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特許7602502昇降機の保全作業報告書作成装置及び保全作業報告書作成方法
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  • 特許-昇降機の保全作業報告書作成装置及び保全作業報告書作成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】昇降機の保全作業報告書作成装置及び保全作業報告書作成方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20241211BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20241211BHJP
【FI】
B66B5/00 G
G06Q10/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022028129
(22)【出願日】2022-02-25
(65)【公開番号】P2023124392
(43)【公開日】2023-09-06
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一朗
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-077384(JP,A)
【文献】特開2007-091381(JP,A)
【文献】特開2005-142754(JP,A)
【文献】特開2007-176618(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0206583(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
G06Q 10/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機の制御装置に接続された監視用端末と、作業者が携帯する保全用端末と、前記昇降機を遠隔監視して取得する遠隔監視データ並びに前記昇降機に関する設定値及び異常判定閾値を含む蓄積データを記憶する機械点検結果データベースと、に接続され、
前記昇降機の保全作業報告書を作成する装置において、
前記遠隔監視データと前記保全用端末からの情報とに基づき、前記作業者による点検の実施の際に行う保守作業の要否を判定し、
前記保守作業が必要と判定された場合には、前記遠隔監視データのうち前記点検の前後における所定の計測値である機械点検結果を前記保全作業報告書に記載する、昇降機の保全作業報告書作成装置。
【請求項2】
前記保守作業の要否は、前記機械点検結果を前記異常判定閾値と比較することにより判定する、請求項1記載の昇降機の保全作業報告書作成装置。
【請求項3】
前記保全用端末から送信された写真を前記保全作業報告書の所定の位置に掲載する、請求項1記載の昇降機の保全作業報告書作成装置。
【請求項4】
前記保全用端末からの作業開始の通知を受信した場合には、前記機械点検結果を前記異常判定閾値と比較し、異常がある場合には、前記保全用端末に通知する、請求項1記載の昇降機の保全作業報告書作成装置。
【請求項5】
昇降機の制御装置に接続された監視用端末と、作業者が携帯する保全用端末と、前記昇降機を遠隔監視して取得する遠隔監視データ並びに前記昇降機に関する設定値及び異常判定閾値を含む蓄積データを記憶する機械点検結果データベースと、に接続された報告書作成装置を用いて、前記昇降機の保全作業報告書を作成する方法において、
前記報告書作成装置が、
前記遠隔監視データと前記保全用端末からの情報とに基づき、前記作業者による点検の実施の際に行う保守作業の要否を判定し、
前記保守作業が必要と判定された場合には、前記遠隔監視データのうち前記点検の前後における所定の計測値である機械点検結果を前記保全作業報告書に記載する、昇降機の保全作業報告書作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータやエスカレータなどの昇降機の保全作業報告書作成装置及び保全作業報告書作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、顧客に対し保守作業の実施状況が分り易く、見映えの良い作業報告書を作成することを目的として、ビル設備の保守員が携帯する携帯端末装置として、情報センタ装置から取得した作業計画データに従って実施した作業を作業結果データとして格納するとともに、遠隔監視データと機械点検結果から取得したデータと作業実施データに基づいて作業内容データを作成し、携帯端末装置と随時接続される携帯型プリンタ装置から作業報告書を印字するようにしたものを用い、作業報告書には、保守員が顧客へ報告すべき事項を文章表示したもの、作業計画データからの作業写真撮影の指示により作業前後を撮影した写真等を掲載することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-91381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、作業前と作業後との機械点検結果を報告書に記載するものとしているが、実際に作業を実施して、作業前と作業後との機械点検結果に変化があれば、問題はない。