(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】二酸化塩素を用いる脱硫・脱硝方法
(51)【国際特許分類】
C01B 11/02 20060101AFI20241211BHJP
B01D 53/50 20060101ALI20241211BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20241211BHJP
B01D 53/60 20060101ALI20241211BHJP
B01D 53/83 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C01B11/02 B
B01D53/50 100
B01D53/56
B01D53/60
B01D53/83 ZAB
(21)【出願番号】P 2022503897
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(86)【国際出願番号】 CN2020080338
(87)【国際公開番号】W WO2021134926
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-01-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】201911394319.6
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520101753
【氏名又は名称】中晶環境科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Environment Sustainable System Engineering Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】The 20th Floor, Block 3 Ronghua International, No. 10 Ronghua South Road, Yizhuang Economic and Technological Development Zone, Beijing, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】童裳慧
【合議体】
【審判長】三崎 仁
【審判官】増山 淳子
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0213148(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103990362(CN,A)
【文献】特開2002-219331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D53/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素酸塩水溶液、過酸化物溶液および硫酸水溶液を二酸化塩素発生装置に加え、反応させて二酸化塩素ガスを得、二酸化塩素ガスを空気と混合して混合ガスを得る工程であって、二酸化塩素ガスが混合ガスの4~10vol%である工程(1)、
混合ガスを、脱硫・脱硝塔に導入される前の煙道ガス管内の煙道ガスと接触させて酸化された煙道ガスを得る工程であって、単位時間あたりに煙道ガス管に導入された混合ガスにおける二酸化塩素と、煙道ガスに含まれる一酸化窒素とのモル比が1~1.8である工程(2)、および、
酸化された煙道ガスを脱硫・脱硝塔に導入し、スプレーされたアルカリ性吸収剤の乾燥粉末と混合し、かつ、脱硫・脱硝塔に水をスプレーして脱硫・脱硝された煙道ガスを得る工程(3)、を含み、
工程(1)において、塩素酸塩が塩素酸ナトリウムであり、塩素酸ナトリウム水溶液の濃度が15~40wt%であり、硫酸水溶液の濃度が30~60wt%であり、過酸化物溶液が25~28wt%の過酸化水素水溶液または34~38wt%の過酸化水素水溶液であ
り、
