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有し、ここで第一のヌクレオチド又はアミノ酸配列は、第二のヌクレオチド又はアミノ酸配列の生物学的活性を保持する。他の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、適切に整列された場合、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の相同部分と少なくとも90%同一であり、ここで第一のヌクレオチド又はアミノ酸配列は、第二のヌクレオチド又はアミノ酸配列の生物学的活性を保持する。一部の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、適切に整列された場合、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の相同部分と少なくとも80%同一であり、ここで第一のヌクレオチド又はアミノ酸配列は、第二のヌクレオチド又はアミノ酸配列の生物学的活性を保持する。一部の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、適切に整列された場合、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の相同部分と少なくとも70%同一であり、ここで第一のヌクレオチド又はアミノ酸配列は、第二のヌクレオチド又はアミノ酸配列の生物学的活性を保持する。一部の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、適切に整列された場合、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の相同部分と少なくとも60%同一であり、第一のヌクレオチド又はアミノ酸配列は、第二のヌクレオチド又はアミノ酸配列の生物学的活性を保持する。一部の実施形態において、非AAV(又はAAV)のITRに由来するITRは、適切に整列された場合、非AAV ITR(それぞれ又はAAV ITR)の相同部分と少なくとも50%同一であり、第一のヌクレオチド又はアミノ酸配列は、第二のヌクレオチド又はアミノ酸配列の生物学的活性を保持する。
【0105】
「無カプシド(capsid-free)」又は「カプシドレス(capsid-less)」ベクター又は核酸分子は、カプシドを含まないベクター構築物を指す。一部の実施形態において、カプシドレスベクター又は核酸分子は、例えば、AAV Repタンパク質をコードする配列を含有しない。
【0106】
本明細書で使用されるように、「コード領域」又は「コード配列」は、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチドの部分である。「終止コドン」(TAG、TGA、又はTAA)は典型的にはアミノ酸に翻訳されないが、これはコード領域の一部とみなすことができるが、いずれかの隣接配列、例えばプロモーター、リボソーム結合部位、転写終結因子、イントロンなどはコード領域の一部ではない。コード領域の境界は、典型的には、得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端における開始コドン、及び得られるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする3’末端における翻訳終止コドンにより決定される。2つ又はそれ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチド中に、例えば、単一のベクター上に、又は別個のポリヌクレオチド構築物中に、例えば、別個の(異なる)ベクター上に存在し得る。次いで、単一のベクターが単一のコード領域だけを含有し得るか、又は2つもしくはそれ以上のコード領域を含むということになる。
【0107】
哺乳動物細胞により分泌される特定のタンパク質は分泌シグナルペプチドと関連しており、これは粗面小胞体を横切って伸長するタンパク質鎖の排出が開始されると、成熟タンパク質から切断される。シグナルペプチドは、一般的にはポリペプチドのN末端に融合されており、そして完全又は「全長」ポリペプチドから切断されてポリペプチドの分泌又は「成熟」形態を生成するということを当業者は理解する。ある特定の実施形態において、天然シグナルペプチド又はその配列の機能性誘導体は、それに作動可能に結合しているポリペプチドの分泌を方向づける能力を保持する。あるいは、異種哺乳動物シグナルペプチド、例えば、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)又はマウスβ-グルクロニダーゼシグナルペプチド、又はその機能性誘導体が使用され得る。
【0108】
用語「下流」は、参照ヌクレオチド配列に対して3’側に位置するヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態において、下流ヌクレオチド配列は、転写の開始点に続く配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写の開始部位の下流に位置する。
【0109】
用語「上流」は、参照ヌクレオチド配列の5’側に位置するヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態において、上流ヌクレオチド配列は、コード領域又は転写開始点の5’側に位置する配列に関する。例えば、大部分のプロモーターは転写開始部位の上流に位置する。
【0110】
本明細書で使用されるように、用語「遺伝子調節領域」又は「調節領域」は、コード領域の上流(5’非コード配列)、コード領域内、又はコード領域の下流(3’非コード配列)に位置するヌクレオチド配列を指し、そしてこれは関連するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性、又は翻訳に影響を及ぼす。調節領域は、ロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位、又はステムループ構造を含み得る。コード領域が真核細胞における発現を意図される場合、ポリアデニル化シグナル及び転写終結配列は通常はコード配列に対して3’側に位置する。
【0111】
産物、例えば、miRNA又は遺伝子産物(例えば、治療用タンパク質のようなポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、1つ又はそれ以上のコード領域に作動可能に結合されたプロモーター及び/又は他の発現(例えば、転写又は翻訳)制御エレメントを含み得る。作動可能な結合において、遺伝子産物、例えばポリペプチドのためのコード領域は、1つ又はそれ以上の調節領域と、遺伝子産物の発現を調節領域の影響下又は制御下に置くような方法で結合される。例えば、コード領域及びプロモーターは、プロモーター機能の誘導が、コード領域によりコードされる遺伝子産物をコードするmRNAの転写を生じる場合、及びプロモーターとコード領域との間の結合の性質が、遺伝子産物の発現を方向づけるプロモーターの能力と干渉せず、転写しようとするDNAテンプレートの能力とも干渉しない場合に、「作動可能に結合されている」。プロモーターに加えて、他の発現制御エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサー、及び転写終結シグナルもまた、遺伝子産物発現を方向づけるようにコード領域と作動可能に結合され得る。
【0112】
「転写制御配列」は、宿主細胞におけるコード配列の発現をもたらすプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどのようなDNA調節配列を指す。様々な転写制御領域が当業者に公知である。これらとしては、限定することなく、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、限定されないが、サイトメガロウイルス(最初期プロモーター、イントロン-Aと関連する)、サルウイルス40(初期プロモーター)、及びレトロウイルス(例えばラウス肉腫ウイルス)由来のプロモーター及びエンハンサーセグメントが挙げられる。他の転写制御領域としては、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン及びウサギβ-グロビンのような脊椎動物遺伝子由来のもの、さらには真核細胞における遺伝子発現を制御することができる他の配列が挙げられる。さらなる適切な転写制御領域としては、組織特異的プロモーター及びエンハンサー、さらにはリンホカイン誘導プロモーター(例えば、インターフェロン又はインターロイキンにより誘導可能なプロモーター)が挙げられる。
【0113】
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に公知である。これらとしては、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始及び終結コドン、並びにピコルナウイルス由来のエレメント(特に配列内リボソーム進入部位又はIRES、CITE配列とも呼ばれる)が挙げられる。
【0114】
本明細書で使用されるように、用語「発現」は、ポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えばRNA又はポリペプチドを生じるプロセスを指す。これとしては、限定することなく、ポリヌクレオチドのメッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)又はいずれかの他のRNA産物への転写、及びmRNAのポリペプチドへの翻訳が挙げられる。発現は「遺伝子産物」を生じる。本明細書で使用される遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写により生じるメッセンジャーRNA、又は転写物から翻訳されるポリペプチドのいずれでもよい。本明細書において記載されるような遺伝子産物は、転写後修飾、例えば、ポリアデニル化もしくはスプライシングを有する核酸、又は翻訳後修飾、例えばメチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、又はタンパク質分解切断を有するポリペプチドをさらに含む。本明細書で使用されるように用語「収量」は、遺伝子の発現により生じるポリペプチドの量を指す。
【0115】
「ベクター」は、核酸の宿主細胞へのクローン化及び/又は輸送のための媒介物を指す。ベクターは別の核酸セグメントが付着して付着したセグメントの複製を起こすためのレプリコンであり得る。「レプリコン」は、インビボでの複製の自律単位として機能する、すなわちそれ自体の制御下での複製が可能ないずれかの遺伝要素(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。用語「ベクター」は、核酸をインビトロで、エクスビボで、又はインビボで細胞中に導入するための媒介物を含む。多数のベクターが公知であり、そして当該分野で使用され、これらとしては、例えば、プラスミド、改変真核生物ウイルス、又は改変細菌ウイルスが挙げられる。ポリヌクレオチドの適切なベクターへの挿入は、適切なポリヌクレオチドフラグメントを、相補的付着末端を有する選択されたベクター中に連結することにより達成され得る。
【0116】
ベクターが組み込まれた細胞の選択又は同定を提供する選択可能なマーカー又はレポーターをコードするようにベクターは操作され得る。選択可能なマーカー又はレポーターの発現は、ベクターに含まれる他のコード領域を組み込んで発現する宿主細胞の同定及び/又は選択を可能にする。当該分野において公知であり使用される選択可能なマーカー遺伝子の例としては:アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどに対する抵抗性を与える遺伝子;及び表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子などが挙げられる。当該分野で公知であり使用されるレポーターの例としては:ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などが挙げられる。選択可能なマーカーはレポーターであるとも考えられ得る。
【0117】
本明細書で使用されるように、用語「宿主細胞」は、例えば、ssDNAもしくはベクターとして使用され得るか、又はssDNAもしくはベクターのレシピエントとして使用されたことがある微生物、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳動物細胞を指す。この用語は、形質導入された元の細胞の後代を含む。したがって、本明細書で使用されるように、「宿主細胞」は、一般に、外来DNA配列で形質導入された細胞を指す。単一の親細胞の後代は、天然の、偶発的な、又は計画的な変異に起因して、必ずしも元の親と形態学的に完全に同一でなくてもよく、又はゲノム的にもしくは総DNAにおいて相補的でないかもしれないということが理解される。一部の実施形態において、宿主細胞はインビトロ宿主細胞であり得る。
【0118】
用語「選択可能なマーカー」は、識別因子、通常は、マーカー遺伝子の効果、すなわち、抗生物質に対する抵抗性、除草剤に対する抵抗性に基づいて選択されることが可能な抗生物質又は化学物質抵抗性遺伝子、比色分析マーカー、酵素、蛍光マーカーなどを指し、ここでこの効果は、目的の核酸の遺伝を追跡するため、かつ/又は目的の核酸を受け継いだ細胞もしくは生物を同定するために使用される。当該分野で公知であり使用される選択可能なマーカー遺伝子の例としては:アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどに対する抵抗性を与える遺伝子;及び表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子などが挙げられる。
【0119】
用語「レポーター遺伝子」は、レポーター遺伝子の効果に基づいて識別することができる識別因子をコードする核酸を指し、ここでこの効果は、目的の核酸の遺伝を追跡するため、目的の核酸を受け継いだ細胞もしくは生物を同定するため、かつ/又は遺伝子発現誘導もしくは転写を測定するために使用される。当該分野において公知で使用されるレポーター遺伝子の例としては:ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などが挙げられる。選択可能なマーカーはレポーター遺伝子であるとも考えられ得る。
【0120】
「プロモーター」および「プロモーター配列」は互換的に使用され、コード配列または機能的RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コード配列はプロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは天然の遺伝子から完全に誘導することができるか、天然に見出される異なるプロモーターに由来する異なるエレメントで構成されるか、合成DNAセグメントを含むこともできる。当業者は、異なるプロモーターが異なる組織もしくは細胞型において、または発達の異なる段階で、または異なる環境もしくは生理的条件に応答して遺伝子の発現を方向付けることができるということを理解する。ほとんどの細胞型においてほとんどのときに遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に「構成プロモーター」と呼ばれる。特異的細胞型において遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に「細胞特異的プロモーター」または「組織特異的プロモーター」と呼ばれる。発達または細胞分化の特異的段階で遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に「発達特異的プロモーター」または「細胞分化特異的プロモーター」と呼ばれる。プロモーターを誘導する薬剤、生体分子、化学物質、リガンド、光などによる細胞の曝露または処理の後に誘導されて、遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に「誘導可能なプロモーター」または「調節可能なプロモーター」と呼ばれる。ほとんどの場合、調節配列の正確な境界が完全に規定されているとは限らないので、異なる長さのDNAフラグメントが同一のプロモーター活性を有することができることがさらに認識される。
【0121】
プロモーター配列は転写開始部位によりその3’末端に境界され、そして上流(5’方向)に伸長してバックグラウンドより高い検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小限の数の塩基またはエレメントを含む。プロモーター配列の中には、転写開始部位(例えばヌクレアーゼS1によるマッピングによって都合良く規定される)、ならびにRNAポリメラーゼの結合の役割を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見出される。
【0122】
一部の実施形態において、核酸分子は、組織特異的プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、組織特異的プロモーターは、肝臓において、例えば肝細胞および/または内皮細胞において、治療用タンパク質、例えば凝固因子の発現を促進する。ある特定の実施形態では、プロモーターは、マウスサイレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ-1-抗トリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターおよび任意のその組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的プロモーター(例えば、α1-抗トリプシン(AAT))、筋肉特異的プロモーター(例えば、筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)およびデスミン(DES))、合成プロモーター(例えば、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCKおよびtMCK)および任意のその組合せから選択される。特定の一実施形態では、プロモーターはTTPプロモーターを含む。
【0123】
用語「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」は互換的に使用され、二本鎖DNA内の特異的ヌクレオチド配列内で結合して切断する酵素を指す。
【0124】
用語「プラスミド」は、細胞の中心的代謝の一部でなく、通常、環状二本鎖DNA分子の形態である遺伝子をしばしば有する染色体外エレメントを指す。そのようなエレメントは、任意の供給源に由来する一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの、線状、環状またはスーパーコイル状の、自己複製配列、ゲノム組入れ配列、ファージまたはヌクレオチド配列であってよく、そこでは、適当な3’非翻訳配列とともに選択される遺伝子産物のためのプロモーターフラグメントおよびDNA配列を細胞に導入することが可能である特異な構築物に、いくつかのヌクレオチド配列が連結されているか組み換えられている。
【0125】
使用することができる真核生物のウイルスベクターには、これらに限定されないが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクターまたはヘルペスウイルスベクターが含まれる。非ウイルス性のベクターには、プラスミド、リポソーム、帯電した脂質(サイトフェクチン)、DNA-タンパク質複合体およびバイオポリマーが含まれる。
【0126】
「クローニングベクター」は、プラスミド、ファージまたはコスミドなどの、逐次的に複製し、そして複製起点を含む単位長の核酸である「レプリコン」を指し、付着したセグメントの複製をもたらすように別の核酸セグメントをそれに対して付着させることができる。ある特定のクローニングベクターは、1つの細胞型、例えば細菌における複製、および別の細胞型、例えば真核細胞における発現が可能である。クローニングベクターは、典型的にはベクターを含む細胞の選択のために使用することができる1つ若しくはそれ以上の配列、および/または目的の核酸配列の挿入のための1つ若しくはそれ以上の多重クローニング部位を含む。
【0127】
用語「発現ベクター」は、宿主細胞への挿入の後に、挿入された核酸配列の発現を可能にするように設計された媒介物を指す。挿入された核酸配列は、上記の調節領域との作動可能な関係に置かれる。
【0128】
ベクターは、当技術分野で周知である方法、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体によって宿主細胞に導入される。本明細書で使用されるように、「培養」、「培養すること」および「培養すること」は、細胞の増殖もしくは分裂を可能にするインビトロ条件下で細胞をインキュベートすること、または細胞を生存状態に維持することを意味する。本明細書で使用されるように、「培養された細胞」は、インビトロで増殖した細胞を意味する。
【0129】
本明細書で使用されるように、用語「ポリペプチド」は、単数の「ポリペプチド」だけでなく複数の「ポリペプチド」も包含するものであり、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって線状に連結される単量体(アミノ酸)で構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ又は以上のアミノ酸の任意の鎖または複数の鎖を指し、具体的長さの生成物を指さない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」または2つ若しくはそれ以上のアミノ酸の鎖または複数の鎖を指すために使用される他の任意の用語が「ポリペプチド」の定義の中に含まれ、そして用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりにまたは互換的に使用することができる。用語「ポリペプチド」は、ポリペプチドの発現後の改変の生成物も指すものであり、これらの改変としては、限定することなく、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解性切断または天然に存在しないアミノ酸による改変が挙げられる。ポリペプチドは天然の生物供給源から誘導することができるか、または組換え技術で生成することができるが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されるとは限らない。それは、化学的合成を含む任意の方法で生成することができる。
【0130】
用語「アミノ酸」には、アラニン(AlaまたはA);アルギニン(ArgまたはR);アスパラギン(AsnまたはN);アスパラギン酸(AspまたはD);システイン(CysまたはC);グルタミン(GlnまたはQ);グルタミン酸(GluまたはE);グリシン(GlyまたはG);ヒスチジン(HisまたはH);イソロイシン(IleまたはI):ロイシン(LeuまたはL);リシン(LysまたはK);メチオニン(MetまたはM);フェニルアラニン(PheまたはF);プロリン(ProまたはP);セリン(SerまたはS);トレオニン(ThrまたはT);トリプトファン(TrpまたはW);チロシン(TyrまたはY);およびバリン(ValまたはV)が含まれる。非伝統的なアミノ酸も本開示の範囲内であり、これにはノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、およびEllmanら、Meth.Enzym.202:301~336(1991)に記載されるものなどの他のアミノ酸残基類似体が含まれる。そのような天然に存在しないアミノ酸残基を生成するために、Norenら、Science 244:182(1989)および上記のEllmanらの手法を使用することができる。簡潔には、これらの手法は、天然に存在しないアミノ酸残基でサプレッサーtRNAを化学的に活性化することと、続くRNAのインビトロ転写および翻訳を含む。非伝統的アミノ酸の導入は、当技術分野で公知のペプチド化学を使用して達成することもできる。本明細書で使用されるように、用語「極性アミノ酸」は、ゼロ総電荷を有するが、それらの側鎖の異なる部分にノンゼロ部分電荷を有するアミノ酸を含む(例えば、M、F、W、S、Y、N、Q、C)。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用および静電的相互作用に関与することができる。本明細書で使用されるように、用語「荷電アミノ酸」は、それらの側鎖にノンゼロ総電荷を有することができるアミノ酸を含む(例えば、R、K、H、E、D)。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用および静電的相互作用に関与することができる。
【0131】
ポリペプチドのフラグメントまたはバリアントおよび任意のその組合せも本開示に含まれる。本開示のポリペプチド結合ドメインまたは結合分子を指す場合の用語「フラグメント」または「バリアント」は、参照ポリペプチドの特性(例えば、FcRn結合ドメインまたはFcバリアントへのFcRn結合親和性、FVIIIバリアントの凝固活性またはVWFフラグメントへのFVIII結合活性)の少なくとも一部を保持する任意のポリペプチドを含む。ポリペプチドのフラグメントには、本明細書の他の場所で考察される特異的抗体フラグメントに加えてタンパク分解性フラグメント、さらには欠失フラグメントが含まれるが、天然に存在する全長ポリペプチド(または、成熟ポリペプチド)は含まれない。本開示のポリペプチド結合ドメインまたは結合分子のバリアントには、上記のフラグメント、およびアミノ酸の置換、欠失または挿入のために変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。バリアントは、天然に存在するもの、または天然に存在しないものであってもよい。天然に存在しないバリアントは、当技術分野で公知の変異誘発技術を使用して生成することができる。バリアントポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸置換、欠失または付加を含むことができる。
【0132】
「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝状側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で規定されている。したがって、ポリペプチド中のアミノ酸が同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸で置き換えられる場合、その置換は保存的であると考えられる。別の実施形態では、アミノ酸の文字列は、側鎖ファミリーメンバーの順序および/または組成が異なる構造的に類似している文字列で保存的に置き換えることができる。
【0133】
当技術分野で公知であるように、用語「同一性パーセント」は、配列の比較で判定される、2つ若しくはそれ以上のポリペプチド配列または2つ若しくはそれ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当技術分野で、「同一性」は、そのような配列の文字列の間の一致によって判定される、場合によってポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」は、以下に記載されるものを非限定的に含む、公知の方法によって容易に計算することができる:Computational Molecular Biology (Lesk、A. M.編) Oxford University Press、New York (1988); Biocomputing: Informatics and Genome Projects (Smith、D. W.編) Academic Press、New York (1993); Computer Analysis of Sequence Data、Part I (Griffin、A. M.、及びGriffin、H. G.編) Humana Press、New Jersey (1994); Sequence Analysis in Molecular Biology (von Heinje、G.編) Academic Press (1987);及びSequence Analysis Primer (Gribskov、M. and Devereux、J.編) Stockton Press、New York (1991)。同一性を判定する好ましい方法は、試験する配列の間で最高の一致を与えるように設計される。同一性を判定する方法は、公に入手できるコンピュータープログラムに体系化されている。配列アラインメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイートのMegalignプログラム(DNASTAR Inc.、Madison、WI)、GCGプログラムスイート(Wisconsin Packageバージョン9.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WI)、BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403(1990))およびDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison、WI53715 USA)などの、配列分析ソフトウェアを使用して実行することができる。本出願の文脈の範囲内で、配列分析ソフトウェアが分析のために使用される場合、特に明記しない限り、分析の結果は参照したプログラムの「デフォルト値」に基づくことが理解される。本明細書で使用されるように、「デフォルト値」は、最初に初期化されるときにソフトウェアと一緒に当初ロードする値またはパラメーターのセットを意味する。治療用タンパク質、例えば、凝固因子、本開示の配列および参照配列の間の同一性パーセントを判定する目的のために、同一性パーセントを計算するために治療用タンパク質、例えば凝固因子、本開示の配列の中のヌクレオチドに対応する参照配列のヌクレオチドだけを使用する。例えば、Bドメインを含有する全長FVIIIヌクレオチド配列を本開示の最適化されたBドメイン欠失(BDD)FVIIIヌクレオチド配列と比較する場合、A1、A2、A3、C1およびC2ドメインを含むアラインメントの部分は、同一性パーセントを計算するために使用される。全長FVIII配列のBドメイン(これは、アラインメントに大きな「ギャップ」をもたらす)をコードする部分のヌクレオチドは、ミスマッチとして数えられない。さらに、本開示の最適化されたBDD FVIII配列またはその指定部分(例えば、配列番号3のヌクレオチド58~2277および2320~4374)と参照配列の間の同一性パーセントの判定では、同一性パーセントは、一致したヌクレオチドの数を最適化されたBDD-FVIII配列の完全配列または、本明細書に列挙されるその指定部分のヌクレオチドの総数で割ることによって計算される。
【0134】
本明細書で使用されるように、本開示の特定の配列のヌクレオチドに対応するヌクレオチドは、参照配列との同一性を最大にするような本開示の配列のアラインメントによって同定される。参照配列中の同等のアミノ酸を同定するために使用される数は、本開示の配列中の対応するアミノ酸を同定するために使用される数に基づく。
【0135】
「融合」または「キメラ」タンパク質は、それが本来は天然に連結していない第二のアミノ酸配列に連結している第一のアミノ酸配列を含む。別個のタンパク質に通常は存在するアミノ酸配列を融合ポリペプチド中で一緒にすることができるか、または、同じタンパク質に通常は存在するアミノ酸配列を、融合ポリペプチド、例えば、本開示の第VIII因子ドメインとIg Fcドメインとの融合における新しい配置に置くことができる。融合タンパク質は、例えば、化学合成によって、またはペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作製し、翻訳することによって作製される。キメラタンパク質は、共有結合、非ペプチド結合または非共有結合によって第一のアミノ酸配列に関連付けられた第二のアミノ酸配列をさらに含むことができる。
【0136】
本明細書で使用されるように、用語「挿入部位」は、異種部分を挿入することができる位置のすぐ上流にある、ポリペプチドまたはそのフラグメント、バリアントもしくは誘導体の中の位置を指す。「挿入部位」は番号で規定され、この番号は参照配列の中のアミノ酸の番号である。例えば、FVIIIにおける「挿入部位」は、挿入位置のすぐN末端側にある、挿入部位が対応する成熟天然FVIII(配列番号15)におけるアミノ酸配列の番号を指す。例えば、「a3は配列番号15のアミノ酸1656に対応する挿入部位に異種部分を含む」という語句は、異種部分が配列番号15のアミノ酸1656およびアミノ酸1657に対応する2つのアミノ酸の間に位置することを示す。
【0137】
本明細書で使用される「アミノ酸のすぐ下流」という語句は、アミノ酸の末端カルボキシル基のすぐ隣の位置を指す。同様に、「アミノ酸のすぐ上流」という語句は、アミノ酸の末端アミン基のすぐ隣の位置を指す。
【0138】
本明細書で使用されるように、用語「挿入された」、「挿入される」、「に挿入される」または文法的に関連した用語は、親のポリペプチドの中の類似した位置に対する、ポリペプチド、例えば凝固因子の中の異種部分の位置を指す。例えば、ある特定の実施形態では、「挿入された」などは、天然成熟ヒトFVIIIの類似した位置に対する、組換えFVIIIポリペプチドの中の異種部分の位置を指す。本明細書で使用されるように、これらの用語はポリペプチドの特徴を指し、ポリペプチドが作製されたいかなる方法またはプロセスをも示しも、暗示も、意味もしない。
【0139】
本明細書で使用されるように、用語「半減期」は、インビボにおける特定のポリペプチドの生物学的半減期を指す。半減期は、対象に投与された量の半分がその動物における循環および/または他の組織から除去されるのに必要とされる時間で表すことができる。所与のポリペプチドのクリアランス曲線が時間の関数として構築される場合、曲線は、通常迅速なα相およびより長いβ相による二相性である。α相は、一般的に脈管内と脈管外の空間の間の投与されたFcポリペプチドの平衡化を表し、一部、ポリペプチドのサイズによって決定される。β相は、脈管内空間におけるポリペプチドの異化作用を一般的に表す。一部の実施形態では、治療用タンパク質、例えば凝固因子、例えばFVIII、およびそれを含むキメラタンパク質は一相性であり、したがってアルファ相を有さず、単一のベータ相だけである。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書で使用される用語半減期は、β相におけるポリペプチドの半減期を指す。
【0140】
本明細書で使用される用語「連結される」は、共有結合または非共有結合で第二のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列にそれぞれ連結される第一のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を指す。第一のアミノ酸またはヌクレオチド配列は、第二のアミノ酸若しくはヌクレオチド配列に直接的に接合若しくは並置させることができるか、またあるいは、介在配列で第一の配列を第二の配列に共有結合で接合させることができる。用語「連結される」は、C末端またはN末端での第一のアミノ酸配列の第二のアミノ酸配列への融合を意味するだけでなく、第一のアミノ酸配列(または、第二のアミノ酸配列)全体の第二のアミノ酸配列(それぞれまたは第一のアミノ酸配列)中の任意の2つのアミノ酸の中への挿入も含む。一実施形態では、第一のアミノ酸配列は、ペプチド結合またはリンカーによって第二のアミノ酸配列に連結することができる。第一のヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーによって第二のヌクレオチド配列に連結することができる。リンカーは、ペプチドもしくはポリペプチド(ポリペプチド鎖の場合)またはヌクレオチドもしくはヌクレオチド鎖(ヌクレオチド鎖の場合)または任意の化学部分(ポリペプチドおよびポリヌクレオチド鎖の場合の両方)であってよい。用語「連結される」は、ハイフン(-)によっても示される。
【0141】
本明細書で使用されるように、止血は、出血もしくは大出血の停止もしくは鈍化;または、血管もしくは身体部分を通しての血流の停止もしくは鈍化を意味する。
【0142】
止血障害は、本明細書で使用されるように、フィブリン凝塊を形成する能力の障害または欠損による、自然発生的なまたは外傷の結果としての出血傾向によって特徴付けられる、遺伝的に継承したかまたは後天性の状態を意味する。そのような障害の例には、血友病が含まれる。3つの主な形態は、血友病A(第VIII因子欠損)、血友病B(第IX因子欠損または「クリスマス病」)および血友病C(第XI因子欠損、軽度の出血傾向)である。他の止血障害には、例えば、フォン・ウィルブラント病、第XI因子欠損(PTA欠乏症)、第XII因子欠損、フィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子または第XIII因子の欠損または構造異常、GPIbの欠陥または欠損
であるベルナール-スリエ症候群が含まれる。vWFの受容体GPIbが欠損し、一次凝塊形成(一次止血)の喪失および出血傾向の増加、ならびにGlanzmanおよびNaegeliの血小板無力症(Glanzmann血小板無力症)につながることがある。肝不全(急性および慢性の形態)では、肝臓による凝固因子の生成が不十分であり、これは、出血リスクを増加させることがある。
【0143】
本開示の単離された核酸分子、単離されたポリペプチド、または単離された核酸分子を含むベクターは、予防的に使用することができる。本明細書で使用されるように、用語「予防的治療」は、出血エピソードの前の分子の投与を指す。一実施形態では、全身止血剤を必要とする対象は、手術を受けているか、受けようとしている。本開示のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはベクターは、予防薬として手術の前又は後に投与することができる。本開示のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはベクターは、急性出血エピソードを制御するために、手術中に、または手術後に投与することができる。手術には、これらに限定されないが、肝移植、肝臓切除、歯科処置または幹細胞移植が含まれ得る。
【0144】
本開示の単離された核酸分子、単離されたポリペプチド、またはベクターは、注文対応の処置のためにも使用される。用語「注文対応の処置」は、出血エピソードの症状に応じた、または出血を引き起こす可能性のある活動の前の、単離された核酸分子、単離されたポリペプチドまたはベクターの投与を指す。一態様では、注文対応の治療は、損傷の後のような出血が開始するとき、または手術前のような出血が予想されるときに場合に与えることができる。別の態様では、注文対応の治療は、接触競技などの出血のリスクを増加させる活動の前に与えることができる。
【0145】
本明細書で使用されるように、用語「急性出血」は、根底にある原因に関わらず、出血エピソードを指す。例えば、対象は、外傷、尿毒症、遺伝性出血障害(例えば、第VII因子欠損)、血小板障害または凝固因子に対する抗体の発達による耐性を有してもよい。
【0146】
本明細書で使用されるように、処置する、処置、処置することは、例えば疾患または状態の重症度の低減;疾患経過期間の低減;疾患または状態に関連した1つまたはそれ以上の症状の改善;疾患または状態を必ずしも治癒せず、疾患または状態に関連した1つまたはそれ以上の症状の予防もなしに、疾患または状態を有する対象に有益な作用を提供することを指す。一実施形態では、用語「処置すること」または「処置」は、本開示の単離された核酸分子、単離されたポリペプチドまたはベクターを投与することによって、対象において、例えば、少なくとも約1IU/dL、2IU/dL、3IU/dL、4IU/dL、5IU/dL、6IU/dL、7IU/dL、8IU/dL、9IU/dL、10IU/dL、11IU/dL、12IU/dL、13IU/dL、14IU/dL、15IU/dL、16IU/dL、17IU/dL、18IU/dL、19IU/dL、20IU/dL、25IU/dL、30IU/dL、35IU/dL、40IU/dL、45IU/dL、50IU/dL、55IU/dL、60IU/dL、65IU/dL、70IU/dL、75IU/dL、80IU/dL、85IU/dL、90IU/dL、95IU/dL、100IU/dL、105IU/dL、110IU/dL、115IU/dL、120IU/dL、125IU/dL、130IU/dL、135IU/dL、140IU/dL、145IU/dL、又は150IU/dLのFVIIIトラフレベルを維持することを意味する。別の実施形態では、治療することまたは治療は、FVIIIトラフレベルを約1と約150IU/dLとの間、約1と約125IU/dLとの間、約1と約100IU/dLとの間、約1と約90IU/dLとの間、約1と約85IU/dLとの間、約1と約80IU/dLとの間、約1と約75IU/dLとの間、約1と約70IU/dLとの間、約1と約65IU/dLとの間、約1と約60IU/dLとの間、約1と約55IU/dLとの間、約1と約50IU/dLとの間、約1と約45IU/dLとの間、約1と約40IU/dLとの間、約1と約35IU/dLとの間、約1と約30IU/dLとの間、約1と約25IU/dLとの間、約25と約125IU/dLとの間、約50と約100IU/dLとの間、約50と約75IU/dLとの間、約75と約100IU/dLとの間、約1と約20IU/dLとの間、約2と約20IU/dLとの間、約3と約20IU/dLとの間、約4と約20IU/dLとの間、約5と約20IU/dLとの間、約6と約20IU/dLとの間、約7と約20IU/dLとの間、約8と約20IU/dLとの間、約9と約20IU/dLとの間、又は約10と約20IU/dLとの間で維持することを意味する。疾患または状態の処置または処置することは、対象におけるFVIII活性を、非血友病対象におけるFVIII活性の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、又は150%と同等のレベルに維持することを含むこともできる。治療のために必要とされる最小限のトラフレベルは、1つまたはそれ以上の公知の方法によって測定することができ、そして各個人のために調整する(増加または低下させる)ことができる。
【0147】
本明細書で使用されるように、「投与すること」は、薬学的に許容される核酸分子、それから発現されるポリペプチド、または本開示の核酸分子を含むベクターを、薬学的に許容される経路を通して対象に与えることを意味する。投与経路は静脈内、例えば、静脈内注射および静脈内注入であってよい。さらなる投与経路には、例えば、皮下、筋内、経口、経鼻および経肺投与が含まれる。核酸分子、ポリペプチドおよびベクターは、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物の一部として投与することができる。
【0148】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される」は、ヒトに投与された場合に、生理的に許容され、かつ毒性も、胃の不調、めまいなどのアレルギー性もしくは類似の厄介な反応も一般的に生じない、分子実体および組成物を指す。場合により、本明細書で使用されるように、用語「薬学的に許容される」は、連邦もしくは州政府の規制機関に承認されたこと、または、動物、より詳細にはヒトでの使用のために米国薬局方もしくは他の公認の薬局方に掲載されていることを意味する。
【0149】
本明細書で使用されるように、「それを必要とする対象」という語句は、例えば止血を向上させるために、本開示の核酸分子、ポリペプチドまたはベクターの投与から利益を受けるであろう哺乳動物対象などの対象を含む。一実施形態では、対象には、これらに限定されないが、血友病の個体が含まれる。別の実施形態では、対象には、これらに限定されないが、治療用タンパク質、例えば凝固因子、例えばFVIIIに対する阻害物質を発生し、したがってバイパス療法を必要とする個体が含まれる。対象は、成人または未成年(例えば、12才未満)であってよい。
【0150】
本明細書で使用されるように、用語「治療用タンパク質」は、対象に投与することができる当技術分野で公知の任意のポリペプチドを指す。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、凝固因子、増殖因子、抗体、その機能的フラグメント、またはその組合せから選択されるタンパク質を含む。本明細書で使用されるように、用語「凝固因子」は、対象において出血エピソードを予防するかその期間を短くする、天然に存在するかまたは組換えで生成される分子またはその類似体を指す。言い換えると、それは、凝固促進活性を有する、すなわち、血液の凝集または凝固を引き起こす不溶性フィブリンのメッシュへのフィブリノーゲンの変換の役割を担う分子を意味する。本明細書で使用される「凝固因子」は、活性化凝固因子、その酵素前駆体または活性化可能な凝固因子を含む。「活性化可能な凝固因子」は、活性型に変換することが可能である不活性型(例えば、その酵素前駆体の形態)にある凝固因子である。用語「凝固因子」には、これらに限定されないが、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第V因子(FV)、FVII、FVIII、FIX、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、フォンビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-2(PAI2)、その酵素前駆体、その活性化型または任意のその組合せが含まれる。
【0151】
本明細書で使用されるように、凝固活性は、フィブリン凝塊の形成を完了させる、および/または大出血もしくは出血エピソードの重症度、期間もしくは頻度を低減する生化学反応のカスケードに参加する能力を意味する。
【0152】
本明細書で使用されるように、「増殖因子」は、サイトカインおよびホルモンを含む、当技術分野で公知の任意の増殖因子を含む。一部の実施形態では、増殖因子は、アドレノメデュリン(AM)、アンギオポエチン(Ang)、オートクリン運動性因子、骨形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP2、BMP4、BMP5、BMP7)、毛様体神経栄養因子ファミリーメンバー(例えば、毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン-6(IL-6))、コロニー刺激因子(例えば、マクロファージコロニー刺激因子(m-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF))、上皮増殖因子(EGF)、エフリン(例えば、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞増殖因子(FGF)(例えば、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23)、胎児ウシソマトトロピン(FBS)、GDNFファミリーメンバー(例えば、グリア細胞由来神経栄養性因子(GDNF)、ニュールツリン、パーセフィン、アルテミン)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞増殖因子(HGF)、肝癌由来の増殖因子(HDGF)、インスリン、インスリン様増殖因子(例えば、インスリン様増殖因子-1(IGF-1)またはIGF-2、インターロイキン(IL)(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、遊走刺激因子(MSF)、マクロファージ刺激タンパク質(MSPまたは肝細胞増殖因子様タンパク質(HGFLP))、ミオスタチン(GDF-8)、ニューレグリン(例えば、ニューレグリン1(NRG1)、NRG2、NRG3、NRG4)、ニューロトロフィン(例えば、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、NT-4、胎盤増殖因子(PGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、レナラーゼ(RNLS)、T細胞増殖因子(TCGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング増殖因子(例えば、トランスフォーミング増殖因子アルファ(TGF-α)、TGF-β、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)および血管内皮増殖因子(VEGF)から選択される。
【0153】
一部の実施形態において、治療用タンパク質は、X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチューブラリン)、チロシン水酸化酵素、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファ-グルコシダーゼ)または任意のその組合せから選択される遺伝子によってコードされる。
【0154】
本明細書で使用されるように、用語「異種」または「外因性」は、所与の場面、例えば細胞またはポリペプチドにおいて通常は見出されない分子を指す。外因性または異種分子を細胞に導入することができ、例えばトランスフェクション若しくは遺伝子操作の他の形態による細胞の操作の後にだけ存在するか、または異種アミノ酸配列が、それが天然に見出されないタンパク質に存在することができる。
【0155】
本明細書で使用されるように、用語「異種ヌクレオチド配列」は、所与のポリヌクレオチド配列と一緒に天然に存在しないヌクレオチド配列を指す。一実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、治療用タンパク質、例えば凝固因子、例えばFVIIIの半減期を延長することが可能なポリペプチドをコードする。別の実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、治療用タンパク質、例えば凝固因子、例えばFVIIIの流体力学半径を増加させるポリペプチドをコードする。他の実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、その生物活性にも機能(例えば、凝血促進活性)にも有意に影響を与えることなく、治療用タンパク質の1つまたはそれ以上の薬物動態学的特性を向上させるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、異種ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドにリンカーによって連結または接続される。異種ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド部分の非限定的な例には、免疫グロブリン定常領域またはその一部、アルブミンまたはそのフラグメント、アルブミン結合部分、トランスフェリン、米国特許出願第20100292130号のPASポリペプチド、HAP配列、トランスフェリンまたはそのフラグメント、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、アルブミン結合小分子、XTEN配列、FcRn結合部分(例えば、FcRnに結合する完全Fc領域またはその部分)、単鎖Fc領域(ScFc領域、例えば、US2008/0260738、WO2008/012543またはWO2008/1439545に記載のもの)、ポリグリシンリンカー、ポリセリンリンカー、ペプチドおよびとりわけ50%未満から50%超の様々な程度の二次構造を有する、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)およびプロリン(P)から選択される2つのタイプのアミノ酸の6~40アミノ酸の短いポリペプチド、またはその2つ若しくは以上の組合せが含まれる。一部の実施形態では、異種ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドは、非ポリペプチド部分に連結される。非ポリペプチド部分の非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン結合小分子、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、その誘導体または任意のその組合せが含まれる。
