(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】地図更新装置、地図更新方法及び地図更新用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 29/00 20060101AFI20241211BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20241211BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
G01C21/26 A
G08G1/13
(21)【出願番号】P 2022138051
(22)【出願日】2022-08-31
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅浩
【審査官】進藤 利哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-205103(JP,A)
【文献】特開2021-103284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 29/00-29/14
G01C 21/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図情報に表される個々の登録地物の位置及び種類と、地物の複数の種類のうち、互いに類似する2以上の種類を同一のグループとして表す地物グループ情報とを記憶する記憶部と、
前記地図情報に表される前記個々の登録地物のうち、車両から通信部を介して受信した地物データに表される前記地物の位置から所定距離内に位置する1以上の登録地物を特定し、前記地物グループ情報を参照して、前記地物データに表される前記地物を、特定した前記1以上の登録地物のうち、前記地物データに表される前記地物の種類と同一、または、前記地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物に対応付ける対応付け部と、
前記地図情報に表される個々の前記登録地物の少なくとも何れかについて、当該登録地物に対応付けられた所定数の前記地物データに表される前記地物の位置または種類に基づいて当該登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する更新部と、
を有
し、
前記地物グループ情報は、所属する前記地物の種類同士の類似度合いが異なる2段階以上のグループを表し、
前記対応付け部は、特定した前記1以上の登録地物のうち、類似度合いが高いグループから順に、前記地物データに表される前記地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物を探索して対応付ける、地図更新装置。
【請求項2】
前記更新部は、前記地図情報に表される個々の前記登録地物の少なくとも何れかについて、当該登録地物に対応付けられた前記所定数の前記地物データのそれぞれに表される前記地物に対して、当該登録地物の種類と同一となるグループの類似度合いが高いほど
大きい重み係数を設定し、前記所定数の前記地物データのそれぞれに表される前記地物の位置を対応する前記重み係数を用いて加重平均して得られる位置で当該登録地物の位置
を更新する、請求項
1に記載の地図更新装置。
【請求項3】
地図情報に表される個々の登録地物の位置及び種類と、地物の複数の種類のうち、互いに類似する2以上の種類を同一のグループとして表す地物グループ情報とを記憶する記憶部と、
前記地図情報に表される前記個々の登録地物のうち、車両から通信部を介して受信した地物データに表される前記地物の位置から所定距離内に位置する1以上の登録地物を特定し、前記地物グループ情報を参照して、前記地物データに表される前記地物を、特定した前記1以上の登録地物のうち、前記地物データに表される前記地物の種類と同一、または、前記地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物に対応付ける対応付け部と、
前記地図情報に表される個々の前記登録地物の少なくとも何れかについて、当該登録地物に対応付けられた所定数の前記地物データに表される前記地物の位置または種類に基づいて当該登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する更新部と、
を有し、
前記地物データは、当該地物データに表される前記地物の2以上の種類のそれぞれについて、当該種類である確からしさを表す確信度をさらに有し、
前記対応付け部は、前記地物データに表される前記地物についての前記確信度が高い種類から順に、当該種類と同一のグループに属する種類の登録地物を探索して対応付け
る、地図更新装置。
【請求項4】
地図更新装置が、地図情報に表される個々の登録地物のうち、車両から通信部を介して受信した地物データに表される地物の位置から所定距離内に位置する1以上の登録地物を特定し、
前記地図更新装置が、前記地物の複数の種類のうち、互いに類似する2以上の種類を同一のグループとして表す地物グループ情報を参照して、前記地物データに表される前記地物を、特定した前記1以上の登録地物のうち、前記地物データに表される前記地物の種類と同一、または、前記地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物に対応付け、
前記地図更新装置が、前記地図情報に表される個々の前記登録地物の少なくとも何れかについて、当該登録地物に対応付けられた所定数の前記地物データに表される前記地物の位置または種類に基づいて当該登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する、
ことを含
み、
前記地物グループ情報は、所属する前記地物の種類同士の類似度合いが異なる2段階以上のグループを表し、
前記登録地物に対応付けることは、特定した前記1以上の登録地物のうち、類似度合いが高いグループから順に、前記地物データに表される前記地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物を探索して対応付けることを含む、
地図更新方法。
【請求項5】
地図更新装置が、地図情報に表される個々の登録地物のうち、車両から通信部を介して受信した地物データに表される地物の位置から所定距離内に位置する1以上の登録地物を特定し、
前記地図更新装置が、前記地物の複数の種類のうち、互いに類似する2以上の種類を同一のグループとして表す地物グループ情報を参照して、前記地物データに表される前記地物を、特定した前記1以上の登録地物のうち、前記地物データに表される前記地物の種類と同一、または、前記地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物に対応付け、
前記地図更新装置が、前記地図情報に表される個々の前記登録地物の少なくとも何れかについて、当該登録地物に対応付けられた所定数の前記地物データに表される前記地物の位置または種類に基づいて当該登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する、
ことを含み、
