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特許7602503燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20241211BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20241211BHJP
   H01M 8/04664 20160101ALI20241211BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20241211BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20241211BHJP
   B60L 50/70 20190101ALI20241211BHJP
   B60L 58/30 20190101ALI20241211BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241211BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/0444
H01M8/04664
H01M8/04694
H01M8/00 Z
B60L50/70
B60L58/30
B60L3/00 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022033867
(22)【出願日】2022-03-04
(65)【公開番号】P2023129088
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2024-03-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度~2022年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業/共通課題解決型基盤技術開発/大型モビリティに適応する多用途型燃料電池モジュールの研究開発委託業務 産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】大島 昭一
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-026873(JP,A)
【文献】特開2006-294397(JP,A)
【文献】特開2006-236615(JP,A)
【文献】特開2006-278174(JP,A)
【文献】特開2003-308866(JP,A)
【文献】特開2022-026271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04858
H01M 8/0444
H01M 8/04664
H01M 8/04694
H01M 8/00
B60L 50/70
B60L 58/30
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電源から電力が供給されて動作する燃料電池モジュールであって、燃料電池の補機と、ガスの漏洩及び換気量の異常を含む異常状態を検知する検知器と、を含む燃料電池モジュールと、
前記系統電源から前記燃料電池モジュールへの電力の供給を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記検知器の異常検知信号に基づいてインターロック信号を生成するインターロック回路と、前記インターロック信号に基づいて前記系統電源から前記燃料電池モジュールへの電力の供給を遮断する遮断器と、前記インターロック回路と前記遮断器との間に配置され、前記インターロック信号を遅延させて前記遮断器に送信する遅延回路と、を含む、燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記遅延回路による遅延期間の間に前記異常検知信号を受信して記憶
する制御回路を含む、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御回路は、記憶した前記異常検知信号に基づいて、前記異常状態の種類を判別する、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記制御回路による判別結果を外部に送信する通信回路を含む、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記遅延回路は、予め設定された遅延期間、前記インターロック信号を遅延させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記遮断器は、電磁開閉器、電磁接触器又はリレーで構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料電池システムは、移動体に搭載される移動体用の燃料電池システムである、請求項1~6のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
