(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理装置と半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/50 20230101AFI20241211BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20241211BHJP
C02F 1/78 20230101ALI20241211BHJP
C02F 1/72 20230101ALI20241211BHJP
【FI】
C02F1/50 520P
C02F1/50 510A
C02F1/50 531R
C02F1/50 540A
C02F1/50 550C
C02F1/50 550B
C02F1/50 550L
C02F1/50 550H
C02F1/50 560C
C02F1/32
C02F1/50 560D
C02F1/50 560E
C02F1/78
C02F1/72 101
(21)【出願番号】P 2021518363
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2020018009
(87)【国際公開番号】W WO2020226094
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2019088634
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390002381
【氏名又は名称】株式会社キッツ
(73)【特許権者】
【識別番号】304017476
【氏名又は名称】東洋バルヴ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081293
【氏名又は名称】小林 哲男
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴子
(72)【発明者】
【氏名】矢田 勝久
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-169512(JP,A)
【文献】特開平06-063570(JP,A)
【文献】特開平04-225896(JP,A)
【文献】特開平02-144195(JP,A)
【文献】特開平11-290878(JP,A)
【文献】特開平10-202296(JP,A)
【文献】特開平08-126886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00-11/20
B08B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造過程における半導体素子、液晶ガラス又は電子部品の純水洗浄において洗浄後の被処理水を収納する洗浄水水槽と、
前記洗浄水水槽の被処理水を濾過するフィルタとイオン交換樹脂を含んで構成される濾過機構部と、
前記濾過機構部と前記洗浄水水槽に通水流路を接続すると共に、洗浄処理装置全体を循環可能に構成し前記被処理水が循環する循環流路と、
殺菌用オゾン水が前記洗浄水水槽及び前記通水流路を介して前記濾過機構部に供給されるオゾン水供給手段と、
前記循環流路上に設け、少なくとも前記洗浄水水槽又は前記濾過機構部を構成する各部位から生じる被処理水中のTOC濃度を測定するTOC濃度測定手段と、
前記循環流路の循環方向にあって前記洗浄水水槽の手前に設け、前記被処理水の排水と純水の供給を行うTOC濃度調整手段と、
前記被処理水中のTOC濃度に応じて前記被処理水の排水量及び前記純水の供給量を求めることができる制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記被処理水中のTOC濃度に応じて前記TOC濃度調整手段で被処理水の排水と前記純水の供給により、使用する洗浄水のTOC濃度を純水において所定以下の管理値に制御して、前記被処理水を前記洗浄水水槽の洗浄で使用可能に制御するようにしたことを特徴とする半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理装置。
【請求項2】
前記純水洗浄を超純水洗浄とした場合の洗浄後の被処理水をオゾン殺菌し、前記制御手段は、前記TOC濃度調整手段が前記被処理水の排水と純水の供給を行って、前記被処理水を前記洗浄水水槽の洗浄で使用可能に制御するようにした請求項1に記載の半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、演算式又はデータテーブルを収納した記憶部を用いて前記被処理水中のTOC濃度に応じて被処理水の排水量及び前記純水の供給量を求める請求項1又は2に記載の半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理装置。
【請求項4】
製造過程における半導体素子、液晶ガラス又は電子部品の純水洗浄において洗浄後の被処理水
を収納する洗浄水水槽と、
前記洗浄水水槽の前記被処理水を濾過するフィルタとイオン交換樹脂を含んで構成される濾過機構部と、
前記濾過機構部の後段と前記洗浄水水槽とを接続する通水流路と、前記通水流路の通水方向にあって前記洗浄水水槽の手前に設けたTOC濃度調整手段とを有し、前記濾過機構部と前記洗浄水水槽とを接続して洗浄水処理装置全体を無端状に循環可能に構成し循環する循環系統の循環工程と、
殺菌用オゾン水を前記洗浄水水槽に供給するオゾン供給工程と、
循環流路を流れる被処理水のTOC濃度を測定するTOC濃度測定工程と、
前記被処理水中のTOC濃度に応じて被処理水の排水量及び純水の供給量を求めて制御する制御工程を含み、
前記TOC濃度調整手段は、前記被処理水の排水と前記純水の供給を行って少なくとも前記洗浄水水槽又は前記濾過機構部を構成する各部位から生じる被処理水のTOC濃度を低減する調整手段であり、
前記被処理水中のTOC濃度に応じて前記TOC濃度調整手段で被処理水の排水と前記純水の供給により前記洗浄水水槽の手前で、使用する洗浄水のTOC濃度を純水において所定以下の管理値に制御して、洗浄に使用できるようにしたことを特徴とする半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理方法。
【請求項5】
前記純水洗浄を超純水洗浄とした場合の洗浄後の被処理水をオゾン殺菌し、前記制御
工程は、前記TOC濃度調整手段が前記被処理水の排水と純水の供給を行って、前記被処理水を前記洗浄水水槽の洗浄に使用可能に制御するようにした請求項4に記載の半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理方法。
【請求項6】
前記制御工程は、演算式又はデータテーブルを収納した記憶部を用いて前記被処理水中のTOC濃度に応じて被処理水の排水量及び前記純水の供給量を求める請求項4又は5に記載の半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造や液晶製造、並びに電子部品のメッキ処理の洗浄工程で使用した純水を再使用可能に浄化処理する半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理装置と半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶ガラスの製造、あるいは電子部品のメッキ処理における洗浄工程では、半導体ウエハ基板、液晶ガラス基板、ガラス基板、メッキ処理した電子部品などを洗浄するために多量の純水が使用されているが、環境への負荷低減、水資源の有効活用などの観点から、洗浄に使用した純水の回収、再利用が広く行われている。
【0003】
半導素子体の製造工程や液晶ガラスの製造工程ではフォトレジストの剥離等に有機溶剤が多用されており、半導体素子や液晶ガラスの洗浄工程で使用した純水(以下、「洗浄水」という。)中には、異物やアルコール、界面活性剤などの有機物が混入しているため、この洗浄水を回収して半導体の生産工程に再利用するにあたっては、洗浄水中に含まれている固形微粒物や有機物を除去する必要がある。
【0004】
半導体素子や液晶ガラスの製造における洗浄工程で有機物を含んだ洗浄水を使用すると、被洗浄物に付着した有機物が基板表面の回路パターンなどに欠陥を生じさせたり、その後の熱処理工程で炭化して絶縁不良を引き起こしたりして製品の品質の悪化や歩留まりの悪化を生じさせる。また、電子部品のメッキ処理における洗浄工程で有機物を含む洗浄水を使用すると、製品に付着した有機物が回路の短絡などを生じさせ、製品の品質の悪化、歩留まりの悪化を生じさせる。
【0005】
ところで、上記の洗浄工程では洗浄水を回収し、濾過処理して洗浄水中に含まれる固形微粒物や有機物を除去した後に純水として再使用しているが、当初は殆んど細菌を含んでいない純水であっても、元々装置や被洗浄物に付着している細菌、並びに大気中に存在している細菌が純水中に入り込み、低栄養下でも増殖する種類の細菌が洗浄水を回収、再使用する間に増殖し、純水、純水の貯水槽や洗浄水の貯水槽、並びにこれらの水槽を循環する配管内を汚染する。
【0006】
細菌も有機物であるため、細菌に汚染された純水を半導体素子や液晶ガラスの製造における洗浄工程や、電子部品のメッキ処理における洗浄工程に使用すると、基板表面の回路パターンなどに欠陥を生じさせたり、回路の短絡などを生じさせたりして、製品の品質の悪化や歩留まりの悪化を生じさせる。
【0007】
したがって、これら不可避的に純水中に存在する細菌を極力低レベルに維持するためには、定期的に製造装置の運転を停止し、次亜塩素酸ソーダ等の殺菌剤により洗浄装置(以下、「洗浄処理部」という。)内の純水の貯水槽や洗浄水の貯水槽、並びにこれらの水槽を循環する配管内を殺菌、洗浄処理したり、貯水槽の壁面に付着しているバイオフィルムを拭き取ったりするとともに、洗浄処理部内に殺菌剤が残存しないように純水による徹底的な装置内の後洗浄と、洗浄処理部に新しい純水を充填する必要がある。
【0008】
純水は高価であるため、頻繁な交換は製品の製造コストの上昇を招き、また定期的に製造装置を停止して実施する洗浄処理部内の殺菌処理は、製造装置の稼働率を低下させ、製品の製造コストの上昇を招くことになる。
【0009】
