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特許7602551工作機械、位置情報補正方法、及び位置情報補正プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-10
(45)【発行日】2024-12-18
(54)【発明の名称】工作機械、位置情報補正方法、及び位置情報補正プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/013 20060101AFI20241211BHJP
【FI】
B23Q15/013
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022550611
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2021034181
(87)【国際公開番号】W WO2022059748
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】63/080,784
(32)【優先日】2020-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100160716
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 力
(72)【発明者】
【氏名】並木 龍也
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-226593(JP,A)
【文献】特開平05-329702(JP,A)
【文献】特開2008-246642(JP,A)
【文献】国際公開第2001/094061(WO,A1)
【文献】米国特許第04382215(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/013-17/22
B23B 25/06
G05B 19/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを回転可能に把持する主軸と、
前記ワークを加工する工具が設置可能な刃物台と、
前記主軸及び前記刃物台から独立して移動可能な移動体と、
対象部材に接触することで対象部材の位置を検出する検出部を有し、前記移動体の移動に従って移動する接触式のセンサと、
前記移動体を移動することによって前記主軸に把持されたワークに前記検出部を接触させて検出したワークの位置を示す位置情報に基づいて前記主軸の中心位置を示す中心位置情報を算出する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記移動体を移動することによって、前記工具の刃先の位置を示す刃先位置情報を前記センサを介して取得し、前記中心位置情報に基づいて前記刃先位置情報を補正する、ことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記制御装置は、前記センサの中心位置が前記主軸の中心軸に一致するように前記移動体を移動すると共に、前記刃物台を移動して前記工具の刃先を前記センサに接触させることで、前記刃先位置情報を取得する、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記検出部は、円柱状の支持部材、及び前記支持部材の周面に配置された複数の接点を有し
前記センサの中心位置が前記主軸の中心軸に一致するように前記移動体を移動することは、支持部材の中心軸と前記主軸の中心軸に一致するように前記移動体を移動することを含む、請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記複数の接点は、前記支持部材の周面に90度ずつ離隔して配置された4つの接点を含み、
4つの接点に含まれる180度離隔して配置される一対の前記接点の間の距離は、前記ワークの径と同一である、請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
前記移動体は、前記主軸に対向配置可能な背面主軸である、請求項1~4の何れか一項に記載の工作機械。
【請求項6】
ワークを回転可能に把持する主軸と、
前記ワークを加工する工具が設置可能な刃物台と、
前記主軸及び前記刃物台から独立して移動可能な移動体と、
対象部材に接触することで対象部材の位置を検出する検出部を有し、前記移動体の移動に従って移動する接触式のセンサと、
前記移動体を移動することによって前記主軸に把持されたワークに前記検出部を接触させて検出したワークの位置を示す位置情報に基づいて前記主軸の中心位置を示す中心位置情報を算出する制御装置と、を有する工作機械において、前記制御装置によって実行される位置補正方法であって、
前記移動体を移動することによって、前記工具の刃先の位置を示す刃先位置情報を前記センサを介して取得し、
