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特許7602542環境適合性洗剤によるウイルス不活化のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】環境適合性洗剤によるウイルス不活化のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/16 20060101AFI20241211BHJP
   A01N 43/16 20060101ALI20241211BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20241211BHJP
【FI】
A61L2/16
A01N43/16 A
A01P1/00
【請求項の数】 51
(21)【出願番号】P 2022535730
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-16
(86)【国際出願番号】 US2020063531
(87)【国際公開番号】W WO2021118900
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-07-12
(31)【優先権主張番号】62/947,276
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100221523
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 渉
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ウェン
(72)【発明者】
【氏名】オドネル,ショーン マイケル
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-501974(JP,A)
【文献】国際公開第2019/121846(WO,A1)
【文献】特開2012-197335(JP,A)
【文献】特表平07-500322(JP,A)
【文献】特開平02-145696(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0312917(US,A1)
【文献】特開2020-189919(JP,A)
【文献】国際公開第2014/004103(WO,A1)
【文献】特開平10-234362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/16
A01N 43/16
A01P 1/00
C11D 1/72
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスを供給流中で不活化するための方法であって、環境適合性洗剤を、0.05w/w%~1w/w%の最終濃度で前記供給流に添加することを含み、前記環境適合性洗剤が、50%以上のウンデシルアルキルグリコシドを含み、前記供給流が、収集した細胞培養液、タンパク質Aプール、タンパク質Gプール、タンパク質Lプールアフィニティークロマトグラフィープール、または混合モードクロマトグラフィープールである、方法。
【請求項2】
前記洗剤が、53%~57%のウンデシルアルキルグリコシドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記洗剤が、10%未満のデシルアルキルグリコシドを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記洗剤が、SIMULSOL(登録商標)SL11Wである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記洗剤が、ウンデシルアルキルグリコシドである、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記洗剤が、0.1w/w%~1w/w%の濃度で前記供給流に添加される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記洗剤が、0.3w/w%の最終濃度で前記供給流に添加される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記洗剤を添加している間、前記供給流が、15℃~30℃の温度にある、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記洗剤を添加している間、前記供給流が、15℃~20℃の温度にある、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記洗剤を添加している間、前記供給流が、5.5~8.0のpHにある、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記洗剤を、前記供給流中で1分~180分間インキュベートする工程をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
インキュベートする前記工程後に、前記洗剤が、1以上または2以上の前記供給流中のウイルス対数減少係数(LRF)を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ウイルスが、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、またはトガウイルスである、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記供給流と前記洗剤とを、4℃~30℃の温度および5.5~8.0のpHで60分~180分間インキュベートする工程をさらに含み、前記洗剤が、0.3w/w%の最終濃度で前記供給流に添加され、前記洗剤が、前記供給流中で5以上のウイルス対数減少係数(LRF)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記洗剤を含有する前記供給流を濾過する工程をさらに含み、前記供給流が、少なくとも1つの濾過工程に供される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記供給流が、少なくとも第2の濾過工程に供される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記濾過された供給流をアフィニティークロマトグラフィーカラムに供する工程をさらに含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記アフィニティークロマトグラフィーカラムが、タンパク質Aカラムである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記洗剤を含有する前記供給流が、アフィニティークロマトグラフィーに供される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記供給流が、タンパク質を含み、前記タンパク質が、抗体、Fc融合タンパク質、イムノアドヘシン、酵素、増殖因子、受容体、ホルモン、調節因子、サイトカイン、抗原、ペプチド、または結合剤である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、哺乳動物細胞中で生成されるモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、または抗体フラグメントである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記洗剤を前記供給流に添加することが、前記供給流の濁度を著しく変化させず、かつ前記洗剤を前記供給流に添加することが、精製された供給流タンパク質の最終製品品質を変化させない、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記洗剤が、安定剤を含有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記安定剤が、モノプロピレングリコールである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ウイルスを供給流中で不活化するための方法であって、環境適合性洗剤を、0.05w/w%~1w/w%の最終濃度で前記供給流に添加することを含み、前記環境適合性洗剤が、40%以上のウンデシルアルキルグリコシドおよび1~5%のプロパン-1,2-ジオールを含む水溶液であり、前記供給流が、収集した細胞培養液、タンパク質Aプール、タンパク質Gプール、タンパク質Lプールアフィニティークロマトグラフィープール、または混合モードクロマトグラフィープールである、方法。
【請求項26】
前記洗剤が、40%~60%のウンデシルアルキルグリコシドを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記洗剤が、53%~57%のウンデシルアルキルグリコシドを含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記洗剤が、50%以上のウンデシルアルキルグリコシドを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記洗剤が、10%未満のデシルアルキルグリコシドを含む、請求項25~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記洗剤が、SIMULSOL(登録商標)SL11Wである、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記洗剤が、ウンデシルアルキルグリコシドである、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記洗剤が、0.1w/w%~1w/w%の濃度で前記供給流に添加される、請求項25~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記洗剤が、0.3w/w%の最終濃度で前記供給流に添加される、請求項25~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記洗剤を添加している間、前記供給流が、15℃~30℃の温度にある、請求項25~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記洗剤を添加している間、前記供給流が、15℃~20℃の温度にある、請求項25~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記洗剤を添加している間、前記供給流が、5.5~8.0のpHにある、請求項25~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記洗剤を、前記供給流中で1分~180分間インキュベートする工程をさらに含む、請求項25~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
