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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】盛土の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20241211BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20241211BHJP
   E01B 1/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
E02D17/20 104Z
E02D17/20 106
E01B1/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022016413
(22)【出願日】2022-02-04
(65)【公開番号】P2023114198
(43)【公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】太田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】中島 進
(72)【発明者】
【氏名】冨田 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 翔太
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-021083(JP,A)
【文献】実開昭48-038501(JP,U)
【文献】特開2016-191272(JP,A)
【文献】特開平02-091319(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0117963(KR,A)
【文献】特開平09-011387(JP,A)
【文献】特開2019-190093(JP,A)
【文献】特開平06-220860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/18
E02D 17/20
E01B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動化処理土を用いた盛土の施工方法であって、
盛土施工場所の外周に袋体を配置し、前記袋体の内部に充填材を充填して袋体型枠を形成し、
前記袋体型枠を1段目の高さまで積み上げた後、前記袋体型枠の天端高さまで1段目の流動化処理土を打設し、
前記1段目の流動化処理土が所定の一軸圧縮強度に硬化した後、
前記1段目の流動化処理土の上に、前記1段目と同様に、袋体型枠を設置し、前記袋体型枠を2段目の高さまで積み上げて2段目の流動化処理土を打設し、
これを繰り返して所定の高さまで前記流動化処理土を打設した後、
前記流動化処理土の最上層の上端を、排水・保水および荷重分散効果を有する保護層で覆い、
前記保護層は、透水性の異なる二種類の層で構成され、前記流動化処理土の直上に透水性が高い下層、その上に透水性が低い上層を設けることを特徴とする、盛土の施工方法。
【請求項2】
一端を前記袋体型枠に固定し、他端を前記流動化処理土内に定着させる棒状補強材を設けることを特徴とする、請求項に記載の盛土の施工方法。
【請求項3】
前記袋体は合成繊維製であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の盛土の施工方法。
【請求項4】
前記充填材がコンクリートであることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の盛土の施工方法。
【請求項5】
流動化処理土を用いた盛土の施工方法であって、
盛土施工場所の外周に袋体を配置し、前記袋体の内部に充填材を充填して袋体型枠を形成し、
前記袋体型枠を1段目の高さまで積み上げた後、前記袋体型枠の天端高さまで1段目の流動化処理土を打設し、
前記1段目の流動化処理土が所定の一軸圧縮強度に硬化した後、
1段目の前記袋体型枠を解体し、解体した前記袋体型枠の袋体を前記1段目の流動化処理土の上に設置し、前記袋体の内部に充填材を充填し袋体型枠を形成して2段目の流動化処理土を打設し、
これを繰り返して所定の高さまで前記流動化処理土を打設した後、