前記中心位置情報に基づいて前記刃先位置情報を補正する、
ことを含む、ことを特徴とする位置補正方法。
【請求項7】
ワークを回転可能に把持する主軸と、
前記ワークを加工する工具が設置可能な刃物台と、
対象部材に接触することで対象部材の位置を検出する検出部を有し、前記主軸及び前記刃物台から独立して移動可能な移動体と、
前記移動体の移動に従って移動する接触式のセンサと、
前記移動体を移動することによって前記主軸に把持されたワークに前記検出部を接触させて検出したワークの位置を示す位置情報に基づいて前記主軸の中心位置を示す中心位置情報を算出する制御装置と、を有する工作機械において、
前記移動体を移動することによって、前記工具の刃先の位置を示す刃先位置情報を前記センサを介して取得し、
前記中心位置情報に基づいて前記刃先位置情報を補正する、
処理を前記制御装置に実行させる、ことを特徴とする位置補正プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、工作機械、位置情報補正方法、及び位置情報補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ターニングセンタ及びマシニングセンタ等の工作機械において、ワークを加工する工具の位置を検出する種々の技術が知られている。例えば、工具をワークに手動で当接し、工具の刃先とワークとの間の位置関係を測定して、工具の位置をオフセットとしてNC装置に入力する技術が知られている。また、プリセッタとも称される測定治具により工具の位置が予め調整されて取り付けられた工具ホルダを工作機械に装着する機外プリセットとも称される技術が知られている。しかしながら、これらの技術では、工作機械の停止時間が長くなること、及びオペレータの労力が増加すること等の種々の問題があった。
【0003】
これらの問題を解決するために、ワークと工具との間の位置関係を工作機械において自動的に測定する技術が知られている。例えば、特開2008-200798号公報には、ワークの中心座標を測定するプローブのスタイラスの先端と工具の刃先との間の位置関係に基づいて、プローブによって測定されたワークの中心座標を基準位置として工具の刃先位置を規定する工作機械が開示される。また、特開2000-198047号公報には、タレットに装着されたセンサの検出部をワークに当接することで測定される主軸中心線と、センサと共にタレットに装着される工具とセンサとの間の位置関係から、主軸中心線に対する工具の刃先位置を算出する工作機械が記載される。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、特開2008-200798号公報及び特開2000-198047号公報に記載される技術では、ワークの中心位置は測定されるが、工具の刃先の位置は測定されない。特開2008-200798号公報及び特開2000-198047号公報に記載される技術では、工具の刃先の位置が測定されないため、工具の刃先の位置がワークの加工等による発熱等に起因して変位したときに、ワークと工具との間の位置関係は、工具の刃先の位置の変位に起因する誤差を含むおそれがあった。
【0005】
本開示は、ワークと工具との間の位置関係を精度よく測定可能な工作機械を提供することを目的とする。
【0006】
本開示に係る工作機械は、ワークを回転可能に把持する主軸と、ワークを加工する工具が設置可能な刃物台と、主軸及び刃物台から独立して移動可能な移動体と、移動体の移動に従って移動する接触式のセンサと、移動体を移動することによってワークの近傍に移動されたセンサを介して取得される主軸位置情報に基づいて主軸の中心位置を示す中心位置情報を算出する制御装置とを有し、制御装置は、移動体を移動することによって、工具の刃先の位置を示す刃先位置情報をセンサを介して取得し、中心位置情報に基づいて刃先位置情報を補正する。
【0007】
さらに、本開示に係る工作機械では、制御装置は、センサの中心位置が主軸の中心軸に一致するように移動体を移動すると共に、刃物台を移動して工具の刃先をセンサに接触させることで、刃先位置情報を取得することが好ましい。
【0008】
さらに、本開示に係る工作機械では、センサは、円柱状の支持部材、及び支持部材の周面に配置された複数の接点を有する検出部を有し、センサの中心位置が主軸の中心軸に一致するように移動体を移動することは、支持部材の中心軸と主軸の中心軸に一致するように移動体を移動することを含むことが好ましい。
【0009】
さらに、本開示に係る工作機械では、複数の接点は、支持部材の周面に90度ずつ離隔して配置された4つの接点を含み、4つの接点に含まれる180度離隔して配置される一対の接点の間の距離は、ワークの径と同一であることが好ましい。
【0010】
さらに、本開示に係る工作機械では、移動体は、主軸に対向配置可能な背面主軸であることが好ましい。
【0011】