工程(1)において、二酸化塩素発生装置に加えられた塩素酸塩水溶液における塩素酸ナトリウムと、過酸化水素水溶液における過酸化水素と、硫酸水溶液における硫酸とのモル比が1:0.55~1:0.5~1であり、二酸化塩素発生装置の反応温度が40~90℃であることを特徴とする、
二酸化塩素を用いる脱硫・脱硝方法。
【請求項2】
工程(2)において、煙道ガス管に導入された煙道ガスは、硫黄含有量が600~4000mg/Nm
3であり、窒素含有量が200~600mg/Nm
3であり、酸素含有量が5~23wt%であり、水分含有量が5~12wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(2)において、煙道ガスの煙道ガス管内の流速が6~15m/sであり、混合ガスを、脱硫・脱硝塔に導入される前の煙道ガス管内の煙道ガスと接触させる時間が1~3sであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(3)において、アルカリ性吸収剤乾燥粉末が酸化カルシウム及び/または水酸化カルシウムであり、かつ、アルカリ性吸収剤乾燥粉末の粒子径が150~350メッシュであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(3)において、酸化された煙道ガスの脱硫・脱硝塔内の流速が1~7m/sであり、酸化された煙道ガスを脱硫・脱硝塔内でアルカリ性吸収剤乾燥粉末と接触させる時間が2~15sであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
工程(3)において、単位時間あたりに導入されたアルカリ性吸収剤の乾燥粉末に含まれるカルシウム元素と、単位時間当たりに導入された煙道ガスに含まれる硫黄元素とのモル比Ca/Sが1.1~1.5であることを特徴とする、請求項
4に記載の方法。
【請求項7】
工程(3)において、単位時間あたりに導入されたアルカリ性吸収剤乾燥粉末に含まれるカルシウム元素と、単位時間あたりに導入された煙道ガスに含まれる窒素元素とのモル比Ca/Nが0.5~1.5であることを特徴とする、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化塩素を用いる脱硫・脱硝方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚きの煙道ガスには、二酸化硫黄や窒素酸化物などの有害ガスが大量に含まれており、酸性雨や光化学スモッグなど大気環境に消えないダメージを与えている。煙道ガスにおける二酸化硫黄、窒素酸化物の効果的な除去は、常に研究者らに注目されており、特にNOの除去は、難しい分野である。
【0003】
煙道ガスを脱硝する場合、まず煙道ガスにおけるNOを高原子価の窒素酸化物に酸化する必要があり、当該酸化プロセスには酸化剤の関与が必要である。気相酸化剤として、二酸化塩素は、強力な酸化特性を有するため、大きな注目を集めており、近年、脱硝プロジェクトに広く使用されている。二酸化塩素ガスは不安定で爆発しやすく、保管や輸送が困難である。
CN106621712Aには、オゾン発生装置を使用してオゾンを調製し、強酸化系を加えて、煙道ガスにおけるNOを酸化して高原子価窒素酸化物を生成し、そして吸収液で二酸化硫黄と高原子価窒素酸化物を一体的に除去して排煙浄化の目的を達成する排煙脱硫・脱硝方法が開示されている。オゾンによるNOの酸化は効率が高く、除去効果も明らかであるが、オゾン発生装置は高価で広い面積が必要であり、初期費用も比較的高いという問題がある。
【0004】
CN104028103Aには、液相二酸化塩素を用いて煙道ガスを触媒酸化すると共に脱硫・脱硝する方法が開示されている。二酸化塩素水溶液は、二酸化塩素調製装置によって生成され、濃度が0.0015~0.015mol/Lであり、吸収塔にスプレーされて煙道ガス中のNOを酸化する役割を果たす。しかし、二酸化塩素は、濃度が低く、スプレー量が多いため、吸収塔の容積と初期設備投資が増加し、プロセスの実施が困難になる。
【0005】
