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  • 特許-プラスチック光ファイバー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】プラスチック光ファイバー
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20241211BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G02B6/44 301A
G02B6/02 391
G02B6/44 311
G02B6/44 331
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021551390
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037214
(87)【国際公開番号】W WO2021066031
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2019179497
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 康彰
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 武士
(72)【発明者】
【氏名】竿本 建次郎
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-189816(JP,A)
【文献】特開2014-077073(JP,A)
【文献】特開2019-049658(JP,A)
【文献】特開2013-213888(JP,A)
【文献】特開2014-002002(JP,A)
【文献】特表2002-503282(JP,A)
【文献】特開2007-017551(JP,A)
【文献】特開2018-163350(JP,A)
【文献】特開昭60-195115(JP,A)
【文献】特表2004-536758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02-6/10, 6/44
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック光ファイバー本体と、その周面を被覆するカラーリング材とを備え、
前記カラーリング材は、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートと、着色剤とを含む硬化性組成物の硬化物からなり、
前記プラスチック光ファイバー本体は、前記カラーリング材の内側面に接触する接触層を含み、
前記接触層の材料が、ポリカーボネート樹脂であり、
前記カラーリング材における前記活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートにおけるビニル基の反応率が、85%以上であることを特徴とする、プラスチック光ファイバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック光ファイバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスファイバと、ガラスファイバの周面を被覆するインク層とを備える光ファイバが知られている。(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の光ファイバは、インク層の色や柄などによって、識別されることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2012-508395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、インク層には、ガラスファイバに対する優れた密着性が求められる。
【0006】
また、近年、ガラスファイバに代えてプラスチックファイバを用いた光ファイバが検討される。ガラスファイバを用いた光ファイバは、溶剤に曝され、溶剤がインク層を浸食して、ガラスファイバに接触して、さらにガラスファイバが曲がっても、ガラスファイバにはクラックを生じない。一方、プラスチックファイバを用いたファイバは、プラスチックがガラスよりも耐溶剤性が低いことから、溶剤がインク層を浸食して、プラスチックファイバに接触して、プラスチックファイバが曲がると、クラックを生じるという不具合がある。
【0007】
本発明は、カラーリング材のプラスチック光ファイバー本体に対する密着性に優れながら、耐溶剤性に優れ、損傷を抑制できるプラスチック光ファイバーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、プラスチック光ファイバー本体と、その周面を被覆するカラーリング材とを備え、前記カラーリング材は、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートと、着色剤とを含む硬化性組成物の硬化物からなり、前記カラーリング材における前記活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートにおけるビニル基の反応率が、85%以上である、プラスチック光ファイバーを含む。
【0009】
