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特許7602467磁性粒子組成物、磁性粒子組成物の核酸分離用途での使用、磁性粒子組成物を得るためのキット、磁性粒子、カオトロピック塩及び分離精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】磁性粒子組成物、磁性粒子組成物の核酸分離用途での使用、磁性粒子組成物を得るためのキット、磁性粒子、カオトロピック塩及び分離精製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/12 20060101AFI20241211BHJP
   B01D 15/02 20060101ALI20241211BHJP
   B01J 20/06 20060101ALI20241211BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241211BHJP
   B03C 1/00 20060101ALI20241211BHJP
   B03C 1/01 20060101ALI20241211BHJP
   B03C 1/28 20060101ALI20241211BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C01B33/12 A
B01D15/02 102
B01J20/06 A
B01J20/28 Z
B03C1/00 A
B03C1/00 B
B03C1/00 H
B03C1/01
B03C1/28 107
C01B33/18 C
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021546628
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(86)【国際出願番号】 JP2020034009
(87)【国際公開番号】W WO2021054209
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2019170710
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】上田 真澄
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 洸平
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑弥
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151384(JP,A)
【文献】特開2016-158558(JP,A)
【文献】特開2016-090570(JP,A)
【文献】Materials Letters,2012年,Vol. 67,pp. 379-382
【文献】Journal of the American Chemical Society,2006年,Vol. 128,pp. 15582-15583
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
B01D 15/02
B01J 20/06
B01J 20/28
B03C 1/00
B03C 1/01
B03C 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)を有する磁性粒子(c)と、カオトロピック塩(D)とを含み、前記コア粒子(P)が含有する前記磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が、前記コア粒子(P)の重量を基準として、60重量%以上であり、前記磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数が5~50%であり、前記磁性粒子(c)とカオトロピック塩(D)の重量比率(c/D)が2/98~16/84である磁性粒子組成物(e)。
【請求項2】
前記磁性金属酸化物粒子(A)の体積平均粒子径が1~50nmである請求項1に記載の磁性粒子組成物(e)。
【請求項3】
前記磁性金属酸化物粒子(A)が、酸化鉄を含有する請求項1又は2に記載の磁性粒子組成物(e)。
【請求項4】
前記磁性粒子(c)が磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)のみからなる請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子組成物(e)。
【請求項5】
前記磁性粒子(c)が、磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)と、前記コア粒子(P)の表面上に形成された平均厚みが3~3000nmのシリカ層であるシェル層(Q)とを有するコア-シェル型状のコアシェル粒子(C)であり、
コアシェル粒子(C)とカオトロピック塩(D)を含む混合物(E)である請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子組成物(e)。
【請求項6】
前記コアシェル粒子(C)の体積平均粒子径が0.5~20μmである請求項に記載の磁性粒子組成物(e)。
【請求項7】
土壌、環境水、植物又は動物の排泄物からの核酸分離用である請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子組成物(e)。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子組成物(e)の、土壌、環境水、植物又は動物の排泄物からの核酸分離用途での使用。
【請求項9】
磁性粒子組成物(e)を得るためのキット(K)であって、
磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)を有する磁性粒子(c)と、カオトロピック塩(D)の組合せからなり、
前記コア粒子(P)が含有する前記磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が、前記コア粒子(P)の重量を基準として、60重量%以上であり、前記磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数が5~50%であり、前記磁性粒子(c)とカオトロピック塩(D)の重量比率(c/D)が2/98~16/84であり、
前記磁性粒子(c)と前記カオトロピック塩(D)を混合することにより前記磁性粒子組成物(e)を得ることができることを特徴とする、磁性粒子組成物(e)を得るためのキット(K)。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子組成物(e)を用いて、試料(F)中の分離対象物質(G)を分離する分離精製方法。
【請求項11】
前記試料(F)が土壌、環境水、植物又は動物の排泄物であり、分離対象物質(G)が核酸である請求項10に記載の分離精製方法。
【請求項12】
前記分離対象物質(G)が目的物質(G1)であって、前記目的物質(G1)を含む試料(F1)と、請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子組成物(e)とを接触させ、前記磁性粒子(c)と前記目的物質(G1)との複合体(H1)を形成する複合体形成工程と、
磁力で前記複合体(H1)を前記試料(F1)から分離する複合体分離工程と、
解離液(I)を添加することで前記複合体(H1)から前記目的物質(G1)を得る目的物質解離工程と、
を含む、請求項10又は11に記載の分離精製方法。
【請求項13】
前記複合体形成工程において、前記目的物質(G1)を含む試料(F1)と、前記磁性粒子組成物(e)とを、エタノール存在下で接触させる請求項12に記載の分離精製方法。
【請求項14】
前記分離対象物質(G)が非目的物質(G2)であって、目的物質(G1)及び前記非目的物質(G2)を含む試料(F2)と、請求項1~のいずれか1項に記載の磁性粒子組成物(e)とを接触させて、前記磁性粒子(c)と非目的物質(G2)との複合体(H2)を形成させる複合体形成工程と、
磁力で前記複合体(H2)を前記試料(F2)から分離することにより前記試料(F2)から前記非目的物質(G2)を除去し、前記目的物質(G1)を含む前記試料(F3)を得る非目的物質除去工程と、
を含む、請求項10又は11に記載の分離精製方法。
【請求項15】
前記非目的物質(G2)の種類が複数である請求項14に記載の分離精製方法。
【請求項16】
前記分離対象物質(G)が、DNA及びRNAからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1015のいずれか1項に記載の分離精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁性粒子組成物、磁性粒子組成物の核酸分離用途での使用、磁性粒子組成物を得るためのキット、磁性粒子、カオトロピック塩及び分離精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、水中、土壌中及び空気中等あらゆる環境中に生息している生物由来の遺伝子等を試料から分離する方法として、スピンカラム精製が一般的に行われている。しかしながら、スピンクロマトグラフィー法による精製法は、遠心分離を行いながら固相カラムへの分離対象物質の吸着と固相カラムからの抽出とを行う必要がある等の煩雑な工程を必要とするため、例えば農場や畜産場、空港などにおける迅速で簡易な分離精製には適さず、リアルタイムでの分析を行うことができなかった。そのため、分析センターによる大型設備を用いた煩雑な分離精製を余儀なくされ、その結果、分析結果を得るために数日のタイムラグが発生し、例えば農場においては病害菌の繁殖といった現場の状況が悪化する事態が生じる。
【0003】
そこで、磁力によって容易に分離、回収が可能な技術として、磁性シリカ粒子を用いた核酸を精製する技術が開示されている(非特許文献1)。しかし、この方法で得られた核酸は目的の核酸以外の不純物の含有量が多く、生成効率も不十分であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Procedia Environmental Sciences,2013年18巻856-863頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分離対象物質の分離方法に用いることができ、純度の高い精製物をより効率良く得ることができる磁性粒子組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)を有する磁性粒子(c)と、カオトロピック塩(D)とを含み、前記コア粒子(P)が含有する前記磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が、前記コア粒子(P)の重量を基準として、60重量%以上であり、前記磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数が5~50%である磁性粒子組成物(e);前記磁性粒子組成物(e)の、土壌、環境水、植物又は動物の排泄物からの核酸分離用途での使用;前記磁性粒子組成物(e)を得るためのキット(K)であって、磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)を有する磁性粒子(c)と、カオトロピック塩(D)の組合せからなり、前記コア粒子(P)が含有する前記磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が、前記コア粒子(P)の重量を基準として、60重量%以上であり、前記磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数が5~50%であり、前記磁性粒子(c)と前記カオトロピック塩(D)を混合することにより前記磁性粒子組成物(e)を得ることができることを特徴とする、磁性粒子組成物(e)を得るためのキット(K);前記磁性粒子組成物(e)又は前記キット(K)を得るための磁性粒子(c)であって、前記磁性粒子(c)は磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)を有し、前記コア粒子(P)が含有する前記磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が、前記コア粒子(P)の重量を基準として、60重量%以上であり、前記磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数が5~50%であることを特徴とする、磁性粒子(c);前記磁性粒子組成物(e)又は前記キット(K)を得るためのカオトロピック塩(D);前記磁性粒子組成物(e)を用いて、試料(F)中の分離対象物質(G)を分離する分離精製方法、に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の磁性粒子組成物を用いて、分離対象物質を含有する試料を分離することで、試料中から純度の高い精製物を効率良く得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[磁性粒子組成物]