また、洗浄工程で使用した洗浄水を回収して再使用する場合には、通常、中空糸膜フィルタや活性炭等の濾過装置で洗浄水中の比較的大きな有機物を捕捉除去した後、イオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂)に接触させて洗浄水中のイオンを除去した後に純水として再利用するが、洗浄水中に細菌が増殖すると濾過装置の目詰まりやイオン交換樹脂の機能低下が早期に発生し、濾過装置のフィルタやイオン交換樹脂の交換頻度が増加し、製品の製造コストを押し上げる要因となる。
【0010】
従来から、純水を循環使用する場合に純水中の細菌を殺菌する手段として、オゾンの注入が有効であることが知られており、例えば特許文献1には、循環使用する超純水中に細菌が発生することを防止するため、ユースポイントで使用されなかった超純水を超純水槽に戻す配管にオゾン注入装置を付設し、このオゾン注入装置により超純水中にオゾンを注入して常時超純水を殺菌するようにした超純水製造装置が提案されている。
【0011】
以前は、純水と超純水の定義は、比抵抗(導電率)だけで語られていたが、純水と超純水に対する水質要求の高まりから、最近ではTOC(Total Organic Carbon)表記の有機物量も純水と超純水の指標として定義づけられるようになり、純水ではTOCが1.0mg/L以下、超純水では0.01mg/L以下であることが求められているが、オゾンを含む純水が、例えば配管などの樹脂製の部位と接触すると、樹脂の有機材料が溶出して純水のTOC濃度が上昇するとともに樹脂が劣化する問題がある。
【0012】
純水にオゾンを供給して純水中の細菌を殺菌しつつ、純水のTOC濃度の上昇を防ぐ技術としては、特許文献2に継続的に運転しながら循環ラインの適切な位置に低濃度のオゾンを連続的に注入して超純水中の細菌を殺菌するとともに、注入位置の下流側に設けた低圧紫外線オゾン分解装置により超純水中の残留オゾンを分解し、細菌数及びTOC濃度を極度に低下させた超純水をユースポイントに供給する超純水製造供給装置が提案されている。
【0013】
また、特許文献3には、水中の残存するオゾンを処理するため、紫外線照射装置と脱気装置と触媒樹脂装置、又は活性炭分解装置との組み合わせにより、残オゾン、溶存酸素を確実に除去できるとともに、紫外線照射の際の副生成物である過酸化水素を効率良く除去し、電子工業の洗浄用水製造プロセスに組込み使用することができるオゾン含有水の処理装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平2-261594号公報
【文献】特開平2-144195号公報
【文献】特開平6-254549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献2の超純水製造供給装置では、低圧紫外線オゾン分解装置からオゾン注入点までの間に存在する純水にはオゾンが含まれておらず、また、特許文献3のオゾン含有水の処理装置でも、触媒樹脂装置や活性炭分離装置からオゾン注入点までの間に存在する純水にはオゾンが含まれていないため、被洗浄物に付着していた細菌が脱オゾン領域であるユースポイントや配管内で繁殖する可能性は依然解消されていない。これらの場所で細菌が繁殖した場合には、製品の品質の悪化や歩留まりの悪化を生じるとともに、濾過膜やイオン交換樹脂の濾過性能及びイオン交換能力を損なうことによる頻繁な交換や、装置の定期的な洗浄、消毒が必要となって稼働率が低下する問題が生じる。
また、装置内に存在する細菌類により、ろ過機構部を構成する濾過装置(フィルタ)やイオン交換樹脂装置にぬめりが生じると、ろ過機構部を流れる流量が低下し、ろ過性能が低下することやイオン交換樹脂装置の機能が発揮できない問題も生じる。
【0016】
特許文献2の超純水オゾン殺菌方法及び装置は、オゾンを含む超純水が存在するオゾン供給部から膜脱気装置入口までの間の樹脂製の配管や純水タンクからTOC溶出を防ぐため、純水タンク、オゾン供給部から膜脱気装置入口までの配管については、表面が電界研磨などで鏡面仕上げされたステンレス鋼材を使用するので、装置が高価となって製造コストの上昇を招くことになる。
【0017】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、再利用する純水に含まれる細菌の殺菌処理及び有機物の分解処理を効果的に行うことができるとともに、純水のTOC濃度を所定値以下に抑制することができ、簡単な構造で長時間稼働可能な半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理装置と半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、製造過程における半導体素子、液晶ガラス又は電子部品の純水洗浄において洗浄後の被処理水を収納する洗浄水水槽と、洗浄水水槽の被処理水を濾過するフィルタとイオン交換樹脂を含んで構成される濾過機構部と、濾過機構部と洗浄水水槽に通水流路を接続すると共に、洗浄処理装置全体を循環可能に構成し被処理水が循環する循環流路と、殺菌用オゾン水が洗浄水水槽及び通水流路を介して濾過機構部に供給されるオゾン水供給手段と、循環流路上に設け、少なくとも洗浄水水槽又は濾過機構部を構成する各部位から生じる被処理水中のTOC濃度を測定するTOC濃度測定手段と、循環流路の循環方向にあって洗浄水水槽の手前に設け、被処理水の排水と純水の供給を行うTOC濃度調整手段と、被処理水中のTOC濃度に応じて被処理水の排水量及び純水の供給量を求めることができる制御手段とを備え、制御手段は、被処理水中のTOC濃度に応じてTOC濃度調整手段で被処理水の排水と純水の供給により、使用する洗浄水のTOC濃度を純水において所定以下の管理値に制御して、被処理水を洗浄水水槽の洗浄で使用可能に制御するようにした半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理装置である。
【0019】
請求項2に係る発明は、純水洗浄を超純水洗浄とした場合の洗浄後の被処理水をオゾン殺菌し、制御手段は、TOC濃度調整手段が被処理水の排水と純水の供給を行って、被処理水を洗浄水水槽の洗浄で使用可能に制御するようにした半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理装置である。
請求項3に係る発明は、制御手段は、演算式又はデータテーブルを収納した記憶部を用いて被処理水中のTOC濃度に応じて被処理水の排水量及び純水の供給量を求める半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理装置である。
【0020】
請求項4に係る発明は、製造過程における半導体素子、液晶ガラス又は電子部品の純水洗浄において洗浄後の被処理水を収納する洗浄水水槽と、洗浄水水槽の被処理水を濾過するフィルタとイオン交換樹脂を含んで構成される濾過機構部と、濾過機構部の後段と洗浄水水槽とを接続する通水流路と、通水流路の通水方向にあって洗浄水水槽の手前に設けたTOC濃度調整手段とを有し、濾過機構部と洗浄水水槽とを接続して洗浄水処理装置全体を無端状に循環可能に構成し循環する循環系統の循環工程と、殺菌用オゾン水を洗浄水水槽に供給するオゾン供給工程と、循環流路を流れる被処理水のTOC濃度を測定するTOC濃度測定工程と、被処理水中のTOC濃度に応じて被処理水の排水量及び純水の供給量を求めて制御する制御工程を含み、TOC濃度調整手段は、被処理水の排水と純水の供給を行って少なくとも洗浄水水槽又は濾過機構部を構成する各部位から生じる被処理水のTOC濃度を低減する調整手段であり、被処理水中のTOC濃度に応じてTOC濃度調整手段で被処理水の排水と純水の供給により洗浄水水槽の手前で、使用する洗浄水のTOC濃度を純水において所定以下の管理値に制御して、洗浄に使用できるようにした半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理方法である。
【0021】
請求項5に係る発明は、純水洗浄を超純水洗浄とした場合の洗浄後の被処理水をオゾン殺菌し、制御工程は、TOC濃度調整手段が被処理水の排水と純水の供給を行って、被処理水を洗浄水水槽の洗浄に使用可能に制御するようにした半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理方法である。
請求項6に係る発明は、制御工程は、演算式又はデータテーブルを収納した記憶部を用いて被処理水中のTOC濃度に応じて被処理水の排水量及び純水の供給量を求める半導体素子、液晶ガラス又は電子部品用洗浄水処理方法である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1に係る発明によると、洗浄水処理装置で被処理水に含まれる細菌の殺菌と固形微粒物や有機物の濾過処理を行った後、TOC濃度調整手段で被処理水中のTOC濃度に応じて純水の供給及び被処理水の排水と純水の供給を行うため、TOC濃度が所定濃度以下に抑制された被処理水を洗浄水水槽(ユースポイント)に返送することができるので、水質要求を満たす洗浄水で洗浄水水槽に持ち込まれる電子部品や液晶ガラス基板等の製品を洗浄することができ、製品の品質の悪化を防ぎ、製造上の歩留まりを向上させることができる。
しかも、洗浄水処理装置の各部位から溶出するTOC濃度に応じてTOC濃度調整手段で、被処理水の排水と純水の供給による調整により洗浄水水槽で使用する洗浄水のTOC濃度を洗浄水水槽で使用可能な所定値以下に抑制するので、例えば、半導体製造用や液晶製造用あるいは電子部品用に用いる洗浄水として再利用することが可能になる。
【0025】
請求項2に係る発明によると、洗浄水処理装置内に存在する被処理水には、低濃度のオゾンが含まれているため、洗浄水処理装置内や配管内での細菌の増殖を抑制することができるので、細菌による濾過機構部のフィルタの目詰まりやイオン交換樹脂の機能低下が起きにくくなり、これらの寿命を延長することができる。また、細菌の増殖が抑制されることにより、濾過機構部内でのバイオフィルムやぬめりの発生を抑制することができるので、その結果、洗浄水処理装置の洗浄及び清掃間隔を延長することができる。
【0026】