本発明(2)は、前記プラスチック光ファイバー本体は、前記カラーリング材の内側面に接触する接触層を含み、前記接触層の材料が、ポリカーボネート樹脂および/またはシクロポリオレフィン樹脂である、(1)に記載のプラスチック光ファイバーを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプラスチック光ファイバーでは、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートにおけるビニル基の反応率が85%以上と高いので、カラーリング材のプラスチック光ファイバー本体に対する密着性に優れる。
【0011】
また、カラーリング材のビニル基の反応率が85%以上と高いので、プラスチック光ファイバーが溶剤に曝されても、溶剤がカラーリング材を浸食することを抑制できる。そのため、溶剤のインク層の浸食に起因するプラスチック光ファイバー本体の損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明のプラスチック光ファイバーの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明のプラスチック光ファイバーの一実施形態)
本発明のプラスチック光ファイバーの一実施形態を図1を参照して説明する。
【0014】
プラスチック光ファイバー1は、長尺方向(図1における紙面奥行き方向に相当)に延びるファイバーである。プラスチック光ファイバー1は、長尺方向に直交する方向に沿う断面において、略円形状を有する。プラスチック光ファイバー1は、プラスチック光ファイバー本体2と、カラーリング材3とを備える。
【0015】
プラスチック光ファイバー本体2は、長尺方向に沿って光を伝送する光伝送路である。プラスチック光ファイバー本体2は、光の伝送方向に直交する断面において略円形状を有する。
【0016】
プラスチック光ファイバー本体2は、例えば、コア部4と、クラッド部5と、接触層の一例としてのオーバークラッド部6とを、断面視において、中心から外側に向かって順に備える。
【0017】
コア部4は、断面視略円形状を有する。コア部4は、断面視において、プラスチック光ファイバー本体2の中心を含む。
【0018】
クラッド部5は、コア部4の外周面に配置されている。クラッド部5は、コア部4およびオーバークラッド部6に挟まれている。クラッド部5は、断面視略円環形状を有する。
クラッド部5の屈折率は、コア部4の屈折率より低い。
【0019】
オーバークラッド部6は、クラッド部5の外周面に配置されている。オーバークラッド部6は、プラスチック光ファイバー本体2の外周面を形成する。オーバークラッド部6は、断面視略円環形状を有する。
【0020】
なお、プラスチック光ファイバー本体2は、プラスチック光ファイバー1の用途および目的に応じて、ダブルクラッド構造を有することができる。この場合には、図1の仮想線で示すように、クラッド部5は、第1クラッド部51と、第1クラッド部51の外周面に配置される第2クラッド部52とを備える。つまり、クラッド部5は、第1クラッド部51と第2クラッド部52との2層構造を有する。第1クラッド部51の屈折率が、コア部4の屈折率より低い。第2クラッド部52の屈折率は、第1クラッド部51の屈折率より低い。オーバークラッド部6の屈折率は、第2クラッド部52の屈折率より低い。
【0021】
プラスチック光ファイバー本体2の材料は、プラスチックである。プラスチックとしては、特に限定されず、例えば、アクリル樹脂(フッ素化アクリル樹脂を含む)、例えば、ポリカーボネート樹脂(ポリエステル変性ポリカーボネート樹脂などの変性ポリカーボネート樹脂を含む)、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シクロオレフィン樹脂などのオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。プラスチック光ファイバー本体2の材料は、コア部4、クラッド部5およびオーバークラッド部6が必要とする屈折率に応じて、適宜、選択される。
【0022】
オーバークラッド部6としては、好ましくは、ポリカーボネート樹脂、オレフィン樹脂が挙げられ、とりわけ好ましくは、高い信頼性の観点から、変性ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン樹脂が挙げられる。
【0023】
プラスチック光ファイバー本体2は、透明である。プラスチック光ファイバー本体2の全光線透過率は、例えば、85%以上、好ましくは、90%以上、より好ましくは、90%以上であり、また、例えば、100%以下である。
【0024】
プラスチック光ファイバー本体2の直径は、例えば、10μm以上、10mm以下である。
【0025】
カラーリング材3は、プラスチック光ファイバー本体2の外周面に配置されている。具体的には、カラーリング材3は、オーバークラッド部6の外周面に接触している。カラーリング材3は、プラスチック光ファイバー1の外周面を形成する。
【0026】
カラーリング材3は、有色である。また、カラーリング材3の全光線透過率は、例えば、85%未満、好ましくは、80%以下であり、また、例えば、10%以上である。そのため、かかるカラーリング材3を備えるプラスチック光ファイバー1は、識別性を有する。
【0027】
カラーリング材3は、硬化性組成物の硬化物からなる。硬化性組成物は、カラーリング材3の材料であって、後の製造方法で詳述するが、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートと、着色料とを含む。
