(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】触媒及びジエン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 21/08 20060101AFI20241211BHJP
B01J 23/20 20060101ALI20241211BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20241211BHJP
B01J 35/61 20240101ALI20241211BHJP
B01J 35/64 20240101ALI20241211BHJP
B01J 35/70 20240101ALI20241211BHJP
B01J 29/03 20060101ALI20241211BHJP
C07C 1/20 20060101ALI20241211BHJP
C07C 11/167 20060101ALI20241211BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241211BHJP
【FI】
B01J21/08 Z
B01J23/20 Z
B01J35/60 G
B01J35/61
B01J35/64
B01J35/70
B01J29/03 Z
C07C1/20
C07C11/167
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021527702
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024894
(87)【国際公開番号】W WO2020262486
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019117332
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019117320
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019117343
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】西山 悠
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 宣利
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-272217(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0050531(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0200694(US,A1)
【文献】Journal of Porous Materials,2017年,vol.24,p.979-990,DOI:10.1007/s10934-016-0337-2
【文献】A. GALARNEAU et al.,Microporosity and connections between pores in SBA-15 mesostructured silicas as a function of the temperature of synthesis,New J. Chem.,2002年11月28日,2003, Vol. 27,Pages 73-79.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
C07C 1/00-409/44
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールを含む原料からジエン化合物を合成するジエン化合物合成用触媒であって、
周期表第3~6族からなる群から選択される少なくとも1種の元素Xと、第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素Zと含み、
前記元素XがHf,Zr,Nb,又はTaであり、前記元素ZがSiであり、
前記元素Xと前記元素Zとの合計量(モル)に対する元素Xのモル含有率(X/(X+Z)×100)が、0.5~6モル%である複合酸化物であり、
BET比表面積が700~1200m
2
/gであり、平均細孔直径が2~20nmであり、
X線回折法を用いて観測されるX線回折プロファイルにおいて、θ=
0.1°~1°の低角度範囲に少なくとも1つの回折ピークが観測され、
前記少なくとも1つの回折ピークのピーク強度Iと前記回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)が、5000以上であ
り、
X線回折法を用いて観測されるX線回折プロファイルにおいて、θ=10°~40°の高角度範囲に、半値半幅が1°以上の回折ピークが少なくとも1つ観測される触媒。
【請求項2】
前記元素XがHfであり、前記元素ZがSiである請求項
1に記載の触媒。
【請求項3】
前記原料が、エタノール及び/又はアセトアルデヒドを含む、請求項
1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の触媒に、アルコールを含む原料を接触させてジエン化合物を製造することを含む、ジエン化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項
4に記載のジエン化合物の製造方法で製造されたジエン化合物の少なくとも一部をポリマー原料としてポリマーを製造することを含む、ポリマーの製造方法。
【請求項6】
請求項
5に記載のポリマーの製造方法で製造されたポリマーを成形することを含む、ポリマー成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒及び当該触媒を用いたジエン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジエン化合物の代表例である1,3-ブタジエン等のブタジエンは、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等の原料として用いられている。従来、ブタジエンは、C4留分から精製されていた。C4留分は、石油からエチレンを製造するナフサクラッキングの際に副生する留分である。しかし、シェールガスの利用量の増加に伴って石油の利用量が減少した。その結果、石油のナフサクラッキングで得られるブタジエンの生産量も減少している。このため、1,3-ブタジエン等のジエン化合物を製造するための代替方法が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エタノールをブタジエンに選択的に変換するための金属含浸シリカ触媒に係る発明が記載されている。より詳細には、特許文献1には、Hf並びに2以上の触媒活性金属M1およびM2を含み、この2以上の触媒活性金属M1およびM2が、Zr、Zn、Cu、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、この際、M1とM2とは異なるものである、ブタジエン合成用触媒が記載されている。
特許文献1には、(i)エタノール、任意のアセトアルデヒドを含むガス流G-1を提供し、(ii)ガス流G-1を上記ブタジエン合成用触媒に接触させて、ブタジエンを含むガス流G-2を得ることを含むブタジエンの合成方法が記載されている。
上記ブタジエンの合成方法によれば、ブタジエン選択性が少なくとも10%であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のブタジエン合成用触媒は、触媒活性金属を担体であるシリカ等に担持した担持触媒であるため、触媒活性金属の担体表面における分散性によってブタジエンのようなジエン化合物への選択性が左右される。目的生成物であるジエン化合物(例えば、ブタジエン)の選択率が低いと、後工程でのジエン化合物の分離精製が煩雑になるといった弊害が生じる。
【0006】
そこで、本発明の第1の側面においては、ジエン化合物、特にブタジエンを選択的に高収率で製造できる触媒を提供することを目的とする。
【0007】
また、触媒活性金属の担持状態によってはジエン化合物だけでなく、過反応により重合体が生成されることがある。このような過反応が進行しすぎるとジエン化合物選択性が低下するだけでなく、重合体が活性金属を被毒して活性劣化を助長したり、その後の分離精製が煩雑になったりといった弊害が生じる。
【0008】
そこで、本発明の第2の側面においては、ジエン化合物、特にブタジエンを高収率で製造可能で活性劣化が抑制された触媒を提供することを目的とする。
また、本発明の第3の側面においては、重合体への過反応を抑えジエン化合物、特にブタジエンを高収率で製造できる触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、本発明の第1の側面に係る上記課題を解決するべく、鋭意研究を行った。その結果、本発明の第1の側面において、所定の元素を含み、X線回折プロファイルにおけるθ=6°以下の低角度範囲に回折ピークを有する触媒により本発明の第1の側面に係る上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の第1の側面に係る発明は、以下の態様を有する。
【0010】
[1-1] 周期表第3~6族からなる群から選択される少なくとも1種の元素Xと、第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素Zと含み、
X線回折法を用いて観測されるX線回折プロファイルにおいて、θ=6°以下の低角度範囲に少なくとも1つの回折ピークが観測され、
前記少なくとも1つの回折ピークのピーク強度Iと前記回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)が、5000以上である触媒。
[1-2] 前記元素Xと前記元素Zのとの合計量(モル)に対する元素Xのモル含有率(X/(X+Z)×100)が、0.5~6モル%である[1]に記載の触媒。
[1-3] 前記元素XがHfであり、前記元素ZがSiである[1-1]又は[1-2]に記載の触媒。
[1-4] アルコールを含む原料からジエン化合物を合成するジエン化合物合成用触媒である、[1-1]~[1-3]のいずれかに記載の触媒。
[1-5] 前記原料が、エタノール及び/又はアセトアルデヒドを含む、[1-4]に記載の触媒。
[1-6] BET比表面積が700~1200m2/gであり、平均細孔直径が2~20nmである[1-1]~[1-5]のいずれかに記載の触媒。
[1-7]
X線回折法を用いて観測されるX線回折プロファイルにおいて、θ=10°~40°の高角度範囲に、半値半幅が1°以上の回折ピークが少なくとも1つ観測される[1-1]~[1-6]のいずれかに記載の触媒。
[1-8] [1-1]~[1-7]のいずれかに記載の触媒に、アルコールを含む原料を接触させてジエン化合物を製造することを含む、ジエン化合物の製造方法。
[1-9] [1-8]に記載のジエン化合物の製造方法で製造されたジエン化合物の少なくとも一部をポリマー原料としてポリマーを製造することを含む、ポリマーの製造方法。
[1-10] [1-9]に記載のポリマーの製造方法で製造されたポリマーを成形することを含む、ポリマー成形品の製造方法。
【0011】
また本発明者らは、本発明の第2の側面に係る上記課題を解決するべく、鋭意研究を行った。その結果、本発明の第2の側面において、所定の元素を含み、BET比表面積及び平均細孔直径を特定の範囲とした触媒により本発明の第2の側面に係る上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の第2の側面に係る発明は、以下の態様を有する。
【0012】
[2-1] 周期表第3~6族からなる群から選択される少なくとも1種の元素Xと、第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素Zとを含み、BET比表面積が700~1200m2/gであり、平均細孔直径が2~20nmである触媒。
[2-2] 前記元素Xと前記元素Zのとの合計量(モル)に対する元素Xのモル含有率(X/(X+Z)×100)が、0.5~6モル%である[2-1]に記載の触媒。
[2-3] 前記元素XがHfであり、前記元素ZがSiである[2-1]又は[2-2]に記載の触媒。
[2-4] アルコールを含む原料からジエン化合物を合成するジエン化合物合成用触媒である、[2-1]~[2-3]のいずれかに記載の触媒。
[2-5] 前記原料が、エタノール及び/又はアセトアルデヒドを含む、[2-4]に記載の触媒。
[2-6] [2-1]~[2-5]のいずれかに記載の触媒に、アルコールを含む原料を接触させてジエン化合物を製造することを含む、ジエン化合物の製造方法。
[2-7] [2-6]に記載のジエン化合物の製造方法で製造されたジエン化合物の少なくとも一部をポリマー原料としてポリマーを製造することを含む、ポリマーの製造方法。
[2-8] [2-7]に記載のポリマーの製造方法で製造されたポリマーを成形することを含む、ポリマー成形品の製造方法。
【0013】
さらに、本発明者らは、本発明の第3の側面に係る上記課題を解決するべく、鋭意研究を行った。その結果、本発明の第1の側面において、所定の元素を含む特定の複合酸化物構造を有する触媒により本発明の第1の側面に係る上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の第1の側面に係る発明は、以下の態様を有する。
【0014】
[3-1] 周期表第3~6族からなる群から選択される少なくとも1種の元素Xと、第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素Zと、を含み、X線回折法を用いて観測されるX線回折プロファイルにおいて、θ=10°~40°の高角度範囲に、半値半幅が1°以上の回折ピークが少なくとも1つ観測される触媒。
[3-2] 前記回折ピークのうち、回折強度が最も大きい最大回折ピークのピーク強度Iと前記最大回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)が、1000~3000である[3-1]に記載の触媒。
[3-3] 前記X線回折プロファイルにおける回折角θ=10°~40°の範囲に、前記元素Xの単一酸化物に起因する回折ピークが観測されない[3-1]又は[3-2]に記載の触媒。
[3-4] 前記元素Xと前記元素Zのとの合計量(モル)に対する元素Xのモル含有率(X/(X+Z)×100)が、0.5~6モル%である[3-1]~[3-3]のいずれかに記載の触媒。
[3-5] θ=10°~40°の範囲に、前記半値半幅が1°以上の回折ピークが少なくとも1つ観測される[3-1]~[3-4]のいずれかに記載の触媒。
[3-6] 前記半値半幅が6°~12°である[3-1]~[3-5]のいずれかに記載の触媒。
[3-7] 前記元素XがHfであり、前記元素ZがSiである[3-1]~[3-6]のいずれかに記載の触媒。
[3-8] アルコールを含む原料からジエン化合物を合成するジエン化合物合成用触媒である、[3-1]~[3-7]のいずれかに記載の触媒。
[3-9] 前記原料が、エタノール及び/又はアセトアルデヒドを含む、[3-8]に記載の触媒。
[3-10] [3-1]~[3-9]のいずれかに記載の触媒に、アルコールを含む原料を接触させてジエン化合物を製造することを含む、ジエン化合物の製造方法。