本発明の磁性粒子組成物は、磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)を有する磁性粒子(c)と、カオトロピック塩(D)とを含み、前記コア粒子(P)が含有する前記磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が、前記コア粒子(P)の重量を基準として、60重量%以上であり、前記磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数が5~50%である磁性粒子組成物(e)である。
【0009】
磁性粒子(c)は、後に詳述する本発明の分離方法[試料(F)中の分離対象物質(G)を分離する物質の分離方法]の使用に適している。本発明における分離対象物質(G)とは、試料(F)中に含まれる複数の物質(生物由来の物質等)の混合物中の目的物質(G1)又は非目的物質(G2)を意味する。
また、磁性粒子(c)は、後に詳述する本発明の磁性粒子組成物(e)の核酸分離用途での使用にも適している。
【0010】
目的物質(G1)とは、最終的に、試料(F)から精製した物として得たい物質を意味する。
【0011】
非目的物質(G2)とは、最終的に、試料(F)から除去したい物質を意味する。
【0012】
ここで、本発明における試料(F)としては、環境中の生物由来の試料[土壌、海水、植物又は動物の排泄物、生体体液(血清、血液、リンパ液、腹水及び尿等)、各種細胞類及び培養液等]を始め、後に詳述する目的物質(G1)及び/又は非目的物質(G2)を含有する混合物等が挙げられる。
また、試料(F)が土壌、環境水、植物又は動物の排泄物であってもよい。
環境水は、河川、湖沼、湿地、海域及び地下水等を構成する水を含む概念である。
また、試料(F)が微生物を含んでいてもよい。
【0013】
本発明における磁性粒子(c)は、磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)を有する。コア粒子(P)は磁性酸化物粒子(A)を含有する粒子である。コア粒子(P)は、磁性酸化物粒子(A)を含んでいれば他の成分を含んでいてもよい。
本発明における磁性粒子(c)は、磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)のみからなる粒子であってもよい。
なお、本明細書におけるコア粒子(P)は、本願が優先権主張の基礎とする出願である日本特許出願番号特願2019-170710に記載されたコア層(P)と同じである。
【0014】
本発明における磁性金属酸化物粒子(A)は、フェリ磁性、強磁性、又は超常磁性であってよい。上記の中でも、磁気分離後に残留磁化が残らず迅速に再分散させることが可能な超常磁性が好ましい。ここで超常磁性とは、外部磁場の存在下で物質の個々の原子磁気モーメントが整列し誘発された一時的な磁場を示し、外部磁場を取り除くと、部分的な整列が損なわれ磁場を示さなくなることをいう。
【0015】
前記の磁性金属酸化物粒子(A)としては、鉄、コバルト、ニッケル及びこれらの合金等の酸化物が挙げられるが、磁界に対する感応性が優れていることから、酸化鉄が特に好ましい。磁性金属酸化物粒子(A)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0016】
磁性金属酸化物粒子(A)に用いられる酸化鉄としては、公知の種々の酸化鉄を用いることができる。酸化鉄の内、特に化学的な安定性に優れることから、マグネタイト、γ-ヘマタイト、マグネタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄及びγ-ヘマタイト-α-ヘマタイト中間酸化鉄が好ましく、大きな飽和磁化を有し、外部磁場に対する感応性が優れていることから、マグネタイトが更に好ましい。
【0017】
磁性金属酸化物粒子(A)は、体積平均粒子径が1~50nmであることが好ましく、更に好ましくは1~30nmであり、特に好ましくは1~20nmである。前記磁性金属酸化物粒子(A)の体積平均粒子径が1nm以上の場合は磁性金属酸化物粒子(A)の合成が容易である。
【0018】
本明細書における磁性金属酸化物粒子(A)の体積平均粒子径は、任意の200個の磁性金属酸化物粒子(A)について走査型電子顕微鏡(例えば、日本電子株式会社製「JSM-7000F」)で観察して測定された粒子径の体積平均値である。
磁性金属酸化物粒子(A)の体積平均粒子径は、後述の磁性金属酸化物粒子(A)作製時の金属イオン濃度を調節することにより制御することができる。また、分級等の方法によっても磁性金属酸化物粒子(A)の体積平均粒子径を所望の値にすることができる。
【0019】
本発明の磁性粒子組成物では、コア粒子(P)が含有する磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が、コア粒子(P)の重量を基準として、60重量%以上である。
コア粒子(P)の重量に基づく磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合の下限は、60重量%、好ましくは65重量%であり、上限は好ましくは95重量%、より好ましくは80重量%である。
磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が60重量%未満の場合、得られた磁性粒子(c)の磁性が十分でないため、実際の用途面における分離操作に時間がかかる。また、磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が95重量%を超える場合、その合成が困難となることがある。
【0020】
磁性金属酸化物粒子(A)の製造方法は、特に限定されないが、Massartにより報告されたものをベースとして水溶性鉄塩及びアンモニアを用いる共沈殿法(R.Massart,IEEE Trans.Magn.1981,17,1247)、及び、水溶性鉄塩の水溶液中の酸化反応を用いた方法等により合成することができる。
【0021】
磁性粒子(c)の体積平均粒子径は、好ましくは0.5~20μm、更に好ましくは1~10μm、特に好ましくは1.1~5μmである。
磁性粒子(c)の体積平均粒子径が0.5μm以上の場合、分離回収の際の時間を短縮できる傾向にある。また、磁性粒子(c)の平均粒子径が20μm以下の場合、比表面積を比較的大きくできるため、分離対象物質(G)の分離量を多くすることができ、結合効率が増加する傾向にある。
更に、磁性粒子(c)の体積平均粒子径が1.1μm以上であり、かつ後に詳述する磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数が21~35%の場合は、分離対象物質(G)の分離性が向上する。
本明細書における「分離性」について、分離対象物質(G)が、目的物質(G1)である場合と、分離対象物質(G)が非目的物質(G2)である場合に、場合分けして説明する。
分離対象物質(G)が目的物質(G1)である場合、「分離性が向上する」とは、試料(F)から磁性粒子(c)を用いて抽出した成分中の目的物質(G1)の純度(割合)が高くなることを意味する。
また、分離対象物質(G)が非目的物質(G2)である場合、「分離性が向上する」とは、試料(F)から磁性粒子(c)を用いて非目的物質(G2)を除外した後の成分中の非目的物質(G2)の割合が低くなることを意味する。
【0022】
本発明における磁性粒子(c)の体積平均粒子径は、例えばレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT3300」)で測定して得られる体積平均粒子径である。
【0023】
磁性粒子(c)の体積平均粒子径は、製造時の水洗工程の条件変更及び分級等の方法によって所望の値とすることができる。
【0024】
本発明の磁性粒子組成物では、磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数が5~50%である。
変動係数が50%を超えると、分離対象物質(G)の分離性が悪化する。
また分離対象物質(G)の分離性を更に高める観点から、磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数の下限は、5%以上であり、好ましくは13%以上であり、更に好ましくは20%以上であり、特に好ましくは21%以上である。
また、分離対象物質(G)の分離性を更に高める観点から、磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数の上限は、35%以下であることが好ましい。
磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数は、下記測定方法により測定することができる。
<変動係数の測定方法>
本発明における変動係数は、例えばレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT3300」)で測定して得られる体積平均粒子径(d)と標準偏差(SD)とを数式(1)に当てはめることにより得られる値である。体積平均粒子径(d)はnm~μmオーダーの大きさである。
変動係数(%)=SD/d×100 (1)
【0025】
磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数は、磁性粒子(c)を分級してその変動係数を調整することができる。
例えば、粒子径が比較的大きい磁性粒子(c)は、遠心分離により沈降させることで、除去することができる。また、粒子径が比較的小さい磁性粒子(c)は、遠心分離後、沈降しなかった微粒子が存在している上澄み液を取り除くことで、除去できる。
【0026】
本発明の磁性粒子組成物は、磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性粒子(c)と、カオトロピック塩(D)とを含む。磁性粒子(c)とカオトロピック塩(D)を含むことにより、純度の高い精製物を効率良く得ることができる。
【0027】
磁性粒子(c)は、分離対象物質(G)をその表面に結合させることができる。例えば、磁性粒子(c)と、分離対象物質(G)であるDNAのヌクレオチド鎖との錯体を、カオトロピック塩(D)である(グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン塩酸塩及び過塩素酸ナトリウム等)を介して結合させることができる。
【0028】
本発明におけるカオトロピック塩(D)とは、磁性粒子の表面とDNA等の核酸物質との間に存在する水分子の相互作用を減少させ、結合状態を不安定化させるために用いる物質である。すなわち、水のエントロピーを増大させる溶質を指す。カオトロピック塩(D)を用いることで、磁性粒子の表面と核酸物質との水和状態から水分子を引き抜き、磁性粒子の表面にDNAを吸着させることができる。
【0029】
磁性粒子(c)と、カオトロピック塩(D)との重量比率(c/D)は、核酸物質の純度を高める観点から2/98~16/84であることが好ましく、更に好ましくは2/98~10/90である。
【0030】
前記カオトロピック塩(D)としては、「ホフマイスターシリーズ」から選択されるものを用いることができる。ホフマイスターシリーズとは、タンパク質を塩析させる能力が大きな順番にイオンを並べたものであり、離液系列とも呼ばれる。カオトロピックアニオンの例は、NO 、ClO 、SCN及びNCS等が挙げられる。カオトロピックカチオンの例は、強力なカオトロピックカチオンの例はNa、Ba2+及びグアニジンカチオンである。好ましいカオトロピック塩(D)は、前記アニオン、カチオンの組み合わせから構成される塩であって、グアニジンチオシアネート、グアニジンイソチオシアネート、グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン塩酸塩、過塩素酸ナトリウム、チオシアン酸グアニジン及びヨウ化ナトリウム等が挙げられる。これらの中で核酸物質の収率の観点からグアニジンチオシアン酸塩を用いることが好ましい。
【0031】
ここで、分離対象物質(G)が、磁性粒子(c)と直接結合しない場合には、磁性粒子(c)の表面に、分離対象物質(G)と結合する物質(J)を固定化してもよい。前記物質(J)を表面に固定化することにより、分離対象物質(G)を、物質(J)を介して磁性粒子(c)に結合させることができる。以下、このように物質(J)が表面に固定化された磁性粒子を、「磁性粒子(c1)」とも記載する。
また、分離対象物質(G)は、目的物質(G1)又は非目的物質(G2)であってもよく、物質(J)は、目的物質(G1)又は非目的物質(G2)と結合する物質であれば特に限定されない。
