(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】有効成分顆粒の連続製造のための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20241211BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241211BHJP
A61K 31/155 20060101ALI20241211BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241211BHJP
A61K 9/22 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K9/20
A61K31/155
A61K47/32
A61K9/22
(21)【出願番号】P 2021560711
(86)(22)【出願日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 EP2020060278
(87)【国際公開番号】W WO2020208202
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-04-06
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521446381
【氏名又は名称】アド アドヴァンスト ドラッグ デリヴァリー テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADD ADVANCED DRUG DELIVERY TECHNOLOGIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ペリンガー,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】グラーヴェ,アネット
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブ,ミハエル
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-510426(JP,A)
【文献】第十八改正日本薬局方 参考情報,p.2524-2527
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分顆粒の連続製造のための方法であって、
(a)有効成分および任意選択で1つまたは複数の賦形剤を液体に溶解または分散させることによりスプレー組成物を調製するステップ;
(b)プロセス空間に固体粒子を提供するステップ;
(c)液体が蒸発するプロセス空間の注入ゾーンに前記スプレー組成物の液滴を導入するステップ;
(d)プロセスガスジェットの助けを借りて、プロセス空間内の噴霧された液滴を繰り返し通過するように
固体粒子を導くステップであって、含まれる液体の一部を既に失っている可能性のある液滴の少なくとも一部が固体粒子と接触し、凝集によってより大きな固体粒子が形成されるステップ;
(e)固体粒子の形態でプロセス空間から有効成分顆粒を取り出すステップ;
を含み、
使用される形態の有効成分は1.19以上のHausner比を有する、方法。
【請求項2】
前記Hausner比が1.25以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体が水である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記スプレー組成物が結合剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記スプレー組成物の乾燥物質含有量が少なくとも25重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
乾燥物質含有量中の前記有効成分の割合が少なくとも70重量%である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記スプレー組成物が懸濁液である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(b)による粒子の提供が、スプレー組成物を空のプロセス空間に噴霧し、プロセス空間内で液体を蒸発させることによって行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(e)において、所定のサイズに達した粒子が取り出される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
所定のサイズに達していない固体粒子がプロセス空間に戻される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
過度に大きい粒子が粉砕後にプロセス空間に戻される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
取り出される粒子のd
50値として表される粒径が100~600μmである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法に従って製造された有効成分顆粒であって、d
50値として表される粒径が50~1200μmである、有効成分顆粒。
【請求項14】
制御放出のためのコーティングが施されている、請求項13に記載の有効成分顆粒。
【請求項15】
前記コーティングがpH依存性放出をもたらす、請求項14に記載の有効成分顆粒。
【請求項16】
前記コーティングが、有効成分の少なくとも60%が回腸および結腸で放出されるように放出を制御する、請求項14または15に記載の有効成分顆粒。
【請求項17】
前記有効成分顆粒が、錠剤の全成分の総重量に基づき20重量%超の有効成分含有量を有する錠剤にさらに加工されることが意図されている、請求項13に記載の有効成分顆粒。
【請求項18】
錠剤の全成分の総重量に基づき50重量%超の有効成分含有量を有する錠剤を製造する方法であって、
(a)請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって有効成分顆粒を製造するステップ;
(b)任意選択で、有効成分顆粒を1つまたは複数の賦形剤と混合することにより打錠混合物を作製するステップ;
(c)有効成分顆粒、あるいは打錠混合物が作製される場合にはこの打錠混合物を圧縮して、錠剤を製造するステップ;
を含む、方法。
【請求項19】
前記錠剤が制御放出コーティングでコーティングされる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