前記流動化処理土の最上層の上端を、排水・保水および荷重分散効果を有する保護層で覆うことを特徴とする、盛土の施工方法。
【請求項6】
前記流動化処理土は、一軸圧縮強度の28日強度が600kPa以上であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の盛土の施工方法。
【請求項7】
打設した前記流動化処理土の硬化時の一軸圧縮強度は、
小型FWD試験で前記流動化処理土の地盤反力係数を計測し、
地盤反力係数と変形係数との関係から変形係数を求め、
変形係数と一軸圧縮強度との関係から、前記流動化処理土の一軸圧縮強度を求めることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の盛土の施工方法。
【請求項8】
前記盛土の法面に擁壁を設けることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の盛土の施工方法。
【請求項9】
前記盛土は、鉄道用盛土であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の盛土の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道等の用途に用いられる盛土の施工方法に関し、詳しくは、流動化処理土を用いた盛土の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道用の盛土は、その性質上、狭隘部等の作業性の悪い場所での施工や、夜間等の限られた時間での施工が要求されることが多く、施工の省力化や迅速化が要求される。また、近年では、集中豪雨等の被害が増加していることから、崩壊した盛土の早期復旧に対する需要も増している。
【0003】
建設発生土などに水やセメント等の固化材を混ぜ合わせた流動化処理土は、高い流動性と充填性を有しており、流動化処理土を盛土材として用いることで、土質材料を使用した場合と比べて、盛土施工の省力化や迅速化を図ることができる。
【0004】
流動化処理土を使用して盛土を施工する場合、流動化処理土打設時の流出を防ぐために、側面に型枠を設けることが必要である。従来、型枠として、大型土のうやPC擁壁が用いられている。ところが、大型土のうはあくまでも仮設材であり、恒久構造物としては使用できないため、大型土のうを用いた場合は、流動化処理土の硬化後に大型土のうを撤去し、法面を施工する必要がある。一方、PC擁壁は、運搬や製作の関係から大きさに制限があり、大型のPC擁壁を製作する場合には長期間を要する。したがって、これらの方法では、流動化処理土を盛土材として使用した場合の施工の省力化や迅速化という利点を十分に活かすことができない。
【0005】
流動化処理土を用いた盛土の施工方法として、例えば特許文献1には、複数の箱体または袋体に充填物を充填した堰堤内に流動化処理土を打設する盛土の施工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-21083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、流動化処理土は、雨水等の滞水、外気による乾燥といった外的要因によって劣化する特性がある。例えば鉄道用盛土として長期的に列車荷重を支持する性能を確保するためには、これらの外的要因から防護し、耐久性を向上させる手段が必要である。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、流動化処理土を用いて、簡易且つ迅速な施工が可能であり、雨水等の滞水や乾燥等の外的要因に対する耐久性を有する盛土の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記問題を解決するため、本発明は、流動化処理土を用いた盛土の施工方法であって、盛土施工場所の外周に袋体を配置し、前記袋体の内部に充填材を充填して袋体型枠を形成し、前記袋体型枠を1段目の高さまで積み上げた後、前記袋体型枠の天端高さまで1段目の流動化処理土を打設し、前記1段目の流動化処理土が所定の一軸圧縮強度に硬化した後、前記1段目の流動化処理土の上に、前記1段目と同様に、袋体型枠を設置し、前記袋体型枠を2段目の高さまで積み上げて2段目の流動化処理土を打設し、これを繰り返して所定の高さまで前記流動化処理土を打設した後、前記流動化処理土の最上層の上端を、排水・保水および荷重分散効果を有する保護層で覆い、前記保護層は、透水性の異なる二種類の層で構成され、前記流動化処理土の直上に透水性が高い下層、その上に透水性が低い上層を設けることを特徴としている。