請求項3に係る発明によると、初期に設定した演算式は、TOCが溶出しやすい部材(樹脂)を用い、また工業的には先ず使用されることがないぐらいの高濃度のオゾン水濃度の環境で設定しているので、この演算式の設定条件よりもオゾン水濃度が低く、TOCが溶出しにくい部材を用いた環境で使用する際にも、書き換えることなくそのまま使用することができる。また、演算式から、洗浄水処理装置を実際に使用する水処理環境(処理水量、現状の純水供給量、現状のオゾン水濃度)が分かれば、除菌浄化処理に必要なオゾン水濃度の継続時間を求めることができる。
【0027】
なお、オゾン供給部により、オゾンを処理した後の残留オゾン水の濃度を5.37mg/L未満に抑制しつつ供給することにより、被処理水中の細菌などの有機物をオゾンで浄化して再利用可能としつつ、濾過機構部内も除菌し、この濾過機構部以降の流路における樹脂部材などとオゾンとの反応を抑えて劣化を阻止し、フィルタやイオン交換樹脂に生じるぬめりの発生を抑制し、もって、ぬめりによる有機物の発生を抑止することができ、延いては装置全体の寿命を長くすることができる。
【0028】
また、データテーブルを用いて演算可能であるから迅速に演算処理が可能であるから、半導体製造用・液晶製造用及び電子部品用洗浄水処理装置において素早くTOC濃度を調整することができる。
【0029】
請求項4に係る発明によると、洗浄処理部に返送する被処理水のTOC濃度を所定濃度以下に抑制するように、被処理水中のTOC濃度に応じて被処理水の排出量と純水の供給量に従ってTOC濃度調整手段が被処理水の排出と純水の供給を行うため、安定した水質の純水で洗浄処理部に持ち込まれる電子部品や液晶ガラス基板等の製品の洗浄を長時間に亘って行い、製品の品質の悪化を防ぎ、製造上の歩留まりを向上させることができる。
【0030】
請求項5に係る発明によると、所定量のオゾンを連続的に供給することによりオゾンの総供給量が多くなるので、例えば、大型の被処理部材を洗浄処理して細菌や有機物の混入量が多い被処理水を効果的に殺菌浄化処理することができる。
【0031】
請求項6に係る発明によると、演算式又はデータテーブルを用いて演算可能であるから迅速に演算処理が可能で、半導体製造用・液晶製造用及び電子部品用洗浄水処理方法において素早くTOC濃度を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明による洗浄水処理装置の一実施例を示す模式図である。
【
図2】イオン交換樹脂・濾過装置の劣化試験装置を示すブロック図である。
【
図3】初期オゾン水濃度5.37mg/Lの濃度変化を示すグラフである。
【
図4】初期オゾン水濃度12.5mg/Lの濃度変化を示すグラフである。
【
図5】オゾン水濃度0mg/Lのフィルタの顕微鏡写真である。
【
図6】オゾン水濃度5.5mg/Lのフィルタの顕微鏡写真である。
【
図7】オゾン水濃度12.7mg/Lのフィルタの顕微鏡写真である。
【
図9】一部を省略したTOC溶出試験のブロック図である。
【
図10】オゾン発生量を変化させたときの時間ごとのTOC濃度の測定値を示すグラフである。
【
図11】オゾン水濃度とTOC溶出量の関係を示すグラフである。
【
図12】オゾン供給量とオゾン水濃度の測定値を示すグラフである。
【
図13】オゾン供給/停止を繰り返した間欠運転時のオゾン水濃度の変化を示すグラフである。
【
図14】オゾン供給時間を変化させたときの、一定量の被処理水を連続排水と一定量の純水を連続供給した場合における被処理水のTOC濃度のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図15】一定量のオゾンを間欠供給した場合の被処理水のオゾン水濃度のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図16】一定量のオゾンを間欠供給した場合に、純水の補給を行った場合と補給を行わなかった場合における被処理水のTOC濃度のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図17】メッキ処理工程の複数の洗浄水水槽のうち最終の洗浄水水槽に本発明の洗浄水処理装置を適用した場合を示す模式図である。
【
図18】半導体処理容体に本発明の洗浄水処理装置を適用した場合を示す模式図である。
【
図19】ガラス基板製造装置に本発明の洗浄水処理装置を適用した場合を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明における洗浄水処理装置と洗浄水処理方法を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の洗浄水処理装置の一実施例の構成を示す模式図である。
【0037】
図1において、洗浄水処理装置12は、洗浄水収納部13と、除菌浄化ユニット14と、濾過機構部15と制御装置16を備え、洗浄水収納部13と除菌浄化ユニット14との間は流入流路17と流出流路18より循環可能に接続され、洗浄水収納部13と濾過機構部15との間は濾過流路19により接続されるとともに、洗浄処理部11と洗浄水収納部13との間、濾過機構部15と洗浄処理部11との間は循環流路20により接続され、濾過機構部15後段の循環流路20にはTOC濃度測定手段21とTOC濃度調整手段22が設けられている。
【0038】
洗浄水収納部13は、洗浄処理部11で被処理部材の洗浄処理に使用した純水を被処理水として、循環流路20を介して流入させて収納するための水槽である。洗浄水収納部13には、除菌浄化ユニット14との間で循環可能に設けた流入流路17と流出流路18、並びに濾過機構部15への濾過流路19が接続されている。
【0039】
除菌浄化ユニット14は、ユニット内部に設けた図示しないポンプにより洗浄水収納部13から供給される被処理水を除菌浄化処理するユニットである。洗浄水収納部13に収納された被処理水は、除菌浄化ユニット14と洗浄水収納部13との間に循環可能に接続された流入流路17と流出流路18により、洗浄水収納部13と除菌浄化ユニット14との間を循環しながら除菌浄化処理される。なお、被処理水の洗浄水収納部13と除菌浄化ユニット14との間の循環は、除菌浄化ユニット14に設けた図示しない循環ポンプにより行われる。
【0040】
除菌浄化ユニット14は、オゾンを供給するオゾン供給部と、紫外線を照射する紫外線照射部と、光触媒を作用させる光触媒作用部とを備えており、各機能を有機的に結合して被処理水の除菌浄化処理を行う。除菌浄化ユニット14は、少なくともオゾン供給部を備えていればよく、必要に応じて紫外線照射部、光触媒作用部を省略することもできる。以下、オゾン供給部、紫外線照射部、光触媒作用部について簡単に説明する。
【0041】
オゾン供給部は、流入流路17を介して洗浄水収納部13から供給される被処理水にオゾンを供給する部位であり、空気を原料としてオゾンを生成するオゾナイザと、流入流路17に設けられて流路内を流れる被処理水にオゾンを供給して混合させるエジェクタとを備えている。
【0042】
オゾナイザは、アース電極と高圧電極を貼りつけた誘電体との間に放電空隙を設け、アース電極と誘電体との間に高電圧を印加して放電させ、放電空隙を流れる空気にオゾンを生成するものである。エジェクタは、フッ素樹脂等の樹脂、セラミックや金属を材料として形成され、流入流路17を流れる被処理水とオゾナイザから供給されるオゾン(及び溶存酸素)とを混合させ、微細気泡状の混合液(オゾン水)を作るようになっている。
【0043】
紫外線照射部と光触媒を作用させる光触媒作用部は紫外線・光触媒ユニットとして一体化されている。紫外線・光触媒ユニットは、中央部に紫外線光源を有し、この紫外線光源の外周側に保護用の内ガラス管が設けられている。紫外線光源の外周の内ガラス管の外周側には所定の内径を有する外ガラス管が設けられ、この外ガラス管と内ガラス管との間に被処理水の流路が形成されている。この流路内に、光触媒作用部である光触媒が配設されている。
【0044】
光触媒は、金属チタン基材の表面を酸化させて酸化チタンを生成することで剥離しない光触媒を利用したものであり、例えば、網やチタン線、繊維状チタン材料の集合体、その他多孔性チタン材料等からなるチタン又はチタン合金などの材料の表面側に二酸化チタンを被覆することで形成される。
【0045】
紫外線・光触媒ユニットの中央部に紫外線光源を配置した構造としていることでユニット全体のコンパクト化を図り、かつ、被処理水に効率的に紫外線を照射して、被処理水を除菌するとともに有機物を分解処理して除菌浄化処理を行っている。
【0046】
濾過機構部15は、
図1に示すように、濾過装置26とイオン交換樹脂27とにより構成されている。濾過装置26の内部には中空糸膜フィルタ、活性炭フィルタなどのフィルタを収容することができるが、被処理水に含まれる細菌や、細菌の死骸を含む有機物を効果的に濾過するためには、精密濾過膜(MF膜)若しくは限外濾過膜(UF膜)の中空糸膜を使用することが好ましい。そして、これら中空糸膜を入れる濾過装置26の容器としては、被処理水が純水の場合にはPVC等の材質が多用され、被処理水が超純水の場合もPVC等の材質が用いられている。
【0047】
また、イオン交換樹脂27は、オゾン処理や濾過処理では取り除くことができない被処理水中のカルシウム、ナトリウム、塩化物、硫酸などの塩類成分を取り除くために使用するものであり、陽イオンを交換する陽イオン交換樹脂と、陰イオン(マイナスイオン)を交換する陰イオン交換樹脂を混合して使用してもよい。そして、これらイオン交換樹脂の容器としては、被処理水が純水の場合は、FRPもしくはステンレスあるいは鉄にテフロン(登録商標)をライニングもしくはコーティングした素材等の材質が多用され、被処理水が超純水の場合もこの材質が用いられている。
【0048】
制御装置16は、制御部16aと記憶部16bとから構成される。制御部16aは、除菌浄化ユニット14のオゾン供給部とTOC濃度調整手段21を制御可能に設けられ、記憶部16bには、被処理水の純水への供給、又は被処理水の排水及び純水の供給量を求める演算式が収納されている。図中、制御装置16と除菌浄化ユニット14、TOC濃度測定手段21、TOC濃度調整手段22とを結ぶ破線は、信号の伝達経路を示している。
【0049】
