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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/66 20060101AFI20241211BHJP
   B41J 11/42 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
B41J11/66
B41J11/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022007266
(22)【出願日】2022-01-20
(65)【公開番号】P2023106125
(43)【公開日】2023-08-01
【審査請求日】2024-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】西沢 慎也
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-49657(JP,A)
【文献】特開2001-260443(JP,A)
【文献】特開2020-59251(JP,A)
【文献】特開2010-195021(JP,A)
【文献】特開2007-128309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/66
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷後に切断される長尺の媒体に印刷を行う印刷装置であって、
前記媒体に印刷を行う印刷機構と、前記媒体の長手方向に前記媒体を搬送する媒体搬送機構と、前記印刷機構に向かって搬送される前のロール状に巻回された前記媒体が取り付けられる媒体繰出し部と、前記印刷機構を通過した後のロール状に巻回された前記媒体が取り付けられる媒体巻取り部とを備え、
前記媒体の搬送方向である媒体搬送方向に直交する前記媒体の幅方向を媒体幅方向とし、前記媒体搬送方向において前記媒体繰出し部が配置される側を搬送方向上流側とし、前記媒体搬送方向において前記媒体巻取り部が配置される側を搬送方向下流側とし、印刷後に前記媒体幅方向に直線的にカットされる前記媒体の、前記媒体搬送方向におけるカット位置を媒体カット位置とし、前記媒体カット位置における前記媒体の、前記媒体幅方向のカット範囲を媒体カット範囲とすると、
前記印刷機構は、前記媒体に印刷される画像のデータである画像データと、前記媒体カット位置を特定するためのカット位置用マークを前記媒体に印刷するためのデータである第1マーク印刷用データと、前記媒体幅方向における前記媒体カット範囲の一端に対応する位置に配置される第1カット範囲用マークおよび前記媒体幅方向における前記媒体カット範囲の他端に対応する位置に配置される第2カット範囲用マークを前記媒体に印刷するためのデータである第2マーク印刷用データとを受信するとともに、前記画像データに基づいて前記画像を前記媒体に印刷し、前記第1マーク印刷用データに基づいて複数の前記媒体カット位置のそれぞれから前記搬送方向上流側に一定の距離だけ離れた位置に複数の前記カット位置用マークを印刷し、前記第2マーク印刷用データに基づいて前記第1カット範囲用マークおよび前記第2カット範囲用マークを前記媒体に印刷することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記カット位置用マークは、前記媒体幅方向に平行な直線であり、
前記第1カット範囲用マークおよび前記第2カット範囲用マークは、前記媒体搬送方向に平行な直線であり、
前記印刷機構は、前記媒体の、前記媒体幅方向の一端部に前記カット位置用マークを印刷するとともに、前記媒体巻取り部に巻き取られた状態の前記媒体の、少なくとも前記搬送方向上流側の端部に前記第1カット範囲用マークおよび前記第2カット範囲用マークを印刷することを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
印刷後に前記媒体搬送方向に直線的にカットされる前記媒体の、前記媒体幅方向におけるカット位置を第2媒体カット位置とすると、
前記印刷機構は、前記媒体幅方向において前記第2媒体カット位置と同じ位置に前記第1カット範囲用マークおよび前記第2カット範囲用マークを印刷することを特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷機構が印刷を行った後の前記媒体であって前記媒体巻取り部から取り外された後の前記媒体を印刷後媒体とすると、
前記印刷後媒体に印刷された前記カット位置用マークを検知するための第1マーク検知機構と、前記印刷後媒体に印刷された前記第1カット範囲用マークおよび前記第2カット範囲用マークを検知するための第2マーク検知機構と、前記媒体幅方向で前記印刷後媒体を切断するための切断機構と、前記媒体搬送方向に沿って前記印刷後媒体を切断するための第2切断機構とを備え、
前記切断機構は、前記第1マーク検知機構および前記第2マーク検知機構の検知結果に基づいて、前記媒体幅方向で前記印刷後媒体をカットすることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷機構と前記切断機構と前記第2切断機構とは、同じ支持体に取り付けられ、
ロール状に巻回された前記印刷後媒体は、前記媒体繰出し部に取り付けられることを特徴とする請求項4記載の印刷装置。
【請求項6】
前記切断機構は、前記印刷後媒体を切るカッター刃と、前記カッター刃を保持する切断用キャリッジと、前記媒体幅方向に前記切断用キャリッジを移動させる切断用キャリッジ駆動機構とを備え、
前記第1マーク検知機構は、前記切断用キャリッジに搭載され、
前記第2マーク検知機構は、前記切断機構よりも前記搬送方向上流側に配置され、
前記切断機構は、前記媒体カット範囲を特定するためのデータであるカット範囲データであって、前記第2マーク検知機構での前記第1カット範囲用マークおよび前記第2カット範囲用マークの検知結果に基づいて生成された前記カット範囲データを受信し、受信した前記カット範囲データと、前記第1マーク検知機構の検知結果に基づいて、前記媒体幅方向で前記印刷後媒体をカットすることを特徴とする請求項4または5記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷機構は、前記媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドが搭載される印刷用キャリッジと、前記媒体幅方向に前記印刷用キャリッジを移動させる印刷用キャリッジ駆動機構とを備えるとともに、前記切断機構および前記第2切断機構よりも前記搬送方向上流側に配置され、
前記第2マーク検知機構は、前記印刷用キャリッジに搭載されていることを特徴とする請求項6の印刷装置。
【請求項8】
前記第2マーク検知機構は、前記印刷後媒体に印刷された前記カット位置用マークを検知し、
前記切断機構は、前記第2マーク検知機構での前記カット位置用マークの検知結果に基づいて生成された、前記カット位置用マークの前記媒体幅方向の位置を特定するためのデータであるマーク位置データを受信し、
前記切断用キャリッジ駆動機構は、前記切断機構が受信した前記マーク位置データに基づいて、前記第1マーク検知機構が前記カット位置用マークを検知可能となる位置に前記切断用キャリッジを移動させることを特徴とする請求項6または7記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の媒体に印刷を行うための印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺のシート状の媒体に印刷を行うプリンタが知られている(たとえば、特許文献1~3参照)。特許文献1に記載のプリンタは、媒体の長手方向に媒体を搬送する搬送機構と、媒体に印刷を行うプリンタヘッドと、媒体を所定形状にカットするためのカッティングヘッドとを備えている。プリンタヘッドおよびカッティングヘッドは、共通のガイドレールに支持されており、媒体の長手方向に直交する媒体の幅方向にスライド可能となっている。このプリンタでは、たとえば、プリントヘッドによって印刷が行われた後の媒体がカッティングヘッドによって所定形状にカットされる。また、このプリンタでは、媒体が、たとえば、台紙と、台紙に剥離可能に貼り付けられたシール材とから構成されている場合、カッティングヘッドによってシール材のみが所定形状にカットされるハーフカットが媒体に対して行われる。
【0003】
特許文献1に記載のプリンタでは、印刷前の媒体は、ロール状に巻回されている。ロール状に巻回された印刷前の媒体は、媒体繰出し部に取り付けられている。また、ハーフカット後の媒体は、ロール状に巻回される。ロール状に巻回されたハーフカット後の媒体は、媒体巻取り部に取り付けられている。媒体が印刷されるときには、媒体は、媒体繰出し部からプリントヘッドに向かう方向に搬送される。また、媒体がハーフカットされるときには、媒体は、媒体繰出し部からカッティングヘッドに向かう方向に搬送されるとともに、カッティングヘッドから媒体繰出し部に向かう逆方向にも搬送される。
【0004】
特許文献2に記載のプリンタは、媒体の長手方向に媒体を搬送する搬送ローラおよびピンチローラと、媒体に印刷を行う記録ヘッドと、記録ヘッドが搭載されるキャリッジと、記録ヘッドに対向する位置に配置されるプラテンと、媒体の搬送方向に直交する媒体の幅方向で印刷後の媒体を切断するカッターと、媒体の搬送方向に沿って印刷後の媒体を切断するスリッターとを備えている。
【0005】
特許文献3に記載のプリンタは、媒体に印刷を行うプリント部と、印刷後の媒体を媒体の幅方向で切断するカッター部とを備えている。プリント部は、媒体に画像を印刷するとともに、媒体の、画像と画像との間の余白領域にカットマークを印刷する。カッター部は、カットマークを検知するカットマークセンサを備えている。カッター部は、カットマークセンサによってカットマークが検知されると、所定距離だけ媒体を搬送した後、媒体を停止させてから、媒体の幅方向で媒体を切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-247915号公報
【文献】特開2020-163726号公報
【文献】特開2011-177950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者は、特許文献1に記載されたプリンタのように、たとえば、印刷後の媒体に対してハーフカットを行った後に、特許文献2に記載されたプリンタのように、媒体の幅方向で媒体をカットするとともに、媒体の搬送方向に沿って媒体をカットすることを検討している。媒体に対してハーフカットを行うときには、逆方向にも媒体が搬送されるため、媒体に対してハーフカットを行いながら媒体の搬送方向に沿って媒体をカットする場合、媒体が逆方向にも搬送される影響で媒体を適切にカットできなくなるおそれが生じる。
【0008】
そのため、本願発明者は、印刷およびハーフカットを行った後の媒体を、媒体の幅方向および媒体の搬送方向でカットすることなく、一旦、ロール状に巻き取り、ロール状に巻き取った媒体を再度繰り出して、媒体の幅方向および媒体の搬送方向で媒体をカットすることを検討している。この場合、印刷およびハーフカットを行う際の媒体の前端(媒体の長手方向の前端)は、媒体の幅方向および媒体の搬送方向で媒体をカットする際には、媒体の後端(媒体の長手方向の後端)となり、印刷およびハーフカットを行う際の媒体の後端は、媒体の幅方向および媒体の搬送方向で媒体をカットする際には、媒体の前端となる。
【0009】