系統電源から電力が供給されて動作する燃料電池モジュールと、前記系統電源から前記燃料電池モジュールへの電力の供給を制御する制御装置と、を備える燃料電池システムの制御方法であって、
前記燃料電池モジュールは、燃料電池の補機と、ガスの漏洩及び換気量の異常を含む異常状態を検知する検知器と、を含み、
前記制御装置は、前記系統電源から前記燃料電池モジュールへの電力の供給を遮断する遮断器を含み、
前記制御方法は、前記検知器の異常検知信号に基づいてインターロック信号を生成する生成工程と、前記インターロック信号を遅延させて前記遮断器に送信する遅延工程と、前記遮断器が前記インターロック信号に基づいて前記系統電源から前記燃料電池モジュールへの電力の供給を遮断する遮断工程と、を含む、燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
系統電源から電力が供給されて動作する燃料電池モジュールと、系統電源から燃料電池モジュールへの電力の供給を制御する制御装置と、を備える燃料電池システムが知られている。燃料電池モジュールは、燃料電池の補機と、ガスの漏洩及び換気量の異常を含む異常状態を検知する検知器と、を有している。
【0003】
従来、検知器がガスの漏洩及び換気量の異常を含む異常状態を検知した場合、検知器の異常検知信号に基づいてインターロック信号を生成し、インターロック信号に基づいて遮断器を動作させて、系統電源から燃料電池モジュールへの電力の供給を遮断していた。
【0004】
しかしながら、系統電源から燃料電池モジュールへの電力の供給を遮断した場合、検知器への電力の供給も遮断されてしまうため、制御装置が検知器の異常検知信号を処理することができず、検知器により検知された異常状態がガスの漏洩であるのか換気量の異常であるのかを判別することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-26873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、検知器により検知された異常状態の種類を判別することができる燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施の形態による燃料電池システムは、系統電源から電力が供給されて動作する燃料電池モジュールであって、燃料電池の補機と、ガスの漏洩及び換気量の異常を含む異常状態を検知する検知器と、を含む燃料電池モジュールと、系統電源から燃料電池モジュールへの電力の供給を制御する制御装置と、を備える。制御装置は、検知器の異常検知信号に基づいてインターロック信号を生成するインターロック回路と、インターロック信号に基づいて系統電源から燃料電池モジュールへの電力の供給を遮断する遮断器と、インターロック回路と遮断器との間に配置され、インターロック信号を遅延させて遮断器に送信する遅延回路と、を含む。
【0008】
また、実施の形態による燃料電池システムの制御方法は、系統電源から電力が供給されて動作する燃料電池モジュールと、系統電源から燃料電池モジュールへの電力の供給を制御する制御装置と、を備える燃料電池システムの制御方法である。燃料電池モジュールは、燃料電池の補機と、ガスの漏洩及び換気量の異常を含む異常状態を検知する検知器と、を含む。制御装置は、系統電源から燃料電池モジュールへの電力の供給を遮断する遮断器を含む。制御方法は、検知器の異常検知信号に基づいてインターロック信号を生成する生成工程と、インターロック信号を遅延させて遮断器に送信する遅延工程と、遮断器がインターロック信号に基づいて系統電源から燃料電池モジュールへの電力の供給を遮断する遮断工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検知器により検知された異常状態の種類を判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態による燃料電池システムの概略構成図である。
図2図2は、第1比較例による燃料電池システムの概略構成図である。
図3図3は、第2比較例による燃料電池システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態による燃料電池システム及び燃料電池システムの制御方法について説明する。
【0012】
まず、図1を用いて、本実施の形態による燃料電池システムについて説明する。本実施の形態による燃料電池システムは、例えば、自動車、鉄道車両、航空機、船舶等の移動体に搭載される移動体用の燃料電池システムである。しかしながら、このことに限られることはなく、燃料電池システムは、種々の分野に適用可能である。例えば、燃料電池システムは、工場、病院、商業施設、住宅等の定置用に適用されてもよい。
【0013】
図1に示すように、燃料電池システム1は、燃料電池モジュール10と、制御装置20と、を備えている。
【0014】