ここで、本発明者らは、半導体製造や液晶、メッキ処理した電子部品を洗浄する既存の洗浄装置に後付けし、洗浄水を効果的に浄化処理して長期間に亘って再使用可能とすることができる浄化処理装置及び浄化処理方法の研究開発を行う過程で、ユースポイントでの細菌の増加を防ぐためには、単にオゾンで殺菌浄化するだけでは不十分であり、洗浄水収納部にオゾンを供給させる必要があることを確認した。
【0050】
その一方で、オゾンが洗浄水収納部に存在すると、除菌浄化ユニット内に設けられている被処理水を循環させるポンプの樹脂製インペラー、濾過装置の中空糸膜フィルタを収納する樹脂製のフィルターハウジング、イオン交換樹脂を収納している樹脂製のボンベからTOCが溶出することも確認した。
【0051】
これらのことから、洗浄水収納部13内の被処理水をオゾンで殺菌処理するときには、処理後の純水が再利用に適した状態まで殺菌されていることに加えて、この処理後の純水に含まれるオゾンによって樹脂製の各部品からのTOCの溶出を防ぐ必要がある。そのためには、処理後の被処理水を再利用可能な状態まで殺菌できるオゾン水濃度としつつ、このオゾン水濃度を、樹脂製の各部品からのTOC溶出を防止できる値に抑えるようにする。
【0052】
上述した記憶部16bには、被処理水のオゾン水濃度とTOC濃度に応じて被処理水の排水量と純水の供給量を求めることができる演算式が収納されている。この演算式に基づいて制御部16aにより被処理水の排水量と純水の供給量を制御することで、処理後の被処理水を再利用可能な状態まで殺菌するオゾン水濃度にし、かつ樹脂製の部品からのTOC溶出を抑制することが可能になる。
【0053】
記憶部16bの演算式を設定するためには、前述のように処理後の被処理水を再利用可能な状態まで殺菌できるオゾン水濃度としつつ、TOC濃度を抑制できる値とすることが求められる。この場合、被処理水の殺菌能力を最大限に高めつつ、濾過機構部15などの樹脂製部品への影響を最小限に抑えることで、その機能性を維持するようにする。
【0054】
このような殺菌能力を最大限に高めたオゾン水濃度による処理水を得るためには、オゾン水濃度の差異が、洗浄水収納部13に加えて、洗浄水処理装置12内のフィルタやイオン交換樹脂27、或いはそれらを充填する容器のFRPボンベやフィルタハウジング、ポンプのインペラー、Oリング等の各樹脂部品等に与える影響について明確にする必要がある。そこで、濾過装置26、イオン交換樹脂27について、オゾン水による劣化試験をそれぞれ実施した。劣化試験では、オゾン水濃度又はオゾンとの接触時間を変えることで、濾過装置26やイオン交換樹脂27が劣化する条件を確認し、オゾン水濃度と濾過装置26やイオン交換樹脂27との酸化劣化の関係性を確認した。
【0055】
その場合、時間当たりのオゾン発生量(g/h)を設定することで、所望のオゾン水濃度(mg/L)が得られる。本出願人は、最適なオゾン水濃度を得るためのオゾン発生量を2.0g/hと推定し、このときのオゾン水濃度5.37mg/Lに対する試験を行い、これによって、オゾン供給部によりオゾンを処理した後の残留オゾン水の濃度を5.37mg/L未満に抑制するようにした。また、これに対する比較としてオゾン発生量0.3g/h(オゾン水濃度1.31mg/L)の場合と、オゾン発生量2.0g/h(オゾン水濃度5.37mg/L)よりも大きい場合の試験を行った。なお、このときの対象水は、全て純水としてイオン交換水を使用した。
【0056】
図2に示した試験装置100を用いて、イオン交換樹脂27及び濾過装置(フィルタ)26が劣化する条件を確認し、これらとオゾン水濃度との酸化劣化の関係性を明らかにする。
【0057】
図においては、PSA(酸素濃縮器)101をガス原料の発生器として、このPSAをオゾナイザ125((株)増田研究所 オゾン発生装置 OZS-EP3-20)に接続し、このオゾナイザ125で発生させたオゾンガスをミキシングポンプ103((株)ニクニ M20NPD04Z)で加圧溶解して、高濃度オゾン水を生成した。
オゾンを生成するオゾン生成部136で作られたオゾン水は、水槽130に蓄積され、このオゾン水が送水ポンプ104を介してイオン交換樹脂27または濾過装置(フィルタ)26へ送水される。イオン交換樹脂27または濾過装置26へは経路内に設けた流量計106及び調整用バルブ136にて適当な流量に調整して通水を行った。
【0058】
試験水槽130に蓄積されたオゾン水濃度については、随時、オゾン水濃度計110(オキトロテック(株) オゾン水濃度計 OZM-7000LN)にて測定を行った。
【0059】
図2では、流路に対してフィルタ26/イオン交換樹脂27が直列に一組設けられているが、複数のフィルタ/イオン交換樹脂が並列に設けられていてもよい。
【0060】
オゾン水によるイオン交換樹脂27の劣化試験では、オルガノ製イオン交換樹脂 アンバーライト MB2、イオン交換樹脂27を充填した容器はPVC製を使用した。
【0061】
試験装置100によるイオン交換樹脂27の劣化試験では、試験水槽130に貯水したイオン交換水に対して、試験装置100を30分運転し、オゾン水濃度を測定した。その後、送水ポンプ104を運転し、イオン交換樹脂27にオゾン水を所定濃度で所定時間通水した。オゾン水通水後のイオン交換樹脂27は、各種分析を行い、劣化の程度を確認した。
【0062】
上記の試験実施時の各種条件は、以下のとおりとする。
PSA供給ガス流量:2.5~2.7 L/min
PSA供給ガス圧力:0.078~0.081 MPa
ミキシングポンプ吐出圧力:0.29~0.33 MPa
オゾナイザ流量:1.6~1.7 L/min
水量:70L
通水時間:8時間、72時間
【0063】
上記試験装置100により試験する際のオゾン水濃度の推移(変化)を
図3、
図4のグラフにそれぞれ示す。
図3においては、オゾン水濃度を5.37mg/L付近に設定しようとするときの運転時間に対するオゾン水濃度変化、
図4においては、オゾン水濃度を5.37mg/Lよりも大きく設定しようとするときの運転時間に対するオゾン水濃度変化をそれぞれ示している。
図3、
図4の何れのグラフにおいても、矢印で示した時点からイオン交換樹脂27への通水がスタートされる。
【0064】
図3の場合には、オゾナイザ(オゾン供給部)125を通過し、試験水槽130に蓄積された試験水がイオン交換樹脂27に通水を始める時のオゾン水濃度が5.37mg/Lとなる。イオン交換樹脂27への通水後には、このイオン交換樹脂27とオゾンが反応するため、オゾン水濃度が低下して通水試験中の平均オゾン水濃度が4.07mg/Lになる。このようにイオン交換樹脂27への通水後には、このイオン交換樹脂27とオゾンとの反応による影響が大きくなるため、オゾン水濃度設定時の定義として、オゾナイザ125により処理した後の残留オゾン水の濃度を5.37mg/L未満に抑制することを満たすようにする。
【0065】
一方、
図4の場合には、通水初期のオゾン水濃度は約12.5mg/Lとなる。イオン交換樹脂27への通水の開始直後には、上記のようにイオン交換樹脂27とオゾンが反応するためオゾン水濃度が低下し、水温変化、通水時間により多少の上下動はあるものの、概ねオゾン水濃度は6~9mg/Lで推移し、イオン交換樹脂27への通水後の平均オゾン水濃度は、7.44mg/Lとなる。
この場合、通水初期から所定運転時間(8時間)経過の何れの状態においても、オゾン水濃度が5.37mg/L未満に下がることはなく、
図3の試験のオゾン水濃度の条件と重なることはない。
【0066】
上記試験によるイオン交換樹脂27の分析結果を以下に示す。
オゾンによりイオン交換樹脂が受ける影響に関しては、イオン交換樹脂は、オゾンにより酸化されると、官能基が外れたり、樹脂の母体が酸化されて膨張することが想定される。このため、劣化を把握するための分析項目として、「総交換容量」「中性塩分解容量」及び「水分保有能力」について測定した。
【0067】
なお、試験に用いたイオン交換樹脂は、陽イオン交換樹脂と、陰イオン交換樹脂とが均一に混ざったミックス樹脂であるが、分析時には各イオン交換樹脂を分離して、各種数値を計測した。
【0068】
試験は大きく2回に分けて行い、表1に通水初期のオゾン水濃度1.31mg/Lと5.37mg/Lで試験したときのイオン交換樹脂の分析結果を示す。表1には、オゾン水を通水していない状態のイオン交換樹脂の性能を示すため、一般に推奨される性能の基準値を載せている。
【0069】
なお、通水初期のオゾン水濃度1.31mg/Lのときも、イオン交換樹脂へのオゾン水通水後にはイオン交換樹脂とオゾンとが反応するため、オゾン水濃度が低下し、通水試験中の平均オゾン水濃度は0.68mg/Lであった。
【0070】
【0071】
表1において、基準値1と試験1A、1Bの分析値とを比較すると、オゾン水濃度5.37mg/L未満の濃度下において、イオン交換樹脂とオゾン水との反応は認められるものの、中性塩分解量、水分保有能力のそれぞれに関して、試験1A、1Bともに陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂の何れについても、基準値と比較して明確な劣化は見られず、イオン交換樹脂としての実用上の機能性が確保されていた。
【0072】
一方、オゾン水濃度が5.37mg/L以上となる場合の分析結果を表2に示す。表2には、一般に推奨される基準値、オゾン水を通水しない「通水なし」の状態、オゾン水濃度が5.37mg/L以上となる場合(通水初期濃度は12.5mg/L)で、通水時間が8時間及び72時間のときのイオン交換樹脂の各種測定値を載せている。
【0073】
【0074】
表2の試験2A(通水初期オゾン水濃度12.5mg/L、通水中オゾン水濃度7.5mg/L、通水時間8時間)では、陽イオン交換樹脂Aは、中性塩分解容量で基準値を下回り、イオン交換能力が低下していることが確認された。一方、水分保有能力は基準値上限を上回り、オゾンの酸化作用により樹脂が膨潤して劣化していることが確認された。
さらに通水時間が72時間まで伸びると(試験2B)、陰イオン交換樹脂Bの総交換容量も基準値を下回り、イオン交換樹脂の劣化が進むことが分かる。
これらのことから、イオン交換能力はオゾン水の通水時間が長くなるにつれて低下することがわかり、本試験の条件下においては、通水時間8時間の状態で基準値と比較してイオン交換樹脂の劣化の是非の判断が可能であるといえる。
【0075】
