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特許7602533超湿潤表面ならびにその調製方法およびその適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】超湿潤表面ならびにその調製方法およびその適用
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/18 20060101AFI20241211BHJP
   C08L 23/12 20060101ALI20241211BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20241211BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20241211BHJP
   B01D 69/06 20060101ALI20241211BHJP
   B01D 69/08 20060101ALI20241211BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20241211BHJP
   B01D 71/78 20060101ALI20241211BHJP
   D06M 14/10 20060101ALI20241211BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20241211BHJP
   D06M 14/28 20060101ALI20241211BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20241211BHJP
   B05D 7/02 20060101ALI20241211BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
C08J7/18
C08L23/12
C09K3/00 R
B01D69/02
B01D69/06
B01D69/08
B01D71/26
B01D71/78
D06M14/10
D06M10/00 E
D06M14/28
D06M15/643
B05D7/02
B05D3/06 Z
【請求項の数】 55
(21)【出願番号】P 2022512344
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2020106910
(87)【国際公開番号】W WO2021036716
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】201910786213.4
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910786287.8
(32)【優先日】2019-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.14,BEISANHUAN EAST ROAD,CHAOYANG DISTRICT,BEIJING 100013,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】喬金▲リァン▼
(72)【発明者】
【氏名】王▲ソン▼合
(72)【発明者】
【氏名】張暁紅
(72)【発明者】
【氏名】戚桂村
(72)【発明者】
【氏名】宋志海
(72)【発明者】
【氏名】蔡傳倫
(72)【発明者】
【氏名】王湘
(72)【発明者】
【氏名】頼金梅
(72)【発明者】
【氏名】李秉海
(72)【発明者】
【氏名】蒋海斌
(72)【発明者】
【氏名】茹越
(72)【発明者】
【氏名】張江茹
(72)【発明者】
【氏名】高建明
(72)【発明者】
【氏名】張紅彬
(72)【発明者】
【氏名】韓朋
(72)【発明者】
【氏名】姜超
(72)【発明者】
【氏名】郭照▲ヤン▼
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-024066(JP,A)
【文献】国際公開第99/024174(WO,A1)
【文献】Irena GANCARZ et al.,“Microwave plasma‐initiated grafting of acrylic acid on Celgard 2500 membrane to prepare alkaline battery separators―Characteristics of process and product”,Journal of Applied Polymer Science,2009年12月10日,Vol. 116, No. 2,p.868-875,DOI: 10.1002/app.31596
【文献】Songhe WANG et al.,“Polymer Solid-Phase Grafting at Temperature Higher than the Polymer Melting Point through Selective Heating”,Macromolecules,2019年04月18日,Vol. 52, No. 9,p.3222-3230,DOI: 10.1021/acs.macromol.8b02737
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 69/00-14、
B01D 71/26、78
C08L 23/10-14
C09K 3/00
D06M 14/10、28
D06M 10/00
D06M 15/643
B05D 7/02
B05D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ-ナノ構造を有するポリプロピレン表面である、超湿潤表面であって、
前記ポリプロピレン表面は、親水性側基を用いてグラフトされ、および親油性側基を用いてさらにグラフトされ、
ここで、前記超湿潤表面は、少なくとも超親水性であり、開始剤の残留物を含有しない、超湿潤表面。
【請求項2】
前記超湿潤表面の水接触角が10°以下であることを特徴とする、請求項1に記載の超湿潤表面。
【請求項3】
前記超湿潤表面の水接触角が約0°であることを特徴とする、請求項2に記載の超湿潤表面。
【請求項4】
グラフトベースとしての前記ポリプロピレン表面の前記マイクロ-ナノ構造の特徴サイズは、1nm~100μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の超湿潤表面。
【請求項5】
前記マイクロ-ナノ構造は、熱誘起相分離プロセス、フォトリソグラフィ技術、フェムト秒レーザ加工技術、プラズマエッチング技術、エレクトロスピニング法、ナノインプリンティング、ナノキャスティング、超精密マイクロミリング技術または電気アークによって前記ポリプロピレン表面上に生成される構造であることを特徴とする、請求項4に記載の超湿潤表面。
【請求項6】
グラフトベースとしての前記ポリプロピレン表面は、ポリプロピレン多孔質膜、ポリプロピレン平膜またはポリプロピレン中空繊維微多孔質膜であることを特徴とする、請求項4に記載の超湿潤表面。
【請求項7】
前記ポリプロピレン多孔質膜の平均孔径は、100μm未満であることを特徴とする、請求項6に記載の超湿潤表面。
【請求項8】
前記ポリプロピレン多孔質膜の空隙率は、50~90%であることを特徴とする、請求項6に記載の超湿潤表面。
【請求項9】
前記親水性側基は、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、ハロゲンおよびそれらの組み合わせ、またはそれらの置換基からなる群から選択されるヘテロ原子を含有し、かつ、炭素-炭素二重結合を含有する、1つまたは複数のモノマーから形成されるユニットを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の超湿潤表面。
【請求項10】
前記モノマーは、有機酸およびその誘導体、ならびにビニルシランからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項9に記載の超湿潤表面。
【請求項11】
前記有機酸の誘導体は、無水物、エステル、または塩であることを特徴とする、請求項10に記載の超湿潤表面。
【請求項12】
前記有機酸およびその誘導体は、無水マレイン酸およびその誘導体、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、酢酸ビニル、アルケニルスルホン酸およびその誘導体、ビニル安息香酸およびその誘導体、イタコン酸およびその誘導体、オレイン酸およびその誘導体、アラキドン酸およびその誘導体ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項10に記載の超湿潤表面。
【請求項13】
前記(メタ)アクリル酸の誘導体は、グリシジルメタクリレートであることを特徴とする、請求項12に記載の超湿潤表面。
【請求項14】
前記有機酸の誘導体は、前記有機酸の塩形態であることを特徴とする、請求項10に記載の超湿潤表面。
【請求項15】
前記ビニルシランは、式(1)で表される化合物の1つまたは複数であり:
CH=CH-(CHSiX 式(1)
式中、n=0~3であり、各Xは同一または異なり、独立してクロロ基、メトキシ基、エトキシ基、およびアセトキシ基を表すことを特徴とする、請求項10に記載の超湿潤表面。
【請求項16】
前記親水性側基は、有機酸の塩から形成されるユニットを含むか、またはそれからなることを特徴とする、請求項9に記載の超湿潤表面。
【請求項17】
前記親油性側基は、ビニルシリコーンオイルから形成される側基、スチレンから形成される側基およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~16のいずれか1項に記載の超湿潤表面。
【請求項18】
前記ビニルシリコーンオイルは、ビニル末端シリコーンオイル、高ビニルシリコーンオイルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の超湿潤表面。
【請求項19】
前記ビニルシリコーンオイルは、メチルビニルシリコーンオイル、ビニル水素含有シリコーンオイル、ジビニルシリコーンオイルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の超湿潤表面。
【請求項20】
前記超湿潤表面の油接触角は、90°未満であることを特徴とする、請求項1~19のいずれか1項に記載の超湿潤表面。
【請求項21】
前記超湿潤表面の油接触角は、約0°であることを特徴とする、請求項20に記載の超湿潤表面。
【請求項22】
側基を形成するためのモノマーと、マイクロ-ナノ構造を有する、グラフトベースとしてのポリプロピレン表面とを、開始剤の欠如下において、マイクロ波照射によるグラフト反応に供する工程を含む、請求項1に記載の超湿潤表面を調製するための方法。
【請求項23】
前記ポリプロピレン表面を、親水性側基を形成するためのモノマーおよび親油性側基のためのモノマーと接触させて混合し;次いで、得られた混合物を、開始剤を添加せずにマイクロ波照射グラフト化に供する、アプローチを含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ポリプロピレン表面を、親水性側基を形成するためのモノマーと接触させて混合し;次いで、得られた混合物を、開始剤を添加せずにマイクロ波照射グラフト化に供し;次いで、得られたグラフト化生成物を、親油性側基を形成するためのモノマーおよび無機マイクロ波吸収媒体と混合し、そして開始剤を添加せずにマイクロ波照射グラフトする、アプローチを含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記ポリプロピレン表面を、親油性側基を形成するためのモノマーおよび無機マイクロ波吸収媒体と接触させて混合し、次いで、得られた混合物を、開始剤を添加せずにマイクロ波照射グラフト化に供し;次いで、得られたグラフト化生成物を、親水性側基を形成するためのモノマーと混合し、そして開始剤を添加せずにマイクロ波照射グラフトする、アプローチを含むことを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記親水性側基を形成するためのモノマーが、有機酸またはその無水物もしくはエステルのうちの少なくとも1つであり、
前記方法が、有機酸またはその無水物もしくはエステルの少なくとも1つの側基を用いてグラフトされた前記ポリプロピレン表面を、塩基と接触させて混合するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記塩基は、金属水酸化物およびアンモニア水からなる群から選択されることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記金属水酸化物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、水酸化第一鉄、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化コバルト、水酸化金、水酸化アルミニウム、水酸化銅、水酸化ベリリウム、希土類水酸化物およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記塩基の量は、前記ポリプロピレン表面の量を基準として0.1~10重量%であることを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
上記の混合プロセスのうち少なくとも1つは、真空下において実施されることを特徴とする、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記親水性側基を形成するためのモノマーの量は、前記ポリプロピレン表面の量を基準として0.1~10重量%であることを特徴とする、請求項23~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記親水性側基を形成するためのモノマーは、当該モノマーが1つまたは複数の溶媒に溶解している溶液の形態で使用され、前記溶媒は、アルコール、ケトン、エステル、水およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記親油性側基を形成するためのモノマーの量は、前記ポリプロピレン表面の量を基準として0.1~30重量%であることを特徴とする、請求項23~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記親油性側基を形成するためのモノマーは、当該モノマーが1つまたは複数の溶媒に溶解している溶液の形態で使用され、前記溶媒は、アルコール、ケトン、エステル、水およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
無機マイクロ波吸収媒体を添加することを特徴とする、請求項22~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記無機マイクロ波吸収媒体は、金属水酸化物、金属塩、金属酸化物、グラファイト材料、強誘電体材料、電解石、黄銅鉱およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記金属水酸化物は、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、水酸化第一鉄、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化コバルト、水酸化金、水酸化アルミニウム、水酸化銅、水酸化ベリリウム、希土類水酸化物およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記金属塩は、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硝酸マンガン、硝酸亜鉛、硝酸第二鉄、硝酸第一鉄、硝酸銅、硝酸銀、塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化第一鉄、塩化銅、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸鉄、硫酸第一鉄、硫酸銅、硫酸銀、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸二水素カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸銅カルシウムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記金属酸化物は、三酸化二鉄、四酸化三鉄およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記グラファイト材料は、カーボンブラック、グラファイト粉末、グラフェン、酸化グラフェンの還元生成物、カーボンナノチューブ、活性炭およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