[3-11] [3-0]に記載のジエン化合物の製造方法で製造されたジエン化合物の少なくとも一部をポリマー原料としてポリマーを製造することを含む、ポリマーの製造方法。
[3-12] [3-11]に記載のポリマーの製造方法で製造されたポリマーを成形することを含む、ポリマー成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の側面に係る発明によれば、ジエン化合物、特にブタジエンを選択的に高収率で製造できる触媒を提供することができる。
本発明の第2の側面に係る発明によれば、ジエン化合物、特にブタジエンを高収率で製造可能で活性劣化が抑制された触媒を提供することができる。
本発明の第3の側面に係る発明によれば、重合体への過反応を抑えジエン化合物、特にブタジエンを高収率で製造できる触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるジエン化合物の製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の第1~第3の側面に係る各発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の記載は本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されず、その要旨の範囲内で変形して実施することができる。
なお、本発明の第1の側面に係る発明を第1発明といい、本発明の第2の側面に係る発明を第2発明といい、本発明の第3の側面に係る発明を第3発明という。
【0018】
<<第1発明>>
<触媒>
本実施形態に係る触媒は、周期表第3~6族からなる群から選択される少なくとも1種の元素Xと、第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素Zと含む。元素Xを含むことにより、原料をジエン化合物に変換することができる。また、元素Zを含むことにより、原料と触媒との接触面積を増加させることができる。
【0019】
本実施形態に係る触媒は、X線回折法を用いて観測されるX線回折プロファイルにおいてθ=6°以下の低角度範囲、好ましくはθ=0.1°~6°の範囲、より好ましくはθ=0.1°~1°の範囲に少なくとも1つの回折ピークが観測される。この少なくとも1つの回折ピークは、そのピーク強度Iとその回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)が、5000以上となっており、6000以上が好ましく、7000以上がより好ましい。
【0020】
この回折ピークは元素X及び元素Yを含む触媒が特定の規則的な配列を持ったメソ細孔を有することに起因するものである。この規則的な配列が存在することで、例えば、原料のエタノールと中間体であるクロトンアルデヒドがメソ細孔内に入りやすくなりこれらの衝突頻度が高まって、反応性が向上し、ブタジエンが選択的に生成すると推察される。一方で、回折ピークが観測されない場合、触媒中に規則的な配列を持ったメソ細孔が存在しないことになる。そのため、反応が中間体であるアセトアルデヒドで止まってしまうと推察される。なお、X線回折法の条件は実施例に記載のとおりである。
【0021】
本実施形態に係る触媒は、平均細孔直径は2~50nm、好ましくは2~30nm、より好ましくは2~20nm、さらに好ましくは2~15nmである。この際、触媒の「平均細孔直径」は、以下の方法により測定された値を採用するものとする。すなわち、平均細孔直径は、全細孔容積(触媒の細孔容積の合計)とBET比表面積とから算出される。
具体的には、細孔形状を円筒形であると仮定することにより算出することができる(BJH法)。円筒形の側面積としてBET比表面積A1を、円筒形の体積として全細孔容積V1を使用すると、平均細孔直径は、4V1/A1により算出することができる。
【0022】
なお、触媒の全細孔容積は、0.1~10.0mL/gであることが好ましく、0.1~5.0mL/gであることがより好ましく、0.1~2.0mL/gであることがさらに好ましい。全細孔容積が0.1mL/g以上であれば、アルコールの拡散性が向上し、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。一方、全細孔容積が10.0mL/g以下であると、アルコール-触媒間の接触面積が大きくなり、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。本明細書において、触媒の「全細孔容積」は、ガス吸着法により測定される値を採用するものとする。この際、ガス吸着法とは、窒素ガスを吸着ガスとして使用し、合成用触媒の表面に窒素分子を吸着させ、分子の凝縮から細孔分布を測定する方法である。
【0023】
触媒の比表面積は、100~10000m2/gであることが好ましく、200~5000m2/gであることがより好ましく、200~1500m2/gであることがさらに好ましく、700~1200m2/gであることが特に好ましい。
比表面積が100m2/g以上であると、触媒表面に充分な量の活性点が存在するため、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。その結果、原料100体積%(気体換算)に対し、原料の含有量が高濃度であっても原料転化率が高まり、例えば100体積%でも高い原料転化率を示す。一方、比表面積が10000m2/g以下であると、原料と触媒と間の接触面積が大きくなり、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。
なお、本明細書において、「比表面積」は、窒素を吸着ガスとし、BET式ガス吸着法により測定されるBET比表面積を意味する。
【0024】
触媒の全細孔容積と比表面積との積は、10~100000mL・m2/g2であることが好ましく、20~25000mL・m2/g2であることがより好ましく、20~2000mL・m2/g2であることがさらに好ましい。上記積が10mL・m2/g2以上であると、触媒表面に充分な量の活性点が存在し、かつアルコールを含む原料の拡散性が向上するため、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。一方、上記積が100000mL・m2/g2以下であると、原料と触媒との接触面積が充分となりやすく、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。
【0025】
触媒のメソ細孔容積率(全メソ細孔容積/全細孔容積×100)は、50%以上であることが好ましく、50~100%であることがより好ましく、80~100%であることがさらに好ましく、90~100%であることが特に好ましい。メソ細孔容積率が50%以上であると、触媒に充分なメソ細孔が存在し、アルコールを含む原料の拡散性が向上するため、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。
【0026】
なお、メソ細孔容積率の割合は、後述する製造方法における原料(Xを含む化合物、Zを含む化合物等)の使用比率、焼成工程の焼成温度等により制御することができる。
【0027】
触媒のメソ細孔の形状、及びメソ細孔を形成する細孔壁が結晶構造を有しているか否かは、X線回折による回折ピークを観察することにより確認することができる。また、透過型電子顕微鏡(TEM)により合成用触媒を観察することで、メソ細孔の形状、規則性を確認することができる。
【0028】
また、X線回折法を用いて観測される当該触媒のX線回折プロファイルにおいて、θ=10°~40°の高角度範囲、好ましくはθ=20°~25°の範囲に、半値半幅が1°以上の回折ピークが少なくとも1つ観測されることが好ましい。この回折ピークは元素X及び元素Yを含む複合酸化物に起因するもので、この複合酸化物が存在することで、元素Xの単一酸化物の凝集物上で進行しやすい重合体への過反応を抑え、ジエン化合物を選択的に高収率で得ることができる。
【0029】
ここで、本明細書における「複合酸化物」とは、元素X、元素Yを含む2種以上の元素(金属等)が共存する酸化物をいう。元素Yを含む担体の表面に元素Xが担持された担持触媒の場合は、上記のような複合酸化物に起因する回折ピークは得られない。
また、過反応により生成する「重合体」とは、ペンタジエン、ペンテン、ペンタン、ヘキサジエン、ヘキサトリエン、ヘキセン、ヘキサン等といった炭素数が5以上の不飽和炭化物、飽和炭化物をいう。
【0030】
θ=10°~40°の高角度範囲には、元素Xの単一酸化物に起因する回折ピークが観測されないことが好ましい。かかる回折ピークが観測されないということは、元素Xのほとんどが複合酸化物の構成成分となっており、元素Xによるジエン化合物への変換機能が十分に発揮され得ることを意味する。また、元素Xの単一酸化物(例えば、酸化ハフニウム等)の凝集物上で進行しやすい重合体への過反応が抑えられる。
ここで、元素Xの単一酸化物に起因する回折ピークが観測されないということは、当該回折ピークのピーク強度Iと上記回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)が900以下であることをいう。
【0031】
回折ピークの半値半幅は小さいほど結晶性が高くなることを示すが、本実施形態では、半値半幅は6°~12°であることが好ましく、7°~11°であることがより好ましい。
半値半幅が6°~12°であることで、複合酸化物を構成する各元素間にある程度の間隔が存在し、そこで選択的にジエン化合物への反応が進行しやすくなると推察される。
【0032】
回折ピークのうち、回折強度が最も大きい最大回折ピークのピーク強度Iと、この最大回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)は、1000~3000であることが好ましく、1500~2200であることがより好ましい。
比(I/H)が、1000~3000であることで、選択的にブタジエンへの反応を進行させやすくなる。
【0033】
ここで、元素Xとしては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)等の第3族元素;チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等の第4族元素;バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)等の第5族元素;クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の第6族元素が挙げられる。これらのうち、第3族元素、第4族元素、第5族元素であることが好ましく、第4族元素、第5族元素であることがより好ましく、第4族元素であることがさらに好ましい。
【0034】
また、別の一実施形態によれば、第5周期元素、第6周期元素、第7周期元素であることが好ましく、第5周期元素、第6周期元素であることがより好ましい。具体的には、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)であることが好ましく、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)であることがより好ましく、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)であることがさらに好ましく、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)であることが特に好ましく、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)であることが極めて好ましく、ハフニウム(Hf)であることが最も好ましい。
なお、上述の元素Xは、1種類単独で含んでいてもよいし、2種類以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0035】
元素Zとしては、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)等が挙げられる。
これらのうち、元素Zは、炭素(C)、ケイ素(Si)であることが好ましく、ケイ素(Si)であることがより好ましい。
なお、上述の元素Zは単独で含んでいても、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
また、特に好ましい組み合わせとしては、元素XがHfであり、元素ZがSiである。
【0036】
触媒中の元素Xと元素Zとの合計量(モル)に対する元素Xのモル含有率(X/(X+Z)×100)は、0.1~20モル%であることが好ましく、0.5~15モル%であることがより好ましく、0.5~6モル%であることがさらに好ましく、0.7~4モル%であることが特に好ましい。
なお、元素Xを2種以上組み合わせて含む場合はそれらの和、元素Zを2種以上組み合わせて含む場合はそれらの和で上記のモル含有率を計算する。
【0037】
好ましい一実施形態において、触媒は下記一般式1を満たすことが好ましい。
Xa1Sib1Oδ1・・・式1
式1中、Xは元素Xを表す。
a1は、元素Xのモル比であり、a1およびb1の和を100モル%とした場合、0.1~20モル%であることが好ましく、0.5~15モル%であることがより好ましく、0.5~6モル%であることがさらに好ましく、0.7~4モル%であることが特に好ましい。
b1は、Siのモル比であり、a1およびb1の和を100モル%とした場合、80~99.9モル%であることが好ましく、85~99.5モル%であることがより好ましく、94~99.5モル%であることがさらに好ましく、94~99.3モル%であることが特に好ましい。
δ1は、電荷中性条件を満たすのに必要な数を表す。具体的には、δ1は、触媒を構成する元素XおよびSi、並びにa1およびb1により定まるものである。例えば、δ1は、100~2000であることが好ましく、100~1000であることがより好ましく、100~400であることがさらに好ましい。
【0038】
上記のような元素Xのモル含有率や触媒が一般式1で表されることは、例えば、発光分光分析や蛍光X線測定等により確認することができる。
【0039】
本発明の効果を損なわない範囲で、本実施形態の触媒は、複合酸化物の構成元素として、元素X、元素Z以外の元素、例えば亜鉛元素(Zn)等を含んでもよい。
【0040】
なお、複合酸化物の構成元素として、元素X、元素Z以外の元素(以下、「他の元素」とも称する)を含む場合、元素X、元素Z、および他の元素のモル比は、上記の通り、他の元素のモル比だけ元素Zのモル比が少なくなることが好ましい。換言すれば、元素Xのモル比は、他の元素を含むか否かにかかわらず、同等のモル比であることが好ましい。このことは他の元素を2以上含む場合であっても同様である。
【0041】
上述の触媒は、好ましくはアルコールを含む原料からジエン化合物を合成するジエン化合物合成用触媒であることが好ましい。この際、アルコールとしては、後述するようにエタノール及び/又はアセトアルデヒドを含むことが好ましく、エタノールであることがより好ましい。また、ジエン化合物としては、後述するように、1,3-ブタジエンであることが好ましい。
【0042】
<触媒の製造方法>
本実施形態に係る触媒は、固形コロイド調製工程と、焼成工程とを経て製造される。以下、各工程について説明する。
【0043】
[固形コロイド調製工程]