別の観点による本発明は、流動化処理土を用いた盛土の施工方法であって、盛土施工場所の外周に袋体を配置し、前記袋体の内部に充填材を充填して袋体型枠を形成し、前記袋体型枠を1段目の高さまで積み上げた後、前記袋体型枠の天端高さまで1段目の流動化処理土を打設し、前記1段目の流動化処理土が所定の一軸圧縮強度に硬化した後、1段目の前記袋体型枠を解体し、解体した前記袋体型枠の袋体を前記1段目の流動化処理土の上に設置し、前記袋体の内部に充填材を充填し袋体型枠を形成して2段目の流動化処理土を打設し、これを繰り返して所定の高さまで前記流動化処理土を打設した後、前記流動化処理土の最上層の上端を、排水・保水および荷重分散効果を有する保護層で覆うことを特徴としている。
【0011】
前記流動化処理土は、一軸圧縮強度の28日強度が600kPa以上でもよい。
【0012】
打設した前記流動化処理土の硬化時の一軸圧縮強度は、小型FWD試験で前記流動化処理土の地盤反力係数を計測し、地盤反力係数と変形係数との関係から変形係数を求め、変形係数と一軸圧縮強度との関係から、前記流動化処理土の一軸圧縮強度を求めてもよい。
【0013】
一端を前記袋体型枠に固定し、他端を前記流動化処理土内に定着させる棒状補強材を設けてもよい。
【0014】
前記袋体は合成繊維製でもよい。
【0015】
前記充填材がコンクリートでもよい。
【0017】
前記盛土の法面に擁壁を設けてもよい。また、前記盛土は、鉄道用盛土でもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、流動化処理土を用いて、雨水の滞水や乾燥等の外的要因に対する耐久性を有し、鉄道等の用途で用いることができる盛土を簡易且つ迅速に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明で用いられる袋体型枠の一例を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態にかかる盛土の施工手順の例を説明する断面図である。
図3】地盤反力係数KP.FWD値と変形係数E50との関係を示すグラフである。
図4】一軸圧縮強度qと変形係数E50との関係を示すグラフである。
図5】鉄道用盛土の施工例を示す断面図である。
図6】急勾配の盛土を施工する際の補強方法の例を示す斜視図である。
図7】急勾配の盛土の施工例を示す断面図である。
図8】先端に定着部を設けた定着用鉄筋の例を示す斜視図である。
図9】複数の定着用鉄筋の先端に長尺の定着部材を取り付けた例を示す斜視図である。
図10】本発明の異なる実施形態にかかる盛土の施工手順の例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明で用いられる袋体型枠2の一例を示す。袋体型枠2は、盛土を施工する場所の外周に袋体2aを配置した後、コンクリート等の充填材を注入口2bから袋体2aの内部に充填して形成される。袋体型枠2は、盛土施工後、そのまま盛土の本体構造物として使用できるものとし、袋体2aは耐候性および強度に優れた例えば合成繊維等を材料とすることが好ましい。また、充填材を充填する前の袋体2aは、例えば折りたたんで、人力で運搬および設置が可能な重量であることが好ましい。
【0022】
以下、図2に基づいて、本発明の実施形態にかかる盛土の施工方法の手順の一例について説明する。本実施形態は、鉄道用盛土の施工方法とする。
【0023】
先ず、例えば合成繊維製の袋体2aを現場の所定位置に設置し、コンクリート等の充填材を袋体2aに充填して、図1に示す形に整形し、袋体型枠2を形成する。充填材は、例えばポンプ車等により圧入する。充填材を充填した袋体型枠2は、高さが例えば500mm程度である。幅は、流動化処理土打設時の側圧に抵抗できる寸法とし、例えば1,000~4,000mm程度で、施工する盛土の幅や高さ、充填材の単位体積重量等に応じて決められる。袋体型枠2の長手方向の寸法は特に制限されないが、盛土の長手方向に沿って配置される長尺形状、例えば50m程度としてもよい。