燃料電池モジュール10は、燃料ガスと酸化剤ガスとを用いて発電を行うように構成されている。燃料電池モジュール10は、複数の燃料電池セルが積層されて構成された燃料電池スタック(燃料電池)を含んでいてもよい。複数の燃料電池セルは、下記の化学式1で示す反応により発電を行う。より具体的には、燃料ガスは、例えば水素含有ガスである。燃料ガスは、燃料電池セル内の燃料ガス流路を流れて、燃料極反応をおこす。酸化剤ガスは、例えば空気(大気)である。酸化剤ガスは、燃料電池セル内の酸化剤ガス流路を流れて、酸化剤極反応をおこす。燃料電池スタックは、これらの電気化学反応を利用して、集電板に設けられた電極から電気エネルギーを取り出すことができるように構成されている。
【0015】
(化学式1)
燃料極反応:H → 2H + 2e
酸化剤極反応:1/2O + 2H +2e → H
【0016】
燃料電池モジュール10は、系統電源3から電力が供給されて動作する。系統電源3として、不図示のディーゼル発電機、蓄電池、配電用変電所等からの電力が供給されてもよい。系統電源3からの電力は、交流電力であってもよい。燃料電池モジュール10は、補機12と、検知器14と、を含んでいる。
【0017】
補機12は、系統電源3から電力が供給されて動作する。補機12は、燃料電池モジュール10を動作させる、あるいは燃料電池モジュール10の動作を補助する。図示された例においては、燃料電池モジュール10は、4つの補機12a、12b、12c、12dを含んでおり、各補機12a、12b、12c、12dに系統電源3からの電力がそれぞれ供給される。補機12は、例えば、燃料電池スタックにガスを供給するためのポンプやブロワ、燃料遮断弁、燃料電池スタックを監視するための流量計や圧力計等を含んでいてもよい。図示された例においては、補機12aは、例えば、流量計であってもよい。補機12bは、例えば、圧力計や燃料遮断弁であってもよい。補機12cは、例えば、ポンプであってもよい。補機12dは、例えば、ブロワであってもよい。各補機12a、12b、12c、12dの動作や計測に係る情報(信号)は、後述する制御回路27に送信される。
【0018】
検知器14は、系統電源3から電力が供給されて動作する。検知器14は、ガスの漏洩及び換気量の異常を含む異常状態を検知する。検知器14は、例えば、水素ガスの濃度を検出するガス濃度検出器や、換気装置のファンの回転数を計測するファン回転数計測器を含んでいてもよい。例えば、検知器14は、燃料電池モジュール10が設置された室内(設置区画内)の水素ガスの濃度を検知することによって、燃料電池モジュール10からの水素ガスの漏洩を検知してもよい。また例えば、検知器14は、燃料電池モジュール10が設置された室内の換気装置のファンの回転数を検知することによって、あるいは燃料電池モジュール10が設置された室内と室外との差圧を検知することによって、当該室内における換気量の異常を検知してもよい。検知器14が異常状態を検知した場合、検知器14の異常状態に係る情報は、異常検知信号として、後述するインターロック回路25及び後述する制御回路27に送信される。
【0019】
制御装置20は、燃料電池モジュール10を制御するように構成されている。とりわけ、制御装置20は、系統電源3から燃料電池モジュール10への電力の供給を制御するように構成されている。すなわち、制御装置20は、系統電源3から補機12及び検知器14への電力の供給を制御する。
【0020】
制御装置20は、変圧器21と、電圧変換器22と、UPS(無停電電源装置)23と、遮断器24と、インターロック回路25と、遅延回路26と、制御回路27と、通信回路28と、を含んでいる。
【0021】
変圧器21は、系統電源3と接続されている。変圧器21は、系統電源3の電圧を機器での使用に適した電圧に変換することができる。電圧変換器22は、変圧器21と接続されている。電圧変換器22は、変圧器21からの交流電力(交流電圧)を直流電力(直流電圧)に変換することができる。UPS23も、変圧器21と接続されている。UPS23は、変圧器21からの電力を蓄積することができ、停電時等の系統電源3の異常時においても電力(交流電力)を出力することができる。
【0022】
電圧変換器22は、補機12a、検知器14及び後述する制御回路27と接続されている。電圧変換器22からの電力は、補機12a、検知器14及び制御回路27にそれぞれ供給されるようになっている。UPS23は、補機12b及び制御回路27と接続されている。UPS23からの電力は、補機12b及び制御回路27にそれぞれ供給されるようになっている。UPS23からの電力は、停電時等の系統電源3の異常時においても供給されるようになっている。また、変圧器21は、補機12cとも接続されている。変圧器21からの電力は、補機12cにも供給されるようになっている。また、系統電源3は、補機12dとも接続されている。系統電源3からの電力は、補機12dにも供給されるようになっている。
【0023】