また、本願発明者は、印刷およびハーフカットが行われた部分が切り取られた後の媒体に、媒体巻取り部でロール状に巻き取られる余白部分が媒体の搬送方向に連続的に形成されるように、媒体の幅方向の全域で媒体をカットするのではなく、媒体の幅方向における媒体の一部を媒体の幅方向で直線的にカットすることを検討している。この場合、媒体の幅方向における媒体の一部を適切にカットするための基準が必要になるが、媒体の幅方向における媒体の一部を適切にカットするための基準をどのように設けるのかは従来提案されていない。
【0010】
そこで、本発明の課題は、印刷後に切断される長尺の媒体に印刷を行う印刷装置において、ロール状に巻き取られた印刷後の媒体を再度繰り出して、媒体の幅方向および媒体の搬送方向で媒体をカットする場合であって、かつ、媒体の幅方向における媒体の一部を媒体の幅方向でカットする場合であっても、媒体の幅方向において媒体を適切にカットするためのマークを印刷することが可能な印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明の印刷装置は、印刷後に切断される長尺の媒体に印刷を行う印刷装置であって、媒体に印刷を行う印刷機構と、媒体の長手方向に媒体を搬送する媒体搬送機構と、印刷機構に向かって搬送される前のロール状に巻回された媒体が取り付けられる媒体繰出し部と、印刷機構を通過した後のロール状に巻回された媒体が取り付けられる媒体巻取り部とを備え、媒体の搬送方向である媒体搬送方向に直交する媒体の幅方向を媒体幅方向とし、媒体搬送方向において媒体繰出し部が配置される側を搬送方向上流側とし、媒体搬送方向において媒体巻取り部が配置される側を搬送方向下流側とし、印刷後に媒体幅方向に直線的にカットされる媒体の、媒体搬送方向におけるカット位置を媒体カット位置とし、媒体カット位置における媒体の、媒体幅方向のカット範囲を媒体カット範囲とすると、印刷機構は、媒体に印刷される画像のデータである画像データと、媒体カット位置を特定するためのカット位置用マークを媒体に印刷するためのデータである第1マーク印刷用データと、媒体幅方向における媒体カット範囲の一端に対応する位置に配置される第1カット範囲用マークおよび媒体幅方向における媒体カット範囲の他端に対応する位置に配置される第2カット範囲用マークを媒体に印刷するためのデータである第2マーク印刷用データとを受信するとともに、画像データに基づいて画像を媒体に印刷し、第1マーク印刷用データに基づいて複数の媒体カット位置のそれぞれから搬送方向上流側に一定の距離だけ離れた位置に複数のカット位置用マークを印刷し、第2マーク印刷用データに基づいて第1カット範囲用マークおよび第2カット範囲用マークを媒体に印刷することを特徴とする。
【0012】
本発明の印刷装置では、印刷後に媒体幅方向に直線的にカットされる媒体の、媒体搬送方向におけるカット位置を媒体カット位置とすると、印刷機構は、媒体カット位置を特定するためのカット位置用マークを媒体に印刷するためのデータである第1マーク印刷用データを受信するとともに、第1マーク印刷用データに基づいて複数の媒体カット位置のそれぞれから搬送方向上流側に一定の距離だけ離れた位置に複数のカット位置用マークを印刷している。そのため、本発明では、ロール状に巻き取られた印刷後の媒体を再度繰り出して、媒体幅方向で媒体をカットするときには、媒体カット位置のそれぞれから搬送方向下流側に一定の距離だけ離れた位置にカット位置用マークが配置されている。したがって、本発明では、ロール状に巻き取られた印刷後の媒体を再度繰り出して、媒体幅方向および媒体搬送方向で媒体をカットする場合であっても、カット位置用マークに基づいて、媒体カット位置を認識することが可能になる。
【0013】
また、本発明では、媒体カット位置における媒体の、媒体幅方向のカット範囲を媒体カット範囲とすると、印刷機構は、媒体幅方向における媒体カット範囲の一端に対応する位置に配置される第1カット範囲用マークおよび媒体幅方向における媒体カット範囲の他端に対応する位置に配置される第2カット範囲用マークを媒体に印刷するためのデータである第2マーク印刷用データとを受信するとともに、第2マーク印刷用データに基づいて第1カット範囲用マークおよび第2カット範囲用マークを媒体に印刷している。そのため、本発明では、ロール状に巻き取られた印刷後の媒体を再度繰り出して、媒体幅方向における媒体の一部を媒体幅方向でカットする場合であっても、第1カット範囲用マークと第2カット範囲用マークとに基づいて、媒体カット範囲を認識することが可能になる。
【0014】
このように本発明では、ロール状に巻き取られた印刷後の媒体を再度繰り出して、媒体幅方向および媒体搬送方向で媒体をカットする場合であって、かつ、媒体幅方向における媒体の一部を媒体幅方向でカットする場合であっても、カット位置用マークと第1カット範囲用マークと第2カット範囲用マークとに基づいて、媒体幅方向で媒体を適切にカットするための媒体カット位置と媒体カット範囲とを認識することが可能になる。すなわち、本発明では、ロール状に巻き取られた印刷後の媒体を再度繰り出して、媒体幅方向および媒体搬送方向で媒体をカットする場合であって、かつ、媒体幅方向における媒体の一部を媒体幅方向でカットする場合であっても、媒体幅方向で媒体を適切にカットするためのマークを印刷することが可能になる。
【0015】
なお、本発明において、たとえば、印刷装置が電気的に接続されるパーソナルコンピュータにおいて、画像データ、第1マーク印刷用データおよび第2マーク印刷用データ等が作成される場合、ロール状に巻き取られた印刷後の媒体を再度繰り出して、媒体幅方向で媒体をカットするときに、パーソナルコンピュータが保持しているデータを、媒体幅方向で媒体をカットする切断機構に送信すれば、媒体幅方向において媒体を適切にカットするための媒体カット位置と媒体カット範囲とを切断機構に認識させることは可能である。
【0016】
しかしながら、この場合には、ロール状に巻き取られた印刷後の媒体を再度繰り出して、媒体幅方向で媒体をカットするときまで、パーソナルコンピュータがデータを保持し続ける必要がある。また、印刷後の媒体は媒体巻取り部から一旦取り外されるため、この場合には、媒体幅方向で媒体をカットするときに、再度繰り出される媒体とパーソナルコンピュータから送信されるデータとの対応付けを行う必要がある。これに対して、本発明では、パーソナルコンピュータは、印刷機構で印刷を行うときにデータを印刷機構に送信すれば、データを保持し続ける必要がない。また、本発明では、再度繰り出される媒体とデータとの対応付けが不要である。
【0017】
本発明において、たとえば、カット位置用マークは、媒体幅方向に平行な直線であり、第1カット範囲用マークおよび第2カット範囲用マークは、媒体搬送方向に平行な直線であり、印刷機構は、媒体の、媒体幅方向の一端部にカット位置用マークを印刷するとともに、媒体巻取り部に巻き取られた状態の媒体の、少なくとも搬送方向上流側の端部に第1カット範囲用マークおよび第2カット範囲用マークを印刷する。
【0018】
本発明において、印刷後に媒体搬送方向に直線的にカットされる媒体の、媒体幅方向におけるカット位置を第2媒体カット位置とすると、印刷機構は、媒体幅方向において第2媒体カット位置と同じ位置に第1カット範囲用マークおよび第2カット範囲用マークを印刷することが好ましい。このように構成すると、たとえば、媒体搬送方向に沿って印刷後の媒体を切断するための第2切断機構の媒体幅方向の位置を手動で調整する必要がある場合に、第1カット範囲用マークおよび第2カット範囲用マークを目印にして、第2切断機構の媒体幅方向の位置を調整することが可能になる。
【0019】
本発明において、印刷機構が印刷を行った後の媒体であって媒体巻取り部から取り外された後の媒体を印刷後媒体とすると、印刷装置は、たとえば、印刷後媒体に印刷されたカット位置用マークを検知するための第1マーク検知機構と、印刷後媒体に印刷された第1カット範囲用マークおよび第2カット範囲用マークを検知するための第2マーク検知機構と、媒体幅方向で印刷後媒体を切断するための切断機構と、媒体搬送方向に沿って印刷後媒体を切断するための第2切断機構とを備え、切断機構は、第1マーク検知機構および第2マーク検知機構の検知結果に基づいて、媒体幅方向で印刷後媒体をカットする。
【0020】
本発明において、印刷機構と切断機構と第2切断機構とは、同じ支持体に取り付けられ、ロール状に巻回された印刷後媒体は、媒体繰出し部に取り付けられることが好ましい。このように構成すると、印刷機構が取り付けられる支持体と、切断機構および第2切断機構が取り付けられる支持体とが別々に設けられている場合と比較して、印刷装置の構成を簡素化することが可能になる。また、このように構成すると、媒体繰出し部に加えて、切断機構および第2切断機構に向かって繰り出されるロール状の印刷後媒体が取り付けられる繰出し部が別途設けられている場合と比較して、印刷装置の構成を簡素化することが可能になる。
【0021】
本発明において、たとえば、切断機構は、印刷後媒体を切るカッター刃と、カッター刃を保持する切断用キャリッジと、媒体幅方向に切断用キャリッジを移動させる切断用キャリッジ駆動機構とを備え、第1マーク検知機構は、切断用キャリッジに搭載され、第2マーク検知機構は、切断機構よりも搬送方向上流側に配置され、切断機構は、媒体カット範囲を特定するためのデータであるカット範囲データであって、第2マーク検知機構での第1カット範囲用マークおよび第2カット範囲用マークの検知結果に基づいて生成されたカット範囲データを受信し、受信したカット範囲データと、第1マーク検知機構の検知結果に基づいて、媒体幅方向で印刷後媒体をカットする。
【0022】
本発明において、印刷機構は、媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドが搭載される印刷用キャリッジと、媒体幅方向に印刷用キャリッジを移動させる印刷用キャリッジ駆動機構とを備えるとともに、切断機構および第2切断機構よりも搬送方向上流側に配置され、第2マーク検知機構は、印刷用キャリッジに搭載されていることが好ましい。このように構成すると、印刷用キャリッジの動作を利用して、第2マーク検知機構で第1カット範囲用マークおよび第2カット範囲用マークを検知することが可能になる。したがって、たとえば、印刷用キャリッジに加えて、第2マーク検知機構が搭載されるキャリッジが別途設けられている場合と比較して、印刷装置の構成を簡素化することが可能になる。
【0023】
本発明において、第2マーク検知機構は、印刷後媒体に印刷されたカット位置用マークを検知し、切断機構は、第2マーク検知機構でのカット位置用マークの検知結果に基づいて生成された、カット位置用マークの媒体幅方向の位置を特定するためのデータであるマーク位置データを受信し、切断用キャリッジ駆動機構は、切断機構が受信したマーク位置データに基づいて、第1マーク検知機構がカット位置用マークを検知可能となる位置に切断用キャリッジを移動させることが好ましい。このように構成すると、第1マーク検知機構がカット位置用マークを検知可能となる位置に切断用キャリッジを予め移動させて停止させておくことが可能になる。したがって、媒体幅方向で媒体をカットするときに、第1マーク検知機構によって速やかにカット位置用マークを検知することが可能になる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明では、印刷後に切断される長尺の媒体に印刷を行う印刷装置において、ロール状に巻き取られた印刷後の媒体を再度繰り出して、媒体の幅方向および媒体の搬送方向で媒体をカットする場合であって、かつ、媒体の幅方向における媒体の一部を媒体の幅方向でカットする場合であっても、媒体の幅方向において媒体を適切にカットするためのマークを印刷することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の形態1にかかる印刷装置の構成を説明するための側面図である。