【0156】
本明細書で使用されるように、用語「Fc領域」は、天然のIgのFc領域に対応するポリペプチドの部分、すなわち、その2つの重鎖のそれぞれのFcドメインの二量体会合によって形成されるものと規定される。天然のFc領域は、別のFc領域とホモダイマーを形成する。対照的に、本明細書で使用されるように、用語「遺伝子融合Fc領域」または「単鎖Fc領域」(scFc領域)は、単一のポリペプチド鎖内で遺伝子的に連結される(すなわち、単一の連続した遺伝子配列にコードされる)Fcドメインで構成される合成二量体Fc領域を指す。
【0157】
一実施形態では、「Fc領域」は、パパイン切断部位(すなわち、重鎖定常領域の最初の残基を114としたときの、IgGの残基216)のすぐ上流のヒンジ領域から始まり抗体のC末端で終わる、単一のIg重鎖の部分を指す。したがって、完全なFcドメインは、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを少なくとも含む。
【0158】
Ig定常領域のFc領域は、Igアイソタイプにより、CH2、CH3およびCH4ドメイン、さらにはヒンジ領域を含むことができる。IgのFc領域を含むキメラタンパク質は、安定性の増加、血清半減期の増加(Caponら、1989年、Nature 337:525を参照のこと)、さらには新生児Fc受容体(FcRn)などのFc受容体への結合性を含むいくつかの望ましい特性をキメラタンパク質に与える(米国特許第6,086,875号、第6,485,726号、第6,030,613号;WO03/077834;US2003-0235536A1)(これらは参照により本明細書に完全に組み入れる)。
【0159】
本開示のヌクレオチド配列との比較として本明細書で使用される場合、「参照ヌクレオチド配列」は、配列が最適化されていないこと以外は、本開示のヌクレオチド配列と事実上同一であるポリヌクレオチド配列である。例えば、配列番号1のコドン最適化BDD FVIIIおよび、その3’末端で配列番号1に連結される単鎖Fc領域をコードする異種ヌクレオチド配列からなる核酸分子のための参照ヌクレオチド配列は、配列番号16の元の(または、「親」の)BDD FVIIIおよび、その3’末端で配列番号16に連結される単鎖Fc領域をコードする同一の異種ヌクレオチド配列からなる核酸分子である。
【0160】
本明細書で使用されるように、ヌクレオチド配列に関する用語「最適化される」は、そのポリヌクレオチド配列の特性を強化するように変異されている、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を指す。一部の実施形態では、最適化は、転写レベルを増加させるために、翻訳レベルを増加させるために、定常状態のmRNAレベルを増加させるために、基本転写因子などの調節タンパク質の結合性を増減するために、スプライシングを増減するために、または、ポリヌクレオチド配列によって生成されるポリペプチドの収量を増加させるために実行される。それを最適化するためにポリヌクレオチド配列に加えることができる変更の例には、コドン最適化、G/C含有量最適化、反復配列の除去、ATリッチエレメントの除去、潜在性スプライス部位の除去、転写または翻訳を抑圧するシス作用性エレメントの除去、ポリTまたはポリA配列を加えるか除去すること、転写開始部位の周囲にコザックコンセンサス配列などの転写を強化する配列を加えること、ステムループ構造を形成するかもしれない配列の除去、不安定化配列の除去、および2つ以上のその組合せが含まれる。
【0161】
II. 核酸分子
本開示は、治療用タンパク質または標的タンパク質の発現をモジュレートすることができる遺伝子、例えばmiRNAをコードする、プラスミド様無カプシド核酸分子に関する。ウイルスのタンパク質の殻であるカプシドは、ウイルスの遺伝物質を封入する。カプシドは、ウイルスゲノムを保護し、ゲノムを宿主に送達し、そして宿主と相互作用することによって、ビリオンの機能を助けることが知られている。それにもかかわらず、ウイルスカプシドは、ベクターのパッケージング能力の制限および/または、特に遺伝子療法で使用する場合の免疫応答の誘導における因子であり得る。
【0162】
AAVベクターは、より一般的なタイプの遺伝子療法ベクターの1つとして現れた。しかし、カプシドの存在は、遺伝子療法におけるAAVベクターの有用性を制限する。詳細には、カプシド自体は、ベクターに含まれる導入遺伝子のサイズを4.5kb未満という低さにそれ自体制限することができる。遺伝子療法において有用であり得る様々な治療用タンパク質は、調節エレメントが加えられる前でさえ、このサイズを容易に超え得る。
【0163】
さらに、カプシドを構成するタンパク質は、対象の免疫系が標的にすることができる抗原の役割をすることができる。一般集団においてAAVは非常に一般的であり、ほとんどの人は生涯の間にAAVに曝露されたことがある。その結果、ほとんどの潜在的遺伝子療法レシピエントは、AAVに対する免疫応答をすでに起こしている可能性があり、したがって、療法を拒絶する可能性がより高い。
【0164】
本開示のある特定の態様は、AAVベクターのこれらの欠陥を克服することを目標とする。特に、本開示のある特定の態様は、第一のITR、第二のITR、並びに例えば、治療用タンパク質及び/又はmiRNAをコードする遺伝子カセットを含む核酸分子に関する。一部の実施形態において、第一のITR及び第二のITRは、異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接する。一部の実施形態において、核酸分子は、カプシドタンパク質、複製タンパク質、及び/又は集合タンパク質をコードする遺伝子を含まない。一部の実施形態において、遺伝子カセットは治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態において、治療用タンパク質は凝固因子を含む。一部の実施形態において、遺伝子カセットはmiRNAをコードする。ある特定の実施形態において、遺伝子カセットは第一のITRと第二のITRとの間に位置づけられる。一部の実施形態において、核酸分子は1つ又はそれ以上の非コード領域をさらに含む。ある特定の実施形態において、1つ又はそれ以上の非コード領域はプロモーター配列、イントロン、転写後調節エレメント、3’UTRポリ(A)配列、又は任意のその組合せを含む。
【0165】
一実施形態において、遺伝子カセットは一本鎖核酸である。別の実施形態において、遺伝子カセットは二本鎖核酸である。
【0166】
一実施形態において、核酸分子は:
(a) パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITR(例えば、B19又はGPV ITR)である第一のITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) miRNA又は治療用タンパク質、例えば、凝固因子をコードするヌクレオチド;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;
(g) パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITR(例えば、B19又はGPV ITR)である第二のITR
を含む。
【0167】
一実施形態において、核酸分子は:
(a) パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第一のITR
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) miRNAをコードするヌクレオチド、[ここでmiRNAは、SOD1、HTT、RHO、及び任意のその組合せから選択される標的遺伝子の発現を下方調節する];
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;
(g) パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第二のITR
を含む。
【0168】
一実施形態において、核酸分子は:
(a) パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第一のITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチューブラリン)、チロシン水酸化酵素、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN (フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファグルコシダーゼ)、又は任意のその組合せをコードするヌクレオチド;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;
(g) パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第二のITR
を含む。
【0169】
一実施形態において、核酸分子は:
(a) AAV、例えば、AAV血清型2ゲノムのITRである第一のITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) FVIIIをコードするヌクレオチド;[ここで、ヌクレオチドは、配列番号1~14又は配列番号71から選択されるヌクレオチド配列に対して、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有し、ここで該ヌクレオチドによりコードされるFVIIIはFVIII活性を保持する];
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び
(g) AAV、例えば、AAV血清型2ゲノムのITRである第二のITR
を含む。
【0170】
一実施形態において、核酸分子は:
(a) AAV、例えば、AAV血清型2ゲノムのITRである第一のITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) miRNAをコードするヌクレオチド、[ここでmiRNAは、標的遺伝子、例えば、SOD1、HTT、RHO、及び任意のその組合せの発現を下方調節する];
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び
(g) AAV、例えば、AAV血清型2ゲノムのITRである第二のITR
を含む。
【0171】
一実施形態において、核酸分子は:
(a) AAV、例えば、AAV血清型2ゲノムのITRである第一のITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチューブラリン)、チロシン水酸化酵素、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN (フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファグルコシダーゼ)、又は任意のその組合せをコードするヌクレオチド;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び
(g) AAV、例えば、AAV血清型2ゲノムのITRである第二のITR
を含む。
【0172】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 第一のITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) miRNA又は治療用タンパク質、例えば、凝固因子をコードするヌクレオチド;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び
(g) 第二のITR、
を含み、ここで第一のITR又は第二のITRのうちの一方はパルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRであり、そして他方のITRはAAV、例えば、AAV血清型2ゲノムのITRである。
【0173】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 配列番号111に示されるAAV2 5’ITR配列を有する5’ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) FVIII、例えば、FVIIIco6XTENをコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 配列番号124に示されるAAV2 3’ITR配列を有する3’ITR
を含む。
【0174】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 配列番号111に示されるAAV2 5’ITR配列を有する5’ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、CAGプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) FVIII、例えば、FVIIIco6XTENをコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 配列番号193に示されるAAV2 3’ITR配列を有する3’ITR
を含む。
【0175】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 第一のITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) miRNA又は治療用タンパク質、例えば、凝固因子をコードするヌクレオチド;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び
(g) 第二のITR、
を含み、ここで第一のITRは合成ITRであり、第二のITRは合成ITRであり、又は第一のITR及び第二のITRの両方が合成ITRである。
【0176】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 第一のB19 ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) 凝固因子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、そのフラグメント、及びその組合せからなる群より選択される治療用タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;並びに/又は
(g) 第二のB19 ITR
を含む。
【0177】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 第一のGPV ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) 凝固因子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、そのフラグメント、及びその組合せからなる群より選択される治療用タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;並びに/又は
(g) 第二のGPV ITR
を含む。
【0178】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 第一のB19 ITR;
(b) ユビキタスプロモーター配列、例えば、CAGプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) 凝固因子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、そのフラグメント、及びその組合せからなる群より選択される治療用タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;並びに/又は
(g) 第二のB19 ITR
を含む。
【0179】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 第一のGPV ITR;
(b) ユビキタスプロモーター配列、例えば、CAGプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) 凝固因子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、そのフラグメント、及びその組合せからなる群より選択される治療用タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 第二のGPV ITR
を含む。
【0180】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 第一のB19 ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)をコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 第二のB19 ITR
を含む。
【0181】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 第一のGPV ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)をコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 第二のGPV ITR
を含む。
【0182】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 配列番号180に示されるB19d135 5’ITR配列を有する5’ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) FVIII、例えば、FVIIIco6XTENをコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 配列番号181に示されるB19d135 3’ITR配列を有する3’ITR
を含む。
【0183】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 配列番号183に示されるGPVd162 5’ITR配列を有する5’ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) FVIII、例えば、FVIIIco6XTENをコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 配列番号184に示されるGPVd162 3’ITR配列を有する3’ITR
を含む。
【0184】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 配列番号185に示される全長B19 5’ITR配列を有する5’ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) FVIII、例えば、FVIIIco6XTENをコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 配列番号186に示される全長B19 3’ITR配列を有する3’ITR
を含む。
【0185】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 配列番号187に示される全長GPV 5’ITR配列を有する5’ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) FVIII、例えば、FVIIIco6XTENをコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 配列番号188に示される全長GPV 3’ITR配列を有する3’ITR
を含む。
【0186】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 配列番号180に示されるB19d135 5’ ITR配列を有する5’ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、CAGプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) PAHをコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 配列番号181に示されるB19d135 3’ITR配列を有する3’ITR
を含む。
【0187】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 配列番号183に示されるGPVd162 5’ITR配列を有する5’ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、CAGプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) PAHをコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 配列番号184に示されるGPVd162 3’ITR配列を有する3’ITR
を含む。
【0188】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 配列番号185に示される全長B19 5’ITR配列を有する5’ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、CAGプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) PAHをコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 配列番号186に示される全長B19 3’ITR配列を有する3’ITR
を含む。
【0189】
別の実施形態において、核酸分子は:
(a) 配列番号187に示される全長GPV 5’ITR配列を有する5’ITR;
(b) 組織特異的プロモーター配列、例えば、CAGプロモーター;
(c) イントロン、例えば、合成イントロン;
(d) PAHをコードする異種ポリヌクレオチド配列;
(e) 転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f) 3’UTRポリ(A)テイル配列、例えば、bGHpA;及び/又は
(g) 配列番号188に示される全長GPV 3’ITR配列を有する3’ITR
を含む。
【0190】
A. 末端逆位配列
本開示のある特定の態様は、第一のITR、例えば5’ITR、および第二のITR、例えば3’ITRを含む核酸分子に関する。一般的に、ITRは、原核生物のプラスミドからのパルボウイルス(例えば、AAV)DNAの複製および解放、または切除に関与する(Samulskiら、1983年、1987年;Senapathyら、1984年;GottliebおよびMuzyczka、1988年)。さらに、ITRは、AAVプロウイルス組入れのために、およびビリオンへのAAV DNAのパッケージングのために必要とされる最小限の配列のようである(McLaughlinら、1988年;Samulskiら、1989年)。これらのエレメントは、パルボウイルスゲノムの効率的な増殖のために必須である。ITR機能にとって不可欠な最小限の規定エレメントは、Rep結合部位(例えば、RBS;AAV2の場合GCGCGCTCGCTCGCTC(配列番号104))および末端分解部位(例えば、TRS;AAV2の場合AGTTGG(配列番号105))、さらにヘアピン形成を可能にする可変パリンドローム配列であると仮定される。パリンドロームヌクレオチド領域は、DNA複製の起点として、およびウイルスのためのパッケージングシグナルとして、通常シスで一緒に機能する。ITRの中の相補的配列は、DNA複製の間、ヘアピン構造に折りたたまれる。一部の実施形態では、ITRは、ヘアピンT字形構造に折りたたまれる。他の実施形態では、ITRは、非T字形ヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造に折りたたまれる。AAV ITRのT字形ヘアピン構造は、ITRに隣接する導入遺伝子の発現を抑制し得ることをデータは示唆する。例えば、Zhouら、Scientific Reports 7:5432(2017年7月14日)を参照のこと。T字形ヘアピン構造を形成しないITRを利用することによって、この形態の抑制を回避することができる。したがって、ある特定の態様では、非AAV ITRを含むポリヌクレオチドは、T字形ヘアピンを形成するAAV ITRを含むポリヌクレオチドと比較して向上した導入遺伝子発現を有する。
【0191】
一部の実施形態において、ITRは天然に存在するITRを含む、例えば、ITRはパルボウイルスITRの全部または一部を含む。一部の実施形態では、ITRは、合成配列を含む。一実施形態では、第一のITRまたは第二のITRは、合成配列を含む。別の実施形態では、第一のITRおよび第二のITRの各々は、合成配列を含む。一部の実施形態では、第一のITRまたは第二のITRは、天然に存在する配列を含む。別の実施形態では、第一のITRおよび第二のITRの各々は、天然に存在する配列を含む。
【0192】
一部の実施形態において、ITRは、天然に存在するITRの一部、例えばトランケートされたITRを含むかそれからなる。一部の実施形態では、ITRは、天然に存在するITRのフラグメントを含むかそれからなり、ここで、フラグメントは、少なくとも約5ヌクレオチド、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約55ヌクレオチド、少なくとも約60ヌクレオチド、少なくとも約65ヌクレオチド、少なくとも約70ヌクレオチド、少なくとも約75ヌクレオチド、少なくとも約80ヌクレオチド、少なくとも約85ヌクレオチド、少なくとも約90ヌクレオチド、少なくとも約95ヌクレオチド、少なくとも約100ヌクレオチド、少なくとも約125ヌクレオチド、少なくとも約150ヌクレオチド、少なくとも約175ヌクレオチド、少なくとも約200ヌクレオチド、少なくとも約225ヌクレオチド、少なくとも約250ヌクレオチド、少なくとも約275ヌクレオチド、少なくとも約300ヌクレオチド、少なくとも約325ヌクレオチド、少なくとも約350ヌクレオチド、少なくとも約375ヌクレオチド、少なくとも約400ヌクレオチド、少なくとも約425ヌクレオチド、少なくとも約450ヌクレオチド、少なくとも約475ヌクレオチド、少なくとも約500ヌクレオチド、少なくとも約525ヌクレオチド、少なくとも約550ヌクレオチド、少なくとも約575ヌクレオチド、又は少なくとも約600個のヌクレオチドを含み;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。ある特定の実施形態では、ITRは、天然に存在するITRのフラグメントを含むかそれからなり、ここで、フラグメントは少なくとも約129個のヌクレオチドを含み、ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。ある特定の実施形態では、ITRは、天然に存在するITRのフラグメントを含むかそれからなり、ここで、フラグメントは少なくとも約102個のヌクレオチドを含み、ここで、ITRは天然に存在するITRの機能的特性を保持する。
【0193】
一部の実施形態において、ITRは、天然に存在するITRの一部を含むか又はそれからなり、ここで、フラグメントは、天然に存在するITRの長さの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%を含み;ここで、フラグメントは天然に存在するITRの機能特性を保持する。
【0194】
ある特定の実施形態において、ITRは、適切に整列させた場合、天然に存在するITRの相同部分に対して、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。他の実施形態では、ITRは、適切に整列させた場合、天然に存在するITRの相同部分と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適切に整列させた場合、天然に存在するITRの相同部分と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適切に整列させた場合、天然に存在するITRの相同部分と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適切に整列させた場合、天然に存在するITRの相同部分と少なくとも60%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適切に整列させた場合、天然に存在するITRの相同部分と少なくとも50%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。
【0195】
一部の実施形態において、ITRは、AAVゲノムからのITRを含む。一部の実施形態では、ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11および任意のその組合せから選択されるAAVゲノムのITRである。ある特定の実施形態では、ITRは、AAV2ゲノムのITRである。別の実施形態では、ITRは、AAVゲノムの1つまたはそれ以上に由来するITRをその5’および3’末端に含むように遺伝子操作された合成配列である。
【0196】
一部の実施形態では、ITRは、AAVゲノムに由来しない。一部の実施形態では、ITRは、非AAVのITRである。一部の実施形態では、ITRは、これらに限定されないが、ボカウイルス(Bocavirus)、ディペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)、ペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)および任意のその組合せからなる群から選択される、ウイルスのパルボウイルス科からの非AAVゲノムのITRである。ある特定の実施形態では、ITRは、エリスロウイルスパルボウイルスB19(ヒトウイルス)に由来する。別の実施形態では、ITRは、ノバリケンパルボウイルス(MDPV)株に由来する。ある特定の実施形態では、MDPV株は弱毒化される、例えば、MDPV株FZ91-30。他の実施形態では、MDPV株は病原性である、例えば、MDPV株YY。一部の実施形態では、ITRは、ブタパルボウイルス、例えば、ブタパルボウイルスU44978に由来する。一部の実施形態では、ITRは、マウス微小ウイルス、例えば、マウス微小ウイルスU34256に由来する。一部の実施形態では、ITRは、イヌパルボウイルス、例えば、イヌパルボウイルスM19296に由来する。一部の実施形態では、ITRは、ミンク腸炎ウイルス、例えば、ミンク腸炎ウイルスD00765に由来する。一部の実施形態では、ITRは、デペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)に由来する。一実施形態では、デペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)は、ディペンドウイルス(Dependovirus)ガチョウパルボウイルス(GPV)株である。具体的な実施形態では、GPV株は弱毒化される、例えば、GPV株82-0321V。別の具体的な実施形態では、GPV株は病原性である、例えば、GPV株B。
【0197】
核酸分子の第一のITRおよび第二のITRは、同じゲノム、例えば同じウイルスのゲノム、または異なるゲノム、例えば2つ若しくはそれ以上の異なるウイルスゲノムのゲノムに由来し得る。ある特定の実施形態では、第一のITRおよび第二のITRは同じAAVゲノムに由来する。具体的な実施形態では、本発明の核酸分子に存在する2つのITRは同じであり、特にAAV2 ITRであってよい。他の実施形態では、第一のITRはAAVゲノムに由来し、第二のITRはAAVゲノムに由来しない(例えば、非AAVゲノム)。他の実施形態では、第一のITRはAAVゲノムに由来せず(例えば、非AAVゲノム)、そして第二のITRはAAVゲノムに由来する。さらに他の実施形態では、第一のITRと第二のITRは、両方ともAAVゲノムに由来しない(例えば、非AAVゲノム)。特定の一実施形態では、第一のITRおよび第二のITRは同一である。
【0198】
一部の実施形態では、第一のITRはAAVゲノムに由来し、そして第二のITRは、ボカウイルス(Bocavirus)、ディペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)、ペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)および任意のその組合せからなる群から選択されるゲノムに由来する。他の実施形態では、第二のITRはAAVゲノムに由来し、第一のITRは、ボカウイルス(Bocavirus)、ディペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)、ペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)および任意のその組合せからなる群から選択されるゲノムに由来する。他の実施形態では、第一のITRおよび第二のITRは、ボカウイルス(Bocavirus)、ディペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)、ペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)および任意のその組合せからなる群から選択されるゲノムに由来し、ここで、第一のITRおよび第二のITRは同じゲノムに由来する。他の実施形態では、第一のITRおよび第二のITRは、ボカウイルス(Bocavirus)、ディペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)、ペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)および任意のその組合せからなる群から選択されるゲノムに由来し、ここで、第一のITRおよび第二のITRは異なるゲノムに由来する。
【0199】
一部の実施形態では、第一のITRはAAVゲノムに由来し、そして第二のITRはエリスロウイルスパルボウイルスB19(ヒトウイルス)に由来する。他の実施形態では、第二のITRはAAVゲノムに由来し、第一のITRはエリスロウイルスパルボウイルスB19(ヒトウイルス)に由来する。
【0200】
ある特定の実施形態では、第一のITRおよび/または第二のITRは、B19に由来するITRの全体または一部を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第一のITRおよび/または第二のITRは、配列番号167、168、169、170および171から選択されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含むかそれからなり、ここで、第一のITRおよび/または第二のITRは、それが由来するB19 ITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、第一のITRおよび/または第二のITRは、配列番号167、168、169、170および171から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含むかそれからなり、ここで、第一のITRおよび/または第二のITRはヘアピン構造を形成することができる。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0201】
一部の実施形態では、第一のITRおよび/または第二のITRは、配列番号167、168、169、170および171から選択されるヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第一のITRおよび/または第二のITRは、配列番号167に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第一のITRおよび/または第二のITRは、配列番号168に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第一のITRおよび/または第二のITRは、配列番号169に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第一のITRおよび/または第二のITRは、配列番号170に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第一のITRおよび/または第二のITRは、配列番号171に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。
【0202】
【0203】
ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号167に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号167からなる。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号168に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号168からなる。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号169に示される最小ヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を含み、そしてここで該ヌクレオチド配列は、配列番号167に示されるヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であり、それが由来するB19 ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号169に示される最小ヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を含み、そしてここで該ヌクレオチド配列は、配列番号167に示されるヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であり、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、ヘアピン構造を形成することができる。ある特定の実施形態において、ヘアピン構造はT字形ヘアピンを含まない。
【0204】
ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、B19に由来するITRの全て又は一部を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第二のITRは第一のITRの逆相補鎖である。一部の実施形態において、第一のITRは第二のITRの逆相補鎖である。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、185、及び186から選択されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、機能性誘導体は、それが由来するB19 ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号180、181、185、及び186から選択されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、機能性誘導体はヘアピン構造を形成する事が可能である。ある特定の実施形態において、ヘアピン構造はT字形ヘアピンを含まない。
【0205】
ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号180からなる。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号181に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号181からなる。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号185に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号185からなる。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号186に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号186からなる。
【0206】
一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、185、及び186から選択されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号180に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号181に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号185に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号186に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第二のITRは、配列番号180に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第二のITRは、配列番号181に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第二のITRは、配列番号185に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第二のITRは、配列番号186に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。
【0207】
一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号180に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなり、そして第二のITRは、配列番号181に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号181に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなり、そして第二のITRは、配列番号180に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号185に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなり、そして第二のITRは、配列番号186に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号186に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなり、そして第二のITRは、配列番号185に示されるヌクレオチドを含むか又はそれからなる。
【0208】
一部の実施形態において、第一のITRはAAVゲノムに由来し、そして第二のITRはGPVに由来する。他の実施形態において、第二のITRはAAVゲノムに由来し、そして第一のITRはGPVに由来する。
【0209】
ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号172に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号172からなる。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号173に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号173からなる。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、GPVに由来するITRの全て又は一部を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号172、173、174、175、及び176から選択されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなり、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、それが由来するGPV ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、GPVに由来するITRの全て又は一部を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号172、173、174、175、及び176から選択されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含むかか又はそれからなり、ここで第一のITR及び/又は第二のITRはヘアピン構造を形成することができる。ある特定の実施形態において、ヘアピン構造はT字形ヘアピンを含まない。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号172、173、174、175、及び176から選択されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号172に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号173に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号174に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号175に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号176に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。
【0210】
ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号174に示される最小ヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を含み、そしてここで該ヌクレオチド配列は、配列番号172に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であり、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、それが由来するGPV ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号174に示される最小ヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を含み、そしてここで該ヌクレオチド配列は、配列番号172に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であり、ここで第一のITR及び/又は第二のITRはヘアピン構造を形成することができる。ある特定の実施形態において、ヘアピン構造はT字形ヘアピンを含まない。
【0211】
ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号176に示される最小ヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を含み、そしてここで該ヌクレオチド配列は、配列番号172に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であり、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、それが由来するGPV ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号176に示される最小ヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列を含み、そしてここでヌクレオチド配列は、配列番号172に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であり、ここで第一のITR及び/又は第二のITRはヘアピン構造を形成することができる。ある特定の実施形態において、ヘアピン構造はT字形ヘアピンを含まない。
【0212】
ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、GPVに由来するITRの全て又は一部を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第二のITRは第一のITRの逆相補鎖である。一部の実施形態において、第一のITRは第二のITRの逆相補鎖である。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号183、184、187及び188から選択されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、機能性誘導体は、それが由来するGPV ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号183、184、187及び188から選択されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、もしくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、機能性誘導体はヘアピン構造を形成することができる。ある特定の実施形態において、ヘアピン構造はT字形ヘアピンを含まない。
【0213】
ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号183に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号183からなる。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号184に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号184からなる。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号187に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号187からなる。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含む。ある特定の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは配列番号188からなる。