CN106975337Aには、二酸化塩素の気相酸化、及び脱硫・脱硝を行う一体的なプロセスが開示されている。吸収塔では、二酸化塩素の酸化工程と脱硫・脱硝工程の両方が行われ、煙道ガスに脱硫剤をスプレーした後、ガス化スプレーパイプから噴出した二酸化塩素によってNOを高原子価窒素酸化物に酸化させ、セパレータの上層からの脱硝剤によるスプレーの作用で取り除く。二酸化塩素は、脱硫吸収剤と反応するため、二酸化塩素と脱硫吸収剤の無駄を引き起こすだけでなく、脱硫効率にも影響を与える。
【0006】
したがって、二酸化塩素を用いる低エネルギー消費と高効率の脱硫・脱硝ためのプロセスの開発は非常に必要である。
【発明の概要】
【0007】
これに鑑み、本発明の1つの目的は、イン‐サイチュ(in situ)で合成した二酸化塩素を用いて脱硫・脱硝を行う方法を提供することにある。当該方法は、脱硫・脱硝効率が高く、プロセスが単純で、コストが低い特徴を備えている。
【0008】
本発明は、前述した目的を達成するために、下記の構成を採用する。
本発明は、二酸化塩素を用いて脱硫・脱硝するための方法であり、
塩素酸塩水溶液、過酸化物溶液および硫酸水溶液を二酸化塩素発生装置に加え、反応させて二酸化塩素ガスを得、二酸化塩素ガスを空気と混合して混合ガスを得る工程であって、二酸化塩素ガスが混合ガスの4~10vol%を占める工程(1)、
混合ガスを、脱硫・脱硝塔に導入される前の煙道ガス管内の煙道ガスと接触させて酸化された煙道ガスを得る工程であって、単位時間あたりに煙道ガス管に導入された混合ガスにおける二酸化塩素と、煙道ガスに含まれる一酸化窒素とのモル比は1~1.8である工程(2)、および、
酸化された煙道ガスを脱硫・脱硝塔に導入し、噴霧されたアルカリ性吸収剤の乾燥粉末と混合し、かつ、脱硫・脱硝塔に水をスプレーして脱硫・脱硝された煙道ガスを得る工程(3)、
を含む脱硫・脱硝するための方法を提供する。
【0009】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、工程(1)において、塩素酸塩は塩素酸ナトリウムであり、塩酸ナトリウム水溶液の濃度は15~40wt%であり、硫酸水溶液の濃度は、30~60wt%である。
【0010】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、工程(1)において、過酸化物溶液は25~28wt%の過酸化水素または34~38wt%の過酸化水素である。
【0011】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、工程(1)において、二酸化塩素発生装置に添加する塩素酸塩と過酸化水素と硫酸とのモル比は1:0.55~1:0.5~1であり、二酸化塩素発生装置の反応温度は40~90℃である。
【0012】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、工程(2)において、煙道ガス管に導入された煙道ガスは、硫黄含有量が600~4000mg/Nm3であり、窒素含有量が200~600mg/Nm3であり、酸素含有量が5~23wt%であり、水分含有量が5~12wt%である。
【0013】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、工程(2)において、煙道ガス管内の煙道ガスの流速は、6~15m/sであり、混合ガスを、脱硫・脱硝塔に導入される前の煙道ガス管内の煙道ガスと接触させる時間は1~3sである。
【0014】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、工程(3)において、アルカリ性吸収剤の乾燥粉末は、酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムであり、かつ、アルカリ性吸収剤の乾燥粉末の粒子径は150~350メッシュである。
【0015】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、工程(3)において、脱硫・脱硝塔内の酸化された煙道ガスの流速は1~7m/sであり、酸化された煙道ガスとアルカリ性吸収剤の乾燥粉末との脱硫・脱硝塔内の接触時間は2~15sである。
【0016】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、工程(3)において、単位時間あたりに導入されたアルカリ性吸収剤の乾燥粉末に含まれるカルシウム元素と、単位時間あたりに導入された煙道ガスにおける硫黄元素とのモル比Ca/Sは、1.1~1.5である。