また、本開示に係る位置補正方法は、ワークを回転可能に把持する主軸と、ワークを加工する工具が設置可能な刃物台と、主軸及び刃物台から独立して移動可能な移動体と、移動体の移動に従って移動する接触式のセンサと、移動体を移動することによってワークの近傍に移動されたセンサを介して取得される主軸位置情報に基づいて主軸の中心位置を示す中心位置情報を算出する制御装置とを有する工作機械において、制御装置によって実行される位置補正方法であって、制御装置は、移動体を移動することによって、工具の刃先の位置を示す刃先位置情報をセンサを介して取得し、中心位置情報に基づいて刃先位置情報を補正することを含む。
【0012】
また、本開示に係る位置補正プログラムは、ワークを回転可能に把持する主軸と、ワークを加工する工具が設置可能な刃物台と、主軸及び刃物台から独立して移動可能な移動体と、移動体の移動に従って移動する接触式のセンサと、移動体を移動することによってワークの近傍に移動されたセンサを介して取得される主軸位置情報に基づいて主軸の中心位置を示す中心位置情報を算出する制御装置とを有する工作機械において、移動体を移動することによって、工具の刃先の位置を示す刃先位置情報をセンサを介して取得し、中心位置情報に基づいて刃先位置情報を補正する処理を制御装置に実行させる。
【0013】
本開示に係る工作機械は、ワークと工具との間の位置関係を精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る工作機械の斜視図である。
図2図2は、図1に示す背面主軸及び背面主軸に隣接して配置される正面刃物台の斜視図である。
図3図1に示す工作機械により実行される位置情報補正処理のフローチャートである。
図4図3に示すS102の処理を説明するための図であり、(a)は背面主軸及びガイドブッシュ装置の斜視図であり、(b)はガイドブッシュ装置の正面図である。
図5図3に示すS103の処理を説明するための図であり、(a)は背面主軸及びガイドブッシュ装置の斜視図(その1)であり、(b)は背面主軸及びガイドブッシュ装置の斜視図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、工作機械、工作機械の制御方法及び工作機械の制御プログラムについて説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
【0016】
図1は、実施形態に係る工作機械の斜視図である。
【0017】
工作機械1は、ベッド10と、正面主軸11と、背面主軸12と、ガイドブッシュ装置13と、刃物台14と、NC装置20とを有する。ベッド10には、正面主軸11、背面主軸12、ガイドブッシュ装置13及び刃物台14が搭載される。正面主軸11は、円柱状のワークW1を把持可能な中空状の部材であり、レール15に沿って移動する移動機構に設置されることによってZ1方向に移動可能である。背面主軸12は、円柱状のワークW2を把持可能な中空状の部材であり、レール16及び17に沿って移動する移動機構上に設置されることによってZ2方向及びX2方向に移動可能である。ガイドブッシュ装置13は、ベッド10に固定され、正面主軸11に把持されたワークW1をZ1方向に摺動可能に案内するように支持する。刃物台14は、正面主軸11及び背面主軸12に把持されたワークW1及びW2を加工する複数の工具を保持する部材であり、レール18及び19に沿って移動する移動機構上に設置されることによってX1方向及びY1方向に移動可能である。正面主軸11、背面主軸12及び刃物台14の回転や移動などは、工作機械1に搭載しているNC装置20によって、制御される。正面主軸11、背面主軸12及び刃物台14は、互いに独立に、すなわち別個に移動可能である。NC装置20は、演算回路、及び位置情報補正処理を実行させる位置補正プログラムを記憶する記憶回路等を有し、工作機械の種々の動作を指示する制御装置である。位置補正プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて管理記憶部42にインストールされてもよい。
【0018】
図2は、背面主軸12及び背面主軸12に隣接して配置される正面刃物台21の斜視図である。
【0019】
正面刃物台21は、対向刃物台とも称され、ドリル等の回転工具22、非回転工具23及びツールセッタ24を保持する部材であり、背面主軸12の移動に従って一体的に移動する。ツールセッタ24は、円柱状の支持部材25及び支持部材25の先端の周面に配置された検出部26を有する接触式の位置センサである。検出部26は、支持部材25の周面に90度ずつ離隔して配置された4つの接点を有し、4つの接点がワークW1等の対象部材に接触することで、X2及びY2方向のそれぞれに2方向ずつ計4方向から対象部材の位置を検出する。
【0020】
ツールセッタ24は、検出部26が有する4つの接点に含まれる180度離隔して配置される一対の接点の間の距離が、加工対象であるワークW1の径よりも小さくても、大きくてもワークW1に4つの接点が接触可能であれば良い。さらに一対の接点の間の距離がワークW1の径と同一となるように選択されることで、ワークW1が加工される加工点により近くなるので好ましい。ここでは、一対の接点の間の距離がワークW1の径の0.8倍以上1.2倍以下であるときに、一対の接点の間の距離は、ワークW1の径と同一であるとされる。