【0214】
一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号183、184、187及び188から選択されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号183に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号184に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号187に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号188に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第二のITRは、配列番号183に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第二のITRは、配列番号184に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第二のITRは、配列番号187に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第二のITRは、配列番号188に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。
【0215】
一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号183に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなり、そして第二のITRは配列番号184に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号184に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなり、そして第二のITRは、配列番号183に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号187に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなり、そして第二のITRは、配列番号188に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITRは、配列番号188に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなり、そして第二のITRは、配列番号187に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。
【0216】
ある特定の実施形態において、第一のITR又は第二のITRの一方は、AAV2に由来するITRの全て又は一部を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITR又は第二のITRは、配列番号177又は178に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなり、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、それが由来するAAV2 ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態において、第一のITR又は第二のITRは、配列番号177又は178に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は100%同一であるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなり、ここで第一のITR及び/又は第二のITRはヘアピン構造を形成することができる。ある特定の実施形態において、ヘアピン構造はT字形ヘアピンを含まない。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号177又は178に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号177に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号178に示されるヌクレオチド配列を含むか又はそれからなる。
【0217】
一部の実施形態において、第一のITRはAAVゲノムに由来し、そして第二のITRはノバリケンパルボウイルス(MDPV)株に由来する。他の実施形態において、第二のITRはAAVゲノムに由来し、そして第一のITRはノバリケンパルボウイルス(MDPV)株に由来する。ある特定の実施形態において、MDPV株は弱毒化されている、例えば、MDPV株FZ91-30。他の実施形態において、MDPV株は病原性である、例えば、MDPV株YY。
【0218】
一部の実施形態において、第一のITRはAAVゲノムに由来し、そして第二のITRはデペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)に由来する。一部の実施形態において、第二のITRはAAVゲノムに由来し、そして第一のITRはデペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)に由来する。他の実施形態において、第一のITRはAAVゲノムに由来し、そして第二のITRは、ディペンドウイルス(Dependovirus)ガチョウパルボウイルス(GPV)株に由来する。他の実施形態において、第二のITRはAAVゲノムに由来し、そして第一のITRはディペンドウイルス(Dependovirus)GPV株に由来する。ある特定の実施形態において、GPV株は弱毒化されている、例えば、GPV株82-0321V。他の実施形態において、GPV株は病原性である、例えば、GPV株B。
【0219】
ある特定の実施形態において、第一のITRはAAVゲノム由来であり、そして第二のITRは、ブタパルボウイルス、例えば、ブタパルボウイルス株U44978;マウス微小ウイルス、例えば、マウス微小ウイルス株U34256;イヌパルボウイルス、例えば、イヌパルボウイルス株M19296;ミンク腸炎ウイルス、例えば、ミンク腸炎ウイルス株D00765;及び任意のその組合せからなる群より選択されるゲノムに由来する。他の実施形態において、第二のITRはAAVゲノムに由来し、そして第一のITRは、ブタパルボウイルス、例えば、ブタパルボウイルス株U44978;マウス微小ウイルス、例えば、マウス微小ウイルス株U34256;イヌパルボウイルス、例えば、イヌパルボウイルス株M19296;ミンク腸炎ウイルス、例えば、ミンク腸炎ウイルス株D00765;及び任意のその組合せからなる群より選択されるゲノムに由来する。
【0220】
別の特定の実施形態において、ITRは、その5’及び3’末端にAAVゲノムに由来しないITRを含むように遺伝子操作された合成配列である。別の特定の実施態様において、ITRは、非AAVゲノムの1つ又はそれ以上に由来するITRをその5’及び3’末端に含むように遺伝子操作された合成配列である。本発明の核酸分子中に存在する2つのITRは同じ非AAVであっても異なる非AAVでもよい。特に、ITRは同じ非AAVゲノムに由来し得る。特定の実施形態において、本発明の核酸分子中に存在する2つのITRは同じであり、そして特にAAV2 ITRであり得る。
【0221】
一部の実施形態では、ITR配列は、1つまたはそれ以上のパリンドローム配列を含む。本明細書に開示されるITRのパリンドローム配列には、これらに限定されないが、天然のパリンドローム配列(すなわち、天然に見出される配列)、合成配列(すなわち、天然に見出されない配列)、例えば偽パリンドローム配列、およびその組合せまたは改変形態が含まれる。「偽パリンドローム配列」は、二次構造を形成する天然のAAVまたは非AAVパリンドローム配列中の配列と、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満または5%未満、または同一性なしを含む80%未満の核酸配列同一性を共有する、不完全パリンドローム配列を含むパリンドロームDNA配列である。天然のパリンドローム配列は、本明細書に開示される任意のゲノムから入手され得るかまたはそれに由来し得る。合成パリンドローム配列は、本明細書に開示される任意のゲノムに基づくことができる。
【0222】
パリンドローム配列は、連続的であっても中断されていてもよい。一部の実施形態では、パリンドローム配列は中断され、ここで、パリンドローム配列は第二の配列の挿入を含む。一部の実施形態では、第二の配列は、プロモーター、エンハンサー、インテグラーゼのための組入れ部位(例えば、CreまたはFlpリコンビナーゼのための部位)、遺伝子産物のためのオープンリーディングフレーム、またはその組合せを含む。
【0223】
一部の実施形態では、ITRは、ヘアピンループ構造を形成する。一実施形態では、第一のITRは、ヘアピン構造を形成する。別の実施形態では、第二のITRは、ヘアピン構造を形成する。さらに別の実施形態では、第一のITRおよび第二のITRの両方は、ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、第一のITRおよび/または第二のITRは、T字形ヘアピン構造を形成しない。ある特定の実施形態では、第一のITRおよび/または第二のITRは、非T字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、非T字形ヘアピン構造は、U字形ヘアピン構造を含む。
【0224】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるような核酸分子中のITRは、転写活性化ITRであってよい。転写活性化ITRは、少なくとも1つの転写活性エレメントの包含によって転写活性化された野生型ITRの全部または一部を含むことができる。各種の転写活性エレメントがこの場面での使用に適する。一部の実施形態では、転写活性エレメントは、構成的転写活性エレメントである。構成的転写活性エレメントは継続したレベルの遺伝子転写を提供し、そして導入遺伝子が継続的に発現されることが望まれるときに好ましい。他の実施形態では、転写活性エレメントは、誘導可能な転写活性エレメントである。誘導可能な転写活性エレメントは、インデューサー(また、誘導条件)の不在下で低い活性を一般的に示し、そしてインデューサーの存在(または、誘導条件への切り替え)下で上方制御される。ある特定の時だけもしくはある特定の場所だけで発現が望ましい場合、または誘導剤を使用して発現レベルを滴定することが望ましい場合、誘導可能な転写活性エレメントが好ましいかもしれない。転写活性エレメントは、組織特異的であってもよい;すなわち、それらは、ある特定の組織または細胞型においてだけ活性を示す。
【0225】
転写活性エレメントを、様々な方法でITRに組み込むことができる。一部の実施形態では、転写活性エレメントは、ITRの任意の部分の5’側に、またはITRの任意の部分の3’側に組み込まれる。他の実施形態では、転写活性化ITRの転写活性エレメントは、2つのITR配列の間にある。転写活性エレメントが間隔をあけなければならない2つ以上のエレメントを含む場合、それらのエレメントはITRの部分を交互になり得る。一部の実施形態では、ITRのヘアピン構造は欠失し、転写エレメントの逆方向反復で置き換えられる。この後者の配置は、構造の欠失部分を模倣するヘアピンを形成するであろう。転写活性化ITRに複数の直列型の転写活性エレメントが存在することができ、これらは隣接していても離れていてもよい。さらに、転写活性化ITRの転写活性エレメントに、タンパク質結合部位(例えば、Rep結合部位)を導入することができる。転写活性エレメントは、RNAを形成するRNAポリメラーゼによるDNAの制御された転写を可能にする任意の配列を含むことができ、例えば、下で規定される転写活性エレメントを含むことができる。
【0226】
転写活性化ITRは、比較的制限されたヌクレオチド配列長の核酸分子に転写活性化およびITR機能の両方を提供し、それは、核酸分子から運び、発現させることができる導入遺伝子の長さを効果的に最大にする。転写活性エレメントのITRへの組み込みは、様々な方法で達成することができる。転写活性エレメントのITR配列および配列必要条件の比較は、ITR内のエレメントをコードする方法に関する識見を提供することができる。例えば、転写活性エレメントの機能的エレメントを複製するITR配列における特異的変更の導入を通して、転写活性をITRに加えることができる。特異的部位で特定のヌクレオチド配列を効率的に加え、削除し、および/または変更するためのいくつかの技術が当技術分野に存在する(例えば、DengおよびNickoloff(1992)Anal.Biochem.200:81~88を参照のこと)。転写活性化ITRを作製する別の方法は、ITRの所望の位置での制限部位の導入を含む。さらに、当技術分野で公知の方法を使用して、複数の転写活性エレメントを転写活性化ITRに組み込むことができる。
【0227】
実例として、転写活性化ITRは、TATAボックス、GCボックス、CCAATボックス、Sp1部位、Inr領域、CRE(cAMP調節エレメント)部位、ATF-1/CRE部位、APBβボックス、APBαボックス、CArGボックス、CCACボックス、または当技術分野で公知であるような転写に関与する任意の他のエレメントなどの、1つまたはそれ以上の転写活性エレメントの包含によって生成することができる。
【0228】
本開示の態様は、本明細書に記載されるような核酸分子をクローン化する方法を提供し、該方法は、複雑な(complex)二次構造をとることができる核酸分子を適切なベクター中に挿入すること、及び得られたベクターを適切な細菌宿主株中に導入することを含む。当該分野で公知のように、核酸の複雑な二次構造(例えば、長い回文領域)は不安定であり、細菌宿主株にクローン化することは困難であるかもしれない。例えば、本開示の第一のITR及び第二のITR(例えば、非AAVパルボウイルスITR、例えば、B19又はGPV ITR)を含む核酸分子は、従来の方法論を使用してクローン化することが困難であるかもしれない。長いDNAパリンドロームはDNA複製を抑制し、そして大腸菌(E.coli)、バチルス(Bacillus)、連鎖球菌(Steptococcus)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、出芽酵母(S. cerevisiae)、マウス、及びヒトのゲノム中で不安定である。これらの効果は、ストランド内塩基対合によるヘアピン又は十字型構造の形成から生じる。大腸菌(E. coli)において、DNA複製の抑制は、SbcC又はSbcD変異体においてななり克服され得る。SbcDはヌクレアーゼサブユニットであり、そしてSbcCはSbcCD複合体のATPaseサブユニットである。大腸菌(E. coli)SbcCD複合体は、長いパリンドロームの複製を防止する原因となるエキソヌクレアーゼ複合体である。SbcCD複合体は、ATP依存性二本鎖DNAエキソヌクレアーゼ活性及びATP依存性一本鎖DNAエンドヌクレアーゼ活性の核である。SbcCDはDNAパリンドロームを認識し得、そして生じるヘアピン構造を攻撃することにより複製フォークを崩壊させる。
【0229】
ある特定の実施形態において、適切な細菌宿主株は、十字型DNA構造を分解することができない。ある特定の実施形態において、適切な細菌宿主株はSbcCD複合体において破壊を含む。一部の実施形態において、SbcCD複合体における破壊はSbcC遺伝子及び/又はSbcD遺伝子における遺伝子破壊を含む。ある特定の実施形態において、SbcCD複合体における破壊はSbcC遺伝子における遺伝子破壊を含む。SbcC遺伝子において遺伝子破壊を含む様々な細菌宿主株は当該分野で公知である。例えば、限定することなく、細菌宿主株PMC103は、遺伝子型sbcC、recD、mcrA、ΔmcrBCFを含み;細菌宿主株PMC107は遺伝子型recBC、recJ、sbcBC、mcrA、ΔmcrBCFを含み;そして細菌宿主株SUREは遺伝子型recB、recJ、sbcC、mcrA、ΔmcrBCF、umuC、uvrCを含む。したがって、一部の実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子をクローン化する方法は、複雑な二次構造をとることができる核酸分子を適切なベクターに挿入すること、及び得られたベクターを宿主株PMC103、PMC107、又はSUREに導入することを含む。ある特定の実施形態において、本明細書に記載されるような核酸分子をクローン化する方法は、複雑な二次構造をとることができる核酸分子を適切なベクターに挿入すること、及び得られたベクターを宿主株PMC103に導入することを含む。
【0230】
適切なベクターは当該分野で公知であり、そして本明細書の他所に記載される。ある特定の実施形態において、本開示のクローン化方法における使用のための適切なベクターは、低コピーベクターである。ある特定の実施形態において、本開示のクローン化方法における使用に適切なベクターはpBR322である。
【0231】
したがって、本開示は核酸分子をクローン化する方法を提供し、該方法は、複雑な二次構造をとることができる核酸分子を適切なベクターに挿入すること、及び得られたベクターを、SbcCD複合体における破壊を含む細菌宿主株に導入することを含み、ここで該核酸分子は第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含み、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187又は188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【0232】
B. 治療用タンパク質
本開示のある特定の態様は、第一のITR、第二のITR、及び標的配列をコードする遺伝子カセットを含む核酸分子に関し、ここで標的配列は治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態において、遺伝子カセットは1つの治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態において、遺伝子カセットは1つより多くの治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態において、遺伝子カセットは、同じ治療用タンパク質の2つ又はそれ以上のコピーをコードする。一部の実施形態において、遺伝子カセットは同じ治療用タンパク質の2つ又はそれ以上のバリアントをコードする。一部の実施形態において、遺伝子カセットは2つ又はそれ以上の異なる治療用タンパク質をコードする。
【0233】
本開示のある特定の実施形態は、第一のITR、第二のITR、及び治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含む核酸分子に関し、ここで、治療用タンパク質は凝固因子を含む。一部の実施形態において、凝固因子は、FI、FII、FIII、FIV、FV、FVI、FVII、FVIII、FIX、FX、FXI、FXII、FXIII)、VWF、プレカリクレイン、高分子キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-2(PAI2)、任意のその酵素原、任意のその活性形態、及び任意のその組合せからなる群より選択される。一実施形態において、凝固因子はFVIII又はそのバリアント若しくはフラグメントを含む。別の実施形態において、凝固因子はFIX又はそのバリアント若しくはフラグメントを含む。別の実施形態において、凝固因子はFVII又はそのバリアント若しくはフラグメントを含む。別の実施形態において、凝固因子はVWF又はそのバリアント若しくはフラグメントを含む。
【0234】
1. 凝固因子
一部の実施形態では、核酸分子は、第一のITR、第二のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、ここで標的配列は治療用タンパク質をコードし、ここで治療用タンパク質は第VIII因子ポリペプチドを含む。本出願全体を通して「FVIII」と略される「第VIII因子」は、本明細書で使用されるように、別段に特定されていなければ、凝固におけるその通常の役割において、機能的なFVIIIポリペプチドを意味する。よって、FVIIIという用語は、機能的であるバリアントポリペプチドを含む。「FVIIIタンパク質」は、FVIIIポリペプチド(またはタンパク質)またはFVIIIと互換的に使用される。FVIII機能の例として、これらに限定されないが、凝固を活性化する能力、第IX因子に関する補因子として作用する能力、またはCa2+とリン脂質の存在下で、第IX因子とテナーゼ複合体を形成し、次いで、第X因子を活性化形態Xaに変換する能力が挙げられる。FVIIIタンパク質は、ヒト、ブタ、イヌ、ラット、またはマウスのFVIIIタンパク質であり得る。さらに、ヒト由来のFVIIIと他の種由来のFVIIIの間の比較によって、機能に必要とされる可能性の高い保存残基が特定された(Cameronら、Thromb. Haemost. 79:317~22(1998);US6,251,632)。全長ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列は、多くの機能的フラグメント、変異体および改変バージョンがそうであるように、公知である。様々なFVIIIアミノ酸およびヌクレオチド配列が、例えば、米国出願公開第2015/0158929号、同第2014/0308280号、および同第2014/0370035号ならびに国際公開WO2015/106052に開示されている。FVIIIポリペプチドとして、例えば、全長FVIII、全長FVIIIからN末端のMetを除いたもの、成熟FVIII(シグナル配列を除いたもの)、N末端に追加のMetを有する成熟FVIII、および/またはBドメインの全体的または部分的欠失を有するFVIIIが挙げられる。FVIIIバリアントは、部分的欠失であるか全体的欠失であるかにかかわらず、Bドメインの欠失を含む。
【0235】
a.FVIIIおよびFVIIIタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列
一部の実施形態では、核酸分子は、第一のITR、第二のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、ここで標的配列は治療用タンパク質をコードし、ここで治療用タンパク質は、第VIII因子ポリペプチドを含む。本出願全体を通して「FVIII」と略される「第VIII因子」は、本明細書で使用されるように、別段に特定されていなければ、凝固におけるその通常の役割において、機能的なFVIIIポリペプチドを意味する。よって、FVIIIという用語は、機能的であるバリアントポリペプチドを含む。「FVIIIタンパク質」は、FVIIIポリペプチド(またはタンパク質)またはFVIIIと互換的に使用される。FVIII機能の例として、これらに限定されないが、凝固を活性化する能力、第IX因子に関する補因子として作用する能力、またはCa2+とリン脂質の存在下で、第IX因子とテナーゼ複合体を形成し、次いで、第X因子を活性化形態Xaに変換する能力が挙げられる。FVIIIタンパク質は、ヒト、ブタ、イヌ、ラット、またはマウスのFVIIIタンパク質であり得る。さらに、ヒト由来のFVIIIと他の種由来のFVIIIの間の比較によって、機能に必要とされる可能性の高い保存残基が特定された(Cameronら、Thromb. Haemost. 79:317~22(1998);US6,251,632)。全長ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列は、多くの機能的フラグメント、変異体および改変バージョンがそうであるように、公知である。様々なFVIIIアミノ酸およびヌクレオチド配列が、例えば、米国出願公開第2015/0158929号、同第2014/0308280号、および同第2014/0370035号ならびに国際公開WO2015/106052に開示されている。FVIIIポリペプチドとして、例えば、全長FVIII、全長FVIIIからN末端のMetを除いたもの、成熟FVIII(シグナル配列を除いたもの)、N末端に追加のMetを有する成熟FVIII、および/またはBドメインの全体的または部分的欠失を有するFVIIIが挙げられる。FVIIIバリアントは、部分的欠失であるか全体的欠失であるかにかかわらず、Bドメインの欠失を含む。
【0236】
本明細書で使用されるキメラタンパク質におけるFVIII部分は、FVIII活性を有する。FVIII活性は、当技術分野で公知の任意の方法によって測定することができる。凝固系の機能を評価するための多数の検査が利用可能である:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)検査、発色アッセイ、ROTEMアッセイ、プロトロンビン時間(PT)検査(INRを決定するためにも使用される)、フィブリノーゲン検査(Clauss方法による場合も多い)、血小板数、血小板機能検査(PFA-100による場合も多い)、TCT、出血時間、混合検査(患者の血漿が正常な血漿と混合される場合に、異常が訂正されるかどうか)、凝固因子アッセイ、抗リン脂質抗体、D-二量体、遺伝子検査(例えば、第V因子ライデン、プロトロンビン変異G20210A)、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)、種々の血小板機能検査、トロンボエラストグラフィー(TEGまたはSonoclot)、トロンボエラストメトリー(TEM(登録商標)、例えば、ROTEM(登録商標))、または真性グロブリン溶解時間(ELT)。
【0237】
aPTT検査は、「内因系」凝固経路(接触活性化経路とも称される)と通常の凝固経路の両方の有効性を測定する性能指標である。この検査は、市販の組換え凝固因子、例えば、FVIIIの凝固活性を測定するために、通常使用される。この検査は、外因系経路を測定するプロトロンビン時間(PT)と合わせて使用される。
【0238】
ROTEM分析は、止血の動態全体に関する情報を提供する:凝固時間、血餅形成、血餅の安定性および溶解。トロンボエラストメトリーの様々なパラメーターは、血漿凝固系の活性、血小板機能、線維素溶解、またはこれらの相互作用に影響を及ぼす多くの因子に依存する。このアッセイは、二次止血の全景を提供することができる。
【0239】
発色アッセイのメカニズムは、活性化したFVIIIが、活性化した第IX因子、リン脂質およびカルシウムイオンの存在下で、第X因子の第Xa因子への変換を加速する血液凝固カスケードの原理に基づく。第Xa因子の活性は、第Xa因子に特異的なp-ニトロアニリド(pNA)基質の加水分解によって評価される。405nMで測定されるp-ニトロアニリン放出の初期速度は、試料中の第Xa因子活性、よってFVIII活性に直接比例する。
【0240】
国際血栓止血学会(the International Society on Thrombosis and Hemostatsis (ISTH))の学術標準化委員会(the Scientific and Standardization Committee (SSC))のFVIIIおよび第IX因子の分科委員会により、発色アッセイが推奨される。1994年以来、発色アッセイは、FVIII濃縮物の効力の帰属に関する欧州薬局方の基準方法でもある。よって、一実施形態では、FVIIIを含むキメラポリペプチドは、成熟FVIIIまたはBDD FVIIIを含むキメラポリペプチド(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))に匹敵するFVIII活性を有する。
【0241】
別の実施形態では、この開示のFVIIIを含むキメラタンパク質は、成熟FVIIIまたはBDD FVIIIを含むキメラタンパク質(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))に匹敵する第Xa因子の生成速度を有する。
【0242】
第X因子を活性化して第Xa因子とするために、活性化した第IX因子(第IXa因子)は、Ca2+、膜リン脂質、およびFVIII補因子の存在下で、第X因子の1つのアルギニン-イソロイシン結合を加水分解して、第Xa因子を形成する。したがって、FVIIIと第IX因子との相互作用は、凝集経路において決定的である。ある特定の実施形態では、FVIIIを含むキメラポリペプチドは、成熟FVIIIの配列またはBDD FVIIIを含むキメラポリペプチド(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))に匹敵する速度で第IXa因子と相互作用することができる。
【0243】
さらに、FVIIIは、フォンビルブランド因子に結合するが、循環血液中で不活性である。FVIIIは、VWFに結合しない場合、急速に分解し、トロンビンの作用によってVWFから放出される。一部の実施形態では、FVIIIを含むキメラポリペプチドは、成熟FVIIIの配列またはBDD FVIIIを含むキメラポリペプチド(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))に匹敵するレベルでフォンビルブランド因子に結合する。
【0244】
FVIIIは、カルシウムおよびリン脂質の存在下で、活性化したプロテインCによって不活性化され得る。活性化したプロテインCは、A1ドメインのアルギニン336の後のFVIII重鎖を切断して、第X因子の基質相互作用部位を破壊し、そしてA2ドメインのアルギニン562の後を切断して、A2ドメインの解離を促進し、さらには第IXa因子との相互作用部位を破壊する。この切断はまた、A2ドメイン(43kDa)を二等分し、そしてA2-Nドメイン(18kDa)とA2-Cドメイン(25kDa)を生じる。よって、活性化したプロテインCは、重鎖における複数の切断部位を触媒することができる。一実施形態では、FVIIIを含むキメラポリペプチドは、成熟FVIIIの配列またはBDD FVIIIを含むキメラポリペプチド(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))に匹敵するレベルで活性化したプロテインCによって不活性化される。
【0245】
他の実施形態では、FVIIIを含むキメラタンパク質は、成熟FVIIIの配列またはBDD FVIIIを含むキメラポリペプチド(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))に匹敵するインビボでのFVIII活性を有する。特定の実施形態では、FVIIIを含むキメラポリペプチドは、HemAマウスの尾静脈切断モデルにおいて成熟FVIIIの配列またはBDD FVIIIを含むキメラポリペプチド(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))に匹敵するレベルでHemAマウスを保護することが可能である。
【0246】
FVIIIの「Bドメイン」は、本明細書で使用されるように、内部アミノ酸配列の同一性およびトロンビンによるタンパク質切断の部位により定義される、当技術分野で公知のBドメインと同一であり、例えば、成熟ヒトFVIIIの残基Ser741~Arg1648である。他のヒトFVIIIドメインは、成熟ヒトFVIIIに対して、以下のアミノ酸残基により定義される:A1,成熟FVIIIの残基Ala1~Arg372;A2,成熟FVIIIの残基Ser373~Arg740;A3,成熟FVIIIの残基Ser1690~Ile2032;C1,成熟FVIIIの残基Arg2033~Asn2172;C2,成熟FVIIIの残基Ser2173~Tyr2332。別段指定されていなければ、いずれの配列番号にも言及しない本明細書で使用される配列残基番号は、シグナルペプチドの配列(19アミノ酸)を含まないFVIII配列に対応する。FVIII重鎖としても知られるA3-C1-C2配列は、残基Ser1690~Tyr2332を含む。残りの配列、残基Glu1649~Arg1689は、通常、FVIII軽鎖活性化ペプチドと称される。また、ブタ、マウスおよびイヌのFVIIIに関するBドメインを含む、ドメインの全てに関する境界の位置も、当技術分野で公知である。一実施形態では、FVIIIのBドメインは欠失している(「Bドメイン欠失FVIII」または「BDD FVIII」)。BDD FVIIIの一例は、REFACTO(登録商標)(組換えBDD FVIII)である。特定の一実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIバリアントは、成熟FVIIIのアミノ酸残基746から1648の欠失を含む。
【0247】
「Bドメイン欠失FVIII」は、米国特許第6,316,226号、同第6,346,513号、同第7,041,635号、同第5,789,203号、同第6,060,447号、同第5,595,886号、同第6,228,620号、同第5,972,885号、同第6,048,720号、同第5,543,502号、同第5,610,278号、同第5,171,844号、同第5,112,950号、同第4,868,112号、および同第6,458,563号ならびに国際公開WO2015106052A1(PCT/US2015/010738)に開示される、全部または部分的な欠失を有し得る。一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるBドメイン欠失FVIII配列は、米国特許第6,316,226号(また、US6,346,513)の第4欄4行目から第5欄28行目および実施例1~5に開示される欠失のうちのいずれか1つを含む。別の実施形態では、Bドメイン欠失第FVIII因子は、S743/Q1638 Bドメイン欠失第VIII因子(SQ BDD FVIII)(例えば、アミノ酸744からアミノ酸1637の欠失を有する第VIII因子、例えば、成熟FVIIIのアミノ酸1~743およびアミノ酸1638~2332を有する第VIII因子)である。一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるBドメイン欠失FVIIIは、米国特許第5,789,203号(また、US6,060,447、US5,595,886、およびUS6,228,620)の第2欄、26~51行目および実施例5~8に開示される欠失を有する。一部の実施形態では、Bドメイン欠失第VIII因子は、米国特許第5,972,885号の第1欄25行目~第2欄40行目;米国特許第6,048,720号の第6欄1~22行目および実施例1;米国特許第5,543,502号の第2欄17~46行目;米国特許第5,171,844号の第4欄22行目~第5欄36行目;米国特許第5,112,950号の第2欄55~68行目、
図2、および実施例1;米国特許第4,868,112号の第2欄2行目から第19欄21行目および表2;米国特許第7,041,635号の第2欄1行目から第3欄19行目、第3欄40行目から第4欄67行目、第7欄43行目から第8欄26行目、および第11欄5行目から第13欄39行目;または米国特許第6,458,563号の第4欄25~53行目に記載の欠失を有する。一部の実施形態では、WO91/09122に開示されるように、Bドメイン欠失FVIIIは、ほとんどのBドメインの欠失を有するが、2つのポリペプチド鎖への一次翻訳産物のインビボタンパク質プロセシングに不可欠であるBドメインのアミノ末端配列を依然として含有する。一部の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、アミノ酸747~1638の欠失、すなわち、Bドメインの実質的に完全な欠失により構築される。Hoeben R.C.ら J.Biol.Chem.265(13):7318~7323頁(1990)。Bドメイン欠失VIII因子は、FVIIIのアミノ酸771~1666またはアミノ酸868~1562の欠失を含有する場合もある。Meulien P.らProtein Eng.2(4):301~6(1988)。本開示の一部であるさらなるBドメイン欠失として、アミノ酸982から1562または760から1639(Tooleら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.83:5939~5942(1986))、797から1562(Eatonら、Biochemistry 25:8343~8347頁(1986))、741から1646(Kaufman(PCT出願公開第87/04187号))、747~1560(Sarverら、DNA 6:553~564頁(1987))、741から1648(Pasek(PCT出願第88/00831号))、または816から1598もしくは741から1648(Lagner(Behring Inst.Mitt.(1988)No 82:16~25頁、EP 295597))の欠失が挙げられる。特定の一実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、成熟FVIIIのアミノ酸残基746から1648の欠失を含む。別の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、成熟FVIIIのアミノ酸残基745から1648の欠失を含む。一部の実施形態では、BDD FVIIIは、成熟全長FVIII(rVIII-SingleChainおよびAFSTYLA(登録商標)としても知られる)に対応するアミノ酸765から1652の欠失を含有する単鎖FVIIIを含む。米国特許第7,041,635号を参照のこと。
【0248】
他の実施形態では、BDD FVIIIは、全長FVIII配列のアミノ酸配列に対応する、1つまたはそれ以上のN連結グリコシル化部位、例えば、残基757、784、828、900、963、または場合により943を保持するBドメインのフラグメントを含有するFVIIIポリペプチドを含む。Bドメインフラグメントの例は、Miao, H.Z.ら、Blood 103(a):3412~3419(2004)、Kasuda,Aら、J.Thromb.Haemost.6:1352~1359(2008)およびPipe,S.W.ら、J.Thromb.Haemost.9:2235~2242頁(2011)に開示されるBドメインの226アミノ酸または163アミノ酸を含む(すなわち、Bドメインの最初の226アミノ酸または163アミノ酸が保持される)。さらに他の実施形態では、BDD FVIIIは、点変異を残基309(PheからSer)にさらに含み、BDD FVIIIタンパク質の発現を向上させる。Miao,H.Z.ら、Blood 103(a):3412~3419(2004)を参照されたい。さらに他の実施形態では、BDD FVIIIは、Bドメインの一部分を含有するが、1つまたはそれ以上のフーリン切断部位(例えば、Arg1313およびArg1648)を含有しないFVIIIポリペプチドを含む。Pipe,S.Wら、J.Thromb.Haemost.9:2235~2242(2011)を参照されたい。一部の実施形態では、BDD FVIIIは、成熟全長FVIII(rVIII-SingleChainおよびAFSTYLA(登録商標)としても知られる)に対応するアミノ酸765から1652に欠失を含有する単鎖FVIIIを含む。米国特許第7,041,635号を参照のこと。前記欠失のそれぞれは、任意のFVIII配列においてなされ得る。
【0249】
非常に多くの機能的FVIIIバリアントが、上記および下記で考察されるように公知である。さらに、FVIIIにおける数百もの非機能的変異が血友病患者において特定されており、FVIII機能に対するこれらの変異の効果は、それらが、置換の性質に関するよりもFVIIIの3次元構造内にある場所により起因することが決定されている(Cutlerら、Hum.Mutat.19:274~8(2002))(参照によってその全体として本明細書に組み入れる)。さらに、ヒト由来のFVIIIと他の種由来のFVIIIの比較から、機能に必要とされる可能性のある保存残基が特定されている(Cameronら、Thromb.Haemost.79:317~22(1998);US6,251,632)(参照によってその全体として本明細書に組み入れる)。
【0250】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドは、FVIIIバリアントまたはそのフラグメントを含み、FVIIIバリアントまたはそのフラグメントはFVIII活性を有する。一部の実施形態では、遺伝子カセットは全長FVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、遺伝子カセットは、Bドメイン欠失(BDD)FVIIIポリペプチドをコードし、FVIIIのBドメインの全てまたは一部が欠失している。特定の一実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号106、107、109、110、111、または112と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号17のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号106のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号107と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号109のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号16と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号109と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0251】
一部の実施形態では、本開示の遺伝子カセットは、シグナルペプチドまたはそのフラグメントを含むFVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、遺伝子カセットは、シグナルペプチドを欠くFVIIIポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号17のアミノ酸1~19を含む。
【0252】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列はコドン最適化されている。ある特定の実施形態では、遺伝子カセットは、参照によってその全体として組み入れられる、国際出願第PCT/US2017/015879号に開示されているヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列はコドン最適化されている。ある特定の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号1~14から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号71と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号19と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0253】
i.FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列
一部の実施形態では、本開示の核酸分子は、第一のITR、第二のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、ここで標的配列は治療用タンパク質をコードし、ここで第一のITRおよび第二のITRはAAVゲノムに由来し、そして遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、全長FVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、Bドメイン欠失(BDD)FVIIIポリペプチドをコードし、FVIIIのBドメインの全てまたは一部は、欠失している。特定の一実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号17と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする。一実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号17のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはそのフラグメントをコードする。
【0254】
一部の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、シグナルペプチドまたはそのフラグメントを含むFVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、コドン最適化された配列は、シグナルペプチドを欠くFVIIIポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号17のアミノ酸1~19を含む。
【0255】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791または(ii)配列番号4のヌクレオチド58~1791に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し;そしてここでN末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。特定の一実施形態では、第一の核酸配列は、配列番号3のヌクレオチド58~1791に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。別の実施形態では、第一の核酸配列は、配列番号4のヌクレオチド58~1791と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、第一のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド58~1791または配列番号4のヌクレオチド58~1791を含む。
【0256】
他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド1~1791または(ii)配列番号4のヌクレオチド1~1791に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し;そしてここで、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。一実施形態では、第一のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド1~1791または配列番号4のヌクレオチド1~1791を含む。別の実施形態では、第二のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド1792~4374または配列番号4の1792~4374に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の一実施形態では、第二のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド1792~4374または配列番号4の1792~4374を含む。さらに別の実施形態では、第二のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド1792~2277および2320~4374または配列番号4の1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインのフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号3のヌクレオチド1792~4374または配列番号4の1792~4374)に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の一実施形態では、第二のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド1792~2277および2320~4374または配列番号4の1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインのフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号3のヌクレオチド1792~4374または配列番号4の1792~4374)を含む。
【0257】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;ここで第二の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374または(ii)配列番号6の1792~4374に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し;そしてここで、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。ある特定の実施形態では、第二の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1792~4374に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、第二の核酸配列は、配列番号6のヌクレオチド1792~4374に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の一実施形態では、第二の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1792~4374または配列番号6の1792~4374を含む。一部の実施形態では、上記に列挙した第二の核酸配列に連結した第一の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド58~1791または配列番号6のヌクレオチド58~1791に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、上記に列挙した第二の核酸配列に連結した第一の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1~1791または配列番号6のヌクレオチド1~1791に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0258】