前記地物データは、当該地物データに表される前記地物の2以上の種類のそれぞれについて、当該種類である確からしさを表す確信度をさらに有し、
前記登録地物に対応付けることは、前記地物データに表される前記地物についての前記確信度が高い種類から順に、当該種類と同一のグループに属する種類の登録地物を探索して対応付けることを含む、
地図更新方法。
【請求項6】
地図情報に表される個々の登録地物のうち、車両から通信部を介して受信した地物データに表される地物の位置から所定距離内に位置する1以上の登録地物を特定し、
前記地物の複数の種類のうち、互いに類似する2以上の種類を同一のグループとして表す地物グループ情報を参照して、前記地物データに表される前記地物を、特定した前記1以上の登録地物のうち、前記地物データに表される前記地物の種類と同一、または、前記地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物に対応付け、
前記地図情報に表される個々の前記登録地物の少なくとも何れかについて、当該登録地物に対応付けられた所定数の前記地物データに表される前記地物の位置または種類に基づいて当該登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する、
ことをコンピュータに実行さ
せ、
前記地物グループ情報は、所属する前記地物の種類同士の類似度合いが異なる2段階以上のグループを表し、
前記登録地物に対応付けることは、特定した前記1以上の登録地物のうち、類似度合いが高いグループから順に、前記地物データに表される前記地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物を探索して対応付けることを含む、
地図更新用コンピュータプログラム。
【請求項7】
地図情報に表される個々の登録地物のうち、車両から通信部を介して受信した地物データに表される地物の位置から所定距離内に位置する1以上の登録地物を特定し、
前記地物の複数の種類のうち、互いに類似する2以上の種類を同一のグループとして表す地物グループ情報を参照して、前記地物データに表される前記地物を、特定した前記1以上の登録地物のうち、前記地物データに表される前記地物の種類と同一、または、前記地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物に対応付け、
前記地図情報に表される個々の前記登録地物の少なくとも何れかについて、当該登録地物に対応付けられた所定数の前記地物データに表される前記地物の位置または種類に基づいて当該登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する、
ことをコンピュータに実行させ、
前記地物データは、当該地物データに表される前記地物の2以上の種類のそれぞれについて、当該種類である確からしさを表す確信度をさらに有し、
前記登録地物に対応付けることは、前記地物データに表される前記地物についての前記確信度が高い種類から順に、当該種類と同一のグループに属する種類の登録地物を探索して対応付けることを含む、
地図更新用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図に表される地物の情報を更新する地図更新装置、地図更新方法及び地図更新用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転システムが車両を自動運転制御するために参照する高精度な地図には、道路または道路の周囲に設けられた、車両の走行に関連する地物に関する情報を正確に表していることが求められる。そこで、地図に変化が生じた場合は確実かつ正確に更新する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、サーバ装置は、地物に関する地物情報を含む高度化地
図DBを記憶部に記憶する。そして、サーバ装置は、地物を計測する外界センサを搭載する複数の車載機から、地物情報とその地物情報に対応する実際の地物との差異を示す差異情報を受信する。また、サーバ装置は、複数の差異情報に基づいて算出した信頼度に応じて、実際の地物の計測データである生データの送信を要求する生データ要求信号を、車載機に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地物の種類によっては、他の種類の地物と類似しているものもある。このような地物については、車両側で地物を表すデータの生成の際に地物の種類が誤って認識されたり、あるいは、更新前の地図において、地物の種類が誤って記録されたりしていることがある。このような場合において、収集されたデータに表される地物を、更新前の地図に記録された地物のうち、同じ種類の地物のみに対応付けると、地図において本来対応付けられるべき地物が有るにもかかわらず、その対応付けが行われないことがある。その結果として地図の更新が正確に行われず、あるいは、地図の更新に利用されないデータの数が増大してしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、収集された地物を表すデータを用いて地図情報を適切に更新することが可能な地図更新装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、地図更新装置が提供される。この地図更新装置は、地図情報に表される個々の登録地物の位置と、地物の複数の種類のうち、互いに類似する2以上の種類を同一のグループとして表す地物グループ情報を記憶する記憶部と、地図情報に表される個々の登録地物のうち、車両から通信部を介して受信した地物データに表される地物の位置から所定距離内に位置する1以上の登録地物を特定し、地物グループ情報を参照して、地物データに表される地物を、特定した1以上の登録地物のうち、地物データに表される地物の種類と同一、または、地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物に対応付ける対応付け部と、地図情報に表される個々の登録地物の少なくとも何れかについて、その登録地物に対応付けられた所定数の地物データに表される地物の位置または種類に基づいてその登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する更新部とを有する。
【0008】
この地図更新装置において、地物グループ情報は、所属する地物の種類同士の類似度合いが異なる2段階以上のグループを表し、対応付け部は、特定した1以上の登録地物のうち、類似度合いが高いグループから順に、地物データに表される地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物を探索して対応付けることが好ましい。
【0009】
また、この地図更新装置において、地物グループ情報は、所属する種類同士の類似度合いが異なる2段階以上のグループを表し、更新部は、地図情報に表される個々の登録地物の少なくとも何れかについて、その登録地物に対応付けられた所定数の地物データのそれぞれに表される地物に対して、その登録地物の種類と同一となるグループの類似度合いが高いほど、その登録地物の位置または種類の更新における重みを大きくすることが好ましい。
【0010】