インキュベートする前記工程後に、前記洗剤が、1以上または2以上の前記供給流中のウイルス対数減少係数(LRF)を有する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ウイルスが、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、またはトガウイルスである、請求項25~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記供給流と前記洗剤とを、4℃~30℃の温度および5.5~8.0のpHで60分~180分間インキュベートする工程をさらに含み、前記洗剤が、0.3w/w%の最終濃度で前記供給流に添加され、前記洗剤が、前記供給流中で5以上のウイルス対数減少係数(LRF)を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項41】
前記洗剤を含有する前記供給流を濾過する工程をさらに含み、前記供給流が、少なくとも1つの濾過工程に供される、請求項25~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記供給流が、少なくとも第2の濾過工程に供される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記濾過された供給流をアフィニティークロマトグラフィーカラムに供する工程をさらに含む、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記アフィニティークロマトグラフィーカラムが、タンパク質Aカラムである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記洗剤を含有する前記供給流が、アフィニティークロマトグラフィーに供される、請求項25~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記供給流が、タンパク質を含み、前記タンパク質が、抗体、Fc融合タンパク質、イムノアドヘシン、酵素、増殖因子、受容体、ホルモン、調節因子、サイトカイン、抗原、ペプチド、または結合剤である、請求項25~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記抗体が、哺乳動物細胞中で生成されるモノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、または抗体フラグメントである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記洗剤を前記供給流に添加することが、前記供給流の濁度を著しく変化させず、かつ前記洗剤を前記供給流に添加することが、精製された供給流タンパク質の最終製品品質を変化させない、請求項25~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記洗剤が、安定剤を含有する、請求項25~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記安定剤が、モノプロピレングリコールである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
ウイルスを供給流中で不活化するための方法であって、
前記供給流に、0.1w/w%~0.3w/w%の濃度でSIMULSOL(登録商標)SL11Wを添加する工程、
前記供給流中の前記SIMULSOL(登録商標)SL11Wを180分間インキュベートする工程であって、前記供給流中のSIMULSOL(登録商標)SL11Wのウイルス対数減少係数(LRF)が5以上である、インキュベートする工程、
前記SIMULSOL(登録商標)SL11Wを含有する前記供給流を濾過する工程、次いで
前記濾過された供給流を、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーカラムに供する工程
を含み、前記添加およびインキュベート工程が、前記供給流を4℃~30℃の温度および5.5~8.0のpHで行われ、前記供給流が、収集した細胞培養液、タンパク質Aプール、タンパク質Gプール、タンパク質Lプール、アフィニティークロマトグラフィープール、または混合モードクロマトグラフィープールである、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えタンパク質製造の分野に関する。より具体的には、本発明は、治療用または診断用タンパク質などの、患者への投与を目的としたタンパク質の製造方法において、ウイルスを供給流中で不活化するための方法を提供する。本発明はさらに、本発明の環境適合性洗剤が抗ウイルス活性を効果的に提供し、治療用または診断用タンパク質の製品品質を維持する方法を提供する。この方法は、例えば、Triton X-100を使用する方法、および/または洗剤を使用しない方法と比較して、重要な実世界の生物学的製品製造の利点を提供する。
【背景技術】
【0002】
洗剤は、最終的な生物学的製品の安全性を確保するための治療用または診断用タンパク質の製造方法における重要な試薬である。最終的な生物学的製品のウイルス汚染は、例えば、供給源の細胞株自体の汚染から、またはさまざまな製造段階でのウイルスの偶発的な混入から生じる深刻な臨床的結果をもたらす可能性がある。したがって、洗剤は、治療用または診断用タンパク質の製造方法中に供給流に存在するウイルス汚染物質を除去する目的で使用される。目的のタンパク質を精製した後、製品の製造および精製プロセスで使用される増殖培地および緩衝液が不活化され、廃水として排出される。しかしながら、製造および精製プロセスで使用される洗剤を含有するこのような排出物は、洗剤についての環境リスク評価(ERA)によって推定されるように、環境への懸念を引き起こす場合がある。
【0003】
治療用または診断用タンパク質などのバイオ製品の製造方法でウイルスを不活化するための現在の方法は、洗剤Triton X-100の使用に大きく依存している。Triton X-100は、ポリオキシエチレンエーテルであり、通常、さまざまな実験条件下で4ログ以上の強力なエンベロープウイルス不活化を実現する。しかしながら、Triton X-100の分解生成物である4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(別名4-tert-オクチルフェノール)は、エストロゲン作用の可能性を含め、野生生物に対する潜在的な環境毒素として特定されている。したがって、廃棄物の流れからの4-tert-オクチルフェノールの除去が望まれるが、複雑で、長く、費用のかかる手段を必要とすることになる。したがって、毒性の懸念から、EU-REACH委員会は、EUで禁止されている物質のリストであるAnnex XIVにTriton X-100を追加し、2021年以降の組換えタンパク質製造でのTriton X-100の使用を禁止することを決定した。生物製剤の製造においてTriton X-100に代わる代替薬剤は十分に確立されていない。したがって、Triton X-100を組み込んだ方法よりも環境毒性が低い治療用または診断用タンパク質などの生物製剤の製造方法中に、ウイルスを効果的に不活化するための方法が、緊急かつ一刻を争う状況下で求められている。
【0004】
タンパク質の製造方法において、ウイルス、特にエンベロープウイルスを不活化するためのTriton X-100の環境適合性のある代替物が、WO2019/121846およびWO2015/073633などで検討されてきた。しかしながら、ウイルスの不活化にさまざまな洗剤を使用した場合の影響は一定ではない。一部の洗剤は、不溶性のため、または供給流から除去するのが難しいため、製造方法での使用に適していない。さらに、いくつかの洗剤は、供給流の濁度および/または泡立ちを増加させ、したがって、供給流の濁度および/または泡立ちを減少させるための追加の手段を必要とする。他の洗剤は、広い温度およびpH範囲では効果がなく、ウイルスの不活化にはより高い濃度が必要である。これらのバリエーションの組み合わせは、タンパク質の製造方法に追加のコストおよび時間をもたらす可能性がある。さらに、さまざまな種類およびサイズのタンパク質の製造供給流における多くの洗剤の有効性は十分ではない。
【0005】
したがって、さまざまなタイプおよびサイズの治療用または診断用タンパク質の製造中に、低温および高温とpH範囲との両方でさまざまなエンベロープウイルスを効果的に不活化する、かつ/または水性であり、可溶性であり、かつ/または容易に可溶化され、かつ/または供給流の濁度に影響を及ぼさないので、大規模製造に適している環境適合性洗剤を、そのような洗剤の妥当な時間量および妥当な濃度で使用して、ウイルスを効果的に不活化するための方法が依然として必要とされている。さらに、洗剤は、複雑で、時間のかかる、および/または費用のかかる手段を追加することなく、精製工程で(規制要件を満たすために)製品の供給流から十分に除去され、治療用または診断用タンパク質の製品品質が維持される。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明は、治療用または診断用タンパク質の製造方法においてウイルスを不活化するための方法を提供することによって、上記の問題のうちの1つ以上に対処する。驚くべきことに、本発明の方法は、広い温度および/またはpH範囲で、異なるタイプのタンパク質の製造において、環境に有毒な影響を及ぼすことなく妥当な時間で、妥当な濃度で、ウイルスを不活化するのに非常に効果的な環境適合性洗剤を提供する。驚くべきことに、本発明の方法は、完全なウイルス不活化を容易に達成する、少なくともTriton X-100に匹敵する環境適合性洗剤の使用を提供し、この環境適合性洗剤は、使用される濃度で既知の環境毒性を有さない。さらに、本発明の方法は、さまざまなタイプおよびサイズの治療用または診断用タンパク質の製造中に、環境に有毒な影響を及ぼすことなく妥当な時間で、かつ妥当な濃度で、約4℃~少なくとも約30℃の温度範囲および広いpH範囲において約3以上~約6以上のウイルス対数減少係数(「LRF」)で、完全なウイルス不活化を達成する。驚くべきことに、本発明の方法はまた、さまざまなタイプおよびサイズの治療用または診断用タンパク質の製造中に、妥当な濃度範囲で、広いpH範囲において、約4℃~少なくとも約30℃の温度範囲で試験されたすべてのエンベロープウイルスにおいて、ウイルス不活化を1分以上~約180分以内に達成した。