しかし、作業時間内では作業ができずに終了した場合、作業前と作業後との機械点検結果として変化がないものを掲載して報告することとなる。
【0005】
また、特許文献1においては、保全作業時の写真については、例えば、複数の作業を実施して複数の写真がある場合には、複数の写真が報告書に掲載されるだけで、どの写真がどの作業に紐づくかについて明確に示す技術は開示されていない。
【0006】
本開示は、エレベータやエスカレータなどの昇降機の保全作業に関する報告書を正確かつ効率的に作成し、報告書に対する顧客満足を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の昇降機の保全作業報告書作成装置は、昇降機の制御装置に接続された監視用端末と、作業者が携帯する保全用端末と、昇降機を遠隔監視して取得する遠隔監視データ並びに昇降機に関する設定値及び異常判定閾値を含む蓄積データを記憶する機械点検結果データベースと、に接続され、昇降機の保全作業報告書を作成する装置において、遠隔監視データと保全用端末からの情報とに基づき、作業者による点検の実施の際に行う保守作業の要否を判定し、保守作業が必要と判定された場合には、遠隔監視データのうち点検の前後における所定の計測値である機械点検結果を保全作業報告書に記載する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、エレベータやエスカレータなどの昇降機の保全作業に関する報告書を正確かつ効率的に作成し、報告書に対する顧客満足を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に係る昇降機の監視及び保全を行うシステムを模式的に示す全体構成図である。
図2】本開示に係る保全作業の例であるレベル確認作業とシル溝清掃作業とドアスイッチ点検作業とについての報告書作成工程の一部を示すフロー図である。
図3図2に続く報告書作成工程を示すフロー図である。
図4図2の工程から分岐した報告書作成工程であってレベル確認作業に関するものを示すフロー図である。
図5図2の工程から分岐した報告書作成工程であってドアスイッチ点検作業に関するものを示すフロー図である。
図6】報告書の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示においては、作業者による点検作業の前後における機械点検結果を報告書に記載する場合に、機械点検結果が変化したことを装置が機械的にチェックする。例えば、機械点検結果が作業者による保守作業等を必要とする閾値を超えた状態から正常な状態に変化したことを装置がチェックし、自動で報告書に記載する。また、作業者が機械点検結果を記載する内容に関する作業を実施していることを作業中に作業者が携帯する保全用端末からクラウドにアップロードし、装置がチェックすることで、作業者が行うべき保守作業等の内容が明確となり、作業者が保守作業等を円滑かつ的確に行うことができる。また、報告書に記載する機械点検結果の精度を向上させることができる。
【0011】
報告書に写真を掲載する場合においては、どの作業に紐づく写真かを明確にしてアップロードすることが容易となり、報告書の適切な位置に自動で掲載することができる。
【0012】
なお、本明細書においては、保守作業は、調整作業以外の清掃、部品交換等の作業も含むものとする。
【0013】
図1は、本開示に係る昇降機の監視及び保全を行うシステムを模式的に示す全体構成図である。
【0014】
本図においては、エレベータ1(昇降機)は、エレベータ乗りかご11と、つり合い錘12と、主ロープ13と、巻上機14と、エレベータ制御装置15(昇降機の制御装置)と、テールコード16と、を含む。エレベータ制御装置15は、監視用端末21及び保全用端末31と通信可能に接続されている。この接続は、有線でも無線でもよい。監視用端末21は電気通信回線22を介して、保全用端末31は電気通信回線23を介して、昇降機保全センタ41に接続されている。昇降機保全センタ41は、機械点検結果データベース42と、報告書作成装置43と、を備えている。保全用端末31は、プリンタ51にデータを送信して印刷することができる。また、保全用端末31及び昇降機保全センタ41のデータは、出力端末52に送信することができる。