1回の使用における前記無機マイクロ波吸収媒体の量は、前記ポリプロピレン表面の量の0.1~10重量%であることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記無機マイクロ波吸収媒体は、直接的に添加されるか、あるいは当該無機マイクロ波吸収媒体が1つまたは複数の溶媒に溶解または分散している溶液または分散液の形態で添加され、前記1つまたは複数の溶媒は、アルコール、ケトン、エステル、水およびそれらの組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記分散液は、界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項22~43のいずれか1項に記載の方法によって調製される、超湿潤表面。
【請求項45】
請求項1~21のいずれか1項に記載の超湿潤表面を含み、フィルムである、物品。
【請求項46】
前記フィルムが、ポリプロピレン多孔質膜、ポリプロピレン平膜またはポリプロピレン中空繊維微多孔質膜である、請求項45に記載の物品。
【請求項47】
請求項1~21のいずれか1項に記載の超湿潤表面を含み、シートまたはプレートである、物品。
【請求項48】
請求項1~21のいずれか1項に記載の超湿潤表面を含み、成形物品である、物品。
【請求項49】
請求項1~21のいずれか1項に記載の超湿潤表面を含み、プラスチック物品である、物品。
【請求項50】
請求項1~21のいずれか1項に記載の超湿潤表面を含み、食品袋の外側パッケージである、物品。
【請求項51】
請求項1~21のいずれか1項に記載の超湿潤表面を含み、自動車バンパーである、物品。
【請求項52】
結合の方法における、請求項49に記載の物品の使用。
【請求項53】
吹き付けの方法における、請求項50または51に記載の物品の使用。
【請求項54】
油-水分離における、請求項46に記載の物品の使用。
【請求項55】
水処理における、請求項46における物品の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、ポリマー材料の分野、特にポリマー膜材料の分野、とりわけ超湿潤表面ならびにその調製方法およびその適用に関する。
【0002】
〔背景技術〕
固体材料の表面の湿潤性は、通常、固体表面の化学的特性および微細構造によって決定される。超湿潤特性を有するポリマーの表面は、液体分離、自己洗浄、曇り防止、液体輸送、機能性ポリマーフィルム、プリントおよび結合などにおいて重要な用途を見出す。
【0003】
現在、多くの研究者が、ポリマーの表面改質に関する詳細な研究を行っているが、超湿潤材料に関する研究は、主に超疎水性材料を得る。超親水性材料に関する報告はほとんどない。明らかに、超親水性ポリマーは、調製がより困難である。従来のグラフト法(ATRP、コロナ、プラズマ処理、紫外線など)によって得られるポリマー表面は、親水性表面のみになり得、超親水性表面にはなり得ない。
【0004】
超両親媒性表面は、超親水性表面および超親油性表面よりも調製が困難であり、超両親媒性表面は、水および油の両方が材料の表面に浸透し得ることを必要とする。1997年に、Wangが初めて両親媒性材料について報告し(Wang, R.; Hashimoto, K.; Fujishima, A.; Chikuni, M.; Kojima, E.; Kitamura, A.; Shimohigoshi, M.; Watanabe, T., Light-induced amphiphilic surfaces, Nature 1997, 388(6641), 431-432)、ここでは、紫外線を使用してチタニアを誘導することによって、両親媒性表面を固体物基材に調製し、表面は防汚能力を有していた。その後、多層集合、エレクトロスピニング、エッチング、プラズマ処理、ディップコーティング、相分離および鋳型法を使用して、種々の超湿潤ポリマー表面が調製された。しかしながら、上記の方法によって調製した超湿潤ポリマー表面は無機粒子と複合しなければならず、また、可撓性物品中の固体粒子の脆性は、材料の適用を制限する。したがって、これまでのところ、無機粒子を使用せずに超両親媒性ポリマー表面を調製することは、既存の方法では依然として不可能である。
【0005】
新興の高効率分離技術として、膜技術は工業化された高効率かつ省エネルギーの分離法であり、近年急速に発展している。膜技術の適用において、膜材料は、膜技術の発展および適用の基礎であり、かつコアである。膜材料の特性は膜の分離性能に直接影響を及ぼし、したがって、膜材料の調製プロセスは常に、研究者にとってホットスポットとなってきた。現在、広く使用されている膜材料としては、ポリマーおよび無機材料の2種類が挙げられる。なかでも、ポリマー微多孔質膜の調製方法としては、主に、転相法、延伸法、浸出法、焼結法、核飛跡法などが挙げられる。1980年代初期に、Castroは特許出願を行い、ここでは、熱誘導相分離(TIPSと略される)方法が提案され、これはサーモゲル転相膜調製方法に属する。より高い温度でのみ混和性であり得るポリマーおよび希釈剤を最初に加熱して溶融させ、次いで溶液をキャストまたは押出してフィルムにし、その後、これを冷却した。溶液の温度がある温度以下に低下すると、溶液中のポリマー鎖が相互作用してゲル構造を形成し、最終的には相分離が要因となって細孔が形成され;分離したゲルを抽出液に浸漬して希釈剤を除去し、それによって多孔質膜を形成することができた。
【0006】
ポリプロピレンは高融点、低密度、高強度などの特徴を有し、かつ、優れた耐食性、化学的安定性、耐熱性などの利点を有するため、膜材料を調製するための開始材料として極めて有利である。ポリプロピレンは表面に極性基を含有しないため、その表面エネルギーは非常に低く;かつ、その臨界表面張力は31~34×10-5N/cmに過ぎず、したがってそれは親油性である。ポリプロピレンを微多孔質膜に調製する場合、微多孔質膜はより強い親油性を示すことになり、そのため、微多孔質膜は水の浸透のためにより高い圧力を必要とし、それによって、高い電力消費および低い膜流束をもたらす。使用において、膜の疎水性は、膜の表面上および膜の孔中に有機物およびコロイドの吸着、例えば、タンパク質の吸着を容易に引き起こし、それによって膜のファウリングを引き起こす。膜分離工程を正常に進行させるためには加圧または頻繁な洗浄を行うことが必須であり、運転エネルギーの消費および洗浄コストを増大させ、ポリプロピレン微多孔質膜のさらなる広範な適用を制限する。このような膜の親水性改質は、膜の水流束および膜の耐汚染性を向上させるための重要な方法であり、それはまた、膜についての研究の現在のホットスポットの1つになっている。さらに、ポリプロピレンは親油性であるが、その親油性は依然として不十分である。例えば、ポリプロピレンシリンジでは、その親油性を増大させるためにシリコーンオイルを依然として添加しなければならない。親油性の分離膜はまた、ガス分離などの分野における適用の可能性を有する。それにもかかわらず、両親媒性機能を有するポリプロピレン多孔質膜は、ほとんど報告されていない。
【0007】
現在、膜材料の改質の方法は、主に物理的方法と化学的方法に分けられている。物理的方法としては、界面活性剤改質、表面コーティング改質、膜材料のブレンド改質などが挙げられる。化学的方法としては、プラズマ改質、紫外線放射グラフト、高エネルギー放射グラフト、他の化学反応による極性基の導入などが挙げられる。例えば、中国特許出願公報CN105195031Aは、分離膜の親水性改質の方法を開示しており、親水性プレポリマーおよび開始剤を膜形成ポリマーと混合する工程と、次いで紫外線放射による架橋を実施する工程とを含む、分離膜の親水性改質の方法を開示しており;また、中国特許CN1299810C(CN1539550Aとして公開)における親水性改質法は、ポリプロピレン分離膜の表面上にモノマーをプレコーティングする工程と、プラズマ照射を使用してグラフトを実施する工程とを含む。上記の方法は、複雑な装置を使用しており、多孔質膜の処理について均一な効果をほとんど達成することができず、したがって、工業的適用には役立たない。
【0008】
これらのポリプロピレンフィルム改質の方法のうち、ブレンド改質は、一般的に使用される方法である。ブレンド改質法は単純かつ制御が容易であり、複数のポリマーのそれぞれの特徴を同時に保持することができ、明らかな改質効果を達成することができる。ブレンド改質において、水溶性ポリマーおよびナノ材料は、2つの一般的に使用される添加剤である。ポリビニルピロリドンおよびポリエチレングリコールのような水溶性ポリマーは膜流束を著しく増加させ得るが、膜は耐圧性に乏しい。中国特許出願公報CN103768958Aは、親水性ポリマーをポリオレフィン分子膜とブレンドするための方法を提供し、当該方法では、ポリオレフィンを相溶化剤および親水性ポリマーと溶融ブレンドし、次いで熱誘導相分離を実施し、親水性多孔質膜を調製する。ナノ材料によって調製された膜は、高い流束および良好な耐圧性を有するが、ナノ粒子を膜形成液中に均一に分散させることは困難であり、このことは煩わしい膜作製プロセスと、工業的生産にとって不適切であることとを引き起こす。中国特許出願公報CN104548950Aでは、カップリング剤および希釈液を用いて処理された無機ナノ粒子を、溶融ブレンドのためにポリプロピレン樹脂に添加し、熱誘導相分離法を採用して、無機ナノ粒子によって増強されたポリプロピレン中空繊維分離膜を調製する。プラズマ改質、UV照射グラフトおよびその他の改質法は、実施時間の増加に伴い深刻な親水性減衰を有するか;あるいは、より複雑な化学反応を必要とし、これは工業化を困難にする。
【0009】
〔発明の開示〕
先行技術を考慮すると、本発明の目的は、少なくとも超親水性であり、耐久性でかつ安定な超湿潤特性を有し、先行技術における親水性および/または親油性表面の欠点を有さない、新規な超湿潤表面を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、そのような超湿潤表面を調製するための方法を提供することであり、当該方法により超湿潤表面を簡単に調製することができ、そして、当該方法は容易に工業化することができる。
【0011】
前記目的は、本発明に係る超湿潤ポリプロピレン表面およびその調製方法によって達成される。
【0012】
本発明によれば、マイクロ波照射下で、開始剤を添加せずに、任意にさらに塩化することによって、マイクロ-ナノ構造を有するポリプロピレン表面を、有機酸および有機酸誘導体、ビニルシランなどの親水性モノマーとグラフト反応させることにより、超親水性表面を得ることができ;ビニルシリコーンオイルおよびスチレンなどの親油性モノマーとのさらなるグラフトも実施することができ、それによって、超親水性表面の親油性をさらに向上させ、あるいは、超両親媒性表面を達成することさえできることが、予想外にわかった。
【0013】
したがって、本発明の第1の態様によれば、本発明は、マイクロ-ナノ構造を有し、かつ、親水性側基を用いてグラフトしたポリプロピレン表面である超湿潤表面を提供し、ここで、前記超湿潤表面は少なくとも超親水性であり、また、前記超湿潤表面は開始剤の残留物を含有しない。
【0014】
本明細書で使用される用語「表面」は、固体と空気との間の界面を指す。
【0015】
本発明に係る表面は超湿潤表面である。本明細書で使用される用語「超湿潤」は、超親水性、超親油性、または超両親媒性(超親水性および超親油性の両方)の特性を指す。本明細書で使用される用語「超親水性」は、表面の水接触角が10°以下であり、好ましくは5°以下であり、より好ましくは1°以下であり、最も好ましくは約0°以下であり、特に上記角度に約0.5秒以内に到達することを意味する。本明細書で使用される用語「超親油性」は、表面の油接触角が10°以下であり、好ましくは5°以下であり、より好ましくは1°以下であり、最も好ましくは約0°以下であり、特に上記角度に約0.5秒以内に到達することを意味する。接触角は、水滴または油滴(例えば、ホワイトオイルまたはピーナッツオイルの液滴)を使用して、接触角試験機を用いて動的接触角測定モードにおいて測定する。
【0016】
本発明に係る超湿潤表面の水接触角は、10°以下、好ましくは8°以下、より好ましくは5°以下、さらにより好ましくは1°以下、最も好ましくは約0°に達することができ、特に上記角度に約0.5秒以内に達する。
【0017】
本発明の超湿潤表面は基材に付着し得るか、あるいは、自立性の独立した生成物であり得る。
【0018】
本発明の超湿潤表面はマイクロ波照射下で、開始剤を添加せずに、グラフト反応によって調製されるため、本発明の超湿潤表面は開始剤の残留物を含有しない。本明細書で使用される用語「開始剤」は、モノマーの重合反応(グラフト反応を含む)を開始するために当技術分野で一般に使用されるフリーラジカル開始剤などの物質を指し、有機過酸化物開始剤(例えば、ジクミルパーオキサイド)および無機過酸化物開始剤などの過酸化物開始剤;ならびにアゾ開始剤およびレドックス開始剤など;同様に、例えば、ベンゾフェノンなどの光開始剤(または光増感剤)が挙げられる。
【0019】
本発明に係る超湿潤表面は、マイクロ-ナノ構造を有し、かつ、親水性側基を用いてグラフトしたポリプロピレン表面である。本明細書で使用される場合、用語「マイクロ-ナノ構造」は、ミクロンまたはナノスケールの特徴サイズを有し、特定の方法で配列された機能的構造を指す。前記機能的構造は、孔様構造、または他の形状を有する構造を含み;通常、マイクロ-ナノ構造の特徴サイズは、1nm~100μmの範囲である。特徴サイズは、マイクロ-ナノ構造の特徴構造の平均サイズを指す。
【0020】
マイクロ-ナノ構造を有する、グラフトベースとしてのポリプロピレン表面は、マイクロ-ナノ構造を有する種々のポリプロピレン表面であり得、従来技術における既存の調製方法によって調製され得る。ポリプロピレン表面のマイクロ-ナノ構造の特徴サイズは、1nm~100μmである。例えば、種々のポリプロピレン微多孔質表面、好ましくは熱誘導相分離プロセスによって調製されたポリプロピレン微多孔質平面を使用し得る。フォトリソグラフィ、フェムト秒レーザ加工技術、プラズマエッチング技術、エレクトロスピニング法、ナノインプリンティング、ナノキャスティングおよび超精密マイクロミリング技術などの既存の技術を使用して、ポリプロピレン表面のマイクロ-ナノ構造の加工を達成することもできる。具体的には、例えば、表面上にマイクロ-ナノ構造を有する金型を使用して、ポリプロピレン表面上にマイクロ-ナノ構造を押し出す。あるいは、電気アークおよび他の方法を使用して、ポリプロピレン表面上にマイクロ-ナノ構造を調製する、など。
【0021】
マイクロ-ナノ構造を有する、グラフトベースとしてのポリプロピレン表面は、独立した物品であり得るか、あるいは、基材上に存在し得る。前記基材は、主にポリプロピレンから構成されてもよい。前記基材は、例えば、フィルム、シート、プレート、または成形物品である。
【0022】
一実施形態では、マイクロ-ナノ構造を有する、グラフトベースとしてのポリプロピレン表面は、ポリプロピレン多孔質膜、ポリプロピレン平膜またはポリプロピレン中空繊維微多孔質膜であってもよい。
【0023】
ポリプロピレン多孔質膜の平均孔径は100μm未満であってもよく、好ましくは10nm~80μmであり、ポリプロピレン多孔質膜の空隙率は50~90%であってもよく、好ましくは60~80%である。平均孔径は、走査型電子顕微鏡を使用して微多孔質表面を観察し、孔径データを統計的に解析し、孔径分布図をプロットすることによって決定される。空隙率は、水銀圧入ポロシメトリー(MIP)を使用して測定される。
【0024】
本明細書で使用される用語「ポリプロピレン」は、プロピレンのホモポリマーおよびコポリマーならびにそれらの混合物を含む。
【0025】
本発明に係るグラフト化親水性側基は、親水性モノマーから形成されるユニットを含んでいてもよく、例えば、酸素、硫黄、窒素、ケイ素、およびハロゲンならびにそれらの組み合わせ、またはそれらの置換基からなる群から選択されるヘテロ原子を含有し、かつ炭素-炭素二重結合を含有する、1つまたは複数のモノマーから形成されるユニットを含む。
【0026】
親水性側基は、好ましくは酸素、硫黄、窒素、ケイ素、およびハロゲンならびにそれらの組み合わせ、またはそれらの置換基からなる群から選択されるヘテロ原子を含有し、かつ、炭素-炭素二重結合を含有する、モノマー側基である。親水性側基のためのモノマーは、好ましくは有機酸、有機酸の誘導体およびビニルシランのうちの少なくとも1つである。有機酸の誘導体は、有機酸の無水物、エステルおよび塩のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。有機酸としては、カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、チオカルボン酸(RCOSH)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