【0007】
したがって、本発明は、環境適合性である洗剤を供給流に添加することを含む、ウイルスを供給流中で不活化するための方法を提供する。本発明の方法で使用される例示的な洗剤は水溶液であり、これは供給流の濁度に有意に影響を及ぼさず、したがって、治療用または診断用タンパク質の大規模製造に適している。さらに、本発明で使用される洗剤は、先立つ濾過工程を伴うか、または伴わずに精製工程で、(規制要件を満たすために)十分かつ効果的に除去される。さらに、供給流から洗剤を除去するために、複雑で、時間のかかる、および/または費用のかかる手段は必要とされない。加えて、本発明の方法で使用される例示的な洗剤は、治療用または診断用タンパク質の最終的な品質に悪影響を及ぼさない。本発明の方法で使用される洗剤は、環境に有毒な影響を及ぼすことなく、広い温度およびpH範囲でエンベロープウイルスを効果的に不活化する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一態様によれば、治療用または診断用タンパク質の製造方法において、供給流中のアルキルグリコシド洗剤でウイルスを不活化するための方法が提供される。本発明の別の態様によれば、本発明の方法で使用される洗剤は、約40%以上のウンデシルアルキルグリコシドを含む。本発明の別の態様では、本発明で使用される洗剤は、約40%以上のウンデシルアルキルグリコシドおよび約20%未満の他のアルキルグリコシドを含む。本発明の別の態様では、本発明で使用される洗剤は、約40%以上のウンデシルアルキルグリコシドおよび約10%未満のデシルアルキルグリコシドを含む。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、約40%~約60%のウンデシルアルキルグリコシドを含む。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、約53%~約57%のウンデシルアルキルグリコシドを含む。本発明の別の態様では、本発明で使用される洗剤は、約50%以上のウンデシルアルキルグリコシドを含む。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、約40%~約60%のウンデシルアルキルグリコシドおよび約20%未満の他のアルキルグリコシドを含む。さらに別の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、約40%~約60%のウンデシルアルキルグリコシドおよび約10%未満のデシルアルキルグリコシドを含む。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、約53%~約57%のウンデシルアルキルグリコシドおよび約20%未満の他のアルキルグリコシドを含む。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、約53%~約57%のウンデシルアルキルグリコシドおよび約10%未満のデシルアルキルグリコシドを含む。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、0または約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、もしくは20%未満の他のアルキルグリコシドを含む。本発明のいくつかの実施形態では、他のアルキルグリコシドは、ノニルアルキルグリコシド、デシルアルキルグリコシドおよび/またはラウリルアルキルグリコシドの混合物を含む。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、0または約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%未満のデシルアルキルグリコシドを含む。本発明の一実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、ウンデシルアルキルグリコシドを含む。
【0009】
本発明の一実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、CAS98283-67-1のCAS登録番号を有する。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、SIMULSOL(登録商標)SL11Wである。さらなる実施形態では、本発明の方法で使用されるSIMULSOL(登録商標)SL11Wは、約40%以上のウンデシルアルキルグリコシドを含む。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用されるSIMULSOL(登録商標)SL11Wは、約40%~約60%のウンデシルアルキルグリコシドを含む。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用されるSIMULSOL(登録商標)SL11Wは、約53%~約57%のウンデシルアルキルグリコシドを含む。さらに別の実施形態では、本発明の方法で使用されるSIMULSOL(登録商標)SL11Wは、約40%~約60%のウンデシルアルキルグリコシドおよび約10%未満のデシルアルキルグリコシドを含む。さらに別の実施形態では、本発明の方法で使用されるSIMULSOL(登録商標)SL11Wは、約53%~約57%のウンデシルアルキルグリコシドおよび約10%未満のデシルアルキルグリコシドを含む。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用されるSIMULSOL(登録商標)SL11Wは、0または約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、もしくは20%未満の他のアルキルグリコシドを含む。本発明の実施形態では、本発明の方法で使用されるSIMULSOL(登録商標)SL11W中の他のアルキルグリコシドは、ノニルアルキルグリコシド、デシルアルキルグリコシドおよび/またはラウリルアルキルグリコシドの混合物を含む。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用されるSIMULSOL(登録商標)SL11Wは、0または約0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%未満のデシルアルキルグリコシドを含む。本発明の一実施形態では、本発明の方法で使用されるSIMULSOL(登録商標)SL11Wは、ウンデシルアルキルグリコシドである。
【0010】
さらに別の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、SIMULSOL(登録商標)SL82である。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用されるSIMULSOL(登録商標)SL82は、約40%~約60%のウンデシルアルキルグリコシドを含む。
【0011】
さらなる実施形態では、本発明は、環境適合性洗剤を、約0.05w/w%~約1w/w%の最終濃度で供給流に添加することを含む、ウイルスを供給流中で不活化するための方法を提供し、環境適合性洗剤は、約40%以上のデシルアルキルグリコシドを含む。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、約0.1w/w%~約1w/w%の最終濃度になるように供給流に添加される。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、0.1w/w%~1w/w%の最終濃度になるように供給流に添加される。いくつかの実施形態では、洗剤は、約0.3w/w%~約1w/w%の最終濃度になるように供給流に添加される。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、0.3w/w%~1w/w%の最終濃度になるように供給流に添加される。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、約0.1w/w%~約0.3w/w%の最終濃度になるように供給流に添加される。いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、0.1w/w%~0.3w/w%の最終濃度になるように供給流に添加される。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、約0.3w/w%の最終濃度になるように供給流に添加される。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、0.3%の最終濃度になるように供給流に添加される。さらに他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.5%、約0.9%または約1%の最終w/w濃度になるように供給流に添加される。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、供給流は、約4℃~約30℃にある。本発明の他の実施形態では、供給流は、4℃~30℃にある。さらに他の実施形態では、供給流は、約15℃~約30℃にある。別の実施形態では、供給流は、約15℃~約20℃にある。本発明のさらに他の実施形態では、供給流は、約4℃、約15℃、約18℃、約20℃、約25℃、または約30℃にある。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、供給流は、約5.5のpH~約8.0の約pHにある。本発明の他の実施形態では、供給流は、5.5のpH~8.0のpHにある。本発明のさらに他の実施形態では、供給流は、約5.5、約6.0、約6.5、約7.0、約7.5、または約8.0のpHにある。