【0024】
次に、充填材を充填した袋体型枠2の上に、別の袋体2aを重ねて設置し、同様に充填材を充填して袋体型枠2を形成する。そして、例えば2体の袋体型枠2を重ねたところで、充填材が硬化するまで養生を行う。充填材として呼び強度24N/mmのコンクリートを使用した場合には、1日程度の養生を行うとよい。同様にして、図2(a)に示すように、盛土の両端側に、例えば2m程度の高さまで袋体型枠2を積み上げる。図2(a)の実施形態では、高さ500mmの袋体型枠を4段重ねている。
【0025】
その後、1段目としての所定高さまで積み上げられた袋体型枠2同士の間に、袋体型枠2の天端高さまで、流動化処理土3を打設する(図2(b))。流動化処理土3は、建設発生土などに水やセメント等の固化材を混ぜ合わせた一般的なものを用いればよい。従来、鉄道の盛土材料として流動化処理土を使用する際、流動化処理土の設計基準強度に関する明確な規定は無く、例えばトンネルインバート部では、十分な安全性を考慮し、一軸圧縮強度6,000kPa程度のものを使用していた。ところが、近年、本発明者らの実験的研究により、流動化処理土による盛土に保護層を設けることにより、流動化処理土の一軸圧縮強度qを600kPa程度以上とすれば、列車荷重の繰返し作用に耐えうる構造となることが確認されている。本実施形態では、28日強度で1,200kPaの配合の流動化処理土3を用いることとする。
【0026】
打設した流動化処理土3は、袋体型枠2の重量などに応じて決められる一軸圧縮強度強度になるまで硬化させる。本実施形態では、一軸圧縮強度が50kPa程度となるまで硬化させる。例えば28日強度が1,200kPaの配合とした場合、通常は、材齢1日程度で50kPa以上となる。
【0027】
一軸圧縮試験を行うには、専用の試験機が必要であり、時間も要するうえ、一軸圧縮試験を行うための供試体は数に限りがあり、現場状況を反映した試験を行うことが難しいという問題がある。そこで、本実施形態では、打設後の流動化処理土3の強度を現場で簡易に確認する方法として、小型FWD試験を用いる。先ず、小型FWD試験により地盤反力係数KP.FWD値を計測し、地盤反力係数KP.FWD値と変形係数E50との関係から、図3に示すように変形係数E50が求められる。さらに、予め確認された一軸圧縮強度qと変形係数E50との関係から、図4に示すように一軸圧縮強度qが求められる。こうして求められた一軸圧縮強度qにより、流動化処理土3の強度を把握することができる。
【0028】
流動化処理土3が所定の強度に硬化したことが確認されると、その上に、2段目として、所定の傾斜が得られる位置に袋体型枠2を上述の方法と同様にして積み上げ(図2(c))、さらに、28日強度が1,200kPaの配合の流動化処理土3を、袋体型枠2の天端高さまで打設する(図2(d))。本実施形態では、一度に打設する流動化処理土3の1段の高さを2mとし、図2(e)、(f)に示すように、3段に分けて袋体型枠2の積み上げおよび流動化処理土3の打設を繰り返す。なお、最上段の流動化処理土3を打設する際には、盛土施工後に試験する一軸圧縮試験用供試体を採取しておく。
【0029】
図2(f)に示すように3段目の流動化処理土3の打設が終了した後、流動化処理土3の上に、鉄道の軌道等を設けるための重機作業が行われる。本実施形態において、この重機作業を行う際、流動化処理土3の上で一般的な敷き均しや転圧機械が作業できる強度として、流動化処理土3の一軸圧縮強度qを100kPa以上とする。28日強度が1,200kPaの配合の流動化処理土3の場合、通常、2日程度の養生で、一軸圧縮強度qが100kPa以上になる。
【0030】
2日程度養生した最上段の流動化処理土3の一軸圧縮強度qが100kPaに達していない場合には、さらに1日程度養生を行い、再度小型FWD試験を行って流動化処理土3の一軸圧縮強度qを確認する。所定の強度発現を確認できるまで、これを繰り返す。
【0031】