親水性側基のためのモノマーとしては、さらに好ましくは無水マレイン酸、無水マレイン酸の誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の誘導体(例えば、グリシジルメタクリレート)、酢酸ビニル、アルケニルスルホン酸およびその誘導体(例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、プロペニルスルホン酸、ビニルベンゼンスルホン酸、ビニルスルホン酸など)、ビニル安息香酸、イタコン酸、オレイン酸、アラキドン酸およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、有機酸および有機酸の誘導体、ならびにそれらの塩形態が挙げられ;最も好ましくは無水マレイン酸、無水マレイン酸の誘導体、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の誘導体およびそれらの組み合わせ、ならびにそれらの塩形態が挙げられ;さらにより好ましくは無水マレイン酸およびその塩形態が挙げられる。
【0028】
ビニルシランは、式(1)で表される化合物の1つまたは複数であってもよい:
CH=CH-(CHSiX 式(1)
式中、n=0~3であり、各Xは同一または異なり、独立してクロロ基、メトキシ基、エトキシ基、およびアセトキシ基を表す。
【0029】
ビニルシランは、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシランのうちの少なくとも一方であることが好ましい。
【0030】
好ましくは、親水性側基は、有機酸の塩から形成されるユニットを含むか、またはそれからなる。
【0031】
好ましい実施形態において、ポリプロピレン表面は、親油性側基を用いて同時にグラフトすることにより、表面の親油性をさらに向上させ得る。好ましくは、改質後、超湿潤表面の油接触角は90°未満、好ましくは10°以下、より好ましくは5°以下、さらにより好ましくは1°以下、最も好ましくは約0°以下に達し得、好ましくは上記角度に約0.5秒以内に達する。
【0032】
親油性側基は、親油性モノマーから形成されるユニットを含んでいてもよい。親油性モノマーは、好ましくはビニルシリコーンオイルおよびスチレンのうちの少なくとも一方を含む。親油性側基は、好ましくはビニルシリコーンオイル側基、スチレン側基およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0033】
ビニルシリコーンオイルは通常、ビニル基を有するポリシロキサンを指し、室温で液体であり、主に、中間セグメントまたは2つの末端にビニル基を有する線状ポリジメチルシロキサンを指す。ビニルシリコーンオイルは、マクロモノマーとして使用され得る。
【0034】
ビニルシリコーンオイルはビニル末端シリコーンオイル、高ビニルシリコーンオイルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択され得、好ましくは、メチルビニルシリコーンオイル、ビニル水素含有シリコーンオイルおよびジビニルシリコーンオイルのうちの少なくとも1つであり得る。
【0035】
本発明に係る超湿潤表面の水接触角は、改質処理前のポリプロピレン表面の水接触角よりも有意に小さい。本発明によれば、マイクロ-ナノ構造を有するポリプロピレン表面を親水性側基を用いてグラフトした後、得られる超湿潤表面は、超親水性効果を達成し得る。同時に、ポリプロピレン表面は、親油性改質のための親油性モノマーを用いてさらにグラフトされ得、これにより超親水性表面の親油性がさらに向上し、改質されていないポリプロピレン表面および親水性改質のみなされたポリプロピレン表面の両方と比較して親油性が向上する。
【0036】
ポリプロピレン多孔質膜、ポリプロピレン平膜またはポリプロピレン中空繊維微多孔質膜の場合、本発明に従って親水性側基をグラフトした後、膜は超親水性効果を達成し得、一方、水流束も大幅に増加する。親水性改質された膜は、ビニルシリコーンオイルなどの親油性モノマーを用いてさらにグラフトされ得、その結果、膜の親油性もさらに向上し、改質されていない膜および親水性改質のみなされた膜の両方と比較して、その油流束は増加する。
【0037】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、側基を形成するためのモノマーと、マイクロ-ナノ構造を有する、グラフトベースとしてのポリプロピレン表面とを、開始剤の欠如下、任意に無機マイクロ波吸収媒体を添加する場合に、マイクロ波照射によるグラフト反応に供する工程を含む、本発明に係る超湿潤表面を調製するための方法を提供する。グラフト反応の間、補助グラフトモノマーは使用されなくてもよい。
【0038】
本明細書で使用される用語「マイクロ波」は、300MHz~300GHzの周波数を有する電磁波を指す。
【0039】
本発明に係る方法では、親水性側基のためのモノマーを含む成分、または親水性側基のためのモノマーおよび親油性側基のためのモノマーを含む成分と、ポリプロピレン表面とを、グラフト開始剤を添加せずに、マイクロ波照射を使用してグラフト反応に供して、超湿潤表面を得てもよい。
【0040】
成分が親油性側基のためのモノマーを含まない場合、任意におよび好ましくは、無機マイクロ波吸収媒体が添加され;成分が親油性側基のためのモノマーを含む場合、無機マイクロ波吸収媒体が添加される。
【0041】
親水性側基のためのモノマーが、有機酸またはその無水物もしくはエステルのうちの少なくとも1つである場合、前記方法は、グラフト反応後に得られる生成物を塩基と反応させるステップ(すなわち、いわゆる塩化ステップ)をさらに含んでいてもよい。
【0042】
本発明の調製方法において、マイクロ波照射グラフト反応は、親水性側基のみのマイクロ波照射グラフト反応を含んでいてもよいし;あるいは、親油性側基のマイクロ波照射グラフト反応および親水性側基のマイクロ波照射グラフト反応の両方を含んでいてもよく、2種類の側基のマイクロ波照射グラフト反応は同時にまたは連続的に起こり得、その順序は限定されない。
【0043】
塩化ステップは、任意のステップである。有機酸またはその無水物もしくはそのエステルの少なくとも1つの側基を用いてポリプロピレン表面をグラフトする場合には、このような塩化ステップを行うことができるが、親油性側基のマイクロ波照射グラフト反応の前または後または最中に実施するかどうかは限定されず、すなわち、上記親水性側基の塩化のために、有機酸またはその無水物もしくはエステルのうちの少なくとも1つである親水性側基のためのモノマーを有する、グラフト化ポリプロピレン表面上で親油性側基のマイクロ波照射グラフトしながら、塩基を添加することが可能である。
【0044】
本発明の調製方法は、具体的には以下のアプローチのいずれか1つを含んでいてもよい:
1)ポリプロピレン表面を、親水性側基のためのモノマーおよび/またはモノマーを溶媒に溶解した溶液と接触させて混合することを含み、ここで、無機マイクロ波吸収媒体を任意に添加し;次いで、得られた混合物を、グラフト開始剤を添加せずにマイクロ波照射グラフト化に供し;前記混合物は任意に、親油性側基のためのモノマーおよび/またはモノマーを溶媒に溶解した溶液、ならびに無機マイクロ波吸収媒体をさらに含む;
2)ポリプロピレン表面を、親水性側基のためのモノマーおよび/またはモノマーを溶媒に溶解した溶液と接触させて混合することを含み、ここで、無機マイクロ波吸収媒体を任意に添加し;次いで、得られた混合物を、グラフト開始剤を添加せずにマイクロ波照射グラフトに供し;次いで、得られたグラフト生成物を、親油性側基のためのモノマーおよび/またはモノマーが溶媒に溶解した溶液、ならびに無機マイクロ波吸収媒体と混合し、そしてグラフト開始剤を添加せずにマイクロ波照射グラフトすることを含む;
3)ポリプロピレン表面を、親油性側基のためのモノマーおよび/またはモノマーを溶媒に溶解した溶液、ならびに無機マイクロ波吸収媒体と接触させて混合し、次いで、得られた混合物を、グラフト開始剤を添加せずにマイクロ波照射グラフトに供し、次いで、得られたグラフト化生成物を、無機マイクロ波吸収媒体を任意に添加する条件下で、親水性側基のためのモノマーおよび/またはモノマーを溶媒に溶解した溶液と混合して、そしてグラフト開始剤を添加せずにマイクロ波照射グラフトすることを含む;
4)上記3つのアプローチのいずれか1つに基づいて、親水性側基のためのモノマーが有機酸またはその無水物もしくはエステルのうちの少なくとも1つである場合、有機酸またはその無水物もしくはエステルの少なくとも1つの側基を用いてグラフトされたポリプロピレン表面を、塩基および/または前記塩基の水溶液と接触させて混合するステップ(いわゆる塩化工程)をさらに含む。
【0045】
本発明の調製方法では開始剤またはグラフト開始剤のいずれも添加しないため、当該調製方法によって得られた本発明の超湿潤表面は、開始剤の残留物を含有しない。開始剤とは、過酸化物開始剤、アゾ開始剤、レドックス開始剤などを含むフリーラジカル開始剤、または、例えば、ベンゾフェノンなどの光開始剤(または光増感剤)などの、モノマーの重合反応(グラフト反応を含む)を開始するために当技術分野で使用される物質を指す。過酸化物開始剤は、有機過酸化物開始剤(例えば、ジクミルパーオキサイド)および無機過酸化物開始剤に分けることができる。開始剤は、特に、機能性モノマーをポリプロピレン上にグラフトするために使用される種々の開始剤、例えばジクミル過酸化物などを指す。従来技術のグラフト方法では、モノマーを用いてポリプロピレンをグラフトするために、ポリプロピレンの三級炭素を開始剤によって脱水素化するが、実際には、開始剤は脱水素化するだけではなく、ポリプロピレン中でβ鎖切断反応を大幅に引き起こすこともあり得、すなわち、制御するには反応が激しすぎるため、グラフト化ポリプロピレンの機械的特性に影響を及ぼす。本発明の調製方法は、開始剤を添加せずに、有機酸、有機酸の誘導体、ビニルシラン、ビニルシリコーンオイルおよびスチレンなどの側基を、ポリプロピレンの表面上にグラフトし得る。したがって、本発明によって得られる超湿潤表面は、開始剤の残留物を含有せず、そのため、ポリプロピレン表面の機械的特性に悪影響を与えないことを確実にする。
【0046】
本発明の調製方法において使用される親水性側基のためのモノマーは、種々の親水性モノマーであってもよく、具体的には上述したものである。親水性側基のためのモノマーの量は、ポリプロピレン表面の量を基準として0.1~10重量%であってもよく、好ましくは1~8重量%であってもよい。
【0047】
本明細書において、グラフトベースとしてのポリプロピレン表面が独立した物品である場合、物品の厚さが1mm以下であれば、ポリプロピレン表面の量は物品の総重量に応じて算出され;物品の厚さが1mm超であれば、ポリプロピレン表面の量は1mmの厚さの物品の重量に応じて算出される。グラフトベースとしてのポリプロピレン表面が基材に存在する場合、ポリプロピレン表面の量は、ポリプロピレン表面から基材内部に向かう方向に空気と接触する表面から厚さ1mmの位置までのポリプロピレン表面を含む、基材全体の重量に応じて算出され;ポリプロピレン表面を含む基材全体の厚さが1mm以下であれば、ポリプロピレン表面を含む基材全体の総重量に応じて算出される。
【0048】
親水性側基のためのモノマーは、ポリプロピレン表面または親油性モノマーを用いてグラフトしたポリプロピレン表面と直接的に接触および混合され得、あるいは、より良好な混合効果のために、1つまたは複数の溶媒中の親水性側基のためのモノマーの溶液を混合のために使用し得る。溶媒の量は、モノマーを溶解して溶液を形成することができる程度のみ必要とされ、好ましくは親水性側基のためのモノマーの溶液中で、モノマー対溶媒の重量比率は(0.1~100):100であり、好ましくは(0.5~50):100であり、より好ましくは(1~30):100である。好ましくは、モノマー溶液はポリプロピレン表面を完全に被覆することができるような量で使用され、それらの2つの十分な接触および混合を容易にする。
【0049】
親水性側基のためのモノマーを溶解するために使用される溶媒は、水および有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1つであり得;好ましくは、アルコール、ケトン、エステルおよび水のうちの少なくとも1つを含み、より好ましくは、アセトンまたはエタノールである。
【0050】
本発明の調製方法において使用される親油性側基のためのモノマーは、種々の親油性モノマーであってもよく、具体的には上述したものである。親油性側基のモノマーの量は、ポリプロピレン表面の量を基準として0.1~30重量%であってもよく、好ましくは1~20重量%であってもよい。
【0051】
親油性側基のモノマーは、ポリプロピレン表面または親水性モノマーを用いてグラフトしたポリプロピレン表面と直接的に接触および混合され得、あるいは、より良好な混合効果のために、1つまたは複数の溶媒中の親油性側基のモノマーの溶液を混合のために使用し得る。溶媒の量は、モノマーを溶解して溶液を形成することができる程度のみ必要とされ、好ましくは、親油性側基のためのモノマー対溶媒の重量比率は(0.1~100):100であってもよく、好ましくは(0.5~50):100であってもよく、より好ましくは(1~30):100であってもよい。好ましくは、モノマー溶液はポリプロピレン表面を完全に被覆することができるような量で使用され、それらの2つの十分な接触および混合を容易にする。
【0052】
親油性側基のためのモノマーを溶解するために使用される溶媒は、水および有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1つであり得;好ましくは、アルコール、ケトン、エステルおよび水のうちの少なくとも1つを含み、より好ましくは、アセトンまたはエタノールである。
【0053】
本発明の調製方法において、ポリプロピレン表面を親水性側基のみを用いてグラフトする場合、モノマーとポリプロピレン表面との混合物に無機マイクロ波吸収媒体を添加しなくてもよいが、グラフト効率を高めるためには無機マイクロ波吸収媒体を添加することが好ましい。親油性側基を用いてポリプロピレン表面をグラフトする必要がある場合、一般に、マイクロ波下での親油性側基のためのモノマーの上昇温度は200℃を超えず、グラフト反応が十分に進行できないため、マイクロ波下でのグラフト反応を促進するために無機マイクロ波吸収媒体を添加する必要がある。
【0054】
無機マイクロ波吸収媒体としては、マイクロ波を吸収することができる種々の無機物質を使用し得、好ましくは、金属水酸化物、金属塩、金属酸化物、グラファイト材料、強誘電体材料、黄銅鉱および電解石のうちの少なくとも1つを含む。
【0055】
金属水酸化物は、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、水酸化第一鉄、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化コバルト、水酸化金、水酸化アルミニウム、水酸化銅、水酸化ベリリウム、および希土類水酸化物のうちの少なくとも1つであり得;金属塩は、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硝酸マンガン、硝酸亜鉛、硝酸第二鉄、硝酸第一鉄、硝酸銅、硝酸銀、塩化アンモニウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化第二鉄、塩化第一鉄、塩化銅、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸鉄、硫酸第一鉄、硫酸銅、硫酸銀、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、リン酸二水素カリウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、およびチタン酸銅カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つであり得;金属酸化物は、三酸化二鉄および四酸化三鉄からなる群から選択される少なくとも1つであり得;グラファイト材料は、カーボンブラック、グラファイト粉末、グラフェン、酸化グラフェンの還元生成物(還元剤は、例えば、アスコルビン酸である)、カーボンナノチューブ、および活性炭からなる群から選択される少なくとも1つであり得る。
【0056】
1回の使用における無機マイクロ波吸収媒体の量は、ポリプロピレン表面の量の0.1~10重量%であり得;好ましくは1~8重量%であり得る。1回の使用における無機マイクロ波吸収媒体の量とは、本発明の調製方法が1回または複数回のマイクロ波照射を含んでいてもよく、無機マイクロ波吸収媒体を添加する場合には1回のマイクロ波照射のための添加量を意味する。
【0057】