【0014】
いくつかの実施形態では、供給流は、約1分未満~約180分の間、洗剤とともにインキュベートされる。他の実施形態では、供給流は、約6分~約180分の間、洗剤とともにインキュベートされる。他の実施形態では、供給流は、約10分~約180分の間、洗剤とともにインキュベートされる。さらに他の実施形態では、供給流は、約120分~約180分の間、洗剤とともにインキュベートされる。さらに他の実施形態では、供給流は、約180分間、洗剤とともにインキュベートされる。さらに他の実施形態では、供給流は、約120分間、洗剤とともにインキュベートされる。さらに他の実施形態では、供給流は、約60分間、洗剤とともにインキュベートされる。さらに他の実施形態では、供給流は、約1、約5、約6、約10、約15、約30、約45、約60、約75、約90、約105、約120、約135、約150、約165、または約180分間、洗剤とともにインキュベートされる。
【0015】
本発明の実施形態では、供給流中の洗剤は、約1以上のウイルスLRFを有する。本発明のいくつかの実施形態では、供給流中の洗剤は、約4以上のウイルスLRFを有する。本発明のいくつかの実施形態では、供給流中の洗剤は、約5以上のウイルスLRFを有する。本発明のいくつかの実施形態では、供給流中の洗剤は、約6以上のウイルスLRFを有する。本発明のいくつかの実施形態では、供給流中の洗剤は、約7以上のウイルスLRFを有する。本発明のいくつかの実施形態では、供給流中の洗剤は、完全なウイルス不活化を達成する。本発明のさらに他の実施形態では、供給流中の洗剤は、約1、約2、約3、約4、約5、約6または約7以上のウイルスLRFを有する。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、ウイルスはエンベロープウイルスである。いくつかの実施形態では、ウイルスは、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、フラビウイルス、ポックスウイルス、ヘパドナウイルス、肝炎ウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、またはトガウイルスである。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明は、ウイルスを供給流中で不活化するための方法を提供し、この方法は、供給流と環境適合性洗剤とを、約4℃~約30℃の温度および約5.5~約8.0のpHで、約15分~約180分間インキュベートする工程を含み、洗剤は、約0.1w/w%~約1.0w/w%の最終濃度で供給流に添加され、供給流中の洗剤は、約2以上のウイルスLRFを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、ウイルスを供給流中で不活化するための方法を提供し、この方法は、供給流と環境適合性洗剤とを、約4℃~約30℃の温度および約5.5~約8.0のpHで、約6分~約180分間インキュベートする工程を含み、洗剤は、約0.3w/w%~約1.0w/w%の最終濃度で供給流に添加され、供給流中の洗剤は、約4以上のウイルスLRFを有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、ウイルスを供給流中で不活化するための方法を提供し、この方法は、供給流と環境適合性洗剤とを、約4℃~約30℃の温度および約5.5~約8.0のpHで、約180分間インキュベートする工程を含み、洗剤は、約0.1w/w%~約1.0w/w%の最終濃度で供給流に添加され、供給流中の洗剤は、約5以上のウイルスLRFを有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、本発明は、ウイルスを供給流中で不活化するための方法を提供し、この方法は、供給流と環境適合性洗剤とを、約4℃~約30℃の温度および約5.5~約8.0のpHで、約60分~約180分間インキュベートする工程を含み、洗剤は、約0.3w/w%の最終濃度で供給流に添加され、供給流中の洗剤は、約5以上のウイルスLRFを有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、本発明は、ウイルスを供給流中で不活化するための方法を提供し、この方法は、供給流と環境適合性洗剤とを、約4℃~約30℃の温度および約5.5~約8.0のpHで、約120分~約180分間インキュベートする工程を含み、洗剤は、約0.3w/w%の最終濃度で供給流に添加され、供給流中の洗剤は、約6以上のウイルスLRFを有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、本発明は、ウイルスを供給流中で不活化するための方法を提供し、供給流は、収集した細胞培養液、捕捉プール、または回収した生成物プールを含む。本発明は、ウイルスを供給流中で不活化するための方法を提供し、供給流は、収集した細胞培養液、捕捉プール、または回収した生成物プールを含み、捕捉プールまたは回収した生成物プールは、アフィニティークロマトグラフィープールである。さらに別の実施形態では、捕捉プールまたは回収した生成物プールは、タンパク質Aプール、タンパク質Gプール、またはタンパク質Lプールである。他の実施形態では、捕捉プールまたは回収した生成物プールは、混合モードクロマトグラフィープールである。
【0023】
いくつかの実施形態では、本発明は、洗剤とともにインキュベートされた供給流が、濾過工程にかけられない方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、洗剤とともにインキュベートされた供給流が、少なくとも1つの濾過工程に供される方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、洗剤とともにインキュベートされた供給流が、少なくとも1つ、または少なくとも2つ、または少なくとも3つの濾過工程に供される方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、界面活性剤とともにインキュベートされた供給流が、0.22μmのフィルターを用いた第1の濾過工程、続いて、0.45μmのPVDFフィルターを用いた第2および第3の濾過工程に供される方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、第1および/または第2および/または第3の濾過工程におけるフィルター膜が、限定されないが、ビニリデンジフルオリド(PVDF)、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン)、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ガラス繊維フィルター、またはcGMP製造環境での使用に好適な他の濾材を含む方法を提供する。好ましい実施形態では、本発明は、第2および第3の濾過工程の両方におけるフィルター膜が、PVDFを含む方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、第2および第3の濾過工程の両方におけるフィルター膜が、約0.45μmの孔径を有する膜である方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、第2および第3の濾過工程の両方におけるフィルター膜は、0.45μmの孔径を有するPVDF膜を含む。特定の実施形態では、本発明は、第1の濾過工程におけるフィルター膜が、約0.22μmの孔径を有する膜である方法を提供する。
【0024】
いくつかの実施形態では、本発明は、洗剤とともにインキュベートされた供給流が、アフィニティークロマトグラフィーに供される方法を提供する。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーは、タンパク質Aアフィニティーカラムである。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明は、洗剤を含有する供給流が、クロマトグラフィーカラムに供される方法を提供する。いくつかの実施形態では、クロマトグラフィーカラムは、アフィニティーカラム、イオン交換カラム、疎水性相互作用カラム、ヒドロキシアパタイトカラム、または混合モードカラムのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、アフィニティークロマトグラフィーカラムは、タンパク質Aカラム、タンパク質Gカラム、またはタンパク質Lカラムである。他の実施形態では、イオン交換クロマトグラフィーカラムは、陰イオン交換カラムまたは陽イオン交換カラムである。いくつかの実施形態では、本発明は、洗剤が最終製品から十分に除去される方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、洗剤が最終製品から完全に除去される方法を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明は、ウイルスを供給流中で不活化するための方法を提供し、この方法は、該供給流に洗浄剤を添加する工程と、洗剤と供給流とをインキュベートする工程とを含み、治療用または診断用タンパク質は、抗体、Fc融合タンパク質、イムノアドヘシン、酵素、増殖因子、受容体、ホルモン、調節因子、サイトカイン、抗原、または結合剤である。さらなる実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、二重特異性抗体、または抗体フラグメントである。いくつかの実施形態では、治療用または診断用タンパク質は、哺乳動物細胞において生成される。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、マウスハイブリドーマ細胞、またはマウス骨髄腫細胞である。いくつかの実施形態では、治療用または診断用タンパク質は、細菌細胞において生成される。他の実施形態では、治療用または診断用タンパク質は、酵母細胞で生成される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤を含む供給流は、低濁度のものである。いくつかの実施形態では、供給流への洗剤の添加は、供給流の濁度を大幅に増加または変化させない。さらなる実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、治療用または診断用タンパク質の製品品質に影響を及ぼさない。