放出がpHの関数として生じる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記錠剤が、有効成分の少なくとも60%を回腸および結腸で放出する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分顆粒の連続製造のための方法、顆粒自体およびその使用、特に錠剤の製造のためのその使用に関する。また、本発明は、制御放出剤形に関する。流動性の悪い活性物質が有効成分として用いられる。本発明の顆粒は、特に、それぞれの場合において錠剤の全成分の総重量に基づいて、20重量%超、特に50重量%超の有効成分含有量を有する錠剤に加工されることが意図されている。
【背景技術】
【0002】
製造および精製の後、医薬有効成分は通常、その有効成分を剤形に変換するために広範なさらなる加工ステップを必要とする形態で得られる。特に、有効成分は、容易に処方できる粒子の形態で得られないことが多い。
【0003】
必要な後処理ステップ(work-up step)には、粉砕、研磨、ふるい分けなどが含まれる。また、有効成分の溶液を噴霧乾燥して有効成分の粉末を製造することも知られている。
【0004】
しかしながら、有効成分の微細粒子形態は加工上の欠点を伴うため、原則として、有効成分の粉末は、錠剤などの剤形の製造が可能になる前にさらに加工する必要がある。これらの欠点には、しばしば流動性の欠如が含まれる。もう一つの欠点は、微粉末の安定性が低いことである。微粉末は、凝集したり塊になったりする傾向がある。
【0005】
このような欠点を回避するために、顆粒を提供するのが一般的である。
【0006】
有効成分および任意選択で1つまたは複数の賦形剤を含む顆粒は、例えば、単独でまたは他の成分と一緒にプレスして錠剤にすることにより、剤形(または投与形態)の製造に使用することができる。有効成分を含む粒子は、カプセルに充填したり、あるいは懸濁液または溶液用の粉末の形態で使用することもできる。また、それらにコーティングを施すこともできる。
【0007】
顆粒の製造について、多くの方法が知られている。これらの方法は、多くの場合、バッチ式で行われる。前処理され、通常は粉砕され、ふるいにかけられた有効成分が使用される。
【0008】
得られた顆粒の特性は、特に流動性および安定性に関して、必ずしも満足できるものではない。
【0009】
先行技術は、噴流層装置(spouted bed apparatus)を用いて顆粒を製造する提案も含む。特許文献1から、噴流層装置の固体流に液体を導入することによって、様々な材料の顆粒を製造することが知られている。しかしながら、この出願は、医薬活性物質の特殊性や、そのような物質を処理するのに適した条件を扱っていない。
【0010】
特許文献2は、噴流層装置のための制御可能なガス流入装置に関する。
【0011】
特許文献3は、酵素顆粒の製造方法、およびこのタイプの顆粒について記載する。製造には噴流層装置が用いられる。この出願は、錠剤の製造や、顆粒の打錠性については扱っていない。
【0012】
特許文献4は、0.001ニュートン以上の破断強度を有する医薬物質含有ペレット、その製造方法、およびそのようなペレットに基づく医薬製剤に関する。均一な粒度分布および滑らかな表面を有する球状のマンニトールペレットをマンニトール溶液から製造することができ、そのようなペレットに有効成分を積層することにより有効成分でコーティングできることが示されている。
【0013】
上記の文献には、Hausner(ハウスナー)比が1.19以上であることを特徴とする形態の有効成分など、流動性の悪い有効成分の加工についての言及はないが、そのような有効成分を用いた剤形の製造は基本的に知られている。
【0014】
数多くの特許出願や出版物が、メトホルミンおよびその酸付加塩の製剤化を扱っている。
【0015】
非特許文献1は、メトホルミンは打錠性が悪く、かつ流動性も悪いため、典型的には打錠前に結合剤を用いて湿式造粒することを指摘している。しかしながら、これは関連コストのため不利であると考えられる。したがって、ローラー圧縮による乾式法が提案されている。
【0016】
特許文献5は、メトホルミン塩酸塩を含む錠剤について記載する。この錠剤は、メトホルミン塩酸塩とメチルセルロースの乾燥混合物から作られている。
【0017】
特許文献6は、直接プレスして錠剤にすることができる、結晶性のメトホルミン塩酸塩粉末と粉末状の賦形剤との混合物について記載する。
【0018】
非特許文献2は、メトホルミン塩酸塩の湿気活性化乾式造粒(moisture-activated dry granulation)について記載する。
【0019】
非特許文献3は、メトホルミン塩酸塩が吸湿性であり、安定性に問題があることを指摘し、噴霧乾燥による直接圧縮可能なメトホルミン塩酸塩の開発について記載する。これは、典型的には直径50μm未満のほぼ球形の粒子を含む製品をもたらす。
【0020】
さらに、良好な効果を得るために、消化管のどこで有効成分が放出されるべきかを決定するために、剤形からのメトホルミンの放出に関する研究が行われている。特に、腸の深部でのみ放出されることが特に有利であることが示唆されている(非特許文献4:Https://www.diabsite.de/aktuelles/nachrichten/2016/160503b.html)。
【0021】
先行技術におけるすべての提案にかかわらず、特に有効成分が高い重量割合で剤形に含まれる場合に、流動性の悪い有効成分を含む剤形を製造するための改善された方法が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】独国特許出願公開第10322062号明細書
【文献】独国特許発明第10004939号明細書
【文献】国際公開第2004/108911号
【文献】国際公開第2008/110374号
【文献】米国特許第6,667,054号明細書
【文献】米国特許第6,117,451号明細書
【非特許文献】
【0023】
【文献】O.R. Arndt and P. Kleinebudde, AAPS PharmSciTech. 2018 Jul; 19 (5): 2068-2076
【文献】H. Takasaki et al., Results in Pharma Sciences 5 (2015) 1-7
【文献】B.S. Barot et al., Acta Pharm. 60 (2010) 165-175
【文献】H. Schatz, New Findings on Metformin (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の1つの目的は、活性物質の顆粒を製造するための連続的な方法を提供することであり、活性物質は流動性の低い活性物質である。この方法は、高い活性物質含有量を有する剤形に加工されるべき活性物質に特に適しているはずである。この方法は、調整可能な顆粒特性(粒径、湿度、嵩密度など)と共に、高い処理能力(ハイスループット)および高い収率を可能にすべきである。