無機マイクロ波吸収媒体は、ポリプロピレン表面またはグラフト化ポリプロピレン表面と接触および混合するために直接的に添加され得、あるいは、より良好な混合効果のために、1つまたは複数の溶媒に溶解または分散することによって得られる無機マイクロ波吸収媒体溶液または分散液が、接触および混合のために添加される。(グラフト化)ポリプロピレン表面上に無機マイクロ波吸収媒体をより良好に分散、混合するためには、好ましくは無機マイクロ波吸収媒体と(グラフト化)ポリプロピレン表面との混合、およびモノマーなどの他の成分との混合を、段階的に実施する、すなわち、(グラフト化)ポリプロピレン表面をモノマー成分と別々に混合して乾燥させ、次いで、乾燥した混合物を、無機マイクロ波吸収媒体またはその溶液もしくは分散液のうちの少なくとも1つと混合し得る。
【0058】
マイクロ波吸収媒体を溶解または分散させるために使用する溶媒の量は、無機マイクロ波吸収媒体を溶解させて無機マイクロ波吸収媒体溶液を形成することができる程度のみ必要であるか、あるいは、無機マイクロ波吸収媒体を十分かつ均一に分散させて分散液を形成し得る量である。無機マイクロ波吸収媒体溶液または分散液において、無機マイクロ波吸収媒体対溶媒の重量比率は、好ましくは(0.1~100):100の範囲であってもよく、より好ましくは(0.5~50):100の範囲であってもよく、最も好ましくは(1~30):100の範囲であってもよい。
【0059】
無機マイクロ波吸収媒体溶液または分散液は、好ましくは、(グラフト化)ポリプロピレン表面を含む出発材料の混合物を完全に被覆することができるような量で使用され、出発材料の十分な接触、混合および反応を容易にする。
【0060】
無機マイクロ波吸収媒体溶液または分散液中の溶媒は、水および有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1つであり;好ましくはアルコール、ケトン、エステル、および水のうちの少なくとも1つを含み、より好ましくはアルコールおよび水である。
【0061】
無機マイクロ波吸収媒体が、十分に分散されかつ安定な溶媒との分散液を形成し得ることを確実にするために、従来技術で一般的に使用される界面活性剤を無機マイクロ波吸収媒体の分散液に添加し得る。一般に、ポリオキシエチレンタイプおよびポリオールタイプなどの界面活性剤を使用することができ、使用量は、通常、無機マイクロ波吸収媒体の0.1~100重量%であり得る。
【0062】
塩化工程で使用される塩基は、ポリプロピレン表面にグラフトした有機酸側基、その酸無水物側基、およびそのエステル側基のいずれか1つを塩化し得る塩基から選択され得、好ましくは水酸化物である。
【0063】
水酸化物は、好ましくは金属水酸化物およびアンモニア水のうちの少なくとも1つであり;ここで、金属水酸化物は、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化鉄、水酸化第一鉄、水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化コバルト、水酸化金、水酸化アルミニウム、水酸化銅、水酸化ベリリウムおよび希土類水酸化物のうちの1つまたは複数であり、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化リチウム、水酸化ストロンチウムおよび水酸化カルシウムのうちの1つまたは複数である。
【0064】
塩基(例えば、水酸化物)の量は、ポリプロピレン表面の量を基準として0.1~10重量%であり得;好ましくは1~8重量%であり得る。
【0065】
塩基とグラフト化ポリプロピレン表面とを接触させて混合するために、塩基を直接的に添加することで接触させて混合し得るか、あるいは、十分な混合を容易にするために、好ましくは、水溶液の形態での塩基を使用することで十分に混合する。塩基を溶解するために使用する水の量もまた、塩基を溶解して水溶液を形成し得る程度のみ必要とされる。塩基の水溶液において、塩基対水の重量比率は、好ましくは(0.1~100):100であってもよく、より好ましくは(0.5~50):100であってもよく、最も好ましくは(1~30):100であってもよい。塩基の水溶液の量は、好ましくはグラフト化ポリプロピレン表面を完全に被覆することができ、それら2つの十分な接触、混合および反応を容易にする。
【0066】
塩基および/または塩基の水溶液は、グラフト化ポリプロピレン表面と十分に混合し、同時にそれと反応させることができ、これは一般的な酸-塩基反応であり、反応時間は反応が十分になるまでそれが続く限り、特に必要とされない。一般に、塩基および/または水溶液の添加が完了した後、さらなる接触および混合を反応と同時にしばらくの間、例えば、もしかしたら30分以内、好ましくは5~10分以内実施する。反応温度および圧力の両方は制限されず、一般に常温および常圧であり得る。
【0067】
本発明の調製方法におけるマイクロ波照射プロセスは、種々のマイクロ波反応器において実施され得る。ポリプロピレン表面上に適切なグラフト改質効果を達成することができ、したがって本発明に係る超湿潤特性を達成することができる限り、マイクロ波照射プロセスは、任意の適切な照射電力を用いて実施することができ、任意の適切な期間継続することができる。例えば、照射電力は100W~2000W、好ましくは500~1000W、より好ましくは600W~800Wであってもよく、照射時間は1秒~120分、好ましくは1分~30分、より好ましくは3分~10分であってもよい。
【0068】
マイクロ波照射は、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。不活性雰囲気は、不活性ガス、好ましくは窒素、ヘリウムおよびアルゴンのうちの1つまたは複数、より好ましくは窒素を使用することができる。
【0069】
本発明の調製方法において、上記混合は真空条件下で実施することが好ましい。混合は、親水性側基のためのモノマーおよび/またはその溶液と、(グラフト化)ポリプロピレン表面との接触混合、親油性側基のためのモノマーおよび/またはその溶液と、(グラフト化)ポリプロピレン表面との接触混合、グラフト化ポリプロピレン表面と、塩基および/または塩基の水溶液との接触混合などを含む。
【0070】
微多孔質などのマイクロ-ナノ構造を有するポリプロピレン表面自体については、グラフトモノマーおよび/または塩基、ならびに他の成分とのより十分な接触混合のために真空が好都合であり、真空は、グラフトモノマーおよび/または塩基、ならびに他の成分が、ポリプロピレン表面のマイクロ-ナノ構造へ入ることを促進し、これは反応の進行にとってより好都合である。
【0071】
本発明の調製方法において、接触混合は種々の混合方法および装置によって実施することができ、また、種々の材料を十分かつ均一に混合することができる限り、混合条件も一般的な条件であり;例えば、ポリプロピレン表面以外のモノマーを含む成分の出発材料、またはそれらの溶液、分散液などを、ポリプロピレン表面上にコーティングし、滴下し、浸透させ、被覆して、接触混合を達成し得る。
【0072】
好ましくは、モノマーと(グラフト化)ポリプロピレン表面とを含む成分の混合物を、マイクロ波照射に先立って乾燥処理に供する。
【0073】
好ましくは、溶媒を用いてマイクロ波照射グラフト後の生成物を洗浄して、未反応モノマーまたは/および反応に関与しない無機マイクロ波吸収媒体を除去することができ、好ましくは洗浄後にさらなる乾燥処理に供する。
【0074】
マイクロ波照射後の生成物の洗浄は、残留モノマーまたは無機マイクロ波吸収媒体を除去することができる限り、特に限定されない。一般的な洗浄方法を使用し得る。例えば、マイクロ波照射後、ポリプロピレン表面を超える体積の溶媒を直ちに使用して高温で一定時間(例えば、5~15分)浸漬した後、次いで、濾過装置を使用して余分な水分を除去し;浸漬および濾過を複数回(例えば、2~6回)繰り返すことにより、不純物のない超湿潤表面を得ることができる。
【0075】
塩化工程の生成物(すなわち、グラフト反応生成物と塩基との反応後の生成物)は、好ましくは、溶媒を用いて洗浄して、グラフト化ポリプロピレン表面と反応しない塩基を除去することができ、好ましくは洗浄後にさらに乾燥させる。
【0076】
塩化後の生成物の洗浄は、残留塩基を除去することができる限り、特に限定されず、一般的な洗浄方法を使用し得る。例えば、塩化反応後、グラフト化ポリプロピレン表面を超える体積の溶媒を直ちに使用して一定時間(例えば、5~15分)浸漬した後、次いで、濾過装置を使用して余分な水分を除去し;浸漬および濾過を複数回(例えば、2~6回)繰り返すことにより、不純物のない両親媒性プロピレン表面を得ることができる。
【0077】
洗浄溶媒は、水および有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1つであり得;好ましくはアルコール、ケトン、エステルおよび水のうちの少なくとも1つ、より好ましくはアルコールおよび水を含む。
【0078】
種々の従来の乾燥方法を、含まれる乾燥処理として使用することができ、エアブラスト乾燥、室温乾燥などが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい乾燥温度は、ポリプロピレンが溶融しない温度などであり、例えば、160℃以下である。
【0079】
本発明の第3の態様において、本発明は、本発明に係る超湿潤表面からなるか、あるいは、本発明に係る超湿潤表面を含む物品を提供する。物品は、フィルム、シート、プレートまたは成形物品、例えば、ポリプロピレン多孔質膜、ポリプロピレン平膜またはポリプロピレン中空繊維微多孔質膜、結合されるプラスチック物品、吹き付けされる食品袋の外側パッケージ、吹き付けされる自動車バンパーなどであり得る。物品は、主にポリプロピレンから構成することができる。
【0080】
本発明の第4の態様において、本発明は、結合(例えば、プラスチック物品の結合など)および吹き付け(食品袋の外側パッケージの吹き付け、および自動車バンパーの吹き付けなど)の分野、または油-水分離、水処理、生物学、医学およびエネルギーの分野における、本発明に係る超湿潤表面または前記超湿潤表面を含む物品の適用を提供する。同様に、本発明は、本発明に係る超湿潤表面または物品を使用した、結合、吹き付け、油-水分離または水処理の方法、例えば、結合されたプラスチック物品、吹き付けされた食品袋の外側パッケージ、および吹き付けされた自動車バンパーを調製するための方法を提供する。
【0081】
例えば、本発明によって得られる両親媒性ポリプロピレン多孔質膜は特に、油-水分離、水処理、生物学、医学、エネルギーなどの分野で使用することができる。
【0082】
本発明の超湿潤表面は、超親水性を達成することができ、または両親媒性を達成することさえできる。本発明は、有機酸および有機酸の誘導体などの親水性モノマーと、ポリプロピレン表面とを、開始剤を添加せずにマイクロ波照射を使用するグラフト反応に供することによって、あるいはさらなる塩化を含むことによって超湿潤表面を得、さらにはポリプロピレン自体の親油性が要因となって、この時点で親油性かつ超親水性表面が既に形成されており;任意に、ビニルシリコーンオイルなどの親油性モノマーを用いたさらなるグラフト反応を、開始剤を添加せずにマイクロ波照射を使用して実施し、それによって、超湿潤表面の親油性をさらに向上させるか、あるいは、超両親媒性表面をさらに得る。ポリプロピレンは、マイクロ波環境においてマイクロ波透過性である(マイクロ波照射下では、マイクロ波をほとんどまたは全く吸収せず、したがって、マイクロ波照射下では熱を発生しない)。グラフトモノマーとして使用される有機酸および有機酸の誘導体などのモノマーは、マイクロ波条件下でマイクロ波を吸収し、200℃以上までの温度上昇を達成し、かつフリーラジカルを生成し;同時に、高温はまた、近くのポリプロピレン分子鎖がフリーラジカルを生成することを開始させ、したがって、ポリプロピレンとの十分なグラフト反応が起こり、それによってグラフト化ポリプロピレン表面が得られるであろう。同時に、開始剤を添加しないこのようなマイクロ波グラフト反応は、開始剤を添加してグラフトする場合のポリプロピレンのβ鎖切断反応を大幅に回避することができ、それによって、ポリプロピレンの分子量を低下させない。
【0083】
有機酸またはその無水物もしくはそのエステルのうち1つの側基を用いてグラフトしたポリプロピレンが、水酸化物などの塩基とさらに反応した場合、グラフト化ポリプロピレン表面は、有機酸塩グラフト化ポリプロピレン表面となり、ポリプロピレン表面の親水性がさらに向上する。ポリプロピレン多孔質膜、ポリプロピレン平膜、ポリプロピレン中空繊維微多孔質膜などについては、水流束も大きく増加する。
【0084】
超親水性ポリプロピレン表面に対して親油性改質をさらに行う場合、ビニルシリコーンオイルなどの親油性モノマーは極性が低く、マイクロ波照射下でマイクロ波を吸収するが、一方で、温度上昇は極めて高い温度に達することはできず(マイクロ波場における温度は200℃未満まで上昇する)、近くのポリプロピレン分子鎖をフリーラジカルを生成するように効果的に開始させることができず、したがって、無機マイクロ波吸収媒体を添加することにより、ポリプロピレンがフリーラジカルを生成することを助け、それによって、ビニルシリコーンオイルとのグラフト反応に関与させる必要がある。無機マイクロ波吸収媒体はポリプロピレン表面およびモノマーと反応せず、したがって、単にグラフト反応の熱源として働き、ポリプロピレン表面の特性に影響を及ぼさない。マイクロ波を吸収しないモノマーについては、無機マイクロ波吸収媒体の添加が、それらをポリプロピレン上にグラフトすることを助けることができ;マイクロ波自体を吸収するモノマーについては、このような添加が、そのグラフト効率を増加させることに寄与することができる。本発明はマイクロ波の選択的加熱を利用して無機マイクロ波吸収媒体を加熱し、200℃以上の温度までマイクロ波下で昇温し、ポリプロピレンの融点付近に達することができる。前記温度下では、ポリプロピレンの鎖は破壊されないが、ポリプロピレンの三級炭素は脱水素化され得るので、グラフト反応は起こるが、鎖切断反応を引き起こさない。ビニルシリコーンオイルなどの親油性モノマーをグラフトした後、超親水性ポリプロピレン表面の親油性はさらに向上する。
【0085】
一方、本発明において使用されるポリプロピレン表面はマイクロ-ナノ構造を有するため、前記構造に存在する毛細管作用は表面の親水性および親油性をさらに向上させる。
【0086】
本発明の調製方法はプロセスが単純であり、操作が容易である。このような改質方法は種々のポリプロピレン表面に適しており、単純な装置を採用し、低コストを必要とし、かつ容易に工業化し得る。得られた超湿潤表面は耐久性でかつ安定な超湿潤特性を有し、残留グラフトモノマー、残留塩基、開始剤の残留物などを有さない。調製プロセスにおいて、グラフト化ポリプロピレンの分子量は減少しない。ポリプロピレン多孔質膜、ポリプロピレン平膜、ポリプロピレン中空繊維微多孔質膜などについては、グラフト改質後の膜は、大幅に増加した水流束を有するか、あるいは大幅に増加した水流束と油流束の両方を有する。
【0087】
〔実施例〕
以下、実施例と併せて本発明をさらに説明する。しかしながら、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲において説明される。
【0088】
1.測定方法
1)接触角の試験方法
KRUSS社(ドイツ)製のEASY DROP接触角試験機(測定範囲1~180°、分解能±0.1°)を使用して、動的接触角測定モードを採用し、各測定において2μLの固定量を有する脱イオン化された水滴または油滴(ホワイトオイル液滴またはピーナッツオイル液滴)を被試験表面に滴下し、算出した初期(0.5秒以内)接触角を表面の接触角測定値とし;同様の測定を6回行って平均値を算出した。測定値が機器の測定下限(1°)を下回った場合、データは0と記録した。
【0089】
ホワイトオイルはTianma(Karamay)Petroleum Companyから購入し、ピーナッツオイルはShandong Luhua Group Co.,Ltd.から購入した。
【0090】
2)表面上のグラフト化側基の含有量の測定方法:
日立製作所(日本)製のS4800走査型電子顕微鏡のエネルギースペクトル付属品を使用して、被試験表面上のグラフト化成分の主な元素の含有量を測定し、グラフトの分子式によって逆推測した表面上のグラフトの含有量を表面グラフト率とした。含有量は表面含有量(通常、物体の表面から1~2mmの厚さにおける含有量)であったので、前記含有量は出発物質中のモノマーの含有量よりも高かった。
【0091】
3)水流束および油流束の測定方法
5個の被試験表面(例えば、ポリプロピレン多孔質膜)を、凍結ミクロトームナイフを使用して外膜層から除去し、膜接合体を調製した。常圧下で、脱イオン水、クロロホルムおよびピーナッツオイルを30分間濾過に使用し、得られた値が表面または膜の水流束および油流束であった。
【0092】
4)微孔の平均孔径および平均サイズの測定方法:
走査型電子顕微鏡(日本の日立製作所製のS-4800電界放出型走査型電子顕微鏡、倍率:5000)を使用して、孔または微孔の表面を観察し、孔径データを計算し、孔径分布図をプロットして、微孔の平均孔径および平均サイズを測定した。
【0093】
空隙率は、水銀圧入計(Poremaster-33、Quantachrome、USA)を用いた水銀圧入多孔度測定(MIP)を使用して測定された。
【0094】
2.実施例および比較例において使用する出発材料および装置
1)マイクロ-ナノ構造を有するポリプロピレン表面のサンプル
表面サンプル1:Tianjin Motimo Membrane Engineering Technology Co., Ltd.製のポリプロピレン平膜(平均孔径0.8μm、空隙率80%)を使用して、その一方の側において、エポキシ樹脂接着剤(3M社製のDP100NS)を用いて膜を封止し、その他方の側において、液体窒素雰囲気中でLeica製のCM3600クライオミクロトームを用いて、外膜層を除去し、表面の微孔の平均サイズが0.8μmのポリプロピレン微多孔質膜表面サンプル1を得た。
【0095】
表面サンプル2:ポリプロピレン樹脂(T30S Qilu Petrochemical製、MI=3g/10min)を注入して厚さ1mmの5cm×5cmの薄板を得、超小型超精密マイクロフライス盤を使用してミクロン構造を有する表面を調製し、具体的には、薄板表面に沿って横方向および縦方向にそれぞれフライス加工して、平均上側表面サイズが0.5μmの表面マイクロ-ナノ構造を得た。
【0096】
表面サンプル3:ポリプロピレン樹脂(T30S Qilu Petrochemical製、MI=3g/10min)を注入して厚さ1mmの5cm×5cmの薄板を得、ナノインプリント機を使用してナノ構造を有する表面を調製し、具体的には、平均サイズが80nmの小さなくぼみおよび突出部の表面マイクロ-ナノ構造をインプリントした。
【0097】
表面サンプル4:ポリプロピレン多孔質膜(Tianjin Motimo Membrane Engineering Technology Co., Ltd.製、仕様1:平均孔径0.8μm、空隙率80%)。
【0098】
表面サンプル5:ポリプロピレン多孔質膜(Tianjin Motimo Membrane Engineering Technology Co., Ltd.製、仕様2:平均孔径0.22μm、空隙率45%)。
【0099】
2)無水マレイン酸(Xilong Science Co., Ltd.)、アクリル酸(Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.)、メタクリル酸(Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.)、水酸化ナトリウム(Xilong Science Co., Ltd.)、水酸化カリウム(Xilong Science Co., Ltd.)、水酸化カルシウム(Xilong Science Co., Ltd.)、アセトン(Xilong Science Co., Ltd.)、塩化ナトリウム(Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.)、ビニルシリコーンオイル(メチルビニルシリコーンオイル、Shandong Dayi Chemical Co., Ltd.、商品名:DY-V401、直鎖型、分子式:(CH=CH)Si(CHO[(CHSiO](CHSi(CH=CH))、ビニル水素含有シリコーンオイル(Shandong Dayi Chemical Co., Ltd.、商品名:DY-H202、分子式:(CHSiO[(CH)(H)SiO]Si(CH)、ジビニルシリコーンオイル(Shandong Dayi Chemical Co., Ltd.、商品名:DY-V421、直鎖型、分子式:(CH=CH)(CHSiO[(CHSiO][(CH=CH)(CH)SiO]Si(CH(CH=CH))、塩化ナトリウム(Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.)、酸化グラフェン(GO)の水溶液(Nanjing JCNANO Tech Co., Ltd.、濃度1重量%)、アスコルビン酸(J&K社)、ビニルトリメトキシシラン(東京化学工業(株))、およびスチレン(Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.)
種々の他の出発材料が商業的に入手可能であった。
【0100】
3)マイクロ波装置:SINEO(Sineo)多機能マイクロ波合成抽出機器、モデル:UWave-2000。
【0101】
実施例1
ポリプロピレン表面サンプル(表面サンプル1)100質量部を基準として、無水マレイン酸(5質量部)をアセトン(50質量部)に溶解して無水マレイン酸のアセトン溶液を得;水酸化ナトリウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化ナトリウム水溶液を得;無水マレイン酸のアセトン溶液をポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、無水マレイン酸とポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で5分間マイクロ波を照射し(電力700W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかった無水マレイン酸モノマーを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥した無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得;水酸化ナトリウム水溶液を乾燥した無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルと真空下で十分に接触させて混合し;水酸化ナトリウム水溶液の添加終了後、5分間さらに混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってマレイン酸ナトリウムグラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得た。
【0102】
ポリプロピレン表面サンプル100質量部を基準として、ビニルシリコーンオイル(5質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を、上記で得たマレイン酸ナトリウムグラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ビニルシリコーンオイルとマレイン酸ナトリウムグラフト化ポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物を、塩化ナトリウム水溶液と十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥した混合物に窒素雰囲気下で5分間マイクロ波を照射し(電力700W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったビニルシリコーンモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去し、次いで、得られたポリプロピレン表面サンプルを80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってマレイン酸ナトリウム側基とビニルシリコーンオイル側基とを用いてグラフトしたポリプロピレン超湿潤表面サンプルを得た。得られた超湿潤表面の水接触角および油接触角ならびに表面グラフト率のデータを、表1に示す。
【0103】
実施例2
ポリプロピレン表面サンプル(実施例1と同じ)100質量部を基準として、無水マレイン酸(5質量部)をアセトン(50質量部)に溶解して無水マレイン酸のアセトン溶液を得;水酸化ナトリウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化ナトリウム水溶液を得;無水マレイン酸のアセトン溶液をポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、無水マレイン酸とポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で5分間マイクロ波を照射し(電力700W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかった無水マレイン酸モノマーを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥した無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得;水酸化ナトリウム水溶液を乾燥した無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し;水酸化ナトリウム水溶液の添加終了後、5分間さらに混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってマレイン酸ナトリウム側基を用いてグラフトしたポリプロピレン超湿潤表面サンプルを得た。得られた超湿潤表面の水接触角および油接触角ならびに表面グラフト率のデータを、表1に示す。
【0104】
実施例3
ポリプロピレン表面サンプル(実施例1と同じ)100質量部を基準として、ビニルシリコーンオイル(9質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(4質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ビニルシリコーンオイルのエタノール溶液をポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ビニルシリコーンオイルとポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物を、水酸化ナトリウム水溶液と十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったビニルシリコーンモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってビニルシリコーンオイル側基を用いてグラフトしたポリプロピレン表面サンプルを得た。
【0105】
ポリプロピレン表面サンプル100質量部を基準として、アクリル酸(9質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してアクリル酸のアセトン溶液を得;水酸化カリウム(6質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カリウム水溶液を得;アクリル酸のアセトン溶液をグラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、アクリル酸とグラフト化ポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったアクリル酸モノマーを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、アクリル酸とビニルシリコーンオイルとを用いてグラフトした乾燥したグラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得;水酸化カリウム水溶液を、アクリル酸とビニルシリコーンオイルとを用いてグラフトした乾燥したグラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、水酸化カリウム水溶液の添加終了後、5分間さらに混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってアクリル酸カリウム側基とビニルシリコーンオイル側基とを用いてグラフトしたポリプロピレン超湿潤表面サンプルを得た。得られた超湿潤表面の水接触角および油接触角ならびに表面グラフト率のデータを、表1に示す。
【0106】
実施例4
ポリプロピレン表面サンプル(実施例1と同じ)100質量部を基準として、アクリル酸(9質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してアクリル酸のアセトン溶液を得;水酸化カリウム(6質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カリウム水溶液を得;アクリル酸のアセトン溶液をポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、アクリル酸とポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったアクリル酸モノマーを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したアクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得;水酸化カリウム水溶液を、乾燥したアクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し;水酸化カリウム水溶液の添加終了後、5分間さらに混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってアクリル酸カリウム側基を用いてグラフトしたポリプロピレン超湿潤表面サンプルを得た。得られた超湿潤表面の水接触角および油接触角ならびに表面グラフト率のデータを、表1に示す。
【0107】
比較例1
ポリプロピレン表面サンプル(実施例1と同じ)を直接的に試験し、ポリプロピレン表面の水接触角および油接触角のデータを表1に示す。
【0108】
実施例5
ポリプロピレン表面サンプル(表面サンプル2)100質量部を基準として、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(10質量部)をアセトン(50質量部)に溶解して2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアセトン溶液を得;水酸化カリウム(6質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カリウム水溶液を得;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し;次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかった2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸モノマーを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥した2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得;水酸化カリウム水溶液を、乾燥した2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルと真空下で十分に接触させて混合し;水酸化カリウム水溶液の添加終了後、5分間さらに混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによって2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸カリウムを用いてグラフトしたポリプロピレン表面サンプルを得た。
【0109】
ポリプロピレン表面サンプル100質量部を基準として、ビニル水素含有シリコーンオイル(9質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してビニル水素含有シリコーンオイルのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(4質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ビニル水素含有シリコーンオイルのエタノール溶液を、上記の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸カリウムを用いてグラフトしたポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ビニル水素含有シリコーンオイルとグラフト化ポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物を、塩化ナトリウム水溶液と十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったビニル水素含有シリコーンオイルモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ;それによって2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸カリウム側基とビニル水素含有シリコーンオイル側基とを用いてグラフトした超湿潤表面サンプルを得た。得られた超湿潤表面の水接触角および油接触角ならびに表面グラフト率のデータを、表1に示す。