図2図1に示す印刷機構による媒体の印刷例、および、切断機構および第2切断機構による媒体の切断例を説明するための図である。
図3図1のE部の拡大図である。
図4】(A)は、図3に示す切断機構のキャリッジの一部分および媒体押え部材等の斜視図であり、(B)は、図3に示す切断機構のカッター刃の先端側部分の平面図である。
図5】(A)は、図4(A)に示す媒体押え部材の正面図であり、(B)は、図4(A)に示す媒体押え部材の平面図である。
図6図3に示す支持フレームの一部分および第2切断機構の斜視図である。
図7図3に示す支持フレームの一部分、カッティングプラテンの一部分および第2切断機構等の側面図である。
図8図3に示すガイド部材の作用を説明するための図である。
図9図3に示すテンションバーの位置を検知するための第1センサおよび第2センサの側面図である。
図10図1に示す印刷装置の構成を説明するためのブロック図である。
図11】本発明の実施の形態2にかかる媒体の印刷方法および切断方法を説明するための図である。
図12】本発明の実施の形態2にかかる印刷装置の構成を説明するためのブロック図である。
図13】本発明の他の実施の形態にかかるガイド部材の構成を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0027】
[実施の形態1]
(印刷装置の全体構成)
図1は、本発明の実施の形態1にかかる印刷装置1の構成を説明するための側面図である。図2は、図1に示す印刷機構3による媒体2の印刷例、および、切断機構7および第2切断機構8による媒体2の切断例を説明するための図である。
【0028】
本形態の印刷装置1は、長尺の媒体2に印刷を行うとともに印刷後の媒体2を所定形状に切断する業務用のインクジェットプリンタであり、印刷後に切断される長尺の媒体2に印刷を行う。媒体2は、たとえば、ポリ塩化ビニールやポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂で形成された樹脂製のシート状媒体である。また、媒体2は、転写紙や写真用紙等の紙製のシート状媒体であっても良い。また、媒体2は、ターポリンで形成されていても良いし、ウインドウフィルムであっても良い。
【0029】
印刷装置1は、長尺の媒体2に印刷を行う印刷機構3と、印刷機構3を下側から支持する支持体4と、媒体2を搬送する媒体搬送機構5と、印刷後の媒体2を加熱するためのヒータ(アフターヒータ)6と、媒体2の搬送方向に直交する媒体2の幅方向で媒体2を直線的に切断する(スリット加工する)ための切断機構7と、媒体2の搬送方向に沿って媒体2を直線的に切断する(スリット加工する)ための第2切断機構8と、媒体2に接触して媒体2に張力を付与するテンションバー9を有するテンション付与機構10とを備えている。切断機構7および第2切断機構8は、印刷後の媒体2を切断する。テンションバー9は、印刷後の媒体2に接触して媒体2に張力を付与する。
【0030】
テンションバー9は、媒体2の搬送方向(媒体2の送り方向)において印刷機構3と切断機構7との間に配置されている。ヒータ6は、媒体2の搬送方向において印刷機構3とテンションバー9との間に配置されている。第2切断機構8は、媒体2の搬送方向においてテンションバー9と切断機構7との間に配置されている。すなわち、テンションバー9は、媒体2の搬送方向において印刷機構3と第2切断機構8との間に配置されている。
【0031】
印刷装置1は、媒体2の、印刷が行われた部分を含む長方形状または正方形状の被切取り部2a(図2参照)を、切断機構7および第2切断機構8によってシート状の媒体2から切り取る。印刷装置1は、たとえば、図2(A)に示す被切取り部2aまたは図2(B)に示す被切取り部2aを媒体2から切り取る。媒体2の、切断機構7によって切られた部分をカット線(切れ目)CL1とし、媒体2の、第2切断機構8によって切られた部分をカット線CL11~CL14とすると、図2に示すように、切断機構7によって切られた後の媒体2には、媒体2の幅方向に平行なカット線CL1が形成され、第2切断機構8によって切られた後の媒体2には、媒体2の搬送方向に沿ったカット線CL11~CL14が形成される。
【0032】
本形態では、媒体2の幅方向における被切取り部2aの両側にカット線CL11、CL12またはカット線CL13、CL14が形成される。図2(A)に示す例では、2本のカット線CL1と2本のカット線CL11、CL12とに囲まれた部分が被切取り部2aとなり、図2(B)に示す例では、2本のカット線CL1と2本のカット線CL11、CL12とに囲まれた部分および2本のカット線CL1と2本のカット線CL13、CL14とに囲まれた部分が被切取り部2aとなる。媒体2は、第2切断機構8で切られた後に切断機構7で切られる。
【0033】
切断機構7は、カット線CL11~CL14(すなわち、媒体2の、第2切断機構8によって切れた部分)と交差するように媒体2を切る。すなわち、媒体2の幅方向におけるカット線CL1の両端は、2本のカット線CL11、CL12または2本のカット線CL13、CL14よりも媒体2の幅方向の外側に配置されている。また、切断機構7は、媒体2の幅方向の全域で媒体2を切るのではなく、媒体2の幅方向における媒体2の一部を切る。また、たとえば、図2(B)に示すように、媒体2の幅方向で2枚の被切取り部2aが並んで配置されている場合には、2枚の被切取り部2aのそれぞれに対応する2本のカット線CL1が媒体2の幅方向において間隔をあけた状態で形成される。本形態では、媒体2の搬送方向における被切取り部2aの間に余白部分がある。また、媒体2の幅方向における被切取り部2aの両側に、媒体2の搬送方向に細長い余白部分がある。
【0034】
印刷装置1は、ロール状に巻回された印刷前の媒体2である繰出ロール13を保持する媒体繰出し部14を備えている。また、印刷装置1は、媒体2の搬送方向における被切取り部2aの間の余白部分である第1余白部2bおよび被切取り部2aが収容される収容部15と、媒体2の幅方向における被切取り部2aおよび第1余白部2bの両側の余白部分である第2余白部2cがロール状に巻回された巻取ロール16を保持する媒体巻取り部17とを備えている。すなわち、印刷装置1は、印刷機構3に向かって搬送される前のロール状に巻回された媒体2が取り付けられる媒体繰出し部14と、印刷機構3を通過した後のロール状に巻回された媒体2(より具体的には、媒体2の一部分)が取り付けられる媒体巻取り部17とを備えている。
【0035】
印刷機構3は、媒体2にインクを吐出するインクジェットヘッド20(以下、「ヘッド20」とする。)と、ヘッド20が搭載される印刷用キャリッジとしてのキャリッジ21と、媒体2の幅方向となる主走査方向(図1等のY方向)にキャリッジ21を移動させる印刷用キャリッジ駆動機構としてのキャリッジ駆動機構22と、主走査方向への移動が可能となるようにキャリッジ21を支持する支持フレーム23と、キャリッジ21の下側に配置されるプリントプラテン24とを備えている。ヘッド20は、下側に向かってインクを吐出する。キャリッジ駆動機構22は、たとえば、キャリッジ21に一部分が固定されるベルトと、ベルトが掛け渡されるプーリと、プーリを回転させるためのモータとを備えている。プリントプラテン24には、印刷時の媒体2が載置される。
【0036】
以下の説明では、主走査方向(媒体2の幅方向、Y方向)を「左右方向」とし、上下方向(図1等のZ方向)と左右方向とに直交する方向を「前後方向」とする。また、前後方向の一方側である図1等のX1方向側を「前」側とし、その反対側である図1等のX2方向側を「後ろ」側とする。本形態では、印刷前の媒体2は、後ろ側からプリントプラテン24の上面に搬送され、印刷後の媒体2は、プリントプラテン24の上面から前側に搬送される。
【0037】
また、本形態では、媒体2の搬送方向において媒体繰出し部14が配置される側が媒体2の搬送方向の上流側となっており、媒体2の搬送方向において媒体巻取り部17が配置される側が媒体2の搬送方向の下流側となっている。以下の説明では、媒体2の搬送方向を「媒体搬送方向」と表記し、媒体2の搬送方向に直交する媒体2の幅方向を「媒体幅方向」と表記することがある。また、以下の説明では、媒体2の搬送方向の上流側を「搬送方向上流側」と表記し、媒体2の搬送方向の下流側を「搬送方向下流側」と表記することがある。
【0038】
プリントプラテン24の前側には、アフタープラテン25が配置されている。アフタープラテン25の表面には、プリントプラテン24からテンションバー9に向かって搬送される媒体2を案内するためのガイド面25aが形成されている。ガイド面25aは、凸曲面状に形成されている。プリントプラテン24からテンションバー9に向かって搬送される媒体2は、ガイド面25aに接触する。ヒータ6は、ガイド面25aに沿うようにアフタープラテン25の内部に配置されている。
【0039】
媒体搬送機構5は、長尺の媒体2を媒体2の長手方向に搬送する。媒体搬送機構5は、搬送ローラ27と、搬送ローラ27に対向配置されるとともに搬送ローラ27に向かって付勢されるパッドローラ28とを備えている。搬送ローラ27およびパッドローラ28は、媒体2の搬送方向においてプリントプラテン24よりも上流側に配置されており、媒体搬送機構5は、媒体2の搬送方向においてテンションバー9よりも上流側に配置されている。搬送ローラ27は、搬送ローラ27を回転させる駆動機構に連結されている。媒体2は、搬送ローラ27とパッドローラ28との間に挟まれた状態で搬送される。
【0040】
テンション付与機構10は、アフタープラテン25の下側に配置されている。第2切断機構8は、テンション付与機構10の下側に配置されている。切断機構7は、第2切断機構8の下側に配置されている。テンション付与機構10の具体的な構成については後述する。また、切断機構7の構成、第2切断機構8の構成、および、切断機構7、第2切断機構8の周辺部の具体的な構成については後述する。
【0041】
媒体繰出し部14は、印刷機構3の下側に配置されている。媒体繰出し部14は、繰出ロール13の内周側に挿通される回転軸を備えている。収容部15は、たとえば、上面が開口する直方体の箱状に形成されている。収容部15は、切断機構7および第2切断機構8よりも下側に配置されている。また、収容部15は、切断機構7の下側に配置されている。
【0042】
媒体巻取り部17は、印刷機構3の下側に配置されている。また、媒体巻取り部17は、切断機構7よりも下側に配置されている。また、媒体巻取り部17は、切断機構7、第2切断機構8および収容部15よりも後ろ側に配置されている。媒体巻取り部17は、第2余白部2cを巻き取る媒体巻取り機構26を備えている。媒体巻取り機構26は、巻取ロール16の内周側に挿通される回転軸と、回転軸を回転させる駆動機構と、巻取ロール16に巻き取られる第2余白部2cの張力が所定の張力を超えないように巻取ロール16を空転させるためのトルクリミッタとを備えている。回転軸には、媒体2の搬送方向下流側の端部が固定されている。
【0043】
本形態では、媒体2の、被切取り部2aおよび第1余白部2bとなる部分は、媒体2の、カット線CL11~CL14を境にして媒体2の幅方向の一方側に配置される部分である第1媒体部となっており、収容部15には、第1媒体部が収容される。また、第2余白部2cは、媒体2の、カット線CL11~CL14を境にして媒体2の幅方向の他方側に配置される部分である第2媒体部となっており、媒体巻取り機構26は、第2媒体部を巻き取る。
【0044】