【0021】
図3は工作機械1により実行される位置情報補正処理のフローチャートである。図3に示す位置情報補正処理は、NC装置20からの指令により工作機械1の各要素を制御すると共に協働して実行される。また、図3に示す位置情報補正処理は、工具によってワークW1が加工される前に実行されてもよく、工具によってワークW1が加工される間に適宜実行されてもよい。例えば、図3に示す位置情報補正処理は、工作機械1が起動された直後に実行されてもよく、ワークW1の加工が開始される前に実行されてもよく、ワークW1から所定数の加工済ワークが形成される毎に実行されてもよい。
【0022】
まず、NC装置20は、ワークW1の把持を正面主軸11に指示する(S101)。正面主軸11は、NC装置20の指示に応じて不図示のチャックによりワークW1を把持する。
【0023】
次いで、NC装置20は、正面主軸の位置を示す主軸位置情報の取得を指示する(S102)。
【0024】
図4はS102の処理を説明するための図であり、図4(a)は背面主軸12及びガイドブッシュ装置13の斜視図であり、図4(b)はガイドブッシュ装置13の正面図である。
【0025】
NC装置20は、背面主軸12を移動させることによってガイドブッシュ装置13に支持されたワークW1の近傍にツールセッタ24を移動させる。NC装置20は、ワークW1の近傍に移動されたツールセッタ24を介して主軸位置情報を取得する。
【0026】
まず、NC装置20は、図4(b)において矢印Aで示されるように、ツールセッタ24の検出部26をワークW1に接触させて、ワークW1の上端の位置を示す第1位置情報P1をツールセッタ24から取得する。次いで、NC装置20は、図4(b)において矢印Bで示されるように、ツールセッタ24の検出部26をワークW1に接触させて、ワークW1の左端の位置を示す第2位置情報P2をツールセッタ24から取得する。次いで、NC装置20は、図4(b)において矢印Cで示されるように、ツールセッタ24の検出部26をワークW1に接触させて、ワークW1の下端の位置を示す第3位置情報P3をツールセッタ24から取得する。次いで、NC装置20は、図4(b)において矢印Cで示されるように、ツールセッタ24の検出部26をワークW1に接触させて、ワークW1の右端の位置を示す第4位置情報P4をツールセッタ24から取得する。そして、NC装置20は、ツールセッタ24を介して取得した第1位置情報P1~第4位置情報P4を主軸位置情報として記憶する。
【0027】
次いで、NC装置20は、背面主軸12を移動することによってワークW1の近傍に移動されたツールセッタ24を介して、S102の処理により取得される主軸位置情報に基づいて正面主軸11の中心位置を示す中心位置情報を算出する(S103)。
【0028】
NC装置20は、正面主軸11の中心位置のX1方向の座標Pxを、ワークW1のX1方向の一方の座標を示す第1位置情報P1及びワークW1のX1方向の他方の座標を示す第3位置情報P3の中心値(P1+P3)/2として算出する。また、NC装置20は、正面主軸11の中心位置のY1方向の座標Pyを、ワークW1のY1方向の一方の座標を示す第2位置情報P2及びワークW1のY1方向の他方の座標を示す第4位置情報P4の中心値(P2+P4)/2として算出する。
【0029】
次いで、NC装置20は、工具の刃先の位置を示す刃先位置情報の取得を指示する(S104)。
【0030】
図5はS104の処理を説明するための図であり、図5(a)は背面主軸12及びガイドブッシュ装置13の斜視図(その1)であり、図5(b)は背面主軸12及びガイドブッシュ装置13の斜視図(その2)である。
【0031】
NC装置20は、ツールセッタ24の中心位置が正面主軸11の中心軸に一致するように背面主軸12を移動させると共に、刃物台14を移動させて刃物台14に保持された工具140の刃先をツールセッタ24に接触させることで、刃先位置情報を取得する。
【0032】
まず、NC装置20は、図5(a)に示されるように、ツールセッタ24の支持部材25の中心軸を正面主軸11の中心軸と一致させ、且つ、ツールセッタ24の検出部26がワークW1に近接するように、背面主軸12を移動する。NC装置20は、S103の処理で算出された中心位置情報が示す座標(Px,Py)にツールセッタ24の支持部材25の中心のX1方向及びY方向の位置が一致するように、背面主軸12を移動させる。次いで、NC装置20は、図5(a)に示されるように、刃物台14のX1方向の一方からツールセッタ24に工具140の刃先を接触させて刃先の下端の位置を示す第1刃先位置情報K1をツールセッタ24から取得する。次いで、NC装置20は、図5(b)に示されるように、刃物台14のY1方向の一方からツールセッタ24に工具140の刃先を接触させて刃先の右端の位置を示す第2刃先位置情報K2をツールセッタ24から取得する。第1刃先位置情報K1と第2刃先位置情報K2より、工具140の刃先のX1方向及びY1方向の座標(Kx,Ky)を算出する。