【0110】
実施例6
ポリプロピレン表面サンプル(実施例5と同じ)100質量部を基準として、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(10質量部)をアセトン(50質量部)に溶解して2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアセトン溶液を得;水酸化カリウム(6質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カリウム水溶液を得;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかった2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸モノマーを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥した2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得;水酸化カリウム水溶液を、乾燥した2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸グラフト化ポリプロプレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し;水酸化カリウム水溶液の添加終了後、5分間さらに混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによって2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸カリウム側基を用いてグラフトした超湿潤表面サンプルを得た。得られた超湿潤表面の水接触角および油接触角ならびに表面グラフト率のデータを、表1に示す。
【0111】
実施例7
ポリプロピレン表面サンプル(実施例5と同じ)100質量部を基準として、メタクリル酸(10質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してメタクリル酸のアセトン溶液を得;水酸化カルシウム(8質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カルシウム水溶液を得;メタクリル酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、メタクリル酸とポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で1分間マイクロ波を照射し(電力2000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメタクリル酸モノマーを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得;水酸化カルシウム水溶液を、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し;水酸化カルシウム水溶液の添加終了後、5分間さらに混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってメタクリル酸カルシウムグラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得た。
【0112】
ポリプロピレン表面サンプル100質量部を基準として、ジビニルシリコーンオイル(8質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してジビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(6質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ジビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を、上記のメタクリル酸カリウムグラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ジビニルシリコーンオイルとグラフト化ポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物を、塩化ナトリウム水溶液と十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥した混合物に窒素雰囲気下で1分間マイクロ波を照射し(電力2000W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったジビニルシリコーンオイルモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ;メタクリル酸カルシウム側基とジビニルシリコーンオイル側基とを用いてグラフトしたポリプロピレン超湿潤表面サンプルを得た。得られた超湿潤表面の水接触角および油接触角ならびに表面グラフト率のデータを、表1に示す。
【0113】
実施例8
ポリプロピレン表面サンプル(実施例5と同じ)100質量部を基準として、メタクリル酸(10質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してメタクリル酸のアセトン溶液を得;水酸化カルシウム(8質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カルシウム水溶液を得;メタクリル酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、メタクリル酸とポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で1分間マイクロ波を照射し(電力2000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメタクリル酸モノマーを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得;水酸化カルシウム水溶液を、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し;水酸化カルシウム水溶液の添加終了後、5分間さらに混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってメタクリル酸カルシウム側基を用いてグラフトしたポリプロピレン超湿潤表面サンプルを得た。得られた超湿潤表面の水接触角および油接触角ならびに表面グラフト率のデータを、表1に示す。
【0114】
比較例2
ポリプロピレン表面サンプル(実施例5と同じ)を直接的に試験し、ポリプロピレン表面の水接触角および油接触角のデータを表1に示す。
【0115】
実施例9
ポリプロピレン表面サンプル(表面サンプル3)100質量部を基準として、メタクリル酸(6質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してメタクリル酸のアセトン溶液を得;メタクリル酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、メタクリル酸とポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメタクリル酸モノマーを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得た。
【0116】
ポリプロピレン表面サンプル100質量部を基準として、ジビニルシリコーンオイル(10質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してジビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(6質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ジビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を、上記のメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ジビニルシリコーンオイルとグラフト化ポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物を、塩化ナトリウム水溶液と十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったジビニルシリコーンオイルモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ;メタクリル酸とジビニルシリコーンオイルとを用いてグラフトしたポリプロピレン超湿潤表面サンプルを得た。得られた超湿潤表面の水接触角および油接触角ならびに表面グラフト率のデータを、表1に示す。
【0117】
実施例10
ポリプロピレン表面サンプル(実施例9と同じ)100質量部を基準として、メタクリル酸(1質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してメタクリル酸のアセトン溶液を得;メタクリル酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、メタクリル酸とポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメタクリル酸モノマーを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得た。
【0118】
ポリプロピレン表面サンプル100質量部を基準として、メチルビニルシリコーンオイル(2質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してメチルビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を得;酸化グラフェン(GO)の水溶液(10質量部)とアスコルビン酸(1質量部)とを脱イオン水(50質量部)に溶解して、酸化グラフェン(GO)の分散液を得;メチルビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を、上記のメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、メチルビニルシリコーンオイルとグラフト化ポリプロピレン表面サンプルとの混合物の乾燥した粉末を、酸化グラフェン(GO)の分散液と十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ)、ここで、酸化グラフェンと、アスコルビン酸と、脱イオン水とを混合することで酸化グラフェンの分散液を形成し、酸化グラフェンの分散液をメチルビニルシリコーンオイルとグラフト化ポリプロピレン表面サンプルとの混合物と混合し、80℃で炉乾燥させ、酸化グラフェンの還元剤としてアスコルビン酸を作用させて、酸化グラフェンをグラフェンに還元し、ここで、グラフェンは、マイクロ波照射による後のグラフト工程のマイクロ波吸収媒体であり;乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメチルビニルシリコーンオイルモノマーおよび酸化グラフェンを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ;メタクリル酸側基とメチルビニルシリコーンオイル側基とを用いてグラフトしたポリプロピレン超湿潤表面サンプルを得た。得られた超湿潤表面の水接触角および油接触角ならびに表面グラフト率のデータを、表1に示す。
【0119】
実施例11
ポリプロピレン表面サンプル(実施例9と同じ)100質量部を基準として、メタクリル酸(7質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してメタクリル酸のアセトン溶液を得;メタクリル酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、メタクリル酸とポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメタクリル酸モノマーを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得た。
【0120】
ポリプロピレン表面サンプル100質量部を基準として、メチルビニルシリコーンオイル(8質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してメチルビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を得;酸化グラフェン(GO)の水溶液(3質量部)とアスコルビン酸(0.3質量部)とを脱イオン水(50質量部)に溶解して、酸化グラフェン(GO)の分散液を得;メチルビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を、上記のメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、メチルビニルシリコーンオイルとグラフト化ポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物を、酸化グラフェン(GO)の分散液と十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ)、ここで、酸化グラフェンと、アスコルビン酸と、脱イオン水とを混合することで酸化グラフェンの分散液を形成し、酸化グラフェンの分散液をメチルビニルシリコーンオイルとグラフト化ポリプロピレン表面サンプルとの混合物と混合し、80℃で炉乾燥させ、酸化グラフェンの還元剤としてアスコルビン酸を作用させて、酸化グラフェンをグラフェンに還元し、グラフェンは、マイクロ波照射による後のグラフト工程のマイクロ波吸収媒体であり;乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメチルビニルシリコーンオイルモノマーおよび酸化グラフェンを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ;メタクリル酸とメチルビニルシリコーンオイルとを用いてグラフトしたポリプロピレン超湿潤表面サンプルを得た。得られた超湿潤表面の水接触角および油接触角のデータを、表1に示す。
【0121】
実施例12
ポリプロピレン表面サンプル(実施例9と同じ)100質量部を基準として、ビニルトリメトキシシラン(9質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してビニルトリメトキシシランのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(3質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ビニルトリメトキシシランのエタノール溶液を、ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、ビニルトリメトキシシランとポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物を、塩化ナトリウム水溶液と十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ビニルトリメトキシシランとポリプロピレン表面サンプルとの乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったビニルトリメトキシシランモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したビニルトリメトキシシラングラフト化ポリプロピレン表面サンプルを得た。
【0122】