また、この地図更新装置において、地物データは、その地物データに表される地物の2以上の種類のそれぞれについて、その種類である確からしさを表す確信度をさらに有し、対応付け部は、地物データに表される地物についての確信度が高い種類から順に、その種類と同一のグループに属する種類の登録地物を探索して対応付けることが好ましい。
【0011】
他の形態によれば、地図更新方法が提供される。この地図更新方法は、地図情報に表される個々の登録地物のうち、車両から通信部を介して受信した地物データに表される地物の位置から所定距離内に位置する1以上の登録地物を特定し、地物の複数の種類のうち、互いに類似する2以上の種類を同一のグループとして表す地物グループ情報を参照して、地物データに表される地物を、特定した1以上の登録地物のうち、地物データに表される地物の種類と同一、または、その地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物に対応付け、地図情報に表される個々の登録地物の少なくとも何れかについて、その登録地物に対応付けられた所定数の地物データに表される地物の位置または種類に基づいてその登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する、ことを含む。
【0012】
さらに他の形態によれば、地図更新用コンピュータプログラムが提供される。この地図更新用コンピュータプログラムは、地図情報に表される個々の登録地物のうち、車両から通信部を介して受信した地物データに表される地物の位置から所定距離内に位置する1以上の登録地物を特定し、地物の複数の種類のうち、互いに類似する2以上の種類を同一のグループとして表す地物グループ情報を参照して、地物データに表される地物を、特定した1以上の登録地物のうち、地物データに表される地物の種類と同一、または、その地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物に対応付け、地図情報に表される個々の登録地物の少なくとも何れかについて、その登録地物に対応付けられた所定数の地物データに表される地物の位置または種類に基づいてその登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する、ことをコンピュータに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る地図更新装置は、収集された地物を表すデータを用いて地図情報を適切に更新することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】地図更新装置が実装される地物データ収集システムの概略構成図である。
【
図3】データ取得装置のハードウェア構成図である。
【
図4】地図更新装置の一例であるサーバのハードウェア構成図である。
【
図5】地図更新処理に関する、サーバのプロセッサの機能ブロック図である。
【
図7】(a)~(c)は、それぞれ、収集した地物データに表される地物と登録地物の対応付けの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、地図更新装置、及び、地図更新装置にて実行される地図更新方法ならびに地図更新用コンピュータプログラムについて説明する。この地図更新装置は、所定の領域について、通信可能な1以上の車両から、車両の走行に関連する地物の位置及び種類を表すデータ(以下、地物データと呼ぶ)を収集する。そしてこの地図更新装置は、収集した地物データに基づいて、地図情報に表される地物の位置または種類を更新する。以下では、説明の便宜上、地図情報に表される地物を、登録地物と呼ぶことがある。この地図更新装置は、更新対象となる地図情報に表される個々の登録地物のうち、受信した地物データに表される地物の位置から所定距離内に位置する登録地物を特定する。さらに、この地図更新装置は、地物グループ情報を参照して、受信した地物データに表される地物を、特定した登録地物のうち、受信した地物データに表される地物と同じ種類の登録地物またはその地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物に対応付ける。そしてこの地図更新装置は、地図情報に表される個々の登録地物について、その登録地物に対応付けられた所定数以上の地物データに表される地物に基づいてその登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する。
【0016】
なお、検出対象となる、車両の走行に関連する地物には、例えば、各種の道路標識、各種の道路標示、信号機及びその他の車両の走行に関連する地物が含まれる。また、地物グループ情報は、地物の複数の種類のうち、互いに類似する2以上の種類を同一のグループとして表す情報である。
【0017】
図1は、地図更新装置が実装される地物データ収集システムの概略構成図である。本実施形態では、地物データ収集システム1は、少なくとも一つの車両2と、地図更新装置の一例であるサーバ3とを有する。各車両2は、例えば、サーバ3が接続される通信ネットワーク4とゲートウェイ(図示せず)などを介して接続される無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。なお、
図1では、簡単化のため、一つの車両2のみが図示されているが、地物データ収集システム1は、複数の車両2を有していてもよい。同様に、
図1では、一つの無線基地局5のみが図示されているが、複数の無線基地局5が通信ネットワーク4に接続されていてもよい。また、サーバ3は、通信ネットワークを介して交通情報を管理する交通情報サーバ(図示せず)と通信可能に接続されていてもよい。
【0018】
図2は、車両2の概略構成図である。車両2は、カメラ11と、GPS受信機12と、無線通信端末13と、データ取得装置14とを有する。カメラ11、GPS受信機12、無線通信端末13及びデータ取得装置14は、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。また、車両2は、車両2の走行予定ルートを探索し、その走行予定ルートに従って車両2が走行するようナビゲートするナビゲーション装置(図示せず)をさらに有してもよい。
【0019】
カメラ11は、車両2の周囲を撮影するための撮像部の一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。カメラ11は、例えば、車両2の前方を向くように車両2の車室内に取り付けられる。そしてカメラ11は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両2の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ11により得られた画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両2には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラ11が設けられてもよい。
【0020】
カメラ11は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してデータ取得装置14へ出力する。