また、本試験ではオゾン水通水後のイオン交換樹脂の粒子径の測定および顕微鏡による観察、TOC溶出量も確認した。特に、陰イオン交換樹脂では、オゾン水の通水時間が長くなるにつれて物理的な破砕が起こることが確認され、粒子径が小さくなることが確認された。また、通水試験中のTOC濃度も通水時間が長くなるにつれて増加していくことが確認された。これは、イオン交換樹脂を構成する高分子有機物がオゾンにより酸化され、樹脂の構造そのものの形が保てなくなり、材料である有機物の溶出が起きていると考えられる。
これらのことから、イオン交換樹脂に対して酸化剤であるオゾン水をオゾン水濃度7.5mg/Lで8時間以上通水すると、イオン交換性能の低下や有機物の溶出が懸念されるため、実用上、このオゾン水の中でイオン交換樹脂を使用することは難しいと考えられる。
【0076】
以上より、表1の結果を受けて、オゾン水濃度が5.37mg/L未満であれば、濾過機構部に含まれるイオン交換樹脂に対して除菌効果を保ちつつ、機能を妨げることなく劣化を阻止し、延いては、イオン交換樹脂の交換頻度を下げ、装置の寿命を長くすることができる。
【0077】
続いて、
図2の試験装置100による濾過装置26(フィルタ)の劣化試験を実施する。
試験装置100により純水で生成した高濃度オゾン水を、その濃度を一定に保持しつつフィルタ26に送り、接触時間を変化させたときのフィルタ26の劣化の進行状況を確認した。
【0078】
試験に使用したフィルタは、日本フィルター(株)製で、ハウジングの形式NPH-NPP-10、フィルタの型式は、CW-1(材質ポリプロピレン)を使用した。
【0079】
試験装置100による濾過装置26の劣化試験の手順は、[0061]で示したイオン交換樹脂の劣化試験手順と同様であり、オゾン水通水後のフィルタは、表面の顕微鏡観察を行った。
【0080】
上記の試験実施時の各種条件は、以下のとおりとする。
PSA供給ガス流量:2.5~2.9 L/min
PSA供給ガス圧力:0.078~0.085 MPa
ミキシングポンプ吐出圧力:0.3 MPa
オゾナイザ流量:1.6 L/min
水量:70L
通水時間:8時間、24時間
【0081】
上記試験後の濾過装置の各フィルタ26について、光学観察、SEM観察のそれぞれを顕微鏡により実施する。
観察時の条件は、以下のとおりとする。
分析機器:光学観察:デジタルマイクロスコープ(キーエンス VHX-1000)
SEM観察:電子線マイクロアナライザ(島津製作所 EPMA-1610)
分析方法:フィルタ表面について光学観察を行った後に、金蒸着(イオンスパッタリング)を施し、SEM観察を行う。
【0082】
上記試験による濾過装置のフィルタ(型式CW-1)の顕微鏡観察による写真を
図5~
図7に示す。各図において、上段はマイクロスコープによる観察写真、下段は電子顕微鏡によるSEM写真を表す。
図5は、通水時間が0時間(オゾン水による負荷なし)の状態、
図6は、通水中の平均オゾン水濃度が5.5mg/Lで24時間通水後の状態、
図7は、通水中の平均オゾン水濃度が12.7mg/Lで24時間通水後のフィルタの状態をそれぞれ示している。
【0083】
図5から
図7の写真を観察した結果より、特に、下段の電子顕微鏡(SEM画像)から、オゾン水濃度が高くなるにつれて繊維表面の断裂、切れた繊維のかけらの表面への付着が増え、オゾンによる高分子樹脂の劣化が進んでいることが確認された。
【0084】
図6は、通水時のオゾン水濃度5.5mg/L(オゾン水濃度5.37mg/Lに相当)であるが、オゾン水による負荷のない
図5の写真と比べて大きく劣化していることが確認されず、オゾン水濃度5.5mg/L(5.37mg/Lに相当)程度であれば、フィルタの性能を損なう程の劣化は起きていないと判断できる。一方、オゾン水濃度が5.37mg/Lを超えて12.7mg/Lで通水すると、
図7のようなフィルタ表面の明らかな劣化が確認された。
【0085】
これらのことから、上述した濾過装置の劣化試験において、オゾン水濃度が5.5mg/L未満であれば、フィルタの性能を損なう程の劣化は起きず、逆に被処理水中に残留したオゾンにより、濾過機構部を構成する濾過装置(フィルタ)の除菌作用が十分に働き、フィルタのぬめりを防止することで、濾過装置(フィルタ)の性能を保つことができ、延いては、フィルタの交換頻度を下げ、装置の寿命を長くすることができる。
【0086】
以上のことから、濾過装置(フィルタ)単体の場合は、オゾン水濃度5.5mg/L未満であれば、除菌効果を保ちつつ、機能を妨げることなく劣化が防止できるが、濾過装置(フィルタ)及びイオン交換樹脂から構成される濾過機構部全体でみると、イオン交換樹脂の劣化試験で確認したオゾン水濃度5.37mg/L未満であれば、濾過機構部全体に対して除菌効果を保ちつつ、機能を妨げることなく劣化が防止でき、延いては、濾過膜やイオン交換樹脂の交換頻度を下げ、装置の寿命を長くすることができる。
【0087】
続いて、オゾン水濃度とTOC濃度との関係を明らかにするための試験を行った。
図8、
図9は、オゾン処理による装置へのTOC溶出状態を試験するための概略ブロック図を示しており、前述した試験装置と同一部分は同一符号によって表す。試験に用いた機器は、試験装置120(ピュアキレイザー(登録商標) ZPVS3U11)、オゾナイザ125((株)増田研究所 オゾン発生装置 OZS-EP3-20)、オゾン水濃度計110(オキトロテック(株) オゾン水濃度計 OZM-7000LN)である。なお同図において、111はセンサBOXであり、pH、ORP、水温、導電率を計測する。また、112は流量計であり、118は排水である。また、121は循環ポンプであり試験装置120に内蔵されている。また、123はコンプレッサー(空気圧縮機)であり、124は流量計であり、128は流量調整弁である。また、130は試験水槽であり、135はバルブである。
【0088】
試験方法は、FRP製ボンベ153への通水試験として、試験装置140に導入するオゾン水濃度を3種類に変化させて、イオン交換水(純水)に対して試験装置140を30分運転し、所定の濃度に調整した。オゾナイザ125及びエジェクタ126によって3種類のオゾン水濃度(オゾン発生量を0.5g/h、1.0g/h、2.0g/h)に調整したオゾン水に、送水ポンプ131を運転しFRPボンベ153にオゾン水を8時間通水した。なお、今回の試験で用いたFRPボンベ153はイオン交換樹脂(オルガノ製カートリッジ純水器 アンバーライト MB2 容量5L)を格納した容器を用いた(イオン交換樹脂は格納していない)。
【0089】
その試験条件は次の通りである。
[試験条件]
試験水 イオン交換水
試験水量 40L
循環流量 20L/min(1ターン120秒)
オゾン発生量 0.5g/h
1.0g/h
2.0g/h
【0090】
本発明者らが行った実験の結果、
図10に示すように、オゾン水に接する樹脂製部材から溶出するTOC量は、オゾン発生量に応じたオゾン水の濃度と、オゾン水と樹脂製部材との接触時間に略比例して直線状に増加することを確認した。この実験の結果を
図11に示すように接触時間毎に整理すると、オゾン水濃度(mg/L)と溶出したTOC濃度(mg/L)との関係をオゾン接触時間別に整理することができる。
【0091】
図11において、オゾン水と樹脂製部材との接触時間が1時間のときのオゾン水濃度(mg/L)と溶出TOC濃度(mg/L)との関係は略線形であるため、オゾン水と樹脂製部材を単位時間当たり接触させた際に溶出するTOC濃度(mg/L)との関係は、オゾン水濃度をx(mg/L)、溶出するTOC濃度をy(mg/L)とすると次式により近似することができる。
【0092】
(式1)
y=0.0036x+0.070 ・・・(1)
【0093】
また、オゾン供給時間とオゾン水濃度の変化を調べるため、オゾン供給量を0.5(g/h)、1.0(g/h)、2.0(g/h)の3通りとして、オゾン供給量毎にオゾン供給時間(min)とオゾン水濃度(mg/L)の変化を計測する実験を行った。オゾン供給量毎に、オゾン供給時間(min)に対するオゾン水濃度(mg/L)の変化を計測し、この計測結果に基づいてオゾン発生時間t(min)とオゾン水濃度x(mg/L)の関係を3次近似した曲線を
図12に示す。
【0094】
この
図12に示す3次近似曲線の立ち上がり時の接線の傾きから、オゾン供給量毎にオゾン水濃度の上昇率を求めることができる。また、これら3通り以外のオゾン供給量の場合のオゾン水濃度の上昇率は、これら3通りの単位時間当たりのオゾン水濃度の上昇率から線形補完により求めることもできるし、さらにオゾン供給量をより細かく変化させて実測を行い実測結果から求めることもできる。なお、図に示すように、オゾン供給時間が10分程度までは、オゾン水濃度の上昇率は精度よく線形近似することができる。また、オゾンの供給量に係わらず、オゾンの供給を継続してもオゾン水濃度の上昇には上限が存在することを確認した。
【0095】
これらに加え、オゾン供給/停止を繰り返し間欠運転した場合のオゾン水濃度の変化を確認する実験を行った。実験では、オゾン供給量を2.0(g/h)として、1分間のオゾン供給と9分間のオゾン停止を繰り返した場合、5分間のオゾン供給と5分間のオゾン停止を繰り返した場合、30分間オゾン供給を行った後に30分間のオゾン停止を行った場合について、オゾン水濃度の変化を測定した。
【0096】
測定結果は
図13に示すとおりであり、何れの場合もオゾンの供給開始直後はオゾン水濃度が略直線状に上昇し、オゾン停止後はオゾン水濃度が指数関数的減少している。この減少はオゾンの自己分解によるものと考えられる。このオゾン水濃度の減少状況を子細に観察すると、何れのオゾン供給時間と停止時間の組合せであっても、概ね半減期5分でオゾン水濃度が減少していた。また、オゾン停止後約30分でオゾン濃度はほぼ0となる。
【0097】
以上の実験から得た知見から演算式を作成し記憶部16bに収納しておくことにより、オゾン供給量から被洗浄水のオゾン水濃度の上昇率を求め、そのオゾン水濃度の上昇率とオゾン供給時間から被処理水のオゾン水濃度を求めることができる。また、オゾン供給停止後のオゾン水濃度の減少状況を求めることもできる。さらには、求めた被処理水のオゾン水濃度から被処理水のTOC濃度を求めることができる。
【0098】
