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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】通気構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/06 20060101AFI20241211BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20241211BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20241211BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
H05K5/06 E
F16B19/00 B
F16J15/10 C
H05K5/02 L
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021539283
(86)(22)【出願日】2020-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2020030458
(87)【国際公開番号】W WO2021029386
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019147636
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019198984
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】矢野 陽三
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 拓見
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/024060(WO,A1)
【文献】特開2018-148089(JP,A)
【文献】特開2018-082090(JP,A)
【文献】特開2007-141959(JP,A)
【文献】特開2014-233156(JP,A)
【文献】中国実用新案第208452799(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/06
F16B 19/00
F16J 15/10
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付孔を有する筐体であって、前記取付孔において柱状の空間の側面を形成する、又は、前記取付孔において前記筐体の内部空間側から外部空間側に近づくにつれて減少する孔径を有するテーパーを形成する、第一面を有する筐体と、
前記取付孔を塞ぐように前記筐体に装着されており、前記筐体の前記内部空間と前記筐体の前記外部空間との間の通気路を有する通気部品と、を備え、
前記通気部品は、
平面視において前記通気路を取り囲む環状の支持部と、
前記通気路を通気可能に塞いでいる通気膜と、
前記支持部から前記内部空間に向かって突出しているとともに前記取付孔に挿入されており、前記筐体に接触している突出部と、
前記突出部の外周に配置され、前記第一面と前記突出部との間の隙間をシールするシール部材と、を備え、
前記支持部の少なくとも一部は、前記第一面によって囲まれた空間の内部に配置されており、
前記第一面は、前記取付孔の軸線に平行な方向において、前記取付孔の周りの前記筐体の外面よりも前記取付孔に接する前記筐体の内部空間に近い位置に形成されている、
通気構造。
【請求項2】
前記シール部材は、前記取付孔に収容されている、請求項1に記載の通気構造。
【請求項3】
前記シール部材は、前記第一面よりも前記筐体の前記外部空間に突出している部分を含む、請求項1又は2に記載の通気構造。
【請求項4】
前記支持部は、前記筐体の前記外部空間に接する前記取付孔の端における孔径より小さい外径を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の通気構造。
【請求項5】
前記筐体は、前記シール部材よりも前記筐体の前記内部空間の近くに配置されており、前記第一面から前記取付孔の軸線に向かって突出している底部を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の通気構造。
【請求項6】
前記底部は、環状である、請求項に記載の通気構造。
【請求項7】
前記支持部は、前記通気膜が取り付けられた被着面を有し、
前記取付孔は、前記底部に囲まれた開口を含み、
前記通気膜は、前記取付孔の軸線に垂直な方向において前記開口と重なっている、
請求項に記載の通気構造。
【請求項8】