【0021】
GPS受信機12は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。そしてGPS受信機12は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してデータ取得装置14へ出力する。なお、車両2はGPS受信機12以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両2の自己位置を測位すればよい。
【0022】
無線通信端末13は、通信部の一例であり、所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器であり、例えば、無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。そして無線通信端末13は、データ取得装置14から受け取った、地物データなどを含むアップリンクの無線信号を生成する。そして無線通信端末13は、そのアップリンクの無線信号を無線基地局5へ送信することで、地物データ及び走行情報などをサーバ3へ送信する。また、無線通信端末13は、無線基地局5からダウンリンクの無線信号を受信して、その無線信号に含まれる、サーバ3からの収集指示あるいは収集停止指示などをデータ取得装置14あるいは車両2の走行を制御する電子制御装置(ECU、図示せず)へわたす。
【0023】
図3は、データ取得装置のハードウェア構成図である。データ取得装置14は、カメラ11により生成された画像に基づいて地物データを生成する。さらに、データ取得装置14は、車両2の走行情報を生成する。そのために、データ取得装置14は、通信インターフェース21と、メモリ22と、プロセッサ23とを有する。
【0024】
通信インターフェース21は、車内通信部の一例であり、データ取得装置14を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。すなわち、通信インターフェース21は、車内ネットワークを介して、カメラ11、GPS受信機12及び無線通信端末13と接続される。そして通信インターフェース21は、カメラ11から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ23へわたす。また、通信インターフェース21は、GPS受信機12から測位情報を受信する度に、受信した測位情報をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、無線通信端末13を介してサーバ3から受信した、地物データの収集指示及び収集停止指示をプロセッサ23へわたす。さらに、通信インターフェース21は、プロセッサ23から受け取った地物データを、車内ネットワークを介して無線通信端末13へ出力する。
【0025】
メモリ22は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ22は、ハードディスク装置といった他の記憶装置をさらに有してもよい。そしてメモリ22は、データ取得装置14のプロセッサ23により実行される地物データ生成に関連する処理において使用される各種のデータを記憶する。そのようなデータには、例えば、車両2の識別情報、カメラ11の設置高さ、撮影方向及び画角といったカメラ11のパラメータ、及び、画像から地物を検出するための識別器を特定するためのパラメータセットなどが含まれる。また、メモリ22は、カメラ11から受信した画像、及び、GPS受信機12から受信した測位情報を一定期間記憶してもよい。さらに、メモリ22は、地物データの収集指示にて指定された、地物データの生成及び収集対象となる領域(以下、収集対象領域と呼ぶことがある)を表す情報を記憶する。さらにまた、メモリ22は、プロセッサ23で実行される各処理を実現するためのコンピュータプログラムなどを記憶してもよい。
【0026】
プロセッサ23は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ23は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ23は、カメラ11から受信した画像、GPS受信機12から受信した測位情報をメモリ22に記憶する。さらに、プロセッサ23は、車両2が走行している間、所定の周期(例えば、0.1秒~10秒)ごとに、地物データ生成に関連する処理を実行する。
【0027】
プロセッサ23は、地物データ生成に関連する処理として、例えば、GPS受信機12から受信した測位情報で表される車両2の自車位置が収集対象領域に含まれるか否か判定する。そしてプロセッサ23は、自車位置が収集対象領域に含まれる場合、カメラ11から受信した画像に基づいて地物データを生成する。
【0028】
例えば、プロセッサ23は、カメラ11から受信した画像を、検出対象となる地物を検出するように予め学習された識別器に入力することで、入力された画像(以下、単に入力画像と呼ぶことがある)に表された地物を検出する。そしてプロセッサ23は、検出した地物の種類を表す情報を地物データとして生成する。プロセッサ23は、そのような識別器として、例えば、入力画像から、その入力画像に表された地物を検出するように予め学習されたディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。そのようなDNNとして、例えば、Single Shot MultiBox Detector(SSD)またはFaster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つDNNが用いられる。あるいは、プロセッサ23は、そのような識別器として、self attention network型のアーキテクチャを有するDNNを用いてもよい。この場合、識別器は、入力画像上の様々な領域において、検出対象となる地物の種類(例えば、車線区画線、横断歩道、一時停止線など)ごとに、その地物がその領域に表されている確からしさを表す確信度を算出する。識別器は、何れかの種類の地物についての確信度が所定の検出閾値以上となる領域に、その種類の地物が表されていると判定する。そしてその識別器は、入力画像上で検出対象となる地物が含まれる領域(例えば、検出対象となる地物の外接矩形、以下、物体領域と呼ぶ)を表す情報、及び、物体領域に表された地物の種類を表す情報を出力する。したがって、プロセッサ23は、検出された物体領域に表された地物の種類を表す情報を含むように地物データを生成すればよい。
【0029】
なお、プロセッサ23は、ある物体領域について、確信度が検出閾値以上となる種類の地物が無くても、確信度が高い方から順に所定数の種類の地物についての確信度の合計値が検出閾値以上となる場合、その物体領域に地物が表されていると判定してもよい。そしてプロセッサ23は、その物体領域について、確信度が高い方から順に所定数の種類のそれぞれ及び対応する確信度を表す情報を含むように地物データを生成してもよい。例えば、検出閾値が0.8であり、ある物体領域に表された地物について、駐車禁止標識についての確信度が0.6、駐停車禁止標識についての確信度が0.3、通行止め標識についての確信度が0.1と算出されているとする。また、所定数は2であるとする。この場合、駐車禁止標識についての確信度と駐停車禁止標識についての確信度との和(0.9)が検出閾値以上となる。そこで、プロセッサ23は、その物体領域に表される地物の種類を表す情報として駐車禁止標識及び駐停車禁止標識を表す情報を地物データに含める。さらに、プロセッサ23は、駐車禁止標識について算出された確信度0.6及び駐停車禁止標識について算出された確信度0.3を地物データに含めればよい。