図1において、TOC濃度測定手段21は、循環流路20内を流れる被処理水のTOC濃度を計測している。被洗浄水のTOC濃度を所定濃度以下に抑制することが洗浄水処理装置12の処理目的であり、特に純水ではTOC濃度1.0mg/L以下(所定値以下)に管理する必要があることから、制御装置16が処理状況をモニターし、処理状況の良否を判断するためにTOC濃度測定手段21を設けている。
【0099】
TOC濃度調整手段22は、図示しない電動バルブ、電動ポンプと流量計を備えている。電動バルブは制御部16aにより制御され、所定量の被処理水を排出する。また、電動ポンプは制御部16aにより制御され、図示しない純水製造装置から所定量の純水を循環流路20に供給する。
【0100】
このようにTOC濃度調整手段22で被処理水の排水と純水の供給を行う理由は、一度被処理水中に溶出したTOCを除去することは困難なので、TOCを含む被処理水を排出することで被処理水に溶け込んでいるTOCを排出し、洗浄処理部11と洗浄処理装置12内に存在するTOC量を減少させ、さらに排出した被処理水と同量の純水を補給することで、洗浄処理部11と洗浄処理装置12内に存在する洗浄水のTOC濃度を低下させ、所定値以下に抑制するためである。
【0101】
これ以外に、洗浄処理部11での被処理部材の洗浄処理を確実に行うためには、洗浄処理部11と洗浄処理装置12の内部に所定量の洗浄水が存在している必要があるが、洗浄槽からの洗浄水の蒸発や、被処理部材の洗浄処理を行った際に被処理部材などに付着した洗浄水が洗浄槽から持ち出されることなど洗浄処理に伴って、洗浄水がいわば自然減少するので、この自然減少分の純水を補給する必要があるためである。この補給もTOC濃度を低下させることに寄与する。
【0102】
続いて、本発明における洗浄水処理装置の動作について説明する。
図1に示すように、
洗浄水処理装置12には、洗浄処理部11で被処理部材の洗浄処理に使用した純水が被処理水として供給流路23を介して流入し、洗浄水収納部13(容積:200L~300L)に収納される。洗浄水収納部13に収納された被洗浄水は、図示しないポンプにより流入流路17を介して除菌浄化ユニット14に送水される。
【0103】
除菌浄化ユニット14に送水された被処理水には、オゾン供給部に設けたエジェクタから所定量のオゾン(及び溶存酸素)が混合され、微細気泡状のオゾンが気泡状態で被処理水中に溶け込んだ混合液(オゾン水)が作られる。なお、この時のオゾンの供給量は、被処理水のオゾン水濃度が高濃度となると後段の濾過機構部15の濾過装置26のフィルタやイオン交換樹脂27の寿命を短くするおそれがあり、これによって、中空糸膜フィルタを収納する樹脂製のフィルターハウジング、イオン交換樹脂を収納している樹脂製のボンベから溶出するTOC量が増大するので、洗浄水収納部13の容量、被処理水の送水量、効果的な除菌洗浄処理を行うためのオゾン水濃度の下限値と上限値を総合的に判断して決定する必要がある。
【0104】
供給されたオゾンの殺菌効果により被処理水中の細菌の多くは殺菌され、殺菌された細菌の死骸を含む有機物の多くは分解処理される。
【0105】
オゾンを含んだ被処理水がオゾン供給部の後段に位置する紫外線・光触媒ユニットに流入すると、紫外線光源と光触媒とを通過し、オゾンが溶け込んだ被処理水に紫外線を照射されることにより、・OH(ヒドロキシラジカル又はOHラジカル)といわれるラジカル(不対電子を持つ化学種で活性化が強い物質)が生成される。
【0106】
この・OHは活性化が強いため、オゾン供給部でオゾン処理した際に殺菌されずに被処理水中に残留している細菌をほぼ殺菌することができるとともに、分解されずに被処理水中に残留している有機物をほぼ分解処理することができる。また、OHラジカルは非常に短時間に消失するため、濾過装置26やイオン交換樹脂27を痛めることはない。オゾンと紫外線照射の作用によりOHラジカルが生成され、確実に洗浄水収納部13に残留している細菌・有機物を除菌浄化するとともに、濾過装置26やイオン交換樹脂27を痛めることなく延命することができる。
さらに、紫外線照射と光触媒の作用によってOHラジカルがより効果的に生成されることと、低濃度のオゾンとの組合せ、即ち有機的結合により、確実に洗浄水収納部13に残留している細菌・有機物を除菌浄化するとともに、濾過装置26やイオン交換樹脂27を痛めることなく延命することができる。
【0107】
紫外線・光触媒ユニットで除菌浄化処理された被処理水は、流出流路18を介して洗浄水収納部13に返送される。
【0108】
このように、洗浄水収納部13に収納された被洗浄水は、洗浄水収納部13と除菌浄化ユニット14との間を循環しながら除菌浄化されるので、洗浄水収納部13に返送された被処理水に残留しているオゾンにより洗浄水収納部13内でも殺菌効果が発揮され、細菌の増殖が抑制され、洗浄水収納部13の壁面等でのバイオフィルムの発生を抑制する。
【0109】
また、除菌浄化ユニット14で除菌浄化した後、直ちに濾過機構部15に送られるのではなく、洗浄水収納部13に返送された後、洗浄水収納部13内に収納されている被処理水と混合されるので、洗浄水収納部13に収納される被処理水全体としてのオゾン水濃度は希釈されるとともに、洗浄水収納部13に収納されている間にオゾンが分解されるため、濾過機構部15に送られる被処理水のオゾン水濃度は低下する。
【0110】
その一方で、洗浄処理部11での細菌の増殖を防止するためには、洗浄水処理装置12から洗浄処理部11に返送される洗浄水にはオゾンが含まれており、洗浄処理部11に返送された後、洗浄処理部11内に収納されている洗浄水と混合されても、なおある程度のオゾン水濃度を維持する必要がある。本発明者らの実験結果によるとオゾンの殺菌力は極めて強力であり、オゾン水濃度が0.05(mg/L)程度あれば数分以内に略全ての細菌を殺菌することができるので、除菌浄化ユニット14のオゾン供給部からのオゾン供給量は、処理水量が40(L)程度であれば、洗浄水収納部13での希釈や分解を考慮しても、0.05(g/h)程度で足りる。
【0111】
このように、洗浄水収納部13内である程度オゾン水濃度が低下した被処理水が濾過流路19を介して濾過機構部15に送られるが、前述したように、除菌浄化ユニット14のオゾン供給部からの被処理水へのオゾン供給量は少量であり、また、オゾンの自己分解もあって、被処理水のオゾン水濃度も低くなるので、被処理水中の残留オゾンにより濾過機構部15の濾過装置26のフィルタやイオン交換樹脂27を痛め、寿命を短くするおそれがない。しかも、低濃度のオゾンによって本実施例では、濾過機構部15内を除菌しながらTOC溶出を最低限抑制し、かつ除菌するのに十分なオゾン濃度の被処理水に管理されて行われる。
【0112】
また、除菌浄化ユニット14で被処理水中に残留している細菌をほぼ殺菌し、また、被処理水中に残留している有機物がほぼ分解処理された被処理水が濾過流路19を介して濾過機構部15に送られるため、細菌や有機物による濾過機構部のフィルタの目詰まりやイオン交換樹脂の機能低下が起きにくくなり、これらの寿命を延長することができる。
【0113】
洗浄水収納部13から濾過機構部15に送られた被処理水は、濾過装置26で被処理水中に残留する細菌と有機物を除去する濾過処理が行われた後、イオン交換樹脂27でオゾン処理や濾過処理では取り除くことができない被処理水中の塩類成分が取り除かれた後、循環流路20を介して洗浄処理部11へ返送される。
【0114】
ところで、本発明の洗浄水処理装置12では、殺菌浄化処理後に洗浄処理部11に返送する被処理水に低濃度のオゾンを含有させることで、洗浄処理部11における細菌の増加を防止しようとしている。このため、低濃度とはいえオゾンを含む被処理水には、除菌浄化ユニット14内の樹脂製のインペラー、濾過装置26の樹脂製のフィルターハウジング、イオン交換樹脂27の樹脂製のボンベからTOCが溶出する。
【0115】
そのため、殺菌浄化処理後の被処理水をそのまま洗浄処理部11に返送すると、洗浄処理部11内の洗浄水のTOC濃度が順次上昇し、最終的には純水としての水質要求を満たさなくなる。この洗浄処理部11内の洗浄水のTOC濃度の上昇を抑制するため、本発明の洗浄水処理装置では被処理水の循環流路20にTOC濃度調整手段22を設け、被処理水を洗浄処理部11に返送するに先立って、被処理水のオゾン水濃度とTOC濃度に応じて被処理水を排水するとともに純水の供給を行うことにより、洗浄処理部11で使用する洗浄水のTOC濃度を所定値以下に抑制できるようにしている。本実施例では、TOC濃度調整手段22が洗浄処理部11の直前の循環流路20に設けられているため、TOC濃度を精度よく調整するには、好適である。
【0116】
以上説明したように、洗浄水処理装置12では、洗浄処理部11で被処理部材の洗浄に使用した純水を被処理水として洗浄水収納部13に収納し、洗浄水収納部13と除菌浄化ユニット14との間で被処理水を循環させながら連続的に除菌浄化処理するのと同時に、収納した被処理水を濾過機構部15に送って濾過処理した後、TOC濃度調整手段22で被処理水のオゾン水濃度とTOC濃度に応じて被処理水への純水の供給、又は被処理水の排水及び純水の供給を行った後に洗浄処理部11に返送することにより、洗浄処理部11で使用する洗浄水のTOC濃度を所定値以下に抑制するようにしている。
【0117】
洗浄水収納部13と除菌浄化ユニット14との間で被処理水を循環させながら除菌浄化処理を行うことにより、オゾンが溶存した除菌浄化処理済みの被処理水を洗浄水収納部13に戻し、洗浄水収納部13内の被処理水に含まれる有機物と細菌を漸次削減するとともに、洗浄水収納部13内での細菌の増殖を抑制することができる。
【0118】
この結果、洗浄水収納部13から濾過機構部15に送られる被処理水に含まれる有機物や細菌は、除菌浄化ユニット14で循環処理しない場合と比べると大幅に少なくなるので、細菌や有機物を濾過処理することによる濾過装置26のフィルタの目詰まりやイオン交換樹脂27の機能低下の発生を抑制することができる。
【0119】
また、洗浄水収納部13から濾過機構部15に送られる被処理水には、低濃度のオゾンが含まれていることがあるが、このオゾンは低濃度でフィルタ等の機能に影響を与えない程度であり、濾過機構部15の濾過装置26のフィルタやイオン交換樹脂27を痛めることがなく、濾過機構部15や循環流路20及び洗浄処理部11で細菌の増殖を抑制することができる。
【0120】