【0015】
なお、保全用端末31は、作業者が持ち歩くことができる携帯端末(スマートフォン、タブレット等のコンピュータ装置)であることが望ましい。この場合、作業者は、保全用端末31に数値、文章等を入力することができ、写真を撮影し送信することもできる。また、作業者は、保全用端末31により、監視用端末21、報告書作成装置43等が有するデータを受信することもできる。
【0016】
つぎに、本開示の保全作業及び作業に伴う報告書作成の工程について、例を挙げて説明する。
【0017】
図2は、本開示に係る保全作業の例であるレベル確認作業とシル溝清掃作業とドアスイッチ点検作業とについての報告書作成工程の一部を示すフロー図である。
【0018】
まず、作業開始時に保全用端末31で入館処理をすると(ステップS1)、報告書作成装置43は、入館の登録をし、その登録情報から作業現場を特定し、報告書の作成を開始する(ステップS2)。
【0019】
次に、保全用端末31でレベル確認作業を実施することを登録すると(ステップS3)、報告書作成装置43は、機械点検結果データベース42に蓄積された過去のデータを照会し、当該作業現場の機械点検レベルの計測値をチェックする(ステップS4)。そして、報告書作成装置43は、機械点検レベルの計測値が異常判定閾値を超えていないかを判定する(ステップS5)。ここで、「異常」とは、故障に至る前の故障の予兆が表れた状態をいい、点検の際に作業者が対応して故障を防止すべき状態である。また、「機械点検」とは、昇降機の各種の計測値を監視用端末21により取得することをいう。さらに、「機械点検結果」とは、昇降機を遠隔監視して取得した遠隔監視データのうち所定の計測値をいう。
【0020】
また、機械点検結果データベース42には、昇降機を遠隔監視して取得する遠隔監視データ、昇降機に関する設定値及び異常判定閾値その他の蓄積データが記憶される。蓄積データには、上記の過去のデータも含まれる。
【0021】
機械点検レベルの計測値が異常判定閾値を超えている場合は、報告書作成装置43がその計測値を保全用端末31に通知する(ステップS6)。保全用端末31は、通知を受信する(ステップS7)。この通知は、保全用端末31に表示することができ、この表示は、作業者が確認することができる。
【0022】
機械点検レベルの計測値が異常判定閾値を超えておらず正常であれば、報告書作成装置43から保全用端末31への通知はしない。言い換えると、ステップS5において正常と判定された場合には、ステップS9に進む。
【0023】
次に、保全用端末31でレベル確認作業が完了したことを登録すると(ステップS8)、報告書作成装置43は、監視用端末21が常時点検している昇降機の値をチェックし(ステップS9)、その値が異常判定閾値を超えていないか判定する(ステップS10)。
【0024】
ステップS10において正常と判定された場合には、本図に示すAに進む。A以降の工程については、図4を用いて説明する。なお、図2のステップS10において異常判定閾値を超えている場合については、後述する。
【0025】
図4は、図2の工程から分岐した報告書作成工程であってレベル確認作業に関するものを示すフロー図である。
【0026】
図2のステップS10において異常判定閾値を超えておらず正常な場合(Aに進む場合)は、報告書作成装置43は、図4に示すようにレベル確認作業前の機械点検レベルの計測値が正常かどうかを判定する(ステップS101)。ステップS101において作業前の機械点検の計測値が異常判定閾値を超えている場合は、作業によって改善したと判定し、レベル確認作業完了でレベル確認作業前の機械点検の計測値と作業後の機械点検の計測値とを報告書に反映し、調整作業を含む保守作業が完了したとして報告書に反映する(ステップS102)。
【0027】
ステップS101において作業前の機械点検の計測値が異常判定閾値を超えておらず正常な場合は、レベル確認作業完了で確認作業後の機械点検の計測値を報告書に反映し、作業完了として報告書に反映する(ステップS103)。
【0028】
ステップS102又はステップS103が終了した後は、Bに進む。Bは、図2のステップS13に続く。
【0029】
図2のステップS10において異常判定閾値を超えている場合は、報告書には報告前確認事項(要確認項目)として反映する(ステップS11)。
【0030】
次に、作業の例としてシル溝清掃及びドアスイッチ点検作業を挙げて説明する。
【0031】
シル溝清掃の作業においては、保全用端末31でシル溝清掃作業開始登録を実施する(ステップS12)。報告書作成装置43は、シル溝清掃作業開始登録を受け付ける(ステップS13)。