遮断器24は、系統電源3から燃料電池モジュール10への電力の供給を遮断するように構成されている。遮断器24は、後述するインターロック回路25で生成されたインターロック信号に基づいて、系統電源3から燃料電池モジュール10への電力の供給を遮断する。図示された例においては、制御装置20は、4つの遮断器24a、24b、24c、24dを含んでいる。遮断器24aは、電圧変換器22と補機12a及び検知器14との間に配置されている。遮断器24aは、電圧変換器22から補機12a及び検知器14への電力の供給を遮断することができる。遮断器24bは、UPS23と補機12bとの間に配置されている。遮断器24bは、UPS23から補機12bへの電力の供給を遮断することができる。遮断器24cは、変圧器21と補機12cとの間に配置されている。遮断器24cは、変圧器21から補機12cへの電力の供給を遮断することができる。遮断器24dは、系統電源3と補機12dとの間に配置されている。遮断器24dは、系統電源3から補機12dへの電力の供給を遮断することができる。遮断器24は、インターロック信号に基づいて動作可能であればどのような装置を用いてもよい。例えば、遮断器24は、電磁開閉器、電磁接触器又はリレーで構成されていてもよい。
【0024】
インターロック回路25は、検知器14及び各遮断器24a、24b、24c、24dと接続されている。インターロック回路25は、検知器14の異常検知信号を受信することができる。インターロック回路25は、検知器14の異常検知信号を受信した場合、当該異常検知信号に基づいてインターロック信号を生成する。例えば、インターロック回路25は、異常検知信号に係る水素ガスの濃度が所定濃度以上である場合に、インターロック信号を生成する。また例えば、インターロック回路25は、異常検知信号に係る換気装置のファンの回転数が所定回転数以下である場合に、あるいは異常検知信号に係る室内外の差圧が所定圧力以上である場合に、インターロック信号を生成する。インターロック回路25により生成されたインターロック信号は、各遮断器24a、24b、24c、24dに送信される。インターロック信号を受信した各遮断器24a、24b、24c、24dは、インターロック信号に基づいて、系統電源3から対応する補機12a、12b、12c、12d及び検知器14への電力の供給を遮断する。
【0025】
遅延回路26は、インターロック回路25と遮断器24との間に配置されている。遅延回路26は、インターロック回路25により生成されたインターロック信号を遅延させて遮断器24に送信するように構成されている。遅延回路26は、インターロック回路25からのインターロック信号を遅延させた後、当該インターロック信号をそのまま遮断器24に送信してもよいし、インターロック信号を別の形態に変換して遮断器24に送信してもよい。遅延回路26は、予め設定された遅延期間Td、インターロック信号を遅延させてもよい。遅延期間Tdは、例えば、0.1秒以上10秒以内の範囲内で設定されてもよい。遅延回路26がインターロック信号を遅延させて遮断器24に送信することにより、検知器14により異常状態が検知された場合であっても、遅延回路26による遅延期間Tdの間、補機12及び検知器14が動作することができる。このため、後述する制御回路27が、遅延期間Tdの間に、各補機12a、12b、12c、12dの信号及び検知器14の異常検知信号を受信して記憶することができる。
【0026】
制御回路27は、各補機12a、12b、12c、12d及び検知器14と接続されている。制御回路27は、各補機12a、12b、12c、12d及び検知器14を制御可能に構成されている。また、制御回路27は、各補機12a、12b、12c、12dの信号及び検知器14の異常検知信号を受信して記憶することができる。制御回路27は、記憶した異常検知信号に基づいて、異常検知信号を分析し、異常検知信号に係る異常状態の種類を判別することができる。すなわち、制御回路27は、異常検知信号に係る異常状態が、ガスの漏洩であるのか、換気量の異常であるのかを判別することができる。
【0027】
上述したように、制御回路27は、電圧変換器22及びUPS23と接続されている。このため、制御回路27には、電圧変換器22からの電力及びUPS23からの電力が供給されるようになっている。とりわけ、制御回路27は、電圧変換器22と遮断器24aとの間で電圧変換器22と接続されるとともに、UPS23と遮断器24bとの間でUPS23と接続されている。このことにより、遮断器24a、24bにより系統電源3から燃料電池モジュール10への電力の供給が遮断された場合であっても、電圧変換器22からの電力及びUPS23からの電力がそれぞれ制御回路27に供給される。このため、制御回路27は、遮断器24a、24bにより系統電源3から燃料電池モジュール10への電力の供給が遮断された場合であっても、動作することができる。
【0028】
制御回路27は、遅延回路26による遅延期間Tdの間に検知器14の異常検知信号を受信して記憶することができる。そして、制御回路27は、記憶した異常検知信号に基づいて、異常状態の種類を判別することができる。制御回路27は、遅延期間Tdの間に異常状態の種類を判別してもよいし、遅延期間Tdの経過後に異常状態の種類を判別してもよい。制御回路27による異常状態の種類の判別結果は、制御回路27に記憶されるとともに、後述する通信回路28に送信される。
【0029】