【0030】
さらに、プロセッサ23は、地物データに表される地物の実空間における位置を特定し、その位置を表す情報を地物データに含める。ここで、画像上の各画素の位置は、カメラ11からその画素に表された物体への方位と1対1に対応する。そこで、プロセッサ23は、地物が表された物体領域の重心に対応するカメラ11からの方位、地物が検出された画像の生成時における車両2の位置、進行方向、カメラ11のパラメータ(撮影方向、画角及び設置高さなど)に基づいて、地物の位置を推定する。その際、プロセッサ23は、地物データの生成に用いられた画像の生成時に最も近いタイミングでGPS受信機12から受信した測位情報で表される位置を、車両2の自車位置とすることができる。あるいは、ECU(図示せず)が車両2の自車位置を推定する場合には、プロセッサ23は、ECUから通信インターフェース21を介して、推定された車両2の自車位置を表す情報を取得してもよい。さらに、プロセッサ23は、ECU(図示せず)から、車両2の進行方向を表す情報を取得すればよい。あるいはまた、プロセッサ23は、いわゆるStructure from Motion (SfM)により、地物データに表される地物の位置を推定してもよい。この場合、プロセッサ23は、互いに異なるタイミングで得られた二つの画像間で、オプティカルフローを利用して同じ地物が表された物体領域同士を対応付ける。そしてプロセッサ23は、その二つの画像のそれぞれが得られたときの車両2の位置及び進行方向と、カメラ11のパラメータと、各画像における物体領域の位置とに基づいて、三角測量により、地物の位置を推定できる。
【0031】
プロセッサ23は、地物データに表される地物の位置を表す緯度及び経度を、地物データに表される地物の位置を表す情報として地物データに含める。
【0032】
プロセッサ23は、さらに、地物データに、車両2の識別情報を含めてもよい。また、プロセッサ23は、地物データに、地物の位置の推定に利用される情報、例えば、カメラ11のパラメータ、及び、画像上での地物の位置を含めてもよい。さらに、プロセッサ23は、地物データに、地物の位置の推定の際に利用した、地物データ生成時の車両2の位置、進行方向、及び、車両2の自車位置の測位に利用されたGPS信号の受信強度を含めてもよい。そしてプロセッサ23は、地物データを生成する度に、その生成した地物データを、通信インターフェース21を介して無線通信端末13へ出力する。これにより、地物データがサーバ3へ送信される。なお、プロセッサ23は、地物データとは別個に、地物の位置の推定に利用される情報を車両2の識別情報とともに、無線通信端末13を介してサーバ3へ送信してもよい。
【0033】
変形例によれば、プロセッサ23は、カメラ11により生成された画像そのもの(以下、全体画像と呼ぶ)または全体画像から路面が表された領域を切り出すことで得られる部分画像を、地物データとしてもよい。この場合も、プロセッサ23は、サーバ3が全体画像または部分画像から地物及びその位置を検出できるように、地物データ生成時の車両2の位置、進行方向及びカメラ11のパラメータを地物データに含めてもよい。
【0034】
また、プロセッサ23は、サーバ3から収集対象領域について収集停止指示を受信している場合、収集対象領域内の地物についての地物データを生成しない。
【0035】
次に、地図更新装置の一例であるサーバ3について説明する。
図4は、地図更新装置の一例であるサーバ3のハードウェア構成図である。サーバ3は、通信インターフェース31と、ストレージ装置32と、メモリ33と、プロセッサ34とを有する。通信インターフェース31、ストレージ装置32及びメモリ33は、プロセッサ34と信号線を介して接続されている。サーバ3は、キーボード及びマウスといった入力装置と、液晶ディスプレイといった表示装置とをさらに有してもよい。
【0036】
通信インターフェース31は、通信部の一例であり、サーバ3を通信ネットワーク4に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース31は、車両2と、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して通信可能に構成される。すなわち、通信インターフェース31は、車両2から無線基地局5及び通信ネットワーク4を介して受信した、地物データをプロセッサ34へわたす。また、通信インターフェース31は、プロセッサ34から受け取った収集指示及び収集停止指示を、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して車両2へ送信する。
【0037】
ストレージ装置32は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置32は、地図更新処理において使用される各種のデータ及び情報を記憶する。例えば、ストレージ装置32は、生成または更新対象となる地図情報、その地図情報に表される個々の登録地物の位置及び種類、及び、各車両2の識別情報を記憶する。さらに、ストレージ装置32は、地物グループ情報を記憶する。さらにまた、ストレージ装置32は、各車両2から受信した地物データを記憶する。さらにまた、ストレージ装置32は、プロセッサ34上で実行される、地図更新処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶してもよい。
【0038】
メモリ33は、記憶部の他の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ及び揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ33は、地図更新処理の実行中に生成される各種データなどを一時的に記憶する。
【0039】
プロセッサ34は、制御部の一例であり、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ34は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ34は、地図更新処理を実行する。
【0040】
図5は、地図更新処理に関連するプロセッサ34の機能ブロック図である。プロセッサ34は、収集指示部41と、対応付け部42と、更新部43と、収集停止指示部44とを有する。プロセッサ34が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ34上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ34が有するこれらの各部は、プロセッサ34に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0041】