【0028】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、防腐剤、および/または安定剤を含む。いくつかの実施形態では、安定剤は、モノプロピレングリコールである。いくつかの実施形態では、洗剤中の安定剤は、約1%~約5%を構成する。さらなる実施形態では、安定剤は、本発明の方法で使用される洗剤のウイルス不活化特性に影響を及ぼさず、治療用または診断用タンパク質の製品品質に影響を及ぼさない。さらなる実施形態では、モノプロピレングリコールは、本発明の方法で使用される洗剤のウイルス不活化特性に影響を及ぼさず、治療用または診断用タンパク質の製品品質に影響を及ぼさない。
【0029】
本発明の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、環境に適合性がある。本発明の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(別名4-tert-オクチルフェノール)を含まないか、またはそれを形成しない。他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、過酸化物を含まないか、またはそれを形成しない。本発明の他の実施形態では、本発明の方法で使用される洗剤は、生分解性である。
【0030】
本発明の一態様では、本発明は、ウイルスを供給流中で不活化するための方法であって、
供給流に、約0.1w/w%~約0.3w/w%の濃度のウンデシルアルキルグリコシドを添加する工程、
ウンデシルアルキルグリコシドを供給流中で約180分間インキュベートする工程であって、供給流中のウンデシルアルキルグリコシドのウイルス対数減少係数(LRF)が約5以上である、インキュベートする工程、
ウンデシルアルキルグリコシドを含有する該供給流を濾過する工程、次いで該濾過された供給流をタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーカラムに供する工程を含む、方法を提供するものであって、
前記添加およびインキュベート工程が、供給流中で約4℃~約30℃の温度および約5.5~約8.0のpHで行われる。
【0031】
本発明の一態様では、本発明は、ウイルスを供給流中で不活化するための方法であって、
供給流に、約0.1w/w%~約0.3w/w%の濃度のSIMULSOL(登録商標)SL11Wを添加する工程、
SIMULSOL(登録商標)SL11Wを供給流中で約180分間インキュベートする工程であって、供給流中のSIMULSOL(登録商標)SL11Wのウイルス対数減少係数(LRF)が約5以上である、インキュベートする工程、
SIMULSOL(登録商標)SL11Wを含有する該供給流を濾過する工程、次いで該濾過された供給流をタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーカラムに供する工程を含む、方法を提供するものであって、
前記添加およびインキュベート工程が、供給流中で約4℃~約30℃の温度および約5.5~約8.0のpHで行われる。本発明のさらに別の態様では、本発明の方法における濾過工程は、0.22μmのフィルターを用いた第1の濾過工程を含む。本発明のさらに別の態様では、本発明の方法における濾過工程は、0.45μmのPVDFフィルターを用いた第2の濾過工程を含む。さらに別の態様では、本発明の方法における濾過工程は、0.45μmのPVDFフィルターを用いた第3の濾過工程を含む。さらなる実施形態では、本発明の方法での第1および/または第2および/または第3の濾過工程におけるフィルター膜は、限定されないが、ビニリデンジフルオリド(PVDF)、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン)、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、ガラス繊維フィルター、またはcGMP製造環境での使用に好適な他の濾材を含む。好ましい実施形態において、フィルター膜はPVDFを含む。特定の実施形態では、第2および第3の濾過工程の両方におけるフィルター膜は、約0.45μmの孔径を有する膜である。好ましい実施形態において、フィルター膜は、0.45μmの孔径を有するPVDF膜である。
【0032】
本明細書で使用される場合、本明細書で言及される「環境適合性」洗剤または化合物または物質または薬剤は、環境に対して最小限および/または許容可能なレベルの有害な影響を引き起こす。例えば、経済協力開発機構(「OECD」)は、化学物質の安全性を試験するためのガイドラインを提供している。本開示による環境適合性薬剤の実施形態もまた、生分解性であり得る。洗剤などの薬剤が、例えば、タンパク質製造の条件下で環境的に適合性があるかどうかを決定する方法は、当技術分野において既知である。環境適合性は、生態学的リスク評価によって評価することもでき、これは、化学物質、土地の変化、疾病、侵入種および気候変動などの1つ以上の環境ストレス要因への曝露の結果として環境が影響を受ける可能性を評価するプロセスである。これらのガイドラインは、例えば、米国環境保護庁のウェブサイトに見出すことができる。さらに、EUにおける化学物質の登録、評価、認可、および制限に関するガイドラインは、欧州委員会のREACHウェブサイトで見出すことができる。
【0033】
「予測環境濃度」または「PEC」は、環境中の受水域に排出される廃棄物中の物質の予測濃度である。例えば、治療用または診断用タンパク質の調製においてウイルスの不活化に使用される洗剤の予測環境濃度は、環境に排出される廃棄物流中の洗剤の濃度である。
【0034】
本明細書で使用される「洗剤」という用語は、長鎖脂肪族塩基または酸の塩、または糖などの親水性部分を含み得、親水性および疎水性の両方の特性を有する薬剤を指す。本明細書で使用される場合、洗剤は、ウイルスエンベロープを破壊し、ウイルスを不活化する能力を有することができる。洗剤によるウイルス不活化のメカニズムは、洗剤とウイルス外膜の脂質成分との間の相互作用に起因し、その結果、膜が破壊され、最終的には毒性が失われる。いくつかの例では、洗剤は、「界面活性剤」もしくは「表面作用剤」と、キレート剤、防腐剤または安定剤などの1つ以上の他の薬剤とを含む組成物であり得る。洗剤または界面活性剤は、電荷に基づいて分類することができる。界面活性剤は、非イオン性、カチオン性、またはアニオン性であり得る。本明細書で使用される場合、界面活性剤は、ウイルスエンベロープを破壊し、ウイルスを不活化する能力を有する。本開示による洗剤の実施形態は、アルキルグリコシドを含み、このアルキルグリコシドは、アルキルグルコシドであり得る。
【0035】
本開示による「アルキルグリコシド」は、任意の疎水性アルキルへの結合によって結合された任意の糖を指す。本明細書で使用される「アルキルグルコシド」は、糖に結合したアルキル基からなり、糖はグルコースである。アルキルグリコシドは、例えば、ウンデシルアルキルグリコシドであり得る。ウンデシルアルキルグリコシドは、モノ-D-グルコピラノース(例えば、n-ウンデシル-β-D-グルコピラノース)、またはD-グルコピラノースオリゴ糖または多糖、またはそれらの混合物へのO-グリコシド結合を有するウンデシル鎖を含み得る。本発明の方法で使用されるようなアルキルグリコシドの化学合成は、完全に均一な調製物ではなく、化合物の不均一な混合物をもたらし得る。したがって、特に断りのない限り、本明細書で使用される特定の形態のアルキルグリコシドへの言及は、任意の不均一混合物の少なくとも大部分の成分が、ウンデシルアルキルグリコシドなどのその形態のアルキルグリコシドであることを意味する。ウンデシルアルキルグリコシドを含むそのようなアルキルグリコシドの例としては、SIMULSOL(登録商標)SL11WおよびSIMULSOL(登録商標)SL82が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
「製品供給流」または「供給流」は、目的の治療用または診断用タンパク質を含有し、またさまざまな不純物を含有し得るプロセス精製方法のために提供される材料または溶液である。非限定的な例としては、例えば、収集した細胞培養液(HCCF)、収集した細胞培養材料、浄化した細胞培養液、浄化した細胞培養材料、捕捉プール、回収プール、および/または1つ以上の遠心分離工程、および/もしくは濾過工程後の目的の治療用もしくは診断用タンパク質を含有する回収プールを含むことができ、この捕捉プール、回収タンパク質プールおよび/または回収プールは、1つ以上の精製工程後の目的の治療用もしくは診断用タンパク質を含有する。
【0037】
「不純物」という用語は、所望のタンパク質製品とは異なる材料を指す。不純物としては、CHOPなどの宿主細胞材料、浸出されたタンパク質A、核酸、所望のタンパク質の変異体、サイズ変異体、断片、凝集体または誘導体、別のタンパク質、エンドトキシン、ウイルス汚染物質、細胞培養培地成分などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書では、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指すために交換可能に使用される。ポリマーは線状または分枝状であってもよく、それは修飾されたアミノ酸を含んでもよく、それは非アミノ酸によって中断されてもよい。この用語はまた、自然に、または介入、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、もしくは任意の他の操作もしくは修飾、例えば、標識成分とのコンジュゲーションによって修飾されているアミノ酸ポリマーも包含する。また、定義には、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、および当該技術分野で既知の他の修飾を含有するタンパク質も含まれる。タンパク質の例としては、抗体、ペプチド、酵素、受容体、ホルモン、調節因子、抗原、結合剤、サイトカイン、Fc融合タンパク質イムノアドヘシン分子などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「抗体(単数または複数)」という用語は、最も広い意味で使用され、具体的には、例えば、モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、および中和抗体を含む)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ポリエピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、イムノアドヘシン、およびそれらが所望の生物学的および免疫学的活性を示す限り、抗体の断片に及ぶ。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書では抗体と交換可能に使用される。