(切断機構、第2切断機構および周辺部の構成)
図3は、図1のE部の拡大図である。図4(A)は、図3に示す切断機構7のキャリッジ34の一部分および媒体押え部材44等の斜視図であり、図4(B)は、図3に示す切断機構7のカッター刃38の先端側部分の平面図である。図5(A)は、図4(A)に示す媒体押え部材44の正面図であり、図5(B)は、図4(A)に示す媒体押え部材44の平面図である。図6は、図3に示す支持フレーム35の一部分および第2切断機構8の斜視図である。図7は、図3に示す支持フレーム35の一部分、カッティングプラテン31の一部分および第2切断機構8等の側面図である。図8は、図3に示すガイド部材29の作用を説明するための図である。
【0045】
切断機構7は、媒体2の搬送方向において第2切断機構8よりも下流側に配置されている。すなわち、第2切断機構8は、媒体2の搬送方向において切断機構7よりも上流側に配置されている。また、第2切断機構8は、媒体2の搬送方向においてテンションバー9よりも下流側に配置されている。印刷機構3は、媒体2の搬送方向において切断機構7および第2切断機構8よりも上流側に配置されている。上述のように、切断機構7は、第2切断機構8の下側に配置されている。切断機構7および第2切断機構8の後ろ側には、カッティングプラテン31が配置されており、カッティングプラテン31は、切断機構7および第2切断機構8に後ろ側から対向している。すなわち、印刷装置1は、切断機構7および第2切断機構8に後ろ側から対向するカッティングプラテン31を備えている。
【0046】
カッティングプラテン31は、切断機構7に対向配置される対向部31aと、第2切断機構8に対向配置される第2対向部31bとを備えている。カッティングプラテン31には、第2余白部2cから離れる方向に被切取り部2aおよび第1余白部2bを案内するガイド部材29が取り付けられている。すなわち、印刷装置1は、第2余白部2cから離れる方向に被切取り部2aおよび第1余白部2bを案内するガイド部材29を備えている。ガイド部材29は、カッティングプラテン31の前下端部に固定されている。
【0047】
切断機構7および第2切断機構8が設置されている箇所では、媒体2は、カッティングプラテン31の前面に沿って下側に搬送され、第2切断機構8と第2対向部31bとの間、および、切断機構7と対向部31aとの間を通過する。テンションバー9は、媒体2の搬送方向において、プリントプラテン24よりも下流側に配置されるとともに、カッティングプラテン31よりも上流側に配置されている。また、切断機構7および第2切断機構8は、媒体2の搬送方向においてテンションバー9よりも下流側に配置されている。
【0048】
媒体2の搬送方向におけるテンションバー9と第2切断機構8との間には、長尺の媒体2を媒体2の長手方向に搬送する第2媒体搬送機構30が配置されている。すなわち、印刷装置1は、媒体2を搬送する第2媒体搬送機構30を備えており、第2媒体搬送機構30は、媒体2の搬送方向においてテンションバー9よりも下流側に配置されている。具体的には、第2媒体搬送機構30を構成する搬送ローラ32およびパッドローラ33(図3参照)が媒体2の搬送方向におけるテンションバー9と第2切断機構8との間に配置されている。
【0049】
搬送ローラ32およびパッドローラ33は、第2切断機構8の上側に配置されている。パッドローラ33は、搬送ローラ32に前側から対向配置されるとともに搬送ローラ32に向かって付勢されている。搬送ローラ32は、搬送ローラ32を回転させる駆動機構に連結されている。媒体2は、搬送ローラ32とパッドローラ33との間に挟まれた状態で搬送される。
【0050】
切断機構7は、媒体2を切るカッター刃38(図4(B)参照)と、カッター刃38が固定されるカッターホルダ39と、前後方向へのカッターホルダ39の移動が可能となるようにカッターホルダ39を保持する切断用キャリッジとしてのキャリッジ34と、キャリッジ34に対してカッターホルダ39を前後方向に移動させるソレノイド等のホルダ駆動機構とを備えている。カッター刃38は、カッターホルダ39を介してキャリッジ34に保持されている。図4(B)に示すように、カッター刃38は、刃先が尖っている片刃型の刃である。なお、図4(A)では、カッター刃38の図示を省略している。
【0051】
また、切断機構7は、左右方向(媒体2の幅方向)への移動が可能となるようにキャリッジ34を支持する支持フレーム35と、支持フレーム35に対して左右方向にキャリッジ34を移動させる切断用キャリッジ駆動機構としてのキャリッジ駆動機構36とを備えている。支持フレーム35は、左右方向に細長い長尺状のフレームである。支持フレーム35の左右方向の両端部は、側板37の前端部に固定されている。側板37の後端部は、支持体4に固定されている。キャリッジ駆動機構36は、たとえば、キャリッジ34に一部分が固定されるベルトと、ベルトが掛け渡されるプーリと、プーリを回転させるためのモータとを備えている。
【0052】
また、切断機構7は、カッティングプラテン31の対向部31aに向かって媒体2を押えるための媒体押え部材44を備えている。媒体押え部材44は、キャリッジ34に取り付けられている。具体的には、媒体押え部材44は、キャリッジ34の後面に取り付けられており、前側から対向部31aに対向している。媒体押え部材44の後面は、対向部31aに対向する対向面44aとなっている。すなわち、媒体押え部材44には、対向部31aに対向する対向面44aが形成されている。媒体押え部材44には、カッター刃38の一部が配置される貫通穴44bと、キャリッジ34に搭載される後述のセンサ56の発光部が射出する光およびセンサ56の受光部に向かう光を通過させるための貫通穴44cとが形成されている。貫通穴44b、44cは、前後方向で媒体押え部材44を貫通している。なお、図3では、媒体押え部材44の図示を省略している。
【0053】
対向面44aの左右方向の両端部は、左右方向の外側に向かうにしたがって前側に向かって傾斜する傾斜面44d、44eとなっている。すなわち、対向面44aの左右方向の両端部は、左右方向の外側に向かうにしたがって対向部31aから離れる側に向かって傾斜する傾斜面44d、44eとなっている。傾斜面44d、44eは、平面状に形成されている。対向面44aの、傾斜面44dと傾斜面44eとの間の部分は、前後方向に直交する平面状の媒体押え面44fとなっている。媒体押え面44fは、長方形状に形成されている。
【0054】
本形態では、左右方向(媒体2の幅方向)の一方側にキャリッジ34が移動するときに、カッター刃38が媒体2を切る。カッター刃38が媒体2を切るときのキャリッジ34の進行方向側を第1方向側とし、第1方向側の反対側を第2方向側とすると、傾斜面44dは、対向面44aの第1方向側の端部に形成されており、第1方向側に向かうにしたがって対向部31aから離れる側に向かって(すなわち、前側に向かって)傾斜している。傾斜面44dは、カッター刃38よりも第1方向側に配置されている。傾斜面44eは、対向面44aの第2方向側の端部に形成されており、第2方向側に向かうにしたがって対向部31aから離れる側に向かって(すなわち、前側に向かって)傾斜している。
【0055】
上下方向から見たときに、左右方向に対する傾斜面44dの傾斜角度は、左右方向に対する傾斜面44eの傾斜角度よりも小さくなっている。上下方向から見たときの左右方向に対する傾斜面44dの傾斜角度は、たとえば、40°程度となっており、上下方向から見たときの左右方向に対する傾斜面44eの傾斜角度は、たとえば、45°程度となっている。上下方向から見たときに、傾斜面44dの長さは、傾斜面44eの長さよりも長くなっている。
【0056】
媒体押え部材44の、傾斜面44dが形成される第1方向側の端部は、傾斜面形成部44gとなっている。傾斜面形成部44gの下端部は、第1方向側に向かうにしたがって上側に向かって傾斜する傾斜面44hとなっている。すなわち、傾斜面形成部44gの、媒体2の搬送方向における下流側の端部は、第1方向側に向かうにしたがって媒体2の搬送方向の上流側に向かって傾斜する傾斜面44hとなっている。
【0057】
キャリッジ34には、媒体2に印刷される後述のカット位置用マークM1を検知するためのセンサ56(図10参照)が搭載されている。すなわち、印刷装置1は、媒体2に印刷されるカット位置用マークM1を検知するためのセンサ(トンボセンサ)56を備えている。センサ56は、反射型の光学式センサであり、発光部と、発光部から射出されて媒体2で反射された光を受光する受光部とを備えている。センサ56の発光部は、後ろ側に向かって光を射出する。センサ56は、後述の切断制御部63に電気的に接続されている。
【0058】
第2切断機構8は、媒体2を切るカッター刃を備えている。カッター刃は、たとえば、刃先が尖っている片刃型の刃である。また、第2切断機構8は、カッター刃が固定されるとともに左右方向への移動が可能となるように支持フレーム35に取り付けられるカッターホルダ41と、支持フレーム35に対してカッターホルダ41を固定するためのクランプ機構42とを備えている。カッターホルダ41に対するカッター刃の前後方向の固定位置は、手動で調整可能となっている。
【0059】
支持フレーム35には、カッターホルダ41を左右方向に案内するためのガイド部35aが形成されている。ガイド部35aは、左右方向に細長い長尺状に形成されている。左右方向から見たときのガイド部35aの形状は、たとえば、L形状となっている。カッターホルダ41には、ガイド部35aに係合する係合部41aが形成されている。係合部41aは、前後方向の両側および上下方向の両側からガイド部35aに接触可能となっている。
【0060】
クランプ機構42は、カッターホルダ41に取り付けられている。クランプ機構42は、たとえば、偏心カムを用いたクランプ機構である。クランプ機構42は、左右方向を回動の軸方向としてカッターホルダ41に対して回動可能なレバー43を備えている。レバー43は、カッターホルダ41の係合部41aがガイド部35aに所定の接触圧で接触するクランプ位置と、係合部41aとガイド部35aとの間に隙間が形成されるアンクランプ位置との間で回動可能となっている。本形態では、印刷装置1のオペレータが、レバー43がアンクランプ位置にある状態でカッターホルダ41をガイド部35aに沿って所定位置まで移動させるとともに、その後、レバー43をクランプ位置に回動させて、支持フレーム35にカッターホルダ41を固定する。
【0061】
ガイド部35aの左右方向の長さは、支持フレーム35の左右方向の長さよりも短くなっている(図6参照)。ガイド部35aの左右方向の一端(たとえば、左端)と側板37の間には隙間が形成されている。この隙間は、第2切断機構8の左右方向の幅よりも広くなっている。本形態では、この隙間を利用して、支持フレーム35に第2切断機構8を取り付けたり、支持フレーム35から第2切断機構8を取り外したりすることが可能になっている。具体的には、隙間に配置される第2切断機構8を右側に移動させてガイド部35aに係合部41aを係合させることで、支持フレーム35に第2切断機構8を取り付けることが可能になっている。また、隙間まで第2切断機構8を左側に移動させることで、支持フレーム35から第2切断機構8を取り外すことが可能になっている。
【0062】
そのため、本形態では、支持フレーム35に取り付けられる第2切断機構8の数を変更することが可能になっている。たとえば、図2(A)に示すように、媒体2の搬送方向に沿った2本のカット線CL11、CL12が第2切断機構8によって媒体2に形成される場合には、2個の第2切断機構8が支持フレーム35の所定位置に取り付けられる。また、たとえば、図2(B)に示すように、媒体2の搬送方向に沿った4本のカット線CL11~CL14が第2切断機構8によって媒体2に形成される場合には、4個の第2切断機構8が支持フレーム35の所定位置に取り付けられる。