他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;ここで第二の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインのフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374)または(ii)配列番号6の1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインのフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し;そしてここで、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。ある特定の実施形態では、第二の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインのフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374)に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、第二の核酸配列は、配列番号6のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインのフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の一実施形態では、第二の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374または配列番号6の1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインのフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374および配列番号6の1792~4374)を含む。一部の実施形態では、上記に列挙した第二の核酸配列に連結した第一の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド58~1791または配列番号6のヌクレオチド58~1791に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、上記に列挙した第二の核酸配列に連結した第一の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1~1791または配列番号6のヌクレオチド1~1791に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0259】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド58~1791、(ii)配列番号2のヌクレオチド58~1791、(iii)配列番号70のヌクレオチド58~1791、または(iv)配列番号71のヌクレオチド58~1791に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し;そしてここで、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。他の実施形態では、第一のヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド58~1791、配列番号2のヌクレオチド58~1791、(iii)配列番号70のヌクレオチド58~1791、または(iv)配列番号71のヌクレオチド58~1791を含む。
【0260】
他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1~1791、(ii)配列番号2のヌクレオチド1~1791、(iii)配列番号70のヌクレオチド1~1791、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1~1791に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し;そしてここでN末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。一実施形態では、第一のヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド1~1791、配列番号2のヌクレオチド1~1791、(iii)配列番号70のヌクレオチド1~1791、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1~1791を含む。別の実施形態では、第一のヌクレオチド配列に連結した第二のヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド1792~4374、配列番号2の1792~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~4374に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の一実施形態では、第一のヌクレオチド配列に連結した第二のヌクレオチド配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~4374、(ii)配列番号2の1792~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~4374を含む。他の実施形態では、第一のヌクレオチド配列に連結した第二のヌクレオチド配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~2277および2320~4374に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。一実施形態では、第二のヌクレオチド配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~2277および2320~4374を含む。
【0261】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;ここで第二の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~4374に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し;そしてここで、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。特定の一実施形態では、第二の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~4374を含む。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化された配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;ここで第二の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインのフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1のヌクレオチド1792~4374、配列番号2のヌクレオチド1792~4374、配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または配列番号71のヌクレオチド1792~4374)に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し;そしてここで、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。一実施形態では、第二の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインのフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1のヌクレオチド1792~4374、配列番号2のヌクレオチド1792~4374、配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または配列番号71のヌクレオチド1792~4374)を含む。
【0262】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド58から4374に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1のヌクレオチド58~4374)に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、核酸配列は、配列番号1に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1のヌクレオチド58~4374)または配列番号1のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1のヌクレオチド1~4374)または配列番号1のヌクレオチド1から4374を含む。
【0263】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド58~4374に対して少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド58~2277および2320~4374とに対して少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、核酸配列は、配列番号2に対して少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号2のヌクレオチド58~4374)または配列番号2のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号2のヌクレオチド1~4374)または配列番号2のヌクレオチド1から4374を含む。
【0264】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列は、配列番号70のヌクレオチド58~4374に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号70のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号70のヌクレオチド58~4374)に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、核酸配列は、配列番号70に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号70のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号70のヌクレオチド58~4374)または配列番号70のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号70のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号70のヌクレオチド1~4374)または配列番号70のヌクレオチド1から4374を含む。
【0265】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列は、配列番号71のヌクレオチド58~4374に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号71のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号71のヌクレオチド58~4374)に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、核酸配列は、配列番号71に対して少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号71のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号71のヌクレオチド58~4374)または配列番号71のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号71のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号71のヌクレオチド1~4374)または配列番号71のヌクレオチド1から4374を含む。
【0266】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド58~4374に対して少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号3のヌクレオチド58~4374)に対して少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号3に対して少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号3のヌクレオチド58~4374)または配列番号3のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号3のヌクレオチド1~4374)または配列番号3のヌクレオチド1から4374を含む。
【0267】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列は、配列番号4のヌクレオチド58~4374に対して少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号4のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号4のヌクレオチド58~4374)に対して少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、核酸配列は、配列番号4に対して少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号4のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号4のヌクレオチド58~4374)または配列番号4のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号4のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号4のヌクレオチド1~4374)または配列番号4のヌクレオチド1から4374を含む。
【0268】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド58~4374と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド58~4374)に対して少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号5に対して少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド58~4374)または配列番号5のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1~4374)または配列番号5のヌクレオチド1から4374を含む。
【0269】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列は、配列番号6のヌクレオチド58~4374に対して少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号6のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド58~4374)に対して少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号6に対して少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号6のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド58~4374)または配列番号6のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号6のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1~4374)または配列番号6のヌクレオチド1から4374を含む。
【0270】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、シグナルペプチドをコードする核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、FVIIIシグナルペプチドである。一部の実施形態では、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、コドン最適化されている。特定の一実施形態では、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1から57;(ii)配列番号2のヌクレオチド1から57;(iii)配列番号3のヌクレオチド1から57;(iv)配列番号4のヌクレオチド1から57;(v)配列番号5のヌクレオチド1から57;(vi)配列番号6のヌクレオチド1から57;(vii)配列番号70のヌクレオチド1から57;(viii)配列番号71のヌクレオチド1から57;または(ix)配列番号68のヌクレオチド1から57に対して少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
【0271】
配列番号1~6、70、および71は、開始または「親」または「野生型」FVIIIヌクレオチド配列である、配列番号16の最適化されたバージョンである。配列番号16は、Bドメイン欠失ヒトFVIIIをコードする。配列番号1~6、70、および71は、FVIIIの特異的なBドメイン欠失形態(配列番号16)に由来するが、本開示は、FVIIIの他のバージョンをコードする核酸の最適化されたバージョンも含むと理解されるべきである。例えば、FVIIIの他のバージョンとして、全長FVIII、FVIIIの他のBドメイン欠失(本明細書に記載する)、またはFVIII活性を保持するFVIIIの他のフラグメントを挙げることができる。
【0272】
一実施形態において、遺伝子カセットは、表2A~2Fに列挙されるポリヌクレオチド配列を含むFVIII構築物を含む。一実施形態において、遺伝子カセットは、表2Aに示されるポリヌクレオチド配列を含むFVIII構築物を含む。一実施形態において、遺伝子カセットは、表2Bに列挙されるポリヌクレオチド配列を含むFVIII構築物を含む。一実施形態において、遺伝子カセットは、表2Cに列挙されるポリヌクレオチド配列を含むFVIII構築物を含む。一実施形態において、遺伝子カセットは、表2Dに列挙されるポリヌクレオチド配列を含むFVIII構築物を含む。一実施形態において、遺伝子カセットは、表2Eに列挙されるポリヌクレオチド配列を含むFVIII構築物を含む。一実施形態において、遺伝子カセットは、表2Fに列挙されるポリヌクレオチド配列を含むFVIII構築物を含む。
【0273】
ある特定の実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号179、182、189、又は194のヌクレオチド配列に対して少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号179のヌクレオチド配列に対して少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号182のヌクレオチド配列に対して少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号189のヌクレオチド配列に対して少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号194のヌクレオチド配列に対して少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、単離された核酸分子は機能的FVIIIタンパク質を発現する能力を保持する。
【0274】
【0275】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0276】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0277】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【0278】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【0279】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【0280】
一実施形態において、遺伝子カセットは、表10A及び10Bに列挙されるポリヌクレオチド配列を含むフェニルアラニン水酸化酵素(PAH)構築物を含む。一実施形態において、遺伝子カセットは、表10Aに示されるポリヌクレオチド配列を含むPAH構築物を含む。一実施形態において、遺伝子カセットは、表10Bに示されるポリヌクレオチド配列を含むPAH構築物を含む。
【0281】
ある特定の実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号197又は198のヌクレオチド配列に対して少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号197のヌクレオチド配列に対して少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、単離された核酸分子は、配列番号198のヌクレオチド配列に対して少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、単離された核酸分子は、機能的フェニルアラニン水酸化酵素を発現する能力を保持する。
【0282】
A.コドン適応指数(Codon Adaptation Index)
一実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列のヒトコドン適応指数は、配列番号16に対して増加する。例えば、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)、少なくとも約0.88(88%)、少なくとも約0.89(89%)、少なくとも約0.90(90%)、少なくとも約0.91(91%)、少なくとも約0.92(92%)、少なくとも約0.93(93%)、少なくとも約0.94(94%)、少なくとも約0.95(95%)、少なくとも約0.96(96%)、少なくとも約0.97(97%)、少なくとも約0.98(98%)、または少なくとも約0.99(99%)であるヒトコドン適応指数を有し得る。一部の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約.88(88%)であるヒトコドン適応指数を有する。他の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約.91(91%)であるヒトコドン適応指数を有する。他の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約.97(97%)であるヒトコドン適応指数を有する。
【0283】
特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;ヌクレオチド配列のヒトコドン適応指数は、配列番号16と比較して増加する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)、少なくとも約0.88(88%)、少なくとも約0.89(89%)、少なくとも約0.90(90%)、または少なくとも約.91(91%)であるヒトコドン適応指数を有する。特定の一実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.88(88%)であるヒトコドン適応指数を有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.91(91%)であるヒトコドン適応指数を有する。
【0284】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;ここで第二の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374または(ii)配列番号6の1792~2277および2320~4374と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;ここでN末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてヌクレオチド配列のヒトコドン適応指数は、配列番号16と比較して増加する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)、または少なくとも約0.88(88%)であるヒトコドン適応指数を有する。特定の一実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.83(83%)であるヒトコドン適応指数を有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.88(88%)であるヒトコドン適応指数を有する。
【0285】
他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;そしてヌクレオチド配列のヒトコドン適応指数は、配列番号16と比較して増加する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)、または少なくとも約0.88(88%)であるヒトコドン適応指数を有する。特定の一実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.75(75%)であるヒトコドン適応指数を有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.83(83%)であるヒトコドン適応指数を有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.88(88%)であるヒトコドン適応指数を有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.91(91%)であるヒトコドン適応指数を有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.97(97%)であるヒトコドン適応指数を有する。
【0286】
一部の実施形態では、本開示のFVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較して増加した最適コドン頻度(frequency of optimal codon)(FOP)を有する。ある特定の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列のFOPは、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約64、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約79、少なくとも約80、少なくとも約85、または少なくとも約90である。
【0287】
他の実施形態では、本開示のFVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較して増加した相対同義コドン使用頻度(relative synonymous codon usage)(RCSU)を有する。一部の実施形態では、単離された核酸分子のRCSUは、1.5を超える。他の実施形態では、単離された核酸分子のRCSUは、2.0を超える。ある特定の実施形態では、単離された核酸分子のRCSUは、少なくとも約1.5、少なくとも約1.6、少なくとも約1.7、少なくとも約1.8、少なくとも約1.9、少なくとも約2.0、少なくとも約2.1、少なくとも約2.2、少なくとも約2.3、少なくとも約2.4、少なくとも約2.5、少なくとも約2.6、または少なくとも約2.7である。
【0288】
さらに他の実施形態では、本開示のFVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較して減少したコドンの有効数を有する。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、約50より少ない、約45より少ない、約40より少ない、約35より少ない、約30より少ない、または約25より少ないコドンの有効数を有する。特定の一実施形態では、単離された核酸分子は、約40、約35、約30、約25、または約20のコドンの有効数を有する。
【0289】
B.G/C含量の最適化
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16におけるG/Cヌクレオチドのパーセンテージと比較してより高いパーセンテージのG/Cヌクレオチドを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、少なくとも約58%、少なくとも約59%、または少なくとも約60%であるG/C含量を有する。
【0290】
特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;ここでN末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてヌクレオチド配列は、配列番号16におけるG/Cヌクレオチドのパーセンテージと比較してより高いパーセンテージのG/Cヌクレオチドを含有する。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、または少なくとも約58%であるG/C含量を有する。特定の一実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、少なくとも約58%であるG/C含量を有する。
【0291】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第二の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374;(ii)配列番号6のヌクレオチド1792~4374;(iii)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374)、または(iv)配列番号6の1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;ここでN末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16のG/Cヌクレオチドのパーセンテージと比較してより高いパーセンテージのG/Cヌクレオチドを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、または少なくとも約57%であるG/C含量を有する。特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約52%であるG/C含量を有する。別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約55%であるG/C含量を有する。別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約57%であるG/C含量を有する。
【0292】
他の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列の(i)ヌクレオチド58~4374または(ii)ヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;そしてここでヌクレオチド配列は、配列番号16におけるG/Cヌクレオチドのパーセンテージと比較してより高いパーセンテージのG/Cヌクレオチドを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約45%であるG/C含量を有する。特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約52%であるG/C含量を有する。別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約55%であるG/C含量を有する。別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約57%であるG/C含量を有する。別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約58%であるG/C含量を有する。さらに別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約60%であるG/C含量を有する。
【0293】
「G/C含量」(またはグアニン-シトシン含量)、または「G/Cヌクレオチドのパーセンテージ」は、グアニンまたはシトシンのいずれかである、DNA分子中の窒素塩基のパーセンテージを指す。G/C含量は、以下の式:
【数1】
を使用して計算することができる。
【0294】
ヒト遺伝子のG/C含量は非常に不均一であり、一部の遺伝子は20%程度の低いG/C含量を有し、他の遺伝子は95%程の高いG/C含量を有する。一般的に、G/Cリッチな遺伝子は、より高度に発現される。実際に、遺伝子のG/C含量の増加が、遺伝子発現の増加を導く場合があり、これはほとんどが転写の増加とmRNAレベルが非常に安定した状態であることに起因することが実証されている。Kudlaら、PLoS Biol.、4(6):e180(2006)を参照のこと。
【0295】
C.マトリックス結合領域様配列
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ないMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大6、最大5、最大4、最大3、または最大2個のMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大1個のMARS/ARS配列を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含有しない。
【0296】
特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;ここでN末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ないMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、最大6、最大5、最大4、最大3、または最大2個のMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大1個のMARS/ARS配列を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含有しない。
【0297】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第二の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374;(ii)配列番号6のヌクレオチド1792~4374;(iii)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374);または(iv)配列番号6のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;ここでN末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ないMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大6、最大5、最大4、最大3、または最大2個のMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大1個のMARS/ARS配列を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含有しない。
【0298】
他の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでコドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、若しくは71のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、若しくは71のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;そしてここでコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ないMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大6、最大5、最大4、最大3、または最大2個のMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大1個のMARS/ARS配列を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含有しない。
【0299】
出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)自己複製配列(ARS)及び核マトリックス付着領域(MAR)と配列類似性を共有するヒトFVIIIヌクレオチド配列におけるATリッチエレメントが同定されている。(Fallux et al.、Mol. Cell. Biol. 16:4264-4272 (1996)。これらのエレメントのうちの1つは、インビトロで核内因子に結合し、そしてクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)レポーター遺伝子の発現を抑制することが実証されている。同上。これらの配列はヒトFVIII遺伝子の転写抑制に寄与する事ができるという仮設が立てられた。したがって、一実施形態において、全てのMAR/ARS配列は、本開示のFVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化ヌクレオチド配列において消失させられた。親FVIII配列(配列番号16)中に4つのMAR/ARS ATATTT配列(配列番号21)及び3つのMAR/ARS AAATAT配列(配列番号22)がある。最適化されたFVIII配列においてMAR/ARS配列を破壊するようにこれらの部位の全てを変異させた(配列番号1~6)。これらのエレメントの各々の位置、及び最適化された配列における対応するヌクレオチドの配列を以下の表3に示す。
【0300】
【0301】
D.不安定化配列
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ない不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の不安定化エレメントを含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含有しない。
【0302】
特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;ここでN末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ない不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の不安定化エレメントを含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含有しない。
【0303】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第二の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374;(ii)配列番号6のヌクレオチド1792~4374;(iii)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374);または(iv)配列番号6のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ない不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の不安定化エレメントを含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含有しない。
【0304】
他の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでコドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ない不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の不安定化エレメントを含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含有しない。
【0305】
親FVIII配列(配列番号16)には10個の不安定化エレメント:6個のATTTA配列(配列番号23)および4個のTAAAT配列(配列番号24)が存在する。一実施形態では、これらの部位の配列を変異して、最適化されたFVIIIの配列番号1~6、70、および71における不安定化エレメントを破壊した。これらのエレメントのそれぞれの位置、および最適化された配列における対応するヌクレオチドの配列を表3に示す。
【0306】
E.潜在的プロモーター結合部位
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ない潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含有しない。
【0307】
特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ない潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含有しない。
【0308】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第二の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374;(ii)配列番号6のヌクレオチド1792~4374;(iii)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374);または(iv)配列番号6のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ない潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含有しない。
【0309】
他の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16と比較してより少ない潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含有しない。
【0310】
TATAボックスは、真核生物のプロモーター領域において見出されることが多い調節配列である。これらは、一般的な転写因子であるTATA結合タンパク質(TBP)の結合部位としての役割を果たす。TATAボックスは、通常、配列TATAA(配列番号28)またはそれに近いバリアントを含む。しかしながら、コード配列内のTATAボックスは、全長タンパク質の翻訳を阻害し得る。野生型BDD FVIII配列(配列番号16)には、10個の潜在的プロモーター結合配列:5個のTATAA配列(配列番号28)および5個のTTATA配列(配列番号29)が存在する。一部の実施形態では、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4個のプロモーター結合部位が、本開示のFVIII遺伝子において消失する。一部の実施形態では、少なくとも5個のプロモーター結合部位が、本開示のFVIII遺伝子において消失する。他の実施形態では、少なくとも6、少なくとも7、または少なくとも8個のプロモーター結合部位が、本開示のFVIII遺伝子において消失する。一実施形態では、少なくとも9個のプロモーター結合部位が、本開示のFVIII遺伝子において消失する。特定の一実施形態では、全てのプロモーター結合部位が、本開示のFVIII遺伝子において消失する。各潜在的プロモーター結合部位の位置および最適化された配列における対応するヌクレオチドの配列を表3に示す。
【0311】
F.他のCis作用型ネガティブ調節エレメント
上述のMAR/ARS配列、不安定化エレメント、および潜在的プロモーター部位に加えて、いくつかのさらなる潜在的阻害配列を、野生型BDD FVIII配列(配列番号16)において特定することができる。2つのAUリッチ配列エレメント(ARE)を、最適化されていないBDD FVIII配列におけるポリA部位(AAAAAAA;配列番号26)、ポリT部位(TTTTTT;配列番号25)、およびスプライス部位(GGTGAT;列番号27)と一緒に特定することができる(ATTTTATT(配列番号30);およびATTTTTAA(配列番号31))。1つまたはそれ以上のこれらのエレメントは、最適化されたFVIII配列から除去することができる。これらの部位のそれぞれの位置および最適化された配列における対応するヌクレオチドの配列を表3に示す。
【0312】
ある特定の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、1つまたはそれ以上のcis作用型ネガティブ調節エレメント、例えば、スプライス部位、ポリT配列、ポリA配列、ARE配列、またはそれらの任意の組合せを含有しない。
【0313】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第二の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374;(ii)配列番号6のヌクレオチド1792~4374;(iii)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374);または(iv)配列番号6のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、1つまたはそれ以上のcis作用型ネガティブ調節エレメント、例えば、スプライス部位、ポリT配列、ポリA配列、ARE配列、またはそれらの任意の組合せを含有しない。
【0314】
他の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、1つまたはそれ以上のcis作用型ネガティブ調節エレメント、例えば、スプライス部位、ポリT配列、ポリA配列、ARE配列、またはそれらの任意の組合せを含有しない。
【0315】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、スプライス部位GGTGAT(配列番号27)を含有しない。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、ポリT配列(配列番号25)を含有しない。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、ポリA配列(配列番号26)を含有しない。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第一の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第二の核酸配列を含み;ここで第一の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、AREエレメント(配列番号30または配列番号31)を含有しない。
【0316】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでコドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、スプライス部位GGTGAT(配列番号27)を含有しない。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでコドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、ポリT配列(配列番号25)を含有しない。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ここでコドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、ポリA配列(配列番号26)を含有しない。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインフラグメントをコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)に対して、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;そしてコドン最適化されたヌクレオチド配列は、AREエレメント(配列番号30または配列番号31)を含有しない。
【0317】
他の実施形態では、本開示の最適化されたFVIII配列は、1つまたはそれ以上の抗ウイルスモチーフ、ステムループ構造、およびリピート配列を含まない。
【0318】
さらに他の実施形態では、転写開始部位を囲むヌクレオチドを、コザックコンセンサス配列(GCCGCCACCATGC(配列番号32)、配列中、下線を付したヌクレオチドは開始コドンである。)に変更する。他の実施形態では、クローニングプロセスを促進するために制限部位を付加または除去してもよい。
【0319】
b.FIXタンパク質をコードするFIXおよびポリヌクレオチド配列
一部の実施形態では、核酸分子は、第一のITR、第二のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、ここで標的配列は治療用タンパク質をコードし、治療用タンパク質はFIXポリペプチドを含む。一部の実施形態では、FIXポリペプチドは、FIXまたはそのバリアントもしくはフラグメントを含み、FIXまたはそのバリアントもしくはフラグメントは、FIX活性を有する。
【0320】
ヒトFIXは、血液凝固カスケードの内因的経路の重要な構成成分であるセリンプロテアーゼである。「第IX因子」または「FIX」は、本明細書で使用されるように、凝固因子タンパク質ならびにその種および配列バリアントを指し、これらとしては、限定されないが、ヒトFIX前駆体ポリペプチド(「プレプロ」)の461単鎖アミノ酸配列、成熟ヒトFIX(配列番号125)の415単鎖アミノ酸配列、およびR338L FIX(Padua)バリアント(配列番号126)が挙げられる。FIXは、血液凝固FIXの典型的な特徴を有する任意の形態のFIX分子を含む。本明細書で使用されるように、「第IX因子」および「FIX」は、ドメインGla(γ-カルボキシグルタミン酸残基を含有する領域)、EGF1およびEGF2(ヒト上皮成長因子と相同な配列を含有する領域)、活性化ペプチド(成熟FIXの残基R136~R180によって形成される「AP」)、およびC末端プロテアーゼドメイン(「Pro」)、もしくは当技術分野で公知のこれらのドメインのシノニムを含むポリペプチドを包含することを意図されるか、またはネイティブタンパク質の生体活性の少なくとも一部を保持するトランケートされたフラグメントもしくは配列バリアントであり得る。FIXまたは配列バリアントは、米国特許第4,770,999号および同第7,700,734号に記載されているようにクローニングされ、ヒトFIXをコードするcDNAが単離、特徴付けされ、そして発現ベクターへとクローニングされている(例えば、Chooら、Nature 299:178~180(1982);Fairら、Blood 64:194~204(1984);およびKurachiら、Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.79:6461~6464(1982)を参照のこと)。Simioniら、2009によって特徴付けられるFIXの1つの特定のバリアントである、R338L FIX(Padua)バリアント(配列番号2)は、ネイティブFIXに対してPaduaバリアントの活性がほぼ8倍増加して相関する機能獲得型変異を含む(表4)。FIXバリアントは、FIXポリペプチドのFIX活性に影響を及ぼさない1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する任意のFIXポリペプチドも含むことができる。一部の実施形態では、FIXバリアントは、切断可能なリンカーによって融合したrFIXアルブミン、例えば、IDELVION(登録商標)を含む。参照によってその全体として本明細書に組み入れる、US7,939,632を参照のこと。