物質(J)と、分離対象物質(G)との結合は特異的であっても非特異的であってもよいが、分離対象物質(G)と物質(J)との結合は特異的であることが好ましい。
分離対象物質(G)と物質(J)との結合は特異的である場合、本発明の磁性粒子(c)を用いた分離精製方法において、分離対象物質(G)の分離性が向上する。
【0032】
分離対象物質(G)と特異的に結合する物質(J)としては、例えば「遺伝子」-「遺伝子」間反応等の相互反応によって分離対象物質(G)と結合するもの等が挙げられる。
上記各組合せにおいて何れか一方が分離対象物質(G)である場合、他の一方が分離対象物質(G)と特異的に結合する物質(J)である。
例えば、分離対象物質(G)が「遺伝子」であるときは、物質(J)は「遺伝子」である。
【0033】
本発明の磁性粒子組成物は、土壌、環境水、植物又は動物の排泄物からの核酸分離用であることが好ましい。これまで、土壌、環境水、植物又は動物の排泄物から核酸を分離するために、本発明の磁性粒子組成物を使用することは知られておらず、本発明の磁性粒子組成物がこのような用途に適しているということの示唆もされていなかった。
【0034】
また、土壌、環境水、植物又は動物の排泄物からの核酸分離用途での使用は、本発明に含まれる。
【0035】
本発明の磁性粒子組成物は、前記磁性粒子(c)が、磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)と、前記コア粒子(P)の表面上に形成された平均厚みが3~3000nmのシリカ層であるシェル層(Q)とを有するコア-シェル型状のコアシェル粒子(C)であり、コアシェル粒子(C)とカオトロピック塩(D)を含む混合物(E)であることが好ましい。
以下には、本発明の磁性粒子組成物の実施形態の一例として、磁性粒子(c)がコアシェル粒子(C)であり、磁性粒子組成物(e)がコアシェル粒子(C)とカオトロピック塩(D)の混合物(E)である場合について説明する。
【0036】
混合物(E)は、コアシェル粒子(C)と、カオトロピック塩(D)とを含む混合物である。
【0037】
前記コアシェル粒子(C)は、磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)と、前記コア粒子(P)の表面上に形成された平均厚みが3~3000nmのシリカ層であるシェル層(Q)とを有するコア-シェル型状のコアシェル粒子である。
また、前記コア粒子(P)が含有する前記磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が、コア粒子(P)の重量を基準として、60~95重量%である。また、前記コアシェル粒子(C)の粒度分布の変動係数が5~50%である。
【0038】
コアシェル粒子(C)は、後に詳述する本発明の分離精製方法[試料(F)中の分離対象物質(G)を分離する物質の分離方法]の使用に特に適している。本発明における分離対象物質(G)とは、試料(F)中に含まれる複数の物質(生物由来の物質等)の混合物中の目的物質(G1)又は非目的物質(G2)を意味する。
【0039】
目的物質(G1)とは、最終的に、試料(F)から精製した物として得たい物質を意味する。
【0040】
非目的物質(G2)とは、最終的に、試料(F)から除去したい物質を意味する。
【0041】
ここで、試料(F)としては、環境中の生物由来の試料[土壌、海水、植物又は動物の排泄物、生体体液(血清、血液、リンパ液、腹水及び尿等)、各種細胞類及び培養液等]を始め、後に詳述する目的物質(G1)及び/又は非目的物質(G2)を含有する混合物等が挙げられる。
また、試料(F)が土壌、環境水、植物又は動物の排泄物であってもよい。また、試料(F)が微生物を含んでいてもよい。
【0042】
コアシェル粒子(C)は、前述の通り、磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)と、前記コア粒子(P)の表面上に形成された平均厚みが3~3000nmのシリカ層であるシェル層(Q)とを有する。前記のコア粒子(P)は、磁性金属酸化物粒子(A)がシリカのマトリックス中に分散された球体であることが好ましい。シェル層(Q)はシリカ以外の他の成分を含有していてもよい。
【0043】
前記のコア粒子(P)が含有する磁性金属酸化物粒子(A)は、体積平均粒子径が1~50nmであることが好ましく、更に好ましくは1~30nmであり、特に好ましくは1~20nmである。前記の磁性金属酸化物粒子(A)の体積平均粒子径が1nm以上の場合は磁性金属酸化物粒子(A)の合成が容易であり、体積平均粒子径が50nm以下の場合はシリカのマトリックスに均一に分散させることが容易である。
【0044】
本発明におけるコア粒子(P)の重量に基づく磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合の下限は、60重量%、好ましくは65重量%であり、上限は95重量%、好ましくは80重量%である。
磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が60重量%未満の場合、得られたコアシェル粒子(C)の磁性が十分でないため、実際の用途面における分離操作に時間がかかる。また、磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が95重量%を超える場合、その合成が困難である。
【0045】
コアシェル粒子(C)は、前述の通り、コア-シェル形状の粒子であり、コア粒子(P)の表面上にシェル層(Q)が形成されている。
【0046】
シェル層(Q)の平均厚みは、コアシェル粒子(C)を樹脂(エポキシ樹脂等)に包埋してミクロトームで切断した断面を、透過型電子顕微鏡で観察して得られる像の画像解析から測定することが出来る。シェル層(Q)の平均厚みとは、透過型電子顕微鏡(例えば(株)日立製作所製「H-7100」)で観察して測定された任意の100個のコアシェル粒子(C)のシェル層(Q)の厚みの平均値である。シェル層(Q)の厚みとは、1個のコアシェル粒子(C)における膜厚が最も薄い部分と最も厚い部分の平均値であり、100個の粒子について同様の方法にしたがって、各粒子のシェル層(Q)の厚みの平均値を求め、更に100個の粒子の平均値を算出することで求められる。
【0047】
シェル層(Q)の平均厚みは、3~3000nmであり、好ましくは10~800nmであり、更に好ましくは50~800nmであり、特に好ましくは50~500nmであり、最も好ましくは50~200nmである。平均厚みが3nm未満の場合、シェル層(Q)が形成されていることの効果が得られず分離対象物質(G)の分離量が低下し、平均厚みが3000nmを超えるものは合成が困難である。
【0048】
シェル層(Q)とコア粒子(P)は上述の透過型電子顕微鏡で観察して得られる像の画像解析から判別が困難な場合がある。
磁性金属酸化物粒子を含有する本願発明の粒子は、目的物質又は非目的物質と複合体を形成することで分離精製に用いることができ、前記粒子表面にシラノール基を適度に有していればよく、粒子表面の全原子に対する磁性金属酸化物粒子(A)由来の金属原子が10mol%以下であることが好ましい。前記比率(mol%)は、X線光電子分光分析(XPS法)で測定することができる。
【0049】
コアシェル粒子(C)の体積平均粒子径は、好ましくは0.5~20μm、更に好ましくは1~10μm、特に好ましくは1.1~5μmである。
コアシェル粒子(C)の体積平均粒子径が0.5μm以上の場合、分離回収の際の時間を短縮できる傾向にある。また、コアシェル粒子(C)の平均粒子径が20μm以下の場合、比表面積を比較的大きくできるため、分離対象物質(G)の分離量を多くすることができ、結合効率が増加する傾向にある。
更に、コアシェル粒子(C)の体積平均粒子径が1.1μm以上であり、かつ後に詳述するコアシェル粒子(C)の粒度分布の変動係数が21~35%の場合は、分離対象物質(G)の分離性が向上する。
【0050】
コアシェル粒子(C)の体積平均粒子径は、例えばレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT3300」)で測定して得られる体積平均粒子径である。
【0051】
コアシェル粒子(C)の体積平均粒子径は、コア粒子(P)の体積平均粒子径とシェル層(Q)の平均厚みを制御することにより制御することができる。コア粒子(P)の体積平均粒子径は、後述の水中油型エマルションを作製する際の混合条件(せん断力等)を調節して水中油型エマルションの粒子径を調整することにより制御することができ、シェル層(Q)の平均厚みは、後述のシェル層(Q)形成時の(アルキル)アルコキシシランの量、触媒量及び反応時間等を調節することにより制御することができる。
また、コア粒子(P)及びコアシェル粒子(C)の体積平均粒子径は、製造時の水洗工程の条件変更及び分級等の方法によっても所望の値とすることができる。
【0052】
本発明において、コアシェル粒子(C)の粒度分布の変動係数は、前述の通り、50%以下である。変動係数が50%を超えると、分離対象物質(G)の分離性が悪化する。
また分離対象物質(G)の分離性を更に高める観点から、コアシェル粒子(C)の粒度分布の変動係数の下限は、5%以上であり、好ましくは13%以上であり、更に好ましくは20%以上であり、特に好ましくは21%以上である。
また、分離対象物質(G)の分離性を更に高める観点から、コアシェル粒子(C)の粒度分布の変動係数の上限は、35%以下であることが好ましい。
コアシェル粒子(C)の粒度分布の変動係数は、下記測定方法により測定することができる。
<変動係数の測定方法>
本発明における変動係数は、例えばレーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT3300」)で測定して得られる体積平均粒子径(d)と標準偏差(SD)とを数式(1)に当てはめることにより得られる値である。体積平均粒子径(d)はnm~μmオーダーの大きさである。
変動係数(%)=SD/d×100 (1)
【0053】
コアシェル粒子(C)の粒度分布の変動係数は、コアシェル粒子を分級してその変動係数を調整することができる。
例えば、粒子径が比較的大きいコアシェル粒子は、遠心分離により沈降させることで、除去することができる。また、粒子径が比較的小さいコアシェル粒子は、遠心分離後、沈降しなかった微粒子が存在している上澄み液を取り除くことで、除去できる。
【0054】
本発明のコアシェル粒子(C)におけるシェル層(Q)の平均厚みと、コア粒子(P)の粒子径との比率[シェル層(Q)の平均厚み/コア粒子(P)の粒子径]は、0.001~10であることが好ましく、更に好ましくは0.02~1.5であり、特に好ましくは0.04~1.5である。
上記の比率が0.001以上の場合、分離対象物質(G)の分離性が向上する。また、上記の比率が10以下の場合、分離対象物質(G)の分離性が向上する。ここで、上記の比率の計算において、シェル層(Q)の平均厚みは上記で説明した方法により求めた値を用いる。また、上記の比率の計算において、コア粒子(P)の粒子径は、上記で説明した「コアシェル粒子(C)の体積平均粒子径」及び「シェル層(Q)の平均厚み」の値を用いて、以下の計算式により求めることができる。
コア粒子(P)の粒子径=コアシェル粒子(C)の体積平均粒子径-2×シェル層(Q)の平均厚み
【0055】
また、コアシェル粒子(C)におけるシェル層(Q)の平均厚みと、コア粒子(P)の粒子径との比率[シェル層(Q)の平均厚み/コア粒子(P)の粒子径]が、0.02~1.5であり、かつ、コアシェル粒子(C)の粒度分布の変動係数が21~35%である場合は、分離対象物質(G)の分離性が大きく向上する。
【0056】
本発明におけるコアシェル粒子(C)は、シリカ層であるシェル層(Q)を有するため、粒子の表面にシラノール基を有する。このため、所定種類の分離対象物質(G)をその表面に結合することができる。
【0057】
前記のコアシェル粒子(C)は、前述の通り、コアシェル粒子(C)が有するシラノール基により、分離対象物質(G)をその表面に結合させることができる。具体的には、コアシェル粒子(C)が有するシラノール基と、分離対象物質(G)であるDNAのヌクレオチド鎖との錯体を、カオトロピック塩(D)である(グアニジンチオシアン酸塩、グアニジン塩酸塩及び過塩素酸ナトリウム等)を介して結合させる方法等が挙げられる。
【0058】
分離対象物質(G)が、コアシェル粒子(C)と直接結合しない場合には、コアシェル粒子(C)の表面に、分離対象物質(G)と結合する物質(J)を固定化してもよい。前記物質(J)を表面に固定化することにより、分離対象物質(G)を、物質(J)を介してコアシェル粒子(C)に結合させることができる。以下、このように物質(J)が表面に固定化されたコアシェル粒子を、「コアシェル粒子(C1)」とも記載する。
また、分離対象物質(G)は、目的物質(G1)又は非目的物質(G2)であってもよく、物質(J)は、目的物質(G1)又は非目的物質(G2)と結合する物質であれば特に限定されない。