【0032】
作業中に撮った写真は、保全用端末31から報告書作成装置43に対し、シル溝清掃作業の写真であることの情報を付加して、写真を送付する(ステップS14)。
【0033】
報告書作成装置43は、シル溝清掃作業の写真であることを認定して写真を受信する(ステップS15)。
【0034】
シル溝清掃作業が完了したら、保全用端末31から報告書作成装置43に対し、シル溝清掃作業完了の連絡を送信する(ステップS16)。報告書作成装置43は、その連絡を受信し、ステップS15で受信した写真をシル溝清掃作業と紐づけて報告書に反映する(ステップS17)。
【0035】
次に、ドアスイッチ点検作業に移り、保全用端末31でドアスイッチ点検作業を実施することを登録すると(ステップS18)、報告書作成装置43は、機械点検結果データベース42から特定現場の機械点検ドアスイッチ動作位置の計測値をチェックする(ステップS19)。そして、機械点検ドアスイッチ動作位置の計測値が異常判定閾値を超えていないかを判定する(ステップS20)。
【0036】
ステップS20において機械点検ドアスイッチ動作位置の計測値が異常判定閾値を超えている場合は、報告書作成装置43から保全用端末31に通知する(ステップS21)。保全用端末31は、その通知を受信する(ステップS22)。作業者は、保全用端末31により受信された通知を表示して確認することができる。
【0037】
ステップS20において機械点検ドアスイッチ動作位置の計測値が異常判定閾値を超えておらず正常であれば、報告書作成装置43から保全用端末31への通知はしない。この場合、ステップS24に進む。
【0038】
次に、保全用端末31でドアスイッチ点検作業が完了したことを登録すると(ステップS23)、報告書作成装置43は、監視用端末21が常時点検している昇降機の値をチェックする(ステップS24)。そして、その値が異常判定閾値を超えていないかを判定する(ステップS25)。
【0039】
ステップS25において正常と判定された場合には、本図に示すCに進む。C以降の工程については、図5を用いて説明する。なお、図2のステップS25において異常判定閾値を超えている場合については、後述する。
【0040】
図5は、図2の工程から分岐した報告書作成工程であってドアスイッチ点検作業に関するものを示すフロー図である。
【0041】
図2のステップS25において異常判定閾値を超えておらず正常な場合(Cに進む場合)は、報告書作成装置43は、図5に示すようにドアスイッチ点検作業前の機械点検ドアスイッチ動作位置の計測値を判定する(ステップS201)。作業前の機械点検の計測値が異常判定閾値を超えている場合は、作業によって改善したと判定し、ドアスイッチ点検作業完了でドアスイッチ点検作業前の機械点検の計測値と作業後の機械点検の計測値とを報告書に反映し、調整作業を含む保守作業が完了したとして報告書に反映する(ステップS202)。
【0042】
ステップS201において作業前の機械点検の計測値が異常判定閾値を超えておらず正常な場合は、ドアスイッチ点検作業完了で点検作業後の機械点検の計測値を報告書に反映し、作業完了として報告書に反映する(ステップS203)。
【0043】
ステップS202又はステップS203が終了した後は、Dに進む。Dは、図2のステップS28に続く。
【0044】
図2のステップS25において異常判定閾値を超えている場合は、報告書に報告前確認事項として反映する(ステップS26)。
【0045】
点検作業全体が完了したら、保全用端末31で点検作業完了を登録する(ステップS27)。報告書作成装置43は、点検作業完了の登録を受信し(ステップS28)、本図に示すEに進む。E以降の工程については、図3を用いて説明する。
【0046】
図3は、図2に続く報告書作成工程を示すフロー図である。
【0047】
報告書作成装置43は、点検作業完了登録までの登録内容を報告書に反映し、自動編集する(ステップS29)。そして、報告書作成装置43は、報告前確認事項の有無をチェックし判定する(ステップS30)。報告前確認事項がある場合は、該当する機械点検の計測(昇降機の計測値の取得)をし(ステップS31)、その計測値をチェックし異常の有無を判定する(ステップS32)。その計測値が異常判定閾値を超えておらず正常な場合は、作業によって改善したと判定し、点検作業完了で作業前の機械点検の計測値と作業後の機械点検の計測値とを報告書に反映し、調整作業を含む保守作業が完了したとして報告書に反映する(ステップS34)。異常判定閾値を超えている場合は、レベル確認作業前の計測結果とレベル確認作業後の計測結果とを報告書に反映し、報告前確認事項とする(ステップS33)。
【0048】