【0321】
【0322】
FIXポリペプチドは、55kDaであり、3つの領域:28アミノ酸のシグナルペプチド(配列番号127のアミノ酸1から28)、グルタミン酸残基のガンマカルボキシル化に必要とされる18アミノ酸のプロペプチド(アミノ酸29から46)、および415アミノ酸の成熟した第IX因子(配列番号125または126)から構成されるプレプロポリペプチド(prepropolypetide)鎖(配列番号125)として合成される。プロペプチドは、ガンマカルボキシグルタメートドメインに対してN末端の18アミノ酸残基の配列である。プロペプチドは、ビタミンK依存性ガンマカルボキシラーゼに結合し、次いで、内因性プロテアーゼ、最も可能性が高いものとして、フューリンまたはPCSK3としても公知であるPACE(対合塩基性アミノ酸切断酵素)によって、FIXの前駆体ポリペプチドから切断される。ガンマカルボキシル化しなければ、Glaドメインは、負に帯電したリン脂質表面にタンパク質をつなぎとめるのに必要な正確な立体配座を取るためにカルシウムに結合することができず、それによって、第IX因子は非機能的となる。カルボキシル化される場合でさえ、Glaドメインはまた、適切な機能のためのプロペプチドの開裂に依存しており、これは、保持されたプロペプチドが、カルシウムおよびリン脂質に対する最適な結合に必要なGlaドメインの立体配座変化に干渉するためである。ヒトでは、結果として生じる成熟した第IX因子は、肝細胞によって、およそ17重量%の炭水化物を含有する415アミノ酸残基の単鎖タンパク質である不活性な酵素前駆体として、血流中に分泌される(Schmidt,A.E.ら(2003)Trends Cardiovasc Med、13:39)。
【0323】
成熟FIXは、NからC末端の立体配置において、GLAドメイン、EGF1ドメイン、EGF2ドメイン、活性化ペプチド(AP)ドメイン、およびプロテアーゼ(または触媒)ドメインであるいくつかのドメインから構成される。短いリンカーは、APドメインを含むEGF2ドメインに接続する。FIXは、それぞれ、R145~A146およびR180~V181によって形成される2つの活性化ペプチドを含有する。活性化の後、単鎖FIXは、2つの鎖がジスルフィド結合によって連結される2鎖分子となる。凝固因子を、それらの活性化ペプチドを置き換えることによって操作し、活性化特異性の変更をもたらすことができる。哺乳動物では、成熟FIXは、第IXa因子を得るために、活性化した第XI因子によって活性化されなければならない。FIXからFIXaへの活性化の際に、プロテアーゼドメインは、FIXの触媒活性をもたらす。活性化した第VIII因子(FVIIIa)は、FIXa活性の全発現に対する特異的補因子である。
【0324】
ある特定の実施形態では、FIXポリペプチドは、血漿由来のFIXのThr148対立形質を含み、内因性FIXに類似する構造的かつ機能的特徴を有する。
【0325】
多くの機能的FIXバリアントが当技術分野で公知である。国際特許出願公開第WO02/040544A3号は、4頁、9~30行および15頁、6~31行に、ヘパリンによる阻害に対する耐性の増加を呈する変異体を開示している。国際特許出願公開第WO03/020764A2号は、表2および3(14~24頁)、および12頁、1~27行に、T細胞の免疫原性が低下したFIX変異体を開示している。国際特許出願公開第WO2007/149406A2号は、4頁、1行から19頁、11行に、タンパク質安定性の増加、インビボおよびインビトロ半減期の増加、ならびにプロテアーゼに対する耐性の増加を呈する機能的変異体のFIX分子を開示している。WO2007/149406A2は、19頁、12行から20頁、9行に、キメラおよび他のバリアントFIX分子も開示している。国際特許出願公開第WO08/118507A2号は、5頁、14行から6頁、5行に、凝固活性の増加を呈するFIX変異体を開示している。国際特許出願公開第WO09/051717A2号は、9頁、11行から20頁、2行に、半減期の増加および/または回復をもたらすN連結および/またはO連結グリコシル化部位数が増加したFIX変異体を開示している。国際特許出願公開第WO09/137254A2号は、2頁、段落[006]から5頁、段落[011]および16頁、段落[044]から24頁、段落[057]に、グリコシル化部位数の増加した第IX因子変異体を開示している。国際特許出願公開第WO09/130198A2号は、4頁、26行から12頁、6行に、半減期の増加をもたらす、グリコシル化部位数が増加した機能的変異体FIX分子を開示している。国際特許出願公開第WO09/140015A2号は、11頁、段落[0043]から13頁、段落[0053]に、ポリマー(例えば、PEG)のコンジュゲーションのために使用することができるCys残基数の増加した機能的FIX変異体を開示している。2011年7月11日に出願され、2012年1月12日にWO2012/006624として公開された国際特許出願第PCT/US2011/043569号に記載されたFIXポリペプチドはまた、参照によってその全体として本明細書に組み入れる。一部の実施形態では、FIXポリペプチドは、アルブミンに融合したFIXポリペプチド、例えば、FIX-アルブミンを含む。ある特定の実施形態では、FIXポリペプチドは、IDELVION(登録商標)またはrIX-FPである。
【0326】
さらに、FIXにおける数百もの非機能的変異が、血友病対象において同定され、それらの多くは、国際特許出願公開第WO09/137254A2号の11~14頁の表6に開示されている。このような非機能的変異は、本発明に含まれないが、変異が機能的FIXポリペプチドを生じる可能性が多少ある追加のガイダンスを提供する。
【0327】
一実施形態では、FIXポリペプチド(または融合ポリペプチドの第IX因子部分)は、配列番号1もしくは2に示す配列(配列番号125または126のアミノ酸1から415)、またはあるいは、プロペプチド配列、もしくはプロペプチドおよびシグナル配列(全長のFIX)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、FIXポリペプチドは、配列番号2に示す配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0328】
FIX凝固活性は、国際単位(IU)として表される。FIX活性の1IUは、正常なヒト血漿1ミリリットル中のFIXの量に概ね相当する。一段階凝固アッセイ(活性化部分トロンボプラスチン時間;aPTT)、トロンビン生成時間(TGA)および回転トロンボエラストメトリー(ROTEM(登録商標))を含む、FIX活性を測定するためのいくつかのアッセイが利用可能である。本発明は、FIXの生体活性もしくは生物学的機能の少なくとも一部を保持し、かつ/または凝固因子に関連する疾患、欠乏症、障害もしくは状態(例えば、外傷、手術に関連する、凝固因子の欠乏症に関する出血エピソード)を予防、処置、媒介、もしくは軽快するのに有用な、天然の、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、哺乳動物(飼育動物を含む)に由来するFIX配列、配列フラグメントに対して相同性を有する配列、および非天然の配列バリアントを企図する。ヒトFIXに対して相同性を有する配列は、標準的な相同性検索技術、例えば、NCBI BLASTによって見出され得る。
【0329】
ある特定の実施形態では、FIX配列は、コドン最適化されている。コドン最適化されたFIX配列の例として、これらに限定されないが、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、国際公開第WO2016/004113 A1号の配列番号1および54~58が挙げられる。
【0330】
c.FVIIおよびFVIIタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列
一部の実施形態では、核酸分子は、第一のITR、第二のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、ここで標的配列は治療用タンパク質をコードし、治療用タンパク質は第VII因子ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、FVIIポリペプチドは、FVIIまたはFVII活性を有するそのバリアントもしくはフラグメントを含む。
【0331】
「第VII因子」(「FVII」、または「F7」;第7因子、凝固因子VII、血清因子VII、血清プロトロンビン変換促進剤、SPCA、プロコンベルチンおよびエプタコグアルファとも称される)は、凝固カスケードの一部であるセリンプロテアーゼである。一実施形態では、本明細書に記載の核酸における凝固因子は、FVIIである。組換え活性型第VII因子(「FVII」)は、血友病AもしくはB、第XI凝固因子、FVIIの欠乏症、不完全な血小板機能、血小板減少症、またはフォンビルブランド病を有する患者において起こるものなどの大出血の処置に広く使用されるようになった。
【0332】
組換え活性型FVII(rFVIIa;NOVOSEVEN(登録商標))は、(i)FVIIIまたはFIXに対する中和抗体(阻害剤)を有する血友病患者、(ii)FVII欠乏症を有する患者、または(iii)血友病AもしくはBを有する患者における出血エピソードを、外科手技を経て、阻害剤で処置するために使用される。しかしながら、NOVOSEVEN(登録商標)は、不十分な効能しか示さない。組織因子の非存在下での活性化血小板に対する低い親和性、短い半減期、および不十分な酵素活性によって、出血を制御するために、高濃度でのFVIIaの繰り返し投与が必要とされることが多い。したがって、FVIIIおよびFIX阻害剤を有するおよび/またはFVII欠損症を有する血友病患者に対するより良い処置および予防の選択肢には、満たされていない医学的需要が存在する。
【0333】
一実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIの成熟形態またはそのバリアントをコードする。FVIIは、Glaドメイン、2つのEGFドメイン(EGF-1およびEGF-2)、および、例えば、キモトリプシンに関するような、セリンプロテアーゼのペプチダーゼS1ファミリーの全メンバーの間で高度に保存されているセリンプロテアーゼドメイン(またはペプチダーゼS1ドメイン)を含む。FVIIは、単鎖酵素前駆体(すなわち、活性化可能なFVII)および十分に活性化した二本鎖形態として生じる。
【0334】
C.増殖因子
一部の実施形態では、核酸分子は、第一のITR、第二のITR、および評定配列をコードする遺伝子カセットを含み、ここで標的配列は治療用タンパク質をコードし、そして治療用タンパク質は増殖因子を含む。増殖因子は、当技術分野で公知の任意の増殖因子から選択することができる。一部の実施形態では、増殖因子はホルモンである。他の実施形態では、増殖因子はサイトカインである。一部の実施形態では、増殖因子はケモカインである。
【0335】
一部の実施形態では、増殖因子はアドレノメデュリン(AM)である。一部の実施形態では、増殖因子はアンギオポエチン(Ang)である。一部の実施形態では、増殖因子は自己分泌型細胞運動刺激因子である。一部の実施形態では、増殖因子は骨形成タンパク質(BMP)である。一部の実施形態では、BMPは、BMP2、BMP4、BMP5、およびBMP7から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は毛様体神経栄養因子ファミリーのメンバーである。一部の実施形態では、毛様体神経栄養因子ファミリーのメンバーは、毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病阻害因子(LIF)、インターロイキン-6(IL-6)から選択される。一部の実施形態では、増殖因子はコロニー刺激因子である。一部の実施形態では、コロニー刺激因子は、マクロファージコロニー刺激因子(m-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は上皮増殖因子(EGF)である。一部の実施形態では、増殖因子はエフリンである。一部の実施形態では、エフリンは、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、およびエフリンB3から選択される。一部の実施形態では、増殖因子はエリスロポエチン(EPO)である。一部の実施形態では、増殖因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)である。一部の実施形態では、FGFは、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、およびFGF23から選択される。一部の実施形態では、増殖因子はウシ胎仔ソマトトロピン(FBS)である。一部の実施形態では、増殖因子はGDNFファミリーメンバーである。一部の実施形態では、GDNFファミリーメンバーは、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、パーセフィン、およびアルテミンから選択される。一部の実施形態では、増殖因子は成長分化因子-9(GDF9)である。一部の実施形態では、増殖因子は肝細胞増殖因子(HGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は肝細胞腫由来増殖因子(HDGF)である。一部の実施形態では、増殖因子はインスリンである。一部の実施形態では、増殖因子はインスリン様増殖因子である。一部の実施形態では、インスリン様増殖因子はインスリン様増殖因子-1(IGF-1)またはIGF-2である。一部の実施形態では、増殖因子はインターロイキン(IL)である。一部の実施形態では、ILは、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、およびIL-7から選択される。一部の実施形態では、増殖因子はケラチノサイト増殖因子(KGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は遊走刺激因子(MSF)である。一部の実施形態では、増殖因子はマクロファージ刺激タンパク質(MSPまたは肝細胞増殖因子様タンパク質(HGFLP))である。一部の実施形態では、増殖因子はミオスタチン(GDF-8)である。一部の実施形態では、増殖因子はニューレグリンである。一部の実施形態では、ニューレグリンは、ニューレグリン1(NRG1)、NRG2、NRG3、およびNRG4から選択される。一部の実施形態では、増殖因子はニューロトロフィンである。一部の実施形態では、増殖因子は脳由来神経栄養因子(BDNF)である。一部の実施形態では、増殖因子は神経成長因子(NGF)である。一部の実施形態では、NGFは、ニューロトロフィン-3(NT-3)またはNT-4である。一部の実施形態では、増殖因子は胎盤増殖因子(PGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は血小板由来増殖因子(PDGF)である。一部の実施形態では、増殖因子はレナラーゼ(RNLS)である。一部の実施形態では、増殖因子はT細胞増殖因子(TCGF)である。一部の実施形態では、増殖因子はトロンボポエチン(TPO)である。一部の実施形態では、増殖因子は形質転換増殖因子である。一部の実施形態では、形質転換増殖因子は形質転換増殖因子-アルファ(TGF-α)またはTGF-βである。一部の実施形態では、増殖因子は腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)である。一部の実施形態では、増殖因子は血管内皮増殖因子(VEGF)である。
【0336】
D.マイクロRNA(miRNA)
マイクロRNA(miRNA)は、翻訳を阻害するかまたはメッセンジャーRNA(mRNA)の分解を誘導することによって、遺伝子発現を負に調節する非コードRNA小分子(約18~22ヌクレオチド)である。これらの発見以来、miRNAは、アポトーシス、分化および細胞増殖を含む様々な細胞プロセスに関係し、発癌において重要な役割を果たすことが示されてきた。遺伝子発現を調節するmiRNAの能力によって、miRNAのインビボでの発現は遺伝子療法において有益なツールとなる。
【0337】
本開示のある特定の態様は、第一のITR、第二のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含むプラスミド様核酸分子に関し、ここで標的配列はmiRNAをコードし、そして第一のITRおよび/または第二のITRが、非アデノ随伴ウイルスのITRである(例えば、第一のITRおよび/または第二のITRは、非AAVに由来する)。miRNAは、当技術分野で公知のいずれのmiRNAでもよい。一部の実施形態では、miRNAは、標的遺伝子の発現を下方調節する。ある特定の実施形態では、標的遺伝子は、SOD1、HTT、RHO、またはそれらの任意の組合せから選択される。
【0338】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは1つのmiRNAをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは1つより多いmiRNAをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは2つまたはそれ以上の異なるmiRNAをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、同一のmiRNAのうちの2つまたはそれ以上の複製をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、同一の治療用タンパク質のうちの2つまたはそれ以上のバリアントをコードする。ある特定の実施形態では、遺伝子カセットは、1つまたはそれ以上のmiRNAおよび1つまたはそれ以上の治療用タンパク質をコードする。
【0339】
一部の実施形態では、miRNAは、天然に存在するmiRNAである。一部の実施形態では、miRNAは、操作されたmiRNAである。一部の実施形態では、miRNAは、人工的miRNAである。ある特定の実施形態では、miRNAは、Eversら、Molecular Therapy 26(9):1~15頁(2018年6月に印刷に先立って電子的に公開された)に開示されているmiHTTにより操作されたmiRNAを含む。ある特定の実施形態では、miRNAは、Dirrenら、Annals of Clinical and Translational Neurology 2(2):167~84頁(2015年2月)に開示されているmiR SOD1という人工的miRNAを含む。ある特定の実施形態では、miRNAは、RHOを標的とするmiR-708を含む(Behrmanら、JCB 192(6):919~27頁(2011)を参照のこと)。
【0340】
一部の実施形態では、miRNAは、遺伝子の阻害因子の発現を下方調節することによって遺伝子の発現を上方調節する。一部の実施形態では、阻害因子は、天然の、例えば、野生型の阻害因子である。一部の実施形態では、阻害因子は、変異した、異種の、および/また誤って発現した遺伝子に起因する。
【0341】
E.異種部分
一部の実施形態では、核酸分子は、第一のITR、第二のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、ここで標的配列は治療用タンパク質をコードし、治療用タンパク質は少なくとも1つの異種部分を含む。一部の実施形態では、異種部分は、治療用タンパク質のN末端またはC末端に融合される。他の実施形態では、異種部分は、治療用タンパク質内の2つのアミノ酸の間に挿入される。
【0342】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIポリペプチドおよびFVIIIポリペプチド内の2つのアミノ酸の間に挿入される異種部分を含む。一部の実施形態では、異種部分は、表5から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位で、FVIIIポリペプチド内に挿入される。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、国際特許出願公開第WO2013/123457A1号、同第WO2015/106052A1号または米国出願公開第2015/0158929A1号に開示されている任意の部位で、本開示の核酸分子によってコードされる凝固因子ポリペプチド内に挿入され得る。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIおよび異種部分を含み、ここで異種部分は、成熟FVIIIに対してアミノ酸745のすぐ下流でFVIII内に挿入される。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIおよびXTENを含み、XTENは、成熟FVIIIに対してアミノ酸745のすぐ下流でFVIII内に挿入される。特定の一実施形態では、FVIIIは、ヒト成熟FVIII(配列番号15)に対応する、746~1646位のアミノ酸の欠失を含み、そして異種部分はヒト成熟FVIII(配列番号15)に対応する、アミノ酸745のすぐ下流に挿入される。
【0343】
【0344】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、FIXポリペプチドおよびFIXポリペプチド内の2つのアミノ酸の間に挿入される異種部分を含む。一部の実施形態では、異種部分は、表5から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位でFIXポリペプチド内に挿入される。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、国際特許出願第PCT/US2017/015879号に開示される任意の部位で、本開示の核酸分子によってコードされる凝固因子ポリペプチド内に挿入され得る。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FIXポリペプチドおよび異種部分を含み、異種部分は、成熟FIXに対してアミノ酸166のすぐ下流でFIXポリペプチド内に挿入される。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FIXポリペプチドおよびXTENを含み、ここでXTENは、成熟FVIIIに対してアミノ酸166のすぐ下流でFIX内に挿入される。
【0345】
【0346】
他の実施形態では、本開示の治療用タンパク質は、2、3、4、5、6、7、または8個の異種ヌクレオチド配列をさらに含む。一部の実施形態では、全ての異種部分は同一である。一部の実施形態では、少なくとも1つの異種部分は他の異種部分と異なる。一部の実施形態では、本開示は、2、3、4、5、6個、または7個より多い異種部分をタンデムに含んでいてもよい。
【0347】
一部の実施形態では、異種部分は、治療用タンパク質の半減期を増加させる(「半減期延長剤」である)。
【0348】
一部の実施形態では、異種部分は、本開示のタンパク質に組み込まれた場合に、インビボ半減期の延長と関連する非構造的特徴または構造的特徴のいずれかを有するペプチドまたはポリペプチドである。非限定例として、アルブミン、アルブミンフラグメント、免疫グロブリンのFcフラグメント、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、HAP配列、XTEN配列、トランスフェリンもしくはそのフラグメント、PASポリペプチド、ポリグリシンリンカー、ポリセリンリンカー、アルブミン結合部分、またはこれらのポリペプチドの任意のフラグメント、誘導体、バリアント、もしくは組合せが挙げられる。特定の一実施形態では、異種アミノ酸配列は、免疫グロブリン定常領域もしくはその一部、トランスフェリン、アルブミン、またはPAS配列である。一部の態様では、異種部分は、フォンビルブランド因子またはそのフラグメントを含む。他の関連する態様では、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸、またはこれらのエレメントの任意の誘導体、バリアント、もしくは組合せのような非ポリペプチド部分に対する結合部位(例えば、システインアミノ酸)を含んでいてもよい。一部の態様では、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸、またはこれらのエレメントの任意の誘導体、バリアント、もしくは組合せのような非ポリペプチド部分に対する結合部位として機能するシステインアミノ酸を含む。
【0349】
具体的な一実施形態では、第一の異種部分は、当技術分野で公知の半減期延長分子であり、第二の異種部分は、当技術分野で公知の半減期延長分子である。ある特定の実施形態では、第一の異種部分(例えば、第一のFc部分)および第二の異種部分(例えば、第二のFc部分)は、互いに会合して二量体を形成する。一実施形態では、第二の異種部分は第二のFc部分であり、ここで第二のFc部分は、第一の異種部分、例えば、第一のFc部分に連結するかまたはそれと会合する。例えば、第二の異種部分(例えば、第二のFc部分)は、リンカーによって第一の異種部分(例えば、第一のFc部分)に連結されるかまたは共有結合もしくは非共有結合によって第一の異種部分と会合することができる。
【0350】
一部の実施形態では、異種部分は、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも1100、少なくとも約1200、少なくとも約1300、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600、少なくとも約1700、少なくとも約1800、少なくとも約1900、少なくとも約2000、少なくとも約2500、少なくとも約3000、または少なくとも約4000個のアミノ酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるポリペプチドである。他の実施形態では、異種部分は、約100から約200個のアミノ酸、約200から約300個のアミノ酸、約300から約400個のアミノ酸、約400から約500個のアミノ酸、約500から約600個のアミノ酸、約600から約700個のアミノ酸、約700から約800個のアミノ酸、約800から約900個のアミノ酸、または約900から約1000個のアミノ酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるポリペプチドである。
【0351】
ある特定の実施形態では、異種部分は、その生体活性または機能に重大な影響を及ぼすことなく、治療用タンパク質の1つまたはそれ以上の薬物動態特性を改善する。
【0352】
ある特定の実施形態では、異種部分は、本開示の治療用タンパク質のインビボおよび/またはインビトロ半減期を増加させる。他の実施形態では、異種部分は、本開示の治療用タンパク質またはそのフラグメント(例えば、FVIIIタンパク質のタンパク質切断後の異種部分を含むフラグメント)の可視化または局在化を促進する。本開示の治療用タンパク質またはそのフラグメントの可視化および/または位置は、インビボ、インビトロ、エクスビボ、またはこれらの組合せである。
【0353】
他の実施形態では、異種部分は、本開示の治療用タンパク質またはそのフラグメント(例えば、治療用タンパク質、例えば、凝固因子のタンパク質切断後の異種部分を含むフラグメント)の安定性を増加させる。本明細書で使用されるように、用語「安定性」は、環境条件(例えば、温度上昇または低下)に応じて、治療用タンパク質の1つまたはそれ以上の物理特性の維持についての当技術分野で認識される尺度を指す。ある特定の態様では、物理特性は、治療用タンパク質の共有結合による構造の維持(例えば、タンパク質分解、望ましくない酸化または脱アミド化のないこと)である。他の態様では、物理特性は、正確にフォールディングされた状態の治療用タンパク質の存在(例えば、可溶性または不溶性の凝集または沈殿のないこと)でもある。一態様では、治療用タンパク質の安定性は、治療用タンパク質の生体物理特性、例えば、温度安定性、pHアンフォールディングプロファイル、グリコシル化の安定な除去、溶解度、生化学的機能(例えば、タンパク質、レセプターまたはリガンドに結合する能力)など、および/またはこれらの組合せをアッセイすることにより測定される。別の態様では、生化学的機能は、相互作用の結合親和性により実証される。一態様では、タンパク質安定性の尺度は、熱安定性、すなわち、熱の負荷に対する耐性である。安定性は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、DLS(動的光散乱)などのような当技術分野で公知の方法を使用して測定することができる。熱安定性を測定する方法として、これらに限定されないが、示差走査熱量測定(DSC)、示差走査蛍光定量(DSF)、円二色性(CD)、および熱負荷アッセイが挙げられる。
【0354】
ある特定の態様では、本開示の核酸分子によってコードされる治療用タンパク質は、少なくとも1つの半減期延長剤、すなわち、治療用タンパク質のインビボ半減期を、異種部分を欠く対応する治療用タンパク質のインビボ半減期に対して増加させる、このような異種部分を含む。治療用タンパク質のインビボ半減期は、当業者に公知の任意の方法、例えば、活性アッセイ(例えば、治療用タンパク質がFVIIIポリペプチドを含む発色アッセイまたは一段階凝固aPTTアッセイ)、ELISA、ROTEM(登録商標)などによって決定することができる。
【0355】
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の半減期延長剤の存在は、治療用タンパク質の半減期を、このような1つまたはそれ以上の半減期延長剤を欠く対応するタンパク質の半減期と比較して増加させる。半減期延長剤を含む治療用タンパク質の半減期は、このような半減期延長剤を欠く対応する治療用タンパク質のインビボ半減期より、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、または少なくとも約12倍長い。
【0356】
一実施形態では、半減期延長剤を含む治療用タンパク質の半減期は、このような半減期延長剤を欠く対応するタンパク質のインビボ半減期より、約1.5倍から約20倍、約1.5倍から約15倍、または約1.5倍から約10倍長い。別の実施形態では、半減期延長剤を含む治療用タンパク質の半減期は、このような半減期延長剤を欠く対応するタンパク質のインビボ半減期と比較して、約2倍から約10倍、約2倍から約9倍、約2倍から約8倍、約2倍から約7倍、約2倍から約6倍、約2倍から約5倍、約2倍から約4倍、約2倍から約3倍、約2.5倍から約10倍、約2.5倍から約9倍、約2.5倍から約8倍、約2.5倍から約7倍、約2.5倍から約6倍、約2.5倍から約5倍、約2.5倍から約4倍、約2.5倍から約3倍、約3倍から約10倍、約3倍から約9倍、約3倍から約8倍、約3倍から約7倍、約3倍から約6倍、約3倍から約5倍、約3倍から約4倍、約4倍から約6倍、約5倍から約7倍、または約6倍から約8倍延長される。
【0357】
他の実施形態では、半減期延長剤を含む治療用タンパク質の半減期は、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、少なくとも約34時間、少なくとも約35時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、少なくとも約72時間、少なくとも約84時間、少なくとも約96時間、または少なくとも約108時間である。
【0358】
さらに他の実施形態では、半減期延長剤を含む治療用タンパク質の半減期は、約15時間から約2週間、約16時間から約1週間、約17時間から約1週間、約18時間から約1週間、約19時間から約1週間、約20時間から約1週間、約21時間から約1週間、約22時間から約1週間、約23時間から約1週間、約24時間から約1週間、約36時間から約1週間、約48時間から約1週間、約60時間から約1週間、約24時間から約6日間、約24時間から約5日間、約24時間から約4日間、約24時間から約3日間、または約24時間から約2日間である。
【0359】
一部の実施形態では、半減期延長剤を含む治療用タンパク質の対象当たりの平均半減期は、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間(1日間)、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約40時間、約44時間、約48時間(2日間)、約54時間、約60時間、約72時間(3日間)、約84時間、約96時間(4日間)、約108時間、約120時間(5日間)、約6日間、約7日間(1週間)、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、または約14日間である。
【0360】
1つまたはそれ以上の半減期延長剤を治療用タンパク質のC末端もしくはN末端に融合させるかまたは治療用タンパク質内に挿入することができる。
【0361】
1.免疫グロブリン定常領域またはその一部
別の態様では、異種部分は、1つまたはそれ以上の免疫グロブリン定常領域またはその部分(例えば、Fc領域)を含む。一実施形態では、本開示の単離された核酸分子は、免疫グロブリン定常領域またはその一部をコードする異種核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその部分は、Fc領域である。
【0362】
免疫グロブリン定常領域は、CH(定常重鎖)ドメイン(CH1、CH2など)で示されるドメインから構成される。アイソタイプ、(すなわち、IgG、IgM、IgA IgD、またはIgE)に応じて、定常領域は、3つまたは4つのCHドメインから構成され得る。いくつかのアイソタイプ(例えば、IgG)定常領域はヒンジ領域も含有する。Janewayら 2001年、Immunobiology,Garland Publishing,N.Y.、N.Y.を参照のこと。
【0363】
本開示の免疫グロブリン定常領域またはその一部は、多数の異なる供給源から得ることができる。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部はヒト免疫グロブリンに由来する。しかしながら、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来し得ることが理解される。さらに、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、およびIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来し得る。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1が使用される。
【0364】
種々の免疫グロブリン定常領域の遺伝子配列(例えば、ヒト定常領域の遺伝子配列)が、公開でアクセス可能な寄託物の形態で利用可能である。特定のエフェクター機能を有する(または特定のエフェクター機能を欠く)か免疫原性を低下させる特定の改変を伴う定常領域ドメインの配列を選択することができる。抗体および抗体をコードする遺伝子の多くの配列が公開されており、好適なIg定常領域の配列(例えば、ヒンジ、CH2、および/もしくはCH3配列、またはその部分)は、技術分野で認識される技法を使用して、これらの配列から導出され得る。次いで、前述の方法のいずれかを使用して得られる遺伝子材料を変更または合成して、本開示のポリペプチドを得ることができる。さらに当然のことながら、この開示の範囲は、定常領域のDNA配列の対立遺伝子、バリアントおよび変異を包含する。
【0365】
免疫グロブリン定常領域またはその一部の配列は、例えば、目的のドメインを増幅するために選択されるポリメラーゼ連鎖反応およびプライマーを使用してクローニングすることができる。抗体から免疫グロブリン定常領域またはその一部の配列をクローニングするために、mRNAを、ハイブリドーマ、脾臓、またはリンパ細胞から単離し、DNAに逆転写し、そしてPCRによって抗体の遺伝子を増幅させることができる。PCR増幅方法は、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;同第4,800,159号;同第4,965,188号;および、例えば、「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」Innisら編、Academic Press、San Diego、CA(1990);Hoら 1989.Gene 77:51;Hortonら 1993.Methods Enzymol.217:270頁に詳述されている。PCRは、コンセンサス定常領域プライマーによってまたは公開された重鎖および軽鎖のDNAおよびアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーによって開始することができる。PCRは、抗体の軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離するためにも使用することができる。この場合には、コンセンサスプライマーまたはマウス定常領域のプローブのようなより大きな相同なプローブによって、ライブラリーをスクリーニングすることができる。抗体遺伝子の増幅に好適な多数のプライマーセットが当技術分野で公知である(例えば、精製抗体のN末端配列に基づく5’プライマー(BenharおよびPastan.1994.Protein Engineering 7:1509);cDNA末端の迅速増幅(Ruberti,F.ら 1994.J.Immunol.Methods 173:33);抗体リーダー配列(Larrickら 1989 Biochem.Biophys.Res.Commun.160:1250)。抗体配列のクローニングは、参照によって本明細書に組み入れる、1995年1月25日に出願されたNewmanらの米国特許第5,658,570号にさらに記載される。
【0366】
本明細書で使用される免疫グロブリン定常領域は、全てのドメインおよびヒンジ領域またはそれらの部分を含むことができる。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、およびヒンジ領域、すなわち、Fc領域またはFcRn結合パートナーを含む。
【0367】
本明細書で使用されるように、用語「Fc領域」は、ネイティブIgのFc領域に対応するポリペプチドの部分として、すなわち、その2つの重鎖のそれぞれのFcドメインの二量体会合によって形成されるような部分として定義される。ネイティブFc領域は、別のFc領域とホモ二量体を形成する。対照的に、用語「遺伝子的に融合されるFc領域」または「単鎖Fc領域」(scFc領域)は、本明細書で使用されるように、単一ポリペプチド鎖内で遺伝子的に連結される(すなわち、単一の連続の遺伝子配列でコードされる)Fcドメインから構成される合成の二量体Fc領域を指す。参照によってその全体として本明細書に組み入れる、国際公開第WO2012/006635号を参照のこと。
【0368】
一実施形態では、「Fc領域」は、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域で始まり(すなわち、重鎖定常領域の第一の残基を114として、IgGの残基216)、抗体のC末端で終わる、単一のIg重鎖の部分を指す。したがって、完全Fc領域は、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。
【0369】
免疫グロブリン定常領域またはその部分は、FcRn結合パートナーである場合がある。FcRnは、成体の上皮組織で活性であり、腸の管腔、肺気道、鼻腔面、膣表面、結腸および直腸表面において発現される(米国特許第6,485,726号)。FcRn結合パートナーは、FcRnに結合する免疫グロブリンの一部である。
【0370】
FcRnレセプターは、ヒトを含むいくつかの哺乳動物種から単離されている。ヒトFcRn、サルFcRn、ラットFcRn、およびマウスFcRnの配列が公知である(Storyら 1994、J.Exp.Med.180:2377頁)。FcRnレセプターは、IgG(IgA、IgM、IgD、およびIgEのような他の免疫グロブリンクラスではなく)に比較的低いpHで結合し、IgGを管腔中で漿膜の方向に経細胞的に能動輸送し、次いで、間質液中で見られる比較的高いpHでIgGを遊離する。これは、肺および腸の上皮(Israelら 1997、Immunology 92:69)腎近位尿細管上皮(Kobayashiら 2002年、Am.J.Physiol.Renal Physiol.282:F358)ならびに鼻腔上皮、膣表面、および胆道系表面を含む成体の上皮組織(米国特許第6,485,726号、同第6,030,613号、同第6,086,875号;WO03/077834;US2003-0235536A1)において発現される。
【0371】
本開示において有用なFcRn結合パートナーは、IgG全体、IgGのFcフラグメント、およびFcRnレセプターの完全結合領域を含む他のフラグメントを含む、FcRnレセプターによって特異的に結合される分子を包含する。FcRnレセプターに結合するIgGのFc部分の領域は、X線結晶学に基づいて記載されている(Burmeisterら 1994年、Nature 372:379)。FcのFcRnとの主な接触領域は、CH2およびCH3ドメインの接合部に近い。Fc-FcRn接触は全て、単一のIg重鎖内である。FcRn結合パートナーとして、IgG全体、IgGのFcフラグメント、およびFcRnの完全結合領域を含むIgGの他のフラグメントが挙げられる。主な接触部位として、CH2ドメインのアミノ酸残基248、250~257、272、285、288、290~291、308~311、および314、ならびにCH3ドメインのアミノ酸残基385~387、428、および433~436が挙げられる。免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメント、または領域のアミノ酸ナンバリングに対してなされる言及は全て、Kabatら 1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S.Department of Public Health、Bethesda、Md.に基づく。
【0372】
FcRnに結合したFc領域またはFcRn結合パートナーは、FcRnによって、上皮バリアを越えて効率的に運ばれ得る、所望の治療用分子を全身投与するための非侵襲的手段をもたらす。さらに、Fc領域またはFcRn結合パートナーを含む融合タンパク質は、FcRnを発現する細胞によって貪食される。しかし、これらの融合タンパク質は、分解の対象にはならずに、リサイクルされて、再度血液循環に入るので、これらのタンパク質のインビボ半減期が増加する。ある特定の実施形態では、免疫グロブリン定常領域の部分は、典型的には、ジスルフィド結合及び他の非特異的相互作用を介して、別のFc領域または別のFcRn結合パートナーと会合して、二量体、およびそれより高次の多量体を形成するFc領域またはFcRn結合パートナーである。
【0373】
2つのFcRnレセプターが、単一のFc分子と結合することができる。結晶学的データから、各FcRn分子が、Fcホモ二量体の単一のポリペプチドと結合することが示唆される。一実施形態では、FcRn結合パートナー、例えば、IgGのFcフラグメントを生物活性分子に連結させることにより、生物活性分子の経口送達、口腔内送達、舌下送達、直腸送達、膣内送達、経鼻的なエアロゾル投与によるかもしくは経肺経路による送達、または眼局所経路による送達の手段が得られる。別の実施形態では、凝固因子タンパク質は、侵襲的に、例えば、皮下、静脈内に投与することができる。
【0374】
FcRn結合パートナー領域は、FcRnレセプターが特異的に結合し、その結果、Fc領域をFcRnレセプターによって能動輸送できる分子または部分である。特異的な結合とは、生理的条件下で、比較的安定である複合体を形成する2つの分子を指す。通常、親和性が低く、中程度から高度の容量を有する非特異的な結合と区別されるように、特異的な結合は、高い親和性と、低度から中程度の容量によって特徴付けられる。典型的には、親和性定数KAが、106M-1を超えるか、または108M-1を超える場合に、結合は、特異的であると考えられる。必要な場合、非特異的結合は、結合条件を変えることによって、特異的な結合に実質的な影響を及ぼすことなく低減され得る。分子の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合させる時間、ブロッキング剤(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度のような適切な結合条件などは、当業者であれば、通常の技法を使用して最適化することができる。
【0375】
ある特定の実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされる治療用タンパク質は、トランケートされているにもかかわらず、Fcレセプター(FcR)結合特性をFc領域に付与するのに十分である、1つまたはそれ以上のトランケートされたFc領域を含む。例えば、FcRnに結合するFc領域の部分(すなわち、FcRn結合部分)は、EUの番号付けで、IgG1のアミノ酸282~438周辺のを含む(主要な接触部位は、CH2ドメインのアミノ酸248、250~257、272、285、288、290~291、308~311、および314と、CH3ドメインのアミノ酸残基385~387、428、および433~436である)。よって、本開示のFc領域は、FcRn結合部分を含むかまたはそれからなる場合がある。FcRn結合部分は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むいずれかのアイソタイプの重鎖に由来する場合がある。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1の抗体由来のFcRn結合部分が使用される。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG4の抗体由来のFcRn結合部分が使用される。
【0376】
Fc領域は、多数の異なる供給源から得ることができる。一実施形態では、ポリペプチドのFc領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。しかしながら、Fc部分は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来する場合がある。さらに、Fcドメインまたはその部分のポリペプチドは、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来する場合がある。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1が使用される。
【0377】
ある特定の実施形態では、Fcバリアントにより、前記野生型Fcドメインを含むFc部分によって付与される少なくとも1つのエフェクター機能に変化がもたらされる(例えば、Fcレセプター(例えば、FcγRI、FcγRII、またはFcγRIII)もしくは補体タンパク質(例えば、C1q)に結合するか、または抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、食作用、もしくは補体依存性細胞傷害性(CDCC)を誘発するFc領域の能力の改善または低下)。他の実施形態では、Fcバリアントにより、操作されたシステイン残基がもたらされる。
【0378】
本開示のFc領域は、エフェクター機能および/またはFcRもしくはFcRnの結合を変化させる(例えば、増強または低減する)ことが知られている技術分野で認識されるFcバリアントを用いることができる。具体的には、本開示のFc領域は、例えば、それらのそれぞれを参照によって本明細書に組み入れる、国際PCT出願公開第WO88/07089A1号、同第WO96/14339A1号、同第WO98/05787A1号、同第WO98/23289A1号、同第WO99/51642A1号、同第WO99/58572A1号、同第WO00/09560A2号、同第WO00/32767A1号、同第WO00/42072A2号、同第WO02/44215A2号、同第WO02/060919A2号、同第WO03/074569A2号、同第WO04/016750A2号、同第WO04/029207A2号、同第WO04/035752A2号、同第WO04/063351A2号、同第WO04/074455A2号、同第WO04/099249A2号、同第WO05/040217A2号、同第WO04/044859号、同第WO05/070963A1号、同第WO05/077981A2号、同第WO05/092925A2号、同第WO05/123780A2号、同第WO06/019447A1号、同第WO06/047350A2号および同第WO06/085967A2号;米国特許出願公開第US2007/0231329号、同第US2007/0231329号、同第US2007/0237765号、同第US2007/0237766号、同第US2007/0237767号、同第US2007/0243188号、同第US20070248603号、同第US20070286859号、同第US20080057056号;または米国特許第5,648,260号、同第5,739,277号、同第5,834,250号、同第5,869,046号、同第6,096,871号、同第6,121,022号、同第6,194,551号、同第6,242,195号、同第6,277,375号、同第6,528,624号、同第6,538,124号、同第6,737,056号、同第6,821,505号、同第6,998,253号、同第7,083,784号、同第7,404,956号、および同第7,317,091号に開示されているアミノ酸位置のうちの1つまたはそれ以上に、変更(例えば、置換)を含むことができる。一実施形態では、具体的な変更(例えば、当技術分野において開示されている1つまたはそれ以上のアミノ酸の具体的な置換)は、開示されているアミノ酸位置のうちの1つまたはそれ以上においてなされ得る。別の実施形態では、開示されているアミノ酸位置のうちの1つまたはそれ以上において異なる変更(例えば、当技術分野において開示されている1つまたはそれ以上のアミノ酸位置の異なる置換)がなされ得る。
【0379】
部位特異的変異誘発などのような十分に認識されている手順に従って、IgGのFc領域またはFcRn結合パートナーを改変して、FcRnが結合することになる改変型IgGもしくはFcフラグメントまたはその部分を得ることができる。このような改変として、FcRn接触部位から離れた部位の改変と、FcRnへの結合を保持するかまたはさらには増強する、接触部位内の改変が挙げられる。例えば、FcRnに対するFc結合親和性を有意に喪失することなく、ヒトIgG1 Fc(Fcγ1)における以下の単一のアミノ酸残基を置換することができる:P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、P331A、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A、D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A、Q438A、K439A、S440A、S444A、及びK447A、(ここで例えば、P238Aは、位置番号238における野生型プロリンのアラニンへの置換を表す)。一例として、具体的な実施形態では、N297A変異を組み込んで、高度に保存されたNグリコシル化部位を除去している。アラニンに加えて、上で特定した位置の野生型アミノ酸を他のアミノ酸で置換することができる。変異を個々にFcに組み込んで、ネイティブFcと異なるFc領域を100個超もたらすことができる。さらに、これらの個々の変異のうちの2つ、3つ、またはそれ以上の組合せを一緒に組み込んで、何百ものさらなるFc領域をもたらすことができる。