【0028】
カラーリング材3の厚みは、特に限定されず、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.1μm以上であり、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、100μm以下である。また、プラスチック光ファイバー本体2の直径に対するカラーリング材3の厚みの比は、例えば、0.0001以上、好ましくは、0.001以上であり、また、例えば、1以下、好ましくは、0.5以下である。
【0029】
次に、プラスチック光ファイバー1の製造方法を説明する。
【0030】
この方法では、まず、プラスチック光ファイバー本体2を準備する。プラスチック光ファイバー本体2は、例えば、溶融押出法などにより、製造する。溶融押出法では、コア部4、クラッド部5およびオーバークラッド部6が、同時に形成される。
【0031】
続いて、硬化性組成物を調製し、これを、プラスチック光ファイバー本体2の外周面に配置し、その後、硬化性組成物を硬化させる。
【0032】
硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートと、着色料とを含む。
【0033】
具体的には、硬化性組成物は、例えば、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートと、活性エネルギー線開始剤と、着色料とを含む。
【0034】
活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートは、ビニル基を有する。具体的には、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートは、ビニル基および芳香環基を有する。
【0035】
芳香環基としては、例えば、フェニル、ナフチルが挙げられ、好ましくは、フェニルが挙げられる。
【0036】
活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートは、単独または併用することができる。
【0037】
活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートは、単独使用されれば、その活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートが、ビニル基および芳香環基を有する。一方、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートは、複数併用されれば、複数の活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートのいずれもがビニル基を有するか、または、一のエネルギー線硬化型多官能アクリレートが、ビニル基および芳香環基を有し、他のエネルギー線硬化型多官能アクリレートが、ビニル基を有するが、芳香環基を有しない。
【0038】
着色剤は、プラスチック光ファイバー1の用途および目的に応じて適宜選択される。着色剤としては、例えば、顔料、染料が挙げられ、好ましくは、顔料が挙げられる。顔料としては、特に限定されず、例えば、白色顔料、黒色顔料、黄色顔料、緑色顔料、赤色顔料、青色顔料などが挙げられる。
【0039】
上記した各原料の配合割合は、プラスチック光ファイバー1の用途および目的によって適宜設定される。硬化性組成物における活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートの割合が、例えば、50質量%以上、好ましくは、75質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下である。活性エネルギー線硬化型多官能アクリレート100質量部に対する着色剤の質量部数は、例えば、1質量部以上、例えば、25質量部以下である。
【0040】
なお、調製された硬化性組成物は、酸素を含むことが許容される。酸素は、硬化性組成物が空気中で調製され、空気中に含まれる酸素に由来する。
【0041】
硬化性組成物は、市販品を用いることができ、例えば、オプティカル ファイバー カラーリングインクシリーズ(Phichem社製)などが用いられる。
【0042】
次いで、硬化性組成物を、プラスチック光ファイバー本体2の外周面に塗布し、その後、硬化性組成物に活性エネルギー線を照射する。
【0043】
硬化性組成物の塗布では、公知の塗布装置が用いられる。
【0044】
活性エネルギー線としては、例えば、紫外線(UVA(長波長側紫外線)、UVB(短波長側紫外線)などを含む)、α線、β線、γ線、X線などが挙げられる。好ましくは、紫外線が挙げられる。
【0045】
活性エネルギー線の照射では、光源と、光源と対向配置される照射室とを備える照射装置が用いられる。
【0046】
照射室は、硬化性組成物が塗布されたプラスチック光ファイバー本体2が通過可能に構成される。照射室は、例えば、光透過性材料(石英など)などからなる略筒形状を有する。また、照射室は、ラジカル重合において不活性なガスが流入可能である。そのようなガスとしては、窒素ガス、二酸化炭素ガス、ヘリウムガスなどが挙げられ、好ましくは、窒素ガスが挙げられる。ガス流量は、照射室内の体積および/または、硬化性組成物が塗布されたプラスチック光ファイバー本体2の通過速度によって適宜設定される。具体的には、ガス流量は、例えば、3L/分以上、好ましくは、5L/分以上、より好ましくは、8L/分上であり、また、例えば、100L/分以下である。