物質(J)と、分離対象物質(G)との結合は特異的であっても非特異的であってもよいが、分離対象物質(G)と物質(J)との結合は特異的であることが好ましい。
分離対象物質(G)と物質(J)との結合は特異的である場合、本発明のコアシェル粒子(C)を用いた分離精製方法において、分離対象物質(G)の分離性が向上する。
【0059】
分離対象物質(G)と特異的に結合する物質(J)としては、例えば「遺伝子」-「遺伝子」間反応等の相互反応によって分離対象物質(G)と結合するもの等が挙げられる。
上記各組合せにおいて何れか一方が分離対象物質(G)である場合、他の一方が分離対象物質(G)と特異的に結合する物質(J)である。
例えば、分離対象物質(G)が「遺伝子」であるときは、物質(J)は「遺伝子」である。
【0060】
次に、本発明における磁性粒子(c)の製造方法につき、磁性粒子(c)としてコアシェル粒子(C)を製造する方法を代表例として説明する。コアシェル粒子(C)は、以下の2工程を少なくとも経る製造方法により製造できる。
(工程1)磁性金属酸化物粒子(A)を含有する(アルキル)アルコキシシランの水中油型エマルションを作製して、(アルキル)アルコキシシランの加水分解重縮合反応を行い、磁性金属酸化物粒子(A)がシリカに包含されたコア粒子(P)を製造する工程。
(工程2)コア粒子(P)の表面にて(アルキル)アルコキシシランを加水分解重縮合反応させ、シェル層(Q)を形成する工程。
以下、上記の工程について説明する。
【0061】
まず、工程1について説明する。
コア粒子(P)の製造方法としては、磁性金属酸化物粒子(A)及び前記磁性金属酸化物粒子(A)の重量に基づいて30~1000重量%の(アルキル)アルコキシシランを含有する分散液(B1)(以下、単に「分散液(B1)」とも記載する)と、水、非イオン性界面活性剤及び(アルキル)アルコキシシランの加水分解用触媒を含有する溶液(B2)(以下、単に「溶液(B2)」とも記載する)とを混合して、水中油型エマルションを作製し、(アルキル)アルコキシシランの加水分解重縮合反応を行い、磁性金属酸化物粒子(A)がシリカに包含された粒子を製造する方法等が挙げられる。
(アルキル)アルコキシシランの加水分解重縮合反応後、遠心分離及び磁石等を用いて固液分離することによりコア粒子(P)が得られる。
上記及び以下において、(アルキル)アルコキシシランとは、アルキルアルコキシシラン及び/又はアルコキシシランを意味する。
【0062】
使用する(アルキル)アルコキシシランとしては、下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
1(4-n)Si(OR)n (1)
一般式(1)中、R及びRは、炭素数1~10の1価の炭化水素基を表す。また、当該炭化水素基の水素の一部は、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、メルカプト基又はグリシジルオキシ基で置換されていてもよい。
【0063】
炭素数1~10の1価の炭化水素基としては、炭素数1~10の脂肪族炭化水素基(メチル基、エチル基、n-又はiso-プロピル基、n-又はiso-ブチル基、n-又はiso-ペンチル基及びビニル基等)、炭素数6~10の芳香族炭化水素基(フェニル基等)及び炭素数7~10の芳香脂肪族基(ベンジル基等)等が挙げられる。
【0064】
一般式(1)におけるnは1~4の整数を表す。但し、nが1のアルキルアルコキシシランを用いる場合は、nが2~4の(アルキル)アルコキシシランと併用する必要がある。反応後の粒子の強度及び粒子表面のシラノール基の量の観点からnは4であることが好ましい。
【0065】
一般式(1)で表される化合物の具体例としては、アルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン及びテトラブトキシシラン等);アルキルアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン及びメチルトリエトキシシラン等);アミノ基で置換されたアルキル基を有するアルキルアルコキシシラン[3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等];カルボキシル基で置換されたアルキル基を有するアルキルアルコキシシラン(7-カルボキシヘプチルトリエトキシシラン及び5-カルボキシペンチルトリエトキシシラン等);水酸基で置換されたアルキル基を有するアルキルアルコキシシラン(3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン及び3-ヒドロキシプロピルエトキシシラン等);メルカプト基で置換されたアルキル基を有するアルキルアルコキシシラン(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等);グリシジルオキシ基で置換されたアルキル基を有するアルキルアルコキシシラン(3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン等)等が挙げられる。
(アルキル)アルコキシシランは、1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0066】
(アルキル)アルコキシシランの使用量は、磁性金属酸化物粒子(A)の重量に対して、30~1,000重量%であることが好ましく、更に好ましくは40~500重量%である。(アルキル)アルコキシシランの使用量が、磁性金属酸化物粒子(A)の重量に対して30重量%以上の場合、磁性金属酸化物粒子(A)の表面が均一に被覆されやすくなる。また、(アルキル)アルコキシシランの使用量が磁性金属酸化物粒子(A)の重量に対して、1000重量%以下の場合、磁力による回収時間を短縮できる。
【0067】
水の使用量は、磁性金属酸化物粒子(A)の重量に対して500~50,000重量%であることが好ましく、1,000~10,000重量%であることが更に好ましい。
【0068】
更に、コア粒子(P)の合成において、溶液(B2)等に水溶性有機溶媒等を含有させてもよい。
前記の水溶性有機溶媒としては、25℃における水への溶解度が100g/水100g以上である、炭素数1~4の1価のアルコール(メタノール、エタノール及びn-又はiso-プロパノール等)、炭素数2~9のグリコール(エチレングリコール及びジエチレングリコール等)、アミド(N-メチルピロリドン等)、ケトン(アセトン等)、環状エーテル(テトラヒドロフラン及びテトラヒドロピラン等)、ラクトン(γ-ブチロラクトン等)、スルホキシド(ジメチルスルホキシド等)及びニトリル(アセトニトリル等)等が挙げられる。
これらの内、コアシェル粒子(C)の粒子径の均一性の観点から、炭素数1~4の1価のアルコールが好ましい。水溶性有機溶媒は、1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0069】
水溶性有機溶媒の使用量は、水の重量に対して、100~500重量%であることが好ましい。
【0070】
前記の非イオン性界面活性剤としては、炭素数8~24の1価のアルコール(デシルアルコール、ドデシルアルコール、ヤシ油アルキルアルコール、オクタデシルアルコール及びオレイルアルコール等)のアルキレンオキサイド(以下、アルキレンオキサイドをAOと略記)付加物;炭素数3~36の2~8価のアルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビット及びソルビタン等)のAO付加物;炭素数6~24のアルキルを有するアルキルフェノール(オクチルフェノール及びノニルフェノール等)のAO付加物;ポリプロピレングリコールのエチレンオキサイド付加物及びポリエチレングリコールのプロピレンオキサイド付加物;炭素数8~24の脂肪酸(デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸及びヤシ油脂肪酸等)のAO付加物;前記の3~36の2~8価のアルコールの脂肪酸エステル及びそのAO付加物[TWEEN(登録商標)20及びTWEEN(登録商標)80等];アルキルグルコシド(N-オクチル-β-D-マルトシド、n-ドデカノイルスクロース及びn-オクチル-β-D-グルコピラノシド等);並びに、ショ糖の脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド及びこれらのAO付加物(ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド等)等が挙げられる。
これらは、1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。前記の非イオン性界面活性剤の説明におけるAOとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等が挙げられ、その付加形式はブロック付加であってもランダム付加であってもよい。また、AOの付加モル数としては、アルコール、フェノール又は脂肪酸1モルあたり、1~50モルであることが好ましく、1~20モルであることが更に好ましい。
【0071】
これらの非イオン性界面活性剤の内、水への溶解度及び粘度の観点から、炭素数8~24の1価のアルコールのエチレンオキサイド1~50モル(好ましくは1~20モル)付加物(ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルケニルエーテル等)であることが好ましい。
また、これらの非イオン性界面活性剤の内、最終的に得られたコアシェル粒子(C)を用いて分離精製した際に、分離対象物質(G)の分離性を高める観点から好ましいのは、炭素数8~24のアルケニル基を有する1価のアルコール(オレイルアルコール等)のエチレンオキサイド1~50モル(好ましくは1~20モル)付加物である。
【0072】
非イオン性界面活性剤の使用量は、磁性金属酸化物粒子(A)の重量に対して、10~1,000重量%であることが好ましく、100~500重量%であることが更に好ましい。非イオン性界面活性剤の使用量が、磁性金属酸化物粒子(A)の重量に対して10重量%以上又は1,000重量%以下であると、エマルションが安定し、生成する粒子の粒度分布が狭くなる傾向がある。
【0073】
工程1で用いる溶液(B2)の使用量は、分散液(B1)が含有する磁性金属酸化物粒子(A)の重量に対して、1,000~10,000重量%であることが好ましく、1,500~4,000重量%であることが更に好ましい。
非イオン性界面活性剤を含む水溶液の使用量が、磁性金属酸化物粒子(A)の重量に対して1,000重量%以上又は10,000重量%以下であると、エマルションが安定し、生成する粒子の粒度分布が狭くなる傾向がある。
【0074】
前記の(アルキル)アルコキシシランの加水分解用触媒としては、ルイス酸及び塩酸等を用いることができ、具体的には、無機酸(塩酸等)、有機酸(酢酸等)、無機塩基化合物(アンモニア等)及びアミン化合物(エタノールアミン等)等を用いることができる。加水分解用触媒の使用量は、(アルキル)アルコキシシランの重量に対して、1~1000重量%であることが好ましく、2~500重量%であることが更に好ましい。
【0075】
前記の分散液(B1)と溶液(B2)との混合方法は特に限定されず、後述の設備を使用して一括混合することもできるが、コアシェル粒子(C)の粒子径の均一性の観点から、溶液(B2)を撹拌しながら分散液(B1)を滴下する方法が好ましい。
【0076】
分散液(B1)と溶液(B2)とを混合する際の設備としては、一般に乳化機、分散機として市販されているものであれば特に限定されず、例えば、ホモジナイザー(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)及びTKオートホモミキサー(プライミクス(株)製)等のバッチ式乳化機、エバラマイルダー((株)在原製作所製)、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー(プライミクス(株)製)、コロイドミル((株)神鋼環境ソリューション製)、クリアミックス(エムテクニック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(日本コークス工業(株)製)、キャピトロン((株)ユーロテック製)及びファインフローミル(太平洋機工(株)製)等の連続式乳化機、マイクロフルイダイザー(みづほ工業(株)製)、ナノマイザー(ナノマイザー(株)製)及びAPVガウリン(ガウリン社製)等の高圧乳化機、膜乳化機(冷化工業(株)製)等の膜乳化機、バイブロミキサー(冷化工業(株)製)等の振動式乳化機、超音波ホモジナイザー(ブランソン社製)等の超音波乳化機等が挙げられる。
これらの内、粒子径の均一化の観点から、APVガウリン、ホモジナイザー、TKオートホモミキサー、エバラマイルダー、TKフィルミックス、TKパイプラインホモミキサー及びクリアミックス(エムテクニック社製)が好ましい。
【0077】