前記支持部は、前記シール部材と向かい合う前記底部の外面が向く方向と同じ方向を向いており、前記通気膜が取り付けられた被着面を有する、請求項又はに記載の通気構造。
【請求項9】
前記突出部は、前記シール部材よりも前記筐体の前記内部空間に近い位置で前記第一面に向かって突出しているフランジを有する、請求項1~のいずれか1項に記載の通気構造。
【請求項10】
前記突出部は、前記筐体の前記外部空間側から前記内部空間側に近づくにつれて拡大する外径を有する先太部を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の通気構造。
【請求項11】
前記突出部は、前記筐体に係止される係止部を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の通気構造。
【請求項12】
前記通気部品は、前記支持部に連結されており、前記通気膜を覆うとともに前記通気膜との間に前記通気部品の外部空間に連通している空間を形成するキャップをさらに備えた、請求項1~11のいずれか1項に記載の通気構造。
【請求項13】
前記通気部品が前記筐体に装着されていない状態において、軸線を含む平面に沿って前記シール部材を切断して得られる断面は、円、楕円、又は角を有する平面である、請求項1~12のいずれか1項に記載の通気構造。
【請求項14】
外方に突出した外方突出部を含み、前記外方突出部の頂部に形成された取付孔を有する筐体と、
前記取付孔を塞ぐように前記筐体に装着されており、前記筐体の内部空間と前記筐体の外部空間との間の通気路を有する通気部品と、を備え、
前記通気部品は、
平面視において前記通気路を取り囲む環状の支持部と、
前記通気路を通気可能に塞いでいる通気膜と、
前記支持部から前記内部空間に向かって突出しているとともに前記取付孔に挿入されており、前記筐体に接触している突出部と、
平面視において前記外方突出部を取り囲む環状の側部と、
前記外方突出部の側面と前記側部との間の隙間をシールするシール部材と、を備え、
前記シール部材は、前記側面と前記側部とによって前記取付孔の軸線に垂直な方向に圧縮変形している、
通気構造。
【請求項15】
前記側部は、前記シール部材を覆っている、請求項14に記載の通気構造。
【請求項16】
前記側部は、前記支持部に連結されている、請求項14又は15に記載の通気構造。
【請求項17】
前記側部は、前記外方突出部に向かって突出している側方突出部を有する、請求項1416のいずれか1項に記載の通気構造。
【請求項18】
前記側方突出部は、前記シール部材に接触している、請求項17に記載の通気構造。
【請求項19】
前記突出部は、前記筐体に係止される係止部を有する、請求項1418のいずれか1項に記載の通気構造。
【請求項20】
前記通気部品は、前記支持部に連結されており、前記通気膜を覆うとともに前記通気膜との間に前記通気部品の外部空間に連通している空間を形成するキャップをさらに備えた、請求項1419のいずれか1項に記載の通気構造。
【請求項21】
前記通気部品が前記筐体に装着されていない状態において、軸線を含む平面に沿って前記シール部材を切断して得られる断面は、円、楕円、又は角を有する平面である、請求項1420のいずれか1項に記載の通気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開口を有する筐体に通気部品が装着された通気構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、通気用の開口部を有する筐体と、開口部に取り付けられた通気部材とを備えた通気構造が記載されている。開口部には、筐体の内部空間側から外部空間側に向かうにつれて開口径が拡大するようにテーパーが形成されている。通気部材は、通気膜、通気膜を支持している支持体、及び支持体の脚部の根元に設けられたシールリングを備えている。シールリングは、支持体と筐体との間に挟まれることでテーパーに沿って変形している。
【0004】
一方、特許文献2には、所定の通気部材が筐体に固定された通気筐体が記載されている。通気部材は、支持部と、挿入部とを有する。支持部は通気膜を支持する。挿入部は、筐体の開口部に挿入される。挿入部は、周方向に沿って複数に分割されている。支持部の筐体と向かい合う面にOリング等のシール部が設けられうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-52791号公報
【文献】特開2004-47425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び2に記載の技術は、シールリング又はシール部におけるシールのための接触面積が環境条件の変化により減少することを抑制する観点から再検討の余地を有する。
【0007】