通信回路28は、制御回路27と接続されている。また、通信回路28は、有線又は無線により外部装置5と接続されている。通信回路28は、制御回路27による判別結果を外部装置5(外部)に送信するように構成されている。外部装置5は、例えば、外部から燃料電池モジュール10の異常状態を監視する監視システムであってもよい。
【0030】
なお、本実施の形態においては、制御回路27が、遅延回路26による遅延期間Tdの間に異常検知信号を受信して記憶するとともに、記憶した異常検知信号に基づいて異常状態の種類を判別する例について説明した。しかしながら、このことに限られることはなく、例えば、遅延期間Tdの間に異常検知信号が通信回路28を介して外部装置5に送信され、外部装置5により異常状態の種類が判別されるようにしてもよい。
【0031】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用効果について説明する。ここでは、本実施の形態による燃料電池システム1の制御方法について説明する。
【0032】
燃料電池システム1が起動されると、系統電源3から燃料電池モジュール10に電力が供給される。より具体的には、まず、系統電源3からの電力が変圧器21に供給され、変圧器21において機器での使用に適した電圧に変換される。次に、変圧器21からの電力が電圧変換器22に供給され、電圧変換器22において交流電力から直流電力に変換される。そして、電圧変換器22からの電力が補機12a、検知器14及び制御回路27に供給される。また、変圧器21からの電力がUPS23にも供給され、UPS23において電力が蓄積されるとともに、UPS23からの電力が補機12b及び制御回路27にそれぞれ供給される。また、変圧器21からの電力が補機12cにも供給される。また、系統電源3からの電力が補機12dにも供給される。
【0033】
系統電源3からの電力が供給された制御回路27は、各補機12a、12b、12c、12d、検知器14、不図示のパワーコンディショナー等を起動し、燃料電池モジュール10による発電を開始する。燃料電池モジュール10による発電中、制御回路27は、各補機12a、12b、12c、12d及び検知器14を制御する。また、制御回路27は、各補機12a、12b、12c、12dからの信号及び検知器14からの信号をそれぞれ受信して記憶する。
【0034】
検知器14がガスの漏洩及び換気量の異常を含む異常状態を検知した場合、検知器14の異常検知信号がインターロック回路25に送信される。インターロック回路25が検知器14の異常検知信号を受信すると、インターロック回路25により、当該異常検知信号に基づいてインターロック信号が生成される(生成工程)。生成されたインターロック信号は、遅延回路26に送信される。遅延回路26がインターロック信号を受信すると、遅延回路26により、所定の遅延期間Td、インターロック信号が遅延される(遅延工程)。遅延されたインターロック信号は、各遮断器24a、24b、24c、24dに送信される。各遮断器24a、24b、24c、24dがインターロック信号を受信すると、各遮断器24a、24b、24c、24dにより、インターロック信号に基づいて、系統電源3から各補機12a、12b、12c、12d及び検知器14への電力の供給が遮断される(遮断工程)。
【0035】
一方、検知器14の異常検知信号は、制御回路27にも送信される。制御回路27は、遅延回路26による遅延期間Tdの間に、この異常検知信号を受信して記憶する。そして、制御回路27は、記憶した異常検知信号に基づいて、異常状態の種類を判別する。すなわち、制御回路27は、異常検知信号に係る異常状態が、ガスの漏洩であるのか、換気量の異常であるのかを判別する。制御回路27による判別結果は、通信回路28に送信される。そして、通信回路28により、制御回路27による判別結果が外部装置5(外部)に送信される。
【0036】
ここで、図2を用いて、第1比較例による燃料電池システム100について説明する。なお、図2において、図1に示す本実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。図2に示す第1比較例による燃料電池システム100においては、制御装置120は、4つの遮断器24a、24b、24c、24dの代わりに、1つの遮断器124を有している。遮断器124は、系統電源3と変圧器21及び補機12dとの間に配置されている。また、制御装置120は、遅延回路26を有しておらず、遮断器124は、インターロック回路25と直接接続されている。
【0037】
この第1比較例において、検知器14がガスの漏洩及び換気量の異常を含む異常状態を検知した場合、インターロック回路25により生成されたインターロック信号は、遅延回路26を介さずに、遮断器124に送信される。このことにより、インターロック信号を受信した遮断器124は、直ちに、当該インターロック信号に基づいて、系統電源3から各補機12a、12b、12c、12d及び検知器14並びに制御回路27への電力の供給を遮断する。このため、各補機12a、12b、12c、12d及び検知器14並びに制御回路27は、直ちに動作を停止してしまう。この結果、制御回路27は、検知器14の異常検知信号を受信して記憶することができず、検知器14により検知された異常状態がガスの漏洩であるのか換気量の異常であるのかを判別することができない。