(アルキル)アルコキシシランの加水分解重縮合反応の温度は、10~100℃であることが好ましく、更に好ましくは25~60℃である。また、反応時間は、好ましくは0.5~5時間、更に好ましくは1~2時間である。
【0078】
次に、工程2について説明する。シェル層(Q)の形成方法としては、工程1で得られるコア粒子(P)と、(アルキル)アルコキシシランと、(アルキル)アルコキシシランの加水分解用触媒と、水と、必要であれば、更に水溶性有機溶媒とを混合して、(アルキル)アルコキシシランの加水分解重縮合反応を行い、コア粒子(P)の表面にシリカを含有するシェル層(Q)を形成する方法等が挙げられる。
【0079】
工程2で使用する(アルキル)アルコキシシランとしては、工程1の説明で例示した(アルキル)アルコキシシランが挙げられ、好ましいものも同様である。
【0080】
前記のシェル層(Q)を形成する反応において、コア粒子(P)の濃度は、反応溶液の重量を基準として50重量%未満であることが好ましく、20重量%未満であることが更に好ましい。
コア粒子(P)の濃度が50重量%未満であると、コア粒子(P)が溶液中に均一に分散しシェル層(Q)が均一に形成されやすくなり、シリカを介してコア粒子(P)同士が凝集することも抑制できる。
【0081】
前記のシェル層(Q)を形成する反応において、(アルキル)アルコキシシランの濃度は、反応溶液の重量を基準として50重量%未満であることが好ましく、20重量%未満であることが更に好ましい。
(アルキル)アルコキシシランの濃度が溶液中に50重量%未満であると、シリカを介してコア粒子(P)同士が凝集することを抑制でき、シリカのみからなる粒子、その凝集物及びそれらとコア粒子(P)からなる凝集物の生成も抑制できる。
【0082】
工程2で使用する(アルキル)アルコキシシランの加水分解用触媒としては、工程1の説明で例示した加水分解用触媒を用いることができる。
加水分解用触媒の使用量は、(アルキル)アルコキシシランの重量に対して、1~2000重量%であることが好ましく、2~1000重量%であることが更に好ましい。
【0083】
水の使用量は、反応溶液の重量[反応に用いるコア粒子(P)、(アルキル)アルコキシシラン、加水分解用触媒、水、及び水溶性有機溶媒等の合計重量]に対して、0.01~99.9重量%であることが好ましく、0.1~99.9重量%であることが更に好ましい。
水の使用量が(アルキル)アルコキシシランの重量に対して、0.01重量%以上であると、(アルキル)アルコキシシランの加水分解の反応速度が遅くなりすぎず、所望の平均厚さのシェル層(Q)を形成するための反応時間を短縮することができる。
【0084】
水溶性有機溶媒は用いても、用いなくても良く、用いる場合は1種類を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
水溶性有機溶媒としては、工程1の説明で例示した水溶性有機溶媒が挙げられ、好ましいものも同様である。
【0085】
上記に加えて、反応中のコア粒子(P)の分散性を良くするために、非イオン性界面活性剤等を用いることができる。
非イオン性界面活性剤としては、工程1の説明で例示した非イオン性界面活性剤が挙げられ、好ましいものも同様である。
【0086】
工程2における(アルキル)アルコキシシランの加水分解重縮合反応の温度は、0~90℃であることが好ましく、更に好ましくは15~50℃である。また工程2における(アルキル)アルコキシシランの加水分解重縮合反応の反応時間は、1~5時間であることが好ましく、好ましくは1~3時間である。
【0087】
本発明の磁性粒子(c)として、コアシェル粒子(C)でない磁性粒子を製造する場合は、上述したコアシェル粒子(C)の製造方法のうちの工程1(コア粒子(P)を製造する工程)のみを行い、工程2(シェル層(Q)を製造する工程)を行わないようにする。工程1のみを行うことにより、コアシェル粒子(C)でない磁性粒子(c)が得られる。
【0088】
次に、本発明の磁性粒子組成物(e)を得るためのキットについて説明する。
本発明のキット(K)は、磁性粒子組成物(e)を得るためのキット(K)であって、
磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)を有する磁性粒子(c)と、カオトロピック塩(D)の組合せからなり、
前記コア粒子(P)が含有する前記磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が、前記コア粒子(P)の重量を基準として、60重量%以上であり、前記磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数が5~50%であり、
前記磁性粒子(c)と前記カオトロピック塩(D)を混合することにより前記磁性粒子組成物(e)を得ることができることを特徴とする、磁性粒子組成物(e)を得るためのキット(K)である。
【0089】
キット(K)においては、磁性粒子組成物(e)を得るための磁性粒子(c)とカオトロピック塩(D)が分離した状態で存在している。
磁性粒子組成物(e)を使用する直前に、磁性粒子(c)とカオトロピック塩(D)を混合することによって磁性粒子組成物(e)を得ることができる。
【0090】
また、磁性粒子(c)がコアシェル粒子(C)であることが好ましく、コアシェル粒子(C)とカオトロピック塩(D)を混合することによって混合物(E)を得ることのできるキットであることが好ましい。
【0091】
本発明の磁性粒子(c)は、本発明の磁性粒子組成物(e)又は本発明のキット(K)を得るための磁性粒子(c)であって、
前記磁性粒子(c)は磁性金属酸化物粒子(A)を含有する磁性シリカ粒子であるコア粒子(P)を有し、
前記コア粒子(P)が含有する前記磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合が、前記コア粒子(P)の重量を基準として、60重量%以上であり、前記磁性粒子(c)の粒度分布の変動係数が5~50%であることを特徴とする。
本発明の磁性粒子(c)を用いることで本発明の磁性粒子組成物(e)又は本発明のキット(K)を得ることができる。
また、磁性粒子(c)がコアシェル粒子(C)であることが好ましい。
【0092】
本発明のカオトロピック塩(D)は、本発明の磁性粒子組成物(e)又は本発明のキット(K)を得るためのカオトロピック塩(D)である。
本発明のカオトロピック塩(D)を用いることで本発明の磁性粒子組成物(e)又は本発明のキット(K)を得ることができる。
【0093】
次に、本発明の分離精製方法について説明する。
本発明の分離精製方法は、本発明の磁性粒子組成物(e)を用いて、試料(F)中の分離対象物質(G)を分離する分離精製方法である。
磁性粒子(c)を用いて、試料(F)中の分離対象物質(G)を分離する分離精製方法について、以下に説明する。
本発明の分離精製方法に使用する試料(F)は、土壌、環境水、植物又は動物の排泄物であることが好ましい。本発明の分離精製方法は、このような試料から分離対象物質を分離することに適している。
【0094】
本発明の分離対象物質(G)の分離精製方法の第1の形態は、前記分離対象物質(G)が目的物質(G1)であって、前記目的物質(G1)を含む試料(F1)と、本発明の磁性粒子組成物(e)とを接触させ、前記磁性粒子(c)と前記目的物質(G1)との複合体(H1)を形成する複合体形成工程(1)と、磁力で前記複合体(H1)を前記試料(F1)から分離する複合体分離工程(2)と、解離液(I)を添加することで前記複合体(H1)から前記目的物質(G1)を得る目的物質解離工程(3)とを含む分離精製方法である。
【0095】
(分離精製方法)
本発明の分離精製方法の第1の形態は、分離対象物質(G)が目的物質(G1)であり、目的物質(G1)を含む試料(F1)から目的物質(G1)を抽出・精製する方法である。
本発明の分離精製方法の第1の形態は、(1)複合体形成工程、(2)複合体分離工程、及び、(3)目的物質解離工程を含む。
以下、各工程について説明する。
(1)複合体形成工程
本工程では、目的物質(G1)及び非目的物質(G2)を含む試料(F)と、磁性粒子(c)及びカオトロピック塩(D)を含む磁性粒子組成物(e)とを接触させて、磁性粒子(c)と目的物質(G1)との複合体(H1)を形成させる。カオトロピック塩(D)は、複合体(H1)にカウンターイオンとして結合して存在しても良く、あるいは複合体(H1)を含む溶液中に存在してもよい。なお、非目的物質(G2)の除去方法については後に記載する。
また、複合体形成工程において、目的物質(G1)を含む試料(F1)と、磁性粒子組成物(e)を、エタノール存在下で接触させることが好ましい。このようにすると目的物質(G1)の磁性粒子(c)との吸着が促進される。
【0096】
(2)複合体分離工程
次に、磁力で複合体(H1)を試料(F1)から分離する。複合体(H1)は、磁性粒子(c)を含み、磁性粒子(c)は、磁性金属酸化物粒子(A)を含むため、複合体(H1)は、磁力により集めることができる。その後、残りの試料(F1)を除去することにより、複合体(H1)を試料(F1)から分離することができる。
このような方法としては、例えば、反応槽の外側から磁石等の磁力により複合体(H1)を集め、上澄み液を排出し、複合体(H1)を分離する方法が挙げられる。
【0097】
(3)目的物質解離工程
次に、複合体(H1)から目的物質(G1)を解離させて目的物質(G1)を得る。
複合体(H1)から目的物質(G1)を解離させる方法としては、特に限定されないが、磁性粒子(c)と、目的物質(G1)との結合を阻害する物質を加えることにより、目的物質(G1)を解離させる方法が挙げられる。磁性粒子(c)と目的物質(G1)との結合を阻害する物質としては、目的物質(G1)及び物質(G)の種類により異なるが、pH差、塩濃度差、温度差及び界面活性剤の作用により結合を阻害する物質等が挙げられる。結合を阻害できる物質(解離液I)としては水、エタノール、IPA、及びTE-HCl Buffer水溶液等があげられる。
【0098】
また、前記分離対象物質(G)が非目的物質(G2)である場合は、前記目的物質(G1)及び前記非目的物質(G2)を含む試料(F2)と、前記磁性粒子組成物(e)とを接触させて、前記磁性粒子(c)と非目的物質(G2)との複合体(H2)を形成させる複合体形成工程と、磁力で前記複合体(H2)を前記試料(F2)から分離することにより前記試料(F2)から前記非目的物質(G2)を除去し、前記目的物質(G1)を含む前記試料(F3)を得る非目的物質除去工程とを含む分離精製方法を用いることもできる。
【0099】
本発明の分離対象物質(G)の分離精製方法の第2の形態は、前記分離対象物質(G)が非目的物質(G2)であって、目的物質(G1)及び前記非目的物質(G2)を含む試料(F2)と、本発明の磁性粒子組成物(e)とを接触させて、前記磁性粒子(c)と非目的物質(G2)との複合体(H2)を形成させる複合体形成工程と、
磁力で前記複合体(H2)を前記試料(F2)から分離することにより前記試料(F2)から前記非目的物質(G2)を除去し、前記目的物質(G1)を含む前記試料(F3)を得る非目的物質除去工程と、
を含む分離精製方法である。
【0100】
本発明の分離精製方法の第2の形態は、分離対象物質(G)が非目的物質(G2)であり、非目的物質(G2)を含む試料(F2)から非目的物質(G2)を除去する方法である。
本発明の分離精製方法は、(1)複合体形成工程及び(2)非目的物質除去工程を含む。
以下、各工程について説明する。
【0101】
(1)複合体形成工程
本工程では、目的物質(G1)及び非目的物質(G2)を含む試料(F)と、磁性粒子(c)及びカオトロピック塩(D)を含む磁性粒子組成物(e)とを接触させて、磁性粒子(c)及び目的物質(G1)の複合体(H1)と、磁性粒子(c)及び非目的物質(G2)の複合体(H2)とを形成させる。
複合体(H2)は、磁性粒子(c)に非目的物質(G2)が直接結合して形成されていてもよい。また、磁性粒子(c)が非目的物質(G2)と結合する物質(G)を有しており、複合体(H2)は、磁性粒子(c)に非目的物質(G2)が、物質(G)を介して結合することにより形成されていてもよい。カオトロピック塩(D)は、複合体(H1)及び複合体(H2)にカウンターイオンとして結合して存在しても良く、あるいは複合体(H1)及び複合体(H2)を含む溶液中に存在してもよい。
【0102】
(2) 非目的物質除去工程
次に、磁力で複合体(H1)及び複合体(H2)を試料(F2)から分離する。複合体(H1)及び複合体(H2)は、磁性粒子(c)を含み、磁性粒子(c)は、磁性金属酸化物粒子(A)を含むため、複合体(H1)及び複合体(H2)は、磁力により集めることができる。複合体(H2)において、非目的物質(G2)は目的物質(G1)よりも磁性粒子(c)に対する吸着性が弱く、集磁中に複合体(H2)から非目的物質(G2)が解離し、試料液中に移動する。反応槽の外側から磁石等の磁力により複合体(H1)及び複合体(H2)を集め、撹拌し、上澄み液を排出することで、複合体(H1)は反応槽の外側から磁石によって集まり、残渣として反応槽中に残り、一方複合体(H2)を形成していた非目的物質(G2)は上澄み液中に含まれる。この方法により非目的物質(G2)を分離することができる。