固形コロイド調製工程は、周期表第3~6族からなる群から選択される少なくとも1種の元素Xを含む化合物と、第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素Zを含む化合物と、界面活性剤と、水を含む溶媒と、を含む原料溶液に対し、上記溶媒の少なくとも一部を留去して固形コロイドを得る工程である。
【0044】
(原料溶液)
上記原料溶液は、周期表第3~6族からなる群から選択される少なくとも1種の元素Xを含む化合物と、第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素Zを含む化合物と、界面活性剤と、水を含む溶媒と、を含む。原料溶液は、他の元素を含む化合物(例えば、亜鉛を含む化合物)、酸性溶液、塩基性溶液等をさらに含んでいてもよい。
【0045】
本実施形態に係る触媒において、X線回折プロファイルにおけるθ=6°以下の低角度範囲に少なくとも1つの回折ピークが観測され、その少なくとも1つの回折ピークのピーク強度Iと回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)が、5000以上である触媒を得るためには、当該原料溶液は下記のようにして調製することが好ましい。
【0046】
(1)まず、所定量の界面活性剤に水と酸性溶液又は塩基性溶液を添加し、常温常圧条件下で所定の速度(例えば、50~200rpm程度)で撹拌して界面活性剤を溶解させる。
ここで、酸性溶液又は塩基性溶液は、作製される原料溶液における酸性度又は塩基性濃度が0.001mol/L~10mol/L(好ましくは0.01~5mol/L)となるように添加することが好ましい。酸性溶液又は塩基性溶液は、元素Xを含む化合物及び元素Zを含む化合物といった前駆体の加水分解を促進するものであるが、上記範囲内であることで、金属前駆体の加水分解速度が高まりすぎず、結果として単一金属酸化物同士での凝集が防がれ、効率よく複合酸化物が得られる。
【0047】
(2)界面活性剤を溶解させた水溶液を常温常圧条件下で所定の速度で撹拌しながら、元素Xを含む化合物を所定の速度で加える。
ここで、所定の速度で撹拌する際の撹拌速度は、10~2000rpmであることが好ましく、10~1000rpmであることがより好ましく、10~500rpmであることがさらに好ましい。上記範囲内であることで、単一金属酸化物同士で凝集が防がれ、効率よく複合酸化物が得られる。
【0048】
また、元素Xを含む化合物を所定の速度で添加する際の添加速度としては、0.1~100mg/分であることが好ましく、0.1~50mg/分であることがより好ましく、0.1~20mg/分であることがさらに好ましい。上記範囲内であることで、実用的な添加速度としながら、単一金属酸化物同士での凝集が防がれ、効率よく複合酸化物が得られる。
【0049】
さらに、作製される原料溶液における元素Xを含む化合物の濃度は、0.001~1000g/Lの範囲とすることが好ましく、0.01~100g/Lの範囲とすることがより好ましい。上記範囲内であることで、後工程での良好な取り扱い性を有しながら、単一金属酸化物同士での凝集が防がれ、効率よく複合酸化物が得られる。
【0050】
(3)元素Xを含む化合物が全て溶解したことを確認してから、常温常圧条件下で所定の速度で撹拌しながら、元素Zを含む化合物を所定の速度で加えていき原料溶液を調製する。
【0051】
ここで、元素Zを含む化合物を所定の速度で加える際の添加速度は、0.01~10g/分であることが好ましく、0.01~5g/分であることがより好ましく、0.01~1g/分であることがさらに好ましい。上記範囲の上限値以下であることで、元素Zを含む化合物の加水分解反応速度が速くなりすぎるのを防ぎ、界面活性剤の周りで反応しやすくなって、規則的な配列を持ったメソ細孔が生成しやすくなる。上記範囲の下限値以上であることで、添加している最中に空気中の水分と加水分解してしまうのを防ぐことができる。
【0052】
また、作製される原料溶液における元素Zを含む化合物の濃度は、0.001~1000g/Lの範囲とすることが好ましく、0.01~100g/Lの範囲とすることがより好ましい。上記範囲の上限値以下であることで、元素Zを含む化合物の加水分解反応速度が速くなりすぎるのを防ぎ、界面活性剤の周りで反応しやすくなって、規則的な配列を持ったメソ細孔が生成しやすくなる。上記範囲の下限値以上であることで、添加している最中に空気中の水分と加水分解してしまうのを防ぐことができる。
【0053】
さらに、元素Zを含む化合物は、界面活性剤との質量比(元素Zを含む化合物/界面活性剤)が好ましくは0.01~100となるように、より好ましくは0.05~50となるように、さらに好ましくは0.1~10となるように添加する。上記範囲の上限値以下であることで、元素Zを含む化合物が界面活性剤の周りで反応しやすくなり、が形成されやすくなる。上記範囲の下限値以上であることで、界面活性剤が多すぎることにより、部分的に元素Zを含む酸化物(シリカ等)が形成されていまい分断された構造となるのが防がれ、触媒に規則的な配列を持ったメソ細孔が形成されやすくなる。
【0054】
元素Zを含む化合物を加える際の原料溶液の撹拌速度は、10~2000rpmであることが好ましく、10~1000rpmであることがより好ましく、10~500rpmであることがさらに好ましい。上記範囲内であることで、元素Zを含む化合物の加水分解が早くなりすぎず、界面活性剤との相互作用が生じて十分なメソ細孔が得られ、比表面積も大きくすることができる。
【0055】
(4)次いで、原料溶液を熟成することで、懸濁液を得る。
当該懸濁液は、既述の原料溶液中の元素Xを含む化合物、元素Zを含む化合物等が水によって加水分解、縮合が生じて固形分が得られることにより、懸濁液となる。
【0056】
本明細書において、「熟成」とは、原料溶液を静置することを意味する。
この際、原料溶液の熟成温度は、30~200℃であることが好ましく、35~150℃であることがより好ましい。
また、原料溶液の熟成時間は、2時間~10日間であることが好ましく、10時間~5日間であることがより好ましい。
なお、熟成は例えば2段階で行ってもよい。例えば、30~90℃で1時間~5日間静置して第1の熟成を行い、その後、90℃~200℃で第1の熟成よりも高温にして1時間~5日間静置する第2の熟成を行ってもよい。
【0057】
以下では、原料溶液の作製に用いられる元素Xを含む化合物、元素Zを含む化合物、亜鉛を含む化合物、界面活性剤、溶媒、酸性溶液、塩基性溶液等について説明する。
【0058】
・元素Xを含む化合物
元素Xを含む化合物としては、特に制限されないが、元素Xの塩化物、硫化物、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩;シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩等の有機塩;キレート化合物;カルボニル化合物;シクロペンタジエニル化合物;アンミン錯体;アルコキシド化合物;アルキル化合物等が挙げられる。
具体的には、塩化チタン(TiCl2、TiCl3、TiCl4)、塩化ジルコニウム(ZrCl2)、塩化ハフニウム(HfCl4)、塩化ニオブ(NbCl5)、塩化タンタル(TaCl5)、塩化バナジウム(VCl3)塩化タングステン(WCl5)、硝酸スカンジウム(Sc(NO3)3)、硝酸イットリウム(Y(NO3)3)、硝酸ランタン(La(NO3)3)、硝酸セリウム(Ce(NO3)3)等が挙げられる。
上述した元素Xを含む化合物は単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0059】
元素Xを含む化合物の使用量は、元素Xを含む化合物および元素Zを含む化合物の合計量(モル)に対して、0.1~20モル%であることが好ましく、0.5~15モル%であることがより好ましく、0.5~6モル%であることがさらに好ましく、0.7~4モル%であることが特に好ましい。なお、元素Xを含む化合物を2種以上組み合わせて含む場合には、その和が上記範囲に含まれることが好ましい。
【0060】
・元素Zを含む化合物
元素Zを含む化合物としては、特に制限されないが、元素Zの塩化物、硫化物、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩;シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩等の有機塩;キレート化合物;カルボニル化合物;シクロペンタジエニル化合物;アンミン錯体;アルコキシド化合物;アルキル化合物等が挙げられる。
これらのうち、ケイ素を含むアルコキシド化合物を用いることが好ましい。
【0061】
ケイ素を含むアルコキシド化合物としては、下記一般式3で表される化合物であることが好ましい。
Si(OR)4・・・式3
式3中、Rは、それぞれ独立して、アルキル基を示す。アルキル基としては、炭素数が1~4のアルキル基であることが好ましく、エチル基であることがより好ましい。
具体的なケイ素を含むアルコキシド化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等が挙げられる。これらのうち、テトラエトキシシランを用いることが好ましい。
上述した元素Zを含む化合物は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0062】
元素Zを含む化合物の使用量は、元素Xを含む化合物および元素Zを含む化合物の合計量(モル)に対して、80~99.9モル%であることが好ましく、85~99.5モル%であることがより好ましく、94~99.5モル%であることがさらに好ましい。なお、元素Zを含む化合物を2種以上組み合わせて含む場合には、その和が上記範囲に含まれることが好ましい。
【0063】
・亜鉛を含む化合物
亜鉛を含む化合物としては、特に制限されないが、亜鉛の塩化物、硫化物、硝酸塩、炭酸塩等の無機塩;シュウ酸塩、アセチルアセトナート塩、ジメチルグリオキシム塩、エチレンジアミン酢酸塩等の有機塩;キレート化合物;カルボニル化合物;シクロペンタジエニル化合物;アンミン錯体;アルコキシド化合物;アルキル化合物等が挙げられる。
具体的には、塩化亜鉛(ZnCl2)、硫化亜鉛(ZnS)、硝酸亜鉛(Zn(NO3)2)等が挙げられる。
上述した亜鉛を含む化合物は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0064】
亜鉛を含む化合物の使用量は、元素Xを含む化合物、元素Zを含む化合物、および亜鉛を含む化合物の合計量(モル)に対して、0.1~20モル%であることが好ましく、0.5~15モル%であることがより好ましく、0.5~6モル%であることがさらに好ましい。
【0065】
・界面活性剤
触媒の製造に界面活性剤を用いることにより、メソ細孔を有する触媒を得ることができる。より詳細には、界面活性剤の添加によりミセルが形成され、得られるミセルを鋳型として表面に複合酸化物の前駆体が形成される。このような前駆体に対して後述する焼成を行うことで、界面活性剤が除去されてメソ細孔を有する触媒を製造することができる。なお、ミセルの形状は、その濃度によって、球状、シリンダー状、ラメラ状、ジャイロイド状、ベシクル状の形状となる。
【0066】
界面活性剤としては、特に制限されないが、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、MCM-41、SBA-15、FMS-16等のメソポーラスシリカの合成に従来使用されるカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0067】
非イオン性界面活性剤としては、特に制限されないが、アルキレンオキシド鎖を構成成分とするポリアルキレンオキサイドブロックコポリマー、前記ブロックコポリマーの末端をアルコールやフェノール等でエーテル化した化合物等が挙げられる。
なお、構成単位として含まれるアルキレンオキシド鎖は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0068】
このうち、得られる複合酸化物のメソ細孔を形成する細孔壁の結晶構造の安定性の観点から、非イオン性界面活性剤を使用することが好ましく、ポリアルキレンオキサイドブロックコポリマーを使用することがより好ましい。得られる複合酸化物のメソ細孔を形成する細孔壁の結晶構造の安定性の観点から、ポリエチレンオキシド鎖(CH2CH2O)mとポリプロピレンオキシド鎖(CH2CH(CH3)O)nを構成単位とするポリアルキレンオキサイドブロックコポリマーを使用することがさらに好ましい。なお、上記m及びnは、1~1000であり、好ましくはmが1~200、nが1~100であり、より好ましくはmが1~200、nが1~100、m+nが2~300である。ポリマーの末端は、水素原子、水酸基、又はアルコールやフェノールでエーテル化されている。
【0069】
前述のポリアルキレンオキサイドブロックコポリマーの中でも、得られる複合酸化物のメソ細孔を形成する細孔壁の結晶構造の安定性の観点から、下記一般式4で表されるポリアルキレンオキサイドブロックコポリマーであることが好ましい。
HO(CH2CH2O)r(CH2CH(CH3)O)s(CH2CH2O)tH・・・式4
本発明の合成用触媒の前述した好ましい平均細孔直径を形成する観点から、rは1~100であることが好ましく、sは1~100であることが好ましく、tは1~100であることが好ましい。また、r+s+tは、3~300であることが好ましい。
【0070】
ポリアルキレンオキサイドブロックコポリマーを得る方法は、特に限定されず、従来公知の製造方法で製造されたものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
ポリアルキレンオキサイドブロックコポリマーの市販品は、例えばBASF社製の製品名P123;[(HO(CH2CH2O)20(CH2CH(CH3)O)70(CH2CH2O)20)H]、製品名P85;[(HO(CH2CH2O)26(CH2CH(CH3)O)39(CH2CH2O)26)H]、製品名P103[(HO(CH2CH2O)56(CH2CH(CH3)O)17(CH2CH2O)56H)]である。
上述した界面活性化剤は、単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上述の界面活性剤の種類等を適宜変更することでメソ細孔の形、細孔直径を制御することができる。
【0072】
界面活性剤の使用量は、既述の元素Zを含む化合物と界面活性剤との質量比(元素Zを含む化合物/界面活性剤)となることを前提に、溶媒100質量部に対して、3~20質量部であることが好ましく、5~18質量部であることがより好ましく、7~15質量部であることがさらに好ましい。界面活性剤の使用量が3質量部以上であると、メソ細孔が均一にできることから好ましい。一方、界面活性剤の使用量が20質量部以下であると、溶解できることから好ましい。
【0073】
・溶媒
溶媒としては、水を含む。また溶媒は、有機溶媒をさらに含んでいてもよい。
水としては、特に限定はされないが、金属イオン等を除去したイオン交換水、又は蒸留水が好ましい。
有機溶媒としては、特に制限されないが、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ヘキサノール等の脂肪族直鎖アルコールが挙げられる。
これらのうち、有機溶媒は、取り扱い性の観点から、メタノール、エタノールであることが好ましい。
上記有機溶媒は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0074】