そこで、本発明は、シール部材のシールのための接触面積が環境条件の変化により減少しにくい通気構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
取付孔を有する筐体であって、前記取付孔において柱状の空間の側面を形成する、又は、前記取付孔において前記筐体の内部空間側から外部空間側に近づくにつれて減少する孔径を有するテーパーを形成する、第一面を有する筐体と、
前記取付孔を塞ぐように前記筐体に装着されており、前記筐体の前記内部空間と前記筐体の前記外部空間との間の通気路を有する通気部品と、を備え、
前記通気部品は、
平面視において前記通気路を取り囲む環状の支持部と、
前記通気路を通気可能に塞いでいる通気膜と、
前記支持部から前記内部空間に向かって突出しているとともに前記取付孔に挿入されており、前記筐体に接触している突出部と、
前記突出部の外周に配置され、前記第一面と前記突出部との間の隙間をシールするシール部材と、を備える、
通気構造を提供する。
【0009】
また、本発明は、
外方に突出した外方突出部を含み、前記外方突出部の頂部に形成された取付孔を有する筐体と、
前記取付孔を塞ぐように前記筐体に装着されており、前記筐体の内部空間と前記筐体の外部空間との間の通気路を有する通気部品と、を備え、
前記通気部品は、
平面視において前記通気路を取り囲む環状の支持部と、
前記通気路を通気可能に塞いでいる通気膜と、
前記支持部から前記内部空間に向かって突出しているとともに前記取付孔に挿入されており、前記筐体に接触している突出部と、
平面視において前記外方突出部を取り囲む環状の側部と、
前記外方突出部の側面と前記側部との間の隙間をシールするシール部材と、を備える、
通気構造を提供する。
【発明の効果】
【0010】
上記の通気構造において、シール部材のシールのための接触面積が環境条件の変化により減少しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る通気構造の一例を示す断面図である。
図2図2は、図1に示す通気構造の筐体を示す断面図である。
図3図3は、本発明に係る通気構造の別の一例を示す断面図である。
図4図4は、本発明に係る通気構造のさらに別の一例を示す断面図である。
図5図5は、本発明に係る通気構造のさらに別の一例を示す断面図である。
図6図6は、本発明に係る通気構造のさらに別の一例を示す断面図である。
図7図7は、本発明に係る通気構造のさらに別の一例を示す断面図である。
図8図8は、本発明に係る通気構造のさらに別の一例を示す断面である。
図9図9は、図8に示す通気構造の筐体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。以下の説明は、本発明の例示であり、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0013】
図1に示す通り、通気構造1aは、筐体10aと、通気部品20aとを備えている。図2に示す通り、筐体10aは取付孔11を有する。加えて、筐体10aは、取付孔11において柱状の空間11cの側面を形成する第一面12を有する。通気部品20aは、取付孔11を塞ぐように筐体10aに装着されている。通気部品20aは、筐体10aの内部空間15uと筐体10aの外部空間15sとの間の通気路21を有する。柱状の空間11cは、例えば、外部空間15sに接している。
【0014】
通気部品20aは、支持部23と、通気膜22と、突出部24と、シール部材25とを備えている。支持部23は、平面視において通気路21を取り囲む環状の部位である。通気膜22は、通気路21を通気可能に塞いでいる。突出部24は、支持部23から筐体10aの内部空間15uに向かって突出しているとともに取付孔11に挿入されている。加えて、突出部24は、筐体10aに接触している。シール部材25は、突出部24の外周に配置されており、第一面12と突出部24との間をシールする。例えば、シール部材25は、第一面12及び突出部24によって取付孔11の軸線A1に垂直な方向に圧縮変形している。これにより、シール部材25と、筐体10a及び突出部24との接触面積が所望の値になりやすく、良好なシール性能が実現されやすい。なお、環状の支持部23は、平面視においてその内周及び外周がなす輪郭が円である円環状であってもよく、その内周及び外周がなす輪郭の少なくとも1つが円以外の平面図形である環状であってもよい。
【0015】