収集指示部41は、車両2に対して、収集対象領域内に存在する地物についての地物データの収集を指示する収集指示を生成する。個々の収集対象領域は、例えば、生成または更新対象となる地図に表される全体領域を所定の長さ(例えば、数10m~数100m)ごとに格子状に分割することで設定される、複数の領域のうちの何れかとすることができる。ただしこの例に限られず、道路の密度が高い領域ほど収集対象領域の面積が狭くなるように個々の収集対象領域が設定されてもよい。あるいは、道路の特定の構造(例えば、交差点、合流または分岐)の密度が高い領域ほどその領域の面積が狭くなるように個々の収集対象領域が設定されてもよい。あるいはまた、各収集対象領域が一つの道路区間または一つの交差点を含むように、各収集対象領域が設定されてもよい。例えば、新規に地図情報が生成される場合、収集指示部41は、その地図情報に表される複数の領域のそれぞれを収集対象領域に設定する。あるいは、収集指示部41は、更新対象となる地図情報に表される複数の領域のうち、前回の更新から所定期間が経過した領域を、収集対象領域に設定してもよい。あるいはまた、収集指示部41は、入力装置を介して入力された、収集対象領域を指定する情報にしたがって、収集対象領域を設定してもよい。さらにまた、収集指示部41は、交通情報サーバから、工事が行われた地点を表す工事情報を受信すると、その工事が行われた地点を含む領域を、収集対象領域としてもよい。
【0042】
収集指示部41は、収集対象領域を特定する情報を含む収集指示を生成する。そして収集指示部41は、生成した収集指示を、通信インターフェース31を介して車両2へ送信する。
【0043】
対応付け部42は、車両2から、無線基地局5、通信ネットワーク4及び通信インターフェース31を介して地物データを受信する度に、受信した地物データをメモリ33またはストレージ装置32に保存する。また、対応付け部42は、受信した地物データに表される地物を、地図情報に表される個々の登録地物の何れかに対応付ける。
【0044】
そのために、対応付け部42は、地図情報に表される個々の登録地物のうち、受信した地物データに表される地物の位置から所定距離(例えば、数m~10数m)内に位置する登録地物を特定する。そして対応付け部42は、特定した登録地物のうち、受信した地物データに表される地物の種類と同一種類の登録地物か、あるいは、同じグループに属する種類の登録地物に対応付ける。その際、対応付け部42は、地物グループ情報を参照して、地物データに表される地物の種類と同じグループに属する、すなわち類似する種類の登録地物を特定する。
【0045】
図6は、地物グループ情報の一例を示す図である。地物グループ情報の一例であるテーブル600に示されるように、地物のそれぞれの種類は、3段階以上に階層化されてグループ化されている。そして低い階層のグループほど、そのグループに属する種類同士の類似度合いは高い。例えば、道路標示のうちの車線区画線について、それぞれが地物の一例である、白実線と黄実線とが何れもグループ「実線」に含まれている。また、それぞれが地物の他の一例である、白破線と黄破線とが何れもグループ「破線」に含まれている。さらに、白実線及び黄実線を含むグループ「実線」と、白破線と黄破線を含むグループ「破線」とは、いずれもグループ「区画線」に含まれている。さらに、それぞれが地物の他の一例である、縁石・壁による境界線と、工作物による境界線とが、何れもグループ「道路境界線」に含まれている。そしてグループ「区画線」とグループ「道路境界線」とは、何れもグループ「連続地物」に含まれている。なお、地物の種類のグループは、2段階に階層化されてもよく、4段階以上に階層化されてもよい。
【0046】
図7(a)~
図7(c)は、それぞれ、収集した地物データに表される地物と登録地物の対応付けの一例を示す図である。
図7(a)に示される例では、地物データに表される地物701の種類が駐車禁止の道路標識であり、その地物701の位置から所定距離D以内において、地図情報に、登録地物702として駐停車禁止の道路標識が示されている。
図6のテーブル600に示されるように、駐車禁止の道路標識と駐停車禁止の道路標識とは同じグループ「道路標識」に属している。そのため、対応付け部42は、地物データに表される地物701である駐車禁止の道路標識を、登録地物702である駐停車禁止の道路標識に対応付ける。
【0047】
図7(b)に示される例では、地物データに表される地物711の種類が停止線であり、その地物711の位置から所定距離D以内において、地図情報に、登録地物712として白実線が示されている。しかし、地図情報には、地物711の位置から所定距離D以内に登録地物712以外の登録地物は示されていない。また、テーブル600を参照すると、停止線と白実線とは異なるグループに属している。そのため、対応付け部42は、地物データに表される地物711に対応する登録地物は無いと判定し、地物711を何れの登録地物にも対応付けない。
【0048】
なお、地物データに表される地物の位置から所定距離内に、その地物の種類と同じグループに属する複数の登録地物が存在することがある。このような場合、対応付け部42は、それら複数の登録地物のうち、地物データに表される地物の位置に最も近い登録地物に、地物データに表される地物を対応付ける。あるいは、対応付け部42は、地物グループ情報を参照して、それら複数の登録地物のうち、類似度合いが高い方から順に、すなわち、下層のグループから順に地物データに表される地物の種類と同一のグループに属する種類の登録地物を探索して対応付けてもよい。さらに、地物データに表される地物と同じ種類の登録地物がそれら複数の地物に含まれている場合、対応付け部42は、その同じ種類の登録地物に地物データに表される地物を優先的に対応付けてもよい。このような対応付けを行うことで、対応付け部42は、地物グループに表される地物を地図情報に表される対応する登録地物に適切に対応付けられる可能性を向上できる。
【0049】
図7(c)に示される例では、地物データに表される地物721の種類が駐車禁止の道路標識である。また、地物721の位置から所定距離D以内において、地図情報に、駐停車禁止の道路標識である登録地物722と信号機種1である登録地物723とが示されている。テーブル600を参照すると、駐車禁止の道路標識と駐停車禁止の道路標識の何れも、最下層のグループであるグループ「道路標識」に属している。これに対して、駐車禁止の道路標識と信号機種1とは、最下層よりも一つ上の階層のグループ「立体地物」に属している。そのため、対応付け部42は、地物データに表される地物721である駐車禁止の道路標識を、信号機種1である登録地物723ではなく、駐停車禁止の道路標識である登録地物722に対応付ける。
【0050】
あるいはまた、対応付け部42は、地物データに表される地物の位置から所定距離内に、その地物の種類と同じグループに属する複数の登録地物が有る場合、それら登録地物のそれぞれに、地物データに表される地物を対応付けてもよい。この場合、対応付け部42は、地物データに表される地物と対応付けられる登録地物のそれぞれについて、対応付けの確からしさを表す信頼度を設定してもよい。例えば、対応付け部42は、地物データに表される地物と同じグループとなる階層が低い登録地物ほど、信頼度を高く設定してもよい。例えば、