水の使用量は、界面活性剤1質量部に対して、5~35質量部であることが好ましく、5~20質量部であることがより好ましい。水の使用量が5質量部以上であると、界面活性剤が溶解できることから好ましい。一方、水の使用量が35質量部以下であると、メソ細孔が均一にできることから好ましい。
【0075】
水の使用量は、元素Xを含む化合物および元素Zを含む化合物の合計量(モル)に対して、100モル%~10000モル%が好ましく、1000~8000モル%であることがより好ましい。水の使用量が100モル%以上であると、加水分解できることから好ましい。一方、水の使用量が10000モル%以下であると、固形分が溶解しないことから好ましい。
【0076】
また、溶媒として有機溶媒を含む場合、有機溶媒の使用量は、水に対して、10~50体積%であることが好ましく、10~25体積%であることがより好ましい。有機溶媒の使用量が10体積%以上であると、元素X及び元素Zが溶解できることから好ましい。一方、有機溶媒の使用量が50体積%以下であると、加水分解できることから好ましい。
【0077】
・酸性溶液
酸性溶液は、後述する加水分解による固形分の生成を促進する機能を有する。
酸性溶液としては、特に制限されないが、塩化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸が溶解している水溶液が挙げられる。
【0078】
酸性溶液の使用量は、酸性溶液中に含まれる酸のモル数が、元素Xを含む化合物および元素Zを含む化合物の合計量(モル)に対して、0.01~10.0モル%となる量であることが好ましく、0.1~8.0モル%となる量であることがより好ましい。
【0079】
・塩基性溶液
塩基性溶液は、後述する加水分解による固形分の生成を促進する機能を有する。なお、通常、上述の酸性溶液および塩基性溶液はいずれか一方が用いられる。
塩基性溶液としては、特に制限されないが、水酸化ナトリウム、炭酸カルシウム、アンモニアなどの無機塩基が溶解している水溶液が挙げられる。
【0080】
塩基性溶液の使用量は、元素Xを含む化合物および元素Zを含む化合物の合計量(モル)に対して、0.01~10.0モル%となる量であることが好ましく、0.1~8.0モル%となる量であることがより好ましい。
【0081】
(固形コロイドの調製)
固形コロイドは、既述の懸濁液を濾過し、適宜洗浄し、乾燥させることで得ることができる。
このように固形コロイドを経由することで、懸濁液を直接焼成する場合と比べて、触媒の均一性を高めることができる。なお、本明細書において、「固形コロイド」とは、固形コロイド中に含有される溶媒量が、固形コロイドの全体積に対して、5%以下のものを意味する。
【0082】
固形コロイドを得るための乾燥温度、20~200℃であることが好ましく、50~150℃であることがより好ましい。
乾燥時間は、1時間~10日であることが好ましく、2時間~5日間であることがより好ましい。上記範囲とすることで、溶媒がのぞかれ、次の焼成の過程で十分なメソ細孔径が得られやすくなり、比表面積を大きくすることができる。
【0083】
[焼成工程]
焼成工程は、上記固形コロイドを焼成する工程である。固形コロイドを焼成することで、鋳型とした界面活性剤が除去されて、本実施形態に係る触媒を製造することができる。
焼成温度は、200~800℃が好ましく、400~600℃であることがより好ましい。焼成温度が200℃以上であると、触媒中に界面活性剤由来の不純物が残留しない、またはほとんどしないことから好ましい。一方、焼成温度が800℃以下であると、触媒のメソ細孔を形成する細孔壁の結晶構造の安定性を向上させることができることから好ましい。
【0084】
ここで、焼成温度までの昇温速度としては、0.1~100℃/分であることが好ましく、0.5~50℃/分であることがより好ましく、1~20℃/分であることがさらに好ましい。上記範囲とすることで、成形体の表面と内部との温度差が生じず、十分なメソ細孔径を得ることができる。その結果、触媒の比表面積も大きくすることができる。
【0085】
焼成時間は、10分間~2日間であることが好ましく、1~10時間であることがより好ましい。焼成時間が10分間以上であると、触媒中に界面活性剤由来の不純物が残留しない、またはほとんどしないことから好ましい。一方、焼成時間が2日間以内であると、触媒のメソ細孔を形成する細孔壁の結晶構造の安定性を向上させることができることから好ましい。
【0086】
(ジエン化合物の製造装置)
ジエン化合物の製造装置は、上述の触媒が充填された反応管を備える。このような製造装置により、原料からジエン化合物を製造する。
【0087】
以下、ジエン化合物の製造装置の一例であるブタジエンの製造装置について、
図1に基づいて説明する。
本実施形態のブタジエンの製造装置10(以下、単に「製造装置10」という。)は、反応管1と供給管3と排出管4と温度制御部5と圧力制御部6とを備える。
反応管1は、内部に反応床2を備える。反応床2には、本発明の合成用触媒が充填されている。供給管3は反応管1に接続している。排出管4は反応管1に接続している。温度制御部5は反応管1に接続している。排出管4は、圧力制御部6を備える。
【0088】
反応床2は、本実施形態に係る触媒のみを有してもよいし、本実施形態に係る触媒とともに本実施形態に係る触媒以外の触媒を有していてもよい。また、希釈材をさらに有していてもよい。当該希釈材は、触媒が過度に発熱することを防止する。
希釈材は、例えば、石英砂、アルミナボール、アルミボール、アルミショット等である。
反応床2に希釈材を充填する場合、希釈材/合成用触媒で表される質量比は、それぞれの種類や比重等を勘案して決定され、例えば、0.5~5が好ましい。
なお、反応床は、固定床、移動床、流動床等のいずれでもよい。
【0089】
反応管1は、原料及び合成された生成物に対して不活性な材料からなるものが好ましい。反応管1は、100~600℃程度の加熱、又は10MPa程度の加圧に耐え得る形状のものが好ましい。反応管1は、例えば、ステンレス製の略円筒形の部材である。
供給管3は、原料を反応管1内に供給する供給手段である。供給管3は、例えば、ステンレス製等の配管である。
排出管4は、反応床2で合成された生成物を含むガスを排出する排出手段である。排出管4は、例えば、ステンレス製等の配管である。
【0090】
温度制御部5は、反応管1内の反応床2を任意の温度にできるものであればよい。温度制御部5は、例えば、反応管1の周りに設けられる電気炉等(不図示)の温度を制御して、反応管1内の反応床2を任意の温度を調整する。
圧力制御部6は、反応管1内の圧力を任意の圧力にできるものであればよい。圧力制御部6は、例えば、公知の圧力弁等である。
なお、製造装置10は、マスフロー等、ガスの流量を調整するガス流量制御部等の周知の機器を備えていてもよい。
【0091】
<ジエン化合物の製造方法>
本発明の一形態によればジエン化合物の製造方法が提供される。ジエン化合物の製造方法は、本発明に係る触媒に、アルコールを含む原料を接触させてジエン化合物を製造することを含む。
【0092】
[触媒]
触媒としては、上述したものが用いられることからここでは説明を省略する。
触媒の使用量は、原料に対して、0.1~10g/g・hであることが好ましく、1~5g/g・hであることがより好ましい。触媒の使用量が0.1g/g・h以上であると、反応転化率が向上できることから好ましい。一方、触媒の使用量が10g/g・h以下であると、副生成物の副生を抑制できることから好ましい。
【0093】
[原料]
原料は、アルコールを含む。その他、原料は、アルデヒド、不活性ガス等をさらに含んでいてもよい。なお、当該原料は少なくとも反応時にガス状(「原料ガス」ともいう)となっていることが好ましい。
【0094】
(アルコール)
アルコールとしては、特に制限されないが、炭素数1~6のアルコールが挙げられる。アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げられる。
原則として、使用するアルコールによって得られるジエン化合物が異なる。例えば、エタノールを使用する場合、ブタジエンが得られる。また、プロパノールを使用する場合、ヘキサジエンが得られる。さらにブタノールを使用する場合、オクタジエンが得られる。
アルコールは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよいが、副反応を抑制する観点から単独で用いることが好ましい。
【0095】
原料中のアルコールの濃度は、原料100体積%に対して、10体積%以上であることが好ましく、15体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましく、30体積%以上であることが最も好ましい。なお、アルコールを2種以上組み合わせて用いる場合には、その和が上記範囲に含まれること好ましい。本発明に係る触媒を用いることで、原料中のアルコール濃度が高い場合であっても効率的に反応を進行させることができる。
【0096】
(アルデヒド)
アルデヒドは、通常、アルコールの酸化物である。具体例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド等が挙げられる。
原料がアルデヒドを含む場合には、通常、アルコールに対応するアルデヒドが含まれる。具体的には、アルコールとしてメタノールを使用する場合にはアルデヒドはホルムアルデヒドであり、エタノールの場合にはアセトアルデヒドであり、プロパノールの場合にはプロピオンアルデヒドであり、ブタノールの場合にはブチルアルデヒドであり、ペンタノールの場合にはバレルアルデヒドである。ただし、上記アルデヒドはアルコールに対応するアルデヒド以外のアルデヒドを含んでもよい。
【0097】
原料中のアルデヒドの濃度は、原料100体積%に対して、1体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることが好ましく、10体積%以上であることがより好ましく、30体積%以上であることが最も好ましい。なお、アルコールを2種以上組み合わせて用いる場合には、その和が上記範囲に含まれること好ましい。
【0098】
原料中のアルコールおよびアルデヒドの総濃度は、原料100体積%に対して、15体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましく、20~40体積%であることがさらに好ましい。
【0099】
(不活性ガス)
不活性ガスとしては、特に制限されないが、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。これらの不活性ガスは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
不活性ガスの濃度は、原料100体積%に対して、90体積%以下であることが好ましく、30~90体積%であることがより好ましく、50~90体積%であることがさらに好ましく、60~80体積%であることが特に好ましい。
【0100】
[接触]
触媒と原料とを接触させる態様は、特に限定されないが、例えば、反応管内の反応床に原料を通流させ、反応床の合成用触媒と原料とを接触させる態様であることが好ましい。
【0101】
触媒と原料とを接触させる際の温度(反応温度)は、100~600℃であることが好ましく、200~500℃であることがより好ましく、250~450℃であることがさらに好ましい。反応温度が100℃以上であると、反応速度が充分に高まり、ジエン化合物をより効率的に製造できることから好ましい。一方、反応温度が600℃以下であると、触媒の劣化を防止または抑制できることから好ましい。
【0102】
触媒と原料とを接触させる際の圧力(反応圧力)は、0.1~10MPaであることが好ましく、0.1~3MPaであることがより好ましい。反応圧力が0.1MPa以上であると、反応速度が高まり、ジエン化合物をより効率的に製造できることから好ましい。一方、反応圧力が10MPa以下であると、触媒の劣化を防止または抑制できることから好ましい。
【0103】
反応床中の原料の空間速度(SV)は、通常、反応圧力及び反応温度を勘案して、空間速度を適宜調整するが、標準状態換算で、0.1~10000h-1とすることが好ましい。
【0104】
例えば、製造装置10を用いてブタジエンを製造する場合は、温度制御部5及び圧力制御部6で反応管1内を任意の温度及び任意の圧力とする。ガス化された原料20を供給管3から反応管1内に供給する。反応管1内において原料が合成用触媒に接触して反応し、ブタジエンといったジエン化合物が生成する。ブタジエンといったジエン化合物を含む生成ガス22は、排出管4から排出する。生成ガス22には、アセトアルデヒド、プロピレン、エチレン等の化合物が含まれていてもよい。
【0105】
ジエン化合物を含む生成ガス(
図1における生成ガス22)に対しては、必要に応じて気液分離や蒸留精製等の精製を行い、未反応の原料や副生物を除去する。
また、本発明は、バイオエタノールからジエン化合物を製造し、環境負荷を低減することもできる。
【0106】
<ポリマーの製造方法>
本発明の一実施形態によればポリマーの製造方法が提供される。ポリマーの製造方法は、既述の本発明のジエン化合物の製造方法で製造されたジエン化合物の少なくとも一部をポリマー原料としてポリマーを製造することを含む。
【0107】
すなわち、本発明に係る触媒にアルコールを含む原料を接触させてジエン化合物を製造するには、既述の本発明に係るジエン化合物の製造方法を適用する。本発明に係るジエン化合物の製造方法によって得られたジエン化合物は、反応生成物から適宜分離処理等を施して、その少なくとも一部を原料としてポリマーを製造する。
【0108】
反応生成物からの分離方法としては、冷却した凝縮器に生成物を通し、未反応のエタノールといった原料を分離し、分離後の生成物を有機溶媒中にバブリングし、ジエン化合物(単量体)を溶媒中に溶解させて、溶液として回収することが好ましい。
【0109】
回収したジエン化合物を含有する溶液は、そのまま、あるいは有機溶媒等をさらに加えた後、各種重合を行ってジエン化合物からポリマーを製造することが好ましい。このとき、回収したジエン化合物に、当該ジエン化合物以外のモノマーを混合して、各種重合等を行ってもよい。
【0110】
重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法等の任意の方法を用いることができる。また、重合反応に溶媒を用いる場合、当該溶媒は重合反応において不活性であればよく、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、それらの混合物等が挙げられる。
【0111】
重合温度は、特に限定されず、-100℃~300℃の範囲である。重合反応の圧力は、特に限定されず、0.1~10.0MPaの範囲である。重合反応の反応時間は、特に限定されず、重合温度等の条件によって適宜調節するが、通常は1秒~10日の範囲である。
【0112】
ここで、ジエン化合物以外のモノマーとしては、芳香族ビニル化合物、オレフィン及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるモノマーが挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン及びビニルナフタレン等が挙げられる。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等を用いることができる。
なお、上記モノマー以外にも、用途に応じて種々の添加剤を添加してもよい。
【0113】