【0017】
本発明に係る方法によれば、好ましくは、工程(3)において、単位時間あたりに導入されたアルカリ性吸収剤の乾燥粉末に含まれるカルシウム元素と、単位時間あたりに導入された煙道ガスにおける窒素元素とのモル比Ca/Nは、0.5~1.5である。
【0018】
本発明に係る脱硫・脱硝方法は、イン‐サイチュで合成した二酸化塩素ガスを酸化剤として用いて脱硫・脱硝を行い、脱硫効率は99%以上、脱硝效率は91%以上に達成することができる。さらに、ガス形態の二酸化塩素を使用し、特定のプロセス方法によって、二酸化塩素の消費を減らし、コストを削減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、具体的な実施例を併せて本発明をさらに説明するが、本発明の技術範囲は、これらに限定されない。
本発明は、塩素酸ナトリウムから酸化剤としての二酸化塩素を調製し、次にカルシウムベース吸収剤と組み合わせるCFB法で煙道ガスを脱硫・脱硝する一体的なプロセスを提供する。反応原理は以下の通りである。
(1)二酸化塩素ガスの調製
2NaClO3+H2O2+H2SO4→2ClO2+Na2SO4+H2O+O2(主反応)
(2)一酸化窒素の酸化
2ClO2+5NO+H2O→2HCl+5NO2(主反応)
2ClO2+4NO→Cl2+4NO2(副反応)
2NO2+H2O→HNO2+HNO3(副反応)
5HNO2+2ClO2+H2O→5HNO3+2HCl(副反応)
(3)煙道ガスの脱硝
NO+NO2+Ca(OH)2→Ca(NO2)2+H2O(主反応)
Ca(NO2)2+O2→Ca(NO3)2(主反応)
HNO2+HNO3+1/2O2+Ca(OH)2→Ca(NO3)2+2H2O(副反応)
4ClO2+2Ca(OH)2→Ca(ClO2)2+Ca(ClO3)2+2H2O(副反応)
2Cl2+2Ca(OH)2→CaCl2+Ca(ClO)2+2H2O(副反応)
(4) 煙道ガスの脱硫
SO2+H2O→H2SO3(主反応)
3H2SO3+2Ca(OH)2→Ca(HSO3)2+CaSO3+4H2O(主反応)
Ca(HSO3)2+2CaSO3+2O2+Ca(OH)2→4CaSO4+2H2O(主反応)
【0020】
本発明に係る煙道ガスの脱硫・脱硝方法は、二酸化塩素ガスの調製工程(1)、煙道ガスの酸化工程(2)、および、脱硫・脱硝工程(3)を含む。詳細な説明は、以下に示す。
【0021】
<二酸化塩素ガスの調製工程>
塩素酸塩水溶液、過酸化物溶液および硫酸水溶液を二酸化塩素発生装置に反応させて二酸化塩素ガスを得る。二酸化塩素ガスと空気を混合して混合ガスを得る。本発明において、混合ガスにおける二酸化塩素ガスが占める百分率は4~10vol%であってもよく、好ましくは、5~8vol%であり、より好ましくは7~8vol%である。二酸化塩素ガスと空気を前記の割合で混合することにより、安全的に生産すると共に、一酸化窒素の転化率も改善することができる。
【0022】
過酸化物溶液は、過酸化水素水溶液等から選択することができる。本発明の1つの実施形態によれば、過酸化水素水溶液における過酸化水素の濃度は、25~28wt%であってもよく、好ましくは26~28wt%であり、より好ましくは、27~28wt%である。本発明のもう1つの実施形態によれば、過酸化水素水溶液における過酸化水素の濃度は34~38wt%であってもよく、好ましくは34.5~37wt%であり、より好ましくは35~36wt%である。前述した濃度範囲の過酸化物を用いると、反応速度を制御し、二酸化塩素ガスの製造安全性を向上させることができる。
【0023】