図7(c)では、対応付け部42は、駐車禁止の道路標識である地物721と同じグループになる階層がより低い、駐停車禁止の道路標識である登録地物722への対応付けの信頼度を0.7に設定する。これに対して、対応付け部42は、駐車禁止の道路標識である地物721と同じグループになる階層がより高い信号機種1である登録地物723への対応付けの信頼度を0.3に設定してもよい。
【0051】
さらに、対応付け部42は、地物データに表される地物を、その地物の種類と同じ種類の登録地物に対応付ける場合の信頼度を、その地物を、その地物の種類と異なるものの同じグループに属する登録地物に対応付ける場合の信頼度よりも高くすることが好ましい。
【0052】
さらにまた、上述したように、地物データには、2以上の地物の種類と種類ごとの確信度を表す情報が含まれることがある。このような場合、対応付け部42は、確信度が高い種類から順に、その種類と同一のグループに属する種類の登録地物を探索して、地物データに表される地物に対応付けてもよい。すなわち、対応付け部42は、確信度が高い種類から順に、上記の対応付けの処理を実行する。対応付け部42は、何れかの種類の地物が登録地物に対応付けされた時点で、その地物データについての対応付けの処理を終了する。そして対応付け部42は、登録地物に対応付けされた地物の種類についての確信度を、その登録地物に対する対応付けの信頼度とする。その際、対応付け部42は、着目する種類についての確信度が所定の閾値以上となる場合に限り、その種類の地物と登録地物とを対応付けてもよい。例えば、一つの地物データに、地物の種類として駐車禁止標識と駐停車禁止標識の二つの種類、及び、駐車禁止標識についての確信度0.6と、駐停車禁止標識についての確信度0.3を表す情報が含まれているとする。そして地図情報には、地物データに表される地物の位置から所定距離内に、何らかの道路標識である登録地物が登録されているとする。この場合、確信度が高い方の駐車禁止標識と登録地物とは同じグループに属するので、その登録地物に駐車禁止標識である地物が対応付けられ、その対応付けの信頼度が0.6に設定される。このような対応付けを行うことで、対応付け部42は、地物グループに表される地物を地図情報に表される対応する登録地物に適切に対応付けられる可能性を向上できる。
【0053】
あるいは、対応付け部42は、それら地物データに表される地物の2以上の種類のうち、その地物の位置から所定距離内の登録地物の種類と最も低い階層にて同じグループに属する種類を、登録地物に対応付ける地物の種類としてもよい。この場合も、対応付け部42は、登録地物に対応付けられた地物の種類に対応する確信度を、その対応付けの信頼度としてもよい。
【0054】
対応付け部42は、受信した地物データごとに、その地物データに表される地物の対応付けの結果をメモリ33に保存する。
【0055】
更新部43は、地図情報に表され、かつ、収集対象領域内の個々の登録地物について、その登録地物に対応付けられた所定数(例えば、1)以上の地物データのそれぞれに表される地物に基づいてその登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する。以下では、何れかの登録地物に対応付けられた地物データに表される地物を、単に地物と呼ぶことがある。
【0056】
例えば、更新部43は、着目する登録地物について、メモリ33に保存されている、その登録地物に対応付けられた各地物を参照する。そして更新部43は、着目する登録地物に対応付けられた各地物の位置を平均することで求められた平均位置で、その登録地物の位置を更新する。また、地物ごとに対応付けの信頼度が設定されている場合には、更新部43は、着目する登録地物に対応付けられた各地物の位置を信頼度で加重平均することで得られた平均位置で、その登録地物の位置を更新してもよい。すなわち、更新部43は、信頼度が高い地物ほど、その地物の位置の重み係数を大きくする。このように、更新部43は、信頼度で重み付けした地物の位置を、対応する登録地物の位置の更新に用いることで、登録する地物の位置をより適切に更新することができる。さらに、着目する登録地物に対応付けられた地物データに地物の種類の確信度が含まれている場合には、更新部43は、着目する登録地物に対応付けられた各地物の位置を確信度で加重平均することで得られた平均位置で、その登録地物の位置を更新してもよい。
【0057】
また、更新部43は、着目する登録地物に対応付けられた各地物の種類のうち、最頻値となる種類で、その登録地物の種類を更新してもよい。地物ごとに対応付けの信頼度が設定されている場合には、更新部43は、着目する登録地物に対応付けられた個々の地物の種類ごとに信頼度の和を算出し、その信頼度の和の最大値を、最頻値として求めてもよい。さらに、着目する登録地物に対応付けられた地物データに地物の種類の確信度が含まれている場合には、更新部43は、着目する登録地物に対応付けられた個々の地物の種類ごとに確信度の和を算出し、その確信度の和の最大値を、最頻値として求めてもよい。
【0058】
さらに、更新部43は、着目する登録地物に対応付けられた地物が無い場合、着目する登録地物は撤去されたものと判定し、その登録地物を地図情報から消去してもよい。さらにまた、更新部43は、何れの登録地物とも対応付けられなかった地物データに表される地物について、その地物は新たに設けられたものと判定し、その地物の種類及び位置を地図情報に追加してもよい。その際、更新部43は、何れの登録地物とも対応付けられなかった複数の地物データに表される地物のうち、互いの距離が所定距離以下であり、かつ、同じグループに所属する2以上の地物を、同一の地物と判定してもよい。そして更新部43は、同一の地物として判定された2以上の地物については、一つの地物のみを地図情報に追加してもよい。その際、更新部43は、その2以上の地物の平均位置を、地図情報に登録するその地物の位置とし、かつ、その2以上の地物の種類のうち、最頻値となる種類を、地図情報に登録するその地物の種類とすればよい。
【0059】
収集停止指示部44は、収集対象領域について収集された地物データの数が収集予定数に達すると、あるいは、予定している収集期間が終了すると、収集対象領域について地物データの収集を停止する。そして収集停止指示部44は、収集対象領域について収集停止を表す情報を含む収集停止指示を作成し、作成した収集停止指示を、通信インターフェース31を介して車両2へ送信する。これにより、収集対象領域内に位置する地物に関する地物データの収集が停止される。
【0060】
図8は、サーバ3における、地図更新処理の動作フローチャートである。サーバ3のプロセッサ34は、収集対象領域について収集された地物データの数が収集予定数に達するか、収集期間が終了すると、以下に示される動作フローチャートに従って、地図更新処理を実行すればよい。
【0061】
プロセッサ34の対応付け部42は、収集した個々の地物データについて、地図情報に表される個々の登録地物のうち、その地物データに表される地物の位置から所定距離内に位置する登録地物を特定する(ステップS101)。そして対応付け部42は、各地物データについて、地物グループ情報を参照して、その地物データに表される地物を、特定した登録地物のうち、その地物データに表される地物と同一種類、あるいは、同じグループに属する種類の登録地物に対応付ける(ステップS102)。また、プロセッサ34の更新部43は、地図情報に表され、かつ、収集対象領域内の個々の登録地物について、その登録地物に対応付けられた各地物データに表される地物の位置または種類に基づいてその登録地物の位置または種類の少なくとも一方を更新する(ステップS103)。そしてプロセッサ34は、地図更新処理を終了する。なお、対応付け部42は、車両2から地物データを受信する度に、ステップS101及びステップS102の処理を実行してもよい。