本発明に係るポリマーの製造方法で得られるポリマーとしては、既述のジエン化合物を用いて得られるものであれば特に限定されないが、ブタジエンに起因する骨格を有するポリマーが好ましく、ポリブタジエン(シス-1,4-ポリブタジエン)、スチレン-ブタジエン共重合体等が好ましい。
【0114】
<ポリマー成形品の製造方法>
本発明の一実施形態によればポリマー成形品の製造方法が提供される。ポリマー成形品の製造方法は、既述の本発明のポリマーの製造方法で製造されたポリマーを成形することを含む。
【0115】
すなわち、本発明に係る触媒にアルコールを含む原料を接触させてジエン化合物を製造するには、既述の本発明に係るジエン化合物の製造方法を適用する。また、前記ジエン化合物の少なくとも一部をポリマー原料としてポリマーを製造するには、既述の本発明に係るポリマーの製造方法を適用する。本発明に係るポリマーの製造方法で製造されたポリマーは、所望のポリマー成形品の形態に応じて公知の成形手段を適用する。
【0116】
ここで、ポリマー成形品としては、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強、ビードフィラー等のタイヤのゴム部材、タイヤ、防振ゴム、免震ゴム、ベルト(コンベアベルト)、ゴムクローラ、各種ホース等が挙げられ、タイヤのゴム部材、タイヤが好ましい。
【0117】
<<第2発明>>
<触媒>
本実施形態に係る触媒は、周期表第3~6族からなる群から選択される少なくとも1種の元素Xと、第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素Zと含む。元素Xを含むことにより、原料をジエン化合物に変換することができる。また、元素Zを含むことにより、原料と触媒との接触面積を増加させることができる。
【0118】
本実施形態に係る触媒はメソ細孔を有するが、特に触媒の平均細孔直径が2~20nmであり、好ましくは2~15nm、より好ましくは8~13nmとなっている。平均細孔直径が2~20nmであることで、特に、過反応が進行しない程度で細孔内での原料同士の衝突頻度を高い状態にすることができる。その結果、過反応物である重合体が活性金属を被毒して活性劣化を助長するようなことがなく、触媒活性を常に高い状態にすることが可能になると推察される。
【0119】
ここで、触媒の「平均細孔直径」は、以下の方法により測定された値を採用するものとする。すなわち、平均細孔直径は、全細孔容積(触媒の細孔容積の合計)とBET比表面積とから算出される。
具体的には、細孔形状を円筒形であると仮定することにより算出することができる(BJH法)。円筒形の側面積としてBET比表面積A1を、円筒形の体積として全細孔容積V1を使用すると、平均細孔直径は、4V1/A1により算出することができる。
【0120】
なお、触媒の全細孔容積は、0.1~10.0mL/gであることが好ましく、0.1~5.0mL/gであることがより好ましく、0.1~2.0mL/gであることがさらに好ましい。全細孔容積が0.1mL/g以上であれば、アルコールの拡散性が向上し、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。一方、全細孔容積が10.0mL/g以下であると、アルコール-触媒間の接触面積が大きくなり、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。
【0121】
触媒のBET比表面積(以下、単に「比表面積」ということがある)は700~1200m2/gであり、好ましくは720~1150m2/gであり、より好ましくは800~1100m2/gである。
BET比表面積が特に700~1200m2/gであることで、触媒表面に充分な量の活性点が存在するため、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まる。その結果、原料100体積%(気体換算)に対し、原料の含有量が高濃度であっても原料転化率が高まり、例えば100体積%でも高い原料転化率を示す。
【0122】
触媒の全細孔容積と比表面積との積は、10~100000mL・m2/g2であることが好ましく、20~25000mL・m2/g2であることがより好ましく、20~2000mL・m2/g2であることがさらに好ましい。上記積が10mL・m2/g2以上であると、触媒表面に充分な量の活性点が存在し、かつアルコールを含む原料の拡散性が向上するため、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。一方、上記積が100000mL・m2/g2以下であると、原料と触媒との接触面積が充分となりやすく、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。
【0123】
触媒のメソ細孔容積率(全メソ細孔容積/全細孔容積×100)は、50%以上であることが好ましく、50~100%であることがより好ましく、80~100%であることがさらに好ましく、90~100%であることが特に好ましい。メソ細孔容積率が50%以上であると、触媒に充分なメソ細孔が存在し、アルコールを含む原料の拡散性が向上するため、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。
【0124】
なお、メソ細孔容積率の割合は、後述する製造方法における原料(Xを含む化合物、Zを含む化合物等)の使用比率、焼成工程の焼成温度等により制御することができる。
【0125】
触媒のメソ細孔の形状、及びメソ細孔を形成する細孔壁が規則的な配列を持った結晶構造を有しているか否かは、X線回折による回折ピークを観察することにより確認することができる。具体的には、合成用触媒のメソ細孔を形成する細孔壁が規則的な配列を持った結晶構造を有する場合、X線回折法により、θ=6°以下(好ましくは1°~6°、より好ましくは0.1~1°)の低角度範囲においてメソ細孔の周期構造に由来するピークが観察されることが好ましい。
具体的には、X線回折法を用いて観測されるX線回折プロファイルにおいて、θ=6°以下の低角度範囲に、少なくとも1つの回折ピークが観測され、この少なくとも1つの回折ピークのピーク強度Iと回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)が、5000以上であることが好ましい。
また、透過型電子顕微鏡(TEM)により合成用触媒を観察することで、メソ細孔の形状、規則性を確認することができる。
【0126】
また、X線回折法を用いて観測される当該触媒のX線回折プロファイルにおいて、θ=10°~40°の高角度範囲、好ましくはθ=20°~25°の範囲に、半値半幅が1°以上の回折ピークが少なくとも1つ観測されることが好ましい。この回折ピークは元素X及び元素Yを含む複合酸化物に起因するもので、この複合酸化物が存在することで、元素Xの単一酸化物の凝集物上で進行しやすい重合体への過反応を抑え、ジエン化合物を選択的に高収率で得ることができる。
【0127】
θ=10°~40°の高角度範囲には、元素Xの単一酸化物に起因する回折ピークが観測されないことが好ましい。かかる回折ピークが観測されないということは、元素Xのほとんどが複合酸化物の構成成分となっており、元素Xによるジエン化合物への変換機能が十分に発揮され得ることを意味する。また、元素Xの単一酸化物(例えば、酸化ハフニウム等)の凝集物上で進行しやすい重合体への過反応が抑えられる。
ここで、元素Xの単一酸化物に起因する回折ピークが観測されないということは、当該回折ピークのピーク強度Iと上記回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)が900以下であることをいう。
【0128】
回折ピークの半値半幅は小さいほど結晶性が高くなることを示すが、本実施形態では、半値半幅は6°~12°であることが好ましく、7°~11°であることがより好ましい。
半値半幅が6°~12°であることで、複合酸化物を構成する各元素間にある程度の間隔が存在し、そこで選択的にジエン化合物への反応が進行しやすくなると推察される。
【0129】
回折ピークのうち、回折強度が最も大きい最大回折ピークのピーク強度Iと、この最大回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)は、1000~3000であることが好ましく、1500~2200であることがより好ましい。
比(I/H)が、1000~3000であることで、選択的にブタジエンへの反応を進行させやすくなる。
【0130】
ここで、元素Xとしては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)等の第3族元素;チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等の第4族元素;バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)等の第5族元素;クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の第6族元素が挙げられる。これらのうち、第3族元素、第4族元素、第5族元素であることが好ましく、第4族元素、第5族元素であることがより好ましく、第4族元素であることがさらに好ましい。
【0131】
また、別の一実施形態によれば、第5周期元素、第6周期元素、第7周期元素であることが好ましく、第5周期元素、第6周期元素であることがより好ましい。具体的には、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)であることが好ましく、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)であることがより好ましく、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)であることがさらに好ましく、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)であることが特に好ましく、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)であることが極めて好ましく、ハフニウム(Hf)であることが最も好ましい。
なお、上述の元素Xは、1種類単独で含んでいてもよいし、2種類以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0132】
元素Zとしては、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)等が挙げられる。
これらのうち、元素Zは、炭素(C)、ケイ素(Si)であることが好ましく、ケイ素(Si)であることがより好ましい。
なお、上述の元素Zは単独で含んでいても、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
また、特に好ましい組み合わせとしては、元素XがHfであり、元素ZがSiである。
【0133】
触媒中の元素Xと元素Zとの合計量(モル)に対する元素Xのモル含有率(X/(X+Z)×100)は、0.1~20モル%であることが好ましく、0.5~15モル%であることがより好ましく、0.5~6モル%であることがさらに好ましく、0.7~4モル%であることが特に好ましい。
なお、元素Xを2種以上組み合わせて含む場合はそれらの和、元素Zを2種以上組み合わせて含む場合はそれらの和で上記のモル含有率を計算する。
【0134】
好ましい一実施形態において、触媒は下記一般式1を満たすことが好ましい。
Xa1Sib1Oδ1・・・式1
式1中、Xは元素Xを表す。
a1は、元素Xのモル比であり、a1およびb1の和を100モル%とした場合、0.1~20モル%であることが好ましく、0.5~15モル%であることがより好ましく、0.5~6モル%であることがさらに好ましく、0.7~4モル%であることが特に好ましい。
b1は、Siのモル比であり、a1およびb1の和を100モル%とした場合、80~99.9モル%であることが好ましく、85~99.5モル%であることがより好ましく、94~99.5モル%であることがさらに好ましく、94~99.3モル%であることが特に好ましい。
δ1は、電荷中性条件を満たすのに必要な数を表す。具体的には、δ1は、触媒を構成する元素XおよびSi、並びにa1およびb1により定まるものである。例えば、δ1は、100~2000であることが好ましく、100~1000であることがより好ましく、100~400であることがさらに好ましい。
【0135】
上記のような元素Xのモル含有率や触媒が一般式1で表されることは、例えば、発光分光分析や蛍光X線測定等により確認することができる。
【0136】
本発明の効果を損なわない範囲で、本実施形態の触媒は、複合酸化物の構成元素として、元素X、元素Z以外の元素、例えば亜鉛元素(Zn)等を含んでもよい。
【0137】
なお、複合酸化物の構成元素として、元素X、元素Z以外の元素(以下、「他の元素」とも称する)を含む場合、元素X、元素Z、および他の元素のモル比は、上記の通り、他の元素のモル比だけ元素Zのモル比が少なくなることが好ましい。換言すれば、元素Xのモル比は、他の元素を含むか否かにかかわらず、同等のモル比であることが好ましい。このことは他の元素を2以上含む場合であっても同様である。
【0138】
上述の触媒は、好ましくはアルコールを含む原料からジエン化合物を合成するジエン化合物合成用触媒であることが好ましい。この際、アルコールとしては、後述するようにエタノール及び/又はアセトアルデヒドを含むことが好ましく、エタノールであることがより好ましい。また、ジエン化合物としては、後述するように、1,3-ブタジエンであることが好ましい。
【0139】
<触媒の製造方法>
本実施形態に係る触媒は、固形コロイド調製工程と、焼成工程とを経て製造されることが好ましく、これら固形コロイド調製工程及び焼成工程については、第1発明に係る<触媒の製造方法>と同様である。特に、BET比表面積を700~1200m2/gとし、平均細孔直径を2~20nmとするためには、第1発明に係る<触媒の製造方法>の(A)元素Zを含む化合物を加える際の原料溶液の撹拌速度、(B)固形コロイド得るための乾燥温度及び乾燥時間、(C)焼成工程における焼成条件(特に、焼成温度までの昇温速度)を考慮する必要がある。
【0140】
元素Zを含む化合物を加える際の原料溶液の撹拌速度は、第1発明に係る<触媒の製造方法>で説明している通り、10~2000rpmであることが好ましい。また、10~1000rpmであることがより好ましく、10~500rpmであることがさらに好ましい。上記範囲内であることで、元素Zを含む化合物の加水分解が早くなりすぎず、界面活性剤との相互作用が生じて平均細孔直径が2~20nmのメソ細孔が得られ、700~1200m2/gの比表面積が得られやすくなる。
【0141】
また、第1発明に係る<触媒の製造方法>の(固形コロイドの調製)で説明している通り、固形コロイドを得るための乾燥温度、20~200℃であることが好ましく、50~150℃であることがより好ましい。
乾燥時間は、1時間~10日であることが好ましく、2時間~5日間であることがより好ましい。
上記範囲とすることで、溶媒が除かれ、次の焼成の過程で平均細孔直径が2~20nmのメソ細孔が得られ、700~1200m2/gの比表面積が得られやすくなる。
【0142】
さらに、第1発明に係る<触媒の製造方法>の[焼成工程]で説明している通り、焼成温度は、200~800℃が好ましく、400~600℃であることがより好ましい。焼成温度が200℃以上であると、触媒中に界面活性剤由来の不純物が残留しない、またはほとんどしないことから好ましい。一方、焼成温度が800℃以下であると、触媒のメソ細孔を形成する細孔壁の結晶構造の安定性を向上させることができることから好ましい。