塩素酸塩は、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム及び塩素酸マグネシウムから選ばれた1種であり、好ましくは、塩素酸塩は、塩素酸ナトリウム、又は塩素酸カリウムから選ばれた1種であり、より好ましくは塩素酸塩が塩酸ナトリウムである。二酸化塩素発生装置に添加する塩素酸塩水溶液における塩酸ナトリウムと、過酸化水素水溶液における過酸化水素と、硫酸水溶液における硫酸とのモル比は、1:0.55~1:0.5~1であり、好ましくは1:0.6~1:0.6~1であり、より好ましくは1:0.7~1:0.7~1である。また、二酸化塩素発生装置の反応温度は50~90℃であり、好ましくは60~80℃であり、より好ましくは70~80℃である。前述したモル比および反応温度範囲を採用すると、二酸化塩素の発生速度を制御し、生産の安全性を向上させ、さらに発生された二酸化塩素ガスの純度を向上させることができる。
【0024】
二酸化塩素発生装置で発生した二酸化塩素ガスは、二酸化塩素発生装置内に添加された空気と混合されて混合ガスとなり、誘引通風機から出力される。
【0025】
<煙道ガスの酸化工程>
混合ガスを、脱硫・脱硝塔に導入する前の煙道ガス管内の煙道ガスと接触させて酸化された煙道ガスを得る。本発明において、単位時間あたりに煙道ガス管に導入された混合ガスにおける二酸化塩素と、煙道ガスに含まれる一酸化窒素とのモル比は1~1.8であってもよく、好ましくは1.1~1.6であり、より好ましくは1.2~1.5である。前述したモル比を用いることにより、二酸化塩素の使用量を節約するとともに一酸化窒素の酸化率を向上させることもできる。
【0026】
本発明の1つの実施形態によれば、二酸化塩素発生装置に発生された二酸化塩素ガスと、加えられた空気とを二酸化塩素発生装置で混合して混合ガスとなり、当該混合ガスを誘引通風機によって出力し、そして煙道ガス管に導入し、かつ煙道ガス管に導入された煙道ガスと接触させる。単位時間あたりに煙道ガス管に導入された混合ガスにおける二酸化塩素と、煙道ガスに含まれる一酸化窒素とのモル比は1.2~1.5である。
【0027】
煙道ガス管に導入された煙道ガスの硫黄含有量(硫黄含有量とは、二酸化硫黄含有量を意味する)は、600~4000mg/Nm3であってもよく、好ましくは1000~3000mg/Nm3であり、より好ましくは、1500~2500mg/Nm3である。煙道ガス管に導入された煙道ガスの窒素含有量(窒素含有量とは、一酸化窒素含有量を意味する)は、200~600mg/Nm3であってもよく、好ましくは200~400mg/Nm3であり、より好ましくは220~250mg/Nm3である。煙道ガス管に導入された煙道ガスの酸素含有量は5~23wt%であってもよく、好ましくは10~20wt%であり、より好ましくは15~20wt%である。煙道ガス管に導入された煙道ガスの水分含有量は、5~12wt%であってもく、好ましくは8~12wt%であり、より好ましくは10~12wt%である。前述した煙道ガスの硫黄含有量、窒素含有量、酸素含有量および水分含有量を採用することは、煙道ガスの脱硫・脱硝効果の改善に役立つ。
【0028】
煙道ガスは、煙道ガス管内の流速が6~15m/sであってもく、好ましくは8~15m/sであり、より好ましくは10~12m/sである。また、混合ガスは、脱硫・脱硝塔に導入する前の煙道ガス管内の煙道ガスとの接触時間が1~3sである。煙道ガスの流速を前述した範囲に制御すると、煙道ガスにおける一酸化窒素の酸化率を確保するだけでなく、処理速率も確保できる。
【0029】
煙道ガスの粉塵含有量は80~200mg/Nm3であってもく、好ましくは100~150mg/Nm3であり、より好ましくは、120~150mg/Nm3である。本発明の1つの実施形態によれば、煙道ガスを煙道ガス管に導入する前にダスト予備除去処理を行ってダスト予備除去された煙道ガスを得、それを煙道ガス管に導入する。本発明では、静電集塵機を使用して煙道ガスに対してダスト予備除去処理を行う。
【0030】
<脱硫・脱硝工程>
脱硫・脱硝工程において、酸化された煙道ガスを脱硫・脱硝塔に導入し、噴霧されたアリカル性吸収剤の乾燥粉末と混合し、かつ脱硫・脱硝塔内に水をスプレーして脱硫・脱硝された煙道ガスを得る。
【0031】