【0025】
別の目的は、顆粒粒子(granulate particle)の粒径を調整することを可能にする方法を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる目的は、少なくとも1つの有効成分を含み、良好な流動性を示す顆粒粒子を製造することである。
【0027】
さらに、高レベルの安定性を有する顆粒を提供することも目的である。特に、顆粒粒子は、凝集したり塊になったりしないことが望ましい。
【0028】
別の目的は、半製品(semi-finished product)を製造する方法を提供することであり、この半製品は、有効成分と少なくとも1つの賦形剤からなり、好ましくはさらに錠剤に加工することができる。
【0029】
また、錠剤を製造する方法を提供することも目的の一つである。
【0030】
最後に、制御放出剤形およびその製造方法を提供することを目的とする。剤形は、例えば、pH値に応じて有効成分を放出することが望ましい。特に、回腸や結腸などの腸の深部でのみ有効成分を放出する剤形が提供される
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明によれば、有効成分を含む溶液または懸濁液の液滴を、液体が蒸発するプロセス空間に導入することにより、有効成分を含む顆粒の連続製造が可能であることが見いだされ、液滴は、適切に温度制御されたプロセスガスの助けを借りて、プロセス空間内に既にある粒子が、粒子に付着するのに少なくとも十分な液体をまだ含む液滴と接触するように導かれる。
【0032】
したがって、有効成分顆粒の連続製造のための本発明による方法は、以下のステップ:
(a)有効成分および任意選択で1つまたは複数の賦形剤を液体に溶解または分散させることによりスプレー組成物を調製する;
(b)プロセス空間に固体粒子を提供する;
(c)液体が蒸発するプロセス空間の注入ゾーン(injection zone)にスプレー組成物の液滴を導入する;
(d)プロセスガスジェットの助けを借りて、プロセス空間内の噴霧された液滴を固体粒子が繰り返し通過するように導くことにより、含まれる液体の一部を既に失っている可能性のある液滴の少なくとも一部が固体粒子と接触し、凝集によってより大きな固体粒子が形成される;
(e)固体粒子の形態でプロセス空間から有効成分顆粒を取り出す;
を含み、使用される形態の有効成分は、1.19以上、特に1.25以上のHausner比を有する。
【0033】
従来のスプレー塔での噴霧乾燥による粒子の製造とは対照的に、本発明によれば、形成された粒子は、溶液または分散液の液滴の凝集と液体の蒸発を繰り返すことにより、所望のサイズに達するまでプロセス空間内で循環される。
【0034】
したがって、本発明による方法では、粒子の成長を制御することができる。
【0035】
得られた顆粒を錠剤に加工することができる。既知の顆粒と比較して、特に安定性と流動性に関して改善された特性を有する。
【0036】
顆粒は、コーティングされた剤形、例えば、pH値に応じて有効成分を放出する剤形、特に回腸または結腸でのみ有効成分を放出する剤形に加工することもできる。
【0037】
以下、図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明による方法を実施するためのシステムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明に従って製造される顆粒粒子は有効成分(または活性成分)を含む。使用される形態では、有効成分は、1.19以上、特に1.25以上のHausner比を有する。
【0040】
Hausner比は、タップ密度の嵩密度に対する比として決定される。タップ密度は、メスシリンダー内のサンプルを、体積変化が実質的に見られなくなるまで機械的にタップして得られたタップ体積に基づいて決定される。
【0041】
1.00~1.11の範囲内のHausner比は優れた流動性を示し、1.12~1.18の範囲内のHausner比は良好な流動性を示す。
【0042】
より高い値では、流動性を向上させることが望ましい。本発明による方法は、低い流動性、例えば1.19以上または1.25以上のHausner比を有する有効成分から出発して、好ましくは1.18以下、特に1.11以下のHausner比によって特徴付けられる、改善された流動性を有する有効成分顆粒を得ることを可能にする。
【0043】
有効成分は、さまざまな形態で製造現場に到着することができる。本発明によれば、使用される有効成分は、1.19以上、特に1.25以上の指定されたHausner比によって示されるような、流動性の悪い形態を有する。
【0044】
流動性の改善は、大用量で投与され、したがって患者に提供される剤形の重量の大きな割合を占めることが望まれる有効成分にとって、特に興味深いものである。本発明よれば、特に、全成分の総重量に基づき50%超の有効成分含有量を有する剤形に加工される有効成分が使用される。
【0045】
例示的な有効成分は、パラセタモール、イブプロフェン、カルバマゼピン、カフェイン、炭酸ランタン、ラネル酸ストロンチウム;プラジガスタットナトリウム;ミコフェノール酸ナトリウム;エラゴリクス;エプロサルタン(特にメシル酸塩);イルベサルタン;アモキシシリン;レボフロキサシン;セベラマー(特に塩酸塩または炭酸塩);ソホスブビル;アリスキレン(alisikiren);セレコキシブ;メサラミンなどである。
【0046】
一実施形態では、有効成分は、メトホルミンまたはその薬学的に許容される塩(塩酸塩など)ではない。
【0047】
一実施形態によれば、顆粒粒子は有効成分からなる。
【0048】
有効成分に加えて、顆粒粒子は、1つまたは複数の賦形剤も含むことができる。賦形剤として、任意の薬学的に適切な賦形剤を使用することができる。特に、顆粒および錠剤の製造に通常使用される賦形剤が使用される。例示的な賦形剤は、結合剤(またはバインダー)、潤滑剤、崩壊剤および充填剤(またはフィラー)である。
【0049】
好ましい賦形剤は結合剤である。結合剤は、打錠時に顆粒粒子の結合を促進する。
【0050】
また、一実施形態では、それらは、特に有効成分が液体中に完全にまたは部分的に分散される場合に、顆粒粒子の形成を支持する。
【0051】
例示的な結合剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)である。PVPが好ましい。
【0052】
結合剤は、例えば、乾燥物質含有量に基づいて、0.1~10重量%、好ましくは1~7重量%、特に2.5~5重量%の量で使用することができる。
【0053】