ポリプロピレン表面サンプル100質量部を基準として、スチレン(8質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してスチレンのエタノール溶液を得;酸化グラフェン(GO)の水溶液(4質量部)とアスコルビン酸(0.4質量部)とを脱イオン水(50質量部)に溶解して、酸化グラフェン(GO)の分散液を得;スチレンのエタノール溶液を、上記のスチレングラフト化ポリプロピレン表面サンプルに真空下で添加して、それらを十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、スチレンとグラフト化ポリプロピレン表面サンプルとの混合物の乾燥した粉末を、酸化グラフェン(GO)の分散液と十分に接触させて混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ)、ここで、酸化グラフェンと、アスコルビン酸と、脱イオン水とを混合することで酸化グラフェンの分散液を形成し、酸化グラフェンの分散液をスチレンとグラフト化ポリプロピレン表面サンプルとの混合物と混合し、80℃で炉乾燥させ、酸化グラフェンの還元剤としてアスコルビン酸を作用させて、酸化グラフェンをグラフェンに還元し、ここで、グラフェンは、マイクロ波照射による後のグラフト工程のマイクロ波吸収媒体であり;乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったスチレンモノマーおよび酸化グラフェンを確実に除去した後、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ;ビニルトリメトキシシランとスチレンとを用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン表面サンプルを得た。得られた両親媒性ポリプロピレン表面の水接触角および油接触角ならびに表面グラフト率のデータを、表1に示す。
【0123】
比較例3
ポリプロピレン表面サンプル(実施例9と同じ)を直接的に試験し、ポリプロピレン表面の水接触角および油接触角のデータを表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
表1から、本発明に係るポリプロピレン表面の親水性グラフト改質またはさらなる親油性グラフト改質の後に得られた超湿潤表面は、改質されていないポリプロピレン表面と比較して親水性および親油性の大幅な向上を達成し、また、前記超湿潤表面は、超親水性、親油性、あるいは場合によっては超親水性および超親油性の両方(超両親媒性)までも達成した(これは、ポリプロピレン表面の非常に有効な両親媒性改質が達成されたことを示す)ことがわかり得る。
【0126】
実施例13
ポリプロピレン多孔質膜(仕様1:平均孔径0.8μm、空隙率80%;表面サンプル4)100質量部を基準として、無水マレイン酸(5質量部)をアセトン(50質量部)に溶解して無水マレイン酸のアセトン溶液を得;水酸化ナトリウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化ナトリウム水溶液を得;無水マレイン酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、無水マレイン酸とポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物に窒素雰囲気下で5分間マイクロ波を照射し(電力700W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかった無水マレイン酸モノマーを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥した無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得;水酸化ナトリウム水溶液を、乾燥した無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜と真空下で攪拌しながら十分に混合し;水酸化ナトリウム水溶液の添加終了後、5分間、さらに攪拌しながら混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってマレイン酸ナトリウムグラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得た。
【0127】
ポリプロピレン多孔質膜100質量部を基準として、ビニルシリコーンオイル(5質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を、上記で得たマレイン酸ナトリウムグラフト化ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ビニルシリコーンオイルとマレイン酸ナトリウムグラフト化ポリプロピレン多孔質膜との混合物の乾燥した粉末を、塩化ナトリウム水溶液と十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥した混合物に窒素雰囲気下で5分間マイクロ波を照射し(電力700W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったビニルシリコーンモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去し、次いで、得られたポリプロピレン多孔質膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、マレイン酸ナトリウム側基とビニルシリコーンオイル側基とを用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。得られた両親媒性ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角、水流束および油流束、ならびに表面グラフト率のデータを、表2に示す。
【0128】
実施例14
ポリプロピレン多孔質膜(実施例13と同じ)100質量部を基準として、無水マレイン酸(5質量部)をアセトン(50質量部)に溶解して無水マレイン酸のアセトン溶液を得;水酸化ナトリウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化ナトリウム水溶液を得;無水マレイン酸のアセトン溶液をポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、無水マレイン酸とポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物に窒素雰囲気下で5分間マイクロ波を照射し(電力700W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかった無水マレイン酸モノマーを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥した無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得;水酸化ナトリウム水溶液を乾燥した無水マレイン酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜に真空下で攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し;水酸化ナトリウム水溶液の添加終了後、5分間、さらに攪拌しながら混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってマレイン酸ナトリウム側基を用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。得られた両親媒性ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角、水流束および油流束、ならびに表面グラフト率のデータを、表2に示す。
【0129】
実施例15
ポリプロピレン多孔質膜(実施例13と同じ)100質量部を基準として、ビニルシリコーンオイル(10質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ビニルシリコーンオイルのエタノール溶液をポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ビニルシリコーンオイルとポリプロピレン多孔質膜との混合物の乾燥した粉末を、塩化ナトリウム水溶液と十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったビニルシリコーンモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってビニルシリコーンオイル側基を用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。
【0130】
ポリプロピレン多孔質膜100質量部を基準として、アクリル酸(10質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してアクリル酸のアセトン溶液を得;水酸化カリウム(8質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カリウム水溶液を得;アクリル酸のアセトン溶液を、上記のビニルシリコーンオイル側基を用いてグラフトしたポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、アクリル酸とグラフト化ポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったアクリル酸モノマーを確実に除去し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、アクリル酸とビニルシリコーンオイルとを用いてグラフトした乾燥したポリプロピレン多孔質膜を得;水酸化カリウム水溶液を、アクリル酸とビニルシリコーンオイルとを用いてグラフトした乾燥したポリプロピレン多孔質膜に真空下で攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し;水酸化カリウム水溶液の添加終了後、5分間、さらに攪拌しながら混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってアクリル酸カリウム側基とビニルシリコーンオイル側基とを用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。得られた両親媒性ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角、水流束および油流束、ならびに表面グラフト率のデータを、表2に示す。
【0131】
実施例16
ポリプロピレン多孔質膜(実施例13と同じ)100質量部を基準として、アクリル酸(10質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してアクリル酸のアセトン溶液を得;水酸化カリウム(8質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カリウム水溶液を得;アクリル酸のアセトン溶液をポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、アクリル酸とポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったアクリル酸モノマーを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したアクリル酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得;水酸化カリウム水溶液を、乾燥したアクリル酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜に真空下で攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し;水酸化カリウム水溶液の添加終了後、5分間、さらに攪拌しながら混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってアクリル酸カリウム側基を用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。得られた両親媒性ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角、水流束および油流束、ならびに表面グラフト率のデータを、表2に示す。
【0132】
比較例4
ポリプロピレン多孔質膜(実施例13と同じ)を直接的に試験し、ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角ならびに水流束および油流束のデータを、表2に示す。
【0133】
実施例17
ポリプロピレン多孔質膜(仕様2:平均孔径0.65μm、空隙率70%;表面サンプル5)100質量部を基準として、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(10質量部)をアセトン(50質量部)に溶解して2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアセトン溶液を得;水酸化カリウム(8質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カリウム水溶液を得;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し;次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかった2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸モノマーを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥した2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得;水酸化カリウム水溶液を、乾燥した2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜と真空下で攪拌しながら十分に混合し;水酸化カリウム水溶液の添加終了後、5分間、さらに攪拌しながら混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによって2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸カリウムグラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得た。
【0134】
ポリプロピレン多孔質膜100質量部を基準として、ビニル水素含有シリコーンオイル(10質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してビニル水素含有シリコーンオイルのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ビニル水素含有シリコーンオイルのエタノール溶液を、上記の2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸カリウムグラフト化ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ビニル水素含有シリコーンオイルとポリプロピレン多孔質膜との混合物の乾燥した粉末を、塩化ナトリウム水溶液と十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったビニル水素含有シリコーンオイルモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ;それによって2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム側基とビニル水素含有シリコーンオイル側基とを用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。得られた両親媒性ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角、水流束および油流束、ならびに表面グラフト率のデータを、表2に示す。
【0135】
実施例18