【0062】
以上に説明してきたように、この地図更新装置は、収集した地物データに表される地物を、地図情報に表される同一種類の登録地物だけでなく、同じグループに属する、類似する種別の登録地物にも対応付けることを可能とする。そのため、この地図更新装置は、地物データを生成する車両側で地物の種類を誤認識し、あるいは、地図情報に表される登録地物の種類が誤っていても、収集した地物データを用いて地図情報に表される登録地物の位置を修正できる。さらに、この地図更新装置は、地図情報において誤って表された登録地物の種類を、地物データに表される地物の種類に基づいて修正できる。このように、この地図更新装置は、収集した地物データを用いて地図情報を適切に更新することができる。
【0063】
変形例によれば、地図情報に表される個々の登録地物の位置は、位置ごとに、その位置にその登録地物が存在する確率を表した確率分布で表されてもよい。その確率分布は、例えば、ガウス分布とすることができる。この場合、対応付け部42は、確率分布において登録地物が存在する確率が最も高い位置が地物データに表される地物の位置から所定距離内に含まれる場合に、その登録地物は地物データに表される地物の位置から所定距離内に存在するものとする。さらに、更新部43は、地図情報に表される個々の登録地物について、その登録地物に対応付けられた各地物データの地物の位置に基づいて最尤推定することでその登録地物の位置の確率分布を更新してもよい。登録地物の位置の確率分布を更新する際、更新部43は、上記の実施形態と同様に、対応付けの信頼度または地物検出の際に求められた確信度を重み係数として利用してもよい。
【0064】
さらにまた、更新部43は、地図情報に表される個々の登録地物について、その登録地物に対応付けられた各地物データの地物の位置に基づいてベイズ推定することでその登録地物の位置の確率分布を更新してもよい。この場合、受信した地物データに表された地物と対応付けられた登録地物について、その登録地物が存在する可能性が有る範囲が、格子状の複数の区画に予め分割される。そして、区画ごとに、更新前の確率分布に従って、その登録地物が位置する確率が設定される。なお、確率の初期値として、各区画に同じ確率が設定されてもよく、あるいは、その登録地物が存在する可能性が高い区画ほど、高い確率が設定されもよい。更新部43は、受信した地物データに表される地物が着目する登録地物に対応付けられると、受信した地物データに表される地物の位置が含まれる区画の確率が高くなるように、その登録地物について設定された各区画の確率を更新する。あるいは、更新部43は、受信した地物データに表される地物の位置から所定範囲内の各区画の確率が高くなるように、各区画の確率を更新してもよい。その際、更新部43は、その地物の位置に近い区画ほど、確率の上昇率を高くしてもよい。あるいはまた、更新部43は、区画ごとに、その区画を中心とし、かつ、更新前の確率分布の分散共分散行列を持つ確率分布を設定してもよい。更新部43は、各区画について、その区画の確率分布に基づいて、受信した地物データに表される地物の位置に対する、その区画に地物が存在する事後確率を算出する。更新部43は、各区画について、算出した事後確率を、その区画の更新後の確率(すなわち、次回更新時のその区画の事前確率)とする。そして更新部43は、各区画の確率を正規分布で近似することで、その地物の位置についての更新された確率分布を算出する。この場合、確率分布の更新に利用された地物データは廃棄されてもよいので、更新部43は、地物データの管理を簡単化できるとともに、地物データを記憶するためのメモリ容量も削減することができる。
【0065】
あるいは、更新部43は、登録地物ごとに、その登録地物の位置についての確率分布の複数の候補を設定してもよい。この場合、各候補は、位置の平均値と分散共分行列で表される正規分布とすることができる。更新部43は、受信した地物データに表される地物が着目する登録地物に対応付けられると、受信した地物データに表される地物の位置に対する、その登録地物についての各候補の事後確率を算出する。そして更新部43は、その事後確率を、次回の更新の際の各候補の事前確率とする。更新部43は、事前確率が最大となる候補に相当する正規分布を、その登録地物の位置についての確率分布とする。この場合も、更新部43は、地物データの管理を簡単化できるとともに、地物データを記憶するためのメモリ容量も削減することができる。
【0066】
また、一つの車両2から、ある程度連続する道路区間に存在する複数の地物を表す複数の地物データが収集されることがある。このような場合、その複数の地物データのそれぞれに表される地物の位置は、車両2の測位の精度などに起因して実際の地物の位置からほぼ同じ向き、かつ、ほぼ同じ距離だけずれることがある。そこで他の変形例によれば、対応付け部42は、一つの車両2から受信した、連続する道路区間についての複数の地物データのそれぞれに表される複数の地物の位置を補正する。その際、対応付け部42は、個々の地物データの地物の位置と地図情報に表される対応する登録地物の位置との誤差の二乗和が最小化されるように、個々の地物データの地物の位置を補正した上で、その地物を登録地物に対応付ける。その際、対応付け部42は、上記の実施形態と同様に、地物グループ情報を参照して、個々の地物データに含まれる地物の種類と同じグループに属する登録地物が、その地物に対応するものとして、対応する登録地物を特定すればよい。
【0067】
なお、サーバ3が、車両2から受信した地物データに全体画像または部分画像が含まれている場合には、上記の実施形態及び各変形例において、サーバ3のプロセッサ34が、データ取得装置14のプロセッサ23の処理を実行してもよい。すなわち、プロセッサ34が、全体画像または部分画像から地物を検出し、検出した地物の位置を推定してもよい。
【0068】
さらに、上記の各実施形態または変形例による地図更新装置のプロセッサが有する各部の機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムは、コンピュータによって読取り可能な記録媒体に記憶された形で提供されてもよい。なお、コンピュータによって読取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録媒体、光記録媒体、又は半導体メモリとすることができる。
【0069】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 地物データ収集システム
2 車両
11 カメラ
12 GPS受信機
13 無線通信端末
14 データ取得装置
21 通信インターフェース
22 メモリ
23 プロセッサ
3 サーバ(地図更新装置)
31 通信インターフェース
32 ストレージ装置
33 メモリ
34 プロセッサ
41 収集指示部
42 対応付け部
43 更新部
44 収集停止指示部
4 通信ネットワーク
5 無線基地局