本発明による方法では、スプレー組成物がプロセス空間に噴霧される。スプレー組成物は、溶液または懸濁液である。
【0054】
溶液または懸濁液を調製するための液体として、活性物質と反応しないまたは有意な程度まで反応しない液体であって、活性物質の分解を生じさせないまたは有意な程度まで生じさせない条件下で除去することができる任意の液体を使用できる。
【0055】
好ましい液体は水を含む。特に、液体は水である。
【0056】
スプレー組成物は、有効成分および任意選択で1つまたは複数の賦形剤を含む。スプレー組成物は、好ましくは、高濃度の有効成分および/または賦形剤を含む。
【0057】
スプレー組成物は、非溶解形態の成分を含むこともできる。好ましい実施形態では、1つまたは複数の成分の飽和溶解度を超えているため、懸濁液が存在する。
【0058】
スプレー組成物中の乾燥物質含有量が高いと、所望の固体粒子を得るために蒸発させなければならない液体が少なく、高い処理能力(スループット)を可能にする。したがって、高い乾燥物質含有量が好ましい。また、懸濁液を使用することも好ましい。
【0059】
スプレー組成物の乾燥物質含有量は、通常、少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも40重量%、特に少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも65重量%である。
【0060】
乾燥物質含有量は、スプレー組成物の総重量に対する、使用される固形物の総重量を意味する。
【0061】
乾燥物質含有量中の有効成分の割合は、典型的には、少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に少なくとも90重量%である。100重量%であってもよい。
【0062】
本発明の方法では、スプレー組成物から液滴が形成される。溶液または懸濁液からの液滴は流動性を有する。
【0063】
プロセス空間において、それらは蒸発により液体を失う。小さな固体粒子が液滴から形成され得る。
【0064】
しかしながら、本発明による方法の特徴は、すでにプロセス空間内にある粒子が、まだ少なくとも十分な液体を含んでいる液滴と接触し、それによってそれら液滴が粒子に付着することである。液滴は、固体粒子と接触したときに、少なくとも表面にくっつかなければならない。
【0065】
このような付着により、十分なサイズの粒子を形成することが可能となる。
【0066】
この目的のために、前もって導入された粒子、すなわち固体形態でプロセス空間内に既に導入されている粒子、またはスプレー組成物から噴霧により形成された粒子が、スプレー組成物の液滴と繰り返し接触して、凝集体が形成されるようにすることにより、粒子の凝集を可能にすることが不可欠である。本発明に従って製造される固体粒子は、典型的には、互いにしっかりと結合している小球体(globule)の凝集体である。
【0067】
本発明による方法では、粒子は、定義された方法で誘導されるプロセスガスジェットの助けを借りてプロセス空間内で移動し、固体の循環流が生じる。固体流は、固体粒子に付着することができる液滴が導入される装置の領域(注入ゾーン)につながる。
【0068】
一実施形態によれば、所望のサイズに達した粒子は、プロセス空間から出ることができる。より小さい粒子はプロセス空間内に残り、再び液滴と接触することができる。別の実施形態によれば、固体粒子の一部がプロセス空間から取り出される。取り出された材料は分類され、小さな粒子はプロセス空間に戻され得る。過度に大きい粒子も、粉砕された後にプロセス空間に戻され得る。
【0069】
プロセスガスは、例えば、空気、あるいは窒素、二酸化炭素、希ガスなどの不活性ガスであり得る。
【0070】
プロセスガスジェットは、物質の輸送と熱の輸送の両方に不可欠である。本発明によると、プロセスガスジェットの温度は、噴霧された液滴が既に固化した粒子と接触し、より大きな粒子が形成されるように選択される。特に、製品がその安定性を損なうような温度条件に曝されることなく、一方で液体の蒸発によって十分な乾燥が確保されるような温度条件がプロセス空間に提供される。
【0071】
プロセスガスジェットは、通常、60~100℃の範囲の温度を有する。製品温度は、通常、30~60℃である。
【0072】
プロセスガスジェットは、好ましくは、70~90℃の範囲の温度を有する。製品温度は、好ましくは35~50℃である。
【0073】
特に好ましい実施形態では、プロセスガスの温度は80℃であり、製品温度は40℃である。
【0074】
本発明によれば、スプレー組成物からの液滴と、固体粒子は、噴流層(spouted bed)内で互いに接触する。噴流層は、完全に流動化した固体粒子が、経時的に安定な閉じた固体の流れの中にあることを意味すると理解される。噴流層は、定義された方法で誘導されたプロセスガスジェットの助けを借りて生成される。噴出層内には3つの流動化状態またはゾーンがある。第1ゾーンまたは噴出ゾーン(ejection zone)では、固体粒子は、定義された方法で誘導されるプロセスガスジェットの作用下で加速され、このゾーンの粒子はプロセスガスジェットの流れの方向に移動する。プロセスガスジェットは通常、垂直上向きに誘導される。したがって、噴流層の噴出ゾーンでは、主に垂直上向きの流れがある。続く第2ゾーンまたは噴水ゾーン(fountain zone)では、粒子はその流れの方向を変える。主にクロスフロー(直行流)がある。最終的に、粒子は第3ゾーンまたはリターンゾーンに入る。そこで粒子は、最終的に定義された方法で誘導されるプロセスガスジェットの影響下に戻るまで、下方に移動し、再び第1ゾーンでジェットに沿って運ばれる。リターンゾーンでは、通常、粒子は重力の影響下で移動する。
【0075】
スプレー組成物は、二流体ノズルおよび多流体ノズルを通して噴霧することができる。また、圧力ノズルを通して噴霧することも可能である。あるいは、ロータリーアトマイザー、ジェットカッター、超音波液滴化装置(ultrasonic dropletizer)、および当業者に知られている他の装置を用いて液滴化を行うことができる。
【0076】
本発明によれば、スプレー組成物の液滴をプロセス空間に噴霧し、これらの液滴を乾燥させることにより、固体粒子から核を形成することができ、その後、所望のサイズの粒子を形成するためにこれらをさらに液滴と接触させる。代替または追加として、この方法における固体粒子を外部から供給してもよい。例えば、プロセスから取り出された過度に小さい粒子を、種材料としてプロセス空間に戻すことができる。同様に、プロセスから取り出された過度に大きな粒子または粒子の凝集体を、任意の粉砕ユニットによって粉砕し、種材料としてプロセス空間に戻すことができる。
【0077】