ポリプロピレン多孔質膜(実施例17と同じ)100質量部を基準として、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(10質量部)をアセトン(50質量部)に溶解して2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアセトン溶液を得;水酸化カリウム(8質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カリウム水溶液を得;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物に窒素雰囲気下で3分間マイクロ波を照射し(電力1000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかった2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸モノマーを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥した2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得;水酸化カリウム水溶液を、乾燥した2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸グラフト化ポリプロプレン多孔質膜に真空下で攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し;水酸化カリウム水溶液の添加終了後、5分間、さらに攪拌しながら混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによって2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸カリウム側基を用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。得られた両親媒性ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角、水流束および油流束、ならびに表面グラフト率のデータを、表2に示す。
【0136】
実施例19
ポリプロピレン多孔質膜(実施例17と同じ)100質量部を基準として、メタクリル酸(8質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してメタクリル酸のアセトン溶液を得;水酸化カルシウム(6質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カルシウム水溶液を得;メタクリル酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、メタクリル酸とポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物に窒素雰囲気下で1分間マイクロ波を照射し(電力2000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメタクリル酸モノマーを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得;水酸化カルシウム水溶液を、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜に真空下で攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し;水酸化カルシウム水溶液の添加終了後、5分間、さらに攪拌しながら混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってメタクリル酸カルシウムグラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得た。
【0137】
ポリプロピレン多孔質膜100質量部を基準として、ジビニルシリコーンオイル(10質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してジビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ジビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を、上記のメタクリル酸カルシウムグラフト化ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ジビニルシリコーンオイルとグラフト化ポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物を、塩化ナトリウム水溶液と十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥した混合物に窒素雰囲気下で1分間マイクロ波を照射し(電力2000W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったジビニルシリコーンオイルモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってメタクリル酸カルシウム側基とジビニルシリコーンオイル側基とを用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。得られた両親媒性ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角、水流束および油流束、ならびに表面グラフト率のデータを、表2に示す。
【0138】
実施例20
ポリプロピレン多孔質膜(実施例17と同じ)100質量部を基準として、メタクリル酸(8質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してメタクリル酸のアセトン溶液を得;水酸化カルシウム(6質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カルシウム水溶液を得;メタクリル酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、メタクリル酸とポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物に窒素雰囲気下で1分間マイクロ波を照射し(電力2000W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメタクリル酸モノマーを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得;水酸化カルシウム水溶液を、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜に真空下で攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し;水酸化カルシウム水溶液の添加終了後、5分間、さらに攪拌しながら混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってメタクリル酸カルシウム側基を用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。得られた両親媒性ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角、水流束および油流束、ならびに表面グラフト率のデータを、表2に示す。
【0139】
実施例21
ポリプロピレン多孔質膜(実施例17と同じ)100質量部を基準として、メタクリル酸(8質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してメタクリル酸のアセトン溶液を得;メタクリル酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、メタクリル酸とポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメタクリル酸モノマーを確実に除去し、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得た。
【0140】
ポリプロピレン多孔質膜100質量部を基準として、ジビニルシリコーンオイル(10質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してジビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ジビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を、上記のメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ジビニルシリコーンオイルとグラフト化ポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物を、塩化ナトリウム水溶液と十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったジビニルシリコーンオイルモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってメタクリル酸側基とジビニルシリコーンオイル側基とを用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。得られた両親媒性ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角、水流束および油流束、ならびに表面グラフト率のデータを、表2に示す。
【0141】
実施例22
ポリプロピレン多孔質膜(実施例17と同じ)100質量部を基準として、メタクリル酸(8質量部)をアセトン(50質量部)に溶解してメタクリル酸のアセトン溶液を得;水酸化カルシウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して水酸化カルシウム水溶液を得;メタクリル酸のアセトン溶液を、ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、メタクリル酸とポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメタクリル酸モノマーを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得た。水酸化カルシウム水溶液を、乾燥したメタクリル酸グラフト化ポリプロピレン多孔質膜に真空下で攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し;水酸化カルシウム水溶液の添加終了後、5分間、さらに攪拌しながら混合および反応を続けた。反応終了後、上記と同じ洗浄ステップに従って、脱イオン水を用いて反応生成物を洗浄し、次いで、80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、それによってメタクリル酸カルシウムグラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得た。
【0142】
ポリプロピレン多孔質膜100質量部を基準として、メチルビニルシリコーンオイル(10質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してメチルビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を得;酸化グラフェン(GO)の水溶液(5質量部)とアスコルビン酸(0.5質量部)とを脱イオン水(50質量部)に溶解して、酸化グラフェン(GO)の分散液を得;メチルビニルシリコーンオイルのエタノール溶液を、上記のメタクリル酸カルシウムグラフト化ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、メチルビニルシリコーンオイルとグラフト化ポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物を、酸化グラフェン(GO)の分散液と十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ)、ここで、酸化グラフェンと、アスコルビン酸と、脱イオン水とを混合することで酸化グラフェンの分散液を形成し;酸化グラフェンの分散液をメチルビニルシリコーンオイルとグラフト化ポリプロピレン多孔質膜との混合物と混合し、80℃で炉乾燥させ、酸化グラフェンの還元剤としてアスコルビン酸を作用させて、酸化グラフェンをグラフェンに還元し、ここで、グラフェンは、マイクロ波照射による後のグラフト工程のマイクロ波吸収媒体であり;上記の乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったメチルビニルシリコーンオイルモノマーおよび酸化グラフェンを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ;メタクリル酸カルシウムとメチルビニルシリコーンオイルとを用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。得られた両親媒性ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角、水流束および油流束、ならびに表面グラフト率のデータを、表2に示す。
【0143】
実施例23
ポリプロピレン多孔質膜(実施例17と同じ)100質量部を基準として、ビニルトリメトキシシラン(10質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してビニルトリメトキシシランのエタノール溶液を得;塩化ナトリウム(5質量部)を脱イオン水(50質量部)に溶解して塩化ナトリウム水溶液を得;ビニルトリメトキシシランのエタノール溶液を、ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させた(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させた)。乾燥後、ビニルトリメトキシシランとポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物を、塩化ナトリウム水溶液と十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、ビニルトリメトキシシランとポリプロピレン多孔質膜との乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の生成物を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったビニルトリメトキシシランモノマーおよび塩化ナトリウムを確実に除去し、次いで、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ、乾燥したビニルトリメトキシシラングラフト化ポリプロピレン多孔質膜を得た。
【0144】
ポリプロピレン多孔質膜100質量部を基準として、スチレン(10質量部)をエタノール(50質量部)に溶解してスチレンのエタノール溶液を得;酸化グラフェン(GO)の水溶液(5質量部)とアスコルビン酸(0.5質量部)とを脱イオン水(50質量部)に溶解して、酸化グラフェン(GO)の分散液を得;スチレンのエタノール溶液を、上記のスチレングラフト化ポリプロピレン多孔質膜に真空下で機械的攪拌しながら添加して、それらを十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ);乾燥後、スチレンとグラフト化ポリプロピレン多孔質膜との混合物の乾燥した粉末を、酸化グラフェン(GO)の分散液と十分に混合し、次いで、混合物を乾燥させ(80℃のブラスト乾燥炉で乾燥させ)、ここで、酸化グラフェンと、アスコルビン酸と、脱イオン水とを混合することで酸化グラフェンの分散液を形成し;酸化グラフェンの分散液をスチレンとグラフト化ポリプロピレン多孔質膜との混合物と混合し、80℃で炉乾燥させ、酸化グラフェンの還元剤としてアスコルビン酸を作用させて、酸化グラフェンをグラフェンに還元し、ここで、グラフェンは、マイクロ波照射による後のグラフト工程のマイクロ波吸収媒体であり;乾燥した混合物に窒素雰囲気下で30分間マイクロ波を照射し(電力500W);マイクロ波照射終了後の材料を脱イオン水に10分間浸漬し、脱イオン水を3回繰り返し置換して、グラフト反応に関与しなかったスチレンモノマーおよび酸化グラフェンを確実に除去し、前記膜を80℃のブラスト乾燥炉に入れて乾燥させ;ビニルトリメトキシシランとスチレンとを用いてグラフトした両親媒性ポリプロピレン多孔質膜を得た。得られた両親媒性ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角、水流束および油流束、ならびに表面グラフト率のデータを、表2に示す。
【0145】
比較例5
ポリプロピレン多孔質膜(実施例17と同じ)を直接的に試験し、ポリプロピレン多孔質膜の水接触角および油接触角ならびに水流束および油流束のデータを表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
表2から、本発明に係るポリプロピレン多孔質膜の親水性グラフト改質またはさらなる親油性グラフト改質の後に得られた超湿潤表面は、改質されていないポリプロピレン多孔質膜と比較して、水流束および油流束の両方において大幅な増加を達成し、また、改質されたポリプロピレン多孔質膜は、超親水性、親油性、あるいは場合によっては超親水性および超親油性の両方までも達成した(これは、ポリプロピレン多孔質膜の非常に有効な両親媒性改質が達成されたことを示す)ことがわかり得る。