【0063】
搬送ローラ32を回転させる駆動機構、搬送ローラ32およびカッティングプラテン31は、側板37に取り付けられている。パッドローラ33は、支持フレーム35に取り付けられている。また、上述のように、支持フレーム35は側板37に固定され、側板37は支持体4に固定されている。側板37は、ネジによって支持体4に固定されている。そのため、本形態では、切断機構7、第2切断機構8、第2媒体搬送機構30およびカッティングプラテン31を含むユニットが支持体4に対して着脱可能になっている。また、本形態では、切断機構7および第2切断機構8が側板37を介して支持体4に固定されており、印刷機構3と切断機構7と第2切断機構8とが同じ支持体4に取り付けられている。
【0064】
ガイド部材29は、切断機構7よりも下側に配置されている。また、ガイド部材29は、媒体2の搬送方向において切断機構7と収容部15との間に配置されている。すなわち、ガイド部材29は、媒体2の搬送方向において第2切断機構8と収容部15との間に配置されている。また、切断機構7は、媒体2の搬送方向において第2切断機構8とガイド部材29との間に配置されている。ガイド部材29は、左右方向において被切取り部2aおよび第1余白部2bが形成される位置に配置されている。
【0065】
上述のように、媒体巻取り部17は、切断機構7および収容部15よりも後ろ側に配置されている。第2余白部2cは、カッティングプラテン31の前面の下端から後ろ側に向かって移動する。一方、収容部15は、切断機構7の下側に配置されており、被切取り部2aおよび第1余白部2bは、下側に移動する。ガイド部材29は、被切取り部2aおよび第1余白部2bが第2余白部2cから離れるように、被切取り部2aおよび第1余白部2bを前下側に案内する。すなわち、ガイド部材29は、媒体2の厚さ方向となる前後方向において、第2余白部2cから離れる方向に被切取り部2aおよび第1余白部2bを案内する。
【0066】
図3に示すように、ガイド部材29は、カッティングプラテン31に固定される被固定部材58と、被切取り部2aおよび第1余白部2bに接触する接触部材59とを備えている。被固定部材58は、対向部31aよりも下側でカッティングプラテン31に固定されている。また、被固定部材58は、カッティングプラテン31の前下端部に固定されている。接触部材59は、被固定部材58に取り付けられている。接触部材59の前面は、カッティングプラテン31の前面よりも前側に配置されている。接触部材59の前面は、たとえば、前後方向に直交する平面となっている。被切取り部2aおよび第1余白部2bは、接触部材59の前側を通過する。
【0067】
被固定部材58に対する接触部材59の、前後方向の取付位置は調整可能になっている。すなわち、被固定部材58に対する接触部材59の、媒体2の厚さ方向における取付位置は調整可能になっている。接触部材59は、たとえば、ボルトとナットとによって被固定部材58に固定されている。被固定部材58には、前後方向を長手方向とする長穴状のボルト挿通穴が形成されている。
【0068】
本願発明者の検討によると、ガイド部材29が設置されていない場合、媒体巻取り機構26によって巻き取られて媒体巻取り部17に向かって移動する第2余白部2cが、収容部15に向かって移動する被切取り部2a側に傾くと、図8(B)に示すように、媒体2の搬送方向において切断機構7よりも下流側の所定の位置Pで、被切取り部2aの端面と第2余白部2cの端面とが過剰な接触圧で接触して、被切取り部2aにしわが発生したり、被切取り部2aや第2余白部2cが詰まるジャムが発生したりするおそれがある。
【0069】
本形態では、ガイド部材29が設置されており、ガイド部材29によって第2余白部2cから離れる方向に被切取り部2aが案内されている。そのため、媒体巻取り機構26によって巻き取られて媒体巻取り部17に向かって移動する第2余白部2cが、収容部15に向かって移動する被切取り部2a側に傾いても、第2余白部2cから離れる方向に案内される被切取り部2aの端面と第2余白部2cの端面とが過剰な接触圧で接触するのを防止することが可能になっている。ガイド部材29が設置されている場合には、所定位置Pにおいて、被切取り部2aと第2余白部2cとが前後方向で離れており、前側から見ると、第2余白部2cの端部が被切取り部2aに重なっている(図8(A)参照)。
【0070】
(テンション付与機構の構成)
図9は、図3に示すテンションバー9の位置を検知するための第1センサ48および第2センサ49の側面図である。
【0071】
テンション付与機構10は、テンションバー9に加えて、テンションバー9を媒体2に押し付ける方向に付勢する付勢部材としての引張りコイルバネ46(図3参照)と、テンションバー9を移動可能に保持するバー保持部47とを備えている。また、テンション付与機構10は、テンションバー9の位置を検知するための第1センサ48および第2センサ49を備えている。テンションバー9は、カッティングプラテン31の前面よりも後ろ側に配置されている。また、テンションバー9は、アフタープラテン25のガイド面25aの下端よりも後ろ側に配置されている。
【0072】
テンションバー9は、細長い円柱状に形成される支持軸50と、支持軸50に回転可能に保持されるローラ51とを備えている。支持軸50は、支持軸50の軸方向と左右方向とが一致するように配置されている。ローラ51は、左右方向に細長い円柱状に形成されている。ローラ51の長さ(左右方向の長さ)は、支持軸50の長さ(左右方向の長さ)よりも短くなっている。ローラ51の内周側には、支持軸50が挿通されており、ローラ51は、左右方向を回転の軸方向として支持軸50に対して回転可能となっている。ローラ51は、媒体2の前面側に接触している。支持軸50の両端部のそれぞれは、ローラ51の両端のそれぞれよりも左右方向の外側に突出している。
【0073】
バー保持部47は、支持軸50の両端部のそれぞれを支持している。バー保持部47は、ローラ51の左右方向の両側に配置される支持部材52に形成されている。支持部材52の後端部は、支持体4に固定されている。バー保持部47には、支持軸50の端部が挿通されるガイド溝47aが形成されている。ガイド溝47aは、前後方向を長手方向とする直線状(スリット状)に形成されている。支持軸50は、ガイド溝47aに沿って前後方向に移動可能となっている。すなわち、テンションバー9は、バー保持部47に対して前後方向に移動可能になっている。
【0074】
引張りコイルバネ46は、ローラ51の左右方向の両側に配置されている。引張りコイルバネ46の一端部は、支持軸50の端部に係合し、引張りコイルバネ46の他端部は、支持部材52に係合している。引張りコイルバネ46は、後ろ側に向かってテンションバー9を付勢している。すなわち、本形態の後ろ側(X2方向側)は、引張りコイルバネ46によるテンションバー9の付勢方向側となっている。また、前側(X1方向側)は、付勢方向側の反対側となっており、テンションバー9は、引張りコイルバネ46によるテンションバー9の付勢方向側と付勢方向側の反対側とにバー保持部47に対して移動可能になっている。
【0075】
第1センサ48および第2センサ49は、発光部と受光部とを有する透過型の光学式センサであり、発光部と受光部とが間隔をあけた状態で対向配置されている。第1センサ48および第2センサ49は、支持部材52に取り付けられている。第1センサ48と第2センサ49とは、前後方向において間隔をあけた状態で配置されている。本形態では、第1センサ48が後ろ側に配置され、第2センサ49が前側に配置されている。支持軸50には、所定の部材を介して遮光部材53が固定されている。遮光部材53には、第1センサ48の発光部と受光部との間を遮ることが可能な遮光部53aと、第2センサ49の発光部と受光部との間を遮ることが可能な遮光部53bとが形成されている。
【0076】
上述のように、第1センサ48は、第2センサ49よりも後ろ側に配置されており、後ろ側でテンションバー9の位置を検知する機能を果たしている。また、第2センサ49は、前側でテンションバー9の位置を検知する機能を果たしている。すなわち、第1センサ48は、引張りコイルバネ46によるテンションバー9の付勢方向側でテンションバー9の位置を検知する機能を果たし、第2センサ49は、付勢方向側の反対側でテンションバー9の位置を検知する機能を果たしている。
【0077】
本形態では、テンションバー9が前後方向において所定範囲内に配置されるように、第1センサ48および第2センサ49の検知結果に基づいて媒体搬送機構5および第2媒体搬送機構30が制御されている。すなわち、媒体2の張力が所定の範囲内の張力となるように、第1センサ48および第2センサ49の検知結果に基づいて媒体搬送機構5による媒体2の搬送量および第2媒体搬送機構30による媒体2の搬送量が制御されている。具体的には、遮光部53aが第1センサ48の発光部と受光部との間を遮り、かつ、遮光部53bが第2センサ49の発光部と受光部との間を遮る位置にテンションバー9が配置されるように、第1センサ48および第2センサ49の検知結果に基づいて媒体2の搬送量が制御されている。
【0078】
(媒体の印刷方法、切断方法)
図10は、図1に示す印刷装置1の構成を説明するためのブロック図である。
【0079】
本形態の印刷装置1は、印刷機構3で媒体2に印刷を行うと、そのまま、切断機構7および第2切断機構8で媒体2を切断して、被切取り部2aを切り取る。本形態では、印刷後にアフタープラテン25を通過した媒体2は、図1の実線で示すように、テンションバー9に向かって移動する。被切取り部2aを切り取るときには、カッティングプラテン31上の媒体2を第2媒体搬送機構30が搬送することで、第2切断機構8が媒体搬送方向に沿ったカット線CL11~CL14を媒体2に形成する。また、カッティングプラテン31上の媒体2が停止している状態でキャリッジ34が左右方向に移動することで、切断機構7が媒体幅方向(左右方向)に平行なカット線CL1を形成する。
【0080】
印刷後に切断機構7によって左右方向に直線的にカットされる媒体2の、媒体搬送方向におけるカット位置(すなわち、媒体搬送方向においてカット線CL1が形成される位置)を媒体カット位置とすると、印刷機構3は、図2に示すように、媒体2に画像を印刷するとともに、媒体カット位置を特定するためのカット位置用マーク(トンボマーク)M1を媒体2に印刷する。印刷機構3は、左右方向における媒体2の一端部にカット位置用マークM1を印刷する。
【0081】
カット位置用マークM1は、左右方向に平行な直線(線分)であり、媒体2の、第2余白部2cとなる部分に印刷される。また、カット位置用マークM1は、媒体カット位置から搬送方向下流側に一定の距離だけ離れた位置に印刷される。すなわち、印刷機構3は、複数の媒体カット位置のそれぞれから搬送方向下流側に一定の距離だけ離れた位置に複数のカット位置用マークM1を印刷する。複数のカット位置用マークM1は、左右方向において同じ位置に印刷される。
【0082】
また、媒体カット位置における媒体2の、媒体幅方向(左右方向)のカット範囲(すなわち、左右方向においてカット線CL1が形成される範囲)を媒体カット範囲とし、印刷後に第2切断機構8によって媒体2の搬送方向に直線的にカットされる媒体2の、左右方向におけるカット位置(すなわち、左右方向においてカット線CL11~CL14が形成される位置)を第2媒体カット位置とすると、印刷装置1に電気的に接続されるパーソナルコンピュータ(PC)61において、媒体2に印刷される画像(具体的には、被切取り部2aに印刷される画像)のデータである画像データと、媒体カット位置を特定するためのデータであるカット位置データと、カット位置用マークM1を印刷するためのデータであるマーク印刷用データと、媒体カット範囲を特定するためのデータであるカット範囲データと、第2媒体カット位置を特定するためのデータである第2カット位置データとが作成される。