本発明による方法によって形成された粒子は、プロセス空間から取り出される。プロセス空間からの完成品の材料排出、またはさらに下流のプロセス空間への材料輸送は、例えば、固体のクロスフローから下向きの流れへの移行の領域で行われ得る。一実施形態によれば、プロセス空間から排出される粒子は分類されない。別の実施形態によれば、プロセス空間から排出される粒子は、1つまたは複数のシフター(ふるい)によって分類および除去される。
【0078】
本発明による方法は、例えば、独国特許出願公開第10322062号に記載されているような装置の助けを借りて実施することができる。この出願の内容は、参照により本出願に組み込まれる。
【0079】
本発明による方法は、好ましくは、添付の図面に示すような装置を用いて実施される。これについては、以下で詳細に説明する。
【0080】
プロセスガス10(通常は加熱された空気)は、矩形断面9および境界を画定する側壁5を有する供給空気チャンバ17に供給される。プロセスガス10は、供給空気チャンバ17内に分布し、ギャップ開口部1を介してガスジェット2の形態でプロセス空間8に入る。好ましくはギャップ1に水平に入るプロセスガスの流れは、偏向部3によって、好ましくはプロセス空間8内に上方に偏向され、一種のフリージェットとして装置内に流入する。さらに、任意選択で、装置の断面を拡張ゾーン14で増加させてよく、プロセスガスの流れの速度が上部に向かって着実に減少するようにすることができる。ガスは、排気部19を介して拡張ゾーン14の上方で排気ガス11として装置から出て行くが、この排気部には、除塵システム(例えば、フィルターカートリッジまたは織布フィルター要素)を任意選択で組み込むことができる。
【0081】
プロセス空間8には、プロセスガスジェットによって上方に運ばれる多数の粒子が存在する。固体粒子は、方法の開始時にプロセス空間に導入することができるが、噴霧されたスプレー組成物から固体粒子を作ることによって方法を開始することもできる。
【0082】
プロセス空間8の上部領域およびその上に位置する拡張ゾーン14では、ガス速度が低下するため、上向きに流れる粒子がガスジェット23から横方向に出て、プロセス空間8に戻る。プロセス空間8は、傾斜した側壁29によって下側領域の境界が画定される。この横方向の傾斜の結果、粒子は重力の作用下で、リターンゾーン24を介してガス入口ギャップ1の方向に搬送され、そこでプロセスガスによって再びプロセス空間8内に運ばれる。
【0083】
この機構は、上昇流とプロセスガス入口方向への戻りからなる非常に均一な固体循環15を作り出す。その結果、プロセス空間8内の非常に少量の粒子であっても、偏向部3の上のコアゾーンに高い粒子密度が存在する。この領域には、1つまたは複数のスプレーノズル7が配置され、それはプロセスガスジェットと同じ方向に上向きに噴霧し、スプレー組成物を導入する役割を果たす。
【0084】
コアゾーンでの高い粒子負荷は、スプレーゾーン22での熱および質量の移動に非常に有利な条件をもたらす。スプレー組成物は、蒸発によって急速に液体を失う。プロセス空間に既に存在する固体粒子が、含まれる液体の一部を既に失っている可能性のあるスプレー組成物の液滴と接触すると、より大きな粒子および粒子の凝集体が形成される。
【0085】
プロセスガスは、固体を含む排気20として粒子の一部ならびに微細材料および粉塵をプロセス空間8から排出することができる。これらの粒子を除去するために、任意選択で排気部19に統合されたフィルターシステム、または装置の下流に接続された除塵システムを使用することができる。統合型除塵システム25の場合、例えば保持された粒子を分離された固体21としてプロセス空間8に戻すために、圧縮空気パルス18を使用することができる。
【0086】
統合されたフィルターシステムを備えた流動床装置と比較して、上向きのプロセスガスの流れが本質的に局在し、したがって戻されるべき粒子がガスジェットの外側で安全に沈むことができることによって、粉塵の戻しが容易になる。この機構は、ガス入口ギャップ1付近での吸引効果によってさらに促進される。あるいは、排気から分離された粒子をプロセス空間8に戻すことができる。この目的のために、傾斜した側壁29の下部領域に様々なタイプのフィーダー26を配置することができる。ガス入口ギャップ1の付近のプロセスガスジェットが高速であるため、微粒子は引き込まれてスプレーゾーン22に送られ、そこでスプレー組成物で濡れて成長プロセスに参加する。
【0087】
任意選択で、内蔵されたガイドプレート16が粒子の循環を安定させる。
【0088】
連続的なプロセス管理のために、装置は、任意選択で固体用の異なる供給(entry)システム13を備えることができる。このようにして、例えば、(大きすぎる)顆粒を粉砕することにより得られる粒子および/または小さすぎる顆粒からなる粒子をプロセスに供給することができる。これらの粒子はその後、造粒の核として、あるいは起動時間を短縮するための開始充填剤(starter filling)として機能する。さらに、顆粒内に埋め込まれるべき添加物を固体形態でプロセスに供給することができる。
【0089】
さらに、プロセス空間8から粒子を除去する(取り出す)ことができるように、装置に排出要素4を設けることができる。これは、例えば、オーバーフローを介して、または体積排出要素(例えば、ロータリーバルブ)を介して、または重力シフター(例えば、シフティングガスを充填されたジグザグシフターまたはライザーパイプシフター)を介して行うことができる。
【0090】
粉砕によって顆粒形成プロセスのための核として十分な微細材料を作り出すために、任意選択で、機械的ユニット27を、プロセス空間8の傾斜壁、好ましくはリターンゾーン24の領域の傾斜壁に取り付けることができる。さらに、任意選択で、リターンゾーン24を、ヒーターまたは他の伝熱装置28を配置するために使用することができる。例えば、液体または気体の熱伝達媒体を使用して壁を加熱または冷却するために使用するために、装置の壁を二重壁にすることができる。このようにして、最適な表面温度を設定することができる。
【0091】
プロセス空間8、あるいはその上の装置部分である拡張ゾーン14および排気部19に、任意選択でスプレーノズル6を配置することができ、これらのノズルは好ましくは下向きに噴霧するが、部分的に上向きにも噴霧する。ここでも、例えば噴霧乾燥/噴霧固化によって、装置内に造粒核を作るために液体製剤を噴射することができる。あるいは、添加剤や他の成分を、スプレー装置6および7の一部を介して液体形態で噴霧し、それによって顆粒構造内に均一に埋め込むこともできる。スプレーノズル7が温度負荷のかかった供給空気チャンバ17を通過する場合、液体製剤の損傷を防ぐために、液体を運ぶ部分に、任意選択で断熱材あるいは様々な冷却または加熱システム12を設けてもよい。
【0092】