【0047】
この方法では、外周面が硬化性組成物に塗布されたプラスチック光ファイバー本体2を、照射装置の照射室に通過させる。
【0048】
硬化性組成物に酸素が溶存すると、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートにおけるビニル基のラジカル重合が阻害される。しかし、不活性なガスを照射室に流入させれば、上記したガスが硬化性組成物に溶存する一方、硬化性組成物に溶存した酸素が、硬化性組成物から追い出される。これによって、硬化性組成物中の酸素濃度が低下する。そのため、上記したラジカル重合の阻害が抑制され、ビニル基の反応率が高くなる。
【0049】
これによって、硬化性組成物が硬化した硬化物を生成する。これにより、硬化物からなるカラーリング材3がプラスチック光ファイバー本体2の外周面に成形される。
【0050】
そして、このカラーリング材3における活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートにおけるビニル基の反応率は、85%以上である。また、ビニル基の反応率は、好ましくは、88%以上、より好ましくは、90%以上、さらに好ましくは、92%以上であり、また、例えば、100%以下である。
【0051】
ビニル基の反応率が85%未満であれば、カラーリング材3のプラスチック光ファイバー本体2に対する密着性が低下する。また、ビニル基の反応率が85%未満であれば、カラーリング材3の耐溶剤性が低下し、プラスチック光ファイバー1が溶剤に曝されるときに、溶剤がカラーリング材3を浸食し、プラスチック光ファイバー本体2に接触し、プラスチック光ファイバー1が曲がると、プラスチック光ファイバー本体2においてクラックを生じてしまう。
【0052】
活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートにおけるビニル基の反応率は、ATR(全反射減衰分光)法に基づくFT-IRによって求められる。FT-IRでは、芳香環基(具体的には、フェニル基)に由来するピークの吸光度(ピーク高さ)に対する、ビニル基に由来するピークの吸光度(ピーク高さ)の比を、「ビニル量」として得る。続いて、下記式で示される反応率を求める。
【0053】
反応率(%)=[(硬化前の硬化性組成物のビニル量)-(硬化後の硬化物のビニル量)]/(硬化前の硬化性組成物のビニル量)×100
IRスペクトルにおいて、ビニル基に由来するピークは、波長810cm-1に位置する。フェニル基に由来するピークは、波長1510cm-1に位置する。
【0054】
(一実施形態の作用効果)
そして、このプラスチック光ファイバー1では、活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートにおけるビニル基の反応率が85%以上と高い。そのため、カラーリング材3のプラスチック光ファイバー本体2に対する密着性に優れる。
【0055】
また、カラーリング材3のビニル基の反応率が85%以上と高いので、プラスチック光ファイバー1が溶剤(具体的には、有機溶剤)に曝されても、溶剤がカラーリング材3を浸食することを抑制できる。そのため、溶剤のカラーリング材3の浸食に起因するプラスチック光ファイバー本体2の損傷を抑制できる。具体的には、プラスチック光ファイバー本体2におけるクラックの発生を抑制できる。
【0056】
(変形例)
以下の各変形例において、上記した一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、各変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0057】
一実施形態では、活性エネルギー線を照射するときに、不活性なガスを照射室に流入させたが、これに限定されず、上記した照射室への流入に代えて、または、加えて、例えば、塗布前の硬化性組成物に上記のガスを吹き込んでもよい。硬化性組成物における酸素の濃度の低減方法は、上記に限定されない。
【0058】
また、一実施形態では、ビニル量を、芳香環基(フェニル基)の吸光度に対するビニル基の吸光度の比で求めているが、例えば、芳香環基のピークの吸光度を用いず、硬化前の硬化組成物のビニル基の吸光度、および、硬化後の硬化物のビニル基の吸光度の比によって、硬化物のビニル基の反応率を求めることもできる。
【0059】
また、上記した一実施形態では、反応の前後で量が変化しない芳香環基のピークの吸光度を基準にして、ビニル量を求めているが、反応の前後で量が変化しない基として、芳香環基以外の基のピークを用いて、ビニル量を求めることもできる。
【0060】
プラスチック光ファイバー1は、断面視略円形状であるが、その形状は特に限定されず、例えば、図示しないが、断面略矩形状であってもよい。
【0061】
図1では、プラスチック光ファイバー本体2は、コア部4、クラッド部5およびオーバークラッド部6を備えるが、例えば、図示しないが、オーバークラッド部6を備えず、コア部4および接触層の一例としてのクラッド部5のみを備えてもよい。この場合には、カラーリング材3は、クラッド部5の外周面に接触する。
【実施例
【0062】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例および比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0063】