【0038】
また、図3を用いて、第2比較例による燃料電池システム200について説明する。なお、図3において、図1に示す本実施の形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。図3に示す第2比較例による燃料電池システム200においては、制御装置220は、遅延回路26を有しておらず、各遮断器24a、24b、24c、24dは、インターロック回路25と直接接続されている。
【0039】
この第2比較例においても、検知器14がガスの漏洩及び換気量の異常を含む異常状態を検知した場合、インターロック回路25により生成されたインターロック信号は、遅延回路26を介さずに、各遮断器24a、24b、24c、24dに送信される。このことにより、インターロック信号を受信した各遮断器24a、24b、24c、24dは、直ちに、当該インターロック信号に基づいて、系統電源3から対応する補機12a、12b、12c、12d及び検知器14への電力の供給を遮断する。このため、各補機12a、12b、12c、12d及び検知器14は、直ちに動作を停止してしまう。この結果、制御回路27は、検知器14の異常検知信号を受信して記憶することができず、検知器14により検知された異常状態がガスの漏洩であるのか換気量の異常であるのかを判別することができない。
【0040】
これに対して本実施の形態によれば、制御装置20は、インターロック回路25と遮断器24との間に配置され、インターロック信号を遅延させて遮断器24に送信する遅延回路26を含んでいる。このことにより、検知器14により異常状態が検知された場合であっても、遅延回路26による遅延期間Tdの間、検知器14を動作させることができる。このため、遅延期間Tdの間に、検知器14の異常検知信号の処理が可能となる。この結果、検知器14により検知された異常状態の種類を判別することができる。
【0041】
とりわけ、本実施の形態によれば、制御装置20は、遅延回路26による遅延期間Tdの間に異常検知信号を受信して記憶する制御回路27を含んでいる。このように、遅延回路26による遅延期間Tdの間に、制御回路27により検知器14の異常検知信号を受信して記憶することが可能となる。このため、この制御回路27に記憶された異常検知信号に基づいて、検知器14により検知された異常状態の種類を判別することができる。
【0042】
また、本実施の形態によれば、制御回路27は、記憶した異常検知信号に基づいて、異常状態の種類を判別する。このように、制御回路27により、迅速に異常検知信号を分析し、検知器14により検知された異常状態の種類を判別することができる。
【0043】
また、本実施の形態によれば、制御装置20は、制御回路27による判別結果を外部に送信する通信回路28を含んでいる。このことにより、制御回路27による判別結果を、通信回路28を介して監視システム等の外部装置5に送信することができる。このため、外部より燃料電池モジュール10の異常状態を監視することができる。
【0044】
また、本実施の形態によれば、遅延回路26は、予め設定された遅延期間Td、インターロック信号を遅延させる。このように、遅延回路26による遅延期間Tdは、管理者が適宜設定することができる。このため、燃料電池システム1の柔軟な運用が可能となる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、遮断器24は、電磁開閉器、電磁接触器又はリレーで構成されている。このことにより、遮断器24を、インターロック信号に基づいて容易に制御することができる。このため、燃料電池システム1の制御を容易化することができる。また、これらの遮断器24は、異常状態の要因が取り除かれ、インターロック信号が遮断器24に送信されなくなった場合に、自動的に電力の供給を再開することができる。
【0046】
また、本実施の形態によれば、燃料電池システム1は、移動体に搭載される移動体用の燃料電池システム1である。とりわけ、船舶等の移動体に搭載される燃料電池システム1においては、燃料電池モジュール10の設置区画内の電気機器を他の電気機器に接続して使用する際、ガスの漏洩及び換気量を含む異常状態時には、燃料電池モジュール10への電力の供給を遮断するとともに、その異常状態がガスの漏洩であるのか換気量の異常であるのかを判別することが要求される。このため、本実施の形態は、とりわけ船舶等の移動体に搭載される移動体用の燃料電池システム1として有用である。
【0047】
以上述べた実施の形態によれば、検知器により検知された異常状態の種類を判別することができる。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1:燃料電池システム、3:系統電源、10:燃料電池モジュール、12:補機、14:検知器、20:制御装置、24:遮断器、25:インターロック回路、26:遅延回路、27:制御回路、28:通信回路
図1
図2
図3