一軸圧縮強度qが100kPa以上になっていることが確認されたら、最上層の流動化処理土3の上面に、雨水の滞水の防止や乾燥からの防護、および列車荷重等の分散のために、保護層4を施工する。本実施形態において、保護層4は、図2(g)に示すように、透水性が異なる二種類の層5,6を重ねて形成し、流動化処理土3の直上の下層5を透水性が高い例えば粗い礫層とし、上層6を粒子の細かい砂層とする。このように上層6の透水性を低くすることで、上層6や、上層6と下層5との境界での排水を促進し、下層5を介して流動化処理土3に雨水が浸漬しにくくなる。保護層4全体の厚さは、例えば300mm程度とする。保護層4は、流動化処理土3の過剰な乾燥を防いだり、列車等の荷重の分散効果を持たせたりすることもできる。保護層4は、少なくとも流動化処理土3の上面を覆う範囲に設けられ、図5(a)に示すように袋体型枠2の上面を覆ってもよい。こうして、流動化処理土3の上面は保護層4で保護され、側面は袋体型枠2で保護された盛土10が形成される。
【0032】
さらに、鉄道用盛土として用いる際には、図5に示すように、保護層4の上面に、砕石路盤7および軌道8を施工する。そして、最上段の流動化処理土3を打設する際に採取した一軸圧縮試験用供試体に対して一軸圧縮試験を行い、流動化処理土3の一軸圧縮強度qが所定強度、すなわち、本実施形態では1,200kPa以上となっていることを確認する。一軸圧縮強度qが確認された後、試験列車の走行等により、列車走行に関する支持性能を確保できていることを確認し、列車走行を開始する。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、人力で運搬および設置が可能な袋体2aを盛土10の範囲に沿って配置し、袋体2aに、ポンプ車等により充填材を圧入することで、簡易に袋体型枠2の設置を行うことができる。さらに、設置した袋体型枠2をそのまま本体構造として使用することができるので、型枠の撤去や法面工を省略することができる。したがって、工期を短縮して迅速に盛土を施工することができる。また、袋体型枠2の充填材としてコンクリートを使用すれば、法面の防草効果も期待できる。
【0034】
また、流動化処理土3の上面に保護層4を施工することで、雨水の滞水や外気による乾燥等の外的要因から流動化処理土3を保護し、流動化処理土3の耐久性を向上させるとともに、列車荷重の分散効果も期待できる。したがって、従来、例えばトンネルインバート部では28日強度qu28が6,000kPa程度の流動化処理土が使用されていたが、より低強度な流動化処理土(qu28=600kPa以上、例えば1200kPa)が適用可能になり、汎用性が向上する。流動化処理土3の側面は、連続した袋体型枠2を残置することで、外的要因から保護することができる。
【0035】
さらに、小型FWD試験により流動化処理土3の強度を確認することで、従来の一軸圧縮試験による強度の確認よりも簡易かつ適切なタイミングで流動化処理土3の強度を評価することが可能となる。したがって、保護層4や軌道8などの流動化処理土3上の作業を適切なタイミングで行うことが可能となり、迅速に盛土10を施工することができる。
【0036】
図6は、本発明の異なる実施形態を示し、法勾配が急勾配の場合の袋体型枠2の施工手順を示す。
【0037】
先ず、図2の例と同様に、袋体2aを現場の所定位置に設置し、袋体2aの注入口2bから、コンクリート等の充填材を充填して、袋体型枠2を形成する(図6(a))。
【0038】
本実施形態では、袋体型枠2に、流動化処理土3に定着させる棒状補強材を取り付けることで、袋体型枠2と流動化処理土3とを一体化させる。これにより、袋体型枠2の地震等による倒壊を防止し、流動化処理土3による急勾配の盛土10の安定性を向上させることができる。本実施形態では、棒状部材として、定着用鉄筋22を用いる。先ず、図6(b)に示すように、袋体型枠2の、盛土の外側となる面に、長手方向に適宜間隔で、鉛直方向に固定用鉄筋21を配置する。その後、この固定用鉄筋21に固定されるとともに流動化処理土3に定着される定着用鉄筋22を配置する。定着用鉄筋22は、一端側が曲げ加工されており、この曲げ加工部22aを固定用鉄筋21に引っ掛けて、他端側は水平方向に延びるように配置する(図6(c))。そして、この定着用鉄筋22の上に、次の袋体2aを設置し、充填材を充填して袋体型枠2を形成する(図6(d))。
【0039】
こうして、袋体型枠2同士の間に定着用鉄筋22が挟まれ、定着用鉄筋22が水平方向に延びた状態で固定される。同様にして、各段の袋体型枠2の上に定着用鉄筋22を配置する(図6(e))。袋体型枠2が、例えば2mの所定高さまで積み上げられたら(図6(f))、図2(b)と同様に、袋体型枠2の天端高さまで流動化処理土3を打設する。定着用鉄筋22の径や本数(設置間隔)、流動化処理土3への定着長さは、地震等に対して盛土10が恒久構造物として安定して耐え得る強度を満たすように設計される。