【0380】
上記のうちの特定の変異により、Fc領域またはFcRn結合パートナーに、新たな機能を付与することができる。例えば、一実施形態では、N297Aを組み込んで、高度に保存されたNグリコシル化部位を除去している。この変異の作用は、免疫原性を低減することであり、それによって、Fc領域の循環血液中半減期が増強すること、およびFcRnに対する親和性を損なうことなく、Fc領域がFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、およびFcγRIIIAに結合するのを不可能とすることである(Routledgeら 1995、Transplantation 60:847;Friendら 1999年、Transplantation 68:1632;Shieldsら 1995年、J.Biol.Chem.276:6591)。上記の変異から生じる新たな機能のさらなる例として、いくつかの例では、FcRnに対する親和性を野生型の親和性よりも増加させることができる。この親和性の増加は、「会合」速度の上昇、「解離」速度の低下または「会合」速度の上昇と「解離」速度の低下の両方を反映することができる。FcRnに対する親和性を増加させると考えられる変異の例として、これらに限定されないが、T256A、T307A、E380A、およびN434Aが挙げられる(Shieldsら 2001年、J.Biol.Chem.276:6591)。
【0381】
さらに、少なくとも3つのヒトFcガンマレセプターは、下流のヒンジ領域、一般的には、アミノ酸234~237内の、IgG上の結合部位を認識すると考えられる。したがって、新たな機能および免疫原性の潜在的な減少の別の例は、例えば、ヒトIgG1のアミノ酸233~236「ELLG」(配列番号45)を、IgG2の対応する配列「PVA」(1つのアミノ酸が欠失している)で置換することにより、この領域の変異から生じ得る。このような変異が導入された場合、様々なエフェクター機能を媒介するFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIが、IgG1に結合しなくなることが示されている。WardおよびGhetie 1995年、Therapeutic Immunology 2:77およびArmourら 1999、Eur.J.Immunol.29:2613。
【0382】
別の実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、ヒンジ領域またはその一部に、第二の免疫グロブリン定常領域またはその一部と1つまたはそれ以上のジスルフィド結合を形成するアミノ酸配列を含む。第二の免疫グロブリン定常領域またはその一部は、第二のポリペプチドに連結して、治療用タンパク質と第二のポリペプチドを一体とすることができる。一部の実施形態では、第二のポリペプチドはエンハンサー部分である。本明細書で使用されるように、用語「エンハンサー部分」は、治療用タンパク質の活性を増強することが可能な分子、そのフラグメントまたはポリペプチドの構成成分を指す。エンハンサー部分は、可溶性組織因子(sTF)のような補因子であり、ここで、治療用タンパク質は凝固因子であるか、または凝固促進ペプチドである。よって、凝固因子の活性化の際に、エンハンサー部分は、凝固因子の活性を増強するために利用可能である。
【0383】
ある特定の実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされる治療用タンパク質は、Ig定常領域の抗原依存性エフェクター機能、特に、タンパク質の循環血液中半減期を変化させる、免疫グロブリン定常領域またはその一部(例えば、Fcバリアント)に対するアミノ酸置換を含む。
【0384】
2.scFc領域
別の態様では、異種部分は、scFc(単鎖Fc)領域を含む。一実施形態では、本開示の単離された核酸分子は、ScFc領域をコードする異種核酸配列をさらに含む。scFc領域は、同じ直鎖状ポリペプチド鎖内に、フォールディングして(例えば、分子内または分子間フォールディングして)、Fcペプチドリンカーによって連結される1つの機能性scFc領域を形成することが可能な、少なくとも2つの免疫グロブリン定常領域またはその部分(例えば、Fc部分またはFcドメイン(例えば、2、3、4、5、6個、またはそれ以上のFc部分またはドメイン))を含む。例えば、一実施形態では、半減期を改善するかもしくは免疫エフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、食作用、または補体依存性細胞傷害性(CDCC))を誘発する、および/または製造性を改善する目的で、本開示のポリペプチドは、そのScFc領域を介して、少なくとも1つのFcレセプター(例えば、FcRn、FcγRレセプター(例えば、FcγRIII)、または補体タンパク質(例えば、C1q))に結合することが可能である。
【0385】
3.CTP
別の態様では、異種部分は、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットの1つのC末端ペプチド(CTP)、またはそのフラグメント、バリアントもしくは誘導体を含む。組換えタンパク質に挿入された1つまたはそれ以上のCTPペプチドは、そのタンパク質のインビボ半減期を増加させることが知られている。例えば、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、米国特許第5,712,122号を参照のこと。
【0386】
例示的なCTPペプチドとして、DPRFQDSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPIL (配列番号33)又はSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQ (配列番号34)が挙げられる。例えば、米国特許出願公開第US 2009/0087411 A1号(参照により加入される)を参照のこと。
【0387】
4. XTEN配列
一部の実施形態では、異種部分は、1つまたはそれ以上のXTEN配列、そのフラグメント、バリアント、または誘導体を含む。本明細書で使用されるように、「XTEN配列」は、低分子親水性アミノ酸で主に構成され、生理的条件下では二次構造もしくは三次構造をとる程度が低いかまたはそれをとらない、天然に存在しない、実質的に非反復の配列を有する伸長したポリペプチドを指す。異種部分として、XTENは、半減期延長部分としての機能を果たすことができる。さらに、XTENは、これらに限定されないが、薬物動態パラメーターおよび溶解特性の増強を含む所望の特性をもたらすことができる。
【0388】
XTEN配列を含む異種部分の、本開示のタンパク質への組み込みにより、以下の有利な特性:立体配座の柔軟性、水溶性の向上、高度なプロテアーゼ耐性、低免疫原性、哺乳動物レセプターへの低結合性、または流体力学的(またはストークス)半径の増大のうちの1つまたはそれ以上をタンパク質に付与することができる。
【0389】
特定の態様では、XTEN配列は、より長いインビボ半減期または曲線下面積(AUC)の増加のような薬物動態特性を向上させることができ、その結果、本開示のタンパク質は、インビボに留まり、XTEN異種部分を有さないこと以外は同じであるタンパク質と比較して増加した期間、凝固促進活性を有する。
【0390】
一部の実施形態では、本開示に関して有用なXTEN配列は、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1200、1400、1600、1800、又は2000個を超えるアミノ酸残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。ある特定の実施形態では、XTENは、約20超から約3000個のアミノ酸残基、30超から約2500個の残基、40超から約2000個の残基、50超から約1500個の残基、60超から約1000個の残基、70超から約900個の残基、80超から約800個の残基、90超から約700個の残基、100超から約600個の残基、110超から約500個の残基、または120超から約400個の残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。特定の一実施形態では、XTENは、長さが、42アミノ酸より長く、かつ144アミノ酸より短い、アミノ酸配列を含む。
【0391】
本開示のXTEN配列は、5から14個(例えば、9から14個)のアミノ酸残基の1つもしくはそれ以上の配列モチーフ、または配列モチーフと少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含むことができ、そのモチーフは、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)およびプロリン(P)からなる群から選択される4から6種のアミノ酸(例えば、5アミノ酸)を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる。US2010-0239554A1を参照のこと。
【0392】
一部の実施形態では、XTENは、配列の約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%または約100%が、表7から選択される単一のモチーフファミリーから選択される非重複配列の複数ユニットからなる(その結果、ファミリー配列が得られる)非重複配列モチーフを含む。本明細書で使用されるように、「ファミリー」は、XTENが、表7からの単一のモチーフカテゴリー、すなわち、AD、AE、AF、AG、AM、AQ、BC、またはBDのXTENのみから選択されるモチーフを有することと、およびファミリーモチーフに由来しないXTENにおける任意の他のアミノ酸が、必要とされる特性を実現するために、例えば、コードヌクレオチドによる制限部位の組み込み、切断配列の組み込みを可能とするために、または治療用タンパク質の十分な連結を達成するために選択されることを意味する。XTENファミリーの一部の実施形態では、XTEN配列は、ADモチーフファミリー、またはAEモチーフファミリー、またはAFモチーフファミリー、またはAGモチーフファミリー、またはAMモチーフファミリー、またはAQモチーフファミリー、またはBCファミリー、またはBDファミリーの非重複配列モチーフを複数ユニット含み、得られたXTENは、上記の範囲の相同性を示す。他の実施形態では、XTENは、表7のモチーフファミリーのうちの2つまたはそれ以上からのモチーフ配列を複数ユニットを含む。これらの配列は、以下にさらに詳しく説明されている、モチーフのアミノ酸組成によって付与される実効電荷、親水性、二次構造の欠如、または反復性の欠如のような特性を含む所望の物理的/化学的特徴を達成するように選択することができる。この段落で説明される上記の実施形態では、本明細書に記載されている方法を使用して、XTENに組み込まれるモチーフを選択およびアセンブルして、約36から約3000個のアミノ酸残基のXTENを達成することができる。
【0393】
【0394】
本開示の治療用タンパク質において、異種部分として使用することができるXTEN配列の例は、例えば、そのそれぞれを参照によってその全体として本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2010/0239554A1号、同第2010/0323956A1号、同第2011/0046060A1号、同第2011/0046061A1号、同第2011/0077199A1号もしくは同第2011/0172146A1号、または国際特許出願公開第WO2010091122A1号、同第WO2010144502A2号、同第WO2010144508A1号、同第WO2011028228A1号、同第WO2011028229A1、もしくは同第WO2011028344A2号に開示されている。
【0395】
治療用タンパク質に挿入または連結するために、XTENは様々な長さを有する場合がある。一実施形態では、XTEN配列の長さは、融合タンパク質において実現される特性または機能に基づいて選択される。意図する特性または機能に応じて、XTENは、長さが短いかもしくは中程度の配列または担体としての役割を果たすことができるより長い配列であってもよい。ある特定の実施形態では、XTENは、約6から約99個のアミノ酸残基の短いセグメント、約100から約399個のアミノ酸残基の中程度の長さ、および約400から約1000個、かつ最大で約3000個のアミノ酸残基のより長い長さを含む。よって、治療用タンパク質に挿入または連結されるXTENは、約6、約12、約36、約40、約42、約72、約96、約144、約288、約400、約500、約576、約600、約700、約800、約864、約900、約1000、約1500、約2000、約2500、または最大で約3000個までのアミノ酸残基長の長さを有する場合がある。他の実施形態では、XTEN配列は、約6から約50、約50から約100、約100から150、約150から250、約250から400、約400から約500、約500から約900、約900から1500、約1500から2000、または約2000から約3000個のアミノ酸残基長である。治療用タンパク質に挿入または連結されるXTENの正確な長さは、治療用タンパク質の活性に有害な影響を及ぼさなければ、様々である。一実施形態では、本発明で使用されるXTENのうちの1つまたはそれ以上は、42個のアミノ酸、72個のアミノ酸、144個のアミノ酸、288個のアミノ酸、576個のアミノ酸、または864個のアミノ酸長さを有し、XTENファミリー配列、すなわち、AD、AE、AF、AG、AM、AQ、BCまたはBDのうちの1つまたはそれ以上から選択することができる。
【0396】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIポリペプチドおよびXTENを含み、XTENは、288個のアミノ酸を含む。一実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIポリペプチドおよびXTENを含み、XTENは、288個のアミノ酸を含み、XTENは、FVIIIポリペプチドのBドメイン内に挿入される。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIポリペプチドおよび配列番号109を含むXTENを含み、XTENは、FVIIIポリペプチドのBドメイン内に挿入される。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIポリペプチドおよび配列番号109を含むXTENを含み、XTENは、成熟FVIIIのアミノ酸745のすぐ下流のFVIIIポリペプチド内に挿入される。
【0397】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、FIXポリペプチドおよびXTENを含み、XTENは72個のアミノ酸を含む。一実施形態では、治療用タンパク質は、FIXポリペプチドおよびXTENを含み、XTENは72個のアミノ酸を含み、そしてXTENは、成熟FIXのアミノ酸166のすぐ下流のFVIIIポリペプチド内に挿入される。
【0398】
一部の実施形態では、本開示で使用されるXTEN配列は、AE42、AG42、AE48、AM48、AE72、AG72、AE108、AG108、AE144、AF144、AG144、AE180、AG180、AE216、AG216、AE252、AG252、AE288、AG288、AE324、AG324、AE360、AG360、AE396、AG396、AE432、AG432、AE468、AG468、AE504、AG504、AF504、AE540、AG540、AF540、AD576、AE576、AF576、AG576、AE612、AG612、AE624、AE648、AG648、AG684、AE720、AG720、AE756、AG756、AE792、AG792、AE828、AG828、AD836、AE864、AF864、AG864、AM875、AE912、AM923、AM1318、BC864、BD864、AE948、AE1044、AE1140、AE1236、AE1332、AE1428、AE1524、AE1620、AE1716、AE1812、AE1908、AE2004A、AG948、AG1044、AG1140、AG1236、AG1332、AG1428、AG1524、AG1620、AG1716、AG1812、AG1908、AG2004、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される配列と、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。US2010-0239554A1を参照のこと。特定の一実施形態では、XTENは、AE42、AE72、AE144、AE288、AE576、AE864、AG42、AG72、AG144、AG288、AG576、AG864、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0399】
本開示の治療用タンパク質において、異種部分として使用することができる例示的なXTEN配列として、XTEN AE42-4(配列番号47によってコードされる配列番号46)、XTEN AE144-2A(配列番号49によってコードされる配列番号48)、XTEN AE144-3B(配列番号51によってコードされる配列番号50)、XTEN AE144-4A(配列番号53によってコードされる配列番号52)、XTEN AE144-5A(配列番号55によってコードされる配列番号54)、XTEN AE144-6B(配列番号57によってコードされる配列番号56)、XTEN AG144-1(配列番号59によってコードされる配列番号58)、XTEN AG144-A(配列番号61によってコードされる配列番号60)、XTEN AG144-B(配列番号63によってコードされる配列番号62)、XTEN AG144-C(配列番号65によってコードされる配列番号64)、およびXTEN AG144-F(配列番号67によってコードされる配列番号66)が挙げられる。特定の一実施形態では、XTENは、配列番号18によってコードされる。
【0400】
別の実施形態では、XTEN配列は、AE36(配列番号130)、AE42(配列番号131)、AE72(配列番号132)、AE78(配列番号133)、AE144(配列番号134)、AE144_2A(配列番号48)、AE144_3B(配列番号50)、AE144_4A(配列番号52)、AE144_5A(配列番号54)、AE144_6B(配列番号135)、AG144(配列番号136)、AG144_A(配列番号137)、AG144_B(配列番号62)、AG144_C(配列番号64)、AG144_F(配列番号66)、AE288(配列番号138)、AE288_2(配列番号139)、AG288(配列番号140)、AE576(配列番号141)、AG576(配列番号142)、AE864(配列番号143)、AG864(配列番号144)、XTEN_AE72_2A_1(配列番号145)、XTEN_AE72_2A_2(配列番号146)、XTEN_AE72_3B_1(配列番号147)、XTEN_AE72_3B_2(配列番号148)、XTEN_AE72_4A_2(配列番号149)、XTEN_AE72_5A_2(配列番号150)、XTEN_AE72_6B_1(配列番号151)、XTEN_AE72_6B_2(配列番号152)、XTEN_AE72_1A_1(配列番号153)、XTEN_AE72_1A_2(配列番号154)、XTEN_AE144_1A(配列番号155)、AE150(配列番号156)、AG150(配列番号157)、AE294(配列番号158)、AG294(配列番号159)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。具体的な実施形態では、XTEN配列は、AE72、AE144、およびAE288からなる群から選択される。ある特定のXTEN配列に関するアミノ酸配列は、表8に示される。
【0401】
【0402】
一部の実施形態では、XTENのアミノ酸の100%未満が、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)およびプロリン(P)から選択されるか、または配列の100%未満が、表7からの配列モチーフもしくは本発明で提供されるXTEN配列からなる。このような実施形態では、XTENの残りのアミノ酸残基は、他の14種の天然L-アミノ酸のうちのいずれかから選択されるが、XTEN配列が、親水性アミノ酸を少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%含有するように、親水性アミノ酸から優先的に選択することができる。共役構築物において利用されるXTENにおける疎水性アミノ酸の含有率は、5%未満、または2%未満、または1%未満の疎水性アミノ酸含有率である。XTENの構築の際に、あまり好ましくない疎水性残基として、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、およびメチオニンが挙げられる。さらに、XTEN配列は、以下のアミノ酸:メチオニン(例えば、酸化を回避するため)、またはアスパラギンおよびグルタミン(脱アミド化を回避するため)を5%未満若しくは4%未満若しくは3%未満若しくは2%未満若しくは1%未満含有し得るか、又は含有しなくてもよい。
【0403】
1つまたはそれ以上のXTEN配列は、治療用タンパク質のC末端もしくはN末端に挿入されても治療用タンパク質のアミノ酸配列内の2つのアミノ酸の間に挿入されてもよい。例えば、治療用タンパク質がFVIIIポリペプチドを含む場合、XTENは、表5から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位で、2つのアミノ酸の間に挿入され得る。治療用タンパク質がFIXポリペプチドを含む場合、XTENは、表5から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位で、2つのアミノ酸の間に挿入され得る。
【0404】
本発明に従って使用することができるXTEN配列の追加例は、米国特許出願公開第2010/0239554 A1号、同第2010/0323956 A1号、同第2011/0046060 A1号、同第2011/0046061 A1号、同第2011/0077199 A1号、もしくは同第2011/0172146 A1号、または国際特許出願公開第WO2010091122 A1号、同第WO2010144502 A2号、同第WO2010144508 A1号、同第WO2011028228 A1号、同第WO2011028229 A1号、同第WO2011028344 A2号、WO2014/011819 A2号、もしくは同第WO2015/023891号に開示されている。
【0405】
5.アルブミン、またはそのフラグメント、誘導体もしくはバリアント
一部の実施形態では、異種部分はアルブミンまたはその機能性フラグメントを含む。全長形態は609個のアミノ酸のタンパク質であるヒト血清アルブミン(HSA、またはHA)は、血清の浸透圧のかなりの部分を担っており、内因性および外因性リガンドの担体としても機能する。本明細書で使用されるように、用語「アルブミン」は、全長アルブミンまたはその機能性フラグメント、バリアント、誘導体、もしくはアナログを含む。アルブミンまたはそのフラグメントもしくはバリアントの例は、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、米国特許出願公開第2008/0194481 A1号、同第2008/0004206 A1号、同第2008/0161243 A1号、同第2008/0261877 A1号、もしくは同第2008/0153751 A1号、またはPCT特許出願公開第2008/033413 A2号、同第2009/058322 A1号、もしくは同第2007/021494 A2号に開示されている。
【0406】
一実施形態では、本開示の治療用タンパク質は、免疫グロブリン定常領域またはその部分(例えばFc領域)、PAS配列、HES、PEGおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される第二の異種部分にさらに連結されたアルブミン、そのフラグメント、またはバリアントを含む。
【0407】
6.アルブミン結合部分
ある特定の実施形態では、異種部分は、アルブミン結合ペプチド、細菌アルブミン結合ドメイン、アルブミン結合抗体フラグメント、またはこれらの任意の組合せを含むアルブミン結合部分である。
【0408】
例えば、アルブミン結合タンパク質は、細菌アルブミン結合タンパク質、ドメイン抗体を含む抗体または抗体フラグメントである場合がある(米国特許第6,696,245号を参照のこと)。アルブミン結合タンパク質は、例えば、連鎖球菌タンパク質Gのもののような細菌アルブミン結合ドメインである場合がある(Konig,TおよびSkerra,A.(1998)J.Immunol.Methods 218、73~83)。共役パートナーとして使用することができるアルブミン結合ペプチドの他の例は、例えば、米国特許出願第2003/0069395号またはDennisら(Dennisら(2002)J.Biol.Chem.277、35035~35043)に記載されているように、Cys-Xaa1-Xaa2-Xaa3-Xaa4-Cysというコンセンサス配列(ここで、Xaa1は、Asp、Asn、Ser、Thr、またはTrpであり、Xaa2は、Asn、Gln、His、Ile、Leu、またはLysであり、Xaa3は、Ala、Asp、Phe、Trp、またはTyrであり、Xaa4は、Asp、Gly、Leu、Phe、Ser、またはThrである)を有するものである。
【0409】
Kraulisら、FEBS Lett.378:190-194(1996)及びLinhultら、Protein Sci.11:206-213(2002)に開示されるように、連鎖球菌プロテインG由来のドメイン3は、細菌アルブミン結合ドメインの一例である。アルブミン結合ペプチドの例としては、コア配列DICLPRWGCLW(配列番号35)を有する一連のペプチドが挙げられる。例えば、Dennisら、J.Biol.Chem.2002、277:35035-35043(2002)を参照のこと。アルブミン結合抗体フラグメントの例は、Muller及びKontermann、Curr.Opin.Mol.Ther.9:319-326(2007);Rooversら、Cancer Immunol. Immunother.56:303-317(2007)、並びにHoltら、Prot.Eng.Design Sci.、21:283-288(2008)(これらはその全体として参照により本明細書に加入される)に開示されている。このようなアルブミン結合部分の例は、Trusselら、Bioconjugate Chem.20:2286-2292(2009)により開示されるような2-(3-マレイミドプロパンアミド)-6-(4-(4-ヨードフェニル)ブタンアミド)ヘキサノアート(「Albu」タグ)である。
【0410】
脂肪酸、特に、長鎖脂肪酸(LCFA)および長鎖脂肪酸様アルブミン結合化合物を使用して、本開示の凝固因子タンパク質のインビボ半減期を延長することができる。LCFA様アルブミン結合化合物の例は、16-(1-(3-(9-(((2,5-ジオキソピロリジン-1-イルオキシ)カルボニルオキシ)-メチル)-7-スルホ-9H-フルオレン-2-イルアミノ)-3-オキソプロピル)-2,5-ジオキソピロリジン-3-イルチオ)ヘキサデカン酸である(例えば、WO2010/140148を参照のこと)。
【0411】
7. PAS配列
他の実施形態では、異種部分はPAS配列である。PAS配列は、本明細書で使用されるように、アラニン残基およびセリン残基を主に含むかまたはアラニン残基、セリン残基、およびプロリン残基を主に含むアミノ酸配列であって、生理的条件下でランダムコイル立体配座を形成するアミノ酸配列を意味する。したがって、PAS配列は、キメラタンパク質において異種部分の一部として使用することができるアラニン、セリン、およびプロリンを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなるビルディングブロック、アミノ酸ポリマー、または配列カセットである。ただし、PAS配列における微量成分として、アラニン、セリン、およびプロリン以外の残基が付加される場合、アミノ酸ポリマーもランダムコイル立体配座を形成できることは、当業者であれば分かる。用語「微量成分」は、本明細書で使用されるように、アラニン、セリン、およびプロリン以外のアミノ酸を、PAS配列において、ある特定の程度まで、例えば、最大で約12%まで、すなわち、PAS配列の100個のアミノ酸のうちの約12個まで、最大で約10%まで、すなわち、PAS配列の100個のアミノ酸のうちの約10個まで、最大で約9%まで、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約9個まで、最大で約8%まで、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約8個まで、約6%まで、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約6個まで、約5%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約5個、約4%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約4個、約3%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約3個、約2%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約2個、約1%、すなわち、100個のアミノ酸うちの約1個付加できることを意味する。アラニン、セリン、およびプロリンと異なるアミノ酸は、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Tyr、およびValからなる群から選択することができる。
【0412】
生理的条件下では、PAS配列伸長体は、ランダムコイル立体配座を形成し、それによって、凝固因子タンパク質に対して、インビボおよび/またはインビトロ安定性の増加を媒介することができる。ランダムコイルドメインは、それ自体が安定な構造または機能を持たないため、凝固因子タンパク質によって媒介される生体活性は、本質的に保持される。他の実施形態では、ランダムコイルドメインを形成するPAS配列は、特に、血漿中でのタンパク質分解、免疫原性、等電点/静電挙動、細胞表面レセプターへの結合またはインターナリゼーションに関して、生物学的に不活性であるが、なお生分解性であり、それにより、PEGのような合成ポリマーを上回る明らかな利点をもたらす。
【0413】
ランダムコイル立体配座を形成するPAS配列の非限定例は、ASPAAPAPASPAAPAPSAPA (配列番号36)、AAPASPAPAAPSAPAPAAPS (配列番号37)、APSSPSPSAPSSPSPASPSS (配列番号38)、APSSPSPSAPSSPSPASPS (配列番号39)、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA (配列番号40)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA (配列番号41)、ASAAAPAAASAAASAPSAAA (配列番号42)およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。PAS配列のさらなる例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0292130 A1号およびPCT特許出願公開第WO2008/155134 A1号から公知である。
【0414】
8. HAP配列
ある特定の実施形態では、異種部分は、グリシンリッチホモアミノ酸ポリマー(HAP)である。HAP配列は、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも100個のアミノ酸、120個のアミノ酸、140個のアミノ酸、160個のアミノ酸、180個のアミノ酸、200個のアミノ酸、250個のアミノ酸、300個のアミノ酸、350個のアミノ酸、400個のアミノ酸、450個のアミノ酸、または500個のアミノ酸長を有するグリシン反復配列を含む場合がある。一実施形態では、HAP配列は、HAP配列に融合または連結された部分の半減期を延長することが可能である。HAP配列の非限定例として、これらに限定されないが、(Gly)n、(Gly4Ser)nまたはS(Gly4Ser)n[式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である]が挙げられる。一実施形態では、nは、20、21、22、23、24、25、26、26、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40である。別の実施形態では、nは、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200である。
【0415】
9. トランスフェリン又はそのフラグメント
ある特定の実施形態では、異種部分は、トランスフェリンまたはそのフラグメントである。いずれかのトランスフェリンを使用して、本開示の凝固因子タンパク質を作製することができる。一例として、野生型ヒトTF(TF)は、およそ75KDaの679個のアミノ酸タンパク質であり(糖鎖付加は考慮せず)、2つの主要ドメイン、N(約330個のアミノ酸)およびC(約340個のアミノ酸)を有し、遺伝子重複に起因すると考えられる。その全てを参照によってその全体として本明細書に組み入れる、GenBank受託番号NM001063、XM002793、M12530、XM039845、XM039847およびS95936(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照のこと。トランスフェリンは、2つのドメイン、NドメインおよびCドメインを含む。Nドメインは、N1ドメインおよびN2ドメインという2つのサブドメインを含み、Cドメインは、C1ドメインおよびC2ドメインという2つのサブドメインを含む。
【0416】
一実施形態では、トランスフェリン異種部分として、トランスフェリンスプライスバリアントが挙げられる。一例では、トランスフェリンスプライスバリアントは、ヒトトランスフェリンのスプライスバリアント、例えばGenBank受託AAA61140である場合がある。別の実施形態では、キメラタンパク質のトランスフェリン部分は、トランスフェリン配列の1つまたはそれ以上のドメイン、例えば、Nドメイン、Cドメイン、N1ドメイン、N2ドメイン、C1ドメイン、C2ドメインまたはこれらの任意の組合せを含む。
【0417】
10. クリアランス受容体
ある特定の実施形態では、異種部分は、クリアランスレセプター、そのフラグメント、バリアント、または誘導体である。LRP1は、第X因子のような種々のタンパク質のレセプター媒介性クリアランスに関与する600KDaの膜内在性タンパク質である。例えば、Naritaら、Blood 91:555~560(1998)を参照のこと。
【0418】
11. フォン・ビルブランド因子又はそのフラグメント
ある特定の実施形態では、異種部分は、フォンビルブランド因子(VWF)またはその1つもしくはそれ以上のフラグメントである。
【0419】
VWF(F8VWFとしても知られている)は、血漿中に存在し、内皮(バイベルパラーデ小体内)、巨核球(血小板のα顆粒)、および内皮下結合組織において構成的に産生される大きな多量体糖タンパク質である。基本的なVWF単量体は、2813個のアミノ酸のタンパク質である。各単量体は、D’およびD3ドメイン(一体になって、第VIII因子に結合する)、A1ドメイン(血小板GPIbレセプター、ヘパリン、および/またはおそらくはコラーゲンに結合する)、A3ドメイン(コラーゲンに結合する)、C1ドメイン(このドメインが活性化すると、RGDドメインが血小板インテグリンαIIbβ3に結合する)、ならびにタンパク質のC末端にある「システインノット」ドメイン(VWFは、このドメインを血小板由来増殖因子(PDGF)、形質転換増殖因子-β(TGFβ)およびβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)と共有する)という、特有の機能を有するいくつかの特有のドメインを含有する。
【0420】
ヒトVWFの2813単量体アミノ酸配列は、GenBankの受託番号NP000543.2として報告されている。ヒトVWFをコードするヌクレオチド配列は、GenBankの受託番号NM00552.3として報告されている。配列番号129は、配列番号128によってコードされるアミノ酸配列である。D’ドメインは、配列番号129の764から866位のアミノ酸を含む。D3ドメインは、配列番号44の867から1240位のアミノ酸を含む。
【0421】
血漿中では、FVIIIの95~98%は、全長VWFとの強固な非共有結合複合体で循環する。インビボでFVIIIIの適切な血漿中レベルを維持するために、この複合体の形成が重要である。Lentingら、Blood.92(11):3983~96(1998);Lentingら、J.Thromb.Haemost.5(7):1353~60頁(2007)。重鎖の位置372および740と、軽鎖の位置1689におけるタンパク質分解により、FVIIIが活性化される場合、FVIIIに結合したVWFが、活性化FVIIIから外れる。
【0422】
ある特定の実施形態では、異種部分は、全長フォンビルブランド因子である。他の実施形態では、異種部分は、フォンビルブランド因子フラグメントである。本明細書で使用されるように、用語「1つのVWFフラグメント」または「複数のVWFフラグメント」は、FVIIIと相互作用し、全長VWFによってFVIIIに通常もたらされる、少なくとも1つまたはそれ以上の特性、例えば、FVIIIaに対する早期活性化を防止すること、早期タンパク質分解を防止すること、早期クリアランスをもたらすことのあるリン脂質膜との会合を防止すること、ネイキッドFVIIIには結合することができるがVWFの結合したFVIIIには結合することができないFVIIIクリアランスレセプターへの結合を防止すること、および/またはFVIIIの重鎖と軽鎖の相互作用を安定化することを保持する任意のVWFフラグメントを意味する。具体的な実施形態では、異種部分は、VWFのD’ドメインおよびD3ドメインを含む(VWF)フラグメントである。D’ドメインおよびD3ドメインを含むVWFフラグメントは、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、D1ドメイン、D2ドメイン、D4ドメイン、B1ドメイン、B2ドメイン、B3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、CKドメイン、これらの1つまたはそれ以上のフラグメント、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるVWFドメインをさらに含むことができる。VWFフラグメントに融合したFVIII活性を有するポリペプチドのさらなる例は、その両方を参照によってその全体として本明細書に組み入れる、2012年7月3日に出願された米国仮特許出願第61/667,901号、および米国特許出願公開第2015/0023959 A1号に開示されている。
【0423】
12.リンカー部分
ある特定の実施形態では、異種部分はペプチドリンカーである。
【0424】
本明細書で使用されるように、用語「ペプチドリンカー」または「リンカー部分」は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列における2つのドメインを接続するペプチドまたはポリペプチド配列(例えば、合成ペプチドまたはポリペプチド配列)を指す。
【0425】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーを、本開示の治療用タンパク質とアルブミンのような上記の異種部分との間に挿入することができる。ペプチドリンカーは、キメラポリペプチド分子に柔軟性をもたらすことができる。リンカーは、典型的には、切断されないが、このような切断が望ましい場合がある。一実施形態では、これらのリンカーは、プロセシング中に除去されない。
【0426】
本開示のキメラタンパク質中に存在することができるタイプのリンカーは、切断部位(すなわち、プロテアーゼ切断部位基質、例えば、第XIa因子、第Xa因子、またはトロンビン切断部位)を含み、そしてその切断部位のN末端もしくはC末端のいずれかまたは両側に追加のリンカーを含むことができる、プロテアーゼで切断可能なリンカーである。これらの切断可能なリンカーは、本開示の構築物に組み込まれると、異種の切断部位を有するキメラ分子を生じる。
【0427】
一実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされる治療用タンパク質は、単一のポリペプチド鎖に含まれるFc領域を形成するように、cscFcリンカーを介して連結された2つまたはそれ以上のFcドメインもしくはFc部分を含む。cscFcリンカーは、少なくとも1つの細胞内プロセシング部位、すなわち、細胞内酵素によって切断される部位に隣接している。少なくとも1つの細胞内プロセシング部位でポリペプチドが切断されると、少なくとも2本のポリペプチド鎖を含むポリペプチドが得られる。
【0428】
他のペプチドリンカーを、本開示の構築物において、例えば、凝固因子タンパク質をFc領域に接続するために、場合により使用することができる。本開示との関連で使用することができるいくつかの例示的なリンカーとして、例えば、下にさらに詳述されているGlySerアミノ酸を含むポリペプチドが挙げられる。
【0429】
一実施形態では、ペプチドリンカーは、合成、すなわち、天然に存在しないものである。一実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸の第一の直鎖状配列を、自然には連結されないかまたは自然には遺伝的に融合されないアミノ酸の第二の直鎖状配列に連結または遺伝的に融合するアミノ酸配列を含むペプチド(またはポリペプチド)(天然に存在することができるかまたは存在することができない)を含む。例えば、一実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチドの改変形態である(例えば、付加、置換または欠失のような変異を含む)天然に存在しないポリペプチドを含むことができる。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在しないアミノ酸を含むことができる。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、自然には生じない直鎖状配列で生じる天然に存在するアミノ酸を含むことができる。さらに別の実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチド配列を含むことができる。
【0430】
例えば、ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーを使用して、同一のFc部分に融合させ、それによって、ホモ二量体scFc領域を形成することができる。他の実施形態では、ペプチドリンカーを使用して、異なるFc部分(例えば、野生型Fc部分およびFc部分バリアント)に融合させ、それによって、ヘテロ二量体scFc領域を形成することができる。
【0431】
別の実施形態では、ペプチドリンカーは、gly-serリンカーを含むかまたはそれからなる。一実施形態では、scFcまたはcscFcリンカーは、免疫グロブリンヒンジおよびgly-serリンカーの少なくとも一部分を含む。本明細書で使用されるように、用語「gly-serリンカー」は、グリシン残基およびセリン残基からなるペプチドを指す。ある特定の実施形態では、前記gly-serリンカーは、ペプチドリンカーの2つの他の配列の間に挿入することができる。他の実施形態では、gly-serリンカーは、ペプチドリンカーの別の配列の一端または両端に結合する。また他の実施形態では、2つまたはそれ以上のgly-serリンカーは、ペプチドリンカーに直列に組み込まれる。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、ヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来する)上流の少なくとも一部、ヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来する)中央の少なくとも一部、および一連のgly/serアミノ酸残基を含む。
【0432】
本開示のペプチドリンカーは、少なくとも1つのアミノ酸長であり、様々な長さであってよい。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1から約50アミノ酸長である。この関連で使用する場合、用語「約」は、+/-2個のアミノ酸残基を示す。リンカー長は正の整数でなければならないため、約1から約50アミノ酸長の長さは、1~3から48~52アミノ酸長の長さを意味する。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約10から約20アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15から約50アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約20から約45アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15から約35または約20から約30アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、500、1000または2000アミノ酸長である。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、20または30アミノ酸長である。
【0433】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100個のアミノ酸を含むことができる。他の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、または少なくとも1000個のアミノ酸を含むことができる。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、または2000個のアミノ酸を含むことができる。ペプチドリンカーは、1~5個のアミノ酸、1~10個のアミノ酸、1~20個のアミノ酸、10~50個のアミノ酸、50~100個のアミノ酸、100~200個のアミノ酸、200~300個のアミノ酸、300~400個のアミノ酸、400~500個のアミノ酸、500~600個のアミノ酸、600~700個のアミノ酸、700~800個のアミノ酸、800~900個のアミノ酸、または900~1000個のアミノ酸を含むことができる。
【0434】
ペプチドリンカーは、当技術分野で公知の技法を使用して、ポリペプチド配列に導入することができる。改変は、DNA配列解析によって確認することができる。プラスミドDNAを使用して、産生されるポリペプチドが安定して産生されるように宿主細胞を形質転換することができる。
【0435】
13.単量体-二量体ハイブリッド
一部の実施形態では、本開示の治療用タンパク質は、凝固因子を含む単量体-二量体ハイブリッド分子を含む。
【0436】
本明細書で使用される用語「単量体-二量体ハイブリッド」は、ジスルフィド結合によって互いに会合する第一のポリペプチド鎖と第二のポリペプチド鎖を含むキメラタンパク質を指し、第一の鎖は、凝固因子、例えば、FVIII、および第一のFc領域を含み、第二の鎖は、凝固因子を含まない第二のFc領域を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。よって、単量体-二量体ハイブリッド構築物は、1つの凝固因子のみを有する単量体の態様、および2つのFc領域を有する二量体の態様を含むハイブリッドである。
【0437】
14.発現制御配列
一部の実施形態では、本開示の核酸分子は、少なくとも1つの発現制御配列をさらに含む。発現制御配列は、本明細書で使用されるように、プロモーター配列またはプロモーターとエンハンサーの組合せのような任意の調節ヌクレオチド配列であり、これは、その配列が作動可能に連結するコード核酸の効率的な転写と翻訳を促す。例えば、本開示の核酸分子は、少なくとも1つの転写制御配列に作動可能に連結される。遺伝子発現制御配列は、例えば、構成的または誘導性プロモーターのような哺乳動物プロモーターまたはウイルスプロモーターである場合がある。
【0438】
哺乳動物の構成的プロモーターとして、これらに限定されないが、以下の遺伝子に関するプロモーターが挙げられる:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルベートキナーゼ、ベータアクチンプロモーター、および他の構成的プロモーター。真核細胞において構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとして、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長鎖末端反復配列(LTR)、および他のレトロウイルスからのプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。他の構成的プロモーターは当業者に知られている。本開示の遺伝子発現配列として有用なプロモーターとして、誘導性プロモーターも挙げられる。誘導性プロモーターは、誘導剤の存在下で発現する。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある特定の金属イオンの存在下で誘導されて、転写および翻訳を促進する。他の誘導性プロモーターは当業者に知られている。
【0439】
一実施形態では、本開示は、組織特異的プロモーターおよび/またはエンハンサーの制御下で、導入遺伝子を発現させることを含む。別の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、肝細胞における導入遺伝子の発現を選択的に増強する。ある特定の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、肝細胞、類洞細胞、および/または内皮細胞における導入遺伝子の発現を選択的に増強する。特定の一実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、内皮細胞における導入遺伝子の発現を選択的に増強する。ある特定の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、筋細胞、中枢神経系、眼、肝臓、心臓、またはこれらの任意の組合せにおける導入遺伝子の発現を選択的に増強する。肝特異的プロモーターの例として、これらに限定されないが、マウスチレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、およびマウスアルブミンプロモーターが挙げられる。特定の実施形態では、プロモーターは、mTTRプロモーターを含む。mTTRプロモーターは、R.H.Costaら、1986、Mol.Cell.Biol.6:4697に記載される。F8プロモーターは、FigueiredoおよびBrownlee、1995、J.Biol.Chem.270:11828~11838に記載される。一部の実施形態では、プロモーターは、肝特異的プロモーター(例えば、α1-アンチトリプシン(AAT))、筋特異的プロモーター(例えば、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)、およびデスミン(DES))、合成プロモーター(例えば、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCK、およびtMCK)、およびこれらの任意の組合せから選択される。