【0040】
「限外濾過」または「濾過」という用語は、静水圧が液体を半透膜に押し付ける膜濾過の一形態である。水および低分子量の溶質が膜を通過する間、高分子量の浮遊物質および溶質は保持される。いくつかの例では、限外濾過膜は、1μm~100μmの範囲の孔径を有する。「限外濾過膜」、「限外濾過フィルター」、「濾過膜」および「濾過フィルター」という用語は、交換可能に使用され得る。濾過膜の例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン)、塩化ポリビニル、ポリエーテルスルホン、ガラス繊維、またはcGMP製造環境での使用に好適な他の濾過材料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用される場合、数値範囲には、範囲を定義する数値が含まれる。
【0042】
「エンベロープウイルス」または「脂質コート含有ウイルス」という用語は、例えばエンベロープウイルスなどの脂質を含む膜またはエンベロープを含む任意のウイルスを指す。エンベロープウイルスは、リポタンパク質膜で囲まれたキャプシド、またはエンベロープを有する。このエンベロープは、ウイルスがその表面から「出芽する」ために宿主細胞に由来し、ほとんどがウイルスゲノムによってコードされていない脂質で構成されている。それは標的細胞への結合および侵入のための分子決定因子を担持しており、エンベロープウイルスの感染性に不可欠であるが、薬剤耐性または抗原不連続変異の影響を受けない。エンベロープウイルスのサイズは、約45~55nmから約120~200nmの範囲である。哺乳動物細胞に感染する可能性のある脂質コート含有ウイルスの非限定的な例としては、ヘルペスウイルス科ウイルス、ポックスウイルス科ウイルス、またはヘパドナウイルス科ウイルスのようなDNAウイルス;フラビウイルス科ウイルス、トガウイルス科ウイルス、コロナウイルス科ウイルス、デルタウイルス科ウイルス、オルトミクソウイルス科ウイルス、パラミクソウイルス科ウイルス、ラブドウイルス科ウイルス、ブニヤウイルス科ウイルス、またはフィロウイルス科ウイルスのようなRNAウイルス;およびレトロウイルス科ウイルスまたはヘパドナウイルス科ウイルスなどの逆転写ウイルスが挙げられる。変形例では、本発明は、供給流を環境適合性洗剤に供することを含む、製品供給流中の亜ウイルス性因子(subviral agent)を不活化するための方法を提供する。いくつかの態様では、亜ウイルス性因子は、ウイロイド(viroid)またはサテライト(satellite)である。別の変形例では、本発明は、供給流を環境適合性洗剤に供することを含む、製品供給流中のウイルス様因子(virus-like agent)を不活化するための方法を提供する。
【0043】
ウイルス活性またはウイルス感染価を測定する方法は、当技術分野において既知である。例としては、TCID50アッセイ(すなわち、接種された細胞培養物の50%に病理学的変化をもたらす50%組織培養感染量の決定)およびプラークアッセイが挙げられるが、これらに限定されない。他の既知の方法には、例えば、細胞増殖形質転換を引き起こす能力を有する非プラーク形成ウイルスの生物学的活性の力価を決定するために使用することができる形質転換アッセイ、または、抗体染色法を使用して単層の感染細胞内のウイルス抗原を検出する蛍光焦点アッセイ、または単層細胞に感染しないウイルスを含む多くのウイルスの力価を決定するために使用できるエンドポイント希釈アッセイ細胞(プラークアッセイの代替として)、または逆転写酵素もしくはウイルスプロテアーゼなどのウイルスにコードされた酵素を測定するウイルス酵素アッセイを含むことができる。さらに、特定のウイルスの検出は、特定のウイルスを検出するように設計されたプライマーおよびプローブを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって達成することができる。
【0044】
製品供給流中のウイルスの不活化は、当技術分野において既知の方法を使用して測定することができる。本発明のいくつかの実施形態では、ウイルスの不活化は、対数減少係数(「LRF」)または対数減少値(「LRV」)として表される。LRFは次のように計算される:
【数1】
式中、R=対数減少係数(LRF)、V=投入容量(mL)、T=投入ウイルス力価、V=排出容量、およびT=排出ウイルス力価である。
【実施例
【0045】
実施例1.非イオン性グリコシド洗剤によるウイルスの不活化
洗剤および試薬
表1にリストされている例示的な洗剤(Seppic Inc.Fairfield,NJ)のストック溶液、および1,2-プロパンジオール(Sigma-Aldrich、St.Louis,MO)を、重量/体積(w/w)パーセントで水中で調製する。
【表1】
【0046】
ウイルスおよび指標細胞
これらの研究で使用する異種指向性マウス白血病ウイルス(XMuLV)、ブタパルボウイルス(PPV)NADL-2株、および仮性狂犬病ウイルス(PRV)は、ATCC、Manassas,VAから購入することができる。表2に、これらのウイルスの特性を示す。
【表2】
【0047】
これらの研究で使用するPK13(ブタ上皮細胞)、PG-4(ネコ脳細胞)、およびVero(アフリカミドリザル細胞)は、ATCC、Manassas,VAから購入することができる。PK-13細胞は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco,Grand Island,NY)で培養する。PG-4細胞は、マッコイの5a培地(ATCC、Manassas,VA)で培養し、Vero細胞はアールの改良イーグル培地(EMEM、Gibco,Grand Island,NY)で培養する。すべての細胞には、10%のFBS(HyClone、Logan,UT)を補充する。
【0048】
細胞ベースのTCID50ウイルス滴定アッセイ
細胞ベースの50%組織培養感染量(TCID50)アッセイは、PG-4指標胞を使用したXMuLV、PK-13指標細胞を使用したPPV、およびVero指標細胞を使用したPRVのウイルス滴定に使用する。96ウェル組織培養プレートに、2.5×10個細胞/mLの指標細胞を、200μL/ウェルで播種し、37℃で一晩または約16~24時間インキュベートする。次いで、プレートに、50μL/ウェルで一連の10倍希釈液でウイルスを、希釈液当たりn=8の最小値で接種する。接種したプレートを37℃で7~9日間(XMuLVおよびPRV)および10~13日間(PPV)インキュベートする。次いで、プレートを検査し、細胞変性効果(CPE)について顕微鏡下でウェルごとに陽性または陰性としてスコア付けし、ウイルス力価を標準的な方法で計算する。
【0049】
浄化バイオリアクター収集材料におけるウイルス細胞傷害性および干渉
上で例示したTCID50アッセイを使用して、モノクローナル抗体(mAb)、二重特異性抗体、およびFc融合タンパク質の浄化されたバイオリアクター収集材料におけるウイルスの細胞傷害性効果を決定する。バイオリアクターの収集材料を、遠心分離とそれに続く研磨濾過によって浄化する。HCP、脂質、宿主細胞DNAなどの不純物も、遠心分離プロセスの一部として自動的に濃縮する。0.05w/w%~1w/w%の洗剤を含有するさまざまなタンパク質の浄化されたバイオリアクター収集材料を、接種培地で10,50、100倍に希釈する。各希釈液をn=8で96ウェルの指標細胞播種プレートに添加し、TCID50アッセイに従ってインキュベートする。インキュベーション期間の終わりに、各ウェルを顕微鏡下でCPEについて観察し、各洗剤に必要な適切な希釈を決定する。結果は、洗剤による細胞傷害性を克服するには、50倍希釈係数で十分であることを示した。
【0050】
さまざまなタンパク質の種類について浄化されたバイオリアクター収集材料を、ウイルス複製に対する細胞培養収集材料の固有の影響について評価する。各ウイルスを、浄化されたバイオリアクター収集材料で10倍に希釈し、指標細胞播種プレートに接種し、TCID50アッセイに従って実験を行う。陽性対照(組織培養材料にウイルスをスパイクしたもの)が含まれている。ウイルス力価を、陽性対照ウイルスと比較する。陽性対照力価の±0.5log10以内の力価は、ウイルス干渉が発生していないとみなす。すべてのウイルス試験力価は、陽性対照力価の±0.5log10以内に収まり、したがって、タンパク質の種類に関係なく、バイオリアクターの収集材料のいずれについてもウイルス干渉は観察されなかった。
【0051】
ウイルス不活化の一般手順
各洗剤によるさまざまなエンベロープウイルスのウイルス不活化を、mAb、二重特異性、およびFc融合タンパク質を含有する浄化されたバイオリアクター収集材料において、さまざまな濃度、温度、およびpHの範囲で評価する。XMuLV、PPV、またはPRVウイルスを、5w/w%以下で収集材料にスパイクし、洗剤ストック溶液をスパイクされた材料に添加して、指定された最終洗剤濃度を達成する。次に、試料を特定の温度およびpH範囲でインキュベートする。洗剤がウイルス含有材料に添加されるとすぐに、ウイルスの不活化が開始する。ウイルス不活化の動態を、収集試料からさまざまな時点でアリコートを取り出すことによってモニターし、ウイルス力価を、TCID50アッセイによって評価する。ウイルスの不活化は、洗剤処理の結果であり、マトリックス自体ではないことを実証するために、マトリックス対照が研究に含まれている。
【0052】
非イオン性洗剤による30℃でのXMuLVの不活化
表1に記載されている洗剤によるXMuLVのウイルス不活化は、XMuLV不活化について決定された最適条件で試験する。上で例示したウイルス不活化手順に従って、各洗剤を、0.6w/w%でXMuLVスパイクの浄化されたmAbバイオリアクター収集材料に30℃で添加する。ウイルスの不活化を、ウイルス接種後180分の最長不活化時間でさまざまな時点でモニターする。