このように上記範囲とすることで、平均細孔直径が2~20nmのメソ細孔が得られ、700~1200m2/gの比表面積が得られやすくなる。
【0143】
(ジエン化合物の製造装置)
ジエン化合物の製造装置は、上述の触媒が充填された反応管を備える。このような製造装置により、原料からジエン化合物を製造する。ジエン化合物の製造装置は、第1発明に係る(ジエン化合物の製造装置)と同様である。
【0144】
<ジエン化合物の製造方法>
本発明の一形態によればジエン化合物の製造方法が提供される。ジエン化合物の製造方法は、第1発明に係る<ジエン化合物の製造方法>と同様である。
【0145】
<ポリマーの製造方法>
本発明の一実施形態によればポリマーの製造方法が提供される。ポリマーの製造方法は、第1発明に係る<ポリマーの製造方法>と同様である。
【0146】
<ポリマー成形品の製造方法>
本発明の一実施形態によればポリマー成形品の製造方法が提供される。ポリマー成形品の製造方法は、第1発明に係る<ポリマー成形品の製造方法>と同様である。
【0147】
<<第3発明>>
<触媒>
本実施形態に係る触媒は、周期表第3~6族からなる群から選択される少なくとも1種の元素Xと、第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素Zと含む。元素Xを含むことにより、原料をジエン化合物に変換することができる。また、元素Zを含むことにより、原料と触媒との接触面積を増加させることができる。
【0148】
また、X線回折法を用いて観測される当該触媒のX線回折プロファイルにおいて、θ=10°~40°の高角度範囲、好ましくはθ=20°~25°の範囲に、半値半幅が1°以上の回折ピークが少なくとも1つ観測される。この回折ピークは元素X及び元素Yを含む複合酸化物に起因するもので、この複合酸化物が存在することで、元素Xの単一酸化物の凝集物上で進行しやすい重合体への過反応を抑え、ジエン化合物を選択的に高収率で得ることができる。なお、X線回折法の条件は実施例に記載のとおりである。
【0149】
θ=10°~40°の高角度範囲には、元素Xの単一酸化物に起因する回折ピークが観測されないことが好ましい。かかる回折ピークが観測されないということは、元素Xのほとんどが複合酸化物の構成成分となっており、元素Xによるジエン化合物への変換機能が十分に発揮され得ることを意味する。また、元素Xの単一酸化物(例えば、酸化ハフニウム等)の凝集物上で進行しやすい重合体への過反応が抑えられる。
ここで、元素Xの単一酸化物に起因する回折ピークが観測されないということは、当該回折ピークのピーク強度Iと上記回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)が900以下であることをいう。なお、元素Xの単一酸化物に起因する回折ピークが観測される場合の半値半幅は、例えば、0.01~1.0程度である。
【0150】
回折ピークの半値半幅は小さいほど結晶性が高くなることを示すが、本実施形態では、半値半幅は6°~12°であることが好ましく、7°~11°であることがより好ましい。
半値半幅が6°~12°であることで、複合酸化物を構成する各元素間にある程度の間隔が存在し、そこで選択的にジエン化合物への反応が進行しやすくなると推察される。
【0151】
回折ピークのうち、回折強度が最も大きい最大回折ピークのピーク強度Iと、この最大回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)は、1000~3000であることが好ましく、1500~2200であることがより好ましい。
比(I/H)が、1000~3000であることで、選択的にブタジエンへの反応を進行させやすくなる。
【0152】
ここで、元素Xとしては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)等の第3族元素;チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等の第4族元素;バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)等の第5族元素;クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の第6族元素が挙げられる。これらのうち、第3族元素、第4族元素、第5族元素であることが好ましく、第4族元素、第5族元素であることがより好ましく、第4族元素であることがさらに好ましい。
【0153】
また、別の一実施形態によれば、第5周期元素、第6周期元素、第7周期元素であることが好ましく、第5周期元素、第6周期元素であることがより好ましい。具体的には、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)であることが好ましく、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)であることがより好ましく、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)であることがさらに好ましく、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)であることが特に好ましく、ニオブ(Nb)、ハフニウム(Hf)であることが極めて好ましく、ハフニウム(Hf)であることが最も好ましい。
なお、上述の元素Xは、1種類単独で含んでいてもよいし、2種類以上組み合わせて含んでいてもよい。
【0154】
元素Zとしては、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)等が挙げられる。
これらのうち、元素Zは、炭素(C)、ケイ素(Si)であることが好ましく、ケイ素(Si)であることがより好ましい。
なお、上述の元素Zは単独で含んでいても、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
また、特に好ましい組み合わせとしては、元素XがHfであり、元素ZがSiである。
【0155】
触媒中の元素Xと元素Zとの合計量(モル)に対する元素Xのモル含有率(X/(X+Z)×100)は、0.1~20モル%であることが好ましく、0.5~15モル%であることがより好ましく、0.5~6モル%であることがさらに好ましく、0.7~4モル%であることが特に好ましい。
なお、元素Xを2種以上組み合わせて含む場合はそれらの和、元素Zを2種以上組み合わせて含む場合はそれらの和で上記のモル含有率を計算する。
【0156】
好ましい一実施形態において、触媒は下記一般式1を満たすことが好ましい。
Xa1Sib1Oδ1・・・式1
式1中、Xは元素Xを表す。
a1は、元素Xのモル比であり、a1およびb1の和を100モル%とした場合、0.1~20モル%であることが好ましく、0.5~15モル%であることがより好ましく、0.5~6モル%であることがさらに好ましく、0.7~4モル%であることが特に好ましい。
b1は、Siのモル比であり、a1およびb1の和を100モル%とした場合、80~99.9モル%であることが好ましく、85~99.5モル%であることがより好ましく、94~99.5モル%であることがさらに好ましく、94~99.3モル%であることが特に好ましい。
δ1は、電荷中性条件を満たすのに必要な数を表す。具体的には、δ1は、触媒を構成する元素XおよびSi、並びにa1およびb1により定まるものである。例えば、δ1は、100~2000であることが好ましく、100~1000であることがより好ましく、100~400であることがさらに好ましい。
【0157】
上記のような元素Xのモル含有率や触媒が一般式1で表されることは、例えば、発光分光分析や蛍光X線測定等により確認することができる。
【0158】
本発明の効果を損なわない範囲で、本実施形態の触媒は、複合酸化物の構成元素として、元素X、元素Z以外の元素、例えば亜鉛元素(Zn)等を含んでもよい。
【0159】
なお、複合酸化物の構成元素として、元素X、元素Z以外の元素(以下、「他の元素」とも称する)を含む場合、元素X、元素Z、および他の元素のモル比は、上記の通り、他の元素のモル比だけ元素Zのモル比が少なくなることが好ましい。換言すれば、元素Xのモル比は、他の元素を含むか否かにかかわらず、同等のモル比であることが好ましい。このことは他の元素を2以上含む場合であっても同様である。
【0160】
本実施形態に係る触媒は、メソ細孔を有することが好ましい。触媒がメソ細孔を有することにより、原料(アルコール等)の触媒中への拡散性が向上するとともに、原料と触媒との接触面積が大きくなる。その結果、アルコール濃度が高い場合であっても、原料転化率およびジエン化合物選択率が向上する。触媒の平均細孔直径は2~50nm、好ましくは2~30nm、より好ましくは2~20nm、さらに好ましくは2~15nmである。この際、触媒の「平均細孔直径」は、以下の方法により測定された値を採用するものとする。すなわち、平均細孔直径は、全細孔容積(触媒の細孔容積の合計)とBET比表面積とから算出される。
具体的には、細孔形状を円筒形であると仮定することにより算出することができる(BJH法)。円筒形の側面積としてBET比表面積A1を、円筒形の体積として全細孔容積V1を使用すると、平均細孔直径は、4V1/A1により算出することができる。
【0161】
なお、触媒の全細孔容積は、0.1~10.0mL/gであることが好ましく、0.1~5.0mL/gであることがより好ましく、0.1~2.0mL/gであることがさらに好ましい。全細孔容積が0.1mL/g以上であれば、アルコールの拡散性が向上し、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。一方、全細孔容積が10.0mL/g以下であると、アルコール-触媒間の接触面積が大きくなり、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。
【0162】
触媒の比表面積は、100~10000m2/gであることが好ましく、200~5000m2/gであることがより好ましく、200~1500m2/gであることがさらに好ましく、700~1200m2/gであることが特に好ましい。
比表面積が100m2/g以上であると、触媒表面に充分な量の活性点が存在するため、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。その結果、原料100体積%(気体換算)に対し、原料の含有量が高濃度であっても原料転化率が高まり、例えば100体積%でも高い原料転化率を示す。一方、比表面積が10000m2/g以下であると、原料と触媒と間の接触面積が大きくなり、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。
【0163】
触媒の全細孔容積と比表面積との積は、10~100000mL・m2/g2であることが好ましく、20~25000mL・m2/g2であることがより好ましく、20~2000mL・m2/g2であることがさらに好ましい。上記積が10mL・m2/g2以上であると、触媒表面に充分な量の活性点が存在し、かつアルコールを含む原料の拡散性が向上するため、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。一方、上記積が100000mL・m2/g2以下であると、原料と触媒との接触面積が充分となりやすく、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。
【0164】
触媒のメソ細孔容積率(全メソ細孔容積/全細孔容積×100)は、50%以上であることが好ましく、50~100%であることがより好ましく、80~100%であることがさらに好ましく、90~100%であることが特に好ましい。メソ細孔容積率が50%以上であると、触媒に充分なメソ細孔が存在し、アルコールを含む原料の拡散性が向上するため、原料転化率とジエン化合物選択率がさらに高まることから好ましい。
【0165】
なお、メソ細孔容積率の割合は、後述する製造方法における原料(Xを含む化合物、Zを含む化合物等)の使用比率、焼成工程の焼成温度等により制御することができる。
【0166】
触媒のメソ細孔の形状、及びメソ細孔を形成する細孔壁が規則的な配列を持った結晶構造を有しているか否かは、X線回折による回折ピークを観察することにより確認することができる。具体的には、合成用触媒のメソ細孔を形成する細孔壁が結晶構造を有する場合、X線回折法により、θ=6°以下(好ましくは0.1°~6°、より好ましくは0.1~1°)の低角度範囲においてメソ細孔の周期構造に由来するピークが観察されることが好ましい。
具体的には、X線回折法を用いて観測されるX線回折プロファイルにおいて、θ=6°以下の低角度範囲に、少なくとも1つの回折ピークが観測され、この少なくとも1つの回折ピークのピーク強度Iと回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)が、5000以上であることが好ましい。
また、透過型電子顕微鏡(TEM)により合成用触媒を観察することで、メソ細孔の形状、規則性を確認することができる。
【0167】
上述の触媒は、好ましくはアルコールを含む原料からジエン化合物を合成するジエン化合物合成用触媒であることが好ましい。この際、アルコールとしては、後述するようにエタノール及び/又はアセトアルデヒドを含むことが好ましく、エタノールであることがより好ましい。また、ジエン化合物としては、後述するように、1,3-ブタジエンであることが好ましい。
【0168】
<触媒の製造方法>
本実施形態に係る触媒は、固形コロイド調製工程と、焼成工程とを経て製造される。固形コロイド調製工程において、下記(A)~(D)の少なくともいずれかのX線回折プロファイルを得るために、原料溶液については、下記のようにして調製することが特に好ましい。なお、その他の固形コロイド調製工程、及び焼成工程については、第1発明に係る<触媒の製造方法>と同様である。
【0169】
(A)当該触媒のX線回折において、θ=10°~40°の高角度範囲に、半値半幅が1°以上の回折ピークが少なくとも1つ観測される。
(B)上記(A)で、回折強度が最も大きい最大回折ピークのピーク強度Iと前記最大回折ピークの半値半幅Hとの比(I/H)が、1000~3000である。
(C)当該触媒のX線回折において、θ=10°~40°の高角度範囲に、元素Xの単一酸化物に起因する回折ピークが観測されない。
(D)上記(A)又は(B)で、半値半幅が6°~12°である。
【0170】
(1)まず、所定量の界面活性剤に水と酸性溶液又は塩基性溶液を添加し、常温常圧条件下で所定の速度(例えば、50~200rpm程度)で撹拌して界面活性剤を溶解させる。
ここで、酸性溶液又は塩基性溶液は、作製される原料溶液における酸性度又は塩基性濃度が0.001mol/L~10mol/L(好ましくは0.01~5mol/L)となるように添加することが好ましい。酸性溶液又は塩基性溶液は、元素Xを含む化合物及び元素Zを含む化合物といった前駆体の加水分解を促進するものであるが、上記範囲内であることで、金属前駆体の加水分解速度が高まりすぎず、結果として単一金属酸化物同士での凝集が防がれ、効率よく複合酸化物が得られる。
【0171】
(2)界面活性剤を溶解させた水溶液を常温常圧条件下で所定の速度で撹拌しながら、元素Xを含む化合物を所定の速度で加える。