本発明による方法の利点は、非常にシンプルな構造であり、それは高い動作信頼性および故障に対する不感症と非常に優れた洗浄オプションを兼ね備えている。これにより、特に製品変更の際の医薬および衛生要件に関して、製造条件が改善される。
【0093】
もう一つの利点は、さらなる加工の前に、使用する有効成分を粉砕する必要がないことである。打錠用賦形剤を添加した後、錠剤へのさらなる加工が可能である。
【0094】
本発明による方法は、高収率で顆粒を製造することを可能にする。細かく分割された材料をプロセスに送り戻すことができ、あるいは、内部分類の場合には全く排出されないため、実質的に有効成分の損失はない。
【0095】
本発明はまた、本発明に従って製造される顆粒に関する。この顆粒は、本発明の方法により得られ、50~1200μm、例えば100~600μm、好ましくは150~500μmのd50を有する。
【0096】
加えて、あるいはそれとは別に、顆粒は、0.400~0.900g/ml、好ましくは0.500~0.600g/mlの嵩密度を有する。
【0097】
本発明による製品は流動性を有する。
【0098】
本発明による製品は、高い安定性を有する。特に、保存中に凝集(aggregation)や集塊(clumping)がない。
【0099】
上記のように得られた顆粒は、さらに制御放出剤形に加工することもできる。そのような投与形態には、特に、有効成分がpH依存的な様式で放出される投与形態が含まれる。回腸や結腸などの腸の深部でのみ有効成分を放出する制御放出型剤形が好ましい。
【0100】
一実施形態によれば、顆粒粒子は、有効成分の放出を制御するための1つまたは複数の機能性コーティングを施される。
【0101】
適切なコーティングは、有効成分のpH依存性放出を確実にする。例えば、(腸溶性)コーティングが知られている。このようなコーティングは、本発明に従って適用することができる。
【0102】
小腸の遠位部(回腸)およびその後の結腸でのみ溶解するコーティングも使用することが可能である。また、それらは、有効成分の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%が回腸および結腸で放出されるように、有効成分の放出を制御する。
【0103】
上記のコーティングは、例えば、Wurster法の助けを借りて適用することができる。
【0104】
ポリマー組成物、特に、腸溶性コーティングをもたらすポリマー組成物は、コーティング材料として適している。本発明によれば、5.5超のpH値で溶解するコーティングを使用することができる。本発明によれば、6.5超、例えば6.8超、特に7.0超のpH値で溶解するコーティングも使用することができる。
【0105】
好適なコーティング材料は、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらのエステルを重合して得られるポリマーである。
【0106】
好ましいポリマーは、メタクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(1:2)(Eudragit(登録商標)S100(粉末)およびEudragit(登録商標)S12.5(有機溶液)として市販されている)、ならびにアクリル酸メチル・メタクリル酸メチル・メタクリル酸共重合体(7:3:1)(Eudragit(登録商標)FS30D(水性分散液)として市販されている)である。
【0107】
所望の放出挙動を調整するために、これらのポリマーを単独で、または他のEudragit(登録商標)タイプなどの他のポリマーと組み合わせて使用することができる。
【0108】
慣用的な賦形剤や添加剤をポリマーと混合してもよい。
【0109】
顆粒粒子をコーティングする代わりに、本発明による方法で得られた顆粒粒子を錠剤に加工しまたはカプセルに充填し、その後に1つまたは複数のコーティングを施すことにより、制御放出剤形を提供することもできる。上記の情報はこれらのコーティングにも適用される。
【0110】
一実施形態によると、コーティングされた錠剤またはカプセルからの放出は、有効成分の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%が回腸および結腸で放出されるような様式で生じる。
【0111】
評価方法
粒子分析は、光学式画像評価システムCamsizer XT(Retsch社製)を用いて行われる。CAMSIZER XTは、デジタル画像処理の原理を利用する。分散粒子流が、2つのLEDストロボ光源を通過する。粒子によって投影された影が、2台のデジタルカメラで記録される。粒子径は、粒子投影の最大弦長の測定セットのうち、最も短い弦長として決定される。
【0112】
粒子集団は、粒子の総体積に対するxより小さい粒子の体積割合(%)を示す累積値Q3(x)によって特徴付けられる。値d50は、Q3(x)が50%になる値xを示す。
【0113】
製品の水分含有量は、ザルトリウスMA100水分計(ハロゲンランプ、105℃、自動スイッチオフ)を用いて測定する。本発明による顆粒の水分含有量は、典型的には1重量%未満である。
【0114】
サンプルの光学的評価のために、AXIO顕微鏡(Zeiss社製)を用いて記録を行う。
【0115】
材料の特性を評価するために、試験サンプルをD2 Phaser(Brucker社製)X線回折装置で測定する。
【0116】
嵩体積/嵩密度は、メスシリンダーで測定する。サンプルを慎重にメスシリンダーに流し込む。このとき、サンプルを圧縮させてはならない(ノックしたりぶつけたりしない)。
【0117】
メスシリンダー内の嵩体積/嵩密度を決定した後、同じサンプルをシリンダー内で機械的にタップし(タップ密度計(tamping volumeter)ERWEKA SVM20)、体積を再度読み取る。この作業を、体積の変化が実質的に見られなくなるまで続ける。
【0118】
嵩密度およびタップ密度(tamped density)は、質量と嵩密度またはタップ体積(tamped volume)の測定値から計算される。
【0119】
安息角とは、漏斗から自由に流れる製品が表面に円錐形を形成したときに生じる流れの傾きの角度である。その測定はRTG01トリクルテスター(RTG01 trickle tester)を用いて行う。
【実施例】
【0120】
本発明を具体的な適用例を用いて説明するが、何ら制限されるものではない。実施例は、有効成分としてメトホルミン塩酸塩を用いて実施した。これらは、本発明に従って使用される他の有効成分を用いても同様の方法で実施することができる。
【0121】
実施例1-スプレー組成物の調製
処理されるメトホルミン塩酸塩を大きな塊に完全に集めた。有効成分の大きな塊は、最初に小片に砕かなければならず、その小片を、ローター・ステーター・ミルの助けを借りてさらに粉砕した。
【0122】