【0033】
そして、NC装置20は、S103の処理で演算された中心位置情報に基づいて、S104の処理で取得された刃先位置情報を補正する(S105)。NC装置20は、中心位置情報に含まれる正面主軸11の中心位置のX1方向及びY1方向の座標(Px,Py)を基準として、工具140の刃先のX1方向及びY1方向の座標(Kx,Ky)を補正して、補正座標(Cx,Cy)を生成する。補正座標(Cx,Cy)において、Cxは(Px-Kx)で示され、Cyは(Py-Ky)で示される。S105の処理で生成される補正座標(Cx,Cy)は、工具140の刃先位置からワークW1までの距離であり、Cxは「径」とも称され、Cyは「芯」とも称される。
【0034】
そして、位置情報補正処理は、終了する。位置情報補正処理が終了した後、工作機械1は、工具140によって、ワークW1を位置情報補正処理に基づいて補正された工具刃先位置での加工処理を実行する。
【0035】
工作機械1は、ワークW1及び工具140の双方の位置を単一のツールセッタ24によって測定するので、ワークW1と工具140との間の位置関係を高精度で補正することができる。
【0036】
また、工作機械1は、ワークW1の中心軸にツールセッタ24の中心位置を一致させることで、ツールセッタ24の中心位置を正面主軸11の中心軸に一致させ、ツールセッタ24をワークW1の近傍(加工する際の位置)に近づけることができる。
【0037】
また、工作機械1は、ワークW1の近傍にツールセッタ24を配置した状態で、工具140の刃先位置を示す刃先位置情報をワークW1を加工する位置に近い位置で取得するので、工具140がワークW1から離隔した状態で刃先位置情報を取得する場合よりも高精度で刃先位置情報を取得できる。
【0038】
また、工作機械1は、正面主軸11の中心位置を示す中心位置情報を算出した後、予め中心位置情報に基づいた刃先位置情報に対する補正量が記憶されていれば、その補正量でワークW1と工具140との間の位置関係を補正することができる。この場合、ツールセッタ24をワークW1の中心軸とツールセッタ24の中心位置を一致させなくてもよい。
【0039】
また、工作機械1は、工具140によるワークW1が加工される間に位置情報補正処理を実行することで、工具140の刃先が摩耗した場合でも、工具140の刃先とワークW1との間の位置関係を高精度で補正できる。また、工作機械1は、工具140によるワークW1が加工される間に位置情報補正処理を実行することで、工具140の刃先の破損を検出することができる。
【0040】
また、ツールセッタ24は、検出部26に含まれる180度離隔して配置される一対の接点の間の距離がワークW1の径と同一となるように選択された場合には、刃先位置情報は、ワークW1が加工されるときの工具140の位置により近い位置で取得される。ツールセッタ24を検出部26に含まれる180度離隔して配置される一対の接点の間の距離がワークW1の径と同一となるので、刃先位置情報の精度を更に高くすることができる。
【0041】
また、ツールセッタ24は、背面主軸12の移動に従って移動する正面刃物台21に取り付けられるので、ツールセッタ24の移動のための部材を別途配置することなく、ワークW1及び工具140から主軸位置情報及び刃物位置情報を取得することができる。
【0042】
工作機械1では、ツールセッタ24は、背面主軸12の移動に従って移動する正面刃物台21に取り付けられるが、実施形態に係る工作機械では、接触式のセンサは、接触式のセンサを移動する移動体によって保持されていればよい。
【0043】
また、工作機械1では、ツールセッタ24の検出部26は、X1方向及びY1方向を検出するように接点部が配置されるが、実施形態に係る工作機械では、ツールセッタの検出部は、Z1方向をさらに検出可能なように接点部が配置されてもよい。ツールセッタの検出部がZ1方向を更に検出可能になることで、工具140の刃先位置とワークW1との間の距離を、X1方向を示す「径」及びY1方向を示す「芯」に加えてZ1方向を示す「長手」を含む3次元の座標として生成することができる。
【0044】
また、実施形態に係る工作機械では、ツールセッタの検出部は、X1方向及びY1方向の何れか一方を検出可能なように接点部が配置されてもよい。例えば、ツールセッタの検出部がY1方向のみを検出可能であるとき、位置情報補正処理は、Y1方向についてのみ位置情報補正処理を実行する。ツールセッタの検出部は、単一の接点のみを有していてもよい。ツールセッタの検出部が単一の接点のみを有するとき、ツールセッタは、Z1方向の周囲に旋回可能に配置される。
【0045】
また、説明された位置情報補正処理では、ワークW1を案内可能に支持するガイドブッシュ装置13を有するが、実施形態に係る工作機械は、ガイドブッシュ装置13を有さなくてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5