次に、報告書作成装置43は、報告書の内容を再編集し、編集完了し、登録する(ステップS35)。そして、登録した報告書は、保全用端末31に通知する(ステップS36)。
【0049】
保全用端末31は、報告書作成装置43からの通知を受信する(ステップS37)。
【0050】
保全用端末31により受信された報告書は、作業者が確認し、必要に応じて編集する(ステップS38)。作業者は、確認及び編集が完了したら、保全用端末31で報告書作成装置43への登録を実施する(ステップS39)。確認、編集後の報告書を報告書作成装置43は、ステップS39において保全用端末31から送信された報告書を受信し再登録する(ステップS40)。
【0051】
ステップS39において作業者が保全用端末31から送信した報告書は、プリンタ51または出力端末52を用いて出力することができる(ステップS41)。
【0052】
最後に、作業者は、保全用端末31で退館処理を実施する(ステップS42)。報告書作成装置43は、退館の情報を受信し登録する(ステップS43)。これにより、一連の工程が完了となる。
【0053】
図6は、報告書の一例を示す図である。
【0054】
本図においては、報告書の一番上の欄に現場名、作業日及び作業担当者名を記載している。この記載内容は、作業者の入館登録において送信される内容を自動的に反映したものである。報告内容としては、作業実施項目、その結果及び備考の欄が設けられている。ここで、作業実施項目は、保全用端末31からの登録内容を反映したものである。結果は、作業前後の機械点検による計測値の結果を自動的に反映したものである。備考は、機械点検による計測値の結果を自動的に反映したものである。ここで、「自動的に」とは、作業者の操作(手動操作)を必要とせず、装置が有するプログラムに従って、処理が行われることをいう。なお、「自動で」についても同様の意味である。
【0055】
作業実施項目としては、着床レベル確認、シル溝清掃、ドアスイッチ動作位置点検、ドア開時間確認等の項目が記載されている。
【0056】
着床レベル確認の結果としては、完了したこと及び調整を実施したことが明示されている。さらに、その調整の意味や理由について説明する文章が記載され、特別な内容が顧客にもわかりやすいように示されている。また、備考には、作業前に、正常値の範囲内(設定値±10mm)ではあるものの異常判定閾値を超えたため、作業時に設定値とほぼ同じ値になるように調整したことを示す内容、すなわち各階床における調整前後の数値を計測した結果等を含む内容が記載されている。
【0057】
シル溝清掃の結果としては、問題なく完了したことが記載されている。また、備考には、清掃の状況を撮影した写真(保全用端末31から送信したもの)等が表示されている。
【0058】
ドアスイッチ動作位置点検の結果としては、完了したこと及び異常がないことが明示されている。また、備考には、異常判定閾値を超えていない計測結果が数値で明示されている。
【0059】
ドア開時間確認の結果としては、修理計画が必要であること、具体的には、現在は正常であり安全であるが、ベルト交換を推奨することを記載している。また、備考には、ドア開時間の正常値及び計測値を記載している。
【0060】
このほか、具体的な項目は示していないが、作業前に異常判定閾値を超えていて、作業時に保守作業しても正常値の範囲内にはできなかった場合(作業後も異常判定閾値を超えている場合)には、作業は完了していること及び修理を計画する必要があること(修理を提案すること)が記載されている。備考には、計測値とともに正常値を記載し、状況が具体的にわかるようにしている。
【0061】
さらに、コメント入力欄には、作業者が追記すべきと考えた内容を記載することができる。この内容は、保全用端末31により作成し、報告書作成装置43に送信することができる。
【0062】
以下、本開示に係る望ましい実施形態について、まとめて説明する。
【0063】
昇降機の保全作業報告書作成装置においては、保守作業の要否は、機械点検結果を異常判定閾値と比較することにより判定する。
【0064】
保全用端末から送信された写真を保全作業報告書の所定の位置に掲載する。
【0065】
保全用端末からの作業開始の通知を受信した場合には、機械点検結果を異常判定閾値と比較し、異常がある場合には、保全用端末に通知する。
【符号の説明】
【0066】
1:エレベータ、11:エレベータ乗りかご、12:つり合い錘、13:主ロープ、14:巻上機、15:エレベータ制御装置、16:テールコード、21:監視用端末、22、32:電気通信回線、31:保全用端末、41:昇降機保全センタ、42:機械点検結果データベース、43:報告書作成装置、51:プリンタ、52:出力端末。
図1
図2
図3
図4
図5
図6