特許文献1及び2に記載の技術において、高温環境の発生等の環境条件の変化により、支持体の脚部及び挿入部等の通気部材の所定の部位の弾性率が低下する可能性がある。このような弾性率の低下は、支持体の脚部及び挿入部の内側への変形を引き起こす。このような変形が発生すると、支持体の脚部と筐体との間、又は、挿入部と筐体との間に隙間が生じ、シールリング又はシール部の変形の一部が解消され、開口部の軸線に沿って通気部材が筐体から外れる方向に移動する可能性がある。特許文献1に記載の通気構造において、シールリングは開口部のテーパーに沿って変形しているので、このような通気部材の移動が発生すると、シールリングの圧縮変形の一部が解消され、シールリングと開口部との接触面積が減少する。特許文献2に記載の通気筐体において、シール部は支持部と筐体の外面との間に配置されているので、開口部の軸線に沿って通気部材が筐体から外れる方向に移動すると、シール部と、支持部及び筐体の外面との間の接触面積が減少する。このため、特許文献1及び2に記載の技術は、シールリング部材のシールのための接触面積が環境条件の変化により減少することを抑制する観点から有利であるとは言い難い。
【0016】
一方、通気構造1aによれば、例えば、シール部材25は、第一面12及び突出部24によって取付孔11の軸線A1に垂直な方向に圧縮変形している。このため、環境条件の変化により突出部24の弾性率が低下しても、通気部品20aが取付孔11の軸線A1に沿って筐体10aから外れるように移動しにくく、シール部材25と、第一面12及び突出部24との接触面積が減少しにくい。その結果、通気構造1aにおいて環境条件の変化が起こっても良好なシール性能が実現されやすい。シール部材25は、典型的には環状の部材である。
【0017】
通気構造1aにおいて、筐体10aは、例えば、電子機器の筐体である。電子機器は、例えば、電子制御装置(ECU)、電力システム(EPS)、バッテリーパック、インバーター、コンバーター、ミリ波レーダー、及び車載カメラ等の自動車用の電子機器である。電子機器は、自動車用以外の用途に使用されるものであってもよい。通気構造1aによれば、温度変化によって筐体10aの内部空間15uと外部空間15sとの間に発生する差圧を通気路21により解消させることができる。加えて、通気膜22が通気路21を塞いでいるので、内部空間15uに異物が侵入することを阻止でき、例えば、通気構造1aは防塵性を有する。また、通気構造1aにより、水、油、及び塩等が内部空間に侵入することが阻止されうる。
【0018】
例えば、筐体10aが搭載された装置、車両、又は設備を洗浄するときに、通気構造1aに向けて取付孔11の軸線A1に垂直な方向に水が高圧噴射されることが想定される。上記の通り、シール部材25は、第一面12と突出部24との間をシールする。このため、シール部材25と第一面12及び突出部24との間のシール部分は高圧噴射された水を受けにくく、通気構造1aに向けて水が高圧噴射されても、シール部材25が良好なシール性を発揮し、筐体10aの内部空間15uに水が侵入しにくい。
【0019】
図1に示す通り、第一面12は、例えば、取付孔11の周りの筐体10aの外面16よりも取付孔11に接する筐体10aの内部空間15uに近い位置に形成されている。このような構成によれば、通気構造1aにおいて、筐体10aの外側に突出した部分の高さを抑制しやすい。第一面12は、取付孔11の周りの筐体10aの外面16よりも取付孔11に接する筐体10aの外部空間15sに近い位置に形成されていてもよい。
【0020】
図1に示す通り、シール部材25は、例えば、取付孔11に収容されている。典型的には、シール部材25の全体が取付孔11の内部に配置されている。この場合、シール部材25が高圧噴射された水を受けにくく、シール部材25の変形を防止できる。このため、通気構造1aに向けて水が高圧噴射されても、より確実に、筐体10aの内部空間15uへの水の侵入を防止できる。
【0021】
図1に示す通り、支持部23の少なくとも一部は、第一面12によって囲まれた空間の内部に配置されている。このような構成によれば、取付孔11の軸線に垂直な方向における支持部23の端部の少なくとも一部が第一面12と向かい合う。このため、通気部品20aが取付孔11の軸線に垂直な横方向に倒れにくい。支持部23の全体が第一面12によって囲まれた空間の内部に配置されていてもよいし、支持部23の全体が第一面12によって囲まれた空間の外部に配置されていてもよい。
【0022】
支持部23は、孔径R1より小さい外径D1を有する。孔径R1は、筐体10aの外部空間15sに接する取付孔11の端における取付孔11の直径である。外径D1が孔径R1より小さいことにより、筐体10aに通気部品20aを装着したときに、支持部23が筐体10aに接触しにくく、筐体10a及び通気部品20aに求められる寸法公差を大きくしやすい。外径D1は、例えば、孔径R1よりわずかに小さい。このため、筐体10aと支持部23との間に微小な隙間が形成されうる。
【0023】