【0053】
表3にまとめられた結果は、XMuLV不活化の最適条件で、XMuLVが、SIMULSOL(登録商標)SL 4およびSIMULSOL(登録商標)AS 48を除いて、180分で試験したすべての洗剤に対して迅速かつ完全に不活化されることを示している。SIMULSOL(登録商標)SL4ではウイルスの不活化は観察されなかったため、SIMULSOL(登録商標)SL 4の濃度を30mM(1%)に増加させて、XMuLVの不活化を30℃で180分間モニターする。しかし、SIMULSOL(登録商標)SL 4の濃度を上げても、XMuLVの不活化は観察されなかった(データは示さず)。驚くべきことに、これらの結果は、すべてのグリコシドが強力なウイルス不活化を可能にするわけではないこと、またはSIMULSOL(登録商標)AS 48で観察されたように強力な不活化を達成するために非常に高濃度を必要とすることを示唆している。しかしながら、SIMULSOL(登録商標)SL11Wは、浄化されたmAbバイオリアクター収集材料に添加してから0~5分以内に、LRFが4以上の完全なウイルス不活化を示した。さらに、他のグリコシドがXMuLVを効果的に不活化したとしても、他の要因が大規模な製造方法におけるこれらの洗剤のいくつかの適用性を制限する。このような洗剤の特性には、溶解度、収集材料における濁度への影響、さまざまな温度およびpH範囲での活性、環境毒性に関する未知のまたは限られたデータ、および取り扱いの容易さが含まれる。
【表3】
【0054】
浄化されたmAbバイオリアクター収集材料におけるSIMULSOL(登録商標)SL11Wの濁度。
濁度を、0%、0.05%、0.1%、0.3%、0.5%、および1w/w%のSIMULSOL(登録商標)SL11Wの濃度で、18℃で浄化されたmAbバイオリアクター収集材料にスパイクされたXMuLVにおいて評価する。ウイルスの不活化を180分間モニターし、濁度を、携帯型濁度計2100P(Hach(登録商標))を使用して比濁法濁度単位(NTU)で測定する。
【0055】
表4に示される結果は、0w/w%~1w/w%の範囲の濃度のSIMULSOL(登録商標)SL11Wが経時的に安定しており、180分まで収集物に総沈殿物が観察されなかったことを示している。
【表4】
【0056】
SIMULSOL(登録商標)SL11Wによるウイルス不活化の特性評価および最適化
タンパク質の製造方法で使用するための実行可能な環境適合性洗剤としてのSIMULSOL(登録商標)SL11Wの使用を、上記のウイルス不活化手順に従って、浄化されたmAbバイオリアクター収集材料でさらに評価する。簡単に説明すると、SIMULSOL(登録商標)SL11W活性を、4℃、18℃、25℃、および30℃の4つの異なる温度で、XMuLVスパイクの浄化されたmAbバイオリアクター収集材料において、0.05%、0.1%、0.3%、0.5%、および1w/w%の濃度で評価する。ウイルスの不活化を、XMuLVを浄化されたmAbバイオリアクター収集材料を含有するSIMULSOL(登録商標)SL11Wに接種してから0、10、30、60、120、および180分後にモニターする。表5~9に示される結果は、SIMULSOL(登録商標)SL11Wの濃度、インキュベーション時間、および温度がすべてXMuLVの不活化に影響を与える要因であることを実証している。SIMULSOL(登録商標)SL11Wは、評価した4つの温度すべてで、濃度≧0.1w/w%(≧3mM)で120分までに、濃度≧0.3w/w%で10分までに完全なXMuLVウイルス不活化を達成した。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0057】
異なる開始マトリックスでのSIMULSOL(登録商標)SL11WによるXMuLVの不活化
SIMULSOL(登録商標)SL11Wが、水、細胞培養培地、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)などのさまざまな開始マトリックスで9mM(0.3w/w%)のウイルスを4℃および30℃で不活化する能力を評価する。ウイルスの不活化を、XMuLVの接種後0、60、120、および180分にモニターする。
【0058】
表10に示される結果は、3つの開始マトリックスすべてで120分後に4℃および30℃の両方で堅牢なXMuLV不活化を実証している。180分後の4℃のDPBSは、TCID50アッセイにおいていくつかの生きたウイルス粒子を検出したが、5.63のLRFを依然として達成した。全体として、これらの結果は、SIMULSOL(登録商標)SL11Wが、開始マトリックスとは無関係にウイルスを効果的に不活化できることを示唆している。これは、バイオ医薬品製造プラットフォーム全体でのSIMULSOL(登録商標)SL11Wの使用の可能性、およびタンパク質の製造方法のさまざまな段階でのSIMULSOL(登録商標)SL11Wの使用の柔軟性を示唆している。
【表10】
【0059】
4℃および30℃における0.3%のSIMULSOL(登録商標)SL11WでのXMuLVの不活化動態
SIMULSOL(登録商標)SL11Wがより低い時点でウイルスを不活化する能力を評価する。SIMULSOL(登録商標)SL11Wを、9mM(0.3w/w%)で、4℃および30℃で浄化したmAbバイオリアクター収集材料に添加する。ウイルスの不活化を、XMuLVの接種後0、2、4、6、8、10、20分および180分にモニターする。
【0060】
表11に示される結果は、浄化されたmAbバイオリアクター収集材料中の9mM(0.3w/w%)のSIMULSOL(登録商標)SL11Wで、4℃では≧6分、および30℃では≧2分で完全なXMuLVの不活化が発生することを示している。
【表11】
【0061】
ウイルス不活化に対する安定剤モノプロピレングリコールの効果
30℃で浄化されたmAbバイオリアクター収集材料におけるモノプロピレングリコールの0.1%および0.5%の濃度でのウイルス不活化に対する効果を評価する。ウイルスの不活化を、XMuLVの接種後0分および180分でモニターする。SIMULSOL(登録商標)SL11Wは、1%~5%のモノプロピレングリコールを含有する。ここで報告されている不活化手順で見られるモノプロピレングリコールの最大濃度は、0.05%である。表12に示される結果は、0.1%および0.5%の濃度のモノプロピレングリコールが、30℃で浄化されたmAbバイオリアクター収集材料中のXMuLVを不活化しないことを示している。さらに、表11に示されているモノプロピレングリコールの濃度は、SIMULSOL(登録商標)SL11Wで処理された浄化されたmAbバイオリアクター収集物で見られる最大濃度を少なくとも10倍上回っている。これは、SIMULSOL(登録商標)SL11Wが観察されたウイルスの不活化に関与していることを示している。
【表12】
【0062】
SIMULSOL(登録商標)SL11Wによるエンベロープウイルスおよび非エンベロープウイルスの不活化
SIMULSOL(登録商標)SL11Wが、エンベロープウイルスのPRV、および非エンベロープウイルスのPPVを不活化する能力を評価する。SIMULSOL(登録商標)SL11Wを、9mM(0.3w/w%)で、4℃、18℃、および30℃で浄化したmAbバイオリアクター収集材料に添加する。ウイルスの不活化を、接種後0、10、30、60、120、および180分にモニターする。
【0063】
表13に示される結果は、3つの温度すべてで10分までに発生するPRVエンベロープウイルスの強力な不活化とともに、30℃で0~5分以内のさらに低い時点で発生するPRVエンベロープウイルスの強力な不活化を示している。SIMULSOL(登録商標)SL11Wでは、PPVの不活化は観察されなかった。これらの結果を総合すると、SIMULSOL(登録商標)SL11Wは、浄化されたmAbバイオリアクター収集材料中の異なるエンベロープウイルスを強力に不活化するだけでなく、SIMULSOL(登録商標)SL11Wによるウイルス不活化が、エンベロープウイルスに特異的であることが示唆される。
【表13】
【0064】
SIMULSOL(登録商標)SL11WによるXMuLVの不活化に対するpHの影響
SIMULSOL(登録商標)SL11Wが、5.5のpHおよび8.0のpHでXMuLVを不活化する能力を評価する。SIMULSOL(登録商標)SL11Wを、9mM(0.3w/w%)で、18℃で浄化したmAbバイオリアクター収集材料に添加する。ウイルスの不活化を、XMuLVを浄化されたmAbバイオリアクター収集材料を含有するSIMULSOL(登録商標)SL11Wに接種してから0、10、30、60、120、および180分後にモニターする。
【0065】
表14に示される結果は、10分までにpH5.5およびpH8.0の両方でSIMULSOL(登録商標)SL11WによるXMuLVの迅速かつ完全な不活化を示しており、したがって、タンパク質の製造方法における広範なpH範囲にわたるSIMULSOL(登録商標)SL11Wの適用の可能性を示している。
【表14】
【0066】
SIMULSOL(登録商標)SL11WによるXMuLVの不活化に対するバイオリアクター収集材料源の影響
SIMULSOL(登録商標)SL11Wが、mAb、二重特異性抗体、Fc融合タンパク質などのさまざまな組換えタンパク質を含有する浄化されたバイオリアクター収集材料中でXMuLVを不活化する能力を評価する。SIMULSOL(登録商標)SL11Wを、9mM(0.3w/w%)で、4℃および18℃で異なるタンパク質の浄化されたバイオリアクター収集材料に添加する。ウイルスの不活化を、0、10、30、60、120、および180分のインキュベーション時点でモニターする。表15に示される結果は、SIMULSOL(登録商標)SL11WによるXMuLVの完全な不活化を、3つの浄化されたバイオリアクター収集材料すべてにおいて4℃および30℃の両方で120分までに示している。さらに、Fc融合タンパク質およびmAbタンパク質を含有する収集物では、4℃で10分までに完全な不活化が観察された。二重特異性抗体の不活化動態は、4℃での他の2つの浄化されたバイオリアクター収集材料よりも4℃でわずかに遅かった。しかし、18℃では、SIMULSOL(登録商標)SL11Wによる完全な不活化が、10分以内に3つのタンパク質すべてで観察された。
【表15】
【0067】
異なるタンパク質の浄化されたバイオリアクター収集材料におけるウイルスの不活化に対する不純物レベルの影響