これを蒸留水で乾燥物質含有量50%の懸濁液にした。この懸濁液をパドルスターラーで撹拌した後、ノズルの詰まりを防ぐために500μmのふるいにかけた。懸濁液中に粗い成分がまだ存在することがわかった。この懸濁液をUltra Turrax T-50(IKA社製)を用いて、10,000rpmで10分間再度撹拌した。以下の実験のすべての懸濁液を同じ方法で調製した。
【0123】
さらなる実験では、メトホルミン塩酸塩の溶液を調製した。乾燥物質含有量28%の水溶液を得ることができた。このためにUltra Turraxを使用する必要があった。
【0124】
実施例2-賦形剤を添加しないメトホルミン塩酸塩製品の調製
造粒試験は、噴流層インサートを備えた実験室システムで連続的に実施した。
【0125】
スプレー組成物は、ボトムスプレーノズル(2物質ノズル;ノズル空気温度は加熱しない)で噴霧された。
【0126】
乾燥物質含有量28%のメトホルミン塩酸塩水溶液が装置内に噴霧された。
【0127】
スプレー組成物は、ペリスタルティックポンプを用いて貯蔵容器(5リットル容器;非加熱)からノズルに搬送された。
【0128】
噴流層の上にフィルターが配置された。粉塵がプロセス空間に残るように、圧縮空気のブラストによってそれらは定期的に浄化された。
【0129】
プロセス空気は速度制御された排気ファンを通って運ばれた。空気の加熱には、電気式の加熱装置が使用された。
【0130】
製品の排出は、ジグザグシフター内の空気の流れによって調整され、安定した動作条件下で、スプレー組成物で供給されたのと同じ量の乾燥物質が無塵顆粒として排出された。
【0131】
シフターからの細かい粉塵は、プロセスチャンバーに戻された。
【0132】
記載された方法によれば、100%の有効成分からなる有効成分ペレットが溶液から得られた。
【0133】
このプロセスは非常に安定していた。
【0134】
まず、小さな粒子が作製された(サンプルA;d50=123.2μm)。
【0135】
次に、粒子の成長を促進させるために、スプレー圧力を下げ、スプレー速度を高めた。その後、より大きな粒子を作製することができた(サンプルB;d50=300.9μm)。
【0136】
実施例3-PVPおよび粒子サイズ
この例では、5重量%のPVP Kollidon K-30(乾燥物質に基づく)を用いてメトホルミン塩酸塩の水中懸濁液を調製した。この懸濁液の乾燥物質含有量は51.3%であった。前の実験の残留層でプロセスを開始した。
【0137】
2.0mmのノズルを使用した。懸濁液を攪拌しながら噴霧した。
【0138】
プロセス空間から排出された製品のd50は197.6μmであった。
【0139】
その後、粒子の成長を促すために、スプレー圧力を下げ、スプレー速度を高めた。層塊(layer mass)を交換した後に排出された製品のd50は423.6μmであった。
【0140】
この製品の粒度分布を
図2に示す。また、サンプルの顕微鏡写真を
図3に示す。得られた製品粒子は、しっかりと結合した球体の凝集体であることがわかる。
【0141】
最終製品において5%のPVP含有量で異なる粒径を製造することが可能であった。
【0142】
実施例4-スループット
この試験では、プロセスをさらに最適化する必要があった。このため、メトホルミン塩酸塩とPVPの水中懸濁液をさらに高濃縮することを試みた。乾燥物質含有量が69.4%の懸濁液が得られた。この乾燥物質含有量に基づき、この懸濁液にも5%のPVPが含まれていた。
【0143】
高粘度にもかかわらず、この懸濁液を噴霧することが可能であった。蒸発させなければならない水の量が少ないため、スループット(処理能力)の大幅な向上を達成することができた(実施例3では1.3kg/h、本実施例では2.9kg/h)。
【0144】
まず、ここでも小さな粒径のものが作製された(d50=186.8μm)。その後、より大きな粒子が作製された(d50=475.3μm)。ノズル詰まりやその他の問題もなく、プロセスが終了した。
【0145】
実施例5-結合剤含有量の変化
この試験では、PVPの含有量を5%から2.5%に減らした(乾燥物質を基準とする)。懸濁液の濃度は維持した(68.8%)。層塊を交換した後、まず小さな粒子(d50=184.7μm)、その後に粗い粒子(d50=269.2μm)が作製された。
【0146】
さらなる試験のために、再び懸濁液を調製した(乾燥物質含有量70.2%)。今回は、ほんの1%のPVP(乾燥物質を基準とする)を添加した。ここでも、最初に小さな粒子径(d50=165.3μm)が作製された。その後、より大きな粒子(d50=230.5μm)が作製された。
【0147】
このように、さまざまなサイズの粒子を製造することができる。
【0148】
実施例6-流動性
製品の流動性について結論を導き出すさまざまなパラメータが決定された。
【0149】
純粋な有効成分は、評価を行うことができるように、測定のためにわずかに解凝集された。
【0150】
Hausner(ハウスナー)比は、タップ密度の嵩密度に対する比として決定した。1に近い値の場合、良好な投与精度(dosing accuracy)が期待できるが、1を大きく超える値の場合、投与精度が振動に依存する可能性がある。本実施例では、本発明によるサンプルのHausner比が原料と比較して低下することで、計量精度が向上することを示す。
【0151】
Carr指数は、100×(嵩体積-タップ体積)/嵩体積の式で求めた。Carr指数が小さいほど良好な流動挙動を示す。15未満の値は、流動性の良い製品を示す。
【0152】
安息角が小さいほど良好な流動挙動を示す。
【0153】
【0154】
実施例7-安定性
本発明によるサンプルを、密封したプラスチックバッグに入れて、室温で3ヶ月間保存した。良好な流動性が維持された。
【0155】
実施例8-錠剤の製造
前述の実施例のいくつかで得られたメトホルミン塩酸塩製品を用いて錠剤を製造した。
【0156】
使用したメトホルミン塩酸塩製品の組成および特性を以下の表2に示す。
【表2】
【0157】
打錠混合物を製造するために、1,000重量部のメトホルミン塩酸塩製品を、離型剤としての3重量部のステアリン酸マグネシウム、および崩壊剤としての31重量部のクロスカルメロースナトリウム(AcDiSol(登録商標))とそれぞれ混合した。
【0158】
両凸状の錠剤を製造するために,パンチ穴の直径が約10mmのFette社製の打錠機(102i)を使用した。充填深さは9mmであった。1時間あたり10,000錠の速度で使用した。
【0159】
【0160】
全ての場合において、許容可能な崩壊時間を有する錠剤を得ることができた。
【0161】
実施例9-コーティングされた顆粒粒子の調製
コーティングされた顆粒はメトホルミン塩酸塩顆粒から作られる。コーティングの目的は、有効成分が主に回腸および結腸で放出されることを確実にすることである。
【0162】
例示的なコーティング懸濁液の処方