【0103】
本発明の分離精製方法における目的物質(G1)としては、一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNA等が挙げられる。
【0104】
本発明における非目的物質(G2)は、試料(F)中に含まれる物質の中で目的物質(G1)を除いた物質のうち少なくとも一つを意味する。即ち、非目的物質(G2)の種類は複数であっても良い。
例えば、試料(F)が土壌であり、土壌中に含まれる微生物由来の一本鎖DNAを目的物質(G1)とする場合、土壌中に含まれる他の成分[タンパク質(アルブミン等)、脂質及び無機物等]のうち少なくとも一つが非目的物質(G2)である。
【0105】
本発明において、分離対象物質(G)は、核酸であることが好ましく、一本鎖DNA、二本鎖DNA、一本鎖RNA、二本鎖RNAウイルス、細菌及びタンパク質からなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
また、分離対象物質(G)が、DNA及びRNAからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0106】
本発明の分離精製方法では、磁性粒子(c)がコアシェル粒子(C)であることが好ましく、コアシェル粒子(C)とカオトロピック塩(D)を含む混合物(E)を用いて試料(F)中の分離対象物質(G)を分離することが好ましい。
コアシェル粒子(C)を用いて、試料(F)中の分離対象物質(G)を分離する分離精製方法について、以下に説明する。
【0107】
この場合、分離対象物質(G)の分離精製方法の第1の形態は、前記分離対象物質(G)が目的物質(G1)である場合、前記目的物質(G1)を含む試料(F1)と、前記混合物(E)とを接触させ、前記コアシェル粒子(C)と前記目的物質(G1)との複合体(H1)を形成する複合体形成工程(1)と、磁力で前記複合体(H1)を前記試料(F1)から分離する複合体分離工程(2)と、解離液(I)を添加することで前記複合体(H1)から前記目的物質(G1)を得る目的物質解離工程(3)とを含む分離精製方法である。
【0108】
(分離精製方法)
分離精製方法は、分離対象物質(G)が目的物質(G1)であり、目的物質(G1)を含む試料(F1)から目的物質(G1)を抽出・精製する方法である。
分離精製方法は、(1)複合体形成工程、(2)複合体分離工程、及び、(3)目的物質解離工程を含む。
以下、各工程について説明する。
(1)複合体形成工程
本工程では、目的物質(G1)及び非目的物質(G2)を含む試料(F)と、コアシェル粒子(C)及びカオトロピック塩(D)を含む混合物(E)とを接触させて、コアシェル粒子(C)と目的物質(G1)との複合体(H1)を形成させる。カオトロピック塩(D)は、複合体(H1)にカウンターイオンとして結合して存在しても良く、あるいは複合体(H1)を含む溶液中に存在してもよい。なお、非目的物質(G2)の除去方法については後に記載する。
【0109】
(2)複合体分離工程
次に、磁力で複合体(H1)を試料(F1)から分離する。複合体(H1)は、コアシェル粒子(C)を含み、コアシェル粒子(C)は、磁性金属酸化物粒子(A)を含むため、複合体(H1)は、磁力により集めることができる。その後、残りの試料(F1)を除去することにより、複合体(H1)を試料(F1)から分離することができる。
このような方法としては、例えば、反応槽の外側から磁石等の磁力により複合体(H1)を集め、上澄み液を排出し、複合体(H1)を分離する方法が挙げられる。
【0110】
(3)目的物質解離工程
次に、複合体(H1)から目的物質(G1)を解離させて目的物質(G1)を得る。
複合体(H1)から目的物質(G1)を解離させる方法としては、特に限定されないが、コアシェル粒子(C)と、目的物質(G1)との結合を阻害する物質を加えることにより、目的物質(G1)を解離させる方法が挙げられる。コアシェル粒子(C)と目的物質(G1)との結合を阻害する物質としては、目的物質(G1)及び物質(G)の種類により異なるが、pH差、塩濃度差、温度差及び界面活性剤の作用により結合を阻害する物質等が挙げられる。結合を阻害できる物質(解離液I)としては水、エタノール、IPA、及びTE-HCl Buffer水溶液等があげられる。
【0111】
また、前記分離対象物質(G)が非目的物質(G2)である場合は、前記目的物質(G1)及び前記非目的物質(G2)を含む試料(F2)と、前記混合物(E)とを接触させて、前記コアシェル粒子(C)と非目的物質(G2)との複合体(H2)を形成させる複合体形成工程と、磁力で前記複合体(H2)を前記試料(F2)から分離することにより前記試料(F2)から前記非目的物質(G2)を除去し、前記目的物質(G1)を含む前記試料(F3)を得る非目的物質除去工程とを含む分離精製方法を用いることもできる。
【0112】
この場合、分離精製方法の第2の形態は、分離対象物質(G)が非目的物質(G2)であり、非目的物質(G2)を含む試料(F2)から非目的物質(G2)を除去する方法である。
分離精製方法は、(1)複合体形成工程及び(2)非目的物質除去工程を含む。
以下、各工程について説明する。
【0113】
(1)複合体形成工程
本工程では、目的物質(G1)及び非目的物質(G2)を含む試料(F)と、コアシェル粒子(C)及びカオトロピック塩(D)を含む混合物(E)とを接触させて、コアシェル粒子(C)及び目的物質(G1)の複合体(H1)と、コアシェル粒子(C)及び非目的物質(G2)の複合体(H2)とを形成させる。
複合体(H2)は、コアシェル粒子(C)に非目的物質(G2)が直接結合して形成されていてもよい。また、コアシェル粒子(C)が非目的物質(G2)と結合する物質(G)を有しており、複合体(H2)は、コアシェル粒子(C)に非目的物質(G2)が、物質(G)を介して結合することにより形成されていてもよい。カオトロピック塩(D)は、複合体(H1)及び複合体(H2)にカウンターイオンとして結合して存在しても良く、あるいは複合体(H1)及び複合体(H2)を含む溶液中に存在してもよい。
【0114】
(2)非目的物質除去工程
次に、磁力で複合体(H1)及び複合体(H2)を試料(F2)から分離する。複合体(H1)及び複合体(H2)は、コアシェル粒子(C)を含み、コアシェル粒子(C)は、磁性金属酸化物粒子(A)を含むため、複合体(H1)及び複合体(H2)は、磁力により集めることができる。複合体(H2)において、非目的物質(G2)は目的物質(G1)よりもコアシェル粒子(C)に対する吸着性が弱く、集磁中に複合体(H2)から非目的物質(G2)が解離し、試料液中に移動する。反応槽の外側から磁石等の磁力により複合体(H1)及び複合体(H2)を集め、撹拌し、上澄み液を排出することで、複合体(H1)は反応槽の外側から磁石によって集まり、残渣として反応槽中に残り、一方複合体(H2)を形成していた非目的物質(G2)は上澄み液中に含まれる。この方法により非目的物質(G2)を分離することができる。
【実施例
【0115】
製造例1:コアシェル型のコアシェル粒子(C1-1)の作製
<磁性金属酸化物粒子(A)の作製>
反応容器に塩化鉄(III)6水和物186部、塩化鉄(II)4水和物68部及び水1288部を仕込んで溶解させて50℃に昇温し、撹拌下温度を50~55℃に保持しながら、25重量%アンモニア水280部を1時間かけて滴下し、水中にマグネタイト粒子を得た。得られたマグネタイト粒子に分散剤であるオレイン酸64部を加え、2時間撹拌を継続した。室温に冷却後、デカンテーションにより固液分離して得られたオレイン酸が吸着したマグネタイト粒子を水1000部で洗浄する操作を3回行い、更にアセトン1000部で洗浄する操作を2回行い、40℃で2日間乾燥させることで、体積平均粒子径が15nmの磁性金属酸化物粒子(A-1)を得た。
【0116】
<コア粒子(P)の作製>
製造例1で得た磁性金属酸化物粒子(A-1)80部にテトラエトキシシラン240部を加えて分散し、分散液(B1)を調製した。次に、反応容器に水5050部、25重量%アンモニア水溶液3500部、エマルミン200(三洋化成工業(株)製)400部を加えてクリアミックス(エムテクニック(株)製)を用いて混合し溶液(B2)を得た。50℃に昇温後、クリアミックスを回転数6,000rpmで攪拌しながら、上記分散液(B1)を溶液(B2)に1時間かけて滴下後、50℃で1時間反応させた。反応後、2,000rpmで20分間遠心分離して微粒子の存在する上澄み液を除き、磁性金属酸化物粒子(A-1)を83重量%含有するコア粒子(P-1)を得た。
【0117】
<コアシェル粒子(PC)の作製>
反応容器にコア粒子(P-1)80部、脱イオン水2500部、25重量%アンモニア水溶液260部、エタノール2500部、テトラエトキシシラン1200部を加えてクリアミックス(エムテクニック社製)を用いて混合し、クリアミックスの回転数6,000rpmで攪拌しながら2時間反応させた。反応後、2,000rpmで20分間遠心分離して微粒子の存在する上澄み液を除去した。遠心分離後沈殿した粒子に脱イオン水を4000部加えて粒子を再分散させ、分散した粒子を、容器の外側から磁石を接触させることにより集磁して、上澄み液を除く操作を10回行い、コアシェル粒子(PC-1)を得た。
【0118】
<コアシェル粒子(PC)の分級工程>
得られたコアシェル粒子(PC-1)を含有する固相に水5000部を加えて粒子を分散させて2800rpmで1分間遠心分離後、微粒子の存在する上澄み液を除く操作を4回行った(遠心分離工程1)。
続いて、得られた固相に水5000部を加えて粒子を分散させて600rpmで1分間遠心分離し、上澄み液を回収することで、沈降した大きな粒子径の粒子を除去する操作を1回行った(遠心分離工程2)。
更に、磁石を用いて粒子を集磁し上澄み液を除去した。その後、水5000部を加えてコアシェル粒子を分散させた後に、磁石を用いて粒子を集磁し、上澄み液を除去する操作を10回(洗浄工程1)行い、コアシェル粒子(C-1)を得た。
【0119】
製造例2~5:コアシェル型のコアシェル粒子(C-2)~(C-5)の作製
製造例1の「コアシェル粒子(PC)の分級工程」において、作製条件を表1に記載の作製条件に変更すること以外は製造例1と同様の操作を行い、コアシェル粒子(C-2)~(C-5)を得た。
【0120】
製造例6:コアシェル型のコアシェル粒子(C-6)の作製
製造例1の<磁性金属酸化物粒子(A)の作製>において、塩化鉄(III)6水和物186部、塩化鉄(II)4水和物68部を、塩化鉄(III)6水和物50部、塩化鉄(II)4水和物18部に変更すること以外は、製造例1と同様にして、体積平均粒子径が2nmの磁性金属酸化物粒子(A-2)を得た。
その後、製造例1の<コア粒子(P)の作製>及び<コアシェル粒子(PC)の作製>と同様の操作を行い、<コアシェル粒子(PC)の分級工程>における作製条件を表1に記載の作製条件とした以外は、製造例1と同様の操作を行い、コアシェル粒子(C-6)を得た。
【0121】
製造例7:コアシェル型のコアシェル粒子(C-7)の作製
製造例1の<磁性金属酸化物粒子(A)の作製>において、塩化鉄(III)6水和物186部、塩化鉄(II)4水和物68部を、塩化鉄(III)6水和物583部、塩化鉄(II)4水和物213部に変更すること以外は、製造例1と同様にして、体積平均粒子径が47nmの磁性金属酸化物粒子(A-3)を得た。
その後、製造例1の<コア粒子(P)の作製>及び<コアシェル粒子(PC)の作製>と同様の操作を行い、<コアシェル粒子(PC)の分級工程>における作製条件を表1に記載の作製条件とした以外は、製造例1と同様の操作を行い、コアシェル粒子(C-7)を得た。
【0122】
製造例8:コアシェル型のコアシェル粒子(C-8)の作製
製造例1の<コアシェル粒子(PC)の作製>において、テトラエトキシシラン1200部をテトラエトキシシラン20部に変更し、<コアシェル粒子(PC)の分級工程>における作製条件を表1に記載の作製条件とした以外は、製造例1と同様の操作を行い、コアシェル粒子(C-8)を得た。
【0123】
製造例9:コアシェル型のコアシェル粒子(C-9)の作製
製造例1の<コアシェル粒子(PC)の作製>において、テトラエトキシシラン1200部をテトラエトキシシラン30000部に変更し、<コアシェル粒子(PC)の分級工程>における作製条件を表1に記載の作製条件とした以外は、製造例1と同様の操作を行い、コアシェル粒子(C-9)を得た。
【0124】
製造例10:コア粒子のみからなる磁性粒子(c1)の作製
<磁性粒子(Pc)の作製>
製造例1で得た磁性金属酸化物粒子(A-1)80部にテトラエトキシシラン240部を加えて分散し、分散液(B1)を調製した。次に、反応容器に水5050部、25重量%アンモニア水溶液3500部、エマルミン200(三洋化成工業(株)製)400部を加えてクリアミックス(エムテクニック(株)製)を用いて混合し溶液(B2)を得た。50℃に昇温後、クリアミックスを回転数6,000rpmで攪拌しながら、上記分散液(B1)を溶液(B2)に1時間かけて滴下後、50℃で1時間反応させた。反応後、2,000rpmで20分間遠心分離して微粒子の存在する上澄み液を除き、磁性金属酸化物粒子(A-1)を83重量%含有する磁性粒子(Pc1)を含む固相を得た。