【0083】
たとえば、印刷装置1のオペレータがPC61のディスプレイ上でこれらのデータを作成する。PC61には、画像作成用のソフトウエア等がインストールされている。本形態では、印刷装置1とPC61とによって印刷システムが構成されている。PC61においてこれらのデータが作成されると、オペレータは、たとえば、PC61のディスプレイ上に表示される第2媒体カット位置を確認しながら、左右方向における第2切断機構8の位置を調整して、支持フレーム35に第2切断機構8を固定する。
【0084】
また、オペレータがPC61で所定の操作を行うと、PC61は、作成された画像データ、カット位置データ、マーク印刷用データおよびカット範囲データを、印刷機構3の制御部である印刷制御部62に送信し、印刷制御部62は、これらのデータを受信する。すなわち、印刷機構3は、これらのデータを受信する。マーク印刷用データには、カット位置用マークM1の左右方向の位置を特定するためのデータであるマーク位置データが含まれている。
【0085】
画像データ、カット位置データ、マーク印刷用データおよびカット範囲データを受信した印刷制御部62は、印刷制御部62が保持する媒体2の左右方向の位置のデータ等に基づいてカット位置データ、カット範囲データおよびマーク位置データを補正し、補正後のカット位置データ、カット範囲データおよびマーク位置データを、切断機構7の制御部である切断制御部63に送信し、切断制御部63は、これらのデータを受信する。すなわち、切断機構7は、これらのデータを受信する。
【0086】
カット位置データ、カット範囲データおよびマーク位置データを受信した切断制御部63は、マーク位置データに基づいて、カット位置用マークM1をセンサ56が検知可能となる位置にキャリッジ34を移動させる。すなわち、キャリッジ駆動機構36は、マーク位置データに基づいて、カット位置用マークM1をセンサ56が検知可能となる位置にキャリッジ34を移動させる。切断機構7による媒体2のカットが行われるときには、この位置がキャリッジ34の基準位置となり、キャリッジ34は、この位置から移動し始める。この状態で、印刷機構3は、画像データに基づいて媒体2に画像を印刷するとともに、マーク印刷用データに基づいてカット位置用マークM1を媒体2に印刷する。
【0087】
また、切断機構7は、カット範囲データに基づいて媒体2をカットする。切断機構7が媒体2をカットするときには、カッティングプラテン31上の媒体2は停止している。媒体2の停止位置は、センサ56の検知結果とカット位置データとに基づいて制御される。具体的には、センサ56がカット位置用マークM1を検知した後、第2媒体搬送機構30によって媒体2が所定量搬送されると、媒体2が停止して、切断機構7が媒体2をカットする。
【0088】
本形態では、遮光部材53の遮光部53aが第1センサ48の発光部と受光部との間を遮り、かつ、遮光部53bが第2センサ49の発光部と受光部との間を遮ると、キャリッジ34の左右方向への移動が可能になる。すなわち、切断機構7がカット線CL1を形成するときには、遮光部53aが第1センサ48の発光部と受光部との間を遮り、かつ、遮光部53bが第2センサ49の発光部と受光部との間を遮る位置にテンションバー9が配置されている。また、本形態では、テンションバー9が前後方向において所定範囲移動しても、遮光部53aが第1センサ48の発光部と受光部との間を遮り、かつ、遮光部53bが第2センサ49の発光部と受光部との間を遮っている状態が維持される。
【0089】
[実施の形態2]
(印刷装置の構成、および、媒体の印刷方法、切断方法)
図11は、本発明の実施の形態2にかかる媒体2の印刷方法および切断方法を説明するための図である。図12は、本発明の実施の形態2にかかる印刷装置1の構成を説明するためのブロック図である。
【0090】
本形態の印刷装置1は、実施の形態1の印刷装置1と同様に、印刷後に切断される長尺の媒体2に印刷を行う。実施の形態1の印刷装置1では、印刷機構3による媒体2の印刷と、切断機構7および第2切断機構8による媒体2の切断とが行われている。これに対して、本形態では、たとえば、媒体2は、台紙と、台紙に剥離可能に貼り付けられたシール材とから構成されており、印刷装置1では、印刷機構3による媒体2の印刷と、切断機構7および第2切断機構8による媒体2の切断とに加えて、媒体2のシール材に印刷された画像に応じてシール材のみを所定形状にカットする媒体2のハーフカットが行われる。以下では、実施の形態1との相違点を中心にして、本形態の印刷装置1の構成等を説明する。
【0091】
本形態の印刷機構3は、媒体2をハーフカットするためのカッティングヘッド66(図1参照)を備えている。カッティングヘッド66は、キャリッジ21に搭載されており、左右方向に移動可能となっている。カッティングヘッド66は、たとえば、カッター刃と、上下方向を回動の軸方向とするカッター刃の回動が可能となるようにカッター刃を回動可能に保持するカッターホルダと、カッターホルダを昇降させる昇降機構とを備えている。カッティングヘッド66による媒体2のハーフカットは、媒体2の印刷後に行われる。
【0092】
媒体2の、カッティングヘッド66によってハーフカットされた部分をハーフカット線CL2とすると、カッティングヘッド66によってハーフカットされた後の媒体2には、たとえば、図11に示すように、画像を囲むハーフカット線CL2が形成される。媒体2のハーフカットが行われるときには、搬送方向下流側への媒体2の搬送と、搬送方向上流側への媒体2の搬送との、媒体搬送方向の両側への媒体2の搬送が行われる。
【0093】
停止状態の搬送ローラ32とパッドローラ33との間に媒体2が挟まれていると、媒体搬送機構5によって搬送方向上流側へ媒体2を所定量以上、搬送することができない。また、仮に、パッドローラ33を退避させることが可能であって、搬送ローラ32とパッドローラ33との間に媒体2が挟まれていない状況を作り出すことが可能であったとしても、媒体搬送方向の両側へ媒体2が搬送される状況で切断機構7および第2切断機構8による媒体2のカットが行われると、搬送方向上流側へ媒体2が搬送される影響で媒体幅方向および媒体搬送方向で媒体2を適切にカットできなくなるおそれがある。
【0094】
そこで、本形態では、印刷およびハーフカットを行った後の媒体2を、切断機構7および第2切断機構8によってカットすることなく、一旦、媒体巻取り機構26によってロール状に巻き取った後、オペレータは、媒体巻取り部17からロール状の媒体2を取り外して、媒体繰出し部14に取り付ける。また、ロール状に巻き取られた印刷およびハーフカット後の媒体2を媒体繰出し部14から再度繰り出して、切断機構7および第2切断機構8によるカットを行う。すなわち、印刷機構3が印刷を行った後の媒体2であって媒体巻取り部17から取り外された後の媒体2を印刷後媒体とすると、ロール状に巻回された印刷後媒体は、媒体取出し部14に取り付けられる。また、切断機構7および第2切断機構8は、印刷後媒体を切断する。
【0095】
本形態では、印刷およびハーフカットを行う際の媒体2の搬送方向下流側端は、切断機構7および第2切断機構8によってカットを行う際の媒体2の搬送方向上流側端となり、印刷およびハーフカットを行う際の媒体2の搬送方向上流側端は、切断機構7および第2切断機構8によってカットを行う際の媒体2の搬送方向下流側端となる。また、印刷およびハーフカットを行う際の媒体2の右端は、切断機構7および第2切断機構8によってカットを行う際の媒体2の左端となり、印刷およびハーフカットを行う際の媒体2の左端は、切断機構7および第2切断機構8によってカットを行う際の媒体2の右端となる。
【0096】
なお、図11(A)は、印刷およびハーフカットが終わった後、媒体巻取り部17から取り外される前の媒体2の搬送方向上流側の端部の状態を説明するための図であり、図11(B)は、印刷およびハーフカットが終わって媒体巻取り部17から取り外された後、媒体繰出し部14に取り付けられた媒体2の搬送方向下流側の端部の状態を説明するための図である。
【0097】
本形態では、媒体2の印刷およびハーフカットが行われるときに、切断機構7および第2切断機構8による媒体2のカットが行われないため、印刷およびハーフカット後にアフタープラテン25を通過した媒体2は、図1の二点鎖線で示すように、切断機構7、第2切断機構8およびテンション付与機構10の前側を通過するとともに、切断機構7の下側を通過してから、媒体巻取り機構26によって巻き取られる。一方、切断機構7および第2切断機構8による媒体2のカットが行われるときには、実施の形態1と同様に、アフタープラテン25を通過した媒体2は、テンションバー9に向かって移動する(図1の実線参照)。また、切断機構7および第2切断機構8による媒体2のカットが行われるときには、媒体2はプリントプラテン24上を通過する。
【0098】
本形態では、媒体2の印刷およびハーフカットが行われるときには、媒体巻取り部17は、印刷およびハーフカットが行われた後の媒体2がロール状に巻回された巻取ロール16を保持している。一方、切断機構7および第2切断機構8による媒体2のカットが行われるときには、媒体巻取り部17は、実施の形態1と同様に、第2余白部2cがロール状に巻回された巻取ロール16を保持している。
【0099】
本形態では、印刷機構3のキャリッジ21に、媒体2に印刷される後述の第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を検知するためのセンサ67(図12参照)が搭載されている。すなわち、印刷装置1は、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を検知するためのセンサ67を備えており、センサ67は、切断機構7よりも搬送方向上流側に配置されている。センサ67は、センサ56と同様に反射型の光学式センサであり、発光部と、発光部から射出されて媒体2で反射された光を受光する受光部とを備えている。センサ67の発光部は、下側に向かって光を射出する。センサ67は、印刷制御部62に電気的に接続されている。
【0100】
実施の形態1と同様に、媒体カット位置における媒体2の、左右方向のカット範囲(すなわち、左右方向においてカット線CL1が形成される範囲)を媒体カット範囲とすると、本形態の印刷機構3は、媒体2に画像およびカット位置用マークM1を印刷するとともに、左右方向における媒体カット範囲の一端に対応する位置に配置される第1カット範囲用マークM11と、左右方向における媒体カット範囲の他端に対応する位置に配置される第2カット範囲用マークM12と、原点を特定するための原点特定用マークM2とを媒体2に印刷する。
【0101】
実施の形態1と同様に、カット位置用マークM1は、左右方向に平行な直線(線分)であり、印刷機構3は、第2余白部2cとなる媒体2の左右方向の一端部にカット位置用マークM1を印刷する。また、本形態のカット位置用マークM1は、媒体カット位置から搬送方向上流側に一定の距離だけ離れた位置に印刷される(図11(A)参照)。すなわち、印刷機構3は、複数の媒体カット位置のそれぞれから搬送方向上流側に一定の距離だけ離れた位置に複数のカット位置用マークM1を印刷する。
【0102】