-EUDRAGIT(登録商標)FS 30 D(Evonik Roehm GmbH,Darmstadt,DEから入手可能) 2000g
-タルク(Merck KGaA,Darmstadt,DEから入手可能)300g
-クエン酸トリエチル(TEC)(Vertellus Inc.,Greensboro,USAから入手可能)37.5g
-水(脱塩)2350g
【0163】
コーティング懸濁液を作製するために、パドルスターラー(IKA GmbH&Co.KG,Staufen,DE)を使用して、EUDRAGIT(登録商標)FS 30D、タルク、およびTECを混合する。この懸濁液を0.1mmのふるいに通す。
【0164】
懸濁液は、20.0%の固体含有量と12.8%のポリマー含有量を有する。
【0165】
この懸濁液を、流動床法を用いてメトホルミン塩酸塩顆粒(d50=350μm)に塗布する。この目的のために、1.2mmのノズル(トップスプレー)と2バールの吹付空気圧力(atomizing air pressure)を備えたGlatt GPCG1流動床システム(Glatt GmbH,Binzen,DE)を使用する。さらなるプロセスパラメータは、7~10g/分/kgの噴霧速度、38~40℃の入口空気温度、26~30℃の出口温度である。
【0166】
使用したメトホルミン塩酸塩顆粒を基準にして、30.0重量%のポリマーが導入されるまで懸濁液が噴霧される。
【0167】
その後、最終製品をユニット内で乾燥させる。凝集を防ぐために、乾燥前に0.5%のアエロジル(Aerosil)(登録商標)200(焼成二酸化ケイ素)が添加される。
最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
[実施態様1]
有効成分顆粒の連続製造のための方法であって、以下のステップ:
(a)有効成分および任意選択で1つまたは複数の賦形剤を液体に溶解または分散させることによりスプレー組成物を調製する;
(b)プロセス空間に固体粒子を提供する;
(c)液体が蒸発するプロセス空間の注入ゾーンにスプレー組成物の液滴を導入する;
(d)プロセスガスジェットの助けを借りて、プロセス空間内の噴霧された液滴を固体粒子が繰り返し通過するように導くことにより、含まれる液体の一部を既に失っている可能性のある液滴の少なくとも一部が固体粒子と接触し、凝集によってより大きな固体粒子が形成される;
(e)固体粒子の形態でプロセス空間から有効成分顆粒を取り出す;
を含み、
使用される形態の有効成分は1.19以上のHausner比を有する、方法。
[実施態様2]
前記Hausner比が1.25以上である、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
前記液体が水である、実施態様1または2に記載の方法。
[実施態様4]
前記スプレー組成物が結合剤をさらに含む、実施態様1~3のいずれかに記載の方法。
[実施態様5]
前記スプレー組成物の乾燥物質含有量が少なくとも25重量%である、実施態様1~4のいずれかに記載の方法。
[実施態様6]
乾燥物質含有量中の前記有効成分の割合が少なくとも70重量%である、実施態様5に記載の方法。
[実施態様7]
前記スプレー組成物が懸濁液である、実施態様1~6のいずれかに記載の方法。
[実施態様8]
ステップ(b)による粒子の提供が、スプレー組成物を空のプロセス空間に噴霧し、プロセス空間内で液体を蒸発させることによって行われる、実施態様1~7のいずれかに記載の方法。
[実施態様9]
ステップ(e)において、所定のサイズに達した粒子が取り出される、実施態様1~8のいずれかに記載の方法。
[実施態様10]
所定のサイズに達していない固体粒子がプロセス空間に戻される、実施態様1~8のいずれかに記載の方法。
[実施態様11]
過度に大きい粒子が粉砕後にプロセス空間に戻される、実施態様1~10のいずれかに記載の方法。
[実施態様12]
取り出される粒子のd
50
値として表される粒径が100~600μmである、実施態様1~11のいずれかに記載の方法。
[実施態様13]
実施態様1~12のいずれかに記載の方法に従って製造された有効成分顆粒であって、d
50
値として表される粒径が50~1200μmである、有効成分顆粒。
[実施態様14]
制御放出のためのコーティングが施されている、実施態様13に記載の有効成分顆粒。
[実施態様15]
前記コーティングがpH依存性放出をもたらす、実施態様14に記載の有効成分顆粒。
[実施態様16]
前記コーティングが、有効成分の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、または特に少なくとも80%が回腸および結腸で放出されるように放出を制御する、実施態様14または15に記載の有効成分顆粒。
[実施態様17]
前記有効成分顆粒が、錠剤の全成分の総重量に基づき20重量%超の有効成分含有量を有する錠剤にさらに加工されることが意図されている、実施態様1~12のいずれかに記載の方法または実施態様13に記載の有効成分顆粒。
[実施態様18]
錠剤の全成分の総重量に基づき50重量%超の有効成分含有量を有する錠剤を製造する方法であって、
(a)有効成分顆粒を製造するステップであって、使用される有効成分形態は1.19以上のHausner比を有し、その方法は実施態様1~12のいずれかに記載の方法である、ステップ;
(b)任意選択で、有効成分顆粒を1つまたは複数の賦形剤と混合することにより打錠混合物を作製するステップ;
(c)有効成分顆粒、あるいは打錠混合物が作製される場合にはこの打錠混合物を圧縮して、錠剤を製造するステップ;
を含む、方法。
[実施態様19]
前記錠剤が制御放出コーティングでコーティングされる、実施態様18に記載の方法。
[実施態様20]
放出がpHの関数として生じる、実施態様19に記載の方法。
[実施態様21]
前記錠剤が、有効成分の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも80%を回腸および結腸で放出する、実施態様20に記載の方法。
【符号の説明】
【0168】
1 ギャップ(複数可)
2 ガスジェット(複数可)
3 偏向部
4 排出要素
5 側壁
6 任意の方向に噴霧するスプレーノズル(複数可)
7 上向きに噴射するスプレーノズル(複数可)
8 プロセス空間
9 プロセスステップの断面
10 プロセスガス
11 排気ガス
12 断熱材ならびに冷却または加熱システム
13 供給システム
14 拡張ゾーン
15 固体循環
16 バッフル(複数可)
17 供給空気チャンバ
18 圧縮空気のパルス
19 排気部
20 固体を含む排気
21 分離および再生された固体
22 スプレーゾーン
23 ガスジェットからの粒子の脱出
24 リターンゾーン
25 除塵システム
26 フィーダー
27 粉砕のための機械的集合体
28 電熱装置
29 側壁