【0040】
上記工程を繰り返し、所望する盛土高さに達したら、図7に示すように、袋体型枠2の外側に、法面の勾配に応じて、コンクリート等により擁壁9を構築し、積み上げた複数の袋体型枠2を一体化させる。比較的勾配が緩い場合には、擁壁9の代わりに、紫外線や雨水等に対する耐候性を有する吹きつけ材や面状または網目状の補強材を敷設してもよい。なお、網目状の補強材の場合には、表面に露出する鉄筋21、22を保護する手段が別途必要である。
【0041】
さらに、流動化処理土3の強度を確認した後、図2(g)に示した実施形態と同様に、流動化処理土3の上に保護層4を施工する。
【0042】
流動化処理土を用いて急勾配の盛土を施工する場合、従来、PC擁壁などの強固な壁面の施工が必要とされていたが、PC擁壁は製作に時間を要し、運搬に制限があるという問題があった。また、急勾配の盛土施工に大型土のうを使用する場合には、急勾配に対応した施工時の安定性を確保するための対策を講じる必要があった。一方、図6に示す実施形態によれば、急勾配の法面を有する盛土に関しては、袋体型枠2間に棒状の補強材を配置して流動化処理土3を打設することで、盛土10の構造の安定性を増すことができる。さらに、法面表層に、擁壁9の構築または面状補強材等を敷設することにより複数の袋体型枠2を一体化させることで、盛土10の安定性が向上する。このように補強した盛土10は、用地面積が限られている場合や、既存の急勾配の法面を有する盛土を復旧する場合等、十分な面積が確保できない場合に適用することができる。
【0043】
なお、定着用鉄筋22と流動化処理土3との定着を強固にするために、定着用鉄筋22の先端に、図8に例示するような矩形または円形の板状の定着部22bを設けてもよい。あるいは、複数の定着用鉄筋22の先端を長尺の定着部材23、例えば図9に示すようにL型アングル等に取り付けてもよい。
【0044】
また、図10は、本発明のさらに異なる実施形態にかかる盛土10の施工方法の手順を示す。
【0045】
袋体2aを現場の所定位置に設置し、充填材を充填して、袋体型枠2を形成する(図10(a))。本実施形態では、充填材として水を用いる。充填材を充填した袋体型枠2は、高さおよび幅が例えば1,500mm程度である。
【0046】
その後、袋体型枠2同士の間に、袋体型枠2の天端高さ以下の高さ、例えば1,000mmの高さまで、流動化処理土3を打設する(図10(b))。流動化処理土3は、前述の実施形態と同様のものを用いればよい。
【0047】
流動化処理土3を打設して1日程度養生して所定の強度になった後、1段目の袋体型枠2から水を抜き取り、袋体型枠2を解体する(図10(c))。そして、解体した袋体型枠2の袋体2aを、1段目の流動化処理土3の上に設置し、充填材を充填して、袋体型枠2を形成する(図10(d))。その後、1段目と同様に流動化処理土3を打設し(図10(e))、1日程度養生した後、袋体型枠2から水を抜き取り、袋体型枠2を解体する(図10(f))。
【0048】
同様の工程を繰り返し、所定の高さまで流動化処理土3を積み上げる(図10(g))。流動化処理土3の一軸圧縮強度qが所定の強度を満たすことが確認されたら、最上層の流動化処理土3の上面に、透水性が異なる二種類の層5,6を重ねて形成した保護層4を施工する。さらに、流動化処理土3の側面に、コンクリート等により擁壁9を構築し、積み上げた複数段の流動化処理土3を一体化させる。鉄道用盛土として用いる際には、保護層4の上面に、砕石路盤7および軌道8を施工する(図10(h))。
【0049】
本実施形態では、袋体型枠2の充填材として水を用い、各段で同じ袋体型枠2を繰り返し使用するため、低コストで盛土を施工することができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、鉄道等の用途に用いられる盛土の施工方法として有用である。
【符号の説明】
【0052】
2 袋体型枠
3 流動化処理土
4 保護層
9 擁壁
10 盛土
21 固定用鉄筋
22 定着用鉄筋
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10