【0440】
一実施形態では、プロモーターは、マウスチレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、TTPp、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1-アンチトリプシン(AAT)、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)、デスミン(DES)、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCK、およびtMCK、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0441】
1つまたはそれ以上のエンハンサーを使用して、発現レベルをさらに高めて、治療効能を達成することができる。1つまたはそれ以上のエンハンサーは、単独でまたは1つまたはそれ以上のプロモーターエレメントと一緒に提供することができる。典型的には、発現制御配列は、複数のエンハンサーエレメントおよび組織特異的プロモーターを含む。一実施形態では、エンハンサーは、α1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサーの1つまたはそれ以上の複製を含む(Rouetら、1992、J.Biol.Chem.267:20765~20773頁;Rouetら、1995、Nucleic Acids Res.23:395~404頁;Rouetら、1998、Biochem.J.334:577~584頁;Illら、1997、Blood Coagulation Fibrinolysis 8:S23~S30)。別の実施形態では、エンハンサーは、EBP、DBP、HNF1、HNF3、HNF4、HNF6のような肝特異的転写因子結合部位に由来し、Enh1は、HNF1、(センス)-HNF3、(センス)-HNF4、(アンチセンス)-HNF1、(アンチセンス)-HNF6、(センス)-EBP、(アンチセンス)-HNF4(アンチセンス)を含む。
【0442】
特定の例では、本開示に有用なプロモーターは、配列番号69(すなわち、ETプロモーター)を含み、この配列は、GenBank番号AY661265としても公知である。Vignaら、Molecular Therapy 11(5):763(2005)も参照のこと。他の好適なベクターおよび遺伝子調節エレメントの例は、参照によってその全体として本明細書に組み入れるWO02/092134、EP1395293、または米国特許第6,808,905号、同第7,745,179号、もしくは同第7,179,903号に記載される。
【0443】
一実施形態では、本開示の核酸分子は、イントロン配列をさらに含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列に対して5’に位置する。一部の実施形態では、イントロン配列は天然に存在するイントロン配列である。一部の実施形態では、イントロン配列は合成配列である。一部の実施形態では、イントロン配列は天然に存在するイントロン配列に由来する。ある特定の実施形態では、イントロン配列はSV40スモールTイントロンを含む。一実施形態では、イントロン配列は配列番号115を含む。
【0444】
一部の実施形態では、核酸分子は、転写後調節エレメントをさらに含む。ある特定の実施形態では、転写後調節エレメントは、変異したウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。特定の一実施形態では、転写後調節エレメントは、配列番号120を含む。
【0445】
一部の実施形態では、核酸分子は、マイクロRNA(miRNA)結合部位を含む。一実施形態では、miRNA結合部位は、miR-142-3pに関するmiRNA結合部位である。他の実施形態では、miRNA結合部位は、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、Rennieら、RNA Biol.13(6):554~560頁(2016)に開示されているmiRNA結合部位、およびhttp://sfold.wadsworth.org/starmirDB.phpにおいて利用可能なSTarMirDBから選択される。
【0446】
一部の実施形態では、核酸分子は、1つまたはそれ以上のDNA核標的化配列(DTS)を含む。DTSは、このような配列を含有するDNA分子の、核内への移行を促進する。ある特定の実施形態では、DTSはSV40エンハンサー配列を含む。ある特定の実施形態では、DTSはc-Mycエンハンサー配列を含む。一部の実施形態では、DTSは第一のITRと第二のITRの間にある。一部の実施形態では、DTSは第一のITRに対して3’、治療用タンパク質に対して5’にある。他の実施形態では、DTSは、治療用タンパク質に対して3’および第二のITRに対して5’にある。
【0447】
一部の実施形態では、核酸分子は、3’UTRポリ(A)テール配列をさらに含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)を含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テールは、アクチンポリ(A)部位を含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テールは、ヘモグロビンポリ(A)部位を含む。
【0448】
特定の一実施形態では、3’UTRポリ(A)テール配列は、配列番号122を含む。
【0449】
III.組織特異的発現
ある特定の実施形態では、例えば、凝固因子導入遺伝子に作動可能に連結される1つまたはそれ以上のmiRNA標的配列をベクター内に含むことが有用である。よって、本開示は、凝固因子ヌクレオチド配列に作動可能に連結されるか、またはそうでなければ、ベクター内に挿入される少なくとも1つのmiRNA配列標的も提供する。ベクターに含まれるmiRNA標的配列の2つ以上の複製によって、その系の有効性を高めることができる。異なるmiRNA標的配列も含まれる。例えば、2つ以上の導入遺伝子を発現するベクターは、2つ以上のmiRNA標的配列(同じであるかまたは異なる場合もある)の制御下に導入遺伝子を有することができる。miRNA標的配列は、タンデムに存在することができるが、他の配置も含まれる。miRNA標的配列を含有する導入遺伝子発現カセットは、ベクター内にアンチセンス方向で挿入することもできる。アンチセンス方向は、ウイルス粒子の産生において、その発現を回避しなければ、プロデューサー細胞に対して毒性を示すことのある遺伝子産物の発現を回避するのに有用である場合がある。他の実施形態では、ベクターは、同じかまたは異なるmiRNA標的配列を1、2、3、4、5、6、7または8複製含む。しかしながら、ある特定の別の実施形態では、ベクターは、いずれのmiRNA標的配列も含まないことになる。miRNA標的配列を含むか否か(および何個のmiRNA標的配列を含むか)の選択は、意図する組織標的、所要の発現レベルなどの公知のパラメーターなどによって導き出される。
【0450】
一実施形態では、標的配列は、骨髄系コミット前駆細胞において、発現を最も有効にブロックするとともに、より初期のHSPCにおいて、発現を少なくとも部分的にブロックすることが報告されているmiR-223標的である。miR-223標的は、顆粒球、単球、マクロファージ、骨髄樹状細胞を含む分化した骨髄細胞における発現をブロックすることができる。miR-223標的は、リンパ球系統または赤血球系統における導入遺伝子の活発な発現に依存する遺伝子療法用途に好適である場合もある。miR-223標的は、ヒトHSCにおける発現も非常に有効にブロックすることができる。
【0451】
別の実施形態では、標的配列は、miR142標的(tccataaagt aggaaacact aca(配列番号43))である。一実施形態では、ベクターは、miR-142標的配列を4複製含む。ある特定の実施形態では、miR-142(142T)のような造血特異的マイクロRNAの相補配列を、ベクター、例えば、レンチウイルスベクター(LV)の3’非翻訳領域に組み込み、導入遺伝子のコードする転写物がmiRNA媒介性下方調節を受けやすくする。この方法によって、非造血細胞における導入遺伝子の発現を保持したまま、造血系統抗原提示細胞(APC)において、導入遺伝子の発現を防止することができる(Brownら、Nat Med 2006)。この戦略によって、導入遺伝子の発現に関するストリンジェントな転写後制御が可能となるため、導入遺伝子の安定な送達と長期的な発現が可能となる。一部の実施形態では、miR-142の調節により、形質導入された細胞の免疫媒介性クリアランスが防止され、および/または抗原特異的調節T細胞(T reg)が誘導されて、導入遺伝子のコードする抗原に対する強固な免疫寛容が媒介される。
【0452】
一部の実施形態では、標的配列は、miR181標的である。Chen C-ZおよびLodish H、Seminars in Immunology(2005)17(2):155~165には、マウス骨髄内のB細胞で特異的に発現するmiRNAであるmiR-181が開示されている(ChenおよびLodish、2005)。いくつかのヒトmiRNAが、白血病に関連することも開示されている。
【0453】
標的配列は、miRNAに完全にまたは部分的に相補的である場合がある。用語「完全に相補的な」は、標的配列が、それを認識するmiRNAの配列に対して100%相補的である核酸配列を有することを意味する。用語「部分的に相補的な」は、標的配列が、それを認識するmiRNAの配列に対して一部分のみ相補的であり、それによって、部分的に相補的な配列が、依然として、miRNAによって認識されることを意味する。換言すると、本開示の関連において、部分的に相補的な標的配列は、対応するmiRNAを認識するのに有効であり、そのmiRNAを発現する細胞における導入遺伝子の発現を防止または低減するのに有効である。miRNA標的配列の例は、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、WO2007/000668、WO2004/094642、WO2010/055413、またはWO2010/125471に記載されている。
【0454】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、肝臓を標的とする。ある特定の実施形態では、導入遺伝子の発現は、肝細胞を標的とする。他の実施形態では、導入遺伝子の発現は、内皮細胞を標的とする。特定の一実施形態では、導入遺伝子の発現は、内因性FVIIIを自然に発現した任意の組織を標的とする。
【0455】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、中枢神経系を標的とする。ある特定の実施形態では、導入遺伝子の発現は、神経細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、求心性神経を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、遠心性神経を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、介在神経細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、グリア細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、星状細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、乏突起膠細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、ミクログリアを標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、上衣細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、シュワン細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、衛星細胞を標的とする。
【0456】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、筋細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、平滑筋を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、心筋を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、骨格筋を標的とする。
【0457】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、眼を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、光受容細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、網膜神経節細胞を標的とする。
【0458】
IV.宿主細胞
本開示は、本開示の核酸分子またはベクターを含む宿主細胞も提供する。本明細書で使用されるように、用語「形質転換」は、広い意味で、遺伝型を変化させ、その結果、レシピエント細胞を変化させる、レシピエント宿主細胞へのDNAの導入を指す。
【0459】
「宿主細胞」とは、組換えDNA技法を用いて構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターで形質転換した細胞を指す。本開示の宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物起源のものであり;最も好ましくは、ヒトまたはマウス起源のものである。当業者には、目的に最も適する特定の宿主細胞株を優先的に決定する能力がある。例示的な宿主細胞株として、これらに限定されないが、CHO、DG44およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40T抗原を有するCVIの誘導体)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3.times.63-Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA-1C1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、PER.C6(登録商標)、NS0、CAP、BHK21、およびHEK293(ヒト腎臓)が挙げられる。特定の一実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6(登録商標)細胞、NS0細胞、CAP細胞およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、本開示の宿主細胞は、昆虫起源のものである。特定の一実施形態では、宿主細胞は、SF9細胞である。宿主細胞株は、典型的には、商業サービスのAmerican Tissue Culture Collection、または公開された文献から入手可能である。
【0460】
本開示の核酸分子またはベクターの宿主細胞への導入は、当業者に周知の様々な技法によって行うことができる。これらの技法として、これらに限定されないが、トランスフェクション(電気泳動および電気穿孔を含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープ化DNAとの細胞融合、マイクロインジェクション、およびインタクトウイルスによる感染が挙げられる。Ridgway、A.A.G.「Mammalian Expression Vectors」第24.2章、470~472頁 Vectors、RodriguezおよびDenhardt編(Butterworths、Boston、Mass.1988)を参照のこと。最も好ましくは、宿主へのプラスミドの導入は、電気穿孔によるものである。形質転換した細胞を、軽鎖と重鎖の産生に適する条件下で成長させ、重鎖タンパク質および/または軽鎖タンパク質の合成についてアッセイする。例示的なアッセイ技法として、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射線免疫アッセイ(RIA)、または蛍光活性化セルソーター解析(FACS)、免疫組織化学などが挙げられる。
【0461】
本開示の単離された核酸分子またはベクターを含む宿主細胞を、適切な成長培地で成長させる。本明細書で使用されるように、用語「適切な成長培地」は、細胞の成長に必要な栄養素を含有する培地を意味する。細胞の成長に必要な栄養素として、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、および増殖因子を挙げることができる。場合によって、培地は、1つまたはそれ以上の選択因子を含有することができる。場合によって、培地は、仔ウシ血清またはウシ胎仔血清(FCS)を含有することができる。一実施形態では、培地は、IgGを実質的に含有しない。成長培地は、一般的には、例えば、薬物選択またはDNA構築物上の選択可能なマーカーもしくはDNA構築物とコトランスフェクションした選択可能なマーカーによって相補される必須栄養素の欠損によって、DNA構築物を含有する細胞を選択することになる。培養哺乳動物細胞は、一般的には、市販の血清含有培地または無血清培地(例えば、MEM、DMEM、DMEM/F12)で増殖させる。一実施形態では、培地は、CDoptiCHO(Invitrogen、Carlsbad、CA)である。別の実施形態では、培地は、CD17(Invitrogen、Carlsbad、CA)である。使用される特定の細胞株に適する培地の選択は、当業者のレベルの範囲内である。
【0462】
V.ポリペプチドの製造
本開示は、本開示の核酸分子によってコードされるポリペプチドも提供する。他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本開示の核酸分子を含むベクターによってコードされる。さらに他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本開示の核酸分子を含む宿主細胞によって産生される。
【0463】
他の実施形態では、本開示は、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの生成方法であって、ここで凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドが産生される条件下で、本開示の宿主細胞を培養すること、及び凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドを回収することを含む、方法も提供する。一部の実施形態では、ここで凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの発現は、参照ヌクレオチド配列(例えば、配列番号16:親FVIII遺伝子配列)を含むこと以外は同じ条件下で培養される宿主細胞よりも増加する。
【0464】
他の実施形態では、本開示は、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの発現を増加させる方法であって、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドが核酸分子によって発現される条件下で、本開示の宿主細胞を培養することを含み、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの発現が、参照核酸分子(例えば、配列番号16:親FVIII遺伝子配列)を含む同じ条件下で培養される宿主細胞よりも増加する、方法を提供する。
【0465】
他の実施形態では、本開示は、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの収量の改善方法であって、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドが、本明細書に開示されている核酸分子によって産生される条件下で、宿主細胞を培養することを含み、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの収量が、参照核酸配列(例えば、配列番号16:親FVIII遺伝子配列)を含む同じ条件下で培養される宿主細胞よりも増加する、方法を提供する。
【0466】
本開示の治療用タンパク質、例えば、凝固因子は、げっ歯類、ヤギ、ヒツジ、ブタ、またはウシのようなトランスジェニック動物において合成することができる。用語「トランスジェニック動物」は、それらのゲノムに外来遺伝子が組み込まれた、非ヒト動物を指す。この遺伝子は、生殖系組織に存在するので、親から子孫に伝わる。外因性遺伝子は、単一細胞胚に導入される(Brinsterら 1985年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:4438頁)。免疫グロブリン分子を産生するトランスジェニックを含むトランスジェニック動物の生産方法は、当技術分野で公知である(Wagnerら 1981年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:6376;McKnightら 1983年、Cell 34:335;Brinsterら 1983年、Nature 306:332;Ritchieら 1984、Nature 312:517;Baldassarreら 2003、Theriogenology 59:831;Roblら 2003、Theriogenology 59:107;Malassagneら 2003、Xenotransplantation 10(3):267)。
【0467】
VII.医薬組成物
本開示の核酸分子、核酸分子によってコードされるポリペプチド、ベクター、または宿主細胞を含有する組成物は、好適な、薬学的に許容される担体を含有することができる。例えば、この組成物は、活性化合物を処理して、作用部位への送達用に設計された調製物にするのを容易にする賦形剤および/または補助剤を含有することができる。
【0468】
一実施形態では、本開示は、(a)本明細書に開示されている核酸分子、ベクター、ポリペプチド、または宿主細胞;および(b)薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0469】
一部の実施形態では、医薬組成物は送達剤をさらに含む。ある特定の実施形態では、送達剤は脂質ナノ粒子(LNP)を含む。他の実施形態では、医薬組成物は、リポソーム、他のポリマー分子、およびエキソソームをさらに含む。
【0470】
本明細書で使用されるように、「脂質ナノ粒子」は、分子間力により互いに物理的に会合している複数の脂質分子を含むナノ粒子を指す。脂質ナノ粒子は、例えば、マイクロスフェア(単層及び多重層ベシクル、例えばリポソームを含む)、エマルション中の分散相、ミセル又は懸濁液中の内相であってもよい。
【0471】
一部の実施形態において、本開示は、本発明の核酸分子を被包した脂質ナノ粒子ホストを含み得る被包型核酸分子組成物を提供する。脂質ナノ粒子は、1つ又はそれ以上の脂質(例えば、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及びPEG修飾脂質)を含み得る。ある特定の実施形態において、本開示の脂質ナノ粒子は、本発明の1つ又はそれ以上の核酸分子を1つ又はそれ以上の標的細胞に送達するために製剤化される。適切な脂質の例としては、限定することなく、ホスファジチジル化合物(例えば、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ガングリオシド、及びセレブロシド)が挙げられる。「カチオン性脂質」は、特定のpH(例えば、生理的pH)で正味の正電荷を有する任意の脂質種を指す。
【0472】
ある特定の実施形態において、本開示の脂質ナノ粒子は特定のN/P比を有する。本明細書で使用されるように「N/P比」又は「NP比」は、正に荷電したポリマーアミン基対負に荷電可能な核酸ホスフェート基の比を指す。脂質ナノ粒子/核酸分子複合体のN/P特性は、正味の表面電荷、安定性及び寸法のような特性に影響を及ぼし得る。本明細書に記載されるような脂質ナノ粒子のNP比は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80、約85、約90、約95、約100、及びその間の任意の比であり得る。例えば、本明細書に記載される脂質ナノ粒子のNP比は約18、約36、又は約72であり得る。
【0473】
したがって、ある特定の実施形態において、医薬組成物は、脂質ナノ粒子中に被包された本開示の核酸分子、及び薬学的に許容しうる賦形剤を含む。
【0474】
医薬組成物は、ボーラス注射による非経口投与(すなわち、静脈内、皮下、または筋肉内投与)用に製剤化することができる。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、アンプルまたは複数回用量容器内に保存剤を加えた状態で供給することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤、または乳剤のような形態をとり、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤のような製剤化剤を含有する場合がある。あるいは、活性成分は、好適なビヒクル、例えば、パイロジェンフリー水で構成される粉末形態である場合がある。
【0475】
非経口投与用の好適な製剤として、水溶性形態、例えば、水溶性塩である、活性化合物の水性液剤も挙げられる。さらに、適切な油性注射用懸濁剤としての活性化合物の懸濁剤を投与することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとして、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、エチルオレエートまたはトリグリセリドが挙げられる。水性注射用懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよびデキストランを含む、懸濁剤の粘度を向上させる物質を含有することができる。場合によって、懸濁剤は、安定剤も含有することができる。リポソームを使用して、細胞または間質腔への送達用に、本開示の分子を封入することもできる。例示的な薬学的に許容される担体は、生理学的に適合可能な溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなどである。一部の実施形態では、組成物は、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール(マンニトール、ソルビトールなど)、または塩化ナトリウムを含む。他の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される物質(湿潤剤など)または活性成分の貯蔵寿命もしくは有効性を向上させる少量の補助物質(湿潤剤もしくは乳化剤、保存剤または緩衝剤など)を含む。
【0476】
本開示の組成物は、例えば、液体(例えば、注射用溶液および注入用溶液)、分散液、懸濁液、半固体および固体の剤形を含む、種々の形態であり得る。好ましい形態は、投与方法と治療用途に応じて変わる。
【0477】
組成物は、液剤、マイクロエマルジョン剤、分散剤、リポソーム、または高い薬物濃度に適する他の規則構造体として製剤化することができる。滅菌注射用液剤は、必要に応じて、上で列挙した成分のうちの1つまたは組合せとともに、活性成分を所要量で適切な溶媒中に投入し、続いてろ過滅菌することによって製造することができる。一般的に、分散剤は、塩基性分散媒と上で列挙した他の成分のうちの必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクルに活性成分を投入することによって製造される。滅菌注射用液剤を調製するための滅菌散剤の場合には、好ましい方法は、事前に滅菌ろ過した溶液から、活性成分といずれかの所望の追加成分との粉末をもたらす真空乾燥と凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散剤の場合には所要の粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の吸収時間の延長は、吸収を遅延させる作用剤、例えば、モノステアレート塩およびゼラチンを組成物中に含むことによって実現することができる。
【0478】
活性成分は、放出制御製剤または放出制御デバイスを用いて製剤化することができる。このような製剤およびデバイスの例として、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系が挙げられる。生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリアンハイドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。このような製剤およびデバイスの製造方法は、当技術分野で公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978を参照のこと。
【0479】
注射用デポー製剤は、ポリラクチド-ポリグリコリドのような生分解性ポリマー内の薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製することができる。薬物とポリマーとの比率、および用いられるポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の例示的な生分解性ポリマーは、ポリオルトエステルおよびポリアンハイドライドである。注射用デポー製剤は、薬物をリポソームまたはマイクロエマルジョン中に捕捉することによっても製造することができる。
【0480】
補足的な活性化合物を組成物中に組み込むことができる。一実施形態では、本開示の核酸分子は、凝固因子、またはそのバリアント、フラグメント、アナログもしくは誘導体とともに製剤化される。例えば、凝固因子として、これらに限定されないが、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、フィブリノーゲン、フォンビルブランド因子またはこれらのいずれかの組換え可溶性組織因子(rsTF)もしくは活性化形態が挙げられる。止血剤の凝固因子として、抗線溶薬、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、トラネキサム酸も挙げることができる。
【0481】
投与レジメンを調整して、最適な所望の応答をもたらすことができる。例えば、単回ボーラス投与を行うことも、経時的に、数回の分割投与を行うことも、または治療状況の緊急性によって示されるのに応じて、用量を比例的に減少または増加させることもできる。投与のし易さおよび投薬量の均一化のために、非経口組成物を投薬量単位形態で製剤化するのが有益である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub.Co.、Easton、Pa.1980年)を参照のこと。
【0482】
活性化合物に加えて、液体剤形は、水、エチルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルのような不活性成分を含有することができる。
【0483】
好適な医薬担体の非限定例は、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesにも記載されている。賦形剤のいくつかの例として、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ナトリウムステアレート、グリセリンモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、pH緩衝試薬、および湿潤剤または乳化剤も含有することができる。
【0484】
経口投与用には、医薬組成物は、従来の手段によって製造した錠剤またはカプセル剤の形態をとることができる。組成物は、液剤、例えば、シロップ剤または懸濁剤として製造することもできる。液体は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ剤、セルロース誘導体または水素添加食用脂)、乳化剤(レシチンまたはアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分別植物油)、および保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を含むことができる。調製剤は、矯味矯臭剤、着色剤および甘味剤も含むことができる。あるいは、組成物は、水または別の好適なビヒクルで構成するための乾燥製品として供給することができる。
【0485】
口腔内投与用では、組成物は、従来のプロトコールに従って、錠剤またはロゼンジ剤の形態をとることができる。
【0486】
吸入による投与用では、本開示に従って使用するための化合物は、利便的には、賦形剤を含むか含まないかにかかわらず、霧状化エアロゾル剤の形態または場合によって、噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素もしくは他の好適な気体とともに、圧縮パックもしくはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達される。加圧エアロゾル剤の場合には、投薬量単位は、バルブを搭載して定量した量を送達することによって決定することができる。化合物とラクトースまたはデンプンのような好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する、例えば、吸入器または注入器において使用するためのゼラチンのカプセル剤およびカートリッジを製剤化することができる。
【0487】
医薬組成物は、直腸投与用に、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含有する坐剤または保持型浣腸剤として製剤化することもできる。
【0488】
一部の実施形態では、組成物は、局所投与、眼内投与、非経口投与、髄腔内投与、硬膜下投与および経口投与からなる群から選択される経路で投与される。非経口投与は、静脈内投与または皮下投与である場合がある。
【0489】
VIII. 処置方法
一部の態様において、本開示は、本明細書において開示される核酸分子、ベクター、ポリペプチド、又は医薬組成物を投与することを含む、それを必要とする対象において疾患又は状態を処置する方法に関する。
【0490】
一部の実施形態において、核酸分子は、第一のITR、第二のITR、及び遺伝子カセットを含み、ここで遺伝子カセットは標的配列をコードし、該標的配列は治療用タンパク質をコードし、そしてここで核酸分子は、それを必要とする対象において疾患又は状態を処置するために使用される。一部の実施形態において、疾患又は状態は、筋肉、中枢神経系(CNS)、眼球、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、肺、皮膚、膀胱、尿管、及び任意のその組合せから選択される臓器に影響を与える。一部の実施形態において、対象は、DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、XLMTM (X連鎖筋細管ミオパチー)、パーキンソン、SMA(脊髄性筋萎縮症)、フリートライヒ運動失調症、GUCY2D-LCA(レーバー先天黒内障)、XLRS(X連鎖網膜分離症)、AMD(加齢性黄斑変性)、ACHM(色覚異常)、RPF65媒介IRD、及び任意のその組合せからなる群より選択される疾患又は状態を有する。
【0491】
一部の実施形態において、核酸分子は、第一のITR、第二のITR、及び遺伝子カセットを含み、ここで遺伝子カセットは標的配列をコードし、ここで標的配列はmiRNAをコードし、そしてここで核酸分子は、それを必要とする対象における疾患又は状態を処置するために使用される。一部の実施形態において、疾患又は状態は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病、及び/又は常染色体優性網膜色素変性症を含む。
【0492】
一部の実施形態において、核酸分子は、第一のITR、第二のITR、及び遺伝子カセットを含み、ここで遺伝子カセットは標的配列をコードし、ここで標的配列は凝固因子をコードし、そしてここで核酸分子はそれを必要とする対象において出血性疾患又は状態を処置するために使用される。出血性疾患又は状態は、出血性血液凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、大出血、筋肉内への大出血、口腔大出血、外傷、頭部外傷、消化器系出血、頭蓋内大出血、腹腔内大出血、胸腔内大出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙内出血、腹膜後隙内出血、腸腰筋外筒内出血およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。さらに他の実施形態では、対象は、手術を受けることが予定されている。また他の実施形態では、処置は、予防的であるかまたは注文対応のものである。
【0493】
本開示は、本開示の核酸分子、ベクター、またはポリペプチドを、それを必要とする対象に投与することを含む、出血性障害を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、出血性障害は、凝固因子、例えば、FVIIIの欠損によって特徴付けられる。一部の実施形態では、出血性障害は、血友病である。一部の実施形態では、出血性障害は、血友病Aである。出血性障害を処置する方法の一部の実施形態では、投与の24時間後の血漿中凝固因子、例えば、FVIIIの活性が、参照核酸分子(例えば、配列番号16、親FVIII遺伝子配列)、参照核酸分子を含むベクター、または参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与された対象よりも向上する。
【0494】
本開示は、治療有効量の、本開示の単離された核酸分子または本開示の核酸分子によってコードされる凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドを投与することを含む、対象における止血障害を処置、寛解、または防止する方法にも関する。単離された核酸分子またはコードされたポリペプチドによる処置、寛解、および防止は、バイパス治療である場合がある。バイパス治療を受ける対象は、凝固因子、例えば、FVIIIに対するインヒビターをすでに発現しているか、または凝固因子インヒビターを発現することを条件とする場合がある。
【0495】
本開示の核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、フィブリン血餅の形成を促すことによって、止血障害を処置または防止する。本開示の核酸分子によってコードされる、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドは、凝固カスケードのメンバーを活性化することができる。凝固因子は、外因経路、内因経路またはこれらの両方に関与することができる。
【0496】
本開示の核酸分子、ベクター、またはポリペプチドを使用して、凝固因子を用いて処置可能であることが知られている止血障害を処置することができる。本開示の方法を使用して処置することができる止血障害として、これらに限定されないが、血友病A、血友病B、フォンビルブランド病、第XI因子欠損(PTA欠損)、第XII因子欠損、さらにはフィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子、または第XIII因子の欠損または構造的異常、関節血症、筋肉出血、口腔出血、大出血、筋肉への大出血、口腔大出血、外傷、頭部の外傷、胃腸出血、頭蓋内大出血、腹腔内大出血、胸腔内大出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙内の出血、腹膜後隙内の出血、および腸腰筋鞘内の出血が挙げられる。
【0497】
一部の実施形態では、止血障害は、遺伝性障害である。一実施形態では、対象は、血友病Aである。他の実施形態では、止血障害は、凝固因子の欠損の結果である。他の実施形態では、止血障害は、FVIIIの欠損の結果である。他の実施形態では、止血障害は、異常なFVIII凝固因子の結果である場合がある。
【0498】
別の実施形態では、止血障害は、後天性障害である場合がある。後天性障害は、裏に潜む二次的な疾患または状態によるものである場合がある。無関連の状態は、一例として、これらに限定されないが、がん、自己免疫疾患、または妊娠である場合がある。後天性障害は、加齢によるものであるか、または裏に潜む二次的な障害を処置するための薬物治療(例えば、がんへの化学療法)によるものである場合がある。
【0499】
本開示は、止血障害または止血障害の獲得の原因となる二次的な疾患もしくは状態を有さない対象を処置する方法にも関する。よって、本開示は、治療有効量の、本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドを投与することを含む、一般的な止血剤を必要とする対象を処置する方法に関する。例えば、一実施形態では、一般的な止血剤を必要とする対象は、手術を受けているか、または手術を受けようとしている。本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、手術の前または後に、予防として投与することができる。本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、手術の間または後に投与して、急性出血エピソードを制御することができる。手術として、これらに限定されないが、肝移植、肝切除、または幹細胞移植を挙げることができる。
【0500】
別の実施形態では、本開示の単離された核酸分子、ベクターまたはポリペプチドを使用して、急性出血エピソードを有する対象であって、止血障害を有さない対象を処置することができる。急性出血エピソードは、無制御な出血を引き起こす重大な外傷、例えば、手術、自動車事故、創傷、裂傷 銃創、またはいずれかの他の外傷事象に起因する場合がある。
【0501】
単離された核酸分子、ベクター、またはタンパク質を使用して、止血障害を有する対象を予防的に処置することができる。単離された核酸分子、ベクター、またはタンパク質を使用して、止血障害を有する対象の急性出血エピソードを処置することができる。
【0502】
別の実施形態では、本開示の単離された核酸分子またはベクターを投与することによる凝固因子タンパク質の発現は、対象における免疫応答を誘導しない。一部の実施形態では、免疫応答は、凝固因子に対する抗体の発生を含む。一実施形態では、免疫応答は、FVIIIに対する抗体の発生を含む。一部の実施形態では、免疫応答は、サイトカインの分泌を含む。一部の実施形態では、免疫応答は、B細胞、T細胞、またはB細胞とT細胞の両方の活性化を含む。一部の実施形態では、免疫応答は、阻害性免疫応答であり、対象における免疫応答は、免疫応答を発生していない対象における凝固因子の活性に対して、凝固因子タンパク質の活性を低下させる。ある特定の実施形態では、本開示の単離された核酸分子またはベクターを投与することによる凝固因子タンパク質の発現により、凝固因子タンパク質または単離された核酸分子またはベクターから発現される凝固因子タンパク質に対する阻害性免疫応答が防止される。
【0503】
一部の実施形態では、止血を促進する少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて、本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはタンパク質組成物が投与される。前記他の薬剤は、凝固活性が示されている治療において、止血を促進する。一例として、これらに限定されないが、止血剤として、FV、FVII、FIX、FX、FXI、FXII、FXIII、プロトロンビン、もしくはフィブリノーゲンまたはこれらのいずれかの活性化形態を挙げることができる。凝固因子または止血剤として、抗線溶薬、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、トラネキサム酸も挙げることができる。
【0504】
本開示の一実施形態では、組成物(例えば、単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチド)は、対象に投与した場合に、凝固因子が活性化可能な形態で存在する組成物である。このような活性化可能な分子を、対象に投与後、インビボにおいて、凝固部位で活性化することができる。
【0505】
したがって、一部の実施形態において、本開示は、凝固因子をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において出血障害を処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、非アデノ随伴ウイルス(非AAV)のITRである。一部の実施形態において、本開示は、凝固因子をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において出血障害を処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187又は188に示されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、本開示は、凝固因子をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において出血障害を処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187又は188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【0506】
したがって、一部の実施形態において、本開示は、第VIII因子をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において血友病Aを処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、非アデノ随伴ウイルス(非AAV)のITRである。一部の実施形態において、本開示は、第VIII因子をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において血友病Aを処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187又は188に示されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、本開示は、第VIII因子をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において血友病Aを処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187又は188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【0507】
本開示はまた、本開示の核酸分子、ベクター、又はポリペプチドを、それを必要とする対象に投与することを含む、肝臓の代謝障害を処置する方法を提供する。一部の実施形態において、肝臓の代謝障害は、以下からなる群より選択される:フェニルケトン尿症(
【0508】
図7Eは、マウスPAH導入遺伝子及びB19d135又はGPCd165 ITRのいずれかを含有するssDNAで処置されたPKUマウスからの肝臓溶解物のウェスタン免疫ブロットを示す。処置後81日目に肝臓を集め、そしてタンパク質溶解物を抽出した。各ウェルは単一の動物を表す。FLAG-タグ化マウスPAHタンパク質を、M2抗FLAG抗体を使用して検出し、そしてGAPDHローディングコントロールを比較のために含めた。
【0509】
)、尿素サイクル異常症(例えば、トランスカルバミラーゼ(OTC)、又はアルギニノコハク酸合成酵素(ASS)の欠乏)、リソソーム蓄積症(例えば、ムコ多糖症)、及び糖原病(例えば、I型、II型、III型、IV型糖原病)。他の肝臓の代謝障害としては、限定することなく、ウィルソン病、アルファ-1アンチトリプシン欠乏症、妊娠同種免疫性肝疾患(GALD)、脂肪酸酸化異常症、ガラクトース血症、脂質蓄積症、チロシン血症、及びペルオキシソーム病が挙げられる。
【0510】
一部の実施形態において、本開示は、対象において欠乏している肝臓関連代謝酵素をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を該対象に投与することを含む、それを必要とする対象において肝臓の代謝障害を処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、非アデノ随伴ウイルス(非AAV)のITRのである。一部の実施形態において、本開示は、治療用タンパク質(例えば、肝臓の適切な代謝機能に必要とされるタンパク質)をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において肝臓の代謝障害を処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187又は188に示されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、本開示は、治療用タンパク質(例えば、肝臓の適切な代謝機能に必要とされるタンパク質)をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を対象に投与することを含む、それを必要とする対象において肝臓の代謝障害を処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187若しくは188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【0511】
一部の実施形態において、本開示は、フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を対象に投与することを含む、それを必要とする対象においてフェニルケトン尿症(PKU)を処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、非アデノ随伴ウイルス(非AAV)のITRである。一部の実施形態において、本開示は、フェニルアラニン水酸化酵素(PAH)をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を対象に投与することを含む、それを必要とする対象においてフェニルケトン尿症(PKU)を処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187又は188に示されるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態において、本開示は、フェニルアラニン水酸化酵素をコードする異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットに隣接している第一の末端逆位配列(ITR)及び第二のITRを含む核酸分子を対象に投与することを含む、それを必要とする対象においてフェニルケトン尿症(PKU)を処置する方法を提供し、ここで第一のITR及び/又は第二のITRは、配列番号180、181、183、184、185、186、187若しくは188に示されるヌクレオチド配列と、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、若しくは100%同一であるヌクレオチド配列、又はその機能性誘導体を含む。