突出部24は、例えば、係止部24eを有する。係止部24eは筐体10aに係止される。係止部24eは、例えば、筐体10aの内面14に接触している。これにより、通気部品20aが筐体10aから外れにくい。係止部24eは、突出部24の先端部に形成されている。係止部24eは、例えば、スナップフィットにより筐体10aに係止される。突出部24は、例えば、筒状に形成されており、係止部24eは、例えば、突出部24の軸線に垂直な方向に外側に突出している。例えば、係止部24eの先端部には周方向に1つ以上のスリット24cが形成されている。これにより、突出部24の軸線に垂直な方向に突出部24の先端部が弾性変形しやすく、通気部品20aを筐体10aに装着しやすい。係止部24eは、ねじ止めにより筐体10aに係止されてもよく、バヨネットにより筐体10aに係止されてもよい。
【0024】
支持部23及び突出部24は一体的に成形された部品であってもよいし、支持部23及び突出部24は別々に作製された部品であってもよい。支持部23及び突出部24の材料は、例えば、成形性の観点から、熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、及び熱可塑性エラストマーでありうる。支持部23及び突出部24の材料は、熱硬化性樹脂であってもよく、金属であってもよい。支持部23及び突出部24の材料は、ゴムであってもよい。ゴムは、例えば、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、又は水素化ニトリルゴムである。
【0025】
図2に示す通り、筐体10aは、例えば、底部13を有する。底部13は、シール部材25よりも筐体10aの内部空間15uの近くに配置されている。底部13は、第一面12から取付孔11の軸線A1に向かって突出している。この場合、突出部24の係止部24eを底部13に係止させるように構成することができ、突出部24の先端部の形状を直線的なシンプルな構造にしやすい。加えて、シール部材25が第一面12と突出部24との間をシールすることとも相まって、シール部材が取付孔の軸線方向に圧縮されるように変形する場合と比べて、係止部24eにかかる力が小さくなりやすい。このため、突出部24の先端部の歪みを防止でき、係止部24eを小さくしやすい。
【0026】
底部13は、例えば環状である。取付孔11は、底部13によって囲まれた開口11sを含む。突出部24は、例えば、底部13に接触している。筐体10aがこのように構成されていると、突出部24の軸線に垂直な方向における寸法を小さくしやすい。また、シール部材25が内部空間15uに露出しにくい。また、通気部品20aを筐体10aに装着するときに、シール部材25が誤って内部空間15uに入ることを防止できる。
【0027】
支持部23は、典型的には、通気膜22が取り付けられた被着面23bを有する。被着面23bは、例えば、環状の面である。通気膜22は、例えば、取付孔11の軸線A1に垂直な方向において、開口11sと重なっている。例えば、通気膜22の中央部分が開口11sの全体に重なっている。筐体10aが環状の底部13を有することにより、通気膜22の寸法を小さくしやすい。
【0028】
底部13は、シール部材25と向かい合う外面13sを有する。被着面23bは、例えば、外面13sが向く方向と同じ方向を向いている。この場合、通気膜22の状態を目視により確認しやすい。
【0029】
通気膜22は、所望の通気性を有する限り特定の通気膜に限定されない。通気膜22は、単層膜であってもよいし、多層膜であってもよい。通気膜22が多層膜である場合、各層は、多孔質膜、不織布、クロス、及びメッシュからなる群より選ばれる1つでありうる。通気膜22は、多孔質膜及び不織布を含んでいてもよく、クロス及びメッシュの少なくとも1つと多孔質膜とを含んでいてもよく、複数の不織布を含んでいてもよい。通気膜22は、典型的には、有機高分子材料(樹脂)によって構成されている。多孔質膜の材料は、例えば、フッ素樹脂である。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、又はテトラフルオロエチレン-エチレン共重合体を使用できる。多孔質膜の材料は、エチレン、プロピレン、及び4-メチルペンテン-1,1ブテン等のモノマーの単体の重合体又は共重合体等のポリオレフィンであってもよい。多孔質膜は、ポリアクリロニトリル、ナイロン、又はポリ乳酸等のナノファイバーの多孔膜であってもよい。多孔質膜は、公知の延伸法又は抽出法によって製造できる。不織布、クロス、及びメッシュの材料は、例えば、ポリエチレンテレフタラート等のポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、アラミド、又はエチレン酢酸ビニル共重合体である。
【0030】
通気膜22は、望ましくは、PTFE多孔質膜を含む。PTFE多孔質膜は、小面積でも通気性を確保でき、異物の侵入を効果的に阻止できる。PTFE多孔質膜は、不織布などの通気性支持材に積層されていてもよい。