実施例1
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)(三菱ケミカル社製)からなるコア部4と、フッ素化PMMA(ダイキン社製FM450)からなるクラッド部5と、XYLEXX7300CL(製品名、SABICInnovativePlastics社製、ポリエステル変性ポリカーボネート樹脂)からなるオーバークラッド部6とを含み、外径470μmのプラスチック光ファイバー本体2を、溶融押出法で、製造した。
【0064】
次いで、硬化性組成物であるオプティカル ファイバー カラーリングインク ブルー(活性エネルギー線硬化型多官能アクリレートおよび青色顔料含有、Phichem社製)を準備した。
【0065】
その後、塗布装置および照射装置を搬送方向下流側に順に配置した。塗布装置は、内径が510μmの塗布口を備える。照射装置は、光源としてのマイクロ波励起方式のDバルブと、照射室としての石英製の通過管とを備える。
【0066】
硬化性組成物を塗布装置(ダイス径:510μm)に仕込んだ。また、照射装置には、窒素ガスを流量5L/分で流した。
【0067】
続いて、上記したプラスチック光ファイバー本体を塗布装置に通過させて、硬化性組成物をプラスチック光ファイバー本体の周面に塗布し、続いて、照射装置(フュージョン社製Dバルブ)により、331mJ/cmのエネルギーで、紫外線を照射して、硬化性組成物を硬化させて、カラーリング材を成形した。
【0068】
実施例2~比較例3
表1の記載に従って、プラスチック光ファイバー1の製造方法を変更した以外は、実施例1と同様に、処理して、プラスチック光ファイバー1を得た。
【0069】
評価
各実施例および各比較例のプラスチック光ファイバー1について、以下の事項を評価した。
【0070】
(密着性)
矩形板の表面に、両面粘着テープ(日東電工社製、No.500)を貼り付けた。
【0071】
次いで、両面粘着テープの表側の粘着面に、長尺方向長さ5cmのプラスチック光ファイバー1を5本並列配置し、続いて、指で、それらを両面粘着テープに押し付けた。
【0072】
その後、このプラスチック光ファイバー1の並列方向に沿って、プラスチック光ファイバー1に対して、カッターで切れ込みを入れた。切れ込みは、長尺方向における0.5mm間隔で複数入れた。これによって、1本のプラスチック光ファイバー1を10個のユニット(マス)に分けた。
【0073】
その後、これらプラスチック光ファイバーに、片面粘着テープ(日東電工社製、No.5000NS)を貼り付け、1kgのローラーで押し付けた。その後、片面粘着テープを、剥離速度1000mm/min以上で、プラスチック光ファイバー1から剥離した。繰返し回数は、2とした。
【0074】
その後、カラーリング材3が剥がれた部分のユニット(マス)を数えた。
【0075】
剥がれたユニット(マス)の数の割合の百分率を剥離率(%)として求めた。
◎:剥離率が、0%であった。
○:剥離率が、1%以上、40%以下であった。
×:剥離率が、41%以上であった。
【0076】
(ビニル基の反応率)
プラスチック光ファイバー1のカラーリング材3(硬化後の硬化物)のそれぞれに対して、ATR法によるFT-IR測定を実施し、スペクトルを得た。FT-IRの条件等を下記する。
【0077】
FT-IR:Thermo fisher scientific社製 nicolet4700
積算回数:32
検出器:DTGS
得られたスペクトルから、フェニル基に由来する1510cm-1の吸光度(ピーク高さ)と、ビニル基に由来する810cm-1の吸光度(ピーク高さ)とのそれぞれを得た。そして、フェニル基に由来する1510cm-1の吸光度(ピーク高さ)に対するビニル基(ピーク高さ)に由来する810cm-1の吸光度の比をビニル量として求めた。
【0078】
併せて、塗布前の硬化組成物についても、カラーリング材3と同様にして、上記した吸光度の比をビニル量として求めた。
【0079】
その後、下記式に従って、ビニル基の反応率を求めた。
【0080】
ビニル基の反応率(%)=[(硬化前の硬化性組成物のビニル量)-(硬化後の硬化物のビニル量)]/(硬化前の硬化性組成物のビニル量)×100
(耐溶剤性)
長尺方向が長さ1mのプラスチック光ファイバー1を、曲率半径が10mm以上となる円弧形状を有するように湾曲させた状態で、250mm×350mmのバットに入れた。
続いて、フタル酸ジイソノニル(溶剤)を、プラスチック光ファイバー1の長尺方向中間部が完全に覆われるように、バットに注いだ。
【0081】
その後、バットを室温で1日放置し、その後、プラスチック光ファイバー1をバットから取り出した。
【0082】
取り出したプラスチック光ファイバー1の光学顕微鏡(キーエンス社製、「VHX-950F」、レンズ:VH-Z100R)で観察し、下記基準で従って、耐溶剤性を評価した。
○:プラスチック光ファイバー本体2にクラックの発生が確認されなかった。
×:プラスチック光ファイバー本体2にクラックの発生が確認された。
【0083】
【表1】
【0084】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
プラスチック光ファイバーは、各種光学伝送に用いられる。
【符号の説明】
【0086】
1 プラスチック光ファイバー
2 プラスチック光ファイバー本体
3 カラーリング材
6 オーバークラッド部(接触層の一例)
図1