濾過機構部15では、濾過装置26のフィルタ(好ましくはUF膜の中空糸膜)が微粒子、細菌や高分子有機物を除去するとともに、イオン交換樹脂27がオゾン処理や濾過処理では取り除くことができない被処理水中のカルシウム、ナトリウム、塩化物、硫酸などの塩類成分を取り除くことができる。
【0121】
また、被処理水が低濃度とはいえオゾンを含むために、樹脂製のインペラー、フィルターハウジング、ボンベ等から溶出するTOCによるTOC濃度の上昇は、TOC濃度調整手段22で被処理水のオゾン水濃度とTOC濃度に応じて被処理水への純水の供給、又は被処理水の排水及び純水の供給を行い、洗浄水のTOC濃度を所定値以下に抑制し、最終的には被処理水を水質要求を満たす純水として再利用可能にしている。
【0122】
本発明の洗浄水処理装置では、被処理水に対して以上のように除菌浄化処理及び濾過処理と行うとともに、TOC濃度を所定濃度以下に抑制するため、洗浄処理部で洗浄水(純水)として再利用しても製品の品質に悪影響を及ぼすことがなく、長期間に亘り洗浄処理部で使用する純水を節水して安定した洗浄処理を行うことができるので、洗浄コストを抑制することが可能となる。
【0123】
次に、本発明の洗浄水処理装置を使用した洗浄水処理方法を説明する。先ず、除菌浄化ユニットのオゾン供給部から所定量のオゾンを連続的に供給する場合について説明する。このオゾンを連続的に供給する洗浄水の処理方法は、所定量のオゾンを連続的に供給することによりオゾンの総供給量が多くなるので、例えば、大型の被処理部材を洗浄処理して細菌や有機物の混入量が多い被処理水を効果的に殺菌浄化処理する場合に適用することができる。
【0124】
この洗浄水処理方法を行うにあたっては、処理対象となる全洗浄水量(L)(例えば、洗浄処理部に設けた洗浄水槽の容量)、オゾンの供給量(g/h)、全洗浄水量に対する供給する被処理水の割合を入力すると、単位時間毎のTOC増加率に基づいて、全洗浄水に含まれるTOC量(mg)、洗浄水の排水量(L)(≒供給する純水量(L))、純水供給後の全洗浄水に含まれるTOC量(mg)、純水供給後の全洗浄水のTOC濃度(mg/L)を順次計算する演算式を記憶部16bから呼び出し、純水供給後の全洗浄水のTOC濃度(mg/L)の推移を求める。
【0125】
この時、処理対象となる全洗浄水量(L)とオゾンの供給量(g/h)は固定値となるが、全洗浄水量に対する排水する被処理水の割合は任意に変えることができるので、この値を変化させて純水供給後の全洗浄水のTOC濃度(mg/L)の推移を求めると、純水供給後の全洗浄水のTOC濃度(mg/L)が純水の基準となる1.0(mg/L)を超えない全洗浄水量に対する排水する被処理水の割合を求めることができる。
【0126】
図14は、全洗浄水量40(L)、オゾン供給量0.5(g/h)の場合に、被処理水の排水量及び純水の供給量を3(L/h)とした場合に全洗浄水のTOC濃度(mg/L)の推移を求めたシミュレーション結果である。図に示すように、全洗浄水のTOC濃度は、処理時間が経過しても純水の水質要求であるTOC濃度1.0(mg/L)を超えていない。
【0127】
なお、オゾン供給量と被処理水のオゾン水濃度の関係は、
図12に示すように、オゾン供給後のオゾン水の濃度は一定濃度以上に増加しないので、図より、0.5(g/h)のオゾンを供給した時にオゾン水濃度が安定する0.32(mg/L)をオゾン水濃度とし、このオゾン水濃度に対するオゾンの増加率を前述した(式1)により求め、シミュレーションに使用した。
【0128】
従って、本発明の洗浄水処理装置でこの所定量のオゾンを連続的に供給する洗浄水の処理方法を行う場合には、除菌浄化ユニット14のオゾン供給部からオゾン0.5(g/h)を連続供給しながら、TOC濃度調整手段22で被処理水を3(L/h)排水するとともに、純水を3(L/h)の割合で供給すると、洗浄処理部11で使用する洗浄水のTOC濃度を1.0(mg/L)以下に抑制することができる。
【0129】
続いて、洗浄処理部で被洗浄部材の洗浄処理をする際に自然減少する洗浄水量に相当する量の純水をTOC濃度調整手段で供給するとともに、所定量のオゾンをオゾン供給部から間欠的に供給する場合について説明する。この洗浄水処理方法は、純水の供給量が被処理部材の洗浄処理時に自然減少分に相当する量であることから、高価な純水の使用量を最少化して洗浄費用を削減することができる。また、所定量のオゾンを一定時間の供給と一定時間の停止を繰り返す間欠供給により供給するためオゾンの総供給量が多くないので、例えば、小型の被処理部材を洗浄処理して細菌や有機物の混入が多くない被処理水を低コストで殺菌浄化処理する場合に適用することができる。なお、洗浄処理時に自然減少する洗浄水とは、洗浄槽から蒸発する洗浄水と被処理材の洗浄時に被処理材等に付着して持ち去られる洗浄水のことである。
【0130】
この洗浄水処理方法を行うにあたっては、処理対象となる全洗浄水量(L)(例えば、洗浄処理部に設けた洗浄水槽の容量)、オゾンの供給量(g/h)、全洗浄水量に対する供給する純水の割合、オゾンを供給するON時間(min)と供給を停止するOFF時間(min)を入力すると、オゾン供給量に応じたオゾン水濃度上昇係数及びオゾン供給を停止した場合にはオゾン水濃度が半減期5分で減少するという傾向に基づいて処理時間に対するオゾン水の濃度変化、並びに、この処理時間に対するオゾン水の濃度変化から被処理水のオゾン水濃度を求めることができる演算式を記憶装置16bから呼び出し、全洗浄水のTOC濃度(mg/L)の推移を求めることができる。
【0131】
この時、処理対象となる全洗浄水量(L)、オゾンの供給量(g/h)、洗浄水の自然減少分を補うために補給する純水量(L/min)は固定値となるが、オゾンを供給するON時間(min)とオゾンを供給しないOFF時間(min)の組合せは任意に変えることができるので、このON時間とOFF時間を変化させて全洗浄水のTOC濃度(mg/L)の推移を求めると、純水供給後の全洗浄水のTOC濃度(mg/L)が純水の基準となる1.0(mg/L)を超えないオゾンを供給のON時間と供給を停止するOFF時間の組合せを求めることができる。
【0132】
図15は、全洗浄水量40(L)、オゾン供給量0.5(g/h)、純水供給量2.7(L/min)の場合に、オゾンを供給するON時間を7(min)、オゾン供給を停止するOFF時間を3(min)とした場合のオゾン水濃度の変化をシミュレーションした結果であり、
図16は、このとき全洗浄水のTOC濃度の変化を、純水を供給する場合と供給しない場合についてシミュレーションした結果である。
図16に示すように、洗浄水の自然減少分に相当する純水を供給した場合の全洗浄水のTOC濃度は、処理時間が経過しても純水の水質要求であるTOC濃度1.0(mg/L)を大きく下回っている。
【0133】
従って、本発明の洗浄水処理装置でこの所定量のオゾンを間欠的に供給する洗浄水の処理方法を行う場合には、除菌浄化ユニット14のオゾン供給部からオゾン0.5(g/h)を連続供給しながら、オゾンを供給するON時間と供給を停止するOFF時間を適宜設定するとともに、洗浄水の自然減少分に相当する純水を供給すると、洗浄処理部11で使用する洗浄水のTOC濃度を1.0(mg/L)以下に抑制することができる。
【0134】
次に、本発明の洗浄水処理装置をメッキ処理工程に適用した場合を説明する。なお、今までの説明と同じ機能の部分については同一の符号を使用するとともに、説明を省略する。
図17に示すように、このメッキ処理工程では、メッキ槽31の他に3つ設けた洗浄水水槽のうち最終の洗浄水水槽35に除菌浄化ユニット14を接続している。
【0135】
このメッキ処理工程では、回収槽32はメッキ液を回収するために設けられ、洗浄水槽33、34、35は、メッキ処理後の被処理体を洗浄するために設けられている。
【0136】
洗浄水水槽33と洗浄水水槽34は連接して設けられており、洗浄水水槽34に給水した純水が、洗浄水水槽33と洗浄水水槽34の間の仕切をオーバーフローして洗浄水水槽33内に流入し、洗浄水水槽33に設けた排水口36から排出されるように構成されている。
【0137】
洗浄水水槽35には洗浄用の純水が貯留されており、洗浄水水槽35と除菌浄化ユニット14との間は、流入流路17と流出流路18により循環可能に接続され、また、洗浄水水槽35と濾過機構部15とは濾過流路19により接続されている。さらに濾過機構部15と洗浄水水槽35との間は循環流路20により接続され、循環流路20にTOC濃度測定手段21とTOC濃度調整手段22が設けられている。
【0138】
なお、TOC濃度測定手段21は、オンラインTOC計を用いて、常時TOC濃度を測定してもよく、循環流路から洗浄水を採水しTOC濃度を測定してもよい。
【0139】
すなわち、
図17に示すメッキ処理工程では、洗浄水水槽35が洗浄処理部11であり、また洗浄水収納部13でもある。従って、洗浄処理部11である洗浄水水槽35で被処理体の洗浄に使用された純水は、洗浄水水槽35と除菌浄化ユニット14との間を循環しながら除菌浄化処理されるとともに、洗浄水水槽35から濾過機構部15に送られて濾過処理された後に洗浄処理部である洗浄水水槽35に返送される。
【0140】
このように、洗浄水収納部13である洗浄水水槽35に収納された洗浄水は、洗浄水水槽35と除菌浄化ユニット14との間を循環しながら除菌浄化処理されるとともに、洗浄水水槽35と濾過機構部15との間を循環しながら濾過処理され、さらに被処理水のオゾン水濃度とTOC濃度に応じてTOC濃度調整手段22で被処理水への純水の供給、又は被処理水の排水及び純水の供給が行われてTOC濃度の抑制が行われることにより、洗浄水水槽35内の洗浄水は水質要求を満たす純水として再使用可能に維持される。
【0141】
次に本発明の洗浄水処理装置を半導体製造装置に適用した場合を説明する。今までの説明と同じ機能の部分については同一の符号を使用するとともに、説明を省略する。
図18は、枚葉式洗浄装置41を模式的に示しており、ターンテーブル42に載置されて回転するウエハ43に、ノズル44から純水を吹付けてウエハ43表面を洗浄する状況を示している。洗浄に使用した純水は、被処理水として枚葉式洗浄装置41の下部に設けた洗浄水回収水槽45に収納される。
【0142】
従って、
図18の枚葉式洗浄装置41では、ノズル44とターンテーブル42が洗浄処理部11であり、枚葉式洗浄装置41の下部に設けた洗浄水回収水槽45が洗浄水収容部13となる。