【0031】
通気膜22は、必要に応じて撥液処理されていてもよい。撥液処理は、例えば、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系表面修飾剤を含む撥液性の被膜を通気膜22に形成することによってなされる。撥液性の被膜の形成の方法は、特定の方法に限定されない。撥液性の被膜の形成は、例えば、エアスプレイ法、静電スプレイ法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、ロールコーティング法、カーテンフローコーティング法、又は含浸法等の方法により、パーフルオロアルキル基を有するフッ素系表面修飾剤の溶液又はディスパージョンで樹脂多孔質膜をコーティングすることによりなされる。また、電着塗装法又はプラズマ重合法によって、撥液性の被膜を形成してもよい。
【0032】
通気膜22は、例えば、被着面23bに対して接着されている。通気膜22は、被着面23bに対して溶着されていてもよい。溶着の方法としては、熱溶着、超音波溶着、及びレーザー溶着を利用できる。また、支持部23を成形するときに、成形のための金型の内部の所定の位置に通気膜22を配置した状態で樹脂を金型に流し込んでインサート成形を行い、通気膜22を被着面23bに取り付けてもよい。通気膜22は、被着面23bに対して両面テープによって取り付けられていてもよい。
【0033】
シール部材25は、所望のシール性を有する限り、特定のシール部材に限定されない。通気部品20aが筐体10aに装着されていない状態において、シール部材25の軸線を含む平面に沿ってシール部材25を切断して得られる断面は、例えば、円、楕円、又は角を有する平面である。角を有する平面は、多角形であってもよいし、曲線と直線とが組み合わせられた図形であってもよい。シール部材25は、環状の内部空間を有する中空構造を有していてもよい。
【0034】
シール部材25の材料は、所望のシール性を発揮できる限り、特定の材料に限定されない。例えば、支持部23及び突出部24の材料として例示した材料をシール部材25の材料として使用できる。シール部材25は、典型的には、通気構造1aにおいて弾性変形可能な弾性体であり、シール部材25の材料は、天然ゴム、合成ゴム、又は熱可塑性エラストマー等のエラストマーでありうる。
【0035】
図1に示す通り、通気部品20aは、例えば、キャップ27をさらに備えている。キャップ27は、支持部23に連結されている。キャップ27は、通気膜22を覆うとともに通気膜22との間に通気部品20aの外部空間に連通している空間27sを形成する。空間27sは、通気路21の一部をなしている。これにより、通気膜22が適切に保護される。また、取付孔11の軸線A1に沿って水の高圧噴射がなされても、シール部材25が高圧噴射された水を受けることを防止できる。
【0036】
支持部23及びキャップ27の少なくとも一方は、空間27sの外周に配置された側壁を有していてもよい。側壁は、周方向に所定の間隔で離れて配置された複数の側壁を含みうる。支持部23及びキャップ27のそれぞれは、周方向に所定の間隔で離れて配置された複数の側壁を有していてもよい。この場合、支持部23が有する側壁とキャップ27が有する側壁とが周方向において部分的に重なっていてもよい。これにより、取付孔11の軸線A1に垂直な方向に水が高圧噴射されても、空間27sに水が侵入しにくい。
【0037】
通気構造1aは、様々な観点から変更可能である、例えば、通気構造1aは、図3に示す通気構造1b、図4に示す通気構造1c、図5に示す通気構造1d、図6に示す通気構造1e、又は図7に示す通気構造1fのように変更されてもよい。通気構造1b~1fは、特に説明する部分を除き、通気構造1aと同様に構成されている。通気構造1aの構成要素と同一又は対応する通気構造1b~1fの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。通気構造1aに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、通気構造1b~1fにも当てはまる。
【0038】
図3に示す通り、通気構造1bは、筐体10aに代えて、筐体10bを備えている。筐体10bは、特に説明する部分を除き、筐体10aと同様に構成されている。筐体10bにおいて、第一面12は、取付孔11において筐体10bの内部空間15u側から外部空間15s側に近づくにつれて減少する孔径を有するテーパーを形成する。このテーパーにより、例えば、円錐台状の空間が形成されている。このような構成によれば、通気構造1bにおいて環境条件の変化が起こっても、通気部品20aが取付孔11の軸線A1に沿って筐体10bから外れる方向に移動しにくい。その結果、シール部材25と、第一面12及び突出部24との接触面積が減少しにくく、通気構造1aにおいて環境条件の変化が起こっても良好なシール性能が実現されやすい。