ここで、所定の速度で撹拌する際の撹拌速度は、10~2000rpmであることが好ましく、10~1000rpmであることがより好ましく、10~500rpmであることがさらに好ましい。上記範囲内であることで、単一金属酸化物同士で凝集が防がれ、効率よく複合酸化物が得られる。
【0172】
また、元素Xを含む化合物を所定の速度で添加する際の添加速度としては、0.1~100mg/分であることが好ましく、0.1~50mg/分であることがより好ましく、0.1~20mg/分であることがさらに好ましい。上記範囲内であることで、実用的な添加速度としながら、単一金属酸化物同士での凝集が防がれ、効率よく複合酸化物が得られる。
【0173】
さらに、作製される原料溶液における元素Xを含む化合物の濃度は、0.001~1000g/Lの範囲とすることが好ましく、0.01~100g/Lの範囲とすることがより好ましい。上記範囲内であることで、後工程での良好な取り扱い性を有しながら、単一金属酸化物同士での凝集が防がれ、効率よく複合酸化物が得られる。
【0174】
(3)元素Xを含む化合物が全て溶解したことを確認してから、常温常圧条件下で所定の速度で撹拌しながら、元素Zを含む化合物を所定の速度で加えていき原料溶液を調製する。
【0175】
ここで、元素Zを含む化合物を所定の速度で加える際の添加速度は、0.01~10g/分であることが好ましく、0.01~5g/分であることがより好ましく、0.01~1g/分であることがさらに好ましい。上記範囲の上限値以下であることで、元素Zを含む化合物の加水分解反応速度が速くなりすぎるのを防ぎ、界面活性剤の周りで反応しやすくなって、メソ細孔が生成しやすくなる。上記範囲の下限値以上であることで、添加している最中に空気中の水分と加水分解してしまうのを防ぐことができる。
【0176】
また、作製される原料溶液における元素Zを含む化合物の濃度は、0.001~1000g/Lの範囲とすることが好ましく、0.01~100g/Lの範囲とすることがより好ましい。上記範囲の上限値以下であることで、元素Zを含む化合物の加水分解反応速度が速くなりすぎるのを防ぎ、界面活性剤の周りで反応しやすくなって、メソ細孔が生成しやすくなる。上記範囲の下限値以上であることで、添加している最中に空気中の水分と加水分解してしまうのを防ぐことができる。
【0177】
さらに、元素Zを含む化合物は、界面活性剤との質量比(元素Zを含む化合物/界面活性剤)が好ましくは0.01~100となるように、より好ましくは0.05~50となるように、さらに好ましくは0.1~10となるように添加する。上記範囲の上限値以下であることで、元素Zを含む化合物が界面活性剤の周りで反応しやすくなり、が形成されやすくなる。上記範囲の下限値以上であることで、界面活性剤が多すぎることにより、部分的に元素Zを含む酸化物(シリカ等)が形成されていまい分断された構造となるのが防がれ、触媒にメソ孔が形成されやすくなる。
【0178】
元素Zを含む化合物を加える際の原料溶液の撹拌速度は、10~2000rpmであることが好ましく、10~1000rpmであることがより好ましく、10~500rpmであることがさらに好ましい。上記範囲内であることで、元素Zを含む化合物の加水分解が早くなりすぎず、界面活性剤との相互作用が生じて十分なメソ細孔が得られ、比表面積も大きくすることができる。
【0179】
(4)次いで、原料溶液を熟成することで懸濁液を得るが、これについては第1発明に係る方法と同様である。
【0180】
<ジエン化合物の製造方法>
本発明の一形態によればジエン化合物の製造方法が提供される。ジエン化合物の製造方法は、第1発明に係る<ジエン化合物の製造方法>と同様である。
【0181】
(ジエン化合物の製造装置)
ジエン化合物の製造装置は、上述の触媒が充填された反応管を備える。このような製造装置により、原料からジエン化合物を製造する。ジエン化合物の製造装置は、第1発明に係る(ジエン化合物の製造装置)と同様である。
【0182】
<ポリマーの製造方法>
本発明の一実施形態によればポリマーの製造方法が提供される。ポリマーの製造方法は、第1発明に係る<ポリマーの製造方法>と同様である。
【0183】
<ポリマー成形品の製造方法>
本発明の一実施形態によればポリマー成形品の製造方法が提供される。ポリマー成形品の製造方法は、第1発明に係る<ポリマー成形品の製造方法>と同様である。
【実施例】
【0184】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0185】
<<第1発明に対応する実施例>>
(X線回折線測定方法)
X線回折線測定を行う前に、触媒のサンプル調製を行った。まず、触媒100mg程度を乳鉢にはかりとり、乳棒を用いてすりつぶし、粒径を44μm以下に調整した。粒径調整した触媒を試料板の試料充填部の穴に均一に詰め、試料板の表面と触媒面が同一面になるように調整した。
X線回折線測定には株式会社リガク社製の試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IIIを使用した。対陰極には純銅を用いた銅管球を用い、CuKαの特性X線(波長(λ)=1.5418Å(0.15418nm))を回折に使用した。回折計は発散スリットを1/2°、発散縦制限スリットを10mm、散乱スリットを2°、受光スリット0.15mmに設定した。その後、管電圧40kV、管電流を20mAの条件で、調製した触媒のサンプルに対してX線を照射した。ゴニオメーターの走査角度を3~60°の範囲に設定し、走査速度2°/分で測定を行った。
測定終了後、得られたデータの解析を行った。データをExcel等で横軸角度、縦軸cpsとしてグラフで表示し、ピークの有無を確認した。ピークが存在した場合、縦軸をcps値(強度)としてグラフで表示し、一番cps値が低い点を0cpsとし、ベースライン補正をした。cpsが最も高い値をピークの頂点とし、この点の角度とcps値を確認した。また、最も高いピークの頂点の角度とそのcps値の半分のcps値を示す箇所の角度の差を算出し、これを半値半幅とした。ピーク左右で半値半幅が異なる場合、大きい方を半値半幅として採用した。ピークが複数ある場合は、それぞれのピークで半値半幅を算出した。また、ピークが重なっていて半値半幅が算出できない場合は、最小二乗法等を用いたピークフィッテイングを行いピーク分離をして、半値半幅を算出した。
【0186】
(触媒の評価:ジエン化合物の合成)
実施例1-1~1-10、及び比較例1-1~1-3で調製された触媒を用いて、エタノールを1,3-ブタジエンに変換する際の1,3-ブタジエン(BD)選択率、重合体選択率、転化率、1,3-ブタジエン(BD)の収率を求めた(いずれも反応開始1時間経過後)。
【0187】
具体的には、触媒3.4gを直径1/2インチ(1.27cm)、長さ15.7インチ(40cm)のステンレス製円筒型の反応管に充填して反応床を形成した。次いで、反応温度(反応床の温度)を325℃とし、反応圧力(反応床の圧力)を0.1MPaとした。SV1200L/hr/触媒量(L-触媒)で原料を反応管に供給し生成ガスを得た。原料は、エタノール30体積%(気体換算)、窒素70体積%(気体換算)の混合ガスであった。
回収した生成ガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、BDの選択率、クロトンアルデヒド選択率、転化率、BDの収率([転化率]×[BDの選択率])を求めた。また、「転化率(原料転化率)」とは、原料のモル数うち、消費されたモル数が占める百分率である。
【0188】
(実施例1-1)
界面活性剤としてP123([(HO(CH
2CH
2O)
20(CH
2CH(CH
3)O)
70(CH
2CH
2O)
20)H]、BASF社製)2gをビーカー内に仕込み、これに65mLの水と2N塩酸を35mL添加し、常温常圧条件下で100rpmの速度で撹拌して前記界面活性剤を溶解させた。界面活性剤を溶解させた水溶液を常温常圧条件下で100rpmの速度で撹拌しながら、塩化ハフニウム(HfCl
4)を10mg/分の速度で計64mg加えた。塩化ハフニウムが全て溶解したことを目視にて確認してから、常温常圧条件下で100rpmの速度で撹拌して、テトラエトキシシランを0.1g/分の添加速度で4.2g加え原料溶液を調製した。原料溶液における塩化ハフニウムの濃度は0.64g/L、テトラエトキシシラン濃度は4.8g/L、塩酸濃度は0.7mol/Lであった。次いで、原料溶液を、40℃で20時間静置することで、懸濁液を得た。
前記懸濁液を100℃で20時間静置した後、濾過し、エタノールと水で洗浄した後、粉末をシャーレに移し、110℃の温度に保たれたオーブン中で4時間乾燥させることで固形コロイドを得た。
得られた固形コロイドを、電気炉を用いて空気雰囲気下で5℃/分の昇温速度で550℃まで昇温し、550℃で5時間、焼成することで、Hf、Siを含む複合酸化物である触媒を製造した。
触媒のX線回折線を上述した測定方法にて測定した。その結果、X線回折ピークはθ=0.90°(半値半幅0.08°)、強度6453cpsで観測された。また、X線回折図は
図2に示すとおりであった。
【0189】
得られた触媒を上述した反応評価を行い、BDの選択率、転化率、BDの収率を求めた。
【0190】
(実施例1-2)
実施例1-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を71mgに変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
【0191】
(実施例1-3)
実施例1-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を80mgに変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
【0192】
(実施例1-4)
実施例1-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)に106mgを変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
【0193】
(実施例1-5)
実施例1-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を128mgに変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
【0194】
(実施例1-6)
実施例1-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を160mgに変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
【0195】
(実施例1-7)
実施例1-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を256mgに変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
【0196】
(実施例1-8)
実施例1-5で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)塩化ジルコニウム(ZrCl4)に変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
【0197】
(実施例1-9)
実施例1-5で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を塩化ニオブ(NbCl5)に変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
【0198】
(実施例1-10)
実施例1-5で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を塩化タンタル(TaCl5)に変更した以外は、実施例1-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
【0199】
(比較例1-1)
65mLの水と2N塩酸35mLを混合した溶液に、塩化ハフニウム(HfCl4)を加えた後、撹拌して金属塩化物を溶解させた。これにテトラエトキシシランを0.1g/分で4.2g加え原料溶液を調製とした。次いで、原料溶液に、40℃で20時間撹拌することで、懸濁液を得た。
懸濁液を100℃で20時間熟成した後、濾過し、エタノールと水で洗浄した後、粉末をシャーレに移し、110℃の温度に保たれたオーブン中で乾燥させることで固形コロイドを得た。
得られた固形コロイドを、電気炉を用いて空気雰囲気下で550℃、5時間、焼成することで、Hf、Siを含む複合酸化物である触媒を製造した。当該触媒についてX線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表1に示す。
【0200】
【0201】
以上の結果より、X線回折線がθ=6°以下の範囲で、強度100csp以上で1本以上ピークが観測される場合、クロトンアルデヒドからブタジエンが生成するパスが速やかに進行し、ブタジエンの選択率が向上する効果が実施例と比較例から読み取ることができる。実施例で得られたこのような効果は、触媒中に規則的な配列を持ったメソ細孔が存在すると、原料のエタノールと中間体であるクロトンアルデヒドがメソ細孔内に入りやすくなることで衝突頻度が高まり、反応性が向上し、ブタジエンが生成することが可能となったためと考えられる。
【0202】
<<第2発明に対応する実施例>>
(窒素ガス吸着測定方法)
測定を行う前に、触媒のサンプル調製を行った。触媒100mg程度を乳鉢にはかりとり、乳棒を用いてすりつぶし、粒径を44μm以下に調整した。調整した触媒を10mg程度測りとり、試料管に封入した。試料管ごと110℃に加熱し、10時間真空脱気をした。窒素ガス吸着測定にはマイクロトラックベル社製の比表面積/細孔分布測定装置 BELSORP-miniを使用し、吸脱着等温線を相対圧0~0.98の範囲で測定した。比表面積の算出には、測定した吸着等温線から相対圧0.05~0.25の範囲のデータに対してBET法を適用することで算出した。平均細孔直径は、測定した吸着等温線から相対圧0.1~0.98の範囲のデータに対してBJH法を適用することで算出した。
【0203】
(触媒の評価:ジエン化合物の合成)
実施例2-1~2-10、及び比較例2-1~2-3で調製された触媒を用いて、エタノールを1,3-ブタジエンに変換する際の1,3-ブタジエン(BD)選択率、重合体選択率、転化率、1,3-ブタジエン(BD)の収率を求めた。
【0204】
具体的には、触媒3.4gを直径1/2インチ(1.27cm)、長さ15.7インチ(40cm)のステンレス製円筒型の反応管に充填して反応床を形成した。次いで、反応温度(反応床の温度)を325℃とし、反応圧力(反応床の圧力)を0.1MPaとした。SV1200L/hr/触媒量(L-触媒)で原料を反応管に供給し生成ガスを得た。原料は、エタノール30体積%(気体換算)、窒素70体積%(気体換算)の混合ガスであった。
回収した生成ガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、反応開始1時間後及び5時間後について、転化率、BDの収率([転化率]×[BDの選択率])を求めた。「転化率(原料転化率)」とは、原料のモル数うち、消費されたモル数が占める百分率である。
【0205】
(実施例2-1)