【0125】
<磁性粒子(Pc)の分級工程>
得られた磁性粒子(Pc1)を含有する固相に水5000部を加えて粒子を分散させて2800rpmで1分間遠心分離後、微粒子の存在する上澄み液を除く操作を4回行った(遠心分離工程1)。
続いて、得られた固相に水5000部を加えて粒子を分散させて600rpmで1分間遠心分離し、上澄み液を回収することで、沈降した大きな粒子径の粒子を除去する操作を1回行った(遠心分離工程2)。
更に、磁石を用いて粒子を集磁し上澄み液を除去した。その後、水5000部を加えてコアシェル粒子を分散させた後に、磁石を用いて粒子を集磁し、上澄み液を除去する操作を10回(洗浄工程1)行い、コア粒子のみからなる非コアシェル型の磁性粒子(c1)を得た。
【0126】
比較製造例1:比較用の粒子(C’-1)の作成
製造例1の<コア粒子(P)の作製>において、エマルミン200の代わりにNSA-17(三洋化成工業(株)製)を使用し、また、製造例1の<コアシェル粒子(PC)の分級工程>において、作製条件を表1に記載の作製条件に変更すること以外は製造例1と同様の操作を行い、比較用の粒子(C’-1)を得た。
【0127】
比較製造例2:比較用の粒子(C’-2)の作成
製造例10の<磁性粒子(Pc)の分級工程>において、表1に記載の条件とする以外は製造例10と同様の操作を行い、比較用の粒子(C’-2)を得た。
【0128】
製造例1~10及び比較製造例1~2で得た、コアシェル粒子(C-1)~(C-9)、非コアシェル型の磁性粒子(c1)及び比較用の粒子(C’-1)~(C’-2)について、以下の通り、評価した。
【0129】
<磁性金属酸化物粒子(A)の体積平均粒子径の測定方法>
走査型電子顕微鏡(型番:JSM-7000F、メーカー名:日本電子株式会社)を用いて、任意の200個の磁性金属酸化物粒子(A)を観察して粒子径を測定し、体積平均粒子径を求めた。結果は表1に記載した。
【0130】
<コア粒子(P)中の磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合の測定方法>
コアシェル粒子である製造例1~9及び比較製造例1については、<コア粒子(P)の作製>の操作で得たコア粒子(P)の任意の20個について、それぞれ走査型電子顕微鏡(型番:JSM-7000F、メーカー名:日本電子株式会社)で観察し、エネルギー分散型X線分光装置(型番:INCA Wave/Energy、メーカー名:オックスフォード社)によりコア粒子(P)中の磁性金属酸化物粒子(A)の含有量を測定してその平均値を含有量Sとした。また、同測定にてシリカの含有量を測定しその平均値を含有量Tとした。以下の計算式にて、磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合を求めた。結果は表1に記載した。
磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合(重量%)=[(S)/(S+T)]×100
なお、コア粒子のみからなる非コアシェル型の磁性粒子である製造例10及び比較製造例2については、<磁性粒子(Pc)の作製>の操作で得た磁性粒子(Pc1)の任意の20個について、同様に磁性粒子(Pc)中の磁性金属酸化物粒子(A)の含有量を測定し、表1中の「コア粒子(P)中の磁性金属酸化物粒子(A)の重量割合」の欄に記載した。製造例10及び比較製造例2では磁性粒子(Pc)がコア粒子(P)である。
【0131】
<コアシェル粒子(C-1)~(C-9)、非コアシェル型の磁性粒子(c1)、及び比較用の粒子(C’-1)~(C’-2)の体積平均粒子径及び変動係数の測定方法>
コアシェル粒子(C-1)~(C-9)、非コアシェル型の磁性粒子(c1)及び比較用の粒子(C’-1)~(C’-2)をそれぞれリン酸緩衝液に分散し、得られた磁性粒子の分散液を試料として用い、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「マイクロトラックMT3300」)によって粒度分布を測定し、体積平均粒子径及び変動係数を算出した。結果は表1に記載した。
【0132】
<コアシェル粒子(C-1)~(C-9)、及び比較用の粒子(C’-1)のシェル層(Q)の平均厚みの測定方法>
製造例1~9及び比較製造例1の<コアシェル粒子(PC)の分級工程>で得たコアシェル粒子(C-1)~(C-9)又は比較用の粒子(C’-1)をエポキシ樹脂に包埋してミクロトームで切断し、その断面を透過型電子顕微鏡([型番「H-7100」、(株)日立製作所製])で観察し、1個のコアシェル粒子(C)[又は比較用の粒子(C’)]の膜厚が最も厚い部分と最も薄い部分の平均値から膜厚を求めた。
更に任意の99個のコアシェル粒子(C)[又は比較用の粒子(C’)]について上記と同様にして膜厚を求め、合計100個の粒子の膜厚の平均値をシェル層(Q)の平均厚みとした。結果は表1に記載した。
また、得られたシェル層(Q)の平均厚みと、コアシェル粒子(C)[又は比較用の粒子(C’)]の体積平均粒子径とから、下記の式を用いてコア粒子(P)の平均粒子径を計算し、コア粒子(P)の粒子径に対するシェル層(Q)の平均厚みの比率を表1に記載した。
コア粒子(P)の粒子径=コアシェル粒子(C)の体積平均粒子径-2×シェル層(Q)の平均厚み
【0133】
【表1】
【0134】
<実施例1~13及び比較例1~3:磁性粒子組成物(e)の作製>
(1)製造例1~10及び比較製造例1~2で得た、コアシェル粒子(C-1)~(C-9)、非コアシェル型の磁性粒子(c1)及び比較用の粒子(C’-1)~(C’-2)のそれぞれについて、296mgをガラス製容器に入れ、10mLの純水をサンプル瓶に加えた後にボルテックス・ミキサーで撹拌することで、磁性粒子を含む水分散液を得た。
【0135】
(2)15mLマイクロチューブに前記の磁性粒子を含む水分散液600μL(含まれる磁性粒子の重量:177.6mg)を採取した。マイクロチューブの外側から磁石を当てて磁石により磁性粒子をマイクロチューブの壁面に固定し、水分散液の分散媒(水)だけを廃棄した。磁性粒子だけが残ったマイクロチューブにカオトロピック塩水溶液900μLを加え、実施例1~13に係る磁性粒子組成物(e1)~(e13)及び比較例1、2に係る比較用の磁性粒子組成物(e’1)~(e’2)を作製した。
また、(1)で作製したコアシェル粒子(C-3)の水分散液600μLを15mLマイクロチューブに採取し、マイクロチューブの外側から磁石を当てて磁石により磁性粒子をマイクロチューブの壁面に固定し、水分散液の分散媒(水)だけを廃棄した。磁性粒子だけが残ったマイクロチューブに純水900μLを加えたものを作製し、比較例3に係る比較用の磁性粒子組成物(e’3)とした。
なお、カオトロピック塩水溶液としては、表2に記載したカオトロピック塩(D)を6Mとなるように、Tris-EDTA Buffer[(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン:10mM、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム:2mM、pH7.86]に溶解した水溶液を用いた。
【0136】
【表2】
【0137】
<実施例14~30及び比較例4~6:DNAの分離>
[複合体形成工程]
(1)目的物質(D1)であるDNAと不純物であるBSAとを含む試料(F1)として、DNA水溶液150μL及びBSA水溶液150μLの混合液を準備した。
なお、DNA水溶液は、DNA[デオキシリボ核酸、サケ精液由来、富士フイルム和光純薬(株)製]を2.40mg/mlの濃度で、前記のTris-EDTA Bufferに溶解した水溶液であり、BSA水溶液は、BSAを2.40mg/mlの濃度で、前記のTris-EDTA Bufferに溶解した水溶液である。
【0138】
(2-1)実施例1~13で得た磁性粒子組成物(e1)~(e13)及び比較例1~3で得た比較用の磁性粒子組成物(e’1)~(e’3)が入ったマイクロチューブのそれぞれに、前記の試料(F1)300μLを加え、続いてマイクロチューブを振とう培養器を用いて、37℃、350rpm、2.0hrの条件で振とうすることで磁性粒子とDNA及びBSAとの接触を促進し、磁性粒子とDNA及びBSAとの複合体形成を行い、表3に記載の実施例14~26及び比較例4~6に係るDNA分離用複合体(1-1)~(1-13)及び(H1-1)~(H1-3)を含む分散液を得た。
【0139】
(2-2)実施例11で得た磁性粒子組成物(e11)の入ったマイクロチューブに前記の試料(F1)300μLを加え、更に99.5%エタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)900μLを加え、続いてマイクロチューブを振とう培養器を用いて、37℃、350rpm、2.0hrの条件で振とうすることで磁性粒子とDNA及びBSAとの接触を促進し、磁性粒子とDNA及びBSAとの複合体形成を行い、実施例27に係るDNA分離用複合体(1-14)を含む分散液を得た。なお、実施例27のマイクロチューブの内容物におけるエタノールの濃度(体積分率)は、マイクロチューブ中の内容物の構成する成分のうち液体成分の体積を基準にして43体積%である。
【0140】
(2-3)実施例3で得た磁性粒子組成物(e3)の入ったマイクロチューブに前記の試料(F1)300μLを加え、更に99.5%エタノール900μL、300μL及び1800μLをそれぞれ加えたものを作製し、続いてマイクロチューブを振とう培養器を用いて、37℃、350rpm、2.0hrの条件で振とうすることで磁性粒子とDNA及びBSAとの接触を促進し、磁性粒子とDNA及びBSAとの複合体形成を行い、実施例28~30に係るDNA分離用複合体(1-15)~(1-17)を含む分散液を得た。なお、実施例28~30のマイクロチューブの内容物におけるエタノールの濃度(体積分率)は、マイクロチューブ中の内容物を構成する成分のうち液体成分の体積を基準にしてそれぞれ43、20及び60体積%である。
【0141】
(3)DNA分離用複合体(1-1)~(1-17)及び(H1-1)~(H1-3)をそれぞれ形成した後、マイクロチューブを静置して沈殿物と上澄み液に分離させ、上澄み液を除去してDNA分離用複合体を含む沈殿物を回収した。
【0142】
[複合体分離工程]
(4)回収した沈殿物のそれぞれに、70体積%エタノール水溶液900μLを加えて分散液を作製し、分散液の入った容器の外側に磁石を当ててDNA分離用複合体を磁石側に集めた。DNA分離用複合体を磁石側に集めたまま、上澄み液を除去し、もう一度70体積%エタノール水溶液900μLを加えて分散液を作製した。70体積%エタノール水溶液への分散と、上澄み液の除去を合計10回繰り返し、マイクロチューブ中にDNA分離用複合体を回収した。
【0143】
[目的物質解離工程]
(5)前記(4)で得られた、回収したDNA分離用複合体が入ったマイクロチューブに、前記のTris-EDTA Bufferを400μL加え、5分ごとに15秒間、ボルテックス・ミキサーで撹拌する操作を3回繰り返し、DNA分離用複合体からDNA及びBSAを解離させた。
続いて、溶器の外側に磁石を当て磁性粒子を磁石側に厚め、分離したDNA及びBSAを含む上澄み液の全量(400μLの全量)をピペットで回収した。
【0144】
<回収したDNA及びBSAに関する測定>
[測定前処理]
前記(5)の[目的物質解離工程]で回収した上澄み液(400μL)から100μLをサンプリングし、それを脱塩・バッファー交換用自然落下カラム(PD-10、GEヘルスケア社製)に滴下し、上澄み液中のDNA及びBSAを吸着剤に吸着させた。
その後、吸着したDNA及びBSAの溶出液として純水1,100μLをカラムに入れ、自然落下した溶出液をマイクロチューブに回収した。溶出液が1,100μL回収できたらマイクロチューブを交換し、再び純水1,100μLをカラムに入れて1,100μLの溶出液をマイクロチューブに回収する操作を行った。マイクロチューブを交換し、純水1,100μLをカラムに入れて1,100μLの溶出液をマイクロチューブに回収する操作を更に4回行った(1,100μLの溶出液をマイクロチューブに回収する操作としては合計6回行った)。
合計6回の、1,100μLの溶出液をマイクロチューブに回収する操作のうち、3~6回目の操作時に回収した溶出液から200μLずつを抜き取り、等積混合して得られた液(合計800μL)を「DNA及びBSA測定試料」とした。
【0145】
[DNA回収量の測定]
標準液として濃度既知のDNA溶液を作製し、分光光度計を用い260nmにおける吸光度を測定し、吸光度とDNA濃度との関係を示す検量線を作製した。
前記の「DNA及びBSA測定試料」についても260nmにおける吸光度を測定し、検量線を用い、前処理で得られた溶出液に含まれるDNAの濃度を求めた。