第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12は、媒体搬送方向に平行な直線(線分)である。印刷機構3は、媒体巻取り部17に巻き取られた状態の媒体2の、搬送方向上流側の端部に第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を印刷する。たとえば、図11に示すように、媒体2の幅方向で2枚の被切取り部2aが並んで配置されている場合には、印刷機構3は、2本の第1カット範囲用マークM11と2本の第2カット範囲用マークM12とを印刷する。
【0103】
本形態では、印刷機構3は、左右方向における媒体カット範囲の一端よりも左右方向の内側に第1カット範囲用マークM11を印刷するとともに、左右方向における媒体カット範囲の他端よりも左右方向の内側に第2カット範囲用マークM12を印刷する。また、実施の形態1と同様に、第2切断機構8によって媒体搬送方向に直線的にカットされる媒体2の、左右方向におけるカット位置(すなわち、左右方向においてカット線CL11~CL14が形成される位置)を第2媒体カット位置とすると、印刷機構3は、左右方向において第2媒体カット位置と同じ位置に第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を印刷する。
【0104】
なお、印刷機構3は、媒体巻取り部17に巻き取られた状態の媒体2の、搬送方向上流側の端部に印刷される第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12に加えて、媒体搬送方向において所定のピッチで、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を第1余白部2bに印刷することもある。
【0105】
原点特定用マークM2は、媒体搬送方向に平行な直線(線分)である。印刷機構3は、原点用マークM2を、媒体巻取り部17に巻き取られた状態の媒体2の、搬送方向上流側の端部に印刷する。また、たとえば、原点特定用マークM2の搬送方向下流側端は、最も搬送方向上流側に印刷されるカット位置用マークM1の左右方向の内側端に繋がっており、原点特定用マークM2は、第2余白部2cとなる媒体2の左右方向の一端部に印刷される。
【0106】
本形態では、媒体2の印刷およびハーフカットが行われる前に、PC61において、媒体2に印刷される画像(具体的には、被切取り部2aに印刷される画像)のデータである画像データと、媒体2をハーフカットするためのデータであるハーフカット用データと、媒体カット位置を特定するためのデータであるカット位置データと、カット位置用マークM1を媒体2に印刷するためのデータである第1マーク印刷用データと、媒体カット範囲を特定するためのデータであるカット範囲データと、第2媒体カット位置を特定するためのデータである第2カット位置データとが作成される。また、媒体2の印刷およびハーフカットが行われる前には、PC61において、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を媒体2に印刷するためのデータである第2マーク印刷用データと、原点特定用マークM2を媒体2に印刷するためのデータである第3マーク印刷用データとが作成される。
【0107】
たとえば、印刷装置1のオペレータがPC61のディスプレイ上でこれらのデータを作成する。PC61においてこれらのデータが作成された後、オペレータがPC61で所定の操作を行うと、PC61は、作成された画像データ、ハーフカット用データ、カット位置データ、第1マーク印刷用データ、第2マーク印刷用データ、第3マーク印刷用データおよびカット範囲データを印刷制御部62に送信し、印刷制御部62は、これらのデータを受信する。すなわち、印刷機構3は、これらのデータを受信する。
【0108】
データを受信した印刷機構3は、画像データに基づいて媒体2に画像を印刷し、第1マーク印刷用データに基づいて複数のカット位置用マークM1を媒体2に印刷し、第2マーク印刷用データに基づいて第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を印刷し、第3マーク印刷用データに基づいて原点特定用マークM2を印刷する。また、印刷機構3は、媒体2の印刷後に、ハーフカット用データに基づいて媒体2をハーフカットする。上述のように、媒体2の印刷およびハーフカットが行われるときには、印刷およびハーフカット後にアフタープラテン25を通過した媒体2が切断機構7、第2切断機構8およびテンション付与機構10の前側および切断機構7の下側を通過してから媒体巻取り機構26に巻き取られるように媒体2がセットされている。
【0109】
印刷およびハーフカットが行われた後の媒体2は、媒体巻取り機構26によってロール状に巻き取られ、オペレータによって媒体巻取り部17から取り外される。媒体巻取り部17から取り外された印刷およびハーフカット後のロール状の媒体2は、オペレータによって媒体繰出し部14に取り付けられる。媒体繰出し部14に取り付けられたロール状の媒体2は、オペレータによって引き出されて、媒体2の搬送方向下流側の端部がプリントプラテン24上に配置される。
【0110】
その後、センサ67が、原点特定用マークM2を検知するとともに、原点特定用マークM2の搬送方向上流側端が繋がるカット位置用マークM1(すなわち、最も搬送方向下流側に印刷されたカット位置用マークM1)を検知する。印刷制御部62は、センサ67の検知結果に基づいて、原点位置を特定する。本形態では、たとえば、原点特定用マークM2とカット位置用マークM1との接続点の位置が媒体2の原点位置となる。その後、センサ67が、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を検知する。本形態のセンサ67は、印刷後媒体に印刷された第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を検知するための第2マーク検知機構である。
【0111】
センサ67が原点特定用マークM2、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を検知するときには、キャリッジ21が左右方向に移動する。また、センサ67がカット位置用マークM1を検知するときには、媒体搬送機構5が媒体2を搬送する。なお、センサ67による原点特定用マークM2およびカット位置用マークM1の検知が行われる前には、左右方向におけるキャリッジ21の位置と、媒体2の搬送方向下流側の端部の、媒体搬送方向における位置とがオペレータによって調整される。具体的には、キャリッジ21に、下側に向かってレーザ光を射出するレーザポインタが搭載されており、オペレータは、レーザポインタから媒体2に照射されるレーザ光を確認しながら、キャリッジ21の位置と媒体2の搬送方向下流側の端部の位置とを調整する。
【0112】
印刷制御部62は、センサ67でのカット位置用マークM1の検知結果に基づいて、カット位置用マークM1の左右方向の位置を特定するためのデータであるマーク位置データを生成するとともに、センサ67での第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12の検知結果等に基づいてカット範囲データを補正して補正後のカット範囲データを生成する。また、印刷制御部62は、カット位置データ、マーク位置データおよび補正後のカット範囲データを切断制御部63に送信し、切断制御部63は、これらのデータを受信する。すなわち、切断機構7は、これらのデータを受信する。
【0113】
カット位置データ、カット範囲データおよびマーク位置データを受信した切断制御部63は、マーク位置データに基づいて、カット位置用マークM1をセンサ56が検知可能となる位置にキャリッジ34を移動させる。すなわち、キャリッジ駆動機構36は、切断機構7が受信したマーク位置データに基づいて、カット位置用マークM1をセンサ56が検知可能となる位置にキャリッジ34を移動させる。切断機構7による媒体2のカットが行われるときには、この位置がキャリッジ34の基準位置となり、キャリッジ34は、この位置から移動し始める。
【0114】
また、オペレータは、たとえば、左右方向において第2媒体カット位置と同じ位置に印刷された第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を目印にして、左右方向における第2切断機構8の位置を調整して、支持フレーム35に第2切断機構8を固定する。その後、第2切断機構8による媒体2のカットと、切断機構7による媒体2のカットとが行われる。
【0115】
実施の形態1と同様に、第2媒体搬送機構30が媒体2を搬送することで、第2切断機構8が媒体2をカットする。切断機構7は、カット範囲データに基づいて媒体2をカットする。切断機構7が媒体2をカットするときには、カッティングプラテン31上の媒体2は停止している。実施の形態1と同様に、本形態でも、媒体2の停止位置は、センサ56の検知結果とカット位置データとに基づいて制御される。具体的には、センサ56がカット位置用マークM1を検知した後、第2媒体搬送機構30によって媒体2が所定量搬送されると、媒体2が停止して、切断機構7が媒体2をカットする。本形態のセンサ56は、印刷後媒体に印刷されたカット位置用マークM1を検知するための第1マーク検知機構である。なお、切断機構7による媒体2のカット時には、カット位置用マークM1は、媒体カット位置から搬送方向下流側に一定の距離だけ離れた位置に配置されている(図11(B)参照)。
【0116】
このように、本形態では、切断機構7は、センサ67での第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12の検知結果等に基づいて補正されたカット範囲データ(すなわち、切断機構7が印刷制御部62から受信したカット範囲データ)と、センサ56の検知結果とに基づいて、左右方向で媒体2をカットする。すなわち、切断機構7は、センサ56、67の検知結果に基づいて、左右方向で媒体2をカットする。
【0117】
なお、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12が第1余白部2bに印刷されている場合には、切断機構7および第2切断機構8による媒体2の切断が開始された後に、再び、センサ67が、原点特定用マークM2、カット位置用マークM1、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を検知することもある。この場合には、印刷制御部62は、再び、マーク位置データを生成するとともに、カット範囲データを補正して、カット位置データ、マーク位置データおよび補正後のカット範囲データを切断制御部63に送信する。
【0118】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の印刷装置1では、印刷機構3は、第1マーク印刷用データに基づいて、複数の媒体カット位置のそれぞれから搬送方向上流側に一定の距離だけ離れた位置に複数のカット位置用マークM1を印刷しており、上述のように、印刷機構3が印刷を行った後の媒体2であって媒体巻取り部17から取り外された後の媒体2を印刷後媒体とすると、媒体取出し部14に取り付けられて媒体取出し部14から再度繰り出される印刷後媒体では、媒体カット位置のそれぞれから搬送方向下流側に一定の距離だけ離れた位置にカット位置用マークM1が配置されている。そのため、本形態では、印刷後媒体を再度繰り出して、媒体幅方向および媒体搬送方向でカットする場合であっても、カット位置用マークM1に基づいて、媒体カット位置を認識することが可能になる。
【0119】