本発明において、アリカル性吸収剤の乾燥粉末は、酸化カルシウム及び/または水酸化カルシウムであってもよく、好ましくは、アリカル性吸収剤乾燥粉末が酸化カルシウムおよび/または水酸化カルシウムであり、より好ましくは、アリカル性吸収剤乾燥粉末が水酸化カルシウムである。本発明において、酸化カルシウムの純度は80~99wt%であってもく、好ましくは80~95wt%であり、より好ましくは80~90wt%である。水酸化カルシウムの純度は80~99wt%であってもく、好ましくは80~95wt%であり、より好ましくは80~90wt%である。本発明において、アリカル性吸収剤の乾燥粉末の粒子径は、150~350メッシュであってもく、好ましくは200~350メッシュであり、より好ましくは200~300メッシュである。前述した粒子径範囲のアリカル性吸収剤を用いて乾式吸収を行うと、脱硫・脱硝効果を向上させることができる。
【0032】
酸化された煙道ガスは、脱硫・脱硝塔内の流速が1~7m/sであってもく、好ましくは2~5m/sであり、より好ましくは3~4m/sである。酸化された煙道ガスとアリカル性吸収剤の乾燥粉末の脱硫・脱硝塔内の接触時間は2~15sであってもく、好ましくは3~12sであり、より好ましくは5~10sである。
【0033】
単位時間あたりに導入されたアリカル性吸収剤乾燥粉末に含まれるカルシウム元素と、単位時間あたりに導入された煙道ガスに含まれる硫黄元素とのモル比Ca/Sは、1.1~1.5であってもく、好ましくは1.2~1.5であり、より好ましくは1.2~1.3である。前述したCa/Sモル比を採用すると、コストを低下させると共に、脱硫効率を向上させることもできる。
【0034】
単位時間あたりに導入されたアリカル性吸収剤乾燥粉末に含まれるカルシウム元素と、単位時間あたりに導入された煙道ガスに含まれる窒素元素とのモル比Ca/Nは、0.5~1.5であってもく、好ましくは0.5~1.0であり、より好ましくは0.6~0.8である。前述したCa/Nモル比を採用すると,コストを低下させると共に、脱硝効率を向上させることもできる。
【0035】
酸化された煙道ガスは、脱硫・脱硝塔の入口での温度が110~200℃であってもく、好ましくは110~180℃であり、より好ましくは、120~150℃である。
【0036】
本発明の1つの実施形態によれば、脱硫・脱硝された煙道ガスは、脱硫・脱硝塔上部のバッグフィルターでダストを除去した後、浄化された煙道ガスを煙突から排出し、得られた固形アッシュをアッシュ貯蔵タンクに輸送するか、もしくは、脱硫・脱硝塔内にスプレーしてアリカル性吸収剤乾燥粉末として再利用する。
【0037】
実施例1
計量ポンプで塩酸ナトリウム水溶液、過酸化水素水溶液および硫酸水溶液を二酸化塩素発生装置に輸送し、反応させて二酸化塩素ガスを得、二酸化塩素発生装置に導入された空気と混合して混合ガスを得、かつ誘引通風機によって煙道ガス管に供給した。
【0038】
煙道ガスを静電集塵機によりダスト除去処理を行ってから煙道ガス管に導入し、誘引通風機によって出力された混合ガスと煙道ガス管内で接触させて、煙道ガスにおける一酸化窒素を窒素酸化物に酸化して酸化された煙道ガスを得た。
【0039】
酸化された煙道ガスを脱硫・脱硝塔内に導入し、脱硫・脱硝塔内にてスプレーされた水酸化カルシウム乾燥粉末と混合し、そして、脱硫・脱硝塔内に水をスプレーすることにより、酸化された煙道ガスから窒素酸化物および二酸化硫黄を取り除いて脱硫・脱硝された煙道ガスを得た。
【0040】
前述した方法を、90m2焼結機を用いた脱硫・脱硝プロジェクトに応用し、各操作パラメータを表1に示した。脱硫・脱硝された煙道ガスに対して、脱硫・脱硝塔上部のバッグフィルターによるダスト除去を行って浄化された煙道ガスのパラメータは、表2に示した。
【0041】
【0042】
【0043】
比較例1
本比較例において、表3に記載の操作パラメータを除き、他の操作パラメータは、いずれも実施例1と同じであった。本比較例に得られた精製された煙道ガスのパラメータは、下記の表4に示した。
【0044】
【0045】
【0046】
比較例2
本比較例において、表5に記載の操作パラメータを除き、他の操作パラメータは、いずれも実施例1と同じであった。本比較例に得られた精製された煙道ガスのパラメータは、下記の表6に示した。
【0047】
【0048】
【表6】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨から逸脱しない範囲で、当業者が考え得るあらゆるの修正、改良、および置換は、本発明の範囲内に含まれるものとする。