前処理で得られた溶出液に含まれるDNAの濃度から、カラムに滴下した[目的物質解離工程]で回収した上澄み液100μLに含まれるDNAの重量を算出し、更に[目的物質解離工程]で回収した上澄み液の全量に含まれるDNAの重量を計算した。
DNAの回収量は磁性粒子の表面積の影響を受けるため、前記上澄み液の全量に含まれるDNAの重量を各実施例及び比較例で用いた磁性粒子の表面積の合計値で割った値(磁性粒子の単位表面積あたりの回収DNAの重量)を計算し、表3に記載した。
【0146】
[BSA回収量の測定]
濃度既知のBSA[アルブミン、ウシ血清由来、低塩濃度、富士フイルム和光純薬(株)製]標準液を用い、分光光度計を用い280nmにおける吸光度を測定し、吸光度とBSA濃度との関係を示す検量線を作製した。
前記の「DNA及びBSA測定試料」についても280nmにおける吸光度を測定し、検量線を用い、カラムでの前処理で得られた溶出液に含まれるBSAの濃度を求めた。
この値を元に、[DNA濃度の測定]と同様に、前記上澄み液の全量に含まれるBSAの重量を実施例で用いた磁性粒子の表面積の合計値で割った値(磁性粒子の単位表面積あたりの回収BSAの重量)を計算して表3に記載した。
【0147】
[DNAの純度の測定]
紫外可視分光光度計UV-1800(株式会社島津製作所製)を用いて、前記のDNA及びBSA測定試料の280nmでの吸光度(光路長10mm)と、260nmでの吸光度(光路長10mm)を測定した。
260nm及び280nmにおける吸光度の比率(吸光度比=A260/A280)の値を算出し、DNAの純度の指標として評価し、結果を表3に記載した。
純度100%のDNAは吸光度比率(A260/A280)が1.8であり、吸光度比率が1.76~1.90の範囲にある場合、回収したDNAの純度が高いと判断される。
【0148】
【表3】
【0149】
<実施例31~41及び比較例7~9:環境試料からのDNAの分離>
[複合体形成工程]
(1)下記の方法で培養土、採取土、河川水及び動物の排泄物からそれぞれ抽出したDNA回収液を試料(F2)として準備した。
培養土及び採取土は土壌の一例である。
次いで、表4に記載の組みあわせとなるように、実施例1~13及び比較例1~3で得た磁性粒子組成物(e1)~(e13)及び比較用組成物(e’1)~(e’3)のいずれかが入ったマイクロチューブに前記試料(F2)300μLを加え、さらに実施例40及び41については、99.5%エタノール900μLもそれぞれ添加した。
内容物の入ったマイクロチューブを振とう培養器を用いて、37℃、350rpm、2.0hrの条件で振とうすることで磁性粒子とDNAとの複合体(DNA分離用複合体2)の形成を行い、表4に記載の実施例31~41及び比較例7~9に係るDNA分離用複合体2(2-1)~(2-11)及び(H2-1)~(H2-3)を形成した。
【0150】
(2)DNA分離用複合体2を形成した後、マイクロチューブを静置して沈殿物と上澄み液に分離させ、上澄み液を除去してDNA分離用複合体2を含む沈殿物を回収した。
【0151】
[複合体分離工程]
(3)回収した沈殿物のそれぞれに、70体積%エタノール水溶液900μLを加えて分散液を作製し、分散液の入った容器の外側に磁石を当ててDNA分離用複合体2を磁石側に集めた。DNA分離用複合体2を磁石側に集めたまま、上澄み液を除去し、もう一度70体積%エタノール水溶液900μLを加えて分散液を作製した。70体積%エタノール水溶液への分散と、上澄み液の除去を合計10回繰り返し、マイクロチューブ中にDNA分離用複合体2を回収した。
【0152】
[目的物質解離工程]
(4)前記(3)で得られた、回収したDNA分離用複合体2が入ったマイクロチューブに、前記のTris-EDTA Bufferを400μL加え、5分ごとに15秒間、ボルテックス・ミキサーで撹拌する操作を3回繰り返し、DNA分離用複合体2からDNAを解離させた。
続いて、溶器の外側に磁石を当て磁性粒子を磁石側に厚め、分離したDNAを含む上澄み液の全量(400μLの全量)をピペットで回収した。
【0153】
<回収したDNAに関する分析>
DNA分離用複合体2の[目的物質解離工程]で回収した上澄み液に対して、前記のDNA分離用複合体1の[目的物質解離工程]で回収した上澄み液と同様に[測定前処理]を行うことでDNA測定試料を作製し、前記のDNA分離用複合体1の[DNA濃度の測定]及び[DNAの純度の測定]と同様にして分析を行い、結果を表4に記載した。
【0154】
[培養土からのDNA回収液の作製]
底面に直径4mmの穴を開けたケニスプラントボックス[AGCテクノガラス製]に、130℃、30分の条件で加熱殺菌した園芸培養土(商品名:花と野菜の土[太陽殖産株式会社製])100gを入れ、3か所に2粒ずつのコマツナ種子[タキイ社]を播種し、更に1cmの覆土をして、温度20℃、湿度55%、光量60%、明/暗:12hr/12hrの条件に設定した人工気象機(LPH-241/411SP、株式会社日本医科器械製作所製)内に静置した。2日に1度50mlの水道水を与えて育成し、発芽から2週間栽培したプラントボックスから培養土を採取した。
採取した培養土から湿重量で2gの培養土をサンプリングし、2mlの10mM Tris-EDTA-HCl Buffer[トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン:10mM、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム:1mM、pH7.4]に懸濁し、5℃で1時間振とうした。
続いて、懸濁液に20μLのドデシル硫酸ナトリウム[富士フイルム和光純薬(株)製]を添加し、65~70℃で30分間インキュベーションした。その後、3600G、室温で10分間遠心分離し、その上澄みをDNA回収液とした。
【0155】
[採取土からのDNA回収液の作製]
屋外環境[日本、京都府、京都市、西京区、三洋化成工業株式会社桂研究所近く]から採取した湿重量2gの土を採取し、2mlの10mM Tris-EDTA-HCl Buffer(pH7.4)に懸濁し、5℃で1時間振とうした。
続いて懸濁液に20μLのドデシル硫酸ナトリウムを添加し、65~70℃で30分間インキュベーションした。その後、3600G、室温で10分間遠心分離し、その上澄みをDNA回収液とした。
【0156】
[河川水からのDNA回収液の作製]
桂川(日本、京都府、京都市、西京区、桂離宮近く)から採取した河川水40mLを0.7μm孔ガラス繊維フィルター(GF/F、WhatmanGF/F, Whatman)でろ過した。ろ過後のフィルターをマイクロチューブに移し、マイクロチューブに10mM Tris-EDTA-HCl Buffer(pH7.4)を3.5ml加えた後、ボルテックス・ミキサーで5分間撹拌した。
続いて、50μgのプロテアーゼK[シグマアルドリッチ製]と17.5μLのドデシル硫酸ナトリウムを添加し、56℃で15分間インキュベーションした。その後、3600G、室温で10分間遠心分離し、その上澄みをDNA回収液とした。
【0157】
[動物の排泄物からのDNA回収液の作製]
C57BL/6マウス(清水実験材料株式会社製)の飼育糞便1gを9mlのリン酸緩衝液に懸濁し、静置した後に上澄み2mlを回収し、15000rpmで3分間遠心分離を行った。遠心分離後の上澄みを破棄して残った沈殿物に10mM Tris-EDTA-HCl Buffer(pH7.4)にドデシル硫酸ナトリウムを1%の濃度で溶解したSDS溶液を添加し、65~70℃で30分間インキュベーションした。その後、3600G、室温で10分間遠心分離し、その上澄みをDNA回収液とした。
【0158】
【表4】
【0159】
<実施例42~58及び比較例10~12:RNAの分離>
[複合体形成]
(1)目的物質(D2)であるRNAと不純物であるBSAとを含む試料(F3)として、25mMの濃度でクエン酸[富士フイルム和光純薬(株)製]を溶解したRNA水溶液150μL及びBSA水溶液150μLの混合液を準備した。
なお、RNA水溶液はRNA[リボ核酸、酵母由来、富士フイルム和光純薬(株)製]を2.40mg/mlの濃度で実施例14~26で用いたものと同じTris-EDTA Bufferに溶解した水溶液であり、BSA水溶液は実施例14~26で用いたものと同じ水溶液である。
【0160】
(2-1)実施例1~13で得た磁性粒子組成物(e1)~(e13)及び比較例1~3で得た比較用の磁性粒子組成物(e’1)~(e’3)が入ったマイクロチューブのそれぞれに、前記の試料(F3)300μLを加え、続いてマイクロチューブを振とう培養器を用いて、37℃、350rpm、2.0hrの条件で振とうすることで磁性粒子とRNA及びBSAとの接触を促進し、磁性粒子とRNA及びBSAとの複合体形成を行い、表5に記載の実施例42~54及び比較例10~12に係るRNA分離用複合体(3-1)~(3-13)及び(H3-1)~(H3-3)を含む分散液を得た。
【0161】
(2-2)実施例11で得た磁性粒子組成物(e11)の入ったマイクロチューブに前記の試料(F3)300μLを加え、更に99.5%エタノール(富士フイルム和光純薬(株)製)900μLを加え、続いてマイクロチューブを振とう培養器を用いて、37℃、350rpm、2.0hrの条件で振とうすることで磁性粒子とRNA及びBSAとの接触を促進し、磁性粒子とRNA及びBSAとの複合体形成を行い、実施例55に係るRNA分離用複合体(3-14)を含む分散液を得た。なお、実施例55のマイクロチューブの内容物におけるエタノールの濃度(体積分率)は、マイクロチューブ中の内容物を構成する成分のうち液体成分の体積を基準にして43体積%である。
【0162】
(2-3)実施例3で得た磁性粒子組成物(e3)の入ったマイクロチューブに前記の試料(F3)300μLを加え、更に99.5%エタノール900μL、300μL及び1800μLをそれぞれ加えたものを作製し、続いてマイクロチューブを振とう培養器を用いて、37℃、350rpm、2.0hrの条件で振とうすることで磁性粒子とRNA及びBSAとの接触を促進し、磁性粒子とRNA及びBSAとの複合体形成を行い、実施例56~58に係るRNA分離用複合体(3-15)~(3-17)を含む分散液を得た。なお、実施例56~58のマイクロチューブの内容物におけるエタノールの濃度(体積分率)は、マイクロチューブ中の内容物を構成する成分のうち液体成分の体積を基準にしてそれぞれ43、20及び60体積%である。
【0163】
(3)RNA分離用複合体(3-1)~(3-17)及び(H3-1)~(H3-3)をそれぞれ形成した後、マイクロチューブを静置して沈殿物と上澄み液に分離させ、上澄み液を除去してRNA分離用複合体を含む沈殿物を回収した。
【0164】
[複合体分離工程]
(4)回収した沈殿物のそれぞれに、70体積%エタノール水溶液900μLを加えて分散液を作製し、分散液の入った容器の外側に磁石を当ててRNA分離用複合体を磁石側に集めた。RNA分離用複合体を磁石側に集めたまま、上澄み液を除去し、もう一度70体積%エタノール水溶液900μLを加えて分散液を作製した。70体積%エタノール水溶液への分散と、上澄み液の除去を合計10回繰り返し、マイクロチューブ中にRNA分離用複合体を回収した。
【0165】
[目的物質解離工程]
(5)前記(4)で得られた、回収したRNA分離用複合体が入ったマイクロチューブに、前記のTris-EDTA Bufferを400μL加え、5分ごとに15秒間、ボルテックス・ミキサーで撹拌する操作を3回繰り返し、RNA分離用複合体からRNA及びBSAを解離させた。
続いて、溶器の外側に磁石を当て磁性粒子を磁石側に厚め、分離したRNA及びBSAを含む上澄み液の全量(400μLの全量)をピペットで回収した。
【0166】
<回収したRNA及びBSAに関する分析>
RNA分離用複合体の[目的物質解離工程]で回収した上澄み液に対して、前記のDNA分離用複合体1の[目的物質解離工程]で回収した上澄み液と同様に[測定前処理]を行うことでRNA測定試料を作製した。
【0167】
[RNA回収量の測定]
標準液として濃度既知のRNA溶液を作製し、分光光度計を用い260nmにおける吸光度を測定し、吸光度とRNA濃度との関係を示す検量線を作製した。
前記の「RNA測定試料」についても260nmにおける吸光度を測定し、検量線を用い、前処理で得られた溶出液に含まれるRNAの濃度を求めた。
前処理で得られた溶出液に含まれるRNAの濃度から、前記のDNA分離用複合体1の場合と同様に計算してRNA回収量を計算し、表5に記載した。
【0168】
[BSA回収量の測定]
前記の「RNA測定試料」について、前記のDNA分離用複合体1における[DNAの純度の測定]と同様に測定、計算を行い、BSA回収量を計算し、表5に記載した。
【0169】
[RNAの純度の測定]
前記の「RNA測定試料」について、前記のDNA分離用複合体1における[BSA回収量の測定]と同様に測定、計算を行い、結果を表5に記載した。
なお、純度100%のRNAの吸光度比率(A260/A280)が2.0であるため、吸光度比率が1.95~2.05の範囲にある場合、RNAの純度が高いと判断される。
【0170】
【表5】