また、本形態では、印刷機構3は、第2マーク印刷用データに基づいて、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を印刷している。そのため、本形態では、媒体取出し部14から再度繰り出される印刷後媒体の媒体幅方向の一部を媒体幅方向でカットする場合であっても、第1カット範囲用マークM11と第2カット範囲用マークM12とに基づいて、媒体カット範囲を認識することが可能になる。
【0120】
このように本形態では、媒体取出し部14から再度繰り出される印刷後媒体を媒体幅方向および媒体搬送方向でカットする場合であって、かつ、媒体幅方向における印刷後媒体の一部を媒体幅方向でカットする場合であっても、カット位置用マークM1と第1カット範囲用マークM11と第2カット範囲用マークM12とに基づいて、媒体幅方向で印刷後媒体を適切にカットするための媒体カット位置と媒体カット範囲とを認識することが可能になる。すなわち、本形態では、印刷後媒体を再度繰り出して、媒体幅方向および媒体搬送方向でカットする場合であって、かつ、媒体幅方向における印刷後媒体の一部を媒体幅方向でカットする場合であっても、媒体幅方向で印刷後媒体を適切にカットするためのマークを印刷することが可能になる。
【0121】
なお、本形態において、印刷後媒体を再度繰り出してカットするときに、PC61が保持している所定のデータを印刷制御部62に送信するとともに、印刷制御部62が切断制御部63に所定のデータを送信すれば、媒体幅方向において印刷後媒体を適切にカットするための媒体カット位置と媒体カット範囲とを切断機構7に認識させることも可能である。しかしながら、この場合には、印刷後媒体を再度繰り出してカットするときまで、PC61がデータを保持し続ける必要がある。また、この場合には、媒体繰出し部14から再度繰り出される印刷後媒体とPC61から送信されるデータとの対応付けが必要になる。これに対して、本形態では、PC61は、印刷機構3で印刷を行うときにデータを印刷機構3に送信すれば、データを保持し続ける必要がない。また、本形態では、媒体繰出し部14から再度繰り出される印刷後媒体とデータとの対応付けが不要である。
【0122】
本形態では、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12は、媒体幅方向において第2媒体カット位置と同じ位置に印刷されている。そのため、本形態では、上述のように、オペレータは、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を目印にして、媒体幅方向における第2切断機構8の位置を調整して、支持フレーム35に第2切断機構8を固定することが可能になる。
【0123】
本形態では、印刷機構3と切断機構7と第2切断機構8とが同じ支持体4に取り付けられている。そのため、本形態では、印刷機構3が取り付けられる支持体と、切断機構7および第2切断機構8が取り付けられる支持体とが別々に設けられている場合と比較して、印刷装置1の構成を簡素化することが可能になる。また、本形態では、ロール状に巻回された印刷後媒体が媒体繰出し部14に取り付けられるため、媒体繰出し部14に加えて、ロール状の印刷後媒体が取り付けられる繰出し部が別途設けられている場合と比較して、印刷装置1の構成を簡素化することが可能になる。
【0124】
本形態では、センサ67は、印刷機構3のキャリッジ21に搭載されている。そのため、本形態では、キャリッジ21の動作を利用して、センサ67で第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12等を検知することが可能になる。したがって、本形態では、キャリッジ21に加えて、センサ67が搭載されるキャリッジが別途設けられている場合と比較して、印刷装置1の構成を簡素化することが可能になる。
【0125】
本形態では、キャリッジ駆動機構36は、マーク位置データに基づいて、カット位置用マークM1をセンサ56が検知可能となる位置にキャリッジ34を移動させており、センサ56がカット位置用マークM1を検知可能となる位置にキャリッジ34を予め移動させて停止させている。そのため、本形態では、切断機構7が印刷後媒体をカットするときに、センサ56によって速やかにカット用位置データM1を検知することが可能になる。
【0126】
(実施の形態2の変更例)
実施の形態2では、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12は、媒体2の、被切取り部2aを避けた部分に印刷されているが、第1カット範囲用マークM11の一部分および第2カット範囲用マークM12の一部分が被切取り部2aに印刷されていても良い。この場合には、媒体搬送方向における第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12の長さが長くなるため、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を目印にして、左右方向における第2切断機構8の位置を調整するときに、第2切断機構8の位置を調整しやすくなる。
【0127】
実施の形態2において、第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12は、左右方向で第2媒体カット位置からずれた位置に印刷されても良い。たとえば、左右方向において媒体カット範囲の一端と同じ位置に第1カット範囲用マークM11が印刷され、左右方向において媒体カット範囲の他端と同じ位置に第2カット範囲用マークM12が印刷されても良い。また、左右方向における媒体カット範囲の一端よりも左右方向の外側に第1カット範囲用マークM11が印刷され、左右方向における媒体カット範囲の他端よりも左右方向の外側に第2カット範囲用マークM12が印刷されても良い。これらの場合には、左右方向における第2切断機構8の位置を調整するときの目印となるマークが媒体2に印刷されても良い。
【0128】
実施の形態2において、センサ67は、印刷機構3のキャリッジ21に搭載されていなくても良い。この場合には、たとえば、キャリッジ21に加えて、センサ67が搭載されるキャリッジが別途設けられている。また、実施の形態2において、センサ56は、切断機構7のキャリッジ34に搭載されていなくても良い。この場合には、たとえば、キャリッジ34に加えて、センサ56が搭載されるキャリッジが別途設けられている。
【0129】
実施の形態2において、センサ56が第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を検知しても良い。この場合には、センサ56は、印刷後媒体に印刷されたカット位置用マークM1を検知するための第1マーク検知機構であるとともに、印刷後媒体に印刷された第1カット範囲用マークM11および第2カット範囲用マークM12を検知するための第2マーク検知機構である。また、この場合には、センサ56が、原点特定用マークM2を検知するとともに、原点特定用マークM2の搬送方向上流側端が繋がるカット位置用マークM1を検知する。
【0130】
実施の形態2において、印刷機構3が取り付けられる支持体と、切断機構7および第2切断機構8が取り付けられる支持体とが別々に設けられていても良い。この場合には、たとえば、媒体繰出し部14に加えて、ロール状の印刷後媒体が取り付けられる繰出し部が別途設けられていても良い。また、実施の形態2において、印刷装置1は、切断機構7および第2切断機構8を備えていなくても良い。この場合には、切断機構7および第2切断機構8を備える切断装置が別途設置されており、印刷装置1で印刷およびハーフカットされた後の媒体2は、この切断装置で切断される。
【0131】
実施の形態2において、媒体2のハーフカットが行われる代わりに、印刷後の媒体2に、媒体2に印刷された画像に応じた所定形状のミシン目が形成されても良い。この場合には、たとえば、媒体2は紙で形成されており、カッティングヘッド66が印刷後の媒体2にミシン目を形成する。また、この場合には、たとえば、ハーフカット線CL2と同形状のミシン目のカット線が媒体2に形成される。また、実施の形態2において、媒体2のハーフカットが行われる代わりに、印刷後の媒体2の一部を装飾用に切り抜く媒体2の切抜きが行われても良い。さらに、実施の形態2において、媒体2のハーフカットや、媒体2へのミシン目の形成や、媒体2の切抜きが行われる代わりに、媒体2に対する所定の処理が行われても良い。この場合であっても、媒体2に対する所定の処理が行われるときに、媒体搬送方向の両側への媒体2の搬送が行われる。
【0132】
実施の形態2において、印刷のみが行われた媒体2が、切断機構7および第2切断機構8によってカットされることなく、媒体巻取り機構26によってロール状に巻き取られて媒体巻取り部17から取り外れた後に、媒体繰出し部14に取り付けられて、切断機構7および第2切断機構8によってカットされても良い。この場合には、たとえば、媒体巻取り部17から取り外れた印刷後のロール状の媒体2が媒体繰出し部14に取り付けられる前に、媒体2に対する所定の処理が行われる。
【0133】
[他の実施の形態]
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0134】
上述した形態において、印刷装置1は、ガイド部材29に代えて、第2余白部2cから離れる方向に被切取り部2aおよび第1余白部2bを案内するガイド部材79(図13参照)を備えていても良い。ガイド部材79は、たとえば、収容部15に取り付けられている。具体的には、ガイド部材79は、収容部15の後ろ上端部に取り付けられている。ガイド部材79は、切断機構7よりも下側に配置されており、媒体搬送方向において切断機構7と収容部15との間に配置されている。また、ガイド部材79は、左右方向において被切取り部2aおよび第1余白部2bが形成される位置に配置されている。
【0135】
ガイド部材79には、たとえば、前側に向かうにしたがって下側に向かうように傾斜する傾斜面79aが形成されており、被切取り部2aおよび第1余白部2bは、傾斜面79aによって、第2余白部2cから離れるように前下側に案内される。また、ガイド部材79には、後ろ側に向かうにしたがって下側に向かうように傾斜する傾斜面79bが形成されている。傾斜面79bは、傾斜面79aの後ろ側に配置されており、傾斜面79aの上端と傾斜面79bの上端とが繋がっている。なお、ガイド部材79は、収容部15と一体で形成されていても良い。
【0136】
上述した形態において、媒体2の搬送方向におけるテンションバー9と第2切断機構8との間に切断機構7が配置されていても良い。また、上述した形態において、媒体2の搬送方向における印刷機構3とテンションバー9との間にヒータ6が配置されていなくても良い。さらに、上述した形態において、媒体搬送方向における被切取り部2aの間の第1余白部2bが形成されなくても良い。また、上述した形態において、印刷装置1は、インクジェットプリンタ以外のプリンタであっても良い。
【符号の説明】
【0137】
1 印刷装置
2 媒体
3 印刷機構
4 支持体
5 媒体搬送機構
7 切断機構
8 第2切断機構
14 媒体繰出し部
17 媒体巻取り部
20 ヘッド(インクジェットヘッド)
21 キャリッジ(印刷用キャリッジ)
22 キャリッジ駆動機構(印刷用キャリッジ駆動機構)
34 キャリッジ(切断用キャリッジ)
36 キャリッジ駆動機構(切断用キャリッジ駆動機構)
38 カッター刃
56 センサ(第1マーク検知機構)
67 センサ(第2マーク検知機構)
M1 カット位置用マーク
M11 第1カット範囲用マーク
M12 第2カット範囲用マーク
Y 媒体幅方向
図1
図2
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図13