Fc融合タンパク質、二重特異性抗体、およびmAbの3つの異なる組換えタンパク質のバイオリアクター収集材料における不純物レベルの影響を評価する。
【0068】
収集材料を、遠心分離とそれに続く研磨濾過によって浄化する。HCP、脂質、宿主細胞DNAなどの不純物も、遠心分離プロセスの一部として自動的に濃縮される。浄化されたmAb収集材料の試料を、5KDa分子量カットオフ(molecular weight cutoff)タンジェンシャルフロー濾過(TFF)プロセスによってさらに約4倍に濃縮させる。3つの浄化された材料およびTFF濃縮された材料中の組換えタンパク質、DNAおよびその他のHCP不純物を測定する。表16に示す結果は、3つの組換えタンパク質浄化材料および濃縮浄化されたmAb材料における組換えタンパク質、宿主細胞DNA、およびHCP含有量プロファイルを示している。濃縮されていない浄化されたmAb収集材料と比較した場合、濃縮され浄化されたmAb収集材料では、DNAおよびHCP不純物の3倍以上の増加が観察された。
【表16】
【0069】
SIMULSOL(登録商標)SL11WによるXMuLVの不活化に対する濃縮バイオリアクター収集材料の影響
濃縮された浄化されたmAb収集材料中のウイルスの不活化に対するSIMULSOL(登録商標)SL11Wの効果を試験する。mAbおよびその他の不純物を含有する浄化されたmAbバイオリアクター収集材料を、5KDa分子量カットオフタンジェンシャルフロー濾過(TFF)プロセスによって約4倍に濃縮させる。次いで、mAbおよび不純物を含有する濃縮された材料を、直ちに滅菌濾過に供する。次いで、SIMULSOL(登録商標)SL11Wを、浄化した濃縮濾過材に最終濃度0.1w/w%(3mM)で添加する。次いで、SIMULSOL(登録商標)11Wを含有する材料を、4℃、18℃、30℃の3つの異なる温度でインキュベートする。さまざまな温度でのウイルスの不活化を、0分~180分の範囲の時点で測定する。表17に示す結果は、30℃の試料と比較した場合、低温で不活化速度が低下したにもかかわらず、試験した3つの温度すべてで180分でXMuLVが完全に不活化したことを示している濃縮されていないバイオリアクター収集材料と比較した場合、濃縮されたバイオリアクター材料の不活化動態への影響は観察されなかった(データは示さず)。これは、不純物レベルの増加がSIMULSOL(登録商標)SL11Wによるウイルスの不活化に影響を与えないことを示唆している。
【表17】
【0070】
実施例2.下流の組換えタンパク質精製におけるSIMULSOL(登録商標)SL11Wの除去の決定
液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)によるウンデシルグリコシドの定量-方法A
LC-MSの定量を、0.03mM~3mMの範囲の濃度でSIMULSOL(登録商標)SL11Wを含有する浄化されたmAbバイオリアクター収集資料で行う。
【0071】
1マイクロリットルのインキュベートした試料を、Waters SYNAPT(登録商標)G2-Si質量分析計に連結したWaters Acquity(登録商標)UPLCに注入する。定量では、Varian PLRP-S逆相カラム(1×50mm、300Å、5μm)で、移動相AとしてHO中の0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)および移動相Bとしてアセトニトリル(ACN)中の0.04%TFAを使用して、80℃で分離を行う。カラムを15%の移動相Bで1分間平衡化し、3分間かけて15%から30%に直線的に増加させ、その後30%のBで2分間保持し、その後、100%で1分間保持する。カラムを100%で1分間保持した後、15%の移動相Bで再平衡化する。SIMULSOL(登録商標)SL11Wを、1~6分の間、0.3mL/分で分離させ、エレクトロスプレーイオン化(ESI)ソースを使用して分析する。質量分析計は、ポジティブの感度モード、100~1000amuのスキャン範囲、3.2kVのキャピラリ電圧、450℃の脱溶媒和温度、900L/時の脱溶媒和ガス流量、150℃のソース温度、40Vのサンプルコーンで動作させる。特性評価では、同じ移動相を用いたWaters Acquity(登録商標)UPLC BHE 300ÅC4カラム(2.1×100mm、粒径1.7μm)で分離を行う。カラムを20%移動相Bで1分間平衡化し、14分間で20%から25%に、次いで1分間で90%まで直線的に増加させる。100%で1.0分間保持した後、20%移動相Bでカラムを再平衡化する。
【0072】
ナトリウム化されたウンデシルグリコシドの抽出されたピーク面積を測定する。LC-MS分析条件下では、抽出されたイオンピーク面積と0.03~3mMのSIMULSOL(登録商標)SL11W濃度との間に線形関係が観察された。SIMULSOL(登録商標)SL11W濃度が3mMを超えると、MS検出器は飽和状態になった。
【0073】
タンデム質量分析(LC-MS/MS)を用いた液体クロマトグラフィーによるウンデシルグリコシドの定量-方法B
0.0008mM~0.012mMの範囲の濃度のSIMULSOL(登録商標)SL11Wを含有する標準溶液を、水またはタンパク質Aの主流で調製する。SIMULSOL(登録商標)SL11Wを添加した後、これらの試料をLC-MS/MS(MRM)分析にかけた。インキュベートした試料(100μL)をLCに注入し、1/20ポストカラムをMSに対してスプリットする。分析には、Sciex Triple Quad 5500質量分析計に連結したAgilent 1260 Infinity II HPLCを使用する。定量では、移動相Aとして水中の0.5mMの酢酸ナトリウムおよび移動相Bとして95:5のアセトニトリル:水を使用して、80℃でAgilent Zorbax、300SB-C8逆相カラム(4.6×50mm、300Å、3.5μm)で実施する。カラムは20%の移動相Bで2分間平衡化し、10分間かけて20%から90%まで直線的に増加させ、90%のBで2分間保持し、20%の移動相Bで平衡化する。SIMULSOL(登録商標)SL11Wを、4.5~5.5分の間に1.0mL/分で分離し、エレクトロスプレーイオン化(ESI)ソースを使用して分析した。質量分析計を、遷移イオンをスキャンするポジティブMRMモード(357.0~185.0)、5.5kVのキャピラリ電圧、450℃の脱溶媒和温度、および55L/時の脱溶媒和ガス流量で作動させる。
【0074】
選択された反応モニタリング(SRM/MRM(多重反応モニタリング))、LC-MS/MS法を使用して、ナトリウム化SIMULSOL(登録商標)SL11Wを選択的に検出する。SRMは単一の前駆イオン(ナトリウム化SIMULSOL(登録商標)SL11Wの質量、357.0m/z)をスキャンし、フラグメンテーション後、生成イオン(ナトリウム化SIMULSOL(登録商標)SL11Wの最も優勢なフラグメント、185.0m/z)を検出し、この抽出された遷移イオンに対応するピーク面積を得る。
【0075】
LC-MS/MS分析条件下では、プロットは、水中0.0008mM~0.012mMのSIMULSOL(登録商標)SL11W濃度とタンパク質Aの主流との間で直線状である。これらの結果は、LC-MS/MSが0.0008mM~0.012mMのSIMULSOL(登録商標)SL11Wを検出でき、プロットの直線性がマトリックスに依存しないことを示している。したがって、このLC-MS/MS(SRM/MRM)法は、SIMULSOL(登録商標)SL11Wの検出に特異性があり、洗剤が含まれているマトリックスとは無関係である。検出限界(LOD)は、直線性から計算して0.001mMである。
【0076】
タンパク質AクロマトグラフィーおよびSIMULSOL(登録商標)SL11Wの検出
0%(対照)、0.3%、1.0w/w%を含有する浄化されたmAbバイオリアクター収集材料溶液SIMULSOL(登録商標)SL11Wを、MabSelect(登録商標)タンパク質Aクロマトグラフィーに供する。タンパク質Aクロマトグラフィーを、SIMULSOL(登録商標)SL11Wを含有する濾過されていない浄化されたmAb収集材料で実施する。カラムを装填した後、酢酸/クエン酸緩衝液でmAbを溶出する前に、6カラム容量のTris/NaClを使用してカラムを洗浄する。溶出したmAbの主流を採取し、LC-MSでSIMULSOL(登録商標)SL11Wの存在を分析する。
【0077】
LCMS(方法A)を使用した分析の結果は、0.3%および1.0w/w%のSIMULSOL(登録商標)SL11Wを含有するmAbバイオリアクター収集材料溶液からのタンパク質A主流における<0.03mMのSIMULSOL(登録商標)SL11Wレベルを示している。LC-MS/MS(方法B)を使用すると、SIMULSOL(登録商標)SL11Wの量は、0.3w/w%のSIMULSOL(登録商標)SL11Wを含有するmAbバイオリアクター収集材料溶液からのタンパク質A主流で0.0005mMであることがわかり、これは、0.001mMのLODよりも低い。これらの結果は、タンパク質Aクロマトグラフィーが、カラム装填の前の濾過工程がなくても、SIMULSOL(登録商標)SL11W Simulsol SL11Wを供給流から微量レベルまで除去できることを示している。
【0078】
実施例3.組換えタンパク質の品質に対するSIMULSOL(登録商標)SL11Wの影響
組換えタンパク質の品質に対するSIMULSOL(登録商標)SL11Wの影響を、20℃で3時間、次いで4℃で16時間インキュベートする、0.3%のSIMULSOL(登録商標)SL11Wを用いる場合および用いない場合の浄化されたmAbバイオリアクター収集試料を比較することによってテストする。試料を最初に、0.2μmガラス繊維フィルターで濾過し、続いて0.45μmのPVDFフィルターで濾過し、次いでタンパク質A精製にかける。試料を、キャピラリ電気泳動(CE)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、iCE(登録商標)機器での等電点電気泳動(IEF)測定など、当技術分野において既知の技術を使用して、表18に示す分析特性について分析する。表18に示す結果は、SIMULSOL(登録商標)SL11Wによる処理が、SIMULSOL(登録商標)SL11Wによる処理がない場合と比較して、測定された品質のいずれにも顕著な影響を及ぼさなかったことを示している。
【表18】