【0039】
筐体10bに通気部品20aが装着されていない状態で、第一面12のテーパーによって形成された空間は、筐体10bの外部空間15sに接している。
【0040】
図4に示す通り、通気構造1cは、通気部品20aに代えて、通気部品20bを備えている。通気部品20bは、特に説明する部分を除き、通気部品20aと同様に構成されている。通気構造1cにおいて、シール部材25は、第一面12よりも筐体10aの外部空間に突出している部分25pを含む。このような構成によれば、取付孔11の内部に塩水等が溜まることを防止でき、筐体10aの腐食を防止できる。
【0041】
図5に示す通り、通気構造1dは、通気部品20aに代えて、通気部品20cを備えている。通気部品20cは、特に説明する部分を除き、通気部品20aと同様に構成されている。通気部品20cにおいて、突出部24は、フランジ24fを有する。フランジ24fは、シール部材25よりも筐体10aの内部空間15uに近い位置で第一面12に向かって突出している。このような構成によれば、突出部24が高い強度を有しやすい。フランジ24fの外径は、例えば、柱状の空間11cにおける取付孔11の孔径よりも小さい。
【0042】
フランジ24fは、例えば、スリット24cよりも支持部23に近い位置に形成されている。
【0043】
図6に示す通り、通気構造1eは、筐体10aに代えて筐体10cを備え、通気部品20aに代えて通気部品20dを備えている。筐体10cは、特に説明する部分を除き筐体10aと同様に構成されている。通気部品20dは、特に説明する部分を除き通気部品10cと同様に構成されている。
【0044】
通気部品20dは、先太部24bを有する。先太部24bは、筐体10cの外部空間15s側から内部空間15u側に近づくにつれて拡大する外径を有する。先太部24bの先端部には、係止部24eが形成されている。このような構成によれば、筐体10cにおける取付孔11の孔径が大きい場合でも、通気膜22に求められるサイズを小さくできる。スリット24cは、例えば、先太部24bに形成されている。
【0045】
図6に示す通り、筐体10cにおいて、取付孔11は第一面12のみによって形成されており、筐体10cは底部13を有しない。通気構造1eによれば、このような場合でも、通気膜22に求められるサイズを小さくできる。
【0046】
図7に示す通り、通気構造1fは、通気部品20aに代えて、通気部品20eを備えている。通気部品20eは、特に説明する部分を除き、通気部品20aと同様に構成されている。通気部品20eにおいて、支持部23における被着面23bは、内部空間15uを向いている。このような構成によれば、通気膜22が内部空間15uに近い位置に配置されるので、通気膜22が保護されやすい。また、通気膜22のサイズを突出部24の内径より小さくできる。
【0047】
通気構造1fにおいて、支持部23及びキャップ27は、例えば、一体的に成形されている。キャップ27は、例えば、平坦な外面を有する。このような構成によれば、キャップ27の平坦な外面を平坦な面に固定して通気膜22を被着面23bに取り付ける作業を行うことができる。このため、通気膜22を被着面23bに取り付ける作業が容易である。
【0048】
図8に示す通気構造1gを提供することもできる。通気構造1gは、特に説明する部分を除き、通気構造1aと同様に構成されている。通気構造1aの構成要素と同一又は対応する通気構造1gの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。通気構造1gに関する説明は、技術的に矛盾しない限り、通気構造1gにも当てはまる。
【0049】
通気構造1gは、筐体10dと、通気部品20fとを備えている。図9に示す通り、筐体10dは、外方に突出した外方突出部17を含む。加えて、筐体10dは、外方突出部17の頂部に形成された取付孔11を有する。通気部品20fは、取付孔11を塞ぐように筐体10dに装着されている。通気部品20fは、筐体10dの内部空間15uと外部空間15sとの間の通気路21を有する。通気部品20fは、環状の支持部23と、通気膜22と、突出部24と、環状の側部28と、シール部材25とを備えている。支持部23は、平面視において通気路21を取り囲む。通気膜22は、通気路21を通気可能に塞いでいる。突出部24は、支持部23から内部空間15uに向かって突出しているとともに取付孔11に挿入されており、筐体10dに接触している。側部28は、平面視において外方突出部17を取り囲む。シール部材25は、外方突出部17の側面17sと側部28との間の隙間をシールする。なお、環状の支持部23は、平面視においてその内周及び外周がなす輪郭が円である円環状であってもよく、その内周及び外周がなす輪郭の少なくとも1つが円以外の平面図形である環状であってもよい。