界面活性剤としてP123([(HO(CH2CH2O)20(CH2CH(CH3)O)70(CH2CH2O)20)H]、BASF社製)2gをビーカー内に仕込み、これに65mLの水と2N塩酸を35mL添加し、常温常圧条件下で100rpmの速度で撹拌して前記界面活性剤を溶解させた。界面活性剤を溶解させた水溶液を常温常圧条件下で100rpmの速度で撹拌しながら、塩化ハフニウム(HfCl4)を10mg/分の速度で計64mg加えた。塩化ハフニウムが全て溶解したことを目視にて確認してから、常温常圧条件下で100rpmの速度で撹拌して、テトラエトキシシランを0.1g/分の添加速度で4.2g加え原料溶液を調製した。原料溶液における塩化ハフニウムの濃度は0.64g/L、テトラエトキシシラン濃度は4.8g/L、塩酸濃度は0.7mol/Lであった。次いで、原料溶液を、40℃で20時間静置することで、懸濁液を得た。
前記懸濁液を100℃で20時間静置した後、濾過し、エタノールと水で洗浄した後、粉末をシャーレに移し、110℃の温度に保たれたオーブン中で4時間乾燥させることで固形コロイドを得た。
得られた固形コロイドを、電気炉を用いて空気雰囲気下で5℃/分の昇温速度で550℃まで昇温し、550℃で5時間、焼成することで、Hf、Siを含む複合酸化物である触媒を製造した。
【0206】
得られた触媒について、上述した窒素ガス吸着測定を行い、さらに上述した反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0207】
(実施例2-2)
実施例2-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を71mgに変更した以外は、実施例2-1と同様の方法で、触媒を製造し、上述した窒素ガス吸着測定を行い、さらに上述した反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0208】
(実施例2-3)
実施例2-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を80mgに変更した以外は、実施例2-1と同様の方法で、触媒を製造し、上述した窒素ガス吸着測定を行い、さらに上述した反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0209】
(実施例2-4)
実施例2-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)に106mgを変更した以外は、実施例2-1と同様の方法で、触媒を製造し、上述した窒素ガス吸着測定を行い、さらに上述した反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0210】
(実施例2-5)
実施例2-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を128mgに変更した以外は、実施例2-1と同様の方法で、触媒を製造し、上述した窒素ガス吸着測定を行い、さらに上述した反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0211】
(実施例2-6)
実施例2-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を160mgに変更した以外は、実施例2-1と同様の方法で、触媒を製造し、上述した窒素ガス吸着測定を行い、さらに上述した反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0212】
(実施例2-7)
実施例2-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を256mgに変更した以外は、実施例2-1と同様の方法で、触媒を製造し、上述した窒素ガス吸着測定を行い、さらに上述した反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0213】
(実施例2-8)
実施例2-5で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)塩化ジルコニウム(ZrCl4)に変更した以外は、実施例2-1と同様の方法で、触媒を製造し、上述した窒素ガス吸着測定を行い、さらに上述した反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0214】
(実施例2-9)
実施例2-5で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を塩化ニオブ(NbCl5)に変更した以外は、実施例2-1と同様の方法で、触媒を製造し、上述した窒素ガス吸着測定を行い、さらに上述した反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0215】
(実施例2-10)
実施例2-5で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を塩化タンタル(TaCl5)に変更した以外は、実施例2-1と同様の方法で、触媒を製造し、上述した窒素ガス吸着測定を行い、さらに上述した反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0216】
(比較例2-1)
65mLの水と2N塩酸35mLを混合した溶液に、塩化ハフニウム(HfCl4)を加えた後、撹拌して金属塩化物を溶解させた。これにテトラエトキシシランを0.1g/分で4.2g加え原料溶液を調製とした。次いで、原料溶液に、40℃で20時間撹拌することで、懸濁液を得た。
懸濁液を100℃で20時間熟成した後、濾過し、エタノールと水で洗浄した後、粉末をシャーレに移し、110℃の温度に保たれたオーブン中で乾燥させることで固形コロイドを得た。
得られた固形コロイドを、電気炉を用いて空気雰囲気下で550℃、5時間、焼成することで、Hf、Siを含む複合酸化物である触媒を製造し、上述した窒素ガス吸着測定を行い、さらに上述した反応評価を行った。結果を表2に示す。
【0217】
【0218】
以上の結果より、触媒の比表面積が700~1200m2/g範囲で、かつ平均細孔直径が2~20nmである場合、触媒の反応初期(1時間後)から転化率が高くかつ5時間が経過しても転化率はほとんど低下しない効果が実施例と比較例から読み取れることができる。この効果の違いは、比表面積が上記範囲内だと触媒中の活性点が十分に存在できるため転化率が高いためだと考えられる。また、平均細孔直径が上記範囲内だと、細孔内での基質の衝突頻度が適度なため、目的反応のみが進行し、過反応により生じる重合物が生じ細孔径をふさぐことで生じる劣化が進行しない効果を生み出していると考えられる。
【0219】
<<第3発明に対応する実施例>>
(X線回折線測定方法)
X線回折線測定を行う前に、触媒のサンプル調製を行った。まず、触媒100mg程度を乳鉢にはかりとり、乳棒を用いてすりつぶし、粒径を44μm以下に調整した。粒径調整した触媒を試料板の試料充填部の穴に均一に詰め、試料板の表面と触媒面が同一面になるように調整した。
X線回折線測定には株式会社リガク社製の試料水平型多目的X線回折装置 Ultima IIIを使用した。対陰極には純銅を用いた銅管球を用い,CuKαの特性X線(波長(λ)=1.5418Å(0.15418nm))を回折に使用した。回折計は発散スリットを1/2°、発散縦制限スリットを10mm、散乱スリットを2°、受光スリット0.15mmに設定した。その後、管電圧40kV、管電流を20mAの条件で、調製した触媒のサンプルに対してX線を照射した。ゴニオメーターの走査角度を3~60°の範囲に設定し、走査速度2°/分で測定を行った。
測定終了後、得られたデータの解析を行った。データをExcel等で横軸角度、縦軸cpsとしてグラフで表示し、ピークの有無を確認した。ピークが存在した場合、cpsが最も高い値をピークの頂点とし、頂点の角度と頂点cpsの値の半分のcps値を示す箇所の角度の差を算出し、これを半値半幅とした。ピーク左右で半値半幅が異なる場合、大きい方を半値半幅として採用した。ピークが複数ある場合は、それぞれのピークで半値半幅を算出した。また、ピークが重なっていて半値半幅が算出できない場合は、最小二乗法等を用いたピークフィッテイングを行いピーク分離をして、半値半幅を算出した。
【0220】
(触媒の評価:ジエン化合物の合成)
実施例3-1~3-10、及び比較例3-1~3-3で調製された触媒を用いて、エタノールを1,3-ブタジエンに変換する際の1,3-ブタジエン(BD)選択率、重合体選択率、転化率、1,3-ブタジエン(BD)の収率を求めた(いずれも反応開始1時間経過後)。
【0221】
具体的には、触媒3.4gを直径1/2インチ(1.27cm)、長さ15.7インチ(40cm)のステンレス製円筒型の反応管に充填して反応床を形成した。次いで、反応温度(反応床の温度)を325℃とし、反応圧力(反応床の圧力)を0.1MPaとした。SV1200L/hr/触媒量(L-触媒)で原料を反応管に供給し生成ガスを得た。原料は、エタノール30体積%(気体換算)、窒素70体積%(気体換算)の混合ガスであった。
回収した生成ガスをガスクロマトグラフィーにより分析し、BDの選択率、重合体選択率、転化率、BDの収率([転化率]×[BDの選択率])を求めた。なお、「BDの選択率」とは、触媒を用いた反応で消費された原料のモル数のうち、ブタジエンへ変換された原料のモル数が占める百分率である。「重合体選択率」とは、100%-([BDの選択率%]+[メタンの選択率%]+[エチレンの選択率%]+[ジエチルエーテルの選択率%]+[プロペンの選択率%]+[プロパンの選択率%]+[ブテンの選択率%]+[ブタンの選択率%]+[アセトアルデヒドの選択率%]+[酢酸エチルの選択率%])である。また、「転化率(原料転化率)」とは、原料のモル数うち、消費されたモル数が占める百分率である。
【0222】
(実施例3-1)
界面活性剤としてP123([(HO(CH
2CH
2O)
20(CH
2CH(CH
3)O)
70(CH
2CH
2O)
20)H]、BASF社製)2gをビーカー内に仕込み、これに65mLの水と2N塩酸を35mL添加し、常温常圧条件下で100rpmの速度で撹拌して前記界面活性剤を溶解させた。界面活性剤を溶解させた水溶液を常温常圧条件下で100rpmの速度で撹拌しながら、塩化ハフニウム(HfCl
4)を10mg/分の速度で計64mg加えた。塩化ハフニウムが全て溶解したことを目視にて確認してから、常温常圧条件下で100rpmの速度で撹拌して、テトラエトキシシランを0.1g/分の添加速度で4.2g加え原料溶液を調製した。原料溶液における塩化ハフニウムの濃度は0.64g/L、テトラエトキシシラン濃度は4.8g/L、塩酸濃度は0.7mol/Lであった。次いで、原料溶液を、40℃で20時間静置することで、懸濁液を得た。
前記懸濁液を100℃で20時間静置した後、濾過し、エタノールと水で洗浄した後、粉末をシャーレに移し、110℃の温度に保たれたオーブン中で4時間乾燥させることで固形コロイドを得た。
得られた固形コロイドを、電気炉を用いて空気雰囲気下で5℃/分の昇温速度で550℃まで昇温し、550℃で5時間、焼成することで、Hf、Siを含む複合酸化物である触媒を製造した。
触媒のX線回折線を上述した測定方法にて測定した。その結果、X線回折ピークはθ=22.8°(半値半幅7.8°)、強度16916cpsで観測された。また、X線回折図は
図3に示すとおりであった。
【0223】
得られた触媒を上述した反応評価を行い、BDの選択率、転化率、BDの収率を求めた。結果を表3に示す。
【0224】
(実施例3-2)
実施例3-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を71mgに変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0225】
(実施例3-3)
実施例3-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を80mgに変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0226】
(実施例3-4)
実施例3-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)に106mgを変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0227】
(実施例3-5)
実施例3-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を128mgに変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0228】
(実施例3-6)
実施例3-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を160mgに変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0229】
(実施例3-7)
実施例3-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を256mgに変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0230】
(実施例3-8)
実施例3-5で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)塩化ジルコニウム(ZrCl4)に変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0231】
(実施例3-9)
実施例3-5で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を塩化ニオブ(NbCl5)に変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0232】
(実施例3-10)
実施例3-5で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)を塩化タンタル(TaCl5)に変更した以外は、実施例3-1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0233】
(比較例3-1)
塩化ハフニウム(HfCl4)64mgを水に溶解して、含浸液とした。この含浸液を多孔質担体(シリカ、粒子径:1.18~2.36mm、平均細孔直径:10nm、全細孔容積:1.01mL/g、比表面積:283m2/g)に滴下した。この多孔質体を110℃で3時間乾燥し、さらに400℃で4.5時間焼成して、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0234】
(比較例3-2)
比較例3-1で使用した塩化ハフニウム(HfCl4)の量を256mgと変更した以外は、比較例1と同様の方法で、触媒を製造し、X線回折線測定及び触媒の評価を行った。結果を表3に示す。
【0235】
【0236】
以上の結果より、X線回折線がθ=10~40°の範囲で半値半幅が1°以上のピークが観測される場合、過反応により生じる、ブタジエンよりも分子量の大きい重合体の生成量が減少し、ブタジエンの選択率が向上する効果が確認できた。この効果の違いは、触媒の反応点であるハフニウムが、ハフニウム酸化物単体として凝集して存在しているのではなく、シリカと複合酸化物として触媒中に分散して存在することで、1つの反応点当たりの面積が減少し過反応の進行を抑制できるためだと考えられる。
【符号の説明】
【0237】
1 反応管
2 反応床
3 供給管
4 排出管
5 温度制御部
6 圧力制御部
10 ブタジエンの製造装置