【0143】
枚葉式洗浄装置41では、
図17のメッキ処理工程と同様に、洗浄水収納部13である洗浄水回収水槽45に収納された洗浄水は、洗浄水回収水槽45と除菌浄化ユニット14との間を循環しながら除菌浄化処理されるとともに、洗浄水回収水槽45と濾過機構部15との間を循環しながら濾過処理され、さらに被処理水のオゾン水濃度とTOC濃度に応じてTOC濃度調整手段22で、被処理水への純水の供給、又は被処理水の排水及び純水の供給が行われてTOC濃度の抑制が行われることにより、洗浄水回収水槽45内の洗浄水は水質要求を満たす純水として再使用可能に維持される。
【0144】
図18の枚葉式洗浄装置41では、被処理水を純水とし、洗浄水回収水槽45に回収した被処理水を再利用可能に処理しているが、ノズル44から吐出される洗浄水が再利用可能に処理されていれば、洗浄水回収水槽45は必ずしも枚葉式洗浄装置41において独立して設けられている必要はない。このことから、被処理水がノズル44に達するまでの長い流路の何れかの箇所に除菌浄化ユニット14、濾過機構部15、TOC測定手段21、TOC濃度調整手段22を設け、この流路内で被処理水を再利用可能に処理する枚葉式洗浄装置としてもよい。これによって、例えば、被処理水を超純水とし、この超純水を用いて高集積化したウエハ43を洗浄する場合に好適となる。
【0145】
この場合、枚葉式洗浄装置の稼働時(洗浄工程時)には、洗浄用超純水がウエハ43の洗浄タイミングで枚葉式洗浄装置に間欠的に流入し、この超純水が有機物を含有した状態でノズル44までの長い流路を流れることになる。これは、ノズル44までの長い流路を洗浄水回収水槽としたときに、前述の洗浄水回収水槽45に有機物を含有した洗浄水が収容されている場合と略同等である。
【0146】
これに加えて、流路内の被処理水を再利用可能に処理するために枚葉式洗浄装置の外部から取り入れる超純水にも、微量の有機物が含まれていることがある。
これらの有機物は、流路を成しているPFA製チューブ等のパイプ内に付着し、いずれ洗浄水として使用される超純水に含有されるおそれがある。
【0147】
このことから、この枚葉式洗浄装置では、ウエハ43洗浄後の洗浄水のみならず、ノズル44に至るまでのパイプ内などの流路も洗浄してその内部に付着した有機物を除去する必要が生じる。このとき、パイプがPFA等の樹脂であるとオゾンに対して耐性はあるものの、極微量のTOCが生じる可能性や、超純水特有の問題として、パイプ表面のTOC成分が溶出しやすい可能性もあるため、前述した場合と同様に、オゾンによる殺菌時にはTOC濃度の抑制も考慮する必要がある。
【0148】
そのため、流路に保持された被処理水(超純水)を、前述した流路に設けた除菌浄化ユニット14で浄化し、濾過機構部15、TOC濃度測定手段21及びTOC濃度調整手段22で枚葉式洗浄装置内の被処理水を流して除菌浄化処理するものとした。これにより、洗浄工程内にこの種の枚葉式洗浄装置を新規に導入するか、或いは長期間運用している何れの場合にも、TOC濃度を抑制しつつ有機物を除去した被処理水をノズル44から供給することが可能になる。
【0149】
このとき、供給される被処理水(超純水)は、除菌浄化ユニット14でオゾンが添加された後に、前述の長い流路を流れることとなる。このオゾンの添加過程では、オゾンの自己分解が進行してその一部が・OHラジカルを生成し、溶出したTOC成分や、配管内に付着した有機物の分解を促進させる。このことから、予め、被処理水の流速や流量に応じて除菌浄化ユニット14からのオゾン発生量を調整することで、自己分解により長い流路の二次側付近でより含有量が低下しやすいオゾンを十分に残存させることが可能となる。これにより、長い流路の全体に渡って残留オゾン濃度を維持したオゾン水を流し、配管全体の有機物を分解することができる。
【0150】
上記のような流路全体を洗浄水回収水槽とした枚葉式洗浄装置の場合には、ウエハ43の洗浄の未メンテナンス時(非稼働時)や、この枚葉式洗浄装置の新規設置時には、被処理水による流路の汚染度合はほぼ一定になっているので、濾過機構部15やTOC濃度測定手段21を取り除き、TOC濃度調整手段22による超純水補給を行い、長い流路内に滞留している超純水と混合した状態で、除菌浄化ユニット14によるオゾン水濃度の調整を行って流路内を洗浄することができる。これによれば、枚葉式洗浄装置のメンテナンスや新規設置時のようなウエハ43の洗浄時以外であっても、流路内の有機物の分解が可能となる。
【0151】
換言すると、本発明は、超純水を用いた半導体ウエハ洗浄装置の洗浄方法において、TOC濃度調整手段による超純水の補給を行い、この超純水を除菌浄化ユニットが除菌浄化するとともに先端ノズルにいたる流路配管内にオゾンが残存するように予め装置内部に供給される被処理水の流速・流量に応じてオゾン発生量を調整し、超純水補給とオゾン水濃度の調整によって流路配管内の有機物分解と流路配管から生じる極微量TOCを抑制する洗浄方法であるといえる。
特に、装置の非稼働時には、配管内に滞留している超純水と補給される超純水が混合した状態で除菌浄化することが可能となる。
【0152】
この場合、TOC濃度調整手段により外部から超純水を供給し、流路内に被処理水を流してTOC濃度を希釈するときに、例えば、図示しないドレンを流路の適宜位置に設け、このドレンを通して枚葉式洗浄装置の外部へ排水する構造としてもよい。このときには、被処理水が循環しない非循環型の処理となるため、TOC濃度を調整する際に、効率よくその濃度を超純水としての指標である0.01mg/L以下に抑えることが可能となる。
【0153】
除菌浄化ユニット14は、枚葉式洗浄装置の内部に設けられていてもよく、この場合、流路の直近に設けられるため、自己分解しやすいオゾンから生成される・OHラジカルを効果的に流路に導入し、殺菌能力を維持したオゾン水を流路全体に流すことができる。
【0154】
なお、このような洗浄には、微量のオゾンを添加した洗浄用機能水(分析化学概説 VOL.59 No.5 P349-P356(2010))を用いることは既知であるが、本発明では、配管内に流れる被処理水の流速・流量に応じたオゾン水濃度の制御とオゾンを添加させたことによる極微量TOCや超純水に溶出したTOC成分抑制制御を行う点が、単に洗浄用機能水を用いる場合とは異なる。
【0155】
さらに、ガラス基板製造装置に本発明の洗浄水処理装置を適用した場合を説明する。
図19は、水平搬送方式のガラス基板洗浄装置51を模式的に示している。ガラス基板52は、搬送ローラー53で搬送されながら、洗浄用ノズル54から純水を吹付けられて洗浄される。洗浄に使用した純水は、被処理水としてガラス基板洗浄装置51の下部に設けた洗浄水回収水槽55に収納される。
【0156】
従って、図のガラス基板洗浄装置51では、洗浄用ノズル54と搬送ローラー53が洗浄処理部11であり、ガラス基板洗浄装置51の下部に設けた洗浄水回収水槽55が洗浄水収容部13となる。
【0157】
このガラス基板洗浄装置51では、
図17のメッキ処理工程や
図18の枚葉式洗浄装置41と同様に、洗浄水収納部13である洗浄水回収水槽55に収納された洗浄水は、除菌浄化ユニット14との間を循環しながら除菌浄化処理されるとともに、洗浄水回収水槽55と濾過機構部15との間を循環しながら濾過処理され、さらに被処理水のオゾン水濃度とTOC濃度に応じてTOC濃度調整手段22で被処理水への純水の供給、又は被処理水の排水及び純水の供給が行われてTOC濃度の抑制が行われることにより、洗浄水回収水槽55内の洗浄水は水質要求を満たす純水として再使用可能に維持される。
【0158】
以上説明したように、本発明の洗浄水処理装置と洗浄水処理方法によると、洗浄処理部で被洗浄部材の洗浄に使用した純水を除菌浄化処理と濾過処理して細菌と有機物を低レベルに保つとともに、TOC濃度を所定濃度以下に抑制するので、再利用する洗浄水の除菌濾過処理と、フィルタのハウジング等からのTOC溶出のいわば相反する機能を両立させ、純水としての水質要求を満たした洗浄水として再利用することができる。
【0159】
また、洗浄処理部に返送される被処理水は低濃度のオゾンを含むため、洗浄処理部や洗浄水処理装置内での細菌の増殖を防止し、洗浄処理部の清掃と純水の交換間隔を長くすることができるとともに、洗浄水処理装置の濾過フィルタやイオン交換樹脂の寿命を延長することができる。これにより、本発明の洗浄水処理装置と洗浄水処理方法を使用する製造装置の稼働率を向上させて製造コストの削減を図ることができる。
【0160】
また、本実施例においては、前記実験から得た知見をデータ化した演算式やデータ化したデータテーブルは、樹脂製のフィルターハウジングや樹脂製のボンベを使用した場合、すなわち想定される最もTOCが溶出する条件なので、例えば、フィルターハウジングをステンレス鋼製や、ボンベをステンレス鋼製にした場合でもあれば、実際よりもTOC濃度が少なくなるので、これらの演算式やデータテーブルを使用することができる。
【0161】
そして、演算式やデータテーブルに用いるオゾン水濃度とTOC濃度との関係は、半導体ウエハ基板、液晶ガラス基板、ガラス基板、メッキ処理した電子部品などを洗浄するために実際の現場で用いられる洗浄水処理装置を用いて実験的に取得(いわゆる現場合わせ)してもよい。
【0162】
なお、TOC濃度調整手段22は、循環流路20内であればどこに設けてもよいが、濾過機構部15の後段に設けた方が、洗浄処理前の洗浄水のTOC濃度が最も低くなるので、この位置に設けることが好ましい。
【0163】
また、本実施例においては、被処理水が純水とした洗浄水処理装置とその方法について主に説明したが、被処理水が超純水であっても適用できる。この場合、TOC濃度調整手段の基準値を例えば、0.01(mg/L)と定め洗浄水処理装置で使用されるオゾン水濃度によって、TOC濃度が基準値以下に抑制するように、被処理水の排水と純水又は超純水の供給を制御すれば、無駄に純水又は超純水を使わずに水質を満たす洗浄水を提供できる。
【符号の説明】
【0164】
11 洗浄処理部
12 洗浄水処理装置
13 洗浄水収納部
14 除菌浄化ユニット(除菌・浄水処理装置)
15 濾過機構部
16 制御装置
17 流入流路
18 流出流路
19 濾過流路
20 循環流路
22 TOC濃度調整手段
26 濾過装置
27 イオン交換樹脂