【0050】
通気構造1gによれば、例えば、シール部材25は、側面17s及び側部28によって取付孔11の軸線A1に垂直な方向に圧縮変形している。このため、環境条件の変化により突出部24の弾性率が低下しても、通気部品20fが取付孔11の軸線A1に沿って筐体10dから外れるように移動しにくく、シール部材25と、側面17s及び側部28との接触面積が減少しにくい。その結果、通気構造1gにおいて環境条件の変化が起こっても良好なシール性能が実現されやすい。シール部材25は、典型的には環状の部材である。
【0051】
筐体10dは外方突出部17を含むので、外方突出部17に塩水等の液体が付着しても液体が速やかに排出され、外方突出部17の周りに液体が溜まることを防止できる。このため、筐体10dの腐食を防止できる。
【0052】
外方突出部17は、例えば、筒状であり、その内部に柱状の空間を形成している。取付孔15は、典型的には、頂部17tの中央に形成されている。頂部17tは、例えば、頂部17tにおける筐体10dの内面14が軸線A1に垂直な環状の平面を有するように形成されている。外方突出部17は、例えば、外方突出部17の根元において筐体10dの内部空間15uに向かって迫り出すように湾曲している。このため、外方突出部17に液体が付着しても液体が速やかに排出されやすい。
【0053】
例えば、筐体10dが搭載された装置、車両、又は設備を洗浄するときに、通気構造1gに向けて取付孔11の軸線A1に垂直な方向に水が高圧噴射されることが想定される。上記の通り、シール部材25は、側面17sと側部28との間をシールする。このため、シール部材25と側面17s及び側部28との間のシール部分は高圧噴射された水を受けにくく、通気構造1gに向けて水が高圧噴射されても、シール部材25が良好なシール性を発揮し、筐体10dの内部空間15uに水が侵入しにくい。側部28は、望ましくは、シール部材25を覆っている。換言すると、取付孔11の軸線A1に垂直な方向に沿って通気構造1gを見たときにシール部材25を視認できない。このような構成によれば、通気構造1gにおいて、より確実に、シール部材25と側面17s及び側部28との間のシール部分は高圧噴射された水を受けにくい。
【0054】
図8に示す通り、側部28は、例えば、支持部23に連結されている。このような構成によれば、側部28が変形しにくく、シール部材25と側部28との接触面積が低下しにくい。側部28は、支持部23と一体的に成形されていてもよく、支持部23に固定されていてもよい。
【0055】
側部28は、例えば、側方突出部28pを有する。側方突出部28pは、外方突出部17に向かって突出している。このような構成によれば、取付孔11の軸線A1に平行な方向におけるシール部材25の位置を所望の位置に調整しやすい。
【0056】
側方突出部28pは、望ましくは、シール部材25に接触している。このような構成によれば、シール部材25と側部28との接触面積が大きくなりやすく、通気構造1gにおけるシール性能がより高まりやすい。
【0057】
突出部24は、例えば、筐体10dに係止される係止部24eを有する。係止部24eは、例えば、筐体10dの内面14に接触している。これにより、通気部品20fが筐体10dから外れにくい。係止部24eは、突出部24の先端部に形成されている。係止部24eは、例えば、スナップフィットにより筐体10dに係止される。突出部24は、例えば、筒状に形成されており、係止部24eは、例えば、突出部24の軸線に垂直な方向に外側に突出している。例えば、突出部24には周方向に1つ以上のスリット24cが形成されている。これにより、突出部24の軸線に垂直な方向に突出部24が弾性変形しやすく、通気部品20fを筐体10dに装着しやすい。係止部24eは、ねじ止めにより筐体10dに係止されてもよく、バヨネットにより筐体10dに係止されてもよい。
【0058】
通気部品20fは、例えば、キャップ27をさらに備えていてもよい。キャップ27は、支持部23に連結されており、通気膜22を覆うとともに通気膜22との間に通気部品20fの外部空間に連通している空間27sを形成する。これにより、通気膜22が適切に保護される。また、取付孔11の軸線A1に沿って水の高圧噴射がなされても、シール部材25が高圧噴射された水を受けることを防止できる。
【0059】
通気部品20fが筐体10dに装着されていない状態において、軸線A1を含む平面に沿ってシール部材25を切断して得られる断面は、特定の形状に限定されない。その断面は、例えば、円、楕円、又は角を有する平面である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9