【0512】
単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、またはいずれかの粘膜表面を介した投与、例えば、経口投与、舌下投与、口腔内投与、舌下投与、経鼻投与、直腸投与、膣内投与または経肺経路を介した投与を行うことができる。凝固因子タンパク質は、キメラタンパク質の所望の部位への徐放を可能とするバイオポリマー固体支持体に埋め込まれるかまたは連結される場合がある。
【0513】
経口投与用に、医薬組成物は、従来の手段によって製造された錠剤またはカプセル剤の形態をとることができる。組成物は、液剤、例えば、シロップ剤または懸濁剤として製造することもできる。液剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ剤、セルロース誘導体または水素添加食用脂)、乳化剤(レシチンまたはアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分別植物油)、および保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を含むことができる。製剤は、矯味矯臭剤、着色剤および甘味剤も含むことができる。あるいは、組成物は、水または別の好適なビヒクルで構成するための乾燥生成物として供給することができる。
【0514】
口腔内および舌下投与用に、組成物は、従来のプロトコールに従って、錠剤、ロゼンジ剤または速溶性フィルムの形態をとることができる。
【0515】
吸入による投与用に、本開示に従って使用するための凝固因子活性を有するポリペプチドは、利便的に、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素または他の好適な気体とともに、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー(例えば、PBS中)の形態で送達される。加圧エアロゾル剤の場合には、投薬量単位は、バルブを搭載して定量した量を送達することによって決定することができる。化合物とラクトースまたはデンプンのような好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する、例えば、吸入器または注入器において使用するための例えばゼラチンのカプセル剤およびカートリッジを製剤化することができる。
【0516】
一実施形態では、単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドの投与経路は、非経口である。本明細書で使用されるように、用語非経口は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与または膣内投与を含む。静脈内形態の非経口投与が好ましい。これら全ての投与形態は、明らかに、本開示の範囲内にあることが企図されているが、投与のための形態は、注射用液剤、特に、静脈内もしくは動脈内注射または点滴用の液剤となる。通常、好適な注射用医薬組成物は、緩衝剤(例えば、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤またはクエン酸緩衝剤)、界面活性剤(例えばポリソルベート)、場合によって安定化剤(例えばヒトアルブミン)などを含むことができる。しかしながら、本発明の教示と適合する他の方法では、単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、有害な細胞集団の部位に直接送達することによって、治療剤への疾患組織の曝露を増大することができる。
【0517】
非経口投与用調製剤として、滅菌水性もしくは非水性液剤、懸濁剤、および乳剤が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油など)、および注射用有機エステル(エチルオレエートなど)である。水性担体として、水、アルコール溶液/水溶液、乳剤または懸濁液(生理食塩水および緩衝化媒体を含む)が挙げられる。本開示では、薬学的に許容される担体として、これらに限定されないが、0.01~0.1M、及び好ましくは0.05Mのリン酸緩衝剤または0.8%生理食塩水が挙げられる。他の一般的な非経口ビヒクルとして、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとして、流体および栄養補給液、電解質補液(リンゲルデキストロースベースのものなど)などが挙げられる。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどのような保存剤および他の添加剤も存在することができる。
【0518】
さらに詳細には、注射用途に好適な医薬組成物として、滅菌水溶液剤(水溶性の場合)または分散液剤および滅菌注射用液剤もしくは分散液剤の用時調製用の滅菌粉末が挙げられる。このような場合には、組成物は、無菌でなければならず、容易に注射可能な程度の流体でなければならない。医薬組成物は、製造条件および保管条件下で安定でなければならず、そして細菌および真菌のような微生物の汚染作用から保護するのが好ましい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにこれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒である場合がある。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散剤の場合には所要の粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0519】
医薬組成物は、直腸投与用に、例えば、カカオバターまたは他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含有する坐剤または保持型浣腸剤として製剤化することもできる。
【0520】
状態を処置するための、本開示の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬品、および処置が予防的なものであるか治療的なものであるかを含む多くの様々な要因に応じて変化する。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も処置することができる。当業者に知られている常法を使用して、処置投薬量を用量設定して、安全性および効能を最適化することができる。
【0521】
本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、場合によって、処置(例えば、予防的処置または治療的処置)を必要とする障害または状態の処置に有効である他の薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0522】
本明細書で使用されるように、補助療法と併せてまたは組み合わせて、本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドを投与することは、療法と開示されているポリペプチドとを順次に、同時に、同域に、併用して、共存してまたは同時期に投与または適用することを意味する。処置の全体的有効性を増強するために、併用療法レジメンの各種成分の投与または適用のタイミングを決定することができることが、当業者に認識されるであろう。当業者(例えば、医師)は、過度の実験なしに、選択された補助療法と本明細書の教示に基づき、有効な併用療法レジメンを容易に識別することができるであろう。
【0523】
さらに当然のことながら、(例えば、併用療法レジメンを提供するために)1つの薬剤または複数の薬剤と併せてまたは組み合わせて、本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドを使用することができる。本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドと組み合わせることができる例示的な薬剤として、治療される特定の障害に対する最新の標準ケアを表す薬剤が挙げられる。このような薬剤は、本質的に化学的でも生物学的でもよい。用語「生物学的」または「生物学的薬剤」は、治療剤としての使用を意図されている、生物および/またはそれらの産物から作製される任意の薬学的に活性な薬剤を指す。
【0524】
本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと組み合わせて使用される薬剤の量は、対象によって変化するかまたは当技術分野で公知の事象に従って投与することができる。例えば、Bruce A Chabnerら、GOODMAN&GILMAN’S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICSにおけるAntineoplastic Agents、1233~1287(Joel G.Hardmanら編、第9版 1996年)を参照のこと。別の実施形態では、このような薬剤は、標準ケアと整合する量で投与される。
【0525】
一実施形態では、本明細書に開示されている核酸分子および、それを必要とする対象に核酸分子を投与するための使用説明書を含むキットも、本明細書に開示されている。別の実施形態では、本発明において提供される核酸分子の産生のためのバキュロウイルス系が、本明細書に開示されている。核酸分子は、昆虫細胞において産生される。別の実施形態では、発現構築物のためのナノ粒子送達系が提供される。発現構築物は、本明細書に開示されている核酸分子を含む。
【0526】
IX. 遺伝子療法
本開示のある特定の態様は、本開示の単離された核酸分子を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象において、遺伝構築物を発現する方法を提供する。一部の態様では、本開示は、本開示の単離された核酸分子を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象において、ポリペプチドの発現を増加させる方法を提供する。他の態様では、本開示は、本開示の単離された核酸分子、例えば、miRNAを含む核酸配列を、それを必要とする対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、ポリペプチドの発現をモジュレートする方法を提供する。一部の態様では、本開示は、本開示の単離された核酸分子、例えば、miRNAを含む核酸配列を、対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、標的遺伝子の発現を下方調節する方法を提供する。
【0527】
これらに限定されないが、血友病Aを含む、種々の状態に対して考え得る処置として、体細胞遺伝子療法が探求されている。ベクターの単回投与後、凝固因子、例えば、FVIIIの継続的な内因的産生を介して疾患を治癒するその潜在能力のために、遺伝子療法は、血友病に対する特に魅力的な処置である。その臨床症状が、全体として、血漿においてわずかな量(200ng/ml)で循環する単一の遺伝子産物(例えば、FVIII)の欠如に起因するため、血友病Aは、遺伝子置き換え手法にかなり適している。
【0528】
従来のウイルスベースの遺伝子送達の使用は、ヒトにおいて免疫応答を誘導することが示されてきた。ウイルスのカプシドタンパク質は、ヒト免疫系の様々な構成要素を誘発することができる。AAVはヒト集団において一般的なウイルスであり、大部分の人々はAAVに曝露されたことがあり、そしてAAVは例えばアデノウイルスより免疫原性が低いことが示されたきたので、AAVベースの遺伝子送達は魅力的であった。したがって、大部分の人々は、彼らが以前に曝露されたことのある特定のバリアントに対して免疫応答をすでに発生したことがある。この既存の適応応答には、AAVを用いたその後の再感染及び/又は形質導入された細胞の除去の臨床上の有効性を減少させ得るNAb及びT細胞が含まれ得、これは、AAVベースの遺伝子療法処置に対して既存の抗AAV免疫を有する患者を不適格にする。本開示の核酸分子は、非ウイルスベースの遺伝子療法において用途を見出す。ウイルスカプシドは本開示の核酸分子を使用する遺伝子送達に必ずしも必要ではないので、対象のその後の再投与(又は再投薬)がなければウイルス成分に対する免疫は発生しない。このように、本開示の核酸分子は、長期の遺伝子送達ストラテジーのための再投薬を可能にする。
【0529】
さらに、本明細書に記載されるように、本開示の核酸分子は、投与された際に安定な導入遺伝子発現を推進するために、遺伝子カセットに隣接している非AAVパルボウイルスITRを含む。ITRの存在は安定な導入遺伝子発現に必要であり、
図5に示されるように、この場合、ITRを含まない核酸は、安定な導入遺伝子発現を達成することができなかった(「dsDNA no ITR」及び「ミニサークル」を参照のこと)。
【0530】
本開示の凝固因子タンパク質は、哺乳動物、例えば、ヒトの患者において、インビボで産生させることができる。出血凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、大出血、筋肉への大出血、口腔大出血、外傷、頭部の外傷、胃腸出血、頭蓋内大出血、腹腔内大出血、胸腔内大出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙内の出血、腹膜後隙内の出血、および腸腰筋鞘内の出血からなる群から選択される出血性疾患または障害の処置に対する遺伝子療法による手法を使用することは、治療上有益であろう。一実施形態では、出血性疾患または障害は、血友病である。別の実施形態では、出血性疾患または障害は、血友病Aである。
【0531】
他の状態も、本明細書に開示されている核酸分子を使用する処置に対して好適である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、筋肉、中枢神経系(CNS)、眼、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、肺、皮膚、膀胱、泌尿器、またはこれらの任意の組合せから選択される標的器官に影響を及ぼす疾患または状態を処置するために使用される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、XLMTM(X連鎖性筋細管ミオパチー)、パーキンソン、SMA(脊髄性筋萎縮症)、フリードライヒ運動失調症、GUCY2D-LCA(レーバー先天黒内障)、XLRS(X-連鎖性網膜分離症)、AMD(加齢黄斑変性症)、ACHM(色覚異常)、RPF65に媒介されるIRDから選択される疾患または状態を処置するために使用される(表9)。
【0532】
【0533】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、リソソーム蓄積症を処置するために使用される。一部の実施形態では、リソソーム蓄積症は、MLD(異染性白質ジストロフィー)、MPS(ムコ多糖症)、PKU(フェニルケトン尿症)、ポンペ糖原病II型、またはこれらの任意の組合せから選択される。
【0534】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、マイクロRNA(miRNA)療法において使用される。一部の実施形態では、miRNAは、遺伝子またはタンパク質の過剰発現によって引き起こされる状態を処置する。一部の実施形態では、miRNAは、タンパク質の蓄積によって引き起こされる状態を処置する。一部の実施形態では、miRNAは、遺伝子またはタンパク質の誤発現によって引き起こされる状態を処置する。一部の実施形態では、miRNAは、変異体の遺伝子の発現によって引き起こされる状態を処置する。一部の実施形態では、miRNAは、異種遺伝子の発現によって引き起こされる状態を処置する。ある特定の実施形態では、miRNA療法によって、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、ハンチントン病、AdRP(常染色体優性網膜色素変性症)、およびこれらの任意の組合せから選択される状態が処置される。ある特定の実施形態では、本開示の方法は、本明細書に開示されている核酸分子を投与することによって、ALSを標的とすること、処置することを含み、ここで核酸分子はmiRNAをコードする遺伝子カセットを含み、miRNAはSOD1の発現を標的とする。ある特定の実施形態では、miRNAは、Dirrenら、Annals of Clinical and Translational Neurology 2(2):167~84(2015年2月)に開示されているmiR SOD1人工的miRNAを含む。SOD1遺伝子の変異は、遺伝性ALS症例の約20%を占める。野生型SOD1は、神経培養において抗アポトーシス特性を実証したが、変異体のSOD1は、脊髄ミトコンドリアにおけるアポトーシスを促進するが、肝臓のミトコンドリアにおいては促進しない(変異体のSOD1が両者において等しく発現されるにもかかわらず)。変異したSOD1の発現を下方調節することにより、ALSにおける運動神経細胞変性を阻害させるかもしれない。
【0535】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、本明細書に開示されている核酸分子を投与することによって、ハンチントン病を標的とすること、処置することを含み、ここで核酸分子はmiRNAをコードする遺伝子カセットを含み、miRNAは、HTTの発現を標的とする。ある特定の実施形態では、miRNAは、Eversら、Molecular Therapy 26(9):1~15(2018年6月に印刷に先立って電子的に公開された)に開示されているmiHTTにより操作されたmiRNAを含む。ハンチントン病は、正常範囲を超える遺伝子の繰り返しセクションの長さによって引き起こされるいくつかのトリプレットリピート障害のうちの1つである。HTTは、トリプレットリピートとして知られている3つのDNA塩基-シトシン-アデニン-グアニンの配列(CAG)-複数回繰り返し(すなわち、CAGCAGCAG...)を含有する。CAGは、アミノ酸であるグルタミンに関する3文字遺伝子コード(コドン)であり、よって、一連のこれらの繰り返しにより、ポリグルタミン鎖(またはポリQ鎖)、および遺伝子の繰り返し部分である、ポリQ領域として知られるグルタミン鎖の産生がもたらされる。一般的に、ヒトは、細胞質タンパク質であるハンチンチンの産生をもたらすポリQ領域における36より少ないグルタミンの繰り返しを有する。しかしながら、36またはそれ以上のグルタミンの配列は、異なる特徴を有するタンパク質の産生をもたらす。この変更された形態は、変異ハンチンチン(mHTT)と称され、ある特定のタイプの神経細胞の崩壊速度を増加させる。一般的に、CAGの繰り返し数は、このプロセスが影響を及ぼされる程度に関連し、症状の発症年齢の変動の約60%を占める。残りの変動は、環境とハンチントン病のメカニズムを改変する他の遺伝子に起因する。36~39の繰り返しにより、症状の非常に遅い発症とより遅い進行を伴う、疾患の浸透形態の低減をもたらす。一部の場合には、発症が非常に遅く、症状は気付かれない場合もある。非常に多い繰り返し数ではハンチントン病は十分に浸透し、20歳より下の年齢でも起こる場合があり、その場合、若年性ハンチントン病、無動-筋強剛、またはウエストファールバリアントハンチントン病と称される。これは、ハンチントン病保有者の約7%を占める。
【0536】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、本明細書に開示されている核酸分子を投与することによって、常染色体優性網膜色素変性症(AdRP)を標的化し処置することを含み、ここで核酸分子は、miRNAをコードする遺伝子カセットを含み、miRNAは、RHO(ロドプシン)の発現を標的とする。ある特定の実施形態では、miRNAは、miR-708を含む(Behrmanら、JCB 192(6):919~27頁(2011)を参照のこと)。網膜色素変性症の原因であるRHO遺伝子変異の大部分は、ロドプシンタンパク質の折り畳みまたは輸送を変更する。いくつかの変異は、光に応答して活性化される代わりに、ロドプシンを構成的に活性化させる。研究によって、ロドプシンの変更されたバージョンが、本質的な細胞の機能を妨害し、桿状体細胞を自己破壊させる(アポトーシスを起こす)ことが示唆される。桿状体細胞は、弱光条件下での視覚に必須であるため、これらの細胞の損失は、網膜色素変性症を伴うヒトの進行性夜盲症を引き起こす。
【0537】
本明細書に記載の様々な態様、実施形態、および選択肢は全て、いずれかおよび全ての変形形態で組み合わせることができる。
【0538】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願を、個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照によって組み入れられることが具体的かつ個々に示されている場合と同程度に、参照によって本明細書に組み入れる。
【0539】
本開示について概ね説明してきたが、本明細書において提供される実施例を参照することによって、さらに深い理解を得ることができる。これらの実施例は、例示を目的とするに過ぎず、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0540】
実施例1. AAV及び非AAVパルボウイルスITRを有するFVIII発現構築物の生成
実施例1a.コドン最適化FVIII遺伝子およびAAV由来の逆方向末端反復配列(ITR)領域の遺伝子カセットへのクローニング。
FVIII遺伝子カセットは、AAV血清型2のゲノムに基づいて生成された。しかしながら、任意の血清型を起源とする(合成を含む)ITR領域がこの手法に使用された(
図1A)。
【0541】
AAV由来の末端逆位配列(ITR)領域に隣接している肝臓特異的プロモーター(TTPp)又はユビキタスプロモーター(CAGp、
図1A及び1B)の制御下のコドン最適化FVIIIコード配列(AAV-FVIII)をコードする発現プラスミドAAV2-FVIIIco6XTENを、
図1Cに示されるように、インビトロ及びインビボ発現のために設計した。遺伝子カセットはまた、導入遺伝子の最適な発現のためにWPRE及びbGHpAエレメントも含有する(
図1A~1C)。ITRに隣接したコドン最適化FVIII配列を、ColE1複製起点及びアンピシリン抵抗性を付与するベータ-ラクタマーゼのための発現カセットを含むプラスミド主鎖にクローン化した(
図1C)。発現カセットに隣接している制限エンドヌクレアーゼPvuIIのための認識部位を、PvuII消化の際のAAV-FVIII構築物の正確な切除を可能にするように操作した(
図1C)。
【0542】
実施例1b. コドン最適化FVIII遺伝子及び非AAVパルボウイルス由来の末端逆位配列(ITR)領域の遺伝子カセットへのクローン化。
AAVが属するパルボウイルス科(Parvoviridae)ウイルスファミリーのメンバー間の系統学的関係に基づいて(
図2A)、ディペンドウイルス属(Dependovirus)の他の非AAVメンバー及びエリスロウイルス属(Erythrovirus)のメンバーが、ウイルス生活環の維持及び持続性の潜伏感染の確立のために類似した細胞機序を利用しているという仮設を立てた。したがって、これらのウイルスのゲノムに起源を有するITR領域は、AAV様の(しかしAAVベースのものではない)遺伝子発現カセットを開発するために利用できた。以下のパルボウイルスを、遺伝子療法適用のための遺伝子構築物の開発についてのそれらのITR領域の適正について試験した:ディペンドウイルスガチョウパルボウイルス(GPV)株B及びエリスロウイルスB19パルボウイルス(
図2A)。
【0543】
細菌細胞におけるプラスミドベクターの増殖の間のパルボウイルスITR領域の不安定性は、遺伝子構築物の生成及び操作について課題を提示する。全長AAV2 ITR(145nt)を含有するいくつかの遺伝子構築物は首尾よく生成されたが、これらの構築物は非常に不安定であり、そして大部分のAAV2 ITRベースのプラスミドはITR領域の切断型130ntバージョンを含有する(表1に例示される)。同様に、生成されたB19及びGPV ITRの両方の全長配列を有するプラスミド構築物は、細菌宿主において高度の不安定性を示し(データは示していない)、これは遺伝子療法適用のための遺伝子ベクターの開発へのこれらのITRの利用をかなり制限する。
【0544】
以前に、組み換えB19ウイルスのレスキューのための逆遺伝学系が開発され、ITRの切断型バージョンを有していた(Manaresiら Virology 508(2017):54-62)(表2B、ITR ID: B19d135)。したがって、B19d135 ITRを、遺伝的に安定なFVIII発現プラスミドB19-FVIIIco6XTENを生成するために利用した(
図1D)。GPV ITRベースの構築物の合成のためにこのアプローチを更に利用するために、B19、GPV、及びAAV2 ITRの全長野生型配列を比較した(
図3A)。ITR機能に不必要である、B19及びAVV2 ITR配列のそれぞれ最初の135及び15個のヌクレオチドに対する相同性に基づいて、GPV ITRの最初の162個のヌクレオチドは、完全に機能的なITRを有する安定な遺伝子構築物を合成するために除去することができると仮定した(
図3A、枠で囲った配列)。したがって、それらの対応するITRの切断バージョンを有する構築物AAV2-FVIIIco6XTEN及びB19-FVIIIco6XTENと同様に、GPVd162(表2C)を使用して安定なFVIII発現プラスミド構築物GPV-FVIIIco6XTEN(
図1E)を生成した。特に、全長B19及びGPV ITRの両方とも全長AAV2 ITR(表1)よりもかなり長く、そしてAAV ITRの独特なT字形ヘアピン構造を形成しない(
図2B)。
【0545】
3’ITRのみを含有するFVIIIco6XTEN発現構築物を生成することができたので、全長B19 ITR配列を含有するプラスミドは、細菌宿主において高度の不安定性を示した。標準的な分子クローニング技術を使用して、5’及び3’全長B19 ITRの両方を含有するポジティブなクローンを得ることはできなかった。全長B19 ITRに隣接したFVIIIco6XTEN発現構築物、B19wt-FVIIIco6XTEN(
図1F)を生成するために、特定の宿主大腸菌(E. coli)株PMC103を使用した。PMC103は遺伝子sbcCにおいて欠失を含有し、これは十字型DNA構造を認識し排除するエキソヌクレアーゼをコードするものである。理論に拘束されることなく、sbcCを欠いているPMC103株の使用は長いパリンドローム(すなわち、複雑な二次構造を含有する配列)の複製及びB19wt-FVIIIco6XTEN、さらにはGPVwt-FVIIIco6XTENの首尾良いクローン化を可能にし得ると考えられた。得られるプラスミドは383塩基対の野生型B19 5’及び3’ITR配列(表2D)をコードし、そして別のプラスミドは444塩基対の野生型GPV 5’及び3’ITR配列(表2F)をコードする。
【0546】
非AAVパルボウイルスITR(B19d135、GPVd162、及びB19wt)に隣接しているFVIII発現カセットを含有するプラスミドB19-FVIIIco6XTEN(
図1D;表2B)、GPV-FVIIIco6XTEN(
図1E;表2C)及びB19wt-FVIIIco6XTEN(
図1F、表2D)を、実施例1aに記載されるように生成した。制限エンドヌクレアーゼLguIの認識部位を使用して全てのFVIII発現カセットを隣接させた(
図1D~1F)。
【0547】
実施例1c. AAV及び非AAVパルボウイルスITRに隣接しているFVIII発現カセットを含有する一本鎖DNAフラグメントの製造。
FVIII発現カセットに隣接しているITR領域内のヘアピン構造の形成が標的細胞の持続性の形質導入を推進するという仮説が立てられた。概念実証研究のために、AAV ITRベースのプラスミドAAV2-FVIIIco6XTEN並びに非AAV ITRベースのプラスミドB19-FVIIIco6XTEN及びGPV-FVIIIco6XTENを、それぞれPvuII及びLguIを用いて消化した。形成されたヘアピンITR構造を有する一本鎖(ss) AAV-FVIII、B19-FVIII、又はGPV-FVIIIフラグメントを、95℃でPvuII又はLguI消化の二本鎖DNAフラグメント産物(VIII発現カセット及びプラスミド主鎖)を変性し、次いで4℃に冷却してパリンドロームITR配列を折りたたませることにより生成した(
図1A~1B)。得られたssAAV-FVIII、ssB19-FVIII、又はssGPV-FVIIIを、肝細胞の持続性の形質導入を樹立する能力についてHemA(血友病A)マウスモデルにおいて調べた。
【0548】
実施例1d. FVIII発現構築物を生成するためのバキュロウイルス発現系の使用
昆虫細胞における終端閉口(closed-end)DNA(ceDNA)分子の形態のAAV-FVIII、B19-FVIII、及びGPV-FVIII構築物の産生についてLiら、PLoS ONE 8(8): e69879 (2013)に記載されるバキュロウイルス発現系を利用する。ceDNA発現カセットの全身送達は、肝細胞の持続的な形質導入を樹立し、そして肝臓において安定な長期導入遺伝子発現を推進することが実証されている。
【0549】
実施例2. AAV及び非AAVパルボウイルスITRに隣接しているFVIII発現カセットを含む遺伝子構築物の全身注射は、HemAマウスにおける長期FVIII発現を生じる。
実施例2a. ssAAV-FVIII媒介FVIII発現のインビボ評価。
AAV ITR領域を有するssAAV-FVIIIのインビボで持続的な導入遺伝子発現を媒介する能力を実証するために、遺伝子発現カセットを、5~12週齢血友病A(HemA)マウス(4匹の動物/群)においてssDNA遺伝子発現カセット(ssAAV-FVIII)5μg、10μg、20μg(
図4A)でハイドロダイナミック注入(HDI)により全身送達した。HDIは、実験動物の肝臓への注入された物質の一次送達を生じる。血漿サンプルを実験動物からssAAV-FVIIIの単回ハイドロダイナミック注入の18時間後、3日後、2週間後、3週間後、1か月後、2か月後、3か月後及び4か月後に集めた。血液中のFVIII血漿活性を、発色FVIII活性アッセイにより分析した。親発現プラスミド5μg/マウスを注入された対照動物は、投与の直後に高レベルのFVIII血漿活性を示した。しかし、循環FVIIIのレベルは急速に減少し、そして注入後(p.i.)15日までに検出できなくなった。対照的に、ssAAV-FVIII 5、10、及び20μg/マウスを注入された実験動物は、それぞれ正常FVIIIレベルの約8、16、及び32%という循環FVIIIの安定レベルで導入遺伝子の長期発現を発生した(
図4A)。強い用量応答が観察され、注入された用量と処置アウトカムとの間の高度の相関を示唆した。
【0550】
実施例2b. ssB19-FVIII媒介及びssGPV-FVIII媒介FVIII発現のインビボ評価。
それぞれ非AAVパルボウイルスITR領域B19d135及びGPVd162を有するssB19-FVIII及びssGPV-FVIIIからのFVIIIのインビボ発現を評価するために、遺伝子カセットssB19-FVIII 10又は20μg/マウス、及びssGPV-FVIII 10又は50μg/マウスを、5~12週齢血友病A(HemA)マウスにおいてHDIにより全身送達した。血液サンプルを注入後(p.i.)1、3、7、14、21、28、42、56、84、112、140、及び168日目に集め、そして血中FVIII活性を発色FVIII活性アッセイにより分析した。AAV-FVIII構築物で観察されたように、親FVIII発現プラスミド5μg/マウスを注入された対照動物は、注入24時間後に高レベルのFVIII血漿活性を示し、これは急速に低下して注入の14日後までに検出できなくなった。ssB19-FVIIIを注入された実験動物は、注入3日後にピークFVIII血漿活性を示し、その後21日の期間にわたって徐々に低下し、そして注入28日後あたりで安定化した(
図4B)。他方で、ssGPV-FVIIIを注入されたHemAマウスは、112日あたりに安定レベルのFVIII血漿活性を発生し、これは残りの観察期間の間維持された(
図4C)。とりわけ、ssAAV-FVIII(
図4A)又はssGPV-FVIII(
図4C)のいずれか10μg/マウスを注入された動物は、高度に類似した安定レベルのFVIII血漿活性を発生し、AAV2及びGPV ITR領域の両方が標的細胞の持続的な形質導入の有効な樹立に必要な遺伝因子を含むということを示唆した。
【0551】
実施例2c. hemAマウスにおけるFVIIIの安定な長期発現のITR及びヘアピン要件のインビボ評価。
一本鎖DNAカセットの安定性及び長期発現を別の核酸治療法と比較するために、FVIIIco6XTENプラスミド構築物(
図1A)をPvuII又はAflIIを用いて消化して、AAV ITR配列を含むか又は含まない二本鎖線状DNAを作製した。ITRを含まない線状二本鎖DNAを精製して「dsDNA No ITR」構築物を生成した。最後に、ITRを含まない精製されたdsDNAのオーバーラップAflII認識部位を介したライゲーションは、ミニサークルDNAの形成を生じたこの小さい環状プラスミド様DNA構築物はいずれの細菌配列及び/又はITR配列配列も欠いている。HemAマウスに等モル濃度のDNA構築物をハイドロダイナミック注入により注入し、そしてFVIII活性レベルを血漿収集物から2~4か月にわたって決定した。全てのDNA構築物が、30~60%正常範囲でFVIII初期治療レベルを生じたが、しかし一本鎖DNAのみが注入後4か月間32%で導入遺伝子発現の安定な持続性を示した(
図5)。全ての二本鎖DNA及びミニサークルDNAは、6~10%正常の発現の安定レベルに14~42日目に達したが、これらのプラトーは、観察された初期FVIII活性の10%しか表さない。FVIII発現の一過性の上昇したレベルは中和する抗薬物抗体の形成を生じ得るので、安定な発現は血友病Aの状況において免疫寛容に必要である。
【0552】
実施例2d. 野生型及び誘導体B19 ITRのインビボ比較
B19誘導体ITR(B19d135、
図1D、表2C)の効果を全長B19 ITR(表2C)と比較するために、248塩基対ITR(
図1F)に隣接しているFVIIIco6XTEN発現カセットを生成した。血友病Aマウスに、B19d135(
図1D)、GPVd165 (
図1E)、又は野生型B19 ITR(
図1F)のいずれかに隣接している一本鎖FVIII-DNA 30μgをハイドロダイナミック注入した。全てのコホートについて注入の3、7、14、21、28、及び35日後に血漿を集め、追加のサンプルを42、55、及び84日目にB19d135及びGPVd165構築物について採取し、そして発色アッセイによりFVIII活性について分析した(
図6)。誘導体B19 ITRと比較して、全長ITRはFVIII発現のおよそ2.5倍の増加を生じた。さらに、野生型ITRからのFVIIIの発現は開始時に安定であった。
【0553】
実施例2e. インビボでの一本鎖ネイキッドDNAの再投与の評価。
現在の遺伝子治療様式における重大な制限は、遺伝子療法ベクターのウイルスカプシドに対する抗薬物抗体の形成に起因して治療薬を再投与できないことである。しかし、免疫原性タンパク質の存在しない遺伝子療法系は、所望の治療レベルにまで患者を用量設定するために再投薬され得る。我々の非AAV ITR隣接一本鎖カセットが再投与され得るかどうかを評価するために、hemAマウスにB19d135及びGPVd165 ITRを含有するssDNA 30μgを0及び35日目に注入した(
図6)。GPVd165-FVIIIを投与したマウスは、観察の最初の月の間に約5%正常の安定FVIIIレベルに達した。ssDNAの2回めの投与の後、FVIIIのレベルは10%に上昇した後わずかに減少し、FVIIIレベルの2倍増加を示した。B19d135-FVIIIを投与されたマウスは、最初の週の間に8%の安定FVIIIレベルに達し、これはおよそ3.5倍の30%まで上昇した後25%に減少した。これらのデータは、非AAV ITRを含む一本鎖DNAの再投与が血友病AマウスにおいてFVIIIの安定発現レベルを増加し得るということを実証する。
【0554】
実施例3. B19d135及びGPVd162 非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有するFVIII発現構築物の生成及びインビボ評価。
【0555】
実施例3a. B19及びGPV ITRの最小必須配列の決定。
ディペンドウイルスAAV2及びGPV、並びにエリスロウイルスB19(それぞれジーンバンク受入番号NC_001401.2、U25749.1、及びKY940273.1)のITRの配列間の比較に基づいて、追加の配列(スペーサー、挿入、逆位、付加、及び/又は他のパルボウイルスITRの野生型配列との組み換え)とともに又は追加配列なしで、このようなITRを有する遺伝子構築物を用いた真核細胞の持続的な形質導入に必要であろうGPV及びB19パルボウイルスITRの最小配列を設計した(
図3A及び3B)。AAV2、GPV、及びB19 ITRの配列アライメントにより、可変配列のスペーサー領域を含まない連続した配列として3つ全てのウイルス種間の保存された領域B19v1及びGPVv1が明らかとなった(表2A~2Cに示される)。同様に、最小必須配列バリアントB19v3及びGPVv3を、B19 ITRとGPV ITRとの間の配列比較に基づいて設計した。GPVd162 ITRを有するFVIII発現構築物は、インビボ実験においてB19d135 ITRを有する遺伝子構築物よりも良好であったので、B19v3配列は、B19 ITRとGPV ITR配列間で保存される最小B19 ITR領域を含み、そしてGPVv3配列は、GPV ITR配列中に存在し、かつB19 ITR配列からは欠けている最小GPV ITR配列領域を含むという仮説が立てられた(表2B及び2C)。配列B19v2及びGPVv2は、それぞれB19及びGPV ITR配列のITRpパリンドローム領域における最初の135及び162ヌクレオチド並びに対応する相補的な135及び162ヌクレオチドを除去することにより生成された(表2B及び2C)。
【0556】
実施例3b. 機能性遺伝子構築物上のB19及びGPV ITR並びにそれらの誘導体のパリンドローム領域の配置。
パルボウイルスITRの一部は、自己相補性パリンドローム領域からなる。順方向及び逆方向のパリンドローム領域を有するレスキューされたウイルスが同様の増殖特性を示すということが、組み換え感染性B19パルボウイルスについて以前に実証されている(Manaresiら Virology 508 (2017): 54-62)。したがって、B19及びGPV ITR並びにそれらの誘導体を有する遺伝子発現構築物は、上記ITRのパリンドローム領域が順方向か、逆方向か、又は遺伝子発現カセットに対して5’及び3’ITRの組合せの任意の可能な組合せであるかにかかわらず機能的なままであると提案される。この仮説を実証するために、B19d135及びGPVd162 ITR、さらには野生型B19及びGPV ITRを、同じ種のITRについて同一であるだけでなく逆の相補配列を使用して、順方向、逆方向、及び逆位配置でFVIIIco6XTEN発現カセットに組み込む。これらのプラスドからの一本鎖DNAが生成され、そしてこれを血友病Aマウスにおいて、実施例2a、2b、及び2dに記載されるようにTTPpプロモーターにより推進される肝臓指向FVIII発現について試験した。同じ種のITRの全ての配置を調べることに加えて、GPV及びB19野生型ITR並びにその誘導体の組合せも生成し、そして血友病AマウスにおけるFVIII発現について試験した。これらの発現カセットは、非相同ITR配列がエピソームのコンカテマー化(concatemerization)及び所望の導入遺伝子の長期発現を増強することができるかどうかを決定するために、B19起源の1つのITR及びGPV起源の1つのITRを含有する。血友病Aマウスに、上述の発現カセットを含有するssDNA 10、20、又は50μgをハイドロダイナミック注入により注入し、そして注射後1週間間隔で集められたマウス血漿からFVIIIを測定する。これらの発現カセットを投与されたマウスにおけるFVIII発現及び寿命延長に対する影響を、B19d135、GPVd162、及び対応する野生型ITR発現カセット(表2B、2C、2D、及び2F)を投与されたマウスにおけるFVIII発現及び寿命延長と直接比較する。
【0557】
実施例3c. HemAマウスにおけるB19d135及びGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有する遺伝子構築物の全身注入。
【0558】
B19d135及びGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有するssDNA構築物からのFVIIIインビボ発現を評価するために、各ssDNA遺伝子発現カセット5、10、20、又は50μg/マウスを、5~12週齢HemAマウスにおいてHDIにより全身送達した。血液サンプルを注入の1、3、7、14、21、及び28日後に集め、その後4か月の期間の間、月に一度集めた。血中FVIII活性を発色FVIII活性アッセイにより分析した。
【0559】
実施例4. 昆虫細胞におけるB19d135及びGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有するceDNA発現構築物の製造及びインビボ評価
実施例4a. B19d135及びGPVd162 ITRの誘導体を有するceDNA発現構築物を生成するためのバキュロウイルス発現系の使用
実施例1dに記載されるAAV-FVIII、B19-FVIII、及びGPV-FVIII構築物と同様に、バキュロウイルス発現系を、昆虫細胞においてceDNAの形態でB19d135及びGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有する遺伝子構築物のためのFVIII発現の製造のために使用する。
【0560】
実施例4b. HemAマウスにおけるB19d135及びGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有するceDNA発現構築物の全身注入
B19d135及びGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有するceDNA構築物からのFVIIIインビボ発現を評価するために、各ceDNA遺伝子発現カセット5、10、20、又は50μg/マウスを、5~12週齢HemAマウスにおいてHDIにより全身送達した。血液サンプルを注入の1、3、7、14、21、及び28日後に集め、その後4か月の期間の間、月に一度集めた。血中FVIII活性を発色FVIII活性アッセイにより分析した。
【0561】
実施例5. ssDNA及びceDNA FVIII発現構築物の脂質ナノ粒子製剤の生成
各ssDNA又はceDNAを実施例1及び4に記載されるように製造した後、各遺伝子構築物を、マイクロ流体混合により適切な脂質組成物を使用して脂質ナノ粒子(LNP)中に製剤化した(LNP-ssDNA及びLNP-ceDNA)。脂質対DNAの比(N/P)を、細胞形質導入及びFVIII発現を最適化するように調整した。LNP中に製剤化されたAAV又は非AAVパルボウイルスITRのいずれかに隣接しているFVIII発現カセットをコードする親プラスミドを、形質導入有効性の対照として使用した。
【0562】
実施例6. LNP-ssDNA及びLNP-ceDNAのインビトロ及びインビボでの評価
実施例6a. 培養肝細胞におけるssDNA媒介及びceDNA媒介FVIII発現のインビトロ評価。
ssDNA又はceDNA FVIII発現遺伝子構築物及び対応する親対照プラスミドを、標的遺伝子送達のために、実施例5に記載されるようにLNP中に製剤化した。Huh7細胞を、24ウェル組織培養プレートに1x10
5細胞/ウェルで播種し、そして終夜インキュベートした。次の日に、LNP-ssDNA又は製剤を、1000、500、250、125及び62.5ng/ウェルで細胞に加えた。形質導入24時間後に培地を替えた後、形質導入48時間後に培地を採取した。培地中のFVIII活性を、ヒト血漿FACT標準と比較して発色FVIII活性アッセイにより測定した。CAGpプロモーター下でAAV ITRに隣接しているFVIIIco6XTENカセットを有するプラスミドを、脂質ナノ粒子中に72、36、及び18のN/P比で被包した(
図8A)。Huh7細胞の形質導入後に、FVIIIを順化培地中で測定した。生成されたN/P比18を有する細胞の形質導入は、36及び72の比のFVIIIレベルを増大し、ピーク用量1μg/mlで2IU/mlを超える結果となった。このデータは、肝臓標的細胞におけるLNP送達の有用性を実証する。LNP送達による肝臓特異的プロモーター下でのssDNAの形質導入有効性を調べるために、TTPpプロモーター下のFVIIIco6XTENカセットを2 N/p比で被包し、そしてHuh7細胞を形質導入した(
図8B)。我々の以前のデータと一致して(
図8A)、N/P比18は、比36と比較して増加したFVIII活性レベルを生じた。さらに、このデータは、肝臓細胞におけるFVIII ssDNAの概念実証LNP送達を実証した。24時間後に、2 μg/ml 一本鎖FVIIIco6XTEN-AAVで形質導入されたおよそ2x10
5個のHuh7細胞が0.33IU/ml FVIIIを生じた。
【0563】
さらに、細胞ヒストンはrAAVエピソームに沿って規則的に位置しており、細胞染色体DNAヌクレオソームパターンに類似したクロマチン様構造を生じるということが文献において示されている。したがって、標的細胞の持続的な形質導入に必要なクロマチン様ヌクレオソーム構造を確立するこれらの構築物の能力もまたサザンブロット法により評価される。
【0564】
実施例6b. 静脈内投与後のHemAマウスにおけるLNP製剤化ssDNA媒介及びceDNA媒介長期FVIII発現の評価。
5~12週齢HemAマウスに、LNP-ssDNA、LNP-ceDNA、又はLNP-pDNA(プラスミド対照)のいずれかを5、10、20、40、100ug/マウスで静脈内(IV)注射、N=4/群により投与した。注射後48時間から開始して6か月まで選択された時点で血液サンプルを集め、そして血中FVIII活性を発色FVIII活性アッセイにより分析する。LNP-ssDNA又はLNP-ceDNAで処置されたマウスにおけるFVIII発現プロフィールを、実施例1及び4に記載される各遺伝子構築物についてLNP-pDNAで処置されたマウスのものと比較した。
【0565】
実施例6c. ブースター注射後のssDNA媒介又はceDNA媒介FVIII発現のインビボ評価。
実施例6bにおいてLNP-ssDNA又はLNP-ceDNAで処置されたマウスのサブセットに、最初の注射の2か月後に同じ用量で対応するLNPの追加IVORY注射ブーストを投与した。ブースター注射の48時間後から6ヶ月後まで選択された時点で血液サンプルを集めた。血中FVIII活性を発色FVIII活性アッセイにより分析した。LNP-ssDNA又はLNP-ceDNAで処置されたマウスにおけるFVIII発現プロフィールを対応するLNP-pDNAで処置されたマウスのものと比較する。
【0566】
実施例7. B19又はGPV起源のITRを有する遺伝子発現構築物の遺伝子療法における一般的使用の有用性。
実施例7a. B19又はGPV起源のITRを有するレポーター遺伝子構築物の生成。
遺伝子療法適用における一般的使用のためのプラットフォームとしての非AAV ITRベースの遺伝子発現系の有用性を実証するために、実施例1bに記載される構築物に基づいてB19d135又はGPVd162 ITRのいずれかに隣接している緑色蛍光タンパク質(GFP)又はルシフェラーゼ(luc)を用いて発現カセットを含むレポーター構築物を生成した。したがって、B19-FVIIIco6XTEN (
図1C)及びGPV-FVIIIco6XTEN (
図1D)におけるFVIIIのオープンリーディングフレーム(ORF)を、GFP又はlucのいずれかのORFと従来の分子クローニング技術により置き換えた。
【0567】
マウスフェニルアラニン水酸化酵素(PAH)導入遺伝子を含有する、B19d135又はGPVd162 ITRに隣接している発現カセットもまた生成し(
図7A)、これらを使用してフェニルケトン尿症の関連するマウスモデルにおいてPAH発現及び血中フェニルアラニン濃度の減少を評価した。このモデルを使用して、PKUマウス(n=3)に、非AAV ITRに隣接しているssDNA 200μgをハイドロダイナミック注入により肝臓発現のために投与した。血液サンプルを、3、7、14、28、42、56、70、及び81日目に集め、そして血漿をフェニルアラニン濃度決定のために単離した(
図7B~7C)。B19d135 ITRを含有する発現カセットを投与されたマウスは、3日目に370μg/mlから210μg/mlへフェニルアラニンレベルの減少を示し、これは81日目まで安定に維持された(
図7B)。GPVd162 ITRカセットを投与されたマウスは、14日目に350μg/mlから310μg/mlへ血中フェニルアラニンレベルの減少を示し、これは42日目までに250μg/mlの安定レベルまで低下し続けた(
図7C)。血中フェニルアラニン濃度のこれらの減少は、注射前の濃度と比較して45%及び30%の減少を表す(
図7D)。肝臓におけるマウスPAHタンパク質の存在を確認するために、注射81日後に処置されたマウスから採取された肝臓溶解物に対してウェスタンブロットを行った。マウスPAHタンパク質を検出するために抗FLAGタグ抗体を使用して、
図7Eは処置された6匹の動物のうち5匹における検出可能なマウスPAHタンパク質を示し、B19d135 ITRを含有するssDNAで処置されたマウスにおいて有意に高いタンパク質レベルが観察された。これらのデータは、
図7B~7Dにおいて観察された血中フェニルアラニン減少と一致する。まとめると、これらは、一本鎖DNA送達が機能性肝臓酵素の長期発現をもたらすことができるということを実証する。
【0568】
実験において使用された様々なPAH構築物の配列を表10A及び10Bに示す。
【0569】
【0570】
【0571】
実施例7b. B19又はGPV起源のITRを有するssDNAレポーター遺伝子構築物の製造。
ssDNAレポーター/PAH構築物は実施例1cに記載されるように製造される。簡潔には、プラスミドをLguIを用いて消化する。形成されたヘアピンITR構造を有するssDNAフラグメントを、LguI消化の二本鎖DNAのフラグメント産物(レポーター発現カセット及びプラスミド主鎖)を95℃で変性し、次いで4℃に冷却してパリンドロームITR配列を折りたたませることにより生成する(
図1A)。得られたssDNA構築物をマウスにおいて、肝臓、筋肉組織、眼の光受容体、及び中枢神経系(CNS)の持続的な形質導入を確立する能力について試験した。
【0572】
実施例7c. ssDNA媒介レポーター発現のインビボ評価。
実施例7bに記載されるssDNAレポーター構築物の持続的な導入遺伝子発現をインビボで媒介する能力を確認するために、5~12週齢マウス(4匹の動物/群)に、レポーターssDNA 5、10、又は20μg/マウスを全身に、標的筋肉組織及びCNS細胞に局所的に、かつ/又は標的光受容体細胞へ網膜下に注入した。
【0573】
B19及びGPV ITRベースの発現構築物の発現を評価するために、関連疾患マウスモデルを使用した。肝臓を標的とするためにこれらの遺伝子構築物をHDIにより全身送達した。
【配列表】